説明

配線基板及びこれを備えた入力装置

【目的】 本発明の目的は、入力装置の小型化及び低コスト化を図ることが可能な配線基板及びこれを備えた入力装置を提供する。
【構成】 配線基板500は、回転電極710が第1面510に対して略平行に回転しつつ第1面510上を摺動可能である。基板500は、第1面510の摺動軌道上に間隔をあけて設けられ且つ回転電極710が選択的に接触可能なコモン電極721、722及び信号電極731、732と、第1面510上のコモン電極721、722及び信号電極731、732の内側に設けられた固定電極912a、912bと、固定電極912a、912bに接続され且つ固定電極912a、912bからコモン電極721と信号電極732との間を通って外側に延びた引き出し線511、512と、第1面510上のコモン電極721と信号電極732との間に設けられ且つ引き出し線511、512を覆う絶縁性を有するカバー513とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転操作可能な入力装置に関し、特に当該入力装置に備えられる配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の入力装置としては、第1、第2入力装置がある。第1入力装置は、第1面を有する配線基板と、筒状のダイヤルと、ダイヤルの回転に応じて前記第1面に対して略平行に回転しつつ当該第1面上を摺動可能な回転電極とを備えている。配線基板の第1面には、円弧状の複数の信号電極が環状に間隔をあけて設けられ、信号電極の内側にリング状のコモン電極が設けられている。前記回転電極が回転により、コモン電極に接触すると共に、選択的に前記信号電極に接触することにより、パルス信号が出力される(特許文献1参照)。しかし、信号電極とコモン電極とは配線基板の第1面上に半径方向に並列に並んでいるため、第1入力装置の小型化を阻害する要因となっていた。
【0003】
第2入力装置は、第1面を有する配線基板と、筒状のダイヤルと、ダイヤルの回転に応じて前記第1面に対して略平行に回転しつつ当該第1面上を摺動可能な回転電極と、筒状のダイヤル内に配置され且つ配線基板の第1面に向けて移動可能なボタンとを備えている。配線基板の第1面の回転電極の摺動軌道上には、回転電極の回転を検出するための円弧状のコモン電極及び信号電極が環状に間隔をあけて配設されているため、第2入力装置は、第1入力装置に比べて、小型化を図ることができる(特許文献2の段落0022、0049参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平03−26021号公報
【特許文献2】特開2008−97968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
配線基板の第1面のコモン電極及び信号電極の内側には、ボタンの移動を検出するための一対の固定電極が設けられている。この固定電極は、回転電極との接触を避けるために、配線基板にインサート成型され、第1面の裏側の第2面から突出している。このように第2入力装置は、固定電極を配線基板にインサート成型しなければならないため、コスト高になっていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、入力装置の小型化及び低コスト化を図ることが可能な配線基板及びこれを備えた入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の配線基板は、回転電極が第1面に対して略平行に回転しつつ当該第1面上を摺動可能な配線基板である。この基板は、前記第1面の前記回転電極の摺動軌道上に環状に間隔をあけて設けられており且つ前記回転電極が回転により選択的に接触可能な複数の第1固定電極と、前記第1面上の前記第1固定電極の内側に設けられた第2固定電極と、前記第2固定電極に接続されており且つ当該第2固定電極から隣り合う2つの第1固定電極間を通って前記第1固定電極の外側に延びた第1引き出し線と、前記第1面上の前記2つの第1固定電極の間に設けられ且つ少なくとも前記第1引き出し線の前記摺動軌道の部分を覆う絶縁性を有するカバーとを備えている。
【0008】
このような態様の発明による場合、第1、第2固定電極及び第1引き出し線が配線基板の第1面に設けられている。第1引き出し線は、少なくとも回転電極の摺動軌道の部分がカバーにより覆われているので、回転電極と接触する恐れがない。このため、第2固定電極を配線基板にインサート成型したり、配線基板にスルーホールを設けたりする必要がないので、配線基板の低コスト化を図ることができ、その結果として当該配線基板が備えられる入力装置の低コスト化を図ることができる。また、複数の第1固定電極が摺動軌道上に環状に間隔をあけて設けられているので、入力装置の小型化を図ることもできる。
【0009】
前記配線基板は、前記第1面の前記カバーの両隣の少なくとも一方に配設され且つ前記摺動軌道上に位置するダミー電極を更に備えた構成とすることが可能である。この場合、前記ダミー電極と前記カバーとの間の間隔は、前記回転電極の前記第1面に向けて凸の円弧状、半球状又は球状の接触部が、隣り合う前記ダミー電極の端と前記カバーの端とに同時に接触する程度の間隔であることが好ましい。
【0010】
このような態様の発明による場合、回転電極の接触部が、当該回転電極の回転時に隣り合う前記ダミー電極の端と前記カバーの端とに同時に接触するので、当該接触部がカバーに乗り上げたりカバーから第1面に落ちたりする際に生じる衝撃を軽減することができる。よって、前記衝撃により、回転電極を回転させる入力装置の回転操作感に与える影響やガタつきを抑制することができる。
【0011】
前記ダミー電極と前記カバーとの間の間隔は、前記回転電極の接触部が、隣り合う前記ダミー電極の端と前記カバーの端とに同時に接触したとき、当該接触部の頂部が前記第1面に接触しない程度の間隔であることがより好ましい。
【0012】
このような態様の発明による場合、回転電極の接触部が、隣り合う前記ダミー電極の端と前記カバーの端とに同時に接触する際に、当該接触部の頂部が前記第1面に接触しない。よって、接触部がカバーに乗り上げたりカバーから第1面に落ちたりする際に生じる衝撃を更に軽減することができるので、入力装置の回転操作感に与える影響やガタつきを更に抑制することができる。また、カバーが接着剤で配線基板の第1面に接着されている場合には、接着剤がカバーの端からはみ出していることがある。しかし、接触部は、隣り合う前記ダミー電極の端と前記カバーの端とに同時に接触する際に、当該接触部の頂部が前記第1面に接触しないので、接着剤が付着する可能性を低減することができる。
【0013】
前記第1固定電極は、コモン電極及び第1、第2信号電極である構成とすることが可能である。この場合、前記回転電極が回転しつつ、前記コモン電極に接触すると共に、前記第1又は第2信号電極に接触可能になっている。
【0014】
前記配線基板は、前記第1面上の前記第1固定電極の内側に設けられ且つ前記コモン電極に接続された第3固定電極を更に備えた構成とすることが可能である。或いは、前記配線基板は、前記第1面上の前記第1固定電極の内側に設けられた第3固定電極と、前記第3固定電極に接続されており且つ当該第3固定電極から前記2つの第1固定電極間を通って前記第1固定電極の外側に延びた第2引き出し線とを更に備えた構成とすることが可能である。この場合、前記カバーが少なくとも前記第2引き出し線の前記摺動軌道の部分を覆っている。なお、前記第1、第2引き出し線は、異なる2つの第1固定電極間を通って第1固定電極の外側に延びた構成とすることが可能である。この場合、前記第1引き出し線を覆うカバーと、前記第2引き出し線を覆うカバーとが別体である。
【0015】
本発明の入力装置は、上述した何れかの態様の配線基板と、前記配線基板の前記第1面に対して略平行に回転可能に配置された筒状のダイヤルと、前記ダイヤルの回転に応じて前記第1面に対して略平行に回転し、当該第1面の第1固定電極に選択的に接触可能な回転電極と、前記ダイヤル内に配置され、前記第2固定電極に接続された電子部品とを備えている。また、前記入力装置は、前記電子部品に替えて、ボタンと可動電極とを備えた構成とすることが可能である。前記ボタンは、前記ダイヤル内に前記配線基板の第1面に向けて移動自在に設けられている。前記可動電極は、前記ボタンの移動に伴って前記配線基板の第1面に向けて移動することにより、前記第2固定電極に接触可能になっている。
【0016】
前記入力装置は、前記配線基板に固着されており且つ前記ダイヤルを回転自在に軸支するキートップと、前記ダイヤルの回転に応じて前記キートップ周りを回転可能な弾性片とを更に備えた構成とすることが可能である。前記キートップは前記弾性片が弾性接触するリング状の凸凹面を有している。前記凸凹面は複数の凸部及び凹部を有している。前記弾性片が前記凹部のうちの少なくとも一つに嵌合した状態で、前記回転電極の接触部が前記摺動軌道上の前記第1引き出し線上以外の箇所に位置するようになっている。
【0017】
このような発明の態様による場合、前記弾性片が前記凹部の少なくとも一つに嵌合した状態(すなわち、ダイヤルが停止した状態)で、接触部が第1引き出し線に接触しないので、接触部の摺動等により万が一、カバーが剥がれたとしても、接触部と第1引き出し線とが導通した状態となるのを防止できる。
【0018】
前記ダイヤルは原点位置から傾動可能な構成とすることが可能である。この場合、前記第1、第2入力装置は、前記ダイヤルの傾動を検出する傾動検出手段を更に備えている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】本発明の実施の形態に係る入力装置の正面、平面及び右側面を表した概略的斜視図である。
【図1B】ダイヤルを取り外した状態の前記入力装置の正面、平面及び右側面を表した概略的斜視図である。
【図2A】前記入力装置の図1A中の2A-2A断面図である。
【図2B】前記入力装置の図1A中の2B-2B断面図である。
【図3A】前記入力装置の正面、平面及び右側面を表した概略的分解斜視図である。
【図3B】前記入力装置の正面、底面及び右側面を表した概略的分解斜視図である。
【図4A】前記入力装置の配線基板の第1面の第1〜第3固定電極、ダミー電極及びカバーの位置関係を示す概略的平面図である。
【図4B】前記入力装置の配線基板の第1面の第1〜第3固定電極、ダミー電極及びカバーの位置関係の設計変形例を示す概略的平面図である。
【図5】前記入力装置の図4A中の5-5部分断面図である。
【図6】前記入力装置のパルス信号P1、P2とカバーとの位置関係を示す説明図である。
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係る入力装置について図1A〜図6を参照しつつ説明する。ここに掲げる入力装置は、ダイヤル100の回転操作入力、ダイヤル100の原点位置から周囲の四方向に傾動操作入力及びボタン400の初期位置からの押下操作入力が可能な複合操作入力装置である。この入力装置は、ダイヤル100と、キートップ200と、弾性片300と、ボタン400と、配線基板500と、補強板600と、回転検出手段700と、傾動検出手段800と、押下移動検出手段900とを備えている。以下、前記入力装置の各部について説明する。なお、ダイヤル100の前記原点位置は、図2A及び図2Bに示すようにダイヤル100が配線基板500に対して略平行な位置である。ボタン400の初期位置は、図2A及び図2Bに示すようにボタン400が押下移動検出手段900の後述する可動電極911に支持された位置である。
【0021】
ダイヤル100は、図1A〜図3Bに示すように、配線基板500に対して略平行に回転操作可能且つ原点位置から周囲の任意方向に傾倒操作可能な円筒状の樹脂製の成形品である。このダイヤル100は、天板110と、軸部120と、外壁130と、固定板140とを有している。天板110は断面視台形の部位であって、その中央部に円形の孔111が開設されている。この天板110の孔111の下側の内周縁部には円筒状の軸部120が立設されている。この軸部120は孔111に連通しており且つ該孔111よりも外径が大きい孔121を有している。また、軸部120の下面にはリング状の金属板である固定板140が熱かしめ等により取り付けられている。この固定板140の内径は軸部120の孔121の内径と略同じであり、固定板140の外径は軸部120の外径よりも大きくなっている。このため、固定板140の外周縁部が軸部120から外側に突出している。また、天板110の下面の外周縁部には、軸部120よりも高さ寸法の小さい円筒状の外壁130が立設されている。天板110と軸部120と外壁130とが、弾性片300及びキートップ200の後述する軸受け部210の上段部211を収容するリング状の収容空間αを区画している。
【0022】
キートップ200は、図2A〜図3Bに示すように、樹脂製の成形品である。このキートップ200は、軸受け部210と、4つの脚220と、4つのアーム230と、4つの押下部240とを有している。軸受け部210は、配線基板500上に設置された断面形状が略凸字状の円筒である。この軸受け部210は、上段部211と、下段部212とを有している。上段部211には小径孔211aが、下段部212には小径孔211aに連通する大径孔212aが設けられている。上段部211の小径孔211aには、ダイヤル100の軸部120が内嵌されている(すなわち、上段部211が軸部120に外嵌している。)。小径孔211aの内周面の下端部には、配線基板500に対して略直角な垂直面である摺接面211a1が設けられている。この摺接面211a1の径は、ダイヤル100の軸部120の外径よりも若干大きくなっている。ダイヤル100が原点位置であるとき、摺接面211a1がダイヤル100の軸部120に対して若干の隙間を有して略平行に対向配置され、該軸部120を回転自在に軸支している。このようにして軸受け部210の摺接面211a1がダイヤル100を周方向に回転自在に軸支することにより、ダイヤル100の回転時のガタつきを抑制している。また、外部からの振動等がダイヤル100に加わったとしても、ダイヤル100の軸部120が摺接面211a1に当接することにより、当該ダイヤル100のガタつきを抑制している。
【0023】
小径孔211の内周面の摺接面211a1よりも上側部分には、上段部211の断面形状が上方(すなわち、ダイヤル100側)に向けて漸次低減するテーパ面211a2が設けられている。換言すると、テーパ面211a2は、その径が上方に漸次拡径するように傾斜している。このテーパ面211a2により、ダイヤル100が原点位置から周囲の任意方向に傾動したときに、軸部120と軸受け部210の上段部211との干渉を避けている。軸受け部210は、ダイヤル100の回転及び傾動により弾性変形しない剛性を有している。前記剛性については、ダイヤル100の回転及び傾動時に軸受け部210にかかる負荷を考慮して軸受け部210が弾性変形しないように該軸受け部210の素材や厚み寸法が適宜選択設定されている。本実施の形態では、軸受け部210はダイヤル100の回転及び傾動時の負荷によって弾性変形しない程度の厚みを有している。また、軸受け部210の上段部211の外周面は凸凹面211bが設けられている。凸凹面211bは複数の凸部と凹部とを有している。
【0024】
下段部212の大径孔212aの底面(すなわち、小径孔211aの下側の周縁部)は段差部212a1となっている。この大径孔212aの径は、ダイヤル100の固定板140の外径よりも大きくなっている。大径孔212a内にダイヤル100の固定板140が収容され、該固定板140の外周縁部が段差部212a1に当接している。ダイヤル100が原点位置から傾動すると、ダイヤル100の固定板140の傾動方向の反対側の部分が段差部212a1の前記傾動方向の反対側の部分に当接して該ダイヤル100の傾動の支点として機能するようになっている。このため、ダイヤル100の傾動ストロークを安定させることができる。また、下段部212の外周面には、下向き略L字状の脚220が間隔を空けて配設されている。
【0025】
各脚220は、図3A及び図3Bに示すように、梁部221と、取付部222とを有している。梁部221は、軸受け部210の下段部212の外周面から配線基板500に対して略平行(すなわち、放射状)に延設されている。取付部222は梁部221の先端部から垂下された略円柱である。この取付部222が配線基板500及び補強板600の図示しない固着孔を貫通し、当該配線基板500及び補強板600に熱かしめ等により取り付けられている。
【0026】
配線基板500は周知のフレキシブルプリント基板である。配線基板500は、第1面510と、第1面510の裏側の第2面520とを有している。補強板600は金属板である。この補強板600が配線基板500の第2面520に取り付けられ、当該配線基板500を補強している。
【0027】
各アーム230は、図2A〜図3Bに示すように、脚220の梁部221の先端部間に懸架された弾性変形可能な円弧状の板である。各押下部240はアーム230の中央部の上下面に突設された突起である。この押下部240は、ダイヤル100の外壁130の下側であり且つダイヤル100の四つの傾動操作入力方向に対応した位置に配置され、外壁130に下方から当接している。すなわち、押下部240がダイヤル100の前記四つの傾動操作入力方向において当該ダイヤル100の外壁130を下方から支持している。これと共に、軸受け部210の段差部212a1がダイヤル100の固定板140に上方から当接することにより、ダイヤル100の軸部120をキートップ200の軸受け部210の摺接面211a1に対して略平行な状態(すなわち、原点位置)で維持している。この構成により、ダイヤル100の回転操作時のガタつき及び外部からの振動等によるダイヤル100のガタつきを抑制している。上述の通り、ダイヤル100が固定板140の一部を支点として傾動すると、傾動方向側の押下部240がダイヤル100の外壁130に押下され、該押下部240に対応するアーム230が弾性変形するようになっている。
【0028】
弾性片300は、図2A〜図3Bに示すように、プレス成形された金属製の板バネである。この弾性片300は、上端部及び下端部を有する断面視下向き略L字状の取付部310と、この取付部310の下端部の両端に設けられた一対のバネ部320とを有している。取付部310の上端部が天板110の下面に熱かしめ等により取り付けられ、弾性片300が収容空間αのキートップ200の上段部211周りに配置されている。バネ部320は、収容空間αに沿って円弧状に延びる板である。バネ部320の先端部は、キートップ200の凸凹面211bの凹部に沿って円弧状に湾曲している(図1B参照)。バネ部320の先端部の頂部の間の寸法は、キートップ200の凸凹面211bの外径よりも小さくなっている。すなわち、バネ部320の先端部が、キートップ200の凸凹面211bに弾性的に接触している。ダイヤル100が回転すると、バネ部320の先端部がキートップ200の凸凹面211b上を振幅移動し、これによりダイヤル100の回転操作に操作感を付与するようになっている。バネ部320の先端部は、ダイヤル100の停止時に凸凹面211bの凹部に嵌まり込む。
【0029】
回転検出手段700は、図2A〜図5に示すように、回転電極710と、コモン電極721、722と、信号電極731、732とを有している。なお、コモン電極721、722及び信号電極731、732が特許請求の範囲の複数の第1固定電極に相当する。回転電極710は導電性を有する金属板である。回転電極710は、固定部711と、複数の切り下げ片712と、複数の接触部713とを有している。固定部711は、内径が固定板140の内径と略同じであり、外径が固定板140の外径よりも小さいリング状の板体である。固定部711は、固定板140と共に、ダイヤル100の軸部120の下面に熱かしめ等により取り付けられている。切り下げ片712は、固定部711の外周縁部の一部を切り下げて形成されている。接触部713は、切り下げ片712の先端部に設けられ且つ配線基板500に向けて凸の円弧状に湾曲している。ダイヤル100の回転に応じて回転電極710が配線基板500の第1面510に対して略平行に回転し、接触部713が配線基板500の第1面510上を摺動可能になっている。なお、接触部713が摺動することにより、配線基板500の第1面510上に描かれるリング状の軌道が回転電極の摺動軌道となっている。
【0030】
コモン電極721、722及び信号電極731、732は、図5において時計回りに721、732、722、731の順で、配線基板500の第1面510上の前記摺動軌道上に間隔をあけて環状に配設されている。コモン電極721と信号電極732との間の間隔は、コモン電極721、722及び信号電極731、732の他の間の間隔に比べて大きくなっている。コモン電極721は略1/4円弧状の導体であって、GND接続される。コモン電極722は略矩形状の導体であって、GND接続される。信号電極731、732は、略1/4円弧状且つ櫛歯状の導電体であって、配線基板500の第1面510に設けられた図示しない引き出し線に接続されている。前記引き出し線を通じて本入力装置が備えられる電子機器の制御部に接続されている。信号電極731、732には所定の電圧が印加される。電圧が印加された状態で、回転電極710が回転すると、接触部713がコモン電極721、722の何れか一方と信号電極731、732の何れか一方とに略同時に接触し、パルス信号P1、P2が前記引き出し線を通じて出力される。
【0031】
P1は接触部713がコモン電極721又は722と信号電極731とに接触することにより出力されるパルス信号である。P2は接触部713がコモン電極721又は722と信号電極732とに接触することにより出力されるパルス信号である。信号電極731、732の櫛歯のパターンは、パルス信号P1とパルス信号P2との位相が図6に示すようにずれるように設定されている。パルス信号P1、P2のうちいずれが先に前記制御部に入力されるかにより、前記制御部がダイヤル100の回転方向CW、CCWを検出可能となっている。また、パルス信号P1、P2が前記制御部にカウントされることにより、前記制御部がダイヤル100の回転量(すなわち、回転角)を検出可能となっている。
【0032】
傾動検出手段800は、図2A〜図3Bに示すように、4つの周辺スイッチ810と、固定シート820とを有している。周辺スイッチ810は、配線基板500の第1面510上の回転検出手段700のコモン電極721、722及び信号電極731、732の周りで且つキートップ200の押下部240の下方に配設されている。各周辺スイッチ810は、可動電極811と、固定電極812a、812bとを有している。固定電極812aは、配線基板500の第1面510上に形成された円形の導体である。固定電極812bは、配線基板500の第1面510上の固定電極812a周りに各々設けられた楕円環状の導体である。固定電極812a、812bは、配線基板500の第1面510上に形成された図示しない引き出し線が接続されている。前記引き出し線を通じて上記電子機器の制御部に接続されている。可動電極811は、導電性を有する断面円弧状の金属プレートである。この可動電極811は、外周縁部が固定電極812b上に設置され、頂部が固定電極812a上に対向配置されている。
【0033】
固定シート820は、全可動電極811に被せられ且つ配線基板500の第1面510上に固着されている。固定シート820の可動電極811上に押下部240が載置されている。4つの可動電極811が固定シート820を介して4つの押下部240を各々支持することにより、該押下部240に支持されたダイヤル100を配線基板500に対して略平行な状態で支持している。この状態が上述したダイヤル100の原点位置となっている。ダイヤル100が原点位置から上記四方向のうちの何れか一方向に傾動すると、固定シート820及び可動電極811の頂部が押下部240に押下され、固定電極812aに接触する。これにより、固定電極812a、812bが導通し、ダイヤル100の四方向のうちの何れか一方向の傾動を示す信号が出力される。
【0034】
ボタン400は、図2A〜図3Bに示すように、ボタン本体410と、回転止め部420とを有している。ボタン本体410は樹脂製の略円形のカップ体である。ボタン本体410の外径は、ダイヤル100の天板110の孔111の径よりも若干小さくなっている。すなわち、ボタン本体410がダイヤル100の孔111に上下動自在(すなわち、配線基板500に向けて移動自在)に収容されている。ボタン本体410の下端部には、外側に凸のリング状の抜け止め部411が設けられている。抜け止め部411の外径は、ダイヤル100の孔111の径よりも大きく、該ダイヤル100の軸部120の孔121よりも小さくなっている。すなわち、抜け止め部411は、ダイヤル100の孔121内に上下動自在に収容され且つ孔121の底面(すなわち、孔111の下側の周縁部)に当接可能となっている。抜け止め部411が孔121の底面に当接することにより、ボタン本体410の上方への抜けを防止している。また、抜け止め部411には、180°ピッチ間隔で略矩形状の切欠き411aが設けられている。また、ボタン本体410の孔の底面には、十字凸部412が設けられている。
【0035】
回転止め部420は樹脂製の成形品である。この回転止め部420は、図2A〜図3Bに示すように、リング421と、一対の第1脚422と、第2脚423と、支持部424と、一対の懸架部425とを有している。リング421は、外径が抜け止め部411と略同じ円板である。このリング421の下面には、180°ピッチ間隔で円柱状の第1脚422が凸設されている。また、リング421の下面の一方の第1脚422の近傍には円柱状の第2脚423が設けられている。第1脚422及び第2脚423が配線基板500及び補強板600の取り付け孔に挿入されている。懸架部425はリング421と支持部424との間には懸架されている。懸架部425は第1脚422と90°位置ズレして配置されている。懸架部425がボタン本体410の切欠き411aに挿入され、該ボタン本体410の周方向の回転を防止している。支持部424は、リング421及びボタン本体410の孔の内径よりも外径が小さい円柱体であって、懸架部425によりリング421の内側に支持されている。この支持部424がボタン本体410の孔に収容され、該ボタン本体410の十字凸部412に当接している。ボタン本体410が初期位置から押下移動すると、十字凸部412が支持部424を押圧し、当該支持部424を下方に移動させる。このとき、リング421は支持部424の移動により下方に弾性変形する。また、支持部424の下面中心部には円柱状の突起424aが突設されている。この突起424aが支持部424の移動に応じて押下移動検出手段900を押下する。
【0036】
押下移動検出手段900は、図2A〜図3Bに示すように、ボタン400の突起424aに押下される押下スイッチ910と、固定シート920とを有している。押下スイッチ910は、可動電極911と、固定電極912a、912b(第2、第3固定電極)とを有している。固定電極912aは、配線基板500の第1面510上の回転検出手段700のコモン電極721、722及び信号電極731、732の内側に設けられた円形の導体である。固定電極912bは、配線基板500の第1面510上のコモン電極721、722及び信号電極731、732の内側且つ固定電極912a周りに設けられた楕円形状の導体である。固定電極912aには、図4A又は図4Bに示すように、配線基板500の第1面510上に設けられた引き出し線511(第1引き出し線)が接続されている。引き出し線511は、固定電極912aからコモン電極721と信号電極732との間を通ってコモン電極721、722及び信号電極731、732により画定される仮想円(すなわち、上記摺動軌道)の外側に延びた導体である。すなわち、引き出し線511は、前記摺動軌道を横切っている。引き出し線511は上記電子機器の制御部に接続されている。固定電極912bは、図4Aに示すようにコモン電極721に接続される又は図4Bに示すように配線基板500の第1面510上に設けられた引き出し線512(第2引き出し線)に接続されている。引き出し線512は、固定電極912bからコモン電極721と信号電極732との間を通って前記仮想円の外側に延びた導体である。すなわち、引き出し線512も前記摺動軌道を横切っている。引き出し線512はGND接続される。なお、固定電極912bがコモン電極721に接続される場合、引き出し線512は不要である。
【0037】
可動電極911は、導電性を有する断面円弧状の金属プレートである。この可動電極911は、外周縁部(当接部)が固定電極912b上に設置され、頂部(対向部)が固定電極912a上に対向配置されている。固定シート920は、可動電極911に被せられ且つ配線基板500上に固着されている。固定シート920の頂部には、ボタン400の突起424aが載置されている。すなわち、可動電極911が固定シート920を介してボタン400を支持することにより、該ボタン400を初期位置で保持している。換言すると、可動電極911によりボタン400が支持された状態がボタン400の初期位置となる。ボタン400が初期位置から押下移動すると、固定シート920及び可動電極911の頂部が突起424aに押下され、固定電極912aに接触する。これにより、固定電極912a、912bが導通し、ボタン400の押下移動を示す信号が出力される。
【0038】
配線基板500の第1面510上のコモン電極721と信号電極732との間には、カバー513及び2つのダミー電極514が更に設けられている。カバー513は扇状の絶縁層である。カバー513は、引き出し線511(図4A参照)又は引き出し線511、512(図4B参照)を、固定電極912aの近傍から前記仮想円の外側まで覆っている。すなわち、カバー513が引き出し線511又は引き出し線511、512の上記摺動軌道の部分を覆っている。ダミー電極514は、カバー513の前記摺動軌道の両隣に配置された略矩形状の導体であって、独立している(すなわち、他に接続されていない。)。カバー513とダミー電極514との間の間隔Dは、図5に示すように、回転電極710の接触部713が隣り合うカバー513の端とダミー電極514の端とに同時に接触することができ、且つ、接触部713が隣り合うカバー513の端とダミー電極514の端とに同時に接触する際に、接触部713の頂部が配線基板500の第1面510に接触しない程度の間隔に設定されている。
【0039】
回転検出手段700の第1固定電極(コモン電極721、722及び信号電極731、732)と回転電極710の接触部713とカバー513との関係は、一対のバネ部320の先端部が凸凹面211bの凹部に嵌まり込んだ状態(ダイヤル100の停止状態)で、接触部713が、コモン電極721、722の何れか一方と信号電極731、732の何れか一方とに同時に接触せず且つカバー513に接触しないように設計されている。換言すると、ダイヤル100の停止時において、前記関係は、パルス信号P1、P2がオフとなり且つ接触部713がカバー513下の引き出し線511、512以外の箇所に位置するように設定されている。これにより、ダイヤル100の停止時において、コモン電極721、722の何れか一方と信号電極731、732の何れか一方とが導通状態となるのを防止すると共に、万が一、カバー513が剥がれ、引き出し線511又は511、512が露出した場合であっても、接触部713が引き出し線511又は511、512と導通状態となるのを防止している。
【0040】
以下、上述した構成の入力装置の組み立て手順について詳しく説明する。まず、配線基板500及び補強板600を用意する。配線基板500の第1面510には予めコモン電極721、722、信号電極731、732、固定電極812a、812b、912a、912b、引き出し線511、512及びダミー電極514が形成されている。その後、配線基板500の第1面510のダミー電極514の間に引き出し線511、512を覆うようにカバー513を接着剤で接着させる。その後、配線基板500の第2面520に補強板600を固着させる。その後、固定電極812b上に可動電極811の外周縁部を各々設置し、全可動電極811を固定シート820で配線基板500の第1面510上に固定する。同様に、固定電極912b上に可動電極911を設置し、該可動電極911を固定シート920で配線基板500の第1面510上に固定する。なお、配線基板500の第1面510上に引き出し線512が設けられていない場合(図4A参照)、カバー513は、引き出し線511のみを覆うように第1面510上に接着すれば良い。
【0041】
その後、弾性片300及びダイヤル100を用意する。その後、弾性片300をダイヤル100の収容空間αに挿入し、弾性片300の取付部310を収容空間αの天井面(すなわち、天板110の下面)に熱かしめ等により取り付ける。その後、弾性片300の一対のバネ部320を互いに離れる方向に弾性変形させ、この状態で、ダイヤル100の軸部120をキートップ200の軸受け部210の上段部211の小径孔211aに上方から挿入すると共に、軸受け部210の上段部211をダイヤル100の収容空間αに挿入する。その後、バネ部320を解放すると、該バネ部320が復元して上段部211の凸凹面211bに弾性的に当接する。その後、ダイヤル100の軸部120の下面に固定板140及び回転電極710の固定部711を熱かしめ等により取り付ける。これにより、固定板140の外周縁部がキートップ200の段差部212a1に当接する。この状態で、軸受け部210の上段部211の小径孔211aの摺接面211a1がダイヤル100の軸部120に対して若干の隙間を有して略平行に対向配置される。このようにしてダイヤル100及びキートップ200がユニット化される。以下、これをユニットと称する。
【0042】
その一方で、ボタン400の回転止め部420を用意する。その後、ボタン400の回転止め部420の第1脚422及び第2脚423を配線基板500及び補強板600の取り付け孔に各々挿入する。このとき、回転止め部420の突起424aが固定シート920及び可動電極911の頂部上に設置される。その後、ボタン400のボタン本体410を用意し、ボタン本体410を回転止め部420の支持部424に被せる。これにより、ボタン本体410の十字凸部412が回転止め部420の支持部424上に載置される。
【0043】
その後、前記ユニットのキートップ200の脚220の取付部222を配線基板500及び補強板600の固着孔に各々挿入し、キートップ200の軸受け部210の下段部212を配線基板500の第1面510上に設置する。このとき、前記ユニットのダイヤル100の軸部120の孔121及び天板110の孔111に、配線基板500上のボタン400のボタン本体410及び回転止め部420が挿入される。具体的には、ボタン本体410の上端部が天板110の孔111内に収容され、ボタン本体410の抜け止め部411及び回転止め部420の支持部424及び懸架部425が軸部120の孔121内に収容される。これと共に、キートップ200の押下部240が傾動検出手段800の固定シート820の可動電極811上に各々設置され、回転電極710の切り下げ片712の接触部713が配線基板500の第1面510上に弾性的に当接する。その後、キートップ200の取付部222を補強板600に熱かしめ等により取り付ける。
【0044】
以下、上述したように組み立てられた入力装置の使用方法及び各部の動作について説明する。ダイヤル100が回転方向CW又はCCWに回転操作されると、ダイヤル100の軸部120がキートップ200の軸受け部210の摺接面211a1に摺接しつつ回転する。このため、ダイヤル100が殆どガタつくことなく、軸部120を中心として周方向に回転する。このとき、ダイヤル100の回転に応じて弾性片300の一対のバネ部320がキートップ200の軸受け部210の凸凹面211b上を振幅移動し、該ダイヤル100の回転操作に操作感を付与する。これと共に、ダイヤル100の軸部120の下端部に取り付けられた回転電極710の接触部713が、配線基板500の第1面510上を摺動し、コモン電極721、722及び信号電極731、732に選択的に接触する。これにより、パルス信号P1、P2が出力される。このとき、引き出し線511又は511、512は、カバー513に覆われているため、接触部713はカバー513上を摺動するだけで、引き出し線511又は511、512に接触しない。
【0045】
ダイヤル100の回転操作が停止されると、バネ部320の先端部が軸受け部210の凸凹面211bの凹部に嵌まり込む。このとき、回転電極710の接触部713は、コモン電極721、722の何れか一方と信号電極731、732の何れか一方とに同時に接触せず且つカバー513に接触しない。
【0046】
ダイヤル100が上記原点位置から四方向のうち一方向に傾動操作されると、ダイヤル100の固定板140の傾動方向の反対側の部分がキートップ200の軸受け部210の段差部212a1の前記傾動方向の反対側の部分に当接してダイヤル100の前記傾動の支点として機能し、ダイヤル100の軸部120がキートップ200の軸受け部210に対して傾く。このとき、軸受け部210の上段部211の小径孔211aの摺接面211a1の上側にテーパ面211a2が設けられているため、軸部120と軸受け部210の上段部211との干渉が回避される。これと共に、ダイヤル100の外壁130の前記傾動方向側の部分が、前記傾動方向側に位置するキートップ200の押下部240を押下し、該押下部240が設けられたアーム230を弾性変形させる。すると、押下部240が前記傾動方向側に位置する周辺スイッチ810を押下する。これにより、周辺スイッチ810の可動電極811が弾性変形し、該可動電極811の頂部が固定電極812aに接触する。これにより、ダイヤル100の前記傾動方向の傾動を示す信号が出力される。その後、ダイヤル100が解放されると、可動電極811及びアーム230が復元し、前記傾動方向側の押下部240及びダイヤル100の外壁130の前記傾動方向側の部分を押し上げる。これにより、ダイヤル100が前記原点位置に復帰する。
【0047】
ボタン400のボタン本体410が前記初期位置から配線基板500の第1面510に向けて押下操作されると、ボタン本体410の十字凸部412が回転止め部420の支持部424を押し下げる。これにより、支持部424の突起424aが押下スイッチ910の可動電極911を押下する。これにより、可動電極911が弾性変形し、該可動電極911の頂部が固定電極912aに接触する。これにより、ボタン400の押下移動を示す信号が出力される。その後、ボタン400が解放されると、可動電極911が復元し、回転止め部420及びボタン本体410を押し上げる。これにより、ボタン400が前記初期位置に復帰する。
【0048】
このような入力装置による場合、引き出し線511又は511、512が、配線基板500の第1面510上に回転電極710の接触部713の上記摺動軌道を横切るように設けられているものの、引き出し線511又は511、512が絶縁性を有するカバー513に覆われているため、ダイヤル100の回転時に接触部713と引き出し線511又は511、512が接触することがない。よって、回転検出手段700のコモン電極721、722と、回転検出手段700の信号電極731、732と、押下スイッチ910の固定電極912a、912bと、引き出し線511又は511、512と、周辺スイッチ810の固定電極812a、812bとを配線基板500の片面の第1面510上に設けることができる。よって、コモン電極721、722、信号電極731、732、固定電極912a、912b及び固定電極812a、812bを配線基板500にインサート成型したり配線基板500にスルーホールを形成したりする必要がないので、配線基板500の低コスト化を図ることができ、その結果、前記入力装置の低コスト化を図ることができる。
【0049】
また、回転検出手段700のコモン電極721、722、信号電極731、732が配線基板500の第1面510の摺動軌道上に環状に間隔をあけて設けられているので、コモン電極721、722、信号電極731、732を第1面510上に同心円状に並列に設ける場合に比べて第1面510においてコモン電極721、722、信号電極731、732が占有するスペースを小さくすることができる。よって、前記入力装置の小型化を図ることができる。
【0050】
更に、配線基板500の第1面510上の摺動軌道上のカバー513の両隣には、ダミー電極514が設けられている。ダイヤル100の回転時において、回転電極710の接触部713が隣り合うカバー513の端とダミー電極514の端とに同時に接触し且つ当該接触時に、接触部713の頂部が配線基板500の第1面510に接触しないので、接触部713がカバー513に乗り上げたりカバー513から第1面510に落ちたりする際に生じる衝撃を軽減することができる。よって、前記衝撃により、ダイヤル100の操作感に与える影響やガタつきを軽減することができる。また、接触部713が第1面510のカバー513とダミー電極514との間の部分に接触しないことから、カバー513を第1面510に接着する際の接着剤が第1面510のカバー513とダミー電極514との間の部分にはみ出していたとしても、当該接着剤が接触部713に付着する可能性を軽減することができる。
【0051】
なお、上述した入力装置は、上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載範囲において任意に設計変更することが可能である。以下、詳しく述べる。
【0052】
上記実施の形態では、コモン電極721、722、信号電極731、732が第1固定電極であるとしたが、第1固定電極としては回転電極の回転を検出し得る限り、どのような電極を用いても構わない。例えば、第1固定電極として一つのコモン電極と複数の信号電極とを用いても良い。また、ダイヤル100の回転方向が一つである場合には、第1固定電極として、一つのコモン電極及び信号電極あれば良い。勿論、第1固定電極が3以上のコモン電極と、3以上の信号電極とを有する構成とすることも可能である。
【0053】
上記実施の形態では、カバー513は、引き出し線511又は511、512を、固定電極912aの近傍から前記仮想円の外側まで覆っているとしたが、少なくとも引き出し線の回転電極の配線基板の第1面の摺動軌道の部分を覆っている限り、その形状を任意に設計変更することが可能である。
【0054】
上記実施の形態では、ダミー電極514がカバー513の摺動軌道の両隣に設けられているとしたが、これに限定されるものではない。例えば、ダイヤル100の回転方向が一方向である場合には、ダミー電極はカバーの摺動軌道の一方に設けられていれば良い。なお、回転電極の接触部がカバーから配線基板の第1面に落ち込むことにより、ダイヤルの操作感に大きな影響を与えない場合には、ダミー電極を省略することができる。
【0055】
上記実施の形態では、カバー513とダミー電極514との間の間隔Dは、回転電極710の接触部713が隣り合うカバー513の端とダミー電極514の端とに同時に接触することができ、且つ、接触部713が隣り合うカバー513の端とダミー電極514の端とに同時に接触する際に、接触部713の頂部が配線基板500の第1面510に接触しない程度の間隔に設定されているとしたが、これに限定されるものではない。前記間隔は、回転電極の接触部が、少なくとも隣り合うダミー電極の端とカバーの端とに同時に接触する程度の間隔に設定されていれば良い。
【0056】
上記実施の形態では、固定電極912a、912bは、ボタン400の押下操作を検出するための第2、第3固定電極であるとしたが、これに限定されるものではない。例えば、ボタン400及び可動電極911に替えて、固定電極912a、912bに電子部品を接続するように設計変更することが可能である。電子部品としては、LED、ライン型の指紋認証センサ、マイクロフォン又は近接スイッチ等がある。前記近接スイッチとしては、ダイヤル100に取り付けられた磁石の傾動に応じて磁界の変化を検出する磁気センサやフォトインタラプタ等の光学センサを用いることが可能である。また、固定電極912bを省略することができる。この場合、ケーブルやピン等の別の接続手段を用いて、可動電極911や前記電子部品をGND接続すれば良い。
【0057】
上記実施の形態では、配線基板500は、フレキシブルプリント基板を用いるとしたが、これに限定されるものではない。例えば、配線基板500としてリジットな基板を用いることが可能である。なお、上記実施の形態では、配線基板500の片面の第1面510上に、回転検出手段700のコモン電極721、722、回転検出手段700の信号電極731、732と、押下スイッチ910の固定電極912a、912bと、引き出し線511又は511、512と、周辺スイッチ810の固定電極812a、812bとが設けられているとしたが、少なくとも上記第1固定電極及び第2固定電極が配線基板の第1面上に設けられている限り任意に設計変更することが可能である。例えば、周辺スイッチ810の固定電極812a、812bや他の部品用の固定電極を配線基板500にインサート成型するようにしても構わない。配線基板500は、片面基板に限定されるものではなく、両面基板及び多層基板を用いることができる。
【0058】
上記実施の形態では、回転電極710は、ダイヤル100の軸部120に固着されているとしたが、ダイヤルに直接的に取り付けられているか間接的に取り付けられているかは任意に設計変更することが可能である。また、上記実施の形態では、回転電極710の接触部713は、切り下げ片712の先端部に設けられ且つ配線基板500に向けて凸の円弧状に湾曲しているとしたが、接触部は配線基板の第1面に弾性的に当接し、当該第1面上を摺動し得る限り任意に設計変更することが可能である。例えば、接触部は、第1面に向けて凸の半球状又は球状とすることが可能である。この場合であっても、カバーとダミー電極との間の間隔を、上記実施の形態と同様に設定することができるし、前記間隔を、回転電極の接触部が、隣り合うダミー電極の端とカバーの端とに同時に接触する程度の間隔に設定することもできる。
【0059】
上記実施の形態では、ダイヤル100は、回転操作及び原点位置から傾動操作が可能であるとしたが、少なくとも回転操作可能な部材である限り、任意に設計変更することが可能である。また、上記実施の形態では、固定板140が軸部120の下端部に取り付けられているとしたが、一体的に設けることも可能である。例えば、固定板140の代わりに、軸部120の下端部に外側に凸のフランジを突設するようにしても良い。
【0060】
また、上記実施の形態では、ダイヤル100は、四方向に傾動操作入力可能であるとしたが、傾動操作入力方向は適宜選択設定することが可能である。押下部240及び周辺スイッチ810の数や位置については、ダイヤル100の傾動操作入力方向に応じて適宜設定すれば良い。押下部240の形状は、アーム230の上下面に設けられた突起であるとしたが、これに限定されるものではない。例えば、押下部240は、軸受け部210の周囲にダイヤル100の傾動操作入力方向に応じて配置された別体の円柱体又は角柱体とすることが可能である。この場合、アーム230は不要である。また、押下部240は、ダイヤル100の外壁130の下端部に突設されていても良い。更に、押下部240はアーム230に下方に向けてのみ突設された突起とすることも可能である。この場合、押下部240の上面とアーム230の上面とがフラットになる。また、上記実施の形態では、押下部240は、ダイヤル100の外壁130を支持しているとしたが、これに限定されるものではない。例えば、単にダイヤル100の外壁130の下側に押下部240が間隔を空けて配置された構成とすることも可能であるし、押下部240がダイヤル100の他の部分によって押下されるように配置することも可能である。この場合、ダイヤル100を原点位置で保持するコイルスプリング等の付勢手段を設けるようにすれば良い。また、上記実施の形態では、アーム230は、脚220の先端部に懸架されているとしたが、これに限定されるものではない。例えば、アーム230が軸受け部210の下段部212の外周面から放射状に延設された構成とすることが可能である。
【0061】
上記実施の形態では、キートップ200は、軸受け部210と、4つの脚220と、4つのアーム230と、4つの押下部240とを有する構成であるとしたが、少なくともダイヤルを配線基板に対して略平行に回転自在に軸支し得るものである限り任意に設計変更することが可能である。
【0062】
上記実施の形態では、傾動検出手段800の周辺スイッチ810は、可動電極811及び固定電極812a、812bを有する構成であるとしたが、これに限定されるものではない。例えば、周辺スイッチ810としては、ダイヤル100の傾動を磁気的又は光学的に無接触で検出する周知の近接スイッチを用いることができる。前記近接スイッチとしては、ダイヤル100に取り付けられた磁石の傾動に応じて磁界の変化を検出する磁気センサやフォトインタラプタ等の光学センサを用いることが可能である。
【0063】
上記実施の形態では、ボタン400は、ボタン本体410と、回転止め部420とを有するとしたが、筒状のダイヤル内に配線基板の第1面に向けて移動可能に配設されるものである限り任意に設計変更することが可能である。
【0064】
なお、上記実施の形態では、入力装置の各部を構成する素材、形状、寸法及び配置等はその一例を説明したものであって、同様の機能を実現し得る限り任意に設計変更することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
100・・・ダイヤル
200・・・キートップ
211b・凸凹面
300・・・弾性片
400・・・ボタン
500・・・配線基板
510・・第1面
511・引き出し線(第1引き出し線)
512・引き出し線(第2引き出し線)
513・カバー
514・ダミー電極
520・・第2面
600・・・補強板
700・・・回転検出手段
710・・回転電極
713・接触部
721・・コモン電極(第1固定電極)
722・・コモン電極(第1固定電極)
731・・信号電極(第1固定電極)
732・・信号電極(第1固定電極)
800・・・傾動検出手段
900・・・押下移動検出手段
911・・可動電極
912a・固定電極(第2固定電極)
912b・固定電極(第3固定電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電極が第1面に対して略平行に回転しつつ当該第1面上を摺動可能な配線基板において、
前記第1面の前記回転電極の摺動軌道上に環状に間隔をあけて設けられており且つ前記回転電極が回転により選択的に接触可能な複数の第1固定電極と、
前記第1面上の前記第1固定電極の内側に設けられた第2固定電極と、
前記第2固定電極に接続されており且つ当該第2固定電極から隣り合う2つの第1固定電極間を通って前記第1固定電極の外側に延びた第1引き出し線と、
前記第1面上の前記2つの第1固定電極の間に設けられ且つ少なくとも前記第1引き出し線の前記摺動軌道の部分を覆う絶縁性を有するカバーとを備える配線基板。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板において、
前記第1面の前記カバーの両隣の少なくとも一方に配設され且つ前記摺動軌道上に位置するダミー電極を更に備えており、
前記ダミー電極と前記カバーとの間の間隔は、前記回転電極の前記第1面に向けて凸の円弧状、半球状又は球状の接触部が、隣り合う前記ダミー電極の端と前記カバーの端とに同時に接触する程度の間隔である配線基板。
【請求項3】
請求項2記載の配線基板において、
前記ダミー電極と前記カバーとの間の間隔は、前記回転電極の接触部が、隣り合う前記ダミー電極の端と前記カバーの端とに同時に接触したとき、当該接触部の頂部が前記第1面に接触しない程度の間隔である配線基板。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の配線基板において、
前記第1固定電極は、コモン電極及び第1、第2信号電極であり、
前記回転電極が回転しつつ、前記コモン電極に接触すると共に、前記第1又は第2信号電極に接触可能である配線基板。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の配線基板において、
前記第1面上の前記第1固定電極の内側に設けられ且つ前記コモン電極に接続された第3固定電極を更に備えている配線基板。
【請求項6】
請求項1〜4の何れかに記載の配線基板において、
前記第1面上の前記第1固定電極の内側に設けられた第3固定電極と、
前記第3固定電極に接続されており且つ当該第3固定電極から前記2つの第1固定電極間を通って前記第1固定電極の外側に延びた第2引き出し線とを更に備えており、
前記カバーが少なくとも前記第2引き出し線の前記摺動軌道の部分を覆う配線基板。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の配線基板と、
前記配線基板の前記第1面に対して略平行に回転可能に配置された筒状のダイヤルと、
前記ダイヤルの回転に応じて前記第1面に対して略平行に回転し、当該第1面の第1固定電極に選択的に接触可能な回転電極と、
前記ダイヤル内に配置され、前記第2固定電極に接続された電子部品とを備えた入力装置。
【請求項8】
請求項1〜6の何れかに記載の配線基板と、
前記配線基板の前記第1面に対して略平行に回転可能に配置された筒状のダイヤルと、
前記ダイヤルの回転に応じて前記第1面に対して略平行に回転し、当該第1面の第1固定電極に選択的に接触可能な回転電極と、
前記ダイヤル内に前記配線基板の第1面に向けて移動自在に設けられたボタンと、
前記ボタンの移動に伴って前記配線基板の第1面に向けて移動することにより、前記第2固定電極に接触可能な可動電極とを備えた入力装置。
【請求項9】
請求項7又は8記載の入力装置において、
前記配線基板に固着されており且つ前記ダイヤルを回転自在に軸支するキートップと、
前記ダイヤルの回転に応じて前記キートップ周りを回転可能な弾性片とを備えており、
前記キートップは前記弾性片が弾性接触するリング状の凸凹面を有しており、
前記凸凹面は複数の凸部及び凹部を有しており、
前記弾性片が前記凹部のうちの少なくとも一つに嵌合した状態で、前記回転電極の接触部が前記摺動軌道上の前記第1引き出し線上以外の箇所に位置する入力装置。
【請求項10】
前記ダイヤルが原点位置から傾動可能である場合の請求項7〜9の何れかに記載の入力装置において、
前記ダイヤルの傾動を検出する傾動検出手段を更に備えている入力装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−204198(P2012−204198A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68831(P2011−68831)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】