説明

酸化チタン構造体

【課題】比表面積が高く、溶液中への分散性がよく、耐熱性を有し、且つ、高強度の酸化チタン構造体及びその簡易な製造方法を提供する。
【解決手段】複数の酸化チタン結晶を含有する、アスペクト比が10以上の板状の構造体であり、長手方向側面の算術平均粗さ(Ra)が平均幅の10%未満である酸化チタン構造体。該酸化チタン構造体は、例えば、アスペクト比が10以上の板状酸化チタン結晶からなる酸化チタン構造体。該酸化チタン構造体は、3〜20mol/Lのアルカリ水溶液と、平均粒子径が50nm以下の酸化チタンとを、160℃より高い温度で接触させる工程を備える方法により製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感太陽電池、光触媒、センサー、樹脂強化材、金属イオン担持体等に用いられる酸化チタン構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンは、色素増感太陽電池、光触媒等に用いられている。特に、色素を修飾した酸化チタン等を活性電極に用いた色素増感太陽電池(例えば、特許文献1参照)は、安価で容易に製造できる太陽電池として注目を集めている。しかし、酸化チタンは、塗膜の強度が弱い。また、色素増感太陽電池に用いる場合には、活性表面積を大きくするために比表面積を大きくすることが試みられているが、酸化チタンの平均粒子径を小さくして比表面積を大きくすると、界面抵抗が大きくなってしまう。
【0003】
一方、中空状で大きいアスペクト比を有する酸化チタンナノチューブも知られている(特許文献2及び3)。しかし、従来の酸化チタンナノチューブは、直径及び長さが小さいため凝集しやすく、1本1本が独立した形での単離が困難であった。また、従来の酸化チタンナノチューブは分散性が悪いため、塗布、印刷等に使用するための溶液及びペーストの作製が困難であるだけでなく、耐熱性にも劣るため熱処理によりチューブ形状を保てない等の欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平8−15097号公報
【特許文献2】特許第3983533号
【特許文献3】特許第3513738号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、比表面積が高く、溶液中への分散性がよく、耐熱性を有し、且つ、高強度の酸化チタン構造体及びその簡易な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を鑑み、鋭意検討した結果、特定濃度のアルカリ水溶液中に、微小な酸化チタンを添加し、180〜370℃に加熱することで、上記課題を解決した酸化チタン構造体が得られることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の構成からなる。
項1.複数の酸化チタン結晶を含有する、アスペクト比が10以上の板状の構造体であり、長手方向側面の算術平均粗さ(Ra)が平均幅の10%未満である酸化チタン構造体。
項2.長手方向側面の算術平均粗さ(Ra)が5nm未満である項1に記載の酸化チタン構造体。
項3.酸化チタン結晶が多結晶体である、項1又は2に記載の酸化チタン構造体。
項4.向かい合う長辺同士が平行である、項1〜3のいずれかに記載の酸化チタン構造体。
項5.幅が20nm以上であり、長手方向の長さが1μm以上である、項1〜4のいずれかに記載の酸化チタン構造体。
項6.アナターゼ型結晶及び/又はTiO−B型結晶を含む、項1〜5のいずれかに記載の酸化チタン構造体。
項7.長手方向の長さが50nm以下である結晶を30%以上含む、項1〜6のいずれかに記載の酸化チタン構造体。
項8.比表面積が15m/g以上である、項1〜7のいずれかに記載の酸化チタン構造体。
項9.アルカリ金属の含有量が2000ppm以下である、項1〜8のいずれかに記載の酸化チタン構造体。
項10.(1)3〜20mol/Lのアルカリ水溶液と、平均粒子径が50nm以下の酸化チタンとを、160℃より高い温度で接触させる工程
を備える、項1〜9のいずれかに記載の酸化チタン構造体の製造方法。
項11.アルカリが、少なくとも水酸化ナトリウムを50重量%以上含む、項10に記載の酸化チタン構造体の製造方法。
項12.さらに、
(2)工程(1)で得られた酸化チタン構造体を水、酸及びイオン交換樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種と接触させる工程
を備える、項10又は11に記載の酸化チタン構造体の製造方法。
項13.酸が、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、フッ酸、酢酸、クエン酸、ギ酸及びシュウ酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項12に記載の酸化チタン構造体の製造方法。
項14.さらに、
(3)工程(2)で得られた酸化チタン構造体を150℃以上で焼成する工程
を備える、項12又は13に記載の酸化チタン構造体の製造方法。
項15.項1〜9のいずれかに記載の酸化チタン構造体、又は項10〜14のいずれかに記載の酸化チタン構造体の製造方法により得られる酸化チタン構造体を含む、多孔質酸化チタン被膜。
項16.さらに、平均粒子径が5〜100nmの酸化チタン微粒子を含む、項15に記載の多孔質酸化チタン被膜。
項17.導電性基板上に、色素が担持された項15又は16に記載の多孔質酸化チタン被膜が形成されている電極。
項18.項17に記載の電極を備える、色素増感太陽電池。
項19.項1〜9のいずれかに記載の酸化チタン構造体、又は項10〜14のいずれかに記載の酸化チタン構造体の製造方法により得られる酸化チタン構造体を用いた光触媒。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、比表面積が高く、溶液中への分散性がよく、耐熱性を有し、且つ、高強度の酸化チタン構造体及びその簡易な製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(a)従来公知の酸化チタンナノチューブ、及び(b)粒子状酸化チタンが連なってなる酸化チタンナノチューブの概念を示す模式図である。なお、(a)は酸化チタンのナノシートがロール状になったものも含む。
【図2】本発明の酸化チタン構造体について、(a)一部が結晶化した酸化チタンを複数含有するもの、(b)長さが短い結晶(長さが50nm以下)を複数種含有するもの、及び(c)主結晶(長さが50nmより大きいものも含む)中に長さが短い結晶(長さが50nm以下)を含有するものの概念を示す模式図である。
【図3】実施例1において、板状の酸化チタン構造体が得られていることを示す電子顕微鏡(TEM、200000倍)写真である。
【図4】実施例1の酸化チタン構造体の表面形状を示す電子顕微鏡(TEM、500000倍)写真である。
【図5】実施例1の酸化チタン構造体の表面形状を示す電子顕微鏡(TEM、50000倍)写真である。
【図6】実施例1の酸化チタン構造体の表面形状を示す電子顕微鏡(SEM、10000倍)写真である。
【図7】実施例1の酸化チタン構造体が多結晶体であることを示す電子顕微鏡(TEM、2000000倍)写真である。
【図8】比較例1の酸化チタン構造体の表面形状を示す電子顕微鏡(TEM、500000倍)写真である。
【図9】比較例1の酸化チタン構造体の表面形状を示す電子顕微鏡(SEM、10000倍)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.酸化チタン構造体
本発明の酸化チタン構造体は、複数の酸化チタン結晶を含有する、アスペクト比が10以上の板状の構造体である。また、長手方向側面の算術平均粗さ(Ra)が平均幅の10%未満である。
【0010】
本発明において、「酸化チタン」とは、二酸化チタン(TiO)のみを指すものではなく、三酸化二チタン(Ti);一酸化チタン(TiO);Ti、Ti等に代表される二酸化チタンから酸素欠損した組成のもの等も含むものである。また、末端OH基に代表されるように一部酸化チタンの合成に起因するTi−O−Ti以外の基を含んでいても良い。
【0011】
本発明において、「板状」とは、幅(短辺)に対して長さ(長辺)が大きければよく、必ずしも完全な平面である必要はなく、曲面であってもよい。また、本発明の酸化チタン構造体には、多少の凹凸を有していてもよい。ただし、筒状(チューブ状)のものは除く。
【0012】
本発明において、「複数の酸化チタン結晶を含有する酸化チタン構造体」は、通常は多結晶体である。本発明では、酸化チタン構造体が、複数の板状の結晶からなることを意図している。つまり、本発明の酸化チタン構造体は、図1(a)に示されるように、筒状で長手方向に結晶面が酸化チタン構造体の端から端まで続くような、従来公知の酸化チタンナノチューブでもないし、図1(b)に示されるように、粒子状結晶が連なってなるものではない。なお、粒子状結晶が連なってなる構造体と比較し、本発明の酸化チタン構造体は、電子を効率よく運ぶことができるとともに、溶液に分散する際及び塗膜を形成した際に充分な強度を発揮できる。
【0013】
<形状>
本発明の酸化チタン構造体のアスペクト比(幅に対する長さの比、長さ/幅)は10以上、好ましくは20以上である。アスペクト比が10未満では、高導電性、高強度等、高アスペクト比に起因する物性が得られない。また、塗布した場合の膜性を良好にするために、本発明の酸化チタン構造体のアスペクト比は、10000以下程度が好ましく、5000以下程度がより好ましい。
【0014】
酸化チタン構造体の幅は、酸化チタン構造体が互いに絡み合わないため分散性に優れる点から、20nm以上が好ましく、40nm以上がより好ましい。一方、光触媒等表面で反応を行う用途、色素増感太陽電池で表面に色素を担持させる目的のある場合等に好適に用いるためには、比表面積を高くするのが好ましいことから、本発明の酸化チタン構造体の幅は、500nm以下程度が好ましく、200nm以下程度がより好ましい。
【0015】
酸化チタン構造体の長さは、導電性に優れ、塗膜を形成した場合又は樹脂に混合した場合に強度が向上する点から、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。また、塗布した場合の膜性を良好にするために、本発明の酸化チタン構造体の長さは、100μm以下程度が好ましく、20μm以下程度がより好ましい。
【0016】
本発明の酸化チタン構造体は、直線的で折れ曲がりの少ないものが、酸化チタン構造体同士が絡み合いにくく、分散性を向上させる観点から好ましい。具体的には、電子顕微鏡観察(SEM又はTEM)による酸化チタン構造体像の長さをLとし、その酸化チタン構造体を伸ばした時の長さをLとした場合に、L/Lが0.7以上となる形状特性が好ましい。
【0017】
また、本発明の酸化チタン構造体は、向かい合う長辺同士が平行であることが好ましい。本明細書において、「平行」とは、完全に平行である必要はなく、略平行であるものも含まれる。具体的には、酸化チタン構造体の端部100nmを除いて、向かい合う長辺のなす角が0〜10°であることが好ましい。
【0018】
酸化チタン構造体の形状(アスペクト比、幅、長さ、L/L及び向かい合う長辺のなす角)は、例えば、電子顕微鏡(SEM又はTEM)観察等により測定することができる。
【0019】
また、本発明の酸化チタン構造体は、長手方向側面の算術平均粗さ(Ra)が平均幅の10%未満、好ましくは0〜5%程度である。具体的には、長手方向側面の算出平均粗さ(Ra)は、5nm未満、好ましくは0〜3nm程度とすればよい。なお、長手方向側面の算術平均粗さは、例えば、TEMの電子顕微鏡写真から画像解析装置を用いて、酸化チタン構造体の表面の直線状又は曲線状を測定することにより測定できる。
【0020】
<結晶構造>
本発明の酸化チタン構造体は、複数の酸化チタン結晶を含有する。本明細書において、「複数の酸化チタン結晶を含有する」とは、具体的には、図2(a)に示すように、一部が結晶化したものを複数含有するもの、図2(b)に示すように、複数種の長さが短い結晶(長さが50nm以下)を複数種混合したもの、図2(c)に示すように、主結晶(長さが50nmより大きい)中に長さが短い結晶(長さが50nm以下)を含有するもののいずれも包含する概念である。
【0021】
より詳細には、長手方向の長さが50nm以下である結晶を30%以上、特に50%以上含むことが好ましい。このように、長手方向の長さが50nm以下の結晶を30%以上含むことで、強度、導電性、比表面積を両立しながらも、凝集が起こりにくい。
【0022】
本発明の酸化チタン構造体の具体的な結晶構造は、特に制限されるわけではないが、色素増感太陽電池、光触媒等に使用する場合には、アナターゼ型、ブルッカイト型、TiO−B型のうち少なくとも1種を含むことが好ましく、アナターゼ型及び/又はTiO−B型を含むことがより好ましく、少なくともアナターゼ型を含むことがさらに好ましい。酸化チタン構造体の結晶構造は、例えば、X線回折、電子線回折、ラマン分光分析等により測定することができる。
【0023】
<その他>
本発明の酸化チタン構造体は、色素増感太陽電池に使用する場合には色素を多量に担持し、入射した光を効率よく吸収でき、光触媒に使用する場合には充分な光触媒能を得られる点から、比表面積は15m/g以上が好ましく、20m/g以上がより好ましい。比表面積は、大きいほうが好ましく、上限値は特に制限されないが、3000m/g程度である。比表面積は、BET法等により測定できる。
【0024】
本発明の酸化チタン構造体中のアルカリ金属の含有量は、色素増感太陽電池に使用する場合は、活性を確保する点から、2000ppm以下が好ましく、500ppm以下がより好ましい。なお、耐熱性を必要とする場合は、Naが多いほうが好ましいことがあるため、アルカリ金属含有量は、目的等に応じて適宜設定すればよい。アルカリ金属の含有量は、イオンクロマトグラフ法、ICP発光分光分析法等により測定できる。
【0025】
本発明の酸化チタン構造体は、より大きな電流が得られる点から、10MPa下での粉体抵抗は3×10Ω・m以下が好ましく、1×10Ω・m以下がより好ましい。粉体抵抗は、小さいほうが好ましく、下限値は特に制限されないが、0.1Ω・m程度である。なお、酸化チタン構造体の粉体抵抗の測定方法は、特に限定されないが、例えば、10MPaの圧力で厚さ0.3mmの平板状に加工し、ペレット間に電圧1Vを印加して流れる電流値を測ることにより測定することができる。
【0026】
従来の酸化チタンナノチューブ(アルカリ水溶液と酸化チタンとの接触温度が低いもの)は、500〜900℃程度の高温領域では形状が崩壊し、粒子状となってしまうため、比表面積及びアスペクト比を維持できないが、本発明の酸化チタン構造体は、500〜900℃程度の高温領域でも形状が崩れず、比表面積及びアスペクト比を維持できる。つまり、本発明の酸化チタン構造体は、高温においても、高比表面積、溶液中への分散性及び高強度を維持できる。
【0027】
2.酸化チタン構造体の製造方法
<工程(1)>
本発明の酸化チタン構造体の製造方法は、
(1)3〜20mol/Lのアルカリ水溶液と、平均粒子径が50nm以下の酸化チタン(A)とを、160℃より高い温度で接触させる工程
を備える。
【0028】
工程(1)では、具体的には、これに限定されるわけではないが、3〜20mol/Lのアルカリ水溶液中に、平均粒子径が50nm以下の酸化チタン(A)を添加し、その後、160℃より高い温度に加熱すればよい。
【0029】
アルカリ水溶液としては、原料の酸化チタンの表面を溶解し、反応を促進する点から、アルカリ金属の水酸化物の水溶液が好ましい。なお、アルカリとして、2種類以上のアルカリを含む水溶液としてもよく、水酸化ナトリウムを50重量%以上含む水溶液とするのがより好ましい。アルカリとして水酸化ナトリウム以外のアルカリを含む場合は、例えば、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を水酸化ナトリウムと併用させればよい。
【0030】
アルカリ水溶液の濃度は、原料の酸化チタンの表面を溶解し、かつ反応液の流動性を保つことにより、アスペクト比の大きい板状酸化チタン結晶からなるからなる酸化チタン構造体を、長時間かけることなく作製できる点から、3〜20mol/L、好ましくは5〜15mol/L程度である。なお、2種類以上のアルカリを含む水溶液を使用する場合には、アルカリ水溶液の濃度は、全アルカリの濃度の総和である。
【0031】
使用する酸化チタン(A)の形態は、特に制限はない。公知又は市販の酸化チタン微粒子をそのまま使用してもよいし、粒径が大きい場合は遊星ボールミル、ペイントシェーカー等を用いて乾式又は湿式で粉砕して用いても良い。
【0032】
また、酸化チタン(A)は、少なくともアナターゼ型を示すものが好ましい。
【0033】
使用する酸化チタン(A)の平均粒子径は、より低温、より短時間で本発明の酸化チタン構造体を製造できる点から、50nm以下、好ましくは30nm以下である。使用する酸化チタン(A)の平均粒子径が大きすぎると、本発明の酸化チタン構造体を製造するのが困難である。酸化チタン(A)の平均粒子径は、小さいほうが好ましく、下限値は特に設定されないが、通常3nm程度である。酸化チタン(A)の平均粒子径は、例えば、電子顕微鏡(SEM又はTEM)観察等により測定することができる。
【0034】
アルカリ水溶液中に添加する酸化チタン(A)の量は、特に制限されないが、反応液の流動性と生産性とのバランスを取る観点から、0.01〜1mol/L程度、好ましくは0.05〜0.5mol/Lとすればよい。
【0035】
アルカリ水溶液と酸化チタンとを接触させる温度は、160℃より高い温度である。接触温度の上限値は、特に制限はないが、通常水の臨界点である374℃である。好ましくは、180〜370℃程度、より好ましくは200〜300℃程度とすればよい。接触温度が低すぎると本発明の酸化チタン構造体を製造することはできず、酸化チタン(A)が凝集した塊状の構造体、又は幅が非常に小さい酸化チタン構造体が絡み合い、全体として塊状の構造体しか製造できない。つまり、高アスペクト比かつ高分散性の酸化チタン構造体は得られない。特許文献2及び3では、160℃以上とするとチューブ状のものが生成されにくくなる(特許文献2の[0024]及び特許文献3の[0024])とされているが、逆に、低温で接触させると、酸化チタン構造体同士が絡み合ってしまうため、高アスペクト比且つ高分散性の酸化チタン構造体は得られない。また、接触温度が高すぎると、使用するエネルギー量と安全性の面で望ましくない。
【0036】
アルカリ水溶液と酸化チタン(A)とを接触させる時間は、特に制限はなく、1〜24時間程度とすればよい。
【0037】
本発明では、使用する酸化チタン(A)の平均粒子径、接触温度及び接触時間の好ましい範囲には相関関係があり、平均粒子径が大きめの酸化チタン(A)を使用する場合には、接触温度を高めとすることが好ましい。例えば、平均粒子径7nmの酸化チタン(A)を用いて接触時間を12時間とした場合には、接触温度を160℃より高い温度とすればよいが、平均粒子径25nmの酸化チタン(A)を用いて接触時間を12時間とした場合には、接触温度を185℃以上とすることが好ましい。
【0038】
<工程(2)>
本発明の酸化チタン構造体の製造方法においては、上記の工程(1)の後、さらに、
(2)工程(1)で得られた酸化チタン構造体を水、酸及びイオン交換樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種と接触させる工程
を備えることが好ましい。
【0039】
具体的には、水又は酸を使用する場合には、例えば、工程(1)で得られた酸化チタン構造体を、水又は酸性水溶液中に添加すればよく、イオン交換樹脂を使用する場合には、イオン交換樹脂を充填したカラムに生成物を含む液を通過させてもよく、イオン交換樹脂と混合して撹拌するだけでもよい。
【0040】
アルカリ水溶液としてアルカリ金属の水酸化物を用いた場合には、工程(1)で得られる酸化チタン構造体中に、アルカリ金属が含まれることがあるが、この工程により、酸化チタン構造体中に含まれるアルカリ金属を取り除くことができる。
【0041】
酸としては、アルカリ金属イオンとプロトンを交換できるプロトン酸が好ましい。具体的には、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、フッ酸、酢酸、クエン酸、ギ酸、シュウ酸等の一般的な無機酸又は有機酸が挙げられる。これらの酸は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0042】
イオン交換樹脂としては、例えば、ダイヤイオン(三菱化学(株)製;登録商標)、アンバーライト(ローム・アンド・ハース社製)等の陽イオン交換樹脂等が挙げられる。これらのイオン交換樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0043】
水、酸及びイオン交換樹脂のなかでも、工程(1)で得られた酸化チタン構造体中に含まれるアルカリ金属を短時間で取り除くことができる点から、酸を用いることが好ましく、塩酸、硝酸、酢酸、シュウ酸等がより好ましい。ただし、酸を用いる場合には、工程(1)で得られた酸化チタン構造体を酸と接触させた後、酸化チタン構造体を水洗して酸を除去することが好ましい。
【0044】
工程(1)で得られた酸化チタン構造体と水、酸及びイオン交換樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種とを接触させる時間は、1〜48時間程度とすればよく、充分にアルカリ金属を除去する必要がある場合は8時間以上がより望ましい。
【0045】
<工程(3)>
本発明の酸化チタン構造体の製造方法においては、上記の工程(2)の後、さらに、
(3)工程(2)で得られた酸化チタン構造体を150℃以上で焼成する工程
を備えることが好ましい。
【0046】
工程(2)で得られた酸化チタン構造体は、一般的に行われる熱風乾燥、減圧乾燥等により乾燥を行ってもよいが、加熱して焼成することが好ましい。これにより、酸化チタン構造体に残存するTi−OH基の脱水反応を行わせることができる。
【0047】
焼成温度は、酸化チタン構造体に残存するTi−OH基の脱水反応を行わせることができる点から150℃以上が好ましく、酸化チタン構造体の結晶性を向上させられる点から300℃以上がより好ましい。なお、焼成温度の上限値は特に制限はないが、通常1000℃程度である。
【0048】
このようにして得られる酸化チタン構造体は、上記の「1.酸化チタン構造体」にて説明したような特性を有するものである。
【0049】
3.多孔質酸化チタン被膜
本発明の多孔質酸化チタン被膜は、本発明の酸化チタン構造体を含むものである。なお、本発明の多孔質酸化チタン被膜は、必ずしも本発明の酸化チタン構造体のみからなる必要はなく、例えば、平均粒子径が1〜500nmの酸化チタン微粒子(B);公知の酸化チタンナノチューブ;公知の酸化チタンナノロッド;公知の酸化チタンナノファイバー;酸化チタンナノ粒子のチューブ状集合体等の高アスペクト比を有する酸化チタン構造体等を含んでいてもよい。
【0050】
特に、本発明の酸化チタン構造体と酸化チタン微粒子(B)とを混合する場合には、本発明の多孔質酸化チタン被膜の強度を向上させ、クラック等の不良を抑制できる。
【0051】
なお、本発明の多孔質酸化チタン被膜中に、本発明の酸化チタン構造体と他の成分とを含ませる場合には、本発明の多孔質酸化チタン被膜は、「本発明の酸化チタン構造体と他の成分とを含む層からなるもの」であってもよいし、「他の成分を含む層と、本発明の酸化チタン構造体を含む層の2層からなるもの」であってもよい。もちろん、3層以上の構成を有していてもよい。
【0052】
本発明の多孔質酸化チタン被膜中に、本発明の酸化チタン構造体とその他の成分とを含ませる場合、本発明の酸化チタン構造体の含有量を加える目的や組み合わせるその他の成分の種類によって異なるが、導電性及び強度を向上させるために、本発明の酸化チタン構造体の含有量を、0.1〜95重量%程度、好ましくは1〜90重量%程度とすればよい。光の拡散効果を強くしたい場合は本発明の酸化チタン構造体の比率を大きくし(例えば5〜95重量%程度)、皮膜の透明性をできるだけ保持したい場合や、比表面積を大きくする必要がありかつ組み合わせるその他の成分の比表面積の方が大きい場合は、本発明の酸化チタン構造体の比率を少なめに(例えば1〜20重量%程度)すればよい。
【0053】
本発明の多孔質酸化チタン被膜の製造方法としては、特に制限されるわけではないが、例えば、本発明の酸化チタン構造体を含む被膜形成用組成物を作製し、適当な基板上に当該被膜形成用組成物を塗布及び乾燥させればよい。また、乾燥させた後、得られた被膜に、必要に応じて加熱処理を施して焼成させてもよい。
【0054】
基板としては、特に制限はなく、常温においてほぼ平滑な面を有するものであればよく、その面は平面あるいは曲面であってもよく、また応力によって変形するものであってもよい。使用できる基板の具体例としては、例えば、各種ガラス;PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等の透明樹脂等が挙げられる。また、色素増感太陽電池用の負極材料として本発明の多孔質酸化チタン被膜を用い、かつ対極側から光を取り入れる構造の場合は必ずしも基板が透明である必要はなく、導電性のあるアルミニウム、チタン、クロム、ステンレス等を使用しても良い。
【0055】
塗布方法は特に制限はなく、スクリーン印刷、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、スキージ法等の常法を採用すればよい。
【0056】
また、乾燥条件及び焼成条件は特に制限はなく、乾燥温度を60〜250℃程度、焼成温度を250〜800℃程度とすればよい。
【0057】
本発明の多孔質酸化チタン被膜の作製に当たっては、得られる被膜の膜厚が0.5〜50μm程度となるように塗布すればよい。
【0058】
なお、本発明の多孔質酸化チタン被膜を、酸化チタン微粒子(B)を含む層と、本発明の酸化チタン構造体を含む層の2層を有するものとする場合には、例えば、酸化チタン微粒子(B)を含む被膜形成用組成物を基板上に塗布及び乾燥した後、酸化チタン微粒子(B)を含む層の上に、本発明の酸化チタン構造体を含む被膜形成用組成物を塗布及び乾燥すればよい。もちろん、3層以上からなる多孔質酸化チタン被膜を形成する場合には、塗布及び乾燥工程を3回以上に分けて行えばよい。
【0059】
4.電極
本発明の電極を形成する際には、上述の多孔質酸化チタン被膜を、樹脂基板又はガラス基板の上に形成する。
【0060】
樹脂基板としては、導電性の樹脂基板であれば特に制限されないが、例えば、ポリエチレンナフタレート樹脂基板(PEN樹脂基板)、ポリエチレンテレフタレート樹脂基板(PET樹脂基板)等のポリエステル;ポリアミド;ポリスルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリフェニレンサルファイド;ポリカーボネート;ポリイミド;ポリメチルメタクリレート;ポリスチレン;トリ酢酸セルロース;ポリメチルペンテン等が挙げられる。
【0061】
ガラス基板としても特に制限はなく、公知又は市販のものを使用すればよく、無色又は有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等のいずれでもよい。
【0062】
この樹脂基板又はガラス基板としては、板厚が0.05〜10mm程度のものを使用すればよい。
【0063】
本発明では、多孔質酸化チタン被膜は、樹脂基板又はガラス基板の表面上に直接形成されていてもよいが、透明導電膜を介して形成されていてもよい。
【0064】
透明導電膜としては、例えば、スズドープ酸化インジウム膜(ITO膜)、フッ素ドープ酸化スズ膜(FTO膜)、アンチモンドープ酸化スズ膜(ATO膜)アルミニウムドープ酸化亜鉛膜(AZO膜)、ガリウムドープ酸化亜鉛膜(GZO膜)等が挙げられる。これらの透明導電膜を介することで、発生した電流を外部にとりだすことが容易となる。これらの透明導電膜の膜厚は、0.02〜10μm程度とするのが好ましい。
【0065】
本発明の電極としては、例えば、以下に示す2態様が挙げられる。
【0066】
<態様1>
樹脂基板又はガラス基板上に、本発明の多孔質酸化チタン被膜を、透明導電膜を介して形成し、本発明の電極とすることができる。なお、樹脂基板、ガラス基板及び透明導電膜は上述したとおりのものである。
【0067】
具体的には、以下のように、電極を形成すればよい。
【0068】
まず、樹脂基板又はガラス基板上に、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、ゾルーゲル法、ナノ粒子コンポジット等により透明導電膜を形成する。これにより得られる基板の表面抵抗は、50Ω/sq.以下とすることが好ましい。
【0069】
そして、その上に、上述の被膜形成用組成物を塗布及び乾燥し、必要に応じて加熱させればよい。樹脂基板を使用する場合には、乾燥条件及び加熱条件は、150℃以下とすればよい。
【0070】
この際、得られる被膜の膜厚が2〜40μm程度となるように塗布することが、クラック抑制及び基板との密着性の観点から好ましい。
【0071】
<態様2>
樹脂基板又はガラス基板上に、本発明の多孔質酸化チタン被膜を直接形成し、さらにその上に、多孔質金属膜を形成して本発明の電極としてもよい。なお、樹脂基板及びガラス基板は上述したとおりのものである。また、樹脂基板又はガラス基板上に、本発明の多孔質酸化チタン被膜を形成する際には、上記態様1と同様の方法を採用することができる。
【0072】
態様2で使用できる多孔質金属膜としては、ヨウ素イオン、臭素イオン等の電解液中に含まれるイオンに侵されない(反応しない)金属であれば特に限定されないが、例えば、チタン、タングステン、白金、金等が挙げられる。これらの多孔質金属膜を形成することで、発生した電流を外部にとりだすことが容易となる。これらの多孔質金属膜の表面低効率は、特に限定されないが、10Ω/sq.以下であればよく、膜厚も特に限定されないが、150nm以上とするのが好ましい。
【0073】
樹脂基板又はガラス基板上に形成された多孔質酸化チタン被膜のさらに上に、多孔質金属膜を形成するには、スパッタ法等の薄膜形成法により形成すればよい。
【0074】
5.色素増感太陽電池
本発明の色素増感太陽電池は、本発明の電極の多孔質酸化チタン被膜の上に対向電極(対極)を形成し、これら電極間を、ヨウ素及びヨウ化物又は臭素及び臭化物を含むアセトニトリル溶液、エチレンカーボネート溶液、又はプロピレンカーボネート溶液、及びそれらの混合溶液等の電解液で満たすことにより光電変換素子を作製し、当該光電変換素子をモジュール化するとともに、所定の電気配線を設けることによって得られる。
【0075】
このように、本発明の電極を負極として用いることにより、発生した電子を速やかに負極側の導電ガラスに運ぶことができる。また、負極材料として酸化チタン微粒子を使用した場合と比較し、光を拡散しやすくし、光利用効率を向上させることができる。また、負極に適度な隙間を形成し、電解液の拡散を容易にすることができる。さらに、負極の多孔質酸化チタン被膜の強度を向上させ、リーク電流等の要因となるクラックを防止することもできる。
【0076】
対極は、導電性材料からなる単層構造でもよいし、導電層と基板とから構成されていてもよい。基板としては、特に限定されず、材質、厚さ、寸法、形状等は目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、無色又は有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、樹脂でも良い。かかる樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテン等が挙げられる。また、電荷輸送層上に直接導電性材料を塗布、メッキ又は蒸着(PVD、CVD)して対極を形成してもよい。
【0077】
なお、本発明の電極を対極として用いることもできる。本発明の電極を対極として使用すれば、触媒の有効面積の拡大、電解液の拡散の促進、対極の触媒層の強度の向上等の効果が期待できる。
【0078】
導電性材料としては、白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、銀、タングステン等の金属や、炭素材料、導電性有機物等の比抵抗の小さな材料が用いられる。
【0079】
また、対極の抵抗を下げる目的で金属リードを用いても良い。金属リードは白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、銀、タングステン等の金属からなるのが好ましく、アルミニウム又は銀からなるのが特に好ましい。
【0080】
本発明では、対極を形成する前に、本発明の電極の光吸収効率を向上すること等を目的として、多孔質酸化チタン被膜に色素を担持(吸着、含有など)させることが好ましい。
【0081】
色素は、可視域や近赤外域に吸収特性を有し、半導体層の光吸収効率を向上(増感)させる色素であれば特に限定されないが、金属錯体色素、有機色素、天然色素、半導体等が好ましい。また、多孔質酸化チタン被膜への吸着性を付与するために、色素の分子中にカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホニル基、ホスホニル基、カルボキシルアルキル基、ヒドロキシアルキル基、スルホニルアルキル基、ホスホニルアルキル基等の官能基を有するものが好適に用いられる。
【0082】
金属錯体色素としては、例えば、ルテニウム、オスミウム、鉄、コバルト、亜鉛、水銀の錯体(例えば、メリクルクロム等)や、金属フタロシアニン、クロロフィル等を用いることができる。また、有機色素としては、例えば、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、金属フリーフタロシアニン系色素等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。色素として用いることができる半導体としては、i型の光吸収係数が大きなアモルファス半導体や直接遷移型半導体、量子サイズ効果を示し、可視光を効率よく吸収する微粒子半導体が好ましい。通常、各種の半導体や金属錯体色素や有機色素の一種、又は光電変換の波長域をできるだけ広くし、かつ変換効率を上げるため、二種類以上の色素を混合することができる。また、目的とする光源の波長域と強度分布に合わせるように、混合する色素とその割合を選ぶことができる。
【0083】
色素を多孔質酸化チタン被膜に吸着させる方法としては、例えば、溶媒に色素を溶解させた溶液を、多孔質酸化チタン被膜上にスプレーコートやスピンコート等により塗布した後、乾燥する方法により形成することができる。この場合、適当な温度に基板を加熱しても良い。また、多孔質酸化チタン被膜を溶液に浸漬して吸着させる方法を用いることもできる。浸漬する時間は色素が充分に吸着すれば特に制限されることはないが、好ましくは10分〜30時間、より好ましくは1〜20時間である。また、必要に応じて浸漬する際に溶媒や基板を加熱しても良い。溶液にする場合の色素の濃度としては、1〜1000mmol/L、好ましくは10〜500mmol/L程度である。
【0084】
用いる溶媒は特に制限されるものではないが、水及び有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル等のニトリル類;ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、2−ブタノン等のケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、ジメトキシエタン、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸エチルジメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリペンチル、リン酸トリへキシル、リン酸トリヘプチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリノニル、リン酸トリデシル、リン酸トリス(トリフフロロメチル)、リン酸トリス(ペンタフロロエチル)、リン酸トリフェニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0085】
色素間の凝集等の相互作用を低減するために、界面活性剤としての性質を持つ無色の化合物を色素吸着液に添加し、多孔質酸化チタン被膜に共吸着させてもよい。このような無色の化合物の例としては、カルボキシル基やスルホ基を有するコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸等のステロイド化合物やスルホン酸塩類等が挙げられる。
【0086】
未吸着の色素は、吸着工程後、速やかに洗浄により除去するのが好ましい。洗浄は湿式洗浄槽中でアセトニトリル、アルコール系溶媒等を用いて行うのが好ましい。
【0087】
色素を吸着させた後、アミン類、4級アンモニウム塩、少なくとも1つのウレイド基を有するウレイド化合物、少なくとも1つのシリル基を有するシリル化合物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を用いて、多孔質酸化チタン被膜の表面を処理してもよい。好ましいアミン類の例としては、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。好ましい4級アンモニウム塩の例としては、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド等が挙げられる。これらは有機溶媒に溶解して用いてもよく、液体の場合はそのまま用いてもよい。
【0088】
6.他の用途
本発明の酸化チタン構造体は、色素増感太陽電池以外にも、光触媒、センサー、樹脂強化材、金属イオン担持体等に用いることができる。その際、上記の「3.多孔質酸化チタン被膜」等と同様に、本発明の酸化チタン構造体を単独で用いてもよいし、本発明の酸化チタン構造体と酸化チタン微粒子等とを混合して用いてもよい。
【0089】
本発明の酸化チタン構造体と酸化チタン微粒子等とを混合して用いれば、強度を向上させ、クラック等の不良を抑制することができる。
【実施例】
【0090】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
【0091】
実施例1
平均粒子径が7nmの酸化チタン微粒子0.5gを40gの蒸留水を加え撹拌した後、16gのNaOHを加えさらに5分間撹拌した(酸化チタンの濃度:0.16mol/L、アルカリ水溶液の濃度:10mol/L)。この混合液をPTFEライニングしたSUS316製圧力容器に入れて250℃加熱炉中で12時間静置したところ、白色の沈殿が得られた。
【0092】
この沈殿を500mlの蒸留水中で激しく撹拌した後、減圧濾過するという操作を3回繰り返した後、1Mの塩酸500g中で24時間撹拌した。さらに得られた物質を500mlの蒸留水中で撹拌した後減圧濾過するという操作を5回繰り返し、白色のケーキが得られた。この白色のケーキをTEMにて観測したところ、図3に示すとおり、板状の物質が形成されており、チューブ状ではないことが確認された。
【0093】
得られた白色のケーキを150℃で減圧乾燥し、さらに500℃で熱処理(焼成)したところ、0.4gの白色の物質が得られた。この物質をSEM及びTEMで観察したところ、図4〜6に示すとおり、酸化チタン多結晶からなる、平均幅65nm、平均長さ5μmの大きいアスペクト比(平均アスペクト比:77)を有する直線的で折れ曲がりの少なく(L/L:0.7以上)、向かい合う長辺同士が平行(なす角が0〜10°)の板状の物質であることがわかった。また、図7に示すとおり、多結晶体であることが確認された。
【0094】
また、得られた酸化チタン構造体をTEM写真の画像処理を用いて、長手方向側面の算術平均粗さを測定したところ、0.6nm(平均幅の0.9%)であった。
【0095】
得られた酸化チタン構造体をBET法にて比表面積を測定したところ30m/gであり、ICP発光分光分析法にてアルカリ含有量を測定したところ検出限界以下(500ppm以下)であった。
【0096】
得られた酸化チタン構造体を800℃で焼成したところ、平均長さが3μmとなったが、大きいアスペクト比を有する形状(平均アスペクト比:46)を維持しており、耐熱性に優れることが見出された。また、X線結晶構造解析を行ったところ、アナターゼ型であることがわかった。
【0097】
実施例2
平均粒子径が25nmの酸化チタン微粒子0.5gを40gの蒸留水を加え撹拌した後、16gのNaOHを加えさらに5分間撹拌した(酸化チタンの濃度:0.16mol/L、アルカリ水溶液の濃度:10mol/L)。この混合液をPTFEライニングしたSUS316製圧力容器に入れて250℃加熱炉中で12時間静置したところ、白色のケーキが得られた。
【0098】
この沈殿を500mlの蒸留水中で激しく撹拌した後、減圧濾過するという操作を3回繰り返した後、1Mの塩酸500g中で24時間撹拌した。さらに得られた物質を500mlの蒸留水中で撹拌した後減圧濾過するという操作を5回繰り返し、得られた白色のケーキを150℃で減圧乾燥し、さらに500℃で熱処理(焼成)したところ、0.4gの白色の物質が得られた。
【0099】
この物質をSEM及びTEMで観察したところ、酸化チタン多結晶からなる、平均幅70nm、平均長さ5μmの大きいアスペクト比(平均アスペクト比:71)を有する直線的で折れ曲がりの少なく(L/L:0.7以上)、向かい合う長辺同士が平行(なす角が0〜10°)の板状の物質であることがわかった。
【0100】
また、得られた酸化チタン構造体をTEM写真の画像処理を用いて、長手方向側面の算術平均粗さを測定したところ、0.5nm(平均幅の0.7%)であった。
【0101】
得られた酸化チタン構造体をBET法にて比表面積を測定したところ29m/gであり、ICP発光分光分析法にてアルカリ含有量を測定したところ検出限界以下(500ppm以下)であった。
【0102】
また、X線結晶構造解析を行ったところ、アナターゼ型とTiO−B型を含む結晶構造であることがわかった。
【0103】
実施例3
酸化チタン微粒子とNaOHとの反応温度を200℃とすること以外は実施例1と同様にして、0.4gの白色の物質が得られた。
【0104】
この物質をSEM及びTEMで観察したところ、酸化チタン多結晶からなる、平均幅65nm、平均長さ4.5μmの大きいアスペクト比(平均アスペクト比:69)を有する直線的で折れ曲がりの少なく(L/L:0.7以上)、向かい合う長辺同士が平行(なす角が0〜10°)の板状の物質であることがわかった。
【0105】
また、得られた酸化チタン構造体をTEM写真の画像処理を用いて、長手方向側面の算術平均粗さを測定したところ、0.7nm(平均幅の1.1%)であった。
【0106】
得られた酸化チタン構造体をBET法にて比表面積を測定したところ35m/gであり、ICP発光分光分析法にてアルカリ含有量を測定したところ検出限界以下(500ppm以下)であった。
【0107】
また、X線結晶構造解析を行ったところ、アナターゼ型とTiO−B型を含む結晶構造であることがわかった。
【0108】
実施例4
酸化チタン微粒子とNaOHとの反応温度を180℃とすること以外は実施例1と同様にして、0.4gの白色の物質が得られた。
【0109】
この物質をSEM及びTEMで観察したところ、酸化チタン多結晶からなる、平均幅60nm、平均長さ4μmの大きいアスペクト比(平均アスペクト比:67)を有する直線的で折れ曲がりの少なく(L/L:0.7以上)、向かい合う長辺同士が平行(なす角が0〜10°)の板状の物質であることがわかった。
【0110】
また、得られた酸化チタン構造体をTEM写真の画像処理を用いて、長手方向側面の算術平均粗さを測定したところ、0.8nm(平均幅の1.3%)であった。
【0111】
得られた酸化チタン構造体をBET法にて比表面積を測定したところ40m/gであり、ICP発光分光分析法にてアルカリ含有量を測定したところ検出限界以下(500ppm以下)であった。
【0112】
また、X線結晶構造解析を行ったところ、アナターゼ型とTiO−B型を含む結晶構造であることがわかった。
【0113】
比較例1
平均粒子径が7nmの酸化チタン微粒子0.5gを40gの蒸留水を加え撹拌した後、16gのNaOHを加えさらに5分間撹拌した(酸化チタンの濃度:0.16mol/L、アルカリ水溶液の濃度:10mol/L)。この混合液を、還流管を付けたガラス製3ツ口フラスコに入れ、120℃のオイルバスに浸漬し、常圧で12時間静置し、反応を行ったところ、白色の沈殿が得られた。
【0114】
この沈殿を500mlの蒸留水中で激しく撹拌した後、減圧濾過するという操作を3回繰り返した後、1Mの塩酸500g中で24時間撹拌した。さらに得られた物質を500mlの蒸留水中で撹拌した後減圧濾過するという操作を5回繰り返し、得られた白色のケーキを150℃で減圧乾燥したところ、0.4gの白色の物質(粉上)が得られた。比較例1では、焼成するとさらに凝集が進行すると考えられたため、焼成は行わなかった。
【0115】
この物質をTEMで観察したところ、図8に示すとおり、単結晶のシートが筒状に丸まった形のものが、絡み合っていることがわかった。また、SEMで観察したところ、図9に示すとおり、塊状のものしか見られなかった。
【0116】
また、得られた酸化チタン構造体の算術平均粗さを測定しようとしたが、直線形状となっている部分が極めて少なく、また強く凝集しているため測定することができなかった。
【0117】
この絡み合った塊状のものを、乳鉢ですりつぶした後、蒸留水中に添加して超音波分散により、シートの分離を試みたが、塊状のままであり、均一に分散させることは不可能であった。
【0118】
得られた酸化チタン構造体を800℃で焼成したところ、筒状のシート構造の形状が崩壊し、粒子状に変化していたため、耐熱性に劣ることが見出された。
【0119】
比較例2
酸化チタン微粒子とNaOHとの反応温度を150℃とすることと800℃の焼成を行わないこと以外は実施例1と同様にして、0.4gの白色の物質(粉状)が得られた。
【0120】
この物質をTEMで観察したところ、単結晶のシートが筒状に丸まった形のものが、絡み合っていることがわかった。また、SEMで観察したところ、塊状のものしか見られなかった。
【0121】
また、得られた酸化チタン構造体の算術平均粗さを測定しようとしたが、直線形状となっている部分が極めて少なく、また強く凝集しているため測定することができなかった。
【0122】
また、比較例1の酸化チタン構造体と同様に、この絡み合った塊状のものを、乳鉢ですりつぶした後、蒸留水中に添加して超音波分散により、シートの分離を試みたが、塊状のままであり、均一に分散させることは不可能であった。
【0123】
比較例3
150nmの酸化チタン微粒子を用いること以外は実施例1と同様にして、0.4gの白色の物質(粉状)が得られた。
【0124】
この物質をSEM及びTEMで観察したが、特定のナノ構造は見られず、塊状のものが形成されているだけであった。
【0125】
また、得られた酸化チタン構造体の算術平均粗さを測定しようとしたが、直線形状となっている部分が極めて少なく、また強く凝集しているため測定することができなかった。
【0126】
実験例1:分散性
実施例1〜4及び比較例1〜3の酸化チタン構造体について、蒸留水に1重量%混合し、超音波分散機((株)エスエムテー製のUH−600S)とφ20mmのチップとを用いて300Wで5分間超音波分散した。その後、実施例1〜4の酸化チタン構造体は、72時間経過してもまだ分散していた。それに対して、比較例1〜3の酸化チタン構造体は、3分後には上澄みが透明になり分離が開始した。参考として、通常の平均粒子径が7nmのパウダー状酸化チタンの場合は、すぐに分離が開始し、10分で完全に沈殿する。
【0127】
実験例2:強度
実施例1の酸化チタン構造体、比較例1の酸化チタン構造体、及び平均粒子径が7nmの酸化チタンナノ粒子を用いて以下のように塗膜を形成し、塗膜の強度、密着性を比較した。
(1)酸化チタン構造体又は酸化チタンナノ粒子を水に1wt%の比率で投入し、超音波分散機((株)エスエムテー製のUH−600S)とφ20mmのチップとを用いて300Wで10分間超音波分散した。
(2)得られた分散液をアルカリ洗剤とアセトンとで洗浄したガラス板上に塗布し、100℃のホットプレートで10分乾燥を行った。
(3)続いて400℃のホットプレートで60分焼成を行った。
(4)得られた塗膜の外観を目視及びSEMにて観察し、クラック、剥がれの有無を観察した。また、塗膜にメンディングテープ(住友スリーエム(株)製)を貼り付けし、剥がすことによる密着性のテストを行った。
【0128】
(塗膜外観)
○:目視でクラックなし、かつSEM観察でクラックの数が10未満/1mm平方。
△:目視でクラックあり、もしくはSEM観察でクラックの数が10以上/1mm平方。
×:目視でクラックあり、かつ基板からの塗膜剥がれあり。
【0129】
(塗膜密着性)
○:メンディングテープで基板が露出する部分(完全に剥がれる部分)がなく、重量減少が20%未満。
△:メンディングテープで基板が露出する部分がある、もしくは重量減少が10%以上。
×:メンディングテープで基板が露出する部分がある、かつ重量減少が50%以上。
【0130】
【表1】

【0131】
上記の結果、実施例1の酸化チタン構造体は、添加剤、分散剤の添加や基板側への加工を行うことなく、強度に優れた塗膜を形成することが可能であることがわかる(実験例2−1)。一方、比較例1の酸化チタン構造体、及び酸化チタンナノ粒子はクラック、剥がれが発生する(実験例2−3、2−4)。
【0132】
これは、本発明の酸化チタン構造体がそれ自体の強度が優れていること、焼成により殆どサイズが変わらない、凝集も起こらないのに対して、比較例1の酸化チタン構造体は焼成でサイズの変化や凝集が起こることにより、7nm酸化チタンナノ粒子は焼成で塗膜の収縮が発生し粒子間の結合が切れることにより、塗膜の強度が保てないと考えられる。
【0133】
また、実施例1の酸化チタン構造体を酸化チタンナノ粒子に混合することによって塗膜の強度を向上させることができる。これは強度に優れた物質が塗膜中に均一に分散することにより、塗膜の収縮を抑えていると考えられる。
【0134】
実験例3:色素増感太陽電池
<実施例1の酸化チタン構造体>
シート抵抗15Ω/sq.の導電性ガラス基板の上に、酸化チタン(石原産業(株)製のST−21、平均粒子径20nm)2.9g、実施例1で得られた酸化チタン構造体0.1g、酢酸0.5g、エチルセルロース1.5g、α−テルピネオール10gを混合して得られた酸化チタンペーストを5mm角×厚み16μmに塗布し、125℃で乾燥した。
【0135】
この塗膜を500℃空気中で1h焼成し、多孔質の酸化チタン膜を得た。
【0136】
得られた酸化チタン膜をルテニウム色素(Rutenium535-bisTBA:SOLARONIX社製)/t−ブタノール・アセトニトリル(1:1)溶液(濃度:3.0×10−4mol/L)に16時間浸漬し、酸化チタンに色素を担持させた。
【0137】
この導電ガラスを、Ptスパッタを行った導電ガラス(ジオマテック(株)製)に厚み25μmで酸化チタン層を囲うような形に切り抜いたアイオノマー製フィルムを介して張り合わせ、中に0.1mol/Lのヨウ化リチウム、0.03mol/Lのヨウ素、0.5mol/Lの4−tert−ブチルピリジンをアセトニトリルに溶解させた電解液を封入した。
【0138】
セルに疑似太陽光(1kW/m)を照射し、電流電圧特性を測定したところ、6.8%の光電変換効率を得た。
【0139】
<酸化チタン構造体なし>
シート抵抗15Ω/sq.の導電性ガラス基板の上に、酸化チタン(石原産業(株)製ST−21、平均粒子径20nm)3.0g、酢酸0.5g、エチルセルロース1.5g、α−テルピネオール10gを混合して得られた酸化チタンペーストを5mm角×厚み16μmに塗布し、125℃で乾燥した。
【0140】
この塗膜を500℃空気中で1h焼成し、多孔質の酸化チタン膜を得た。
【0141】
この導電ガラスを、Ptスパッタを行った導電ガラス(ジオマテック(株)製)に厚み25μmで酸化チタン層を囲うような形に切り抜いたアイオノマー製フィルムを介して張り合わせ、中に0.1mol/Lのヨウ化リチウム、0.03mol/Lのヨウ素、0.5mol/Lの4−tert−ブチルピリジンをアセトニトリルに溶解させた電解液を封入した。
【0142】
セルに疑似太陽光(1kW/m)を照射し、電流電圧特性を測定したところ、5.5%の光電変換効率を得た。
【0143】
<比較例1の酸化チタン構造体>
酸化チタン構造体を比較例1で得られたものに変更すること以外は、実施例1と同様にして実験を行った。
【0144】
セルに疑似太陽光(1kW/m)を照射し、電流電圧特性を測定したところ、3.4%の光電変換効率を得た。
【0145】
負極をSEMを用いて観察したところ、クラックが観察された。酸化チタン構造体の焼成に伴う凝集が原因であると思われ、このクラックを通じて導電ガラスから電解液中に電流漏れが生じていると推測される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の酸化チタン結晶を含有する、アスペクト比が10以上の板状の構造体であり、長手方向側面の算術平均粗さ(Ra)が平均幅の10%未満である酸化チタン構造体。
【請求項2】
長手方向側面の算術平均粗さ(Ra)が5nm未満である請求項1に記載の酸化チタン構造体。
【請求項3】
酸化チタン結晶が多結晶体である、請求項1又は2に記載の酸化チタン構造体。
【請求項4】
向かい合う長辺同士が平行である、請求項1〜3のいずれかに記載の酸化チタン構造体。
【請求項5】
幅が20nm以上であり、長手方向の長さが1μm以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の酸化チタン構造体。
【請求項6】
アナターゼ型結晶及び/又はTiO−B型結晶を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の酸化チタン構造体。
【請求項7】
長手方向の長さが50nm以下である結晶を30%以上含む、請求項1〜6のいずれかに記載の酸化チタン構造体。
【請求項8】
比表面積が15m/g以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の酸化チタン構造体。
【請求項9】
アルカリ金属の含有量が2000ppm以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の酸化チタン構造体。
【請求項10】
(1)3〜20mol/Lのアルカリ水溶液と、平均粒子径が50nm以下の酸化チタンとを、160℃より高い温度で接触させる工程
を備える、請求項1〜9のいずれかに記載の酸化チタン構造体の製造方法。
【請求項11】
アルカリが、少なくとも水酸化ナトリウムを50重量%以上含む、請求項10に記載の酸化チタン構造体の製造方法。
【請求項12】
さらに、
(2)工程(1)で得られた酸化チタン構造体を水、酸及びイオン交換樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種と接触させる工程
を備える、請求項10又は11に記載の酸化チタン構造体の製造方法。
【請求項13】
酸が、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、フッ酸、酢酸、クエン酸、ギ酸及びシュウ酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項12に記載の酸化チタン構造体の製造方法。
【請求項14】
さらに、
(3)工程(2)で得られた酸化チタン構造体を150℃以上で焼成する工程
を備える、請求項12又は13に記載の酸化チタン構造体の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれかに記載の酸化チタン構造体、又は請求項10〜14のいずれかに記載の酸化チタン構造体の製造方法により得られる酸化チタン構造体を含む、多孔質酸化チタン被膜。
【請求項16】
さらに、平均粒子径が5〜100nmの酸化チタン微粒子を含む、請求項15に記載の多孔質酸化チタン被膜。
【請求項17】
導電性基板上に、色素が担持された請求項15又は16に記載の多孔質酸化チタン被膜が形成されている電極。
【請求項18】
請求項17に記載の電極を備える、色素増感太陽電池。
【請求項19】
請求項1〜9のいずれかに記載の酸化チタン構造体、又は請求項10〜14のいずれかに記載の酸化チタン構造体の製造方法により得られる酸化チタン構造体を用いた光触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−207661(P2011−207661A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76728(P2010−76728)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】