説明

酸化された金触媒を使用してオレフィンをオレフィンオキシドにハイドロ酸化するための方法

【課題】3個以上の炭素原子を有するオレフィン(たとえばプロピレン)をハイドロ酸化してオレフィンオキシド(たとえばプロピレンオキシド)を形成させるための方法と触媒を開発すること。
【解決手段】本発明の方法は、水素と触媒とが存在する反応条件下でオレフィンと酸素とを接触させることを含む。本発明の触媒は、チタン含有担体〔好ましくは複数のチタン配位環境(たとえばチタノシリケートにグラフトされたチタン)を有する担体〕上に分散された酸化された金を含有する。本発明の方法は、オレフィンの転化率が良好でオレフィンオキシド選択性が高い。本発明の触媒は水素を効率的に使用し、触媒寿命が長い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素の存在下にて酸素によりオレフィン(たとえばプロピレン)をオレフィンオキシド(たとえばプロピレンオキシド)にハイドロ酸化(hydro-oxidation)するための方法と触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィンオキシド(たとえばプロピレンオキシド)は、アルコールをアルコキシル化してポリエーテルポリオールを形成させるのに使用される。ポリエーテルポリオールは、ポリウレタンや合成エラストマーを製造する上で極めて重要な物質である。オレフィンオキシドはさらに、アルキレングリコール(たとえばプロピレングリコール)やアルカノールアミン(たとえばイソプロパノールアミン)の製造において重要な中間体である。アルキレングリコールとアルカノールアミンは溶媒や界面活性剤として有用である。
【0003】
プロピレンオキシドはよく知られているクロロヒドリン法によって工業的に製造されている。該方法によれば、プロピレンと塩素の水溶液とを反応させてプロピレンクロロヒドリンの混合物を生成させる。過剰のアルカリを使用してクロロヒドリンから水素と塩素を除いてプロピレンオキシドを生成させる。この方法は、低濃度の塩流れの生成によって悪影響を受ける(K. WeissermelとH. J. Arpeによる“Industrial Organic Chemistry, 第2版, VCH Publishers, Inc., New York, NY, 1993, pp.264-265”を参照)。
【0004】
オレフィンオキシドを得るためのよく知られている他の反応経路は、有機ヒドロペルオキシドまたはペルオキシカルボン酸からオレフィンへの酸素原子の移動によるものである。この酸化経路の最初の工程においては、ペルオキシド生成体(a peroxide generator)(たとえばイソブタン、エチルベンゼン、またはアセトアルデヒド)を酸素で自動酸化させて、ペルオキシ化合物(たとえばt-ブチルヒドロペルオキシド、エチルベンゼンヒドロペルオキシド、または過酢酸)を形成させる。一般には、遷移金属触媒(チタン、バナジウム、モリブデン、および他の金属化合物もしくは金属錯体を含めて)の存在下でオレフィンをエポキシ化するのにペルオキシドが使用される。この方法は、オレフィンオキシドが得られると共に、等モル量の副産物〔たとえば、アルコール(t-ブタノールやメチルフェニルカルビノールなど)や酸(酢酸など)〕が生成される点で不利である。t-ブタノールやメチルフェニルカルビノール等の副産物は再使用するか、あるいはこれら有価物を単離して市場に出す必要がある。他の副産物もさらなる処理を施して工業的に重要な物質にする必要がある(たとえば、メチルフェニルカルビノールに対しては、脱水処理を施してスチレンにしなければならない)(Industrial Organic Chemistry, ibid., pp.265-269)。
【0005】
最近、水素と触媒の存在下にてオレフィン(たとえばプロピレン)を酸素により直接酸化してオレフィンオキシド(たとえばプロピレンオキシド)を得る、という方法が報告されている(EP-A1-0,709,360)。該特許文献によれば、触媒は、金金属の超微細粒子を二酸化チタン(好ましくはアナタース形二酸化チタン結晶)上に付着させた状態で含む。この触媒は、触媒寿命が短いので好ましくない。この触媒はさらに、約100℃以上の温度で使用すると、オレフィンオキシドの選択性が低くなり、水の生成量が多くなる。
【0006】
他のハイドロ酸化法も公知であり、たとえば国際特許公開WO98/00413とWO98/00415に開示されている。該特許出願によれば、チタノシリケート担体上に付着させた金、あるいはシリカ上分散チタンの無秩序相(disorganized phase)を含んだ担体上に付着させた金を含む触媒と水素との存在下にて、オレフィン(たとえばプロピレン)と酸素とを反応させる。国際特許公開WO98/00414は、触媒が、チタン含有担体に付着させた金と促進剤金属(たとえば、第1族金属、第2族金属、またはランタニド希土類金属)を含む、という類似の方法を開示している。該国際特許公開の触媒は、EP-A1-0,709,360の触媒と比較して同等のオレフィン選択性にて、より長い触媒寿命とより高い水素効率を達成している。WO98/00414の触媒はさらに、EP-A1-0,709,360の触媒より高い活性を示す。それにもかかわらず、活性、触媒寿命、および水素効率に対するさらなる向上が依然として求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP-A1-0,709,360
【特許文献2】WO98/00413
【特許文献3】WO98/00415
【特許文献4】WO98/00414
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Industrial Organic Chemistry, 第2版, VCH Publishers, Inc., New York, NY, 1993, pp.264-265
【非特許文献2】Industrial Organic Chemistry, ibid., pp.265-269
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、水素の存在下にてオレフィンと酸素から直接オレフィンオキシドを製造する新規ハイドロ酸化法である。本発明の方法は、3個以上の炭素原子を有するオレフィンと酸素とを、水素と触媒の存在下にて対応するオレフィンオキシドを生成するに足るプロセス条件下で接触させることを含む。本発明の方法において使用される特異な触媒は、チタン含有担体上に分散された酸化された金を含む。“酸化された金(oxidized gold)”とは、金が金属元素状態ではない金(non-metallic gold)として、すなわち1種以上の0より大きい正の酸化状態の金として存在することを意味している。酸化された金の存在を調べることのできる最近のいかなる分析法(たとえばX線光電子分光法)または分析法の組合せも、適切に使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の新規製造法は、3個以上の炭素原子を有するオレフィンと酸素からオレフィンオキシドを直接製造するのに有用である。予想外のことに、本発明の製造法により、高い操作温度にて継続的に、そして高い活性と高い選択性でオレフィンオキシドが得られる。本発明の製造法においては、部分燃焼生成物と完全燃焼生成物(たとえばアクロレインと二酸化炭素)が少量生成される。驚くべきことに、本発明の方法は、従来技術の方法より高い温度(具体的には、約130℃から最高約300℃の温度)で操作することができる。より高い温度での操作は、生成熱によりスチームが確実に得られるので有利である。従って本発明の方法は、スチームから得られる熱を使用してさらなるプロセス〔たとえば、オレフィンオキシドの水からの分離(水は、ハイドロ酸化法の副産物として生成される)〕を駆動する、というトータルのプラント設計に統合することができる。さらに有利なことには、本発明の方法の好ましい実施態様においては、従来技術の方法と比較して水素効率(生成される水とオレフィンオキシドとのモル比によって測定)が大幅に改良される。好ましい実施態様においては、たとえば約10:1未満という水対オレフィンオキシドモル比を高い操作温度で長時間にわたって達成することができる。さらに有利なことには、好ましい実施態様においては、本発明の方法は、少なくとも約100時間にわたってほとんど失活することなくオレフィン転化率の向上を達成する。最も有利なことには、本発明の方法は、従来技術にて使用される場合より少ない配合量の金を使用して行うことができる。
【0011】
他の態様においては、本発明は、チタン含有担体上に分散された酸化された金を含む特異な触媒組成物である。前述したように、酸化された金は、金属元素状態ではない金、すなわち0より大きい1種以上の酸化状態であることを特徴とする金を含む。
【0012】
本発明の新規組成物は、3個以上の炭素原子を有するオレフィンが対応するオレフィンオキシドに転化される、という上記ハイドロ酸化法において効果的に使用することができる。本発明の新規触媒は、活性が高くオレフィンオキシドに対する選択性が高いことに加えて、好ましい実施態様においては、従来技術の触媒と比較して水素をより効率的に使用し、また大幅に長い触媒寿命を示す。本発明の触媒はさらに、従来法において使用されるより高い操作温度にて高い性能レベルを達成する。より高い温度での操作によりスチームが確実に得られるので、関連したプロセスまたは下流のプロセスを行う上で有利である。さらなる利点として、本発明の触媒は、従来法において使用されるより少ない金配合量で操作することができる。金の配合量がより少なくて済むためにコスト面で有利となる。従って、この特異な触媒は、プロピレンやより高級のオレフィンを対応するオレフィンオキシドに酸化するプセスに対して極めて望ましい特性を有する。
【0013】
1つの好ましい実施態様においては、本発明の触媒は、含浸法によって有利に製造することができる。この含浸法により、付着沈積(deposition-precipitation)を含めた従来の調製法と比較して、工業的な調製が極めて簡単になる。この含浸法は、多量の金含有溶液を取り扱う必要がなく、またpHを慎重に制御する必要がないので有利である。
【0014】
本発明の新規ハイドロ酸化法は、3個以上の炭素原子を有するオレフィンと酸素とを、水素とエポキシ化触媒の存在下にて、対応するオレフィンオキシドを製造するに足るプロセス条件下で接触させることを含む。所望により、プロセスにおいて希釈剤を使用してもよい。オレフィン、酸素、水素、および任意に希釈剤の相対的なモル量は、所望するオレフィンオキシドを製造するに足るいかなるモル量であってもよい。本発明の好ましい実施態様においては、オレフィンはC3-12オレフィンであり、対応するC3-12オレフィンオキシドに転化される。さらに好ましい実施態様においては、使用されるオレフィンはC3-8オレフィンであり、対応するC3-8オレフィンオキシドに転化される。最も好ましい実施態様においては、オレフィンはプロピレンであり、オレフィンオキシドはプロピレンオキシドである。
【0015】
本発明のエポキシ化プロセスにおいて使用される新規触媒は、チタン含有担体上に分散された酸化された金を含む。この酸化された金は、0より大きい正の酸化状態を、あるいは0より大きい正の酸化状態の組合せを有することを特徴とする。言い換えると、金属酸化物は金属元素状態ではない金である。当業者には周知のことであるが、金金属(または金元素)の酸化状態は0である。
【0016】
好ましい実施態様においては、チタン含有担体はチタノシリケート上にグラフトされたチタン(詳細については後述)を含む。他の好ましい実施態様においては、チタン含有担体は、チタン含有モノマー、チタン含有ダイマー、チタン含有ポリマー、またはこれらの混合物を担体上に分散させることを含む方法によって製造される担体上分散チタンを含む。他の好ましい実施態様においては、チタン含有担体は、チタン-ケイ素酸化物モノマー、チタン-ケイ素酸化物ダイマー、チタン-ケイ素酸化物ポリマー、またはこれらの混合物を担体上に分散させることを含む方法によって製造されるシリカ上分散チタンを含む。1つの好ましい実施態様では、本発明の触媒において、バルク状二酸化チタン上に分散された酸化された金は除外される。
【0017】
さらに他の好ましい実施態様においては、本発明の触媒は、触媒の性能を高める全ての金属もしくは金属イオンとして定義される促進剤金属をさらに含む。促進剤金属は、銀、周期表の第1族元素、第2族元素、ランタニド希土類元素、およびアクチニド元素(“CRC Handbook of Chemistry and Physics, 第75版, CRC Press, 1994”に記載)から選ばれるのがさらに好ましい。さらに他の好ましい実施態様においては、チタン含有担体は、促進剤金属アルコキシドとチタンアルコキシドとを含む混合物をシリカ上に分散させることを含む方法によって製造される。
【0018】
本発明の方法においては、3個以上の炭素原子を有する全てのオレフィンまたはこれらオレフィンの混合物を使用することができる。モノオレフィンが適切であるが、2つ以上のオレフィン結合を有する化合物(たとえばジエン)も使用できる。オレフィンは、炭素原子と水素原子だけを含む単純な炭化水素であってもよいし、あるいはこれとは別に、炭素原子のいずれかが不活性置換基で置換されていてもよい。本明細書で使用している“不活性”とは、本発明の方法において該置換基が実質的に非反応性であることを意味している。適切な不活性置換基としては、ハロゲン基、エーテル基、エステル基、アルコール基、および芳香族基などがあり(これらに限定されない)、好ましいのはクロロ基、C1-12エーテル基、C1-12エステル基、C1-12アルコール基、およびC6-12芳香族基である。本発明の方法に適したオレフィンの例としては、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、2-メチルプロペン、1-ペンテン、2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、および3-ヘキセン; エチルブテン、ヘプテン、メチルヘキセン、エチルペンテン、およびプロピルブテン等の種々の異性体; 好ましくは1-オクテンを含むオクテン類、およびこれらの他の高級類縁体; ならびにブタジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、アリルアルコール、アリルエーテル、アリルエチルエーテル、酪酸アリル、酢酸アリル、アリルベンゼン、アリルフェニルエーテル、アリルプロピルエーテル、およびアリルアニソール; などがあるが、これらに限定されない。オレフィンは非置換もしくは置換C3-12オレフィンであるのが好ましく、非置換もしくは置換C3-8オレフィンであるのがさらに好ましい。オレフィンはプロピレンであるのが最も好ましい。上記オレフィンの多くは市販されており、他のオレフィンは当業者に公知の化学的プロセスによって製造することができる。
【0019】
使用されるオレフィンの量は、対応するオレフィンオキシドが本発明の方法にて得られるのであれば広い範囲で変わってよい。一般には、オレフィンの量は、たとえば反応器の設計構造、オレフィンの種類、ならびにコスト上および安全性上の観点を含めた個々のプロセスの特徴に依存する。当業者であれば、個々のプロセスの特徴に対する適切なオレフィン濃度範囲の決め方がわかるであろう。本明細書の開示内容を考慮すると、オレフィンの量は、オレフィン、酸素、水素、および任意に希釈剤の総モル数を基準として、一般には1モル%より多く、好ましくは10モル%より多く、さらに好ましくは20モル%より多い。オレフィンの量は、オレフィン、酸素、水素、および任意に希釈剤の総モル数を基準として、一般には99モル%未満であり、好ましくは85モル%未満であり、さらに好ましくは70モル%未満である。
【0020】
本発明の方法に対しては酸素も必要とされる。空気や実質的に純粋な分子酸素を含めたいかなる酸素源も使用可能である。オゾンや窒素酸化物(たとえば亜酸化窒素)を含めた他の酸素源も適切である。好ましいのは分子酸素である。使用する酸素の量は、所望のオレフィンオキシドを生成させるに足る量であれば、広い範囲にわたって変わってよい。普通、供給流れに中使用されるオレフィン1モル当たりの酸素のモル数は1未満である。酸素の量は、オレフィン、水素、酸素、および任意に希釈剤の総モル数を基準として0.01モル%より多いのが好ましく、1モル%より多いのがさらに好ましく、そして5モル%より多いのが最も好ましい。酸素の量は、オレフィン、水素、酸素、および任意に希釈剤の総モル数を基準として30モル%未満であるのが好ましく、25モル%であるのがさらに好ましく、そして20モル%未満であるのが最も好ましい。酸素濃度は、約20モル%より高いと、オレフィン-水素-酸素混合物に対する可燃性範囲内に入ることがある。
【0021】
本発明の方法に対しては水素も必要とされる。水素が存在しないと、触媒の活性が著しく低下する。本発明の方法に対しては、たとえば、炭化水素やアルコールの脱水素反応から得られる分子水素を含めたいかなる水素源も使用することができる。本発明の他の実施態様においては、たとえばアルケン(プロパンやイソブタンなど)やアルコール(イソブタノールなど)を脱水素することによって、オレフィン酸化反応器中にてその場で水素を発生させることができる。これとは別に、水素を使用して触媒-水素化物錯体または触媒-水素錯体を生成させ、こうした錯体により必要な水素をプロセスに供給することもできる。
【0022】
水素の量がオレフィンオキシドを生成させるに足る量であれば、本発明のおいていかなる量の水素も使用することができる。適切な水素量は、オレフィン、水素、酸素、および任意に希釈剤の総モル数を基準として、一般には0.01モル%より多い量であり、好ましくは0.1モル%より多い量であり、さらに好ましくは3モル%より多い量である。適切な水素量は、オレフィン、水素、酸素、および任意に希釈剤の総モル数を基準として、一般には50モル%未満の量であり、好ましくは30モル%未満の量であり、さらに好ましくは20モル%未満の量である。
【0023】
上記試剤の他に、反応物と共に希釈剤を使用するのが望ましい場合があるが、希釈剤の使用は任意である。本発明の方法の反応は発熱反応であるため、希釈剤は発生する熱を除去・散逸させる手段となるので有用である。希釈剤はさらに、反応物が難燃性となるような広い濃度範囲状況をもたらす。希釈剤は、本発明の方法を阻害しないいかなるガスまたは液体であってもよい。いかなる希釈剤を選択するかは、プロセスが行われる態様に依存する。たとえば、プロセスが気相で行われる場合、適切なガス状希釈剤としては、ヘリウム、窒素、アルゴン、メタン、二酸化炭素、スチーム、およびこれらの混合物などがあるが、これらに限定されない。これらのガスはほとんどが、本発明の方法に対して実質的に不活性である。プロセスが液相で行われる場合、希釈剤は、酸化されにくく熱安定性のいかなる液体であってもよい。適切な液体希釈剤の例としては、脂肪族アルコール(好ましくはC1-10脂肪族アルコール、たとえばメタノールやt-ブタノール); 塩素化脂肪族アルコール(好ましくはC1-10塩素化アルコール、たとえばクロロプロパノール); 塩素化炭化水素(好ましくはC1-10塩素化炭化水素、たとえばジクロロエタン、およびクロロベンゼンやジクロロベンゼンを含めた塩素化ベンゼン); 芳香族炭化水素(好ましくはC6-15芳香族炭化水素、たとえばベンゼン、トルエン、およびキシレン); エーテル(好ましくは、テトラヒドロフランとジオキサンを含めたC2-20エーテル、); ならびに液状ポリエーテル、液状ポリエステル、および液状ポリアルコール; などがある。
【0024】
希釈剤が気相中にて使用される場合、希釈剤の量は、オレフィン、酸素、水素、および希釈剤の総モル数を基準として、一般には0モル%より多く、好ましくは0.1モル%より多く、さらに好ましくは15モル%より多い。希釈剤が気相中にて使用される場合、希釈剤の量は、オレフィン、酸素、水素、および希釈剤の総モル数を基準として、一般には90モル%未満であり、好ましくは80モル%未満であり、さらに好ましくは70モル%未満である。液状希釈剤(または溶媒)が液相中にて使用される場合、液状希釈剤(または溶媒)の量は、オレフィンと希釈剤の総モル数を基準として、一般には0重量%より多く、好ましくは5重量%より多い。液状希釈剤が液相中において使用される場合、液状希釈剤の量は、オレフィンと希釈剤との総モル数を基準として、一般には99重量%未満であり、好ましくは95重量%未満である。
【0025】
上記のオレフィン濃度、酸素濃度、水素濃度、および希釈剤濃度は、反応器の設計構造と本明細書に開示のプロセスパラメーターに適切に基づいている。当業者には周知のことであるが、本明細書に開示の濃度以外の濃度も、プロセスの他の種々の工学的状況において適切に使用することができる。
【0026】
本発明のハイドロ酸化法において有効に使用される特異な触媒は、チタン含有担体に担持された金を含み、このとき金が酸化された金として、すなわち同等の表現で言えば金属元素状態ではない金として存在することを特徴とする。酸化された金は、0より大きい酸化状態、または0より大きい酸化状態の組合せを有する全ての金化学種であると定義される。たとえばX線光電子分光法(XPS)を含めて、金の酸化状態またはそれらの相対量を調べることのできるいかなる最新の分析法も使用できる。XPSデータは、後記の機能と条件を使用してKratos Axis 165 XPS機器またはPHI5400XPS機器により(あるいはこれらと同等の機器により)集めることができる。触媒の幾つかの実施態様においては、特に有機リガンドが存在する触媒では、X線が酸化された金の一部の還元を引き起こすことがある。こうした状況下では、XPSによって測定される酸化された金の割合が、触媒中の実際の割合より低くなることがある。XPSの他に、高分解能透過型電子顕微鏡法(HR-TEM)を使用して、金金属粒子が存在するかどうかについて分析することができる。この目的に対しては、2Å以上のポイント・ツー・ポイント分解能を有するいかなる高分解能透過型電子顕微鏡も使用することができる。ミー散乱法〔紫外-可視拡散反射率分光計(UV-VIS DRS)(たとえば、525nm領域に対して走査するDRSモデルUV-3101PC)により測定〕を使用して金金属が存在するかどうかについて分析することもできる。触媒が実質的に白いか、あるいはかすかに色がついている場合、ミー散乱領域においては、バックグラウンド上にいかなるピークも観察されないか、あるいはせいぜい極めて弱いピークが観察されるにすぎない。これらの観察結果は、金金属が存在していないこと、あるいはほぼ存在していないことと矛盾しない。他の方法で金金属粒子の存在が明らかにならない場合は、金元素についての分析により金の存在が(そして暗に酸化された金の存在が)確認できることがある。金の酸化状態は0〜約+3の範囲である。これとは対照的に、金金属は0の酸化状態を有する。
【0027】
一般には、酸化された金が、全金含量の30重量%以上を構成する。酸化された金が全金含量の50重量%以上を構成するのが好ましく、70重量%以上を構成するのがさらに好ましい。最も好ましい実施態様の1つにおいては、触媒が実質的に酸化された金を含み、このことは、全金含量の90重量%以上が酸化されているということを意味している。他の最も好ましい実施態様においては、触媒が95重量%以上の酸化された金を含む。
【0028】
金金属が存在する場合、その絶対量または粒子サイズに対する制限はない。しかしながら、金金属に対する酸化された金の典型的且つ好ましい量は前記した通りである。金金属粒子(存在する場合)の平均サイズは、HR-TEMによる測定にて典型的には150nm未満であり、さらに典型的には50nm未満である。好ましい実施態様においては金金属は実質的に存在せず、このことは、ハイドロ酸化法におけるより高い水素効率(水対オレフィンオキシドの低いモル比)に関係しているようである。触媒が実質的に金金属を含有せず、且つ担体が白色である場合は、触媒は一般には白色であるか、あるいはかすかに色を帯びている。
【0029】
担体への金の配合量は、本発明の方法における活性な触媒が得られるような量であればいかなる量であってもよい。金の配合量は、触媒の総重量を基準として一般には約0.001重量%(10ppm)より多く、好ましくは0.005重量%より多く、さらに好ましくは0.01重量%より多い。金の配合量は、触媒の総重量を基準として一般には20重量%未満であり、好ましくは10重量%未満であり、さらに好ましくは5.0重量%未満である。1つの好ましい実施態様においては、本発明の方法は、0.5重量%未満の金配合量で、さらに好ましくは0.1重量%未満の金配合量で行うのが有利である。
【0030】
チタン含有担体は種々の形態をとってよい。担体中のチタンは、実質的に金属元素状態ではないチタンとして存在するのが好ましい。担体それ自体は、チタンを固定できるいかなる物質でもよく、たとえば、非晶質もしくは結晶質のシリカ(たとえば、シリケートすなわちMCM-41); アルミナ; メタロシリケート(たとえば、アルミノシリケートやチタノシリケート); 促進剤金属ケイ酸塩(たとえば、第1族元素、第2族元素、ランタニド元素、およびアクチニド元素のケイ酸塩); 他の耐火性酸化物; ならびに同様の担体物質; などがある。本発明のハイドロ酸化法に適したさらに他のチタン含有担体としては、従来技術による多孔性結晶質のチタノシリケート(たとえば、TS-1、TS-2、Ti-β、Ti-MCM-41、およびTi-MCM-48)、ならびに化学量論および非化学量論の促進剤金属チタネートがある。促進剤金属チタネートは、結晶質であっても非晶質であってもよい。これらの例としては、第1族金属、第2族金属、ランタニド金属、およびアクチニド金属のチタン酸塩があるが、これらに限定されない。促進剤金属チタネートは、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸エルビウム、チタン酸ルテチウム、チタン酸トリウム、およびチタン酸ウラニウムから選択するのが好ましい。これとは別に、非晶質および結晶質のチタン酸化物(アナターゼ形、ルチル形、およびブルッカイト形の二酸化チタンを含む)も、チタン含有担体として適切に使用することができる。
【0031】
チタン含有担体は、結晶質、準結晶質、あるいは非晶質のいずれであってもよく、また非結合性もしくは相互結合性のミクロ細孔および/またはメソ細孔の規則的あるいは不規則な配列を含んでもよい。本明細書で使用している“ミクロ細孔”とは、4Å〜20Åの範囲の孔径(あるいは、非円形垂直断面の場合のような臨界寸法)を表わしており、また“メソ細孔”とは、20Åより大きい値〜500Åの範囲の孔径または臨界寸法を表わしている。
【0032】
チタンを担体に固定する場合、チタンの配合量は、本発明の方法における活性触媒が得られるような量であればいかなる量でもよい。チタンの配合量は、担体の重量を基準として一般には0.02重量%より多く、好ましくは0.1重量%より多い。チタンの配合量は、担体の重量を基準として一般には20重量%未満であり、好ましくは10重量%未満である。
【0033】
1つの好ましい実施態様においては、チタン含有担体は複数の(2つ以上の)チタン配位環境を含み、従って複数種のチタン化学種が生じる。こうした配位環境は、結合の数およびチタンに対する結合の幾何学的配置に関係する。チタノシリケートの場合、配位環境は骨格チタンと非骨格チタンを含んでよい。説明の都合上、結晶質チタノシリケートが、SiO4四面体で構成される“骨格”として知られている三次元構造を有するものとし、このとき各酸素原子が2個のケイ素原子を橋かけしている。骨格チタンは、骨格ケイ素に置き換わったチタン原子であると定義される。これとは対照的に、非骨格チタンは、一般には酸素ブリッジを介して骨格に結合しているチタン原子/イオンであると定義される。非骨格チタンが骨格上に結合する仕方についてはいかなる制限もない。極めて弱い相互作用(弱いクーロン相互作用)〜完全に配位した(固定またはグラフトされた)結合までの範囲のいかなるタイプの結合も許容される。従って、付着モデル、分散モデル、およびグラフトモデルも考えられる。適切な金属-担体相互作用についての詳細な説明が、B. Delmonによる「"Preparation of Solid Catalysts", Handbook of Heterogeneous Catalysis, Vol.2, Ertl, H. Knozinger, and J. Weitkamp, eds., VCH Verlagsgesellshaft mbH, Weinheim, Germany, 1997, pp.264-286」に記載されている。他の態様においては、好ましい担体中のチタンは、それが骨格チタンであろうと非骨格チタンであろうと、複数の配位部位がある場合には特定部位の配位に限定されない。四面体配位、三方錐配位、正方錐配位、八面体配位、およびこれらの変形配位等のあらゆる配位が許容される。同一配位の2つ以上の変形〔たとえば、2つの異なったタイプの四面体配位(後述の分析法により測定)〕を有することによる複数の配位タイプも許容される。非骨格チタン(および所望により骨格チタン)を含有する担体の例としては、シリケート骨格もしくはメタロシリケート(たとえばチタノシリケート)骨格等の担体物質上に収蔵させたチタニア; 耐火性酸化物骨格もしくはメタロシリケート(たとえばチタノシリケート)骨格等の担体物質上にイオンもしくはイオンクラスターとして付着させたチタン; および骨格構造にグラフトさせた好ましくは金属元素状態ではないチタン(たとえば、シリケート骨格もしくはチタノシリケート骨格上にグラフトさせたチタン); などがあるが、これらに限定されない。
【0034】
本発明の方法のためのより好ましいチタン含有担体である新規の変性チタノシリケートが開発された。この変性チタノシリケートは、MFI構造を有する準結晶質物質を含み〔X線回折(XRD)により測定〕、複数種のチタン化学種を有する(たとえば、XPSおよび/またはUS-VIS DRSにより測定)。少なくとも1種のチタン化学種が骨格チタンであって、他のチタン化学種の少なくとも1種がグラフトチタンであると考えられるが、いずれにしても、この理論によって本発明の組成物または方法が制約を受けることはない。
【0035】
チタノシリケート担体のケイ素対チタン原子比(Si:Ti)は、本発明の方法における活性で且つ選択的なエポキシ化触媒が得られるような比であればいかなる比であってもよい。有利なSi:Ti原子比は一般には約5:1以上であり、好ましくは約10:1以上である。有利なSi:Ti原子比は一般には約500:1未満であり、好ましくは約100:1未満である。
【0036】
本発明の新規変性チタノシリケートの合成は、幾つかの点においてTS-1の製造〔米国特許第4,410,501号およびJ. Thangarajらによる"Journal of Catalysis, 130, 1991, pg.1"に記載〕に類似しているが、従来技術とは異なって、合成により2種以上のチタン化学種を含んだチタノシリケートが得られる。反応混合物は、水、チタン源、シリカ源、およびアミンもしくは第四アンモニウム化合物の形態のテンプレート(template)を含む。テトラアルキルオルトシリケート(好ましくはテトラエチルオルトシリケート)、ヒュームドシリカ、および沈降シリカを含めたほとんど全てのシリカ源が適切であるが、ナトリウムイオンを含有するシリカは好ましくない。チタン源は加水分解性のチタン化合物であり、チタンテトラアルコキシド(たとえば、チタンテトラエトキシド、チタンテトラn-ブトキシド、またはチタンテトライソプロポキシド); チタンテトラハロゲン化物(たとえば四塩化チタン); およびチタンオキシハロゲン化物(たとえばオキシ塩化チタン); から選択するのが好ましい。他のチタン源やシリカ源を、チタン複合物質やシリカ複合物質〔たとえば、シリカ担持チタンもしくはシリカ担持チタニア、あるいはシリカ-チタニアコゲル(silica and titania co-gel)〕と混合することができる。トリアルキルアミンは、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、およびトリ(n-ブチル)アミン等のトリ(C1-15アルキル)アミンであるのが好ましい。第四アンモニウム化合物は、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドまたはハロゲン化テトラアルキルアンモニウム(たとえば、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラn-ブチルアンモニウムヒドロキシド、およびこれらに対応するハロゲン化物)であってよい。反応混合物において、シリカ対チタンのモル比は1:1〜1000:1の範囲であり、好ましくは10:1〜200:1の範囲であり、さらに好ましくは20:1〜150:1の範囲である。水対シリカのモル比は15:1〜500:1の範囲であり、好ましくは20:1〜200:1の範囲であり、さらに好ましくは30:1〜100:1の範囲である。アミンもしくは第四アンモニウムテンプレート対シリカのモル比は0.1:1〜4:1の範囲であり、好ましくは0.4:1〜1.0:1の範囲である。好ましい合成においては、シリカ源とチタン源とを混合し、得られる混合物を0℃〜−6℃(好ましくは−4℃)の温度に冷却する。次いでこの冷却混合物を、テンプレートを含有する同様に冷却した溶液に、速やかにそして通常は撹拌せずに加える。このようにして得られる合成混合物の温度を上げ、熱水条件下で(具体的には、100℃〜220℃の温度でオートクレーブ中にて)自生圧力にて1日〜10日にわたって合成を進行させる。これとは別に、合成は、大気圧にてより低温(好ましくは70℃〜最高110℃)で1日〜20日にわたって行うこともできる。
【0037】
本発明の新規チタノシリケートの1つの回収法においては、合成混合物を超遠心分離して固体を採取し、これをすすぎ洗い及び乾燥して(たとえば凍結乾燥して)新規のチタノシリケート生成物を得る。他の適切な回収法においては、合成混合物を遠心分離し、得られる上澄み液を50℃〜110℃の温度で加熱して、液体から揮発性化合物(たとえば、アルコールやアミン)を除去する。次いでこの液体を、沈殿物が生成し始めるようになるまで酸〔たとえば硝酸または塩酸(0.01M〜5.0M)〕で処理する。液体を再び遠心分離して新規チタノシリケート生成物を捕集する。さらに他の回収法においては、新規チタノシリケート生成物の水性懸濁液を無機酸で処理して7〜8のpH値に調節し、次いでこの酸処理混合物を遠心分離してチタノシリケート生成物を捕集する。さらに他の回収法では、合成混合物を遠心分離して結晶質固体を捕集し、次いでこの結晶質固体を酸(たとえば0.01M〜5.0Mの硝酸もしくは塩酸)で洗浄する。洗浄操作は、繰返し行ってもよく、一般には23℃〜90℃の温度で行う。これら回収法のいずれかによって捕集された固体生成物を、一般には周囲温度(たとえば21℃)〜110℃の温度で乾燥し、次いで空気雰囲気下にて480℃〜750℃の温度で2〜12時間焼成して、本発明の新規変性チタノシリケート担体を得る。
【0038】
本発明の新規チタノシリケート(前記のように製造)は、MFI構造タイプの斜方晶構造を有する(粉末XRDにより測定)。幾つかの公知のTS-1物質とは対照的に、本発明の新規チタノシリケートは複数種のチタン化学種を含有する(たとえばXPSにより測定)。1つのXPSピークが約460eVにおいて生じるが、このチタンは低配位化学種または骨格化学種である。第2のXPSピークが約458evにおいて生じるが、これはより高度の配位である非骨格チタン化学種に帰属される。この第2の化学種は、結晶質ニ酸化チタンではないようである。なぜなら、X線回折分析によれば、バルク状結晶質ニ酸化チタンの存在を示していないからである。これとは別に、チタン化学種または配位環境はUV-VIS DRSによって分析することもできる。この方法によれば、約255nmにて1つのピークがあり、骨格チタンまたは低配位チタンに帰属される。約270nmより大きい個所にて少なくとも1つの他のピークが認められ、高配位チタンまたは非骨格チタンに帰属される。第2のチタン化学種は、MFI骨格にグラフトしているチタンの1つの形態であると考えられるが、いずれにしても、この理論によって本発明が制約を受けることはない。骨格チタン化学種対非骨格(またはグラフト)チタン化学種の比については広い範囲の比が許容される。一般には、骨格チタン化学種対非骨格チタン化学種の比は、95モル%骨格から約95モル%非骨格まで変わってよい。骨格タイプおよび/または非骨格タイプの他のチタン化学種も存在してよい。本発明の新規物質の平均結晶サイズは、一般には20ナノメートル(nm)から1ミクロン(μm)の範囲である。
【0039】
他の好ましいタイプのチタン含有担体は、担体物質(好ましくはシリカ)上に分散されたチタンの無秩序相を含む。チタンの無秩序相は組織的で周期的な結晶性を示さず、1つ以上の最新の分析法(たとえば、HR-TEM分光法、XRD分光法、およびラマン分光法)によって、バルク状の組織化(結晶質)相とは区別することができる。UV-VIS DRSおよびチタンKエッジX線吸収端微細構造分光法(XANES)も、無秩序相と組織化相もしくは結晶質相とを区別する際に有用である。無秩序チタン相を含有する好ましい担体が国際特許公開WO98/00415に記載されている。無秩序チタン相も複数のチタン配位環境を含む(たとえばXPSおよび/またはUV-VIS DRSにより測定)のがさらに好ましい。
【0040】
無秩序チタンを含む担体を製造するには通常、出発物質である担体にチタン化合物を、0℃〜50℃の温度にて周囲圧力で30分〜24時間にわたって含浸する。適切なチタン化合物の例としては、チタンアルコキシド(たとえばチタンイソプロポキシド、チタンプロポキシド、チタンエトキシド、およびチタンブトキシド); 硫酸チタン、オキシ硫酸チタン、およびハロゲン化チタン(好ましくは塩化チタン); カルボン酸チタン(好ましくはシュウ酸チタン)、およびチタニルアセチルアセトネート; ならびに有機チタンハロゲン化物(たとえば、ジシクロペンタジエン二塩化チタン、他の有機チタノセン二塩化物); などがあるが、これらに限定されない。チタンアルコキシドと促進剤金属アルコキシド〔好ましくはアルカリ土類金属アルコキシド(たとえばバリウムアルコキシド)〕との混合物も使用することができる。チタンアルコキシドと促進剤金属アルコキシドとを溶媒(たとえばアルコール)中に溶解させて得られる混合物が市販されており〔たとえばゲレスト社(Gelest, Inc.)より〕この混合物を使用してこれらの成分をシリカ上に付着させることができる。混合アルコキシドに対し、チタンアルコキシドと促進剤金属アルコキシドの量を溶液中にて変えることができ、従って促進剤とチタンとの原子比もしくは重量比を変えることができる。これとは別に、チタン-促進剤金属混合錯体(たとえばLi[Ti(O-iBu)4])をシリカ上に付着させることもできる。これらの真の混合錯体(true mixed complex)においては、促進剤とチタンの量は固定されており、促進剤対チタンの比は一定である。
【0041】
無秩序チタン相を調製するのに適切に使用できる他のチタン化合物としては、無機および有機のチタン含有モノマー、チタン含有ダイマー、およびチタン含有ポリマー、ならびにアルコキシド等の基(チタンイオンに結合)で官能化されている炭素ベースポリマー(たとえばゲレスト社から市販)などがある。炭素ベースの適切なチタン含有ポリマーの例としてはポリ(ジブチルチタネート)およびポリ(オクチレングリコール-チタネート)などがあるが、これらに限定されない。
【0042】
無秩序チタン相を調製するのに適切に使用できる好ましいチタン化合物としては、無機および有機のチタン/ケイ素含有モノマー、チタン/ケイ素含有ダイマー、およびチタン/ケイ素含有ポリマーがあり、さらに好ましくはチタン/酸化ケイ素含有モノマー、チタン/酸化ケイ素含有ダイマー、およびチタン/酸化ケイ素含有ポリマーがある。このような物質は当業界においてよく知られている。有機チタンモノマー、有機チタンダイマー、または有機チタンポリマーは、Si、Ti、および-(CR2)z-基で構成される主鎖を有することを特徴とするいかなる化合物であってもよく、このとき-(CR2)z-基は、隣接しているSi原子、隣接しているTi原子、または隣接しているSi原子とTi原子を橋かけしており〔たとえば、-Si-(CR2)z-Si-、-Ti--(CR2)z-Ti-、および-Si-(CR2)z-Ti-〕、zは1〜20の範囲の整数であり、各Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、およびハロゲン基(好ましくはC1-20アルキル基、C6-20アリール基、C1-20アルコキシ基、およびクロロ基)から独立的に選ばれる。Si原子とTi原子に結合しているのは有機基であり、低級アルキル基および/または低級アルコキシド基および/またはアリール基および/またはアリールオキシド基の形態をとっているのが好ましい。同様に、チタノシロキサンポリマーは、Si原子、Ti原子、およびO原子で構成される主鎖を有することを特徴とするいかなるポリマーであってもよい。酸素原子が、隣接しているSi原子、隣接しているTi原子、および隣接しているSi原子とTi原子を橋かけしている(たとえば、-Si-O-Si-、-Ti-O-Ti-、および-Si-O-Ti-)。Si原子とTi原子に結合しているのは有機基であり、低級アルキル基および/または低級アルコキシド基および/またはアリール基および/またはアリールオキシド基の形態をとっているのが好ましい。チタノシロキサンポリマーは、直鎖構造、枝分かれ鎖構造、または架橋構造のいずれであってもよく、チタンは、Si-O-Ti-O-Si結合を介してケイ素で部分的に架橋されている。米国特許第5,759,945号に記載のチタノシロキサンポリマーが特に適している。チタノシロキサン等のチタン含有ポリマーは、たとえばゲレスト社から市販されている。-O-基と-(CR2)z-基の両方を主鎖中に有する、Ti含有ポリマーとSi含有ポリマーとの混合物も適切に使用することができる。
【0043】
上記のチタン含有モノマーは次式(R1)xTi[O-Si(R2)3-y(R3)y]4-xで示されるのモノマーであるのがさらに好ましく、このとき前記式において、R1、R2、およびR3は、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、およびハロ部分(好ましくはC1-20アルキル、C1-20アルコキシ、C6-20アリール、C6-20アリールオキシ、およびクロロ部分)から互いに独立的に選ばれ; xは0〜3の整数であり; そしてyは0〜3の整数である。同様に、好ましいチタン含有ダイマーとチタン含有ポリマーも、R3が[O-Si(R2)3-y(R3)y]と[O-Ti(R2)3-y(R3)y](式中、R2、R3、およびyは、上記にて定義した全てから選択することができる)から選択できるという点を除いて上記式によって表わすことができる。R3は反復構造基である点に留意する必要がある。R3が1つ繰り返されると、式はダイマーを表わし、R3が2つ以上繰り返されると、式はポリマーを表わす。適切なチタン含有モノマーの例としては、テトラキス(トリメチルシロキシ)チタン、テトラキス(トリエチルシロキシ)チタン、テトラキス(トリエトキシシロキシ)チタン、およびテトラキス[トリス(tert-ブトキシ)シロキシ]チタンなどがあるが、これらに限定されない。適切なチタン含有ポリマーの例としてはジエトキシシロキサン-エチルチタネートコポリマーがあるが、これに限定されない。
【0044】
担体上に適切に含浸させて無秩序チタン相を形成させることのできる他のチタン含有化合物としてチタン-シルセスキオキサン錯体があり、M. Crockerらによる“Chemical Communications, 1997, pp.2411-2412”およびM. Crockerらによる米国特許第5,750,741号に開示されている。さらに、上記のチタン含有化合物、チタン含有錯体、チタン含有モノマー、チタン含有ダイマー、およびチタン含有ポリマーのいずれかの混合物も担体上に適切に含浸させることができ、複数のチタン配位環境を得る上でより一層好ましい。
【0045】
チタン化合物は目的とする担体上に、そのままでも、気相からでも、あるいは溶媒からでも施すことができる。溶媒を使用する場合、溶媒は、たとえば脂肪族アルコール、脂肪族炭化水差、芳香族炭化水素、および適切な場合は水を含めて、チタン化合物を溶解するものであればいかなる溶媒であってもよい。チタン化合物を含有する溶液と出発担体とを接触させた後、担体を0℃〜150℃(好ましくは50℃〜150℃)の温度にて減圧または空気流れ中(あるいは窒素、アルゴン、もしくはヘリウム等の不活性ガス流れ中)で乾燥する。この担体は、焼成やさらなる処理を行うことなく使用することができる。これとは別に、乾燥後に、担体を空気または不活性ガス(たとえば、窒素やヘリウム)中にて100℃〜1000℃(好ましくは100℃〜800℃)の温度で焼成することもできる。
【0046】
上記チタン含有担体のいかなる組合せ物または混合物も、本発明の方法における触媒として使用することができる。
チタン含有担体は、触媒粒子に適したいかなる形態(たとえば、ビーズ、ペレット、球体、ハニカム、モノリス、押出物、およびフィルム)にも造形することができる。触媒粒子を一緒に結びつけるために、および/または触媒の強度もしくは耐摩耗性を向上させるために、所望により、チタン含有担体を、第2の担体と共に押し出すこともできるし、第2の担体に結合させることもできるし、あるいは第2の担体上に担持させることもできる。たとえば、ビーズ、ペレット、または押出物に造形されている第2の担体上にチタン含有担体の薄いフィルムを調製するのが望ましい。第2の担体は、一般には本発明の方法において不活性であり、チタンを含有する必要はない。適切な第2の担体としては、炭素; 耐火性酸化物(たとえばシリカ、アルミナ、アルミノケイ酸塩); セラミック炭化物やセラミック窒化物を含めたセラミック; ならびに金属担体; がある。第2の担体の量は通常、触媒と第2の担体との合計重量を基準として0〜95重量%の範囲である。
【0047】
酸化された金をチタン含有担体上に組み込む方法については、得られる触媒が本発明のハイドロ酸化法において活性を示すのであれば、いかなる制約もない。適切な調製法の例としては、付着沈積、含浸、噴霧乾燥、イオン交換、蒸着、および固体-固体反応などの方法があるが、これらに限定されない。この中では、付着沈積法と含浸法が幾らか好ましい。調製操作の全体にわたって、処理条件は通常、酸化された金の金金属への還元をできるだけ抑えるよう選定される。付着沈積法では、通常は、チタン含有担体と金化合物を含有する溶液とを、酸化された金化合物を担体上に組み込むに足る温度とpHにて接触させる。合成条件は、幾つかのパラメーター〔たとえば、金化合物の特定の性質、溶液中における金化合物の濃度、他のイオン化学種(たとえば塩素イオン、ナトリウムイオン、およびシリケートイオン)の性質と濃度、担体の種類、pH、温度、選択される塩基の種類、および接触時間〕の関数として変わってよい。含浸法においては、担体を溶液、懸濁液、または酸化された金を含有するコロイドで初期湿潤度(incipient wetness)まで、あるいは必要に応じてそれより低いか又は高い湿潤度にまで湿潤させる。この場合も、含浸条件は、たとえば、金化合物の種類、溶液もしくは懸濁液中におけるその濃度、担体の種類、および含浸温度に応じて変わってよい。担体は、必要であれば複数回の含浸処理を行ってよい。
【0048】
付着沈積法と含浸法(あるいは、使用される場合はイオン交換法)での温度は通常、周囲温度(たとえば21℃)〜100℃の範囲であるが、他の温度も適切であることがわかっている。付着沈積法および含浸法(あるいは、使用する場合はイオン交換法)のための金溶液もしくは金懸濁液を調製するのにいかなる金化合物も使用することができる。適切な金化合物の例としては、クロロ金酸、クロロ金酸ナトリウム、クロロ金酸カリウム、シアン化金、シアン化金カリウム、酢酸金、ジエチルアミン金酸三塩化物、アルキル金ハロゲン化物(好ましくはアルキル金塩化物)、およびアルカリ金属金酸塩(たとえば、金酸リチウム、金酸ナトリウム、金酸カリウム、金酸ルビジウム、および金酸セシウム)がある。有機金化合物も使用することができる。適切な溶媒としては水と有機溶媒があり、後者の有機溶媒としては、アルコール(たとえばメタノール、エタノール、およびイソプロパノール)、エステル、ケトン、脂肪族炭化水素、および芳香族炭化水素があるが、これらに限定されない。水と有機溶媒との混合物も適切に使用することができる。溶液が使用される場合は一般に、可溶性金化合物のモル数は0.0001M〜可溶性金化合物の飽和点までの範囲であり、好ましくは0.0005M〜0.5Mの範囲である。酸化された金塩(oxidized gold salt)を含有する水溶液が使用される場合、溶液のpHは、たとえば炭酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩、水酸化物、ケイ酸塩、およびこれらの混合物から選ばれる塩基を使用して5〜14のいかなる値にも調節することができる。所望により、溶液が、たとえば特定の促進剤金属イオン(たとえばLi+、Mg+2、およびLa+3)、ハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、およびカルボン酸塩(たとえば酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、桂皮酸塩、およびこれらの混合物)を含めて、酸化された金化学種を安定化させるカチオン性添加剤および/またはアニオン性添加剤を含有してよい。
【0049】
説明をわかりやすくするために、複数のチタン化学種を含有するチタン含有担体上に酸化された金を含んだ好ましい触媒組成物を製造するのに適した付着沈積合成法について記載する。この説明は単に例示のためのものであって、本発明の触媒を製造する際に使用できる合成法を限定しているわけではない。チタン含有担体と可溶性金化合物(たとえばクロロ金酸)の水溶液とを接触させる。適切な塩基(たとえば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化セシウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、炭酸ルビジウム、またはこれらの混合物)を使用して、pHを一般には5〜14に調節する。金イオンと担体との反応を容易にするよう、そして好ましくは反応を最適化するようpHを選択する。7より大きくて14より小さいpH値が好ましい。本混合物を、空気雰囲気下にて20℃〜80℃の温度で1時間〜24時間にわたって撹拌する。所定時間後、固体を回収し、水(所望により1種以上の促進剤金属塩を含有してもよい)で洗浄する。次いで固体を、空気雰囲気下にて20℃〜120℃の温度で乾燥する。
【0050】
他の例示説明として、複数のチタン化学種を含有するチタン含有担体上に酸化された金を含んだ好ましい触媒組成物を製造するのに適した含浸合成法について記載する。この場合も、この説明により本明細書に記載の方法が限定されるわけではない。この方法では、チタン含有担体に可溶性金化合物(たとえばクロロ金酸)の水溶液を含浸させる。適切な塩基(付着沈積法に関して前記したもの)を使用して、pHを一般には5〜14に調節する。7より大きくて14より小さいpH値が好ましい。これとは別に、含浸溶液は、有機溶媒(たとえばアルコール)または水と有機溶媒との混合物を使用して調製することもできる。使用される金化合物および/または他の塩は、溶媒中に完全に溶解しなくてもよい。懸濁液も使用することができる。次いで固体を、空気雰囲気下にて20℃〜120℃の温度で乾燥して溶媒を除去する。
【0051】
この合成したままの触媒は、さらなる処理を施すことなく使用することができる。所望により、合成したままの触媒を空気雰囲気下で焼成することもできるし、あるいは不活性雰囲気(たとえば窒素)中にて加熱することもできる。焼成/加熱温度はサンプルの種類に依存するが、100℃〜800℃(好ましくは120℃〜750℃)の範囲で変わってよい。温度は、酸化された金の金金属への還元をできるだけ抑えるよう選定される。これとは別に、合成したままの触媒を使用前に状態調整することもできる。この状態調整は、たとえば酸化反応器中において、不活性ガス(たとえばヘリウム)と、所望により炭化水素(たとえば、酸化しようとするオレフィン)、水素、および酸素から選ばれる1種以上の化合物とを含む環境下で周囲温度(たとえば21℃)〜600℃の温度で触媒を加熱することを含む。
【0052】
所望により、本発明の触媒は、促進剤金属または促進剤金属の組合せ物を含有してよい。本発明の酸化法において触媒の性能を高める全ての金属もしくは金属イオンあるいはこれらの組合せ物も促進剤金属として使用することができる。性能の向上に寄与するファクターとしては、オレフィンの転化率増大、オレフィンオキシドの選択性向上、水の生成量の減少、および触媒寿命の増大などがあるが、これらに限定されない。一般に、促進剤金属イオンの原子価は+1〜+7の範囲であるが、金属化学種が存在していてもよい。適切な促進剤金属の例としては、元素周期表の第1族〜第12族の金属ならびに希土類ランタニドとアクチニド("CRC Handbook of Chemistry and Physics, 第75版, CRC Press, 1994"に記載)があるがこれらに限定されない。促進剤金属は、銀; リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムを含む第1族金属; ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、およびバリウムを含む第2族金属; セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテチウムを含むランタニド希土類金属; ならびにアクチニド金属(特にトリウムとウラン); から選択するのが好ましい。促進剤金属は、銀、マグネシウム、カルシウム、バリウム、エルビウム、ルテチウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、およびこれらの組合せ物から選択するのがさらに好ましい。促進剤金属は、パラジウムを除外するのが好ましく、また第VIII族金属(特に、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、および白金)を除外するのがさらに好ましい。本明細書にて使用している“除外する(exclude)”とは、第VIII族金属の全濃度が、全触媒組成を基準として0.01重量%未満、さらに好ましくは0.005重量%未満であるということを意味している。
【0053】
1種以上の促進剤金属が使用される場合、促進剤金属の合計量は、触媒の総重量を基準として一般には0.001重量%より多く、好ましくは0.01重量%より多い。促進剤金属の合計量は、触媒の総重量を基準として一般には20重量%未満であり、好ましくは15重量%未満である。
【0054】
必要であれば、促進剤金属をチタンと同時にチタン含有担体上に付着させることもできるし、あるいはこれとは別に、チタンの付着前または付着後の別個の工程にて促進剤金属を付着させることもできる。必要であれば、促進剤金属を金と同時にチタン含有担体上に付着させることもできるし、あるいはこれとは別に、金の付着前または付着後の別個の工程にて促進剤金属を付着させることもできる。説明の便宜上、“付着させる(deposit)”という用語は、付着沈積法、イオン交換法、および含浸法の全てを含む。これとは別に、促進剤金属は、チタンを加える前に、チタンを加えた後に、あるいはチタンと同時に、触媒の前駆体上に付着させることもできる。促進剤金属は一般に、促進剤金属塩(および所望により、酸化された金化学種を安定化する他の添加剤)を含有する水溶液、有機溶液、または懸濁液から付着させる。促進剤金属のいかなる塩も使用することができ、たとえば、フッ化物、塩化物、および臭化物等の金属ハロゲン化物; ならびに硝酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、およびカルボン酸塩(特に、酢酸塩、シュウ酸塩、桂皮酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、およびクエン酸塩); などがある。上記塩の混合物も使用することができる。有機溶媒が使用される場合、有機溶媒は、たとえばアルコール、エステル、ケトン、脂肪族炭化水素、および芳香族炭化水素を含めた種々の公知の有機溶媒のいずれであってもよい。普通は、担体と金溶液とを接触させるのに使用されるのと同様の条件下で、促進剤金属塩の溶液と担体とを接触させる。促進剤金属を付着させた後の洗浄は任意であり、洗浄を行う場合、洗浄液は所望する促進剤金属の塩を含有するのが好ましい。その後、空気雰囲気下での焼成、不活性ガス中での加熱、または酸化反応器中での状態調整は、金の付着に関して前述したのと類似の仕方で任意に行うことができる。しかしながら、合成後の処理のプロセス条件は、酸化された金の金金属への還元をできるだけ抑えるように選定するのが好ましい。
【0055】
本発明の方法は、気相プロセスまたは液相プロセスに適した従来のいかなる設計構造の反応器でも行うことができる。これらの設計構造物としては、バッチ式反応器、固定床反応器、輸送床反応器、流動床反応器、移動床反応器、細流床反応器、シェルアンドチューブ式反応器、連続流れ反応器、間欠流れ反応器、およびスイング式反応器などがある。オレフィンと水素と酸素は一緒に接触させてよい。これとは別に、本発明の方法は段階的に行ってもよく、この場合、先ず触媒と酸素とを接触させ、次いでこの酸素処理された触媒をプロピレンと水素との混合物と接触させる。本発明の方法は気相中で行うのが好ましく、また反応器は、発生する熱が除去されるよう熱伝達機能を組み込んで設計されているのが好ましい。これらの目的に適合するよう設計された好ましい反応器としては、固定床反応器、シェルアンドチューブ式反応器、流動床反応器、移動床反応器、および並列に連結していて交互に使用される複数の触媒床で組み立てられたスイング式反応器などがある。
【0056】
本明細書に記載の酸化を行うためのプロセス条件は、難燃性から易燃性の広い範囲にわたって変わってよい。しかしながら、オレフィンと水素と酸素を含んだ難燃性混合物と易燃性混合物とを区別する条件を認識することが大切である。従って、所定のプロセス温度とプロセス圧力に対して、反応物組成物(使用する場合は希釈剤を含む)の易燃性範囲と難燃性範囲を示す組成ダイヤグラムを造り上げることができる。上記のより好ましい反応物混合物は、プロセスを下記のようなより好ましい温度と圧力で操作する場合は、易燃性範囲の外側に含まれるものと考えられる。それにもかかわらず、当業者によってなされるように易燃性範囲内の操作も可能である。
【0057】
本発明の方法は、一般には周囲温度(たとえば21℃)より高い温度で、好ましくは70℃より高い温度で、さらに好ましくは130℃より高い温度で行う。本発明の方法は、一般には300℃未満の温度で、好ましくは260℃未満の温度で行う。圧力は、一般には大気圧〜400psig(2,758kPa)の範囲であり、好ましくは100psig(690kPa)〜300psig(2,069kPa)の範囲である。
【0058】
流通反応器においては、反応物の滞留時間と反応物対触媒のモル比は空間速度によって決定される。気相プロセスの場合、オレフィンのガス空間速度(GHSV)は広い範囲で変わってよいが、一般には1時間当たり(h-1)触媒1ml当たり10mlより大きく、好ましくは100h-1より大きく、さらに好ましくは1000h-1より大きい。オレフィンのGHSVは、一般には50,000h-1未満であり、好ましくは35,000h-1未満であり、さらに好ましくは20,000h-1未満である。さらに、気相プロセスの場合、供給流れの全ガス空間速度(GHSV)は広い範囲で変わってよいが、一般には1時間当たり(h-1)触媒1ml当たり10mlより大きく、好ましくは100h-1より大きく、さらに好ましくは1000h-1より大きい。供給流れのGHSVは、一般には50,000h-1未満であり、好ましくは35,000h-1未満であり、さらに好ましくは20,000h-1未満である。同様に、液相プロセスの場合、オレフィン成分の重量空間速度(WHSV)は広い範囲で変わってよいが、一般には1時間当たり(h-1)触媒1g当たりオレフィン0.01gより大きく、好ましくは0.05h-1より大きく、さらに好ましくは0.1-1より大きい。オレフィンのWHSVは、一般には100h-1未満であり、好ましくは50h-1未満であり、さらに好ましくは20h-1未満である。酸素、水素、および希釈剤成分のガス空間速度と重量空間速度は、所望する相対的なモル比を考慮してオレフィンの空間速度から決定することができる。
【0059】
少なくとも3個の炭素原子を有するオレフィンと酸素とを、前記触媒と水素の存在下で接触させると、対応するオレフィンオキシド(エポキシド)が良好な収率で得られる。好ましいオレフィンオキシドはプロピレンオキシドである。
【0060】
本発明の方法におけるオレフィン転化率は、オレフィンの種類、温度、圧力、モル比、および触媒の形態を含めて、使用する特定のプロセス条件に依存して変わる。本発明の目的に適合するよう、“転化率”とは、反応して生成物を形成するオレフィンのモル%と定義される。一般には、0.25モル%より大きいオレフィン転化率が達成される。オレフィン転化率は、1.0モル%より大きいのが好ましく、1.5モル%より大きいのがさらに好ましく、2.0モル%より大きいのが最も好ましい。
【0061】
オレフィンオキシドの選択性は、使用するプロセス条件の種類に依存して変わる。本発明の目的に適合するよう、“選択性”とは、ある特定の生成物(望ましくはオレフィンオキシド)を形成する反応オレフィンのモル%であると定義される。本発明の方法により、予想外に高い選択性でオレフィンオキシドが得られる。オレフィンオキシドの選択性は、一般には70モル%より大きく、好ましくは80モル%より大きく、さらに好ましくは90モル%より大きい。
【0062】
触媒の生産性(productivity)〔1時間当たり触媒1kg当たりのプロピレンオキシドのグラム数(gPO/kg cat-h)として測定される〕は、使用する触媒の種類とプロセス条件(たとえば温度、圧力、および供給速度)に依存する。触媒の生産性は、一般には30g PO/kg cat-hより大きく、好ましくは50 g PO/kg cat-hより大きく、さらに好ましくは100g PO/kg cat-hより大きい。
【0063】
本発明の方法は水素効率が高いので有利である。さらに詳細に言えば、水対オレフィンオキシドのモル比が、一般には約1:1より大きくて約30:1未満であり、好ましくは約10:1未満である。
【0064】
好ましい実施態様においては、本発明の触媒は改良された触媒寿命(すなわち長い寿命)を示す。本明細書で使用している“寿命”とは、酸化プロセスの開始から、再生後の触媒が充分な活性を失って触媒が無効となる(特に工業的に無効となる)までの時間を表わしている。寿命が長いことの証拠として、触媒はほとんど失活することなく長時間にわたって活性を保持する。固定床においては一般に、触媒の失活を起こすことなく40時間以上の使用時間が達成されている。触媒の失活を起こすことなく100時間以上の使用時間を達成できるのが好ましい。より好ましい実施態様においては、本発明の触媒が、ほとんど失活を起こすことなく400時間にわたって有効に使用されている。再生処理の間の好ましい使用時間は反応器の設計構造に依存し、輸送床反応器に対する数分から固定床反応器に対する数ヶ月までの範囲がある。
【0065】
触媒活性が許容できない程度の低レベルにまで低下したとき、好ましい実施態様においては、本発明の触媒を簡単に再生することができる。当業者に公知のいかなる触媒再生法も、触媒が本明細書に記載の酸化プロセスに関して再活性化されるのであれば、本発明の触媒に対して使用することができる。1つの適切な再生法は、不活性化した触媒を、酸素、水素、水、これらの混合物、および所望により不活性ガスを含有する再生用ガスの雰囲気下で150℃〜500℃の温度で加熱することを含む。好ましい再生温度は200℃〜400℃の範囲である。再生用ガス中の酸素、水素、および/または水の量は、触媒を効果的に再生する量であればいかなる量であってもよい。酸素、水素、または水は、再生用ガスの2〜100モル%を構成するのが好ましい。適切な不活性ガスは非反応性のガスであり、たとえば窒素、ヘリウム、およびアルゴンなどがある。触媒が再生される時間は、わずか2分から数時間(たとえば、より低い再生温度にて20時間)までの範囲がある。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本発明は、下記の実施例(これらの実施例は、単に本発明の代表的な使用態様にすぎない)を考察することによってより一層明らかとなるであろう。本発明の他の実施態様は、本明細書の開示内容を考察すれば当業者には明らかであろう。特に明記しない限り、パーセントは全てモル%基準で記載してある。
【0067】
実施例に記載のX線光電子分光データは、一般にはKratos Axis 165機器またはPHI 5400 XPS機器により取得した。一般には、Kratos Axis機器に関する操作パラメーターは以下の通りであった: X線源, 単色AI Kα(210ワット, 14kV, 15mA); アナライザー・パス・エネルギー(Analyzer Pass Energy), 80eV(サーベイスペクトル), 20または40eV(高分解スペクトル); テイクオフ角度, 90°; レンズモード, ハイブリッド; ;レンズの口径, カーボンテープ上のサンプルに対するスロットは3×10mmおよびAIホルダー上のサンプルに対する直径は2mm; アイリス(Iris), 50; 分析エリア(16〜84%の信号レベル), 600(x)×220μ(y), 未較正, 直径1.5mm; フラッド・ガン条件, フィラメント電流2.0A; 電荷バランス(charge balance), 3.25V; およびバイアス, 1.0V。PHI 5400機器に関する操作パラメーターは以下の通りであった: X線源, マグネシウムKα(225ワット, 15kV, 15mA); アナライザー・パス・エネルギー, 89eV(サーベイスペクトル), 17.8eV(高分解スペクトル); テイクオフ角度, 45°; レンズモード, 倍率3:1; ;レンズの口径, スロット(10×3mm), 分析エリア(3×1mm); アイリス, 50; フラッド・ガンは使用せず。サンプルは、粉末状サンプルを両面導電性カーボンテープ上に塗りつけるか、あるいはアルミニウム製サンプルホルダー中にて粉末状サンプルをブラインドホール中に押し込むことによって調製した。スペクトルは、Si(2p)スペクトル領域とAu(4f) スペクトル領域において記録した。Si(2p)スペクトルを使用して、分析時に生成した表面電荷が説明できるように結合エネルギーのスケールを較正した。バルク状の金は84.0eVと87.7eVにて4fラインを示し、理論強度比は、4:3のスピン軌道二重項にて7:2および5:2であった。
【実施例】
【0068】
実施例1
テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、チタンn-ブトキシド、およびテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)を使用し、1.0SiO2:0.015TiO2:35H2O:0.33TPAのモル比組成を有する水性反応混合物中にてナノメートルサイズのチタノシリケート結晶を製造した。TEOSとイソプロピルアルコールを5:1の比で含有する溶液を、激しく撹拌しながらTPAOHの溶液(20重量%)に加えた。20分撹拌した後、チタンn-ブトキシドの乾燥イソプロピルアルコール溶液(1:5比)を、激しく撹拌しながら上記の第1の溶液に加えた。得られた透明溶液を1時間撹拌した後、冷却した脱イオン水を徐々に加えた。この合成混合物をオートクレーブ中に密閉し、自生圧力下にて170℃で4日間撹拌した。2,000RPMで3時間遠心分離することにより結晶質固体を回収した。この結晶質固体を塩酸(0.1M)で2回洗浄し、脱イオン水で洗浄し、そして70℃で2時間乾燥した。次いで固体を、空気中にて550℃で8時間焼成した。得られた生成物(チタノシリケート)は平均サイズが100nmの斜方晶結晶を含んでいて(TEMにより測定)、MFIタイプの構造を有していた(粉末XRDにより測定)。バルク状の二酸化チタンは認められなかった。Si:Tiの原子比は90:1であった。Ti-XPSは、460eVと458eVにおいて2つのチタンピークを示し、これらそれぞれ、81%の低配位(骨格)チタンおよび19%の高配位(グラフト)チタンであると見なされた。
【0069】
オーバーヘッド撹拌を使用して、クロロ金酸(HAuCl4・3H2O, 0.171g)を脱イオン水(171ml)に加えた。得られた黄色溶液を水浴中にて71℃に加熱した(pH2.4)。炭酸ナトリウム(0.5N)でpHを8.5に調節し、71℃で80分撹拌した。溶液が無色になり、pHの測定値は8.97となった。この溶液に硝酸マグネシウム(0.236g)を撹拌しながら加え、5分後にpH値が8.6となった。撹拌を止め、溶液を収容しているビーカーを冷水浴中に20分静置した。24℃にて溶液のpH値は9.12となった。前記のように調製したチタノシリケート(5g)をこの金溶液に、激しくオーバーヘッド撹拌をしながら加えた。本懸濁液を2時間撹拌し、pH値が8.29となった。固体を濾過し、脱イオン水(185ml)で洗浄した。次いで固体を以下のように焼成した: 空気を流しながら室温〜110℃の温度で30分加熱し、110℃で12時間保持し、110℃〜700℃の温度で5時間加熱し、そして700℃で10時間保持して本発明の触媒を得た。
【0070】
この触媒は、粒子のエッジ周りにかすかなピンク色を有していて、実質的に金金属を含有していなかった(HR-TEMによって測定)。ミー散乱によって小さなピークが観察された。金は、実質的に酸化された金として存在した(XPSとHR-TEMとを組合せて測定)。元素分析の結果(重量%)は以下の通りであった: 0.024%Au, 51%Si, 0.79%Ti, 0.23%Na, 0.016%K, 0.12%Mg〔中性子活性化分析(NAA)により測定〕。
【0071】
この触媒を、プロピレンのプロピレンオキシドへのハイドロ酸化において以下のように試験した。触媒(2g)を固定床の連続流れ反応器中〔0.5インチ(12.5mm)直径×12インチ(30cm)長さ〕に装入し、下記のように活性化させた。触媒をヘリウム雰囲気下にて140℃で5時間加熱し、プロピレンと水素を流しつつ10分加熱し、次いで酸素を加えた。供給流れの組成は、水素10%、酸素10%、プロピレン20%、そして残部がヘリウムであった。プロピレンと酸素とヘリウムはそれぞれ単独の流れとして使用し、水素はヘリウムとの混合物として使用した〔20H2/80He(v/v)〕。1時間経過して一定の割合のプロピレンオキシド生成物が得られるようになった後、温度を15℃間隔で操作温度にまで上昇させた。操作圧力は大気圧であった。オンラインのガスクロマトグラフィー〔クロムパック(Chrompack)(商標)ポラプロット(Polaplot)(商標)Sカラム, 25m〕または質量分析法を使用して生成物を分析した。
【0072】
温度186℃、1.74秒の滞留時間(GHSV 2069h-1)、および68時間流した時点で、触媒は、1.5%のプロピレン転化率、90%のプロピレンオキシド(PO)選択性、35g PO/kg cat-hの生産性、および3.3:1の水:POモル比を示した。
【0073】
実施例2
テトラエチルオルトシリケート、チタンn-ブトキシド、およびテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)を使用し、1.0SiO2:0.025TiO2:36H2O:0.235TPAOHのモル比組成を有する水性反応混合物中にてナノメートルサイズのチタノシリケート結晶を製造した。本反応混合物は、テトラエチルオルトシリケートとチタンn-ブトキシドとを、不活性ガス雰囲気中にてステンレス鋼製容器中で先ず混合することによって調製した。こうして得られた混合物とTPAOHの溶液(40重量%)との両方を氷浴中にて5℃に冷却した。このTPAOH溶液を、激しく撹拌しながらアルコキシドの混合物に徐々に加えた。冷却した脱イオン水をゲルに加え、ゲルを室温に加温した。ゲルを10時間エージングし、ステンレス鋼製オートクレーブ中に装入し、オートクレーブを160℃および300psig(2068kPa)にて6日間加熱した。所定時間後、オートクレーブを冷却し、内容物を2,000rpmにて3時間遠心分離して半透明の白色固形物を得た。固形物を廃棄し、遠心分離で得られた液状物を80℃にて5時間加熱して、液状物からエタノールと残留アミンとを除去した。液状物を室温に冷却し、硝酸(2M)を使用してpHを12から7に調節した。懸濁液が形成された。懸濁液を2,000rpmにて30分遠心分離して準結晶質白色固体を得た。この固体を80℃にて12時間乾燥し、次いで空気中にて550℃で8時間焼成してチタノシリケート担体を得た。生成物の形態は、平均サイズが80nm(HR-TEMにより測定)で形状不規則の厚めの板状物質であった。粉末XRDパターンは、MFIタイプの斜方晶構造を示した。XRDによれば、バルク状の二酸化チタンは観察されなかった。Si:Ti原子比は46:1であった。Ti-XPSは、460eVと458eVにおいて2つのチタンピークを示し、それぞれ61%低配位(骨格)チタンおよび39%高配位(グラフト)チタンと見なした。
【0074】
オーバーヘッド撹拌を使用して、脱イオン水(171ml)にクロロ金酸(0.171g)を加えた。この黄色透明溶液を水浴中で70℃に加熱した。pH値は2.4であった。炭酸ナトリウム水溶液(pH0.5N)を使用してpHを8.6に調節した。溶液が無色になった。本溶液を70℃で75分撹拌した。pHの測定値は9.03であった。硝酸マグネシウム(0.236g)を加えると、5分後にpHが8.64になった。撹拌を停止し、溶液を入れたビーカーを冷水浴中に25分放置した。21℃にて、溶液のpHは9.1であった。調製してあったチタノシリケート(5g)を、オーバーヘッド撹拌を使用して本溶液に加え、得られた混合物を2時間撹拌した。pHを8に保持するのに必要な場合はいつでも炭酸ナトリウム(0.5N)を加えた。2時間後、21℃でのpHは8.54であった。固体を濾過し、脱イオン水(185ml)で洗浄した。下記の手順に従って固体を焼成した: 空気を流しながら30分で室温から110℃まで加熱し、110℃で12時間保持し、5時間で110℃から700℃まで加熱し、そして700℃で10時間保持して本発明の触媒を得た。
【0075】
触媒は白色であり、HR-TEMによれば金金属は実質的に含有していなかった。ミー散乱は全く観察されなかった。XPSによれば、金は実質的に酸化された金として存在していた。NAAによる元素分析結果: Au 0.015%, Si 47%, Ti 1.35%, Na 0.46%, およびMg 0.14%(いずれも重量%)。
【0076】
触媒(2g)を、実施例1に記載の手順に従って、プロピレンのプロピレンオキシドへのハイドロ酸化に関して評価した。温度192℃および滞留時間1.71秒(GHSV 2105h-1)にて450時間流した後、触媒は、1.5%のプロピレン転化率、92%のPO選択性、37g PO/kg cat-hの生産性、4.0:1の水対POモル比、および反応器出口における0.33重量%のPOを示した。
【0077】
実施例3
オーバーヘッド撹拌を使用して、脱イオン水(171ml)にクロロ金酸(0.171g)を加えた。黄色透明溶液を、水浴中にて71℃に加熱した(pH2.36)。炭酸ナトリウム(0.5N)を使用してpHを8.63に調節した。溶液は無色になった。溶液を71℃で80分撹拌した。溶液のpHは8.85になった。硝酸マグネシウム(0.237g)を加えると、5分後に71.7℃にてpHが8.64になった。撹拌を停止し、溶液を入れたビーカーを冷水浴中に20分放置した。21℃にて、溶液のpHは9.13であった。オーバーヘッド撹拌を使用して実施例1のチタノシリケート(5g)を加え、撹拌を2時間続けた。pHは20℃にて8.37になった。固体を濾過し、脱イオン水(185ml)で洗浄した。実施例2に記載の手順に従って固体を焼成して、本発明の触媒を得た。触媒はかすかに色がついているだけであり、このことから金が実質的に酸化されていることがわかった。触媒(2g)を、実施例1に記載の手順に従って、プロピレンのプロピレンオキシドへのハイドロ酸化に関して評価した。温度163℃および滞留時間1.83秒(GHSV 1967h-1)にて21時間流した後、触媒は、2.0%のプロピレン転化率、89%のPO選択性、49g PO/kg cat-hの生産性、3.15:1の水対POモル比、および反応器出口における0.44%のPOを示した(失活は殆ど起こらなかった)。最高点での活性(6時間後の流れ時点)において、触媒は、2.6%の転化率、88.5%の選択性、61g PO/kg cat-hの生産性、3.7:1の水対POモル比、および反応器出口における0.54重量%のPOを示した。
【0078】
実施例4
オーバーヘッド撹拌を使用して、脱イオン水(171ml)にクロロ金酸(0.171g)を加えた。黄色透明溶液を、水浴中にて70℃に加熱した(pH2.37)。炭酸ルビジウムの水溶液(1N)を使用してpHを8.67に調節した。溶液は無色になった。溶液を69℃で2時間撹拌した。溶液のpHは9.1になった。硝酸マグネシウム(0.116g)を加えると、5分後に66.1℃にてpHが8.94になった。撹拌を停止し、溶液を入れたビーカーを冷水浴中に20分放置した。17.9℃にて、炭酸ルビジウム溶液を使用して溶液のpHを9.54に調節した。オーバーヘッド撹拌を使用して実施例2のチタノシリケート(5g)を加えた。本混合物を2時間撹拌した。pHは21.8℃にて8.2になった。固体を濾過し、脱イオン水(100ml)で洗浄した。実施例2に記載の手順に従って固体を焼成して、本発明の触媒を得た。NAAによる元素分析結果は以下の通りであった: Au 0.050%, Si 46%, Ti 1.22%, Rb 1.6%, K 0.010%, およびNa 0.0028%(いずれも重量%)。触媒はかすかに色がついているだけであり、このことから金が実質的に酸化されていることがわかった。
【0079】
触媒(2g)を、プロピレンのプロピレンオキシドへのハイドロ酸化に関して評価した。温度180℃および滞留時間1.76秒(GHSV 2045h-1)にて120時間流した後、触媒は、2.50%のプロピレン転化率、91%のPO選択性、60g PO/kg cat-hの生産性、4.0:1の水対POモル比、および反応器出口における0.53重量%のPOを示した(失活は殆ど起こらなかった)。
【0080】
同じ触媒(3g)に対し、230psia(1,586kPa)の加圧容器中において、ヘリウム中にて20%のプロピレン、7.5%の酸素、および7.5%の水素を供給して、プロピレンのプロピレンオキシドへのハイドロ酸化に関して評価した。温度190℃および滞留時間2.33秒にて15時間流した後、触媒は、1.8%のプロピレン転化率、92%のPO選択性、および270g PO/kg cat-hの生産性を示した。
【0081】
実施例5
オーバーヘッド撹拌を使用して、脱イオン水(85.5ml)にクロロ金酸(0.088g)を加えた。黄色透明溶液を、水浴中にて72℃に加熱した(pH2.18)。炭酸ルビジウムの水溶液(1N)を使用してpHを8.59に調節した。溶液は無色になった。本混合物を69.5℃で80分撹拌した。溶液のpHは9.13になった。撹拌を停止し、溶液を入れたビーカーを冷水浴中に放置した。23.3℃にて、溶液のpHは9.43になった。オーバーヘッド撹拌を使用して実施例1のチタノシリケート(2.5g)を加え、本混合物を2時間撹拌した。pHが低下し続けるので、追加の炭酸ルビジウム溶液を加えてpHを約8に保持した。最終的なpHは21℃にて8.31になった。固体を濾過し、脱イオン水(90ml)で洗浄した。実施例2に記載の手順に従って固体を焼成して本発明の触媒を得た。XPSによれば、酸化された金が金の全含量の46重量%を構成していた。
【0082】
触媒(2g)を、プロピレンのプロピレンオキシドへのハイドロ酸化に関して、実施例1に記載のように評価した。温度180℃および滞留時間1.76秒(GHSV 2045h-1)にて120時間流した後、触媒は、2.2%のプロピレン転化率、90%のPO選択性、53g PO/kg cat-hの生産性、6.6:1の水対POモル比、および反応器出口における0.46重量%のPOを示した。
【0083】
実施例6
オーバーヘッド撹拌を使用して、クロロ金酸(0.171g)と脱イオン水(171ml)とを含んだ溶液(17.1ml)を脱イオン水(153ml)でさらに希釈した。淡黄色透明溶液を、水浴中にて72.7℃に加熱した(pH2.79)。炭酸ルビジウムの水溶液(1N)を使用してpHを8.68に調節した。溶液は無色になった。本溶液を75.7℃で80分撹拌した。溶液のpHは8.78になった。硝酸マグネシウム(0.141g)を加えると、pHは76℃にて5分後に8.47になった。撹拌を停止し、溶液を入れたビーカーを冷水浴中に20分放置した。24.3℃にて、溶液のpHは9.18になった。オーバーヘッド撹拌を使用して実施例1のチタノシリケート(3g)を加え、本混合物を2時間撹拌した。pHが低下し続けるので、追加の炭酸ルビジウム溶液を加えてpHを約8に保持した。2時間後、pH値は20.7℃にて8.03になった。固体を濾過し、脱イオン水(90ml)で洗浄した。実施例2に記載の手順に従って固体を焼成して本発明の触媒を得た。NAAによる元素分析結果: Au 0.011%, Si 47%, Ti 1.12%, Rb 0.93%, Mg 0.090%, およびNa 0.0052%(いずれも重量%)。触媒はかすかに色がついているだけであり、このことから金が実質的に酸化されていることがわかった。
【0084】
触媒(2g)を、実施例1に記載の手順に従って、プロピレンのプロピレンオキシドへのハイドロ酸化に関して評価した。温度200℃および滞留時間1.69秒(GHSV 2130h-1)にて120時間流した後、触媒は、1.8%のプロピレン転化率、89%のPO選択性、42g PO/kg cat-hの生産性、3.8:1の水対POモル比、および反応器出口における0.39%のPOを示した。
【0085】
実施例7
14リットル容量のステンレス鋼製容器に乾燥窒素を15分パージした。テトラ(エチル)オルトシリケート(11,276g)を容器中に仕込んだ。激しく撹拌しながら、シリケートにチタンブトキシド(236.4g)を加えた。得られた溶液を、連続的に撹拌しながら窒素パージしつつ91℃に加熱し、この温度にて合計2時間加熱した。本溶液を氷浴中にて2時間冷却して1.9℃にした。アルカリ含量の少ない(Naが20ppm未満)テトラプロピルアンモニウムヒドロキシドの水溶液(9874g, 40重量%のTPAOH)を16ガロン容量のポリプロピレン容器中に入れた。TPAOH溶液に、撹拌しながら脱イオン水(5814g)を加えた。容器を氷浴中に放置した。ドライアイス-アセトン浴(約−25℃)中に浸漬された外部のSS 1/4インチ(0.6cm)コイルによりTPAOH溶液をポンプ送りして、より速やかな冷却とより良好な温度制御を達成した。溶液を−4℃に冷却した。低温のアルコキシド溶液を、150ml/分の割合で16ガロン容器中にポンプ送りした。混合物の温度が徐々に上昇し、アルコキシド溶液の約1/2を加えた後に−2℃に達した。最後に、撹拌しながら混合物に脱イオン水(5432g)を加えた。最終混合物の温度は8.2℃であった。混合物を室温で18時間撹拌した。
【0086】
次いで、ステンレス鋼製オートクレーブ中において200rpmの撹拌でハイドロサーマル合成を行った。オートクレーブを160℃に加熱し、この温度で4日間保持した。反応器を室温に冷却し、混合物を反応器からポンプ送りした。混合物から多量の有機層が分離した。乳状水性液体のpHを硝酸(1.5N)で約8.7に調節し、3000rpmでの遠心分離によって生成物を回収した。固体を脱イオン水中に再び分散し、さらに遠心分離を行った。こうして得られた固体を110℃で12時間乾燥し、次いで気流オーブン中で焼成した。得られた物質を5時間で550℃に加熱し、次いで550℃にて5時間加熱した。粉末XRD分析により、本物質が純然たるMFIタイプの相であることがわかった。Ti-XPSによれば、87%の低配位チタンと13%の高配位チタンが示された。
【0087】
水酸化セシウムの水溶液(0.296g, 50重量%)を脱イオン水(19.85g)に加えた。得られた溶液のpHは12.6であった。酢酸ナトリウム三水和物(0.128g)を、撹拌しながら前記溶液中に溶解した。この溶液のpHは12.5であった。本溶液にテトラクロロ金酸三水和物(0.008g)を加え、撹拌しながら溶解した。溶液のpHは変化しなかった。上記のように調製したチタノシリケート担体(5g, 粒径2mm)を250mlの丸底フラスコ中に入れた。フラスコをロータリー・エバポレーターに連結し、30mmHgの減圧にした。チタノシリケートを減圧下にて80℃で1時間加熱し、次いで室温に冷却した。チタノシリケートに減圧下で金溶液(7.63g)を徐々に含浸させ、室温にて2時間保持した。最後に、含浸金属を減圧下にて80℃で2.3時間加熱した。触媒にはかすかに色がついているだけであり、このことから金が実質的に酸化されていることがわかった。
【0088】
触媒(2g)を、0.5インチ(12.5mm)のID SS固定床連続流れ反応器中に装入した。触媒を、ヘリウム気流下にて140℃で4時間加熱し、次いでプロピレンと水素の気流下にて約10分加熱し、そして最後に酸素を供給物に加えた。プロピレン、酸素、およびヘリウムはそれぞれ単独の流れとして使用し、水素はヘリウムと20:80の容量比にて混合した。供給流れの組成は、水素10%、酸素10%、およびプロピレン20%であり、残部がヘリウムであった。操作圧力は10psig(69kPa)に保持した。オンラインのガスクロマトグラフィー〔クロモパック・ポラプロット(Chromopack Poraplot) Sカラム, 25m〕および/または質量分析法を使用して生成物を分析した。温度190℃、1.72秒の滞留時間、および58時間流した時点で、触媒は、3.5%のプロピレン転化率、92.6%のプロピレンオキシド選択性、80g PO/kg cat-hのプロピレンオキシド生産性、および4.5:1の水:POモル比を示した。82時間の操作後においても、同じ性能が観察された。
【0089】
実施例8
撹拌しながら、水酸化カリウム(0.27g)を脱イオン水(79.45g)に加えた。この溶液に酢酸ナトリウム三水和物(1.43g)を撹拌しながら加えて溶解した。本溶液にテトラクロロ金酸三水和物(0.08g)を撹拌しながら加えて溶解し、30分後にpHが12.3の透明溶液が形成された。担体(40g)(実施例7のチタノシリケートと18重量%のシリカとを結合させたものを1/8インチ(0.32cm)の押出物中に含む)を500mlの丸底フラスコ中に仕込んだ。フラスコをロータリー・エバポレーターに連結し、30mmHgの減圧にした。チタノシリケートを減圧下にて80℃で1.5時間加熱した。フラスコを室温に冷却し、室温にて30分保持した。チタノシリケートに減圧下で金溶液(38.24g)を徐々に含浸させ、室温にて2時間保持した。含浸金属を減圧下にて80℃で2.25時間加熱して本発明の触媒を得た。触媒にはかすかに色がついているだけであり、このことから含まれている金が実質的に酸化されていることがわかった。
【0090】
WHSVを11.3h-1とし、そして圧力を215psig(1482kPa)としたこと以外は、実施例8に記載の手順に従って、触媒(20g)を、プロピレンのプロピレンオキシドへのハイドロ酸化に関して評価した。オンラインの質量分析法を使用して生成物を分析した。温度160℃で20時間流した時点で、触媒は、1.45%のプロピレン転化率、97%のプロピレンオキシド選択性、および6.2:1の水:POモル比を示した。70時間流した時点で、プロピレン転化率は1.25%、プロピレンオキシド選択性は96%、そして水:POモル比は8.1:1であった。
【0091】
実施例9
実施例7に記載のように得た結晶質のケイ酸チタン(3g)を空気雰囲気下にて550℃で4時間焼成し、室温に冷却した。酢酸ナトリウムを含有するエタノール溶液(15gのエタノール中0.17g)を調製した。この溶液に、クロロ金酸を含有するエタノール溶液(10gのエタノール中0.015g)を加えた。このようにして得られた溶液を使用して、初期湿潤(incipient wetness)によりケイ酸チタンを含浸させた。含浸したシリケートを自然乾燥して、チタン含有担体上に酸化された金を含んだ触媒を得た。触媒は白色であり、このことは触媒が酸化された金を含有していることを示している。HR-TEMまたはXPSによれば金金属は認められなかった。XPSによれば酸化された金は認められなかった。理解しておかなければならないことは、金の含量が極めて少ないために、通常は酸化された金に対するXPSシグナルも弱いものとなる、ということである。
【0092】
プロピレン(35%)、水素(10%)、酸素(10%)、および残部のヘリウムを含む供給流れを使用し、実施例1に記載の手順に従って、触媒(2g)をプロピレンのプロピレンオキシドへのハイドロ酸化に関して評価した。圧力15psig(103kPa)、全流量200sccm、および温度200℃にて、プロピレン転化率は2.3%、プロピレンオキシド選択性は88%であった。
【0093】
実施例10
実施例7に記載のように得た結晶質のケイ酸チタン(15g)を空気雰囲気下にて600℃で8時間焼成し、室温に冷却した。酢酸ナトリウムを含有するメタノール溶液(25gのメタノール中0.20g)を調製し、この溶液に、クロロ金酸を含有する別のメタノール溶液(5gのメタノール中0.06g)を加えた。このようにして得られた溶液を使用して、初期湿潤によりケイ酸チタンを含浸させた。含浸したシリケートを減圧オーブン中にて30分乾燥し、次いで減圧オーブン中にて60℃で1時間加熱して、チタン含有担体上に金を含んだ触媒を得た。HR-TEMによれば幾らかの金粒子の存在が示された。ミー散乱によれば、金金属に対する弱いバンドが示された。XPSによれば、全金含量の40重量%が酸化されていた。
【0094】
実施例1に類似の手順に従って、触媒(3.0g)を、プロピレンのプロピレンオキシドへのハイドロ酸化に関して評価した。供給流れの組成は、プロピレンが35%、水素が10%、酸素が10%、および残部がヘリウムであった。プロセス条件は、1分当たり1,500標準立方センチメートル(sccm)のトータル流量にて225psig(1551kPa)であった。170℃の温度にて、プロピレン転化率は1.5%、プロピレンオキシド選択性は99%、および水:POモル比は3.2:1であった。
【0095】
実施例11
テトラエチルオルトシリケート(50g)を氷浴中で5℃未満に冷却し、撹拌しながらチタン(IV)テトラ(エトキシド)(0.51g)を加えた。この冷却混合物に、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH, 43.9g; 水中40%)と水(43.5g)との低温(5℃未満)溶液を、固相が見えなくなるような速度で徐々に滴下した。TPAOH溶液を加えた後、本混合物を、ジァイロータリー・シェーカー(gyrotary shaker)により室温にて24時間加水分解した。次いで、加水分解処理した懸濁液を95℃で64時間加熱した。結晶化後、懸濁液を16,400rpmにて2時間遠心分離し、液体を廃棄することによって固相を回収した。この固相を再び新たな水中に分散し、得られた懸濁液を上記のように遠心分離した。すすぎ洗い処理を3回繰り返した。精製処理された懸濁液を凍結乾燥して粉末を得た。XRDによって、この粉末がMFI構造のチタノシリケートであることが確認された。結晶のサイズは平均46〜60nmであった。XPSは460eVと458eVにおいてピークを示し、これらはそれぞれ骨格チタンとグラフトチタンに帰属された。
【0096】
オーバーヘッド撹拌を使用して、脱イオン水(68.5ml)にクロロ金酸(0.069g)を加えた。この黄色透明溶液を水浴中で70℃に加熱した(pH 2.30)。炭酸ナトリウム水溶液(0.5N)を使用してpHを8.60に調節した。溶液が無色になった。本混合物を73.8℃で溶液を80分撹拌した。pH値が9.10になった。溶液に硝酸マグネシウム六水和物(0.096g)を加えた。5分撹拌した後、pHが72.7℃にて8.73になった。撹拌を停止し、溶液を入れたビーカーを冷水浴中に20分放置した。20.1℃にて、溶液のpHは9.26であった。オーバーヘッド撹拌しながらチタノシリケート(2.0g)を加え、得られた混合物を2時間撹拌した。pHが下がり続けるので、追加の炭酸ナトリウム水溶液を加えてpHを約8に保持した。最終的なpH値は、21.1℃にて8.22であった。固体を濾過し、脱イオン水(90ml)で洗浄した。実施例2に記載の手順に従って固体を焼成して、本発明の触媒を得た。触媒はわずかに色がついているだけであり、このことは含まれている金が実質的に酸化されていることを示している。
【0097】
操作温度が180℃、圧力が10psig(69kPa)、および滞留時間が1.76秒(GHSV, 2,045h-1)であること以外は実施例1に記載の手順に従って、触媒を、プロピレンのプロピレンオキシドへのハイドロ酸化に関して評価した。これらの操作条件下にて、触媒は、2.0%のプロピレン転化率、89.9%のPO選択性、4.7:1の水対POモル比、および54g/kg cat-hのプロピレンオキシド生産性を示した。
【0098】
実施例12
実施例4の触媒を、1-ブテンの1-ブテンオキシドへのハイドロ酸化に関して評価した。供給流れの組成が、30%の1-ブテン、8%の酸素、8%の水素、および残部のヘリウムで構成されること以外は、実施例1に記載のようにハイドロ酸化を行った。170℃の温度、大気圧、および150cm3/分の全流量にて、初期の1-ブテン転化率は0.7%であり、1-ブテンオキシド選択性は86%であった。20時間流した時点で、転化率は0.3%であり、1-ブテンオキシド選択性は85%であった。
【0099】
実施例13
8%のシリカバインダーを含有する1/8インチ(0.32cm)ケイ酸チタン押出物上に酸化された金を含んだ触媒(2g)を、ブタジエンのハイドロ酸化に関して評価した。下記のような付着沈積報によって金を付着させた。オーバーヘッド撹拌を使用して、クロロ金酸(9.48g)を脱イオン水(9.55kg)に加えた。黄色透明溶液を73℃に加熱した(pH 2.39)。炭酸ルビジウム水溶液(1N)を使用してpHを8.67に調節した。溶液が無色になった。本混合物を72.1℃で2時間撹拌した。pH値が8.96になった。溶液に硝酸マグネシウム六水和物(6.15g)を加えた。5分撹拌した後、pHが71.9℃にて8.74になった。撹拌を停止し、一定の速度で撹拌しながら溶液を12時間冷却した。22.8℃にて溶液のpHは9.16になった。1Nの炭酸ルビジウム水溶液を使用してpHを9.6に調節した。オーバーヘッド撹拌しながらチタノシリケート押出物(280g)を加え、得られた混合物を8時間撹拌した。最終的なpH値は、27.2℃にて7.96であった。固体を濾過し、500mlの炭酸ルビジウム溶液(pH 9.4)で洗浄した。気流オーブン中において、30分で室温から110℃まで加熱、この温度で4時間加熱、5時間で700℃まで加熱、次いで700℃にて5時間加熱することによって固体を焼成して本発明の触媒を得た。
【0100】
実施例1の場合と同様の手順で、ブタジエンのハイドロ酸化に関して触媒を評価した。供給流れの組成は、1,3-ブタジエンが20%、酸素が10%、水素が10%、内部標準としてのプロパンが4.2モル%、そして残部がヘリウムであった。1,3-ブタジエンモノオキシドの形成はガスクロマトグラフィーによって確認した。二酸化炭素が主要な副生物であることが観察された。280℃より低い温度で約6時間流し、次いで140℃にてヘリウムで12時間パージした後、280℃の床温度にて触媒を試験した。プロセス条件と結果を表1に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
実施例14
バリウムとチタンアルコキシド(ゲレスト社、ペンシルバニア州ツリータウン; DBAT 150, 6.7〜7.0重量%のバリウムと2.3〜2.5重量%のチタンとを含有する0.5M溶液12.51g)との混合物をイソプロパノール(200ml)中に溶解した。300℃で焼成しておいたシリカ(PQ HP321, 30.2g)を溶液に加え、得られた混合物を一晩撹拌した。減圧にて35℃で1時間、溶媒を除去した。固体残留物を110℃で5時間乾燥し、エアオーブン中110℃〜600℃で5時間焼成し、そして600℃で4時間保持してチタン含有担体を得た。
【0103】
クロロ金酸(0.1514g)を水(320ml)中に溶解した。本溶液を70℃に加熱し、炭酸ナトリウムでpHを8.0に調節した。次いで溶液を室温に冷却した。この金溶液にチタン含有担体(6.29g)を加えた。溶液のpHが低下するので、炭酸ナトリウムを加えてpHを7.5に保持した。本混合物を1時間撹拌した。固体を濾過し、水で濯ぎ洗いし(pH 7.5にて100ml)、そして濾過した。濯ぎ洗いした固体を110℃で5時間乾燥し、110℃〜425℃の空気中で5時間焼成し、次いで425℃で4時間保持して本発明の触媒を得た。NAAによる元素分析結果は以下の通りであった: Au 940ppm; Ti 0.97重量%; Na 1290ppm; Ba 2.40重量%。本触媒は、3.5nmサイズの金粒子を幾らか含有していた。HR-TEMに対してエネルギー分散形X線分析法を使用することにより、触媒が、3.5nmの金粒子の間に1nm未満の金粒子も含有していることがわかった。XPSの測定によれば、金の約30重量%が酸化されていた。
【0104】
オンラインの質量分析法を使用して、実施例1に記載の手順に従ってプロピレンのプロピレンオキシドへのハイドロ酸化に関して評価した。150℃で約4時間ハイドロ酸化プロセスを施し、次いで触媒を、酸素(20容量%)と水(1容量%)と残部のヘリウムとの混合物の下で425℃で再生処理した。1回目の再生処理の後、ハイドロ酸化プロセスを150℃で約5時間行い、次いで酸素と水とヘリウムとの混合物の下で450℃にて2回目の触媒再生処理を行った。2回目の再生処理の後、150℃でのハイドロ酸化プロセスに関して触媒を評価し、表2に示すような結果が得られた。
【0105】
【表2】

【0106】
実施例15
ジエトキシシロキサン-エチルチタネートコポリマーとして表わされるチタノシロキサンポリマー〔ゲレスト社、ペンシルバニア州ツリータウン; PSITI-019, 22.43g(19.1〜19.6%のケイ素と2.1〜2.3%のチタンを含有)〕をイソプロパノール(150ml)中に溶解した。本溶液にシリカ〔PQ HP 321; 20.3g(300℃にて焼成しておいたもの)〕を加え、混合物を一晩撹拌した。ロータリーエバポレーターにより減圧にて35℃で溶媒を除去した。固体残留物を減圧にて100℃に加熱し、100℃にて1時間保持した。本物質を110℃で5時間乾燥し、次いで110℃〜600℃まで気流中で5時間かけて焼成し、600℃にて4時間保持してチタン含有担体を得た。
【0107】
クロロ金酸(0.1503g)を水(350ml)中に溶解した。本溶液を70℃に加熱し、炭酸ナトリウムでpHを8.0に調節し、そして溶液を室温に冷却した。この金溶液にチタン含有担体(6.03g)を加えた。溶液のpHが低下するので、炭酸ナトリウムを加えてpHを7.5に保持した。本混合物を1時間撹拌した。固体を濾過し、水で濯ぎ洗いし(100ml, pH 7.5)、そして再び濾過した。固体を110℃で5時間乾燥し、空気中にて110℃〜425℃まで5時間かけて焼成し、次いで425℃で4時間保持した。固体をオーブンから取り出し、300℃にてオーブンに戻し、1時間で425℃に加熱し、次いで425℃にて2時間保持して本発明の触媒を得た。元素分析の結果は以下の通りであった: Au 610ppm; Ti 1.50重量%; Na 4700ppm。本触媒は、3.5nmのサイズの金粒子を含有していた。HR-TEMに対してEDSを使用することにより、触媒が、3.5nmの金粒子の間に1nm未満の金粒子も含有していることがわかった。XPSの測定によれば、酸化された金が全金含量の40重量%を構成していた。
【0108】
実施例1に記載の手順に従って、プロピレンのプロピレンオキシドへのハイドロ酸化に関して触媒を評価した。150℃で約4時間ハイドロ酸化プロセスを施し、次いで触媒を、酸素(20容量%)と水(1容量%)と残部のヘリウムとの混合物の下で425℃で再生処理した。1回目の再生処理の後、ハイドロ酸化プロセスを150℃で約5時間行い、次いで酸素と水とヘリウムとの混合物の下で450℃にて2回目の触媒再生処理を行った。2回目の再生処理の後、150℃でのハイドロ酸化プロセスに関して触媒を評価し、表3に示すような結果が得られた。
【0109】
【表3】

【0110】
実施例16
クロロ金酸(0.1513g)と硝酸バリウム(0.3037g)を水(350ml)中に溶解した。得られた溶液を70℃に加熱し、炭酸ナトリウムでpHを7.0に調節し、溶液を室温に冷却した。この金/バリウム溶液にチタン含有担体(6.05g)(実施例15において使用したものと同じ)を加えた。溶液のpHが低下するので、炭酸ナトリウムを加えてpHを7.0に保持した。本混合物を1時間撹拌した。固体を濾過し、水で濯ぎ洗いし(100ml, pH 7.5)、そして再び濾過した。固体を110℃で5時間乾燥し、空気中にて110℃〜425℃まで5時間かけて焼成し、次いで425℃で4時間保持した。固体をオーブンから取り出し、300℃のオーブンに戻し、1時間で425℃に加熱し、次いで425℃にて2時間保持して本発明の触媒を得た。元素分析の結果は以下の通りであった: Au 3200ppm; Ti 1.47%; Na 1550ppm; Ba 1.95%。XPSの測定によれば、酸化された金が全金含量の42重量%を構成していた。HR-TEMにより、平均サイズが5.0nmの金金属粒子が幾らか存在し、約1.5nmの粒子が多く存在することがわかった。
【0111】
実施例1に記載の手順に従って、プロピレンのプロピレンオキシドへのハイドロ酸化に関して触媒を評価した。150℃で約4時間ハイドロ酸化プロセスを施し、次いで触媒を、酸素(20容量%)と水(1容量%)と残部のヘリウムとの混合物の下で425℃で再生処理した。1回目の再生処理の後、ハイドロ酸化プロセスを150℃で約4時間行い、次いで酸素と水とヘリウムとの混合物の下で450℃にて2回目の触媒再生処理を行った。2回目の再生処理の後、150℃でのハイドロ酸化プロセスに関して触媒を評価し、表4に示すような結果が得られた。
【0112】
【表4】

【0113】
実施例17
300℃で乾燥しておいたシリカ粉末(PQ-HP-420シリカ; 50.0g)を使用してチタン含有担体を製造した。室温に冷却した後、シリカ粉末を、空気雰囲気下にて2リットル容量のロータリー・エバポレーター・フラスコに移した。ロータリー・エバポレーターにより減圧下で穏やかにシリカ粉末を回転させた。窒素で乾燥したボックス(a nitrogen dry box)中にて、テトラキス(トリメチルシロキシ)チタン(ゲレスト, 2.60g)をイソプロピルアルコール(300.0g)中に溶解し、得られた溶液を滴下ロートに移して密閉した。テトラキス(トリメチルシロキシ)チタン溶液を減圧下にてシリカ粉末に加え、得られた混合物を減圧下にてさらに5分保持した。次いで、窒素をフラスコに約16時間流した。40℃にて1時間、次いで85℃にて1時間減圧を施して溶媒を除去した。回収した固体を、空気雰囲気のマッフル炉中で室温から800℃まで5時間にわたって焼成し、次いで800℃で5時間保持し、そして室温に冷却して本発明のチタン含有担体を得た。
【0114】
クロロ金酸(0.150g)、硝酸リチウム(0.160g)、および硝酸マグネシウム(0.30g)を脱イオン水(350g)中に溶解した。炭酸リチウム水溶液(0.10M)を滴下してpHを7.8に調節しながら本溶液を70℃に加熱した。溶液を室温に冷却した(pHが8.3に上昇)。次いでこの溶液にチタン含有担体(5.0g)を加えた。炭酸リチウム水溶液(0.5M)でpHを7.5に調節しつつ、フラスコをサーキュラー・シェーカーで90分回転させた。ワットマン紙#3を用いたブフナー漏斗を使用して固体を濾過した。固体を水で濯ぎ洗いし(40ml, 炭酸リチウムでpHを7.00〜8.00にした)、メタノール(80.0ml)で再び濯ぎ洗いした。濾過操作を30分続けた。固体を60℃の減圧オーブン中に3時間放置して本発明の触媒を得た。この触媒は白色〜淡青色を帯びており、焼成はしなかったが減圧乾燥後に使用した。NAAによる元素分析結果は以下の通りであった: Au 0.037重量%, Ti 0.56重量%, Na 0.017重量%, Mg 0.23重量%。XPSは66重量%の酸化された金を示した。Ti-XPSは、92%の低配位チタンと8%の高配位チタンを示した。
【0115】
下記のプロセス条件を使用したプロピレンのプロピレンオキシドへのハイドロ酸化に関して触媒(2.0g)を評価し、表5に示す結果が得られた。
【0116】
【表5】

【0117】
実施例18
実施例7に記載の手順に従って製造したチタン含有担体(30g)を空気中で575℃にて8時間焼成し、室温に冷却した。クロロ金酸(0.035g)と酢酸ナトリウム(0.5g)のメタノール(35g)溶液を調製した。サンプルを、さらさらした状態になるまで減圧下にて室温で乾燥し、次いで減圧下にて100℃で2時間加熱して本発明の触媒を得た。
【0118】
全体としての流量を15.0リットル/分とし、圧力を210psig(1448kPa)とし、そして反応器の外殻温度を160℃にしたこと以外は、実施例1に記載の手順に従って、プロピレンのプロピレンオキシドへのハイドロ酸化に関して触媒(30g)を評価した。プロピレン転化率は3.2%であり、プロピレンオキシド選択性は96%であった。
【0119】
実施例19
テトラエチルオルトシリケート(50g)を氷浴中にて5℃未満に冷却しつつ、撹拌しながらチタン(IV)テトラ(エトキシド)(1.37g)を加えた。この冷却溶液に、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH, 43.9g; 水中40%)と水(43.5g)との低温(5℃未満)溶液を加えた。撹拌しながらTPAOH/水混合物を約15滴加えると、溶液がやや濁った。激しく撹拌しながら5分でTEOS/Ti混合物に残りのTPAOH/水混合物を速やかに加えると、すぐに溶液が透明になり、固相が存在していないことがわかった。混合物の温度が室温になるまで撹拌を続け、次いで混合物を、室温にてジァイロータリー・シェーカーにより24時間加水分解した。加水分解処理した懸濁液を95℃で64時間加熱した。結晶化後、懸濁液を16,400rpmで2時間遠心分離し、液体を廃棄することによって固相を回収した。この固相を再び新たな水中に分散し、懸濁液を上記のように遠心分離した。濯ぎ洗いのプロセスを3回繰り返した。こうして得られた精製懸濁液を凍結乾燥して粉末を得た。XRDにより、この粉末はMFI構造のチタノシリケートであることが確認された。結晶のサイズは平均で40〜60nmであった。XPSによれば460eVと458eVにおいてピークを示し、それぞれ骨格チタンとグラフトチタンであると帰属された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン含有担体に担持させた酸化された金を含む組成物であって、触媒中の金の30重量%を超える金が酸化された金である、前記組成物。
【請求項2】
バルク状二酸化炭素に担持させた酸化された金は除外されるという条件を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
金の配合量が、触媒の総重量を基準として0.001重量%より多くて20重量%より少ない、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
触媒中の金の50重量%を超える金が酸化された金である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
触媒中の金の70重量%を超える金が酸化された金である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
金粒子が存在する場合、前記粒子が1nm未満の平均サイズを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記触媒が、銀、第1族元素、第2族元素、ランタニド希土類元素、アクチニド元素、およびこれらの組合せ物から選ばれる少なくとも1種の促進剤をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
促進剤金属が、銀、マグネシウム、カルシウム、バリウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、エルビウム、ルテチウム及びこれらの組み合わせ物より選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
促進剤の全濃度が、触媒の総重量を基準として0.01重量%より多くて20重量%より少ない、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記チタン含有担体がチタノシリケートである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記チタノシリケートが、MFI構造を有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記チタノシリケートが、1:1〜500:1の範囲のケイ素対チタン原子比を有する、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
前記チタン含有担体がシリカ上に分散されたチタンを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記担体が複数のチタン配位環境を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記担体が、
(a) チタン-シルセスキオキサン錯体またはシルセスキオキサン錯体の組合せ物をシリカ上に分散させること;
(b) チタンアルコキシドと促進剤金属アルコキシドとの混合物をシリカ担体上に分散させ、次いで前記担体を焼成すること;
(c) チタノシロキサンモノマーをシリカ担体上に分散させ、次いで前記担体を焼成すること、このとき前記チタノシロキサンモノマーは下記の式
(R1)xTi[O-Si(R2)3-y(R3)y]4-x
(式中、R1、R2、およびR3は、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、およびハロ部分から互いに独立的に選ばれ; xは0〜3の整数であり; そしてyは0〜3の整数である)で示される;または
(d) チタノシシロキサンダイマーまたはチタノシロキサンポリマーをシリカ担体上に分散させ、次いで前記担体を焼成すること、このとき前記チタノシロキサンダイマーまたはチタノシロキサンポリマーは下記の式
(R1)xTi[O-Si(R2)3-y(R3)y]4-x
(式中、R1、およびR2は、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、およびハロ部分から互いに独立的に選ばれ; R3は、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシおよびハロ部分および以下の部分
[O-Si(R2)3-y(R3)y]と[O-Ti(R2)3-y(R3)y]
[式中、R2、およびR3は、前記にて定義した通りであり;xは0〜3の整数であり; そしてyは0〜3の整数である]から選ばれる反復構造単位から選択される)で示される;または
(e)チタン含有ポリマーをシリカ担体上に分散させ、次いで前記担体を焼成すること、このとき前記チタン含有ポリマーは、チタン、ケイ素、および-(CR2)z基(式中、zは1〜20の範囲であり、各Rは、アルキル、アリール、アルコキシ、またはハライド基から独立的に選ばれる)の主鎖を含む;
によって製造される、請求項1〜9、13および14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記チタン含有担体が、チタン酸化物、促進剤金属チタネート、およびチタンを促進剤金属シリケート上に分散させて得られる担体から選ばれる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
担体上へのチタンの配合量が、担体の重量を基準として0.02重量%より多くて20重量%より少ない、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、シリカ、アルミナ、アルミノケイ酸塩、マグネシア、チタニア、カーボン、およびこれらの混合物から選ばれる第2の担体と共に押し出されるか、第2の担体に結合しているか、あるいは第2の担体に担持されている、請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記触媒が、ビーズ、ペレット、球体、ハニカム、モノリス、押出物、またはフィルムの形態をとっている、請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記触媒が、ビーズ、ペレット、球体、ハニカム、モノリス、押出物、またはフィルムの形態をとっている第2の担体に担持されている、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記触媒が、酸化された金の金金属への還元をできるだけ抑えるに足る条件下で、7〜14のpH値を有する水溶液および/または有機溶液を含浸もしくは付着沈積によってチタン含有担体上に分散させること、このときいずれか一方の溶液または両方の溶液が酸化された金を含んだ金化合物を含有する; ならびに所望により、促進剤である金属ハロゲン化物、リン酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、カルボン酸塩、およびこれらの混合物から選ばれる1種以上のアニオン性添加剤を前記担体上に分散させること; を含む方法によって製造される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
酸化された金の金金属への還元をできるだけ抑えるに足る条件下で、酸化された金を含んだ金化合物をチタン含有担体上に含浸または付着沈積によって分散させることを含む、請求項1記載の組成物の製造法。
【請求項23】
1種以上のアニオン性添加剤が担体上に分散されるか、あるいは促進剤とアニオン性添加剤との組合せ物が担体上に分散される、請求項22記載の製造法。

【公開番号】特開2011−31243(P2011−31243A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233489(P2010−233489)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【分割の表示】特願2000−609185(P2000−609185)の分割
【原出願日】平成12年4月7日(2000.4.7)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】