説明

酸化亜鉛の製造方法及び酸化亜鉛

【課題】強い分散処理を必要とせず、容易に分散する酸化亜鉛の製造方法及びそれにより得られる酸化亜鉛を提供する。
【解決手段】亜鉛塩、二酸化炭素及び/又は炭酸塩、並びに、グリコール類、グリセリン及びポリグリセリンからなる群より選択される少なくとも一種を混合して亜鉛化合物からなる析出物を沈殿析出させる工程(1)、及び、上記工程(1)によって得られた析出物を焼成する工程(2)を有する酸化亜鉛の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛の製造方法及び酸化亜鉛に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料、塗料添加剤、樹脂添加剤、加工顔料等の用途において多くの紫外線遮蔽剤が市販されている。このような紫外線遮蔽剤としては有機物質からなるものと無機物質からなるものが公知である。しかしながら、有機物質からなる紫外線遮蔽剤は、透明性に優れるが、刺激性や耐久性に問題があった。また、紫外線の遮蔽メカニズムが主に吸収であるために一定領域の紫外スペクトルしか遮蔽できないという欠点があった。
【0003】
無機物質の紫外線遮蔽剤は、刺激性や耐久性といった問題が少なく、更に吸収と反射により紫外線を遮蔽することから幅広い紫外スペクトルから対象物を保護することができる。中でもナノサイズ、サブミクロンサイズの酸化亜鉛は高い可視光透明性とUV−A領域からの幅広い紫外線遮蔽性を併せ持つために、紫外線遮蔽剤として化粧料や塗料などに多く使用されている。
【0004】
しかしながら、上述のような粒子径の小さい酸化亜鉛は凝集力が強く、強固な二次凝集物を生成することが知られている。一方、化粧料や塗料等の用途において所望の物性を得るためには、一次粒子の状態でマトリックス中に分散させることが必要である。よって、実際の使用においては、強い分散シェアを付与することによって二次凝集物を解砕することが必要であった。そのために、分散処理に長時間を要したり、分散に伴う発熱のために併用する他の物質が変性したりする場合があった。
【0005】
また、乾式粉砕によって凝集が少ない乾粉を得た後にマトリックスへの分散を行う方法も考えられる。しかし、このような方法においても、乾式粉砕では二次凝集物の解砕に限界があり、またエネルギー効率から見ても分散にエネルギーを要することには変わりがなかった。更に乾粉を粉砕することにより、粉の見掛け比重が軽くなりハンドリング性にも難があった。
【0006】
特許文献1や特許文献2のように、酸化亜鉛あるいはその前駆体となる炭酸亜鉛、水酸化亜鉛の生成反応を調整することにより粒子形状を制御し、高い可視光透明性やUV遮蔽性を得ることができることも知られている。しかしながら、粒子形状を制御した酸化亜鉛においても、使用に際しては分散処理が必要であり、目的の高い可視光透明性とUV遮蔽性を得るためには強い分散シェアが必要であった。
【0007】
特許文献3及び特許文献4には、カルボン酸亜鉛や亜鉛塩類をアルコールまたは水/アルコール混合溶媒に溶かし、加熱しながらアルカリ条件下で加水分解する工程を有する酸化亜鉛微粒子の製造法が記載されている。しかし、このような方法で得られた酸化亜鉛微粒子は、溶液中で酸化亜鉛を合成するために、乾燥時に粉体の表面電荷などによる凝集が生じるため、十分に凝集力を低下させた酸化亜鉛でなく、上述したような問題を解決することができない。また、アルコール混合溶液を加熱する必要があるため、設備面のコストや安全性で不利である。
【0008】
特許文献5には、二酸化炭素含有量が0.1〜3.0%である酸化亜鉛微粒子が記載されている。しかし、このような微粒子は、酸化亜鉛の純度が低いため紫外線遮蔽性に劣る。また、上記組成で均一な酸化亜鉛を得るには焼成コントロールが難しいため、組成むらが発生し、分散性も劣るケースがある。
【0009】
【特許文献1】国際公開第99/25654号パンフレット
【特許文献2】特開平01−230431号公報
【特許文献3】特開平10−236822号公報
【特許文献4】特開平4−357114号公報
【特許文献5】特開平3−199121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記に鑑み、強い分散処理を必要とせず、容易に分散する酸化亜鉛の製造方法及びそれにより得られる酸化亜鉛を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、亜鉛塩、二酸化炭素及び/又は炭酸塩、並びに、グリコール類、グリセリン及びポリグリセリンからなる群より選択される少なくとも一種を混合して亜鉛化合物からなる析出物を沈殿析出させる工程(1)、及び、上記工程(1)によって得られた析出物を焼成する工程(2)を有することを特徴とする酸化亜鉛の製造方法である。
上記ポリグリセリンは、2〜8量体であることが好ましい。
上記グリコール類、グリセリン及びポリグリセリンからなる群より選択される少なくとも一種の添加量は、亜鉛塩として配合される亜鉛100質量部に対して3〜60質量部であることが好ましい。
上記酸化亜鉛の製造方法において、得られる酸化亜鉛は、0.025質量%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に超音波ホモジナイザーで分散させた際の50%積算径が0.3μm以下であり、かつ同条件で測定した90%積算径が0.8μm以下であることが好ましい。
上記酸化亜鉛の製造方法は、さらに、表面処理を行う工程(3)を有することが好ましい。
上記表面処理を行う工程(3)は、オルガノポリシロキサンによる表面処理を行う工程であることが好ましい。
【0012】
本発明は、上記酸化亜鉛の製造方法により得られることを特徴とする酸化亜鉛でもある。
上記酸化亜鉛は、着色剤であってもよい。
本発明は、上記酸化亜鉛を含有することを特徴とする化粧料でもある。
本発明は、上記酸化亜鉛を含有することを特徴とする塗料組成物でもある。
本発明は、上記酸化亜鉛を含有することを特徴とする樹脂組成物でもある。
本発明は、0.025質量%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に超音波ホモジナイザーで分散させた際の50%積算径が0.3μm以下であり、かつ同条件で測定した90%積算径が0.8μm以下であることを特徴とする酸化亜鉛でもある。
上記酸化亜鉛は、オルガノポリシロキサンで表面処理されたものであることが好ましい。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の酸化亜鉛の製造方法は、比較的穏やかな条件下での解砕によって粉砕させることができる、微細な一次粒子径を有する酸化亜鉛の製造方法である。
上記酸化亜鉛の製造方法は、亜鉛塩、二酸化炭素及び/又は炭酸塩、並びに、グリコール類、グリセリン及びポリグリセリンからなる群より選択される少なくとも一種を混合して亜鉛化合物からなる析出物を沈殿析出させる工程(1)、及び、上記工程(1)によって得られた析出物を焼成する工程(2)を有することを特徴とするものである。
【0014】
上記工程(1)は、亜鉛源となる化合物と炭酸化合物とを混合することによって亜鉛化合物からなる析出物を沈殿析出させる工程である。上記工程(1)において炭酸化合物との反応によって亜鉛化合物とすることと、グリコール類、グリセリン及びポリグリセリンからなる群より選択される少なくとも一種を併用して反応を行う点に本発明は特徴を有する。すなわち、このように特定の化合物を使用した特定の反応条件によって酸化亜鉛を製造した場合に、特異的に凝集強度が小さい酸化亜鉛が得られるものである。ここで、上記工程(1)によって得られる析出物とは、主に炭酸亜鉛及び/又は塩基性炭酸亜鉛からなるものであり、反応条件によっては水酸化亜鉛等が含まれる場合もある。
【0015】
上記亜鉛塩としては特に限定されず、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、シュウ酸及び脂肪酸の亜鉛塩、並びに、有機酸亜鉛塩等を挙げることができる。上記亜鉛塩としては、これらのうち一種、又は、複数を使用することができる。上記亜鉛塩は、水、アルコール等の溶媒に溶解し、亜鉛塩溶液として使用することができる。
【0016】
上記亜鉛塩は、水等の溶媒中に亜鉛金属換算で20〜150g/Lとなる割合で添加することが好ましい。
【0017】
上記炭酸塩としては特に限定されず、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウムや、尿素が水溶液中で加水分解したもの等を挙げることができる。なかでも、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが好ましい。上記炭酸塩としては、これらのうち一種、又は、複数を使用することができる。上記炭酸塩は、水、アルコール等の溶媒に溶解し、溶液として使用することができる。また、二酸化炭素を使用する場合は、気体状態で系中に導入することで反応させてもよい。
【0018】
上記グリコール類、グリセリン及びポリグリセリンとしては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のジオール類;グリセリン、ジグリセリン等のポリグリセリン等を挙げることができる。なかでも、グリセリン及びポリグリセリンが好ましく、2〜8量体のポリグリセリンが好ましい。
【0019】
上記グリコール類、グリセリン及びポリグリセリンからなる群より選択される少なくとも一種の添加量は、反応終了後の溶液全体の0.05〜50質量部であることが好ましい。添加量が0.05質量部未満であると、効果が充分に得られないおそれがある。添加量が50質量部を超えると、コストの上昇、析出物への残留といった問題が生じる。上記添加量は、0.5〜20質量部であることがより好ましい。また、上記亜鉛塩として配合される亜鉛100質量部に対して、3〜60質量部となるような範囲で添加することが好ましく、10〜50質量部がより好ましい。
【0020】
本発明の酸化亜鉛の製造方法における工程(1)は、上記各成分を混合することによって主に炭酸亜鉛及び/又は塩基性炭酸亜鉛からなる析出物を析出させるものである。上記工程(1)は、グリコール類、グリセリン及びポリグリセリンからなる群より選択される少なくとも一種の存在下で亜鉛塩と二酸化炭素及び/又は炭酸塩との中和反応が行われ、析出物を生成する工程である。
【0021】
上記工程(1)における混合方法としては特に限定されず、塩の析出がない限り、亜鉛塩溶液にグリコール類、グリセリン及びポリグリセリンからなる群より選択される少なくとも一種を添加した後、二酸化炭素及び/又は炭酸塩の溶液を添加してもよく、二酸化炭素及び/又は炭酸塩の溶液にグリコール類、グリセリン及びポリグリセリンからなる群より選択される少なくとも一種を添加した後、亜鉛塩溶液を添加してもよい。また、亜鉛塩溶液と二酸化炭素及び/又は炭酸塩の溶液との混合反応中にグリコール類、グリセリン及びポリグリセリンからなる群より選択される少なくとも一種を別途添加してもよい。
【0022】
より細かい粒子径の酸化亜鉛を得るためには、混合方法によらず、中和反応に要する中和時間を短くすることが好ましい。上記中和時間を短くするためには、例えば、亜鉛塩溶液並びにグリコール類、グリセリン及びポリグリセリンからなる群より選択される少なくとも一種を含む混合液に二酸化炭素及び/又は炭酸塩の溶液を添加する場合、その添加速度を速くする等の方法を挙げることができる。また、混合液の撹拌速度を速くするといった方法によっても、より細かい粒子径の酸化亜鉛を得ることができる。
上記中和反応における混合液のpHは、6〜11であることが好ましい。上記pHが6未満であると、中和反応が完結せずに亜鉛イオンが残存し、生産性が落ちる場合がある。上記pHが11を超えると、上記析出物の溶解が起こり、生産性が落ちる場合がある。
上記中和反応を行った後、濾過、水洗等を行い、グリコール類、グリセリン、ポリグリセリンや余分な塩類の除去を行うことが好ましい。
【0023】
上記中和反応における反応温度としては特に限定されないが、10〜40℃で反応させることが好ましい。
【0024】
上記析出物の焼成としては特に限定されず、例えば、350〜600℃の焼成温度で行われることが好ましい。上記焼成温度が350℃未満であると、例えば、炭酸亜鉛の分解が完結せずに炭酸根が残り、亜鉛純度や紫外線遮蔽能が低下するおそれがある。上記焼成温度が600℃を超えると、粒子の融着が生じ、得られる酸化亜鉛の透明性及び分散性が低下する場合がある。
【0025】
上記焼成の方法は特に限定されず、流動床焼成でも固定床焼成でも構わなく、大気雰囲気下でも構わない。焼成むらを無くすため、均一な温度分布になることが好ましい。
【0026】
本発明の酸化亜鉛の製造方法は、さらに、得られる酸化亜鉛の使用目的に応じて表面処理を行う工程(3)を有するものであってもよい。上記表面処理を行う工程(3)としては特に限定されず、例えば、無機表面処理剤、有機表面処理剤等を使用した工程を挙げることができる。上記無機表面処理剤としては、例えば、酸化/水酸化ケイ素、酸化/水酸化アルミニウム、酸化/水酸化ジルコニウム、酸化/水酸化チタン、酸化/水酸化セリウム、酸化/水酸化マグネシウム、酸化/水酸化カルシウムなどを挙げることができる。また、有機表面処理剤として、ジメチルポリシロキサンやメチルハイドロジェンポリシロキサンなどのオルガノポリシロキサン、デシルトリエトキシシランといったアルキルシラン、ステアリン酸などの高級脂肪酸やその金属石鹸、パルミチン酸オクチル等の高級脂肪酸エステル、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン化合物を挙げることができる。さらに、アルキルチタネート、アルキルアルミネート、アルキルジルコネート等のカップリング剤や、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のフッ素系有機化合物を使用することもできる。上記表面処理の方法としては特に限定されず、湿式処理であっても乾式処理であっても良く、複数の表面処理を組合わせても良い。本発明の製造方法で得られる酸化亜鉛は、分散性に優れたものであるため、一次粒子個々の表面を処理することが容易であるため、表面処理をより均一にすることができる。
【0027】
特にオルガノポリシロキサンによる処理は、物質的な安定性、粉体への表面固着性、粉体への撥水・親油性の付与といった点から、特に有用である。上記オルガノポリシロキサンによる処理は、酸化亜鉛100質量部に対して、通常、1〜20質量部の範囲でオルガノポリシロキサンを付着させることが好ましい。好ましくは、3〜10質量部の範囲である。上記オルガノポリシロキサンが酸化亜鉛に対して1質量部よりも少ないときは、撥水・親油性といった表面改質効果に乏しくなる場合があり、他方、20質量部を越えても、表面改質効果が飽和するので、経済的にも不利である。
【0028】
上記酸化亜鉛の製造方法により得られる酸化亜鉛も本発明の一つである。本発明により得られる酸化亜鉛は、強い分散処理を必要とすることなく、良好な分散性を発揮することができるものである。分散性が良好であることから、本発明の酸化亜鉛は、透明性が高く、高い紫外線遮蔽能を発揮することができる。
【0029】
本発明の酸化亜鉛は、好ましくは、0.025質量%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に超音波ホモジナイザーで分散させた際の50%積算径が0.3μm以下であり、かつ同条件で測定した90%積算径が0.8μm以下である。このような物性を有することで、より良好な分散性を発揮することができる。
【0030】
上記積算径の測定方法は、以下の通りである。
試料となる酸化亜鉛0.5gをヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液100g(0.025質量%)に添加し、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製ウルトラソニックホモジナイザーUS−600T;φ36チップ使用、出力POWER6、振動指示計V−LEVELを3〜3.5に調整)で10min分散させ、その液をレーザー回折型粒度分布測定装置(堀場製作所製LA−750、屈折率1.5;超音波強度7、超音波作動時間1分間、循環速度2、タングステンランプ透過率が70〜80%になるように濃度調整)で測定する。
上記50%積算径は、0.2μm以下であることがより好ましく、90%積算径は、0.5μm以下であることがより好ましい。
【0031】
本発明の酸化亜鉛は、分散性が良好であり、高い紫外線遮蔽能を有するものである。このため、化粧料、塗料組成物、樹脂組成物等に添加剤として好適に配合されるほか、加工顔料、着色剤等としても好適に使用することができる。特に、透明性や、塗布感触に優れることから、化粧料に好適に配合することができる。また、マトリックス中に酸化亜鉛が分散した組成物とした場合の分散性にも優れるため、多量に配合した場合にも安定性を維持することができ、従来より高い紫外線遮蔽レベルに達することができる。
【0032】
本発明の酸化亜鉛は、上述の性能を有するため、分散性に優れた分散体とすることもできる。本発明の酸化亜鉛は、従来の酸化亜鉛よりも分散性に優れたものであるため、強い分散処理をすることなく良好な分散体が得られ、かつ、従来の酸化亜鉛を使用した場合よりも優れた可視光透明性や紫外線遮蔽能を有する分散体を得ることができる。
【0033】
さらに、本発明は、0.025質量%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に超音波ホモジナイザーで分散させた際の50%積算径が0.3μm以下であり、かつ同条件で測定した90%積算径が0.8μm以下であることを特徴とする酸化亜鉛でもある。上記酸化亜鉛は上記特徴を有するため、強い分散処理を必要とせず、良好な分散性を発揮することができるものである。上記積算径は、上述の方法により測定することができる。
上記酸化亜鉛は、オルガノポリシロキサンで表面処理されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明の酸化亜鉛は、化粧料や塗料等に使用した場合にも、強い分散処理を必要とすることなく、高い透明性と優れた紫外線遮蔽能を発揮することができる。また、本発明の酸化亜鉛の製造方法により、上述の特性を有する酸化亜鉛を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」、「%」は特に断りのない限り「質量部」、「質量%」を意味する。
【0036】
実施例1
硫酸亜鉛水溶液(硫酸亜鉛80.7g、純水500g)にポリグリセリン(4量体、15g)を添加し、次いで、50ml/minで炭酸ナトリウム水溶液(炭酸ナトリウム106g、純水300g)を添加した。添加後、30℃で30分間熟成を行なった後、濾過・水洗・乾燥を行ない、析出物を得た。この析出物を400℃で2時間焼成することにより、酸化亜鉛1を得た。ここで、ポリグリセリンの添加量は、硫酸亜鉛として配合される亜鉛100部に対して23部であり、反応終了後の溶液全体に対して1.5部であった。
【0037】
実施例2
ポリグリセリンに代えてエチレングリコールを使用したこと以外は、実施例1と同様にして酸化亜鉛2を得た。
【0038】
実施例3
ポリグリセリンに代えてジグリセリンを使用したこと以外は、実施例1と同様にして酸化亜鉛3を得た。
【0039】
実施例4
ポリグリセリン(4量体)をポリグリセリン(8量体)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして酸化亜鉛4を得た。
【0040】
実施例5
ポリグリセリン(4量体)の配合量を5gに代えたこと以外は、実施例1と同様にして酸化亜鉛5を得た。ポリグリセリンの添加量は、硫酸亜鉛として配合される亜鉛100部に対して7.6部であり、反応終了後の溶液全体に対して0.51部であった。
【0041】
実施例6
ポリグリセリンに代えてグリセリンを使用したこと以外は、実施例1と同様にして酸化亜鉛6を得た。
【0042】
比較例1
硫酸亜鉛水溶液に50ml/minで炭酸ナトリウム水溶液を添加した。添加後、30分間熟成を行なった後、濾過・水洗・乾燥を行ない、析出物を得た。この析出物を400℃で2時間焼成することにより、酸化亜鉛1’を得た。
【0043】
比較例2
ポリグリセリンに代えてイソプロピルアルコールを使用したこと以外は、実施例1と同様にして酸化亜鉛2’を得た。
【0044】
比較例3
60℃に保温した1リットルの水に、塩化亜鉛水溶液(塩化亜鉛136.4g、純水1kg)と、炭酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムの混合水溶液(炭酸ナトリウム68g、水酸化ナトリウム80g、純水1kg)とをpH8を維持するように同時に滴下し中和反応を行なった。塩化亜鉛水溶液が滴下終了したところで反応を終了とし、析出物を濾過し、続いて水洗により過剰な塩類を除去し、105℃で12時間乾燥した。乾燥した粉体を400℃で2時間加熱して酸化亜鉛3’を得た。
【0045】
得られた酸化亜鉛について、分散性を評価した。各酸化亜鉛の50%積算径及び90%積算径を測定することで分散液とした場合の凝集状態を確認し、各酸化亜鉛の分散性の評価とした。上記50%積算径及び90%積算径は、試料0.5グラムをヘキサメタリン酸ナトリウム0.025質量%水溶液100グラムに添加し、薬さじで軽く混ぜ、その後、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製ウルトラソニックホモジナイザーUS−600T;φ36チップ使用、出力POWER6、振動指示計V−LEVELを3〜3.5に調整)で10分間分散させた後、レーザー回折型粒度分布測定装置(LA−750:堀場製作所製)で測定した。比表面積は、湯浅アイオニクス製全自動比表面積測定装置4−ソーブ4SU2により、測定した。なお、比較例4〜6として、市販の酸化亜鉛であるNANOX−500(Elementis Specialities製;比較例4;酸化亜鉛4’)、MZ−500(テイカ製;比較例5;酸化亜鉛5’)及びFINEX−50(堺化学工業製;比較例6;酸化亜鉛6’)を使用した。そのデータを表1に示す。
【0046】
実施例と比較例において、各酸化亜鉛の比表面積はさほど違いがなく、この比表面積から計算される一次粒子径は、0.020〜0.030μm程度である。一方、各酸化亜鉛の50%積算径及び90%積算径は、上で求められた一次粒子径より大きく、凝集していることが確認される。しかしながら、実施例で得られた酸化亜鉛の50%積算径及び90%積算径は、比較例で得られた酸化亜鉛のものより小さいことが示された。すなわち、実施例で得られた酸化亜鉛粒子は、比較例の酸化亜鉛に比べて凝集粒子が小さく、かつ粒度分布が狭く粗大粒子が少ない状態に分散していると評価できる。
【0047】
【表1】

【0048】
さらに、可視光透明性とUV遮蔽性とを評価した。100mlマヨネーズ瓶に酸化亜鉛1、2及び1’を入れ、アクリディックA−801P(大日本インキ製)10gと酢酸ブチル5gとキシレン5gを添加した。これにφ1.5ガラスビーズを100g入れ、ペイントシェーカーで90分間分散した。この分散塗料をスライドガラスにバーコーター#6で均一に塗布し、分光光度計(V−570:日本分光製)で透過率を測定した。可視光透明性は平行透過光の透過率で、UV遮蔽性は全透過光の透過率で評価した。そのデータを図1、2に示す。
結果より、本発明の酸化亜鉛1及び2は、透明性に優れ、かつ、遮蔽性にも優れることが示された。
【0049】
実施例7
実施例1で得られた酸化亜鉛1をミキサーに入れ、そこにオルガノポリシロキサン(KF−9901:信越化学製)を添加し5分間混合した。その粉体を熱風式乾燥機で120℃で24時間加熱した結果、疎水性粉体1が得られた。得られた疎水性粉体1を用いて、表2で示す配合で乳液を作製した。まず、油相と粉体とを混合し、ホモジナイザーで15分混合し、次いで、水相を添加して更に15分混合することにより、乳液サンプル1を得た。得られた乳液をスライドガラスに均一に塗布し、分光光度計(V−570:日本分光製)で透過率を測定した。可視光透明性は平行透過光の透過率で、UV遮蔽性は全透過光の透過率で評価した。そのデータを図3、4に示す。
【0050】
比較例7
比較例1で得られた酸化亜鉛1’を使用したこと以外は実施例7と同様にして、疎水性粉体2を得た。さらに、表2で示す配合で乳液サンプル2を作製し、同様にして可視光透明性及びUV遮蔽性を評価したデータを図3、4に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
図3及び4より、本発明の酸化亜鉛は、乳液に配合した場合にも凝集することなく安定に分散していることが示された。得られた乳液は、透明性及びUV遮蔽性に優れた良好なものである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の酸化亜鉛は、強い分散処理を必要とすることなく、高い分散性を有するものである。したがって、優れた透明性と紫外線遮蔽能を発揮することができる。上記酸化亜鉛は、各種用途に適用した際にも上記特性を維持することができるため、化粧料、塗料、加工顔料等に好適に使用することができる。また、本発明の酸化亜鉛の製造方法により、上記特性を有する酸化亜鉛を好適に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】酸化亜鉛の可視光透明性を示したデータである。
【図2】酸化亜鉛のUV遮蔽性を示したデータである。
【図3】乳液の可視光透明性を示したデータである。
【図4】乳液のUV遮蔽性を示したデータである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛塩、二酸化炭素及び/又は炭酸塩、並びに、グリコール類、グリセリン及びポリグリセリンからなる群より選択される少なくとも一種を混合して亜鉛化合物からなる析出物を沈殿析出させる工程(1)、及び、前記工程(1)によって得られた析出物を焼成する工程(2)を有することを特徴とする酸化亜鉛の製造方法。
【請求項2】
ポリグリセリンは、2〜8量体である請求項1記載の酸化亜鉛の製造方法。
【請求項3】
グリコール類、グリセリン及びポリグリセリンからなる群より選択される少なくとも一種の添加量は、亜鉛塩として配合される亜鉛100質量部に対して3〜60質量部である請求項1又は2記載の酸化亜鉛の製造方法。
【請求項4】
得られる酸化亜鉛は、0.025質量%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に超音波ホモジナイザーで分散させた際の50%積算径が0.3μm以下であり、かつ同条件で測定した90%積算径が0.8μm以下である請求項1、2又は3記載の酸化亜鉛の製造方法。
【請求項5】
さらに、表面処理を行う工程(3)を有する請求項1、2、3又は4記載の酸化亜鉛の製造方法。
【請求項6】
表面処理を行う工程(3)は、オルガノポリシロキサンによる表面処理を行う工程である請求項5記載の酸化亜鉛の製造方法。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の酸化亜鉛の製造方法により得られることを特徴とする酸化亜鉛。
【請求項8】
着色剤である請求項7記載の酸化亜鉛。
【請求項9】
請求項7記載の酸化亜鉛を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項10】
請求項7記載の酸化亜鉛を含有することを特徴とする塗料組成物。
【請求項11】
請求項7記載の酸化亜鉛を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項12】
0.025質量%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に超音波ホモジナイザーで分散させた際の50%積算径が0.3μm以下であり、かつ同条件で測定した90% 積算径が0.8μm以下であることを特徴とする酸化亜鉛。
【請求項13】
オルガノポリシロキサンで表面処理されたものである請求項12記載の酸化亜鉛。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−273767(P2008−273767A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117204(P2007−117204)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000174541)堺化学工業株式会社 (96)
【Fターム(参考)】