説明

酵素含有ポリマー粒子を含む酵素組成物

本発明は、酵素含有ポリマー粒子を含む酵素組成物であって、洗剤組成物、特に液体洗剤組成物に有用な酵素組成物に関する。これらの酵素含有粒子において、粒子は、i)少なくとも1つの酵素、及びii)C−C−骨格を有するホモポリマー及びコポリマーから選択される少なくとも1つのポリマーPを含み、C−C−骨格は酸性形態又は中和形態で存在し得るカルボキシル基を有し、C−C−骨格は疎水性繰り返し単位を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗剤組成物、特に液体洗剤組成物に有用な、酵素含有ポリマー粒子を含む酵素組成物に関する。
【0002】
酵素の安定性は、化学的又は物理的要因が酵素の安定性を低下させ得るので、貯蔵時の周囲環境によって影響を受けることが知られている。特に、液体洗剤などのタンパク質対抗化合物を含む液体配合物における酵素の安定性は問題があり、酵素をこのような液体配合物中で安定させるのは困難である。液体洗剤に特有の問題は、これらが通常タンパク質を消化するタンパク分解酵素を含むので、液体洗剤中に存在する他の酵素が存在するプロテアーゼによって不活性化される可能性があることであり、この場合、タンパク質分解と自己タンパク質分解との両方が起こり得る。
【0003】
液体配合物において、通常の液体酵素製品の代わりに、ポリマーと酵素との混合物を含む粒子を使用することは、いくつかの利点を有し得る。すなわち、酵素の活性が必要になるまで、酵素対抗化合物を酵素から遠ざけておくことが可能であり、酵素を活性化させる液体中の化合物と酵素が直接接触するのを回避することが可能である。しかし、液体配合物は、酵素含有ポリマー粒子を添加した後に、比較的大きな粒子の光散乱のために混濁する可能性がある。粒子が添加後に液体配合物の外観を全く若しくはごくわずかしか改変しないこと、及び沈殿する傾向が減少していることも重要である。さらに、酵素が適切な時点で放出されること、例えば液体洗剤に関しては、酵素が洗浄水と接触する際に放出されることがさらに重要であり得る。
【0004】
液体洗剤などの液体配合物に適した酵素組成物を製造するために、いくつかの試みがなされてきた。
【0005】
EP356239A2及びEP356240は、水非混和性液体中ポリアクリル酸及び酵素などの水溶性ポリマーの水溶液の油中水(w/o)エマルジョンから水を除去することによるか、又はホルムアルデヒド及び尿素を用いたコアセルベーションによって製造される、酵素含有ポリマービーズを開示する。このポリマー粒子の製造法は、冗漫であり、小さな酵素ポリマー粒子の製造ができない。これは別にしても、酵素の安定性は満足できるものではない。
【0006】
WO93/22417A1は、(a)洗剤酵素などの洗剤感受性成分及び(b)(i)エチレン性不飽和モノマーの乳化重合によって形成される疎水性ポリマーコアと、(ii)合成非イオン性ポリマー、多糖類、修飾多糖類、タンパク質、修飾タンパク質、ヒドロキシル基を有するポリマー及びカルボキシル基を有するポリマーから選択される親水性ポリマーとを含むポリマー複合体を含むポリマーカプセルを記載する。しかし、ポリマー複合体の製造は困難である。
【0007】
US5,198,353は、安定化された酵素分散液の製造法であって、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、グアーガム又はポリカルボン酸などの水溶性ポリマーを水溶液から酵素の存在下で沈殿させることを含む方法を記載する。分散液は酵素液体洗剤に適している。しかし、達成される安定化は完全に満足できるというわけではない。
【0008】
WO02/81616A1は、洗剤組成物に適した水溶性又は水分散性酵素含有粒子を記載し、この場合、酵素はポリビニルアルコールを含むマトリックス中に分散されている。粒子はかなり大きく、したがって液体洗剤組成物中に組み入れるのが困難である。
【0009】
WO02/96551A1は、コロイド状テンプレート及びこのテンプレートの周囲のポリマーを含む溶解可能なナノカプセル又はマイクロカプセルを記載する。ポリマーは、両性高分子電解質、たとえば好ましくはpH4〜9の範囲で等電点を有するタンパク質である。これらのカプセルを、洗濯洗剤を封入するために使用することが示唆される。ナノカプセル又はマイクロカプセルの製造法は冗漫であり、両性高分子電解質は高価である。
【0010】
したがって、本発明の目的は、液体洗剤などの、タンパク質対抗化合物を含む液体配合物中に酵素を有効に安定化させるための組成物を提供することである。組成物は、液体配合物中、特に液体洗剤組成物中に容易に組み入れられることが望ましい。液体配合物中に組み入れる場合、組成物は配合物の外観に影響を及ぼしてはならない。さらに、組成物は容易に考案可能でなければならない。
【0011】
驚くべきことに、これら及びさらなる目的は、酵素含有粒子の形態の組成物によって解決されることが判明し、この場合、粒子は
i)少なくとも1つの酵素、及び
ii)少なくとも1つのポリマーPであって、C−C−骨格を有するホモポリマー及びコポリマーから選択されるポリマーP(ここでC−C−骨格は、酸性形態又は中和形態で存在し得るカルボキシル基を有し、C−C−骨格はポリマーPの合計質量に対して(すなわち、ポリマーP中の繰り返し単位の合計質量に対して)で少なくとも20質量%、たとえば20〜98質量%の、25℃で最大30g/lの水溶性を有するモノマーB由来の疎水性繰り返し単位を含み、酵素含有粒子の体積平均粒子径は50nm〜100μmである)
を含む。
【0012】
したがって、本発明は酵素含有粒子の形態の酵素組成物に関し、この場合、粒子は
i)少なくとも1つの酵素、及び
ii)本明細書で定義される少なくとも1つのポリマーP
を含み、酵素含有粒子の体積平均粒子径は50nm〜100μmである。
【0013】
本発明の酵素組成物はいくつかの利点を有する。ポリマーPと酵素との混合物を含む粒子は、洗剤などの液体配合物における酵素の貯蔵安定性を改善する。酵素含有ポリマー粒子は、液体酵素調製物から容易に製造することができ、さらにポリマーPは市販されているか、または容易に製造することができる。粒子は小さいので、これらは配合物中で実際には見ることができず、沈殿しない。酵素は粒子中に存在するので、酵素は環境と直接接触せず、周囲環境中の酵素感受性化合物、たとえば液体洗剤の成分は、酵素と直接接触しない。酵素感受性化合物は、リパーゼに対する脂質又はプロテアーゼに対するタンパク質であり得る。これとは別に、酵素は、媒体中に迅速に放出され、この媒体中で作用すると思われる。洗剤に関して、洗浄過程の間に洗剤を水で希釈した場合に酵素が放出されることが重要である。このことは、放出系として機能するポリマーPの特性によって保証される。したがって、酵素組成物は、洗剤組成物、特に液体洗剤組成物に組み入れるのに適している。したがって、本発明は洗剤組成物、特に液体洗剤組成物にも関する。
【0014】
本発明の酵素組成物は、少なくとも1つの酵素又は酵素混合物を含む。
【0015】
本発明に関連する酵素は、任意の酵素であってもよいし、又は異なる酵素の組み合わせであってもよい。したがって、「酵素」について言及する場合、これは一般に1つの酵素又は酵素の組み合わせを包含すると理解される。酵素は任意の市販の酵素、特にプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、リアーゼ、オキシドレダクターゼ及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される酵素であってよい。同じ種類からの酵素(たとえばプロテアーゼ)の混合物も含まれる。
【0016】
本発明の組成物中に好適に組み入れることができる種類の酵素としては、オキシドレダクターゼ(EC1.−.−.−)、トランスフェラーゼ(EC2.−.−.−)、ヒドロラーゼ(EC3.−.−.−)、リアーゼ(EC4.−.−.−)、イソメラーゼ(EC5.−.−.−)及びリガーゼ(EC6.−.−.−)並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0017】
酵素変異体(たとえば組換え技術によって産生されるもの)は「酵素」という用語の意味に含まれると解釈されるべきである。このような酵素変異体の例は、たとえばEP251,446(Genencor)、WO91/00345(Novo Nordisk)、EP525,610(Solvay)及びWO94/02618(Gist−Brocades NV)に開示されている。
【0018】
酵素は、ハンドブックEnzyme Nomenclature from NC−IUBMB, 1992)に基づいて分類することができ、インターネットのENZYMEサイト:http://www.expasy.ch/enzyme/も参照のこと。ENZYMEは酵素の命名法に関する情報の保管庫である。これは主にNomenclature Committee of the International Union of Biochemistry and Molecular Biology(IUBMB)、Academic Press, Inc., 1992の提言に基づき、EC(酵素番号)が付与された各種の特性化された酵素を記載する(Bairoch A. The ENZYME database, 2000, Nucleic Acids Res 28:304−305)。このIUBMB酵素命名法は、それらの基質特異性及び場合によってそれらの分子機構に基づき、このような分類は、これらの酵素の構造的特徴を反映しない。
【0019】
アミノ酸配列類似性に基づいて、あるグリコシドヒドロラーゼ酵素、たとえばエンドグルカナーゼ、キシラナーゼ、ガラクタナーゼ、マンナナーゼ、デキストラナーゼ及びα−ガラクトシダーゼをファミリーに分類する別の分類法が数年前に提案された。これらは現在、90の異なるファミリーに分類される:CAZy(ModO)インターネットサイト(Coutinho, P.M. & Henrissat, B.(1999)Carbohydrate−Active EnzymesサーバーURL:http://afmb.cnrs−mrs.fr/〜cazy/CAZY/index.html(対応する論文:Coutinho, P.M. & Henrissat, B.(1999)Carbohydrate−active enzymes:an integrated database approach. In "Recent Advances in Carbonydrate Bioengineering", H.J. Gilbert, G. Davies, B. Henrissat and B. Svensson eds., The Royal Society of Chemistry, Cambridge, pp. 3−12;Coutinho, P.M. & Henrissat, B.(1999)The modular structure of cellulases and other carbohydrate−active enzymes:an integrated database approach. In "Genetics, Biochemistry and Ecology of Cellulose Degradation", K. Ohmiya, K. Hayashi, K. Sakka, Y. Kobayashi, S. Karita and T. Kimura eds., Uni Publishers Co., Tokyo, pp. 15−23)を参照のこと。
【0020】
オキシドレダクターゼ:液体組成物における使用に適した任意のオキシドレダクターゼ、例えばパーオキシダーゼ又はオキシダーゼ、例えばラッカーゼを本発明では使用することができる。本発明で好適なパーオキシダーゼには、植物、細菌又は真菌起源のものが含まれる。化学的又は遺伝的に修飾された突然変異体が含まれる。好適なパーオキシダーゼの例は、ヒトヨタケ属(Coprinus)の株、例えばコプリナス・シネレウス(C.cinerius)若しくはコプリナス・マクロリズス(C.macrorhizus)由来のもの、又はバチルス属(Bacillus)の株、例えばバチルス・プミルス(B.pumilus)由来のもの、特にWO91/05858のパーオキシダーゼである。本発明で好適なラッカーゼには、細菌又は真菌起源のものが含まれる。化学的又は遺伝的に修飾された突然変異体が含まれる。好適なラッカーゼの例は、ホウロクタケ属(Trametes)の株、例えばトラメテス・ビローサ(T.villosa)若しくはトラメテス・ベルシコラ(T.versicolor)由来のもの、又はヒトヨタケ属の株、例えばコプリナス・シネレウス由来のもの、又はミセリオフトラ属(Myceliophthora)の株、例えばミセリオフトラ・サーモフィラ(M.thermophila)由来のものが挙げられる。
【0021】
本発明に関連して好適なオキシドレダクターゼは、パーオキシダーゼ(EC1.11.1)、ラッカーゼ(EC1.10.3.2)及びグルコースオキシダーゼ(EC1.1.3.4)]である。市販のオキシドレダクターゼ(EC1.−.−.−)の一例は、Gluzyme(登録商標)(Novozymes A/Sから入手可能な酵素)である。さらなるオキシドレダクターゼは他の供給者から入手可能である。
【0022】
好適なトランスフェラーゼは、以下のサブクラスのいずれかのトランスフェラーゼである:
a C1基を移動させるトランスフェラーゼ(EC2.1);
b アルデヒド又はケトン残基を移動させるトランスフェラーゼ(EC2.2);アシルトランスフェラーゼ(EC2.3);
c グリコシルトランスフェラーゼ(EC2.4);
d メチル基以外のアルキル若しくはアリール基を移動させるトランスフェラーゼ(EC2.5);及び
e 窒素含有基を移動させるトランスフェラーゼ(EC2.6)。
【0023】
本発明に関連して最も好適な種類のトランスフェラーゼは、トランスグルタミナーゼ(タンパク質−グルタミンγ−グルタミルトランスフェラーゼ;EC2.3.2.13)である。好適なトランスグルタミナーゼのさらなる例は、WO96/06931(Novo Nordisk A/S)に記載されている。
【0024】
本発明に関連して好適なヒドロラーゼは:エステラーゼ(EC3.1)、特にカルボン酸エステルヒドロラーゼ(EC3.1.1.−)、たとえばトリアシルグリセロールリパーゼ(EC3.1.1.3);フィターゼ(EC3.1.3.−)、たとえば3−フィターゼ(EC3.1.3.8)及び6−フィターゼ(EC3.1.3.26);グリコシダーゼ(EC3.2、本明細書で「カルボヒドラーゼ」と表示する群に含まれる)、たとえばα−アミラーゼ(EC3.2.1.1)、β−アミラーゼ(EC3.2.1.2);ペプチダーゼ(EC3.4.−.−、プロテアーゼとしても知られる);及び他のカルボニルヒドロラーゼである。
【0025】
プロテアーゼ:好適なプロテアーゼには、動物、植物又は微生物起源のものが含まれる。微生物起源が好適である。化学的又は遺伝的に修飾された突然変異体が含まれる。プロテアーゼは、セリンプロテアーゼ、好ましくはアルカリ微生物プロテアーゼ又はトリプシン様プロテアーゼであってよい。アルカリプロテアーゼの例は、スブチリシン、特にバチルス由来のもの、例えばスブチリシンNovo、スブチリシンCarlsberg、スブチリシン309、スブチリシン147及びスブチリシン168(WO89/06279に記載)である。トリプシン様プロテアーゼの例は、トリプシン(例えばブタ又はウシ起源のもの)及びWO89/06270に記載されるフザリウム(Fusarium)プロテアーゼである。本発明の特定の実施形態において、プロテアーゼはセリンプロテアーゼである。セリンプロテアーゼ又はセリンエンドペプチダーゼ(最新の名称)は、酵素の活性中心にセリン残基が存在することを特徴とする種類のペプチダーゼである。
【0026】
セリンプロテアーゼ:セリンプロテアーゼは、ペプチド結合の加水分解を触媒する酵素であって、活性部位に必須セリン残基が存在する酵素である(White, Handler and Smith, 1973 "Principles of Biochemistry," Fifth Edition, McGraw−Hill Book Company, NY, pp. 271−272)。
【0027】
細菌セリンプロテアーゼは、20,000〜45,000ダルトンの範囲の分子量を有する。これらはジイソプロピルフルオロホスフェートによって阻害される。これらは単純末端エステルを加水分解し、真核性キモトリプシン及びセリンプロテアーゼとも活性が類似している。下位集団を対象とする下位語であるアルカリプロテアーゼは、セリンプロテアーゼの一部に最適な高いpH(pH9.0〜11.0)を反映する(総説に関しては、Priest(1977)Bacteriological Rev. 41 711−753を参照)。
【0028】
スブチラーゼ:スブチラーゼと仮称されるセリンプロテアーゼの下位集団がSiezenら(1991)、Protein Eng., 4 719−737によって提案されている。これらは、以前はスブチリシン様プロテアーゼと呼ばれたセリンプロテアーゼの40を超えるアミノ酸配列の相同性分析によって定義される。スブチリシンは、以前はグラム陽性菌又は真菌によって産生されるセリンプロテアーゼとして定義され、現在は、Siezenらによればスブチラーゼの下位集団である。様々なスブチリシンが同定され、多くのスブチリシンのアミノ酸配列が決定されている。これらには、6を超えるバチルス株由来のスブチリシン、すなわちスブチリシン168、スブチリシンBPN’、スブチリシンCarlsberg、スブチリシンY、スブチリシンアミロサッカリチカス、及びメセンテリコペプチダーゼ(Kurihara et al.(1972)J. Biol. Chem. 247 5629−5631 ;Wells et al.(1983)Nucleic Acids Res. 11 7911−7925;Stahl and Ferrari(1984)J. Bacteriol. 159 811−819, Jacobs et al.(1985)Nucl.Acids Res. 13 8913−8926;Nedkov et al.(1985)Biol. Chem. Hoppe−Seyler 366 421−430, Svendsen et al.(1986)FEBS Lett. 196 228−232)、放線菌目由来の1つのスブチリシン、サーモアクチノマイセス・ブルガリス(Thermoactinomyces vulgaris)由来のテルミターゼ(Meloun et al.(1985)FEBS Lett. 198 195−200)、及び1つの真菌スブチリシン、トリチラキウム・アルブム(Tritirachium album)由来のプロテイナーゼK(Jany and Mayer(1985)Biol.Chem. Hoppe−Seyler 366 584−492)が含まれる。さらなる参考のために、Siezenらからの第I表を以下に記載する。
【0029】
スブチリシンは物理的及び化学的に十分に特性化されている。これらの酵素の一次構造(アミノ酸配列)の知見に加えて、スブチリシンの50を越える高分解能X線構造が決定され、これらにより、基質の結合、遷移状態、生成物、少なくとも3つの異なるプロテアーゼ阻害剤が明らかになり、自然変異の構造的結果が規定される(Kraut(1977)Ann. Rev. Biochem. 46 331−358)。
【0030】
スブチラーゼの1つの下位集団であるI−S1は、「古典的な」スブチリシン、たとえばスブチリシン168、スブチリシンBPN’、スブチリシンCarlsberg(ALCALASE(登録商標)、Novozymes A/S)、及びスブチリシンDYを含む。
【0031】
スブチラーゼのさらなる下位集団I−S2は、Siezenら(上記)によって認められる。下位集団I−S2プロテアーゼは、高アルカリ性スブチリシンとして記載され、スブチリシンPB92(MAXACAL(登録商標)、Gist−Brocades NV)、スブチリシン309(SAVINASE(登録商標)、Novozymes A/S)、スブチリシン147(ESPERASE(登録商標)、Novozymes A/S)、及びアルカリエステラーゼYaBなどの酵素を含む。
【0032】
スブチラーゼ遺伝子のランダム及び部位特異的突然変異は、酵素の物理的及び化学的特性の知見から生じ、かつスブチラーゼの触媒活性、基質特異性、三次構造などに関連した情報を提供する(Wells et al.(1987)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84;1219−1223;Wells et al.(1986)Phil. Trans. R. Soc. Lond.A. 317 415−423;Hwang and Warshel(1987)Biochem. 26 2669−2673;Rao et al.,(1987)Nature 328 551−554。この分野を対象とする最近の刊行物は、基質における特定の標的配列(24及び64位)を切断する変異体の設計に関連するCarter et al.(1989)Proteins 6 240−248;多くのすでに発表された結果を考察しているGraycar et al.(1992)Annals of the New York Academy of Sciences 672 71−79;およびこれもまた従来の結果を再検討するTakagi(1993)Int. J. Biochem. 25 307−312である。
【0033】
市販のプロテアーゼ(ペプチダーゼ)の例としては、Kannase(商標)、Everlase(商標)、Esperase(商標)、Alcalase(登録商標)、Neutrase(登録商標)、Durazym(登録商標)、Savinase(登録商標)、Ovozyme(登録商標)、Pyrase(登録商標)、Pancreatic Trypsin NOVO(PTN)、Bio−Feed(登録商標)Pro及びClear−Lens(登録商標)Pro(すべてNovozymes A/S(デンマーク国バグスヴェルド)から入手可能)が挙げられる。他の好適なプロテアーゼとしては、WO01/58275及びWO01/58276に記載されているものが挙げられる。
【0034】
他の市販のプロテアーゼとしては、Ronozyme(登録商標)Pro、Maxatase(登録商標)、Maxacal(登録商標)、Maxapem(登録商標)、Opticlean(登録商標)、Propease(登録商標)、Purafect(登録商標)、及びPurafect Ox(登録商標)(Genencor International Inc.、Gist−Brocades、BASF、またはDSM Nutritional Productsから入手可能)が挙げられる。
【0035】
市販のリパーゼの例としては、Lipex(登録商標)Lipoprime(登録商標)、Lipopan(登録商標)Lipolase(登録商標)、Lipolase(登録商標)、Ultra、Lipozyme(登録商標)、Palatase(登録商標)、Resinase(登録商標)、Novozym(登録商標)435及びLecitase(登録商標)(すべてNovozymes A/Sから入手可能)が挙げられる。
【0036】
リパーゼ:好適なリパーゼには、細菌又は真菌起源のものが含まれる。化学的又は遺伝的に修飾された突然変異体が含まれる。
【0037】
有用なリパーゼの例としては、たとえば、EP258068及びEP305216に記載されているようなヒューミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)リパーゼ、たとえばEP238023に記載されているようなリゾムコール・ミーハイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ、カンジダ・アンタルクティカ(C.antarctica)リパーゼなどのカンジダ(Candida)リパーゼ、たとえばEP214761に記載されるカンジダ・アンタルクティカリパーゼA又はB、EP218272に記載されているようなシュードモナス・シュードアルカリゲネス(P.pseudoalcaligenes)及びシュードモナス・アルカリゲネス(P.alcaligenes)リパーゼなどのシュードモナス(Pseudomonas)リパーゼ、たとえばEP331376に記載されているようなシュードモナス・セパシア(P.cepacia)リパーゼ、たとえばBP1,372,034に記載されているようなシュードモナス・スタッツェリ(P.stutzeri)リパーゼ、シュードモナス・フルオレセンス(P.fluorescens)リパーゼ、バチルスリパーゼ、たとえばバチルス・サブチリス(B.subtilis)リパーゼ(Dartois et al.,(1993)、Biochemica et Biophysica acta 1131, 253−260)、バチルス・ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)リパーゼ(JP64/744992)並びにバチルス・プミルス(B.pumilus)リパーゼ(WO91/16422)が挙げられる。
【0038】
さらに、多くのクローン化リパーゼ、たとえばYamaguchi et al.,(1991)、Gene 103, 61−67)により記載されるペニシリウム・カマンベルティ(Penicillium camenbertii)リパーゼ、ゲオトリクム・カンジドゥム(Geotricum candidum)リパーゼ(Schimada, Y. et al.,(1989)、J. Biochem. 106, 383−388)、及び様々なリゾプス(Rhizopus)リパーゼ、たとえばリゾプス・デレマー(R.delemar)リパーゼ(Hass, M.J et al.,(1991)、Gene 109, 117−113)、リゾプス・ニベウス(R.niveus)リパーゼ(Kugimiya et al.,(1992)、Biosci. Biotech. Biochem. 56, 716−719)及びリゾプス・オリザエ(R.oryzae)リパーゼが有用であり得る。
【0039】
他の種類の脂肪分解酵素、たとえばWO88/09367に記載されているようなシュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina)由来のクチナーゼ、又はフザリウム・ソラニ・ピシ(Fusarium solani pisi)由来のクチナーゼ(たとえばWO90/09446に記載)も有用であり得る。
【0040】
他の市販のリパーゼとしては、Lumafast(登録商標)(Genencor International Inc.から得られるシュードモナス・メンドシナリパーゼ);Lipomax(登録商標)(Gist−Brocades/Genencor Int. Inc.から得られるシュードモナス・シュードアルカリゲネスリパーゼ;及びSolvay Enzymesから得られるバチルス種リパーゼが挙げられる。Lipase P "Amano"(Amano Pharmaceutical Co. Ltd.)など、さらなるリパーゼが他の供給者から入手可能である。
【0041】
アミラーゼ:好適なアミラーゼ(α及び/又はβ)には、細菌又は真菌起源のものが含まれる。化学的又は遺伝的に修飾された突然変異体が含まれる。アミラーゼとしては、たとえば、バチルス・リケニフォルミス(B.licheniformis)の特別種から得られるa−アミラーゼが挙げられ、これは英国特許明細書第1,296,839号にさらに詳細に記載されている。市販のアミラーゼは、Duramyl(商標)、Termamyl(商標)、Fungamyl(商標)及びBAN(商標)(Novozymes A/Sから入手可能)並びにRapidase(商標)及びMaxamyl P(商標)(Gist−Brocadesから入手可能)である。
【0042】
セルラーゼ:好適なセルラーゼには、細菌又は真菌起源のものが含まれる。化学的又は遺伝的に修飾された変異体も含まれる。好適なセルラーゼは、US4,435,307で開示され、この特許は、ヒューミコラ・インソレンス(Humicola insolens)から産生される真菌セルラーゼを開示する。特に好適なセルラーゼは、色管理の利点を有するセルラーゼである。このようなセルラーゼの例は、欧州特許出願第0495257号に記載されているセルラーゼである。
【0043】
市販のフィターゼの例としては、Bio−Feed(商標)フィターゼ(Novozymes)、Ronozyme(商標)P(DSM Nutritional Products)、Natuphos(商標)(BASF)、Finase(商標)(AB Enzymes)、及びPhyzyme(商標)製品シリーズ(Danisco)が挙げられる。他の好適なフィターゼとしては、WO98/28408、WO00/43503、及びWO03/066847で記載されているものが挙げられる。
【0044】
本発明に関連して、「カルボヒドラーゼ」という用語は、特に5員及び6員環構造を有する炭水化物鎖(例えばデンプン又はセルロース)を分解できる酵素(すなわち、グリコシダーゼ、EC3.2)だけでなく、炭水化物、例えばD−グルコースなどの6員環構造をD−フルクトースなどの5員環構造に異性化できる酵素も表すために用いられる。
【0045】
関連するカルボヒドラーゼとしては、以下のものが挙げられる(括弧内はEC番号):α−アミラーゼ(EC3.2.1.1)、β−アミラーゼ(EC3.2.1.2)、グルカン1,4−α−グルコシダーゼ(EC3.2.1.3)、エンド−1,4−ベータ−グルカナーゼ(セルラーゼ、EC3.2.1.4)、エンド−1,3(4)−β−グルカナーゼ(EC3.2.1.6)、エンド−1,4−β−キシラナーゼ(EC3.2.1.8)、デキストラナーゼ(EC3.2.1.11)、キチナーゼ(EC3.2.1.14)、ポリガラクツロナーゼ(EC3.2.1.15)、リゾチーム(EC3.2.1.17)、β−グルコシダーゼ(EC3.2.1.21)、α−ガラクトシダーゼ(EC3.2.1.22)、β−ガラクトシダーゼ(EC3.2.1.23)、アミロ−1,6−グルコシダーゼ(EC3.2.1.33)、キシラン1,4−β−キシロシダーゼ(EC3.2.1.37)、グルカンエンド−1,3−β−D−グルコシダーゼ(EC3.2.1.39)、α−デキストリンエンド−1,6−α−グルコシダーゼ(EC3.2.1.41)、スクロースα−グルコシダーゼ(EC3.2.1.48)、グルカンエンド−1,3−α−グルコシダーゼ(EC3.2.1.59)、グルカン1,4−β−グルコシダーゼ(EC3.2.1.74)、グルカンエンド−1,6−β−グルコシダーゼ(EC3.2.1.75)、ガラクタナーゼ(EC3.2.1.89)、アラビナンエンド−1,5−α−L−アラビノシダーゼ(EC3.2.1.99)、ラクターゼ(EC3.2.1.108)、キトサナーゼ(EC3.2.1.132)及びキシロースイソメラーゼ(EC5.3.1.5)。
【0046】
市販のカルボヒドラーゼの例としては、Alpha−Gal(登録商標)、Bio−Feed(登録商標)Alpha、Bio−Feed(登録商標)Beta、Bio−Feed(登録商標)Plus、Bio−Feed(登録商標)Wheat、Bio−Feed(登録商標)Z、Novozyme(登録商標)188、Carezyme(登録商標)、Celluclast(登録商標)、Cellusoft(登録商標)、Celluzyme(登録商標)、Ceremyl(登録商標)、Citrozym(登録商標)、Denimax(登録商標)、Dezyme(登録商標)、Dextrozyme(登録商標)、Duramyl(登録商標)、Energex(登録商標)、Finizym(登録商標)、Fungamyl(登録商標)、Gamanase(登録商標)、Glucanex(登録商標)、Lactozym(登録商標)、Liquezyme(登録商標)、Maltogenase(登録商標)、Natalase(登録商標)、Pentopan(登録商標)、Pectinex(登録商標)、Promozyme(登録商標)、Pulpzyme(登録商標)、Novamyl(登録商標)、Termamyl(登録商標)、AMG(登録商標)(Amyloglucosidase Novo)、Maltogenase(登録商標)、Sweetzyme(登録商標)及びAquazym(登録商標)(全てNovozymes A/Sから入手可能)が挙げられる。さらなるカルボヒドラーゼが他の供給者から入手可能である。たとえばRoxazyme(登録商標)及びRonozyme(登録商標)、プロダクトシリーズ(DSM Nutritional Products)、Avizyme(登録商標)、Porzyme(登録商標)、及びGrindazyme(登録商標)、プロダクトシリーズ(Danisco, Finnfeeds)、及びNatugrain(登録商標)、(BASF)、Purastar(登録商標)及びPurastar(登録商標)OxAm(Genencor)が挙げられる。
【0047】
他の市販の酵素としては、Mannaway(登録商標)、Pectaway(登録商標)、Stainzyme(登録商標)及びRenozyme(登録商標)が挙げられる。
【0048】
本発明の組成物は、好ましくはプロテアーゼ(EC3.4.−.−)、特にセリンプロテアーゼを含む。特定の実施形態において、組成物は2つ以上の酵素を含み、第1の酵素はプロテアーゼであり、第2の酵素は、グルコシダーゼ(EC3.2.−.−)、特にアミラーゼ(EC3.2.1.1及び3.2.1.2)及びセルラーゼ(3.2.1.4)、カルボン酸エステルヒドロラーゼ(E.C.3.1.−.−)、たとえばリパーゼ(EC3.1.1.−)、特にトリアシルグリセロールリパーゼ(EC3.1.1.3)、リアーゼ並びにオキシドレダクターゼからなる群から選択される。さらに詳細な実施形態において、第2の酵素はリパーゼ、特にトリアシルグリセロールリパーゼである。
【0049】
酵素含有粒子は、本明細書で定義される少なくとも1つのポリマーPを含む。ポリマーPはC−C−骨格を有し、このC−C−骨格は、カルボキシル基(COOH)を有し、25℃で最高で30g/l、好ましくは最高10g/l、特に最高5g/l、とりわけ最高1g/lの水溶性を有するモノマーB由来の疎水性繰り返し単位を含む。好ましくは、ポリマーPは組成物中若しくは酵素含有粒子中に存在する唯一の合成ポリマーであるか、又は組成物中、したがって酵素含有粒子中に存在する合成ポリマーの合計質量の少なくとも90質量%になる。
【0050】
ポリマーP中のカルボキシル基は、ポリマー骨格に直接、すなわち単結合を介して、又はC1〜C4−アルキレン部分(たとえばCH2又はCH2−CH2)又は式−C(O)O−Alk−の部分(式中、Alkは直鎖若しくは分岐C2〜C4−アルキレン、たとえば1,2−エタンジイル、1,3−プロパンジイル、1,4−ブタンジイル、2−メチルプロパン−1,2−ジイルであり、カルボニル基はポリマー骨格と結合している)などの二価基を介して結合していてもよい。好ましくは、カルボキシル基はC−C−骨格に直接結合している。
【0051】
カルボキシル基は、酸性形態(COOH)又は中和形態、すなわちアニオン性形態で存在し得る。ポリマーPはしたがってポリマーの電気的中性に関与する対イオンを含む。好適な対イオンとしては、アルカリ金属イオン、たとえばナトリウム又はカリウムイオン、NH4+及び有機アンモニウムイオン、たとえばモノ−、ジ−、トリ−及びテトラアルキルアンモニウムが挙げられ、ここで各アルキル部分は1〜40個の炭素原子、好ましくは合計で1〜40個の炭素原子を有し得、アルキル部分は、置換されていなくても、又はヒドロキシル基若しくはNRR’基(式中、R及びR’はそれぞれ独立して、水素若しくはC1〜C4−アルキルから選択される)で置換されていてもよく、1〜40個の炭素原子を有するアルキル部分は、1個以上、すなわち1、2、3、4、5又は6個の隣接しない酸素原子によって中断されていてもよい。
【0052】
カルボキシル基の量は、一般に酸価、すなわち中和可能なカルボキシル基の合計数が、ポリマーP1グラムあたり10〜700mgKOH、特にポリマーP1グラムあたり30〜600mgKOH又はポリマーP1グラムあたり50〜500mgKOHであるように選択される。
【0053】
ポリマーPのC−C−骨格が、一般に重合性C=C−二重結合を有する重合したモノマーに対応するC−C−繰り返し単位によって形成されることは当業者には明らかである。ポリマーPを形成するモノマーの重合により、モノマーの重合したC=C−二重結合は、ポリマーPのC−C−骨格を形成する。したがって、ポリマーP中の繰り返し単位は、一般にポリマーPを製造する場合に重合したモノマーに対応する。したがって、本明細書で用いられる「繰り返し単位」、「重合したモノマーの単位」、「モノマー由来の単位」及び「(重合)モノマー由来の繰り返し単位」という用語は同義語である。
【0054】
カルボキシル基は、通常、ポリマーPのC−C−骨格(のある一部分)を形成する重合したモノマーAの一部である。すなわち、カルボキシル基は、モノマーA由来のポリマーPのC−C−骨格の繰り返し単位の一部である。これらのモノマーAは、一般にモノエチレン性不飽和であり、少なくとも1つのカルボキシル基を有する。好適なモノマーAには、3〜8個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和モノカルボン酸、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−ビニル酢酸、アクリル酸又はメタクリル酸のグリコール酸とのエステルが含まれる。好適なモノマーAには、4〜8個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和ジカルボン酸、たとえばフマル酸、マレイン酸、イタコン酸及びシトラコン酸も含まれる。モノマーAは、前述のモノマーの混合物も含み得る。
【0055】
当業者は、ポリマーPを前述のカルボン酸モノマーAの代わりに、又はモノマーAと組み合わせて製造する際、対応する無水物、たとえば無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水マレイン酸又は無水イタコン酸を使用できることを容易に理解するであろう。この場合、主に得られるポリマーを加水分解に付して、無水物基をカルボキシル基に変える。
【0056】
ポリマーP中のモノマーAの量は、一般に、ポリマーPの合計質量に対応するポリマーP中の繰り返し単位の合計質量に対して、2〜80質量%、好ましくは3〜70質量%、特に5〜60質量%である。
【0057】
ポリマーPのC−C−骨格はモノマーB由来の疎水性繰り返し単位も含む。すなわち、重合したモノマーBは、ポリマーPのC−C−骨格の繰り返し単位の別の部分を形成する。カルボキシル基との組み合わせで、モノマーB由来の繰り返し単位はポリマーPを両親媒性にする。
【0058】
疎水性繰り返し単位は炭化水素繰り返し単位であってもよく、この繰り返し単位は、2〜200、特に2〜100、さらに好ましくは2〜50個の炭素原子(C−C−骨格を形成する2個の炭素原子を含む)を有する。
【0059】
疎水性繰り返し単位は、好ましくはO及びNから選択される少なくとも1つのヘテロ原子(たとえば、1、2、3又は4個のヘテロ原子)、並びに少なくとも1個、特に少なくとも2個の炭素原子、たとえば1〜200個、特に2〜100個、さらに好ましくは2〜50個の炭素原子を有する少なくとも1つの非重合性炭化水素基を含む繰り返し単位でもあり得る。この場合、炭化水素部分は、ポリマーのC−C−骨格にヘテロ原子部分、たとえばO、N、C(O)O(=カルボキシル)、C(O)N(カルボキサミド)又はC(O)NC(O)(環状若しくは非環状カルボキシイミド)を介して結合する。非重合性炭化水素基は、1〜200個の炭素原子、好ましくは2〜100個の炭素原子、特に2〜50個の炭素を有する直鎖または分岐アルキル、5〜10個の炭素原子を有し、場合によって、1〜20個の炭素原子を有する1、2、3個のアルキル基で置換されたシクロアルキル及び場合によって1〜20個の炭素原子を有する1、2、3個のアルキル基で置換されたフェニル若しくはナフチルなどのアリールであってよい。
【0060】
本明細書で用いられるCn〜Cmという用語は、各基中の炭素原子の数を表す。
【0061】
本明細書において用いられる場合、「アルキル」という用語は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、2−エチルヘキシル、ノニル、n−デシルドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、エイコシル、ドコシル、リグノセリル、メリシニルなどのC1〜C20アルキルをはじめとする直鎖若しくは分岐アルキル基を意味する。
【0062】
ポリマーP中の疎水性繰り返し単位の量は、ポリマーP中の繰り返し単位の合計質量(ポリマーPの合計質量に対応する)に対して少なくとも20質量%、好ましくは少なくとも30質量%、特に少なくとも40質量%である。ポリマーP中の疎水性繰り返し単位の量は、一般に、ポリマーPの合計質量の20〜98質量%、好ましくは30〜97質量%、特に40〜95質量%である。
【0063】
疎水性繰り返し単位は、重合した疎水性モノマーBに由来する。疎水性モノマーBは、水溶性が低下し、一般に25℃で30g/lを越えない。特に、疎水性モノマーBの水溶性は、25℃で10g/l、特に5g/l、とりわけ1g/lを越えない。疎水性モノマーBは、実質的に水不溶性(すなわち、水溶性は検出限界より低い)であってもよいし、または25℃で少なくとも10-5g/lの水溶性を有していてもよい。
【0064】
これらの疎水性モノマーBは、前記に定義されるように、一般に、少なくとも2個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和炭化水素モノマー及び重合性C=C−二重結合、好ましくはO及びNから選択される少なくとも1つのヘテロ原子(たとえば1、2、3又は4個のヘテロ原子)を有するモノエチレン性不飽和非イオン性モノマー、及び少なくとも1個、特に少なくとも2個の炭素原子、たとえば1〜200個の炭素原子、特に2〜100個の炭素原子又は3〜100個の炭素原子、さらに好ましくは2〜50個の炭素原子又は3〜50個の炭素原子を有する少なくとも1つの非重合性炭化水素基からなる群から選択される。疎水性モノマーは、前記に定義されるように、カルボキシル基を有するモノエチレン性不飽和モノマー及び少なくとも2個、特に少なくとも4個の炭素原子、たとえば2〜200個、特に4〜100個、さらに好ましくは4〜50個の炭素原子を有する少なくとも1つの非重合性炭化水素基から選択することもできる。もちろん、モノマーBは、少なくとも1つの炭化水素モノマーと、少なくとも1つのヘテロ原子を有する前述のモノエチレン性不飽和非イオン性モノマー並びにカルボキシル基及び少なくとも1つの非重合性炭化水素基を有する前述のモノエチレン性不飽和モノマーから選択される少なくとも1つのさらなるモノマーとの混合物から選択することもできる。
【0065】
好適な炭化水素モノマーは、C−C−骨格の一部を形成する1つの重合性C−C−二重結合及び場合によって1つ以上、たとえば1又は2個のさらなる炭化水素基、たとえば好ましくは1〜98個の炭素原子、特に1〜48個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキルを含む。
【0066】
好適な炭化水素モノマーとしては、オレフィン、特に、好ましくは2〜100個の炭素原子、特に2〜50個の炭素原子を有するα−オレフィンが挙げられ、例としては、エチレン、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、ジイソブテン(=2−メチル−4,4−ジメチル−1−ペンテン)、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、1−ヘキサコセン、1−オクタコセン及びそれらの混合物、特にC12−α−オレフィン、C16−α−オレフィン、C18−α−オレフィン、C20〜24−α−オレフィン及びC18〜24−α−オレフィンの技術的混合物並びに重合性二重結合、特にビニル又はビニリデン二重結合を有するC4〜C10−オレフィンのオリゴマーが挙げられ、オリゴマーの例としては、40〜2000ダルトンの分子量(数平均)を有するオリゴブテン及びオリゴイソブテンが挙げられる。好適な炭化水素モノマーとしては、ビニル芳香族モノマー、たとえばスチレン、α−メチルスチレン、及び置換スチレン、たとえば2−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−(n−ブチル)スチレン、4−(n−ブチル)スチレン、2−(tert−ブチル)スチレン、4−(tert−ブチル)スチレン、2−(n−デシル)スチレン及び2−(n−デシル)スチレンが挙げられる。
【0067】
好ましくはO及びNから選択される少なくとも1つのヘテロ原子並びに少なくとも1個、特に少なくとも2個の炭素原子を有する少なくとも1つの非重合性炭化水素基を有する好適な非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーとしては以下のものが挙げられる:
3〜C8−モノカルボン酸のC2〜C50−アルキルエステル、特にアクリル酸又はメタクリル酸のエステル、たとえばエチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、1,1,3,3−テトラメチルブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ウンデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、アラキニル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、リグノセリル(メタ)アクリレート、セロチニル(メタ)アクリレート、メリシニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート;
4〜C8−ジカルボン酸のビス−C1〜C50−アルキルエステル、特にフマル酸、マレイン酸又はイタコン酸のエステル、たとえばマレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジヘキシル、フマル酸ジヘキシル、マレイン酸ジオクチル及びフマル酸ジオクチル、
3〜C8−モノカルボン酸のN−C2〜C50−アルキルアミド、特にアクリル酸又はメタクリル酸のN−アルキルアミド、たとえばN−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−sec−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−n−ヘプチル(メタ)アクリルアミド、N−n−オクチル(メタ)アクリルアミド、N−1,1,3,3−テトラメチルブチル(メタ)アクリルアミド、N−2−エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−n−ノニル(メタ)アクリルアミド、N−n−デシル(メタ)アクリルアミド、N−n−ウンデシル(メタ)アクリルアミド、N−トリデシル(メタ)アクリルアミド、N−ミリスチル(メタ)アクリルアミド、N−ペンタデシル(メタ)アクリルアミド、N−パルミチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘプタデシル(メタ)アクリルアミド、N−ノナデシル(メタ)アクリルアミド、N−アラキニル(メタ)アクリルアミド、N−ベヘニル(メタ)アクリルアミド、N−リグノセリル(メタ)アクリルアミド、N−セロチニル(メタ)アクリルアミド、N−メリシニル(メタ)アクリルアミド、N−ステアリル(メタ)アクリレート、N−ラウリル(メタ)アクリルアミド;
3〜C8−モノカルボン酸のN−C1〜C50−アルキル−N−C1〜C50−アルキルアミド、特にアクリル酸又はメタクリル酸のN−アルキル−N−アルキルアミド、たとえばN−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−sec−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−ヘプチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−オクチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−1,1,3,3−テトラメチルブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−2−エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−ノニル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−デシル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−ウンデシル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−トリデシル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−ミリスチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−ペンタデシル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−パルミチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−ヘプタデシル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−ノナデシル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−アラキニル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−ベヘニル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−リグノセリル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−セロチニル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−メリシニル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−ステアリル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−ラウリル(メタ)アクリルアミド;
2〜C50−アルカン酸のビニルエステル、たとえばビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルピバレート、ビニルラウレート、ビニルミリステート、ビニルステアレート及びビニルバーサティックエステル;
ビニル−C1〜C40−アルキルエーテル、たとえばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、2−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−ヘプチルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、1,1,3,3−テトラメチルブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ノニルビニルエーテル、n−デシルドデシルビニルエーテル、トリデシルビニルエーテル、テトラデシルビニルエーテル、ペンタデシルビニルエーテル、ヘキサデシルビニルエーテル、ヘプタデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、エイコシルビニルエーテル、ドコシルビニルエーテル、リグノセリルビニルエーテル、メリシニルビニルエーテル;
マレイン酸のN−C1〜C40−アルキルイミド、たとえばN−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−2−ブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−ヘプチルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−1,1,3,3−テトラメチルブチルマレイミド、N−2−エチルヘキシルマレイミド、N−ノニルマレイミド、N−n−デシルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−トリデシルマレイミド、N−テトラデシルマレイミド、N−ペンタデシルマレイミド、N−ヘキサデシルマレイミド、N−ヘプタデシルマレイミド、N−オクタデシルマレイミド、N−エイコシルマレイミド、N−ドコシルマレイミド、N−リグノセリルマレイミド、N−メリシニルマレイミド;
ならびにそれらの混合物。
【0068】
カルボキシル基及び、少なくとも2個、特に少なくとも4個の炭素原子、たとえば2〜200個、特に4〜100個、さらに好ましくは4〜50個の炭素原子を有する少なくとも1つの非重合性炭化水素基を有する好適なモノエチレン性不飽和モノマーとしては、たとえば、モノエチレン性不飽和C4〜C8−ジカルボン酸のモノエステル、たとえばマレイン酸又はフマル酸のアルカノールとのモノエステル、及びモノエチレン性不飽和C4〜C8−ジカルボン酸のモノカルボキシアミド、たとえばマレイン酸又はフマル酸のアルキルアミン又はジアルキルアミンとのモノカルボキシアミドが挙げられる。例としては、特に、マレイン酸又はフマル酸のC2〜C40−アルカノールとのモノエステル、たとえばモノ−n−ブチルマレイネート、モノ−2−ブチルマレイネート、モノ−n−ヘキシルマレイネート、モノ−n−ヘプチルマレイネート、モノ−n−オクチルマレイネート、モノ−1,1,3,3−テトラメチルブチルマレイネート、モノ−2−エチルヘキシルマレイネート、モノ−ノニルマレイネート、モノ−n−デシルマレイネート、モノ−ドデシルマレイネート、モノ−トリデシルマレイネート、モノ−テトラデシルマレイネート、モノ−ペンタデシルマレイネート、モノ−ヘキサデシルマレイネート、モノ−ヘプタデシルマレイネート、モノ−オクタデシルマレイネート、モノ−エイコシルマレイネート、モノ−ドコシルマレイネート、モノ−n−ブチルフマレート、モノ−2−ブチルフマレート、モノ−n−ヘキシルフマレート、モノ−n−ヘプチルフマレート、モノ−n−オクチルフマレート、モノ−1,1,3,3−テトラメチルブチルフマレート、モノ−2−エチルヘキシルフマレート、モノ−ノニルフマレート、モノ−n−デシルフマレート、モノ−ドデシルフマレート、モノ−トリデシルフマレート、モノ−テトラデシルフマレート、モノ−ペンタデシルフマレート、モノ−ヘキサデシルフマレート、モノ−ヘプタデシルフマレート、モノ−オクタデシルフマレート、モノ−エイコシルフマレート及びモノ−ドコシルフマレート、並びにマレイン酸又はフマル酸のC2〜C40−アルキルアミン又はジ−C1〜C40−アルキルアミンとのモノカルボキサミドが挙げられる。
【0069】
ポリマーPは、前述のモノマーA及びBとは異なるさらなるモノマーCの重合単位も含み得る。好適なさらなるモノマーCとしてはモノエチレン性不飽和モノマーが挙げられ、これらは好ましくは中性であり、好ましくは、通常25℃で50g/lを越える増大した水溶性を有する。好適なモノマーCとしては、以下のものが挙げられる
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルアクリレート、
モノエチレン性不飽和モノ−及びジ−C3〜C8−カルボン酸のヒドロキシ−C2〜C4−アルキルエステル、特にアクリル酸及びメタクリル酸のヒドロキシ−C2〜C4−アルキルエステル、たとえば2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、及び4−ヒドロキシブチルメタクリレート;
−N−ビニルラクタム、特に5〜8個の環原子を有するもの、たとえばN−ビニル−ピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルモルホリノン及びN−ビニルカプロラクタム、
1〜6個、特に1〜4個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸のN−ビニルアミド、たとえばN−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド及びN−ビニル−プロピオンアミド;
モノエチレン性不飽和C3〜C8−モノカルボン酸のアミド、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキルアミド及びC1〜C4−アルキルオキシ−C1〜C4−アルキルアミド、たとえばアクリルアミド;メタクリルアミド、N−(メトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(エトキシメチル)−(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−エトキシエチル)−(メタ)アクリルアミドなど;
ポリエーテル基、特にポリ−C2〜C4−アルキレンオキシド基、とりわけポリエチレンオキシド基を有するモノエチレン性不飽和モノマー(ここで、ポリエーテル基は、好ましくは100〜5000の範囲の分子量(数平均)を有する。これらとしては、特に、ポリ−C2〜C4−アルキレングリコールのビニル及びアリルエーテル、並びにモノエチレン性不飽和C3〜C8−モノ−及びC4〜C8−ジカルボン酸のポリ−C2〜C4−アルキレングリコールとのモノエステルおよびジエステル、特にこのようなポリ−C2〜C4−アルキレングリコールのアクリル酸及びメタクリル酸モノエステルが挙げられる)。
【0070】
モノマーCの重合単位の量は、一般に、ポリマーPの質量に対して20質量%を越えず、特に10質量%を越えない。
【0071】
本発明の好適な実施形態において、ポリマーPは、前記定義の1つ以上のカルボキシル基を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和モノマーAの重合単位(すなわち繰り返し単位)A及び前記定義の少なくとも1つの疎水性モノマーBの重合単位(すなわち繰り返し単位)Bを含むコポリマーである。好適なポリマーPにおいて、重合単位Aの重合単位Bに対するモル比、したがって重合したモノマーAの重合したモノマーBに対するモル比は、一般に、1:20〜10:1、好ましくは1:20〜5:1、特に1:15〜5:1、とりわけ1:10〜2:1である。好適なポリマーPにおいて、重合単位Aの重合単位Bに対する質量比、したがって重合したモノマーAの重合したモノマーBに対する質量比は、一般に2:98〜80:20、特に3:97〜70:30、さらに好ましくは5:95〜60:40である。好ましくは重合単位Aと重合単位Bとの合計量、したがって重合したモノマーAと重合したモノマーBとの合計量は、ポリマーPの少なくとも80質量%、特に少なくとも90質量%、さらに好ましくは少なくとも95質量%を構成する。特に好ましくは、重合したモノマーAと重合したモノマーBとは一緒になってポリマーPの少なくとも99質量%を構成するか、又はこれらはポリマーPを形成する唯一のモノマーである。特に好適なポリマーPは、本質的に繰り返し単位A及びBからなる。
【0072】
重合単位Aは、一般に、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−ビニル酢酸、などのモノエチレン性不飽和C3〜C8−モノカルボン酸、アクリル酸又はメタクリル酸のグリコール酸及びフマル酸、マレイン酸、イタコン酸及びシトラコン酸などのモノエチレン性不飽和C3〜C8−ジカルボン酸のエステル由来の繰り返し単位から選択される。好適なモノマーAは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸及びクロトン酸から選択され、特にアクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選択される。ポリマーPの製造において、前述のカルボン酸モノマーAの代わりに、又は前述のカルボン酸モノマーAと組み合わせて、対応する無水物、たとえば無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸を使用できることは、当業者は容易に理解できるであろう。この場合、主として得られるポリマーを加水分解に付して、無水物基をカルボキシル基に変換する。
【0073】
モノマーBは前記定義のとおりである。好ましくは、モノマーBは、C2〜C50−オレフィン、ビニル芳香族化合物、C3〜C8−モノカルボン酸のC2〜C50−アルキルエステル、C4〜C8−ジカルボン酸のビス−C1〜C50−アルキルエステル、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C2〜C50−アルキルアミド、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C1〜C50−アルキル−N−C1〜C50−アルキルアミド及びC2〜C50−アルカン酸のビニルエステル、ビニル−C1〜C40−アルキルエーテル、マレイン酸のN−C1〜C40−アルキルイミド並びにそれらの混合物から選択される。特に、モノマーBは、C2〜C50−オレフィン、ビニル芳香族化合物、C3〜C8−モノカルボン酸のC2〜C50−アルキルエステル、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C2〜C50−アルキルアミド及びC2〜C50−アルカン酸のビニルエステルから選択される。
【0074】
好ましくは、モノマーBは、少なくとも1つのC2〜C50−オレフィンを、場合によって、ビニル芳香族化合物、C3〜C8−モノカルボン酸のC2〜C50−アルキルエステル、C4〜C8−ジカルボン酸のビス−C1〜C50−アルキルエステル、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C2〜C50−アルキルアミド、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C1〜C50−アルキル−N−C1〜C50−アルキルアミド、C2〜C50−アルカン酸のビニルエステル、ビニル−C1〜C40−アルキルエーテル、マレイン酸のN−C1〜C40−アルキルイミド及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つのさらなるモノマーBと組み合わせて、特に、少なくとも1つのC2〜C50−オレフィンを、ビニル芳香族化合物及びC3〜C8−モノカルボン酸のC2〜C50−アルキルエステルから選択される少なくとも1つのさらなるモノマーBと組み合わせて含む。モノマーBが少なくとも1つのC2〜C50−オレフィンを含むポリマーPにおいて、C2〜C50−オレフィンの量は、重合単位(若しくはモノマー)Bの合計量の好ましくは少なくとも50モル%、特に少なくとも70モル%又は少なくとも80モル%である。他のモノマーBが存在するならば、それらは一般に重合単位(若しくはモノマー)Bの合計量の50モル%、特に30モル%又は20モル%を越えない。混合物において、C2〜C50−オレフィンとは異なるエチレン性不飽和モノマーBの量は、たとえば0.5〜50モル%、特に重合単位(若しくはモノマー)Bの合計量の1〜30モル%、とりわけ2〜20モル%である。好ましくは、1つ以上のC2〜C50−オレフィンは唯一のモノマーBであるか、または重合単位(若しくはモノマー)Bの合計量の少なくとも99モル%になる。
【0075】
本発明の第1の特定の好適な実施形態において、重合単位A(したがってモノマーA)は、重合したマレイン酸の単位を含む。この特定の好適な実施形態において、マレイン酸の重合単位のモル量は、単位(又はモノマー)Aの合計量の少なくとも50モル%、特に少なくとも70モル%、とりわけ少なくとも80モル%になる。単位(又はモノマー)Aの残りがもし存在するならば、通常は前述のエチレン性不飽和モノカルボン酸、たとえばアクリル酸又はメタクリル酸に由来する。特に、重合単位Aは、重合したマレイン酸又はマレイン酸と、好ましくはアクリル酸及びメタクリル酸ならびにそれらの混合物から選択される少なくとも1つのエチレン性不飽和モノカルボン酸との混合物の単位であり、ここでマレイン酸の量は、重合単位(又はモノマー)Aの合計量の少なくとも50モル%、特に少なくとも70モル%又は少なくとも80モル%である。混合物において、エチレン性不飽和モノカルボン酸の量は、たとえば重合単位(又はモノマー)Aの合計量の0.5〜50モル%、特に1〜30モル%、とりわけ2〜20モル%である。好ましくは、マレイン酸は、唯一のモノマーAであるか、または重合単位(又はモノマー)Aの合計量の少なくとも99モル%になる。
【0076】
この特定の好適な第1の実施形態において、モノマーBは、好ましくはC2〜C50−オレフィン、ビニル芳香族化合物、C3〜C8−モノカルボン酸のC2〜C50−アルキルエステル、C4〜C8−ジカルボン酸のビス−C1〜C50−アルキルエステル、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C2〜C50−アルキルアミド、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C1〜C50−アルキル−N−C1〜C50−アルキルアミド及びC2〜C50−アルカン酸のビニルエステル、ビニル−C1〜C40−アルキルエーテル、マレイン酸のN−C1〜C40−アルキルイミド並びにそれらの混合物から選択される。特に、モノマーBは、C2〜C50−オレフィン、ビニル芳香族化合物、C3〜C8−モノカルボン酸のC2〜C50−アルキルエステル、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C2〜C50−アルキルアミド及びC2〜C50−アルカン酸のビニルエステルから選択される。
【0077】
第1の特定の好適な実施形態のポリマーPのうち、モノマーBとして、少なくとも1つのC5〜C50−オレフィンを、場合によってC2〜C4−オレフィン、ビニル芳香族化合物、C3〜C8−モノカルボン酸のC2〜C50−アルキルエステル、C4〜C8−ジカルボン酸のビス−C1〜C50−アルキルエステル、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C2〜C50−アルキルアミド、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C1〜C50−アルキル−N−C1〜C50−アルキルアミド、C1〜C50−アルカン酸のビニルエステル、ビニル−C1〜C40−アルキルエーテル、マレイン酸のN−C1〜C40−アルキルイミド及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つのさらなるモノマーBとの組み合わせで;さらに好ましくは、少なくとも1つのC5〜C50−オレフィンを、場合によってC2〜C4−オレフィン、ビニル芳香族化合物及びC3〜C8−モノカルボン酸のC2〜C50−アルキルエステルから選択される少なくとも1つのさらなるモノマーBとの組み合わせで含むポリマーPが好適である。モノマーBが少なくとも1つのC2〜C50−オレフィンを含むこの特定の好適な第1の実施形態のポリマーPにおいて、C2〜C50−オレフィンの量は、重合単位(若しくはモノマー)Bの合計量の好ましくは少なくとも50モル%、特に少なくとも70モル%又は少なくとも80モル%である。他のモノマーBが存在する場合、それらは一般に、重合単位(若しくはモノマー)Bの合計量の50モル%、特に30モル%又は20モル%を越えない。混合物において、C2〜C50−オレフィンとは異なるエチレン性不飽和モノマーBの量は、たとえば、重合単位(若しくはモノマー)Bの合計量の0.5〜50モル%、特に1〜30モル%、とりわけ2〜20モル%である。好ましくは、1つ以上のC2〜C50−オレフィンは、唯一のモノマーBであるか、又は重合単位(若しくはモノマー)Bの合計量の少なくとも99モル%になる。
【0078】
第1の特定の好適な実施形態のポリマーPにおいて、重合したモノマーA(すなわち、マレイン酸又はマレイン酸と1つ以上の前述のエチレン性不飽和モノカルボン酸との混合物)の重合したモノマーBに対するモル比は、好ましくは1:10〜10:1、特に1:5〜5:1である。この実施形態の好適なポリマーPにおいて、重合単位Aの重合単位Bに対する質量比、したがって重合したモノマーAの重合したモノマーBに対する質量比は、一般に10:90〜80:20、特に15:85〜70:30、さらに好ましくは20:80〜60:40である。好ましくは、重合単位A及び重合単位Bの合計量、したがって重合したモノマーA及び重合したモノマーBの合計量は、この第1の特定の好適な実施形態のポリマーPの少なくとも80質量%、特に少なくとも90質量%、さらに好ましくは少なくとも95質量%になる。
【0079】
本発明の第2の特定の好適な実施形態において、重合単位A(したがってモノマーA)は、重合したモノエチレン性不飽和C3〜C8モノカルボン酸の単位、特にアクリル酸又はメタクリル酸の単位を、場合によって少量の重合したモノエチレン性不飽和C4〜C8−ジカルボン酸の単位と組み合わせて含む。この特定の好適な実施形態において、モノエチレン性不飽和C3〜C8モノカルボン酸の重合単位のモル量は、重合単位(若しくはモノマー)Aの合計量の少なくとも70モル%、特に少なくとも90モル%、とりわけ少なくとも99モル%になる。したがって、重合したモノエチレン性不飽和C4〜C8−ジカルボン酸の単位の量は、重合単位(若しくはモノマー)Aの合計量の30モル%、特に10モル%、とりわけ1モル%を越えない。
【0080】
この第2の特定の好適な実施形態において、モノマーBは、好ましくは、C2〜C50−オレフィン、ビニル芳香族化合物、C3〜C8−モノカルボン酸のC2〜C50−アルキルエステル、C4〜C8−ジカルボン酸のビス−C1〜C50−アルキルエステル、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C2〜C50−アルキルアミド、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C1〜C50−アルキル−N−C1〜C50−アルキルアミド、C2〜C50−アルカン酸のビニルエステル、ビニル−C1〜C40−アルキルエーテル、マレイン酸のN−C1〜C40−アルキルイミドおよびそれらの混合物から選択される。特に、モノマーBは、C2〜C50−オレフィン、ビニル芳香族化合物、C3〜C8−モノカルボン酸のC2〜C50−アルキルエステル、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C2〜C50−アルキルアミド及びC2〜C50−アルカン酸のビニルエステルから選択される。
【0081】
第2の特定の好適な実施形態のポリマーPのうち、モノマーBとして、C3〜C8−モノカルボン酸の少なくとも1つのC2〜C50−アルキルエステル、特にアクリル酸又はメタクリル酸の少なくとも1つのC2〜C50−アルキルエステルを、場合によって、C2〜C4−オレフィン、ビニル芳香族化合物、C3〜C8−モノカルボン酸のC2〜C50−アルキルエステル、C4〜C8−ジカルボン酸のビス−C1〜C50−アルキルエステル、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C2〜C50−アルキルアミド、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C1〜C50−アルキル−N−C1〜C50−アルキルアミド、C2〜C50−アルカン酸のビニルエステル、ビニル−C1〜C40−アルキルエーテル、マレイン酸のN−C1〜C40−アルキルイミド及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つのさらなるモノマーBと組み合わせて、さらに好ましくはC3〜C8−モノカルボン酸の少なくとも1つのC2〜C20−アルキルエステル、特にアクリル酸又はメタクリル酸の少なくとも1つのC2〜C20−アルキルエステルを、場合によってC3〜C8−モノカルボン酸のN−C2〜C50−アルキルアミド、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C1〜C50−アルキル−N−C1〜C50−アルキルアミド及びC2〜C50−アルカン酸のビニルエステルから選択される少なくとも1つのさらなるモノマーBと組み合わせて含むポリマーPが好適である。モノマーBがC3〜C8−モノカルボン酸の少なくとも1つのC2〜C50−アルキルエステルを含むこの特定の好適な第2の実施形態のポリマーPにおいて、C3〜C8−モノカルボン酸の少なくとも1つのC2〜C50−アルキルエステルの量は、重合単位(又はモノマー)Bの合計量の、好ましくは少なくとも50モル%、特に少なくとも70モル%又は少なくとも80モル%である。他のモノマーBが存在する場合、それらは一般に、重合単位(又はモノマー)Bの合計量の50モル%、特に30モル%又は20モル%を越えない。混合物において、C3〜C8−モノカルボン酸のC2〜C50−アルキルエステルとは異なるエチレン性不飽和モノマーBの量は、たとえば重合単位(又はモノマー)Bの合計量の0.5〜50モル%、特に1〜30モル%、特に2〜20モル%である。好ましくは、C3〜C8−モノカルボン酸の1つ以上のC2〜C50−アルキルエステルは、唯一のモノマーBであるか、または重合単位(又はモノマー)Bの合計量の少なくとも99モル%になる。
【0082】
第2の特定の好適な実施形態のポリマーPのうち、モノマーBとして、少なくとも1つのC2〜C4−オレフィンを、場合によって、C3〜C8−モノカルボン酸のC2〜C50−アルキルエステル、C4〜C8−ジカルボン酸のビス−C1〜C50−アルキルエステル、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C2〜C50−アルキルアミド、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C1〜C50−アルキル−N−C1〜C50−アルキルアミド、C1〜C50−アルカン酸のビニルエステル、ビニル−C1〜C40−アルキルエーテル、マレイン酸のN−C1〜C40−アルキルイミド及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つのさらなるモノマーBと組み合わせて;さらに好ましくは、少なくとも1つのC2〜C4−オレフィンを、場合によって、C3〜C8−モノカルボン酸のC2〜C50−アルキルエステルから選択される少なくとも1つのさらなるモノマーBと組み合わせて含むポリマーPが同様に好適である。モノマーBが少なくとも1つのC2〜C4−オレフィンを含むこの特定の好適な第2の実施形態のポリマーPにおいて、C2〜C4−オレフィンの量は、重合単位(又はモノマー)Bの合計量の、好ましくは少なくとも50モル%、特に少なくとも70モル%又は少なくとも80モル%である。他のモノマーBが存在する場合、それらは一般に、重合単位(又はモノマー)Bの合計量の50モル%、特に30モル%又は20モル%を越えない。混合物において、C2〜C4−オレフィンとは異なるエチレン性不飽和モノマーBの量は、たとえば、重合単位(又はモノマー)Bの合計量の0.5〜50モル%、特に1〜30モル%、とりわけ2〜20モル%である。好ましくは、1つ以上のC2〜C4−オレフィンは唯一のモノマーBであるか、又は重合単位(又はモノマー)Bの合計量の少なくとも99モル%になる。
【0083】
第2の特定の好適な実施形態のポリマーPのうち、モノマーBとして、スチレン及び/又はα−メチルスチレンなどの少なくとも1つのビニル芳香族化合物を、場合によって、C2〜C50−オレフィン、ビニル芳香族化合物、C3〜C8−モノカルボン酸のC2〜C50−アルキルエステル、C4〜C8−ジカルボン酸のビス−C1〜C50−アルキルエステル、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C2〜C50−アルキルアミド、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C1〜C50−アルキル−N−C1〜C50−アルキルアミド、C2〜C50−アルカン酸のビニルエステル、ビニル−C1〜C40−アルキルエーテル、マレイン酸のN−C1〜C40−アルキルイミド、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つのさらなるモノマーBと組み合わせて含むポリマーPも同様に好適である。モノマーBが少なくとも1つのビニル芳香族化合物を含むこの特定の好適な第1の実施形態のポリマーPにおいて、ビニル芳香族化合物の量は、重合単位(又はモノマー)Bの合計量の、好ましくは少なくとも50モル%、特に少なくとも70モル%又は少なくとも80モル%である。他のモノマーBが存在する場合、それらは、一般に重合単位(又はモノマー)Bの合計量の50モル%、特に30モル%又は20モル%を越えない。混合物において、ビニル芳香族化合物とは異なるエチレン性不飽和モノマーBの量は、たとえば重合単位(又はモノマー)Bの合計量の0.5〜50モル%、特に1〜30モル%、とりわけ2〜20モル%である。好ましくは、1つ以上のビニル芳香族化合物は、唯一のモノマーBであるか、又は重合単位(又はモノマー)Bの合計量の少なくとも99モル%になる。
【0084】
第2の特定の好適な実施形態のポリマーPにおいて、重合したモノマーAの重合したモノマーBに対するモル比は、好ましくは1:20〜5:1、特に1:10〜3:1である。この実施形態の好適なポリマーPにおいて、重合単位Aの重合単位Bに対する質量比、したがって重合したモノマーAの重合したモノマーBに対する質量比は、一般に2:98〜50:50、特に3:97〜50:50、さらに好ましくは5:95〜50:50である。好ましくは、重合単位Aおよび重合単位Bの合計量、したがって重合したモノマーA及び重合したモノマーBの合計量は、この第2の特定の好適な実施形態のポリマーPの少なくとも90質量%、特に少なくとも95質量%、さらに好ましくは少なくとも99質量%になる。
【0085】
カルボキシル基及び疎水性繰り返し単位とは別に、本発明のポリマーPは、ポリ−C2〜C4−アルキレンオキシド基、特にポリエチレンオキシド基を含んでもよく、この場合、ポリ−C2〜C4−アルキレンオキシド基は、好ましくは100〜5000の範囲の分子量(数平均)を有する。ポリ−C2〜C4−アルキレンオキシド基の量は、一般にポリマーPの30%を越えず、特に10質量%未満である。本発明の特定の好適な実施形態において、ポリマーPはポリ−C2〜C4−アルキレンオキシド基を含まない。
【0086】
ポリマーPの数平均分子量Mnは、300〜500000、特に500〜100000、特に700〜50000、とりわけ1000〜30000の範囲であってよい。質量平均分子量Mwは、好ましくは約500〜1000000、さらに好ましくは1000〜200000、特に1500〜100000、特に2000〜50000の範囲である。ポリマーPのK値(Fikentscher −Cellulosechemie 1932, Vol. 13, pp. 58−64 and pp. 71−74に準拠)は、典型的には5〜120、特に10〜100の範囲であり、とりわけ15〜80の範囲である(水又はテトラヒドロフラン中溶液として、20℃にて、K値に応じて、0.1〜5質量%の範囲の濃度で測定)。
【0087】
ポリマーは、重合によってポリマーPを形成する好適なモノエチレン性モノマーを単独重合又は共重合することによって製造することができる。重合において、エチレン性二重結合を重合させて、C−C−骨格を形成する。
【0088】
たとえば、ポリマーPは、エチレン性不飽和モノマーAを、同様にエチレン性不飽和モノマーである疎水性モノマーBと共重合させることによって製造することができる。モノマーBがカルボキシル基を有するならば、ポリマーPは、カルボキシル基を有するこれらのモノマーBを単独重合させることによるか、または前記モノマーBを別のモノマーA及び/又はBと共重合させることによって製造することも可能である。ポリマーPがマレイン酸の単位を含むならば、重合反応においてマレイン酸の代わりに無水マレイン酸を使用し、次いで重合反応から得られたポリマーを加水分解することが可能である。ポリマーPがマレイン酸イミドの単位を含む場合、重合反応において各マレイン酸イミドのかわりに無水マレイン酸を使用し、次いで重合反応から得られるポリマーを好適なアミンと反応させて、マレイミド部分を形成することが可能である。同様に、ポリマーPがジカルボン酸のモノアミド又はモノエステルの単位、たとえばマレイン酸のモノアミド又はモノエステルの単位を含むならば、対応する無水物、たとえば無水マレイン酸を、重合反応において各モノアミドの代わりに使用し、次いで重合反応から得られるポリマーを好適なアミン又はアルコールと反応させ、これによって、モノアミド又はモノエステル部分を形成することも可能である。モノマーAは、それらの酸性形態又はそれらの塩形態、特にそれらのアルカリ金属塩で重合させることができる。好ましくは、モノマーAを酸性形態で使用するか、またはマレイン酸の場合、無水物の形態で使用する。
【0089】
ポリマーPの好適な製造法としては、モノマーA及びBの塊状重合、溶液重合、懸濁重合及び乳化重合が挙げられ、溶液重合及び塊状重合が好ましい。
【0090】
ポリマーPを形成するモノマーの重合は、通常、開始剤の存在下で開始され、開始剤はラジカルを形成することによって分解する。重合開始剤は一般に、ポリマーPを形成するモノマーに対して、0.05〜10質量%、特に0.1〜5質量%の量で用いられる。好適な開始剤は、たとえば、有機過酸化物及びヒドロパーオキシド、並びにパーオキソ二硫酸塩、過炭酸塩、パーオキシドエステル、過酸化水素及びアゾ化合物である。開始剤の例は、過酸化水素、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、ジアセチルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジアミルパーオキシド、ジオクタノイルパーオキシド、ジデカノイルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、ビス(o−トリル)パーオキシド、スクシニルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルヒドロパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド、ブチルパーアセテート、tert−ブチルパーマレイネート、tert−ブチルパーイソブチレート、tert−ブチルパーピバレート、tert−ブチルパーオクテート、tert−ブチルパーネオデカノエート、tert−ブチルパーベンゾエート、tert−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、tert−ブチルパーネオデカノエート、tert−アミルパーピバレート、tert−ブチルパーピバレート、tert−ブチルパーベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート及びジイソプロピルパーオキシジカーバメート;並びにパーオキソ二硫酸リチウム、ナトリウム、カリウム及びアンモニウム、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチル−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)]プロピオンアミド、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチロアミジン)二塩酸塩、及び2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、並びに以下で説明するレドックス開始剤系である。レドックス開始剤系は、少なくとも1つの酸化化合物、一般には過酸化化合物及び少なくとも1つの還元化合物、たとえば還元硫黄化合物、たとえばアルカリ金属若しくはそのアンモニウム塩のビスルファイト、スルファイト、チオスルフェート、ジチオナイト、テトラチオネート又は有機還元剤、たとえばベンゾイン、ジメチルアニリン、アスコルビン酸、ヒドロキシメタンスルフィネート、及びケトン上の亜硫酸水素塩の付加物、たとえば、アセトン−ビスルファイト付加物を含む。開始剤又はレドックス開始剤系と組み合わせて、遷移金属触媒、たとえば鉄、コバルト、ニッケル、銅、バナジウム及びマンガンの塩を使用することもさらに可能である。好適な塩は、たとえば、硫酸鉄(II)、塩化コバルト(II)、硫酸ニッケル(II)、又は塩化銅(I)である。モノマーに対して、還元遷移金属塩は0.1ppm〜1000ppmの濃度で使用される。したがって、過酸化水素と鉄(II)塩との組み合わせ、たとえば、0.5〜30%の過酸化水素と0.1〜500ppmのモール塩などを使用することが可能である。
【0091】
適切な場合、製造されるポリマーの分子量を制御することが必要であり得る。このために、モノマーMの重合は、一般に調節剤の存在下で実施する。調節剤としては、たとえば、SH基を含む有機化合物、6〜20個の炭素原子を有するアルキルメルカプタン、たとえばヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、2−エチルヘキシルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、イソデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、極性メルカプタン、たとえば2−メルカプトエタノール、2−メルカプトプロパノール、メルカプトブタノール、チオグリコール酸(2−メルカプト酢酸)3−メルカプトプロピオン酸、システイン及びN−アセチルシステイン、並びにギ酸、イソプロパノール、アリルアルコール、アルデヒド、たとえばブタナール、ハロゲン炭化水素、たとえばトリクロロメタン、トリブロモメタン、及びテトラクロロメタンなどが挙げられる。重合調節剤は、所望の場合、一般に、ポリマーPを形成するモノマーに対して0.05〜2質量%、特に0.1〜1質量%の量で用いられる。
【0092】
要求される反応温度及び反応圧力は、ポリマーの種類及び公知の方法で重合されるモノマーの種類に依存する。一般に、重合温度は10〜250℃、特に30〜180℃の範囲である。反応圧力は、通常、0.1バール〜2500バール、特に0.9バール〜2000バールの範囲である。
【0093】
ポリマーPがポリ−C2〜C4−アルキレンオキシド基、特にポリエチレンオキシド基を含むならば、これらの基を、ポリ−C2〜C4−アルキレンオキシド基を有する好適なモノマーCを選択することよるか、又はポリ−C2〜C4−アルキレンオキシド単位を有する化合物をあらかじめ形成されたポリマーP上に、たとえばエステル化若しくはアミド化反応によってグラフトすることによるか、又はポリ−C2〜C4−アルキレンオキシド基を有する非重合性化合物の存在下でのC−C−骨格を形成するエチレン性不飽和モノマーの重合によって導入することができる。
【0094】
本発明で使用されるポリマーPおよび好適なその製造法は、たとえばEP412389、DE3730885、DE10251141、DE19810404、EP498634、DE3926168、DE3931039、DE4402029、WO93/17130、PCT/EP2007/062189、US4,414,370、US4,529,787、US4,546,160、US6,858,678、US6,355,727及びUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5. ed., Waxes, Vol. A 28, pp. 146 ff., Verlag Chemie Weinheim, Basel, Cambridge, New York, Tokio, 1986から当業者に公知である。ポリマーのいくつかは、たとえばBASF SEのSokalan(登録商標)タイプ及びJoncryl(登録商標)タイプとして市販されている。
【0095】
本発明の組成物は、粒子の形態であり、好ましくは少なくとも1つの酵素及び少なくとも1つのポリマーPを、1:50〜10:1、特に1:40〜5:1、さらに好ましくは1:30〜2:1、特に1:20〜1:2又は1:20〜1:5のポリマーPに対する酵素の質量比で含む。一般に、少なくとも1つの酵素と少なくとも1つのポリマーPとの合計量は、酵素含有粒子の質量に対して、少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも40質量%、特に少なくとも50質量%、さらに好ましくは少なくとも70質量%、とりわけ少なくとも80質量%又は少なくとも90質量%である。
【0096】
本発明の組成物は、粒子状酵素組成物に一般に有用なさらなる成分をさらに含んでもよい。これらのさらなる成分は、本明細書において、配合添加物とも称する。これらのさらなる成分の量は、一般に、70質量%を越えず、好ましくは60質量%を越えず、特に50質量%を越えず、さらに好ましくは30質量%を越えず、とりわけ20質量%又は10質量%を越えない。
【0097】
粒子中に組み入れることができるさらなる成分としては、たとえば、多糖類、ワックス、酵素活性化剤又は促進剤、充填剤、酵素安定剤、可溶化剤、架橋剤、懸濁剤、粘度調節剤、ライトスフィア、塩素捕捉剤、可塑剤、顔料、塩、保存料及び香料が挙げられる。
【0098】
好適な多糖類は、非修飾の天然の多糖類であってもよいし、又は修飾された天然多糖類であってもよい。好適な多糖類としては、セルロース、ペクチン、デキストリン及びデンプンが挙げられる。デンプンは水中に可溶性であってもよいし、または不溶性であってもよい。本発明の特定の実施形態において、多糖とはデンプンである。本発明の特定の実施形態において、多糖とは不溶性デンプンである。様々な植物源由来の天然デンプンが好適であり(デンプン自体として、または修飾デンプンの出発点として)、関連するデンプンとしては、たとえば米、トウモロコシ、小麦、ジャガイモ,オート麦、キャッサバ、サゴヤシ、キャッサバ芋、大麦、サツマイモ、ソルガム、ヤムイモ、ライ麦、キビ、ソバ、クズウコン、タロイモ、アメリカサトイモ由来のデンプンが挙げられ、たとえば粉末形態であってよい。キャッサバデンプンは本発明に関連して好適なデンプンの1つであり;これに関連して、キャッサバ及びキャッサバデンプンは、タピオカ、マニオク、マンジョカ及びマニホットをはじめとする様々な同義語で既知であるとされてよい。本発明に関連して用いられるように、「修飾デンプン」という用語は、ある種の少なくとも部分的化学修飾、酵素修飾、及び/又は物理的若しくは物理化学的修飾を受けた、一般に、「親」デンプンに対して変更された特性を示す、天然のデンプンを意味する。
【0099】
本発明に関連する「ワックス」は、25〜150℃、特に30〜100℃、さらに詳細には35〜85℃、最も詳細には40〜75℃の融点を有するポリマー材料として理解される。ワックスは好ましくは室温(25℃)で固体状態である。下限は、ワックスが溶け始める温度から、粒子又は粒子を含む組成物が通常保存される温度(20〜30℃)までの妥当な範囲に設定するのが好適である。一部の粒子、たとえば洗剤産業で用いられる粒子に関して、ワックスの好適な特性は、ワックスが特に中性及びアルカリ性溶液において水溶性又は水分散性であり、したがって本発明のコーティングされた粒子を水溶液中に導入する場合、すなわち粒子を水で希釈することによって導入する場合、ワックスは崩壊及び/又は溶解して、粒子中に組み入れられた活性物質を水溶液に迅速に放出し、溶解させることである。水溶性ワックスの例は、ポリエチレングリコール(PEG)である。水溶液中に分散可能である水不溶性ワックスには、トリグリセリド及び油が含まれる。一部の粒子に関しては、コーティングが、ある不溶性ワックス、たとえばフィード粒子を含むのが好ましい。
【0100】
ワックスは、化学的に合成されたあらゆるワックス又は天然源から単離されたワックスまたはそれらの誘導体であってよい。したがって、好適なワックスは、ワックスの以下の非制限的リストから選択される。
− ポリエチレングリコール、PEG。様々な分子サイズを有する様々なPEGワックスが市販されており、この場合、低分子サイズのPEGは融点も低い。好適なPEGの例は、PEG1500、PEG2000、PEG3000、PEG4000、PEG6000、PEG8000、PEG9000など、たとえばBASF(Pluriol Eシリーズ)又はClariant又はIneosから得られるものである。ポリエチレングリコールの誘導体も用いることができる。
− ポリプロピレングリコール(たとえばBASFから得られるポリプロピレングリコールPluriol Pシリーズ)及びポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロックコポリマー。ポリプロピレングリコールの誘導体又はポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロックコポリマーも使用できる。
− 室温で固体である非イオン性界面活性剤、たとえばBASFから得られるLutensol ATシリーズなどの高レベルのエトキシ基を有するエトキシル化脂肪アルコール、1分子あたり様々な量のエチレンオキシドを有するC16〜C18脂肪アルコール、たとえばLutensol AT11、AT13、AT25、AT50、AT80(数字は、エチレンオキシド基の平均数を示す)。あるいは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドのポリマー又はそれらのコポリマー、たとえばBASFから得られるPluronic PE 6800などのブロックポリマーが有用である。エトキシル化脂肪アルコールの誘導体が好適である。
− 天然源から単離されたワックス、たとえばカルナウバワックス(融点80〜88℃)、キャンデリラワックス(融点68〜70℃)及びミツロウ。他の天然ワックス又はそれらの誘導体は、動物又は植物由来のワックス、たとえば海洋起源のワックスである。水素化植物油又は動物性獣脂も同様に好適である。このようなワックスの例は、水素化雄牛獣脂、水素化パーム油、水素化綿実油及び/又は水素化大豆油であり、ここで、本明細書で用いられる「水素化」という用語は、不飽和炭水化物鎖、たとえばトリグリセリドにおける飽和として解釈されるべきであり、この場合、炭素=炭素二重結合は炭素−炭素単結合に変換される。水素化パーム油は、たとえばHobum Oele und Fette GmbH(独国)又はDeutsche Cargill GmbH(独国)から市販されている。
− 脂肪酸アルコール、たとえばCondea Chemie GMBH(独国)から得られる、55〜60℃の融点を有する直線状長鎖脂肪酸アルコールNAFOL1822(C18、20、22)。脂肪酸アルコールの誘導体も同様に有用である。
− モノグリセリド及び/又はジグリセリド、たとえばグリセリルステアレート(ここで、ステアレートはステアリン及びパルミチン酸の混合物である)は有用なワックスである。この一例は、Danisco Ingredients(デンマーク)から得られるDimodan PMである。
− 脂肪酸、たとえば水素化直線状長鎖脂肪酸及び脂肪酸の誘導体。
− パラフィン、すなわち固体炭化水素。
− 微結晶性ワックス。
【0101】
さらなる好適なワックスは、C.M. McTaggart et. al., Int. J. Pharm. 19, 139(1984)またはFlanders et. al., Drug Dev. Ind. Pharm. 13, 1001(1987)(どちらも参考として本明細書で援用される)で見いだすことができる。
【0102】
本発明の特定の実施形態において、本発明のワックスは、2つ以上の異なるワックスの混合物である。本発明の特定の実施形態において、1若しくは複数のワックスは、PEG、エトキシル化脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸アルコール及びグリセリドからなる群から選択される。本発明の別の特定の実施形態において、ワックスは合成ワックスから選択される。さらに詳細な実施形態において、本発明のワックスはPEG又は非イオン性界面活性剤である。最も詳細な本発明の実施形態において、ワックスはPEGである。
【0103】
好適な充填剤は、水溶性及び/又は不溶性無機塩、たとえば微粉化アルカリスルフェート、アルカリ炭酸塩及び/又はアルカリ塩化物、クレイ、たとえばカオリン(たとえば、SPESWHITE(登録商標)、English China Clay)、ベントナイト、タルク、ゼオライト、チョーク、炭酸及び/又はケイ酸カルシウムである。典型的な充填剤は、硫酸二ナトリウム及びリグノスルホン酸カルシウムである。他の充填剤は、シリカ、石膏、カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウムマグネシウム及びセルロース繊維である。
【0104】
好適な酵素安定剤又は酵素保護剤は、いくつかのカテゴリーに含まれ、たとえば、アルカリ性若しくは中性物質、還元剤、酸化防止剤及び/又は第1遷移金属系列金属イオンの塩を包含する。これらのそれぞれを同じか又は異なるカテゴリーの他の保護剤と併用することができる。アルカリ性保護剤の例は、たとえば酸化剤を積極的に中和することによって化学的除去効果をもたらすアルカリ金属ケイ酸塩、炭化水素又は重炭酸塩である。還元性保護剤の例は、スルファイト、チオスルファイト又はチオスルフェートの塩であり、酸化防止剤の例は、メチオニン、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)又はブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)である。最も好適な薬剤は、チオ硫酸塩、たとえばチオ硫酸ナトリウムの塩である。さらに酵素安定剤は、ホウ酸塩、ホウ砂、ギ酸塩、ジカルボン酸及びトリカルボン酸ならびにいわゆる可逆的酵素阻害剤、たとえばスルフヒドリル基又はアルキル化若しくはアリール化ホウ酸を有する有機化合物であってよい。
【0105】
好適な架橋剤としては、たとえば酵素適合性界面活性剤、たとえばエトキシル化アルコール、特に10〜80個のエトキシ基を有するものが挙げられる。
【0106】
粒子の溶解性は、コーティングされた粒子が洗剤配合物の一成分である場合に重要であり得る。当業者には公知の様に、多くの薬剤は、様々な方法により、配合物の溶解度を増大させる働きをし、当業者に既知の典型的な薬剤は、米国薬局方で見いだすことができる。
【0107】
ライトスフィアは、真密度が低い小さな粒子である。典型的には、空気又はガスを内部に含む中空の球状粒子である。このような物質は、通常、固体材料を発泡させることによって製造される。これらのライトスフィアは、無機であっても、又は有機であってもよく、The PQ Corporationから入手可能なPMシリーズ(プラスチックの中空球)などであってよい。ライトスフィアは、デンプン又はそれらの誘導体などの多糖類から製造することもできる。Biodac(登録商標)は、GranTek Incから入手可能なセルロース(製紙からでる廃棄物)から作られる非中空軽量材料の一例である。これらの物質は、単独または異なる軽量材料の混合物としてのいずれかで本発明の粒子中に含まれ得る。
【0108】
懸濁剤、メディエータ(たとえば洗浄用途において、粒子が溶解する際に漂白作用を増強するため)及び/又は溶媒を粒子中に組み入れることができる。
【0109】
本発明関連した粒子において有用な可塑剤としては、たとえば:ポリオール、たとえば糖、糖アルコール、グリセリン、グリセロールトリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、トリエタノールアミン、モノ−、ジ−及びトリエチレングリコール又は1000未満の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG);尿素、フタル酸エステル、たとえばジブチル又はジメチルフタレート;チオシアネート、非イオン性界面活性剤、たとえばエトキシル化アルコール及びエトキシル化ホスフェート及び水が挙げられる。
【0110】
好適な顔料としては、これらに限定されるものではないが、微粉化白色体質顔料、たとえば二酸化チタン又はカオリン、着色顔料、水溶性着色剤、ならびに1つ以上の顔料と水溶性着色剤との組み合わせが挙げられる。
【0111】
粒子中に組み入れることができる好適な塩は、あらゆる無機塩、たとえば硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、硝酸塩、塩化物若しくは炭酸塩、又は単純性有機酸、特に、好ましくは10個未満の炭素原子、たとえば6個以下の炭素原子を有するモノ−、ジ−若しくはトリカルボン酸の塩、たとえばクエン酸塩、マロン酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩又は酢酸塩であってよい。これらの塩におけるカチオンの例は、アルカリ又はアルカリ土類金属イオンであるが、第1遷移金属系列のアンモニウムイオン又は金属イオン、たとえばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛又はアルミニウムである。アニオンの例としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、リン酸塩、一塩基性リン酸塩、二塩基性リン酸塩、次亜リン酸塩、ピロリン酸二水素塩、四ホウ酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、メタケイ酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、酪酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、アスコルビン酸塩又はグルコン酸塩が挙げられる。特に、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、硝酸塩、塩化物、若しくは炭酸塩のアルカリ又はアルカリ土類金属塩又は単純性有機酸の塩、たとえばクエン酸塩、マロン酸塩又は酢酸塩を用いることができる。具体例としては、NaH2PO4、Na2HPO4、Na3PO4、(NH4)H2PO4、K2HPO4、KH2PO4、Na2SO4、K2SO4、KHSO4、ZnSO4、MgSO4、CuSO4、Mg(NO32、(NH42SO4、ホウ酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、ギ酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、酢酸カルシウム、ギ酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、酢酸亜鉛、ギ酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛及びクエン酸ナトリウムが挙げられる。塩は、水和塩、すなわち結晶の結合水を有する結晶塩水和物、たとえばWO99/32595に記載されているものであってよい。水和塩の例としては、硫酸マグネシウム七水和物(MgSO4(7H2O))、硫酸亜鉛七水和物(ZnSO4(7H2O))、硫酸銅五水和物(CuSO4(5H2O))、リン酸ナトリウム二塩基性七水和物(Na2HPO4(7H2O))、硝酸マグネシウム六水和物(Mg(NO32(6H2O))、ホウ酸ナトリウム十水和物、クエン酸ナトリウム二水和物及び酢酸マグネシウム四水和物が挙げられる。
【0112】
本発明の好適な実施形態において、酵素含有粒子は、Zn2+、Mg2+、Ca2+及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの二価金属カチオンの少なくとも1つの塩を含む。好適な塩としては、前述のアニオンの塩、特に硫酸の塩(硫酸塩)、リン酸の塩(リン酸塩、リン酸一及び二水素塩並びにリン酸水素アンモニウム)、単純性有機酸、特に、好ましくは10個未満の炭素原子、たとえば6個以下の炭素原子を有するモノ−、ジ−又はトリカルボン酸の塩化物又は塩、たとえばクエン酸塩、マロン酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩又は酢酸塩が挙げられ、単純性有機酸の塩が好ましい。カルシウム塩、特に単純性有機酸のカルシウム塩が特に好適である。これらの塩の量は、一般に、酵素の合計質量に対して、酵素含有粒子が0.1〜10質量%、特に0.5〜8質量%、特に1〜5質量%の少なくとも1つの二価イオンを含むように選択される。
【0113】
本発明の粒子において、ポリマー及び酵素及び場合によりさらなる成分は通常、均質混合物として存在する。すなわち、粒子内の成分の分布は、均一又は実質的に均一である。しかし、粒子はコアシェル構造も有し得る。「コアシェル構造」という用語は、粒子内の成分の分布が均一ではないことを意味する。もっと正確に言えば、粒子の少なくとも1つの成分は主に粒子の内部領域中に位置し、一方、少なくとも1つの他の成分は主に粒子の外側領域に位置する。これらのコアシェル粒子において、酵素は好ましくは粒子の内部領域中に位置する。本発明の特に好適な実施形態において、粒子内の成分の分布は均一又は実質的に均一である。
【0114】
本発明の組成物中の粒子の粒子サイズは変わり得る。好ましくは酵素含有粒子の体積平均粒子径は、50nm〜90μm、特に100nm〜80μm、さらに好ましくは200nm〜50μm、とりわけ1〜20μm、特に好ましくは0.5〜20μmである。しかし、体積平均粒子径は50〜500nmほどの小ささであってよい。一般に、粒子の少なくとも90質量%は、最大150μm、好ましくは最大100μm、さらに好ましくは最大70μm、特に最大50μm、とりわけ最大30μmの粒子径を有する。粒子サイズは、たとえばD. Distler, Waessrige Polymerdispersionen[Aqueos Polymer Dispersions], Wiley−VCH 1999, chapter 4.2.1, p. 40ff、 H. Auweter, D. Horn, J. Colloid Interf. Sci. 105(1985)399、 D. Lilge, D. Horn, Colloid Polym. Sci. 269(1991)704又はH. Wiese, D. Horn, J. Chem. Phys. 94(1991)6429又はW. Brown, Dynamic Light Scattering Oxford University Press, 1992に記載されている光散乱などの従来技術によって決定することができる。
【0115】
本発明の粒子は1、2、またはそれ以上のさらなるコーティング層を含んでもよい。本発明の特定の実施形態において、粒子は少なくとも2つのコーティング層を含む。
【0116】
さらなるコーティングを粒子に塗布して、さらなる特性または性質を提供することができる。したがって、たとえばさらなるコーティングは次の効果の1つ以上を達成することができる:
(i)粒子中の活性化合物を環境中の対抗化合物に対してさらに保護すること
(ii)粒子を液体媒体(酸媒体など)中に導入することにより所望の速度で溶解すること;
(iii)粒子のより良好な物理的強度を提供すること。
【0117】
本発明の特定の実施形態において、外層を、マイクロカプセル化技術内で公知のように、たとえば界面重合及びin−situ重合などの重縮合、コアセルベーション、ゲル化及びキレート化、溶媒抽出、蒸発及び懸濁架橋によって適用することができる。様々なコーティング技術は、"Microspheres, Microcapsules and Liposomes", ed. Reza Arshady, Citus Books Ltd.及びWO97/24179(参考として本明細書で援用される)に記載されている。
【0118】
一般に、酵素粒子は粉末形態であってもよいし、又は液体媒体中分散液の形態であってもよい。多くの場合、粉末は、第1ステップで製造され、これを第2ステップで液体媒体、たとえば極性液体媒体、たとえば水性液体又は液体乳化剤、乳化剤の液体混合物又はそれらの混合物、或いは液体炭化水素若しくは液体植物油又はそれらの混合物などの非極性液体媒体中に組み入れる。特定の好適な実施形態において、液体媒体は、液体界面活性剤若しくは界面活性剤の液体混合物(液体乳化剤)であるか、又は液体媒体の質量に対して、少なくとも80質量%の少なくとも1つの液体界面活性剤又は界面活性剤混合物を含む。液体界面活性剤の例は、特にアルコールアルコキシレートなどの非イオン性界面活性剤である。このような分散液は、たとえば沈殿に対して安定化させるために様々な添加剤も含むことができる。液体媒体の種類はそれほど重要ではなく、主に酵素粒子の意図される目的に依存する。しかし、酵素含有粒子が液体分散液として得られる方法を使用することも可能である。
【0119】
本発明の組成物の製造は、その粒子が複数の成分を含む粒状物質を製造するための従来法によって行うことができる。概して、活性物質含有粒子の成分を互いに混合し、次いで従来法によって加工して、酵素粒子を得る。このような方法も、本出願の主題である。
【0120】
本発明に適した方法の例は、乾燥法、たとえば噴霧乾燥、凍結乾燥、流動床乾燥、流動床コーティング、Pickering分散液を製造し、続いて噴霧乾燥すること、及び大きな粒子サイズの粒子粉砕ステップを含む方法、たとえばマイクロ化、乾式又は湿式製粉である。
【0121】
好ましくは、酵素粒子の製造法は、噴霧乾燥又はエマルジョン乾燥であり、噴霧乾燥がより好適である。噴霧乾燥法は、一般に、酵素及びポリマーPの溶液を製造し、この溶液を気体若しくは液体で霧化して、小滴にし(気体での霧化は噴霧乾燥法に対応し、水非混和性液体での霧化によってエマルジョンを得る)、これらの小滴を乾燥して、固体粒子を形成するステップを含む。好適な乾燥法としては、噴霧乾燥及びエマルジョン法が挙げられる。
【0122】
a)液体酵素含有及びポリマー含有溶液を噴霧乾燥塔中で霧化して、小滴を形成し、これらが乾燥塔を降下する途中で乾燥させて、酵素+ポリマー含有粒状物質を形成する噴霧乾燥法。このようにして非常に小さな粒子を製造することができる(Michael S. Showell(editor);Powdered detergents;Surfactant Science Series;1998;vol. 71 ;pp. 140−142;Marcel Dekker)。
【0123】
b)水性液体酵素含有及びポリマー含有溶液を水非混和性液体、たとえばパラフィン油中で乳化させるエマルジョン法。小滴の形成を容易にし、エマルジョンを安定化させるために、様々な乳化剤及び界面活性剤を使用する。小滴からの水をその後、蒸留、たとえば共沸蒸留によるか、又は好ましくは水非混和性液体が揮発性の場合には、エマルジョンを噴霧乾燥することによって除去することができる。エマルジョンに関して、乾燥法は、たとえばEP0356239に記載されているような共沸蒸留であり得る。
【0124】
液体酵素及びポリマー含有溶液の凍結乾燥法も同様に好適である。
【0125】
本発明の粒子は、破砕法によっても製造することができ、この場合、あらかじめ形成された大きな粒子/ブリケットなどを、大きな粒子を粉砕することによって粒子サイズを減少させる。これは、乾燥粒子に対して行うことができるか(乾式製粉)又は液体中粒子分散液、いわゆるスラリーを用いて(湿式製粉)実施することができる。
【0126】
本発明の好適な実施形態によれば、本発明の組成物の製造は、噴霧乾燥法によって、すなわち、少なくとも1つの酵素及び少なくとも1つのポリマーPを含む液体組成物の噴霧乾燥によって行うことができる。本発明の特定の好適な実施形態によれば、本発明の組成物の製造は、少なくとも1つの酵素及び少なくとも1つのポリマーPを含む水性組成物の噴霧乾燥によって行われる。
【0127】
この目的を達成するために、第1ステップにおいて、酵素含有粒子の成分を互いに混合するか、または好適な溶媒若しくは希釈剤中に溶解させる。結果として得られる懸濁液又は溶液を続いて噴霧乾燥法に付す。ここで、溶媒又は希釈剤は、温風を用いて除去し、この場合、溶液若しくは懸濁液中に存在する活性物質粒子の成分は、それ自体公知の方法で得ることができる微粉を形成する。別法として、粒子の成分を別々に溶解又は分散させることができ、結果として得られる溶液又は分散液を同時噴霧乾燥に付すことができる。
【0128】
噴霧乾燥法による本発明の組成物の製造において、粒子の成分を、第1のステップにおいて、好適な溶媒又は希釈剤中に溶解又は懸濁させる。好適な溶媒は、活性物質含有粒子の全成分がその中に溶解し、使用される酵素を破壊しないものである。
【0129】
好適な溶媒の例は:
水、
1〜C4−アルカノール、たとえばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール;
1〜C4−脂肪族酸のC1〜C4−アルカノールとのエステル、たとえば酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸メチル;
好ましくは4〜10個のC原子を有する脂肪族及び脂環式エーテル、たとえばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル;
ハロ炭化水素、たとえばジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン;
環状又は開鎖状炭化塩、たとえばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート;
並びに前記溶媒の混合物及び前記溶媒と水との混合物
である。
【0130】
好ましくは、少なくとも1つの酵素及び少なくとも1つのポリマーPを含む水性組成物を噴霧乾燥に付す。したがって、溶媒は好ましくは、水又は水と水混和性有機溶媒との混合物から選択される。好ましくは、溶媒中の水の量は、少なくとも50体積%である。さらに好ましくは、水は唯一の溶媒又は希釈剤である。好ましくは、水又は水と有機溶媒との混合物は、pH6〜pH9の範囲のpHを有する。
【0131】
第2のステップにおいて、溶媒を続いて好適な噴霧用装置中、温風を用いて除去する。このために、溶液又は分散液を好適な装置中で温風中に噴霧する。溶液又は分散液中への噴霧は、温風流と並流又は向流で行うことができ、好ましくは並流で、すなわち、温風流と同じ方向で行う。
【0132】
好適な噴霧用装置は、単一又は多物質ノズル及び噴霧ディスクである。
【0133】
以下、乾燥ガスとも称する温風の温度は、乾燥装置中に入る際に、典型的には50〜200℃、特に70〜180℃の範囲、具体的には100〜160℃の範囲である。乾燥ガスが乾燥装置を出る時、その温度は、典型的には40〜120℃の範囲、特に60〜100℃の範囲である。好適な乾燥ガスは、空気のほかに、特に窒素、アルゴン又はヘリウムなどの不活性ガスであり、窒素が好適である。容易に揮発する溶媒の場合、低い温度、たとえば室温を用いることも可能である。
【0134】
典型的には、噴霧乾燥は、この目的に適した噴霧乾燥塔中で行う。ここで、乾燥される溶液又は分散液及び乾燥ガスは、典型的には塔の最上部で導入する。塔の底部で、乾燥活性物質粒子をガス流とともに排出させ、サイクロンなどの下流に配置された装置中でガス流から分離する。従来の噴霧乾燥のほかに、内部又は外部流動床を用いた凝集噴霧乾燥を実施することも可能であり(たとえばNiroからFSD技術として既知のもの)、この場合、粒子は凝集体を形成して、さらに大きくなる。しかし、形成される粒子の第1粒子サイズは、好ましくは前記範囲であり、特に100μmを越えず、具体的には50μmを越えない。
【0135】
適切な場合、特に粒子が若干の粘着性を有する場合には、伝統的な噴霧乾燥アジュバントを粒子に加える。これらは微粉化固体であり、溶液又は分散液とともに噴霧乾燥装置中に導入され、凝集またはクランピングが起こらない様にする。好適な微粉化固体は、特に、シリカ、たとえば疎水化シリカ、アルカリ金属およびアルカリ土類金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属アルミノケイ酸塩、高架橋ポリビニルピロリドン、セルロース、デンプン、高架橋カルボキシメチルデンプンナトリウム又は架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムである。これらの物質の粒子サイズは、典型的には100μm未満である(D90値)。
【0136】
本発明の組成物は、酵素が必要とされるあらゆる用途で用いることができる。本発明の組成物は、タンパク質対抗物質を含む組成物中、たとえば洗剤組成物中、特に液体洗剤組成物などのタンパク質対抗物質を含む液体組成物中に組み入れるために特に好適である。
【0137】
したがって、本発明は、本明細書で前述した少なくとも1つの酵素組成物を含む洗剤組成物に関する。
【0138】
本発明はまた、本明細書で前述した少なくとも1つの酵素組成物を含む液体組成物、特に液体洗剤組成物にも関する。
【0139】
本発明の洗剤組成物において、ポリマーPは、洗剤が洗浄液中に導入されるまで酵素を保護し、洗浄液中で、洗剤は、粒子が溶解し酵素を放出するために十分希釈され、汚れに作用するために利用可能になる。
【0140】
本発明の組成物の液体組成物は、本発明の粒子を含むために適したあらゆる液体組成物であり得る。液体組成物はいかなる組成物であってよいが、特に好適な組成物は、パーソナルケア組成物、洗浄組成物、繊維加工組成物、たとえば漂白剤、医薬組成物、皮革加工組成物、燃料、パルプ又は紙加工組成物、食品及び飲料組成物及び動物飼料組成物である。
【0141】
本発明のさらなる特定の実施形態において、液体組成物は液体洗剤組成物である。さらに詳細な本発明の実施形態において、液体組成物は洗濯又は食器用洗剤組成物である。
【0142】
本発明の特定の実施形態において、液体組成物は50%未満の水を含む。さらに詳細な実施形態において、液体組成物は30%未満の水を含む。本発明のさらなる実施形態において、液体組成物は20%未満の水を含む。
【0143】
液体組成物が液体洗剤組成物ならば、液体組成物は界面活性剤不溶化電解質を含んでもよく、前記電解質は、前記界面活性剤が酵素/ポリマー粒子を安定に懸濁させることができる構造を形成する濃度で存在する。
【0144】
液体洗剤組成物は、特定の実施形態において、液体洗剤の30質量%〜70質量%の水を含む。さらに詳細な実施形態において、液体洗剤は、液体洗剤の40質量%〜60質量%の水を含む。最も詳細な実施形態において、液体洗剤は液体洗剤の80質量%〜90質量%の水を含む。
【0145】
本発明の特定の実施形態において、液体洗剤組成物は、30%を越えるが90%未満である水を含む。液体洗剤組成物中に含まれる水の量は、特に液体洗剤の85%未満、さらに詳細には75%未満、たとえば60質量%未満である。
【0146】
本発明の液体洗剤組成物は洗濯又は食器洗浄用途において通常に用いられる従来の組成物である。
【0147】
特定の実施形態において、組成物は有効量の洗剤ビルダーを含む。好適なビルダーとしては、縮合リン酸塩、特にトリポリリン酸ナトリウムまたは、それほど好ましくはないが、ピロリン酸ナトリウム又はテトラリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、オルトリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ニトリロトリ酢酸ナトリウム、ホスホン酸塩、たとえばエチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)ナトリウム、ジエチレントリアミンペンタキス(メチレンホスホン酸)ナトリウム、アセトジホスホン酸ナトリウム又はアミノトリス(メチレンホスホン酸)ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム又はゼオライトが挙げられる。他のそれほど好ましくないビルダーとしては、前記ナトリウム塩のカリウム又はリチウム類似体が挙げられる。ビルダーの割合は、典型的には液体洗剤組成物の約5質量%〜約40質量%、通常10質量%〜35質量%、好ましくは15〜30質量%、さらに好ましくは18〜28質量%、最も好ましくは20〜27質量%である。2つ以上のビルダーの混合物、たとえばトリポリリン酸ナトリウムとケイ酸ナトリウム及び/又は炭酸ナトリウムとゼオライト;或いはニトリロトリ酢酸ナトリウムとクエン酸ナトリウムの混合物がしばしば用いられる。好ましくは、ビルダーは、少なくとも部分的に、組成物中に懸濁した固体粒子として存在する。
【0148】
本発明は、ビルダーを含まない洗浄組成物又は全てのビルダーが溶液中に存在する組成物の製造にも適用可能である。
【0149】
本発明の洗剤組成物は、特定の実施形態において、1つ以上の界面活性剤を含み、界面活性剤は、半極性及び/又はアニオン性及び/又はカチオン性及び/又は双性イオン性を包含する非イオン性であり得る。一般に、界面活性剤は液体組成物中、組成物の約0.1質量%〜90質量%の量で存在する。特定の実施形態において、界面活性剤は、液体組成物中に組成物の約10質量%〜60質量%の量で存在する。別の特定の実施形態において、界面活性剤は、液体組成物中に組成物の約2〜35質量%の量で存在する。
【0150】
含まれる場合は、洗剤は、通常、約1%〜約40%のアニオン性界面活性剤、たとえば直鎖アルキルベンゼンスルホネート、たとえばトルエンスルホネート、オクチルベンゼンスルホネート又はドデシルベンゼンスルホネート、α−オレフィンスルホネート、アルキルスルフェート(脂肪アルコールスルフェート)、アルコールエトキシスルフェート、第2アルカンスルホネート、α−スルホ脂肪酸メチルエステル、アルキル若しくはアルケニル−コハク酸、ジアルキル若しくはジアルケニルスルホコハク酸又はセッケンを含む。非常に好適なアニオン性界面活性剤は、直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)材料である。このような界面活性剤及びそれらの製造は、例えば米国特許第2,220,099号及び第2,477,383号(参考として本明細書で援用される)に記載されている。特に好適なのは、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びカリウムであり、ここで、アルキル基中の炭素原子の平均数は約11〜14である。C11〜C14、例えばC12LASナトリウムが特に好適である。他の有用なアニオン性界面活性剤は、WO99/00478、11〜13ページ(参考として本明細書で援用される)に記載されている。
【0151】
含まれる場合は、洗剤は、通常、約0.2%〜約40%の非イオン性界面活性剤を含む。好適な非イオン性界面活性剤は、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドと少なくとも1つのNH基又はOH基を有する疎水性化合物との反応生成物を含む。非イオン性界面活性剤は、一般に8〜17、好ましくは9.5〜14、さらに好ましくは12〜14の範囲の平均親水性−親油性バランス(HLB)を有する。疎水性(親油性)部分は、脂肪族又は芳香族であり得、任意の特定の疎水性基と縮合したポリオキシエチレン基の長さを容易に調節して、所望の程度の親水性及び疎水性エレメント間のバランスを有する水溶性化合物を得ることができる。
【0152】
好適な非イオン性界面活性剤としては、アルコールエトキシレート、特にアルカノールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、たとえばノニルフェノールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、アルキルジメチルアミンオキシド、エトキシル化脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、ポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミド、又はグルコサミンのN−アシルN−アルキル誘導体(「グルカミド」)が挙げられる。このような有用な非イオン性界面活性剤は、WO99/0478、13〜14ページ(参考として本明細書で援用される)にさらに記載されている。洗剤は、両性及び/又は双性イオン性界面活性剤も含み得る。アニオン性、非イオン性、両性及び双性イオン性界面活性剤の典型的なリストは、1972年5月23日付でNorrisに対して発行されたUS3,664,961に記載されている。
【0153】
この種の特に好適な非イオン性界面活性剤は、アルコール1モルあたり2〜12モルのエチレンオキシドを含むC9〜C15第1アルコールエトキシレート、特にアルコール1モルあたり3〜8モルのエチレンオキシドを含むC12〜C15第1アルコールである。
【0154】
別の種類の好適な非イオン性界面活性剤は、一般式RO(Cn2nO)tx(式中、Zはグルコース由来の部分であり;Rは、12〜18個の炭素原子を含む飽和疎水性アルキル基であり;tは0〜10であり、nは2又は3であり;xは1.3〜4である)のアルキルポリグルコシド化合物を含み、この化合物は、10%未満の未反応脂肪アルコール及び50%未満の短鎖アルキルポリグルコシドを含む。この種類の化合物及びそれらの洗剤における使用は、EP−B0070077、EP75996及びEP94118に開示されている。
【0155】
一般に、GB1,123,846、又は"Surface Active Agents and Detergents"においてSchwartz、 Perry及びBerchにより言及されるあらゆる界面活性剤を用いることができる。
【0156】
好ましくは、液体洗剤組成物のpHはアルカリ性、たとえば7.5超、特に7.5〜12、典型的には8〜11、たとえば9〜10.5である。
【0157】
液体洗剤組成物は、特定の実施形態において、溶解した界面活性剤不溶化電解質を含む。例としては、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、フッ化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、若しくは酢酸ナトリウム、又は対応するカリウム塩が挙げられる。しかし、特に、電解質は、洗浄液において有用な機能を果たすために必要な塩である。
【0158】
特定の実施形態において、溶液中の電解質濃度は、3質量%より高く、たとえば5質量%より高い。別の実施形態において、溶液中の電解質濃度は、組成物の質量に対して、6〜20質量%、特に7〜19質量%、たとえば8〜18質量%、9〜17質量%、10〜16質量%、たとえば11〜15質量%の溶液中電解質である。電解質含有量を好ましくは周囲温度(0℃及び40℃)で少なくとも3ヶ月の貯蔵安定性が得られるように調節するする。
【0159】
洗剤組成物は、通常の少量成分のいずれか、たとえば汚れ懸濁剤(たとえばカルボキシメチルセルロース)、保存料、たとえばホルムアルデヒド若しくはテトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム塩、ベントナイト粘土、又は本明細書に記載の、本発明にしたがって保護された任意の酵素を含んでもよい。漂白剤を用いる場合、たとえば親水性封入剤を用いるか、またはたとえばEP−A−0238216若しくはGB−A−2200377に記載されているようなシリコーン若しくは炭化水素などの疎水性媒体中に漂白剤を封入するのが好都合であり得る。
【0160】
本発明の液体洗剤組成物は、0〜65%w/wのキレート剤も含むことができる。このようなキレート剤は、アミノカルボキシレート、アミノホスホネート、多官能性置換芳香族キレート剤、ジホスフェート、トリホスフェート、カーボネート、シトレート、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、アルキル−若しくはアルケニルコハク酸、可溶性シリケート又は層状シリケート(たとえばHoechstから得られるSKS−6)及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。さらなるキレート剤はWO99/00478に記載されている。
【0161】
液体洗剤中の(1つ若しくは複数の)酵素は、液相中安定剤、たとえばプロピレングリコール若しくはグリセロールなどのポリオール、糖若しくは糖アルコール、乳酸、短鎖カルボン酸、たとえばギ酸塩若しくは酢酸塩、ペプチドアルデヒド、ホウ酸、又はホウ酸誘導体、たとえば芳香族ホウ酸エステル、又はフェニルボロン酸誘導体、たとえば4−ホルミルフェニルボロン酸を用いて安定化することもでき、組成物は、たとえばWO92/19709及びWO92/19708に記載されているようにして配合することができる。
【0162】
特に好適な液体洗剤は:長鎖(たとえばC10〜14)直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩を5〜12%の量で、長鎖アルキル、又はアルキルエーテル、硫酸塩であって、たとえば0〜5エチレンオキシ単位を有するものを0〜3%の量で;脂肪酸アルカノールアミド、及び/又は12未満のHLBを有するアルコールエトキシレートを1〜5%の量で;モノ−及びジ−長鎖アルキルホスフェートの混合物を0〜3%、たとえば0.1〜1%の量で;トリポリリン酸ナトリウム(好ましくは0.5〜5質量%の水であらかじめ水和する)を14〜30%、たとえば14〜18%若しくは20〜30%の量で;場合によって、炭酸ナトリウムを10%まで、たとえば5〜10%の量で(トリポリリン酸ナトリウムと炭化塩との合計が好ましくは20〜30%);再付着防止剤、たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウムを0.05〜0.5%の量で;場合によって増白剤を0.5%〜0.5%の量で;キレート剤、たとえばジ−及びポリアミンのメチレンホスホネート、特にエチレンジアミンテトラ[メチレンホスホン酸]ナトリウム又はジエチレントリアミンヘキサ[メチレンホスホン酸]ナトリウムなどのアミノホスホネート(場合によって0.1〜15%の量で存在する)を;通常の少量の添加剤、たとえば香料、着色剤、保存料とともに含み、残りが水のものである(百分率は全液体洗剤の質量に対する)。液体洗剤は、1%に希釈した後に、6〜13、好ましくは7〜12、さらに一般には8〜11、たとえば9〜10.5のpHを有し得る。
【0163】
本発明を、以下の実施例によってさらに説明し、実施例は本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0164】
I.出発物質:
ポリマー:
P1:マレイン酸及びC20〜C24モノオレフィンのコポリマー(モル比1:1)、加水分解、ナトリウム塩、EP412389にしたがって製造(第1表を参照)、K値26.8(H2O中1%)。
P2:マレイン酸、C12−オレフィン及びC20〜C24−オレフィンのターポリマー(モル比1:0.6:0.4)、加水分解、ナトリウム塩、EP412389にしたがって製造(第1表を参照)、K値50.1(H2O中1%)。
P3:マレイン酸、C12−オレフィン及びスチレンのターポリマー(モル比1:0.1:0.9)、加水分解、ナトリウム塩、EP412389にしたがって製造(第1表を参照)、K値52.6(H2O中1%)。
P4:マレイン酸、C12−オレフィン、ポリイソブテン(Mn550)及びスチレンのクォーターポリマー(モル比1:0.6:0.2:0.2)、加水分解、ナトリウム塩、EP412389にしたがって製造(第1表を参照)、K値28.1(H2O中1%)。
P5:マレイン酸、C20〜C24−オレフィン及びスチレンのターポリマー(モル比1:0.7:0.3)、加水分解、ナトリウム塩、EP412389にしたがって製造(第1表を参照)、K値65.2(H2O中1%)。
P6:マレイン酸、C20〜C24−オレフィン及びアクリル酸のターポリマー(モル比1:1:0.5)、加水分解、ナトリウム塩、EP412389にしたがって製造(第1表を参照)、K値38.9(H2O中1%)。
P7:マレイン酸、C12−オレフィン、C20〜C24−オレフィン及びアクリル酸のクォーターポリマー(モル比1:0.5:0.5:0.5)、加水分解、ナトリウム塩、EP412389にしたがって製造(第1表を参照)、K値57.1(H2O中1%)。
P8:マレイン酸及びC16−オレフィンのコポリマー(モル比1.15:1)、加水分解、ナトリウム塩、EP412389にしたがうが、重合中に有機溶媒(第1表を参照)を使用して製造、K値10.8(H2O中1%)。
P9::マレイン酸、C12−オレフィン及びポリイソブテンのターポリマー(Mn550)(モル比1:0.8:0.2)、加水分解、ナトリウム塩、EP412389にしたがって製造(第1表を参照)、K値42.4(H2O中1%)。
P10:2−エチルヘキシルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート及びアクリル酸のターポリマー(質量比0.46:0.15:0.39)、EP07115644.2にしたがって製造。
P11:クロトン酸及び酢酸ビニルのコポリマー(質量比10:90)、K値37(テトラヒドロフラン中1%)。
P12:マレイン酸、C18モノオレフィン及びイソブテンのターポリマー(モル比1:0.05:0.7)、加水分解、ナトリウム塩、EP412389にしたがって製造。
P13:エチレン及びメタクリル酸のコポリマー(質量比92:8)、カリウム塩、水性エマルジョン、PCT/EP2007/062189にしたがって製造。
P14:マレイン酸及びC16−オレフィンのコポリマー(モル比1:1)、加水分解、ナトリウム塩、EP412389にしたがって製造(第1表を参照)、K値60.4(H2O中1%)。
P15:マレイン酸及びオレフィンのコポリマー、加水分解、ナトリウム塩、Sokalan CP9(K値40、Mw12000)。
P16:スチレン、α−メチルスチレン及びアクリル酸のコポリマー(酸価220mgKOH/g、Mw6000)、アンモニウム塩の水溶液。
P17:スチレン及びアクリル酸のコポリマー、カリウム塩の水溶液、KOHを有するJoncryl(登録商標)HPD 296。
P18:スチレン及びアクリル酸のコポリマー(酸価110mgKOH/g、Mw4500)、ジメチルエタノールアミンで中和した水溶液。
P19:エチルアクリレート及びアクリル酸のコポリマー(質量比0.9:0.10)。
P20:エチレン及びメタクリル酸のコポリマー(質量比73:27)、ジメチルエタノールアミンで中和、水性エマルジョン、PCT/EP2007/062189に従って製造。
P21:マレイン酸及びC18−オレフィン及びスチレンのターポリマー(モル比1:0.5:1)、加水分解、ナトリウム塩、EP412389にしたがって製造(第1表を参照)、K値33.5(H2O中1%)。
P22:マレイン酸、C20〜C24−オレフィン及び2−エチルヘキシルアクリレートのターポリマー(モル比1:0.75:0.75)、加水分解、ナトリウム塩、EP412389にしたがって製造(第1表を参照)、K値19.7(H2O中1%)。
P23:tert−ブチルアクリルアミド、エチルアクリレート及びアクリル酸のターポリマー、K値40(エタノール中1%)、酸価77mgKOH/g)。
P24:マレイン酸及びスチレンの修飾コポリマー(モル比1:1)のナトリウム塩、500のMnを有するポリエチレンオキシドで修飾、WO93/17310に記載された方法に従って製造。
【0165】
マレイン酸と疎水性コモノマーとのコポリマー(ポリマーP1〜P9、P12、P14、P21及びP22)は、EP412389において分散液Iについて記載された方法と同様にして製造した。
【0166】
【表1】

【0167】
II.酵素含有粒子の製造:
ポリマー−酵素粒子A(質量比ポリマー/酵素2.5:1、一般的手順)
159gの水性サビナーゼ濃縮物(プロテアーゼ)(固形分18%)(50KNPU/g)を1032gの水中各ポリマーの6.9%ポリマー溶液と混合した。ポリマーの酵素固形分に対する比はしたがって2.5:1であった。
【0168】
ポリマー/酵素溶液を、Mobil Minor(NiroA/Sからの噴霧乾燥)をトップスプレー並流モードで使用し、入口空気温度として165〜170℃及び出口空気温度として70〜75℃を使用して噴霧乾燥した。結果として得られる粒子は、2〜10ミクロンの粒子サイズを有していた。
【0169】
ポリマー−酵素粒子B(質量比ポリマー/酵素5:1)
粒子は、ポリマー−酵素粒子Aについて記載した一般法によって、80gの水性サビナーゼ濃縮物(プロテアーゼ)(18%固形分)(50KNPU/g)と913gの水中各ポリマーの7.9%ポリマー溶液との混合物を用いて製造した。結果として得られる粒子は、2〜10ミクロンの粒子サイズを有していた。
【0170】
ポリマー−酵素粒子C(質量比ポリマー/酵素10:1)
粒子は、ポリマー−酵素粒子Aについて記載した一般法により、50gの水性サビナーゼ濃縮物(プロテアーゼ)(18%固形分)(50KNPU/g)と1191gの水中各ポリマーの7.6%ポリマー溶液との混合物を用いて製造した。結果として得られる粒子は、2〜10ミクロンの粒子サイズを有していた。
【0171】
III.酵素含有粒子の適用性:
a)洗剤ベース:
3つの液体洗剤を第2表に記載した組成によって製造した。
【0172】
【表2】

【0173】
洗剤組成物4は市販の液体洗剤「Non Bio Persil Small&Mighty(2倍濃縮)」であった。
【0174】
洗剤組成物5は市販の液体洗剤「TESCO Non Bio Super Concentrated(2倍濃縮)」であった。
【0175】
b)洗剤における貯蔵安定性:
洗剤における酵素−ポリマー粒子の残留サビナーゼ活性を、閉鎖ガラス器具中で保存した後に測定した。プロテアーゼ活性は、N,N−ジメチルカゼインの40℃、pH8.3での加水分解に基づいた標準的プロテアーゼ分析によって測定した。非保護プロテアーゼ基準として、サビナーゼ濃縮物を使用した。結果を第3表〜第5表にまとめる。
【0176】
洗剤中の酵素調製物の量:
サビナーゼ濃縮物:0.15%w/w
2.5:1ポリマー酵素粒子:0.1%w/w
5:1ポリマー:酵素粒子:0.2%w/w
10:1ポリマー:酵素粒子:0.4%w/w
【0177】
【表3】

【0178】
【表4】

【0179】
【表5】

【0180】
サビナーゼを含むポリマー酵素粒子が、非安定化プロテアーゼと比較してプロテアーゼの安定性を有意に増大させることはデータから明らかである。
【0181】
実施例27〜29:
Minispray295(Buechi(スイス国)から得られる噴霧乾燥機)をトップスプレー並流モードで使用して、ポリマー−酵素粒子CについてIで記載したようにして粒子を製造した。入口空気温度は160℃〜165℃であり、出口空気温度は75〜80℃であった。噴霧乾燥用溶液を次のようにして製造した:2.5gの水性サビナーゼ濃縮物(プロテアーゼ)(18%固形分)(50KNPU/g)を45gの水中各ポリマーの10質量%ポリマー溶液と混合した。この混合物に、10gの水中に溶解させた0.5gのギ酸カルシウムの溶液を添加した。結果として得られる混合物を30分間撹拌した。噴霧乾燥によって得られた粒子は50μm未満の粒子サイズを有していた。
【0182】
このようにして得られたポリマー−酵素粒子を前述のようにそれらの貯蔵安定性に関して試験した。結果を第6表にまとめる:
【表6】

【0183】
実施例30〜31:
粒子をポリマー−酵素粒子Cに関してIで記載したようにして製造した。噴霧乾燥用溶液を次のようにして製造した:50gの水性サビナーゼ濃縮物(18%固形分)(50KNPU/g)を900gの水中各ポリマーの10質量%ポリマー溶液と混合した。この混合物に、200gの水中に溶解させた10gのギ酸カルシウムの溶液を添加した。結果として得られる混合物を30分間撹拌した。噴霧乾燥によって得られた粒子は50μm未満の粒子サイズを有していた。
【0184】
このようにして得られたポリマー−酵素粒子を、前述のようにそれらの貯蔵安定性に関して市販の洗剤において試験した。結果を第7表にまとめる:
【表7】

【0185】
IV.サビナーゼ濃縮物を含む液体洗剤と比較した、実施例30の酵素−ポリマー粒子を含む液体洗剤の洗浄特性
EMPA117スワッチを用いてMini Terg−o−tometer washで洗浄を行った(Mini−Terg−O−Tometerは、Jay C. Harris, "Detergency Evaluation and Testing," Interscience Publishers Ltd.(1954)pp. 60−61)に記載されているTerg−O−Tometer試験洗浄機の小型バージョンである。
【0186】
以下の洗浄条件を使用した:
250mlのビーカー中100mlの洗浄液;
洗剤:D1、用量:第8表に洗浄液1リットルあたりの酵素(mg)として記載するような量のサビナーゼ濃縮物又はポリマー酵素粒子を含む5g/l洗浄液;
温度:35℃;
洗浄時間:15分;
水の硬度:6°dH;
スワッチ:EMPA 117(1回の洗浄あたり2スワッチ);
洗浄後、スワッチをMacbeth Color Eye 7000分光光度計で規約反射率460nm(反射率)にて測定する。反射率が高いほど、洗浄特性が良好であることを示す。結果を第8表にまとめる:
【表8】

【0187】
サビナーゼ濃縮物及びポリマー酵素粒子実施例30を用いた洗浄性能に関して有意な差はなく、酵素が洗浄中に粒子から放出され、機能することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素含有粒子を含む酵素組成物であって、前記粒子が
i)少なくとも1つの酵素、及び
ii)少なくとも1つのポリマーP
を含み、前記ポリマーPが、C−C−骨格を有するホモポリマー及びコポリマーから選択され、前記C−C−骨格が酸性形態又は中和形態で存在してよいカルボキシル基を有し、前記C−C−骨格が、前記ポリマーPの合計質量に対して少なくとも20質量%のモノマーB由来の疎水性繰り返し単位を含み、前記モノマーBが25℃で最大30g/lの水溶性を有し、前記酸素含有粒子の体積平均粒子径が50nm〜100μmである、酵素組成物。
【請求項2】
前記ポリマーPが、
a)少なくとも1つのモノエチレン性不飽和C3〜C8−モノ−若しくはジカルボン酸(モノマーA)の重合単位A及び
b)少なくとも1つの疎水性モノエチレン性不飽和モノマーBの重合単位B
を含むC−C−骨格を有するコポリマーから選択され、重合単位Aと重合単位Bとの相対モル量が1:20〜10:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記重合単位Aが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸及びクロトン酸ならびにそれらの混合物から選択される重合モノエチレン性不飽和C3〜C8−モノカルボン酸若しくはジカルボン酸の単位である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記重合単位Aが重合したマレイン酸の単位を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記重合単位Bが、25℃で最大10g/lの水溶性を有する重合したモノマーBの単位である、請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
モノマーBが、C2〜C50−オレフィン、ビニル芳香族化合物、C3〜C8−モノカルボン酸のC2〜C50−アルキルエステル、C4〜C8−ジカルボン酸のビス−C1〜C50−アルキルエステル、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C2〜C50−アルキルアミド、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C1〜C50−アルキル−N−C1〜C50−アルキルアミド、C2〜C50−アルカン酸のビニルエステル、ビニル−C1〜C40−アルキルエーテル、マレイン酸のN−C1〜C40−アルキルイミド及びそれらの混合物から選択される、請求項1から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記モノマーBが、少なくとも1つのC2〜C50−オレフィン、又は少なくとも1つのC2〜C50−オレフィンと、ビニル芳香族化合物、C3〜C8−モノカルボン酸のC2〜C50−アルキルエステル、C4〜C8−ジカルボン酸のビス−C1〜C50−アルキルエステル、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C2〜C50−アルキルアミド、C3〜C8−モノカルボン酸のN−C1〜C50−アルキル−N−C1〜C50−アルキルアミド、C2〜C50−アルカン酸のビニルエステル、ビニル−C1〜C40−アルキルエーテル、マレイン酸のN−C1〜C40−アルキルイミド及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つのさらなるモノマーBとの組み合わせを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記重合単位Aが重合したマレイン酸又はマレイン酸と少なくとも1つのモノカルボン酸との混合物の単位であり、マレイン酸の量が重合単位Aの少なくとも50モル%である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリマーPにおける疎水性繰り返し単位の量が、前記ポリマーPの40〜95質量%である、請求項1から8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリマーPが、ポリマーP1グラムあたり10〜700mgKOHの範囲の酸価を有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
酵素のポリマーPに対する質量比が1:50〜10:1である、請求項1から10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記酵素含有粒子の体積平均粒子径が50nm〜90μmである、請求項1から11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの酵素及び前記少なくとも1つのポリマーPが前記酵素含有粒子の少なくとも50%を構成する、請求項1から12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記酵素がタンパク分解酵素である、請求項1から13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
Zn2+、Mg2+、Ca2+及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの二価金属カチオンを前記カチオンの1つ以上の塩の形態で含む、請求項1から14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1つの酵素及び前記少なくとも1つのポリマーPを含む液体組成物を噴霧乾燥することによって得ることができる、請求項1から15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の組成物を製造するための方法であって、前記少なくとも1つの酵素及び前記少なくとも1つのポリマーPを含む液体組成物を乾燥することを含む、方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの酵素及び前記少なくとも1つのポリマーPを含む液体組成物を噴霧乾燥することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から16のいずれか1項で定義される酵素組成物の洗剤組成物における使用。
【請求項20】
液体洗剤組成物である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
請求項1から16のいずれか1項に記載の少なくとも1つの酵素組成物を含む、洗剤組成物。
【請求項22】
液体洗剤組成物である、請求項21に記載の洗剤組成物。

【公表番号】特表2011−527187(P2011−527187A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517124(P2011−517124)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058547
【国際公開番号】WO2010/003934
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【出願人】(508357419)
【Fターム(参考)】