説明

酸化および/または電磁放射に敏感な化合物の保護用の金属有機シリケートポリマーの使用

【課題】酸化および/または電磁放射による分解に敏感な化合物の、酸化および/または任意の電磁放射、特にUV放射による分解に対する敏感性を克服する。
【解決手段】本発明では、酸化および/または電磁放射に敏感な化合物の、酸化および/または電磁放射からの保護のための、以下の式IおよびII
式I :RSiAl(OH)
式II:RSi16(OH)
のうちの1つを有する、粒子形態での少なくとも1種の金属有機シリケートポリマーが使用される。
本発明は、特に、様々な材料の酸化および光老化からの保護の分野で用途がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化および/または電磁放射に敏感な化合物の、酸化および/または電磁放射からの保護用の金属有機シリケートポリマーの使用に関する。
【0002】
本発明は、蛍光組成物、およびそのような蛍光組成物を含むマーキング組成物、並びに電磁放射からの保護用の組成物にも関する。
【背景技術】
【0003】
多数の化合物は、酸化によって、または特に、UV放射に曝されている間の電磁放射への暴露によって劣化する性質を有する。
【0004】
したがって、これは、ベンゾトリアゾールのファミリーの化合物、特に、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールに当てはまる。
【0005】
実際、この化合物はUV放射からの優れた保護剤であるが、その理由は、UV放射による照射下で、この化合物にその芳香族性を与える水素結合が切断され、したがってこの化合物がUVフォトンを吸収するためである。さらに、水素結合は時間とともに再形成されるので、これは、再生される、UVフォトンを吸収する化合物である。
【0006】
しかし、この化合物は酸化に非常に敏感であり、分解され、したがってUV放射から保護するというその性質を失う。
【0007】
酸化および/または電磁放射に敏感な他の化合物は、フルオロフォア化合物(fluorophoric compound)である。
【0008】
フルオロフォア化合物は、特に、偽造の抑制、または確認の目的、または紙もしくは布地の製造日の単純な識別、またはさらに製造者の識別のいずれかのために、紙および布をマーキングするために使用される。
【0009】
特に公正証書用の紙、並びに布は、15年を超える非常に長い寿命を有する。
【0010】
これが、使用されるマーカーの酸化および光老化に対する耐性が重要である理由である。
【0011】
無機フルオロフォア化合物である希土類は、この目的のマーキングのために使用されてきた。
【0012】
しかし、希土類は、単純な分析によって容易に識別され、これは、希土類で得たマーキングは、容易に複製できることを意味する。
【0013】
一方、有機フルオロフォア化合物は、単純な分析によって容易に識別可能ではない。
【0014】
これらの有機フルオロフォア化合物は、生物学的反応の生物学的標識用にも使用される。
【0015】
しかし、これらの化合物は、特に、酸素、オゾンおよびNOxによる酸化に敏感である。
【0016】
したがってこれらは、抗酸化剤の存在下で使用されており、抗酸化剤の目的は、すべての形態での酸素を消去することである。
【0017】
しかし、抗酸化剤の有効性は、存在する酸素分子によってすべての酸素消去分子が消費されると終わる。
【0018】
さらに、これは、特に紙および布にとって不利点であり、有機フルオロフォア化合物は、別の不利点を有する。これらは、電磁放射、例えば、UV放射、可視光放射および近赤外放射に非常に敏感である。
【0019】
現在、これらを保護するために、電磁放射を遮蔽するが、蛍光現象も制限する有機または無機添加剤が使用される。
【0020】
しかし、最終的に、酸化もしくは光酸化の現象および電磁放射への暴露による老化は、互いに重ね合わさり、かつ/または相乗的に作用することによって、溶液中であっても様々な支持体上であっても、有機蛍光化合物を分解することも知られている。
【0021】
さらに、金属有機シリケート、金属フィロシリケート粘土、金属有機シリケートポリマーまたはポリシルセスキオキサン塩と無差別に呼ばれる化合物のファミリーが知られている。
【0022】
例えば、特許出願US7132165B2には、アミン界面活性剤または構造化剤(structuring agent)からの、この種類の化合物の製造が記載されている。これらの化合物は、高熱および水熱安定性を有する層状シリカに基づくメソポーラス化合物であるとして記載されている。
【0023】
これらの化合物は、「Template Synthesis and Characterization of Layered Al− and Mg−Silsesquioxanes」、J.Phys.Chem.B、1997、101、531〜539頁において、L.Ukrainczykらによっても記載されている。
【0024】
これらの化合物の調製方法は、この文献に記載されている。シルセスキオキサン化合物は、AlClまたはMgClとn−ドデシル、n−オクチル、n−ペンチル、3−メタクリロイルオキシプロピル、イソブチルもしくはフェニル官能基を有するトリアルコキシシランの混合物を含む、アルコール溶液に水性塩基を添加することにより、周囲温度で沈殿によって調製された。
【0025】
これらの化合物は、吸収剤、環境障壁、ポリマー充填剤、触媒担体または化学センサーとして使用することができると記載されている。
【0026】
「Hybrid lamellar nanocomposites based on organically functionalized magnesium phyllosilicate clays with interlayer reactivity」、J.Mater.Chem.、1998、8(8)、1927〜1932頁において、Nicola T.Whiltonらも、MgCl・6HOのエタノール溶液へのオルガノトリアルコキシシランの添加および水酸化ナトリウム溶液による沈殿によってそのような化合物を調製することを記載している。
【0027】
しかし、これらの化合物についての用途は、この文献では記載または示唆されていない。
【0028】
米国特許第5342876号にも、そのような化合物を製造する方法が記載されており、この化合物は、樹脂中に分散する優れた能力を有し、したがって、優れた透明度を有するフィルムを得ることを可能にする、球状多孔質シリカ顆粒であると記載されており、得られるフィルムは、剥離に対して耐性であり、臭気捕捉剤および浸出を制御するための作用物質として使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】US7132165B2
【特許文献2】米国特許第5342876号
【非特許文献】
【0030】
【非特許文献1】L.Ukrainczykら、「Template Synthesis and Characterization of Layered Al− and Mg−Silsesquioxanes」、J.Phys.Chem.B、1997、101、531〜539頁
【非特許文献2】Nicola T.Whiltonら、「Hybrid lamellar nanocomposites based on organically functionalized magnesium phyllosilicate clays with interlayer reactivity」、J.Mater.Chem.、1998、8(8)、1927〜1932頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明の目的は、酸化および/または電磁放射による分解に敏感な化合物の、酸化および/または任意の電磁放射、特にUV放射による分解に対する敏感性を克服することである。
【0032】
特に、本発明の目的は、有機フルオロフォアの不利点を克服すること、ならびに酸化および/または任意の電磁放射、特にUV放射による分解に耐性であり、一方で単純な分析によって容易に識別可能でない蛍光組成物を提供することである。
【0033】
しかし、本発明の別の目的は、自己再生され、時間とともに酸化によって分解されない、UV放射から保護するための組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
この目的のために、本発明は、酸化および/または電磁放射に敏感な化合物の、酸化および/または電磁放射からの保護のための、以下の式IおよびII:
式I :RSiAl(OH)
式II:RSi16(OH)
(式中、
− 各Rは、他と独立して、置換または非置換および直鎖または分岐のアルキル基、置換または非置換および直鎖または分岐のアルケニル基、置換または非置換のアリール基、ならびに置換または非置換のベンジル基によって形成される群から選択され、
− x≧2であり
− y≧4であり、
− 式Iにおいて、Si/Alの比は、1.8と1.3の間(両端を含む)であり、
− 式IIにおいて、Mは、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ストロンチウムおよびこれらの混合物によって形成される群から選択され、Si/Mのモル比は、1.8と1.3の間(両端を含む)である)
のうちの1つを有する、粒子形態での少なくとも1種の金属有機シリケートポリマーの使用を提供する。
【0035】
好ましくは、各Rは、他と独立して、置換または非置換のメチル基、置換または非置換のエチル基、置換または非置換のn−プロピル基および置換または非置換のベンジル基から選択される。
【0036】
Rが置換されている場合、これは、少なくとも1個のアミノ基、1個のハロゲン原子、1個のエーテル基、1個のエステル基、1個のヒドロキシル基、1個のアクリレート基、1個のエポキシ基、1個のアルキル基、1個のアルキルアクリレート基、1個のアミノアルキル基または1個のクロロアルキル基によって置換されていることが好ましい。
【0037】
好ましい実施形態では、金属有機シリケートポリマーは、Mが亜鉛またはマグネシウムであり、各Rが3−アミノプロピル基である式IIを有する。
【0038】
別の好ましい実施形態では、金属有機シリケートポリマーは、Mが亜鉛またはマグネシウムであり、各RがNH(CHNH(CH基である式IIを有する。
【0039】
本発明の使用の第1の代替形態では、酸化および/または電磁放射に敏感な化合物は、有機フルオロフォア化合物である。
【0040】
この場合、有機フルオロフォア化合物は、ローダミン、フルオレセイン、ポルフィリンおよびその混合物によって形成される群から選択されることが好ましい。
【0041】
本発明の使用の第2の代替形態では、酸化および/または電磁放射に敏感な化合物は、ベンゾトリアゾール化合物である。
【0042】
より好ましくは、このベンゾトリアゾール化合物は、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールであり、金属有機シリケートポリマーは、Mが亜鉛(Zn)であり、4個のR基がNH(CH基であり、4個のR基がC基である式IIを有する。
【0043】
本発明は、
− 少なくとも1種の有機フルオロフォア化合物の粒子と、
− 以下の式IおよびII:
式I :RSiAl(OH)
式II:RSi16(OH)
(式中、
− 各Rは、他と独立して、置換または非置換および直鎖または分岐のアルキル基、置換または非置換および直鎖または分岐のアルケニル基、置換または非置換のアリール基、ならびに置換または非置換のベンジル基によって形成される群から選択され、
− x≧2であり
− y≧4であり、
− 式Iにおいて、Si/Alの比は、1.8と1.3の間(両端を含む)であり、
− 式IIにおいて、Mは、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ストロンチウムおよびこれらの混合物によって形成される群から選択され、Si/Mのモル比は、1.8と1.3の間(両端を含む)である)
のうちの1つを有する、少なくとも1種の金属有機シリケートポリマー化合物の粒子と
を含む蛍光組成物も提供する。
【0044】
好ましくは、本発明による蛍光組成物では、有機フルオロフォア化合物は、ローダミン、フルオレセイン、ポルフィリンおよびその混合物によって形成される群から選択される。
【0045】
各R基については、これは、他と独立して、置換または非置換のメチル基、置換または非置換のエチル基、置換または非置換のn−プロピル基および置換または非置換のベンジル基から選択される。
【0046】
Rが置換されている場合、これは、少なくとも1個のアミノ基、1個のハロゲン原子、1個のエーテル基、1個のエステル基、1個のヒドロキシル基、1個のアクリレート基、1個のエポキシ基、1個のアルキル基、1個のアルキルアクリレート基、1個のアミノアルキル基または1個のクロロアルキル基によって置換されていることが好ましい。
【0047】
好ましくは、本発明の蛍光組成物では、金属有機シリケートポリマーは、Mがマグネシウムまたは亜鉛であり、各Rが3−アミノプロピル基である式IIを有する。
【0048】
本発明の蛍光組成物の別の代替形態では、金属有機シリケートポリマーは、Mがマグネシウムまたは亜鉛であり、各RがNH(CHNH(CH基である式IIを有する。
【0049】
好ましい実施形態では、本発明による蛍光組成物は、固体粒子の形態である。
【0050】
しかし、本発明による別の好ましい実施形態では、本発明の蛍光組成物は、好ましくは水相中でディスパージョンまたはコロイドゾルの形態である。
【0051】
本発明は、少なくとも1種の本発明による蛍光組成物を含む、マーキング組成物も提供する。
【0052】
しかし、本発明は、UV放射から保護するための組成物であって、
− 2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールと、
− 以下の式IおよびII:
式I :RSiAl(OH)
式II:RSi16(OH)
(式中、
− 各Rは、他と独立して、置換または非置換および直鎖または分岐のアルキル基、置換または非置換および直鎖または分岐のアルケニル基、置換または非置換のアリール基、ならびに置換または非置換のベンジル基によって形成される群から選択され、
− x≧2であり
− y≧4であり、
− 式Iにおいて、Si/Alの比は、1.8と1.3の間(両端を含む)であり、
− 式IIにおいて、Mは、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ストロンチウムおよびこれらの混合物によって形成される群から選択され、Si/Mのモル比は、1.8と1.3の間(両端を含む)である)
のうちの1つを有する、少なくとも1種の金属有機シリケートポリマーの粒子と
を含む組成物も提供する。
【0053】
本発明による、UV放射から保護するための組成物では、各Rは、他と独立して、置換または非置換のメチル基、置換または非置換のエチル基、置換または非置換のn−プロピル基および置換または非置換のベンジル基から選択されることが好ましい。
【0054】
Rが置換されている場合、これは、少なくとも1個のアミノ基、1個のハロゲン原子、1個のエーテル基、1個のエステル基、1個のヒドロキシル基、1個のアクリレート基、1個のエポキシ基、1個のアルキル基、1個のアルキルアクリレート基、1個のアミノアルキル基または1個のクロロアルキル基によって置換されていることが好ましい。
【0055】
特に好ましい、本発明による、UV放射から保護するための組成物は、金属有機シリケートポリマーが、Mが亜鉛(Zn)であり、4個のR基がNH(CHNH(CH基であり、4個のR基がC基である式IIを有する組成物である。
【0056】
以下に続く説明的な記述を読めば、本発明のより良好な理解が達成され、本発明の他の特徴および利点がより明瞭に明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明は、以下の式IおよびII:
式I :RSiAl(OH)
式II:RSi16(OH)
のうちの1つを有する金属有機シリケートポリマーの粒子は、酸化および/または電磁放射、特にUV放射から、この酸化および/またはこの放射に敏感な化合物を保護する性質を有するという発見に基づく。
【0058】
式IおよびIIは、有機置換基を有する金属アルミノシリケートまたはシリケート型の化合物を表す。これらの化合物は高吸湿性であるため、変動し得る含水量を有する。これが、式IおよびIIにおいて、OHイオンの化学量論組成が変数xおよびyによって示されている理由である。
【0059】
しかし、式I中で、この式の化学量論組成に忠実であるために、xは少なくとも2に等しくなければならず、式II中で、yは少なくとも4に等しくなければならない。
【0060】
しかし、これらの化合物において、式I中のSi/Alのモル比または式II中のSi/Mの比は完全に定義される。このモル比は、1.8と1.3の間(両端を含む)でなければならない。
【0061】
金属有機シリケートポリマーの粒子は、約100nmのサイズを有する。
【0062】
上記の式Iまたは式IIを有する金属有機シリケートポリマーの粒子は、1つまたは複数のマグネシウム、亜鉛、カルシウム、ストロンチウムまたはアルミニウムの塩、および式RSi(OR4−x(xは、1と2の間の値(両端を含む)を有し、Rは加水分解性基である)のシランカップリング剤のアルカリ性アルコール溶液との混合物の処理を含む、制御された共加水分解法によって形成される。
【0063】
いくつかの実施形態では、シランカップリング剤のR官能基には、アミノ基などの塩基性基が含まれ、その場合アルカリ性アルコール溶液を加える必要はないが、塩基の所望の化学量論的当量が存在するために、少量の塩基が必要である場合がある。金属(マグネシウム、亜鉛、カルシウムおよびストロンチウムのうちの1つまたは複数)/SiまたはAl/Siのモル比は、1と0.5の間(両端を含む)で維持されることが好ましく、アルカリ金属のモル比は、1と0.5の間(両端を含む)で維持されることが好ましい。
【0064】
0.5Mと5Mの間(両端を含む)、好ましくは約3Mの濃度を有する、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ジエチルアミンまたはトリエチルアミンのアルコール溶液が使用されることが好ましい。
【0065】
好ましくは、シランカップリング剤のアルコキシ基(OR)は、プロポキシ、エトキシまたはメトキシ基である。
【0066】
シランカップリング剤中に存在する各R基に関しては、これは、他と独立して、直鎖もしくは分岐を含む、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換および直鎖もしくは分岐のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、または置換もしくは非置換のベンジル基によって形成される群から選択される。
【0067】
最も好ましくは、各Rは、他と独立して、それぞれ直鎖または分岐の、置換もしくは非置換のアルキルもしくはアルケニル基、または置換もしくは非置換のベンジル基である。
【0068】
最も好ましくは、各Rは、他と独立して、CからC12、より好ましくはCからCのアルキルもしくはアルケニル基、またはベンジル基であり、これらの基のそれぞれは、置換されているか、または非置換である。
【0069】
最も好ましくは、各Rは、他と独立して、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、ビニル基またはベンジル基であり、これらの基のそれぞれは、置換されているか、または非置換であることが可能である。
【0070】
R基、ならびに特に直鎖または分岐のアルキルおよびアルケニル基の適切な置換基は、親水性または疎水性の所望の性質に影響を及ぼすための、任意の適切な置換基とすることができる。
【0071】
例えば、各R基は、ジアミノおよびトリアミノ置換基を含めたアミノ基などの塩基性基、ハロゲン原子、例えば、1つまたは複数のフッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素原子などであるが、好ましくは塩素原子、エーテル基、エステル基、ヒドロキシル基、メタクリレート基などのアクリレート基、または追加の修飾を可能にする任意の他の脱離基もしくは任意の他の反応性基、例えば、両方とも必要に応じて置換されているエポキシ基もしくはアリール基などで置換することができる。
【0072】
最も好ましくは、R基の置換基は、アルキル基、アルキルアクリレート基、アミノアルキル基、クロロアルキル基またはビニル基、特にメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、プロピルメタクリレート基、3−クロロプロピル基または3−アミノプロピル基である。
【0073】
最も好ましくは、Rは(3−アミノプロピル)アミノエチル基である。
【0074】
使用される混合金属塩に関しては、これは、金属/ケイ素またはアルミニウム/ケイ素のモル比が、1.8と1.3の間(両端を含む)である金属有機シリケートポリマー化合物を形成するために、マグネシウム、ストロンチウム、カルシウム、亜鉛またはアルミニウムの塩のうちの1つまたは複数とすることができる。
【0075】
金属は、マグネシウムまたは亜鉛であることが最も好ましい。
【0076】
特に好ましい金属塩は、塩化物塩、特に、金属がマグネシウムである場合、塩化マグネシウム六水和物である。
【0077】
上述した共加水分解反応により、以下の式IおよびII:
式I :RSiAl(OH)
式II:RSi16(OH)
(式中、
− 各Rは、他と独立して、置換または非置換および直鎖または分岐のアルキル基、置換または非置換および直鎖または分岐のアルケニル基、置換または非置換のアリール基、ならびに置換または非置換のベンジル基によって形成される群から選択され、
− x≧2であり
− y≧4であり、
− 式Iにおいて、Si/Alの比は、1.8と1.3の間(両端を含む)であり、
− 式IIにおいて、Mは、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ストロンチウムおよびこれらの混合物によって形成される群から選択され、Si/Mのモル比は、1.8と1.3の間(両端を含む)である)
のうちの1つを有する、粒子の形態での、本発明で使用される金属有機シリケートポリマー化合物が得られる。
【0078】
本発明で使用される好ましい金属有機シリケートポリマー化合物は、各RがN−(2−アミノエチル)−3−プロピルアミン基またはNH(CHNH(CH基であり、金属がMgまたはZnである式IIを有する化合物である。
【0079】
上記に定義される式Iおよび式IIの金属有機シリケートポリマー化合物のナノ粒子の添加により、特に水性ディスパージョン中で、酸化に関して有機フルオロフォア化合物、例えば、ローダミン、フルオレセインおよびポルフィリンなどを安定化することが可能になる。
【0080】
この安定化を得るためには、上述した少なくとも1種の金属有機シリケートポリマー化合物のナノ粒子を、有機フルオロフォア化合物に加えれば十分である。
【0081】
好ましくは、金属有機シリケートポリマー化合物の重量/有機フルオロフォア化合物の重量の比は、0.33超または0.33に等しい。これは、この比未満では、酸化および/または電磁放射に対する安定化の有効性が小さいためである。
【0082】
最大比は、当業者によって決定されることになる。
【0083】
これは、金属有機シリケートポリマー化合物粒子が透明であり、10から100nmの程度と非常に小さいためである。有機フルオロフォア化合物の光学的性質に影響を及ぼすことなく、大量の金属有機シリケートポリマー化合物粒子を投入することが可能である。
【0084】
しかし、テキスタイル用途については、手触りに影響する場合があり、その結果、この場合、金属有機シリケートポリマー化合物の重量/有機フルオロフォア化合物の重量の比は、1.33未満、または1.33に等しく維持されることが好ましいが、これはその後に布地が粗くなる場合があるためである。
【0085】
しかし、本発明による式Iまたは式IIの金属有機シリケートポリマー化合物のナノ粒子の添加により、UV放射から保護する性質を有し、酸化に非常に敏感である化合物、特にベンゾトリアゾールのファミリーの化合物、より詳細には2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを、特に溶液中で、酸化に関して安定化することも可能になる。
【0086】
この場合、好ましい金属有機シリケートポリマーは、Mが亜鉛(Zn)であり、4個のR基がNH(CHNH(CH基であり、4個のR基がC基である式IIを有するポリマーである。
【0087】
本発明をさらによく理解するために、いくつかのその実施形態を、例示的で限定しない実施例としてこれから説明する。
【実施例1】
【0088】
Mがマグネシウムであり、Rが3−アミノプロピル基である式IIの金属有機シリケートポリマー化合物の合成
1.2molのMgCl・6HOを2900gのエタノール中に溶解させ、312gの(3−アミノプロピル)トリエトキシシランを急速に加える。白色沈殿物が急速に形成する。この反応媒体を周囲温度で24時間攪拌する。濾過後、白色沈殿物を2000gのエタノールで洗浄する。得られた白色粉末を周囲温度で2日間乾燥させる。マグネシウムに関して計算される収率は48%である。ICP−AES(誘導結合プラズマ原子発光分光測定)によって測定されるMg/Siのモル比は0.6である。X線回折により、生成物は弱い結晶性であることが示される。得られた金属有機シリケートポリマー化合物は、水中で完全に分散性であり、これは透析によって、またはナノ濾過および/もしくは限外濾過によって洗浄することができる。光子相関分光法によって測定される粒子のサイズは、20と30nmの間である。
【実施例2】
【0089】
MがZnであり、Rが3−アミノプロピル基である式IIの金属有機シリケートポリマーの合成
1.2molのZnCl・6HOを2900gのエタノールに溶解させ、312gの(3−アミノプロピル)トリエトキシシランを急速に加える。白色沈殿物が急速に形成する。この反応媒体を周囲温度で24時間攪拌する。濾過後、白色沈殿物を2000gのエタノールで洗浄する。得られた白色粉末を周囲温度で2日間乾燥させる。亜鉛に関して計算される収率は49%である。ICP−AES(誘導結合プラズマ原子発光分光測定)によって測定されるZn/Siのモル比は0.57である。X線回折により、生成物は弱い結晶性であることが示される。得られた金属有機シリケートポリマー化合物は、水中で完全に分散性であり、これは透析によって、またはナノ濾過および/もしくは限外濾過によって洗浄することができる。光子相関分光法によって測定される粒子のサイズは、20nmと30nmの間である。
【実施例3】
【0090】
MがMgであり、RがN−(2−アミノエチル)−3−プロピルアミン基またはNH(CHNH(CH基である式IIの金属有機シリケートポリマー化合物の合成
0.2molのMgCl・6HOを500gのエタノール中に溶解させ、次いで0.2molのN−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンを急速に加える。白色沈殿物が急速に形成する。この反応媒体を周囲温度で24時間攪拌する。濾過後、白色沈殿物を500gのエタノールで洗浄する。得られた白色粉末を周囲温度で2日間乾燥させる。マグネシウムに関して計算される収率は48%である。ICP−AES(誘導結合プラズマ原子発光分光測定)によって測定されるMg/Siのモル比は0.58である。X線回折により、生成物は弱い結晶性であることが示される。得られた金属有機シリケートポリマー化合物は、水中で完全に分散性であり、これは透析によって、またはナノ濾過および/もしくは限外濾過によって洗浄することができる。光子相関分光法によって測定される粒子のサイズは、20nmと40nmの間である。
【実施例4】
【0091】
RがN−(2−アミノエチル)−3−プロピルアミンまたはNH(CHNH(CHであり、MがZnである式IIの金属有機シリケートポリマー化合物の合成
0.2molのZnCl・6HOを500gのエタノール中に溶解させ、0.2molのN−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンを急速に加える。白色沈殿物が急速に形成する。この反応媒体を周囲温度で24時間攪拌する。濾過後、白色沈殿物を500gのエタノールで洗浄する。得られた白色粉末を周囲温度で2日間乾燥させる。亜鉛に関して計算される収率は43%である。ICP−AES(誘導結合プラズマ原子発光分光測定)によって測定されるZn/Siのモル比は0.57である。X線回折により、生成物は弱い結晶性であることが示される。得られた金属有機シリケートポリマー化合物は、水中で完全に分散性であり、これは透析によって、またはナノ濾過および/もしくは限外濾過によって洗浄することができる。光子相関分光法によって測定される粒子のサイズは、15nmと30nmの間である。
【実施例5】
【0092】
酸化および光酸化からのローダミン6Gの安定化
150mgのローダミン6Gを、150mlの浸透圧処理した水中に分散させる。次いでこのディスパージョンを3つに分割する。次いで、5mlの以下に規定する溶液またはディスパージョン1、2または3をそれぞれのディスパージョンに加える。
【0093】
ディスパージョン1:実施例1で得られた金属有機シリケートポリマーの5mlの水性ディスパージョン(10g/l)。ディスパージョン5Aが得られる。
【0094】
溶液2:5mlの浸透圧処理した水。ディスパージョン5Bが得られる。
【0095】
ディスパージョン3:コロイドシリカ(20nmの直径)Ludox(登録商標)TM−40の5mlの水性ディスパージョン(10g/l)。ディスパージョン5Cが得られる。
【0096】
この3つのディスパージョンのpH値を測定する。ディスパージョン5Aおよび5CについてのpHは8.5である。NaOHを加えることによって、ディスパージョン5BについてのpHを8.5にする。
【0097】
この3つのディスパージョンを、酸化現象を制限するように、最小限のガスヘッドスペースを残して、同一の容器中に梱包する。
【0098】
この3つのディスパージョンの光学密度(O.D.)を、
− 梱包時、
− 光を排除して周囲温度で24時間梱包した後、
− ネオンランプの光に暴露してから12時間、24時間、36時間、および最後に72時間後
にUV−可視分光計で測定する。
【0099】
結果を以下の表1に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
金属有機シリケートポリマーを含むディスパージョン5Aは、著しい程度までは変化しなかった。光学密度の低下は、ディスパージョン5Bおよび5Cについての80%超と比較して、わずか25%である。ディスパージョン5Cにより、このディスパージョンも20nmの直径を有するナノ粒子を含むため、有機フルオロフォア化合物への安定化効果を観察するためには、ナノ粒子が存在することでは十分でないことが示される。
【0102】
これらの結果は、容器に詰める間、注意することよって、ガスヘッドスペースを制限することにより酸化現象を制限したとしても、光を排除して貯蔵したにもかかわらず、光学密度の低下があったが、この低下は、本発明の組成物では非常に低いことも示す。
【0103】
ディスパージョン5Aから5Cを、365nmに中心がある4Wのパワーを有するUVランプに暴露しても、同じ結果が得られる。
【実施例6】
【0104】
ローダミン6G溶液の、空気中での酸化の試験
150mgのローダミン6Gを、150mlの浸透圧処理した水中に分散させる。次いでこのディスパージョンを3つに分割する。次いで、5mlの以下に規定する溶液またはディスパージョン1、2または3をそれぞれのディスパージョンに加える。
【0105】
ディスパージョン1:実施例1で得られた金属有機シリケートポリマーの5mlの水性ディスパージョン(10g/l)。ディスパージョン6Aが得られる。
【0106】
溶液2:5mlの浸透圧処理した水。ディスパージョン6Bが得られる。
【0107】
ディスパージョン3:コロイドシリカ(20nmの直径)Ludox(登録商標)TM−40の5mlの水性ディスパージョン(10g/l)。ディスパージョン6Cが得られる。
【0108】
この3つのディスパージョンのpH値を測定する。ディスパージョン6Aおよび6CについてのpHは8.5である。NaOHを加えることによって、ディスパージョン6BについてのpHを8.5にする。
【0109】
この3つのディスパージョンを、光を排除して容器中に梱包し、その中に周囲温度で攪拌しながら4時間、空気をバブリングする。それぞれの容器には、蒸発を最小限にするように、冷却器が上に付いている。この3つのディスパージョンの光学密度を、UV−可視分光計によって測定する。
【0110】
結果を表2に示す。
【0111】
【表2】

【0112】
これらの結果は、酸化が溶液の退色の一因となることを明確に示す。ここでもやはり、金属有機シリケートポリマーの存在により、この現象が制限される。
【実施例7】
【0113】
薄層の形態でのローダミン6Gの安定化
150mgのローダミン6Gを、150mlの浸透圧処理した水中に分散させる。次いでこのディスパージョンを3つに分割する。次いで、5mlの以下に規定する溶液またはディスパージョン1、2または3をそれぞれのディスパージョンに加える。
【0114】
ディスパージョン1:実施例1で得られた金属有機シリケートポリマーの5mlの水性ディスパージョン(10g/l)。ディスパージョン7Aが得られる。
【0115】
溶液2:5mlの浸透圧処理した水。ディスパージョン7Bが得られる。
【0116】
ディスパージョン3:コロイドシリカ(20nmの直径)Ludox(登録商標)TM−40の5mlの水性ディスパージョン(10g/l)。ディスパージョン7Cが得られる。
【0117】
この3つのディスパージョンのpH値を測定する。ディスパージョン7Aおよび7CについてのpHは8.5である。NaOHを加えることによって、ディスパージョン7BについてのpHを8.5にする。
【0118】
アルゴン下であらかじめ脱気した、ポリビニルアルコール(4重量%)の10mlの水性ディスパージョンを、それぞれのディスパージョンに加える。あらかじめ脱脂したスライドガラス上にディップコーティングによって、各ディスパージョンの膜を堆積させる。この操作をそれぞれのディスパージョンについて3回繰り返す。
【0119】
シート上の堆積層の光学密度を、UV−可視分光計によって測定する。得られた膜は完全に透明である。これらを、周囲温度で光下に12時間および24時間暴露する。
【0120】
結果を以下の表3に示す(光学密度の平均値)。
【0121】
【表3】

【0122】
薄層の形態では、もはや移動性ではない有機フルオロフォア化合物は、金属有機シリケートポリマーと接触したままであり、酸化現象は完全に解消される。ディスパージョンでは、吸着した有機フルオロフォア化合物および金属有機シリケートポリマーと、遊離した有機フルオロフォア化合物との間の平衡状態が常に存在する。したがって遊離した有機フルオロフォア化合物の一部は酸化される場合があり、このことにより、ディスパージョンでは、金属有機シリケートポリマーが非常に有効であっても、酸化を停止させることには成功しないが、酸化を非常に顕著に減速させることを可能にする理由が説明される。
【実施例8】
【0123】
亜鉛コアを有する金属有機シリケートポリマー化合物による、ローダミン6Gの酸化に対する安定化
同じ試験を繰り返したが、実施例2で得られた金属有機シリケートポリマーを用いた。
【0124】
150mgのローダミン6Gを、150mlの浸透圧処理した水中に分散させる。次いでこのディスパージョンを3つに分割する。次いで、5mlの以下に規定する溶液またはディスパージョン1’、2’または3’をそれぞれのディスパージョンに加える。
【0125】
ディスパージョン1’:実施例2で得られた金属有機シリケートポリマー化合物の7mlの水性ディスパージョン(10g/l)。ディスパージョン8Aが得られる。
【0126】
溶液2’:5mlの浸透圧処理した水。ディスパージョン8Bが得られる。
【0127】
ディスパージョン3’:コロイドシリカ(20nmの直径)Ludox(登録商標)TM−40の5mlの水性ディスパージョン(10g/l)。ディスパージョン8Cが得られる。
【0128】
この3つのディスパージョンのpH値を測定する。ディスパージョン8Aおよび8CについてのpHは8.5である。NaOHを加えることによって、ディスパージョン8BについてのpHを8.5にする。
【0129】
アルゴン下であらかじめ脱気した、ポリビニルアルコール(4重量%)の10mlの水溶液を、それぞれのディスパージョンに加える。
【0130】
ディスパージョン8Aを用いて得られたそれぞれのディスパージョンを、浸透圧処理した水を加えることによって2倍に希釈する。あらかじめ脱脂したスライドガラス上にディップコーティングによって、各ディスパージョンの膜を堆積させる。この操作をそれぞれのディスパージョンについて3回繰り返す。
【0131】
シート上の堆積層の光学密度を、UV−可視分光計によって測定する。得られる膜は完全に透明である。これらを、周囲温度で12時間および24時間、ネオンランプの光に暴露する。
【0132】
結果を以下の表4に示す(光学密度の平均値)。
【0133】
【表4】

【0134】
表4から、実施例2で得られた金属有機シリケートポリマーは、実施例1で得られた金属有機シリケートポリマーと同様の性質を示すことがわかる。
【0135】
Mがマグネシウムまたは亜鉛であり、R基が3−アミノプロピル基またはNH(CH基の代わりに、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルアミン基またはNH(CHNH(CH基である金属有機シリケートポリマーを用いても、同様の結果が得られる。
【0136】
50mgの金属有機シリケートポリマーは、150mgの有機フルオロフォア化合物を安定化するのに十分である。
【0137】
この理論に傾倒することを望むことなく、安定化は、金属有機シリケートポリマー表面上のフルオロフォア化合物の一部の分子が自己集合体を形成し、したがって分子形態のフルオロフォア化合物よりも酸化および光酸化に対して著しく安定なプロトピグメント(protopigment)を形成することによると考えられる。金属有機シリケートポリマー/フルオロフォア化合物の重量比が0.33未満では、安定化の有効性ははるかに小さい。金属有機シリケートポリマーは透明であり、非常に小さいので、光学的性質に影響を及ぼすことなく、大量の金属有機シリケートポリマーを投入することが可能である。布用途については、手触りに影響する場合がある。金属有機シリケートポリマー/フルオロフォア化合物の比は、1.33未満、または1.33に等しいことが好ましいが、これは、この値を超えると布地が粗くなるためである。
【0138】
実施例3および4で得られた金属有機シリケートポリマー化合物を用いて、同様の結果が得られる。
【0139】
さらに、安定化特性に影響を及ぼすことなく、塩酸を加えることによって、本発明による蛍光組成物のディスパージョンを中和することが可能である。
【0140】
フルオレセインを用いて、同じ安定化特性を得たが、このフルオロフォア化合物は、酸化および電磁放射に対してそれほど敏感ではないと思われるので、効果はそれほど顕著ではない。
【0141】
したがって、本発明の蛍光組成物は、特に水相中および固体形態中で、ディスパージョンまたはコロイドゾルの形態の両方で使用することができる。
【0142】
この特性は、特に公用紙または布の製品の製造元を特定し、または製品の製造日を特定するいずれかのため、またはさらに、偽造防止マーキングの目的のための、特にマーキング組成物として使用するのに特に有利である。
【0143】
したがって、本発明の蛍光組成物は、特に、フルオレセインを含む本発明による蛍光組成物、ポルフィリンを含む本発明による蛍光組成物、およびローダミンを含む本発明による組成物を使用することにより、ならびにこれらの3成分によって得られるパターンを変更することによって、バーコードまたはパターン、またはさらに異なる色のパターンの組合せの形態で、紙または布または任意の他の構成要素にマークを付けるのに使用することができる。
【0144】
したがって、本発明は、上述した少なくとも1種の本発明による蛍光組成物を含む、マーキング組成物にも関する。
【実施例9】
【0145】
Mが亜鉛(Zn)であり、4個のR基がNH(CH基であり、4個のR基がC基である式IIの金属有機シリケートポリマーの合成
0.0191molのZnCl・6HOを200gのエタノール中に溶解させ、次いで20gのEtOH中の(3−アミノプロピル)トリエトキシシランとフェニルトリエトキシシランの等モル混合物(0.00955/0.00955)を急速に加える。この溶液は急速に不透明になる。次いで20gのEtOH中の0.0095molのNaOHを加える。この反応媒体を周囲温度で24時間攪拌する。濾過後、白色沈殿物を200gのエタノールで洗浄する。白色粉末を周囲温度で2日間乾燥させる。マグネシウムに関して計算される収率は38%である。ICP−AES(誘導結合プラズマ原子発光分光測定)によって測定されるZn/Siのモル比は0.7である。X線回折により、生成物は弱い結晶性であることが示される。得られた金属有機シリケートポリマーは、水中で完全に分散性であり、これは透析によって、またはナノ濾過および/もしくは限外濾過によって洗浄することができる。光子相関分光法によって測定される粒子のサイズは、20nmと50nmの間である。
【実施例10】
【0146】
2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールの安定化
実施例9で得られた金属有機シリケートポリマーの25mlの水性コロイドゾル(10g/l)を周囲温度で攪拌する。水中で完全に不溶性である、200mgの2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを引き続いて加える。コロイドゾル中での分散は非常に遅い。分散は、ビーカーの上部をUVランプ(365nmに中心がある4W)で照射すると加速される。
【0147】
このディスパージョンは、数分で澄んだ透明になる。UV照射により、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール上で、平面性を付与する水素結合が切断され、したがって電子が非局在化し、それによってUV領域でのその吸光度が生じる。後者は解重合し、金属有機シリケートポリマー上に急速に吸着される。
【0148】
2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールの酸化に対する安定化を測定するために、以下の組成物を有する薄層を作製する。
【0149】
− 組成物10A:上記で得られた5mlの2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールディスパージョンを、4モル当量の3−グリシドプロピルトリメトキシシラン+1モル当量のテトラエチルオルトシリケート+5mlのHOの0.1Mアルコール混合物で作製されたゾル−ゲル調合物中に導入する。
【0150】
このように、0.1Mアルコール混合物のゾル−ゲル調合物の5mlのHOを、この実施例で得られた5mlの2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールディスパージョンで置換した。
【0151】
− 組成物10B:この実施例で得られた0.5mlの2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールディスパージョンを、上記と同じ0.1Mアルコール混合物のゾル−ゲル調合物中に導入する。
【0152】
この場合、このゾル−ゲル調合物の5mlのHOのうちの10%のみが、この実施例で得られた水性2−(2’ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールディスパージョンで置換されている。
【0153】
− 組成物10C:比較のために、ポリビニルアルコール(4%)、THF(25ml)および水(10ml)中に希釈された、本発明による金属有機シリケートポリマーによって安定化されていない、100mgの2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを含む組成物を調製する。
【0154】
これらの組成物をスライドガラス上に堆積させ、乾燥させる。
【0155】
その後に、それぞれ10A、10Bおよび10Cと記録される、3つの薄層が得られる。
【0156】
得られたすべての層は、完全に透明で均質である。
【0157】
得られたすべての層は、280nmから380nmの領域中のUV放射を遮蔽する。このUV範囲で吸収される割合は、存在する2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールの量に直接比例する。
【0158】
これらの透明薄層の透過を、
− その作製時、
− フュームカップボード(fume cupboard)(10m/時間)中で、光を排除して48時間後、
− 空気中、UV照射下(365nmに中心がある、4Wのパワーを有するUVランプ)で24時間後、および
− アルゴン下、UV照射下(365nmに中心がある、4Wのパワーを有するUVランプ)で24時間後
に測定する。
【0159】
得られた結果を以下の表5に示す。
【0160】
【表5】

【0161】
これらの結果によって、本発明の金属有機シリケートポリマーにより、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールが酸化から安定化されることが確認される。
【0162】
実施例10の試験は、実施例9に説明した方法によって得られた金属有機シリケートポリマーを使用するが、0.0191molのZnCl・6HOの代わりに0.191molのMgCl・6HOを使用して再現した。
【0163】
2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールの分散、および酸化に対する安定化に関して得られた結果は一致する。
【0164】
これは、本発明は、単に有機フルオロフォア化合物またはベンゾトリアゾールのファミリーのメンバーの、酸化および電磁放射、特にUV放射に対する安定化に限定されるだけでは全くなく、酸化および/または電磁放射に敏感な多数の他の化合物に適用することができることを言っている。
【0165】
したがって、本発明は、酸化および/または電磁放射に敏感な化合物の、酸化および/または電磁放射からの保護のための、以下の式IおよびII
式I :RSiAl(OH)
式II:RSi16(OH)
(式中、
− 各Rは、他と独立して、置換または非置換および直鎖または分岐のアルキル基、置換または非置換および直鎖または分岐のアルケニル基、置換または非置換のアリール基、ならびに置換または非置換のベンジル基によって形成される群から選択され、
− x≧2であり
− y≧4であり、
− 式Iにおいて、Si/Alの比は、1.8と1.3の間(両端を含む)であり、
− 式IIにおいて、Mは、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ストロンチウムおよびこれらの混合物によって形成される群から選択され、Si/Mのモル比は、1.8と1.3の間(両端を含む)である)
のうちの1つを有する、少なくとも1種の金属有機シリケートポリマーの使用に関する。
【0166】
好ましくは、式IおよびIIにおいて、各Rは、他と独立して、置換または非置換のメチル基、置換または非置換のエチル基、置換または非置換のn−プロピル基および置換または非置換のベンジル基から選択される。
【0167】
Rが置換されている場合、これは、アミノ基、ハロゲン原子、エーテル基、エステル基、ヒドロキシル基、アクリレート基、エポキシ基、アルキル基、アルキルアクリレート基、アミノアルキル基またはクロロアルキル基によって置換されていることが好ましい。
【0168】
好ましくは、金属有機シリケートポリマーは、Mがマグネシウムまたは亜鉛であり、Rが3−アミノプロピル基である式IIを有する。
【0169】
本発明の使用の別の好ましい実施形態では、金属有機シリケートポリマーは、Mがマグネシウムまたは亜鉛であり、各R基がN−(2−アミノエチル)−3−プロピルアミン基またはNH(CHNH(CH基である式IIを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化および/または電磁放射に敏感な化合物の、酸化および/または電磁放射からの保護のための、以下の式IおよびII:
式I :RSiAl(OH)
式II:RSi16(OH)
(式中、
− 各Rは、他と独立して、置換または非置換および直鎖または分岐のアルキル基、置換または非置換および直鎖または分岐のアルケニル基、置換または非置換のアリール基、ならびに置換または非置換のベンジル基によって形成される群から選択され、
− x≧2であり
− y≧4であり、
− 式Iにおいて、Si/Alの比は、1.8と1.3の間(両端を含む)であり、
− 式IIにおいて、Mは、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ストロンチウムおよびこれらの混合物によって形成される群から選択され、Si/Mのモル比は、1.8と1.3の間(両端を含む)である)
のうちの1つを有する、粒子形態での少なくとも1種の金属有機シリケートポリマー化合物の使用。
【請求項2】
各Rが、他と独立して、置換または非置換のメチル基、置換または非置換のエチル基、置換または非置換のn−プロピル基および置換または非置換のベンジル基から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
Rが置換されている場合、少なくとも1個のアミノ基、1個のハロゲン原子、1個のエーテル基、1個のエステル基、1個のヒドロキシル基、1個のアクリレート基、1個のエポキシ基、1個のアルキル基、1個のアルキルアクリレート基、1個のアミノアルキル基または1個のクロロアルキル基によって置換されている、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
金属有機シリケートポリマーが、Mが亜鉛またはマグネシウムであり、各Rが3−アミノプロピル基である式IIを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
金属有機シリケートポリマーが、Mが亜鉛またはマグネシウムであり、各RがN−(2−アミノエチル)−3−プロピルアミン基である式IIを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
酸化および/または電磁放射に敏感な化合物が有機フルオロフォア化合物である、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
有機フルオロフォア化合物が、ローダミン、フルオレセイン、ポルフィリンおよびその混合物によって形成される群から選択される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
酸化および/または電磁放射に敏感な化合物がベンゾトリアゾール化合物である、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
ベンゾトリアゾール化合物が2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールであり、前記金属有機シリケートポリマーが、Mが亜鉛(Zn)であり、4個のR基がNH(CH基であり、4個のR基がC基である式IIを有する、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
− 少なくとも1種の有機フルオロフォア化合物の粒子と、
− 以下の式IおよびII:
式I :RSiAl(OH)
式II:RSi16(OH)
(式中、
− 各Rは、他と独立して、置換または非置換および直鎖または分岐のアルキル基、置換または非置換および直鎖または分岐のアルケニル基、置換または非置換のアリール基、ならびに置換または非置換のベンジル基によって形成される群から選択され、
− x≧2であり
− y≧4であり、
− 式Iにおいて、Si/Alの比は、1.8と1.3の間(両端を含む)であり、
− 式IIにおいて、Mは、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ストロンチウムおよびこれらの混合物によって形成される群から選択され、Si/Mのモル比は、1.8と1.3の間(両端を含む)である)
のうちの1つを有する、少なくとも1種の金属有機シリケートポリマーの粒子と
を含む蛍光組成物。
【請求項11】
有機フルオロフォア化合物が、ローダミン、フルオレセイン、ポルフィリンおよびその混合物によって形成される群から選択される、請求項10に記載の蛍光組成物。
【請求項12】
式IおよびIIにおいて、各Rが、他と独立して、置換または非置換のメチル基、置換または非置換のエチル基、置換または非置換のn−プロピル基および置換または非置換のベンジル基から選択される、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
式IおよびIIにおいて、Rが置換されている場合、少なくとも1個のアミノ基、1個のハロゲン原子、1個のエーテル基、1個のエステル基、1個のヒドロキシル基、1個のアクリレート基、1個のエポキシ基、1個のアルキル基、1個のアルキルアクリレート基、1個のアミノアルキル基または1個のクロロアルキル基によって置換されている、請求項10から12のいずれか一項に記載の蛍光組成物。
【請求項14】
金属有機シリケートポリマーが、Mがマグネシウムまたは亜鉛であり、各Rがアミノプロピル基である式IIを有する、請求項10から13のいずれか一項に記載の蛍光組成物。
【請求項15】
金属有機シリケートポリマーが、Mがマグネシウムまたは亜鉛であり、各RがN−(2−アミノエチル)−3−プロピルアミン基である式IIを有する、請求項10から13のいずれか一項に記載の蛍光組成物。
【請求項16】
固体粒子の形態である、請求項10から15のいずれか一項に記載の蛍光組成物。
【請求項17】
好ましくは水相中でディスパージョンまたはコロイドゾルの形態である、請求項10から15のいずれか一項に記載の蛍光組成物。
【請求項18】
請求項10から17のいずれか一項に記載の、少なくとも1種の組成物を含むマーキング組成物。
【請求項19】
UV放射から保護するための組成物であって、
− 2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールと、
− 以下の式IおよびII:
式I :RSiAl(OH)
式II:RSi16(OH)
(式中、
− 各Rは、他と独立して、置換または非置換および直鎖または分岐のアルキル基、置換または非置換および直鎖または分岐のアルケニル基、置換または非置換のアリール基、ならびに置換または非置換のベンジル基によって形成される群から選択され、
− x≧2であり
− y≧4であり、
− 式Iにおいて、Si/Alの比は、1.8と1.3の間(両端を含む)であり、
− 式IIにおいて、Mは、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ストロンチウムおよびこれらの混合物によって形成される群から選択され、Si/Mのモル比は、1.8と1.3の間(両端を含む)である)
のうちの1つを有する、少なくとも1種の金属有機シリケートポリマーの粒子と
を含む組成物。
【請求項20】
各Rが、他と独立して、置換または非置換のメチル基、置換または非置換のエチル基、置換または非置換のn−プロピル基および置換または非置換のベンジル基から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
式IおよびIIにおいて、Rが置換されている場合、少なくとも1個のアミノ基、1個のハロゲン原子、1個のエーテル基、1個のエステル基、1個のヒドロキシル基、1個のアクリレート基、1個のエポキシ基、1個のアルキル基、1個のアルキルアクリレート基、1個のアミノアルキル基または1個のクロロアルキル基によって置換されている、請求項19または20に記載の組成物。
【請求項22】
金属有機シリケートポリマーが、Mが亜鉛(Zn)であり、4個のR基がNH(CHNH(CH基であり、4個のR基がC基である式IIを有する、請求項19から21のいずれか一項に記載の組成物。

【公開番号】特開2009−167391(P2009−167391A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−309261(P2008−309261)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(508358737)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【住所又は居所原語表記】25 rue Leblanc, Batiment Le Ponant D, 75015 Paris, France
【Fターム(参考)】