酸性セラミダーゼのリソソーム親和性阻害剤
本発明は、化学式(Ia)の化合物:この化合物の医薬的に許容される塩を提供するものであり、式中のR1, R2, R3, R4, R5, X, Y及びnについては本明細書で定義する。また、本明細書に示すようにこれらの化合物を製造する方法;酸性セラミダーゼ及びセラミダーゼ関連活性を阻害する上での使用、及び好ましくないセラミダーゼ又はスフィンゴシンキナーゼ活性が関わる疾患の治療及び/又は予防における、薬剤又はプロドラッグ(前駆薬)としての使用を開示するが、この疾患は、ガン、ガン転移、アテローム性の動脈硬化症、狭窄、炎症、喘息及びアトピー性皮膚炎を含む、がこれ等に限定されない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2008年11月6日出願の米国特許仮出願61/111,852に基づく優先権を主張し、本明細書の引例にその全体が取り込まれている。
この発明は、米国国立保健研究所及び国立癌研究所から助成金番号P01CA097132の米国政府の助成を受けた。従って、米国政府は本発明の一定の権利を有する。
この発明は、両親媒性リソソーム親和性酸性セラミダーゼ阻害剤に関する。幾つかの態様において、この阻害剤は、リソソームの恒久的不安定化や酸性セラミダーゼの蛋白質分解を誘導するものではない。この阻害剤として、N-(ω-アミノアシル)アミノフェニルアルコール及びN-アシルアミノフェニルアルコールのアミノエステルプロドラッグ(前駆薬)が挙げられる。この阻害剤は、ガン及び他の増殖性疾患などの好ましくないセラミダーゼ及びセラミダーゼ関連活性に関係する疾病を治療及び/又は防止するために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
スフィンゴ脂質代謝の刺激調節経路は、様々な細胞機能の調節において、極めて重要な役割を持つ生物活性分子の豊富なネットワークを提供する。スフィンゴ脂質代謝物、即ちセラミド(Cer)及びスフィンゴシン1−リン酸塩(S1P)、は生存、増殖及び細胞死の調節に関与するシグナル分子として、これらの役割がますます認知されつつある。特に、セラミド(Cer)及びスフィンゴシン1−リン酸塩(S1P)の間の細胞内バランスは、細胞が、腫瘍の発生及び増殖に関係するアポトーシスに至るか又は増殖に至るかの決定において役割を果たすようである。セラミド(Cer)が、多くの種類の細胞において、アポトーシス促進能を有するのに対して、スフィンゴシン1−リン酸塩(S1P)は、細胞増殖を誘導し、かつ細胞をアポトーシスから防護するという対抗的役割を担っている。従って、セラミダーゼ(CDase)又はスフィンゴシンキナーゼ(SK)活性を阻害して、セラミド(Cer)の産生に有利な方向へバランスを崩すことは、アポトーシス促進作用を加勢する可能性を有し、有効なガン治療への有望な合理的手段を示している(非特許文献1,2)。
【0003】
リソソーム酵素である酸性セラミダーゼ(ACDase又はAC)は、他のセラミダーゼ類とは異なって、約pH4.5という至適pHにおいて、セラミド(Cer)をスフィンゴシンキナーゼ(SK)の基質であるスフィンゴシン(Sph)及び遊離脂肪酸に代謝する。酸性セラミダーゼ(ACDase)に作用により放出されたスフィンゴシン(Sph)は、スフィンゴシンキナーゼ(SK)がスフィンゴシン1−リン酸塩(S1P)を形成するための基質や、新たなセラミドを再合成するための基質としての役割を持つ(非特許文献3)。酸性セラミダーゼ(ACDase)は、Cer-Sph-S1P間代謝を調節するという役割を持つため、ガン治療の新しい標的になる。多くの腫瘍細胞株において、酸性セラミダーゼ(ACDase)のレベルが上昇していることが示されている(非特許文献4)。酸性セラミダーゼ(ACDase)活性を阻害することは、細胞内C16−、C14−及びC18−セラミド(Cer)を増加させ、スフィンゴシン(Sph)及びスフィンゴシン1−リン酸塩(S1P)の減少をもたらし、かつアポトーシスによる細胞死を誘導する(非特許文献5)。従って、酸性セラミダーゼ(ACDase)はガン治療の標的となり、その阻害剤は、幾つかの種類のガンにおいて化学療法薬剤として働く(非特許文献6,7)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ogretmen and Hannun, Nat. Rev. Cancer, 4, 604-616 (2004)
【非特許文献2】Huwiler and Zangemeister-Wittke, Oncology Hematol., 63, 150-159 (2007)
【非特許文献3】Bielawska et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 1032-1045 (2008)
【非特許文献4】Elojeimy et al., Mol. Ther., 15, 1259-1263 (2007)
【非特許文献5】Bielawska et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 1032-1045 (2008)
【非特許文献6】Liu et al., Front. Biosci., 13, 2293-2298 (2008)
【非特許文献7】Szulc et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 1015-1031 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、理想的には、細胞へ容易に輸送されること、酸性セラミダーゼ(ACDase)が存在するリソソーム区画に優先的に蓄積されること、及びリソソーム区画に恒久的損傷を与えないこと、という特性の1以上を持つ新規酸性セラミダーゼ(ACDase)阻害剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、幾つかの態様において、酸性セラミダーゼを阻害するための化合物を提供し、この阻害は、リソソームの恒久的不安定化なしに、及び/又は酸性セラミダーゼのタンパク質分解無しに行うことができて、この化合物は下記化学式(Ia)
【化1】
(式中:
nは0〜13の整数であり;
R1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は、独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;及び
Yは、CH2又はNHである)
の構造を持つ化合物、又はこの化合物の医薬的に許容された塩である。
【0007】
幾つかの態様において、Xは酸素原子である。幾つかの態様において、YはCH2である。幾つかの態様において、R2は水素原子である。幾つかの態様において、R3はNO2である。幾つかの態様において、R4はCH2OHである。幾つかの態様において、R5はOHである。幾つかの態様において、nは7である。
幾つかの態様において、R1はNHR6 であり、ここでR6はアルキル基である。幾つかの態様において、R1はNR6R7であり、ここでR6及びR7はそれぞれアルキル基である。幾つかの態様において、R1は以下:
【化2】
から成る群から選択されるN-複素環である。
【0008】
幾つかの態様において、この化合物は以下:(1R, 2R)-2-[N-(12'-{1"-イミダゾール}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL433); (1R, 2R)-2-[N-(12'-{1"-モルホリン}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL449); (1R, 2R)-2-[N-(12'-アミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL463); (1R, 2R)-2-[N-(12'-N,N-ジメチルアミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL464); (1R, 2R)-2-[N-(6'-{N-オクチルアミノ}-ヘキサノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール(LCL488);及び(1R, 2R)-2-[N-{12'-N-メチル-アミノ}-ドデカノイル]-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL506)から成る群から選択される。
幾つかの態様において、この化合物は、(1R, 2R)-2-[N-(12'-N,N-ジメチルアミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール(LCL464)である。
幾つかの態様において、本発明は、(a)化学式(Ia)で表される化合物、及び(b)医薬的に許容された担体から成る医薬組成物を提供する。
【0009】
幾つかの態様において、本発明は、下記化学式(Ib)
【化1】
(式中:
nは、0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;
ここで、R4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含む)
の化合物、又はこの化合物の医薬的に許容された塩を提供する。
幾つかの態様において、R4は、CH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7である。幾つかの態様において、R8は、水素原子であり、かつR6及びR7は、それぞれアルキル基である。
幾つかの態様において、R5は、OC(=O)CH(R8)NR6R7である。幾つかの態様において、R8は水素原子であり、かつR6及びR7は、それぞれアルキル基である。
幾つかの態様において、R4は、CH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7であり、かつR5は、OC(=O)-CH(R8)NR6R7である。幾つかの態様において、nは5である。幾つかの態様において、R1は、n−ブチル基である。幾つかの態様において、R3はNO2である。
【0010】
幾つかの態様において、この化合物は以下:
【化3】
【化4】
【化5】
から選択される。
幾つかの態様において、本発明は、(a)化学式(Ib)の化合物及び(b)医薬的に許容された担体から成る医薬組成物を提供する。
【0011】
幾つかの態様において、本発明は、酸性セラミダーゼを阻害する方法を提供し、この方法は、酸性セラミダーゼを含むサンプルを、有効量の化学式(Ia)
【化1】
(式中:
nは0〜13の整数であり;
R1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;及び
Yは、CH2又はNHである)
の化合物、又はこの医薬的に許容された塩に接触させる段階から成る方法であって、この阻害は、恒久的なリソソーム不安定化及び/又は酸性セラミダーゼのタンパク質分解なしに行われる。幾つかの態様において、このサンプルは、in vitro細胞サンプル又はin vivo細胞サンプルである。
【0012】
幾つかの態様において、本発明は、患者における好ましくないセラミダーゼ又はスフィンゴシンキナーゼ活性が関係する疾病又は疾患を治療又は予防する方法を提供し、この方法は、患者に有効量の化学式(Ia):
【化1】
(式中:
nは0〜13の整数であり;
R1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;及び
Yは、CH2又はNHである)
の化合物、又はこの化合物の医薬的に許容された塩を投与する段階から成る方法であり、この化合物は、恒久的なリソソーム不安的化及び/又は酸性セラミダーゼのタンパク質分解なしに又は実質的になしに、酸性セラミダーゼを阻害する。
【0013】
幾つかの態様において、この疾病又は疾患は、ガン、ガン転移、アテローム性動脈硬化、狭窄、炎症、喘息、アトピー性皮膚炎及び他の増殖性疾病から成る群から選択される。幾つかの態様において、この患者は哺乳類患者である。幾つかの態様において、この化学式(Ia)の化合物は、化学式(Ia)の化合物及び医薬的に許容された担体から成る医薬的組成物として患者に投与される。
【0014】
幾つかの態様において、本発明は、ガンを治療する方法を提供し、この方法は、ガン治療を必要とする患者に、有効量の下記化学式(Ia)
【化1】
(式中:
nは0〜13の整数であり;
R1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;及び
Yは、CH2又はNHである)
の化合物又はこの医薬的に許容された塩を投与する段階から成る方法である。
【0015】
幾つかの態様において、このガンは乳癌、前立腺癌、メラノーマ、肺癌及び頭頚部癌から成る群から選択される。幾つかの態様において、この患者は哺乳類患者である。幾つかの態様において、この化学式(Ia)の化合物を、化学式(Ia)の化合物及び医薬的に許容された担体から成る医薬組成物として投与する。
幾つかの態様において、Xは酸素原子である。幾つかの態様において、YはCH2である。幾つかの態様において、R2は水素原子である。幾つかの態様において、R3はNO2である。幾つかの態様において、R4はCH2OHである。幾つかの態様において、R5はOHである。幾つかの態様において、nは7である。
幾つかの態様において、R1はNHR6 であり、ここでR6はアルキル基である。幾つかの態様において、R1はNR6R7であり、ここでR6及びR7はそれぞれアルキル基である。幾つかの態様において、R1は以下:
【化2】
から成る群から選択されるN-複素環である。
【0016】
幾つかの態様において、この化合物は以下:(1R, 2R)-2-[N-(12'-{1"-イミダゾール}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL433); (1R, 2R)-2-[N-(12'-{1"-モルホリン}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL449); (1R, 2R)-2-[N-(12'-アミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL463); (1R, 2R)-2-[N-(12'-N,N-ジメチルアミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL464); (1R, 2R)-2-[N-(6'-{N-オクチルアミノ}-ヘキサノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール(LCL488);及び(1R, 2R)-2-[N-{12'-N-メチル-アミノ}-ドデカノイル]-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL506)から成る群から選択される。
幾つかの態様において、この化合物は、(1R, 2R)-2-[N-(12'-N,N-ジメチルアミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール(LCL464)である。
【0017】
幾つかの態様において、本発明は、酸性セラミダーゼを阻害する方法を提供し、この方法は、酸性セラミダーゼを含むサンプルを、有効量の酸性セラミダーゼ阻害剤のエステルプロドラッグと、このプロドラッグが加水分解してこの阻害剤になる条件下で、接触させる段階から成る方法であり、このプロドラッグは、化学式(Ib):
【化1】
(式中:
nは、0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5から10の間の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;及び
ここで、R4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含む)の構造を有する化合物又はこの医薬的に許容された塩である。
幾つかの態様において、このサンプルは、in vitro細胞サンプル、又はin vivo細胞サンプルである。
【0018】
幾つかの態様において、本発明は、患者における好ましくないセラミダーゼ又はスフィンゴシンキナーゼ活性に関係する疾病又は疾患を治療又は予防する方法を提供し、この方法は、患者に有効量の化学式(Ib):
【化1】
[式中:
nは、0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5から10の間の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;及び
ここで、R4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含む]の化合物又はこの医薬的に許容された塩を投与する段階から成る方法である。
【0019】
幾つかの態様において、この疾病又は疾患は、ガン、ガン転移、アテローム性動脈硬化、狭窄、炎症、喘息、アトピー性皮膚炎及び他の増殖性疾病から成る群から選択される。幾つかの態様において、患者は哺乳類患者である。幾つかの態様において、化学式(Ib)の化合物は、化学式(Ib)の化合物及び医薬的に許容された担体から成る医薬的組成物として患者に投与される。
【0020】
幾つかの態様において、本発明は癌を治療する方法を提供し、この方法は、ガン治療を必要とする患者に有効量の化学式(Ib):
【化1】
(式中:
nは、0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5から10の間の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;及び
ここで、R4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含む)の化合物、又はこの医薬的に許容された塩を投与する段階から成る方法である。
【0021】
幾つかの態様において、この患者は哺乳類患者である。幾つかの態様において、この化学式(Ib)の化合物を、化学式(Ib)の化合物及び医薬的に許容された担体から成る医薬組成物として投与する。
幾つかの態様において、R4は、CH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7である。幾つかの態様において、R8は、水素原子であり、かつR6及びR7は、それぞれアルキル基である。
幾つかの態様において、R5は、OC(=O)CH(R8)NR6R7である。幾つかの態様において、R8は、水素原子であり、かつR6及びR7は、それぞれアルキル基である。
幾つかの態様において、R4は、CH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7であり、かつR5は、OC(=O)-CH(R8)NR6R7である。
幾つかの態様において、nは、5である。幾つかの態様において、R1は、n−ブチル基である。幾つかの態様において、R3は、NO2である。
【0022】
幾つかの態様において、この化合物は以下:
【化3】
【化4】
【化5】
から選択される。
【0023】
本発明の目的は、好ましくないセラミダーゼ、セラミダーゼ関連(セラミダーゼ逆反応活性、セラミド/dhセラミド合成酵素及びアシルトタンスフェラーゼのような)及び/又はスフィンゴシンキナーゼ活性に関係する、ガン及び他の増殖性疾病を含む、疾病又は疾患の治療又は予防における使用のためのリソソーム親和性酸性セラミダーゼ(ACDase)阻害剤、及び関係するプロドラッグを提供することである。
上述、及び本発明により全体的に又は部分的に達成することができた発明の目的、他の目的は、以下明細書において、添付した最善に記載された図面と関係した記述が進むに従い明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ω−アミノアシル基を含むクラスE化合物(LCL463、LCL506、LCL464、LCL488、LCL433及びLCL449)の合成を示す概略図である。
【図2】(1R, 2R)-2-N-(テトラデカノイルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(B13)のプロドラッグであるクラスE化合物の合成を示す概略図である。
【図3】50μMのクラスE阻害剤(LCL433、LCL449、LCL463、LCL464、LCL488又はLCL506)のin vitro(MCF-7細胞溶解液中)の酸性セラミダーゼ(ACDase)に対する阻害効果を示す棒グラフである。ACDase活性は、[3H]C16-Cerからの放射性パルミチン酸放出を測定し、対照(媒体のみ)サンプルにおいて放出された放射性パルミチン酸に対する割合(%)として表す。比較のため、(1R, 2R)-2-N-(テトラデカノイルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(B13)に対する結果を示す。
【図4】10μMのクラスE阻害剤(LCL433、LCL449、LCL463、LCL464、LCL488又はLCL506)の酸性セラミダーゼ(ACDase)の細胞内活性に対する阻害効果を示す棒グラフである。MCF-7細胞をクラスE阻害剤と2時間インキュベートし、ホモジナイズし、パルミチン酸の放出量を測定した。結果を対照細胞(媒体のみでインキュベートした)において放出された放射性パルミチン酸に対する割合(%)として表す。比較のため、(1R, 2R)-2-N-(テトラデカノイルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(B13)に対する結果を示す。
【0025】
【図5A】MCF-7細胞をクラスE阻害剤(LCL433、LCL449、LCL463、LCL464、LCL488又はLCL506;10μM)と2時間処理した後、これらの化合物の細胞内スフィンゴシン(Sph)レベルに対する効果を示す棒グラフである。比較のため、(1R, 2R)-2-N-(テトラデカノイルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(B13)に対する結果を示す。
【図5B】図5Bは、10μMのLCL464によるMCF-7細胞の2時間処理後、セラミド(C14-Cer、C16-Cer、C18-Cer、C24-Cer及びC24:1-Cer)及びスフィンゴシン(Sph)を含む、細胞内スフィンゴ脂質(SPLs)のレベルに対するLCL464の効果を示す棒グラフである。結果を対照細胞(媒体のみと処理)に観測されたセラミド及びスフィンゴシン量に対する割合(%)として表す。
【図5C】細胞内セラミド(C14-Cer:黒色ダイヤ;C16-Cer:黒色四角;C18-Cer:黒色三角;C24-Cer:×;C24:1-Cer:*)及びスフィンゴシン(Sph:黒色丸)レベルにおけるLCL464(50μM)の処理時間(0〜24時間)に対する効果を示すグラフである。結果を対照細胞(媒体のみで処理)に観測されたセラミド及びスフィンゴシン量に対する割合(%)として表す。
【図5D】細胞内セラミド(C14-Cer:黒色ダイヤ;C16-Cer:黒色四角;C18-Cer:黒色三角;C24-Cer:×;C24:1-Cer:*)及びスフィンゴシン(Sph:黒色丸)レベルにおけるLCL464(24時間後)の使用量(0〜50μM)に対する効果を示すグラフである。結果を対照細胞(媒体のみで処理)に観測されたセラミド及びスフィンゴシン量に対する割合(%)として表す。
【図6】酸性セラミダーゼ(AC)安定性に対するクラスE阻害剤(LCL433、LCL449、LCL463又はLCL464)の効果を示すWestern ブロット解析の顕微鏡写真である。抗AC抗体を用いた細胞溶解液中のAC染色により測定した。クラスE阻害剤の濃度は、10μM(上部ペアの上部のレーン)及び50μM(下部ペアの上部のレーン)である。アクチン染色結果も示す(各ペアの下部レーン)。比較のため、(1R, 2R)-2-N-(テトラデカノイルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(B13)に対する結果を示す。各対照レーンは媒体のみ添加(クラスE阻害剤無添加)のものを示す。
【0026】
【図7】1時間(黒色棒)又は5時間(白色棒)処理後の、リソソーム安定化に対する10μMのLCL464又は(1R, 2R)-2-N-(テトラデカノイルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(B13)の効果を示す棒グラフである。リソソーム安定性は、LYSOTRACKER(TM) Red dye (Molecular Probes, Eugene, Oregon, USA)のケイ光を測定し、調べた。結果を媒体のみで処理した対照細胞に観測されるケイ光に対する割合(%)として表す。
【図8】MCF-7乳癌細胞増殖に対するクラスE阻害剤((LCL 433:黒色三角; LCL449:×; LCL463:(; LCL464:黒色丸; LCL488:垂直鎖線; LCL506:水平鎖線)の阻害効果の濃度依存性を示すグラフである。(1R, 2R)-2-N-(テトラデカノイルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(B13;黒色ダイヤ)の阻害効果の濃度依存性を比較のために提供した。細胞数を測定し、対照細胞(媒体のみ処理)の細胞数に対する割合(%)として表す。
【図9】MCF-7乳癌細胞増殖に対するクラスE阻害剤(LCL433、LCL449、LCL463、LCL464、LCL488、又はLCL506)の50%阻害濃度(IC50)分布を示す棒グラフである。比較のために、(1R, 2R)-2-N-(テトラデカノイルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(B13)のIC50を示す。
【図10】LCL464の、ヒト頭頚部扁平上皮細胞癌細胞(SCC14a)、ヒト前立腺癌上皮様細胞(Du145)、ヒトメラノーマ細胞(J3DR4)、ヒト肺胞上皮細胞(A549)、及びII型のヒト前立腺ガン細胞(PPC1)における、48時間(黒色棒)又は72時間(白色棒)後の、50%阻害濃度(IC50)を示す棒グラフである。MCF-7乳癌細胞に対する効果と比較して示す。
【0027】
【図11】10及び20μM濃度において、8時間(黒色棒)又は24時間(白色棒)後の、MCF-7細胞におけるカスパーゼ3/7に対するLCL464の効果を示す棒グラフである。結果を対照細胞(媒体のみ処理)におけるカスパーゼ3/7に対する効果の割合(%)で表す。
【図12】MCF-7乳癌細胞増殖に対するクラスEプロドラッグLCL521の濃度依存性阻害効果を示すグラフである。
【図13】in vitro(MCF-7細胞溶解液中)における酸性セラミダーゼ(ACDase)活性に対するクラスEプロドラッグLCL521の濃度依存性効果を示す棒グラフである。ACDase活性は、[3H]C16-Cerからの放射性パルミチン酸の放出に基づいて測定し、対照サンプル(媒体のみ)中の放出されたパルミチン酸に対する割合(%)として表わす。
【図14A】細胞溶解液における酸性セラミダーゼ(AC)の染色により測定した、酸性セラミダーゼ(AC)安定性に対するクラスEプロドラッグLCL521及びLCL522と1時間及び5時間処理の効果を示す、一対のWesternブロット解析の顕微鏡写真である。(1R, 2R)-2-N-(テトラデカノイルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(B13)及び(1R, 2R)-2-N-(テトラデシルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(LCL204)に対する結果を比較のために示す。アクチン染色結果も示す(下部写真)。対照レーンは、媒体のみの添加の効果を示す。
【図14B】図14AのWesternブロットの定量的結果を示す棒グラフである。結果を対照と比較したケイ光強度で表す。1時間処理に対するデータを白色棒で示し、5時間処理に対するデータを黒色棒で示す。
【0028】
【図15】1時間後のリソソームに対する5μM(白色棒)又は10μM(黒色棒)のクラスEプロドラッグ(LCL521又はLCL522)の効果を示す棒グラフである。リソソームの安定性を、LYSOTRACKER(TM)Red dye (Molecular Probes, Eugene, Oregon, USA)ケイ光を用いて測定した。(1R, 2R)-2-N-(テトラデカノイルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(B13)及び(1R, 2R)-2-N-(テトラデシルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(LCL204)に対する結果を比較のために示す。B13については、白色棒は10μM化合物処理の結果を示し、黒色棒は20μM化合物処理の結果を示す。
【図16】MCF-7細胞における、5時間後の、細胞内スフィンゴ脂質(C14-、C16-、C18-、C24-、C24:1-セラミド(Cn-Cer))、スフィンゴシン(Sph)、スフィンゴシン−1−リン酸塩(S1P)及び全セラミド(Cer tot)レベルに対する、10μMのLCL521(黒色棒)、LCL522(灰色棒)、又は(1R, 2R)-2-N-(テトラデカノイルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(B13;淡灰色棒)の効果を示す棒グラフである。
【図17】細胞内スフィンゴシン(Sph:黒色円)及びスフィンゴシン−1−リン酸塩(S1P;白色円)に対するLCL521の初期の阻害効果を示すグラフである。セラミド(C14-Cer:黒色ダイヤ; C16-Cer:黒色四角; C18-Cer:黒色三角; C24-Cer:灰色四角; C24:1-Cer:(; 及び全セラミド(Cer tot):白色四角)の時間依存的レベルも示す。LCL521との処理は、アポトーシス促進性のC18-及びC16-Cerの時間依存的増加を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
代表的態様を示す、添付した実施例を参照して、今やより詳細に本明細書において、本発明を説明するであろう。しかしながら、本発明は異なった形式に具体化することができるので、本明細書に述べた実施態様に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの態様は、開示が十分に完全であり、及び当業者に対して態様の範囲を十分に伝えるように提供される。
本明細書参考文献として、すべての特許、特許出願、データベース事項、及び雑誌論文を含め、本明細書に引用した全ての参考文献のその全体を、及び全目的のために、取り込んだが、それは、各特許、特許出願、データベース事項、又は雑誌論文が特別に、個別的に、全体的に、及び全目的のために、引例として引き合いに出されたのと同程度である。
【0030】
I.リソソーム親和性酸性セラミダーゼ阻害剤
セラミドは、ヒトの様々なガン細胞株におけるアポトーシス、増殖停止、分化及び老化のような、抗増殖応答を調節することが知られている。細胞内のセラミド作用に関係する多くの重要な生物標的及び事象が同定されてきた:即ち、ホスファターゼ、キナーゼ、及びカスパーゼの活性化;テロメラーゼ酵素複合体の阻害;膜貫通型シグナル経路の誘導、及びミトコンドリアからのチトクロームcの放出である。将来の抗癌剤としてセラミド使用の欠点としては、非常な水溶性の低さ、細胞取り込み性の低さ、輸送、放出の調節ができないこと、及び細胞内標的指向性である。セラミダーゼは、セラミドを加水分解して、細胞内レベルを減少させる酵素である。セラミダーゼの阻害は、内因性セラミドのレベルを増加し、及びこの酵素の阻害は、創薬の候補として活用されている。
【0031】
セラミダーゼファミリーとしては、酸性、中性及びアルカリ性の種類がある(Koch et al., J. Bio. Chem., 271, 33110-33115 (1996); El Bawab et al., J. Bio. Chem., 274, 27948-27955 (1999);及びMao et al., J. Bio. Chem., 276, 26577-26588 (2001))。ヒト酸性セラミダーゼは、8p22にマップされるが、これはしばしば前立腺癌(PCa)において変化している。この酵素は、セラミドをスフィンゴシン及び遊離脂肪酸に加水分解し、この全体としての効果は、セラミド・シグナル伝達のダウンレギュレーション(下向き調節;即ち、アポトーシスの減少)、及びスフィンゴシンプールの増加であり、これはスフィンゴシンキナーゼによりリン酸化されてS1Pを産生することができる。S1Pは、内皮の分化遺伝子ファミリー(Edg/S1P受容体)と相互作用して、内皮細胞移行及び脈管形成を促進する。このように、セラミダーゼを過剰発現する細胞(例えば、腫瘍細胞)は、アポトーシス抵抗性表現型質、及びこのミクロ環境における脈管形成増加の潜在力を産み出すことができる。
【0032】
PCa細胞株DU145、PC3及びLNCaPのすべては、Northernブロットにより、セラミダーゼmRNAのレベルの増加を示した。根治的前立腺摘除で得た前立腺腫瘍は、酸性セラミダーゼ発現を競合的PCR法により解析すると、41.6%は、酸性セラミダーゼmRNAのレベルが増加し、55.5%は変化無く、及び2.7%は酸性セラミダーゼmRNAのレベルの減少することを示した。従って、前立腺における腫瘍のかなりの割合が抗アポトーシス性表現型質と見なす潜在力を持つ。
PCa細胞も含め、大部分のガン細胞において、セラミドは、カスパーゼの活性化、DNA断裂化、及びアポトーシスの他の特性及び顕著な特徴の活性化、ストレスが活性化するタンパク質キナーゼ(SARK/JNK)の誘導、ホスホリパーゼDの阻害、タンパク質キナーゼC(PKC)の脱リン酸化及び不活性化、ミトコンドリア活性酸素種の放出の促進、チトクロムCの放出及び、SRタンパク質を脱リン酸化し、よりアポトーシス促進性表現型質をもたらす、PP1の活性化を引き起こす。
【0033】
機構的には、セラミド、及び細胞周期進行及びアポトーシスに関わる他の重要な調節因子が関与する細胞増殖調節の総合的図式が出現しつつある。従って、TNF及び他の、すべてではないが、誘導因子に応答するセラミドの形成は、YVAD及びCrmAにより阻害される上流のカスパーゼ(例えば、カスパーゼ8)の活性化を必要とする。しかしながら、下流カスパーゼの阻害剤は、セラミド形成を阻止できず、にもかかわらず、セラミドは、下流カスパーゼ(例えば、カスパーゼ3)を活性化するが、上流カスパーゼを活性化しない。さらに、セラミドのアポトーシス誘導能は、エグゼキューショナー(誘導型)カスパーゼの阻害剤により遮断されるが、エフェクター(実行型)カスパーゼの阻害剤により遮断されないので、セラミド形成は二組の酵素の間に位置する。また、Bcl-2の研究により、Bcl-2はこの経路の中でセラミドの下流である。従って、セラミドは、Bcl-2のリン酸化を調節し、及び細胞死に対するセラミドの作用は、Bcl-2過剰発現により阻害される。
【0034】
これらすべての作用において、短鎖セラミド(C2〜C8)は、内因性セラミド(即ち、長鎖セラミド、C16〜C24)のレベルと両立する能力レベルを示すことができる。セラミド類似体の作用は、顕著な特異性を示すことができる。例えば、非常に密接な中性脂質、ジアシルグリセロール(DAG)、はセラミドの作用を真似ず、しばしばこれと拮抗する。セラミドの代謝的前駆体であり、4〜5トランス二重結合を欠く点が異なるだけの、ジヒドロセラミドは、同程度の細胞への取り込みを示すが、細胞研究において活性を示さない(Bielawska et al., J. Bio. Chem., 268, 26226-26232 (1993);及びBielawska et al., J. Bio. Chem., 267, 18493-18497 (1992))。
【0035】
その一方、短鎖セラミドは、TNF及びセラミド形成の他の誘導因子に関連する他の重要な作用に対する弱いエフェクターであることができる。とりわけ、セラミドは、NF-κBを誘導する上で活性でないが、NF-κBは、TNFの炎症作用及び抗アポトーシス作用における役割を果たす転写因子である。また、セラミドは、特に、スフィンゴシン及びスフィンゴシン−1−リン酸塩と比較した時、MAPキナーゼファミリーのerkメンバーの弱い活性化因子である。サイトカイン応答における生化学的標的の一部に対する、短鎖セラミドのこの限定的作用は、ガンにおけるアポトーシスの調節において、セラミドがより特異的な機能を持つという新しい仮説への刺激を与える。
【0036】
複数の証拠が、セラミドがFas-誘導のアポトーシスを仲介する上での役割を指摘する。第1に、セラミド産生が、Fas-誘導アポトーシスの不可欠な部分であることが示されてきた(Cremesti et al., J. Bio. Chem., 276, 23954-23961 (2001))。第2に、Fas活性化は、Fas-産生のアポトーシスシグナル伝達の伝搬に関与することが示された、酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASmase)を活性化することが示されてきた(Raisova et al., FEBS Lett., 473, 27-32 (2000))。第3に、Fas-誘導セラミド形成は、カスパーゼ活性化と共に働き、アポトーシスの結果ではない(Tepper et al., J. Bio. Chem., 272, 24308-24312 (1997))。第4に、Fas-抵抗性細胞は、セラミドレベルの変化を殆ど示さないが、正常の受容体発現及び完全な下流シグナル伝達を有する(Tepper et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 92, 8443-8447 (1995))。第5に、de novo(新規の)セラミド合成に対する役割が、Fas-誘導アポトーシスにおいても確立されたこと(Chalfant et al., J. Bio. Chem., 276, 44848-44855 (2001)を参照)は、セラミドの2種の可能な"プール"が、Fasシグナル伝達に作用することができることを示唆する。第6に、酸性スフィンゴミエリナーゼ−ヌル幹細胞は、JO2-誘導キャッピングに対して感受性がないが、25nM用量のC16−セラミドで増感される。
【0037】
前立腺癌発生に対して必ずしも直接の原因となるわけではないが、ヒト腫瘍の41%(Gleeson等級7腫瘍の60%、及び等級6腫瘍の38%のみ)における酸性セラミダーゼが上昇することは、この発現が、腫瘍成長に対する選択有利性を提供することを示唆する。このメカニズムは、2種の方式で明らかにされるようである。第1に、セラミドレベルの低下は、抗アポトーシス効果を有し、アポトーシスのダウンレギュレーション(下向き調節)は、前立腺癌を含む幾つかのガンの明らかに顕著な特徴である。第2に、スフィンゴシンキナーゼの増加を経たS1P産生は、脈管形成及び増殖効果を有し、前立腺における内皮細胞移行を促進する。
【0038】
本発明は、幾つかの態様において、両親媒性、リソソーム親和性酸性セラミダーゼ(ACDase)阻害剤に関し、及び細胞酸性セラミダーゼ(ACDase)を標的とするプロドラッグに関する。幾つかの態様において、本発明は化学式(I):
【化1】
[式中:
nは0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;及び
ここでR4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含み、又はここでR1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択される]化合物に関する。
【0039】
従って、本発明は、2-N-(ω-アミノ-アシル)-アミノフェニル-アルコールを含む化合物(以下「クラスE化合物」ともいう。)、並びにB13(及びこの類似体)のプロドラッグである化合物に関する。B13の構造を下式:
【化6】
に示す。
【0040】
幾つかの態様において、化学式(I)の化合物は、アミド基又は他のN−アシル基と結合して、酸性セラミダーゼ(ACDase)による化合物の分子認識及びリソソーム区画の選択的標的化のために、アミノ官能基を提供する。この化合物は、N−アシル又は修飾したN−アシル(例えば、尿素、チオウレア、チオアミド、等々)鎖における、様々な炭素鎖、これらのN−アシル部分、水酸基の酸素原子に付加した異なるアミノ酸部分、及びアミノ基(フェニル環のアミノ基及び/又は水酸基の置換基を含む)に付加したメチレンリン酸基に取り込まれたアミノ基の様々な官能基性(例えば、1級アミン、2級アミン、3級アミン、又はN−複素環)を含むことができる。これらの化合物は、すべての立体化学を含む。
【0041】
これらの化合物はまた、幾つかの態様において、(細胞に容易に輸送され、リソソームに優先的に蓄積され、リソソーム親和性プロドラッグとして働くことができて、リソソーム内に遊離の阻害剤を放出することが期待される)アミノ酸エステルプロドラッグを含むことができる(Vig et al., Pharm. Res., 20, 1381-1388 (2003); Rautio et al., Nat. Rev. Drug Discov., 7, 255-270 (2008); Song et al., J. Med. Chem., 49, 4344-4355 (2006); Black and Percival, Chembiochem, 7, 1525-1535 (2006); Jones-Bolin et al., Mol. Cancer Ther., 5, 1744-1753 (2006);及びKaufmann and Krise, J. Pharmaceutical. Sci., 96, 729-746 (2007))。例えば、B13のプロドラッグは、B13の遊離水酸基のエステル化により形成する1以上のアミノエステル基を含むことができる。
【0042】
本発明の化合物を、細胞分化の誘導、アポトーシスの誘導、及び細胞増殖と細胞表現形質を変えるために、使用することができる。これらの化合物をまた、ガン及び他の増殖性疾病の治療を含め、細胞の過増殖又は移動により特徴づけられる疾病の治療にも用いることができる。本発明は、幾つかの態様において、顕著なリソソーム機能障害又は酸性セラミダーゼ(ACDase)の分解なしに、B13の構造要素とリソソームを標的とするためのアミノ官能基を組み合わせて、酸性セラミダーゼ(ACDase)の強力なリソソーム阻害剤を提供する。
【0043】
ω−アミノアシル基を含むクラスE化合物の例、及びこれ等の合成を図1に示す。LCL464、即ち (1R, 2R)- 2-(12'-N, N-ジメチル-ドデカノイルアミノ)- 1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオールのような、クラスE化合物は、内因性Cer, Sph及びS1Pの間のフラックス(流れ)に作用して、酸性セラミダーゼ(ACDase)の阻害と合致して、早期の(例えば、2時間以内の)及び特異的内因性C14-Cerの増加、及びSphの減少をもたらすようである。長期の処理、特により高濃度において、C18-Cerの特異的増加をもたらす。これ等2種のCer(C14-Cer及びC18-Cer)は、以前、アポトーシス促進剤として働くことが示された(Bielawska et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 1032-1045 (2008);及びKarahatay et al., Cancer Lett., 256, 101-111 (2007))。従って、本発明の化合物の活性により、LCL464又は密接な類縁体が、酸性セラミダーゼ(ACDase)に作用する化学治療薬剤として働くことができる事ことが示唆される。
【0044】
さらに、LCL521、即ち、1,3-O-ビス-ジメチルグリシン-B13 塩酸及びLCL522、即ち、1-O-ジメチルグリシン-B13 塩酸(図2参照)のようなプロドラッグの結果は、MCF-7細胞生存率の阻害効果を増すことを示す。LCL521及びLCL522のIC50/24h値(即ち、24時間後の生存率50%阻害濃度)は、B13に対する60.0μMと比較して、それぞれ、約8.9μM及び6.5μMであった(実施例7の表1、図12)。LCL521は、in vitro 酸性セラミダーゼ(ACDase)を阻害し(図13参照)、及び細胞内において、この酵素の活性型のαサブユニットの減少を引き起こす(図14A及び14B)。LCL521はまた、リソソームに輸送されることができる。図15参照。LCL521は、Sph及びS1Pの細胞内レベルを下げる上で有効であり、及び細胞内アポトーシス促進性C16-及びC18-セラミドレベルを上げる(図16及び17)。LCL522は、細胞スフィンゴ脂質の調節において、LCL521程効果的ではなく、むしろB13のように働く(図16)。如何なる理論に囚われることなく、予備的な結果は、LCL522が相対的に急速に加水分解され、B13を形成し、他方LCL521が、ゆっくり、B13のモノエステル類似体である、LCL581に代謝され、及びB13に代謝されることを示唆する。これらの結果は、本明細書で開示したプロドラッグ研究方法が、in vivoの酸性セラミダーゼ(ACDase)阻害剤の治療指数を増加することができることを示唆する。
【0045】
II.定義
本明細書で用いたすべての技術的及び科学的用語は、以下に特別に定義しなければ、当業者が通常理解するのと同じ意味を有することを意図されている。本明細書に用いられる技術に対する引例は、当業者が通常理解する技術を表すことを意図し、これらの技術の変形技術又は当業者にとって自明の技術に等価な代替え技術を含む。以下の用語は、当業者によく理解されていると信ずるが、以下の定義を本発明の説明を容易にするために示す。
明細書及び請求の範囲を通して、所定の化学式又は化学名は、他に明記しなければ、すべての光学的及び立体異性体、及びこのような異性体及び混合物が存在するラセミ混合物を包含する。
長年の特許法慣習に従い用語"a(1つ、ある)"、"an(1つ、ある)"及び"the(その、この)"は、特許請求範囲を含めて本出願で用いる際"1以上"を表す。従って、例えば、"a compound(ある化合物)"は、複数のこのような化合物を含む。
【0046】
用語"comprising(から成る)"は、"including(含む)"、"containing(含む)又は"characterized by(により特徴付けられる)"と同様に、包含的又は制約が無く、付加的な、非列挙の要素又は方法段階を排除しない。"comprising(から成る)"は、名付けられた要素は必須であるが、他の要素も加えることが可能であり、それでも特許請求の範囲の構成物を形成することができることを意味する技術用語である。
本明細書で用いる成句"consisting of(のみから成る)"は、請求の範囲に明記してない全ての要素、段階又は内容物を除外する。成句"consist of(のみから成る)"が、プレアンブルに直ちに続かないで、請求の範囲の本体に現れる場合、示された要素のみに限定されるが、他の要素は、全体として請求の範囲から排除されない。
本明細書で用いる成句"consisting essentially of(本質的に、から成る)"は、請求範囲を、明記した材料又は段階に限定して、さらに請求範囲の発明事項の基本的及び新規の特徴に実質的に影響しない材料又は段階を限定する。
用語"comprising(から成る)"、"consisting of(のみから成る)"及び"consisting essentially of(本質的に、から成る)"に関して、これらの3種の用語の1種が本明細書で用いられた時、本発明は、他の2種の用語のいずれかの使用を含めることができる。
【0047】
用語"セラミド"は、スフィンゴシンアミノ基に付加した脂肪酸を有するスフィンゴシンから作られたアミド含有化合物を表すことができる。幾つかの態様において、このセラミドは、自然界に存在する分子セラミドである。セラミドは、"Cn-Cer"と表すことができて、ここでnは、脂肪酸から作られたアシル基中の炭素原子数である。幾つかの態様において、このセラミドは、脂肪酸アシル基(例えば、C24:1-Cer、これは炭素数が24の脂肪酸鎖であり、1個の二重結合を持つセラミドである)に1以上の二重結合を含むことができる。
用語"セラミダーゼ関連"は、逆セラミダーゼ活性、セラミド/dh セラミド合成酵素及びアシルトランスフェラーゼ活性を表すことができる。
【0048】
重量、時間、用量、その他測定可能値を表す場合、本明細書で用いる用語"約"は、開示した方法を実行する上で以下のような変動は適切であるので、特定の値から、幾つかの態様では、±20%又は±10%の変動、幾つかの態様では、±5%、幾つかの態様では、±1%及び幾つかの態様では、±0.1%の変動を包含することを意味する。
条件を表す場合、用語"〜からフリー(又は、〜がない)"は、不在又は存在しない条件、又は実質的に不在又は実質的に存在しない条件を意味する。従って、"〜からフリー(又は、〜がない)"は、特定の条件が不在又は、存在しない態様、及び特定の条件が実質的に不在又は存在しない(例えば、細胞、オルガネラ(細胞内小器官)又は患者集団のような特定の集団の20,15,10,5,4,3,2又は1%より少なく生ずる)態様を表すことができる。
2以上の活性、条件又は結果を記載する時に用いる、用語"及び/又は"は、記載した条件の両者が含まれる又は記載した2個の条件の中1個が含まれる場合の状況を表す。恒久的リソソーム破壊及び/又は酸性セラミダーゼの分解からフリーな状況を表す場合、この状況は、恒久的リソソーム破壊からフリー、酸性セラミダーゼ分解からフリー、又は恒久的リソソーム破壊からフリー且つ酸性セラミダーゼからフリーであることができる。
【0049】
本明細書で用いる用語"アルキル基"は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル期、ヘキセニル基、オクテニル基、ブタジエニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基及びアレニル基を含む、線状(即ち、"直鎖")、分枝状又は環状、飽和又は少なくとも部分的に飽和、及び幾つかの場合、完全不飽和の(即ち、アルケニル基及びアルキニル基)炭化水素鎖を含む、C1〜20を表わす。"分枝状"は、メチル基、エチル基、又はプロピル基のような、低級アルキル基が、直鎖アルキル鎖に付加したアルキル基を表す。"低級アルキル基"は、1から8炭素原子(即ちC1〜8アルキル基)例えば、1,2,3,4,5,6,7又は8炭素原子、を有するアルキル基を表す。"高級アルキル基"は、約10から約20炭素原子、例えば、10,11,12,13,14,15,16,17,18,19又は20炭素原子、を有するアルキル基を表わす。ある態様において、"アルキル基"は、特に、C1〜8直鎖アルキル基を表す。他の態様において、"アルキル基"は、特に、C1〜8分枝状鎖アルキル基を表す。
【0050】
アルキル基を、任意に、同一又は異なる、1以上のアルキル置換基により置換することができる("置換アルキル基")。用語"アルキル基の置換基"は、アルキル基、置換アルキル基、ハロ基、アリールアミノ基、アシル基、ヒドロキシル基、アリールオキシル基、アルコキシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルオキシル基、アラルキルチオ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、及びシクロアルキル基を含むが、これ等に限定されない。これ等は、任意に、アルキル鎖に沿って、1以上の酸素原子、イオウ原子又は置換又は非置換窒素原子、を挿入することができて、ここで窒素置換基は、水素原子、低級アルキル基(本明細書では、"アルキルアミノアルキル基"とも表わす)又はアリール基である。
従って、本明細書で用いる用語"置換アルキル基"は、本明細書で定義した、アルキル基を含み、このアルキル基中で、アルキル基の官能基の1以上の原子が、例えば、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン、アリール基、置換アリール基、アルコキシル基、ヒロドキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、硫酸基、及びメルカプト基を含む、他の原子又は官能基に置換される。
【0051】
本明細書で用いられる用語"アリール基"は、共有結合により結合した、又はメチレン基又はエチレン基部分のような、しかしこれ等に限定されない、一般的な置換基に結合した、単一芳香族環又は互いに融合した多芳香族環であることができる芳香族置換基を表すために用いられる。一般的な結合置換基はまた、ベンゾフェノンのようなカルボニル基、ジフェニルエーテルにおける様な酸素、ジフェニルアミンにおける様な窒素であることができる。用語"アリール基"は、特に、複素環芳香族化合物を包含する。芳香族環(複数もあり)は、とりわけ、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ジフェニルエーテル基、ジフェニルアミン基、及びベンゾフェノン基を含むことができる。特別の態様において、用語"アリール基"は、約5から約10炭素原子、例えば、5,6,7,8,9又は10炭素原子、を含む、及び5−及び6−員炭化水素及び複素環芳香族環基を含む、環状芳香族基を意味する。
【0052】
アリール基は、任意に同一又は異なる1以上の"アリール基の置換基"で置換されることができ、この"アリール基の置換基"には、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アリールオキシル基、アラルキルオキシル基、カルボキシル基、アシル基、ハロ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アロイルアミノ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アルキレン基、及びNR'R''(ここでR'及びR''は、独立してハロゲン基、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基及びアラルキル基であることができる)が含まれる。
従って、本明細書で用いる用語"置換アリール基"は、1以上の原子又はアリール基の官能基が、例えば、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン、アリール基、チカンアリール基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、硫酸基、及びメルカプト基を含む、他の原子又は官能基と、置換される、本明細書で定義した、アリール基を含む。
アリール基の特別の例は、シクロペンタジエニル基、フェニル基、フラン基、チオフェン基、ピロール基、ピラン基、ピリジン基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、イソチアゾール基、イソキサゾール基、ピラゾール基、ピラジン基、トリアジン基、ピリミジン基、キノリン基、イソキノリン基、インドール基、カルバゾール基、等々を含むが、これ等に限定されない。
【0053】
本明細書で用いられる以下:
【化7】
の化学式により一般的に代表される構造は、例えば、3−炭素、4−炭素、5−炭素、6−炭素等々の、脂肪族及び/又は芳香族環状化合物の、しかしこれ等に限定されない、環構造を表し、この環状化合物は、置換基R基(ここでR基は、存在又は不在であることができて、存在する場合は、1以上のR基は、それぞれ環状構造の1以上の可能な炭素原子上で置換されることができる)を含む。R基の存在又は不在、及びR基の数は、整数n値により決定される。1以上の場合、各R基は、他のR基上ではなく、環状構造の可能な炭素原子上で置換される。例えば、以下の構造
【化8】
(式中、nは0から2の整数)は、以下:
【化9】
を含むが、これ等に限定されない化合物を含む。
【0054】
"環状"及び"シクロアルキル基"は、約3から約10炭素原子、例えば、3,4,5,6,7,8,9又は10炭素原子の、非芳香性単一環式−又は非芳香性多環式リングシステムを表す。シクロアルキル基は、任意に、部分的に不飽和であることができる。また、シクロアルキル基は、任意に、本明細書で定義された、オキソ基及び/又はアルキレン基などの、アルキル基の置換基で置換することができる。この環状アルキル鎖に沿って、1以上の酸素、硫黄、又は置換又は非置換の窒素原子を挿入することができるが、ここで窒素置換基は、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、又は置換アリール基であり、従って、複素環基を提供する。代表的な単環シクロアルキル環は、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロヘプチル基を含む。多環シクロアルキル環は、アダマンチル基、オクタヒドロナフチル基、デカリン基、カンファー基、カンファン基及びノルアダマンチル基を含む。
【0055】
用語"複素環"は、約3から約14原子の非芳香性又は芳香性、単環式又は多環式リングシステムを表し、少なくとも1原子は、異種原子(ヘテロ原子;例えば、酸素、窒素又は硫黄原子)である。用語"N−複素環"は、少なくとも1個の異種原子が窒素原子である複素環を表す。N−複素環の例としては、アゼチジン、ピロリジン、ピロール、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、モルホリン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、インドール、カルバゾール、キノリン、イソキノリン、オキサゾール、チアゾール、イソチアゾール及びチアジンを含むが、これ等に限定されない。幾つかの態様において、用語N−複素環は、ピリジン以外のN−複素環を表す。
"アラルキル基"は、前述のようなアリール基及びアルキル基による、アリール−アルキル基を表し、置換アリール基及び置換アルキル基を含む。アラルキル基の例としては、ベンジル基、フェニルエチル基及びナフチルメチル基を含む。
【0056】
本明細書で用いる用語"アシル基"は、有機カルボン酸基を表し、ここでカルボキシル基の-OHは、他の置換基に置換されている。従って、"アシル基"は、構造RC(=O)-基により表され、ここで、Rはアルキル基、置換アルキル基、アラルキル基、アリール基又は本明細書で定義された置換アリール基である。従って、用語"アシル基"は、特に、アセチルフラン基及びフェナシル基のような、アリールアシル基を含む。アシル基の特別な例は、アセチル基及びベンゾイル基を含む。
"N−アシル基"は、構造-N-C(=O)-Rを有し、Rは、アシル基に対して定義したものである。これらの置換基はアミド基とも表すことができる。修飾したN−アシル基は、N−アシル基の酸素がS又はNHにより置換された化合物、及びカルボニル基(即ち、-C(=O)-)が、窒素原子に加えて第2の異種原子として付加した化合物を含む。例えば、カルボニル基は、第2の窒素原子に付加して、ウレア結合(即ち、-NH-C(=O)-NH-R)を形成することができる。
【0057】
用語"アミノ基"は、-NH2、NHR及びNR2基、ここでRはアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、又はアラルキル基であり、を表し、及びN−複素環におけるアミノ基の置換基(例えば、モルホリンその他)を表す。
用語"エステル"は、-O-C(=O)-R-基を含む部分を表し、ここでRは、アルキル基、置換アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は置換アリール基であることができる。幾つかの態様において、このR基は、アミノ基の置換基を含むことができて、及びこのエステルはアミノエステルである。
本明細書で用いる、用語"ハロ"、"ハロゲン化物"又は"ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素基を表す。
用語"ヒドロキシル基"は、-OH基を表す。
用語"ニトロ基"は、-NO2基を表す。
用語"独立して選択された"を用いる場合、表された置換基(例えば、R1及びR2基、又はX及びY基のようなR基)は、同一又は異なることができる。例えば、両R1及びR2は、置換アルキル基であることができて、又はR1は水素原子であることができて及びR2は置換アルキル基等々であることができる。
【0058】
用語"ガン転移"は原発性腫瘍の他の器官への広がりを表す。
用語"アポトーシス"は、プログラムされた細胞死を表し、細胞が自殺するように遺伝的に調節することができる。アポトーシスの症候群は、細胞障害性煮沸(cytotoxic boiling)、クロマチン凝縮、及びDNA断片化を伴う、生存性の喪失である(Wyllie et al., Int. Rev. Cytol., 68, 251-306 (1980))。アポトーシス過程は、組織の分化、器官のサイズや形、及び細胞の寿命を調節する上で重要な役割を有する。
【0059】
III. 化学式(I)の化合物
III.A.B13のω−アミノアシル類似体
幾つかの態様において、本発明は、化学式(Ia):
【化1】
(式中:
nは0〜13の整数であり;
R1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は、独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;及び
Yは、CH2又はNHである)で表される化合物を提供する。
【0060】
幾つかの態様において、化学式(Ia)の化合物は、アミド又は尿素である。従って、幾つかの態様において、Xは酸素原子である。幾つかの態様において、この化合物はアミドであり、Xは酸素原子であり、及びYはCH2である。
幾つかの態様において、R2は水素原子又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec-ブチル基、n−ペンチル基、又はn−ヘキシル基のような、低級アルキル基(即ち、C1〜C6アルキル基)である。幾つかの態様において、R2は水素原子である。
幾つかの態様において、化学式(Ia)のフェニル環は、1以上のニトロ基により置換される。従って、幾つかの態様において、R3は、NO2である。幾つかの態様において、R3は、窒素含有基を含む置換アルキル基に対してメタ又はパラ位に置換される。幾つかの態様において、R3はパラ位である。
幾つかの態様において、R4及びR5の一方又は両者が、酸素含有置換基を含む。幾つかの態様において、R4及びR5の1方又は両者は、ヒドロキシル基である、又はエステル基を含む。幾つかの態様において、R4は、CH2OHである。幾つかの態様において、R5は、OHである。
変数nは、0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12又は13であることができる。幾つかの態様において、nは1及び7の間の整数である。幾つかの態様において、nは7である。幾つかの態様において、nは1である。
【0061】
R1基は、全ての適切なアミノ基であることができる。このアミノ基は、非置換(即ち、NH2)又は1以上のアルキル基、アラルキル基、又はアリール窒素置換基を含む。幾つかの態様において、R1は、アルキルアミノ基であり、及び構造NHR6を有し、ここでR6は、アルキル基である。幾つかの態様において、R1はジアルキルアミノ基であり、及び構造NR6R7を有し、ここでR6及びR7はそれぞれアルキル基である。幾つかの態様において、R1は、N−複素環である。適切なN−複素環は、芳香族及び非芳香族N−複素環の両者を含む。このN−複素環は、窒素原子に加えて、異種原子を含むことができる(即ち、O原子又はS原子)。N−複素環はまた、1以上の窒素原子を含むことができる。適切な、N−複素環は、アゼチジン、ピロリジン、ピロール、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、モルホリン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、インドール、カルバゾール、キノリン、イソキノリン、オキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、及びチアジンを含むが、これ等に限定されない。幾つかの態様において、このN−複素環は、ピリジンではない。幾つかの態様において、R1は、イミダゾール又はモルホリン、例えば、
【化10】
である。
【0062】
R5基に付加した炭素、及びN原子及びR4基に付加した炭素の立体化学は、独立してR(Rectus;右)又はS(Sinister;左)である。幾つかの態様において、両炭素の立体化学は、Rである。
幾つかの態様において、この化合物は、(1R, 2R)-2-[N-(12'-{1"-イミダゾール}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール(LCL433); (1R, 2R)-2-[N-(12'-{1"-モルホリン}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL449); (1R, 2R)-2-[N-(12'-アミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL463); (1R, 2R)-2-[N-(12'-N,N-ジメチルアミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL464); (1R, 2R)-2-[N-(6'-{N-オクチルアミノ}-ヘキサノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL488);及び(1R, 2R)-2-[N-{12'-N-メチルアミノ}-ドデカノイル]-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL506)を含むが、これ等に限定されない、群の1つである。幾つかの態様において、この化合物は、(1R, 2R)-2-[N-(12'-N,N-ジメチルアミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL464)を含む。
【0063】
B13のω−アミノアシル類似体は、全ての適切な方法により合成することができて、この方法を以下実施例2において記載し、及び図1に図解する。例えば、2−アミノ−1−(4−ニトロフェニル)プロパン−1,3ジオール((即ち、図1の化合物1)のような適切な2−アミノエチル置換芳香族化合物は、ω−ハロ−アシルハロゲン化物(例えば、ω−ブロモ−アシル塩化物)と反応し、アミドを形成する。アシル鎖端のハロゲン化物の、アミン(即ち、アンモニア、アルキルアミン、ジアルキルアミン、又はN−複素環)との求核的置換は、化学式(Ia)の所期の化合物をもたらす。求核的置換反応は、適切な有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、又はプロパノールのようなアルコール、又はテトラヒドロフラン(THF)のようなエーテル)中において、塩基(例えば、NaOH 、NaHCO3その他)存在下に行われ、反応中生成する全ての酸(例えば、HBr)を中和する。他の適切な、メシレート(即ち、-O3SCH)及びトキシレート(即ち、-O3SC6H4CH3)を含む脱離基を、ハロゲン化物の代わりに用いることができる。化学式(Ia)の尿素は、第1に、アミン出発材料(例えば、化合物1)又はこの保護された改変体をイソシアン酸塩(例えば、ホスゲンとの反応により)に変化させ、その後このイソシアン酸塩を適切なアミンと反応させることにより作成することができる。当業者が理解するように、適切なアミンは、保護され、及び/又は更なる化学転換体を通して、ハロゲン又はアミノ基に転換することができる、第2の置換基(即ち、1級アミノ基に加えて)を伴うアルキル基を含む、1級アミンであることができる。
【0064】
III.B. B13のプロドラッグ
代表的態様において、本明細書に開示した化合物は、B13又はこの類似体のプロドラッグのような、プロドラッグである。プロドラッグは、患者又はサンプルに与えられると、所期の活性(例えば、酸性セラミダーゼ(ACDase)の阻害)を有する他の化合物(即ち、"親化合物")を(直接又は間接に)提供することができる化合物を意味する。幾つかの、全てではない、態様において、このプロドラッグ化合物は、親化合物より低い阻害活性を有する。幾つかの態様において、このプロドラッグ化合物は、親化合物に変換される前は、測定できる阻害活性を有しない。幾つかの態様において、このプロドラッグ自体が、所期の活性を有する。
プロドラッグの親化合物への転換を、特定の酵素(例えば、エステラーゼ)存在下、又は特定の生物的条件(例えば、生理的に適切なpH)において、行うことができる。幾つかの態様において、このプロドラッグは、最初、他のプロドラッグに転換され、これはその後、(時にはずっとゆっくり)親化合物に転換される。プロドラッグは、これが患者に投与される場合(例えば、経口的に投与した化合物が、血液中により早く吸収されることを可能にする)、本発明の化合物の生物学的利用能を増加することができる、及び/又は、例えば、代謝物に比較して、生物的区画(例えば、リソソーム、脳又はリンパ系、その他)への親化合物の輸送を高めることができる。
【0065】
従って、幾つかの態様において、本発明は、化学式(Ib):
【化1】
(式中:
nは、0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;
ここで、R4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含む)で表される化合物を提供する。
【0066】
幾つかの態様において、R4はエステルを含む。例えば、R4は、化学式:-CH2O-C(=O)CH(R8)NR6R7であることができる。幾つかの態様において、R8は、Hであり、R6及びR7は、それぞれアルキル基である。
幾つかの態様において、R5はエステル部分を含む。幾つかの態様において、R5は、-OC(=O)CH(R8)NR6R7である。幾つかの態様において、R8は、水素原子であり、R6及びR7は、それぞれアルキル基である。
幾つかの態様において、R5及びR4の両者は、エステル部分を含む。従って、幾つかの態様において、R4は、-CH2O-C(=O)CH(R8)NR6R7であり、R5は、-OC(=O)CH(R8)NR6R7である。
幾つかの態様において、nは、5であり、及びR1は、n−ブチル基である。
【0067】
幾つかの態様において、化学式(Ib)の化合物は、アミド又は尿素である。従って、幾つかの態様において、Xは酸素原子である。幾つかの態様において、この化合物は、アミドであり、及びXは酸素原子であり、YはCH2である。
幾つかの態様において、R2は、水素原子又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec-ブチル基、n−ペンチル基、又はn−ヘキシル基のような、低級アルキル基(即ち、C1〜C6アルキル基)である。幾つかの態様において、R2は、水素原子である。
幾つかの態様において、化学式(Ib)のフェニル環は、1以上のニトロ基により置換される。従って、幾つかの態様において、R3は、NO2である。幾つかの態様において、R3は、メタ又はパラ位置換基であり、窒素含有官能基を含む置換アルキル基である。幾つかの態様において、R3は、パラ位である。
R5に付加した炭素、及びN原子及びR4基に付加した炭素の立体化学は、独立してR又はSである。幾つかの態様において、両炭素の立体化学は、Rである。
【0068】
幾つかの態様において、化学式(Ib)の化合物は、以下
【化3】
【化4】
【化5】
から成る群から選択されるが、これ等に限定されない。
これらのプロドラッグは、例えば、ペプチド合成で既知の試薬又は条件を用いて、B13、又はヒドロキシ基含有B13類似体の完全な又は選択的エステル化により合成することができる。幾つかの態様において、選択的エステル化は、より低い反応性の2級アルコールのエステル化を望む場合、存在するより反応性の高い1級アルコールを保護するための、適切な官能基の保護手段の使用を含む。
【0069】
III. C. 医薬的に許容される塩
幾つかの態様において、本明細書に開示した化合物を、医薬的に許容された塩として投与することができる。従って、幾つかの態様において、本発明は、化学式(Ia)及び(Ib)の化合物の医薬的に許容される塩を提供する。このような、医薬的に許容される塩としては、グルコン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩、硫酸塩、及び塩酸塩がある。幾つかの態様において、この塩は、塩酸塩である。本明細書に記載したこの化合物の塩を、例えば、溶液中で、塩基性化合物(例えば、アミン含有の)を所期の酸と反応させることにより、合成することができる。
【0070】
IV.化学式(I)の化合物の使用
幾つかの態様において、本発明は、サンプルを化学式(I):
【化1】
(式中:
nは、0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;
ここで、R4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含み、又はR1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択される)化合物と接触させることにより、酸性セラミダーゼ(ACDase)又はセラミダーゼ関連活性を阻害する方法を提供する。従って、化学式(I)の化合物は、本明細書上記第III項に記載した、化学式(Ia)及び(Ib)の化合物を含む。幾つかの態様において、化学式(I)の化合物の阻害作用を、恒久的リソソーム不安定化及び/又は酸性セラミダーゼのタンパク質分解なしに、又は実質的になしに(即ち、20,15,10,5,4,3,2又は1%より少なく)得ることができる。
【0071】
幾つかの態様において、サンプルは、in vitro 細胞サンプル又はin vivo 細胞サンプルである。従って、サンプルは、培地中の酸性セラミダーゼ(ACDase)を含む全細胞又は溶解した細胞を含むことができる。このサンプルはまた、組織、血漿、又は器官サンプル中に存在する細胞、又は患者に存在する細胞を含むことができる。従って、本明細書に記載した方法を、酸性セラミダーゼ(ACDase)及びセラミダーゼ関連活性に関係する科学的及び/又は医学研究において用いることができる。
【0072】
本発明は、様々な疾病又は疾患に関係する1以上の症候群の治療、予防、管理、又は改善のための本発明の化合物の使用を含む方法を提供する。従って、幾つかの態様において、本発明は、患者における好ましくないセラミダーゼ、セラミダーゼ関連、及び/又はスフィンゴシンキナーゼ活性と関係する疾病又は疾患の治療又は予防の方法を提供し、この方法は、患者に有効量の化学式(I):
【化1】
(式中:
nは、0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;
ここで、R4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含み、又はR1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択される)化合物の投与を含む方法である。幾つかの態様において、化学式(I)の化合物の投与は、恒久的リソソーム不安定化及び/又は酸性セラミダーゼのタンパク質分解なしに、又は実質的になしに(即ち、20,15,10,5,4,3,2又は1%より少なく)行うことができる。
【0073】
上記のように、セラミドはアポトーシス、細胞周期停止、及び細胞老化を含む、ストレスに対する多くの生化学的及び細胞の応答を変える(Hannun et al., Trends in Cell Biol., 10, 73-80 (2000);及びMathias et al., Biochem. J., 335, 465-480 (1998))。腫瘍壊死因子α(TNF-α)化学療法剤、及び熱のような、細胞外因子及びストレス刺激は、セラミド蓄積を引き起こすことが知られている。セラミド蓄積を起こす1つの方法は、セラミドの代謝に関わるセラミダーゼのような酵素活性を調節することにより得られる。セラミド濃度の変化は、セラミド蓄積に連結した多くのサイトカインの生物効果及びストレス誘導因子を再現するのに十分である。セラミドの蓄積はまた、多くの細胞老化の特徴を再現する。多くの種類の細胞において、セラミドは、形態学的に、及び細胞分化の生化学的プログラムを活性化することにより、細胞分化を引き起こす。セラミドはまた、多くのガン細胞において、細胞周期停止により引き起こすことができる、アポトーシスを誘導する。従って、本発明に従い、本発明の方法及び組成物によるセラミド又はスフィンゴシンのレベルの調節により、ストレス応答及びアポトーシスが関係する疾病の治療及び予防を行うことができる。本発明の方法により治療及び予防ができる、幾つかの疾患及び疾病の例を以下に記載する。
【0074】
特定の理論に囚われることなく、本発明の化合物は、細胞において、又は細胞のオルガネラに存在する1以上のセラミダーゼ(例えば、酸性セラミダーゼ(ACDase))又はセラミダーゼ関連活性の調節因子として働くことができる。幾つかの態様において、オルガネラは、リソソームのような、しかしこれに限らない、正に荷電したオルガネラである。内在するメカニズムに拘わらず、本発明の化合物は、細胞死を誘導することができる。
幾つかの態様において、本発明は、細胞とセラミダーゼ活性を阻害する化合物との接触を含む、細胞内のセラミドレベルを増加させる方法を提供する。
幾つかの態様において、本発明は、細胞とセラミドからの変換の結果として生成されるスフィンゴシン量を減少させるように、セラミダーゼ活性を阻害する化合物との接触を含む、細胞内スフィンゴシンの形成を阻害する方法を提供する。
幾つかの態様において、本発明は、患者の細胞内セラミダーゼタンパク質のセラミダーゼ活性を阻害する有効量の化合物の患者への投与を含む、患者のセラミドの細胞内レベルを増加させる方法を提供する。
幾つかの態様において、本発明は、患者の細胞内のセラミダーゼタンパク質のセラミダーゼ活性を阻害する有効量の化合物の患者への投与を含む、患者のスフィンゴシンの細胞内生成を阻害する方法を提供する。
【0075】
幾つかの態様において、セラミダーゼ機能を阻害する組成物を、治療的に及び/又は予防的に患者に投与するが、その患者は:(1)(正常又は好ましいレベルと比較して)セラミダーゼタンパク質のレベル又は機能の増加が関係する疾病又は疾患にある患者(例えば、セラミダーゼタンパク質が、生物的に過剰に活性又は過剰発現する患者);又は(2)in vitro(又はin vovo)検定がセラミダーゼ阻害剤投与を指示する疾病又は疾患に置かれた患者である。セラミダーゼタンパク質のレベル又は機能の増加は、直ちに検出することができる、例えば、患者から組織標本を得て(例えば、生検組織から)、RNA又はタンパク質レベル、発現されたセラミダーゼRNA又はタンパク質の構造及び/又は活性を検定することによる。セラミダーゼ酵素検定、セラミダーゼタンパク質を検出及び/又は可視化するための免疫検定(例えば、Westernブロット、免疫沈降及びその後のドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動、免疫細胞化学その他)及び/又はセラミダーゼmRNAを検出し及び/又は可視化することによるセラミダーゼ発現を検出するためのハイブリダイゼーション検定(例えば、Northern検定、ドットブロット検定、in situ ハイブリダイゼーション法、その他)、その他を含む、がこれ等に限定されない、標準技術である多くの方法を用いることができる。
【0076】
本発明に従い、細胞過増殖及び/又は機能障害のスフィンゴ脂質シグナル伝達が関与する疾患は、患者にセラミダーゼ機能を阻害する組成物の投与により、治療及び/又は予防される。これらの疾病又は疾患は、細胞増殖、細胞接着、細胞移動、肉芽組織発生、原発性及び転移性腫瘍疾病、炎症、心臓血管疾病、卒中、虚血、及び/又はアテローム硬化症に関係する疾患及び疾病を含むが、これ等に限定されない。治療され及び/又は予防される、細胞増殖が関与する疾患及び疾病は、ガン、全悪性状態(例えば、過形成、異形成、形成異常)、良性腫瘍、過増殖性疾患、及び良性異常増殖性疾患を含むが、これ等に限定されない。ガンは本来、患者における任意の正常組織由来の異常細胞の増加、これらの異常細胞による他の組織への浸潤、及び遠方の部位への異常細胞のリンパ性又は血液由来の散布により特徴付けられる。セラミダーゼ機能を阻害する本発明の組成物の投与により治療され、予防され、管理され、及び/又は改善されることができる悪性腫瘍及び関連する疾患、特に転移ガンを、以下に考察する(これらの疾病の総説については、Fishman et al., Medicine, 2nd Ed., J.B. Lippincott Co., Philadelphia, 1985を参照)。
【0077】
幾つかの態様において、細胞増殖が欠けている又は要求される疾患を、患者に対してセラミダーゼ機能を促進する本発明の組成物を投与することにより、治療又は予防することができる。
本発明は、治療又は予防が、本発明の化合物の投与により改善される疾病又は疾患を治療及び/又は予防するための方法を包含する。
幾つかの態様において、"治療"又は"治療すること"は、疾病又は疾患、又は少なくとも疾病の1つの認知できる症状群の改善を表す。"治療"又は"治療すること"はまた、患者により必ずしも認知されない疾病又は疾患に関係する少なくとも1つの測定できる物理的パラメーターの改善を表す。"治療"又は"治療すること"はまた、物理的に(例えば、認知できる症状群の安定化)、生理的に(例えば、物理的パラメーターの安定化)又は両者による、疾病又は疾患の進行の阻害を表すことができる。"治療"又は"治療すること"はまた、疾病又は疾患の発病の遅延を表す。
【0078】
幾つかの態様において、本発明の方法及び組成物は、疾病又は疾患に対する予防措置として有用である。本明細書で用いる"予防"又は"予防すること"は、任意の疾病又は疾患に罹る危険性の低下を表す。
幾つかの態様において、本発明の組成物は、ガン、ガン転移、アテローム硬化症、狭窄、炎症、喘息及びアトピー性皮膚炎の治療のために使用される。幾つかの態様において、本発明は、癌の治療の必要性のある患者への有効量の化学式(I)の化合物の投与を含むガン治療方法を提供する。
幾つかの態様において、本発明は、他の治療と組み合わせた本発明の化合物の投与を含む、疾病又は疾患を治療又は予防する方法を提供する。
【0079】
本発明の方法及び組成物により治療及び/又は予防することができるガン及び関連疾病は、以下の疾病:急性白血病、急性リンパ性白血病、(骨髄芽求性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、赤白血病性白血病及び骨髄異形成症候群等の)急性骨髄性白血病、(慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ性白血病、毛髪細胞白血病等の、しかしこれ等に限定されない)慢性白血病;真性多血症;Hodgkin氏病、非Hodgkin氏病等の、しかしこれ等に限定されないリンパ腫;くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞白血病、孤立性形質細胞種、及び髄外形質細胞種等の、しかしこれ等に限定されない、多発性骨髄腫;Waldenstrom型マクログロブリン血症;重要性未定のモノクローナル免疫グロブリン異常症;良性モノクローナル免疫グロブリン異常症;重鎖病;骨原性肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、Ewing肉腫、悪性巨大細胞腫瘍、骨繊維肉腫、軟骨種、骨膜肉腫、軟部組織肉腫、血管肉腫、繊維肉腫、Kaposi肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫等の、しかしこれ等に限定されない、骨及び結合組織肉腫;神経膠腫、星状細胞種、脳幹神経膠腫、上衣腫、希突起神経膠腫、非神経膠腫、聴神経腫瘍、頭蓋咽頭腫、髄芽細胞種、髄膜腫、松果体細胞種、松果体芽腫、脳原発性リンパ腫等の、しかしこれ等に限定されない、脳腫瘍;腺癌、小葉(小細胞)癌、乳管内癌、乳房の髄様腺管癌、粘液性乳癌、乳腺管状癌、乳頭部乳癌、Paget病、及び炎症性乳癌を含む、しかしこれ等に限定されない、乳癌;クローム親和細胞腫及び副腎皮質癌等の、しかしこれ等に限定されない、副腎癌;甲状腺乳頭又は濾胞状癌、甲状腺髄様癌及び未分化甲状腺癌等の、しかしこれ等に限定されない、甲状腺癌;インスリノーマ(膵島細胞腺腫)、ガストリン産生腫瘍、グルカゴン産生腫瘍、VIP産生腫瘍、ソマトスタチン分泌性腫瘍、及び癌様腫又は膵島細胞腫等の、しかしこれ等に限定されない、膵臓癌;Cushing病、プロラクチン分泌性腫瘍、先端巨大症、及び尿崩症等の、しかしこれ等に限定されない、脳下垂体腫瘍;(虹彩黒色腫、脈絡叢黒色腫、及び毛様体黒色腫等の)眼内黒色腫、及び網膜芽腫等の、しかしこれ等に限定されない眼癌;扁平上皮癌、腺癌及び黒色腫等の膣癌;扁平上皮癌、黒色腫、腺癌、基底細胞癌、肉腫及びPaget病等の外陰癌;扁平上皮癌、及び腺癌等の、しかしこれ等に限定されない子宮頸癌;子宮内膜癌、及び子宮肉腫等の、しかしこれ等に限定されない、子宮癌;卵巣上皮癌、境界腫瘍、胚細胞癌、及び間質腫瘍等の、しかしこれ等に限定されない、卵巣癌;頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)、(扁平上皮癌、腺癌、腺様嚢胞癌、粘膜表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、黒色腫、形質細胞腫、ゆうぜい性(疣状)癌、及び燕麦細胞(小細胞)癌等の、しかしこれ等に限定されない)食道癌;腺癌、菌子状(ポリープ状)、潰瘍性、表層進展性、広範囲散在性、悪性リンパ腫、リンパ肉腫、繊維芽肉腫、及び癌肉腫等の、しかしこれ等に限定されない、胃癌;結腸癌;直腸癌;肝細胞癌及び肝芽細胞腫、(腺癌等の)胆嚢癌等の、しかしこれ等に限定されない肝臓癌;乳頭状、結節性、及び拡散性等の、しかしこれ等に限定されない胆管癌;非小細胞肺癌、扁平上皮癌(上皮性癌)、腺癌、大細胞癌及び小細胞肺癌等の肺癌;胚細胞腫瘍、精巣腫、未分化、古典的(一般的)、精母細胞性、非精巣腫、胎児性癌、奇形癌、繊毛癌(卵黄嚢腫)等の、しかしこれ等に限定されない睾丸癌;腺癌、平滑筋肉腫及び横紋筋肉腫等の、しかしこれ等に限定されない様な、前立腺癌;陰茎癌;扁平上皮癌等の、しかしこれに限定されない、口腔癌;腺癌、粘膜表皮癌、及び腺様嚢胞癌等の、しかしこれ等に限定されない、唾腺癌;扁平上皮癌及びいぼ状等の、しかしこれ等に限定されない、咽頭癌;基底細胞癌、扁平上皮癌及び黒色腫、表層進展性黒色腫、結節性黒色腫、黒子悪性黒色腫、肢端黒子型黒色腫等の、しかしこれ等に限定されない、皮膚癌;腎細胞癌、腺癌、副腎腫、繊維芽肉腫、移行性上皮癌(腎盂、及び/又は、ウテレル)等の、しかしこれ等に限定されない、腎臓癌;Wilms腫瘍;移行上皮癌、扁平上皮癌、腺癌、癌肉腫等の、しかしこれ等に限定されない、膀胱癌である。さらに、ガンとしては、粘液肉腫、骨原性肉腫、内皮肉腫、リンパ管内皮肉腫、中皮腫、滑膜腫、血管芽腫、上皮癌、嚢苞腺腫、気管支原性癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌及び乳頭状腺癌を含む(このような疾病に対しては、Fishman et al., Medicine, 2nd Ed., J.B. Lippinocott Co., Philadelphia, 1985;及びMurphy et al., Informed Decisions: The Complete Book of Cancer Diagnosis, Treatment, and Recovery, Viking Penguin, Penguin Books, U.S.A., Inc., New York, 1997))。
【0080】
幾つかの態様において、本発明の方法及び組成物は、乳癌、前立腺癌、黒色腫、胞巣状癌、又は頭頚部癌の治療及び/又は予防のために使用される。
セラミダーゼ活性を阻害する本発明の組成物をまた、前悪性状態の治療及び/又は前悪性状態から腫瘍又は悪性状態への進行の予防のために、投与することができる。このような、予防的又は治療的な使用は、特に、過形成、化生、又はより特別に、異形成を含む非腫瘍細胞増殖が生じたところで、腫瘍又はガンへの進行に先立つと知られる条件、又は疑わしい条件に必要とされる(このような異常増殖の総説に対して、Robbins and Angell, Basic Pathology, 2nd Ed., W.B. Saunders Co., Philadelphia, 1976, pages 68-79))。
過形成、化生、又は異形成のように特徴付けられる異常細胞増殖の存在とは別に、又は加えて、患者からの細胞サンプルにより、in vivo又はin vitroで表示される形質転換型又は悪性表現型の1以上の特徴が存在する場合、セラミダーゼ機能を阻害する組成物の予防的及び/又は治療的投与の要望を指示することができる。形質転換表現型の特徴は、形態的変化、基質への付着の緩み、接触阻止の喪失、足場依存性の喪失、プロテアーゼの放出、糖輸送の増加、血清要求性の減少、胎児抗原の発現、その他を含むことができる。
【0081】
幾つかの態様において、白血病、上皮細胞の良性様の過形成又は化生損傷、又はBowen病、in situ悪性腫瘍は、予防的侵襲の要望を指示する前腫瘍損傷である。
幾つかの態様において、線維嚢胞性疾病(嚢胞性の過形成)、乳腺異形成、特に腺疾患(良性上皮性過形成)は、予防的侵襲の要望を指示する。本発明のヒト酸性セラミダーゼの遺伝子は、染色体8(8p22)に局在する。上述の疾病又は疾患に加えて、酸性セラミダーゼは、この位置に基づき、この領域に関係する疾病に関わることができて、それ等は、腺癌(甲状腺)、急性骨髄性白血病、及び特に、鼻咽頭領域に関係する扁平上皮癌等である。
【0082】
他の態様において、以下の悪性腫瘍への1以上の誘発因子を示す患者は、有効量の本発明の化合物の投与により治療されるが、誘発因子としては:悪性腫瘍に関係する染色体転座(例えば、慢性骨髄性白血病に対するPhiladelphia染色体、濾胞性リンパ腫に対するt(14;18));家族性ポリープ症又はGardner症候群(結腸癌の可能な前兆);良性モノクローナル免疫グロブリン異常症(多発性骨髄腫の可能な前兆);及びメンデル(遺伝的)遺伝様式(例えば、結腸の家族性ポリープ症、Gardner症候群、遺伝性外軟骨腫、多内分泌腺腫症、アミロイド産生及びクローム親和細胞腫を伴う甲状腺髄様癌、Peutz-Jegher症候群、Von Recklinghausenの神経線維腫症、網膜芽腫、頸動脈体腫瘍、皮膚黒色癌、眼内黒色癌、色素乾皮症、血管拡張性失調症、Chediak-Higashi症候群、白化症、Fanconi再生不良性貧血、及びBloom症候群)を示すガン又は前ガン疾病を有するヒトと一親等関係;Robbins and Angell, Basic Pathology, 2nd Ed., W.B. Saunders Co., Philadelphia, 1976, pages 112-113を参照。
【0083】
本発明はまた、化学式(I)の化合物を患者に投与する段階を、全ての順番で、含む方法で、患者のガン又は転移を治療及び/又は予防する方法を包含する。幾つかの態様において、本発明の組成物及び方法を、がん性細胞の増殖及び/又は転移を予防、阻害、及び/又は減らすために用いることができる。化合物の投与は、がん性細胞の増殖及び/又は転移を、上記化合物の投与なしの場合の、増殖又は転移と比較して、幾つかの態様では、少なくとも99%、幾つかの態様では、少なくとも95%、幾つかの態様では、少なくとも90%、幾つかの態様では、少なくとも85%、幾つかの態様では、少なくとも80%、幾つかの態様では、少なくとも75%、幾つかの態様では、少なくとも70%、幾つかの態様では、少なくとも65%、幾つかの態様では、少なくとも60%、幾つかの態様では、少なくとも55%、幾つかの態様では、少なくとも50%、幾つかの態様では、少なくとも45%、幾つかの態様では、少なくとも40%、幾つかの態様では、少なくとも35%、幾つかの態様では、少なくとも30%、幾つかの態様では、少なくとも25%、幾つかの態様では、少なくとも20%、幾つかの態様では、少なくとも15%、幾つかの態様では、少なくとも10%、幾つかの態様では、少なくとも5%阻害及び/又は減少させる。
【0084】
本発明はまた、現在の単一薬剤治療又は現在の組合せ治療よりも良好な治療プロフィールを提供する疾病治療及び/又は予防の方法を包含する。本発明により、好ましくない、又は不利な効果を減らし又は避けながら、加算的能力又は加算的治療効果を有する組合せ療法を包含する。
本発明化合物の投与の組合せにおいて、用いることができる他のガン治療は1以上の組成物の使用を含み、この組成物は、化学物質、免疫療法剤、ガンワクチン、抗血管新生剤、サイトカイン、ホルモン治療、遺伝子治療、生物的治療及び放射線治療を含むが、これ等に限定されない。治療の効果の維持及び/又は促進の間、本発明の方法はまた、患者承諾を増加させ、治療を改善し、及び/又は好ましくない、又は不利な効果を減らすことができる。
【0085】
幾つかの態様において、本発明の化合物を、ガンの治療のための治療法を受けており、その治療法単独の治療のために好ましくない、又は不利な効果(例えば、有効投与量では毒性のある、又は有害な治療法のみが投与される)を経験したかも知れない患者に投与する。本発明を考えると、この化合物は、この治療法の治療上の利点を改善することができて、この化合物と組み合わせて投与すると、この治療法の投与の投与量及び/又は回数を下げることができる。幾つかの態様において、本発明の化合物を投与すると、化学療法及び/又は放射線治療の用量を低下させる、及び/又は回数を減らすことができる。
【0086】
幾つかの態様において、本発明の方法は、1以上の血管新生阻害剤の投与を包含するが、この阻害剤としては:アンギオスタチン(プラスミノゲン断片);抗血管新生抗トロンビンIII;ANGIOZYME(TM);ABT-627;Bay 12-9566;ビネフィン;ベバシズマブ;BMS-275291;;軟骨由来阻害剤(CDI);CAI;;CD59 補体断片 CEP-7055;Col 3;コンブレタスタチンA-4;ENDOSTATIN(tm) (collagen XVIII fragment); Fibronectin fragment; Gro-beta; Halofuginone; ヘパリナーゼ;ヘパリン6糖断片;HMV833;ヒト繊毛性ゴナドトロピン(hCG);IM-862;インターフェロンアルファ/ベータ/ガンマ;インターフェロン誘導性タンパク質(IP-10);インターロイキン-12;クリングル5 (プラスミノーゲン断片); マリマスタット;メタロプロテイナーゼ阻害剤(TIMPs);2-メトキシエストラジオール;MMI 270 (CGS 27023A);MoAb IMC-1C11;ネオバスタット;NM-3;パンゼム;PI-88;胎盤リボヌクレアーゼ阻害剤;プラスミノーゲン活性化因子阻害剤;血小板因子-4 (PF4);プリノマスタット;プロラクチン16 kDa 断片;プロリフェリン関連タンパク質(PRP);PTK 787/ZK 222594;レチノイド;ソリマスタット; スクアラミン;SS 3304;SU 5416;SU6668;SU11248;テトラヒドロコーチゾール-S;テトラチオモリブデート;サリドマイド;トロンボスポンジン-1 (TSP-1);TNP-470; トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-b);バスキュロスタチン;バソスタチン(カルレチキュリン断片);ZD6126;ZD 6474;ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)及びビスホスホン酸塩があるが、これ等に限定されない。
【0087】
本発明と組み合わせて用いることができる、医薬的組成物及び剤形及び本発明のキットを含む、抗ガン剤(例えば、化学療法剤)の更なる例としては:アクチビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アムボマイシン;アメタントロン酢酸塩;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビスアントレン塩酸塩;ジメシル酸ビスナフィド;ビゼレシン;ブレオマイシン硫酸塩;ブレキナールナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;カルビシン塩酸塩;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デクソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジコン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;ドロロキシフェンクエン酸塩;ドロモスタノロンプロピオン酸塩;ズアゾマイシン;エダトレキセート;エフロニチン塩酸塩;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブロゾール;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸ナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;エトポシドリン酸塩;エトプリン;ファドゾール塩酸塩;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;フルダラビンリン酸塩;フルオロウラシル;フルロシタビン;フォスキドン;フォストリエシン・ナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;ヒドロキシウレア;イダルビシン塩酸塩;イフォスファミド;イルモフォシン;インターロイキンII(組み換えインターロイキン−2又はrIL-2を含む);インターフェロンアルファ−2a;インターフェロンα−2b;インターフェロンα−n1;インターフェロンα−n3;インターフェロンβ−1a;インターフェロンγ−1b;イプロプラチン;イリノテカン塩酸塩;ランレオチド酢酸塩;レトロゾール;ロイプロリド酢酸塩;リアロゾール塩酸塩;ロメトレクソールナトリウム;ロムスチン;ロソキサントロン塩酸塩;マソプロコール;マイタンシン;メクロレタミン塩酸塩;メガストロール塩酸塩;メレンゲストロール酢酸塩;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキセート;メトトレキセートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;マイトカルシン;マイトクロミン;マイトギリン;マイトマルシン;マイトマイシン;マイトスペール;マイトタン;マイトキサントロン塩酸塩;マイコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;ペガスパルガーゼ;プレリオマイシン;ペンタムスチン;ペプロマイシン硫酸塩;ペルフォスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロキサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジン塩酸塩;ピューロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;サフィンゴール塩酸塩;セムスチン;シムトラゼン;スパルフォサートナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム塩酸塩;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフール;テロキサントロン塩酸塩;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;トレミフェンクエン酸塩;トレストロン酢酸塩;トリシリビンリン酸塩;トリメトレキセート;トリメトレキセートグルクロン酸塩;トリプトレリン;ツブロゾール塩酸塩;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチン硫酸塩;ビンクリスチン硫酸塩;ビンデシン;ビンデシン硫酸塩;ビネピジン硫酸塩;ビングリシネート硫酸塩;ビンロイロシン硫酸塩;ビノレルビン酒石酸塩;ビンロシジン硫酸塩;ビンゾリジン硫酸塩;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;ゾルビシン塩酸塩を含むが、これ等に限定されない。他の抗ガン剤は:20−エピ−1、25ジヒドロキシビタミンD3;5−エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL-TK拮抗剤;アルトレタミン;アムバムスチン;アミドクス;アミフォスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリデ;血管新生阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリクス;抗背方化形態形成タンパク質−1;アンチアンドロゲン、前立腺癌;アンチエストロゲン;アンチネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィジコリングリシン酸塩;アポトーシス遺伝子調節因子;アポトーシス調節因子;アプリン酸;アラ−CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABL拮抗剤;ベンゾクロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;ベータラクタム誘導体;ベーターアレチン;ベタクラマイシンB;ベツリニン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビスアントレン;ビスアジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテンA;ビゼレシン;ブレフレート;ブロピリミン、ブドチタン;ブチオニンスルフォキシミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カムプトテシン誘導体;カナリポックスIL-2;カペシタビン;カルボキサミドアミノトリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;軟骨由来阻害剤;カルゼレシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリクス;クロリン;クロロキノキサリンスルフォンアミド;シカプロスト;シスポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クラムベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシンA;シクロペントアントラキノン;シクロプラタム;シペマイシン;シタラビンオクフォスファート細胞溶解因子;サイトスタチン(細胞接着阻害物質);ダクリキシマブ;デシタビン;デヒドロジデムニンB;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシフォスファミド;デクスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジコン;ジデムニンB;ジドクス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ−5−アザシチジン;ジヒドロタキソール、9−;ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;ズオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルフォシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン;エミテフル;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチン類似体;エストロゲン作用剤;エストロゲン拮抗剤;エタニダゾール;エトポシドリン酸塩;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;フルオロダウノルビシン塩酸塩;フォルフェニメクス;フォルメスタン;フォストリエシン;フォテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;ガリウム硝酸塩;ガロシタビン;ガニレリクス;ゼラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロニン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルムフォシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン;イミキモド;免疫増強ペプチド;インシュリン様成長因子1受容体阻害剤;インターフェロン作用剤;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;ヨウ化ドキソルビシン;イポメアノール、4−;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;ラメラリン−N三酢酸;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;レンチナン硫酸塩;レプトルスタチン;レトロゾール;白血病阻害因子;白血球アルファインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;ロイプロレリン;レバミソール;リアロゾーロ、線状ポリアミン類似体、親油性二糖類ペプチド、親油性白金化合物;リッソクリナミド7;ロバプラチン;ロムブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルルトテカン;ルテチウムテキサフィリン;リゾフィリン;溶解性ペプチド;マイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリリシン阻害剤、マトリクスメタロプロテイナーゼソガイザイ;メノゴリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテフォシン;ミリモスチム;ミスマッチした2重鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシン類似体;マイトナフィド;マイトトキシン繊維芽細胞成長因子サポリン;マイトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体;妊婦尿性性腺刺激ホルモン (human chorionic gonadotrophin);モノホスホリル脂質A+ミオバクテリウム細胞壁sk;モピダモール;多薬剤耐性遺伝子阻害剤;多腫瘍抑制因子 1−ベースの治療;マスタード抗ガン剤;マイカパーオキシドB;マイコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン;N−アセチルジナリン;N−置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチップ;ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトログラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ネルドリン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素調節剤;一酸化窒素抗酸化物質;ニトルリン;O6-ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導剤;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パクリタキセル;パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;パガスパルガーゼ;ペルデシン;ペントサンポリ硫酸ナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール;ペルフルブロン;ペルフォスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;フェニル酢酸塩;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニル;ピロカルピン塩酸塩;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノゲン活性化因子阻害剤;白金錯体;白金化合物;白金トリアミン錯体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニソン;プロピルビスアクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;タンパク質Aベースの免疫調整剤;プロテインキナーゼC阻害剤;ミクロアルガル;タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシ化ヘモグロビンポリオキシエチレン重合体;raf拮抗剤;ラルチトレキセド(葉酸代謝拮抗薬);ラモセトロン;rasファルネシルタンパク質転移酵素阻害剤;ras阻害剤;ras GAP阻害剤;脱メチルレテリプチン;レニウムRe186エチドロン酸塩;リゾキシン;リボザイム;RIIレチナミド;ログレチミド;ロヒトキン;ロムルチド;ロキニメクス;ルビギノンB1;ルボキシル;サフィンゴール;セイントピン;SarCNU;サルコフィ
トルA;サルグラモスチム;Sdi 1模倣体;セムスチン;老化由来阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達調整剤;単鎖抗原結合タンパク質;シゾフィラン;ソブゾキサン;ナトリウムボロカプテート;フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール;ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン;スパルフォシン酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンギスタチン1;スクアラミン;幹細胞阻害剤;肝細胞分裂阻害剤;スチピアミド;ストロメリシン阻害剤;スルフィノシン;高次活性血管作用腸ペプチド拮抗剤;スラジスタ;スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフル;テルラピリリューム;テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;タリブラスチン;チオコラリン;トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣体;チマルファシン;チモポエチン受容体作用剤;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;エチルエチオプルプリン錫;チラパザミン;チタノセンビクロリド;トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;トランスレーション阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキセート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン;UBC阻害剤;ウベニメクス;ウロゲニタール;静脈洞由来成長阻害因子;ウロキナーゼ受容体拮抗剤;バプレオチド;バリオリンB;ベクターシステム;赤血球遺伝子治療;ベラレソール;ベラミン;ヴェルジン;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン;ビタキシン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジルアスコルブ;及びジノスタチンスチマラマーを含むが、これ等に限定されない。代表的な、更なる抗ガン剤は、5−フルオロウラシル及びロイコボリンである。これら2種の薬剤は、サリドマイド及びトポイソメラーゼ阻害剤を用いる方法において使用する場合、特に有用である。
【0088】
幾つかの態様において、本発明の治療は、さらに1以上の、抗体及び免疫調整剤等の、免疫治療薬の投与を含み、この抗体及び免疫調節剤としては、HERCEPTIN(R)、RITUXAN(R)、OVAREX(TM)、PANOREX(R)、BEC2、IMC-C225、VITAXIN(TM)、CAMPATH(R) I/H、Smart MI95、LYMPHOCIDE(TM)、Smart I D10及びONCOLYM(TM)、リトキシマブ、ゲムツズマブ又はトラスツズマブがあるが、これ等に限定されない。
【0089】
幾つかの態様において、本発明の治療はさらに、アンギオスタチン、サリドマイド、クリングル5,エンドスタチン、他のセルピン、抗トロンビン、フィブロネクチンの29KDaN−末端及び40kDaC−末端タンパク質分解断片、プロラクチンの16kDaタンパク質分解断片、血小板因子−4の7.8kDaタンパク質分解断片、血小板因子−4の断片に相当する13−アミノ酸ペプチド(Maione et al., Cancer Res., 51, 2077-2083, (1991)参照)、コラーゲンIの断片に相当する14−アミノ酸ペプチド(Tolsma et al., J. Cell Biol., 122, 497-511 (1993)参照)、トロンボスポンジンIの断片に相当する19−アミノ酸ペプチド(olsma et al., J. Cell Biol., 122, 497-511 (1993)参照)SPARCの断片に相当する20−アミノ酸ペプチド(Sage et al., J. Cell Biochem., 57, 127-140 (1995)参照)、又はこれらの全ての断片、ファミリー仲間又は誘導体、及びこの医薬的に許容される塩を含むが、これらに限定されない、1以上の抗血管新生試薬の投与を含む。
幾つかの態様において、この治療法はさらに、放射線の使用を含む。
【0090】
幾つかの態様において、この治療法はさらに、リンホカイン、腫瘍壞子因子、腫瘍壞子因子様サイトカイン、リンホトキシン−α、リンホトキシン−β、インターフェロン−α、インターフェロン−β、マクロファージ炎症性タンパク質、顆粒球単球コロニー刺激因子、インターロイキン(インターロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−6、インターロイキン−12、インターロイキン−15、インターロイキン−18を含むが、これ等に限定されない)、OX40、CD27、CD30、CD40又はCD137リガンド、Fas/Fasリガンド、4-1BBL、内皮性単球活性化タンパク質又は全ての断片、これらのファミリー仲間又は、誘導体、この医薬的に許容される塩を含むが、これ等に限定されない、1以上のサイトカインの投与を含む。
幾つかの態様において、この治療法はさらに、ホルモン治療を含む。ホルモン治療法は、ホルモン作用剤、ホルモン拮抗剤(例えば、フルタミド、タモキシフェン、ロイプロリド酢酸塩(LUPRON(TM))LH-RH拮抗剤)、ホルモン生合成及びプロセッシング阻害剤、ステロイド(例えば、デキサメサゾン、レチノイド、ベタメタゾン、コルチゾール、コーチゾン、プレドニソン、デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、ミネラロコルチコイド、エストロゲン、テストステロン、プロゲスチン)、アンチゲスタゲン(例えば、ミフェプリストン、オナプリストン)及び抗アンドロゲン(例えば、シプロテロン酢酸塩)を含む。
【0091】
セラミダーゼ阻害から恩恵を受けることができる他の増殖性疾病は、心臓血管疾病である。
血管形成術、ステント、動脈粥腫切除術、及び心臓血管疾病の治療のための移植を含む血管侵襲は、しばしば好ましくない効果により悪化する。血管侵襲に対する好ましくない反応の1つは、過形成に至ることができる内皮及び平滑筋細胞増殖、又はより具体的には、動脈の再閉塞である再狭窄、再還流障害、血小板凝集、及び石灰沈着を含む。このモデルにおいて、障害性刺激は、インターロイキン1及び腫瘍壞死因子等の増殖刺激性サイトカインの発現を誘導する。Libby et al., Circulation, 86, III47-III52 (1992)参照。セラミドが、冠状動脈の内皮及び平滑筋細胞の増殖を阻害することを示す証拠がある。
【0092】
狭窄及び再狭窄を治療又は防止するために、多くの治療が試みられてきた。しかしながら、内皮及び平滑筋細胞の過形成により引き起こされる心臓血管疾病の予防及び治療に向けた治療に対して多くの要求が残されている。セラミドが、冠状動脈の内皮及び平滑筋細胞の増殖を阻害することが知られているので、心臓血管疾病の治療及び予防のために、セラミドのレベルを上げることが好ましい。最近、Kester及び共同研究者は、血管形成術で使用されるセラミドは、再狭窄を防止することを示した(Kester et al., Circ. Res., 87, 282-288 (2000))。あるいは、より効果的に、本発明の1つの側面は、本発明の化合物の投与によりセラミドレベルを調節することにより、再狭窄の治療及び予防を提供する。
【0093】
従って、心臓血管疾病の治療及び予防のために、セラミドのレベルを上げることが好ましい。これは、本発明の組成物及び方法を使用することにより、セラミドの細胞内レベルを調節することにより為し遂げることができる。治療の結果は、少なくとも治療した患者に健康的利点をもたらし、これは心臓血管疾病において、血管侵襲後の動脈の再閉塞の危険性の減少及び循環の改善を含むが、これ等に限定されない。
幾つかの態様において、本発明は、自己免疫又は炎症疾病又は、1以上のこれらの症状を予防、治療、管理、及び/又は改善するための方法を提供し、この方法は、その必要のある患者に、予防上及び/又は治療上有効量の本発明の化合物、及び予防上又は治療上有効量の1以上の免疫調節薬剤の投与を含む方法である。
【0094】
インターロイキン−1は、炎症の主要な誘導因子であり、及びTNFは、この反応の重要な調節因子である。両サイトカインは、セラミダーゼを活性化し、従って、セラミダーゼの活性の阻害は、抗炎症効果をもたらすことができる。これは、炎症促進効果を有する、スフィンゴシン及びスフィンゴシンリン酸塩の形成抑制に関わることができる。また、セラミダーゼの阻害は、炎症に重要である、免疫細胞の過増殖を防止することができる。セラミドの増加及びスフィンゴシンの減少は、スフィンゴシンリン酸塩の減少をもたらすことを示唆する証拠がある。予備的データによると、マウス繊維芽細胞、L929、においてTNF-αは、セラミドレベルを上昇させ、及びこれらの細胞からプロスタグランジンE2(PGE2)の放出をもたらすことが示される。PGE2の放出はまた、セラミダーゼの阻害剤である、D-エリスロ-2-(N-ミリストイルアミノ)-1-フェニル-1-プロパノール)、D-MAPP、により阻害されることが示される。この観察は、関節リューマチ等の、しかしこれに限定されない、健康状態で生ずる、炎症反応の阻害に対して重要であろう。従って、本発明の方法の使用により、細胞セラミドのレベルを調節することにより、炎症を治療及び/又は予防することは可能である。上記考察のように、ミトコンドリアセラミダーゼを阻害することができる本発明の化合物を投与することにより、セラミドレベルを上昇させることができる。
【0095】
自己免疫疾患の例としては、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫Addison病、副腎の自己免疫疾病、自己免疫溶血性貧血、自己免疫肝炎、自己免疫卵巣炎及び睾丸炎、自己免疫血小板減少症、Behcet病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプル(グルテン性腸)−皮膚炎、慢性疲労免疫機能障害症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy)、Chung-Strauss症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、Crohn病、円盤状狼瘡症、本態性混合クリオグロブリン血症、原発性線維筋痛症(fibromyalgia-fibromyositis)、糸球体腎炎、Grave病、Guillain-Barre、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenia purpura, ITP)、IgA神経症、若年性関節炎、扁平苔癬(lichen planus)、紅斑性狼瘡、Meniere病、混合結合組織病、多発性硬化症、I型免疫介在糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡(pemphigus vulgaris)、悪性貧血、結節性動脈炎、多腺性症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、Raynauld徴候、Reiter症候群、リウマチ性関節炎、類肉腫症、強皮症、Sjogren症候群、全身硬直症候群、全身性紅斑性狼瘡、紅斑性狼瘡、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨大細胞動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、皮膚疱疹状血管炎等の血管炎、及びWegener肉芽腫症を含むが、これ等に限定されない。炎症性疾患の例としては、脳炎、喘息、炎症性腸管病、慢性障害肺疾病(COPD)、アレルギー疾患、感染性ショック、肺線維症、未分化脊椎関節症、未分化関節症、関節炎、炎症性骨溶解、及び慢性ウィルス又は細菌感染由来の慢性炎症を含むが、これ等に限定されない。従って、自己免疫疾患及び炎症疾患と考えられる疾患の間に重複がある。幾つかの自己免疫疾患は、炎症状態と関係している。従って、幾つかの自己免疫疾患は、炎症疾患として特徴付けられる。
【0096】
本発明は、自己免疫又は炎症性疾患及び/又はこれらの1以上の症状を防止、治療、管理、及び/又は改善する方法を提供し、この方法は、これ等を必要とする患者に、本発明の化合物及び1以上の免疫調節薬剤の投与を含む方法である。免疫調節薬剤を、自己免疫及び/又は炎症性疾患をもつ患者に投与し、この患者の平均絶対リンパ球数は、幾つかの態様では500細胞/mm3以下、幾つかの態様では550細胞/mm3以下、幾つかの態様では600細胞/mm3以下、幾つかの態様では650細胞/mm3以下、幾つかの態様では700細胞/mm3以下、幾つかの態様では750細胞/mm3以下、幾つかの態様では800細胞/mm3以下、幾つかの態様では850細胞/mm3以下、及び幾つかの態様では900細胞/mm3以下である。従って、幾つかの態様において、自己免疫及び/又は炎症性疾患を持つ患者に、1以上の免疫調節薬剤の1以上の服用量の投与前、又は投与後、この患者の絶対リンパ球数を、フローサイトメトリー又はトリパンブルーカウントのような、当業者に既知の技術により測定する。
【0097】
免疫調節薬剤の例としては、メトトレキセート、レフルノミド;シクロホスファミド、シクロスポリンA及びマクロライド系抗生物質(例えば、FK506(タクロリムス))、メチルプレドニソロン(MP)、コルチコステロイド、ステロイド、マイコフェノール酸モフェチル、ラパマイシン(シロリムス)、ミゾリビン、デオキシスペルグアリン、ブレキナール、マロノニトリロアミド(例えば、レフルナミド)、T細胞受容体調節因子、及びサイトカイン受容体調節因子を含むが、これ等に限定されない。T細胞受容体調節因子の例としては、抗T細胞受容体抗体(例えば、抗−CD4リガンドモノクローナル抗体、抗−CD3モノクローナル抗体、抗−CD8モノクローナル抗体、抗−CD40モノクローナル抗体、抗−CD2モノクローナル抗体)、及びCTLA4-免疫グロブリンが含まれるが、これ等に限定されない。サイトカイン受容体調節因子の例としては、溶解性サイトカイン受容体(例えば、TNF-α受容体又はこの断片の細胞外領域、IL-1β受容体又はこの断片の細胞外領域、及びIL-6受容体又はこの断片の細胞外領域)、サイトカイン又はこの断片(例えば、インターロイキン(IL)-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-15、TNF-α、TNF-β、インターフェロン (IFN)-α、IFN-β、IFN-γ及びGM-CSF)抗サイトカイン受容体抗体(例えば、抗-IL-2受容体抗体、抗-IL-4受容体抗体、抗-IL-6受容体抗体、抗-IL-10受容体抗体、及び抗-IL-12受容体抗体)、抗サイトカイン抗体(例えば、抗IFN受容体抗体、抗TNF-α抗体、抗IL-1β抗体、抗IL-6抗体及び抗IL-12抗体)を含むが、これ等に限定されない。
【0098】
抗炎症薬剤は、炎症性及び自己免疫疾患の治療において成功を示し、今や、このような疾患に対する通常で、標準的な治療である。当業者に既知の全ての抗炎症薬剤を、本発明の組成物及び方法において用いることができる。抗炎症薬剤の非限定的な例としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ステロイド性抗炎症薬、β作用剤、抗コリン作動薬、及びメチルキサンチンが含まれる。NSAIDの例としては、アスピリン、イブプロフェン、セレコキシブ(CELEBREX(TM))、ジクロフェナク(VOLTAREN(TM))、エトドラク(LODIN(TM))、フェノプロフェン(NALFON(TM))、インドメタシン(INDOCIN(TM))、ケトララク(TORADOL(TM))、オキサプロジン(DAYPRO(TM))、ナブメトン(RELAFEN(TM))、スリンダク(CLINORIL(TM))、トルメンチン(TOLECTIN(TM))、ロフェコキシブ(VIOXX(TM))、ナプロキセン(ALEVE(TM)、NAPROSYN(TM))、ケトプロフェン(ACTRON(TM))及びナブメントン(RELAFEN(TM))が含まれるが、これ等に限定されない。このようなNASIDは、シクロオキシゲナーゼ酵素(例えば、COX-1及び/又はCOX-2)を阻害することにより機能する。ステロイド性抗炎症薬の例は、グルココルチコイド、デキサメサゾン(DECADRON(TM))、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニソン(DELATASONE(TM))、プレドニソロン、トリアムシノロン、アズルフィジン、及び(プロスタグランジン、トロンボキサン及びロイコトリエン等の)エイコサノイドを含むが、これ等に限定されない。
【0099】
本発明はまた、セラミダーゼ機能(例えば、セラミド−1−リン酸塩及びスフィンゴシン−1−リン酸塩)を刺激する(促進する)化合物を投与することによる、不十分な細胞増殖(成長)が関わる、及び/又は細胞増殖が望まれる(例えば、変性疾患、成長不足、障害、物理的外傷)疾患の治療に関係する。セラミダーゼの活性化から恩恵を受けることができる他の疾患は、神経変性疾患(例えば、Alzheimer病)及び免疫機能障害等の加齢の疾患である。
上記に考察したように、腫瘍性状態への同様の治療、心臓血管疾病、炎症、又は上記の疾病の成功した治療は、セラミダーゼ活性を減少させる技術により成し遂げることができる。
有効投与量の決定及びこのような化合物の投与に用いることができる一般的技術は、専門家に既知である。当該の細胞集団に化学物質を選択的に投与する全ての技術を、例えば、輸送複合体の使用により、用いることができる。このような輸送複合体は、適切な化合物及び向標的薬剤を含むことができる。このような、向標的薬剤は、例えば、ステロール、脂質、ウィルス又は標的細胞特異的結合薬剤を含むことができる。
【0100】
V. 医薬的調製及び投与法
本明細書の化合物は、患者に対して、治療的に有効な用量を投与して、上記に考察した疾患及び疾病を治療及び予防することができる。治療上有効な用量は、治療した患者に健康的な恩恵をもたらすに十分な量の化合物を表す(Physicians' Desk Reference(R)(53rd ed., 1999))。
本明細書で用いる、用語"患者"は、全ての無脊椎動物及び脊椎動物の生物種を表す。本発明の方法は、特に温血脊椎動物に対して有用である。従って、本発明は、哺乳類及び鳥類と関係がある。より具体的には、ヒト、及び絶滅の危機(Siberianトラ等の)、経済的重要性のある(ヒトにより消費されるための農場で飼育される動物)、及び/又は人間に対して社会的重要性のある{例えば、ヒト以外の肉食動物(ネコ及びイヌ等の)、ブタ類(ブタ、去勢ブタ、イノシシ)、反芻動物(ウシ、去勢ウシ、ヒツジ、キリン、シカ、ヤギ、バイソン、及びラクダ等の)及びウマ}哺乳類等の、哺乳類の治療である。さらに、本発明の方法及び組成物の、鳥類への使用を提供し、鳥類としては、絶滅の危機鳥類、動物園又はペットして管理されている鳥類、及びニワトリ、より詳細には、飼われている家禽(例えば、七面鳥、ニワトリ、アヒル、雌ガチョウ、ホロホロ鳥、等々の家禽)であり、これ等はまた、人間にとって経済的に重要である。
【0101】
従って、本発明の化合物を投与する患者は、幾つかの態様において、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌ、ラット、その他)又は霊長類(例えば、カニクイザル等のサル又はヒト)等の哺乳類を含むが、これ等に限定されない、動物である。幾つかの態様において、患者はヒトである。本発明の組成物を、例えば、家族歴の結果、癌の傾向がある個人、又は環境因子によりガンへの高い危険性を有する個人において、様々なガンの予防のために用いることができる。
本発明の方法及び組成物は、投薬を受けたことがない患者、及び/又は、抗ガン剤を含むが、これに限定されない、他の医薬剤又は組合せを以前及び/又は現在投薬治療を受けている患者に用いることができる。他の患者としては、転移を有する又は持たない患者を含むことができる。
本発明の方法及び組成物は、未治療の患者だけではなく、他の治療法で部分的に又は完全に応答してない患者の治療においても有用である。幾つかの態様において、本発明は、他の薬剤の投与を含む治療では手に負えない、又は治りにくいかも知れない、又は非応答であるように見える、患者の疾病又は疾患の治療に対して有用である。
セラミドレベル又は機能の、欠如又はレベル低下は、直ちに、例えば、患者組織サンプル(例えば、バイオプシ組織)を得て、in vitroでセラミドを検定することにより、測定することができる。
【0102】
V.A. 有効用量
組成物の毒性及び治療上の有効性は、細胞培養又は実験動物における標準的医薬的手順(例えば、LD50(集団の50%に対し致死的用量)の測定、及びED50(集団の50%に対し治療上有効な用量)の測定に対する手順)により決定することができる。毒性及び治療上の有効性の間の用量比は、治療指数であり、LD50/ED50で表すことができる。
幾つかの態様において、大きな治療指数を示す化合物が用いられる。毒性の副作用を示す化合物を用いることはできるが、病気に冒されてない細胞への障害能を最小にして、副作用を減らすために、そのような化合物を病気に冒された組織を標的として狙わせる輸送システムを設計する上で注意が必要である。
【0103】
細胞培養検定及び動物研究から得たデータを用いて、ヒトにおける使用のための適用量範囲を処方することができる。このような化合物の適用量は、幾つかの態様において、ED50が殆ど無い又は無毒性な循環濃度の範囲にある。例えば、この適用量範囲は、幾つかの態様において、10nMから100μMの範囲、及び幾つかの態様において、1から10μM又はそれより高濃度であることができる。この適用量は、この範囲内で、用いられる剤形及び投与の経路により変わることができる。本発明の方法において使用される全ての組成物に対して、治療的有効用量を、最初細胞培養検定から見積もることができる。細胞培養で測定したように、IC50(例えば、症状の最大阻害の半値を得る検査化合物の濃度)を誘導する循環血漿中濃度範囲を得るために、動物モデルにおいて用量を処方することができる。このような情報を用いて、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中の濃度を、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0104】
本明細書に記載した疾患の治療又は予防のための適切な毎日の用量を、当業者により直ちに決めることができる。本発明の組成物の推奨用量は、約0.1mgから約100mg/日であり、1日朝一回投与として、又は用量を1日の中で分割して投与する。幾つかの態様において、毎日の用量は、約2mgから約25mg/日であり、幾つかの態様において、約5mgから約10mg/日である。
本発明に従って使用される方法及び組成物の抗ガン活性は、様々な実験動物モデルを用いることにより測定することができるが、実験動物モデルとしては、既知の技法であり、Yamanaka et al. (Microbiol. Immunol., 45, 507-514 (2001))に記載されたように、ヒト腫瘍移植体を担うスキッドマウス又はヌードマウス等の、ガンの動物モデルがある。
【0105】
幾つかの態様において、本発明の方法及び組成物は、患者(例えば、ヒト)において使用される前に、好ましい治療又は予防活性があるかについて、in vitroで検査され、次ぎにin vivoで検査される。例えば、特定の治療法手順の投与が表示されているかどうかを決めるために用いることができるin vitro検定としては、in vitro細胞培養検定が含まれるが、この検定において、患者組織サンプルを培養で増殖させ、この手順で暴露又は処理し、このような手順の組織サンプルに対する効果を観察する。低レベルの増殖又は接触細胞の低い生存率により、この組成物の患者の病態を治療する上での有効性が分かる。あるいは、患者からの細胞を培養する代わりに、組成物を腫瘍細胞又は悪性細胞株を用いて選別することができる。標準的な多くの検定法を、このような生存率及び/又は増殖性を検定するために用いることができる;例えば、細胞増殖は、3H-チミジン取り込みの測定により、直接の細胞計数により、ガン原遺伝子(例えば、fos、myc)のような既知の遺伝子の転写活性、又は細胞周期マーカーの変化の測定により検定できて;細胞生存率は、トリパンブルー染色により検定できて、分化は、形態上の変化をベースとして視覚的に検定することができる、等々。
【0106】
ヒトにおいて試験する前に、本明細書で開示した方法で用いられる組成物を、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギその他を含む、がこれ等により限定されない、適切な動物モデルシステムにおいて試験することができる。既知の技法で、広く用いられている、ガンのための主要な動物モデルとしては、その全体が本明細書参照文献に取り込まれている、Hann et al. (Curr. Opin, Cell Biol., 13, 778-784 (2001))に記載されているように、マウスを含む。
さらに、当業者に既知の全ての検定法を用いて、本明細書に記載した疾病又は疾患に関係する1以上の症状の治療、予防、管理及び/又は改善のために、本明細書に開示した方法及び組成物の予防上の及び/又は治療上の有用性を査定することができる。
炎症性疾患の治療における有効性を、本発明の化合物又は本発明の組成物による動物における炎症の減少能又は阻害能、及び/又は炎症性疾患の1以上の症状の改善能又は緩和能を検出することにより示すことができる。例えば本発明の化合物又は組成物の投与後、もし、炎症の減少及び/又は1以上の症状の改善があるならば、この治療法は、治癒的と考えられる。
【0107】
V.B. 処方及び使用
本発明の化合物を投与するために様々な方法を用いることができる。導入の方法は、皮膚内、筋肉内、腹腔中、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、吸入、ガス注入法(口又は鼻マスクを通して)、経口、舌下、又は直腸経路を含むが、これ等に限定されない。この組成物を、例えば、輸液又は静脈内ボーラス、上皮又は皮膜粘膜内面(例えば、口腔粘膜、直腸及び小腸粘膜その他)を通して投与することができて、他の生物活性薬剤と共に投与することができる。投与は、全身的又は局所的である。さらに、本発明の医薬組成物を、心室内及び鞘内注射;を含む全ての適切な経路を通して中枢神経系に導入することが好ましくあることができるが、心室内注射は、Ommaya貯蔵タンクのように、例えば、貯蔵タンクに接続した、心室内カテーテル、により行うことができる。例えば、吸入器又はネブライザーの使用、及びエアロゾ−ル化薬剤の使用により、肺への投与もまた、用いることができる。
【0108】
幾つかの態様において、本発明の組成物を治療の必要な領域に局所的に投与することが望まれる。これは、例えば、非限定的に、手術の間の局所的輸液により、カテーテルにより、座薬により、又は埋め込みにより行うことができる。埋め込みは、例えば、非限定的に、シリコンゴム膜又は繊維のような、多孔性の、非多孔性の、又はゼラチン物質であることができる。
幾つかの態様において、ここで開示した化合物を、小胞、特にリポソーム、中で輸送することができる(Langer, Science, 249, 1527-1533 (1990);及びTreat et al., in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-Berestein and Fidler (eds.), Liss, New York, 1989, pp. 317-327及び353-365)。
【0109】
幾つかの態様において、本開示の化合物を、調節された放出システムにおいて輸送することができる。幾つかの態様において、ポンプを用いる(Langer, Science, 249, 1527-1533 (1990); Sefton, CRC Crit. Ref., Biomed. Eng., 14, 201 (1987); Buchwald et al., Surgery, 88, 507 (1980);及びSaudek et al., N. Engl. J. Med., 321, 574 (1989))。幾つかの態様において、高分子材料を用いることができる(Langer and Wise (eds.), Medical Applications of Controlled Release, CRC Press, Boca Raton, Florida, 1974; Smolen and Ball (eds.), Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Wiley, New York, 1984; Ranger and Peppas, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem., 23, 61 (1983); を参照、及びLevy et al., Science, 228, 190 (1985); During et al., Ann. Neurol., 25, 351 (1989);及びHoward et al., J. Neurosurg., 71, 105 (1989))。幾つかの態様において、調節された放出システムを治療標的の近くに置くことができて、従って、全身性用量の分画のみ必要である(Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), CRC Press, Boca Raton, Florida, 1974)。他の調節性の放出システムを、Langer (Science, 249, 1527-1533 (1990)において考察する。
【0110】
本発明の治療薬の他の輸送方法を、例えば、参考文献にその全体が取り込まれている米国特許第5,679,350号に考察されているように、用いることができる。
本発明はまた、医薬組成物を提供する。このような組成物は、本発明の化学式(I)の医薬的に有効量の1以上の化合物及び医薬的に許容された担体を含む。"医薬的に許容された"は、過度な毒性、炎症、アレルギー性応答、又は、合併症又は他の問題無しに、十分な医学的判断の範囲内で、ヒト及び/又は他の動物の組織との接触に適した、妥当な利益/危険比に相応した担体、組成物及び/又は剤形を表す。従って、幾つかの態様において、本明細書開示の化合物を、ヒトにおける使用のために医薬的に許容される化合物及び担体を含む処方物において提供することができる。幾つかの態様において、用語"医薬的に許容される"は、合衆国、又は州政府又は動物及び、特にヒトにおける使用に対する、合衆国薬局方又は一般的に認知された薬局方に載せられた規制委員会による認可を意味する。
【0111】
用語"担体"は、治療薬を投与するための稀釈剤、補助剤、賦形剤、又は媒体を意味する。このような医薬的担体は、水、及び(石油、動物、植物又はピーナツ油、大豆油、鉱油、ごま油、等々の合成油を含む)油のような滅菌液体であることができる。水は医薬組成物を静脈内投与する場合模範的担体である。生理的食塩水及び水溶性グルコース、及びグリセロール溶液がまた、液体担体、特に注射可能な溶液、として使用される。適切な医薬的賦形剤としては、澱粉、ブドウ糖、乳糖、砂糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、粉乳、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、滑石、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等々を含む。もし好ましいなら、この組成物はまた、少量の加湿剤、又は乳化剤、又はpH緩衝試薬を含むことができる。これらの組成物はまた、溶液、懸濁液、乳化液、錠剤、ピル、カプセル、粉末、持続性放出処方物、等々の形をとることができる。この組成物を、伝統的な結合剤及びトリグリセリドのような担体と共に、座薬として処方することができる。経口処方物は、医薬級のマンニトール、乳糖、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム、その他の標準的担体を含むことができる。適切な医薬的担体の例は、Remington's Pharmaceutical Sciences (1990)に記載される。このような組成物は、幾つかの態様において、治療上有効量の精製した形の酸性セラミダーゼ(ACDase)阻害剤又は関係するプロドラッグ、及び患者にふさわしい投与形態を提供するために、適切な量の担体を含むだろう。この処方物は、投与法に適していなければならない。
【0112】
幾つかの態様において、この組成物は、ヒトの静脈内投与に使われる医薬組成物として常法に従い処方される。一般的に、静脈内投与の組成物は、滅菌等脹緩衝溶液である。必要な場合、この組成物は、可溶化剤及び注射部位の痛みを緩和するためにリドカイン等の局所麻酔剤を含むことができる。一般的に、構成成分は、例えば、活性薬剤の量を示すアンプル又は袋のような密封した容器中の凍結乾燥粉末又は水なしの濃縮物として、単位剤形に、分離して又は一体に混合して供給される。この組成物を輸液で投与する場合、滅菌医薬級の蒸溜水又は生理的食塩水を含む輸液ボトルと共に調剤することができる。組成物を注射で投与する場合、構成成分を投与前に混合することができるように、注射のための滅菌水又は生理的食塩水のアンプルを提供することができる。
本発明の化合物を、中性又は塩の形で処方することができる。医薬的に許容される塩を、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、その他由来の塩のように遊離アミノ基を持っ、又はナトリウム、カリウム、アンモニア、カルシウム、水酸化第2鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン、その他由来の塩のような遊離カルボキシル基を持って形成することができる。
【0113】
特定の疾患又は病態の治療において有効な本発明の化合物の量は疾患又は病態の性質に依存することができて、標準的臨床技術により決定することができる。さらに、in vitro検定及び動物モデルを、任意に用いて、最適な投与量範囲を確認するために補助することができる。処方物で使用される正確な用量は、投与経路、及び疾病又は疾患の重篤性にも依存する、及び使用者の判断及び各患者の状況に従い決めるべきである。
幾つかの態様において、本発明の化合物は、筋肉内に投与される。筋肉内投与の適切な投与量範囲は一般に、幾つかの態様において、投与当たり10μgから1mg、及び幾つかの態様において、投与当たり約10μgから100μgである。幾つかの態様において、この組成物を2回投与で投与し、2回目の投与は、最初の投与から24時間後に投与される。幾つかの態様において、本発明の組成物を3回投与で投与し、7日投薬計画の1,4,7日の各日に1回を投与する。
【0114】
座薬は一般的に、活性成分を0.5重量%から10重量%の範囲で含み;経口処方物は、一般的に10重量%から95重量%の活性成分を含む。
本発明はまた、本発明の医薬組成物の1以上の構成成分を詰めた1以上の容器を含む治療上の使用のためのパック又はキットを提供する。このような容器に任意に製造者、使用、又は医薬品の販売及び/又は診断産物を規制する政府機関により定められた書式の注意書が添付されており、この注意書は、製造者、使用、又はヒト投与のための販売についての、政府機関による認可を示す。
本発明に従う使用のための医薬組成物を、1以上の生理的に許容される担体又は賦形剤を用いて、通常の方法で処方することができる。
【0115】
経口投与のために、医薬組成物は、例えば、医薬的に許容される賦形剤を用いて従来の方法で製造された錠剤、カプセルの形をとることができるが、このような賦形剤としては、結合剤(例えば、前もってゼラチン化したトウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドン、又はヒドロキシプロピルメチルセルローズ);充填剤(例えば、乳糖、微小結晶性セルローズ又はリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、滑石又はシリカ);崩壊剤(例えば、ポテト澱粉又はカルボキシメチルスターチナトリウム);又は加湿剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)。錠剤を、既知の技法によりコートすることができる。経口投与のための液体調製物は、例えば、溶液、シロップ又は懸濁液の形をとることができる、又はこれ等を使用前に水又は他の適切な媒体との組成物のための乾燥産物として存在することができる。このような液体調製物を、医薬的に許容された添加物と共に従来の方法で調製することができるが、添加物としては、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルローズ誘導体又は水素添加した食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチン、又はアカシア);非水溶性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール又は分画された植物油);及び保存剤(例えば、メチル又はプロピル−p−ヒドロキシ安息香酸炎又はソルビン酸)がある。この調製物はまた必要に応じて、緩衝塩、芳香剤、着色剤、及び甘味剤を含む。
【0116】
経口投与のための調製物を、組成物の活性因子の放出を調節するために、適切に処方することができる。
舌下錠投与のために、組成物を錠剤又はトローチの形にすることができる。
吸入による投与のために、本発明の使用のための組成物を、適切な高圧ガス(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、炭酸ガス、又は他の適した気体)と共に、加圧包装物又は噴霧器からアエロゾルスプレイ投与の形で輸送できる。加圧アエロゾルの場合、投与単位を、計測量を与えるための弁を提供することにより定めることができる。組成物及び(乳糖又は澱粉などの)適切な粉末ベースの粉末混合物を含む、吸入器又は吹き入れ器での使用のため、例えば、ゼラチンのカプセル又はカートリッジを処方することができる。
【0117】
例えば、静脈内ボーラス又は連続輸液を通して注射による非経口の投与(即ち、静脈内又は筋肉内)のために、組成物を処方することができる。注射のための調剤物を、単位剤形(例えば、アンプルで)、又は保存剤を加えて複数回投与容器で与えることができる。この組成物は、懸濁物、溶液、又は油中又は水溶性媒体中の乳化物の形をとることができて、懸濁剤、安定剤、及び/又は分散剤のような調剤用薬剤を含むことができる。あるいは、活性構成成分を、使用前に例えば、滅菌発熱性物質除去蒸留水のような、適切な媒体を伴う構成物のために、粉末形にすることができる。
この構成物をまた、例えば、ココアバター又は他のグリセリドのような従来の座薬ベースを含む、座薬又は保持浣腸剤のような直腸用組成物に処方することができる。
上述の調剤用薬剤に加えて、組成物をデポ製剤のように処方することができる。このような長期間作用する調剤用薬剤を、埋め込み(例えば、皮下又は筋肉中に)又は筋肉内注射により投与することができる。従って、例えば、この組成物を適切な高分子又は疎水性材料(例えば、許容される油中の乳状液として)又はイオン交換樹脂と共に、又はやや不溶性の誘導体、例えば、やや不溶性の塩として処方することができる。
【実施例】
【0118】
以下の実施例を、説明のための態様として提供する。本開示及び当業者の一般的レベルを考慮して、以下の実施例は、説明のためにのみ意図されており、無数の変化、修正、及び変更を、本発明の範囲から離れることなく行うことができることを、技術者は理解できる。
【0119】
材料及び方法
化学品
特に記載しなければ、全ての溶媒及び一般的試薬はSigma-Aldrich (St. Louis, Missouri, USA) and Fluka (Buchs, Switzerland)から購入した。B13及びLCL204は、既報と同様にして合成した(Szulc et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 1015-1031 (2008))。反応の進行は、TLCプレートを170℃で加熱後、PMA試薬(125mLの10%H2SO4中、モリブデン酸アンモニウム四水和物硫酸セリウム、5:2g/g)及びDragendorff試薬(Fluka)を用いた検出、又はUV(254 nm)を用いた検出を伴う、分析用順相及び/又は逆相薄層クロマトグラフィー(NP TLC又はRP TLC)により監視した。
細胞培養
MCF-7細胞(乳腺癌、胸水)は、American Type Culture Collection (ATCC; Rockville, Maryland, USA)から購入し、10%仔牛胎児血清(FCS; Summit Biotechnology, Colorado, USA)を補強したRPMI 1640 media (Life Technologies, Inc., Carlsbad, California, USA)中で増殖して、標準的インキュベーター条件(加湿環境、95%空気、5%CO2,37℃)で保存した。本実験には、対数増殖期の細胞を培養から採取して用いた。
【0120】
実施例1
ω-Br-類似体 LCL429及びLCL509の合成
図1に示すように、クラスE類似体を、既報と同様にして、化合物1(即ち、(1R,2R)-2-アミノ-1(4'-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール)及び対応するブロモアシル塩化物から得たこれらのω-Br-類似体 LCL429及びLCL509を経由して合成した(Szulc et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 1015-1031 (2008))。化合物1は市販品、例えばSigma-Aldrich (St. Louis, Missouri, USA)、として入手可能である。
【0121】
(1R, 2R)- 2-[N-(12'-ブロモ-ドデカノイル)-アミノ]- 1-(4''-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(LCL429)。12-ブロモドデカノイル 塩化物と(1R, 2R)-2-アミノ-1-(4'-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール(化合物1)から合成した。粗産物をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製(CHCl3/MeOH, 10 : 1, v/v)して、純品を78%収率で、白色微結晶粉として得た、mp 53.8-55.0℃; TLC (CHCl3/MeOH, 15:1, v/v), Rf=0.2; 1H-NMR (400MHz , CDCl3) δ 8.21 (d, 2H, J= 8.4), 7.57 (d, 2H, J=8.4), 6.13 (d, 1H, J=8.0), 5.24 (S, 1H), 4.17 (H, 1H, J=4.0), 3.91 (S, 2H), 3.42 (t, 2H, J=7.2), 2.12 (m, 2H), 1.86 (Q, 2H, J=7.2), 1.46 (m, 4H), 1.10-1.30 (m, 12H)。
【0122】
(1R, 2R)-2-[N-(6'-ブロモヘキサノイル)-アミノ]-1-(4''-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL509)。6-ブロモヘキサノイル塩化物と(1R,2R)-2-アミノ-1(4'-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール(化合物1)から合成した。粗産物をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製(CHCl3/MeOH, 7 : 1, v/v)して、純品を84%収率で、白色微結晶粉として得た。mp 87.1-87.5℃。TLC (CHCl3/MeOH=7:1), Rf=0.17, 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ 8.17 (d, 2H, J=8.8), 7.54 (d, 2H, J=8.8), 6.31 (d, 1H, J=8.8), 5.20 (S, 1H), 4.16 (H, 1H, J=4.8, J=3.2), 3.80 (d, 2H, J=4.0), 3.35 (t, 2H, J=6.8), 2.12 (Q, 2H, J=7.2, 6.8), 1.77 (Q, 2H, J=7.2, 7.2), 1.48(Q, 2H, J=7.6, 7.6), 1.29 (Q, 2H, J=7.6)。
【0123】
実施例2
クラスE阻害剤の合成
クラスE類似体の合成の一般的手順:このクラスE阻害剤をLCL429又はLCL509と対応するアミン類(アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、イミダゾール、モルホリン、又はオクチルアミン)から合成し、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した(図1)。即ち、1.5N NaOH (4 mL)及びTHF (8 mL)の混合物中のよく攪拌したLCL429又はLCL509(0.156 mmol)に、対応するアミンを室温(r.t.)で加えた。この反応混合物を、薄層クロマトグラフィー(TLC; CHCl3 /MeOH, 10:1, v/vで溶出)で観察して、反応が完了するまで、室温又は還流下に保った。有機相を分離して、水相を2回THF(2 x 5 mL)により抽出した。合わせた有機相を無水NaSO4を通して乾燥させ、減圧下で乾燥するまで蒸発させて、粗産物を得た。この材料(粗産物)を適切な溶媒系を用いたカラムクロマトグラフィーを通して精製し、純粋な標的化合物を淡黄色油として得た。
【0124】
(1R, 2R)-2-[N-(12'-{1''-イミダゾール}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4''-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール (LCL433)。LCL429とイミダゾールから33%の収率で、淡黄色油として得た。TLC (CHCl3/MeOH/濃 NH4OH, 10:1:0.01, v/v/v), Rf=0.15; 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ 8.18 (d, 2H, J=8.4), 7.78 (s, 1H, イミダゾール-H), 7.59 (d, 2H, J=8.4), 7.10 (s, 1H, イミダゾール-H), 6.99 (s, 1H, イミダゾール-H), 6.50 (d, 1H, J=10), 5.26 (d, 1H, J=3.2), 4.22 (m, 2H), 4.02 (t, 2H, J=6.8), 3.88 (d, 2H, J=4.4), 2.08 (t, 2H, J=7.6), 1.81 (q, 2H, J=6.8), 1.46 (q, 2H, J=7.6), 1.08-1.40 (m, 14H). 化学式: C24H36N4O5, MS 461.3 [M+]
【0125】
(1R, 2R)-2-[N-(12'-{1"-モルホリン}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4''-ニトロフェニル)- 1, 3-プロパンジオール (LCL449)。LCL429とモルホリンから、60%収率で、淡黄色油として得た。TLC (CHCl3/MeOH/濃NH4OH, 10:1:0.01, v/v/v). Rf= 0.12, 1H-NMR (CDCl3, 400MHz) δ 8.20 (d, 2H, フェニル-H, J=8.4), 7.56 (d, 2H,フェニル-H, J=8.4), 6.21 (d, 1H, J=8.4), 5.22 (d, 1H, J=3.2), 4.18 (m, 1H), 3.85 (t, 2H, J=4.8), 3.72 (t, 4H, J=4.8), 2.46 (broad, 6H), 2.32(t, 2H, J=8.0), 2.10 (dt, 2H, J=7.2, 4.0), 0.92-1.50 (m, 16H). 化学式 C25H41N3O6, MS 480.3 [M+]
【0126】
(1R, 2R)-2-[N-(12'-アミノ-ドデカノイル)アミノ]-1-(4''-ニトロフェニル)-1, 3-プロパノール (LCL463)。LCL429とアンモニアから、40%の収率で、白色微結晶粉末として得た。mp 46-48℃。TLC (CHCl3/MeOH/濃NH4OH, 1:1:0.01, v/v/v), Rf= 0.12; 1H-NMR (CD3OD, 400MHz) δ 8.13 (d, 2H, フェニル-H, J=8.8), 7.61 (d, 2H, フェニル-H, J=8.8), 5.10 (d, 1H, J=2.8), 4.15 (m, 1H), 3.73 (dd, 1H, J=7.6, 7.6), 3.53 (dd, 1H, J=6.0, 6.0), 3.27 (m, 2H), 2.79 (t, 2H, J=7.2), 2.04 (dt, 2H, J=7.6, 2.8), 1.56 (m, 2H), 1.00-1.40 (m, 14H). 化学式 C21H35N3O5, MS 410.03 [M+]。
【0127】
(1R, 2R)-2-[N-(12'-N,N-ジメチルアミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4''-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール (LCL464)。LCL429と2MジメチルアミンTHF溶液から95%収率で得た。 TLC (CHCl3/MeOH/NH4OH, 10:1:0.01, v/v/v), Rf=0.12; 1H-NMR (CDCl3, 400MHz) δ 8.20 (d, 2H, phenyl-H, J=8.8), 7.58 (d, 2H, フェニル-H, J=8.8), 6.34(d, 1H, J=8.4), 5.21 (d, 1H, J=3.2), 4.19 (H, 1H, J=4.0, 4.0), 3.86 (m, 2H), 2.40 (t, 2H, J=7.6), 2.31 (S, 6H), 2.12 (t, 2H, J=7.2), 1.20-1.50 (m, 18H). 化学式 C23H39N3O5, MS 438.40 [M+]
【0128】
(1R, 2R)-2-[N-(6'-{N-オクチルアミノ}-ヘキサノイル)-アミノ]-1-(4''-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(LCL488)。LCL509とオクチルアミンから、32%収率で、淡黄色油として得た。TLC (CHCl3/MeOH/NH4OH, 4:1:0.01, v/v/v), Rf=0.23; 1H-NMR (CDCl3, 400MHz) δ 8.12 (d, 2H, フェニル-H, J=8.4), 7.60 (d, 2H, フェニル-H, J=8.8), 7.32(d, 1H, J=7.8), 5.17 (d, 1H, J=3.2), 3.79-3.68 (qq, 1H, J=4.0, 4.0), 2.84 (m, 4H), 2.15 (t, 2H, J=7.6), 2.31 (S, 6H), 2.12 (t, 2H, J=7.2), 1.20-1.80 (m, 20H), 0.87 (t, 3H, J=7.2). 化学式 C23H39N3O5, MS 438.28 [M+]
【0129】
(1R, 2R)-2-[N-{12'-N-メチルアミノ}-ドデカノイル]-アミノ]-1-(4''-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール (LCL506)。LCL429と2M メチルアミンTHF溶液から、90%収率で、淡黄色油として得た。TLC (CHCl3/MeOH/NH4OH, 4:1:0.01, v/v/v), Rf=0.12; 1H-NMR (CD3OD, 400MHz) δ 8.18 (d, 2H, フェニル-H, J=8.8), 7.63 (d, 2H, フェニル-H, J=8.8), 5.17 (d, 1H, J=3.2), 4.19 (m, 1H), 3.76 (dd, 1H, J=7.6, 7.6), 3.62 (dd, 1H, J=5.6, 5.6), 2.91 (t, 2H, J=8.0), 2.65 (S, 3H), 2.31 (S, 6H), 2.09 (t, 2H, J=7.2), 1.68 (m, 2H), 1.00-1.42 (m, 16H). 化学式 C22H37N3O5, MS 424.15 [M+]。
【0130】
実施例3
プロドラッグの合成
図2に示すように、本発明のプロドラッグ化合物は、B13(又はこの化合物の1級又は2級アルコール含有類似体)及びN,N-ジメチルグリシン(又は他の適切なカルボン酸)から調製できる。例えば、エステル化のために(例えば、カルボニルジイミダゾール又はジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)及びN,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP))、1:1比で、B13及びN,N-ジメチルグリシンを、適切な条件下で混合すると、モノエステル(1級アルコールの位置に形成)を含むプロドラッグを調製することができる。B13及びN,N-ジメチルグリシンを、過剰モル数(例えば、2,3,4,5,6,7,8,9,10又はそれ以上)のカルボン酸と混合した場合、ジエステルを形成することができる(即ち、エステルが、1級アルコール及び2級アルコールの位置に形成できる)。B13の1級アルコールに対する適切な保護手段を用いて、2級アルコールがエステル化されたモノエステルプロドラッグを得ることができる。例えば、B13の1級アルコールを、酸存在下でB13とジヒドロピランとの反応により、テトラヒドロピラニル(THP)エーテルとして保護することができる。従って、B13の2級アルコールは、N,N-ジメチルグリシンとの反応により、エステル化することができる。最終的に、THPエーテルを、この分子をピリジミウムp−トルエン硫酸塩(PPTS)で処理することにより取り除くことができる。他の適切な保護基及びアルコール保護及び脱保護の方法については、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley and Sons, Inc., New York, 1999を参照されたい。
【0131】
(1R, 2R)-2-[(N-テトラデカノイル)-アミノ]-1-(4''-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール- 1,3-O-bis-ジメチルグリシン塩酸塩 (LCL521)。N,N-ジメチルグリシン(103 mg, 1 mmol)及び1,1'-カルボニルジイミダゾール(162 mg, 1 mmol)を、10mL塩化メチレン中で混合し、B13(42.3 mg, 0.1 mmol)を加える前に、2時間攪拌した。痕跡の出発材料が検出されなくなるまで、反応混合物を室温で攪拌した。反応進行を、TLC(クロロホルム−メタノール−濃縮水酸化アンモニウム、10:1:0.025,v/v)で監視した。粗産物を乾燥するまで蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィーを通して精製し、クロロホルム:メタノール:濃縮水酸化アンモニウム(15:1:0.025(v/v))で溶出し、ロウ状の固体として純産物を得た。この材料を4℃で酢酸エチルに可溶化し、エーテル溶液中でHCLで処理した。反応混合物をHCl添加の際に攪拌し、さらに30分間低温に保ち、乾燥状態まで蒸発させ、さらに高真空中で乾燥し、純粋な白色標的化合物を塩酸塩として得た。LCL521を、60%収率で得た。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 8.238 (d, J=8.8 Hz, 2H), 7.669 (d, J=8.8 Hz, 2H), 6.243 (d, J=4.0 Hz, 1H), 4.75 (m, 1H), 4.581 (dd, J=5.2, 7.2 Hz, 1H), 4.423 (s, 2H), 4.198 (s, 2H), 4.189 (dd, J=5.2, 4.0 Hz), 2.968 (s, 12H), 2.175 (m, 2H), 1.421 (m, 2H), 1.0-1.2 (m, 20H), 0.886 (t, J=6.4 Hz); ESI-MS (CH3OH, 相対強度, %) m/z 593.404 (M-2HCl, 60). [C31H54Cl2N4O7]+ に対して計算 m/z 665.69
【0132】
(1R, 2R)-2-[N-テトラデカノイル]-アミノ]-1-(4''-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール- 1-O- ジメチルグリシン 塩酸塩 (LCL522)。N,N-ジメチルグリシン(9.3 mg, 0.09 mmol)及び1,1'-カルボニルジイミダゾール(14.6 mg, 0.09 mmol)を、3mL塩化メチレン中で混合し、B13(42.3 mg, 0.1 mmol)添加前に、2時間攪拌した。痕跡の出発物質が検知されなくなるまで、反応混合物を室温で攪拌した。反応進行を、TLC(クロロホルム−メタノール−濃縮水酸化アンモニウム、10:1:0.025, v/v)で監視した。粗産物を乾燥まで蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィーを通して精製し、クロロホルム:メタノール:濃縮水酸化アンモニウム(15:1:0.025, v/v)で溶出し、ロウ状の固体として純産物を得た。これを、4℃で酢酸エチル中に溶解し、エーテル溶液中でHCl処理した。反応混合物をHCl添加の間攪拌し、さらに30分間低温に保ち、蒸発乾燥させ、さらに高真空中で乾燥させ、純粋な白色固体標的化合物を塩酸塩として得た。LCL522の収率は、45%であった。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 8.180 (d, J=8.8 Hz, 2H), 7.640 (d, J=8.8 Hz, 2H), 5.067 (d, J=2.4 Hz, 1H), 4.620 (dd, J=5.2, 5.2 Hz, 1H), 4.504 (m, 1H), 4.288 (dd, J=8.4, 8.4 Hz, 1H), 4.124 (dd, J=17.2, 17.2 Hz, 2H), 2.961 (s, 6H), 2.068 (m, 2H), 1.358 (m, 2H), 1.1-1.3 (m, 20H), 0.887 (t, J=7.2 Hz, 3H); ESI-MS (CH3OH, 相対強度, %) m/z 508.347 (M-HCl, 70). [C27H46ClN3O6]+に対して計算m/z 544.12。
【0133】
実施例4
クラスE阻害剤のin vitro及び細胞効果
この実施例においては、上記のクラスE化合物について、in vitro及び細胞レベルにおける酸性セラミダーゼ(ACDase)の阻害剤としての性能を調べた。即ち、酸性セラミダーゼ(ACDase)の加水分解活の基質及び産物であるセラミド(Cer)とスフィンゴシン(Sph)の細胞中のレベルを調節する能力について調べた。更に、これらの化合物の酸性セラミダーゼ(ACDase)分解及びリソソーム安定性に対する効果を調べた。
このin vitro検定は、基質として[3H]C16-Cerを用い、酵素源としてMCF-7細胞溶解物を用いて、既報の手順に従って行った(Zeidan et al., J. Biol. Chem., 281, 24695-24703 (2006))。具体的には、この細胞溶解物を酸性条件(即ち、pH 4.5, 50 mM 酢酸ナトリウム、5 mM 塩化マグネシウム、1 mM EDTA及び0.5%Triton X-100)で調製し、タンパク質レベルをBCAタンパク質検定キット(Pierce, Rockford, Illinois, USA)を用いて測定した。酸性セラミダーゼ(ACDase)活性を、LS 6500多目的シンチレーションカウンター(Beckman Coulter, Inc., Fullerton, California, USA)で計数した放射性パルミチン酸の放出量により測定した。結果を、対照(媒体のみ)に対する割合(%)として示す(図3)。
【0134】
阻害剤の酸性セラミダーゼ(ACDase)の細胞活性に対する効果を、予め薬剤(阻害剤)の濃度を増しながら処理した培養細胞の細胞溶解物を用いて調べた。この方法では、薬剤(阻害剤)は一定時間細胞内へ流入する。その後、ホモジュナイゼーションにより細胞溶解物を調製して、上記の検定を行った(図4)。
内因性セラミド(Cer)とスフィンゴシン(Sph)に対する効果を、既報と同様にして、LC-MS/MS分析を用いて測定した(Bielawska et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 1032-1045 (2008);及びBielawska et al., Methods, 39, 82-91 (2006))。結果を、Bligh及びDyer脂質抽出から測定した、特定のスフィンゴ脂質(SPL)/リン脂質(Pi)のレベルとして表し、SPLs/Pi(pmol/nmol)として示す(図5A〜5D)。
酸性セラミダーゼ(ACDase)タンパク質分解に対するクラスE阻害剤の効果を、既報と同様にしてWesternブロットにより測定した(図6)(Bielawska et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 1032-1045 (2008); Liu et al., Front. Biosci., 13, 2293-2298 (2008);及びHolman et al., Cancer Chemother. Pharmacol., 61, 231-242 (2008))。
リソソーム安定性及びミトコンドリア安定性を、既報と同様にしてLysotracker(TM) red (Molecular Probes, Eugene, Oregon, USA)又はJC-1 mitochondrial dye (Molecular Probes, Eugene, Oregon, USA)を用いたFACS解析により測定した(図7)(Holman et al., Cancer Chemother. Pharmacol., 61, 231-242 (2008))。
【0135】
B13の作用と比較したクラスE化合物の阻害効果を、図3に示す。50μM 阻害物濃度における結果は、非修飾B13が最大阻害効果を示す(〜90%阻害)。同一濃度において、大部分のクラスE化合物は、酸性セラミダーゼ(ACDase)の強力な阻害剤として作用し、LCL464が最大効果、55%阻害、を示した。
図4に示すように、細胞レベルにおいて(2時間処理)、全てのテスト化合物は、細胞外のin vitroデータと比較して、より高い酸性セラミダーゼ(ACDase)阻害を示した。LCL464に対して、最高の阻害(65%)が検知された。以前研究されたように、非クラスE化合物、LCL204、即ち、(1R,2R)-D-スレオ-2-N-テトラデシルアミノ-1-(4'-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオールは、約35%阻害を生じた(データ非表示)。興味深いことに、in vitroでは最も強力な阻害剤、B13、は、細胞レベルでは、酸性セラミダーゼ(ACDase)阻害効果を示さなかった。酸性セラミダーゼ(ACDase)阻害に対するin vitro及び細胞レベル両者の結果によれば、LCL464は、テストしたクラスE類似体の中で、最も強い酸性セラミダーゼ(ACDase)阻害剤であるようである。
【0136】
酸性セラミダーゼ(ACDase)の細胞活性に対する阻害剤の観測効果を、スフィンゴ脂質(SPL)の細胞レベルと結びつけるために、内因性セラミド(Cer)類(Cn-Cer)及びスフィンゴシン(Sph)のレベルに対する効果をさらに調べた。結果は、10μMのクラスE化合物の処理2時間後、細胞Sphのレベルは効果的な減少(50%〜70%)を示した(図5A)。LCL464(10μM)は全セラミド(Cer)の合計レベルを変えなかったが(98%〜104%)、C14-セラミド(Cer)のレベルを233%〜400%に、またC16-セラミド(Cer)のレベルを155%迄、特異的に増加させた(図5B)。LCL464(50μM)について、この特徴的な早期のC14-Cer-Sphバランスに対する効果が観察された(図5C)。C16-セラミド(Cer)に対する効果は、10μM処理に比較して高かった(〜240%)。LCL464はまた、時間依存性の、及び非常に効率の良いC18-セラミド(Cer)レベルの増加を起こし、24時間目に対照の〜900%に達した(図5D)。このC18-セラミド(Cer)に対する効果は、20μMより高い濃度のLCL464に対して観察された。興味深いことに、Sph及びC18-セラミド(Cer)レベルの変化は相関しているが、SD(標準偏差)の大きな変化を伴う(高いレベルのC18-セラミド(Cer)は、低レベルのSphに対応した、及びその逆も成立する)(図5D)。特定の理論に囚われること無く、これらの結果は、セラミドシンターゼ1(CerS1)へのLCL464の付加的活性効果を示すようである。観察された両活性、即ち酸性セラミダーゼ(ACDase)のC14/C16-Cerに特異的な早期阻害、その後のセラミダーゼシンターゼ1の活性化は、アポトーシス促進性C14-、C16-及びC18-セラミド(Cer)の増加を引き起こすことができる。
【0137】
酸性セラミダーゼ(ACDase)発現に対するクラスE阻害剤の効果は、Westernブロットにより測定することができる(図6)。10μM濃度のクラスE化合物は、5時間処理に対して示すように、酸性セラミダーゼ(ACDase)を分解しなかった。この結果は、以前研究したLCL204のような酸性セラミダーゼ(ACDase)阻害剤の研究結果と対照的である(Bielawska et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 1032-1045 (2008))。さらに、クラスE化合物の濃度を50μM迄増加した場合、これ等は尚、酸性セラミダーゼ(ACDase)分解への如何なる効果も示さなかった。
図7に示すように、10μM LCL464は、リソソーム機能障害を起こさなかった。この結果は、B13に対しても観測される。高濃度では気付かれているように、30μM LCL464は、リソソームを脱安定化させる潜在力を持つ(40%、1時間)が、インキュベーション時間を長くするとこの機能障害は、回復する(61%/5時間、>100%/24時間)(データ非表示)。リソソームの恒久的不安定化は、LCL204(対照に比べて、リソソーム安定性を〜90%まで下げる)のような、以前研究した非クラスE阻害剤においてのみ観察される(Bielawska et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 1032-1045 (2008))。
【0138】
実施例5
クラスE産物のin vitro及び細胞効果
実施例4と同様の方法で、クラスEプロドラッグを、in vitro及び細胞レベルでの酸性セラミダーゼ(ACDase)の阻害剤として調べた。図13に示すように、LCL521は、in vitroで酸性セラミダーゼを阻害した。細胞レベルでは、LCL521は、酸性セラミダーゼ(ACDase)のアルファサブユニットの細胞レベルを減少させるようであり、ある程度LCL204に似ている、それに対して、LCL522及びB13は減少させない(図14A及び14B)。LCL521はまた、リソソームに運搬されるが、LCL522は運搬されないようである(図15)。LCL521は、スフィンゴシン(Sph)及びスフィンゴシン−1−リン酸塩(S1P)の細胞レベルを減少させ、全セラミド(Cer tot)並びにアポトーシス促進性C16-及びC18-Cerのレベルを増加させる(図16及び17)。これに対して、LCL522は、細胞のスフィンゴ脂質の調節に関して、B13と同様に挙動する(図16)。如何なる理論に囚われることなく、これらのデータから、LCL522は様々な検定条件において分解してB13を形成し、他方LCL521はゆっくりと代謝されてモノエステルLCL581及びB13に変わることが示唆される。
【0139】
実施例6
ガン細胞におけるクラスE阻害剤の効果
幾つかのガン細胞株(MCF-7(乳癌)、PPC1(ヒト前立腺癌)、SCC14a(ヒト頭頚部扁平上皮癌)、A549(ヒト肺上皮細胞)及びJ3DR4(ヒト黒色腫))の分化を誘導するために、クラスE化合物を分化する細胞に有効量投与した。細胞生存率検定を、3-(4,5-ジメチルチアゾール2-yl)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム臭化物(MTT)検定により行った。既報と同様にして、細胞を、増加する薬剤濃度(0〜100μM)で処理する一晩前に、96ウェルプレートに蒔種した(Hansen et al., J. Immunol. Methods, 119, 203-210 (1989))。処理後、プレートをさらに24〜72時間インキュベートした。細胞数の変化を測定し、無処理対照に対する割合(%)で表す。
この結果によると、本発明の化合物は、低マイクロモル範囲で、生存するガン細胞数を顕著に減少させた。図8に、クラスE阻害剤処理48時間後の、MCF-7乳癌細胞に対する濃度依存的阻害効果を示す。図9に、クラスE化合物のIC50(対照と比較して50%生存細胞にする濃度)を示す。殆ど全ての、LC449を除く、クラスEの化合物は、B13と比較して阻害効果の増加を示した。クラスE化合物の中で最も活性な類似体は、LCL463、ついでLCL464であった。これらの類似体のIC50値は、LCL449(49.9μM)を除き、約6.0〜15.5μMであった。B13はIC50値20.0μMを示した。
【0140】
次に、LCL464の抗増殖効果を、幾つかの更なる種類の腫瘍細胞株(SCC14a(ヒト頭頚部扁平上皮癌)、Du145(ヒト前立腺癌、上皮様細胞株)、J3DR4(ヒト黒色腫)、A549(ヒト肺上皮細胞)、及びPPC1(ヒト前立腺癌))について調べた。図10に、LCL464処理48時間及び72時間後のこれらのガン細胞株に対する阻害効果を示し、MCF-7細胞に対する効果と比較した。LCL464は、MCF-7細胞の増殖に最大の効果を示し、処理48及び72時間後のIC50はそれぞれ、10.2μM及び7.2μMであった。これらの結果は、同量の全タンパク質に対して測定すると、最も高い酸性セラミダーゼ(ACDase)タンパク質発現を有するMCF-7細胞での酸性セラミダーゼ(ACDase)レベルに対応した効果と一致する(データ非表示)。
LCL464のアポトーシスに対する効果を、MCF-7細胞において、アポトーシス実行を媒介するシステインプロテアーゼの1群であるカスパーゼ3/7に対する効果を通して調べた。この効果は、死受容体及び細胞内/ミトコンドリア経路の両者からのアポトーシスシグナルにより活性化される。具体的には、MCF-7細胞を96ウェルプレートに、5×103/50μL/ウェルの密度で、一晩蒔種した。その後細胞を、媒体又は稀釈LCL464と処理した。8及び24時間インキュベーション後、カスパーゼ3/7活性を、製造者(Promega, Madison, Wisconsin, USA)の手引きに従い、Apo-ONE Homogeneous Caspase 3/7 検定キットを用いて測定した。LCL464は、24時間インキュベーション後、用量依存的なアポトーシス誘導を起こし、カスパーゼ3/7活性をLCL464 10μM及び20μMに対して、それぞれ、140%及び200%増加した(図11)。
【0141】
実施例7
ガン細胞におけるクラスEプロドラッグの効果
分化を誘導するに十分な量のクラスEプロドラッグを、分化能のあるMCF-7細胞に投与した。細胞生存率測定をMTT検定により行った。既報と同様にして、増加する薬剤濃度(0〜100μM)を用いて処理する一晩前に、細胞を96ウェルプレートに蒔種した(Hansen et al., J. Immunol. Methods, 119, 203-210 (1989))。処理後、プレートをさらに、24〜72時間インキュベートした。細胞数の変化を測定し、非処理対照に対する割合(%)で表示した。50%阻害濃度を、対照サンプルに対して、プロドラッグ処理サンプルの細胞数変化を比較することにより測定した。
図12に、細胞生存率に対するLCL521の用量依存的結果を示す。また表1に、MCF-7乳癌細胞を用いてMTT細胞生存率検定により測定した、LCL521の時間依存的IC50(24, 48又は72時間後)を示す。表1には、LCL522の24時間後IC50を示し、比較のために、B13に対する時間依存的IC50を示す。24時間後、LC521及びLCL522の両者は、B13と比較して、MCF-7細胞への阻害効果の増加を示す。これらのデータによれば、本明細書で開示したプロドラッグ法は、酸性セラミダーゼ(ACDase)阻害剤の治療指数を増加することができるようである。特にLCL522のプロドラッグ法は、B13輸送及び有効性の増加をもたらすようである。
【0142】
表1 クラスEプロドラッグの時間依存的IC50
【表1】
本発明の様々な細部を本発明の範囲から離れることなく変更することができる。さらに、上記の記載は、説明の目的のためのみであり、限定を目的としたものではない。
【技術分野】
【0001】
この発明は、2008年11月6日出願の米国特許仮出願61/111,852に基づく優先権を主張し、本明細書の引例にその全体が取り込まれている。
この発明は、米国国立保健研究所及び国立癌研究所から助成金番号P01CA097132の米国政府の助成を受けた。従って、米国政府は本発明の一定の権利を有する。
この発明は、両親媒性リソソーム親和性酸性セラミダーゼ阻害剤に関する。幾つかの態様において、この阻害剤は、リソソームの恒久的不安定化や酸性セラミダーゼの蛋白質分解を誘導するものではない。この阻害剤として、N-(ω-アミノアシル)アミノフェニルアルコール及びN-アシルアミノフェニルアルコールのアミノエステルプロドラッグ(前駆薬)が挙げられる。この阻害剤は、ガン及び他の増殖性疾患などの好ましくないセラミダーゼ及びセラミダーゼ関連活性に関係する疾病を治療及び/又は防止するために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
スフィンゴ脂質代謝の刺激調節経路は、様々な細胞機能の調節において、極めて重要な役割を持つ生物活性分子の豊富なネットワークを提供する。スフィンゴ脂質代謝物、即ちセラミド(Cer)及びスフィンゴシン1−リン酸塩(S1P)、は生存、増殖及び細胞死の調節に関与するシグナル分子として、これらの役割がますます認知されつつある。特に、セラミド(Cer)及びスフィンゴシン1−リン酸塩(S1P)の間の細胞内バランスは、細胞が、腫瘍の発生及び増殖に関係するアポトーシスに至るか又は増殖に至るかの決定において役割を果たすようである。セラミド(Cer)が、多くの種類の細胞において、アポトーシス促進能を有するのに対して、スフィンゴシン1−リン酸塩(S1P)は、細胞増殖を誘導し、かつ細胞をアポトーシスから防護するという対抗的役割を担っている。従って、セラミダーゼ(CDase)又はスフィンゴシンキナーゼ(SK)活性を阻害して、セラミド(Cer)の産生に有利な方向へバランスを崩すことは、アポトーシス促進作用を加勢する可能性を有し、有効なガン治療への有望な合理的手段を示している(非特許文献1,2)。
【0003】
リソソーム酵素である酸性セラミダーゼ(ACDase又はAC)は、他のセラミダーゼ類とは異なって、約pH4.5という至適pHにおいて、セラミド(Cer)をスフィンゴシンキナーゼ(SK)の基質であるスフィンゴシン(Sph)及び遊離脂肪酸に代謝する。酸性セラミダーゼ(ACDase)に作用により放出されたスフィンゴシン(Sph)は、スフィンゴシンキナーゼ(SK)がスフィンゴシン1−リン酸塩(S1P)を形成するための基質や、新たなセラミドを再合成するための基質としての役割を持つ(非特許文献3)。酸性セラミダーゼ(ACDase)は、Cer-Sph-S1P間代謝を調節するという役割を持つため、ガン治療の新しい標的になる。多くの腫瘍細胞株において、酸性セラミダーゼ(ACDase)のレベルが上昇していることが示されている(非特許文献4)。酸性セラミダーゼ(ACDase)活性を阻害することは、細胞内C16−、C14−及びC18−セラミド(Cer)を増加させ、スフィンゴシン(Sph)及びスフィンゴシン1−リン酸塩(S1P)の減少をもたらし、かつアポトーシスによる細胞死を誘導する(非特許文献5)。従って、酸性セラミダーゼ(ACDase)はガン治療の標的となり、その阻害剤は、幾つかの種類のガンにおいて化学療法薬剤として働く(非特許文献6,7)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ogretmen and Hannun, Nat. Rev. Cancer, 4, 604-616 (2004)
【非特許文献2】Huwiler and Zangemeister-Wittke, Oncology Hematol., 63, 150-159 (2007)
【非特許文献3】Bielawska et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 1032-1045 (2008)
【非特許文献4】Elojeimy et al., Mol. Ther., 15, 1259-1263 (2007)
【非特許文献5】Bielawska et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 1032-1045 (2008)
【非特許文献6】Liu et al., Front. Biosci., 13, 2293-2298 (2008)
【非特許文献7】Szulc et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 1015-1031 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、理想的には、細胞へ容易に輸送されること、酸性セラミダーゼ(ACDase)が存在するリソソーム区画に優先的に蓄積されること、及びリソソーム区画に恒久的損傷を与えないこと、という特性の1以上を持つ新規酸性セラミダーゼ(ACDase)阻害剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、幾つかの態様において、酸性セラミダーゼを阻害するための化合物を提供し、この阻害は、リソソームの恒久的不安定化なしに、及び/又は酸性セラミダーゼのタンパク質分解無しに行うことができて、この化合物は下記化学式(Ia)
【化1】
(式中:
nは0〜13の整数であり;
R1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は、独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;及び
Yは、CH2又はNHである)
の構造を持つ化合物、又はこの化合物の医薬的に許容された塩である。
【0007】
幾つかの態様において、Xは酸素原子である。幾つかの態様において、YはCH2である。幾つかの態様において、R2は水素原子である。幾つかの態様において、R3はNO2である。幾つかの態様において、R4はCH2OHである。幾つかの態様において、R5はOHである。幾つかの態様において、nは7である。
幾つかの態様において、R1はNHR6 であり、ここでR6はアルキル基である。幾つかの態様において、R1はNR6R7であり、ここでR6及びR7はそれぞれアルキル基である。幾つかの態様において、R1は以下:
【化2】
から成る群から選択されるN-複素環である。
【0008】
幾つかの態様において、この化合物は以下:(1R, 2R)-2-[N-(12'-{1"-イミダゾール}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL433); (1R, 2R)-2-[N-(12'-{1"-モルホリン}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL449); (1R, 2R)-2-[N-(12'-アミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL463); (1R, 2R)-2-[N-(12'-N,N-ジメチルアミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL464); (1R, 2R)-2-[N-(6'-{N-オクチルアミノ}-ヘキサノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール(LCL488);及び(1R, 2R)-2-[N-{12'-N-メチル-アミノ}-ドデカノイル]-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL506)から成る群から選択される。
幾つかの態様において、この化合物は、(1R, 2R)-2-[N-(12'-N,N-ジメチルアミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール(LCL464)である。
幾つかの態様において、本発明は、(a)化学式(Ia)で表される化合物、及び(b)医薬的に許容された担体から成る医薬組成物を提供する。
【0009】
幾つかの態様において、本発明は、下記化学式(Ib)
【化1】
(式中:
nは、0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;
ここで、R4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含む)
の化合物、又はこの化合物の医薬的に許容された塩を提供する。
幾つかの態様において、R4は、CH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7である。幾つかの態様において、R8は、水素原子であり、かつR6及びR7は、それぞれアルキル基である。
幾つかの態様において、R5は、OC(=O)CH(R8)NR6R7である。幾つかの態様において、R8は水素原子であり、かつR6及びR7は、それぞれアルキル基である。
幾つかの態様において、R4は、CH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7であり、かつR5は、OC(=O)-CH(R8)NR6R7である。幾つかの態様において、nは5である。幾つかの態様において、R1は、n−ブチル基である。幾つかの態様において、R3はNO2である。
【0010】
幾つかの態様において、この化合物は以下:
【化3】
【化4】
【化5】
から選択される。
幾つかの態様において、本発明は、(a)化学式(Ib)の化合物及び(b)医薬的に許容された担体から成る医薬組成物を提供する。
【0011】
幾つかの態様において、本発明は、酸性セラミダーゼを阻害する方法を提供し、この方法は、酸性セラミダーゼを含むサンプルを、有効量の化学式(Ia)
【化1】
(式中:
nは0〜13の整数であり;
R1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;及び
Yは、CH2又はNHである)
の化合物、又はこの医薬的に許容された塩に接触させる段階から成る方法であって、この阻害は、恒久的なリソソーム不安定化及び/又は酸性セラミダーゼのタンパク質分解なしに行われる。幾つかの態様において、このサンプルは、in vitro細胞サンプル又はin vivo細胞サンプルである。
【0012】
幾つかの態様において、本発明は、患者における好ましくないセラミダーゼ又はスフィンゴシンキナーゼ活性が関係する疾病又は疾患を治療又は予防する方法を提供し、この方法は、患者に有効量の化学式(Ia):
【化1】
(式中:
nは0〜13の整数であり;
R1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;及び
Yは、CH2又はNHである)
の化合物、又はこの化合物の医薬的に許容された塩を投与する段階から成る方法であり、この化合物は、恒久的なリソソーム不安的化及び/又は酸性セラミダーゼのタンパク質分解なしに又は実質的になしに、酸性セラミダーゼを阻害する。
【0013】
幾つかの態様において、この疾病又は疾患は、ガン、ガン転移、アテローム性動脈硬化、狭窄、炎症、喘息、アトピー性皮膚炎及び他の増殖性疾病から成る群から選択される。幾つかの態様において、この患者は哺乳類患者である。幾つかの態様において、この化学式(Ia)の化合物は、化学式(Ia)の化合物及び医薬的に許容された担体から成る医薬的組成物として患者に投与される。
【0014】
幾つかの態様において、本発明は、ガンを治療する方法を提供し、この方法は、ガン治療を必要とする患者に、有効量の下記化学式(Ia)
【化1】
(式中:
nは0〜13の整数であり;
R1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;及び
Yは、CH2又はNHである)
の化合物又はこの医薬的に許容された塩を投与する段階から成る方法である。
【0015】
幾つかの態様において、このガンは乳癌、前立腺癌、メラノーマ、肺癌及び頭頚部癌から成る群から選択される。幾つかの態様において、この患者は哺乳類患者である。幾つかの態様において、この化学式(Ia)の化合物を、化学式(Ia)の化合物及び医薬的に許容された担体から成る医薬組成物として投与する。
幾つかの態様において、Xは酸素原子である。幾つかの態様において、YはCH2である。幾つかの態様において、R2は水素原子である。幾つかの態様において、R3はNO2である。幾つかの態様において、R4はCH2OHである。幾つかの態様において、R5はOHである。幾つかの態様において、nは7である。
幾つかの態様において、R1はNHR6 であり、ここでR6はアルキル基である。幾つかの態様において、R1はNR6R7であり、ここでR6及びR7はそれぞれアルキル基である。幾つかの態様において、R1は以下:
【化2】
から成る群から選択されるN-複素環である。
【0016】
幾つかの態様において、この化合物は以下:(1R, 2R)-2-[N-(12'-{1"-イミダゾール}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL433); (1R, 2R)-2-[N-(12'-{1"-モルホリン}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL449); (1R, 2R)-2-[N-(12'-アミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL463); (1R, 2R)-2-[N-(12'-N,N-ジメチルアミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL464); (1R, 2R)-2-[N-(6'-{N-オクチルアミノ}-ヘキサノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール(LCL488);及び(1R, 2R)-2-[N-{12'-N-メチル-アミノ}-ドデカノイル]-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL506)から成る群から選択される。
幾つかの態様において、この化合物は、(1R, 2R)-2-[N-(12'-N,N-ジメチルアミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール(LCL464)である。
【0017】
幾つかの態様において、本発明は、酸性セラミダーゼを阻害する方法を提供し、この方法は、酸性セラミダーゼを含むサンプルを、有効量の酸性セラミダーゼ阻害剤のエステルプロドラッグと、このプロドラッグが加水分解してこの阻害剤になる条件下で、接触させる段階から成る方法であり、このプロドラッグは、化学式(Ib):
【化1】
(式中:
nは、0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5から10の間の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;及び
ここで、R4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含む)の構造を有する化合物又はこの医薬的に許容された塩である。
幾つかの態様において、このサンプルは、in vitro細胞サンプル、又はin vivo細胞サンプルである。
【0018】
幾つかの態様において、本発明は、患者における好ましくないセラミダーゼ又はスフィンゴシンキナーゼ活性に関係する疾病又は疾患を治療又は予防する方法を提供し、この方法は、患者に有効量の化学式(Ib):
【化1】
[式中:
nは、0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5から10の間の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;及び
ここで、R4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含む]の化合物又はこの医薬的に許容された塩を投与する段階から成る方法である。
【0019】
幾つかの態様において、この疾病又は疾患は、ガン、ガン転移、アテローム性動脈硬化、狭窄、炎症、喘息、アトピー性皮膚炎及び他の増殖性疾病から成る群から選択される。幾つかの態様において、患者は哺乳類患者である。幾つかの態様において、化学式(Ib)の化合物は、化学式(Ib)の化合物及び医薬的に許容された担体から成る医薬的組成物として患者に投与される。
【0020】
幾つかの態様において、本発明は癌を治療する方法を提供し、この方法は、ガン治療を必要とする患者に有効量の化学式(Ib):
【化1】
(式中:
nは、0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5から10の間の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;及び
ここで、R4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含む)の化合物、又はこの医薬的に許容された塩を投与する段階から成る方法である。
【0021】
幾つかの態様において、この患者は哺乳類患者である。幾つかの態様において、この化学式(Ib)の化合物を、化学式(Ib)の化合物及び医薬的に許容された担体から成る医薬組成物として投与する。
幾つかの態様において、R4は、CH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7である。幾つかの態様において、R8は、水素原子であり、かつR6及びR7は、それぞれアルキル基である。
幾つかの態様において、R5は、OC(=O)CH(R8)NR6R7である。幾つかの態様において、R8は、水素原子であり、かつR6及びR7は、それぞれアルキル基である。
幾つかの態様において、R4は、CH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7であり、かつR5は、OC(=O)-CH(R8)NR6R7である。
幾つかの態様において、nは、5である。幾つかの態様において、R1は、n−ブチル基である。幾つかの態様において、R3は、NO2である。
【0022】
幾つかの態様において、この化合物は以下:
【化3】
【化4】
【化5】
から選択される。
【0023】
本発明の目的は、好ましくないセラミダーゼ、セラミダーゼ関連(セラミダーゼ逆反応活性、セラミド/dhセラミド合成酵素及びアシルトタンスフェラーゼのような)及び/又はスフィンゴシンキナーゼ活性に関係する、ガン及び他の増殖性疾病を含む、疾病又は疾患の治療又は予防における使用のためのリソソーム親和性酸性セラミダーゼ(ACDase)阻害剤、及び関係するプロドラッグを提供することである。
上述、及び本発明により全体的に又は部分的に達成することができた発明の目的、他の目的は、以下明細書において、添付した最善に記載された図面と関係した記述が進むに従い明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ω−アミノアシル基を含むクラスE化合物(LCL463、LCL506、LCL464、LCL488、LCL433及びLCL449)の合成を示す概略図である。
【図2】(1R, 2R)-2-N-(テトラデカノイルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(B13)のプロドラッグであるクラスE化合物の合成を示す概略図である。
【図3】50μMのクラスE阻害剤(LCL433、LCL449、LCL463、LCL464、LCL488又はLCL506)のin vitro(MCF-7細胞溶解液中)の酸性セラミダーゼ(ACDase)に対する阻害効果を示す棒グラフである。ACDase活性は、[3H]C16-Cerからの放射性パルミチン酸放出を測定し、対照(媒体のみ)サンプルにおいて放出された放射性パルミチン酸に対する割合(%)として表す。比較のため、(1R, 2R)-2-N-(テトラデカノイルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(B13)に対する結果を示す。
【図4】10μMのクラスE阻害剤(LCL433、LCL449、LCL463、LCL464、LCL488又はLCL506)の酸性セラミダーゼ(ACDase)の細胞内活性に対する阻害効果を示す棒グラフである。MCF-7細胞をクラスE阻害剤と2時間インキュベートし、ホモジナイズし、パルミチン酸の放出量を測定した。結果を対照細胞(媒体のみでインキュベートした)において放出された放射性パルミチン酸に対する割合(%)として表す。比較のため、(1R, 2R)-2-N-(テトラデカノイルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(B13)に対する結果を示す。
【0025】
【図5A】MCF-7細胞をクラスE阻害剤(LCL433、LCL449、LCL463、LCL464、LCL488又はLCL506;10μM)と2時間処理した後、これらの化合物の細胞内スフィンゴシン(Sph)レベルに対する効果を示す棒グラフである。比較のため、(1R, 2R)-2-N-(テトラデカノイルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(B13)に対する結果を示す。
【図5B】図5Bは、10μMのLCL464によるMCF-7細胞の2時間処理後、セラミド(C14-Cer、C16-Cer、C18-Cer、C24-Cer及びC24:1-Cer)及びスフィンゴシン(Sph)を含む、細胞内スフィンゴ脂質(SPLs)のレベルに対するLCL464の効果を示す棒グラフである。結果を対照細胞(媒体のみと処理)に観測されたセラミド及びスフィンゴシン量に対する割合(%)として表す。
【図5C】細胞内セラミド(C14-Cer:黒色ダイヤ;C16-Cer:黒色四角;C18-Cer:黒色三角;C24-Cer:×;C24:1-Cer:*)及びスフィンゴシン(Sph:黒色丸)レベルにおけるLCL464(50μM)の処理時間(0〜24時間)に対する効果を示すグラフである。結果を対照細胞(媒体のみで処理)に観測されたセラミド及びスフィンゴシン量に対する割合(%)として表す。
【図5D】細胞内セラミド(C14-Cer:黒色ダイヤ;C16-Cer:黒色四角;C18-Cer:黒色三角;C24-Cer:×;C24:1-Cer:*)及びスフィンゴシン(Sph:黒色丸)レベルにおけるLCL464(24時間後)の使用量(0〜50μM)に対する効果を示すグラフである。結果を対照細胞(媒体のみで処理)に観測されたセラミド及びスフィンゴシン量に対する割合(%)として表す。
【図6】酸性セラミダーゼ(AC)安定性に対するクラスE阻害剤(LCL433、LCL449、LCL463又はLCL464)の効果を示すWestern ブロット解析の顕微鏡写真である。抗AC抗体を用いた細胞溶解液中のAC染色により測定した。クラスE阻害剤の濃度は、10μM(上部ペアの上部のレーン)及び50μM(下部ペアの上部のレーン)である。アクチン染色結果も示す(各ペアの下部レーン)。比較のため、(1R, 2R)-2-N-(テトラデカノイルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(B13)に対する結果を示す。各対照レーンは媒体のみ添加(クラスE阻害剤無添加)のものを示す。
【0026】
【図7】1時間(黒色棒)又は5時間(白色棒)処理後の、リソソーム安定化に対する10μMのLCL464又は(1R, 2R)-2-N-(テトラデカノイルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(B13)の効果を示す棒グラフである。リソソーム安定性は、LYSOTRACKER(TM) Red dye (Molecular Probes, Eugene, Oregon, USA)のケイ光を測定し、調べた。結果を媒体のみで処理した対照細胞に観測されるケイ光に対する割合(%)として表す。
【図8】MCF-7乳癌細胞増殖に対するクラスE阻害剤((LCL 433:黒色三角; LCL449:×; LCL463:(; LCL464:黒色丸; LCL488:垂直鎖線; LCL506:水平鎖線)の阻害効果の濃度依存性を示すグラフである。(1R, 2R)-2-N-(テトラデカノイルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(B13;黒色ダイヤ)の阻害効果の濃度依存性を比較のために提供した。細胞数を測定し、対照細胞(媒体のみ処理)の細胞数に対する割合(%)として表す。
【図9】MCF-7乳癌細胞増殖に対するクラスE阻害剤(LCL433、LCL449、LCL463、LCL464、LCL488、又はLCL506)の50%阻害濃度(IC50)分布を示す棒グラフである。比較のために、(1R, 2R)-2-N-(テトラデカノイルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(B13)のIC50を示す。
【図10】LCL464の、ヒト頭頚部扁平上皮細胞癌細胞(SCC14a)、ヒト前立腺癌上皮様細胞(Du145)、ヒトメラノーマ細胞(J3DR4)、ヒト肺胞上皮細胞(A549)、及びII型のヒト前立腺ガン細胞(PPC1)における、48時間(黒色棒)又は72時間(白色棒)後の、50%阻害濃度(IC50)を示す棒グラフである。MCF-7乳癌細胞に対する効果と比較して示す。
【0027】
【図11】10及び20μM濃度において、8時間(黒色棒)又は24時間(白色棒)後の、MCF-7細胞におけるカスパーゼ3/7に対するLCL464の効果を示す棒グラフである。結果を対照細胞(媒体のみ処理)におけるカスパーゼ3/7に対する効果の割合(%)で表す。
【図12】MCF-7乳癌細胞増殖に対するクラスEプロドラッグLCL521の濃度依存性阻害効果を示すグラフである。
【図13】in vitro(MCF-7細胞溶解液中)における酸性セラミダーゼ(ACDase)活性に対するクラスEプロドラッグLCL521の濃度依存性効果を示す棒グラフである。ACDase活性は、[3H]C16-Cerからの放射性パルミチン酸の放出に基づいて測定し、対照サンプル(媒体のみ)中の放出されたパルミチン酸に対する割合(%)として表わす。
【図14A】細胞溶解液における酸性セラミダーゼ(AC)の染色により測定した、酸性セラミダーゼ(AC)安定性に対するクラスEプロドラッグLCL521及びLCL522と1時間及び5時間処理の効果を示す、一対のWesternブロット解析の顕微鏡写真である。(1R, 2R)-2-N-(テトラデカノイルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(B13)及び(1R, 2R)-2-N-(テトラデシルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(LCL204)に対する結果を比較のために示す。アクチン染色結果も示す(下部写真)。対照レーンは、媒体のみの添加の効果を示す。
【図14B】図14AのWesternブロットの定量的結果を示す棒グラフである。結果を対照と比較したケイ光強度で表す。1時間処理に対するデータを白色棒で示し、5時間処理に対するデータを黒色棒で示す。
【0028】
【図15】1時間後のリソソームに対する5μM(白色棒)又は10μM(黒色棒)のクラスEプロドラッグ(LCL521又はLCL522)の効果を示す棒グラフである。リソソームの安定性を、LYSOTRACKER(TM)Red dye (Molecular Probes, Eugene, Oregon, USA)ケイ光を用いて測定した。(1R, 2R)-2-N-(テトラデカノイルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(B13)及び(1R, 2R)-2-N-(テトラデシルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(LCL204)に対する結果を比較のために示す。B13については、白色棒は10μM化合物処理の結果を示し、黒色棒は20μM化合物処理の結果を示す。
【図16】MCF-7細胞における、5時間後の、細胞内スフィンゴ脂質(C14-、C16-、C18-、C24-、C24:1-セラミド(Cn-Cer))、スフィンゴシン(Sph)、スフィンゴシン−1−リン酸塩(S1P)及び全セラミド(Cer tot)レベルに対する、10μMのLCL521(黒色棒)、LCL522(灰色棒)、又は(1R, 2R)-2-N-(テトラデカノイルアミノ)-1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(B13;淡灰色棒)の効果を示す棒グラフである。
【図17】細胞内スフィンゴシン(Sph:黒色円)及びスフィンゴシン−1−リン酸塩(S1P;白色円)に対するLCL521の初期の阻害効果を示すグラフである。セラミド(C14-Cer:黒色ダイヤ; C16-Cer:黒色四角; C18-Cer:黒色三角; C24-Cer:灰色四角; C24:1-Cer:(; 及び全セラミド(Cer tot):白色四角)の時間依存的レベルも示す。LCL521との処理は、アポトーシス促進性のC18-及びC16-Cerの時間依存的増加を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
代表的態様を示す、添付した実施例を参照して、今やより詳細に本明細書において、本発明を説明するであろう。しかしながら、本発明は異なった形式に具体化することができるので、本明細書に述べた実施態様に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの態様は、開示が十分に完全であり、及び当業者に対して態様の範囲を十分に伝えるように提供される。
本明細書参考文献として、すべての特許、特許出願、データベース事項、及び雑誌論文を含め、本明細書に引用した全ての参考文献のその全体を、及び全目的のために、取り込んだが、それは、各特許、特許出願、データベース事項、又は雑誌論文が特別に、個別的に、全体的に、及び全目的のために、引例として引き合いに出されたのと同程度である。
【0030】
I.リソソーム親和性酸性セラミダーゼ阻害剤
セラミドは、ヒトの様々なガン細胞株におけるアポトーシス、増殖停止、分化及び老化のような、抗増殖応答を調節することが知られている。細胞内のセラミド作用に関係する多くの重要な生物標的及び事象が同定されてきた:即ち、ホスファターゼ、キナーゼ、及びカスパーゼの活性化;テロメラーゼ酵素複合体の阻害;膜貫通型シグナル経路の誘導、及びミトコンドリアからのチトクロームcの放出である。将来の抗癌剤としてセラミド使用の欠点としては、非常な水溶性の低さ、細胞取り込み性の低さ、輸送、放出の調節ができないこと、及び細胞内標的指向性である。セラミダーゼは、セラミドを加水分解して、細胞内レベルを減少させる酵素である。セラミダーゼの阻害は、内因性セラミドのレベルを増加し、及びこの酵素の阻害は、創薬の候補として活用されている。
【0031】
セラミダーゼファミリーとしては、酸性、中性及びアルカリ性の種類がある(Koch et al., J. Bio. Chem., 271, 33110-33115 (1996); El Bawab et al., J. Bio. Chem., 274, 27948-27955 (1999);及びMao et al., J. Bio. Chem., 276, 26577-26588 (2001))。ヒト酸性セラミダーゼは、8p22にマップされるが、これはしばしば前立腺癌(PCa)において変化している。この酵素は、セラミドをスフィンゴシン及び遊離脂肪酸に加水分解し、この全体としての効果は、セラミド・シグナル伝達のダウンレギュレーション(下向き調節;即ち、アポトーシスの減少)、及びスフィンゴシンプールの増加であり、これはスフィンゴシンキナーゼによりリン酸化されてS1Pを産生することができる。S1Pは、内皮の分化遺伝子ファミリー(Edg/S1P受容体)と相互作用して、内皮細胞移行及び脈管形成を促進する。このように、セラミダーゼを過剰発現する細胞(例えば、腫瘍細胞)は、アポトーシス抵抗性表現型質、及びこのミクロ環境における脈管形成増加の潜在力を産み出すことができる。
【0032】
PCa細胞株DU145、PC3及びLNCaPのすべては、Northernブロットにより、セラミダーゼmRNAのレベルの増加を示した。根治的前立腺摘除で得た前立腺腫瘍は、酸性セラミダーゼ発現を競合的PCR法により解析すると、41.6%は、酸性セラミダーゼmRNAのレベルが増加し、55.5%は変化無く、及び2.7%は酸性セラミダーゼmRNAのレベルの減少することを示した。従って、前立腺における腫瘍のかなりの割合が抗アポトーシス性表現型質と見なす潜在力を持つ。
PCa細胞も含め、大部分のガン細胞において、セラミドは、カスパーゼの活性化、DNA断裂化、及びアポトーシスの他の特性及び顕著な特徴の活性化、ストレスが活性化するタンパク質キナーゼ(SARK/JNK)の誘導、ホスホリパーゼDの阻害、タンパク質キナーゼC(PKC)の脱リン酸化及び不活性化、ミトコンドリア活性酸素種の放出の促進、チトクロムCの放出及び、SRタンパク質を脱リン酸化し、よりアポトーシス促進性表現型質をもたらす、PP1の活性化を引き起こす。
【0033】
機構的には、セラミド、及び細胞周期進行及びアポトーシスに関わる他の重要な調節因子が関与する細胞増殖調節の総合的図式が出現しつつある。従って、TNF及び他の、すべてではないが、誘導因子に応答するセラミドの形成は、YVAD及びCrmAにより阻害される上流のカスパーゼ(例えば、カスパーゼ8)の活性化を必要とする。しかしながら、下流カスパーゼの阻害剤は、セラミド形成を阻止できず、にもかかわらず、セラミドは、下流カスパーゼ(例えば、カスパーゼ3)を活性化するが、上流カスパーゼを活性化しない。さらに、セラミドのアポトーシス誘導能は、エグゼキューショナー(誘導型)カスパーゼの阻害剤により遮断されるが、エフェクター(実行型)カスパーゼの阻害剤により遮断されないので、セラミド形成は二組の酵素の間に位置する。また、Bcl-2の研究により、Bcl-2はこの経路の中でセラミドの下流である。従って、セラミドは、Bcl-2のリン酸化を調節し、及び細胞死に対するセラミドの作用は、Bcl-2過剰発現により阻害される。
【0034】
これらすべての作用において、短鎖セラミド(C2〜C8)は、内因性セラミド(即ち、長鎖セラミド、C16〜C24)のレベルと両立する能力レベルを示すことができる。セラミド類似体の作用は、顕著な特異性を示すことができる。例えば、非常に密接な中性脂質、ジアシルグリセロール(DAG)、はセラミドの作用を真似ず、しばしばこれと拮抗する。セラミドの代謝的前駆体であり、4〜5トランス二重結合を欠く点が異なるだけの、ジヒドロセラミドは、同程度の細胞への取り込みを示すが、細胞研究において活性を示さない(Bielawska et al., J. Bio. Chem., 268, 26226-26232 (1993);及びBielawska et al., J. Bio. Chem., 267, 18493-18497 (1992))。
【0035】
その一方、短鎖セラミドは、TNF及びセラミド形成の他の誘導因子に関連する他の重要な作用に対する弱いエフェクターであることができる。とりわけ、セラミドは、NF-κBを誘導する上で活性でないが、NF-κBは、TNFの炎症作用及び抗アポトーシス作用における役割を果たす転写因子である。また、セラミドは、特に、スフィンゴシン及びスフィンゴシン−1−リン酸塩と比較した時、MAPキナーゼファミリーのerkメンバーの弱い活性化因子である。サイトカイン応答における生化学的標的の一部に対する、短鎖セラミドのこの限定的作用は、ガンにおけるアポトーシスの調節において、セラミドがより特異的な機能を持つという新しい仮説への刺激を与える。
【0036】
複数の証拠が、セラミドがFas-誘導のアポトーシスを仲介する上での役割を指摘する。第1に、セラミド産生が、Fas-誘導アポトーシスの不可欠な部分であることが示されてきた(Cremesti et al., J. Bio. Chem., 276, 23954-23961 (2001))。第2に、Fas活性化は、Fas-産生のアポトーシスシグナル伝達の伝搬に関与することが示された、酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASmase)を活性化することが示されてきた(Raisova et al., FEBS Lett., 473, 27-32 (2000))。第3に、Fas-誘導セラミド形成は、カスパーゼ活性化と共に働き、アポトーシスの結果ではない(Tepper et al., J. Bio. Chem., 272, 24308-24312 (1997))。第4に、Fas-抵抗性細胞は、セラミドレベルの変化を殆ど示さないが、正常の受容体発現及び完全な下流シグナル伝達を有する(Tepper et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 92, 8443-8447 (1995))。第5に、de novo(新規の)セラミド合成に対する役割が、Fas-誘導アポトーシスにおいても確立されたこと(Chalfant et al., J. Bio. Chem., 276, 44848-44855 (2001)を参照)は、セラミドの2種の可能な"プール"が、Fasシグナル伝達に作用することができることを示唆する。第6に、酸性スフィンゴミエリナーゼ−ヌル幹細胞は、JO2-誘導キャッピングに対して感受性がないが、25nM用量のC16−セラミドで増感される。
【0037】
前立腺癌発生に対して必ずしも直接の原因となるわけではないが、ヒト腫瘍の41%(Gleeson等級7腫瘍の60%、及び等級6腫瘍の38%のみ)における酸性セラミダーゼが上昇することは、この発現が、腫瘍成長に対する選択有利性を提供することを示唆する。このメカニズムは、2種の方式で明らかにされるようである。第1に、セラミドレベルの低下は、抗アポトーシス効果を有し、アポトーシスのダウンレギュレーション(下向き調節)は、前立腺癌を含む幾つかのガンの明らかに顕著な特徴である。第2に、スフィンゴシンキナーゼの増加を経たS1P産生は、脈管形成及び増殖効果を有し、前立腺における内皮細胞移行を促進する。
【0038】
本発明は、幾つかの態様において、両親媒性、リソソーム親和性酸性セラミダーゼ(ACDase)阻害剤に関し、及び細胞酸性セラミダーゼ(ACDase)を標的とするプロドラッグに関する。幾つかの態様において、本発明は化学式(I):
【化1】
[式中:
nは0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;及び
ここでR4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含み、又はここでR1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択される]化合物に関する。
【0039】
従って、本発明は、2-N-(ω-アミノ-アシル)-アミノフェニル-アルコールを含む化合物(以下「クラスE化合物」ともいう。)、並びにB13(及びこの類似体)のプロドラッグである化合物に関する。B13の構造を下式:
【化6】
に示す。
【0040】
幾つかの態様において、化学式(I)の化合物は、アミド基又は他のN−アシル基と結合して、酸性セラミダーゼ(ACDase)による化合物の分子認識及びリソソーム区画の選択的標的化のために、アミノ官能基を提供する。この化合物は、N−アシル又は修飾したN−アシル(例えば、尿素、チオウレア、チオアミド、等々)鎖における、様々な炭素鎖、これらのN−アシル部分、水酸基の酸素原子に付加した異なるアミノ酸部分、及びアミノ基(フェニル環のアミノ基及び/又は水酸基の置換基を含む)に付加したメチレンリン酸基に取り込まれたアミノ基の様々な官能基性(例えば、1級アミン、2級アミン、3級アミン、又はN−複素環)を含むことができる。これらの化合物は、すべての立体化学を含む。
【0041】
これらの化合物はまた、幾つかの態様において、(細胞に容易に輸送され、リソソームに優先的に蓄積され、リソソーム親和性プロドラッグとして働くことができて、リソソーム内に遊離の阻害剤を放出することが期待される)アミノ酸エステルプロドラッグを含むことができる(Vig et al., Pharm. Res., 20, 1381-1388 (2003); Rautio et al., Nat. Rev. Drug Discov., 7, 255-270 (2008); Song et al., J. Med. Chem., 49, 4344-4355 (2006); Black and Percival, Chembiochem, 7, 1525-1535 (2006); Jones-Bolin et al., Mol. Cancer Ther., 5, 1744-1753 (2006);及びKaufmann and Krise, J. Pharmaceutical. Sci., 96, 729-746 (2007))。例えば、B13のプロドラッグは、B13の遊離水酸基のエステル化により形成する1以上のアミノエステル基を含むことができる。
【0042】
本発明の化合物を、細胞分化の誘導、アポトーシスの誘導、及び細胞増殖と細胞表現形質を変えるために、使用することができる。これらの化合物をまた、ガン及び他の増殖性疾病の治療を含め、細胞の過増殖又は移動により特徴づけられる疾病の治療にも用いることができる。本発明は、幾つかの態様において、顕著なリソソーム機能障害又は酸性セラミダーゼ(ACDase)の分解なしに、B13の構造要素とリソソームを標的とするためのアミノ官能基を組み合わせて、酸性セラミダーゼ(ACDase)の強力なリソソーム阻害剤を提供する。
【0043】
ω−アミノアシル基を含むクラスE化合物の例、及びこれ等の合成を図1に示す。LCL464、即ち (1R, 2R)- 2-(12'-N, N-ジメチル-ドデカノイルアミノ)- 1-(4'-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオールのような、クラスE化合物は、内因性Cer, Sph及びS1Pの間のフラックス(流れ)に作用して、酸性セラミダーゼ(ACDase)の阻害と合致して、早期の(例えば、2時間以内の)及び特異的内因性C14-Cerの増加、及びSphの減少をもたらすようである。長期の処理、特により高濃度において、C18-Cerの特異的増加をもたらす。これ等2種のCer(C14-Cer及びC18-Cer)は、以前、アポトーシス促進剤として働くことが示された(Bielawska et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 1032-1045 (2008);及びKarahatay et al., Cancer Lett., 256, 101-111 (2007))。従って、本発明の化合物の活性により、LCL464又は密接な類縁体が、酸性セラミダーゼ(ACDase)に作用する化学治療薬剤として働くことができる事ことが示唆される。
【0044】
さらに、LCL521、即ち、1,3-O-ビス-ジメチルグリシン-B13 塩酸及びLCL522、即ち、1-O-ジメチルグリシン-B13 塩酸(図2参照)のようなプロドラッグの結果は、MCF-7細胞生存率の阻害効果を増すことを示す。LCL521及びLCL522のIC50/24h値(即ち、24時間後の生存率50%阻害濃度)は、B13に対する60.0μMと比較して、それぞれ、約8.9μM及び6.5μMであった(実施例7の表1、図12)。LCL521は、in vitro 酸性セラミダーゼ(ACDase)を阻害し(図13参照)、及び細胞内において、この酵素の活性型のαサブユニットの減少を引き起こす(図14A及び14B)。LCL521はまた、リソソームに輸送されることができる。図15参照。LCL521は、Sph及びS1Pの細胞内レベルを下げる上で有効であり、及び細胞内アポトーシス促進性C16-及びC18-セラミドレベルを上げる(図16及び17)。LCL522は、細胞スフィンゴ脂質の調節において、LCL521程効果的ではなく、むしろB13のように働く(図16)。如何なる理論に囚われることなく、予備的な結果は、LCL522が相対的に急速に加水分解され、B13を形成し、他方LCL521が、ゆっくり、B13のモノエステル類似体である、LCL581に代謝され、及びB13に代謝されることを示唆する。これらの結果は、本明細書で開示したプロドラッグ研究方法が、in vivoの酸性セラミダーゼ(ACDase)阻害剤の治療指数を増加することができることを示唆する。
【0045】
II.定義
本明細書で用いたすべての技術的及び科学的用語は、以下に特別に定義しなければ、当業者が通常理解するのと同じ意味を有することを意図されている。本明細書に用いられる技術に対する引例は、当業者が通常理解する技術を表すことを意図し、これらの技術の変形技術又は当業者にとって自明の技術に等価な代替え技術を含む。以下の用語は、当業者によく理解されていると信ずるが、以下の定義を本発明の説明を容易にするために示す。
明細書及び請求の範囲を通して、所定の化学式又は化学名は、他に明記しなければ、すべての光学的及び立体異性体、及びこのような異性体及び混合物が存在するラセミ混合物を包含する。
長年の特許法慣習に従い用語"a(1つ、ある)"、"an(1つ、ある)"及び"the(その、この)"は、特許請求範囲を含めて本出願で用いる際"1以上"を表す。従って、例えば、"a compound(ある化合物)"は、複数のこのような化合物を含む。
【0046】
用語"comprising(から成る)"は、"including(含む)"、"containing(含む)又は"characterized by(により特徴付けられる)"と同様に、包含的又は制約が無く、付加的な、非列挙の要素又は方法段階を排除しない。"comprising(から成る)"は、名付けられた要素は必須であるが、他の要素も加えることが可能であり、それでも特許請求の範囲の構成物を形成することができることを意味する技術用語である。
本明細書で用いる成句"consisting of(のみから成る)"は、請求の範囲に明記してない全ての要素、段階又は内容物を除外する。成句"consist of(のみから成る)"が、プレアンブルに直ちに続かないで、請求の範囲の本体に現れる場合、示された要素のみに限定されるが、他の要素は、全体として請求の範囲から排除されない。
本明細書で用いる成句"consisting essentially of(本質的に、から成る)"は、請求範囲を、明記した材料又は段階に限定して、さらに請求範囲の発明事項の基本的及び新規の特徴に実質的に影響しない材料又は段階を限定する。
用語"comprising(から成る)"、"consisting of(のみから成る)"及び"consisting essentially of(本質的に、から成る)"に関して、これらの3種の用語の1種が本明細書で用いられた時、本発明は、他の2種の用語のいずれかの使用を含めることができる。
【0047】
用語"セラミド"は、スフィンゴシンアミノ基に付加した脂肪酸を有するスフィンゴシンから作られたアミド含有化合物を表すことができる。幾つかの態様において、このセラミドは、自然界に存在する分子セラミドである。セラミドは、"Cn-Cer"と表すことができて、ここでnは、脂肪酸から作られたアシル基中の炭素原子数である。幾つかの態様において、このセラミドは、脂肪酸アシル基(例えば、C24:1-Cer、これは炭素数が24の脂肪酸鎖であり、1個の二重結合を持つセラミドである)に1以上の二重結合を含むことができる。
用語"セラミダーゼ関連"は、逆セラミダーゼ活性、セラミド/dh セラミド合成酵素及びアシルトランスフェラーゼ活性を表すことができる。
【0048】
重量、時間、用量、その他測定可能値を表す場合、本明細書で用いる用語"約"は、開示した方法を実行する上で以下のような変動は適切であるので、特定の値から、幾つかの態様では、±20%又は±10%の変動、幾つかの態様では、±5%、幾つかの態様では、±1%及び幾つかの態様では、±0.1%の変動を包含することを意味する。
条件を表す場合、用語"〜からフリー(又は、〜がない)"は、不在又は存在しない条件、又は実質的に不在又は実質的に存在しない条件を意味する。従って、"〜からフリー(又は、〜がない)"は、特定の条件が不在又は、存在しない態様、及び特定の条件が実質的に不在又は存在しない(例えば、細胞、オルガネラ(細胞内小器官)又は患者集団のような特定の集団の20,15,10,5,4,3,2又は1%より少なく生ずる)態様を表すことができる。
2以上の活性、条件又は結果を記載する時に用いる、用語"及び/又は"は、記載した条件の両者が含まれる又は記載した2個の条件の中1個が含まれる場合の状況を表す。恒久的リソソーム破壊及び/又は酸性セラミダーゼの分解からフリーな状況を表す場合、この状況は、恒久的リソソーム破壊からフリー、酸性セラミダーゼ分解からフリー、又は恒久的リソソーム破壊からフリー且つ酸性セラミダーゼからフリーであることができる。
【0049】
本明細書で用いる用語"アルキル基"は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル期、ヘキセニル基、オクテニル基、ブタジエニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基及びアレニル基を含む、線状(即ち、"直鎖")、分枝状又は環状、飽和又は少なくとも部分的に飽和、及び幾つかの場合、完全不飽和の(即ち、アルケニル基及びアルキニル基)炭化水素鎖を含む、C1〜20を表わす。"分枝状"は、メチル基、エチル基、又はプロピル基のような、低級アルキル基が、直鎖アルキル鎖に付加したアルキル基を表す。"低級アルキル基"は、1から8炭素原子(即ちC1〜8アルキル基)例えば、1,2,3,4,5,6,7又は8炭素原子、を有するアルキル基を表す。"高級アルキル基"は、約10から約20炭素原子、例えば、10,11,12,13,14,15,16,17,18,19又は20炭素原子、を有するアルキル基を表わす。ある態様において、"アルキル基"は、特に、C1〜8直鎖アルキル基を表す。他の態様において、"アルキル基"は、特に、C1〜8分枝状鎖アルキル基を表す。
【0050】
アルキル基を、任意に、同一又は異なる、1以上のアルキル置換基により置換することができる("置換アルキル基")。用語"アルキル基の置換基"は、アルキル基、置換アルキル基、ハロ基、アリールアミノ基、アシル基、ヒドロキシル基、アリールオキシル基、アルコキシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルオキシル基、アラルキルチオ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、及びシクロアルキル基を含むが、これ等に限定されない。これ等は、任意に、アルキル鎖に沿って、1以上の酸素原子、イオウ原子又は置換又は非置換窒素原子、を挿入することができて、ここで窒素置換基は、水素原子、低級アルキル基(本明細書では、"アルキルアミノアルキル基"とも表わす)又はアリール基である。
従って、本明細書で用いる用語"置換アルキル基"は、本明細書で定義した、アルキル基を含み、このアルキル基中で、アルキル基の官能基の1以上の原子が、例えば、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン、アリール基、置換アリール基、アルコキシル基、ヒロドキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、硫酸基、及びメルカプト基を含む、他の原子又は官能基に置換される。
【0051】
本明細書で用いられる用語"アリール基"は、共有結合により結合した、又はメチレン基又はエチレン基部分のような、しかしこれ等に限定されない、一般的な置換基に結合した、単一芳香族環又は互いに融合した多芳香族環であることができる芳香族置換基を表すために用いられる。一般的な結合置換基はまた、ベンゾフェノンのようなカルボニル基、ジフェニルエーテルにおける様な酸素、ジフェニルアミンにおける様な窒素であることができる。用語"アリール基"は、特に、複素環芳香族化合物を包含する。芳香族環(複数もあり)は、とりわけ、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ジフェニルエーテル基、ジフェニルアミン基、及びベンゾフェノン基を含むことができる。特別の態様において、用語"アリール基"は、約5から約10炭素原子、例えば、5,6,7,8,9又は10炭素原子、を含む、及び5−及び6−員炭化水素及び複素環芳香族環基を含む、環状芳香族基を意味する。
【0052】
アリール基は、任意に同一又は異なる1以上の"アリール基の置換基"で置換されることができ、この"アリール基の置換基"には、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アリールオキシル基、アラルキルオキシル基、カルボキシル基、アシル基、ハロ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アロイルアミノ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アルキレン基、及びNR'R''(ここでR'及びR''は、独立してハロゲン基、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基及びアラルキル基であることができる)が含まれる。
従って、本明細書で用いる用語"置換アリール基"は、1以上の原子又はアリール基の官能基が、例えば、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン、アリール基、チカンアリール基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、硫酸基、及びメルカプト基を含む、他の原子又は官能基と、置換される、本明細書で定義した、アリール基を含む。
アリール基の特別の例は、シクロペンタジエニル基、フェニル基、フラン基、チオフェン基、ピロール基、ピラン基、ピリジン基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、イソチアゾール基、イソキサゾール基、ピラゾール基、ピラジン基、トリアジン基、ピリミジン基、キノリン基、イソキノリン基、インドール基、カルバゾール基、等々を含むが、これ等に限定されない。
【0053】
本明細書で用いられる以下:
【化7】
の化学式により一般的に代表される構造は、例えば、3−炭素、4−炭素、5−炭素、6−炭素等々の、脂肪族及び/又は芳香族環状化合物の、しかしこれ等に限定されない、環構造を表し、この環状化合物は、置換基R基(ここでR基は、存在又は不在であることができて、存在する場合は、1以上のR基は、それぞれ環状構造の1以上の可能な炭素原子上で置換されることができる)を含む。R基の存在又は不在、及びR基の数は、整数n値により決定される。1以上の場合、各R基は、他のR基上ではなく、環状構造の可能な炭素原子上で置換される。例えば、以下の構造
【化8】
(式中、nは0から2の整数)は、以下:
【化9】
を含むが、これ等に限定されない化合物を含む。
【0054】
"環状"及び"シクロアルキル基"は、約3から約10炭素原子、例えば、3,4,5,6,7,8,9又は10炭素原子の、非芳香性単一環式−又は非芳香性多環式リングシステムを表す。シクロアルキル基は、任意に、部分的に不飽和であることができる。また、シクロアルキル基は、任意に、本明細書で定義された、オキソ基及び/又はアルキレン基などの、アルキル基の置換基で置換することができる。この環状アルキル鎖に沿って、1以上の酸素、硫黄、又は置換又は非置換の窒素原子を挿入することができるが、ここで窒素置換基は、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、又は置換アリール基であり、従って、複素環基を提供する。代表的な単環シクロアルキル環は、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロヘプチル基を含む。多環シクロアルキル環は、アダマンチル基、オクタヒドロナフチル基、デカリン基、カンファー基、カンファン基及びノルアダマンチル基を含む。
【0055】
用語"複素環"は、約3から約14原子の非芳香性又は芳香性、単環式又は多環式リングシステムを表し、少なくとも1原子は、異種原子(ヘテロ原子;例えば、酸素、窒素又は硫黄原子)である。用語"N−複素環"は、少なくとも1個の異種原子が窒素原子である複素環を表す。N−複素環の例としては、アゼチジン、ピロリジン、ピロール、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、モルホリン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、インドール、カルバゾール、キノリン、イソキノリン、オキサゾール、チアゾール、イソチアゾール及びチアジンを含むが、これ等に限定されない。幾つかの態様において、用語N−複素環は、ピリジン以外のN−複素環を表す。
"アラルキル基"は、前述のようなアリール基及びアルキル基による、アリール−アルキル基を表し、置換アリール基及び置換アルキル基を含む。アラルキル基の例としては、ベンジル基、フェニルエチル基及びナフチルメチル基を含む。
【0056】
本明細書で用いる用語"アシル基"は、有機カルボン酸基を表し、ここでカルボキシル基の-OHは、他の置換基に置換されている。従って、"アシル基"は、構造RC(=O)-基により表され、ここで、Rはアルキル基、置換アルキル基、アラルキル基、アリール基又は本明細書で定義された置換アリール基である。従って、用語"アシル基"は、特に、アセチルフラン基及びフェナシル基のような、アリールアシル基を含む。アシル基の特別な例は、アセチル基及びベンゾイル基を含む。
"N−アシル基"は、構造-N-C(=O)-Rを有し、Rは、アシル基に対して定義したものである。これらの置換基はアミド基とも表すことができる。修飾したN−アシル基は、N−アシル基の酸素がS又はNHにより置換された化合物、及びカルボニル基(即ち、-C(=O)-)が、窒素原子に加えて第2の異種原子として付加した化合物を含む。例えば、カルボニル基は、第2の窒素原子に付加して、ウレア結合(即ち、-NH-C(=O)-NH-R)を形成することができる。
【0057】
用語"アミノ基"は、-NH2、NHR及びNR2基、ここでRはアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、又はアラルキル基であり、を表し、及びN−複素環におけるアミノ基の置換基(例えば、モルホリンその他)を表す。
用語"エステル"は、-O-C(=O)-R-基を含む部分を表し、ここでRは、アルキル基、置換アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は置換アリール基であることができる。幾つかの態様において、このR基は、アミノ基の置換基を含むことができて、及びこのエステルはアミノエステルである。
本明細書で用いる、用語"ハロ"、"ハロゲン化物"又は"ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素基を表す。
用語"ヒドロキシル基"は、-OH基を表す。
用語"ニトロ基"は、-NO2基を表す。
用語"独立して選択された"を用いる場合、表された置換基(例えば、R1及びR2基、又はX及びY基のようなR基)は、同一又は異なることができる。例えば、両R1及びR2は、置換アルキル基であることができて、又はR1は水素原子であることができて及びR2は置換アルキル基等々であることができる。
【0058】
用語"ガン転移"は原発性腫瘍の他の器官への広がりを表す。
用語"アポトーシス"は、プログラムされた細胞死を表し、細胞が自殺するように遺伝的に調節することができる。アポトーシスの症候群は、細胞障害性煮沸(cytotoxic boiling)、クロマチン凝縮、及びDNA断片化を伴う、生存性の喪失である(Wyllie et al., Int. Rev. Cytol., 68, 251-306 (1980))。アポトーシス過程は、組織の分化、器官のサイズや形、及び細胞の寿命を調節する上で重要な役割を有する。
【0059】
III. 化学式(I)の化合物
III.A.B13のω−アミノアシル類似体
幾つかの態様において、本発明は、化学式(Ia):
【化1】
(式中:
nは0〜13の整数であり;
R1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は、独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;及び
Yは、CH2又はNHである)で表される化合物を提供する。
【0060】
幾つかの態様において、化学式(Ia)の化合物は、アミド又は尿素である。従って、幾つかの態様において、Xは酸素原子である。幾つかの態様において、この化合物はアミドであり、Xは酸素原子であり、及びYはCH2である。
幾つかの態様において、R2は水素原子又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec-ブチル基、n−ペンチル基、又はn−ヘキシル基のような、低級アルキル基(即ち、C1〜C6アルキル基)である。幾つかの態様において、R2は水素原子である。
幾つかの態様において、化学式(Ia)のフェニル環は、1以上のニトロ基により置換される。従って、幾つかの態様において、R3は、NO2である。幾つかの態様において、R3は、窒素含有基を含む置換アルキル基に対してメタ又はパラ位に置換される。幾つかの態様において、R3はパラ位である。
幾つかの態様において、R4及びR5の一方又は両者が、酸素含有置換基を含む。幾つかの態様において、R4及びR5の1方又は両者は、ヒドロキシル基である、又はエステル基を含む。幾つかの態様において、R4は、CH2OHである。幾つかの態様において、R5は、OHである。
変数nは、0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12又は13であることができる。幾つかの態様において、nは1及び7の間の整数である。幾つかの態様において、nは7である。幾つかの態様において、nは1である。
【0061】
R1基は、全ての適切なアミノ基であることができる。このアミノ基は、非置換(即ち、NH2)又は1以上のアルキル基、アラルキル基、又はアリール窒素置換基を含む。幾つかの態様において、R1は、アルキルアミノ基であり、及び構造NHR6を有し、ここでR6は、アルキル基である。幾つかの態様において、R1はジアルキルアミノ基であり、及び構造NR6R7を有し、ここでR6及びR7はそれぞれアルキル基である。幾つかの態様において、R1は、N−複素環である。適切なN−複素環は、芳香族及び非芳香族N−複素環の両者を含む。このN−複素環は、窒素原子に加えて、異種原子を含むことができる(即ち、O原子又はS原子)。N−複素環はまた、1以上の窒素原子を含むことができる。適切な、N−複素環は、アゼチジン、ピロリジン、ピロール、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、モルホリン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、インドール、カルバゾール、キノリン、イソキノリン、オキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、及びチアジンを含むが、これ等に限定されない。幾つかの態様において、このN−複素環は、ピリジンではない。幾つかの態様において、R1は、イミダゾール又はモルホリン、例えば、
【化10】
である。
【0062】
R5基に付加した炭素、及びN原子及びR4基に付加した炭素の立体化学は、独立してR(Rectus;右)又はS(Sinister;左)である。幾つかの態様において、両炭素の立体化学は、Rである。
幾つかの態様において、この化合物は、(1R, 2R)-2-[N-(12'-{1"-イミダゾール}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール(LCL433); (1R, 2R)-2-[N-(12'-{1"-モルホリン}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL449); (1R, 2R)-2-[N-(12'-アミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL463); (1R, 2R)-2-[N-(12'-N,N-ジメチルアミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL464); (1R, 2R)-2-[N-(6'-{N-オクチルアミノ}-ヘキサノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL488);及び(1R, 2R)-2-[N-{12'-N-メチルアミノ}-ドデカノイル]-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL506)を含むが、これ等に限定されない、群の1つである。幾つかの態様において、この化合物は、(1R, 2R)-2-[N-(12'-N,N-ジメチルアミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL464)を含む。
【0063】
B13のω−アミノアシル類似体は、全ての適切な方法により合成することができて、この方法を以下実施例2において記載し、及び図1に図解する。例えば、2−アミノ−1−(4−ニトロフェニル)プロパン−1,3ジオール((即ち、図1の化合物1)のような適切な2−アミノエチル置換芳香族化合物は、ω−ハロ−アシルハロゲン化物(例えば、ω−ブロモ−アシル塩化物)と反応し、アミドを形成する。アシル鎖端のハロゲン化物の、アミン(即ち、アンモニア、アルキルアミン、ジアルキルアミン、又はN−複素環)との求核的置換は、化学式(Ia)の所期の化合物をもたらす。求核的置換反応は、適切な有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、又はプロパノールのようなアルコール、又はテトラヒドロフラン(THF)のようなエーテル)中において、塩基(例えば、NaOH 、NaHCO3その他)存在下に行われ、反応中生成する全ての酸(例えば、HBr)を中和する。他の適切な、メシレート(即ち、-O3SCH)及びトキシレート(即ち、-O3SC6H4CH3)を含む脱離基を、ハロゲン化物の代わりに用いることができる。化学式(Ia)の尿素は、第1に、アミン出発材料(例えば、化合物1)又はこの保護された改変体をイソシアン酸塩(例えば、ホスゲンとの反応により)に変化させ、その後このイソシアン酸塩を適切なアミンと反応させることにより作成することができる。当業者が理解するように、適切なアミンは、保護され、及び/又は更なる化学転換体を通して、ハロゲン又はアミノ基に転換することができる、第2の置換基(即ち、1級アミノ基に加えて)を伴うアルキル基を含む、1級アミンであることができる。
【0064】
III.B. B13のプロドラッグ
代表的態様において、本明細書に開示した化合物は、B13又はこの類似体のプロドラッグのような、プロドラッグである。プロドラッグは、患者又はサンプルに与えられると、所期の活性(例えば、酸性セラミダーゼ(ACDase)の阻害)を有する他の化合物(即ち、"親化合物")を(直接又は間接に)提供することができる化合物を意味する。幾つかの、全てではない、態様において、このプロドラッグ化合物は、親化合物より低い阻害活性を有する。幾つかの態様において、このプロドラッグ化合物は、親化合物に変換される前は、測定できる阻害活性を有しない。幾つかの態様において、このプロドラッグ自体が、所期の活性を有する。
プロドラッグの親化合物への転換を、特定の酵素(例えば、エステラーゼ)存在下、又は特定の生物的条件(例えば、生理的に適切なpH)において、行うことができる。幾つかの態様において、このプロドラッグは、最初、他のプロドラッグに転換され、これはその後、(時にはずっとゆっくり)親化合物に転換される。プロドラッグは、これが患者に投与される場合(例えば、経口的に投与した化合物が、血液中により早く吸収されることを可能にする)、本発明の化合物の生物学的利用能を増加することができる、及び/又は、例えば、代謝物に比較して、生物的区画(例えば、リソソーム、脳又はリンパ系、その他)への親化合物の輸送を高めることができる。
【0065】
従って、幾つかの態様において、本発明は、化学式(Ib):
【化1】
(式中:
nは、0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;
ここで、R4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含む)で表される化合物を提供する。
【0066】
幾つかの態様において、R4はエステルを含む。例えば、R4は、化学式:-CH2O-C(=O)CH(R8)NR6R7であることができる。幾つかの態様において、R8は、Hであり、R6及びR7は、それぞれアルキル基である。
幾つかの態様において、R5はエステル部分を含む。幾つかの態様において、R5は、-OC(=O)CH(R8)NR6R7である。幾つかの態様において、R8は、水素原子であり、R6及びR7は、それぞれアルキル基である。
幾つかの態様において、R5及びR4の両者は、エステル部分を含む。従って、幾つかの態様において、R4は、-CH2O-C(=O)CH(R8)NR6R7であり、R5は、-OC(=O)CH(R8)NR6R7である。
幾つかの態様において、nは、5であり、及びR1は、n−ブチル基である。
【0067】
幾つかの態様において、化学式(Ib)の化合物は、アミド又は尿素である。従って、幾つかの態様において、Xは酸素原子である。幾つかの態様において、この化合物は、アミドであり、及びXは酸素原子であり、YはCH2である。
幾つかの態様において、R2は、水素原子又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec-ブチル基、n−ペンチル基、又はn−ヘキシル基のような、低級アルキル基(即ち、C1〜C6アルキル基)である。幾つかの態様において、R2は、水素原子である。
幾つかの態様において、化学式(Ib)のフェニル環は、1以上のニトロ基により置換される。従って、幾つかの態様において、R3は、NO2である。幾つかの態様において、R3は、メタ又はパラ位置換基であり、窒素含有官能基を含む置換アルキル基である。幾つかの態様において、R3は、パラ位である。
R5に付加した炭素、及びN原子及びR4基に付加した炭素の立体化学は、独立してR又はSである。幾つかの態様において、両炭素の立体化学は、Rである。
【0068】
幾つかの態様において、化学式(Ib)の化合物は、以下
【化3】
【化4】
【化5】
から成る群から選択されるが、これ等に限定されない。
これらのプロドラッグは、例えば、ペプチド合成で既知の試薬又は条件を用いて、B13、又はヒドロキシ基含有B13類似体の完全な又は選択的エステル化により合成することができる。幾つかの態様において、選択的エステル化は、より低い反応性の2級アルコールのエステル化を望む場合、存在するより反応性の高い1級アルコールを保護するための、適切な官能基の保護手段の使用を含む。
【0069】
III. C. 医薬的に許容される塩
幾つかの態様において、本明細書に開示した化合物を、医薬的に許容された塩として投与することができる。従って、幾つかの態様において、本発明は、化学式(Ia)及び(Ib)の化合物の医薬的に許容される塩を提供する。このような、医薬的に許容される塩としては、グルコン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩、硫酸塩、及び塩酸塩がある。幾つかの態様において、この塩は、塩酸塩である。本明細書に記載したこの化合物の塩を、例えば、溶液中で、塩基性化合物(例えば、アミン含有の)を所期の酸と反応させることにより、合成することができる。
【0070】
IV.化学式(I)の化合物の使用
幾つかの態様において、本発明は、サンプルを化学式(I):
【化1】
(式中:
nは、0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;
ここで、R4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含み、又はR1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択される)化合物と接触させることにより、酸性セラミダーゼ(ACDase)又はセラミダーゼ関連活性を阻害する方法を提供する。従って、化学式(I)の化合物は、本明細書上記第III項に記載した、化学式(Ia)及び(Ib)の化合物を含む。幾つかの態様において、化学式(I)の化合物の阻害作用を、恒久的リソソーム不安定化及び/又は酸性セラミダーゼのタンパク質分解なしに、又は実質的になしに(即ち、20,15,10,5,4,3,2又は1%より少なく)得ることができる。
【0071】
幾つかの態様において、サンプルは、in vitro 細胞サンプル又はin vivo 細胞サンプルである。従って、サンプルは、培地中の酸性セラミダーゼ(ACDase)を含む全細胞又は溶解した細胞を含むことができる。このサンプルはまた、組織、血漿、又は器官サンプル中に存在する細胞、又は患者に存在する細胞を含むことができる。従って、本明細書に記載した方法を、酸性セラミダーゼ(ACDase)及びセラミダーゼ関連活性に関係する科学的及び/又は医学研究において用いることができる。
【0072】
本発明は、様々な疾病又は疾患に関係する1以上の症候群の治療、予防、管理、又は改善のための本発明の化合物の使用を含む方法を提供する。従って、幾つかの態様において、本発明は、患者における好ましくないセラミダーゼ、セラミダーゼ関連、及び/又はスフィンゴシンキナーゼ活性と関係する疾病又は疾患の治療又は予防の方法を提供し、この方法は、患者に有効量の化学式(I):
【化1】
(式中:
nは、0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;
ここで、R4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含み、又はR1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択される)化合物の投与を含む方法である。幾つかの態様において、化学式(I)の化合物の投与は、恒久的リソソーム不安定化及び/又は酸性セラミダーゼのタンパク質分解なしに、又は実質的になしに(即ち、20,15,10,5,4,3,2又は1%より少なく)行うことができる。
【0073】
上記のように、セラミドはアポトーシス、細胞周期停止、及び細胞老化を含む、ストレスに対する多くの生化学的及び細胞の応答を変える(Hannun et al., Trends in Cell Biol., 10, 73-80 (2000);及びMathias et al., Biochem. J., 335, 465-480 (1998))。腫瘍壊死因子α(TNF-α)化学療法剤、及び熱のような、細胞外因子及びストレス刺激は、セラミド蓄積を引き起こすことが知られている。セラミド蓄積を起こす1つの方法は、セラミドの代謝に関わるセラミダーゼのような酵素活性を調節することにより得られる。セラミド濃度の変化は、セラミド蓄積に連結した多くのサイトカインの生物効果及びストレス誘導因子を再現するのに十分である。セラミドの蓄積はまた、多くの細胞老化の特徴を再現する。多くの種類の細胞において、セラミドは、形態学的に、及び細胞分化の生化学的プログラムを活性化することにより、細胞分化を引き起こす。セラミドはまた、多くのガン細胞において、細胞周期停止により引き起こすことができる、アポトーシスを誘導する。従って、本発明に従い、本発明の方法及び組成物によるセラミド又はスフィンゴシンのレベルの調節により、ストレス応答及びアポトーシスが関係する疾病の治療及び予防を行うことができる。本発明の方法により治療及び予防ができる、幾つかの疾患及び疾病の例を以下に記載する。
【0074】
特定の理論に囚われることなく、本発明の化合物は、細胞において、又は細胞のオルガネラに存在する1以上のセラミダーゼ(例えば、酸性セラミダーゼ(ACDase))又はセラミダーゼ関連活性の調節因子として働くことができる。幾つかの態様において、オルガネラは、リソソームのような、しかしこれに限らない、正に荷電したオルガネラである。内在するメカニズムに拘わらず、本発明の化合物は、細胞死を誘導することができる。
幾つかの態様において、本発明は、細胞とセラミダーゼ活性を阻害する化合物との接触を含む、細胞内のセラミドレベルを増加させる方法を提供する。
幾つかの態様において、本発明は、細胞とセラミドからの変換の結果として生成されるスフィンゴシン量を減少させるように、セラミダーゼ活性を阻害する化合物との接触を含む、細胞内スフィンゴシンの形成を阻害する方法を提供する。
幾つかの態様において、本発明は、患者の細胞内セラミダーゼタンパク質のセラミダーゼ活性を阻害する有効量の化合物の患者への投与を含む、患者のセラミドの細胞内レベルを増加させる方法を提供する。
幾つかの態様において、本発明は、患者の細胞内のセラミダーゼタンパク質のセラミダーゼ活性を阻害する有効量の化合物の患者への投与を含む、患者のスフィンゴシンの細胞内生成を阻害する方法を提供する。
【0075】
幾つかの態様において、セラミダーゼ機能を阻害する組成物を、治療的に及び/又は予防的に患者に投与するが、その患者は:(1)(正常又は好ましいレベルと比較して)セラミダーゼタンパク質のレベル又は機能の増加が関係する疾病又は疾患にある患者(例えば、セラミダーゼタンパク質が、生物的に過剰に活性又は過剰発現する患者);又は(2)in vitro(又はin vovo)検定がセラミダーゼ阻害剤投与を指示する疾病又は疾患に置かれた患者である。セラミダーゼタンパク質のレベル又は機能の増加は、直ちに検出することができる、例えば、患者から組織標本を得て(例えば、生検組織から)、RNA又はタンパク質レベル、発現されたセラミダーゼRNA又はタンパク質の構造及び/又は活性を検定することによる。セラミダーゼ酵素検定、セラミダーゼタンパク質を検出及び/又は可視化するための免疫検定(例えば、Westernブロット、免疫沈降及びその後のドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動、免疫細胞化学その他)及び/又はセラミダーゼmRNAを検出し及び/又は可視化することによるセラミダーゼ発現を検出するためのハイブリダイゼーション検定(例えば、Northern検定、ドットブロット検定、in situ ハイブリダイゼーション法、その他)、その他を含む、がこれ等に限定されない、標準技術である多くの方法を用いることができる。
【0076】
本発明に従い、細胞過増殖及び/又は機能障害のスフィンゴ脂質シグナル伝達が関与する疾患は、患者にセラミダーゼ機能を阻害する組成物の投与により、治療及び/又は予防される。これらの疾病又は疾患は、細胞増殖、細胞接着、細胞移動、肉芽組織発生、原発性及び転移性腫瘍疾病、炎症、心臓血管疾病、卒中、虚血、及び/又はアテローム硬化症に関係する疾患及び疾病を含むが、これ等に限定されない。治療され及び/又は予防される、細胞増殖が関与する疾患及び疾病は、ガン、全悪性状態(例えば、過形成、異形成、形成異常)、良性腫瘍、過増殖性疾患、及び良性異常増殖性疾患を含むが、これ等に限定されない。ガンは本来、患者における任意の正常組織由来の異常細胞の増加、これらの異常細胞による他の組織への浸潤、及び遠方の部位への異常細胞のリンパ性又は血液由来の散布により特徴付けられる。セラミダーゼ機能を阻害する本発明の組成物の投与により治療され、予防され、管理され、及び/又は改善されることができる悪性腫瘍及び関連する疾患、特に転移ガンを、以下に考察する(これらの疾病の総説については、Fishman et al., Medicine, 2nd Ed., J.B. Lippincott Co., Philadelphia, 1985を参照)。
【0077】
幾つかの態様において、細胞増殖が欠けている又は要求される疾患を、患者に対してセラミダーゼ機能を促進する本発明の組成物を投与することにより、治療又は予防することができる。
本発明は、治療又は予防が、本発明の化合物の投与により改善される疾病又は疾患を治療及び/又は予防するための方法を包含する。
幾つかの態様において、"治療"又は"治療すること"は、疾病又は疾患、又は少なくとも疾病の1つの認知できる症状群の改善を表す。"治療"又は"治療すること"はまた、患者により必ずしも認知されない疾病又は疾患に関係する少なくとも1つの測定できる物理的パラメーターの改善を表す。"治療"又は"治療すること"はまた、物理的に(例えば、認知できる症状群の安定化)、生理的に(例えば、物理的パラメーターの安定化)又は両者による、疾病又は疾患の進行の阻害を表すことができる。"治療"又は"治療すること"はまた、疾病又は疾患の発病の遅延を表す。
【0078】
幾つかの態様において、本発明の方法及び組成物は、疾病又は疾患に対する予防措置として有用である。本明細書で用いる"予防"又は"予防すること"は、任意の疾病又は疾患に罹る危険性の低下を表す。
幾つかの態様において、本発明の組成物は、ガン、ガン転移、アテローム硬化症、狭窄、炎症、喘息及びアトピー性皮膚炎の治療のために使用される。幾つかの態様において、本発明は、癌の治療の必要性のある患者への有効量の化学式(I)の化合物の投与を含むガン治療方法を提供する。
幾つかの態様において、本発明は、他の治療と組み合わせた本発明の化合物の投与を含む、疾病又は疾患を治療又は予防する方法を提供する。
【0079】
本発明の方法及び組成物により治療及び/又は予防することができるガン及び関連疾病は、以下の疾病:急性白血病、急性リンパ性白血病、(骨髄芽求性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、赤白血病性白血病及び骨髄異形成症候群等の)急性骨髄性白血病、(慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ性白血病、毛髪細胞白血病等の、しかしこれ等に限定されない)慢性白血病;真性多血症;Hodgkin氏病、非Hodgkin氏病等の、しかしこれ等に限定されないリンパ腫;くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞白血病、孤立性形質細胞種、及び髄外形質細胞種等の、しかしこれ等に限定されない、多発性骨髄腫;Waldenstrom型マクログロブリン血症;重要性未定のモノクローナル免疫グロブリン異常症;良性モノクローナル免疫グロブリン異常症;重鎖病;骨原性肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、Ewing肉腫、悪性巨大細胞腫瘍、骨繊維肉腫、軟骨種、骨膜肉腫、軟部組織肉腫、血管肉腫、繊維肉腫、Kaposi肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫等の、しかしこれ等に限定されない、骨及び結合組織肉腫;神経膠腫、星状細胞種、脳幹神経膠腫、上衣腫、希突起神経膠腫、非神経膠腫、聴神経腫瘍、頭蓋咽頭腫、髄芽細胞種、髄膜腫、松果体細胞種、松果体芽腫、脳原発性リンパ腫等の、しかしこれ等に限定されない、脳腫瘍;腺癌、小葉(小細胞)癌、乳管内癌、乳房の髄様腺管癌、粘液性乳癌、乳腺管状癌、乳頭部乳癌、Paget病、及び炎症性乳癌を含む、しかしこれ等に限定されない、乳癌;クローム親和細胞腫及び副腎皮質癌等の、しかしこれ等に限定されない、副腎癌;甲状腺乳頭又は濾胞状癌、甲状腺髄様癌及び未分化甲状腺癌等の、しかしこれ等に限定されない、甲状腺癌;インスリノーマ(膵島細胞腺腫)、ガストリン産生腫瘍、グルカゴン産生腫瘍、VIP産生腫瘍、ソマトスタチン分泌性腫瘍、及び癌様腫又は膵島細胞腫等の、しかしこれ等に限定されない、膵臓癌;Cushing病、プロラクチン分泌性腫瘍、先端巨大症、及び尿崩症等の、しかしこれ等に限定されない、脳下垂体腫瘍;(虹彩黒色腫、脈絡叢黒色腫、及び毛様体黒色腫等の)眼内黒色腫、及び網膜芽腫等の、しかしこれ等に限定されない眼癌;扁平上皮癌、腺癌及び黒色腫等の膣癌;扁平上皮癌、黒色腫、腺癌、基底細胞癌、肉腫及びPaget病等の外陰癌;扁平上皮癌、及び腺癌等の、しかしこれ等に限定されない子宮頸癌;子宮内膜癌、及び子宮肉腫等の、しかしこれ等に限定されない、子宮癌;卵巣上皮癌、境界腫瘍、胚細胞癌、及び間質腫瘍等の、しかしこれ等に限定されない、卵巣癌;頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)、(扁平上皮癌、腺癌、腺様嚢胞癌、粘膜表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、黒色腫、形質細胞腫、ゆうぜい性(疣状)癌、及び燕麦細胞(小細胞)癌等の、しかしこれ等に限定されない)食道癌;腺癌、菌子状(ポリープ状)、潰瘍性、表層進展性、広範囲散在性、悪性リンパ腫、リンパ肉腫、繊維芽肉腫、及び癌肉腫等の、しかしこれ等に限定されない、胃癌;結腸癌;直腸癌;肝細胞癌及び肝芽細胞腫、(腺癌等の)胆嚢癌等の、しかしこれ等に限定されない肝臓癌;乳頭状、結節性、及び拡散性等の、しかしこれ等に限定されない胆管癌;非小細胞肺癌、扁平上皮癌(上皮性癌)、腺癌、大細胞癌及び小細胞肺癌等の肺癌;胚細胞腫瘍、精巣腫、未分化、古典的(一般的)、精母細胞性、非精巣腫、胎児性癌、奇形癌、繊毛癌(卵黄嚢腫)等の、しかしこれ等に限定されない睾丸癌;腺癌、平滑筋肉腫及び横紋筋肉腫等の、しかしこれ等に限定されない様な、前立腺癌;陰茎癌;扁平上皮癌等の、しかしこれに限定されない、口腔癌;腺癌、粘膜表皮癌、及び腺様嚢胞癌等の、しかしこれ等に限定されない、唾腺癌;扁平上皮癌及びいぼ状等の、しかしこれ等に限定されない、咽頭癌;基底細胞癌、扁平上皮癌及び黒色腫、表層進展性黒色腫、結節性黒色腫、黒子悪性黒色腫、肢端黒子型黒色腫等の、しかしこれ等に限定されない、皮膚癌;腎細胞癌、腺癌、副腎腫、繊維芽肉腫、移行性上皮癌(腎盂、及び/又は、ウテレル)等の、しかしこれ等に限定されない、腎臓癌;Wilms腫瘍;移行上皮癌、扁平上皮癌、腺癌、癌肉腫等の、しかしこれ等に限定されない、膀胱癌である。さらに、ガンとしては、粘液肉腫、骨原性肉腫、内皮肉腫、リンパ管内皮肉腫、中皮腫、滑膜腫、血管芽腫、上皮癌、嚢苞腺腫、気管支原性癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌及び乳頭状腺癌を含む(このような疾病に対しては、Fishman et al., Medicine, 2nd Ed., J.B. Lippinocott Co., Philadelphia, 1985;及びMurphy et al., Informed Decisions: The Complete Book of Cancer Diagnosis, Treatment, and Recovery, Viking Penguin, Penguin Books, U.S.A., Inc., New York, 1997))。
【0080】
幾つかの態様において、本発明の方法及び組成物は、乳癌、前立腺癌、黒色腫、胞巣状癌、又は頭頚部癌の治療及び/又は予防のために使用される。
セラミダーゼ活性を阻害する本発明の組成物をまた、前悪性状態の治療及び/又は前悪性状態から腫瘍又は悪性状態への進行の予防のために、投与することができる。このような、予防的又は治療的な使用は、特に、過形成、化生、又はより特別に、異形成を含む非腫瘍細胞増殖が生じたところで、腫瘍又はガンへの進行に先立つと知られる条件、又は疑わしい条件に必要とされる(このような異常増殖の総説に対して、Robbins and Angell, Basic Pathology, 2nd Ed., W.B. Saunders Co., Philadelphia, 1976, pages 68-79))。
過形成、化生、又は異形成のように特徴付けられる異常細胞増殖の存在とは別に、又は加えて、患者からの細胞サンプルにより、in vivo又はin vitroで表示される形質転換型又は悪性表現型の1以上の特徴が存在する場合、セラミダーゼ機能を阻害する組成物の予防的及び/又は治療的投与の要望を指示することができる。形質転換表現型の特徴は、形態的変化、基質への付着の緩み、接触阻止の喪失、足場依存性の喪失、プロテアーゼの放出、糖輸送の増加、血清要求性の減少、胎児抗原の発現、その他を含むことができる。
【0081】
幾つかの態様において、白血病、上皮細胞の良性様の過形成又は化生損傷、又はBowen病、in situ悪性腫瘍は、予防的侵襲の要望を指示する前腫瘍損傷である。
幾つかの態様において、線維嚢胞性疾病(嚢胞性の過形成)、乳腺異形成、特に腺疾患(良性上皮性過形成)は、予防的侵襲の要望を指示する。本発明のヒト酸性セラミダーゼの遺伝子は、染色体8(8p22)に局在する。上述の疾病又は疾患に加えて、酸性セラミダーゼは、この位置に基づき、この領域に関係する疾病に関わることができて、それ等は、腺癌(甲状腺)、急性骨髄性白血病、及び特に、鼻咽頭領域に関係する扁平上皮癌等である。
【0082】
他の態様において、以下の悪性腫瘍への1以上の誘発因子を示す患者は、有効量の本発明の化合物の投与により治療されるが、誘発因子としては:悪性腫瘍に関係する染色体転座(例えば、慢性骨髄性白血病に対するPhiladelphia染色体、濾胞性リンパ腫に対するt(14;18));家族性ポリープ症又はGardner症候群(結腸癌の可能な前兆);良性モノクローナル免疫グロブリン異常症(多発性骨髄腫の可能な前兆);及びメンデル(遺伝的)遺伝様式(例えば、結腸の家族性ポリープ症、Gardner症候群、遺伝性外軟骨腫、多内分泌腺腫症、アミロイド産生及びクローム親和細胞腫を伴う甲状腺髄様癌、Peutz-Jegher症候群、Von Recklinghausenの神経線維腫症、網膜芽腫、頸動脈体腫瘍、皮膚黒色癌、眼内黒色癌、色素乾皮症、血管拡張性失調症、Chediak-Higashi症候群、白化症、Fanconi再生不良性貧血、及びBloom症候群)を示すガン又は前ガン疾病を有するヒトと一親等関係;Robbins and Angell, Basic Pathology, 2nd Ed., W.B. Saunders Co., Philadelphia, 1976, pages 112-113を参照。
【0083】
本発明はまた、化学式(I)の化合物を患者に投与する段階を、全ての順番で、含む方法で、患者のガン又は転移を治療及び/又は予防する方法を包含する。幾つかの態様において、本発明の組成物及び方法を、がん性細胞の増殖及び/又は転移を予防、阻害、及び/又は減らすために用いることができる。化合物の投与は、がん性細胞の増殖及び/又は転移を、上記化合物の投与なしの場合の、増殖又は転移と比較して、幾つかの態様では、少なくとも99%、幾つかの態様では、少なくとも95%、幾つかの態様では、少なくとも90%、幾つかの態様では、少なくとも85%、幾つかの態様では、少なくとも80%、幾つかの態様では、少なくとも75%、幾つかの態様では、少なくとも70%、幾つかの態様では、少なくとも65%、幾つかの態様では、少なくとも60%、幾つかの態様では、少なくとも55%、幾つかの態様では、少なくとも50%、幾つかの態様では、少なくとも45%、幾つかの態様では、少なくとも40%、幾つかの態様では、少なくとも35%、幾つかの態様では、少なくとも30%、幾つかの態様では、少なくとも25%、幾つかの態様では、少なくとも20%、幾つかの態様では、少なくとも15%、幾つかの態様では、少なくとも10%、幾つかの態様では、少なくとも5%阻害及び/又は減少させる。
【0084】
本発明はまた、現在の単一薬剤治療又は現在の組合せ治療よりも良好な治療プロフィールを提供する疾病治療及び/又は予防の方法を包含する。本発明により、好ましくない、又は不利な効果を減らし又は避けながら、加算的能力又は加算的治療効果を有する組合せ療法を包含する。
本発明化合物の投与の組合せにおいて、用いることができる他のガン治療は1以上の組成物の使用を含み、この組成物は、化学物質、免疫療法剤、ガンワクチン、抗血管新生剤、サイトカイン、ホルモン治療、遺伝子治療、生物的治療及び放射線治療を含むが、これ等に限定されない。治療の効果の維持及び/又は促進の間、本発明の方法はまた、患者承諾を増加させ、治療を改善し、及び/又は好ましくない、又は不利な効果を減らすことができる。
【0085】
幾つかの態様において、本発明の化合物を、ガンの治療のための治療法を受けており、その治療法単独の治療のために好ましくない、又は不利な効果(例えば、有効投与量では毒性のある、又は有害な治療法のみが投与される)を経験したかも知れない患者に投与する。本発明を考えると、この化合物は、この治療法の治療上の利点を改善することができて、この化合物と組み合わせて投与すると、この治療法の投与の投与量及び/又は回数を下げることができる。幾つかの態様において、本発明の化合物を投与すると、化学療法及び/又は放射線治療の用量を低下させる、及び/又は回数を減らすことができる。
【0086】
幾つかの態様において、本発明の方法は、1以上の血管新生阻害剤の投与を包含するが、この阻害剤としては:アンギオスタチン(プラスミノゲン断片);抗血管新生抗トロンビンIII;ANGIOZYME(TM);ABT-627;Bay 12-9566;ビネフィン;ベバシズマブ;BMS-275291;;軟骨由来阻害剤(CDI);CAI;;CD59 補体断片 CEP-7055;Col 3;コンブレタスタチンA-4;ENDOSTATIN(tm) (collagen XVIII fragment); Fibronectin fragment; Gro-beta; Halofuginone; ヘパリナーゼ;ヘパリン6糖断片;HMV833;ヒト繊毛性ゴナドトロピン(hCG);IM-862;インターフェロンアルファ/ベータ/ガンマ;インターフェロン誘導性タンパク質(IP-10);インターロイキン-12;クリングル5 (プラスミノーゲン断片); マリマスタット;メタロプロテイナーゼ阻害剤(TIMPs);2-メトキシエストラジオール;MMI 270 (CGS 27023A);MoAb IMC-1C11;ネオバスタット;NM-3;パンゼム;PI-88;胎盤リボヌクレアーゼ阻害剤;プラスミノーゲン活性化因子阻害剤;血小板因子-4 (PF4);プリノマスタット;プロラクチン16 kDa 断片;プロリフェリン関連タンパク質(PRP);PTK 787/ZK 222594;レチノイド;ソリマスタット; スクアラミン;SS 3304;SU 5416;SU6668;SU11248;テトラヒドロコーチゾール-S;テトラチオモリブデート;サリドマイド;トロンボスポンジン-1 (TSP-1);TNP-470; トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-b);バスキュロスタチン;バソスタチン(カルレチキュリン断片);ZD6126;ZD 6474;ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)及びビスホスホン酸塩があるが、これ等に限定されない。
【0087】
本発明と組み合わせて用いることができる、医薬的組成物及び剤形及び本発明のキットを含む、抗ガン剤(例えば、化学療法剤)の更なる例としては:アクチビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アムボマイシン;アメタントロン酢酸塩;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビスアントレン塩酸塩;ジメシル酸ビスナフィド;ビゼレシン;ブレオマイシン硫酸塩;ブレキナールナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;カルビシン塩酸塩;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デクソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジコン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;ドロロキシフェンクエン酸塩;ドロモスタノロンプロピオン酸塩;ズアゾマイシン;エダトレキセート;エフロニチン塩酸塩;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブロゾール;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸ナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;エトポシドリン酸塩;エトプリン;ファドゾール塩酸塩;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;フルダラビンリン酸塩;フルオロウラシル;フルロシタビン;フォスキドン;フォストリエシン・ナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;ヒドロキシウレア;イダルビシン塩酸塩;イフォスファミド;イルモフォシン;インターロイキンII(組み換えインターロイキン−2又はrIL-2を含む);インターフェロンアルファ−2a;インターフェロンα−2b;インターフェロンα−n1;インターフェロンα−n3;インターフェロンβ−1a;インターフェロンγ−1b;イプロプラチン;イリノテカン塩酸塩;ランレオチド酢酸塩;レトロゾール;ロイプロリド酢酸塩;リアロゾール塩酸塩;ロメトレクソールナトリウム;ロムスチン;ロソキサントロン塩酸塩;マソプロコール;マイタンシン;メクロレタミン塩酸塩;メガストロール塩酸塩;メレンゲストロール酢酸塩;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキセート;メトトレキセートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;マイトカルシン;マイトクロミン;マイトギリン;マイトマルシン;マイトマイシン;マイトスペール;マイトタン;マイトキサントロン塩酸塩;マイコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;ペガスパルガーゼ;プレリオマイシン;ペンタムスチン;ペプロマイシン硫酸塩;ペルフォスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロキサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジン塩酸塩;ピューロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;サフィンゴール塩酸塩;セムスチン;シムトラゼン;スパルフォサートナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム塩酸塩;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフール;テロキサントロン塩酸塩;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;トレミフェンクエン酸塩;トレストロン酢酸塩;トリシリビンリン酸塩;トリメトレキセート;トリメトレキセートグルクロン酸塩;トリプトレリン;ツブロゾール塩酸塩;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチン硫酸塩;ビンクリスチン硫酸塩;ビンデシン;ビンデシン硫酸塩;ビネピジン硫酸塩;ビングリシネート硫酸塩;ビンロイロシン硫酸塩;ビノレルビン酒石酸塩;ビンロシジン硫酸塩;ビンゾリジン硫酸塩;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;ゾルビシン塩酸塩を含むが、これ等に限定されない。他の抗ガン剤は:20−エピ−1、25ジヒドロキシビタミンD3;5−エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL-TK拮抗剤;アルトレタミン;アムバムスチン;アミドクス;アミフォスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリデ;血管新生阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリクス;抗背方化形態形成タンパク質−1;アンチアンドロゲン、前立腺癌;アンチエストロゲン;アンチネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィジコリングリシン酸塩;アポトーシス遺伝子調節因子;アポトーシス調節因子;アプリン酸;アラ−CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABL拮抗剤;ベンゾクロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;ベータラクタム誘導体;ベーターアレチン;ベタクラマイシンB;ベツリニン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビスアントレン;ビスアジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテンA;ビゼレシン;ブレフレート;ブロピリミン、ブドチタン;ブチオニンスルフォキシミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カムプトテシン誘導体;カナリポックスIL-2;カペシタビン;カルボキサミドアミノトリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;軟骨由来阻害剤;カルゼレシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリクス;クロリン;クロロキノキサリンスルフォンアミド;シカプロスト;シスポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クラムベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシンA;シクロペントアントラキノン;シクロプラタム;シペマイシン;シタラビンオクフォスファート細胞溶解因子;サイトスタチン(細胞接着阻害物質);ダクリキシマブ;デシタビン;デヒドロジデムニンB;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシフォスファミド;デクスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジコン;ジデムニンB;ジドクス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ−5−アザシチジン;ジヒドロタキソール、9−;ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;ズオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルフォシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン;エミテフル;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチン類似体;エストロゲン作用剤;エストロゲン拮抗剤;エタニダゾール;エトポシドリン酸塩;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;フルオロダウノルビシン塩酸塩;フォルフェニメクス;フォルメスタン;フォストリエシン;フォテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;ガリウム硝酸塩;ガロシタビン;ガニレリクス;ゼラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロニン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルムフォシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン;イミキモド;免疫増強ペプチド;インシュリン様成長因子1受容体阻害剤;インターフェロン作用剤;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;ヨウ化ドキソルビシン;イポメアノール、4−;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;ラメラリン−N三酢酸;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;レンチナン硫酸塩;レプトルスタチン;レトロゾール;白血病阻害因子;白血球アルファインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;ロイプロレリン;レバミソール;リアロゾーロ、線状ポリアミン類似体、親油性二糖類ペプチド、親油性白金化合物;リッソクリナミド7;ロバプラチン;ロムブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルルトテカン;ルテチウムテキサフィリン;リゾフィリン;溶解性ペプチド;マイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリリシン阻害剤、マトリクスメタロプロテイナーゼソガイザイ;メノゴリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテフォシン;ミリモスチム;ミスマッチした2重鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシン類似体;マイトナフィド;マイトトキシン繊維芽細胞成長因子サポリン;マイトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体;妊婦尿性性腺刺激ホルモン (human chorionic gonadotrophin);モノホスホリル脂質A+ミオバクテリウム細胞壁sk;モピダモール;多薬剤耐性遺伝子阻害剤;多腫瘍抑制因子 1−ベースの治療;マスタード抗ガン剤;マイカパーオキシドB;マイコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン;N−アセチルジナリン;N−置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチップ;ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトログラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ネルドリン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素調節剤;一酸化窒素抗酸化物質;ニトルリン;O6-ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導剤;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パクリタキセル;パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;パガスパルガーゼ;ペルデシン;ペントサンポリ硫酸ナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール;ペルフルブロン;ペルフォスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;フェニル酢酸塩;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニル;ピロカルピン塩酸塩;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノゲン活性化因子阻害剤;白金錯体;白金化合物;白金トリアミン錯体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニソン;プロピルビスアクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;タンパク質Aベースの免疫調整剤;プロテインキナーゼC阻害剤;ミクロアルガル;タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシ化ヘモグロビンポリオキシエチレン重合体;raf拮抗剤;ラルチトレキセド(葉酸代謝拮抗薬);ラモセトロン;rasファルネシルタンパク質転移酵素阻害剤;ras阻害剤;ras GAP阻害剤;脱メチルレテリプチン;レニウムRe186エチドロン酸塩;リゾキシン;リボザイム;RIIレチナミド;ログレチミド;ロヒトキン;ロムルチド;ロキニメクス;ルビギノンB1;ルボキシル;サフィンゴール;セイントピン;SarCNU;サルコフィ
トルA;サルグラモスチム;Sdi 1模倣体;セムスチン;老化由来阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達調整剤;単鎖抗原結合タンパク質;シゾフィラン;ソブゾキサン;ナトリウムボロカプテート;フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール;ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン;スパルフォシン酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンギスタチン1;スクアラミン;幹細胞阻害剤;肝細胞分裂阻害剤;スチピアミド;ストロメリシン阻害剤;スルフィノシン;高次活性血管作用腸ペプチド拮抗剤;スラジスタ;スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフル;テルラピリリューム;テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;タリブラスチン;チオコラリン;トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣体;チマルファシン;チモポエチン受容体作用剤;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;エチルエチオプルプリン錫;チラパザミン;チタノセンビクロリド;トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;トランスレーション阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキセート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン;UBC阻害剤;ウベニメクス;ウロゲニタール;静脈洞由来成長阻害因子;ウロキナーゼ受容体拮抗剤;バプレオチド;バリオリンB;ベクターシステム;赤血球遺伝子治療;ベラレソール;ベラミン;ヴェルジン;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン;ビタキシン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジルアスコルブ;及びジノスタチンスチマラマーを含むが、これ等に限定されない。代表的な、更なる抗ガン剤は、5−フルオロウラシル及びロイコボリンである。これら2種の薬剤は、サリドマイド及びトポイソメラーゼ阻害剤を用いる方法において使用する場合、特に有用である。
【0088】
幾つかの態様において、本発明の治療は、さらに1以上の、抗体及び免疫調整剤等の、免疫治療薬の投与を含み、この抗体及び免疫調節剤としては、HERCEPTIN(R)、RITUXAN(R)、OVAREX(TM)、PANOREX(R)、BEC2、IMC-C225、VITAXIN(TM)、CAMPATH(R) I/H、Smart MI95、LYMPHOCIDE(TM)、Smart I D10及びONCOLYM(TM)、リトキシマブ、ゲムツズマブ又はトラスツズマブがあるが、これ等に限定されない。
【0089】
幾つかの態様において、本発明の治療はさらに、アンギオスタチン、サリドマイド、クリングル5,エンドスタチン、他のセルピン、抗トロンビン、フィブロネクチンの29KDaN−末端及び40kDaC−末端タンパク質分解断片、プロラクチンの16kDaタンパク質分解断片、血小板因子−4の7.8kDaタンパク質分解断片、血小板因子−4の断片に相当する13−アミノ酸ペプチド(Maione et al., Cancer Res., 51, 2077-2083, (1991)参照)、コラーゲンIの断片に相当する14−アミノ酸ペプチド(Tolsma et al., J. Cell Biol., 122, 497-511 (1993)参照)、トロンボスポンジンIの断片に相当する19−アミノ酸ペプチド(olsma et al., J. Cell Biol., 122, 497-511 (1993)参照)SPARCの断片に相当する20−アミノ酸ペプチド(Sage et al., J. Cell Biochem., 57, 127-140 (1995)参照)、又はこれらの全ての断片、ファミリー仲間又は誘導体、及びこの医薬的に許容される塩を含むが、これらに限定されない、1以上の抗血管新生試薬の投与を含む。
幾つかの態様において、この治療法はさらに、放射線の使用を含む。
【0090】
幾つかの態様において、この治療法はさらに、リンホカイン、腫瘍壞子因子、腫瘍壞子因子様サイトカイン、リンホトキシン−α、リンホトキシン−β、インターフェロン−α、インターフェロン−β、マクロファージ炎症性タンパク質、顆粒球単球コロニー刺激因子、インターロイキン(インターロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−6、インターロイキン−12、インターロイキン−15、インターロイキン−18を含むが、これ等に限定されない)、OX40、CD27、CD30、CD40又はCD137リガンド、Fas/Fasリガンド、4-1BBL、内皮性単球活性化タンパク質又は全ての断片、これらのファミリー仲間又は、誘導体、この医薬的に許容される塩を含むが、これ等に限定されない、1以上のサイトカインの投与を含む。
幾つかの態様において、この治療法はさらに、ホルモン治療を含む。ホルモン治療法は、ホルモン作用剤、ホルモン拮抗剤(例えば、フルタミド、タモキシフェン、ロイプロリド酢酸塩(LUPRON(TM))LH-RH拮抗剤)、ホルモン生合成及びプロセッシング阻害剤、ステロイド(例えば、デキサメサゾン、レチノイド、ベタメタゾン、コルチゾール、コーチゾン、プレドニソン、デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、ミネラロコルチコイド、エストロゲン、テストステロン、プロゲスチン)、アンチゲスタゲン(例えば、ミフェプリストン、オナプリストン)及び抗アンドロゲン(例えば、シプロテロン酢酸塩)を含む。
【0091】
セラミダーゼ阻害から恩恵を受けることができる他の増殖性疾病は、心臓血管疾病である。
血管形成術、ステント、動脈粥腫切除術、及び心臓血管疾病の治療のための移植を含む血管侵襲は、しばしば好ましくない効果により悪化する。血管侵襲に対する好ましくない反応の1つは、過形成に至ることができる内皮及び平滑筋細胞増殖、又はより具体的には、動脈の再閉塞である再狭窄、再還流障害、血小板凝集、及び石灰沈着を含む。このモデルにおいて、障害性刺激は、インターロイキン1及び腫瘍壞死因子等の増殖刺激性サイトカインの発現を誘導する。Libby et al., Circulation, 86, III47-III52 (1992)参照。セラミドが、冠状動脈の内皮及び平滑筋細胞の増殖を阻害することを示す証拠がある。
【0092】
狭窄及び再狭窄を治療又は防止するために、多くの治療が試みられてきた。しかしながら、内皮及び平滑筋細胞の過形成により引き起こされる心臓血管疾病の予防及び治療に向けた治療に対して多くの要求が残されている。セラミドが、冠状動脈の内皮及び平滑筋細胞の増殖を阻害することが知られているので、心臓血管疾病の治療及び予防のために、セラミドのレベルを上げることが好ましい。最近、Kester及び共同研究者は、血管形成術で使用されるセラミドは、再狭窄を防止することを示した(Kester et al., Circ. Res., 87, 282-288 (2000))。あるいは、より効果的に、本発明の1つの側面は、本発明の化合物の投与によりセラミドレベルを調節することにより、再狭窄の治療及び予防を提供する。
【0093】
従って、心臓血管疾病の治療及び予防のために、セラミドのレベルを上げることが好ましい。これは、本発明の組成物及び方法を使用することにより、セラミドの細胞内レベルを調節することにより為し遂げることができる。治療の結果は、少なくとも治療した患者に健康的利点をもたらし、これは心臓血管疾病において、血管侵襲後の動脈の再閉塞の危険性の減少及び循環の改善を含むが、これ等に限定されない。
幾つかの態様において、本発明は、自己免疫又は炎症疾病又は、1以上のこれらの症状を予防、治療、管理、及び/又は改善するための方法を提供し、この方法は、その必要のある患者に、予防上及び/又は治療上有効量の本発明の化合物、及び予防上又は治療上有効量の1以上の免疫調節薬剤の投与を含む方法である。
【0094】
インターロイキン−1は、炎症の主要な誘導因子であり、及びTNFは、この反応の重要な調節因子である。両サイトカインは、セラミダーゼを活性化し、従って、セラミダーゼの活性の阻害は、抗炎症効果をもたらすことができる。これは、炎症促進効果を有する、スフィンゴシン及びスフィンゴシンリン酸塩の形成抑制に関わることができる。また、セラミダーゼの阻害は、炎症に重要である、免疫細胞の過増殖を防止することができる。セラミドの増加及びスフィンゴシンの減少は、スフィンゴシンリン酸塩の減少をもたらすことを示唆する証拠がある。予備的データによると、マウス繊維芽細胞、L929、においてTNF-αは、セラミドレベルを上昇させ、及びこれらの細胞からプロスタグランジンE2(PGE2)の放出をもたらすことが示される。PGE2の放出はまた、セラミダーゼの阻害剤である、D-エリスロ-2-(N-ミリストイルアミノ)-1-フェニル-1-プロパノール)、D-MAPP、により阻害されることが示される。この観察は、関節リューマチ等の、しかしこれに限定されない、健康状態で生ずる、炎症反応の阻害に対して重要であろう。従って、本発明の方法の使用により、細胞セラミドのレベルを調節することにより、炎症を治療及び/又は予防することは可能である。上記考察のように、ミトコンドリアセラミダーゼを阻害することができる本発明の化合物を投与することにより、セラミドレベルを上昇させることができる。
【0095】
自己免疫疾患の例としては、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫Addison病、副腎の自己免疫疾病、自己免疫溶血性貧血、自己免疫肝炎、自己免疫卵巣炎及び睾丸炎、自己免疫血小板減少症、Behcet病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプル(グルテン性腸)−皮膚炎、慢性疲労免疫機能障害症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy)、Chung-Strauss症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、Crohn病、円盤状狼瘡症、本態性混合クリオグロブリン血症、原発性線維筋痛症(fibromyalgia-fibromyositis)、糸球体腎炎、Grave病、Guillain-Barre、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenia purpura, ITP)、IgA神経症、若年性関節炎、扁平苔癬(lichen planus)、紅斑性狼瘡、Meniere病、混合結合組織病、多発性硬化症、I型免疫介在糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡(pemphigus vulgaris)、悪性貧血、結節性動脈炎、多腺性症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、Raynauld徴候、Reiter症候群、リウマチ性関節炎、類肉腫症、強皮症、Sjogren症候群、全身硬直症候群、全身性紅斑性狼瘡、紅斑性狼瘡、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨大細胞動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、皮膚疱疹状血管炎等の血管炎、及びWegener肉芽腫症を含むが、これ等に限定されない。炎症性疾患の例としては、脳炎、喘息、炎症性腸管病、慢性障害肺疾病(COPD)、アレルギー疾患、感染性ショック、肺線維症、未分化脊椎関節症、未分化関節症、関節炎、炎症性骨溶解、及び慢性ウィルス又は細菌感染由来の慢性炎症を含むが、これ等に限定されない。従って、自己免疫疾患及び炎症疾患と考えられる疾患の間に重複がある。幾つかの自己免疫疾患は、炎症状態と関係している。従って、幾つかの自己免疫疾患は、炎症疾患として特徴付けられる。
【0096】
本発明は、自己免疫又は炎症性疾患及び/又はこれらの1以上の症状を防止、治療、管理、及び/又は改善する方法を提供し、この方法は、これ等を必要とする患者に、本発明の化合物及び1以上の免疫調節薬剤の投与を含む方法である。免疫調節薬剤を、自己免疫及び/又は炎症性疾患をもつ患者に投与し、この患者の平均絶対リンパ球数は、幾つかの態様では500細胞/mm3以下、幾つかの態様では550細胞/mm3以下、幾つかの態様では600細胞/mm3以下、幾つかの態様では650細胞/mm3以下、幾つかの態様では700細胞/mm3以下、幾つかの態様では750細胞/mm3以下、幾つかの態様では800細胞/mm3以下、幾つかの態様では850細胞/mm3以下、及び幾つかの態様では900細胞/mm3以下である。従って、幾つかの態様において、自己免疫及び/又は炎症性疾患を持つ患者に、1以上の免疫調節薬剤の1以上の服用量の投与前、又は投与後、この患者の絶対リンパ球数を、フローサイトメトリー又はトリパンブルーカウントのような、当業者に既知の技術により測定する。
【0097】
免疫調節薬剤の例としては、メトトレキセート、レフルノミド;シクロホスファミド、シクロスポリンA及びマクロライド系抗生物質(例えば、FK506(タクロリムス))、メチルプレドニソロン(MP)、コルチコステロイド、ステロイド、マイコフェノール酸モフェチル、ラパマイシン(シロリムス)、ミゾリビン、デオキシスペルグアリン、ブレキナール、マロノニトリロアミド(例えば、レフルナミド)、T細胞受容体調節因子、及びサイトカイン受容体調節因子を含むが、これ等に限定されない。T細胞受容体調節因子の例としては、抗T細胞受容体抗体(例えば、抗−CD4リガンドモノクローナル抗体、抗−CD3モノクローナル抗体、抗−CD8モノクローナル抗体、抗−CD40モノクローナル抗体、抗−CD2モノクローナル抗体)、及びCTLA4-免疫グロブリンが含まれるが、これ等に限定されない。サイトカイン受容体調節因子の例としては、溶解性サイトカイン受容体(例えば、TNF-α受容体又はこの断片の細胞外領域、IL-1β受容体又はこの断片の細胞外領域、及びIL-6受容体又はこの断片の細胞外領域)、サイトカイン又はこの断片(例えば、インターロイキン(IL)-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-15、TNF-α、TNF-β、インターフェロン (IFN)-α、IFN-β、IFN-γ及びGM-CSF)抗サイトカイン受容体抗体(例えば、抗-IL-2受容体抗体、抗-IL-4受容体抗体、抗-IL-6受容体抗体、抗-IL-10受容体抗体、及び抗-IL-12受容体抗体)、抗サイトカイン抗体(例えば、抗IFN受容体抗体、抗TNF-α抗体、抗IL-1β抗体、抗IL-6抗体及び抗IL-12抗体)を含むが、これ等に限定されない。
【0098】
抗炎症薬剤は、炎症性及び自己免疫疾患の治療において成功を示し、今や、このような疾患に対する通常で、標準的な治療である。当業者に既知の全ての抗炎症薬剤を、本発明の組成物及び方法において用いることができる。抗炎症薬剤の非限定的な例としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ステロイド性抗炎症薬、β作用剤、抗コリン作動薬、及びメチルキサンチンが含まれる。NSAIDの例としては、アスピリン、イブプロフェン、セレコキシブ(CELEBREX(TM))、ジクロフェナク(VOLTAREN(TM))、エトドラク(LODIN(TM))、フェノプロフェン(NALFON(TM))、インドメタシン(INDOCIN(TM))、ケトララク(TORADOL(TM))、オキサプロジン(DAYPRO(TM))、ナブメトン(RELAFEN(TM))、スリンダク(CLINORIL(TM))、トルメンチン(TOLECTIN(TM))、ロフェコキシブ(VIOXX(TM))、ナプロキセン(ALEVE(TM)、NAPROSYN(TM))、ケトプロフェン(ACTRON(TM))及びナブメントン(RELAFEN(TM))が含まれるが、これ等に限定されない。このようなNASIDは、シクロオキシゲナーゼ酵素(例えば、COX-1及び/又はCOX-2)を阻害することにより機能する。ステロイド性抗炎症薬の例は、グルココルチコイド、デキサメサゾン(DECADRON(TM))、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニソン(DELATASONE(TM))、プレドニソロン、トリアムシノロン、アズルフィジン、及び(プロスタグランジン、トロンボキサン及びロイコトリエン等の)エイコサノイドを含むが、これ等に限定されない。
【0099】
本発明はまた、セラミダーゼ機能(例えば、セラミド−1−リン酸塩及びスフィンゴシン−1−リン酸塩)を刺激する(促進する)化合物を投与することによる、不十分な細胞増殖(成長)が関わる、及び/又は細胞増殖が望まれる(例えば、変性疾患、成長不足、障害、物理的外傷)疾患の治療に関係する。セラミダーゼの活性化から恩恵を受けることができる他の疾患は、神経変性疾患(例えば、Alzheimer病)及び免疫機能障害等の加齢の疾患である。
上記に考察したように、腫瘍性状態への同様の治療、心臓血管疾病、炎症、又は上記の疾病の成功した治療は、セラミダーゼ活性を減少させる技術により成し遂げることができる。
有効投与量の決定及びこのような化合物の投与に用いることができる一般的技術は、専門家に既知である。当該の細胞集団に化学物質を選択的に投与する全ての技術を、例えば、輸送複合体の使用により、用いることができる。このような輸送複合体は、適切な化合物及び向標的薬剤を含むことができる。このような、向標的薬剤は、例えば、ステロール、脂質、ウィルス又は標的細胞特異的結合薬剤を含むことができる。
【0100】
V. 医薬的調製及び投与法
本明細書の化合物は、患者に対して、治療的に有効な用量を投与して、上記に考察した疾患及び疾病を治療及び予防することができる。治療上有効な用量は、治療した患者に健康的な恩恵をもたらすに十分な量の化合物を表す(Physicians' Desk Reference(R)(53rd ed., 1999))。
本明細書で用いる、用語"患者"は、全ての無脊椎動物及び脊椎動物の生物種を表す。本発明の方法は、特に温血脊椎動物に対して有用である。従って、本発明は、哺乳類及び鳥類と関係がある。より具体的には、ヒト、及び絶滅の危機(Siberianトラ等の)、経済的重要性のある(ヒトにより消費されるための農場で飼育される動物)、及び/又は人間に対して社会的重要性のある{例えば、ヒト以外の肉食動物(ネコ及びイヌ等の)、ブタ類(ブタ、去勢ブタ、イノシシ)、反芻動物(ウシ、去勢ウシ、ヒツジ、キリン、シカ、ヤギ、バイソン、及びラクダ等の)及びウマ}哺乳類等の、哺乳類の治療である。さらに、本発明の方法及び組成物の、鳥類への使用を提供し、鳥類としては、絶滅の危機鳥類、動物園又はペットして管理されている鳥類、及びニワトリ、より詳細には、飼われている家禽(例えば、七面鳥、ニワトリ、アヒル、雌ガチョウ、ホロホロ鳥、等々の家禽)であり、これ等はまた、人間にとって経済的に重要である。
【0101】
従って、本発明の化合物を投与する患者は、幾つかの態様において、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌ、ラット、その他)又は霊長類(例えば、カニクイザル等のサル又はヒト)等の哺乳類を含むが、これ等に限定されない、動物である。幾つかの態様において、患者はヒトである。本発明の組成物を、例えば、家族歴の結果、癌の傾向がある個人、又は環境因子によりガンへの高い危険性を有する個人において、様々なガンの予防のために用いることができる。
本発明の方法及び組成物は、投薬を受けたことがない患者、及び/又は、抗ガン剤を含むが、これに限定されない、他の医薬剤又は組合せを以前及び/又は現在投薬治療を受けている患者に用いることができる。他の患者としては、転移を有する又は持たない患者を含むことができる。
本発明の方法及び組成物は、未治療の患者だけではなく、他の治療法で部分的に又は完全に応答してない患者の治療においても有用である。幾つかの態様において、本発明は、他の薬剤の投与を含む治療では手に負えない、又は治りにくいかも知れない、又は非応答であるように見える、患者の疾病又は疾患の治療に対して有用である。
セラミドレベル又は機能の、欠如又はレベル低下は、直ちに、例えば、患者組織サンプル(例えば、バイオプシ組織)を得て、in vitroでセラミドを検定することにより、測定することができる。
【0102】
V.A. 有効用量
組成物の毒性及び治療上の有効性は、細胞培養又は実験動物における標準的医薬的手順(例えば、LD50(集団の50%に対し致死的用量)の測定、及びED50(集団の50%に対し治療上有効な用量)の測定に対する手順)により決定することができる。毒性及び治療上の有効性の間の用量比は、治療指数であり、LD50/ED50で表すことができる。
幾つかの態様において、大きな治療指数を示す化合物が用いられる。毒性の副作用を示す化合物を用いることはできるが、病気に冒されてない細胞への障害能を最小にして、副作用を減らすために、そのような化合物を病気に冒された組織を標的として狙わせる輸送システムを設計する上で注意が必要である。
【0103】
細胞培養検定及び動物研究から得たデータを用いて、ヒトにおける使用のための適用量範囲を処方することができる。このような化合物の適用量は、幾つかの態様において、ED50が殆ど無い又は無毒性な循環濃度の範囲にある。例えば、この適用量範囲は、幾つかの態様において、10nMから100μMの範囲、及び幾つかの態様において、1から10μM又はそれより高濃度であることができる。この適用量は、この範囲内で、用いられる剤形及び投与の経路により変わることができる。本発明の方法において使用される全ての組成物に対して、治療的有効用量を、最初細胞培養検定から見積もることができる。細胞培養で測定したように、IC50(例えば、症状の最大阻害の半値を得る検査化合物の濃度)を誘導する循環血漿中濃度範囲を得るために、動物モデルにおいて用量を処方することができる。このような情報を用いて、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中の濃度を、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0104】
本明細書に記載した疾患の治療又は予防のための適切な毎日の用量を、当業者により直ちに決めることができる。本発明の組成物の推奨用量は、約0.1mgから約100mg/日であり、1日朝一回投与として、又は用量を1日の中で分割して投与する。幾つかの態様において、毎日の用量は、約2mgから約25mg/日であり、幾つかの態様において、約5mgから約10mg/日である。
本発明に従って使用される方法及び組成物の抗ガン活性は、様々な実験動物モデルを用いることにより測定することができるが、実験動物モデルとしては、既知の技法であり、Yamanaka et al. (Microbiol. Immunol., 45, 507-514 (2001))に記載されたように、ヒト腫瘍移植体を担うスキッドマウス又はヌードマウス等の、ガンの動物モデルがある。
【0105】
幾つかの態様において、本発明の方法及び組成物は、患者(例えば、ヒト)において使用される前に、好ましい治療又は予防活性があるかについて、in vitroで検査され、次ぎにin vivoで検査される。例えば、特定の治療法手順の投与が表示されているかどうかを決めるために用いることができるin vitro検定としては、in vitro細胞培養検定が含まれるが、この検定において、患者組織サンプルを培養で増殖させ、この手順で暴露又は処理し、このような手順の組織サンプルに対する効果を観察する。低レベルの増殖又は接触細胞の低い生存率により、この組成物の患者の病態を治療する上での有効性が分かる。あるいは、患者からの細胞を培養する代わりに、組成物を腫瘍細胞又は悪性細胞株を用いて選別することができる。標準的な多くの検定法を、このような生存率及び/又は増殖性を検定するために用いることができる;例えば、細胞増殖は、3H-チミジン取り込みの測定により、直接の細胞計数により、ガン原遺伝子(例えば、fos、myc)のような既知の遺伝子の転写活性、又は細胞周期マーカーの変化の測定により検定できて;細胞生存率は、トリパンブルー染色により検定できて、分化は、形態上の変化をベースとして視覚的に検定することができる、等々。
【0106】
ヒトにおいて試験する前に、本明細書で開示した方法で用いられる組成物を、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギその他を含む、がこれ等により限定されない、適切な動物モデルシステムにおいて試験することができる。既知の技法で、広く用いられている、ガンのための主要な動物モデルとしては、その全体が本明細書参照文献に取り込まれている、Hann et al. (Curr. Opin, Cell Biol., 13, 778-784 (2001))に記載されているように、マウスを含む。
さらに、当業者に既知の全ての検定法を用いて、本明細書に記載した疾病又は疾患に関係する1以上の症状の治療、予防、管理及び/又は改善のために、本明細書に開示した方法及び組成物の予防上の及び/又は治療上の有用性を査定することができる。
炎症性疾患の治療における有効性を、本発明の化合物又は本発明の組成物による動物における炎症の減少能又は阻害能、及び/又は炎症性疾患の1以上の症状の改善能又は緩和能を検出することにより示すことができる。例えば本発明の化合物又は組成物の投与後、もし、炎症の減少及び/又は1以上の症状の改善があるならば、この治療法は、治癒的と考えられる。
【0107】
V.B. 処方及び使用
本発明の化合物を投与するために様々な方法を用いることができる。導入の方法は、皮膚内、筋肉内、腹腔中、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、吸入、ガス注入法(口又は鼻マスクを通して)、経口、舌下、又は直腸経路を含むが、これ等に限定されない。この組成物を、例えば、輸液又は静脈内ボーラス、上皮又は皮膜粘膜内面(例えば、口腔粘膜、直腸及び小腸粘膜その他)を通して投与することができて、他の生物活性薬剤と共に投与することができる。投与は、全身的又は局所的である。さらに、本発明の医薬組成物を、心室内及び鞘内注射;を含む全ての適切な経路を通して中枢神経系に導入することが好ましくあることができるが、心室内注射は、Ommaya貯蔵タンクのように、例えば、貯蔵タンクに接続した、心室内カテーテル、により行うことができる。例えば、吸入器又はネブライザーの使用、及びエアロゾ−ル化薬剤の使用により、肺への投与もまた、用いることができる。
【0108】
幾つかの態様において、本発明の組成物を治療の必要な領域に局所的に投与することが望まれる。これは、例えば、非限定的に、手術の間の局所的輸液により、カテーテルにより、座薬により、又は埋め込みにより行うことができる。埋め込みは、例えば、非限定的に、シリコンゴム膜又は繊維のような、多孔性の、非多孔性の、又はゼラチン物質であることができる。
幾つかの態様において、ここで開示した化合物を、小胞、特にリポソーム、中で輸送することができる(Langer, Science, 249, 1527-1533 (1990);及びTreat et al., in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-Berestein and Fidler (eds.), Liss, New York, 1989, pp. 317-327及び353-365)。
【0109】
幾つかの態様において、本開示の化合物を、調節された放出システムにおいて輸送することができる。幾つかの態様において、ポンプを用いる(Langer, Science, 249, 1527-1533 (1990); Sefton, CRC Crit. Ref., Biomed. Eng., 14, 201 (1987); Buchwald et al., Surgery, 88, 507 (1980);及びSaudek et al., N. Engl. J. Med., 321, 574 (1989))。幾つかの態様において、高分子材料を用いることができる(Langer and Wise (eds.), Medical Applications of Controlled Release, CRC Press, Boca Raton, Florida, 1974; Smolen and Ball (eds.), Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Wiley, New York, 1984; Ranger and Peppas, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem., 23, 61 (1983); を参照、及びLevy et al., Science, 228, 190 (1985); During et al., Ann. Neurol., 25, 351 (1989);及びHoward et al., J. Neurosurg., 71, 105 (1989))。幾つかの態様において、調節された放出システムを治療標的の近くに置くことができて、従って、全身性用量の分画のみ必要である(Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), CRC Press, Boca Raton, Florida, 1974)。他の調節性の放出システムを、Langer (Science, 249, 1527-1533 (1990)において考察する。
【0110】
本発明の治療薬の他の輸送方法を、例えば、参考文献にその全体が取り込まれている米国特許第5,679,350号に考察されているように、用いることができる。
本発明はまた、医薬組成物を提供する。このような組成物は、本発明の化学式(I)の医薬的に有効量の1以上の化合物及び医薬的に許容された担体を含む。"医薬的に許容された"は、過度な毒性、炎症、アレルギー性応答、又は、合併症又は他の問題無しに、十分な医学的判断の範囲内で、ヒト及び/又は他の動物の組織との接触に適した、妥当な利益/危険比に相応した担体、組成物及び/又は剤形を表す。従って、幾つかの態様において、本明細書開示の化合物を、ヒトにおける使用のために医薬的に許容される化合物及び担体を含む処方物において提供することができる。幾つかの態様において、用語"医薬的に許容される"は、合衆国、又は州政府又は動物及び、特にヒトにおける使用に対する、合衆国薬局方又は一般的に認知された薬局方に載せられた規制委員会による認可を意味する。
【0111】
用語"担体"は、治療薬を投与するための稀釈剤、補助剤、賦形剤、又は媒体を意味する。このような医薬的担体は、水、及び(石油、動物、植物又はピーナツ油、大豆油、鉱油、ごま油、等々の合成油を含む)油のような滅菌液体であることができる。水は医薬組成物を静脈内投与する場合模範的担体である。生理的食塩水及び水溶性グルコース、及びグリセロール溶液がまた、液体担体、特に注射可能な溶液、として使用される。適切な医薬的賦形剤としては、澱粉、ブドウ糖、乳糖、砂糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、粉乳、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、滑石、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等々を含む。もし好ましいなら、この組成物はまた、少量の加湿剤、又は乳化剤、又はpH緩衝試薬を含むことができる。これらの組成物はまた、溶液、懸濁液、乳化液、錠剤、ピル、カプセル、粉末、持続性放出処方物、等々の形をとることができる。この組成物を、伝統的な結合剤及びトリグリセリドのような担体と共に、座薬として処方することができる。経口処方物は、医薬級のマンニトール、乳糖、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム、その他の標準的担体を含むことができる。適切な医薬的担体の例は、Remington's Pharmaceutical Sciences (1990)に記載される。このような組成物は、幾つかの態様において、治療上有効量の精製した形の酸性セラミダーゼ(ACDase)阻害剤又は関係するプロドラッグ、及び患者にふさわしい投与形態を提供するために、適切な量の担体を含むだろう。この処方物は、投与法に適していなければならない。
【0112】
幾つかの態様において、この組成物は、ヒトの静脈内投与に使われる医薬組成物として常法に従い処方される。一般的に、静脈内投与の組成物は、滅菌等脹緩衝溶液である。必要な場合、この組成物は、可溶化剤及び注射部位の痛みを緩和するためにリドカイン等の局所麻酔剤を含むことができる。一般的に、構成成分は、例えば、活性薬剤の量を示すアンプル又は袋のような密封した容器中の凍結乾燥粉末又は水なしの濃縮物として、単位剤形に、分離して又は一体に混合して供給される。この組成物を輸液で投与する場合、滅菌医薬級の蒸溜水又は生理的食塩水を含む輸液ボトルと共に調剤することができる。組成物を注射で投与する場合、構成成分を投与前に混合することができるように、注射のための滅菌水又は生理的食塩水のアンプルを提供することができる。
本発明の化合物を、中性又は塩の形で処方することができる。医薬的に許容される塩を、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、その他由来の塩のように遊離アミノ基を持っ、又はナトリウム、カリウム、アンモニア、カルシウム、水酸化第2鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン、その他由来の塩のような遊離カルボキシル基を持って形成することができる。
【0113】
特定の疾患又は病態の治療において有効な本発明の化合物の量は疾患又は病態の性質に依存することができて、標準的臨床技術により決定することができる。さらに、in vitro検定及び動物モデルを、任意に用いて、最適な投与量範囲を確認するために補助することができる。処方物で使用される正確な用量は、投与経路、及び疾病又は疾患の重篤性にも依存する、及び使用者の判断及び各患者の状況に従い決めるべきである。
幾つかの態様において、本発明の化合物は、筋肉内に投与される。筋肉内投与の適切な投与量範囲は一般に、幾つかの態様において、投与当たり10μgから1mg、及び幾つかの態様において、投与当たり約10μgから100μgである。幾つかの態様において、この組成物を2回投与で投与し、2回目の投与は、最初の投与から24時間後に投与される。幾つかの態様において、本発明の組成物を3回投与で投与し、7日投薬計画の1,4,7日の各日に1回を投与する。
【0114】
座薬は一般的に、活性成分を0.5重量%から10重量%の範囲で含み;経口処方物は、一般的に10重量%から95重量%の活性成分を含む。
本発明はまた、本発明の医薬組成物の1以上の構成成分を詰めた1以上の容器を含む治療上の使用のためのパック又はキットを提供する。このような容器に任意に製造者、使用、又は医薬品の販売及び/又は診断産物を規制する政府機関により定められた書式の注意書が添付されており、この注意書は、製造者、使用、又はヒト投与のための販売についての、政府機関による認可を示す。
本発明に従う使用のための医薬組成物を、1以上の生理的に許容される担体又は賦形剤を用いて、通常の方法で処方することができる。
【0115】
経口投与のために、医薬組成物は、例えば、医薬的に許容される賦形剤を用いて従来の方法で製造された錠剤、カプセルの形をとることができるが、このような賦形剤としては、結合剤(例えば、前もってゼラチン化したトウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドン、又はヒドロキシプロピルメチルセルローズ);充填剤(例えば、乳糖、微小結晶性セルローズ又はリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、滑石又はシリカ);崩壊剤(例えば、ポテト澱粉又はカルボキシメチルスターチナトリウム);又は加湿剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)。錠剤を、既知の技法によりコートすることができる。経口投与のための液体調製物は、例えば、溶液、シロップ又は懸濁液の形をとることができる、又はこれ等を使用前に水又は他の適切な媒体との組成物のための乾燥産物として存在することができる。このような液体調製物を、医薬的に許容された添加物と共に従来の方法で調製することができるが、添加物としては、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルローズ誘導体又は水素添加した食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチン、又はアカシア);非水溶性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール又は分画された植物油);及び保存剤(例えば、メチル又はプロピル−p−ヒドロキシ安息香酸炎又はソルビン酸)がある。この調製物はまた必要に応じて、緩衝塩、芳香剤、着色剤、及び甘味剤を含む。
【0116】
経口投与のための調製物を、組成物の活性因子の放出を調節するために、適切に処方することができる。
舌下錠投与のために、組成物を錠剤又はトローチの形にすることができる。
吸入による投与のために、本発明の使用のための組成物を、適切な高圧ガス(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、炭酸ガス、又は他の適した気体)と共に、加圧包装物又は噴霧器からアエロゾルスプレイ投与の形で輸送できる。加圧アエロゾルの場合、投与単位を、計測量を与えるための弁を提供することにより定めることができる。組成物及び(乳糖又は澱粉などの)適切な粉末ベースの粉末混合物を含む、吸入器又は吹き入れ器での使用のため、例えば、ゼラチンのカプセル又はカートリッジを処方することができる。
【0117】
例えば、静脈内ボーラス又は連続輸液を通して注射による非経口の投与(即ち、静脈内又は筋肉内)のために、組成物を処方することができる。注射のための調剤物を、単位剤形(例えば、アンプルで)、又は保存剤を加えて複数回投与容器で与えることができる。この組成物は、懸濁物、溶液、又は油中又は水溶性媒体中の乳化物の形をとることができて、懸濁剤、安定剤、及び/又は分散剤のような調剤用薬剤を含むことができる。あるいは、活性構成成分を、使用前に例えば、滅菌発熱性物質除去蒸留水のような、適切な媒体を伴う構成物のために、粉末形にすることができる。
この構成物をまた、例えば、ココアバター又は他のグリセリドのような従来の座薬ベースを含む、座薬又は保持浣腸剤のような直腸用組成物に処方することができる。
上述の調剤用薬剤に加えて、組成物をデポ製剤のように処方することができる。このような長期間作用する調剤用薬剤を、埋め込み(例えば、皮下又は筋肉中に)又は筋肉内注射により投与することができる。従って、例えば、この組成物を適切な高分子又は疎水性材料(例えば、許容される油中の乳状液として)又はイオン交換樹脂と共に、又はやや不溶性の誘導体、例えば、やや不溶性の塩として処方することができる。
【実施例】
【0118】
以下の実施例を、説明のための態様として提供する。本開示及び当業者の一般的レベルを考慮して、以下の実施例は、説明のためにのみ意図されており、無数の変化、修正、及び変更を、本発明の範囲から離れることなく行うことができることを、技術者は理解できる。
【0119】
材料及び方法
化学品
特に記載しなければ、全ての溶媒及び一般的試薬はSigma-Aldrich (St. Louis, Missouri, USA) and Fluka (Buchs, Switzerland)から購入した。B13及びLCL204は、既報と同様にして合成した(Szulc et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 1015-1031 (2008))。反応の進行は、TLCプレートを170℃で加熱後、PMA試薬(125mLの10%H2SO4中、モリブデン酸アンモニウム四水和物硫酸セリウム、5:2g/g)及びDragendorff試薬(Fluka)を用いた検出、又はUV(254 nm)を用いた検出を伴う、分析用順相及び/又は逆相薄層クロマトグラフィー(NP TLC又はRP TLC)により監視した。
細胞培養
MCF-7細胞(乳腺癌、胸水)は、American Type Culture Collection (ATCC; Rockville, Maryland, USA)から購入し、10%仔牛胎児血清(FCS; Summit Biotechnology, Colorado, USA)を補強したRPMI 1640 media (Life Technologies, Inc., Carlsbad, California, USA)中で増殖して、標準的インキュベーター条件(加湿環境、95%空気、5%CO2,37℃)で保存した。本実験には、対数増殖期の細胞を培養から採取して用いた。
【0120】
実施例1
ω-Br-類似体 LCL429及びLCL509の合成
図1に示すように、クラスE類似体を、既報と同様にして、化合物1(即ち、(1R,2R)-2-アミノ-1(4'-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール)及び対応するブロモアシル塩化物から得たこれらのω-Br-類似体 LCL429及びLCL509を経由して合成した(Szulc et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 1015-1031 (2008))。化合物1は市販品、例えばSigma-Aldrich (St. Louis, Missouri, USA)、として入手可能である。
【0121】
(1R, 2R)- 2-[N-(12'-ブロモ-ドデカノイル)-アミノ]- 1-(4''-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(LCL429)。12-ブロモドデカノイル 塩化物と(1R, 2R)-2-アミノ-1-(4'-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール(化合物1)から合成した。粗産物をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製(CHCl3/MeOH, 10 : 1, v/v)して、純品を78%収率で、白色微結晶粉として得た、mp 53.8-55.0℃; TLC (CHCl3/MeOH, 15:1, v/v), Rf=0.2; 1H-NMR (400MHz , CDCl3) δ 8.21 (d, 2H, J= 8.4), 7.57 (d, 2H, J=8.4), 6.13 (d, 1H, J=8.0), 5.24 (S, 1H), 4.17 (H, 1H, J=4.0), 3.91 (S, 2H), 3.42 (t, 2H, J=7.2), 2.12 (m, 2H), 1.86 (Q, 2H, J=7.2), 1.46 (m, 4H), 1.10-1.30 (m, 12H)。
【0122】
(1R, 2R)-2-[N-(6'-ブロモヘキサノイル)-アミノ]-1-(4''-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL509)。6-ブロモヘキサノイル塩化物と(1R,2R)-2-アミノ-1(4'-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール(化合物1)から合成した。粗産物をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製(CHCl3/MeOH, 7 : 1, v/v)して、純品を84%収率で、白色微結晶粉として得た。mp 87.1-87.5℃。TLC (CHCl3/MeOH=7:1), Rf=0.17, 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ 8.17 (d, 2H, J=8.8), 7.54 (d, 2H, J=8.8), 6.31 (d, 1H, J=8.8), 5.20 (S, 1H), 4.16 (H, 1H, J=4.8, J=3.2), 3.80 (d, 2H, J=4.0), 3.35 (t, 2H, J=6.8), 2.12 (Q, 2H, J=7.2, 6.8), 1.77 (Q, 2H, J=7.2, 7.2), 1.48(Q, 2H, J=7.6, 7.6), 1.29 (Q, 2H, J=7.6)。
【0123】
実施例2
クラスE阻害剤の合成
クラスE類似体の合成の一般的手順:このクラスE阻害剤をLCL429又はLCL509と対応するアミン類(アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、イミダゾール、モルホリン、又はオクチルアミン)から合成し、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した(図1)。即ち、1.5N NaOH (4 mL)及びTHF (8 mL)の混合物中のよく攪拌したLCL429又はLCL509(0.156 mmol)に、対応するアミンを室温(r.t.)で加えた。この反応混合物を、薄層クロマトグラフィー(TLC; CHCl3 /MeOH, 10:1, v/vで溶出)で観察して、反応が完了するまで、室温又は還流下に保った。有機相を分離して、水相を2回THF(2 x 5 mL)により抽出した。合わせた有機相を無水NaSO4を通して乾燥させ、減圧下で乾燥するまで蒸発させて、粗産物を得た。この材料(粗産物)を適切な溶媒系を用いたカラムクロマトグラフィーを通して精製し、純粋な標的化合物を淡黄色油として得た。
【0124】
(1R, 2R)-2-[N-(12'-{1''-イミダゾール}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4''-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール (LCL433)。LCL429とイミダゾールから33%の収率で、淡黄色油として得た。TLC (CHCl3/MeOH/濃 NH4OH, 10:1:0.01, v/v/v), Rf=0.15; 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ 8.18 (d, 2H, J=8.4), 7.78 (s, 1H, イミダゾール-H), 7.59 (d, 2H, J=8.4), 7.10 (s, 1H, イミダゾール-H), 6.99 (s, 1H, イミダゾール-H), 6.50 (d, 1H, J=10), 5.26 (d, 1H, J=3.2), 4.22 (m, 2H), 4.02 (t, 2H, J=6.8), 3.88 (d, 2H, J=4.4), 2.08 (t, 2H, J=7.6), 1.81 (q, 2H, J=6.8), 1.46 (q, 2H, J=7.6), 1.08-1.40 (m, 14H). 化学式: C24H36N4O5, MS 461.3 [M+]
【0125】
(1R, 2R)-2-[N-(12'-{1"-モルホリン}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4''-ニトロフェニル)- 1, 3-プロパンジオール (LCL449)。LCL429とモルホリンから、60%収率で、淡黄色油として得た。TLC (CHCl3/MeOH/濃NH4OH, 10:1:0.01, v/v/v). Rf= 0.12, 1H-NMR (CDCl3, 400MHz) δ 8.20 (d, 2H, フェニル-H, J=8.4), 7.56 (d, 2H,フェニル-H, J=8.4), 6.21 (d, 1H, J=8.4), 5.22 (d, 1H, J=3.2), 4.18 (m, 1H), 3.85 (t, 2H, J=4.8), 3.72 (t, 4H, J=4.8), 2.46 (broad, 6H), 2.32(t, 2H, J=8.0), 2.10 (dt, 2H, J=7.2, 4.0), 0.92-1.50 (m, 16H). 化学式 C25H41N3O6, MS 480.3 [M+]
【0126】
(1R, 2R)-2-[N-(12'-アミノ-ドデカノイル)アミノ]-1-(4''-ニトロフェニル)-1, 3-プロパノール (LCL463)。LCL429とアンモニアから、40%の収率で、白色微結晶粉末として得た。mp 46-48℃。TLC (CHCl3/MeOH/濃NH4OH, 1:1:0.01, v/v/v), Rf= 0.12; 1H-NMR (CD3OD, 400MHz) δ 8.13 (d, 2H, フェニル-H, J=8.8), 7.61 (d, 2H, フェニル-H, J=8.8), 5.10 (d, 1H, J=2.8), 4.15 (m, 1H), 3.73 (dd, 1H, J=7.6, 7.6), 3.53 (dd, 1H, J=6.0, 6.0), 3.27 (m, 2H), 2.79 (t, 2H, J=7.2), 2.04 (dt, 2H, J=7.6, 2.8), 1.56 (m, 2H), 1.00-1.40 (m, 14H). 化学式 C21H35N3O5, MS 410.03 [M+]。
【0127】
(1R, 2R)-2-[N-(12'-N,N-ジメチルアミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4''-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール (LCL464)。LCL429と2MジメチルアミンTHF溶液から95%収率で得た。 TLC (CHCl3/MeOH/NH4OH, 10:1:0.01, v/v/v), Rf=0.12; 1H-NMR (CDCl3, 400MHz) δ 8.20 (d, 2H, phenyl-H, J=8.8), 7.58 (d, 2H, フェニル-H, J=8.8), 6.34(d, 1H, J=8.4), 5.21 (d, 1H, J=3.2), 4.19 (H, 1H, J=4.0, 4.0), 3.86 (m, 2H), 2.40 (t, 2H, J=7.6), 2.31 (S, 6H), 2.12 (t, 2H, J=7.2), 1.20-1.50 (m, 18H). 化学式 C23H39N3O5, MS 438.40 [M+]
【0128】
(1R, 2R)-2-[N-(6'-{N-オクチルアミノ}-ヘキサノイル)-アミノ]-1-(4''-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール(LCL488)。LCL509とオクチルアミンから、32%収率で、淡黄色油として得た。TLC (CHCl3/MeOH/NH4OH, 4:1:0.01, v/v/v), Rf=0.23; 1H-NMR (CDCl3, 400MHz) δ 8.12 (d, 2H, フェニル-H, J=8.4), 7.60 (d, 2H, フェニル-H, J=8.8), 7.32(d, 1H, J=7.8), 5.17 (d, 1H, J=3.2), 3.79-3.68 (qq, 1H, J=4.0, 4.0), 2.84 (m, 4H), 2.15 (t, 2H, J=7.6), 2.31 (S, 6H), 2.12 (t, 2H, J=7.2), 1.20-1.80 (m, 20H), 0.87 (t, 3H, J=7.2). 化学式 C23H39N3O5, MS 438.28 [M+]
【0129】
(1R, 2R)-2-[N-{12'-N-メチルアミノ}-ドデカノイル]-アミノ]-1-(4''-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール (LCL506)。LCL429と2M メチルアミンTHF溶液から、90%収率で、淡黄色油として得た。TLC (CHCl3/MeOH/NH4OH, 4:1:0.01, v/v/v), Rf=0.12; 1H-NMR (CD3OD, 400MHz) δ 8.18 (d, 2H, フェニル-H, J=8.8), 7.63 (d, 2H, フェニル-H, J=8.8), 5.17 (d, 1H, J=3.2), 4.19 (m, 1H), 3.76 (dd, 1H, J=7.6, 7.6), 3.62 (dd, 1H, J=5.6, 5.6), 2.91 (t, 2H, J=8.0), 2.65 (S, 3H), 2.31 (S, 6H), 2.09 (t, 2H, J=7.2), 1.68 (m, 2H), 1.00-1.42 (m, 16H). 化学式 C22H37N3O5, MS 424.15 [M+]。
【0130】
実施例3
プロドラッグの合成
図2に示すように、本発明のプロドラッグ化合物は、B13(又はこの化合物の1級又は2級アルコール含有類似体)及びN,N-ジメチルグリシン(又は他の適切なカルボン酸)から調製できる。例えば、エステル化のために(例えば、カルボニルジイミダゾール又はジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)及びN,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP))、1:1比で、B13及びN,N-ジメチルグリシンを、適切な条件下で混合すると、モノエステル(1級アルコールの位置に形成)を含むプロドラッグを調製することができる。B13及びN,N-ジメチルグリシンを、過剰モル数(例えば、2,3,4,5,6,7,8,9,10又はそれ以上)のカルボン酸と混合した場合、ジエステルを形成することができる(即ち、エステルが、1級アルコール及び2級アルコールの位置に形成できる)。B13の1級アルコールに対する適切な保護手段を用いて、2級アルコールがエステル化されたモノエステルプロドラッグを得ることができる。例えば、B13の1級アルコールを、酸存在下でB13とジヒドロピランとの反応により、テトラヒドロピラニル(THP)エーテルとして保護することができる。従って、B13の2級アルコールは、N,N-ジメチルグリシンとの反応により、エステル化することができる。最終的に、THPエーテルを、この分子をピリジミウムp−トルエン硫酸塩(PPTS)で処理することにより取り除くことができる。他の適切な保護基及びアルコール保護及び脱保護の方法については、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley and Sons, Inc., New York, 1999を参照されたい。
【0131】
(1R, 2R)-2-[(N-テトラデカノイル)-アミノ]-1-(4''-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール- 1,3-O-bis-ジメチルグリシン塩酸塩 (LCL521)。N,N-ジメチルグリシン(103 mg, 1 mmol)及び1,1'-カルボニルジイミダゾール(162 mg, 1 mmol)を、10mL塩化メチレン中で混合し、B13(42.3 mg, 0.1 mmol)を加える前に、2時間攪拌した。痕跡の出発材料が検出されなくなるまで、反応混合物を室温で攪拌した。反応進行を、TLC(クロロホルム−メタノール−濃縮水酸化アンモニウム、10:1:0.025,v/v)で監視した。粗産物を乾燥するまで蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィーを通して精製し、クロロホルム:メタノール:濃縮水酸化アンモニウム(15:1:0.025(v/v))で溶出し、ロウ状の固体として純産物を得た。この材料を4℃で酢酸エチルに可溶化し、エーテル溶液中でHCLで処理した。反応混合物をHCl添加の際に攪拌し、さらに30分間低温に保ち、乾燥状態まで蒸発させ、さらに高真空中で乾燥し、純粋な白色標的化合物を塩酸塩として得た。LCL521を、60%収率で得た。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 8.238 (d, J=8.8 Hz, 2H), 7.669 (d, J=8.8 Hz, 2H), 6.243 (d, J=4.0 Hz, 1H), 4.75 (m, 1H), 4.581 (dd, J=5.2, 7.2 Hz, 1H), 4.423 (s, 2H), 4.198 (s, 2H), 4.189 (dd, J=5.2, 4.0 Hz), 2.968 (s, 12H), 2.175 (m, 2H), 1.421 (m, 2H), 1.0-1.2 (m, 20H), 0.886 (t, J=6.4 Hz); ESI-MS (CH3OH, 相対強度, %) m/z 593.404 (M-2HCl, 60). [C31H54Cl2N4O7]+ に対して計算 m/z 665.69
【0132】
(1R, 2R)-2-[N-テトラデカノイル]-アミノ]-1-(4''-ニトロフェニル)-1, 3-プロパンジオール- 1-O- ジメチルグリシン 塩酸塩 (LCL522)。N,N-ジメチルグリシン(9.3 mg, 0.09 mmol)及び1,1'-カルボニルジイミダゾール(14.6 mg, 0.09 mmol)を、3mL塩化メチレン中で混合し、B13(42.3 mg, 0.1 mmol)添加前に、2時間攪拌した。痕跡の出発物質が検知されなくなるまで、反応混合物を室温で攪拌した。反応進行を、TLC(クロロホルム−メタノール−濃縮水酸化アンモニウム、10:1:0.025, v/v)で監視した。粗産物を乾燥まで蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィーを通して精製し、クロロホルム:メタノール:濃縮水酸化アンモニウム(15:1:0.025, v/v)で溶出し、ロウ状の固体として純産物を得た。これを、4℃で酢酸エチル中に溶解し、エーテル溶液中でHCl処理した。反応混合物をHCl添加の間攪拌し、さらに30分間低温に保ち、蒸発乾燥させ、さらに高真空中で乾燥させ、純粋な白色固体標的化合物を塩酸塩として得た。LCL522の収率は、45%であった。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 8.180 (d, J=8.8 Hz, 2H), 7.640 (d, J=8.8 Hz, 2H), 5.067 (d, J=2.4 Hz, 1H), 4.620 (dd, J=5.2, 5.2 Hz, 1H), 4.504 (m, 1H), 4.288 (dd, J=8.4, 8.4 Hz, 1H), 4.124 (dd, J=17.2, 17.2 Hz, 2H), 2.961 (s, 6H), 2.068 (m, 2H), 1.358 (m, 2H), 1.1-1.3 (m, 20H), 0.887 (t, J=7.2 Hz, 3H); ESI-MS (CH3OH, 相対強度, %) m/z 508.347 (M-HCl, 70). [C27H46ClN3O6]+に対して計算m/z 544.12。
【0133】
実施例4
クラスE阻害剤のin vitro及び細胞効果
この実施例においては、上記のクラスE化合物について、in vitro及び細胞レベルにおける酸性セラミダーゼ(ACDase)の阻害剤としての性能を調べた。即ち、酸性セラミダーゼ(ACDase)の加水分解活の基質及び産物であるセラミド(Cer)とスフィンゴシン(Sph)の細胞中のレベルを調節する能力について調べた。更に、これらの化合物の酸性セラミダーゼ(ACDase)分解及びリソソーム安定性に対する効果を調べた。
このin vitro検定は、基質として[3H]C16-Cerを用い、酵素源としてMCF-7細胞溶解物を用いて、既報の手順に従って行った(Zeidan et al., J. Biol. Chem., 281, 24695-24703 (2006))。具体的には、この細胞溶解物を酸性条件(即ち、pH 4.5, 50 mM 酢酸ナトリウム、5 mM 塩化マグネシウム、1 mM EDTA及び0.5%Triton X-100)で調製し、タンパク質レベルをBCAタンパク質検定キット(Pierce, Rockford, Illinois, USA)を用いて測定した。酸性セラミダーゼ(ACDase)活性を、LS 6500多目的シンチレーションカウンター(Beckman Coulter, Inc., Fullerton, California, USA)で計数した放射性パルミチン酸の放出量により測定した。結果を、対照(媒体のみ)に対する割合(%)として示す(図3)。
【0134】
阻害剤の酸性セラミダーゼ(ACDase)の細胞活性に対する効果を、予め薬剤(阻害剤)の濃度を増しながら処理した培養細胞の細胞溶解物を用いて調べた。この方法では、薬剤(阻害剤)は一定時間細胞内へ流入する。その後、ホモジュナイゼーションにより細胞溶解物を調製して、上記の検定を行った(図4)。
内因性セラミド(Cer)とスフィンゴシン(Sph)に対する効果を、既報と同様にして、LC-MS/MS分析を用いて測定した(Bielawska et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 1032-1045 (2008);及びBielawska et al., Methods, 39, 82-91 (2006))。結果を、Bligh及びDyer脂質抽出から測定した、特定のスフィンゴ脂質(SPL)/リン脂質(Pi)のレベルとして表し、SPLs/Pi(pmol/nmol)として示す(図5A〜5D)。
酸性セラミダーゼ(ACDase)タンパク質分解に対するクラスE阻害剤の効果を、既報と同様にしてWesternブロットにより測定した(図6)(Bielawska et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 1032-1045 (2008); Liu et al., Front. Biosci., 13, 2293-2298 (2008);及びHolman et al., Cancer Chemother. Pharmacol., 61, 231-242 (2008))。
リソソーム安定性及びミトコンドリア安定性を、既報と同様にしてLysotracker(TM) red (Molecular Probes, Eugene, Oregon, USA)又はJC-1 mitochondrial dye (Molecular Probes, Eugene, Oregon, USA)を用いたFACS解析により測定した(図7)(Holman et al., Cancer Chemother. Pharmacol., 61, 231-242 (2008))。
【0135】
B13の作用と比較したクラスE化合物の阻害効果を、図3に示す。50μM 阻害物濃度における結果は、非修飾B13が最大阻害効果を示す(〜90%阻害)。同一濃度において、大部分のクラスE化合物は、酸性セラミダーゼ(ACDase)の強力な阻害剤として作用し、LCL464が最大効果、55%阻害、を示した。
図4に示すように、細胞レベルにおいて(2時間処理)、全てのテスト化合物は、細胞外のin vitroデータと比較して、より高い酸性セラミダーゼ(ACDase)阻害を示した。LCL464に対して、最高の阻害(65%)が検知された。以前研究されたように、非クラスE化合物、LCL204、即ち、(1R,2R)-D-スレオ-2-N-テトラデシルアミノ-1-(4'-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオールは、約35%阻害を生じた(データ非表示)。興味深いことに、in vitroでは最も強力な阻害剤、B13、は、細胞レベルでは、酸性セラミダーゼ(ACDase)阻害効果を示さなかった。酸性セラミダーゼ(ACDase)阻害に対するin vitro及び細胞レベル両者の結果によれば、LCL464は、テストしたクラスE類似体の中で、最も強い酸性セラミダーゼ(ACDase)阻害剤であるようである。
【0136】
酸性セラミダーゼ(ACDase)の細胞活性に対する阻害剤の観測効果を、スフィンゴ脂質(SPL)の細胞レベルと結びつけるために、内因性セラミド(Cer)類(Cn-Cer)及びスフィンゴシン(Sph)のレベルに対する効果をさらに調べた。結果は、10μMのクラスE化合物の処理2時間後、細胞Sphのレベルは効果的な減少(50%〜70%)を示した(図5A)。LCL464(10μM)は全セラミド(Cer)の合計レベルを変えなかったが(98%〜104%)、C14-セラミド(Cer)のレベルを233%〜400%に、またC16-セラミド(Cer)のレベルを155%迄、特異的に増加させた(図5B)。LCL464(50μM)について、この特徴的な早期のC14-Cer-Sphバランスに対する効果が観察された(図5C)。C16-セラミド(Cer)に対する効果は、10μM処理に比較して高かった(〜240%)。LCL464はまた、時間依存性の、及び非常に効率の良いC18-セラミド(Cer)レベルの増加を起こし、24時間目に対照の〜900%に達した(図5D)。このC18-セラミド(Cer)に対する効果は、20μMより高い濃度のLCL464に対して観察された。興味深いことに、Sph及びC18-セラミド(Cer)レベルの変化は相関しているが、SD(標準偏差)の大きな変化を伴う(高いレベルのC18-セラミド(Cer)は、低レベルのSphに対応した、及びその逆も成立する)(図5D)。特定の理論に囚われること無く、これらの結果は、セラミドシンターゼ1(CerS1)へのLCL464の付加的活性効果を示すようである。観察された両活性、即ち酸性セラミダーゼ(ACDase)のC14/C16-Cerに特異的な早期阻害、その後のセラミダーゼシンターゼ1の活性化は、アポトーシス促進性C14-、C16-及びC18-セラミド(Cer)の増加を引き起こすことができる。
【0137】
酸性セラミダーゼ(ACDase)発現に対するクラスE阻害剤の効果は、Westernブロットにより測定することができる(図6)。10μM濃度のクラスE化合物は、5時間処理に対して示すように、酸性セラミダーゼ(ACDase)を分解しなかった。この結果は、以前研究したLCL204のような酸性セラミダーゼ(ACDase)阻害剤の研究結果と対照的である(Bielawska et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 1032-1045 (2008))。さらに、クラスE化合物の濃度を50μM迄増加した場合、これ等は尚、酸性セラミダーゼ(ACDase)分解への如何なる効果も示さなかった。
図7に示すように、10μM LCL464は、リソソーム機能障害を起こさなかった。この結果は、B13に対しても観測される。高濃度では気付かれているように、30μM LCL464は、リソソームを脱安定化させる潜在力を持つ(40%、1時間)が、インキュベーション時間を長くするとこの機能障害は、回復する(61%/5時間、>100%/24時間)(データ非表示)。リソソームの恒久的不安定化は、LCL204(対照に比べて、リソソーム安定性を〜90%まで下げる)のような、以前研究した非クラスE阻害剤においてのみ観察される(Bielawska et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 1032-1045 (2008))。
【0138】
実施例5
クラスE産物のin vitro及び細胞効果
実施例4と同様の方法で、クラスEプロドラッグを、in vitro及び細胞レベルでの酸性セラミダーゼ(ACDase)の阻害剤として調べた。図13に示すように、LCL521は、in vitroで酸性セラミダーゼを阻害した。細胞レベルでは、LCL521は、酸性セラミダーゼ(ACDase)のアルファサブユニットの細胞レベルを減少させるようであり、ある程度LCL204に似ている、それに対して、LCL522及びB13は減少させない(図14A及び14B)。LCL521はまた、リソソームに運搬されるが、LCL522は運搬されないようである(図15)。LCL521は、スフィンゴシン(Sph)及びスフィンゴシン−1−リン酸塩(S1P)の細胞レベルを減少させ、全セラミド(Cer tot)並びにアポトーシス促進性C16-及びC18-Cerのレベルを増加させる(図16及び17)。これに対して、LCL522は、細胞のスフィンゴ脂質の調節に関して、B13と同様に挙動する(図16)。如何なる理論に囚われることなく、これらのデータから、LCL522は様々な検定条件において分解してB13を形成し、他方LCL521はゆっくりと代謝されてモノエステルLCL581及びB13に変わることが示唆される。
【0139】
実施例6
ガン細胞におけるクラスE阻害剤の効果
幾つかのガン細胞株(MCF-7(乳癌)、PPC1(ヒト前立腺癌)、SCC14a(ヒト頭頚部扁平上皮癌)、A549(ヒト肺上皮細胞)及びJ3DR4(ヒト黒色腫))の分化を誘導するために、クラスE化合物を分化する細胞に有効量投与した。細胞生存率検定を、3-(4,5-ジメチルチアゾール2-yl)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム臭化物(MTT)検定により行った。既報と同様にして、細胞を、増加する薬剤濃度(0〜100μM)で処理する一晩前に、96ウェルプレートに蒔種した(Hansen et al., J. Immunol. Methods, 119, 203-210 (1989))。処理後、プレートをさらに24〜72時間インキュベートした。細胞数の変化を測定し、無処理対照に対する割合(%)で表す。
この結果によると、本発明の化合物は、低マイクロモル範囲で、生存するガン細胞数を顕著に減少させた。図8に、クラスE阻害剤処理48時間後の、MCF-7乳癌細胞に対する濃度依存的阻害効果を示す。図9に、クラスE化合物のIC50(対照と比較して50%生存細胞にする濃度)を示す。殆ど全ての、LC449を除く、クラスEの化合物は、B13と比較して阻害効果の増加を示した。クラスE化合物の中で最も活性な類似体は、LCL463、ついでLCL464であった。これらの類似体のIC50値は、LCL449(49.9μM)を除き、約6.0〜15.5μMであった。B13はIC50値20.0μMを示した。
【0140】
次に、LCL464の抗増殖効果を、幾つかの更なる種類の腫瘍細胞株(SCC14a(ヒト頭頚部扁平上皮癌)、Du145(ヒト前立腺癌、上皮様細胞株)、J3DR4(ヒト黒色腫)、A549(ヒト肺上皮細胞)、及びPPC1(ヒト前立腺癌))について調べた。図10に、LCL464処理48時間及び72時間後のこれらのガン細胞株に対する阻害効果を示し、MCF-7細胞に対する効果と比較した。LCL464は、MCF-7細胞の増殖に最大の効果を示し、処理48及び72時間後のIC50はそれぞれ、10.2μM及び7.2μMであった。これらの結果は、同量の全タンパク質に対して測定すると、最も高い酸性セラミダーゼ(ACDase)タンパク質発現を有するMCF-7細胞での酸性セラミダーゼ(ACDase)レベルに対応した効果と一致する(データ非表示)。
LCL464のアポトーシスに対する効果を、MCF-7細胞において、アポトーシス実行を媒介するシステインプロテアーゼの1群であるカスパーゼ3/7に対する効果を通して調べた。この効果は、死受容体及び細胞内/ミトコンドリア経路の両者からのアポトーシスシグナルにより活性化される。具体的には、MCF-7細胞を96ウェルプレートに、5×103/50μL/ウェルの密度で、一晩蒔種した。その後細胞を、媒体又は稀釈LCL464と処理した。8及び24時間インキュベーション後、カスパーゼ3/7活性を、製造者(Promega, Madison, Wisconsin, USA)の手引きに従い、Apo-ONE Homogeneous Caspase 3/7 検定キットを用いて測定した。LCL464は、24時間インキュベーション後、用量依存的なアポトーシス誘導を起こし、カスパーゼ3/7活性をLCL464 10μM及び20μMに対して、それぞれ、140%及び200%増加した(図11)。
【0141】
実施例7
ガン細胞におけるクラスEプロドラッグの効果
分化を誘導するに十分な量のクラスEプロドラッグを、分化能のあるMCF-7細胞に投与した。細胞生存率測定をMTT検定により行った。既報と同様にして、増加する薬剤濃度(0〜100μM)を用いて処理する一晩前に、細胞を96ウェルプレートに蒔種した(Hansen et al., J. Immunol. Methods, 119, 203-210 (1989))。処理後、プレートをさらに、24〜72時間インキュベートした。細胞数の変化を測定し、非処理対照に対する割合(%)で表示した。50%阻害濃度を、対照サンプルに対して、プロドラッグ処理サンプルの細胞数変化を比較することにより測定した。
図12に、細胞生存率に対するLCL521の用量依存的結果を示す。また表1に、MCF-7乳癌細胞を用いてMTT細胞生存率検定により測定した、LCL521の時間依存的IC50(24, 48又は72時間後)を示す。表1には、LCL522の24時間後IC50を示し、比較のために、B13に対する時間依存的IC50を示す。24時間後、LC521及びLCL522の両者は、B13と比較して、MCF-7細胞への阻害効果の増加を示す。これらのデータによれば、本明細書で開示したプロドラッグ法は、酸性セラミダーゼ(ACDase)阻害剤の治療指数を増加することができるようである。特にLCL522のプロドラッグ法は、B13輸送及び有効性の増加をもたらすようである。
【0142】
表1 クラスEプロドラッグの時間依存的IC50
【表1】
本発明の様々な細部を本発明の範囲から離れることなく変更することができる。さらに、上記の記載は、説明の目的のためのみであり、限定を目的としたものではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(Ia)
【化1】
(式中:
nは0〜13の整数であり;
R1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は、独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;及び
Yは、CH2又はNHである)
の構造を持つ化合物、又はこの化合物の医薬的に許容された塩である酸性セラミダーゼを阻害するための化合物であって、この阻害が、リソソームの恒久的不安定化なしに、及び/又は酸性セラミダーゼのタンパク質分解無しに行われる化合物。
【請求項2】
Xが酸素原子である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
YがCH2である請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R2が水素原子である請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R3がNO2である請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
R4がCH2OHである請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
R5がOHである請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
nが7である請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
R1がNHR6であり、R6がアルキル基である請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
R1がNR6R7であり、R6及びR7がそれぞれアルキル基である請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
R1が以下:
【化2】
から成る群から選択されるN-複素環である請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
前記化合物が、(1R, 2R)-2-[N-(12'-{1"-イミダゾール}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL433); (1R, 2R)-2-[N-(12'-{1"-モルホリン}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL449); (1R, 2R)-2-[N-(12'-アミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL463); (1R, 2R)-2-[N-(12'-N,N-ジメチルアミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL464); (1R, 2R)-2-[N-(6'-{N-オクチルアミノ}-ヘキサノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール(LCL488);及び(1R, 2R)-2-[N-{12'-N-メチル-アミノ}-ドデカノイル]-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL506)から成る群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
前記化合物が、(1R, 2R)-2-[N-(12'-N,N-ジメチルアミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール(LCL464)である請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
(a)請求項1に記載の化合物、及び(b)医薬的に許容された担体から成る医薬組成物。
【請求項15】
下記化学式(Ib):
【化1】
(式中:
nは、0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;
ここで、R4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含む)
の化合物、又はこの化合物の医薬的に許容された塩。
【請求項16】
R4がCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7である請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
R8が水素原子であり、かつR6及びR7がそれぞれアルキル基である請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
R5がOC(=O)CH(R8)NR6R7である請求項15に記載の化合物。
【請求項19】
R8が水素原子であり、かつR6及びR7がそれぞれアルキル基である請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
R4がCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7であり、かつR5がOC(=O)-CH(R8)NR6R7である請求項15に記載の化合物。
【請求項21】
nが5である請求項15に記載の化合物。
【請求項22】
R1がn−ブチル基である請求項15に記載の化合物。
【請求項23】
R3がNO2である請求項15に記載の化合物。
【請求項24】
前記化合物が、
【化3】
【化4】
【化5】
から選択される請求項15に記載の化合物。
【請求項25】
(a)請求項15に記載の化合物、及び(b)医薬的に許容された担体から成る医薬組成物。
【請求項26】
酸性セラミダーゼを含むサンプルを、有効量の下記化学式(Ia):
【化1】
(式中:
nは0〜13の整数であり;
R1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;及び
Yは、CH2又はNHである)
の化合物、又はこの医薬的に許容された塩に接触させる段階から成る、酸性セラミダーゼを阻害する方法であって、この阻害が、恒久的なリソソーム不安定化及び/又は酸性セラミダーゼのタンパク質分解なしに行われる方法。
【請求項27】
前記サンプルが、in vitro細胞サンプル又はin vivo細胞サンプルである請求項26に記載の方法。
【請求項28】
患者に有効量の化学式(Ia):
【化1】
(式中:
nは0〜13の整数であり;
R1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;及び
Yは、CH2又はNHである)
の化合物、又はこの化合物の医薬的に許容された塩を投与する段階から成り、この化合物は、恒久的なリソソーム不安的化及び/又は酸性セラミダーゼのタンパク質分解なしに又は実質的になしに、酸性セラミダーゼを阻害する、患者における好ましくないセラミダーゼ又はスフィンゴシンキナーゼ活性が関係する疾病又は疾患を治療又は予防する方法。
【請求項29】
前記疾病又は疾患が、ガン、ガン転移、アテローム性動脈硬化、狭窄、炎症、喘息、アトピー性皮膚炎及び他の増殖性疾病から成る群から選択される請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記患者が哺乳類患者である請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記化学式(Ia)の化合物が、前記化学式(Ia)の化合物及び医薬的に許容された担体から成る医薬的組成物として患者に投与される請求項28に記載の方法。
【請求項32】
ガン治療を必要とする患者に、有効量の化学式(Ia):
【化1】
(式中:
nは0〜13の整数であり;
R1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;及び
Yは、CH2又はNHである)
の化合物又はこの医薬的に許容された塩を投与する段階から成る、ガンを治療する方法。
【請求項33】
前記ガンが、乳癌、前立腺癌、メラノーマ、肺癌及び頭頚部癌から成る群から選択される請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記患者が、哺乳類患者である請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記化学式(Ia)の化合物を、化学式(Ia)の化合物及び医薬的に許容された担体から成る医薬組成物として投与する請求項32に記載の方法。
【請求項36】
Xが酸素原子である請求項32に記載の方法。
【請求項37】
YがCH2である請求項32に記載の方法。
【請求項38】
R2が水素原子である請求項32に記載の方法。
【請求項39】
R3がNO2である請求項32に記載の方法。
【請求項40】
R4がCH2OHである請求項32に記載の方法。
【請求項41】
R5がOHである請求項32に記載の方法。
【請求項42】
nが7である請求項32に記載の方法。
【請求項43】
R1がNHR6であり、R6がアルキル基である請求項32に記載の方法。
【請求項44】
R1がNR6R7であり、R6及びR7がそれぞれアルキル基である請求項32に記載の方法。
【請求項45】
R1が以下:
【化2】
から成る群から選択されるN-複素環である請求項32に記載の方法。
【請求項46】
前記化合物が、(1R, 2R)-2-[N-(12'-{1"-イミダゾール}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL433); (1R, 2R)-2-[N-(12'-{1"-モルホリン}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL449); (1R, 2R)-2-[N-(12'-アミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL463); (1R, 2R)-2-[N-(12'-N,N-ジメチルアミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL464); (1R, 2R)-2-[N-(6'-{N-オクチルアミノ}-ヘキサノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール(LCL488);及び(1R, 2R)-2-[N-{12'-N-メチル-アミノ}-ドデカノイル]-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL506)から成る群から選択される請求項32に記載の方法。
【請求項47】
前記化合物が、(1R, 2R)-2-[N-(12'-N,N-ジメチルアミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール(LCL464)である請求項46に記載の化合物。
【請求項48】
酸性セラミダーゼを含むサンプルを、有効量の酸性セラミダーゼ阻害剤のエステルプロドラッグと、該プロドラッグが加水分解してこの阻害剤になる条件下で、接触させる段階から成る、酸性セラミダーゼを阻害する方法であって、該プロドラッグが、化学式(Ib):
【化1】
(式中:
nは、0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5から10の間の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;及び
ここで、R4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含む)の構造を有する化合物又はこの医薬的に許容された塩である方法。
【請求項49】
前記サンプルが、in vitro細胞サンプル、又はin vivo細胞サンプルである請求項48に記載の方法。
【請求項50】
患者に有効量の下記化学式(Ib)
【化1】
[式中:
nは、0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5から10の間の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;及び
ここで、R4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含む]の化合物又はこの医薬的に許容された塩を投与する段階から成る、患者における好ましくないセラミダーゼ又はスフィンゴシンキナーゼ活性に関係する疾病又は疾患を治療又は予防する方法。
【請求項51】
前記疾病又は疾患が、ガン、ガン転移、アテローム性動脈硬化、狭窄、炎症、喘息、アトピー性皮膚炎及び他の増殖性疾病から成る群から選択される請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記患者が、哺乳類患者である請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記化学式(Ib)の化合物が、化学式(Ib)の化合物及び医薬的に許容された担体から成る医薬的組成物として患者に投与される請求項50に記載の方法。
【請求項54】
ガン治療を必要とする患者に有効量の化学式(Ib)
【化1】
(式中:
nは、0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5から10の間の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;及び
ここで、R4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含む)の化合物又はこの医薬的に許容された塩を投与する段階から成る癌を治療する方法。
【請求項55】
前記患者が、哺乳類患者である請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記化学式(Ib)の化合物を、化学式(Ib)の化合物及び医薬的に許容された担体から成る医薬組成物として投与する請求項54に記載の方法。
【請求項57】
R4がCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7である請求項54に記載の方法。
【請求項58】
R8が水素原子であり、かつR6及びR7がそれぞれアルキル基である請求項57に記載の方法。
【請求項59】
R5がOC(=O)CH(R8)NR6R7である請求項54に記載の方法。
【請求項60】
R8が水素原子であり、かつR6及びR7がそれぞれアルキル基である請求項59に記載の方法。
【請求項61】
R4がCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7であり、かつR5がOC(=O)-CH(R8)NR6R7である請求項54に記載の方法。
【請求項62】
nが5である請求項54に記載の方法。
【請求項63】
R1がn−ブチル基である請求項54に記載の方法。
【請求項64】
R3がNO2である請求項54に記載の方法。
【請求項65】
前記化合物が、
【化3】
【化4】
【化5】
から選択される請求項54に記載の方法。
【請求項1】
下記化学式(Ia)
【化1】
(式中:
nは0〜13の整数であり;
R1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は、独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;及び
Yは、CH2又はNHである)
の構造を持つ化合物、又はこの化合物の医薬的に許容された塩である酸性セラミダーゼを阻害するための化合物であって、この阻害が、リソソームの恒久的不安定化なしに、及び/又は酸性セラミダーゼのタンパク質分解無しに行われる化合物。
【請求項2】
Xが酸素原子である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
YがCH2である請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R2が水素原子である請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R3がNO2である請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
R4がCH2OHである請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
R5がOHである請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
nが7である請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
R1がNHR6であり、R6がアルキル基である請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
R1がNR6R7であり、R6及びR7がそれぞれアルキル基である請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
R1が以下:
【化2】
から成る群から選択されるN-複素環である請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
前記化合物が、(1R, 2R)-2-[N-(12'-{1"-イミダゾール}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL433); (1R, 2R)-2-[N-(12'-{1"-モルホリン}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL449); (1R, 2R)-2-[N-(12'-アミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL463); (1R, 2R)-2-[N-(12'-N,N-ジメチルアミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL464); (1R, 2R)-2-[N-(6'-{N-オクチルアミノ}-ヘキサノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール(LCL488);及び(1R, 2R)-2-[N-{12'-N-メチル-アミノ}-ドデカノイル]-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL506)から成る群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
前記化合物が、(1R, 2R)-2-[N-(12'-N,N-ジメチルアミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール(LCL464)である請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
(a)請求項1に記載の化合物、及び(b)医薬的に許容された担体から成る医薬組成物。
【請求項15】
下記化学式(Ib):
【化1】
(式中:
nは、0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;
ここで、R4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含む)
の化合物、又はこの化合物の医薬的に許容された塩。
【請求項16】
R4がCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7である請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
R8が水素原子であり、かつR6及びR7がそれぞれアルキル基である請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
R5がOC(=O)CH(R8)NR6R7である請求項15に記載の化合物。
【請求項19】
R8が水素原子であり、かつR6及びR7がそれぞれアルキル基である請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
R4がCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7であり、かつR5がOC(=O)-CH(R8)NR6R7である請求項15に記載の化合物。
【請求項21】
nが5である請求項15に記載の化合物。
【請求項22】
R1がn−ブチル基である請求項15に記載の化合物。
【請求項23】
R3がNO2である請求項15に記載の化合物。
【請求項24】
前記化合物が、
【化3】
【化4】
【化5】
から選択される請求項15に記載の化合物。
【請求項25】
(a)請求項15に記載の化合物、及び(b)医薬的に許容された担体から成る医薬組成物。
【請求項26】
酸性セラミダーゼを含むサンプルを、有効量の下記化学式(Ia):
【化1】
(式中:
nは0〜13の整数であり;
R1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;及び
Yは、CH2又はNHである)
の化合物、又はこの医薬的に許容された塩に接触させる段階から成る、酸性セラミダーゼを阻害する方法であって、この阻害が、恒久的なリソソーム不安定化及び/又は酸性セラミダーゼのタンパク質分解なしに行われる方法。
【請求項27】
前記サンプルが、in vitro細胞サンプル又はin vivo細胞サンプルである請求項26に記載の方法。
【請求項28】
患者に有効量の化学式(Ia):
【化1】
(式中:
nは0〜13の整数であり;
R1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;及び
Yは、CH2又はNHである)
の化合物、又はこの化合物の医薬的に許容された塩を投与する段階から成り、この化合物は、恒久的なリソソーム不安的化及び/又は酸性セラミダーゼのタンパク質分解なしに又は実質的になしに、酸性セラミダーゼを阻害する、患者における好ましくないセラミダーゼ又はスフィンゴシンキナーゼ活性が関係する疾病又は疾患を治療又は予防する方法。
【請求項29】
前記疾病又は疾患が、ガン、ガン転移、アテローム性動脈硬化、狭窄、炎症、喘息、アトピー性皮膚炎及び他の増殖性疾病から成る群から選択される請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記患者が哺乳類患者である請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記化学式(Ia)の化合物が、前記化学式(Ia)の化合物及び医薬的に許容された担体から成る医薬的組成物として患者に投与される請求項28に記載の方法。
【請求項32】
ガン治療を必要とする患者に、有効量の化学式(Ia):
【化1】
(式中:
nは0〜13の整数であり;
R1は、NH2、NHR6、NR6R7及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5〜10の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;及び
Yは、CH2又はNHである)
の化合物又はこの医薬的に許容された塩を投与する段階から成る、ガンを治療する方法。
【請求項33】
前記ガンが、乳癌、前立腺癌、メラノーマ、肺癌及び頭頚部癌から成る群から選択される請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記患者が、哺乳類患者である請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記化学式(Ia)の化合物を、化学式(Ia)の化合物及び医薬的に許容された担体から成る医薬組成物として投与する請求項32に記載の方法。
【請求項36】
Xが酸素原子である請求項32に記載の方法。
【請求項37】
YがCH2である請求項32に記載の方法。
【請求項38】
R2が水素原子である請求項32に記載の方法。
【請求項39】
R3がNO2である請求項32に記載の方法。
【請求項40】
R4がCH2OHである請求項32に記載の方法。
【請求項41】
R5がOHである請求項32に記載の方法。
【請求項42】
nが7である請求項32に記載の方法。
【請求項43】
R1がNHR6であり、R6がアルキル基である請求項32に記載の方法。
【請求項44】
R1がNR6R7であり、R6及びR7がそれぞれアルキル基である請求項32に記載の方法。
【請求項45】
R1が以下:
【化2】
から成る群から選択されるN-複素環である請求項32に記載の方法。
【請求項46】
前記化合物が、(1R, 2R)-2-[N-(12'-{1"-イミダゾール}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL433); (1R, 2R)-2-[N-(12'-{1"-モルホリン}-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL449); (1R, 2R)-2-[N-(12'-アミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL463); (1R, 2R)-2-[N-(12'-N,N-ジメチルアミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL464); (1R, 2R)-2-[N-(6'-{N-オクチルアミノ}-ヘキサノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール(LCL488);及び(1R, 2R)-2-[N-{12'-N-メチル-アミノ}-ドデカノイル]-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール (LCL506)から成る群から選択される請求項32に記載の方法。
【請求項47】
前記化合物が、(1R, 2R)-2-[N-(12'-N,N-ジメチルアミノ-ドデカノイル)-アミノ]-1-(4"-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール(LCL464)である請求項46に記載の化合物。
【請求項48】
酸性セラミダーゼを含むサンプルを、有効量の酸性セラミダーゼ阻害剤のエステルプロドラッグと、該プロドラッグが加水分解してこの阻害剤になる条件下で、接触させる段階から成る、酸性セラミダーゼを阻害する方法であって、該プロドラッグが、化学式(Ib):
【化1】
(式中:
nは、0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5から10の間の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;及び
ここで、R4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含む)の構造を有する化合物又はこの医薬的に許容された塩である方法。
【請求項49】
前記サンプルが、in vitro細胞サンプル、又はin vivo細胞サンプルである請求項48に記載の方法。
【請求項50】
患者に有効量の下記化学式(Ib)
【化1】
[式中:
nは、0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5から10の間の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;及び
ここで、R4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含む]の化合物又はこの医薬的に許容された塩を投与する段階から成る、患者における好ましくないセラミダーゼ又はスフィンゴシンキナーゼ活性に関係する疾病又は疾患を治療又は予防する方法。
【請求項51】
前記疾病又は疾患が、ガン、ガン転移、アテローム性動脈硬化、狭窄、炎症、喘息、アトピー性皮膚炎及び他の増殖性疾病から成る群から選択される請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記患者が、哺乳類患者である請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記化学式(Ib)の化合物が、化学式(Ib)の化合物及び医薬的に許容された担体から成る医薬的組成物として患者に投与される請求項50に記載の方法。
【請求項54】
ガン治療を必要とする患者に有効量の化学式(Ib)
【化1】
(式中:
nは、0〜13の整数であり;
R1は、水素原子、OH、SH、NH2、Cl、Br、I、C(=O)OH、C(=O)NH2、NH(C=NH)NH2、NHR6、NR6R7、+N(R6)3及びN-複素環から成る群から選択され;
R2は、水素原子及びアルキル基から成る群から選択され;
R3は、水素原子、OH、NO2、NH2及びNHR9から成る群から選択され;
R4は、水素原子、CH3、CH2OH及びCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7から成る群から選択され;
R5は、水素原子、OH、=O及びOC(=O)CH(R8)NR6R7から成る群から選択され、各R6、R7及びR8は独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基及びアリール基から成る群から選択され;
R9は、C(=O)-(CH2)mR10であり、ここでmは5から10の間の整数であり;
R10は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は複素環であり;
Xは、酸素原子、NH及び硫黄原子から成る群から選択され;
Yは、CH2又はNHであり;及び
ここで、R4及びR5の少なくとも1つは、エステル部分を含む)の化合物又はこの医薬的に許容された塩を投与する段階から成る癌を治療する方法。
【請求項55】
前記患者が、哺乳類患者である請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記化学式(Ib)の化合物を、化学式(Ib)の化合物及び医薬的に許容された担体から成る医薬組成物として投与する請求項54に記載の方法。
【請求項57】
R4がCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7である請求項54に記載の方法。
【請求項58】
R8が水素原子であり、かつR6及びR7がそれぞれアルキル基である請求項57に記載の方法。
【請求項59】
R5がOC(=O)CH(R8)NR6R7である請求項54に記載の方法。
【請求項60】
R8が水素原子であり、かつR6及びR7がそれぞれアルキル基である請求項59に記載の方法。
【請求項61】
R4がCH2O-C(=O)-CH(R8)NR6R7であり、かつR5がOC(=O)-CH(R8)NR6R7である請求項54に記載の方法。
【請求項62】
nが5である請求項54に記載の方法。
【請求項63】
R1がn−ブチル基である請求項54に記載の方法。
【請求項64】
R3がNO2である請求項54に記載の方法。
【請求項65】
前記化合物が、
【化3】
【化4】
【化5】
から選択される請求項54に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2012−508249(P2012−508249A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535698(P2011−535698)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/063586
【国際公開番号】WO2010/054223
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(509199890)ムスク ファウンデーション フォー リサーチ デベロップメント (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/063586
【国際公開番号】WO2010/054223
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(509199890)ムスク ファウンデーション フォー リサーチ デベロップメント (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]