説明

配線回路基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブおよび配線回路基板の製造方法

【課題】本発明は、端子形成部における導体層の機械的強度に優れた配線回路基板を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、配線形成部と、外部回路に接続するための端子形成部と、上記配線形成部および上記端子形成部の間に連続的に形成された中間部とを有し、上記配線形成部は、第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一導体層と、上記第一導体層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に、上記第一導体層と厚さ方向において重複するように形成された第二導体層とを有し、上記端子形成部は、上記第一導体層を有し、上記端子形成部において、上記第一導体層上に、第三導体層が形成されていることを特徴とする配線回路基板を提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板に関し、例えばハードディスクドライブ(HDD)のサスペンション用基板に用いることができる配線回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの普及等によりパーソナルコンピュータの情報処理量の増大や情報処理速度の高速化が要求されてきており、それに伴って、パーソナルコンピュータに組み込まれているハードディスクドライブ(HDD)も大容量化や情報伝達速度の高速化が必要となってきている。そのため、HDDに用いられるサスペンション用基板(フレキシャー)にも高機能化が求められている。
【0003】
サスペンション用基板は、通常、一対の配線からなるリード配線と、同じく一対の配線からなるライト配線を有する。このような一対の配線は、従来、絶縁層の同一表面上に形成されていた。これに対して、配線の高密度化やインピーダンスの低下を目的として、一対の配線における一方の配線と他方の配線とを、絶縁層を介して積層したサスペンション用基板が知られている(特許文献1の図9)。
【0004】
このようなサスペンション用基板は、一方の配線と、他方の配線とが、絶縁層を介して積層されているが、外部回路との接続を行う端子形成部においては、接続容易性の観点から、両配線が同一平面上に形成されていることが好ましい。そのため、端子形成部の近傍において、上部配線の高さを、下部配線の高さに揃えることが行われている。例えば、特許文献2においては、第二導体層(上部配線)を、端子形成部の直前で傾斜させ、第二導体層(上部配線)の高さと、第一導体層(下部配線)の高さを揃えた配線回路基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−133988号公報
【特許文献2】特開2009−129490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
端子形成部における導体層は、通常、その表面および裏面が露出した形状を有するため、機械的強度が弱いという問題がある。特に、上記のような配線を有する配線回路基板は、配線を積層するため全体が厚くなることから、配線を薄く形成する傾向がある。そのため、製造工程中に、露出した導体層が変形したり、超音波接合時に露出した導体層が破損したりするという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、端子形成部における導体層の機械的強度に優れた配線回路基板を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明においては、配線形成部と、外部回路に接続するための端子形成部と、上記配線形成部および上記端子形成部の間に連続的に形成された中間部とを有し、上記配線形成部は、第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一導体層と、上記第一導体層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に、上記第一導体層と厚さ方向において重複するように形成された第二導体層とを有し、上記端子形成部は、上記第一導体層を有し、上記端子形成部において、上記第一導体層上に、第三導体層が形成されていることを特徴とする配線回路基板を提供する。
【0009】
本発明によれば、第三導体層を、第一導体層上に形成することから、端子形成部における導体層(特に第一導体層)の機械的強度に優れた配線回路基板とすることができる。
【0010】
上記発明においては、上記第三導体層が、上記第二導体層と同一の材料からなる層であることが好ましい。第一導体層の機械的強度を容易に向上させることができるからである。
【0011】
上記発明においては、上記第一導体層および上記第三導体層の間に、金属めっきからなる密着性向上層が形成されていることが好ましい。両者の密着性を向上させることで、接続信頼性に優れた端子形成部とすることができるからである。
【0012】
上記発明においては、上記密着性向上層が、Niめっき層であることが好ましい。安価であり、充分な密着性を発揮することができるからである。
【0013】
上記発明においては、上記第三導体層が、上記中間部における上記第二絶縁層の表面に接触するように形成されていることが好ましい。端子形成部における第一導体層の機械的強度をさらに向上させることができるからである。
【0014】
上記発明においては、上記端子形成部における上記第三導体層に、半田との接着面積を増加させる処理がなされていることが好ましい。接続信頼性の向上を図ることができるからである。
【0015】
上記発明において、上記配線形成部は、上記第一絶縁層上に形成された一または二以上の下部導体層を有し、上記端子形成部は、上記下部導体層を有し、上記端子形成部において、上記下部導体上に上記第三導体層が形成されていることが好ましい。下部導体層の機械的強度を容易に向上させることができるからである。
【0016】
上記発明においては、上記配線回路基板がサスペンション用基板であることが好ましい。ハードディスクドライブの部品として有用だからである。
【0017】
また、本発明においては、上述した配線回路基板を含むことを特徴とするサスペンションを提供する。
【0018】
本発明によれば、上述した配線回路基板を用いることで、耐久性に優れたサスペンションとすることができる。
【0019】
また、本発明においては、上述したサスペンションと、上記サスペンションに実装された磁気ヘッドスライダと、を有することを特徴とするヘッド付サスペンションを提供する。
【0020】
本発明によれば、上述したサスペンションを用いることで、耐久性に優れたヘッド付サスペンションとすることができる。
【0021】
また、本発明においては、上述したヘッド付サスペンションを含むことを特徴とするハードディスクドライブを提供する。
【0022】
本発明によれば、上述したヘッド付サスペンションを用いることで、耐久性に優れたハードディスクドライブとすることができる。
【0023】
また、本発明においては、配線形成部と、外部回路に接続するための端子形成部と、上記配線形成部および上記端子形成部の間に連続的に形成された中間部とを有し、上記配線形成部は、第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一導体層と、上記第一導体層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に、上記第一導体層と厚さ方向において重複するように形成された第二導体層とを有し、上記端子形成部は、上記第一導体層を有し、上記端子形成部において、上記第一導体層上に、第三導体層が形成されている配線回路基板の製造方法であって、上記端子形成部が形成される位置に、少なくとも上記第一導体層を有する処理用部材を準備する準備工程と、上記処理用部材に対して、めっき法により、上記第三導体層を形成する第三導体層形成工程と、を有することを特徴とする配線回路基板の製造方法を提供する。
【0024】
本発明によれば、上記処理用部材の第一導体層上に、第三導体層を形成することにより、端子形成部における導体層(特に第一導体層)の機械的強度に優れた配線回路基板を得ることができる。
【0025】
上記発明においては、上記処理用部材が、上記端子形成部が形成される位置の上記第一導体層の表面上に、金属めっきからなる密着性向上層を有することが好ましい。第一導体層および第三導体層の密着性が向上し、接続信頼性に優れた端子形成部を得ることができるからである。
【発明の効果】
【0026】
本発明においては、端子形成部における導体層の機械的強度および接続信頼性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の配線回路基板の一例を示す概略平面図である。
【図2】本発明における端子形成部およびその近傍を示す概略斜視図である。
【図3】図2における第一導体層の長手方向に沿った断面の概略図である。
【図4】本発明の配線回路基板を説明する概略断面図である。
【図5】本発明における配線形成部の一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明における端子形成部の一例を示す概略断面図である。
【図7】端子形成部の形状の一例を説明する説明図である。
【図8】本発明における端子形成部およびその近傍を示す概略斜視図である。
【図9】本発明における端子形成部およびその近傍を示す概略斜視図である。
【図10】本発明における端子形成部およびその近傍を示す概略斜視図である。
【図11】本発明における端子形成部を例示する概略断面図である。
【図12】本発明における端子形成部を例示する概略断面図である。
【図13】本発明におけるジンバル部の一例を説明する説明図である。
【図14】本発明の配線回路基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【図15】本発明の配線回路基板の製造方法の他の例を示す概略断面図である。
【図16】本発明の配線回路基板の製造方法のさらに他の例を示す概略断面図である。
【図17】本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図18】本発明のヘッド付サスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図19】本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の配線回路基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブおよび配線回路基板の製造方法について詳細に説明する。
【0029】
A.配線回路基板
まず、本発明の配線回路基板について説明する。本発明の配線回路基板は、配線形成部と、外部回路に接続するための端子形成部と、上記配線形成部および上記端子形成部の間に連続的に形成された中間部とを有し、上記配線形成部は、第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一導体層と、上記第一導体層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に、上記第一導体層と厚さ方向において重複するように形成された第二導体層とを有し、上記端子形成部は、上記第一導体層を有し、上記端子形成部において、上記第一導体層上に、第三導体層が形成されていることを特徴とするものである。
【0030】
図1は、本発明の配線回路基板の一例を示す概略平面図である。より具体的には、ハードディスクドライブに用いられるサスペンション用基板の一例を示す概略平面図である。なお、便宜上、カバー層の記載は省略している。図1に示される配線回路基板20は、一方の先端部分に形成されたジンバル部11と、他方の先端部分に形成され、外部回路に接続するための端子形成部12と、ジンバル部11および端子形成部12を接続する一対の配線3(ライト配線3xおよびリード配線3y)とを有するものである。
【0031】
図2は、本発明における端子形成部およびその近傍を示す概略斜視図である。より具体的には、ライト配線3x側の端子形成部12およびその近傍を示す概略斜視図である。なお、図2では、便宜上、ライト配線側の端子形成部を示しているが、リード配線側の端子形成部においても同様である。図2において、ライト配線3xは、第一絶縁層2a上に形成された第一導体層3aと、第二絶縁層2b上に形成された第二導体層3bとから構成される一対の配線であり、図2の図面左側では、第一導体層3aおよび第二導体層3bは、第二絶縁層2bを介して、互いに厚さ方向に重複するように配置されている。また、第一導体層3aは直進的に端子形成部12に向かい、端子形成部12において、第三導体層103を有している。一方、第二導体層3bは端子形成部12の手前で、進行方向に対して直角に曲がり、再度直角に曲がることで、第二導体層3bと平面視上平行になり、端子形成部12の直前で下方向に折れ曲がり、端子形成部12に至っている。
【0032】
なお、本発明においては、厚さ方向に重複している第一導体層3aおよび第二導体層3bが端子形成部12の手前で分岐する際、第一導体層3aおよび第二導体層3bの一方が、他方に対して、平面視上、略直角に分岐していることが好ましい。目的とするインピーダンスが得やすいからである。上記の図2においては、第二導体層3bが、第一導体層3aに対して、平面視上、直角に分岐している。これに対して、第一導体層3aおよび第二導体層3bの一方が、平面視上、斜めに(例えば45°で)分岐していると、分岐地点において、第一導体層3aおよび第二導体層3bが、一部では重複し、一部では重複しない状態となる。その結果、目的とするインピーダンスからずれが生じる場合がある。そのため、第一導体層3aおよび第二導体層3bの一方は、他方に対して、平面視上、略直角に分岐していることが好ましい。
【0033】
図3は、図2における第一導体層の長手方向に沿った断面の概略図である。図3における配線回路基板は、配線形成部13と、外部回路に接続するための端子形成部12と、配線形成部13および端子形成部12の間に連続的に形成された中間部14と有する。さらに、配線形成部13は、第一絶縁層2aと、第一絶縁層2a上に形成された第一導体層3aと、第一導体層3a上に形成された第二絶縁層2bと、第二絶縁層2b上に、第一導体層3aと厚さ方向において重複するように形成された第二導体層3bとを有する。一方、端子形成部12は第一導体層3aを有し、端子形成部12において、第一導体層3a上に第三導体層103が形成されている。なお、図3では、端子形成部12において、第一導体層3aおよび第三導体層103からなるフライングリードが形成されている。
【0034】
本発明の配線回路基板は、図3に示すように、第一導体層3aが形成されていない側の第一絶縁層2aの表面に、金属基板1を有していても良い。例えば、本発明の回路基板がサスペンション用基板である場合に、金属基板1を設けることで、所望のバネ性を付与することができる。一方、本発明の配線回路基板は、金属基板1を有しないものであっても良い。本発明の配線回路基板を、例えば、サスペンション用基板に接続する中継基板として用いる場合には、金属基板1を有しない場合もある。
【0035】
また、本発明の配線回路基板は、図4に示すように、第一導体層3aと、第三導体層103との間に、シード層4および拡散防止層5を有していても良い。また、本発明の配線回路基板は、第二導体層3b上に形成されたカバー層6を有していても良く、端子形成部12において露出する第一導体層3aおよび第三導体層103の表面上に、配線めっき層7を有していても良い。
【0036】
このように、本発明によれば、第三導体層を、第一導体層上に形成することから、端子形成部における導体層(特に第一導体層)の機械的強度に優れた配線回路基板とすることができる。また、第三導体層は、例えば第二導体層の形成と同時に形成することができるので、他の工程を追加することなく、容易に第一導体層の機械的強度を向上させることができる。さらに、第一導体層および第二導体層の高さが略同じになることから、端子形成部における接続容易性が確保されることになる。
以下、本発明の配線回路基板について、さらに詳細に説明する。
【0037】
1.配線形成部
本発明における配線形成部は、第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一導体層と、上記第一導体層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に、上記第一導体層と厚さ方向において重複するように形成された第二導体層と、を少なくとも有するものである。また、上述した図3に示すように、配線形成部13は、中間部14と連続的に形成された部分である。本発明においては、配線形成部13が、中間部14に隣接する部分に、少なくとも形成されていれば良い。
【0038】
図5は、本発明における配線形成部の一例を示す概略断面図である。図5に示される配線形成部13は、第一絶縁層2aと、第一絶縁層2a上に形成された第一導体層3aと、第一導体層3a上に形成された第二絶縁層2bと、第二絶縁層2b上に、第一導体層3aと厚さ方向において重複するように形成された第二導体層3bと、を有する。さらに、図5に示される配線形成部13は、第二導体層3bを覆うように形成されたカバー層6を有し、第一導体層3aが形成されていない側の第一絶縁層2aの表面に、金属基板1を有する。また、図示しないが、第二導体層3bと第二絶縁層2bとの間、および第一導体層3aと第一絶縁層2aとの間の少なくとも一方に、後述するシード層、拡散防止層および密着性向上層の少なくとも一つを有していても良い。
【0039】
第一絶縁層2aの材料としては、所望の絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばポリイミド(PI)等を挙げることができる。また、第一絶縁層2aの材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。第一絶縁層2aの厚さは、例えば5μm〜30μmの範囲内、中でも10μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。
【0040】
第一導体層3aは、第一絶縁層2a上に形成される層である。第一導体層3aの材料としては、所望の導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば銅(Cu)等を挙げることができる。第一導体層3aの厚さとしては、例えば4μm〜18μmの範囲内、中でも5μm〜12μmの範囲内であることが好ましい。第一導体層3aの厚さが小さすぎると、所望の導電性を得ることができない可能性があり、第一導体層3aの厚さが大きすぎると、配線回路基板の剛性が高くなる可能性があるからである。一方、第一導体層3aの線幅としては、例えば10μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。第一導体層3aの線幅が小さすぎると、充分な低インピーダンス化を図ることができない可能性があり、第一導体層3aの線幅が大きすぎると、配線回路基板の充分な高密度化を図ることができない可能性があるからである。また、第一導体層3aは、その表面にニッケル(Ni)、金(Au)による配線めっき層が形成されていても良い。
【0041】
第二絶縁層2bは、第一導体層3a上に形成される層である。通常は、第一導体層3aを覆うように第二絶縁層2bが形成される。第二絶縁層2bの材料および厚さについては、上述した第一絶縁層2aと同様である。また、第一導体層3a上に形成された第二絶縁層2bの厚さ(第一導体層3aの頂部から第二絶縁層2bの頂部までの距離)は、例えば5μm〜18μmの範囲内であることが好ましい。上記厚さが小さすぎると、伝送特性の悪化およびピンホールによるショートの可能性があり、上記厚さが大きすぎると、配線回路基板全体の厚さが大きくなる可能性があるからである。
【0042】
第二導体層3bは、第二絶縁層2b上に形成される層である。また、第二導体層3bは、通常、第一導体層3aと厚さ方向において重複するように形成される。この際、第一導体層3aおよび第二導体層3bは、厚さ方向において、少なくとも一部で重複していれば良い。また、第二導体層3bの材料および寸法(厚さおよび線幅)は、上述した第一導体層3aと同様である。また、第二導体層3bは、その表面にニッケル(Ni)、金(Au)による配線めっき層が形成されていても良い。
【0043】
また、本発明においては、第二導体層3bを覆うように、カバー層6が形成されていることが好ましい。電気信号の減衰や第二導体層3bの劣化を抑制することができるからである。カバー層6の材料としては、例えばポリイミド(PI)等を挙げることができる。また、カバー層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。なお、カバー層6の材料は、上述した第一絶縁層2aおよび第二絶縁層2bと同じであっても良く、異なっていても良い。カバー層6の厚さは、例えば3μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。
【0044】
また、本発明においては、第一導体層3aが形成されていない側の第一絶縁層2aの表面に、金属基板1を有していても良い。例えばサスペンション用基板として有用な配線回路基板を得ることができるからである。金属基板1の材料としては、所望の導電性およびばね性を有することが好ましく、例えばステンレススティール等を挙げることができる。金属基板1の厚さは、例えば10μm〜30μmの範囲内、中でも15μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。また、本発明においては、図5に示すように、金属基板1が、第一導体層3aと厚さ方向において重複しないように形成されていることが好ましい。金属基板1が第一導体層3aの電気特性に悪影響を与えることを抑制できるからである。第一導体層3aの端部と、金属基板1の端部とは、厚さ方向と直交する水平方向において、例えば10μm以上離れていることが好ましい。
【0045】
また、本発明においては、上述した図4に示すように、配線形成領域13において、第二導体層3bと第二絶縁層2bとの間に、シード層4が形成されていることが好ましい。電解めっき法により、容易に第二導体層3bを形成することができるからである。シード層4は、通常、金属薄膜層であり、例えばCuを含む金属薄膜層であることが好ましい。シード層4の厚さは、例えば0.05μm〜2.0μmの範囲内であり、0.1μm〜1.0μmの範囲内であることが好ましい。また、シード層の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えばスパッタリング法等を挙げることができる。
【0046】
また、本発明においては、シード層4および第二絶縁層2bの間に、第二導体層3bの材料が第二絶縁層2bに拡散することを抑制する拡散防止層5が形成されていても良い。拡散防止層5は、通常、金属薄膜層であり、例えばCrを含む金属薄膜層であることが好ましい。拡散防止層5の厚さは、例えば1.0nm〜5.0μmの範囲内であり、5.0nm〜2.0μmの範囲内であることが好ましい。また、拡散防止層5の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えばスパッタリング法等を挙げることができる。なお、本発明においては、第一絶縁層2aおよび第一導体層3aの間に、シード層および拡散防止層の少なくとも一方が形成されていても良い。
【0047】
本発明においては、後述する図9、図10に示すように、配線形成部13が、第一絶縁層2a上に形成された一または二以上の下部導体層103bを有することが好ましい。下部導体層103bは、通常、第一導体層3aと同一平面上に形成される層である。また、下部導体層103bの材料および寸法(厚さおよび線幅)は、上述した第一導体層3aと同様である。さらに、下部導体層は、その表面にニッケル(Ni)、金(Au)による配線めっき層が形成されていても良い。
【0048】
2.端子形成部
次に、本発明における端子形成部について説明する。本発明における端子形成部は第一導体層を有する。さらに、端子形成部において、第一導体層上に第三導体層が形成される。
【0049】
本発明において、第三導体層は、通常、第一導体層を補強する層である。中でも、本発明においては、第三導体層が、第二導体層と同一の材料からなる層であることが好ましい。この場合、さらに、第三導体層は第二導体層と同時に形成されたものであることが好ましい。第二導体層の形成と同時に、第三導体層を形成することで、端子形成部における第一導体層の機械的強度を容易に向上させることができるからである。なお、この場合の第三導体層は、通常、第二導体層とは断線しており、電気的に接続されていない層である。
【0050】
図6は、本発明における端子形成部の一例を示す概略断面図である。図6に示される端子形成部12は第一導体層3aを有し、さらに、第一導体層3a上に第三導体層103が形成されている。さらに、図6に示される端子形成部12は、第一導体層3aおよび第三導体層103の間に、シード層4、拡散防止層5および密着性向上層8を有する。また、第一導体層3aおよび第三導体層103の露出表面には、それぞれ配線めっき層7が形成されている。
【0051】
なお、第三導体層103の厚さは、特に限定されるものではないが、第二導体層3bを形成する工程で、同時に第三導体層103を形成する場合は、通常、第二導体層3bの厚さと同じになる。
【0052】
密着性向上層8は、主に、第一導体層3aおよび第三導体層103の密着性を向上させる層である。両者の密着性を向上させることで、接続信頼性に優れた端子形成部とすることができる。また、密着性向上層8を構成する金属として、第一導体層3aを構成する金属よりも硬度および/または引張り強度の高いものを用いることで、端子形成部12の機械的強度をさらに向上させることができる。さらに、後述するように、密着性向上層8は、エッチング液による第一導体層3aの劣化を防止することもできる。密着性向上層8は、通常、金属めっき層であり、具体的には、Cr、Ni、Zn、Pd、Ag、Sn、Ti、Auからなる群から選択される少なくとも一種の金属を含む金属めっき層を挙げることができ、中でもNiめっき層であることが好ましい。安価であり、充分な密着性を発揮することができるからである。密着性向上層8の形成方法としては、例えば電解めっき法および無電解めっき法等を挙げることができ、中でも電解めっき法が好ましい。また、密着性向上層8の厚さとしては、例えば、0.05μm〜5.0μmの範囲内、中でも0.1μm〜2.0μmの範囲内であることが好ましい。密着性向上層8の厚さが小さすぎると、充分な密着性を発揮できない可能性があり、密着性向上層8の厚さが大きすぎると、電気特性が悪くなる可能性があるからである。なお、電気特性が悪くなる理由は、密着性向上層8は、通常、第一導体層3aよりも導電性が劣るためである。
【0053】
また、端子形成部12における第一導体層3aおよび第三導体層103の形状は特に限定されるものではない。その形状の一例としては、上述した図2に示すように、リード状を挙げることができる。また、本発明においては、例えば図7(a)、(b)に示すように、開口部15の端部に、第一導体層3aおよび第三導体層103が形成されていても良い。なお、図7(b)は図7(a)のA−A断面図である。図7(b)の端子形成部12における第一導体層3aの長さXは、特に限定されるものではないが、例えば10μm〜1.5mmの範囲内、中でも30μm〜1.0mmの範囲内である。また、開口部15の平面視形状は、例えば、鍵穴状、円状、楕円状、矩形状等を挙げることができる。なお、図7に示される端子形成部12は、第一導体層3a用の端子形成部であるため、通常は、第二導体層3b用の端子形成部を別途設ける必要がある。一方、上述した図2に示される端子形成部12は、第一導体層3aおよび第二導体層3bの共同の端子形成部である。本発明においては、第一導体層3aを有する端子形成部12において、第三導体層103が形成される。
【0054】
本発明においては、端子形成部12の第一導体層3a上に第三導体層103を形成するが、上述したように、第二導体層3bを形成すると同時に第三導体層103を形成することが好ましい。さらにこの場合、端子形成部12における第二導体層3bを形成する部分に、第一導体層と同一の材料からなり、上記第一導体層とは電気的に接続されていない第四導体層を設けておくことが好ましい。端子形成部12における第一導体層3aのみならず、端子形成部12における第二導体層3bの機械的強度も容易に向上させることができるからである。具体的には、図8に示すように、端子形成部12における第二導体層3bを形成する部分に、第四導体層103aを設けておくことが好ましい。なお、第四導体層103aは、例えば第一導体層の形成と同時に形成することができる。
【0055】
さらに、端子形成部12を形成する際、通常は、端子形成部12の下に位置する第一絶縁層2aの除去を行う。第一絶縁層2aの除去により、図8においては、第一導体層3aおよび第四導体層103aの裏面が露出し、これらの露出面には、拡散防止層やシード層が残留する場合がある。例えば第一導体層3aおよび第四導体層103aの形成を同時に行う場合、第一導体層3aおよび第四導体層103aには、同一の拡散防止層やシード層が残留する場合がある。これらの層は、配線めっき層(図示せず)の密着性を低下させる要因となることから、エッチングにより除去することが好ましい。一方、図2においては、端子形成部12の下に位置する第一絶縁層2aを除去すると、第一導体層3aおよび第二導体層3bの裏面が露出する。この場合、第一導体層3a側のみならず、第二導体層3b側の拡散防止層等についても、配線めっき層(図示せず)の密着性を低下させる要因となることから、エッチングにより除去することが好ましい。
【0056】
また、本発明においては、図9に示すように、端子形成部12が下部導体層103bを有し、端子形成部12において、下部導体層103b上に第三導体層103が形成されていることが好ましい。下部導体層103bの機械的強度を容易に向上させることができるからである。なお、図9は、下部導体層103bをグランド配線として用いた場合を示している。また、本発明においては、下部導体層103bをライト配線またはリード配線として用いることもできる。図10に示される端子形成部12では、第一導体層3aおよび第二導体層3bからなるライト配線3xと、2つの下部導体層103bからなるリード配線3yとが形成されている。また、下部導体層103bおよび第三導体層103の間には、上述したシード層、拡散防止層および密着性向上層の少なくとも一つが形成されていても良い。
【0057】
本発明においては、上述した図3に示すように、第三導体層103が、中間部14における第二絶縁層2bの表面に接触するように形成されていることが好ましい。端子形成部12における第一導体層3aの機械的強度をさらに向上させることができるからである。なお、本発明においては、図11(a)に示すように、端子形成部12のみに第三導体層103が形成されていても良い。また、図11(b)に示すように、第三導体層103は、第二絶縁層2b(およびカバー層6)に対して、落ち込み部Aを形成するように設けられていても良い。例えば、半田ボールにより接続を行う場合、溶融した半田が落ち込み部Aに流れることによって固定化され、接続信頼性の向上を図ることができるからである。
【0058】
さらに、本発明においては、端子形成部12における第三導体層103に、半田との接着面積を増加させる処理がなされていることが好ましい。接続信頼性の向上を図ることができるからである。このような処理を行った第三導体層103としては、例えば、表面に凹凸部を有するもの、第三導体層を貫通する貫通部を有するもの等を挙げることができる。貫通部を有する第三導体層としては、例えば図12に記載するように、貫通部Aを有し、柱状に加工された第三導体層103を挙げることができる。なお、柱状の第三導体層103の平面視形状は特に限定されるものではなく、例えば円状、楕円状、矩形状等を挙げることができる。また、貫通部を有する第三導体層の他の例として、半田が流れる流路となる貫通部を有するもの等を挙げることができる。
【0059】
3.中間部
次に、本発明における中間部について説明する。本発明における中間部は、上述した配線形成部および端子形成部の間に、連続的に形成される部分である。また、本発明における中間部では、通常、第一導体層3aおよび第二導体層3bが、それぞれ端子形成部に向かうために分岐している。
【0060】
4.配線回路基板
本発明の配線回路基板は、可撓性を有するフレキシブルプリント基板であることが好ましい。さらに、フレキシブルプリント基板の中でも、本発明の配線回路基板は、サスペンション用基板、またはサスペンション用基板に接続される中継基板であることが好ましい。ハードディスクドライブの部品として有用だからである。
【0061】
また、本発明の配線回路基板は、端子形成部において、第一導体層上に、第三導体層が形成されていることを特徴の一つとする。例えば本発明の配線回路基板がサスペンション用基板である場合、リード配線およびライト配線の少なくとも一方で、上記第三導体層が形成されていれば良く、リード配線およびライト配線の両方で、上記第三導体層が形成されていることが好ましい。より接続信頼性に優れたサスペンション用基板とすることができるからである。
【0062】
また、本発明の配線回路基板がサスペンション用基板である場合、上述した図1に示すように、一方の先端部分に、磁気ヘッドスライダ等を搭載するジンバル部11を有する。図13は、本発明におけるジンバル部の一例を説明する説明図である。図13(a)はジンバル部の概略平面図であり、図13(b)は図13(a)のA−A断面図であり、図13(c)は図13(a)のB−B断面図である。図13(a)に示すように、ジンバル部11の端部には、ライト配線3xを構成する第一導体層3aおよび第二導体層3bと、リード配線3yを構成する第一導体層3aおよび第二導体層3bとが配置されている。また、図13(b)に示すように、第二導体層3bは、ジンバル11の手前で、第一絶縁層2aの形成面に向かって折れ曲がる折れ曲がり部16を有し、第一絶縁層2aの表面に沿って、ジンバル部11に至る。一方、図13(c)に示すように、第一導体層3aは折れ曲がり部を有さず、そのまま第一絶縁層2aの表面に沿って、ジンバル部に至る。
【0063】
5.配線回路基板の製造方法
次に、本発明の配線回路基板の製造方法について説明する。本発明の配線回路基板の製造方法は、上述した配線回路基板を得ることができる方法であれば特に限定されるものではない。
【0064】
図14は、本発明の配線回路基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。図14に示される配線回路基板の製造方法においては、まず、金属基板1A(例えばステンレススティール)、第一絶縁層2A(例えばポリイミド)および第一導体層3A(例えば銅)がこの順に積層された積層体を用意する(図14(a))。次に、第一導体層3Aの表面にドライフィルムレジストをラミネートし、露光現像を行うことにより、レジストパターンを形成し、同様に、金属基板1Aの表面にもレジストパターンを形成する。その後、レジストパターンから露出する第一導体層3Aおよび金属基板1Aをウェットエッチングし、エッチング後にレジストパターンを剥離することにより、第一導体層3aおよび金属基板1を形成する(図14(b))。なお、図14(b)には、第一導体層3Aのエッチングされる状況が示されていないが、図示しない箇所の加工を行っている。
【0065】
その後、第一導体層3aの表面上に、ポリイミドを塗布、加工することによって第二絶縁層2bを形成する(図14(c))。次に、第二絶縁層2bおよび第一導体層3aの表面上に、スパッタリング法により拡散防止層5(例えばCr薄膜層)を全面形成する(図14(d))。次に、拡散防止層5の表面上に、スパッタリング法によりシード層4(例えばCu薄膜層)を全面形成する(図14(e))。
【0066】
その後、シード層4の表面上に、ドライフィルムレジストをラミネートし、露光現像を行うことにより、レジストパターンを形成し、電解めっきを行うことにより、第三導体層103(例えば電解Cu層)を形成する(図14(f))。この際、第二導体層3bを同時に形成しても良い。次に、レジストパターンを剥離し、第三導体層103および第二導体層3bが形成されていない部分の不要なシード層4および拡散防止層5を、ウェットエッチングにより除去する(図14(g))。次に、第三導体層103および第二導体層3bが形成されている側の基板表面に、ポリイミドを塗布、加工することによってカバー層6を形成する(図14(h))。次に、端子形成部12を形成する部分の第一絶縁層2Aをウェットエッチングにより除去し、第一絶縁層2aを得る(図14(i))。最後に、端子形成部12において露出する第一導体層3aおよび第三導体層103の表面に、NiめっきおよびAuめっきを行うことにより、配線めっき層7を形成し、本発明の配線回路基板を得る。
【0067】
図15は、本発明の配線回路基板の製造方法の他の例を示す概略断面図である。具体的には、上述した密着性向上層を有する配線回路基板を製造する方法を示すものである。図15に示される配線回路基板の製造方法においては、図15(d)において、第二絶縁層2bから露出する第一導体層3aの表面上に、密着性向上層8を設けたこと以外は、図14に記載した配線回路基板の製造方法と同様である。具体的には、第一導体層3aを給電層として電解めっきを行うことにより、密着性向上層8(例えばNiめっき層)を形成することができる。このような密着性向上層8を設けることにより、第一導体層3aと第三導体層103との密着性を向上でき、機械的強度の向上を図ることができる。
【0068】
また、このような密着性向上層8を設けることにより、以下のような利点もある。すなわち、図15(g)に示すように、電解めっきにより第三導体層103を形成する際に、レジストパターンの位置精度の関係で、第一導体層3aの表面上に、第三導体層103が形成されない領域Aが生じる場合がある。その後、不要なシード層4および拡散防止層5をウェットエッチングにより除去する際に、密着性向上層8が存在しないと、上述した図14(g)のように、第一導体層3aの一部が露出し、その露出部分が、ウェットエッチングに用いられるエッチング液によって劣化してしまうという可能性がある。これに対して、図15(h)に示すように、密着性向上層8が第一導体層3aの表面上に存在していれば、エッチング液による劣化を防止することができる。
【0069】
図16は、本発明の配線回路基板の製造方法のさらに他の例を示す概略断面図である。具体的には、密着性向上層の形成方法の他の例を示すものである。上述した図15では、図15(d)に示すように、第二絶縁層2bを形成した後に密着性向上層8を形成したが、図16では、図16(c)に示すように、第一導体層3aの形成後であって、第二絶縁層2bの形成前に、密着性向上層8を形成することができる。図16における密着性向上層8の形成方法は、図15における密着性向上層8の形成方法に比べて、端子形成部以外の領域にも金属めっき層(密着性向上層)を形成するため、端子形成部以外の領域に、第一導体層3aから第二絶縁層2bへの金属粒子の拡散を防止するバリア性を付与でき、密着力の低下を防げるという利点を有する。なお、この場合は、端子形成部12のみならず、上述した配線形成部13および中間部14においても、密着性向上層8が形成されることになる。
【0070】
B.サスペンション
次に、本発明のサスペンションについて説明する。本発明のサスペンションは、上述した配線回路基板を含むことを特徴とするものである。
【0071】
図17は、本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。図17に示されるサスペンション40は、上述した配線回路基板20と、ジンバル部11が形成されている表面とは反対側の配線回路基板20の表面に備え付けられたロードビーム30とを有するものである。
【0072】
本発明によれば、上述した配線回路基板を用いることで、耐久性に優れたサスペンションとすることができる。
【0073】
本発明のサスペンションは、少なくとも配線回路基板を有し、通常は、さらにロードビームを有する。配線回路基板については、上記「A.配線回路基板」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、ロードビームは、一般的なサスペンションに用いられるロードビームと同様のものを用いることができる。
【0074】
C.ヘッド付サスペンション
次に、本発明のヘッド付サスペンションについて説明する。本発明のヘッド付サスペンションは、上述したサスペンションと、上記サスペンションに実装された磁気ヘッドスライダとを有するものである。
【0075】
図18は、本発明のヘッド付サスペンションの一例を示す概略平面図である。図18に示されるヘッド付サスペンション50は、上述したサスペンション40と、サスペンション40のジンバル部11に実装された磁気ヘッドスライダ41とを有するものである。
【0076】
本発明によれば、上述したサスペンションを用いることで、耐久性に優れたヘッド付サスペンションとすることができる。
【0077】
本発明のヘッド付サスペンションは、少なくともサスペンションおよび磁気ヘッドスライダを有するものである。サスペンションについては、上記「B.サスペンション」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、磁気ヘッドスライダは、一般的なヘッド付サスペンションに用いられる磁気ヘッドスライダと同様のものを用いることができる。
【0078】
D.ハードディスクドライブ
次に、本発明のハードディスクドライブについて説明する。本発明のハードディスクドライブは、上述したヘッド付サスペンションを含むことを特徴とするものである。
【0079】
図19は、本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略平面図である。図19に示されるハードディスクドライブ60は、上述したヘッド付サスペンション50と、ヘッド付サスペンション50がデータの書き込みおよび読み込みを行うディスク61と、ディスク61を回転させるスピンドルモータ62と、ヘッド付サスペンション50に接続されたアーム63と、ヘッド付サスペンション50の磁気ヘッドスライダを移動させるボイスコイルモータ64と、上記の部材を密閉するケース65とを有するものである。
【0080】
本発明によれば、上述したヘッド付サスペンションを用いることで、耐久性に優れたハードディスクドライブとすることができる。
【0081】
本発明のハードディスクドライブは、少なくともヘッド付サスペンションを有し、通常は、さらにディスク、スピンドルモータ、アームおよびボイスコイルモータを有する。ヘッド付サスペンションについては、上記「C.ヘッド付サスペンション」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、その他の部材についても、一般的なハードディスクドライブに用いられる部材と同様のものを用いることができる。
【0082】
E.配線回路基板の製造方法
次に、本発明の配線回路基板の製造方法について説明する。本発明の配線回路基板の製造方法は、上述した配線回路基板の製造方法であって、上記端子形成部が形成される位置に、少なくとも上記第一導体層を有する処理用部材を準備する準備工程と、上記処理用部材に対して、めっき法により、上記第三導体層を形成する第三導体層形成工程と、を有することを特徴とするものである。
【0083】
本発明によれば、上記処理用部材の第一導体層上に、第三導体層を形成することにより、端子形成部における導体層(特に第一導体層)の機械的強度に優れた配線回路基板を得ることができる。
【0084】
本発明における準備工程は、上記処理用部材を準備する工程である。処理用部材は、通常、第三導体層を形成する前の部材である。このような処理用部材としては、例えば、上述した図14(e)に示す部材、および図15(f)に示す部材などを挙げることができる。中でも、本発明においては、図15(f)に示すように、処理用部材が、端子形成部が形成される位置の第一導体層3aの表面上に、金属めっきからなる密着性向上層8を有することが好ましい。第一導体層および第三導体層の密着性が向上し、接続信頼性に優れた端子形成部を得ることができるからである。なお、処理用部材の製造方法は、所望の処理用部材を得ることができる方法であれば特に限定されるものではなく、図14(a)のような積層体(三層材)を出発材料として用いる方法であっても良く、その他の方法であっても良い。
【0085】
また、本発明における第三導体層形成工程は、上記処理用部材に対して、めっき法により、上記第三導体層を形成する工程である。第三導体層の形成方法については、上述した「A.配線回路基板」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0086】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0088】
[実施例1]
まず、図14(a)に示す積層材を用意した。ここで、金属基板1Aは厚さ20μmのSUS304であり、第一絶縁層2Aは厚さ10μmのポリイミドであり、第一導体層3Aは厚さ5μmの電解Cuであった。次に、図14(b)に示すように、積層材のエッチングを行い、図14(c)に示すように、第二絶縁層2b(ポリイミド、厚さ10μm)を形成した。次に、図14(d)、(e)に示すように、スパッタリング法により、拡散防止層5(Cr薄膜層、厚さ0.06μm)およびシード層4(Cu薄膜層、厚さ0.3μm)を全面形成した。
【0089】
その後、シード層4の表面に所定のレジストパターンを作製し、図14(f)に示すように、電解銅めっきにより、第三導体層103(厚さ5μm)を形成した。次に、レジストパターンを剥離し、図14(g)に示すように、不要なシード層4および拡散防止層5をウェットエッチングにより除去し、図14(h)に示すように、カバー層6(ポリイミド、厚さ5μm)を形成し、図14(i)に示すように、端子形成部12を形成する位置の第一絶縁層2Aをウェットエッチングにより除去した。次に、ウェットエッチングにより露出した第一導体層3aの表面に残留するシード層や拡散層防止層をエッチングにより除去した。最後に、図14(j)に示すように、端子形成部12において露出する第一導体層3a、および第一導体層3aを給電層とした第三導体層103の表面に、Niめっき(厚さ0.2μm)およびAuめっき(厚さ2.5μm)を行うことにより、配線めっき層7を形成し、配線回路基板を得た。
【0090】
[実施例2]
図15(d)に示すように、第二絶縁層2bの形成後であって、拡散防止層5の形成前に、電解Niめっきにより第一導体層3aの表面上に、密着性向上層8(厚さ0.2μm)を形成したこと以外は実施例1と同様にして、配線回路基板を得た。
【0091】
[評価]
実施例1、2で得られた配線回路基板20の端子形成部12に対して、テープピール試験を実施した。使用したテープ(寺岡製作所製)は、厚さ0.085mm、粘着力17.16N(gf)/25mmであった。このテープを、端子形成部12の第三導体層103側の表面に貼着し、その後テープを剥離した。この際、剥離したテープの表面に、第三導体層103が残留していない場合を密着性良好と判断し、第三導体層103が残留している場合を密着性不良と判断した。
【0092】
その結果、実施例1では、100個のサンプルに対して95個が密着性良好であり、実施例2では、100個のサンプルに対して、100個が密着性良好であった。以上のことから、密着性向上層を設けることにより、第一導体層および第三導体層の密着性を向上させることができることが確認された。
【符号の説明】
【0093】
1…金属基板、1A…(加工前の)金属基板、2a…第一絶縁層、2b…第二絶縁層、2A…(加工前の)第一絶縁層、3x…ライト配線、3y…リード配線、3a…第一導体層、3b…第二導体層、3A…(加工前の)第一導体層、4…シード層、5…拡散防止層、6…カバー層、7…配線めっき層、8…密着性向上層、11…ジンバル部、12…端子形成部、13…配線形成部、14…中間部、15…開口部、16…折れ曲がり部、20…配線回路基板、30…ロードビーム、40…サスペンション、41…磁気ヘッドスライダ、50…ヘッド付サスペンション、60…ハードディスクドライブ、61…ディスク、62…スピンドルモータ、63…アーム、64…ボイスコイルモータ、65…ケース、103…第三導体層、103a…第四導体層、103b…下部導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線形成部と、外部回路に接続するための端子形成部と、前記配線形成部および前記端子形成部の間に連続的に形成された中間部とを有し、
前記配線形成部は、第一絶縁層と、前記第一絶縁層上に形成された第一導体層と、前記第一導体層上に形成された第二絶縁層と、前記第二絶縁層上に、前記第一導体層と厚さ方向において重複するように形成された第二導体層とを有し、
前記端子形成部は、前記第一導体層を有し、
前記端子形成部において、前記第一導体層上に、第三導体層が形成されていることを特徴とする配線回路基板。
【請求項2】
前記第三導体層が、前記第二導体層と同一の材料からなる層であることを特徴とする請求項1に記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記第一導体層および前記第三導体層の間に、金属めっきからなる密着性向上層が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記密着性向上層が、Niめっき層であることを特徴とする請求項3に記載の配線回路基板。
【請求項5】
前記第三導体層が、前記中間部における前記第二絶縁層の表面に接触するように形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の配線回路基板。
【請求項6】
前記端子形成部における前記第三導体層に、半田との接着面積を増加させる処理がなされていることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の配線回路基板。
【請求項7】
前記配線形成部は、前記第一絶縁層上に形成された一または二以上の下部導体層を有し、
前記端子形成部は、前記下部導体層を有し、
前記端子形成部において、前記下部導体上に前記第三導体層が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の配線回路基板。
【請求項8】
サスペンション用基板であることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載の配線回路基板。
【請求項9】
請求項8に記載の配線回路基板を含むことを特徴とするサスペンション。
【請求項10】
請求項9に記載のサスペンションと、前記サスペンションに実装された磁気ヘッドスライダと、を有することを特徴とするヘッド付サスペンション。
【請求項11】
請求項10に記載のヘッド付サスペンションを含むことを特徴とするハードディスクドライブ。
【請求項12】
配線形成部と、外部回路に接続するための端子形成部と、前記配線形成部および前記端子形成部の間に連続的に形成された中間部とを有し、
前記配線形成部は、第一絶縁層と、前記第一絶縁層上に形成された第一導体層と、前記第一導体層上に形成された第二絶縁層と、前記第二絶縁層上に、前記第一導体層と厚さ方向において重複するように形成された第二導体層とを有し、
前記端子形成部は、前記第一導体層を有し、
前記端子形成部において、前記第一導体層上に、第三導体層が形成されている配線回路基板の製造方法であって、
前記端子形成部が形成される位置に、少なくとも前記第一導体層を有する処理用部材を準備する準備工程と、
前記処理用部材に対して、めっき法により、前記第三導体層を形成する第三導体層形成工程と、
を有することを特徴とする配線回路基板の製造方法。
【請求項13】
前記処理用部材が、前記端子形成部が形成される位置の前記第一導体層の表面上に、金属めっきからなる密着性向上層を有することを特徴とする請求項12に記載の配線回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−82302(P2011−82302A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232535(P2009−232535)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】