説明

酸性染料

次の一般式(I)で表される酸性染料、それらの製造、及び有機基材を染色するための使用。
【化1】


(式中、置換基は特許請求の範囲に示したとおりの意味を有する。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な酸性染料、それらの製造方法、及び有機基材を染色するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
酸性染料は公知であり、架橋要素を有する染料も同様に知られている。しかしながら、向上された特性を備えた酸性染料は依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2002/46318号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/51681号パンフレット
【特許文献3】欧州特許第1066340B1号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie, 4th Edition, 1982, Volume 22, pages 658−673
【非特許文献2】the book by M. Peter and H.K. Rouette, Grundlagen der Textilveredlung, 13th Edition, 1989, pages 535−556 and 566−574
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、次の一般式(I)で表される化合物を提供する。
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、
は、置換されたC〜Cアルキル基又は置換されていないC〜Cアルキル基を示し、
は、H、置換されたC〜Cアルキル基又は置換されていないC〜Cアルキル基、スルホ基、−CO−NH−(C〜Cアルキル)又はCNを示し、
は、H、又は置換されていないC〜Cアルキル基を示し、
は、H、スルホ基、置換されたC〜Cアルキル基又は置換されていないC〜Cアルキル基、置換されたC〜Cアルコキシ基又は置換されていないC〜Cアルコキシ基を示し、
は、H、置換されたC〜Cアルキル基又は置換されていないC〜Cアルキル基、置換されたC〜Cアルコキシ基又は置換されていないC〜Cアルコキシ基を示し、
Bは、式−NH−CO−NH−、−CR−を有する基(式中、
は、H、置換されたC〜Cアルキル基又は置換されていないC〜Cアルキル基を示し、
は、H、置換されたC〜Cアルキル基又は置換されていないC〜Cアルキル基、置換されていないアリール基又は置換されたアリール基を示すか、あるいは、RとRとが一緒になって5員又は6員の環状脂肪族環を形成し、その際、5員又は6員の環はC〜Cアルキル基で置換されているか、又は5員又は6員の環はそれ以上置換されていない。)を示す。)
【0008】
好ましくは、RとRとを合わせた炭素原子の総計は、少なくとも4個の炭素原子、より好ましくは、5個の炭素原子である。さらにより好ましくは、RとRとを合わせた炭素原子の総計は、5個又は6個又は7個又は8個又は9個の炭素原子である。
【0009】
上記の式(I)の好ましい化合物は、少なくとも1つのアニオン性置換基、好ましくは1つ、2つ又は3つのアニオン性置換基を有し、なかんずく、それらのうち2つアニオン性置換基を有するものが特に好ましい。
【0010】
上記の式(I)の化合物中の少なくとも1つのアニオン性置換基は、R及び/又はRのうちのいずれか一方に好ましく位置する。より好ましくは、少なくとも1つのアニオン性置換基はz置換基Rのいずれか一方に位置する。これは、置換基のうちの一つに好ましく位置するこの置換基がアニオン性の基であるとことも意味する。
【0011】
好ましいアニオン性置換基は、カルボキシル基及び/又はスルホ基であり、そしてスルホ基が特に好ましい。
【0012】
置換されたC〜Cアルキル基の好ましい置換基は、次の置換基、−OH、−O(C〜C−アルキル)、−SOH、−COOH、−NH(C〜C−アルキル)から選択される。置換されたC〜Cアルキル基のより好ましい置換基は、次の置換基、−OH、−O(C〜C−アルキル)、−SOH、−COOH、−NH(C〜C−アルキル)から選択される。アルキル基は分岐状又は直鎖状である。最も好ましいアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル(2−メチルプロピル)、ペンチル、イソペンチル(3−メチルブチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、又はノニルである。
【0013】
置換されたC〜Cアルコキシ基の好ましい置換基は、次の置換基、−OH、−O(C〜C−アルキル)、−SOH、−COOH、−NH(C〜C−アルキル)から選択される。アルコキシ基は分岐状又は直鎖状である。
【0014】
置換されたC〜Cアリール基の好ましい置換基は、次の置換基、−OH、−O(C〜C−アルキル)、−SOH、置換されたC〜Cアルキル基、置換されていないC〜Cアルキル基、置換されたC〜Cアルコキシ基、及び置換されていないC〜Cアルコキシ基から選択される。
【0015】
上記の一般式(I)の好ましい化合物において、
は、置換されていないC〜Cアルキル基を示し、
は、置換されたC〜Cアルキル基又は置換されていないC〜Cアルキル基、スルホ基、−CO−NH−(C〜Cアルキル基)又はCNを示し、
は、置換されていないC〜Cアルキル基を示し、
は、H、スルホ基、置換されていないC〜Cアルキル基、置換されていないC〜Cアルコキシ基を示し、
は、H、置換されていないC〜Cアルキル基、置換されていないC〜Cアルコキシ基を示し、
Bは、式−CR−を有する基(式中、
は、H、置換されたC〜Cアルキル基又は置換されていないC〜Cアルキル基を示し、
は、置換されたC〜Cアルキル基又は置換されていないC〜Cアルキル基、置換されていないアリール基又は置換されたアリール基を示すか、あるいは、RとRとが一緒になって5員又は6員の環状脂肪族環を形成し、その際、5員又は6員の環はC〜Cアルキル基で置換されているか、又は5員又は6員の環はそれ以上置換されていない。)を示す。)
【0016】
上記の一般式(I)のさらにより好ましい化合物において、
は、メチル基を示し、
は、−CH−SOH又は−CNを示し、
は、メチル基又はエチル基を示し、
は、H、メチル基、メトキシ基、又はスルホ基を示し、
は、H、メチル基又はメトキシ基を示し、
Bは、式−CR−を有する基(式中、
は、H、メチル基又はエチル基を示し、
は、置換されていないC〜Cアルキル基、置換されていないアリール基又は置換されたアリール基を示すか、あるいは、RとRとが一緒になって6員の環状脂肪族環を形成し、その際、6員の環はそれ以上置換されていない。)を示す。)
【0017】
上記の一般式(I)の最も好ましい化合物において、
は、メチル基を示し、
は、−CH−SOH基又は−CN、好ましくは−CH−SOH基を示し、
は、エチル基を示し、
は、H、メチル基、メトキシ基又はスルホ基、好ましくはH、メチル基を示し、
は、H、メチル基又はメトキシ基、好ましくはHを示し、
Bは、式−CR−を有する基(式中、
は、Hを示し、
は、置換されていないアリール基又は置換されたアリール基、好ましくは置換されていないアリール基を示し、その際、そのアリール基はフェニル基である。)を示す。)
【0018】
好ましくは、上記の式(I)の化合物は次の式(I’)を有する。
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、置換基は上記で示した意味を有する。)
【0021】
本発明はまた、上記の式(I)の化合物を製造する方法も提供する。本発明の式(I)の化合物は、従来の方法において慣用の条件下で製造できる。
【0022】
これらの方法において、文献から知られる次の式(II)の化合物の両方のアミン官能基は、慣習的にジアゾ化され、そして全部で二等量のその次の式(III)の化合物に結合される。
【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
(式中、置換基はそれぞれ上記で定義したとおりである。)
【0026】
これらの方法において、特定のジアミンを0〜10℃、あるいは好ましくは0〜5℃まで冷却し、そしてニトロシル硫酸又は亜硝酸ナトリウムを添加することによってジアゾ化する。その後、ビス−ジアゾ化されたジアミンを、上記の化合物(III)と、好ましくは水性溶液中で反応させる。
【0027】
上記の式(I)の染料は、従来の方法、適切であるならば、低減された圧力及び高められた温度下で、例えば、アルカリ金属塩で塩析し、ろ過し、そして乾燥させることによって反応媒体から単離できる。
【0028】
反応条件及び/又は単離条件に依存して、式(I)の染料遊離酸として、又は、例えば、アルカリ金属イオン類、例えば、ナトリウムイオン、あるいはアンモニウムイオン又はアルキルアンモニウムカチオン、例えば、モノ−、ジ−又はトリメチル−又はエチル−アンモニウムカチオンから選択されるカチオンを1つ又は2つ以上含む塩として又は混合塩として得ることができる。この染料は、遊離酸から慣用的技術で塩又は混合塩に、あるいは逆に、1つの塩から別の塩へ転化できる。所望に応じて、染料をろ過によって更に精製でき、その場合、望ましくない塩及び合成副生成物は粗製アニオン性染料から分離される。
【0029】
粗製染料溶液からの望ましくない塩及び合成副生成物の除去、及び一部水の除去は、圧力を付与することによる半透膜を用いて遂行され、その望ましくない塩及び合成副生成物を含まない染料を溶液として、そして必要であれば従来通り固形物として得ることができる。
【0030】
上記の式(I)の染料及びそれらの塩は、天然又は合成ポリアミドからなる繊維材料を黄色から緑がかった黄色の色合いに染色又は印刷するのに特に適している。式(I)の染料及びそれらの塩は、インクジェット印刷インキを製造するのに、そして天然又は合成ポリアミド又はセルロース(例えば、紙)からなる繊維材料を印刷するのにそれらのインクジェット印刷インキを用いるのに適している。
【0031】
それ故、本発明は、別の見地から、天然又は合成ポリアミドからなる繊維材料を染色及び/又は印刷するための式(I)の染料、それらの塩及び混合物の使用を提供する。更なる見地とは、インクジェット印刷インキの製造及び天然又は合成ポリアミドからなる繊維材料を印刷するためのそれらの使用である。
【0032】
染色は、公知の方法により遂行される。例えば、Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie, 4th Edition, 1982, Volume 22, pages 658−673(非特許文献1)、又はthe book by M. Peter and H.K. Rouette, Grundlagen der Textilveredlung, 13th Edition, 1989, pages 535−556 and 566−574(非特許文献2)に記載されている染色方法を参照されたい。好ましくは、吸尽過程中で温度30〜140℃、より好ましくは80〜120℃、最も好ましくは80〜100℃の温度、及び3:1〜40:1の範囲内の溶液比で染色される。
【0033】
染色される基材は、例えば、糸、織地、ループ状に編まれた編み地、又はカーペットの形態で提供できる。デリケートな基材、例えば、ラムウール、カシミア、アルパカ及びモヘアに対して、完全なやりかたで(fully fashioned)の染色が恒久的にさえ可能である。本発明の染料は、細デニールの繊維(マイクロファイバー)を染色するのに特に有用である。
【0034】
本発明による染料及びそれらの塩は、公知の酸性染料と高度に相溶性である。そのため、式(I)の染料、それらの塩又は混合物は、染色又は印刷工程中などで、単独で、又は組み合わせの色合いの染色又は印刷組成物中の一成分として、同じクラスのその他の酸性染料、すなわち、例えば、堅牢特性及び染浴から基材上への吸尽速度のような染色特性が同程度の特性を有する酸性染料と一緒に使用できる。本発明の染料は、適当な発色団を有するある種のその他の染料と一緒に特に使用できる。染料が、組み合わせの色合いの染色又は印刷組成物中に存在する割合は、得るべき色相に左右される。
【0035】
上述のような式(I)の新規な染料は、天然及び合成のポリアミド、すなわち、ウール、絹及び全てのナイロン種を染色するのに非常に有用であり、それぞれの染色物について、高い堅牢レベル、特に良好な光堅牢性及び良好な湿潤堅牢性(洗濯、アルカリ性の汗)が得られる。式(I)の染料及びそれらの塩は高い吸尽率を有する。式(I)の染料及びそれらの塩のビルドアップ性能も同様に非常に良好である。同一の基材に対する色調のある染色物(on−tone dyeings)は優れた品質のものである。更に、全ての染色物は、人工光の下で一定の色相を有する。さらに、デカタイジング(decating)及び沸騰に対する堅牢性も良好である。
【0036】
式(I)の新規な染料の決定的な利点の一つは、それらが金属を含まず、かつ、非常に均染な染色物をもたらすということである。
【0037】
本発明による化合物は、単一の染料などとして、あるいはそれらの良好な相溶性の故に、例えば、一般的な堅牢性、吸尽値等に関連する同程度の染色特性を有する同じクラスの別の染料と共に、組み合わせ成分として使用できる。得られる組み合わせの色合いの染色物は、個別の染料を用いた場合と同様の堅牢性を有する。
【0038】
本発明の式(I)の染料はまた、三原色の染色又は印刷における黄色成分としても使用できる。三原色の染色又は印刷は、例えば、連続法、吸尽法(exhaustion process)、気泡染色法、及びインクジェット法のような慣用的及び公知の染色法及び印刷法の全てを利用できる。
【0039】
本発明の方法で使用される三原色染料混合物中の個々の染料成分の組成は、所望する色相に依存する。茶色の色相は、例えば、黄色成分20〜40重量%、本発明のオレンジ色又は赤色成分40〜60重量%、及び青色成分10〜20重量%を好ましく利用する。
【0040】
上述のような黄色成分は、式(I)に一致する単一の成分、又は異なるオレンジ色の別個の成分の混合物を含むことができる。好ましくは、二成分及び三成分の組み合わせが与えられる。
【0041】
特に好ましい赤色及び/又は青色成分は、国際公開第2002/46318号パンフレット(特許文献1)又は国際公開第99/51681号パンフレット(特許文献2)にそれぞれ説明されている。
【0042】
以下の実施例において、部及び%は重量によるものであり、そして温度は摂氏の度で報告される。
【実施例】
【0043】
例1:
1,1’−ビス−(4−アミノフェニル)−2−エチル−ヘキサン26.8部(0.1モル)を、公知の方法に従って、0〜5℃において、亜硝酸ナトリウム13.8部(0.2モル)でもって、水200部及び塩酸(約30%)60部中でテトラアゾ化する。水250部中に溶解した、次式、
【0044】
【化5】

【0045】
で表される化合物49.4部(0.2モル)を、30分かけて氷冷のテトラアゾ化溶液に添加する。30%NaOH溶液の添加により、pHを3〜4.5にすることで、次の式の染料が生じる。
【0046】
【化6】

【0047】
この染料を、塩化ナトリウムで塩析することによって単離し、ろ別し、そして低減された圧力下で50℃で乾燥させることができるか、あるいは、一方、この反応混合物を、生成物を単離せずに直接染色に使用できる。これにより、ウール、及び特にポリアミド繊維に対して、非常に良好な光及び湿潤堅牢特性を有する黄色染色物(ラムダ(max)(lmax)=445nm)がもたらされる。
【0048】
例2−29
次の表1は、対応する出発材料を用いることにより、例1で説明した方法と同様に製造できる染料を含む。これらの染料は、ポリアミド繊維及びウールに対して非常に良好な光及び湿潤堅牢性を有する黄色の染色物をもたらす。
【0049】
l max (ラムダ最大)は、nm(ナノメートル;1%酢酸溶液中で測定)で示す。
【0050】
表1:
【表1】




【0051】
使用例A
水2000部、エトキシ化アミノプロピル脂肪酸アミドをベースとして、そして染料との親和性を有する弱いカチオン活性の均染剤1部、製造例1の染料0.25部を含み、そして40%酢酸1〜2部でpH5に調整された40℃の染浴に、ナイロン−6生地100部を入れる。10分後、40℃のその染浴を98℃まで1℃/分の速度で加熱し、そしてそれから45〜60分間沸騰状態で放置する。その後、それを70℃まで15分間かけて冷却する。染色物を浴から取り除き、熱水で、次いで冷水ですすぎ、そして乾燥させる。その結果得られたのは、良好な光堅牢性及び湿潤堅牢性を有する黄色のポリアミド染色物である。
【0052】
使用例B
水2000部、エトキシ化アミノプロピル脂肪酸アミドをベースとして、そして染料との親和性を有する弱いカチオン活性の均染剤1部、製造例1の染料0.3部を含み、そして40%酢酸1〜2部でpH5.5に調整された40℃の染浴に、ナイロン−6,6生地100部を入れる。10分後、40℃のその染浴を120℃まで1.5℃/分の速度で加熱し、そしてそれから15〜25分間この温度で放置する。その後、それを70℃まで25分間かけて冷却する。染色物を浴から取り除き、熱水で、次いで冷水ですすぎ、そして乾燥させる。その結果得られたのは、良好な均染度を有し、そして良好な光堅牢性及び湿潤堅牢性を有する黄色のポリアミド染色物である。
【0053】
使用例C
水4000部、硫酸化エトキシ化脂肪酸アミドをベースとして、そして染料との親和性を有する弱両性の均染剤1部、製造例1の染料0.4部を含み、そして40%酢酸1〜2部でpH5に調整された40℃の染浴に、ウール生地100部を入れる。10分後、40℃のその染浴を沸騰するまで1℃/分の速度で加熱し、そしてそれから40〜60分間その沸騰状態で放置する。その後、それを70℃まで20分間かけて冷却する。染色物を浴から取り除き、熱水で、次いで冷水ですすぎ、そして乾燥させる。その結果得られたのは、良好な光堅牢性及び湿潤堅牢性を有する黄色のウール染色物である。
【0054】
使用例D
織られたナイロン−6材料100部に、次からなる50℃溶液でパッドする(padding)。

かくして、浸漬された材料をロール状に巻き、そして飽和蒸気条件下で、85−98℃で、蒸気チャンバー中に存在(dwell)するよう、3〜6時間、固定のために放置する。この染色物を、次いで熱水で、そして冷水ですすぎ、そして乾燥させる。その結果得られたのは、部分的に(in the piece)良好な均染度を有し、そして良好な光堅牢性及び湿潤堅牢性を有する黄色のナイロン染色物である。
【0055】
使用例E
ナイロン−6からなり、そして合成のベース生地を有するテキスタイルカットパイルシート材料(textile cut pile sheet material)を、1000部当たり次の成分を含む溶液でパッドする。

その後、1000部当たり次の成分を含むペーストで印刷する。

印刷物を6分間、飽和蒸気中100℃で固定し、すすぎ、そして乾燥させる。その結果得られたのは、黄色と白色のパターンを有する、均染に着色されたカバー材料である。
【0056】
使用例F
水2000部、エトキシ化アミノプロピル脂肪酸アミドをベースとし、そして染料との親和性を有する弱いカチオン活性の均染剤1部、製造例1の染料1.5部、国際公開第2002/46318号パンフレット(特許文献1)の製造例8の赤色染料0.2部、
【化7】

及び、国際公開第99/51681号パンフレット(特許文献2)及び欧州特許第1066340B1号明細書(特許文献3)の製造例46の青色染料0.5部、
【化8】

を含む、40%酢酸1〜2部でpH5に調整された40℃の染浴に、織られたナイロン−6,6生地100部を入れる。10分後、40℃のその染浴を98℃まで1℃/分の速度で加熱し、そしてそれから45〜60分間沸騰状態で放置する。その後、それを70℃まで15分間かけて冷却する。染色物を浴から取り除き、熱水で、次いで冷水ですすぎ、そして乾燥させる。その結果得られたのは、良好な光堅牢性及び湿潤堅牢性を有する均染な灰色のポリアミド染色物である。
【0057】
使用例G
クロム−なめしされ、そして人工的に再なめしされたシェーブモイスト銀面革(chrome−tanned and synthetically retanned shave−moist grain leather)100部を、水300部及び製造例1の染料2部の浴中で30分間、55℃で染める。亜硫酸化魚油の60%エマルション4部の添加後、その革を45分間加脂剤で処理する(fatliquored)。その次に、8.5%ギ酸で酸性にし、そして10分間圧延する(milled)(浴中の最終的なpH3.5〜4.0)。その革をそれからすすぎ、絞らずに干して、そして普通に仕上げる。その結果得られたのが、良好な堅牢性を有する均染の透明オレンジの色合いに染められた革である。
【0058】
使用例A〜Gはまた、染料2〜29を用いて同様の結果で行うことができる。
【0059】
使用例H
製造例3の染料3部を、脱イオン水82部及びジエチレングリコール15部中に60℃で溶解する。室温に冷却することによって、紙又はポリアミド及びウールテキスタイルに対してインクジェット印刷に非常に高度に適したオレンジ色の印刷インキが得られる。
【0060】
使用例Hはまた、染料1又は2、及び4〜29を用いて同様の結果で行うことができる。
【0061】
使用例I
水1000部、か焼されたグラウバー塩80部、ニトロベンゼン−3−硫酸ナトリウム1部及び製造例1の染料1部を含む染浴を10分間で80℃に加熱する。その次に、シルケット系コットン(mercerized cotton)100部を加える。その後、80℃で5分間染色を行い、それから15分間で95℃に加熱する。10分間後、95℃で炭酸ナトリウムを加え、次いで20分後に別の炭酸ナトリウム7部、そして30分後にまた別の炭酸ナトリウム10部を95℃で加える。染色を引き続き95℃で60分間継続する。それから染色された材料を染浴から取り除き、そして流れる脱イオン水で3分間すすぐ。その後、一回に沸騰した脱イオン水5000部中で10分間、二回洗浄し、その後60℃で3分間、流れる脱イオン水中で、そして1分間冷たい水道水ですすぐ。乾燥により、良好な堅牢性を有する光沢のある黄色いコットン染色物が得られる。
【0062】
使用例J
製造例1の染料0.2部を熱水100部中に溶解し、そしてその溶液を室温に冷却する。この溶液を、ホランダー(Hollander)中において水2000部中で化学的に漂白した叩解した(beaten)亜硫酸パルプ100部に加える。15分間混合した後、材料を樹脂のり(resin size)及び硫酸アルミニウムでもって慣用的な方法でのり付けする。この材料から製造された紙は、良好な湿潤堅牢性を呈する黄色の色合いを有する。
【0063】
使用例I及びJは、染料2〜29を用いて同様の結果で行うこともできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(I)、
【化1】

(式中、
は、置換されたC〜Cアルキル基又は置換されていないC〜Cアルキル基を示し、
は、H、置換されたC〜Cアルキル基又は置換されていないC〜Cアルキル基、スルホ基、−CO−NH−(C〜Cアルキル)又はCNを示し、
は、H、又は置換されていないC〜Cアルキル基を示し、
は、H、スルホ基、置換されたC〜Cアルキル基又は置換されていないC〜Cアルキル基、置換されたC〜Cアルコキシ基又は置換されていないC〜Cアルコキシ基を示し、
は、H、置換されたC〜Cアルキル基又は置換されていないC〜Cアルキル基、置換されたC〜Cアルコキシ基又は置換されていないC〜Cアルコキシ基を示し、
Bは、式−NH−CO−NH−、−CR−を有する基(式中、
は、H、置換されたC〜Cアルキル基又は置換されていないC〜Cアルキル基を示し、
は、H、置換されたC〜Cアルキル基又は置換されていないC〜Cアルキル基、置換されていないアリール基又は置換されたアリール基を示すか、あるいは、RとRとは一緒になって5員又は6員の環状脂肪族環を形成し、その際、5員又は6員の環はC〜Cアルキル基で置換されているか、又は5員又は6員の環はそれ以上置換されていない。)を示す。)
で表される化合物。
【請求項2】
前記式(I)の化合物が、少なくとも1つのアニオン性置換基を有することを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、置換されていないC〜Cアルキル基を示し、
が、置換されたC〜Cアルキル基又は置換されていないC〜Cアルキル基、スルホ基、−CO−NH−(C〜Cアルキル基)又はCNを示し、
が、置換されていないC〜Cアルキル基を示し、
が、H、スルホ基、置換されていないC〜Cアルキル基、置換されていないC〜Cアルコキシ基を示し、
が、H、置換されていないC〜Cアルキル基、置換されていないC〜Cアルコキシ基を示し、
Bは、式−CR−を有する基(式中、
が、H、置換されたC〜Cアルキル基又は置換されていないC〜Cアルキル基を示し、
が、置換されたC〜Cアルキル基又は置換されていないC〜Cアルキル基、置換されていないアリール基又は置換されたアリール基を示すか、あるいは、RとRとは一緒になって5員又は6員の環状脂肪族環を形成し、その際、5員又は6員の環がC〜Cアルキル基で置換されているか、又は5員又は6員の環がそれ以上置換されていない。)を示す、
ことを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
が、メチル基を示し、
が、−CH−SOH又は−CNを示し、
が、メチル基又はエチル基を示し、
が、H、メチル基、メトキシ基、又はスルホ基を示し、
が、H、メチル基又はメトキシ基を示し、
Bが、式−CR−を有する基(式中、
が、H、メチル基又はエチル基を示し、
が、置換されていないC〜Cアルキル基、置換されていないアリール基又は置換されたアリール基を示すか、あるいは、RとRとは一緒になって6員の環状脂肪族環を形成し、その際、6員の環がそれ以上置換されていない。)を示す、
ことを特徴とする、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
次式(II)で表される化合物における両方のアミン官能基がジアゾ化され、そして全部で二等量のその次の式(III)の化合物に結合されることを特徴とする、請求項1に記載の式(I)の化合物の製造方法。
【化2】

【化3】

(式中、置換基はそれぞれ上記で定義したとおりである。)
【請求項6】
有機基材を染色及び/又は印刷するための請求項1に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項7】
ウール、絹及び/又は合成ポリアミドを染色及び/又は印刷するための請求項1に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項8】
インクジェット法の印刷インキを製造するための請求項1に記載の式(I)の化合物の使用。

【公表番号】特表2011−526636(P2011−526636A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515453(P2011−515453)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058264
【国際公開番号】WO2010/000780
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】