説明

配管保持具、配管構造および配管工法

【課題】 配管改修工事などの作業性を向上させることができる配管保持具を提供する。
【解決手段】 配管保持具20は、コンクリート壁等に固定され、かつ配管12を挿入するための挿入用凹部22を備えたベース部材21Aと、挿入用凹部22に嵌め込むことにより該凹部22を塞ぐカバー部材21Bとから構成される。ベース部材21Aは、挿入用凹部22の両側の部分に十分な厚みが設けられるとともに全体が低発泡樹脂から構成されており、これにより挿入用凹部22の両側の部分に、打釘により他の部材を固定できる打釘部24が設けられている。カバー部材21Bには、打釘により打釘部24に部材を固定する際に保持配管12を保護する鋼板からなる保護板28が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンションなどの集合住宅、あるいはオフィスビルにおける給排水管などの配管構造に関するものであり、主に、老朽化等により配管を改修(配管の引替え工事)する場合に適した配管保持具、配管構造および配管工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンションなどの集合住宅、あるいはオフィスビルのうち築年数が経っているものでは、例えば給水配管の内部に錆が生じるなど老朽化が進み、生活用水の供給に支障が生じているものがある。このような建物では、必要に応じて給水配管を塩ビ管などの耐腐食性の高い配管に交換することが行われるが、主な工法としては、室内天井や床面等の壁面を一旦解体撤去し、壁面内部の配管を引替えた後、壁面を復旧する工法(仮に隠蔽工法と言う)と、旧配管を残したまま、別途室内に新たな配管を設ける工法(仮に露出工法と言う)とがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような工法のうち、隠蔽工法によると、配管が完全に壁面内に隠れてもとどおりになるため理想的であるが、壁面を大きく撤去し復旧するため工事期間が長く、またコストが嵩むという難点がある。一方、露出工法によると、壁面を僅かに撤去するだけで済むため施工期間が短く、低コストで済む。しかし配管が露出するため見栄が悪い。そのため例えば配管そのものを化粧カバーで覆うことも行われているが、この場合でも、依然、配管に沿った異質な突状部分が壁面に存在するため違和感を拭い切れない。
【0004】
そこで、本願出願人は、露出工法の改良として、配管とその近辺全体を覆材で覆うことにより、配管が壁面内部に設けられているように擬装し、これによって露出工法の見栄えの問題を解消することを考えついた。ところが、ここに次のような解決すべき課題がある。
【0005】
すなわち、マンションのように、例えばコンクリート壁に直接断熱材と壁板とが取付けられた室内の壁面には、配管や覆材を容易に固定できる木製の柱や桟が少ない。そのため、固定金具を使って配管を壁に固定し、これとは別に桟材等を同様に壁に固定した上で、この桟材を使って覆材を固定することになる。そのため、配管を固定するための工程と覆材を固定する工程とに加えて覆材を支持する桟材を固定する工程が必要となり、作業性が決して良いとは言えない。従って、この点を解決することが望まれる。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであって、その第1の目的は、配管工事の作業性を向上させることができる配管保持具を提供すること、第2の目的は、この配管保持具を用いて配管工事を行うことにより、見栄えの良好な配管工事を短期間で、かつ低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の配管保持具は、被取付け面に固定されて配管を保持する配管保持具であって、前記配管を保持する配管保持部と、少なくとも前記被取付け面とは反対側に面し、打釘により他の部材の固定を可能とする打釘可能部とを備えているものである。
【0008】
この配管保持具によると、配管を壁面に固定した上で、この配管保持具そのものを使って他の部材を固定することが可能となる。そのため、例えばコンクリート壁に配管を設けてさらにその配管を覆材により隠す場合でも、配管保持具のみを直接コンクリート壁に対して固定すれば、この配管保持具の打釘可能部に対して覆材を釘打ち固定することにより配管保持具を介して覆材をコンクリート壁に対して固定することが可能となる。なお、請求項の記載において「打釘」とは、いわゆる釘打ち以外に例えばねじ止めやステイプル打ちも含む概念である。
【0009】
この配管保持具においては、保持された配管を打釘から保護する保護部材が設けられているのが好ましい。
【0010】
この構成によれば、打釘可能部に釘打ちをする際に、誤って保持配管を傷付けるといったトラブルを有効に防止することが可能となる。
【0011】
なお、上記の配管保持具は、その具体的な構成として、例えば、前記被取付け面に固定される第1部材と、この第1部材に合体させることにより該第1部材と協働して前記配管保持部を形成する第2部材とからなり、前記第1部材又は第2部材の少なくとも一方側に、前記両部材を互いに合体させた状態において前記打釘可能部が少なくとも前記被取付け面とは反対側に面するように構成されているものであってもよい。
【0012】
この配管保持具では、まず第1部材を被取付け面に固定し、第1部材に対して第2部材を合体させつつこれら両部材の間に配管を挟み込むことにより、配管を配管保持具により保持することとなる。そして、このように第1,第2の両部材を合体させると、被取付け面とは反対側に打釘可能部が面し、これによって他の部材を打釘により配管保持具に固定することが可能となる。
【0013】
このように配管保持具を第1部材と第2部材とからなる分割構造とする場合には、前記第1部材に対して第2部材を着脱自在に係合させることにより前記両部材を互いに合体させるように構成するのが好ましい。
【0014】
この構成によれば、必要に応じて第1部材から第2部材を取り外すことにより、配管のやり直しや位置修正を容易に行うことが可能となり、配管作業の作業性が向上する。
【0015】
上記の配管保持具においては、第1部材又は第2部材の一方側に、配管を挿入することにより配管を仮保持させるための挿入用凹部が設けられているのが好適である。この構成によれば、第1部材と第2部材とを合体させて配管を完全に固定するまでの間、配管を挿入用凹部に挿入して(あるいは嵌め込んで)仮保持させ、この状態で全体のバランスを確認して配管を本固定するといった作業が可能となる。そのため、配管作業の作業性が向上する。また、このように挿入用凹部を設ける場合の具体的な構成としては、前記第1部材に前記被取付け面側とは反対側に開くように前記挿入用凹部が設けられ、この挿入用凹部に第2部材を嵌め込むことにより前記第1部材に対して第2部材を合体させるように構成され、さらに前記挿入用凹部に配管を挿入してその外側から第2部材を前記挿入用凹部に嵌め込んだ両部材の適正な合体状態において、第1部材および第2部材における前記被取付け面側とは反対側の面が互いに面一になるように構成されているのが好ましい。この構成によれば、第1部材と第2部材との境目の段差を確認することにより、両部材が完全(確実)に合体しているか否かを手触りで、あるいは目視でもって容易に確認することが可能となる。そのため、配管作業を正確、かつ確実に行う上で有利となる。
【0016】
なお、配管保持具の構成としては、上記のように第1部材と第2部材とを合体させることにより両部材により協働して配管保持部を形成するもの以外に、配管保持部そのものが保持具本体に対して着脱自在に構成されているものであってもよい。
【0017】
この場合には、保持具本体を被取付け面に固定する一方、配管に対して配管保持部を装着しておき、この配管保持部を保持具本体に装着することにより配管保持具に対して配管を保持させることとなる。この場合も、必要に応じて保持具本体から配管保持部を取り外すことにより、配管のやり直しや位置修正を容易に行うことが可能となる。
【0018】
一方、本発明に係る配管構造は、上記のような配管保持具を用いた配管構造であって、室内に露出して設けられる縁取り部材又は柱状部材などの基準部材に沿って配管が設けられるとともに、この配管の長手方向における一乃至複数箇所が前記配管保持具により保持された状態で壁面に対して固定され、さらに配管の長手方向に亘って該配管から前記基準部材に跨る部分を一体的に室内側から隠蔽する覆材が設けられ、この覆材が少なくとも配管保持具の前記打釘可能部に対して打釘されることにより前記壁面に固定されているものである。
【0019】
この配管構造によると、配管、配管保持具および基準部材が覆材によって一体的に覆われ、その結果、配管が室内壁の内部に設けられているように擬装される。そのため、配管を本来の室内壁から露出した状態で設けながらも見栄えが悪くなるのを有効に防止することが可能となる。しかも、上記の配管保持具を用いているので、例えばコンクリート壁に配管を設けてこれを覆材により隠すような場合でも、配管保持具のみを直接コンクリート壁に対して固定すれば、この配管保持具の打釘可能部に対して覆材を釘打ち固定することにより配管保持具を介して覆材をコンクリート壁に対して固定することが可能であり、そのため配管工事を行う際の作業性も良いものとなる。また、配管部分が覆材により密閉されて内部の空気層により断熱効果が発揮される結果、保温効果と結露の防止効果を得ることもできる。
【0020】
この構造の場合、前記覆材は、前記基準部材と同一材料により構成されているのが好適である。
【0021】
この構造によると、一見すると覆材が本来の基準部材(縁取り部材や柱状部材)であるかのような印象を与えることが可能となるので違和感が無く見栄えが良いものとなる。
【0022】
一方、本発明の配管工法は、上記のような配管保持具を用い、室内に露出して設けられる縁取り部材又は柱状部材などの基準部材に沿って配管を設ける工法であって、前記配管保持具を前記基準部材に沿って壁面に固定し、前記基準部材に沿って配管を配置しながら該配管を前記配管保持具により固定し、さらに配管の長手方向に亘って該配管から基準部材に跨る部分を一体的に室内側から隠蔽する覆材を前記配管および基準部材に被せ、この覆材を少なくとも配管保持具の前記打釘可能部に対して室内側から打釘することにより前記壁面に固定するようにしたものである。
【0023】
この配管工法によると、配管工事等において、上記のような配管構造を短期間で良好に施工することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
上記のような本発明の配管保持具によると、例えばコンクリート壁に配管を設けてさらにその配管を覆材により隠す場合でも、配管保持具のみを直接コンクリート壁に対して固定すれば、覆材を打釘可能部に釘打ち固定することにより配管保持具を介してコンクリート壁に覆材を固定することができる。そのため、配管工事において、覆材を固定するための柱材や桟材を別途コンクリート壁に設ける手間が省け、その分、当該工事の作業性を向上させることができる。
【0025】
また、本発明の配管構造および配管工法によると、従来のいわゆる露出工法と同様に本来の室内壁の外側に配管を設けながらも、覆材によって配管が室内壁の内部に設けられているように擬装されるため、従来の露出工法に比べて違和感が少なく見栄えを良好に確保することができる。しかも、上記のような配管保持具を用いて配管を固定するので、例えばコンクリート壁に配管を設けてこれを覆材により隠すような場合でも、当該工事を速やかに短期間で進めることができる。従って、見栄えの良好な配管工事を短期間で、かつ低コストで行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の好ましい実施の形態について図面を用いて説明する。
【0027】
図1は本発明に係る配管構造が適用された室内を斜視図で概略的に示しており、図2は図1に示した室内のうち配管の配設部分を断面図で示している。これらの図は、配管改修工事により室内1の天井3付近に新たな配管12を後付した例を示している。
【0028】
配管12は塩ビ管などの耐腐食性の高い管材からなり、図1に示すように、出入口2が設けられる壁5の上端部分に廻り縁4に沿って設けられ、後記覆材16によって覆い隠された構造となっている。
【0029】
詳しく説明すると、図2に示すように、壁5は母体となるコンクリート壁6の表面に断熱材7および壁板8がこの順番で貼付けられることにより構成されている。壁5のうち配管経路に当る部分には、同図に示すように断熱材7および壁板8が切除されることにより配管用の凹部10が形成され、この凹部10内に配管12が配設されている。
【0030】
そして、この配管12が配管保持具20(本発明に係る配管保持具)によってコンクリート壁6に固定され、さらに覆材16が室内側から壁5に固定されることにより、凹部10、配管12および廻り縁4が覆材16によって一体に覆い隠されている。
【0031】
覆材16は、同図に示すように天井3から真っ直ぐに垂下する部分(垂直部16a)と、その下端から水平に壁側に延びる部分(水平部16b)とを有した断面L字型の部材で、廻り縁4と同一の木材から構成されている。そして、前記垂直部16aの上端を天井3に、水平部16bの先端を前記凹部10の下側で壁5にそれぞれ突き当てた状態で廻り縁4に重ね合わされ、廻り縁4および前記配管保持具20に対して室内側から打釘されることにより壁5に固定されている。なお、配管保持具20と覆材16との間には、配管保持具20と廻り縁4との段差を解消するための木製のスペーサ14が介装されており、配管保持具20に対してはこのスペーサ14を介して覆材16が打釘されている。
【0032】
覆材16は、図1に示すように配管12が設けられる壁5の幅方向全体に亘って設けられており、これによりこの覆材16があたかも廻り縁、あるいは梁として室内1に設けられているような印象を与えることができるようになっている。
【0033】
次に、上述した配管構造に用いられている配管保持具20について詳述するとともに、上記配管構造に係る配管工事の手順(本発明に係る配管工法)について説明する。
〈 配管保持具の構成 〉
配管保持具20は、配管12を保持した状態で被取付け面に固定するためのもので、図3(a)および図4に示すように、前記コンクリート壁6に固定されるベース部材21A(本発明に係る第1部材に相当する)と、このベース部材21Aに着脱自在に合体されるカバー部材21B(本発明に係る第2部材に相当)とから構成されている。
【0034】
ベース部材21Aは、配管12の軸線方向に細長い四角柱状とされ、全体が樹脂材料からなり射出成形により一体に構成されている。ベース部材21Aには、コンクリート壁6への取付け面側(図4では下面側)とは反対側に開き、かつ長手方向に延びるU字型断面の挿入用凹部22が形成されている。この挿入用凹部22は、配管12を嵌め込むためのもので、その幅は配管12の外径と同寸法、あるいはそれより僅かに広く形成されている。
【0035】
挿入用凹部22の内底部には、コンクリート壁6への取付け面側に開口する段付きの貫通孔22bが穿設されている。この貫通孔22bはベース部材21Aをコンクリート壁6にねじ止めするためのものである。
【0036】
挿入用凹部22の両側の部分は幅方向(図4では左右方向)にある程度の厚みが設けられており、これらの部分は打釘部24(本発明に係る打釘可能部)とされている。すなわち、ベース部材21Aは、全体が低発泡樹脂(例えば二倍発泡ポリスチレン)から構成されることにより木材と同様に打釘、すなわち釘打ち、ねじ締め、ステイプル打ち等が可能な構成となっており、挿入用凹部22の両側では上記の通り厚みが十分に設けられてその表面がフラットに形成されることにより板材等を固定できるようになっている。
【0037】
カバー部材21Bは、ベース部材21Aの前記挿入用凹部22を塞ぐことによりベース部材21Aと協働して配管12を保持するとともにその抜け止めを行うものである。このカバー部材21Bは、ベース部材21Aと異なり弾性のある樹脂材料(例えばオレフェン系エラストマー)から構成された板状の部材で、同図に示すように、挿入用凹部22をその長手方向全体に亘って塞ぐ細長の板状に形成されており、挿入用凹部22への嵌め込み面26側(図4では下側)は、配管12の外周面に対応した湾曲面(円弧面)とされている。
【0038】
これに対して嵌め込み面26の反対側は、鋼板等からなる保護板28(本発明の保護部材に相当する)が固着されることによりフラットな面とされている。保護板28は、打釘から配管12を保護するもので、この点については後述する。
【0039】
また、カバー部材21Bの幅方向側面にはフック26aが設けられており、これらのフック26aがカバー部材21Bの長手方向に亘って連続的に設けられている。
【0040】
カバー部材21Bをベース部材21Aに合体させるには、図4に示すように、カバー部材21Bをその嵌め込み面26側から挿入用凹部22に嵌め込む。このようにすると挿入用凹部22の内側面に形成された係合溝22aに各フック26aが係合し、これにより両部材21A,21Bが互いに合体した状態となるとともに、上記の係合によりこの状態が保持されるようになっている。そして、このように両部材21A,21Bを合体させることにより、ベース部材21Aの挿入用凹部22とカバー部材21Bの嵌め込み面26とが協働して配管12をその外側から保持するように構成されている。すなわちベース部材21Aとカバー部材21Bとが協働して配管保持部を構成するようになっている。
【0041】
なお、両部材21A,21Bが合体した状態では、ベース部材21Aの表面(すなわち、打釘部24の表面)とカバー部材21Bの表面(つまり保護板28の表面)とが面一となるように両部材21A,21Bが構成されており、これによってカバー部材21Bがベース部材21Aに対して完全に合体された否かを目視、あるいは手触りで容易に判断し得るようになっている。
〈 配管工事の手順(配管工法) 〉
配管工事では、まず、壁5のうち配管経路に当る部分の断熱材7および壁板8を切除することにより配管用の前記凹部10を壁5に形成した後、配管保持具20を配管経路に沿って断続的にコンクリート壁6に固定する。この場合、必要に応じて配管保持具20を複数個連続的に固定するようにしてもよい。
【0042】
配管保持具20の固定は、図5(a)に示すように、挿入用凹部22が室内側に向くようにしてベース部材21Aをコンクリート壁6に重ね、貫通孔22bを介して釘18をコンクリート壁6に打ち付けることにより行う。
【0043】
次いで、配管12を設置しながらベース部材21Aの挿入用凹部22に挿入する。こうして配管12の設置が完了した後、該配管12を固定する。固定は、図5(b)に示すように、各ベース部材21Aの挿入用凹部22にカバー部材21Bをその嵌め込み面26側から嵌め込みフック26aを係合溝22aに係合させることにより行う。このようにすると、配管12が挿入用凹部22の壁面と嵌め込み面26とに挟み込まれ、これにより配管保持具20によって配管12が固定されることとなる。この際、カバー部材21Bが弾性のある樹脂材料から構成されている結果、カバー部材21Bを撓ませながら容易にベース部材21Aに嵌め込むことができる。また、ベース部材21Aに対してカバー部材21Bを完全に嵌め込むと、上記の通りベース部材21Aの表面とカバー部材21Bの表面とが面一になるため、これを目安に配管12の固定が確実に行われているか否かを確認しながら作業を行うことができる。
【0044】
配管12の固定が完了した後、覆材16の取付けを行う。覆材16の取付けは、図5(c)に示すように、まずスペーサ14を各配管保持具20に重ね合わせた上で、その外側(室内側)から覆材16を廻り縁4に跨った状態に重ね合わせ、この覆材16の外側から廻り縁4および配管保持具20の前記打釘部24に対して釘19を打ち付けることにより行う。この際、打釘部24に対してはスペーサ14を貫通させた状態で釘19を打ち込む。なお、配管保持具20に対する打釘については、上記のようにカバー部材21Bに鋼板からなる保護板28が設けられている結果、配管12に対応する部分がこの保護板28により室内側から保護されるため、釘19が誤って配管12に打ち込まれるといったトラブルを未然に防止することができる。従って配管12を傷つけることなく作業を進めることができる。
【0045】
こうして覆材16が壁5に固定されると、配管工事が完了する。
【0046】
以上のような本発明に係る配管構造によると、壁5の廻り縁4に沿って配管保持具20により配管12を設置し、これら配管保持具20、配管12および廻り縁4を覆材16により一体的に覆い隠すようにしているので、見栄えの良好な配管改修工事を短期間で、かつ低コストで提供することができる。すなわち、この配管構造では、壁5に配管12等を設けるが、上記のように配管12等を覆材16によって一体的に覆い隠すだけで、壁5をもとどおりに復旧するということを一切行わないので、極めて短期間で、しかも低コストで工事を行うことができる。しかも、工事後は、本体の廻り縁4を含め壁5の天井際全体を、本来の廻り縁4と同一の木材から構成された覆材16によって覆っているため、この覆材16があたかも廻り縁、あるいは梁として室内1に設けられているような印象を与えることができる。従って、工事後もさほど違和感がなく見栄えを良好に保つことができる。
【0047】
その上、この配管構造では、上記のように打釘部24を持つ本発明に係る配管保持具20を使って配管12を固定するので、この点でも工期を短縮できる。
【0048】
すなわち、配管保持具20を用いないとすれば、配管固定金具を使って配管12をコンクリート壁6に直接固定するとともに、これとは別に木製の桟材等をコンクリート壁6に固定した上で、この桟材を使って覆材16を固定することとなる。これに対して、上記配管保持具20を用いた場合には、上述の通り覆材16を配管保持具20そのものに打釘することによって、この配管保持具20を介してコンクリート壁6に覆材16を固定することができるため、専用の桟材等を設ける必要がない。そのため、工事を迅速に進めることができ、配管工事の工期を短縮することが可能となる。
【0049】
ところで、以上説明した配管構造は、本発明に係る配管構造の好ましい実施形態の一例であって、配管構造はもとよりこれに用いる配管保持具20の具体的な構成、あるいは配管工法については、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、以下のような態様を採ることも可能である。
(1)実施形態では、室内1の廻り縁4に沿って配管12を設ける場合の例について説明したが、例えば間仕切りの柱に沿って配管12を設ける場合にも本発明の配管構造は適用可能である。図6はその一例で、間仕切り34末端に鉛直方向に配管12を設けた場合の配管構造を平断面図で示している。この図に示す例では、配管12は、柱35に沿って設けられ、配管保持具20によって間仕切り34に固定されている。配管保持具20(ベース部材21A)は、柱35の側面に突き当てられた状態で釘18により壁板37の外側から間柱36に固定されている。そして、配管12、配管保持具20および柱35を壁面側から一体に覆うように覆材16が被せられ、この覆材16が柱35および配管保持具20(打釘部24)に対して打釘により固定されている。なお、柱35と覆材16との間にはスペーサ14が介装されており、柱35に対してはこのスペーサ14を介して覆材16が打釘されている。
【0050】
この構成の場合も、覆材16やスペーサ14を柱35と同一材料(同一の木材あるいはそれに近い木目をもつ木材)により構成しておけば、正面又は側面(図同図では左方又は下方)から見たときにこの覆材16やスペーサ14が柱35そのものであるかのような印象を与えることができる。従って、間仕切り34の柱35に沿って配管12を設けながらも、工事後に違和感を与えるが事なく見栄えを良好に保つことができる。
【0051】
要するに、本発明の配管構造は、廻り縁4等の縁取り部材、あるいは柱35等の柱状部材を基準部材とし、これに沿って配管12を設け、これら配管12および縁取り部材又は柱状部材を一体的に覆材16によって覆い隠すもの、より好ましくは、覆材16を基準部材と同一の材料により構成することにより、覆材16が縁取り部材又は柱状部材そのものであるかのように擬装するようにしたものであり、その適用場所は、上記のような縁取り部材や柱状部材の近傍であれば何処でも適用可能である。
【0052】
なお、図2や図6に示した例では、覆材16と壁5、又は覆材16と間仕切り34との間にスペーサ14を設けているが、これは覆材16の被固定面をフラットにするためであり、例えば図2において廻り縁4と配管保持具20との間に段差が無い場合、あるいは図6において柱35と配管保持具20との間に段差が無い場合には勿論スペーサ14を設ける必要はない。
(2)配管保持具20の具体的な構成は上記実施形態のもの以外に図7又は図8に示すようなものであってもよい。以下、図示の配管保持具20,50について説明する。
【0053】
まず、図7に示す配管保持具20は、ベース部材21Aおよびカバー部材21Bからなり、これら両部材21A,21Bを互いに合体させることにより、両部材21A,21Bの間に配管12を挟み込んだ状態で保持する点で、上記実施形態のものと共通するが、カバー部材21B側に挿入用凹部や打釘部が設けられている点で実施形態のものとは構成が相違している。
【0054】
詳しく説明すると、この配管保持具20では、図7(a)に示すように、ベース部材21Aが板状に構成されており、このベース部材21Aには、コンクリート壁6への取付け面の反対側に配管12を受ける円弧状の受け面42が設けられ、さらにこの受け面42の両側に、内側に向き、かつ弾性的に幅方向(同図では上下方向)に撓み可能な一対のフック片43が設けられている。一方、カバー部材21Bは略四角柱状に形成されるとともに全体が低発泡樹脂から構成されており、ベース部材21A側の面には断面U字型の挿入用凹部46が設けられている。また、ベース部材21A側と反対側はフラットな面とされ、この面のうち挿入用凹部46に対応する箇所、つまり配管12を保持する部分に対応する箇所には鋼板からなる保護板48が設けられている。そして、この保護板48の両側が打釘部47とされている。
【0055】
この配管保持具20を使って配管12をコンクリート壁6に固定するには、同図に示すようにベース部材21Aをコンクリート壁6に固定し、ベース部材21Aの受け面42に配管12を押し付けた状態で挿入用凹部46側からカバー部材21Bをベース部材21Aに近づけ、配管12を挿入用凹部46内に挿入しながらカバー部材21Bをベース部材21Aに合体させる。このようにすると、図7(b)に示すように、ベース部材21Aの各フック片43がカバー部材21Bの側面に形成された係止溝46aに係合し、これにより受け面42と挿入用凹部46の壁面とに挟み込まれた状態で配管12が配管保持具20によってコンクリート壁6に固定されることとなる。なお、この配管保持具20の場合、予めカバー部材21Bの挿入用凹部46に配管12を嵌め込んでおき、この状態でカバー部材21Bをベース部材21Aに合体させるようにしてもよい。
【0056】
図8に示す配管保持具50は、被取付け面(図示の例ではコンクリート壁6)に固定される保持具本体51Aと、配管12を直接保持して保持具本体51Aに対して着脱自在に係止されるホルダ51B(本発明に係る配管保持部に相当する)とから構成されている。
【0057】
保持具本体51Aは、図8(a)に示すように、下向き(同図で下向き)に開く係止用凹部53を備えた断面略コ字型の部材で、配管12の軸線方向に細長く(図9参照)、全体が低発泡樹脂により一体に構成されている。保持具本体51Aのうち係止用凹部53の内底部分は十分な肉厚が設けられており、ここが打釘部57とされている。打釘部57には段付きの貫通孔54が設けられており、同図に示すように、この孔を使って釘18により保持具本体51Aがコンクリート壁6に固定されるようになっている。
【0058】
係止用凹部53の内側面には、その長手方向全体に亘ってそれぞれ内側に向かって係止部52aが形成されている。また、これら係止部52aのうちコンクリート壁6への取付け面側とは反対側(同図では右側)の係止部52aに対応する箇所には、該係止部52aの外側に鋼板からなる保護板56が設けられている。
【0059】
一方、ホルダ51Bは、フラットなベース部分58の片面(同図では下面)に円弧状に湾曲した撓み変位可能な平板型の一対のアーム59を備えた構成となっており、これらアーム59の間に配管12を嵌め込むことにより両アーム59の弾発力により配管12を保持するように構成されている。ベース部分58の幅方向両端は、両アーム59の外側に延設されており、ここが前記係止部52aに係合可能なフック58aとなっている。なお、ホルダ51Bは、保持具本体51Aの長手方向に対応する寸法が十分に短く設定されており、共通の保持具本体51Aに対して複数のホルダ51Bが係止され得るようになっている(図9参照)。
【0060】
この配管保持具50を使って配管12をコンクリート壁6に固定するには、同図に示すように保持具本体51Aをコンクリート壁6に固定する一方、ホルダ51Bの両アーム59の間に配管12を嵌め込むことによりホルダ51Bを配管12に装着する。この場合、必要に応じて図9に示すように複数(図示の例では2つ)のホルダ51Bを配管12に装着する。そして、ホルダ51Bをそのベース部分58側から保持具本体51Aの係止用凹部53に嵌め込む。このようにすると、図8(b)に示すように、保持具本体51Aの両係止部52aにホルダ51Bのフック58aが係合し、配管12がホルダ51Bを介して保持具本体51Aにより保持され、結果的に配管12がコンクリート壁6に固定されることとなる。
【0061】
なお、この配管保持具50についても、保持具本体51Aに打釘部57が設けられているため、この部分を使って覆材16等を打釘により固定することが可能である。この場合も、フック52aに対応する部分に保護板56が設けられているため、打釘時にベース部分58に保持されている配管12を誤って傷付けるといったトラブルを有効に防止することができる。
【0062】
以上、配管保持具の変形例について図7,図8を用いて説明したが、勿論、これ以外の構成のものであってもよい。要は、配管12を保持する部分と、打釘により覆材16等を固定し得る部分とを備えていればよい。従って、配管保持具は、必ずしも図3,図7および図8に示したもののように分割構造を有するものでなくてもよく、例えば、図8に示した配管保持具50において、保持具本体51Aとホルダ51Bとが一体的に設けられたものであってもよい。
(3)実施形態の配管保持具20では、ベース部材21Aの全体を低発泡樹脂から構成し、この樹脂材料の材質を利用することにより嵌合用凹部22の両側に打釘部24を設けているが、この樹脂材料の種類は必ずしも実施形態の材料(二倍発泡ポリスチレン)に限定されるものではなく、その他の材料、例えば低発泡ABSや低発泡塩化ビニルを用いてもよい。要は、打釘により覆材16等の部材を確実に固定できる材料であればよい。
(4)実施形態では、配管12を打釘から保護する保護部材として、カバー部材21Bに鋼板からなる保護板28を設けているが、保護板28は必ずしも鋼板等の金属板である必要はなく、硬質の樹脂板であっても構わない。また保護板28の大きさや配置も実施例に限定されるものではなく、配管12をより確実に保護できるように配管保持具20の具体的な構成に応じて適宜設けるようにすればよい。この点は、図7,図8に示した配管保持具20,50についても同様である。
(5)実施形態では、壁5に配管用の凹部10を設けここに配管12を固定しているが、壁板8の強度が充分な場合やコンクリート直壁の場合には、勿論、前記凹部10を設けることなく壁板8に配管保持具20を固定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る配管構造が適用された室内を示す斜視図である。
【図2】配管構造を示す一部断面斜視図である。
【図3】配管保持具を示す斜視図である((a)はベース部材とカバー部材とを分離した状態、(b)はベース部材とカバー部材とを合体させることにより配管を保持した状態をそれぞれ示す)。
【図4】配管保持具を示す分解状態の断面図である。
【図5】配管改修工事の手順(配管工法)を示す図である((a)は配管保持具のベース部材をコンクリート壁に固定した段階、(b)は配管保持具により配管を固定した段階、(c)は覆材を固定する段階をそれぞれ示している)。
【図6】本発明に係る配管構造が適用された間仕切り部分を示す平断面図である。
【図7】配管保持具の変形例を示す断面図である((a)はベース部材とカバー部材とを分離した状態、(b)はベース部材とカバー部材とを合体させることにより配管を保持した状態をそれぞれ示す)。
【図8】配管保持具の変形例を示す断面図である((a)は保持具本体とホルダとを分離した状態、(b)は保持具本体にホルダを係合させることにより配管を保持した状態をそれぞれ示す)。
【図9】図8(a)におけるA矢視図である。
【符号の説明】
【0064】
1 室内
2 出入口
3 天井
4 廻り縁
5 壁
12 配管
16 覆材
20 配管保持具
21A ベース部材
21B カバー部材
28 保護板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付け面に固定されて配管を保持する配管保持具であって、
前記配管を保持する配管保持部と、少なくとも前記被取付け面とは反対側に面し、打釘により他の部材の固定を可能とする打釘可能部とを備えていることを特徴とする配管保持具。
【請求項2】
請求項1に記載の配管保持具において、
保持された配管を打釘から保護する保護部材が設けられていることを特徴とする配管保持具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の配管保持具において、
前記被取付け面に固定される第1部材と、この第1部材に合体させることにより該第1部材と協働して前記配管保持部を形成する第2部材とからなり、
前記第1部材又は第2部材の少なくとも一方側に、前記両部材を互いに合体させた状態において前記打釘可能部が少なくとも前記被取付け面とは反対側に面するように構成されていることを特徴とする配管保持具。
【請求項4】
請求項3に記載された配管保持具において、
前記第1部材に対して第2部材を着脱自在に係合させることにより前記両部材を互いに合体させるように構成されていることを特徴とする配管保持具。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の配管保持具において、
前記配管保持部が保持具本体に対して着脱自在に構成されていることを特徴とする配管保持具。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の配管保持具を用いた配管構造であって、
室内に露出して設けられる縁取り部材又は柱状部材などの基準部材に沿って配管が設けられるとともに、この配管の長手方向における一乃至複数箇所が前記配管保持具により保持された状態で壁面に対して固定され、さらに配管の長手方向に亘って該配管から前記基準部材に跨る部分を一体的に室内側から隠蔽する覆材が設けられ、この覆材が少なくとも配管保持具の前記打釘可能部に対して打釘されることにより前記壁面に固定されていることを特徴とする配管構造。
【請求項7】
請求項6に記載の配管構造において、
前記覆材は、前記基準部材と同一材料により構成されていることを特徴とする配管構造。
【請求項8】
請求項1乃至5の何れかに記載の配管保持具を用い、室内に露出して設けられる縁取り部材又は柱状部材などの基準部材に沿って配管を設ける工法であって、
前記配管保持具を前記基準部材に沿って壁面に固定し、前記基準部材に沿って配管を配置しながら該配管を前記配管保持具により固定し、さらに配管の長手方向に亘って該配管から基準部材に跨る部分を一体的に室内側から隠蔽する覆材を前記配管および基準部材に被せ、この覆材を少なくとも配管保持具の前記打釘可能部に対して室内側から打釘することにより前記壁面に固定することを特徴とする配管工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−189063(P2006−189063A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−381719(P2004−381719)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(505005913)株式会社リフォーム技術研究所 (6)
【Fターム(参考)】