説明

配線基板

【課題】 凹部内からのめっき液や洗浄水等の液体の排出が容易な配線基板を提供すること。
【解決手段】 上面に凹部2を有する絶縁基板1と、凹部2内において絶縁基板1の表面に形成された導体層3とを備える配線基板9aであって、凹部2の側面の少なくとも一部が外側に傾斜しているとともに、傾斜した側面2aの表面粗さが凹部2の底面2bの表面粗さよりも大きい配線基板である。表面粗さが比較的大きくはっ水性が高い、傾斜した側面2aを下側にしてめっき処理を施すことにより、傾斜した側面2aに沿って洗浄水等の液体を凹部2外に容易に排出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁基板の上面に電子部品収納用の凹部を有する配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子や容量素子,圧電振動子等の電子部品を気密に封止するための容器として、酸化アルミニウム質焼結体等の絶縁材料からなる四角板状等の絶縁基板の上面に、電子部品収納用の凹部を設けた配線基板が用いられている。
【0003】
絶縁基板の表面には、電子部品と電気的に接続される配線導体等の導体層が形成されている。凹部内に電子部品が収容され、電子部品と導体層とが電気的に接続される。凹部は、通常、平面視で四角形状である。これは、凹部に収納される上記電子部品が一般に四角板状であることによる。電子部品と導体層との電気的な接続は、ボンディングワイヤはんだ等の導電性接続材を介して行なわれる。上記導体層は、電子部品との電気的な接続のために、少なくとも一部が凹部内に形成されている。
【0004】
また、導体層の露出表面には、酸化腐食の抑制や、ボンディングワイヤのボンディング性等のために、ニッケルや金等のめっき層が被着される。めっき層の被着は、例えばニッケル等の電解めっき用のめっき液中に配線基板を浸漬し、この液中で導体層にめっき用の電流を供給することによって行なわれる。めっき液中において、配線基板は、一般に、めっき用のジグで絶縁基板の互いに対向し合う2つの端面が上下から挟まれることによって、縦方向に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−285874号公報
【特許文献2】特開2006−108482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術の配線基板においては、導体層にめっき層を被着させる際に、めっき液またはめっき後の洗浄水等の液体が凹部内に残留しやすい。そのため、導体層に被着させためっき層に、表面に異物が残留するめっき不良(しみ)が発生しやすいという問題点があった。例えば、配線基板が縦方向に保持される場合には、保持された状態において下側になる凹部の側面と、凹部の底面との間に上記液体が残留しやすい。
【0007】
本発明は上記従来の技術の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、めっき液や洗浄水等の液体について凹部の外側への排出が容易な配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの態様による配線基板は、上面に凹部を有する絶縁基板と、前記凹部内において前記絶縁基板の表面に形成された導体層とを備える配線基板であって、前記凹部の側面の少なくとも一部が外側に傾斜しているとともに、傾斜した前記側面の表面粗さが、前記凹部の底面の表面粗さよりも大きいことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一つの態様による配線基板によれば、凹部の側面の少なくとも一部が外側に傾斜しているとともに、傾斜した側面の表面粗さが凹部の底面の表面粗さよりも大きいことから、凹部の側面のうち傾斜した部分が下側になるように保持してめっきを行なえば、外側に、つまり保持された状態では斜め下側に傾斜した側面に沿って凹部内の液体を外部に排出させることができる。また、傾斜した側面は、底面よりも表面粗さが粗いため、上記液体に対するはっ水性が高い。そのため、この傾斜した側面に液体が残留しにくい。したがって、凹部内からの液体の排出が容易な配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は本発明の第1の実施の形態の配線基板を示す平面図であり、(b)は(a)のA−A線における断面図である。
【図2】図1に示す配線基板をめっき用ジグにセットした状態の一例を示す斜視図である。
【図3】図1に示す配線基板の要部を拡大して模式的に示す断面図である。
【図4】図1に示す配線基板の一つの変形例を示す斜視図である。
【図5】(a)は本発明の第2の実施の形態の配線基板を示す平面図であり、(b)は(a)のB−B線における断面図である。
【図6】図5に示す配線基板の一つの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の配線基板について、図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1(a)は本発明の第1の実施形態の配線基板を示す平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線における断面図である。上面に凹部2を有する絶縁基板1と、凹部2の内側において絶縁基板1の表面に形成された導体層3とによって配線基板9aが基本的に形成されている。
【0013】
絶縁基板1は、例えば酸化アルミニウム質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体,ムライト質焼結体,ガラスセラミック焼結体等の絶縁材料によって形成されている。
【0014】
絶縁基板1は、例えば四角板状(直方体状)であり、上面に電子部品(図示せず)を収容するための凹部2を有している。電子部品としては、ICやLSI等の半導体集積回路素子、およびLED(発光ダイオード)やPD(フォトダイオード),CCD(電荷結合素子)等の光半導体素子を含む半導体素子,弾性表面波素子や水晶振動子等の圧電素子,容量素子,抵抗器,半導体基板の表面に微小な電子機械機構が形成されてなるマイクロマシン(いわゆるMEMS素子)等の種々の電子部品が挙げられる。これらの電子部品は、一般に四角板状であり、このような電子部品を効率よく収容するために、凹部2は、例えば平面視で四角形状(直方体状)になっている。
【0015】
絶縁基板1は、例えば酸化アルミニウム質焼結体からなる場合であれば、酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素等の原料粉末を適当な有機バインダおよび有機溶剤とともにシート状に成形した複数のセラミックグリーンシートを積層し、焼成することによって製作されている。この場合に、一部のセラミックグリーンシートを枠状に加工しておいて、この枠状のセラミックグリーンシートを、打ち抜き加工を施していない平板状のセラミックグリーンシートの上面に積層すれば、絶縁基板1の上面に凹部2を設けることができる。なお、セラミックグリーンシートの打ち抜き加工は、例えば、凹部2の形状に応じた形状の金型(いわゆるパンチ)を用いて、セラミックグリーンシートの中央部を厚み方向に打ち抜くことにより行なわれる。
【0016】
また、図1に示す例において、凹部2の底面に円形状の複数の導体層3が形成されている。導体層3は、凹部2内に収容される電子部品の電極を接続するための接続パッドとして機能する。導体層3と電子部品の電極との接続は、例えばスズ−銀系のはんだ等の導電性接続材を介して行なわれる。
【0017】
これらの導体層3は、例えば絶縁基板1の内部等に形成された配線導体(図示せず)を介して絶縁基板1の側面や下面等の外表面に電気的に導出されている。配線導体のうち絶縁基板1の外表面に導出された部分を外部電気回路(図示せず)に電気的に接続すれば、導体層3および配線導体を介して電子部品と外部電気回路とが電気的に接続される。
【0018】
導体層3は、例えばタングステンやモリブデン,マンガン,銅,銀,パラジウム,金,白金等の金属材料からなる。このような金属材料は、例えばタングステンの場合であれば、タングステンの粉末を有機溶剤および有機バインダと混合して作製した金属ペーストを、絶縁基板1となるセラミックグリーンシートの表面の所定位置にスクリーン印刷法等の方法で印刷して焼成する方法で絶縁基板1の表面に被着させることができる。なお、配線導体も、導体層3と同様の金属材料を用い、同様の方法で絶縁基板1の内部および表面に被着させることができる。
【0019】
このような配線基板9aにおいては、電子部品を収容する前に、導体層3の表面のうち凹部2内に露出した表面に、酸化腐食の抑制や、はんだの濡れ性の向上等のために、ニッケル,コバルト,銅および金等のいずれか一つまたは複数のめっき層(図示せず)が被着される。めっき層は、上記の金属材料を含む合金であってもよい。
【0020】
導体層3に対するめっき層の被着は、例えば図2に示すように、配線基板9aをめっき用のジグ(いわゆるラック)のピンで保持して電解めっき等のめっき処理を施すことによって行なわれる。電解めっき処理は、めっき液中でジグのピンを介して配線基板9aの導体層3にめっき用の電流を供給することによって行なわれる。ジグのピンから導体層3へのめっき用の電流の供給は、例えば上記配線導体の一部を絶縁基板1の側面に露出させて、この配線導体の露出部分にピンを押し当てることによって行なわれる。
【0021】
なお、図2に示す例においては、図1に示すような配線基板9aが縦横の並びに複数個配列された、いわゆる多数個取り配線基板の形態でめっき処理が行なわれている。この場合、多数個取り配線基板の外周枠状のダミー領域(図示せず)を設けて、このダミー領域の側面に上記配線導体を露出させるようにしてもよい。
【0022】
また、無電解めっき法でめっき処理を行なう場合であれば、上記のような導体層3に対するめっき用の電流の供給について考慮する必要はなく、配線導体を絶縁基板1の側面やダミー領域の側面に露出させる必要もない。
【0023】
このようにジグに保持された配線基板9aは、脱脂処理や酸処理等の前処理液、硫酸ニッケル等を主成分とするニッケルめっき液等のめっき液、および純水等の後処理液の順に浸漬されてめっき層が導体層3に被着される。その後、配線基板9aが外気中に引き上げられて、所定の送風や加熱等の乾燥手段で絶縁基板1等の表面に残留した液体(水分)が除去され、めっき処理が終了する。
【0024】
上記配線基板9aにおいて、凹部2の側面の一部が外側に傾斜している。図1に示す例においては、凹部2が平面視で四角形状であり、この一つの辺に対応した側面2aが外側に傾斜している。この配線基板9aにめっき層を被着させるためにジグで保持させる際には、図2に示したように、傾斜した側面2aが下側になるように保持させる。つまり、ジグに保持された状態において、凹部2の傾斜した側面2aが斜め下側に傾斜するようにし
ておく。
【0025】
また、凹部2の傾斜した側面2aは、凹部2の底面2bに比べて表面粗さが大きい。このような配線基板9aによれば、凹部2の側面の少なくとも一部2aが外側に傾斜しているとともに、傾斜した側面2aの表面粗さが凹部2の底面2bの表面粗さよりも大きいことから、めっき後の凹部2内からの液体の排出が容易である。
【0026】
すなわち、図3に示すように、凹部2の側面のうち傾斜した部分(傾斜した側面2a)が下側になるように保持してめっきを行なえば、斜め下側に傾斜した側面2aに沿って凹部2内の液体を外部に排出させることができる。また、傾斜した側面2aは、底面2bよりも表面粗さが粗いため、上記液体に対するはっ水性が高い。そのため、この傾斜した側面2aに液体が残留しにくい。したがって、凹部2内からの液体の排出が容易な配線基板9aを提供することができる。傾斜した、表面粗さが比較的大きい側面2aにおいてはっ水性が高いのは、側面2aの凹凸が大きくなり、側面2aに対する液体の接触角が大きくなりやすいことによる。
【0027】
なお、図3は、図1に示す配線基板9aの要部を拡大して模式的に示す断面図である。図3において図1と同様の部位には同様の符号を付している。図3においては、凹部2の側面2aにおける表面粗さが底面2bにおける表面粗さよりも大きいことを示すために、側面2aにおける凹凸を実際よりも強調して模式的に示している。図3に示す液体は、例えばめっき液の残りや、めっき後の洗浄水(純水)等である。純水であっても上記洗浄後に空気中の浮遊物等が溶け込む可能性があり、凹部2内に液体が残留していると、水分以外の成分が導体層3の表面等に付着してしみを生じる可能性がある。
【0028】
この図3に示すように、めっきされる状態において、凹部2の底面2bは垂直(鉛直)方向に沿っている。そのため、側面2aに比べて底面2bの表面粗さが小さく、はっ水性も低いものの、底面2bに沿って下方向に、液体が容易に移動する。そのため、傾斜した側面2aに近い部分を除いて、底面2b上には液体が残留しにくい。また、凹部2のうち傾斜した側面2aに近い部分(図2のようにめっき用ジグにセットされた状態において、鉛直方向における凹部2の下端部分)に残留しようとする液体は、傾斜した側面2aに沿って外側(下側)に排出される。
【0029】
凹部2について、側面の一部を傾斜させるには、例えば上記枠状のセラミックグリーンシートを作製する際に、打ち抜き面が斜めになるように金型を調整すればよい。また、いったん枠状のセラミックグリーンシートを、内側面が斜めになっていない形態で作製した後、その内側面の一部を金属製のブロック等を用いて加圧し、傾斜させるようにしてもよい。
【0030】
また、凹部2の傾斜した側面2aの表面粗さを底面2bの表面粗さよりも大きくするには、例えば、枠状のセラミックグリーンシートの内側面を上記のように傾斜させる際に、金属製のブロックの表面粗さを粗くしておけばよい。
【0031】
また、側面の一部が傾斜した凹部2を有する、絶縁基体1となるセラミックグリーンシートまたはその積層体を作製した後、その側面の傾斜した部分に表面が粗い部材を押し当てて表面粗さを大きくするようにしてもよい。表面が粗い部材としては、例えばサンドブラスト等の方法で表面粗さを大きくした板状またはブロック状等のものが挙げられる。このような部材は、セラミックグリーンシートよりも硬度が大きな材料からなるものであれば用いることができる。例えば、ステンレス鋼やアルミニウム等の金属材料、酸化アルミニウム質焼結体やムライト質焼結体等のセラミック材料、ポリプロピレン樹脂やポリスチレン樹脂等の有機樹脂等の種々の材料を用いることができる。
【0032】
凹部2について、平面視で四角形状であるときに、その一つ辺に対応した側面2aのみが傾斜している場合には、配線基板9aの小型化の点で有利である。すなわち、凹部2の側面を傾斜させた場合には、その傾斜した分、平面視における凹部2の面積が大きくなる可能性がある。これに対して、上記のように側面の傾斜した範囲を抑えることによって、凹部2の小型化、つまりは配線基板9aの小型化が容易になる。
【0033】
また、例えば絶縁基板1の上面に蓋体(図示せず)を接合して凹部2を気密に封止するような場合には、絶縁基板1の上面において蓋体の接合面積を十分に広くすることも容易である。
【0034】
凹部2の傾斜した側面2aの傾斜角(縦断面視において凹部2の底面2bに対して直交する仮想の直線と傾斜した側面2aとのなす角の大きさ)θ1は、例えば10度〜45度程度に設定すればよい。傾斜角が大きいほど、凹部2内からの液体の排出が容易になる。また、傾斜角が小さいほど、凹部2を有する絶縁基板1の小型化に有利になる。
【0035】
凹部2の底面2bの表面粗さは、例えば、上記セラミックグリーンシートが焼成されてなる酸化アルミニウム質焼結体によって絶縁基板1が作製されている場合であれば、算術平均粗Raさで約1.5〜2.0μm程度である。これに対して、傾斜した側面2aの表面粗さは、算術平均粗さRaで約3.0〜10μm程度に設定すればよい。
【0036】
凹部2の側面2aおよび底面の表面粗さは、例えば金属針を用いた触針式の測定方法、または原子間力顕微鏡(AFM)を用いた測定方法等の方法によって測定することができる。
【0037】
なお、上記の配線基板9aにおいて、凹部2の底面2bの表面粗さが比較的小さいため、例えば導体層3の表面粗さを小さく抑えることができる。導体層3の表面粗さを小さく抑えることによって、電子部品の電極を導体層3に電子部品の電極を接続するはんだの濡れ性を良好に確保することができる。
【0038】
ここで、上記第1の実施形態の配線基板9aにおける効果について、具体例を挙げて説明する。
【0039】
酸化アルミニウム質焼結体からなる、厚みが約0.6mmで、1辺の長さが約12mmの正
方形板状の絶縁基板1を作製した。この絶縁基板1の上面の中央部に、平面視で1辺の長さが約9mmの正方形状の凹部2を設けた。凹部2の1辺の長さは、平面視における凹部2の底面2bの1辺の長さである。
【0040】
凹部2の底面には、直径が約1mmの円形状の導体層3を5×5個の縦横の並びに形成し、これらの導体層3を、絶縁基板1の内部に形成した配線導体を介して絶縁基板1の側面に電気的に導出させた。
【0041】
この凹部2の一つの辺に対応した側面(凹部2の側面を構成する四つの長方形状の内側面のうちの一つ)を、外側に向けて、傾斜角度15度,30度および45度で、それぞれ傾斜させた配線基板9aを作製した。それぞれの傾斜角度について作製した配線基板9aの個数は100個ずつであった。また、比較例として、傾斜角度が0度である、つまり凹部2の側
面が底面に対して垂直である配線基板(図示せず)を100個作製した。
【0042】
これらの実施形態の例および比較例の配線基板(9a)について、図2に示すような状態でめっき用ジグにセットした後、硫酸ニッケルを主成分とする電解ニッケルめっき液に
浸漬してニッケルめっきを行なった。めっき後、純水で洗浄し、温風により乾燥を行なった。めっき用の電流は、配線導体のうち絶縁基板1の側面に導出させた部分にめっき用のジグのピンを押し当てることによって行なった。
【0043】
これらの、めっき処理を行なった実施形態の例および比較例の配線基板(9a)について、乾燥後に、導体層3の表面におけるしみの有無を目視により確認した。目視に際しては、倍率20倍の金属顕微鏡を用いた。
【0044】
その結果、実施形態の例の配線基板9aでは、いずれの傾斜角度においてもしみの発生が見られなかった。これに対して、比較例の配線基板では、100個中2個の配線基板にお
いて、それぞれ導体層にしみが発生していた。しみの発生位置は、円形状の導体層の外周部分であった。これにより、上記実施形態の例の配線基板9aにおける、しみを抑制する効果が確認された。
【0045】
なお、凹部2の側面は、例えば図1に示すように平面視で四角形状の凹部2の、一つの辺に対応した側面2aの全体が傾斜しているものでなくても構わない。図4は、図1に示す配線基板9aの変形例である。図4に示す例においては、四角形状の凹部2の一つの辺に対応した側面のうち、凹部2の角部分を含む部分のみ(2か所)が、外側に傾斜している。この場合にも、部分的に傾斜した側面2cに沿って、凹部2の底面と側面との間に残留しようとする液体を外部に排出させることができる。
【0046】
特に、液体が残留しやすい凹部2のコーナー部からの液体の排出が容易である。また、凹部2の側面のうち傾斜している部分がより小さく抑えられているため、配線基板9aの小型化や気密封止性の確保等においては有利である。
【0047】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態の配線基板を、図5に示す。図5(a)は本発明の第2の実施形態の配線基板9bを示す平面図であり、図5(b)は図5(a)のB−B線における断面図である。図5において図1と同様の部位には同様の符号を付している。以下、第2の実施形態の配線基板9bについて、第1の実施形態の配線基板9aと同様の構成については説明を省略する。
【0048】
第2の実施形態の配線基板9bは、平面視において、絶縁基板1の外形が四角形状であり、凹部2の一つの辺が、隣り合う絶縁基板1の外辺に対して斜めである点が、前述した第1の実施形態の配線基板9aと異なっている。その他の構成については、第2の実施形態の配線基板9bは第1の実施形態の配線基板9aと同様である。この場合にも、凹部2内の液体の外部への排出を容易とする効果を得ることができる。
【0049】
つまり、例えば図2に示すようにめっき用のジグに保持された状態において、凹部2の斜め下側に傾斜した側面2dは、その全面が、凹部2の一つの辺の、絶縁基板1の外辺に対する角度θ2に応じてさらに傾斜している。そのため、傾斜した側面2d上における重力による液体の移動が容易なり(滑りやすくなり)、凹部2内からの液体の排出が容易になる。
【0050】
凹部2の一つの辺を、隣り合う絶縁基板1の外辺に対して斜めにするには、絶縁基板1に凹部2を設けるための枠状のセラミックグリーンシートを作製する際に、打ち抜きに用いる金型を調整すればよい。すなわち、この金型について、四角枠状の打ち抜きパターンのうち一つの辺を、隣り合う他の二つの辺に対して斜めになるようにしておけばよい。
【0051】
凹部2の一つの辺の、隣り合う絶縁基板1の外辺に対する角度は、絶縁基板1に求めら
れる小型化の程度や、傾斜した側面2dの傾斜角度および表面粗さ、凹部2の深さ等の条件に応じて適宜設定すればよい。
【0052】
なお、この場合、例えば図6に示すように、傾斜した側面2dのうち液体がより溜まりやすい凹部2のコーナー部分(めっき用ジグに保持された状態において下側となる方の角部分)における側面2dの傾斜角度をより大きくしてもよい。図6は、図5に示す配線基板9bの一つの変形例を示す斜視図である。図6において図1および図5と同様の部位には同様の符号を付している。
【0053】
この場合には、この角部分からの液体の排出がより容易であり、凹部2内からの液体の排出がより容易に行なわれる。また、傾斜した側面2dの傾斜角度をより大きくした部分において、さらに表面粗さを大きくしてもよい。
【0054】
なお、本発明は、上記実施の形態の例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、凹部2の側面の全面について、傾斜していない部分も含めて、その表面粗さを凹部2の底面の表面粗さよりも大きくしてもよい。
【0055】
また、凹部2が、平面視で四角形状以外の形態、例えば、円形状、楕円形状、四角形状であって辺の一部に凹凸を含む形状、八角形等の多角形状の形態(図示せず)であっても構わない。この場合、その凹部の側面の一部を外側に傾斜させて、この傾斜した側面の表面粗さを底面2cの表面粗さよりも大きくしておけば、傾斜した側面に沿って凹部内の液体を外部に排出させることが容易になる効果を得ることができる。なお、このような効果を得るためには、配線基板がジグに保持された状態において、傾斜した側面が下側になるようにする必要がある。
【符号の説明】
【0056】
1・・・絶縁基板
2・・・凹部
2a・・傾斜した側面
2b・・底面
2c・・部分的に傾斜した側面
2d・・傾斜した側面
3・・・導体層
9a・・配線基板(第1の実施形態)
9b・・配線基板(第2の実施形態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に凹部を有する絶縁基板と、前記凹部内において前記絶縁基板の表面に形成された導体層とを備える配線基板であって、
前記凹部の側面の少なくとも一部が外側に傾斜しているとともに、傾斜した前記側面の表面粗さが、前記凹部の底面の表面粗さよりも大きいことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
平面視において前記凹部が四角形状であり、該凹部の一つの辺に対応した部分において前記側面が外側に傾斜しているとともに、傾斜した前記側面の表面粗さが前記底面の表面粗さよりも大きいことを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項3】
平面視において、前記絶縁基板の外形が四角形状であり、前記凹部の前記一つの辺が、隣り合う前記絶縁基板の外辺に対して斜めであることを特徴とする請求項2記載の配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−89861(P2013−89861A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230822(P2011−230822)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】