説明

酵素切断産物の濃縮

【解決手段】本発明は、試料から少なくとも一つの酵素の切断産物を、濃縮、単離及び/または同定する方法に関する。本発明によれば、プロテアーゼの酵素的に不活性な変異体を親和性物質として使用し、しかも該変異体は基質特異性を維持する。その変異体が使用されるプロテアーゼの少なくとも一つの切断産物と、その切断産物が分析される該酵素の少なくとも一つの切断産物とが、少なくとも一つの構造的類似性を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素の切断産物を濃縮、単離及び/または同定する方法に関し、また特定の変異体及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質の分解は、すべての生物に起こるメカニズムと同様に、生物学的調節メカニズムに不可欠の要素である。プロテアーゼと呼ばれる酵素は切断を触媒するが、タンパク質の分解に深く関与している。
【0003】
タンパク質及びペプチド中のペプチド結合の加水分解的切断(タンパク質分解)を触媒する酵素はプロテアーゼと呼ばれる。プロテアーゼは、プロテイナーゼ(かつてはエンドペプチダーゼ)と呼ばれるものとペプチダーゼ(かつてはエキソペプチダーゼ)と呼ばれるものに分類することができる。前者はペプチド結合をタンパク質の内部で切断するので、ペプチドを切断産物として産生する。後者はタンパク質をアミノ末端またはカルボキシ末端で切断する。以下、通常はプロテアーゼのみに言及するが、好ましくはプロテイナーゼを意味する。
【0004】
プロテオーム研究の重要な分野は、プロテアーゼ基質と、これらの酵素のタンパク質分解産物、即ち切断産物の同定である。このことは、以前より知られたプロテアーゼ、且つまた新規のプロテアーゼの機能の研究を可能にするために、重要な前提条件である。この点について、研究の「デグラドミクス」分野にも言及するが、この研究はプロテオームの全てのプロテアーゼ、及び特定のプロテアーゼによって切断される基質をも同定することを目的とする。定義によれば、「デグラドミクス」は、プロテアーゼ及び、生物によって代表されるような複合系におけるプロテアーゼの基質及び阻害物質を特徴付けるための、ゲノム及びプロテオームのアプローチを使用する。
【0005】
プロテイナーゼ及び特にそれらの切断産物は、デグラドミックス研究に特に重要である。例えば、研究は、特にカスパーゼファミリーに集中している。カスパーゼ類は、種々の細胞基質の制御された分解において重要な役割を果たし、それらは特にアポトーシス過程、即ち、制御された細胞死に関連する分解過程に関係する。カスパーゼ類は、ヒトにおいては少なくとも12種類ある、高度に保存されたプロテアーゼファミリーである。カスパーゼ類は、炎症過程及び細胞のアポトーシスにおける役割から、科学的に非常に重要である。カスパーゼ類はシステインプロテアーゼ類に含まれ、このことは、これらのプロテアーゼ類が活性中心の重要な部位に、タンパク質分解活性の鍵を握るシステインを有することを意味する。カスパーゼ類は、それらの基質中のアスパラギン酸残基の後を切断する、非常に特異的なプロテアーゼ類である。従って、カスパーゼ類の全ての切断産物は、ペプチド切断産物のC-末端(P1位)にアスパラギン酸残基を有する。グルタミン酸はしばしばP3位に存在する。種々の切断産物を研究することにより、細胞中及び生物中の種々のカスパーゼ類の機能及び役割について、興味深い結果を引き出すことができる。とりわけカスパーゼ類の切断産物の一般的な検出によって、カスパーゼの個々の標本の検出を必要とせずに、ある環境では非常に低い活性しか示さない、この多様な酵素群の活性について情報を得ることが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、特定の酵素または酵素群の切断産物を少数の方法工程で調査することができる方法を提供することである。とりわけ、酵素の切断産物を調査することによって、切断に関与する酵素(群)の活性についての報告を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に示された通りの方法によって達成される。請求項16は、プロテアーゼの特定の変異体に関し、請求項25は対応するヌクレオチド配列に関する。請求項27及び29は、それぞれ、変異体の使用、及び対応するアフィニティーマトリックスに関する。好ましい態様は従属項に示される。全ての請求項の表現は、言及することにより説明に含まれる。
【0008】
本発明の方法によって、試料から、少なくとも一つの酵素の切断産物を、濃縮、単離及び/または同定することが可能である。このことは、親和性物質としてプロテアーゼの酵素的に不活性な変異体を使用することによって可能になるが、プロテアーゼの酵素的に不活性な変異体がその基質特異性を示し続けることは、本発明の方法とって極めて重要である。さらに重要なことは、分析する酵素の切断産物が、その変異体が使用されるプロテアーゼの加水分解切断産物と少なくとも一つの構造的類似性を有することである。酵素的に不活性でない場合、切断産物が親和性物質として使用されるプロテアーゼ自身によって産生され、本発明の方法の結果を誤る可能性があるため、酵素的に不活性であることは好都合である。
【0009】
この方法では、最初に、試料中の検出される切断産物と酵素的に不活性な変異体との間に相互作用を形成するために、検出される切断産物を含む試料を酵素的に不活性な変異体と共にインキュベーションする。この相互作用は、変異体が、特定の構造的特徴を有する基質に対して結合親和性が高いことによるものである。検出される切断産物は、この構造的特徴を示し、その結果、この変異体と特異的に結合する。該方法の次の工程では、変異体と相互作用しない物質を除去することができる。次に、変異体と結合している切断産物を分析することができる。相互作用している切断産物の変異体から分離することが有益であり、切断産物の実際の分析の前に必要であるかどうかは、該方法の具体的な計画、特に分析方法による。
【0010】
本発明の方法は、その変異体が親和性物質として使用されるプロテアーゼが、自身の基質に対して、また基質のタンパク分解的切断で得られる産物対して、高い結合親和性を有するという事実に基づいている。さらに、プロテアーゼのこの結合活性がその触媒活性から分離可能であることが必要である。
【0011】
このような、結合活性からの触媒活性の分離は、プロテアーゼのトリプシン及びキモトリプシンについて、既に知られている。これらのプロテアーゼの触媒中心における、いわゆる無水修飾(anhydro modification)によって、触媒活性、即ち加水分解的切断の触媒作用を損なうことは可能であり、一方、切断産物への結合親和性は保持される。従って、これらの形態は、それぞれアンヒドロトリプシン及びアンヒドロキモトリプシンと呼ばれるが、もはやタンパク質を切断することはできない。しかしながら、それらはなおそれらの切断産物に結合することができる。アンヒドロトリプシンの場合、切断産物はC-末端にアルギニンとリジンを有するペプチドである。アンヒドロキモトリプシンの場合、切断産物はC-末端に疎水性アミノ酸を有するペプチドである。この点について、トリプシン及びキモトリプシンの無水の変異体は、酵素の活性中心におけるセリンをアラニンで置換する、即ちセリンが無水形態となる化学修飾または処置によって得ることができる。
【0012】
触媒活性と基質または切断産物への結合親和性とが、同様に分離可能であることが、プロテアーゼClpXPについて述べられている(モレキュラーセル(Molecular Cell)、第11巻、671-683頁、2003年)。
【0013】
本発明の方法の特に好ましい態様では、その切断産物が濃縮、単離及び/または同定される酵素はプロテアーゼであり、このプロテアーゼは、好ましくはその酵素的に不活性な変異体が親和性物質として用いられるプロテアーゼと異なる。本発明のこの態様は、使用される酵素的に不活性な変異体の特定の基質への結合活性が必要な、研究する切断産物が適当な構造的特徴を有するならば、プロテアーゼの酵素的に不活性な変異体は、あらゆる酵素の切断産物を研究するための普遍的なツールとして用いることができる点が非常に有利である。
従って、この態様において、プロテオーム研究に広く用いることができ、機能的特長の利用に基づく方法が提供される。特に、本発明の方法を用いて、特定の酵素の異なる基質または産物の同一性についての結論を得ることが可能である。加えて、酵素群または酵素ファミリー全体の活性の定量がそれによって可能になる。
【0014】
本発明の方法の好ましい態様において、研究される切断産物と、その酵素的に不活性な変異体が使用されるプロテアーゼが結合する産物との構造的類似性には、一つ以上の一致する末端アミノ酸残基、特にC-末端残基が含まれる。本発明で、その変異体を使用することができる、多数のプロテアーゼに対する、それらの基質への結合親和性は、一つ以上の特定のC-末端アミノ酸によるものである。例えば、Staphylococcus aureus (エンドプロテイナーゼGlu(Asp)-C)由来のV8プロテイナーゼは、C-末端にグルタミン酸(Glu)またはアスパラギン酸(Asp)を有するペプチドに対し特異的な結合親和性を示す。他の位置のアミノ酸残基の役割は、無視することができる。それゆえに、なお基質特異性を示すこのV8プロテイナーゼの酵素的に不活性な変異体は、適当なC-末端アミノ酸または適当な残基を有する他の酵素の切断産物を研究する本発明の方法に使用するのに好適である。例えば、最初に述べた通り、これはC-末端にアスパラギン酸を有するカスパーゼの切断産物に適用される。従って、本発明の特に好ましい態様では、構造的類似性はC-末端グルタミン酸及び/またはアスパラギン酸残基である。
【0015】
本発明の方法の特に好ましい態様において、プロテアーゼの酵素的に不活性な変異体は、活性中心が変化している。本発明によれば、結合活性は保持されるが、この変化で触媒活性は損なわれる。
【0016】
本発明の方法の好ましい態様において、その変異体が使用されるプロテアーゼはセリンプロテアーゼである。セリンプロテアーゼは、活性中心の重要な部位にセリンを有することを特徴とする。このセリンの欠失または交換によって、酵素活性は損なわれ、一方で基質特異性は保持される。従って、適当なアミノ酸を交換する一つ変化によって、本発明で使用することができる変異体を提供することが可能であるので、これらのプロテアーゼは、本発明によれば特に好適である。これらの特に好適なセリンプロテアーゼは、例えば、既に述べたV8プロテアーゼを包含する。
【0017】
酵素的に不活性な変異体が、無水の変異体であることは有利である。この点について特に好ましくは、セリンのアラニンへの交換である。上記のセリンプロテアーゼにおいて、プロテアーゼの触媒中心のセリンは加水分解活性に関与するので、基質特異性を保持したまま、加水分解活性は、そのような無水の突然変異によって損うことができる。勿論、プロテアーゼの変異体が酵素的に不活性であり、即ち、もう全く加水分解的切断を触媒できず、かつ、なおプロテアーゼの基質特異性を示すものであれば、本発明のプロテアーゼの他の変異体を使用することも可能である。
【0018】
本発明の方法の特に有利な態様において、酵素的に不活性な変異体は、固定化された形態で使用する。このことにより、試料のインキュベートション、物質の除去、及び、適当ならば切断産物の分離を固相で実施することができるので、実質的に本発明の方法の実施が容易になる。カラムクロマトグラフィーの形態で実施される方法では特に有利であり、この場合、酵素的に不活性な変異体は、例えば、セファロース、アガロースまたはフラクトゲル(Fraktogel)などの慣例のクロマトグラフィー材料上に固定化することができる。固定化は慣例法によって行うことができる。例えば、変異体は、ヒスジジン配列によって固定化したニッケルイオン(例えば、Ni-NTAアガロース)と連結することができる。
【0019】
濃縮した切断産物の分析は、慣例法によって行うことができる。特に好ましい分析法は、一次元及び/または二次元のポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いるものである。分析は、慣例の質量分析法を用いて実施することもできる。質量分析は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または他の慣例法と組み合わせることもできる。
【0020】
実際の方法、即ち、試料のインキュベーション及び非相互作用物質の除去は、クロマトグラフィー、特にカラムクロマトグラフィー、例えば慣例のアフィニティークロマトグラフィーを実施することによって行うことができる。分析はさらに一工程以上のクロマトグラフィー工程、特にカラムクロマトグラフィー工程を含んでもよい。加えて、例えば、種々の濃縮した切断産物を、一工程以上のクロマトグラフィー工程によってさらに分画することが可能である。
【0021】
本発明のさらなる態様において、分析される切断産物は、本発明の方法の間に修飾される。この修飾では、特に、切断産物がさらに切断されてもよく、例えば、好適な酵素での処理によって切断される。トリプシン消化などは、この目的に特に好適である。特に切断産物の分析に関して、このような修飾が行われ、例えば、さらに質量分析を行うために、切断産物を断片化する。
【0022】
本発明の方法の特に好ましい態様において、その酵素的に不活性な変異体が使用されるプロテアーゼはV8プロテイナーゼであり、例えば、スタフィロコッカス・アレウス(Staphylococcus aureus)由来のV8プロテイナーゼである。対応する変異体、特にこの酵素の無水の変異体は、本発明に特に好適である。この変異体は、C-末端にグルタミン酸またはアスパラギン酸残基を有する切断産物の濃縮、単離及び/または同定に使用することが可能である。この点については C-末端アスパラギン酸残基を有するペプチドが濃縮または単離及び/または同定されることが特に好ましい。
【0023】
本発明の方法は、システインプロテアーゼの切断産物の研究に有利に使用することができる。本発明の方法は、一つ以上のカスパーゼの切断産物の研究及び特性化に極めて好適である。カスパーゼは、その切断産物がC-末端にアスパラギン酸を有する、非常に特殊なプロテアーゼである。従って、V8プロテイナーゼの酵素的に不活性な変異体は、C-末端アスパラギン酸残基を有する切断産物に高い親和性を有するので、カスパーゼの切断産物の研究に特に好適に使用される。
【0024】
本発明は、さらに、プロテアーゼの酵素的に不活性な変異体を包含し、この変異体は基質特異性を保持する。この点について、特に好ましいものは、セリンプロテアーゼ、特にV8プロテイナーゼ、例えば、スタフィロコッカス・アレウス(Staphylococcus aureus)由来のV8プロテイナーゼの、対応する変異体である。このような変異体は、本発明の上述の方法において、非常に有利に使用することができる。この変異体のさらなる特徴に関しては、上述を参照する。
【0025】
この変異体の特に好ましい態様では、237位のセリンが修飾、交換または削除された、例えばスタフィロコッカス・アレウス(Staphylococcus aureus)由来の、V8プロテイナーゼが挙げられる。この位置のセリンは、別のアミノ酸、特にアラニンで置換されているのが好ましい。237位のセリンのアラニン置換は、この場合、好ましくは712位のチミンのグアニン塩基交換によって起こる。237位のセリンは、プロテイナーゼの活性中心において重要なセリンである。この部位の変化によって、基質特異性は保持されながら、触媒活性、即ち加水分解活性が損なわれる。
【0026】
本発明の変異体は、プロテアーゼの化学修飾によって製造することができる。しかしながら、この変異体は分子生物学的方法で製造されることが特に好ましい。
【0027】
本発明の酵素的に不活性な変異体は、少なくとも配列番号1で示されるアミノ酸配列の一部を有することを特徴とし得る。本発明はさらに、配列番号1で示されるアミノ酸配列またはその一以上の部分に、少なくとも70%、特に、少なくとも90%、好ましくは少なくとも99%が一致する、対応する変異体を包含する。特に、本発明は、基質特異性に関わる配列番号1で示されるアミノ酸配列の一以上の部分を有する変異体を包含する。加えて、本発明は、本発明の意味では依然として適当な基質特異性をもたらすようなこのタイプの配列との類似性を有する変異体をも包含する。
【0028】
本発明のこの様相のさらに好ましい態様では、酵素的に不活性な変異体は、さらに、固定化された形態で存在することを特徴とする。この点についても、上述を参照する。
【0029】
本発明はさらに、基質特異性を保持したプロテアーゼの酵素的に不活性な変異体をコードするヌクレオチド配列を包含する。このヌクレオチド配列によってコードされるプロテアーゼのさらなる特徴に関しては、上述を参照する。本発明のヌクレオチド配列は、特に、配列番号2で示されるヌクレオチド配列の少なくとも一部を含むことを特徴とする。この点については、基質特異性に不可欠なプロテアーゼの領域をコードするヌクレオチド配列の部分が特に好ましい。
【0030】
本発明はさらに、少なくとも一つの酵素の切断産物を濃縮、単離及び/または同定する方法であって、プロテアーゼの少なくとも一つの切断産物と該酵素の少なくとも一つの切断産物とが、少なくと一つの構造的類似性を有する方法において、その基質特異性を保持するプロテアーゼの、酵素的に不活性な変異体の、親和性物質としての使用を包含する。本発明のこの使用のさらなる特徴については、上述を参照する。
【0031】
最後に、本発明は、酵素切断産物の濃縮、単離及び/または同定のためのアフィニティーマトリックスを包含する。
【0032】
このアフィニティーマトリックスは、その基質特異性を保持したプロテアーゼの、固定化された、酵素的に不活性な変異体を含む。これに関しても、上述を参照する。本発明のこのアフィニティーマトリックスは、プロテオミクス領域及びデグラドミクス(degradomics)研究における調査のための普遍的ツールとして使用することができる。例として、例えば種々の条件下のカスパーゼなどの、酵素ファミリー全体の活性の変化を研究するために用いることができる。
【0033】
アフィニティーマトリックスは、例えば、慣例のアフィニティークロマトグラフィーに相当する単純なカラムクロマトグラフィーとして使用することができる。調査する試料の装填、及び一工程以上の洗浄工程の後、例えば緩衝液の条件を変化させることによって、調査する切断産物を溶出し、その後分析することができる。分析は、例えば、慣例の二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって実施することができる。このような方法で、酵素活性についての情報を提供する結果を2、3工程で得ることが可能である。加えて、酵素、特にプロテイナーゼの基質及び産物を特徴づけること、及び/または同定することも可能である。本発明の方法は、特にプロテオミクス研究に非常に重要な、特定の分類のタンパク質またはペプチドを濃縮するかまたは選択的に精製するための効果的なツールを提供する。このような群(group)特異的親和性ツールは、活性に基づいたタンパク質のプロフィールが描かれる可能性を開く。それによって、酵素の量的レベルでは一定のままであっても、酵素の機能的状態の変化を調査することが可能である。本発明により、さらに、例えばカスパーゼ類などの酵素ファミリーの、種々の構成員に影響を及ぼす阻害剤の活性の研究に着手することが可能であろう。この目的のため、上述のように、本発明によれば、酵素ファミリーの活性を続いて分析するために可能な阻害剤で、例えば無傷細胞または細胞抽出物を処理することが可能である。
【0034】
さらなる特徴は、図面及び従属項と併せて実施例より明らかである。この点については、種々の特徴をそれぞれ単独でまたは互いに組み合わせて実施することが可能である。
【実施例】
【0035】
1.方法
1.1 V8(48プロテアーゼのクローニング
スタフィロコッカス・アレウス(Staphylococcus aureus) (ATCC 25923)をLB培地で一晩、37℃で培養した。ゲノムDNAを、培養物1mlからRNA/DNA QIAGENミニキットで精製した。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を、プライマーPF1(配列番号4)及びPR1(配列番号5)(表1)、dNTP混合物、及びPfuTurboR DNAポリメラーゼを用いて実施した。ヤブタらによるこれらのプライマー(Appl. Microbiol. Biotechnol. 44, 118-125 (1995))により、V8 プロテアーゼの1位から663位のアミノ酸(V8(48 プロテアーゼ)をコードする配列が増幅された。増幅産物は、1.2%アガロースゲル上での電気泳動によって分画し、臭化エチジウムで染色した。得られたPCR産物を精製し、BamHI 及びHindIIIで二重消化し、ベクターpUC18中にライゲーションして、プラスミドpUC18-V8(48とした。ライゲーション混合物は大腸菌(Escherichia coli) DH5((適格細胞)のトランスフェクションに使用した。産生したクローンは全て、DNA塩基配列決定法で調べた。
【0036】
【表1】

【0037】
1.2.部位指定変異導入及びベクターpQE9へのサブ・クローニング
QuikChangeRXL部位指定変異導入キット及びプラスミドpUC 18-V8(48を用いて、V8(48の部位指定変異導入を実施した。プライマーPF2(配列番号6)及びPR2(配列番号7)(表1)を用いて、237位のセリン(Ser)からアラニン(Ala)への突然変異を達成した。ベクターを単離し、配列を決定した。陽性クローンを、BamHI 及びHindIIIで二重消化し、発現ベクターpQE9中にライゲーションして、プラスミドpQE9-Ser237Ala-V8(48とした。
【0038】
1.3.大腸菌(E. coli)からのV8プロテアーゼの発現及び精製
形質転換受容性の大腸菌(E.coli)株BL21(DE3)をプラスミドpQE9-Ser237Ala-V8(48でトランスフェクションした。このプラスミドで新たにトランスフェクションされた細胞を、100mlのLB(Luria Bertani)培地中、1μg/mlのアンピシリンと共に37℃で培養した。細胞密度0.6((=660nmでの吸収)で、イソプロピルチオガラクトシドを最終濃度が1mMになるまで加えることにより、タンパク発現が誘導された。さらに3時間インキュベートした後、遠心分離によって細胞を集め、2mlの溶解緩衝液(50mMトリス塩酸、300mM塩化ナトリウム、1%CHAPS、pH7.4)中に懸濁した。リゾチームを含む溶液(20mg/ml)を0.1ml加えて細胞を溶解した。混合物を37℃で30分間インキュベーションし、細胞を完全に破壊するために超音波処理した。溶液をインキュベーションした後、15,000×gで20分間遠心分離した。さらに上澄みを用い、ペレットは廃棄した。SDSゲル分析のための各上澄みから8μlの試料を得た。
【0039】
0.5mlのカラムにNi-NTAアガロースビーズを充填し、上澄みと共に装填した。カラムを、5カラム容量の溶解緩衝液、及び5カラム容量の20mMのイミダゾールを含む溶解緩衝液で洗浄した。結合したタンパク質は、溶出緩衝液(50mMトリス塩酸、300mM塩化ナトリウム、 1%CHAPS、400mMイミダゾール、pH7.4)で溶出した。タンパク質含量は、検定用標品としてウシ血清アルブミンを用いたBCA法で定量した。溶出した分画は、不連続な緩衝液を用いた12%SDS−PAGEでのLaemmli法で分析した。染色はクマシー・ブリリアント・ブルーR−250で行った。精製した酵素分画をまとめて、NAP−5ゲルろ過カラムを用いて脱塩した。NAP−5カラムは使用前にpH7.4の50mMトリス塩酸、1%CHAPS、10%グリセロールで平衡化した。試料は次に使用するまで20℃で保管した。
【0040】
1.4.酵素活性の定量
V8プロテアーゼ活性は、0.2mlの0.4%ユニバーサル・プロテアーゼ基質(ロシュ)を用い、pH7.8の0.1Mトリス塩酸中、30℃で測定した。酵素活性は、10分間にわたって574nmの吸収を観察することによって定量した。
【0041】
1.5.N-Asp及びN-Glu-ペプチドの固定化Ser237Ala-V8(48プロテアーゼへの結合
Ni-NTA-アガロースビーズ(20μl)を、pH4の、50mMトリス塩酸、300mMの塩化ナトリウム、1%CHAPS中の、20μgのSer237Ala-V8(48と共に装填した。アガロースビーズは、200μlの0.1M酢酸で2回、その後、1mlの、pH7.2の、50mM燐酸ナトリウム、300mM塩化ナトリウム、1%CHAPSで3回洗浄した。レチナールコリン作動性ニューロンの向神経性因子及び[Cys(Bz)84, Glu(OBz)85]-CD4(81-92)の、各ペプチドの1mg/ml溶液のそれぞれ20μlを同一の緩衝液中、装填したアガロースビーズと共に、室温で20分、持続的に振盪しながらインキュベーションした。[Cys(Bz)84, Glu(OBz)85]-CD4(81-92)は、84位(Cys)をBzで、85位(Glu)をOBzで誘導体化したCD4タンパク質の短いアミノ酸配列AA81−92である。ビーズは、毎回氷冷した500μlの緩衝液と500μlのpH8.4の20mM炭酸水素アンモニウムで3回洗浄し、20μlの200mM酢酸で溶出した。試料はSpeed Vacで凍結乾燥し、質量分析(MALDI−TOF)に使用した。
【0042】
1.6.細胞培養
NRKラット腎線維芽細胞系を、5%の二酸化炭素を含む湿気のある環境中、37℃で、ダルベッコMEM培地(10%のウシ胎仔血清(FCS)、1%抗生物質−抗真菌剤(10,000U/mlのペニシリンG、10mg/mlのストレプトマイシン及び25μl/mlのアンフォテリシンBの100倍溶液)を含むHamのF12栄養混合物)で培養した。細胞を10cmの培養皿で培養して亜融合(subconfluence)させ、トリプシン−EDTAを用いて1:5の割合で分割した。全ての実験で、80%の融合性NRK49F細胞が、24〜48時間、0.5%のFCSを含む対応する培地中でインキュベーションすることにより静止した。細胞は、液体窒素中、90%FCS、10%DMSO中で凍結して保管した。
【0043】
1.7.アポトーシスの誘発及び細胞抽出物の調製
1M過酸化水素を最終濃度1mMまで添加することにより、80%の融合性細胞でアポトーシスを誘発した。コントロールの細胞は、過酸化水素を加えず、対応する期間、インキュベーションした。細胞は、低張緩衝液(pH7.2の10mM燐酸ナトリウム、1%TritonX−100、1倍の完全な(complete)プロテアーゼ阻害剤)中で溶解し、不溶の細胞残渣は10,000gで20分間遠心分離することによって除去した。上澄に5M塩化ナトリウムを添加し、最終濃度を300mMとした。この方法で得られた試料は、上述のSer237Ala-V8(48プロテアーゼを装填した100μl詰のNi-NTA-アガロースカラムに装填した。ビーズを300mM塩化ナトリウムを含む氷冷した緩衝液2mlで3回洗浄し、pH7.4の10mMトリス塩酸、300mMの塩化ナトリウム中の1%SDS100μlで、80℃5分間で溶出した。塩類はミリポアBIOMAX 5K限外ろ過膜装置を用いて除去し、試料は電気泳動試料緩衝液で希釈した。
【0044】
1.8.二次元ゲル電気泳動
Bio-Rad社のReady-to-useのIPGストリップであるReadystrip(pH5〜8)を、50μlの細胞抽出物と共に一晩再水素化(rehydrogenate)した。等電点電気泳動法を全部で70kVhまで実施した。SDSゲル電気泳動の前に、IPGストリップを、平衡緩衝液中のジチオスレイトール(DTT)の20mg/mlの溶液中で20分間インキュベーションし、その後、同緩衝液中のヨードアセトアミドの45mg/mlの溶液中に20分間で加えた。SDS−PAGEを、定電流(40mA)、11℃で、11%ポリアクリルアミドゲル(70×70×1.0mm)を用いて実施した。二次元は、ブロモフェノールブルーの先がゲルの末端に達するまで実施した。シェフチェンコ(Shevchenko)らの方法(Anal. Chem. 68, 850-858 (1996))で、ゲルを銀で染色した。
【0045】
1.9.MALDI−TOF質量分析の試料調製
タンパク質の質量分析ペプチドマップを得るために、産生した切断産物の0.5μlの分割量を試料担体に分配し、35%アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸中のα−シアノ−4−ヒドロキシ−桂皮酸溶液0.5μlを添加した。
【0046】
1.10.MALDI−TOF質量分析
AutoflexMALDI−TOF質量分析計(ブルカー(Bruker)、ドイツ)で試料を分析した。スペクトルは全て陽性イオン反射形態で記録した。典型的には、新しいスポットの最初の10スポットを除き、次の200スポットを記録した。
【0047】
1.11.MALDI−TOFスペクトルの検定
検定用外部標準として、ヒトアンジオテンシンI及びII、副腎皮質刺激ホルモン、[Glu]−フィブリノペプチドB、レニン基質テトラデカペプチド及びインスリンB鎖を用いた。各ペプチドの量は、スポット当たり0.25pmolとした。
【0048】
2.結果
V8(48プロテアーゼのコード領域を、ヤブタらの方法で、S.aureusのゲノムDNAを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって増幅した。得られた産物をBamHI/HindIII 制限酵素認識部位でプラスミドpUC18中にライゲーションした。コード領域が先行の研究で示された配列と同一であることが、二本鎖配列決定で示された。
【0049】
部位指定変異導入を実施し、V8プロテアーゼ遺伝子を有するpUC18プラスミドにおいて、Ser−237をAlaへ突然変異(T712>G)させた。この工程は、DNA配列決定によって確認した。この突然変異を含む、確認されたコロニーをVB培地で培養し、対応するプラスミドを単離して、BamHI 及びHindIIIで消化した。得られたSer237Ala-V8(48遺伝子を、BamHI/HindIII 制限酵素認識部位を用いて発現ベクターpQE9へサブ・クローニングし、E.coli BL21(DE3)のトランスフェクションに用いた。
【0050】
N−末端をヒスチジンで標識した変異体 Ser237Ala-V8(48(図1)は、イソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシドを用い、37℃3時間でE.coli BL21(DE3)での発現に成功した。Ni-NTAアガロースカラムを使用し、変異体を精製した。Ser237Ala-V8(48を含むタンパク質の分画は、精製後できるだけ早く、pH7.4の25mMトリス塩酸、1%TritonX−100及び100mM塩化ナトリウムで平衡化されたNAP5カラムで脱塩した。酵素の純度は、観測されている純度が95%超の26kDAのシングルバンドを用いたSDS−PAGEで調べた(図2)。V8(48プロテイナーゼ変異体の全量の殆どが溶解性タンパク質として発現し、Ni-NTAアガロースアフィニティーカラムを使って一工程で精製することができた。
【0051】
発現し、精製したタンパク質は、タンパク溶解活性を示さなかった。同混合物において、陽性コントロールとして、V8プロテイナーゼの野生型を使用した(図3)。
【0052】
レチナールコリン作動性ニューロンの向神経性因子及び[Cys(Bz)84, Glu(OBz)85]-CD4(81-92)を使用して、C−末端にアスパラギン酸またはグルタミン酸を有するペプチドへのSer237Ala-V8(48の結合特性を試験した。Ni-NTA-アガロースビーズに固定化した変異体をそれぞれのペプチドと共にインキュベーションし、ビーズを洗浄した後、結合したペプチドを200mM酢酸で溶出した。溶出液中の両ペプチドは、MALDI−TOFで検出された(図4)。検定ペプチドをMALDI−TOF質量分析において、この実験の照合用に用いた。これらのコントロールのペプチドではMALDI−TOFスペクトルにおいてシグナルは検出されなかった。カスパーゼの切断産物へのこの新規親和性物質の結合特性を試験するために、再度精製した、Ni-NTA-アガロースに固定化したSer237Ala-V8(48を使用した。この試験において、過酸化水素を使用することによって、NRK−49F細胞にアポトーシスを誘発した。単離した後、タンパク質とペプチドをSer237Ala-V8(48と共にNi-NTA-アガロース上にのせた。結合しなかった物質を洗浄した後、結合したペプチドを、昇温しながらSDS溶液で溶出した。非アポトーシスNRK−49F細胞をこの実験の照合用に用いた。両試料を2D PAGEによって分析し、タンパク質とペプチドのパターンには著しい差が観察された(図5)。図5において、タンパク質のスポットの多くは、コントロール及びアポトーシス細胞抽出物のゲルの両方で観察された。この理由は、C−末端にアスパラギン酸またはグルタミン酸を有する全てのタンパク質が親和性物質によって結合したためである。これらのタンパク質は全てバックグランドと見なすことができる。アポトーシス細胞抽出物のゲルにおいてのみ観察されたタンパク質スポットは、カスパーゼ活性による切断産物である。
【0053】
カスパーゼ活性による切断産物を同定するために、二次元ゲル上で対応するスポットに印しを付け(図6)、ゲルを切断した。このゲルからトリプシン消化によって、タンパク質またはペプチドが得られた。得られたフラグメントをMALDI−TOF質量分析に付した(Vogtら、2003. Rapid communications in mass spectrometry 17: 1273-1282)。得られた質量をデータベースのデータと比較し(図7)、この方法で、二次元ゲルからのタンパク質を同定した。このことから、図6においてスポット5とラベルしたタンパク質がβ−チューブリン、スポット8のタンパク質がβ−アクチン、スポット16のタンパク質がヌクレオシド二リン酸キナーゼ(nm23)であることがわかった。これらのタンパク質は、文献ではカスパーゼ基質として記載されている(例えば、J. Urol. 2003 May; 169 (5): 1729-1734; J. Neuroscience 2003 Mar. 1; 23 (5): 1742-1749; J. Neuroscience Research 2002 Oct.15; 70 (2): 180-189; J. Comp. Neurol. 2002 Oct.7; 452 (1): 65-79; J. Comp. Neurol. 2000 Aug.28; 424 (3): 476-488; Brain Res. Mol. Brain Res. 2000 Jan.10; 75 (1): 143-149; Cell 2003 Mar.7; 112 (5): 659-672; Cell 2003 Mar.7; 112 (5): 589-591; Blood 2003 Apr.15; 101 (8): 3212-3219)。スポット3とラベルしたタンパク質はγ−アクチンと同定した(Eur. J. Biochem. 2003 Jan.; 270 (2): 342-349; Arch. Dermatol. Res. 2001 Jun.; 293 (6): 283-290; Mol. Endocrinol. 1991 Oct.; 5 (10): 1381-1388)。このタンパク質はβ−アクチンとかなりの相同性を示すことから、γ−アクチンも同様にカスパーゼ基質であると推測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、Ser237Ala-V8(48の構成を図式で表したものである。
【図2】図2は、V8 プロテイナーゼの無水の変異体を表す。タンパク質試料を、不連続性緩衝液を用いて、12%SDSポリアクリルアミドゲル(SDS-PAGE)で分画した。染色は、クマシー・ブリリアントブルーで行った。1:完全細胞溶解物、2:流入、3:溶出、4:マーカータンパク質。
【図3】図3は、V8 プロテイナーゼの野生型及び無水の変異体の酵素活性である。プロテイナーゼ活性は、pH7.8の0.1Mトリス塩酸、0.01M塩化カルシウム、及び0.4%の 一般的プロテアーゼ基質(ロシュ)0.2ml中、30℃で測定した。活性は、分光光度計で574nmの吸収を10分間測定することによって定量した。プロテイナーゼの濃度は、それぞれ1μg/μlであった。
【図4】図4は、アンヒドロ−V8−アガロースから溶出したペプチドの質量分析測定(MALDI-TOF)である。Ni-NTA-アガロースビーズを50mMトリス塩酸、300mM塩化ナトリウム、1%CHAPS中のSer237Ala-V8(48と共にpH7.4で装填した。レチナールコリン作動性ニューロンの向神経性因子及び[Cys(Bz)84, Glu(OBz)85]-CD4(81-92)を装填したアガロースと共にインキュベーションした。このアガロースを200mM酢酸で洗浄及び溶出した。試料を減圧乾燥機(Speed Vac)で凍結乾燥し、質量分析(MALDI)に用いた。スペクトル1:レチナールコリン作動性ニューロンの向神経性因子の溶出液、スペクトル2:Cys[(Bz)84, Glu(OBz)85]-CD4(81-92)の溶出液。
【図5】図5は、アンヒドロ−V8−アガロースの溶出液の二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動である。40μgの細胞抽出物と共に、IPGストリップであるReadystrip(pH5〜8)を装填した。等電点電気泳動法(IEF)を70kVh以下で実施した。SDS−PAGEを、定電流(40mA)、11℃で、11%ポリアクリルアミドゲル(70×70×1.0mm)を用いて実施した。二次元は、ブロモフェノールブルーの先がゲルの末端に達するまで実施した。ゲルを硝酸銀で染色した。左側のゲルはコントロールであり、右側のゲルはアポトーシスを誘発した細胞の、分画した細胞抽出物である。
【図6】図6は、アポトーシスを誘発した細胞の、分画した細胞抽出物の二次元ポリアクリルアミドゲルであり、コントロールのゲル(図5参照)と異なるタンパク質のスポットに番号を付す。
【図7】図7は、アポトーシスを誘発した細胞の細胞抽出物の、二次元ポリアクリルアミドゲルで得られた種々のスポット(図6参照)の質量分析結果のデータを比較したものである。
【図8】図8は、6xHis-Ser237Ala-V8(48 変異体のアミノ酸配列(A)及びヌクレオチド配列(B)及び(C)である。(A)は、6xHisリンカーを含む変異体のアミノ酸配列を示す(配列番号1)。(B)は6xHisリンカーと、ベクターpQE9由来の終止コドンを含む、コードするヌクレオチド配列を示す(配列番号2)。(C)は、ベクターpQE9へのクローニングの挿入物として用いられたヌクレオチド配列を示す(配列番号3)。(A)において、6xHisはイタリック体で示しており、アラニンの突然変異はアンダーラインを付した太字で示す。(B)及び(C)において、制限切断部位(BamHI及びHindIII)はイタリック体で示し、点突然変異(tからg)はアンダーラインを付した太字で示す。
【配列表】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
親和性物質として基質特異性を保持したV8プロテイナーゼの酵素的に不活性な変異体を用い、試料から、少なくとも一つの酵素、即ち少なくとも一つのカスパーゼの切断産物を、濃縮、単離及び/または同定する方法であって、該プロテアーゼの少なくとも一つの切断産物と該酵素の少なくとも一つの切断産物とが、少なくとも一つの構造的類似性を有し、
− 試料を酵素的に不活性な変異体と共にインキュベートし、試料中の酵素の考えられ得る切断産物と変異体との間に相互作用を形成する工程、
− 非相互作用物質を除去する工程、
− 適当な場合、変異体から相互作用している切断産物を分離する工程、
− 適当な場合、切断産物を分析する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
該酵素がプロテアーゼであって、その酵素的に不活性な変異体が用いられたプロテアーゼとは異なるプロテアーゼであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
構造的類似性として、該V8プロテイナーゼの少なくとも一つの切断産物が、該酵素の少なくとも一つの切断産物と、少なくとも一つの同一の末端アミノ酸、特に同一のC−末端アミノ酸を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
該C−末端アミノ酸がグルタミン酸及び/またはアスパラギン酸であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該V8プロテイナーゼの酵素的に不活性な変異体において、活性中心が変化していることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
該V8プロテイナーゼがセリンプロテアーゼであることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
該酵素的に不活性な変異体が無水の変異体であることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
該変異体において、セリンがアラニンで置換されていることを特徴とする、前記請求項のいずれか、特に請求項5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
該酵素的に不活性な変異体が固定化されていることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ポリアクリルアミドゲル電気泳動、特に一次元及び/または二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動、及び/または質量分析を用いて該分析を行うことを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
該分析が少なくとも一工程のクロマトグラフィー工程を含むことを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
該方法中、特に該分析中に、該切断産物が修飾されること、特に切断されること、好ましくは酵素的に切断されることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
基質特異性を保持することを特徴とする、V8プロテイナーゼ、特にセリンプロテアーゼの、酵素的に不活性な変異体。
【請求項14】
活性中心が変化していることを特徴とする、請求項13に記載の変異体。
【請求項15】
無水の変異体であることを特徴とする、請求項13または14に記載の変異体。
【請求項16】
セリンがアラニンで置換されていることを特徴とする、請求項13〜15のいずれか、特に請求項14に記載の変異体。
【請求項17】
237位のセリンが置換されていることを特徴とする、請求項13〜16のいずれかに記載の変異体。
【請求項18】
少なくとも配列番号1で示されるアミノ酸配列の一部を有することを特徴とする、請求の範囲13〜17のいずれかに記載の変異体。
【請求項19】
少なくとも配列番号1で示されるアミノ酸配列の一部に、少なくとも70%、特に、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも99%が一致するアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項13〜18のいずれかに記載の変異体。
【請求項20】
固定化されていることを特徴とする、請求項13〜19のいずれかに記載の変異体。
【請求項21】
請求項13〜20のいずれかに記載のV8プロテイナーゼの酵素的に不活性な変異体をコードするヌクレオチド配列。
【請求項22】
少なくとも配列番号2で示されるヌクレオチド配列の一部を有することを特徴とする、請求項21に記載のヌクレオチド配列。
【請求項23】
試料から、少なくとも一つの酵素、即ち少なくとも一つのカスパーゼの切断産物を、濃縮、単離及び/または同定する方法であって、該V8プロテイナーゼの少なくとも一つの切断産物と該酵素の少なくとも一つの切断産物とが、少なくとも一つの構造的類似性を有する方法おいて、請求項13〜20のいずれかに記載のV8プロテイナーゼの酵素的に不活性な変異体の、親和性物質としての使用。
【請求項24】
該使用が請求項1〜12のいずれかに記載の特徴の少なくとも一つを示すことを特徴とする、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
請求項13〜20のいずれかに記載の基質特異性を保持したV8プロテイナーセの、固定化された、酵素的に不活性な変異体を含む、酵素の切断産物を濃縮、単離及び/または同定するためのアフィニティーマトリックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−525004(P2006−525004A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505273(P2006−505273)
【出願日】平成16年4月27日(2004.4.27)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004404
【国際公開番号】WO2004/099424
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(504385384)プロテオジス アクチェンゲゼルシャフト (5)
【Fターム(参考)】