説明

配線基板の製造方法および配線基板

【課題】微細穴における導電膜を効率よく形成することで、配線基板の生産性を向上させる。
【解決手段】基板101の表面に第1電極103を形成する。また、基板101に第2電極104を底部とする微細穴としてのスルーホール106を形成する。スルーホール106は、走査方向と平行な方向に延びる長穴に形成する。次に、基板101に対して吐出ヘッド110を相対的に走査して、吐出ヘッド110により導電性材料を含有する液体107をスルーホール106に吐出する。次に、液体107を固化させて第1電極103と第2電極104とを導通させる導電膜108を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に形成された第1電極と基板の裏面又は内部に形成された第2電極とを微細穴を通じて導通させる配線基板の製造方法および配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、配線基板は、導電層をパターニングすることにより、配線あるいは電極等が形成されることによって作製される。近年、多くのデバイスにおいて高精細化への開発が盛んになってきている。それに伴い、配線基板の小型化、高密度化が求められている。そのため、高精細なパターニング法としては、高精度の開口部を有するフォトマスクを利用したフォトリソグラフィが一般に適用されている。しかし、この方法は、成膜、レジストパターニング、エッチング、剥離工程など様々な工程が必要であり生産性に問題がある。また、それに伴い材料等の使用効率も低い等の製造コストの面でも課題がある。
【0003】
そこで、配線基板における配線形成の方法として、導電性を有する導電性材料としての金属材料を含む液体を吐出して導電層を形成する液体吐出法(いわゆるインクジェット法)が注目されている。インクジェット法による配線形成は、液体吐出装置を用いて金属材料を含有する液体を基板上の目的箇所に塗布し、その後焼成することにより、金属配線を形成することにより行なわれる。
【0004】
この液体としては、金属材料を溶媒中に分散させることにより作製されたインクを利用することが多い。このように液体吐出装置を用いた配線形成は、フォトマスク等を利用せず直接にパターニングできるため、生産効率の面で非常に優位である。
【0005】
また、配線基板においては配線を高密度に配置する方法として多層化技術が一般に用いられている。多層化配線技術の一つに基板表裏面の層間を電気的に接続する手法がある。一般に、この接続方法として、基板に微細穴であるスルーホールを形成し、このスルーホールに導電膜を形成することにより基板の表裏面に形成した第1電極及び第2電極を電気的に接続する方法が知られている。
【0006】
そして、スルーホールに導電膜を形成する形成方法としては、スルーホールのアスペクト比が比較的小さい場合には、スパッター法や蒸着法等のドライプロセスによってスルーホール内に導電膜を形成することが可能である。しかし、スルーホールのアスペクト比が高い場合、上記のドライプロセスでは、スルーホールの側壁部に導電性を確保する為の十分な導電膜を形成することが極めて困難である。そこで、ドライプロセスによりスルーホールの内面にシード層を形成した後、メッキにより導電部を成長させるという方法が取られている(特許文献1参照)。特に、スパッター法など指向性のある成膜法により細孔の内壁にシード層を形成する方法としては、スルーホールの形状に応じた入射角度によって成膜粒子を入射させることになる。
【0007】
しかし、メッキにより高アスペクト比のスルーホールに対して導電膜を形成するには、微細孔開口部付近の電解集中及びそれに起因する不均一な層析出を抑制させる必要がある。そのためには、析出を抑制する添加剤を加える、メッキ処理時の投入電流を低くするなどの対策がとられるが、それらは逆に処理時間の長時間化を引き起こしてしまい、生産性に問題があった。
【0008】
これに対し、インクジェット法でスルーホールを埋めて導通を取る技術が開示されている。ここではスルーホール内壁をインクが流動して膜が形成され、上下電極が導通するというメカニズムが記載されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−167062号公報
【特許文献2】特開2008−294244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、高アスペクト比のスルーホールを有する配線基板に対しては、インクジェット法により導電性材料を直接スルーホールに吐出する手法をとることが考えられる。この場合、通常、基板には多数のスルーホールが形成されているので、各スルーホールに液体を吐出するために、基板又は吐出ヘッドを移動させて吐出ヘッドを基板に対して相対的に走査させることが考えられる。その際、吐出ヘッドより吐出された液体は、吐出ヘッドを基板に対して相対的に走査しているので、スルーホールの側壁部に着弾することとなる。
【0011】
しかし、生産性を向上させるために吐出ヘッドの走査速度を上昇させると、液体がスルーホールの側壁部の開口端側に着弾してしまい、液体が底部の第2電極まで濡れ広がらずにスルーホールの外部に流出して導電膜の形成不良が発生してしまう。これに対し、液体の吐出タイミングを早めたとしても、スルーホールに着弾せずに基板の表面に着弾してしまうため、走査速度を上昇させて生産性の向上を図るには限界があった。
【0012】
また、平面視円形のスルーホールの開口端へ導電性粒子インクをインクジェット法で打ち込むと、塗れ広がりで分散するが、スルーホールの開口端から外部に分散する液量が多くなる。その結果、図6のように側壁面での膜厚が薄くなる部分601が生じ、導通不良が発生することもあった。
【0013】
そこで、本発明は、微細穴における導電膜を効率よく形成することで、配線基板の生産性を向上させることができる配線基板の製造方法および配線基板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の配線基板の製造方法は、表面に第1電極が形成された基板に第2電極を底部とする微細穴を形成する微細穴形成工程と、吐出ヘッドにより導電性材料を含有する液体を前記微細穴に吐出する液体吐出工程と、前記液体を固化させて前記第1電極と前記第2電極とを導通させる導電膜を形成する導電膜形成工程と、を備えた配線基板の製造方法において、前記液体吐出工程では、前記吐出ヘッドを前記基板に対して相対的に走査しながら前記微細穴に前記液体を吐出し、前記微細穴形成工程では、前記微細穴を、前記吐出ヘッドの走査方向と平行な方向に延びる長穴に形成したことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の配線基板は、表面に第1電極が形成された基板に第2電極を底部とする微細穴が形成され、前記第1電極と前記第2電極とを導通させる導電膜を備え、前記導電膜が導電性材料を含有する液体を固化させて形成されている配線基板において、前記微細穴は、前記表面と平行方向の断面形状が長辺と短辺を有する長穴となるように形成されており、前記微細穴の長辺方向の一端部に、前記導電膜が形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の配線基板は、表面に第1電極が形成された基板に第2電極を底部とする微細穴が形成され、前記第1電極と前記第2電極とを導通させる導電膜を備え、前記導電膜が導電性材料を含有する液体を固化させて形成されている配線基板において、前記微細穴は、前記微細穴の底部から開口端に向かって延びる凹部を有し、前記凹部に前記導電膜が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、微細穴を長穴に形成したので、微細穴の底部又は側壁部の底部側に導電性材料を含有する液体を着弾させることができる。したがって、液体が第1電極と第2電極とに接触するように微細穴で濡れ広がり、導電膜の断線が防止され、第1電極と第2電極との導通不良を防止することができる。
【0018】
また、微細穴に底部から開口端に向かって延びる凹部を形成したので、導電膜となる液体が凹部に集まりやすくなり、導電膜の断線が防止され、第1電極と第2電極との導通不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る配線基板の製造方法に関する各工程を示す説明図であり、(a)は微細穴形成工程における基板の断面図、(b)は微細穴形成工程における基板の平面図である。(c)は別の例の基板の平面図、(d)は更に別の例の基板の平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る配線基板の製造方法に関する各工程を示す説明図であり、(a)は液体吐出工程における基板の断面図、(b)は導電膜形成工程における基板の断面図、(c)は液体吐出工程における基板の平面図である。
【図3】本発明の別の実施形態に係る配線基板を示す説明図であり、(a)は配線基板の平面図、(b)は配線基板の断面図である。
【図4】本発明の実施例における配線基板の製造方法に関する各工程を示す説明図であり、(a)は液体吐出工程における基板の断面図、(b)は導電膜形成工程における基板の断面図、(c)は液体吐出工程における基板の平面図である。
【図5】比較例における配線基板の製造方法に関する各工程を示す説明図であり、(a)は液体吐出工程における基板の断面図、(b)は導電膜形成工程における基板の断面図、(c)は液体吐出工程における基板の平面図である。
【図6】比較例における配線基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1及び図2は、本発明の実施の形態に係る配線基板の製造方法に関する各工程を示す説明図である。図1(a)に示すように、基板101の表面には、第1電極103が形成され、基板101の裏面には、第2電極104が形成されている。第1電極103及び第2電極104は、Au、Pt、Ag、Al、Cu、Ti、Cr、Ni又はそれらの合金等を用いることができる。なお、基板101の表面とは、後述する微細穴であるスルーホール106が開口する側の面であり、基板101の裏面とは、スルーホール106が開口する側の面とは反対側の面である。
【0021】
この基板101には、微細穴であるスルーホール106が複数形成される(微細穴形成工程)。これにより、スルーホール106の底部が第2電極104となる。本実施の形態では、第2電極104はスルーホール106の下部を塞ぐように形成されている。なお、第2電極104は、この図1(a)に示すように、スルーホール106の底部全体を塞いでいなくてもよく、底部の一部を塞ぐように形成されていてもよい。各スルーホール106は、高アスペクト比に形成されている。高アスペクト比とは、アスペクト比が1以上のものをいう。
【0022】
また、本実施の形態では、基板101がシリコン基板である場合について説明するが、基板の種類はガラス、ガラスエポキシ、樹脂基板の何れでもよい。またシリコン基板は、表面に酸化膜102が形成されており、スルーホール106には、樹脂製絶縁膜105が形成される。また、酸化膜102及び第2電極104上に付着した樹脂製絶縁膜は、RIE(Riactive Ion Etching)で除去される。酸化膜102及び樹脂製絶縁膜105は、絶縁膜であれば材料が無機物でも有機物でもよい。なお、基板101が絶縁物で構成されていれば、絶縁膜102,105を形成しなくてもよい。
【0023】
次に、図2(a)に示すように、吐出ヘッド110を基板101に対して相対的に走査しながら、吐出ヘッド110により導電性材料を含有する液体107を各スルーホール106に吐出する(液体吐出工程)。本実施の形態では、基板101を固定し、吐出ヘッド110を基板101の表面に沿って走査するようにしている。吐出ヘッド110より吐出される液体107は、溶媒中に導電性材料を分散させて構成されている、いわゆる導電性粒子インクである。導電性材料は、例えばAg、Au、Pd、Cu又はその合金である。なお、本願における「導電性材料」は、熱処理などの後処理によって導電性を得る材料も含まれる。
【0024】
ここで、本実施の形態では、スルーホール106は、走査方向と平行な方向に延びる長穴となるように形成されている。具体的には、図1(b)〜図1(d)に示すように、スルーホールの、基板表面の形状、及び基板表面と平行方向の断面形状が、縦と横の幅が異なる長穴となるように形成されている。本明細書においては、微細穴(スルーホール)の基板表面の形状及び基板表面と平行方向の断面形状の、一番長い部分の長さを長辺、前記長辺と垂直に交わる方向の長さの中で一番長い部分の長さを短辺と称する。このスルーホール106の形状は、長穴であれば、図1(b)に示すような基板表面の形状、及び基板表面と平行方向の断面形状が、長方形であってもよい。また、図1(c)に示すような、長辺方向の一端部に、凹部109(例えば半円形)を有する長円形であってもよい。つまり、図1(c)に示す凹部109は、円筒面状の凹面に形成されている。
【0025】
また、図1(d)に示すような、長辺方向の両端部に、凹部109(例えば半円形)を有する長円形であってもよい。また、長穴が楕円形であってもよい。また、円形に凹部が形成されている形状であってもよい。このスルーホール106は、平面視、配線密度の低い方に延びて形成されている。例えば、図1(b)〜図1(d)に示すように、第1電極103は、基板表面に形成された配線であり、スルーホール106は、この配線の延びる方向に沿って延びる長穴となるように形成されている。
【0026】
従って図2(a)に示す液体吐出工程では、吐出ヘッド110により吐出された液体107は、基板101に垂直な方向を基準として走査速度に応じた角度だけ斜めに破線矢印で示す方向に飛行して、長穴形状のスルーホール106の底部又は側壁部に着弾する。換言すると、吐出ヘッド110を基板101のスルーホール106の長辺方向と平行な方向に相対的に走査する。そして、スルーホール106の底部又は側壁部の底部側に着弾した液体107は、第1電極103と第2電極104とに接触するまで上下方向に塗れ広がる。ここで、図示は省略しているが、吐出ヘッド110は、隣のスルーホールに走査して、同様に液体107を吐出する。このように吐出ヘッド110を基板101の平面に沿って基板101に対して相対的に走査して、全てのスルーホール106に液体107を吐出する。なお、この液体吐出工程では、吐出ヘッド110を固定して、基板101の方をスルーホール106の長辺方向と平行な方向に移動させて吐出ヘッド110を基板101に対して相対的に走査してもよい。
【0027】
ここで、スルーホール106の側壁部において導電膜を形成しようとする部分には、スルーホール106の底部から開口端に向かって延びる凹部109が形成されており、この凹部109に液体107を着弾させている。この凹部109に着弾した液体107は、凹部109からはみ出した部分が毛細管現象により凹部109に集まり、凹部以外の部分への拡散が抑制されることになる。そして、側壁部に着弾した液体107の大半は、凹部109に沿って一様に濡れ広がる。
【0028】
次に、図2(b)及び図2(c)に示すように、スルーホール106に吐出した液体107を固化させて導電膜108を形成する(導電膜形成工程)。具体的に説明すると、スルーホール106の側壁部に着弾して上下方向に濡れ広がった液体107を乾燥させた後、焼成して導電性粒子インクの焼結体である導電膜108を形成する。この焼成により、電気抵抗値が下がり、基板101の表面の電極104と裏面の電極103とを電気的に接続するコンタクトホールが完成する。なお、図2(c)では、スルーホール106の形状が図1(d)の場合について図示している。
【0029】
以上、本実施の形態によれば、スルーホール106を走査方向に延びる長穴に形成したので、スルーホール106の底部又は側壁部の底部側に液体107を着弾させることができる。したがって、液体107がスルーホール106で濡れ広がった際に第1電極103と第2電極104とに接触させることができる。そして、この状態で導電膜108が形成され、高い歩留まりで配線基板を生産することができる。しかも、スルーホール106を長穴とすることで走査速度を向上させることができるので、配線基板の生産性が向上する。特に、スルーホール106が高アスペクト比の場合に効果的に配線基板の生産性を向上させることができる。
【0030】
また、スルーホール106の底部又は側壁部の底部側に液体107を打ち込むことができ、材料の消費が少なくスループットの高いインクジェット方式で、高歩留まりでコンタクトホールをオンデマンドに形成することが可能になる。
【0031】
また、スルーホール106の長辺方向の一端部に底部から開口端に向かって延びる凹部109を形成したので、導電膜108となる液体107が凹部109に集まりやすくなる。したがって、液体107の凹部109以外への拡散が抑制され、凹部109に沿って液体107が一様に濡れ広がる。したがって、導電膜108の凹部109に対応する部分が他の部分よりも厚くなり、焼成により形成される導電膜108の断線が効果的に防止され、第1電極103と第2電極104との導通不良をより効果的に防止することができる。
【0032】
なお、上記実施の形態では、第2電極104が基板1の裏面に形成される場合について説明したが、裏面に限らず、第2電極が基板の内部に形成されている場合にも適用可能である。その場合、スルーホールは、スルーホールの底部が第2電極となるように、第2電極に対応する位置に形成される。
【0033】
本発明の他の実施形態に係る配線基板について説明する。凹部以外の構成は前述したものと同様で、スルーホールの形状を平面視、凹部を少なくとも一カ所持つことを特徴とするものである。図3(a)に形状の一例の平面図を示す。この図3(a)において、3つのスルーホール306のうち、1つのスルーホール306には、説明の都合上、導電膜308を図示していないが、実際にはこのスルーホール306の凹部309にも導電膜308が形成されている。
【0034】
このスルーホール306には、スルーホール306の底部から開口端に向かって延びる凹部309が形成されている。スルーホール306の凹部309に、前述したのと同様の方法で導電性粒子インクを打ち込むと、表面張力で凹部309にインクが集まってくる。この部分の断面を見てみると、図3(b)のように、導電膜308となるインク層が厚くなる。ゆえに、このインク層を焼結することにより形成された導電膜308は、上下電極103,104の導通が確実に取れる。凹部309は、表面張力でインクが集まってくる形状であればどのような形状でもよいが、例えば、図3(b)に示すように、凹部309をV溝等の溝部に形成するのが好ましい。あるいは、凹部は、曲率が、凹部以外の部分よりも小さくなるように形成することが好ましい。
【0035】
凹部309は、スルーホール306の側壁部に1カ所形成しているが、2カ所以上でも良い。このように凹部をスルーホールの側壁部に2カ所以上形成した場合には、数が増えるほどインクが分散し、凹部でのインク膜厚は減少する。打ち込むインクを増量すれば、インク層膜は厚くなり効果は上がるが、導電性粒子インクが高価なため生産コストが増加する。この時、凹部を持つスルーホールの形状は長円形でなくてもよく、凹部を含めた外周が同一円周内に入っていても良い。これにより、スルーホール内部の凹部に、導電性粒子インクの焼結体である導電膜の厚い部分が確実に形成され、断線確率が低減する。さらに、導電性粒子インクの使用量を抑制できる。よって、配線基板の生産性が向上し、高い歩留まりで配線基板を生産することができる。
【実施例】
【0036】
[実施例1]
本発明に基づく実施例1のコンタクトホールの製造方法について、以下で詳細に説明する。なお、本実施例1では、図1及び図2を参照して説明する。基板101はシリコン基板であり、このシリコン基板の表面に酸化膜102を1μm形成した。微細穴であるスルーホール106は、図1(d)に示すように、平面視長円形とした。スルーホール106は、3列×100個で計300個作製した。各スルーホール106の短径は50μm、長径は80μm、深さは200μmであり、各スルーホール106の底部はシリコン基板の裏面上に形成されたAlパッド電極である第2電極104の裏面となっている。各スルーホール106の形成には、ICP(Inductively Coupled Plasma)Etching法を用いた。Alパッド電極は、アルミニウムを主成分とするシリコンとの合金からなっており、スパッターで400nm堆積しパターニングした。また、各スルーホール106の内面には各スルーホール106を貫通させた後に蒸着で、膜厚500nmの樹脂製絶縁膜105を形成した。また、酸化膜102上と第2電極104上に付着した樹脂製絶縁膜はRIEで除去した。各スルーホール106に図2(a)のように、吐出ヘッド110をスルーホール106の長辺方向(矢印方向)に280mm/秒の速度で走査しながら、Ag粒子インクである液体107を160pl打ち込んだ。このインクは、図2(b)及び図2(c)のように濡れ広がり、この後、220℃で60分間焼成して、導電性粒子インクの焼結体であり電極パターンである導電膜108が形成された。基板表裏にプローバーを当てて各コンタクトホールの電気抵抗値を測定したところ、測定点300カ所全てで抵抗は3Ω以下であった。
【0037】
[実施例2]
本発明による実施例2について図4を参照しながら説明する。本実施例2では、実施例1と同様の方法で、フォトマスクパターンを変えて、図4(a)及び図4(b)の断面図、並びに図4(c)の平面図のように、微細穴であるスルーホール401を平面視長方形の長穴に形成した。スルーホール401は、3列×100個で計300個作製した。各スルーホール401の短辺は50μm、長辺は80μm、深さは200μmであり、各スルーホール401の底部はシリコン基板の裏面上に形成されたAlパッド電極である第2電極104の裏面となっている。各スルーホール401に、図4(a)に示すように、吐出ヘッド110を固定し基板101を矢印の方向へ250mm/秒の速度で走査しながら、Ag粒子インクからなる液体402を160pl打ち込んだ。このインクは、図4(b)及び図4(c)に示すように濡れ広がり、この後、220℃で60分間焼成して、導電性粒子インクの焼結体であり導電パターンである導電膜403が形成された。基板表裏にプローバーを当てて各コンタクトホールの電気抵抗値を測定したところ、測定点300カ所全てで電気抵抗値は3Ω以下であった。
【0038】
[実施例3]
本発明による実施例3について図3を参照しながら説明する。本実施例3では、実施例1と同様の方法で、フォトマスクパターンを変えて、図3(a)平面図のような微細穴であるスルーホール306を平面視で、曲率半径が極小値を持つように形成した。スルーホール306は、3列×100個で計300個作製した。各スルーホール306の円形部分は半径25μm、曲率半径極小部、つまり凹部309は角度90°、深さは200μmのV溝である。各スルーホール306の底部は、実施例1,2と同様にシリコン基板の裏面上に形成されたAlパッド電極である第2電極104の裏面となっている。各スルーホール306に、250mm/秒で走査しながら、Ag粒子インクからなる液体を160pl打ち込んだ。このインクは、図3(a)に示すように曲率半径が極小値を持つ部分、つまりV溝の先端を中心に濡れ広がり、この後、220℃で60分間焼成して、導電性粒子インクの焼結体であり導電パターンである導電膜308が形成された。基板表裏にプローバーを当てて各コンタクトホールの電気抵抗値を測定したところ、測定点300カ所全てで電気抵抗値は3Ω以下であった。
【0039】
[比較例]
次に、比較例について図5を参照しながら説明する。比較例では、実施例1と同様の方法で、フォトマスクパターンを変えて、図5(a)及び図5(b)の断面図、並びに図5(c)の平面図のように、微細穴であるスルーホール501を平面視円形に形成した。スルーホール501は、3列×100個で計300個作製した。
【0040】
各スルーホール501の平面視円形の直径は50μmの細孔であり、各スルーホール501の底部はシリコン基板の裏面上に形成されたAlパッド電極である第2電極104の裏面となっている。各スルーホール501に、図5(a)に示すように、吐出ヘッド110を基板101に対して矢印の方向へ250mm/秒の速度で走査しながら、Ag粒子インクからなる液体502を160pl打ち込んだ。このインクは、図5(b)及び図5(c)に示すように濡れ広がり、この後、220℃で60分間焼成して、導電性粒子インクの焼結体であり導電パターンである導電膜503が形成された。基板表裏にプローバーを当てて各コンタクトホールの電気抵抗値を測定したところ、測定点300カ所で抵抗が3Ω以下のものは220カ所であった。
【0041】
以上、比較例では、電子回路の基板の導通を取るために、基板に明けたスルーホールでアスペクト比が大きくなると、図5(b)に示すように液体がスルーホール501の底部まで塗れ広がらないため導通不良が発生することもあった。また、図6のように、平面視円形のスルーホールの開口端へ導電性粒子インクをインクジェット法で打ち込むと、塗れ広がりで分散するが、スルーホールの開口端から外部に分散する液量が多くなる。その結果、図6のように側壁面での膜厚が薄くなる部分601が生じ、導通不良が発生することもあった。
【0042】
これに対し、実施例1,2では、電子回路の基板の導通を取るために、細孔の形状を密度が低い方へ延長して略長円形又は略長方形にして、長辺方向に走査して液体を吐出した際に、電気抵抗値の低いコンタクトホールが形成された。
【符号の説明】
【0043】
101 基板
103 第1電極
104 第2電極
106 微細穴(スルーホール)
107 液体
108 導電膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に第1電極が形成された基板に第2電極を底部とする微細穴を形成する微細穴形成工程と、吐出ヘッドにより導電性材料を含有する液体を前記微細穴に吐出する液体吐出工程と、前記液体を固化させて前記第1電極と前記第2電極とを導通させる導電膜を形成する導電膜形成工程と、を備えた配線基板の製造方法において、
前記液体吐出工程では、前記吐出ヘッドを前記基板に対して相対的に走査しながら前記微細穴に前記液体を吐出し、
前記微細穴形成工程では、前記微細穴を、前記吐出ヘッドの走査方向と平行な方向に延びる長穴に形成したことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記微細穴形成工程では、前記微細穴の側壁部において前記導電膜を形成する部分に、前記微細穴の底部から開口端に向かって延びる凹部を形成することを特徴とする請求項1記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
表面に第1電極が形成された基板に第2電極を底部とする微細穴が形成され、前記第1電極と前記第2電極とを導通させる導電膜を備え、前記導電膜が導電性材料を含有する液体を固化させて形成されている配線基板において、
前記微細穴は、前記表面と平行方向の断面形状が長辺と短辺を有する長穴となるように形成されており、
前記微細穴の長辺方向の一端部に、前記導電膜が形成されていることを特徴とする配線基板。
【請求項4】
前記微細穴の長辺方向の一端部に、前記微細穴の底部から開口端に向かって延びる凹部が形成されていることを特徴とする請求項3記載の配線基板。
【請求項5】
前記導電膜は、導電性粒子インクの焼結体であることを特徴とする請求項3または4記載の配線基板。
【請求項6】
表面に第1電極が形成された基板に第2電極を底部とする微細穴が形成され、前記第1電極と前記第2電極とを導通させる導電膜を備え、前記導電膜が導電性材料を含有する液体を固化させて形成されている配線基板において、
前記微細穴は、前記微細穴の底部から開口端に向かって延びる凹部を有し、前記凹部に前記導電膜が形成されていることを特徴とする配線基板。
【請求項7】
前記導電膜は、導電性粒子インクの焼結体であることを特徴とする請求項6記載の配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−9849(P2012−9849A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115389(P2011−115389)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】