説明

配線用ボックス間柱固定金具

【課題】間柱固定部から水平方向に片持ち状態で突き出したアーム部に配線用ボックスを安定固定させることのできる配線用ボックス間柱固定金具を提供する。
【解決手段】壁の間柱に固定される間柱固定部2と、間柱固定部2から水平に連出したアーム部3と、アーム部3にその連出方向と一致させてスライド溝孔6を刻設した金具本体4と、アーム部3の背面にスライド可能に装着した固定具5とで配線用ボックス間柱固定金具を構成する。固定具5はそれぞれ係合爪12によってアーム部3の長手方向端縁を掴んでスライド可能に構成されている隔離方向に弾性付勢された一対の摺動片9、10で構成されている。各摺動片9、10に突設されたアーム部3のスライド溝孔6を挿通する係合突起13、14を配線用ボックスBの背面壁17に形成された一対の取付孔18、19に嵌着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチやコンセント等の配線用ボックスを壁の間柱に取り付けるために使用する配線用ボックス間柱固定金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチやコンセント等の配線用ボックスを壁の間柱に固定するための固定金具として、間柱固定部と、この間柱固定部から水平方向突き出したアーム部とからなり、アーム部に水平方向のスライド溝孔を形成し、配線用ボックスの背壁に設けたボルト挿通孔とアーム部のスライド孔とにボルトを挿し入れてナットを締め付けることにより、配線ボックスをアーム部に固定するようにしていた。
【0003】
この場合、アーム部にその水平方向に沿うスライド溝孔を設けているため、配線用ボックスをアーム部に固定するボルトとナットとを緩めることによって、配線用ボックスをアーム部のスライド溝孔に沿って間柱の幅方向に移動させて、取り付け位置の調整を可能にするという利点を有している。
【0004】
しかし、この固定金具を間柱に固定した場合、施工場所によっては、間柱固定部から水平方向に突き出したアーム部とその背面の建物との間に充分な隙間がないことがあり、固定金具を間柱に固定した状態では、アーム部とその背面の隙間に工具や手を差し入れて固定用のボルトやナットを締め付けるという作業が行いにくいという問題があった。
【0005】
そこで本出願人は、先に、間柱への固定部とアーム部とを一体に形成した固定金具でのアーム部に長手方向に沿うスライド溝孔を形成し、係合爪によってアーム部を掴んでアーム部に対してスライド可能な固定板を前記固定金具のアーム部の背面に装着し、この固定板に、配線用ボックスの背面に形成される水平位置にある一対の取付け孔の一方にアーム部のスライド溝孔を介して差し込まれる係合突起と、配線用ボックスの他方の取付け孔からアーム部のスライド溝孔を介してネジ固定されるネジ固定部とを設け、ネジ固定部にネジを締め付けることで、ア―ム部が配線用ボックスの背面と固定板とによって挟持され、配線用ボックスがアーム部に対して回転不能に固定される構造のものを提案した。(特許文献1)
【特許文献1】特許第4025603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、現在配線用ボックスは複数種類の幅のものが提供され、それぞれの幅の配線用ボックスでは、一対の取り付け孔の間隔が異なっている。そして、前述の先に提案したものでは、配線用ボックスの背面に形成される水平位置にある一対の取付け孔の間隔に合わせて固定板に係合突起とネジ固定部を形成しておかなければならない。このため、係合突起とネジ固定部との間隔を異ならせた複数種類の固定板を用意しておくか、固定板に係合突起の位置を基準に異なった間隔で複数のネジ固定部を形成するかしなければならない。
【0007】
係合突起とネジ固定部との間隔を異ならせた複数種類の固定板を用意する場合には、現場での固定金具と配線用ボックスとのマッチングが面倒になり、作業効率に影響することになる。一方、1枚の固定板に係合突起に対する距離を変えた複数のネジ固定部を形成した場合には、1枚の固定板で複数種類の配線用ボックスに対応できるという利点はあるが、係合突起とネジ固定部との間隔が最も広いものを基準に固定板のサイズを決定しなければならないことから、取り付け孔の間隔が狭い配線用ボックスを使用した場合には、固定板の端部が配線用ボックスよりも外側に突出してしまい、配線用ボックス設置個所の精度を十分出しにくいという問題を余裕していた。
【0008】
本発明は、このような点に着目してなされたもので、間柱固定部から水平方向に片持ち状態で突き出したアーム部に配線用ボックスを手軽な作業で安定固定させることのできる配線用ボックス間柱固定金具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、壁の間柱に固定される間柱固定部と、この間柱固定部から水平方向に突き出したアーム部と、このアーム部にその連出方向に一致させて刻設したスライド溝孔とを具備する金具本体と、アーム部の背面にスライド可能に装着されている固定具とを具備する配線用ボックス用間柱固定金具であって、固定具を弾性付勢された一対の摺動片で構成し、この一対の摺動片はそれぞれ係合爪によってアーム部の長手方向端縁を掴んでスライド可能に構成されており、各摺動片に、配線用ボックスの背面壁に形成された水平位置にある一対の取付孔にそれぞれアーム部のスライド溝孔を介して差し込まれる係合突起をそれぞれ突設したことを特徴としている。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1の構成に加えて、固定具を構成する一対の摺動片同士をパンタグラフ状に構成した弾性連結部で連結したことを特徴とし、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加えて、スライド溝孔の少なくとも一辺を連続波形に形成するとともに、固定具を構成している一方の摺動片にこのスライド溝孔の連続波形部分の一部波形に係合する係合突片を形成したことを特徴としている。
【0011】
さらに、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構成に加えて固定具を合成樹脂製で一体に構成したことを特徴とし、請求項5に記載の発明はアーム部の表面に間柱固定部からの距離を示す指標目盛りが一定間隔置きに刻設してある請求項1〜4のいずれか1項に記載構成に加えてアーム部の表面に間柱固定部からの距離を示す指標目盛りが一定間隔置きに刻設してあることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、アーム部の背面にスライド可能に装着されている固定具を弾性付勢された一対の摺動片で構成し、この一対の摺動片はそれぞれ係合爪によってアーム部の長手方向端縁を掴んでスライド可能に構成されており、各摺動片に、配線用ボックスの背面壁に形成された水平位置にある一対の取付孔にそれぞれアーム部のスライド溝孔を介して差し込まれる係合突起をそれぞれ突設していることから、各摺動片に、配線用ボックスの底壁に形成した一対の取付孔を固定具から突出している係合突起に係合させることで、配線用ボックスをアーム部を介して間柱にしっかりと固定することができる。
【0013】
しかも、固定具は、弾性付勢された一対の摺動片で構成されていることから、配線用ボックスの底壁に形成されている一対の取付孔の離隔寸法の変化を摺動片の相対移動で吸収することになるから、1つの固定具で複数の幅の配線用ボックスに対応することができ、現場での固定金具と配線用ボックスとのマッチングが容易になり、作業効率を向上させることができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明のように、アーム部に形成したスライド溝孔の少なくとも一辺を連続波形に形成するとともに、固定具を構成している一方の摺動片にこのスライド溝孔の連続波形部分での一部波形に係合する係合突片を形成した場合には、固定具をスライド溝孔の任意の位置に確実に係止させることができ、ひいては配線用ボックスを確実に固定保持することができる。
【0015】
また、請求項5に記載の発明のように、アーム部の表面に間柱固定部からの距離を示す指標目盛りが一定間隔置きに刻設した場合には、配線用ボックスを設置する間柱固定部からの距離が一目瞭然となって、配線用ボックス設置作業の作業効率をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図は本発明の一実施形態を示し、図1は配線用ボックス組み付け前の全体斜視図、図2は配線用ボックス間柱固定金具の正面図、図3は配線用ボックス間柱固定金具の各構成部材の正面図、図4は、配線用ボックス間柱固定金具の平面図、図5は配線用ボックスを設置した状態での間柱固定金具の側面図である。
【0017】
本発明に係る配線用ボックス固定金具(1)は、壁(W)の間柱(P)に固定される間柱固定部(2)とこの間柱固定部(2)から水平に突き出したアーム部(3)とで構成した金具本体(4)と、金具本体(4)のアーム部(3)に摺動移動可能な状態に組みつけられている固定具(5)とからなっている。
【0018】
アーム部(3)は、間柱固定部(2)に対して直角に屈曲する状態で水平方向に連出してあり、このアーム部(3)の垂直面(3a)にはスライド溝孔(6)がアーム部連出方向に透設してある。そして、このアーム部(3)に設けたスライド溝孔(6)の一辺(7)は、その一部を連続する波形に形成してある。また、アーム部の表面にこのスライド溝孔(6)に状態で間柱固定部(2)からの距離を示す指標目盛り(8)が一定間隔置きに刻設してある。
【0019】
固定具(5)は、アーム部(3)の背面にアーム部(3)に対して摺動移動可能な状態で装着されている。この固定具(5)は一対の摺動片(9)(10)と、両摺動片(9)(10)を連結するパンタグラフ形状に形成された弾性結合部(11)と、各摺動片(9)(10)の上下辺にそれぞれ形成された係合爪(12)と、各摺動片(9)(10)の垂直面をなしている正面部分に前記スライド溝孔(6)を挿通する状態で突設した係合突起(13)(14)とで構成してあり、一対の摺動片(9)(10)は弾性結合部(11)の保有する弾性力でお互いが離隔する状態に弾性付勢されている。
【0020】
また、この固定具(5)を構成している一方の摺動片(9)には、前記スライド溝孔(6)を移動するスライドガイド(15)が形成してある。このスライドガイド(15)はその一側縁部が撓み変形可能に構成してあり、この撓み変形する一側縁部には、前記スライド溝孔(6)の一方の側縁(7)に形成した連続する波形の一部の谷部と嵌り合う係合突片(16)が形成してある。
【0021】
このような構成からなる配線用ボックス固定金具(1)は、金具本体(4)のアーム部(6)に固定具(5)が背面側から装着され、固定具(5)の各摺動片(9)(10)に形成されている係合爪(12)でアーム部(6)の上下側端縁を掴むことで、固定具(5)が金具本体(4)のアーム部(6)に対して摺動可能な状態で組みつけられる。このとき、固定具(5)の各摺動片(9)(10)から突設されている係合突起(13)(14)はアーム部(6)に透設されているスライド溝孔(6)内を水平移動可能な状態に位置しており、一方の摺動片(9)に形成したスライドガイド(15)はその一側縁部に形成した係合突片(16)がスライド溝孔(6)の一方の側縁(7)に形成した連続する波形の一部の谷部に嵌り合うことで、一方の摺動片(9)の自由な移動を抑制している。
【0022】
この配線用ボックス固定金具(1)を使用して構造物の壁面に取り付けられる配線用ボックス(B)は、前面開放状に形成された合成樹脂製であり、その背面壁(17)に一対の取付孔(18)(19)が水平方向一直線上に透設してある。またその天井壁(20)と底壁(21)には、電線管装着孔(22)が形成してある。
【0023】
次に、配線用ボックス(B)を壁内に配置する手順について説明する。
壁材(W)を所定間隔に設置している間柱(P)に配線用ボックス固定金具(1)の間柱固定部(2)を押し当てて固定ネジ(24)により固定する。そして、配線用ボックス固定金具(1)の固定具(5)をアーム部(3)に対して摺動移動させて間柱(P)からの距離を調整したのち、固定具(5)のスライドガイド(15)に形成した係合突片(16)とスライド溝孔(6)の一辺(7)に形成されている連続波形の谷部との嵌り合いにより固定具(5)をアーム部(3)の所定位置に設置する。
【0024】
アーム部(3)の所定個所に固定具(5)が留め置かれている状態で、アーム部(3)のスライド溝孔(6)を挿通して突出している各摺動片(9)(10)に形成した係合突起(13)(14)に、配線用ボックス(B)の背面壁(17)に透設した一対の取付孔(18)(19)をあてがい、スライドガイド(15)が形成されていない側の摺動片(10)に形成されている係合突起(14)を一方の取付孔(19)に嵌着させ、この係合突起(14)を配線用ボックス(B)の取付孔(19)に嵌着させた摺動片(10)を、摺動片(9)(10)を連結する弾性結合部(11)の弾性力に抗してスライドガイド(15)が形成されている側の摺動片(9)に接近させて、この摺動片(9)に形成されている係合突起(13)を配線用ボックス(B)の取付孔(18)に嵌着させて固定具(5)と配線用ボックス(B)とを係合固定させ、間柱(P)に対して所定の位置に配線用ボックス(B)を設置することになる。
【0025】
このとき、配線用ボックス(B)の取付孔(18)(19)と固定具(5)の係合突起(13)(14)とが係合した状態では、固定具(5)を構成している摺動片(9)(10)同士を連結する弾性結合部(11)の弾性力が両摺動片(9)(10)を離隔する方向に作用していることから、配線用ボックス(B)は配線用ボックス固定金具(1)にガタつくことなく確りと保持されることになる。
【0026】
上述の実施形態では、固定具(5)を金具本体(4)の所定位置に安定的に保持するために、スライド溝孔(6)の一辺(7)を連続波形に形成したものについて述べたが、スライド溝孔(6)の両辺を連続波形に形成してもよく、また、スライド溝孔(6)の側辺での所定個所に係合用の凹部を断続的に設けるようにしてもよい。
【0027】
また、上述の実施形態では、固定具(5)を構成している一対の摺動片(9)(10)をパンタグラフ形状に形成された弾性結合部(11)で連結したものについて述べたが、一対の摺動片(9)(10)を連結する弾性係合部(11)としては、ジクザクばねや圧縮ばねなどのように一対の摺動片(9)(10)を離隔する方向にその弾発力が作用する弾性体であればよい。さらに、上述の実施形態では、固定具(5)を合成樹脂で一体に成形したものについて説明したが、固定具(5)は金属で形成したものであってもよい。
【0028】
なお、上記実施形態では、間柱(P)に配線用ボックス固定金具(1)の間柱固定部(2)を固定する手段として、直接的にネジ止めするもについて説明したが、この間柱(P)へのの固定手段としては、間柱固定部(2)と連結板とで間柱の壁面部分を挟持する形式のものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、木製の間柱や軽量型鋼製の間柱を使用している壁に配線用ボックスを取り付ける場合に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】配線用ボックス組付け前での全体斜視図である。
【図2】配線用ボックス間柱固定金具の正面図である。
【図3】配線用ボックス間柱固定金具の各構成部材の正面図であり、図3Aは金具本体の正面図、図3Bは固定具の正面図である。
【図4】配線用ボックス間柱固定金具の平面図である。
【図5】配線用ボックスを設置した状態での間柱固定金具の側面図である。
【符号の説明】
【0031】
2…間柱固定部、3…アーム部、4…金具本体、5…固定具、6…スライド溝孔、7…スライド溝孔の一辺、8…指標目盛り、9・10…摺動片、11…弾性結合部、、12…係合爪、13・14…係合突起、16…係合突片、17…配線用ボックスの背面壁、18・19…取付孔、B…配線用ボックス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁(W)の間柱(P)に固定される間柱固定部(2)と、この間柱固定部(2)から水平方向に突き出したアーム部(3)と、このアーム部(3)にその連出方向に一致させて刻設したスライド溝孔(6)とを具備する金具本体(4)と、アーム部(3)の背面にスライド可能に装着されている固定具(5)とを具備する配線用ボックス間柱固定金具であって、
固定具(5)を隔離方向に弾性付勢された一対の摺動片(9)(10)で構成し、この一対の摺動片(9)(10)はそれぞれ係合爪(12)によってアーム部(3)の長手方向端縁を掴んでスライド可能に構成されており、
各摺動片(9)(10)に、配線用ボックス(B)の背面壁(17)に形成された水平位置にある一対の取付孔(18)(19)にそれぞれアーム部(3)のスライド溝孔(6)を介して差し込まれる係合突起(13)(14)をそれぞれ突設したことを特徴とする配線用ボックス間柱固定金具。
【請求項2】
固定具(5)を構成する一対の摺動片(9)(10)をパンタグラフ状に構成した弾性結合部(11)で連結した請求項1に記載の配線用ボックス間柱固定金具。
【請求項3】
スライド溝孔(6)の少なくとも一辺(7)を連続波形に形成するとともに、固定具(5)を構成している一方の摺動片(9)にこのスライド溝孔(6)の連続波形部分の一部波形に係合する係合突片(16)を形成した請求項1又は2に記載の配線用ボックス間柱固定金具。
【請求項4】
固定具(5)が一体に形成した合成樹脂製である請求項1〜3のいずれか1項に記載の配線用ボックス間柱固定金具。
【請求項5】
アーム部(3)の表面に間柱固定部(2)からの距離を示す指標目盛り(8)が一定間隔置きに刻設してある請求項1〜4のいずれか1項に記載の配線用ボックス間柱固定金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−93942(P2010−93942A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261175(P2008−261175)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(390009999)日動電工株式会社 (24)
【Fターム(参考)】