説明

酸素を捕捉する組成物、前記組成物を収容する容器、パッケージおよびクロージャ

容器用のクロージャ(40)に、水素生成組成物としてのマトリクス材料と水素化カルシウムとを組み込む。使用時、クロージャと関連した容器を透過する酸素と反応する水素を生成し、容器と関連された触媒が水素と酸素との反応を触媒して水を生成し、これによって酸素を捕捉する。マトリクスと水素化カルシウムの組成物も権利請求される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸素の捕捉に関し、特に、限定されないが、容器、例えば食品容器または飲料容器内の酸素の捕捉に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)などのポリマーは、繊維、フィルム、三次元構造として幅広く使用できる、汎用的な材料である。ポリマーの特に重要な一用途として、容器向け、特に食品および飲料の容器向けのものがある。この用途は、過去20年間にわたって大幅な発展をみせており、ますます需要が増え続けている。こうした成長にもかかわらず、ポリマーには、その適用範囲を制限する根本的な制約がいくつかある。このような制約のひとつとして、どのポリマーも酸素に対してある程度の透過性を持つことがあげられる。PETなどのポリマーを介して容器の内部まで酸素が浸透できることは、特に、少しでも酸素があると劣化してしまう食品や飲料では重要な問題である。本開示の目的で、透過性とは、小分子がポリマーマトリクスを介して個々のポリマー鎖を通って拡散することを意味し、容器構造にある肉眼または顕微鏡で確認できる穴から運ばれる漏洩とは、区別されるものである。
【0003】
食品および飲料以外に、酸素の影響を受ける他の製品として、多くの医薬品や製剤ならびに、多数の化学物質、さらには電子部品もあげられる。これらの酸素感受性の製品を包装するにあたり、ブランドオーナーらは伝統的にガラスまたは金属の包装材に頼ってきた。さらに最近では、ブランドオーナーらは、酸素に対する受動的バリアおよび/または酸素捕捉剤を組み込んだプラスチックのパッケージで自らの製品を包装しはじめている。通常、酸素捕捉剤を利用すれば成功率が高くなる。ただし、これまでの酸素捕捉材には、多数の問題があった。特に、今まで利用されてきた酸素捕捉剤は、基本的に酸化可能な固体材料をパッケージに組み込むものである。使用される技術としては、鉄の酸化(小袋または容器側壁のいずれかに採用)、亜硫酸水素ナトリウムの酸化または酸化可能なポリマー(特にポリ(ブタジエン)またはm−キシレンジアミンアジプアミド)の酸化があげられる。これらの技術はいずれも、反応速度の遅さ、性能の限界、容器充填時に捕捉反応を開始させる機能の限界、パッケージ側壁での曇りの形成および/または包装材の変色で悩んでいる。これらは、全般的に酸素捕捉剤の使用を制限するものであり、特に透明のプラスチック包装(PETなど)および/またはプラスチックの再利用が重要視される場では大きな課題である。
【0004】
同時係属中の国際公開第2008/090354A1号パンフレットには、容器に組み込まれ、容器内の水分と反応して分子水素を放出するよう構成された活性物質を含む容器が開示されている。この公報は、金属および/または水素化物をはじめとする広範囲にわたる潜在的な活性物質について説明するものである。潜在的な水素化物は、金属水素化物またはホウ化水素などを含む無機物であり、有機物であってもよいと記載されている。また、活性物質は、ポリマー系の水素化ケイ素などのポリマーマトリクスを含み得る。また、上記の公報には、活性物質4〜8wt%という好ましいレベルで活性材料をポリマーマトリクスに埋封してもよいことも記載されている。公報にあげられた具体例は、活性材料として水素化ホウ素ナトリウムを用いることに焦点をあてている。
【0005】
水素化ホウ素ナトリウムを用いることに伴うひとつの問題に、水素の初期生成速度が極めて低くなる可能性があることがあげられる。初期の水素生成は高めの速度でなされて、容器に中身を最初に充填した後で容器内に存在する上部空間の酸素を捕捉すると好ましいため、これは問題となり得る。その後は、この速度を低減し、容器の壁を通り抜けてくる酸素を捕捉すれば十分な場合もある。
【0006】
また、国際公開第2008/090354A号パンフレットに記載された活性物質、特に水素化ホウ素ナトリウムが、食品および飲料の重要な香味成分であるアルデヒドと反応し得ることも見出された。活性物質との反応によってこれらの香味成分の損失が増すと、食品または飲料の香味に悪影響がおよぶことがある−すなわち、香味がスキャルプされ、時間が経過するにつれてこのようなスキャルピングが悪くなる場合がある。また、適切に制限しないと、ホウ素化合物が食品または飲料に混入してしまうこともある。ホウ素化合物に適用される関係法規上の制約を遵守するためには、このような混入を監視する必要がある。さらに、水素化ホウ素ナトリウムなど活性物質によっては、ホウ化水素とポリマーとの反応がゆえに特定のポリマーに組み込むのが困難な場合もあることが見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/090354号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述した問題に対処することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、マトリクス材料と関連した水素化カルシウムを含む水素生成組成物が得られる。
詳細な説明
前記水素化カルシウムは、前記マトリクス材料に埋封されるか好ましくは分散される。前記マトリクス材料は、バルクポリマーでの水分の溶解性に基づいて選択され、水素化カルシウムに対して適切に化学的に不活性なポリマーマトリクス材料を含むものであってもよい。好適なマトリクス材料は、水蒸気透過率が0.2g.mm/m.日を超え、好適には0.4g.mm/m.日を超え、好ましくは0.6g.mm/m.日を超え、一層好ましくは0.8g.mm/m.日を超え、特に1.0g.mm/m.日を超える。前記マトリクス材料は、少なくとも2種類のポリマー材料を含むブレンドを含むものであってもよい。
【0010】
前記組成物のマトリクス材料の水蒸気透過率は、5g.mm/m.日未満、4g.mm/m.日未満または3g.mm/m.日未満であればよい。
前記組成物のマトリクス材料は、好ましくは、有機ポリマーを含む。これは、2種類以上のポリマーのブレンドを含むものであってもよい。これは、好ましくは熱可塑性ポリマー材料を含み、一層好ましくは本質的に熱可塑性ポリマー材料からなる。
【0011】
特に明記しないかぎり、本明細書に記載する水透過率は、ASTM(American Society for Testing Materials Annual Book of Standards)手順E96手順Eを用いて、38℃かつ相対湿度90%で測定される。
【0012】
好適なポリマーマトリクス材料は、ポリオレフィンホモポリマー、ランダムまたはブロックコポリマー(ポリエチレンおよびエチレンコポリマー、ポリプロピレンおよびプロピレンコポリマー、ブチレンコポリマー、エチレン酢酸ビニルポリマーおよびコポリマー、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンコポリマー、ポリスチレンおよびスチレンポリマーおよびコポリマーなど)、ポリエステル、たとえばポリブチレンテレフタレートなどのテレフタレート、ポリウレタン、(メタ)アクリル酸エステルコポリマーおよびナイロン6を含むがこれに限定されるものではない。
【0013】
本明細書に記載の粒度および粒度分布は、Size Measurement of Particles entry of Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第22巻、第4版、(1997) pp. 256〜278(本明細書に援用)に記載された方法によって測定できるものである。たとえば、粒度および粒度分布については、Leeds and Northrop Company製のFisher Subsieve SizerまたはMicrotrac Particle−Size Analyzerを用いて、あるいは走査型電子顕微鏡法または透過電子顕微鏡法などの顕微鏡技術によって判断可能である。
【0014】
前記組成物の水素化カルシウムは、微粉砕された粉末、好ましくはメジアン粒度約0.5μm〜500μm、一層好ましくは約1μm〜300μm、特に約3μm〜200μmの形態であってもよい。[本明細書で使用する場合、d50粒度はメジアン粒径であって、体積の50%が表記のd50より大きい粒子で構成され、体積の50%が表記のd50値より小さい粒子で構成される。本明細書で使用する場合、メジアン粒度がd50粒度と同じである。]
前記組成物の水素化カルシウムからの水素の放出と速度をさらに制御する上で、これは水素化カルシウム粒子の粒度分布に対する有用な制御であり得る。
【0015】
さまざまな粒度分布が有用となり得る。粒度分布とは、本明細書で使用する場合、「スパン(S)」で表され、式中、Sは以下の式で求められる。
【0016】
【数1】

式中、d90は、体積の90%が表記のd90より直径が小さい粒子で構成される粒度の直径を示し、d10は、体積の10%が表記のd10より直径が小さい粒子で構成される粒度を示す。
【0017】
スパンが10未満または5未満または2未満の水素化カルシウム粒子の粒度分布などを用いればよい。あるいは、粒度分布(S)は、15未満、25未満、50未満など、さらに広い範囲であってもよい。
【0018】
前記水素化カルシウムは、水との接触の結果として分子水素を放出すべく構成される前記組成物における一活性物質である。前記水素生成組成物は、水素化カルシウムと、水との接触の結果として分子水素を放出するよう構成された別の活性物質とを含むものであってもよい。前記別の活性物質は、金属であっても水素化物であってもよい。これは、ナトリウム金属、リチウム金属、カリウム金属、水素化ナトリウム、水素化リチウム、水素化カリウム、水素化マグネシウム、水素化ホウ素ナトリウムおよび水素化アルミニウムリチウムから選択できるものである。
【0019】
水素化カルシウムは、好適には、水との接触の結果として分子水素を放出すべく構成される前記水素生成組成物中の全活性物質の少なくとも50wt%、少なくとも60wt%、少なくとも70wt%、少なくとも80wt%または少なくとも90wt%を構成する。好ましくは、水素化カルシウムは、水との接触の結果として分子水素を放出すべく構成される前記組成物の活性物質の95wt%を超え、あるいは98wt%を超える。好ましくは、水素化カルシウムは、水との接触の結果として分子水素を放出すべく構成される前記組成物中の唯一の活性物質である。
【0020】
水との接触時に分子水素を放出すべく構成される前記組成物中の活性物質の合計量は、少なくとも1wt%、好ましくは少なくとも2wt%であってもよい。この組成物は、前記活性物質の70wt%未満を含むものであってもよい。組成物は、前記活性物質の1〜60wt%、好ましくは2〜40wt%、一層好ましくは4〜30wt%を含むものであってもよい。
【0021】
好ましい実施形態では、水との接触時に分子水素を放出すべく構成される前記水素組成物中における活性物質の量の合計が、16wt%を超える、あるいは17wt%を超える。量の合計は、好ましくは50wt%未満、40wt%未満、30wt%未満または25wt%未満である。
【0022】
好ましい実施形態では、前記水素生成組成物が、16wt%を超える、あるいは17wt%を超える水素化カルシウムを含む。前記組成物は、16.5〜40wt%、好適には16.5〜30wt%、好ましくは16.5〜25wt%の水素化カルシウムを含むものであってもよい。
【0023】
前記水素生成組成物は、少なくとも60wt%、好適には少なくとも70wt%、好ましくは少なくとも75wt%のマトリクス材料を含むものであってもよく、マトリクス材料は、上述したような1以上の有機ポリマーを含むものであってもよい。前記組成物は、98wt%未満、95wt%未満、90wt%未満または83.5wt%未満またはそれより少ないマトリクス材料を含むものであってもよい。
【0024】
前記組成物において、水との接触時に分子水素を放出すべく構成されるマトリクス材料および活性物質の量の合計は、好適には、少なくとも85wt%、好ましくは少なくとも90wt%、一層好ましくは少なくとも95wt%、特に少なくとも98wt%である。水素生成組成物中の材料の残りは、分散剤、界面活性剤、安定剤、可塑剤など、マトリクス材料中での水素化カルシウムの化合と効果的な分散を補助する添加剤を含むものであってもよい。また、着色剤(顔料および染料)、潤滑剤、スリップ剤などの他の従来の添加剤が、物性および組成物の性能特性を変更するために水素生成組成物中に含まれていてもよい。
【0025】
前記組成物中でのマトリクス材料および水素化カルシウムの量の合計は、好適には、少なくとも85wt%、好ましくは少なくとも90wt%、一層好ましくは少なくとも95wt%、特に少なくとも98wt%である。
【0026】
前記水素生成組成物において、マトリクス材料のwt%の合計を、水との接触時に分子水素を生成すべく構成される活性物質のwt%の合計で割ったものとして定義される第1の比率は、好ましくは少なくとも2、一層好ましくは少なくとも3、特に少なくとも4である。前記第1の比率は、20未満であってもよい。前記第1の比率は、2〜16、好ましくは3〜12、一層好ましくは3〜8、特に3〜6の範囲であってもよい。
【0027】
前記水素生成組成物において、マトリクス材料のwt%の合計を水素化カルシウムのwt%で割ったものとして定義される第2の比率は、好ましくは少なくとも2、一層好ましくは少なくとも3、特に少なくとも4である。前記第2の比率は、20未満であってもよい。前記第2の比率は、2〜16、好ましくは3〜12、一層好ましくは3〜8、特に3〜6の範囲であってもよい。
【0028】
好ましい実施形態では、前記水素生成組成物は、16.5〜30wt%の水素化カルシウムと、70〜83.5wt%のマトリクス材料とを含む。
場合によっては、前記水素生成組成物は、後述のように分子水素と分子酸素との間の反応を容易にするための触媒を含むものであってもよい。触媒は、マトリクス材料に組み込まれるものであってもよい。
【0029】
第1の態様の組成物は、水素生成成分を生成するのに用いられるペレットまたは顆粒の形態であってもよい。組成物は、シートの形態であってもよい。組成物は、体積が0.1〜5cmの範囲、好適には0.1〜3cmの範囲、好ましくは0.2〜2cmの範囲の成分の形態であってもよい。
【0030】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様による組成物を生成するための方法であって、水素化カルシウムとマトリクス材料とを接触させることを含む、方法が得られる。
水素化カルシウムは、組成物中の微粒子物質の分散性を改善すべく、マトリクス材料との混合前にキャリア媒質にあらかじめ分散可能である。水素化物を不活性キャリアに組み込むことの別の利点として、その反応性が有意に低下することがあげられる。これは、反応性の微粒子が(大気曝露またはそれ以外の形による)水との反応速度を低減する疎水性のキャリア相で囲まれるためである。
【0031】
好適なキャリアは、水素を放出するための水素化物と反応しない乾燥非水性媒質を含み、室温で液体である。例として、乾燥炭化水素ベースの鉱油、シリコーンベースの油、アルキル末端化グリコール(アルキル末端化PEG、PPG、THFなど)があげられる。水素化物を完全に分散させるために、キャリアは、好ましくは、最終的なポリマーマトリクスと完全に相溶である。キャリアは、最終化合物の特性に影響しないよう化合段階で除去可能であるような沸点を持つものであってもよい。キャリアは、化合段階で重合され、ポリマーマトリクスを少なくとも部分的に画定する重合可能なモノマーまたはオリゴマーであってもよい。
【0032】
化合時のマトリクス全体にわたる水素化カルシウムの分散を改善するために、好適な分散剤を用いると都合がよいことがある。好適な分散剤は、効果的に水分を含まないものでなければならず、化合プロセスで水素を放出するための水素化カルシウムと化学的に反応しないものでなければならない。理想的には、分散剤分子は、水素化カルシウム粒子表面と相互作用できるか、これに吸収される部分と、ポリマーマトリクスに可溶な部分とを含有すべきである。分散剤分子は、好適には、化合時に水素化カルシウムと反応して水素を形成可能な化学基を含まず、たとえば、反応性カルボン酸基または反応性O−H結合を含まない分散剤が好ましい。好適な分散剤の例として、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ジアルキル末端化PEGなどの脂肪酸エステルがあげられる。
【0033】
分散剤は、水素生成組成物を生成するよう化合される製剤中に、0〜10wt%の濃度で存在可能である。分散剤は、好適には、一次粒子が確実に得られるように高剪断下でキャリア/微粒子混合物に添加される。
【0034】
水素生成組成物が触媒を含む場合、この方法は、触媒をマトリクス材料に組み込むことを含むものであってもよい。
マトリクスに添加される大量の無機微粒子物質が、マトリクスの物性を変えることがある。無機フィラーは、マトリクスを剛性にして補強するものであり得るが、これが材料の可撓性シート材料を形成する機能に悪影響をおよぼすこともある。したがって、水素生成組成物を生成するために化合された配合物に可塑剤を添加して、生成される水素生成組成物の柔軟性を改善してもよい。可塑剤は、好適には、非反応性であってもよく、OH結合を有する基を含有しない。使用できる一般的な可塑剤の例として、アジペート、フタレート、セバケート、マレエート、ベンゾエート、トリメリテートがあげられる。エポキシ化植物油、ポリブテンまたは他のポリマー可塑剤を用いて、水素化物との有害反応を防止してもよい。
【0035】
この方法は、組成物を、包装容器に組み込むことが可能な形状に押出または成形することを含むものであってもよい。組成物を、クロージャ装置などの包装容器の別の構成要素に成形(圧縮成形など)、スタンプまたはラミネートしてもよい。
【0036】
容器に組み込むための構成要素の作製に使用する前に、第1の態様の水素生成組成物を、水素化カルシウムと早期に反応してしまわないよう水分が制限された環境に保管すると好ましい。よって、第3の態様では、第1の態様による水素生成組成物を含むパッケージであって、組成物中の水素化カルシウムへの水分の移動を制限するよう構成されたパッケージが得られる。
【0037】
パッケージは、不活性ガスまたは不活性ガスと水素ガスとの混合物を含むものであってもよい。あるいは、パッケージは、組成物が配置される本質的に真空を含むものであってもよい。
【0038】
本発明の第4の態様によれば、第1の態様による水素生成組成物を含む水素生成手段を含む容器が得られる。
水素生成手段は、分子水素を容器内に長時間にわたってゆっくりと放出するよう構成されていてもよい。好適な触媒の存在下、分子水素は、容器または容器壁の内側に存在するどの酸素とも反応する。好ましくは、水素放出の速度を調整して、容器に酸素が侵入する速度に合わせる。また、そこでは、最初に比較的短時間で水素を放出し、続いて数か月または数年の期間にわたってゆっくりと継続的に放出しつづけると好ましい。さらに、水素の実質的な放出が、パッケージに中身が充填されているときにのみ高信頼度で開始されると好ましい。最後に、水素を放出する物質が、容器の中身の質を落としたりしないことが好ましい。
【0039】
この容器は、前記分子水素と分子酸素との間の反応を触媒するための触媒を適切に含む。結果として、容器の壁を介して前記容器内に入るものなど前記容器内の分子酸素が、水を副生物として捕捉されることもある。
【0040】
本開示の目的で、容器は、製品を囲み、パッケージの内側と外側との間で小分子を運ぶ意図的な微視的な穴も肉眼で見える穴も含まない、どのようなパッケージも含む。前記容器は、任意に、クロージャを含む。本開示の目的で、触媒は、分子水素と分子酸素との間の反応を触媒または促進する、どのような物質も含む。
【0041】
容器は、ポリマー樹脂の第1の成分と、分子水素と分子酸素との間の反応を触媒できる触媒を含む第2の成分とを含む組成物で構成される側壁を含むものであってもよい。水素生成手段は、好ましくは、容器内または容器の内面付近に存在する。水素生成手段は、好ましくは、前記容器のクロージャ内またはクロージャ上に存在する。
【0042】
水素生成手段、たとえば活性材料を、多岐にわたる方法で容器と関連させることができる。容器がクロージャなどの着脱自在の部分を含む場合、容器を都合よくクロージャと関連させることができる。クロージャは、容器本体に対して着脱自在に固定できるものであるため、たとえばねじ式にすることで取り外して交換可能であり、あるいは、容器本体に接着されるフィルムを含むなどして、取り外しはできるが交換はできないように構成してもよい。後者の場合、クロージャは、本明細書にて後述するように、可撓性の「蓋用」材料を含むフィルムを含むものであってもよい。一実施形態では、容器は、容器用の無菌シールを提供できるフィルムクロージャと、着脱自在に固定可能なクロージャの両方を含むものであってもよく、いずれも独立して水素生成手段を含むものであってもよい。着脱自在に固定可能なクロージャとフィルムクロージャの両方を最初に取り外した後、着脱自在に固定可能なクロージャを交換してもよく、このクロージャで水素を生成して容器の中身の保存期間を改善してもよい。
【0043】
活性物質と水との反応によって水素が生成される場合、ほとんどの酸素感受性食品および飲料に見られるような水分を含む環境に水素生成器が置かれている場合にのみ、実質的な水素生成の開始が生じる。よって、水素生成の開始は通常、容器の充填および/または水素生成器を容器内または容器の内側付近に設けるタイミングと一致する。それ以前における水素生成を防止または最小限に抑えるには、水素生成器と水分との接触を最小限にすれば十分である。分子酸素の排除とは異なり、水分の排除は、水素生成器および/または水素生成器を含む構造を、金属箔、金属化プラスチックまたはポリオレフィンの袋で包装することを含むがこれに限定されるものではない、多数の方法で容易に達成される。たとえば、水素生成手段を有するクロージャを、密封したポリエチレン袋にバルク包装することが、個々のクロージャを容器に配置する前における水素の生成を制限する適切な手段のひとつである。個々のクロージャを容器に配置する前における水素生成器と水分との接触を制限するもうひとつの方法に、クロージャでの包装の内側に1以上の防湿剤を設けることがある。
【0044】
好ましい実施形態で水素生成を開始するための容器内の水分源は、その容器に入った食品または飲料であるが、他の水分源も企図される。たとえば、食品または飲料とは別の水分生成手段を容器と関連させてもよい。このような水分生成手段は、高濃度の水分を適切に含む。これは、容器あるいは乾燥時や別の刺激、加熱、可視光線またはUV光線への曝露、圧力の変化、電磁波、pH、電気、磁場、超音波などに応答して水分を放出する容器内の別の成分(水和塩など)と関連したおよび/またはその一部であるヒドロゲルを含むものであってもよい。
【0045】
ひとたび放出されると、分子水素は容器の内側に急速に分散され、容器壁のあらゆる透過性の部分を透過するため、容器内での水素生成手段の場所は重要ではない。しかしながら、通常は、酸素捕捉に利用できる水素の量を最大限にし、所望の度合いで酸素を捕捉するのに必要な水素生成器の量を最小限にするために、水素生成手段が容器の内側に存在することが望ましい。容器内では、水素生成手段が容器の不透明な部分に存在するのが通常は好ましい。たとえば、透明なPETで作られた飲料容器の場合、容器のクロージャ内に水素生成手段があるのが好ましい。また、通常は、後述されるタイプの制御手段の背後に水素生成器があると好ましい。
【0046】
一実施形態では、水素生成手段が、容器の一部であるフィルムに組み込まれてもよく、容器の中身にアクセスできるよう取り外せる(かつ好適には、交換はできない)ように構成される。フィルムは、ラミネートを含むものであってもよい。これは、たとえばアルミニウム層といった金属層など実質的に酸素不透過性の層を含むものであってもよい。フィルムは、前記水素生成手段を含む水素生成層を含むものであってもよい。水素生成層と容器の中身との間の距離は、好ましくはフィルムの前記不透過性層と容器の中身との間の距離未満である。フィルムは、前記制御手段を画定する層を含むものであってもよく、前記制御手段を画定する層と容器の中身との間の距離は、水素生成層と容器の中身との間の距離未満である。フィルムは、容器本体に接着されて容器を画定する蓋用フォイルであってもよい。
【0047】
生成された水素は容器の壁を透過するため、どの時点でも容器内に存在する水素の量は最小限である。さらに、水素の生成速度が増せば増すほど、その透過も速くなる。よって、(容器保存温度が高まることなどによって)水素生成の速度が大幅に増しても、容器内での水素濃度の上昇はほどほどでおさまる。ポリマーでは酸素透過率より水素透過率のほうがかなり大きいため、容器の上部空間における水素の量は4容量パーセントを超える必要がない場合があり、これは空気中の水素の可燃限界未満である。さらに、食品または飲料に対する水素の溶解性は低い。よって、どの時点でも容器内の水素の大半が容器の上部空間にある。このため、容器内に存在し得る水素の量が極めて少なくなることもある。たとえば、上部空間の体積が30ミリリットルで0.05cc/package−dayのO侵入率の500mlPET飲料容器では、H透過の速度を酸素侵入速度より大きくするには、容器内に約1cc未満の水素が必要である。また、侵入してくる酸素の大半またはすべてと反応させるべく継続的に十分な水素を生成するには、H生成の速度が、わずか約0.1〜0.2cc/日もあれば十分である。
【0048】
高いレベルで酸素を捕捉するのに容器内では少量の水素しか必要ないため、水素が存在する(または失われる)ことによる経時的な容器の膨張と収縮は最小限になる。したがって、この技術は硬質の容器と可撓性の容器の両方に容易に適用可能である。
【0049】
分子水素と分子酸素とを反応しやすくしたければ、触媒が望ましい。多くの遷移金属、金属ホウ化物(ホウ化ニッケルなど)、金属炭化物(炭化チタンなど)、金属窒化物(窒化チタンなど)、遷移金属塩および錯体をはじめとして、水素と酸素との反応を触媒する多数の触媒が周知である。このうち、VIII族の金属が特に有効である。VIII族の金属のうち、パラジウムと白金が、毒性の低さに加えて、副生物をほとんどあるいはまったく形成せずに水素および酸素から水への変換を触媒する上で非常に効率的であるため、特に好ましい。触媒は、好ましくはレドックス触媒である。
【0050】
酸素捕捉反応の効率を最大にするには、酸素との反応が望ましい場所に触媒を設けると好ましい。たとえば、酸素が容器の内側に達する前にその酸素を捕捉する必要のある用途では、パッケージの側壁に触媒を組み込むのが望ましい。逆に、容器内にすでに存在する酸素の捕捉が望ましい場合、通常は触媒を容器の内側付近または内側に設けると好ましい。最後に、両方の機能が望まれるのであれば、触媒を容器の内側と容器壁の両方に設けてもよい。触媒は食品または飲料中に直接分散させてもよいものであるが、通常は触媒をポリマーマトリクスに分散させると好ましい。ポリマーマトリクスに触媒を分散させると、食品または飲料の粗悪化を最小限に抑え、分子水素と食品または飲料の成分との触媒反応を最小限に抑え、食品または飲料容器から触媒を取り出しやすいおよび/または再利用しやすいことを含むがこれに限定されるものではない、いくつかの利点が得られる。
【0051】
本発明が特に優れている利点のひとつに、多数の触媒で極めて高い反応速度を得られるため、非常に少量の触媒しか必要ないことがあげられる。容器には、前記容器の重量(中身の重量は除く)の0.01ppm〜1000ppm、好適には0.01ppm〜100ppm、好ましくは0.1ppm〜10ppm、一層好ましくは少なくとも0.5ppmの触媒を含んでいればよい。好ましい実施形態では、5ppm以下の触媒が含まれる。特に明記しないかぎり、「ppm」という表現は、百万分の一重量部を示す。
【0052】
必要とされる触媒の量が少量ですむため、高価な触媒ですらも経済的なものにできる。さらに、効率的でなければならないのが極めて少量であるため、色や曇り、再利用性などの他の包装特性に対する影響を最小限に抑えられる。たとえば、触媒としてパラジウムを用いる場合、許容できる速度での酸素捕捉を達成するのに、濃度約5ppm未満の微粉砕Pdで十分なこともある。通常、必要な触媒の量は、触媒作用の固有速度、触媒の粒度、容器壁の厚さ、酸素および水素の透過速度、必要な酸素捕捉の度合いに左右され、これらに基づいて決定可能である。
【0053】
触媒の効果を最大にするには、触媒を十分に分散させるのが好ましい。触媒は、均一系であっても不均一系であってもよい。均一系触媒の場合、触媒を分子レベルでポリマーマトリクスに溶解させると好ましい。不均一系触媒の場合、平均触媒粒度を1ミクロン未満にすると好ましく、平均触媒粒度が100ナノメートル未満であれば一層好ましく、平均触媒粒度が10ナノメートル未満であると特に好ましい。不均一系触媒では、触媒粒子は自立状態であってもよいし、炭素、アルミナまたは他の同様の材料などの支持材料に分散されていてもよい。
【0054】
触媒を組み込む方法については重要ではない。好ましい技術では、十分に分散されて活性な触媒が得られる。触媒は、水素源の導入前、導入中あるいは導入後のどの時点でも容器に組み込むことが可能なものである。触媒は、ポリマー形成時または以後のポリマーの溶融加工時にポリマーマトリクスに組み込まれるものである。この場合、溶融加工の前に触媒のスラリーまたは溶液をポリマーペレットに噴霧することで組み込むことが可能である。また、触媒の溶融物、溶液または懸濁液を、事前に溶融させたポリマーに注入して組み込むことも可能である。さらに、触媒のマスターバッチをポリマーで作った上で、このマスターバッチペレットとポリマーペレットとを所望のレベルで混合し、射出成形または押出成形して組み込んでもよい。触媒が容器の内側に存在する容器の場合、触媒を水素生成器のマトリクスに含まれる活性物質と混ぜてもよい。
【0055】
好ましい実施形態では、容器の壁に触媒を組み込む。これを、容器の壁の少なくとも一部を画定するポリマーと、たとえば分散させるなどして関連させておくと好ましい。好ましい実施形態では、触媒を、容器の内壁面積の少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、一層好ましくは少なくとも90%を画定する材料と関連させておく。
【0056】
好ましい実施形態では、任意に容器のクロージャを除外して、実質的に容器の壁面積全体に触媒を分布させる。
本発明で企図される容器は、単層膜であっても多層構造であってもよい。多層構造の場合、任意に1以上の層がバリア層であってもよい。バリア層の組成物に含まれていてもよい材料の非限定的な例として、ポリエチレンコビニルアルコール(EVOH)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(メタキシリレンジアミンアジプアミド)があげられる。単層膜または多層容器のいずれかで層または1以上の層の一部として使用できる他の好適な材料には、ポリエステル(PETを含むがこれに限定されるものではない)、ポリエーテルエステル、ポリエステルアミド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリ尿素、ポリアミドイミド、ポリフェニレンオキシド、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン(ポリプロピレンおよびポリエチレンを含むがこれに限定されるものではない)、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリビニル(ポリ(塩化ビニル)を含むがこれに限定されるものではない)、これらの組み合わせがある。さらに、ガラス質の内側および/または外側コーティング(SiOx、アルミニウム、ALまたは非晶質炭素)もバリア層として明示的に企図される。上述したポリマーはいずれも、どのような望ましい組み合わせであってもよい。これらの材料はすべて、容器のクロージャを含むものであってもよい。場合によっては、容器がガラスを含むものであってもよい。
【0057】
好ましい実施形態では、容器は、PETなどのポリエステルによって画定される壁を含み、好ましくは、そのポリエステルに触媒が分散されている。
本発明で用いられる容器の形状、構造または用途は、重要ではない。通常、容器の大きさまたは形状には制限がない。たとえば、容器は、1ミリリットル未満であってもよいし、1000リットル以上の容量であってもよい。容器は、好ましくは体積が20ml〜100リットルの範囲、一層好ましくは100ml〜5リットルである。同様に、容器の壁の厚さ、容器の可撓性(または捩り剛性)または容器の想定用途にも特定の制限はない。容器は、小袋、ボトル、ジャー、袋、ポーチ、トレー、ペール、たらい、樽、ブリスターパックまたは他の同様の容器を含むがこれに限定されるものではないことが、明確に企図される。さらに、容器は、別の容器の内側に存在するものであってもよく、容器の内側に存在する複数の容器のうちの1つを有するものであってもよい。好ましい実施形態では、容器は、どのような密封可能な容器(プラスチック、ガラス、金属またはハイブリッド構造)であってもよく、密封可能な単層および多層のトレー構造(射出成形または熱成形したもの)、多層の袋またはポーチを含むものであってもよい。
【0058】
前記容器は、腐食されやすい物品の入った容器内の酸素を捕捉することで、物品を腐食から保護するよう構成されていてもよい。この容器は、敏感な電子部品または装置の保護にも使用できる。
【0059】
前記容器は、酸素捕捉をしない状態で、透過率が約6.5×10−7 cm−cm/(m−atm−day)および約1×10cm−cm/(m−atm−day)の1以上のポリマーからなる透過性の壁を含むものであってもよい。
【0060】
通常、水素が水素生成器から放出される時間の長さを、酸素侵入から保護される製品の所望の保存期間と同等もしくはそれより長く調節すると望ましい。水素が放出される時間の長さの調節は、制御手段および/またはポリマーマトリクスの特性を調整して実施可能である。また、水素生成の速度を、酸素侵入速度の2倍に等しく、あるいは2倍より若干長く調節すると望ましい。これは、全体としての反応が2H+O→2HOになるためである。
【0061】
水素生成手段は、長時間、たとえば少なくとも100日間、好ましくは少なくとも180日間、一層好ましくは少なくとも270日間、特に少なくとも365日間にわたって水素を生成するよう適切に構成される。上述した期間を、室温(22℃)および周囲圧力で保管した後に評価してもよい。
【0062】
また、最初は容器内または食品または飲料中に存在する酸素を捕捉すると好ましいこともある。そのためには、水素生成器が最初に高めの速度で水素を放出すると好ましい。このような場合、容器の内側または近辺に触媒が存在すると好ましい。
【0063】
容器は、水分源を適切に含む製品を含むものであってもよい。製品は、人間の消費用のものであってもよいし、食品または飲料であってもよく、特に後者が好ましい。
上述したように、容器は、容器から水素生成手段への水分の移動を制御するための制御手段を含むものであってもよい。
【0064】
前記制御手段は、好ましくは、前記制御手段が存在しない場合の速度と比して前記水素生成手段による水素生成の速度を低減するように水分の移動を適切に制御するよう構成される。この場合、制御手段は、好適には、活性材料が関連される後述のマトリクス材料の特性などの水素生成手段の他の特徴によって規定される速度決定ステップではなく、水素生成手段の活性材料への水分の移動のための速度決定ステップを規定する。
【0065】
上述したような制御手段を設けることで、水素生成手段による水素の生成速度の制御と、容器の包装寿命を左右する水素が生成される時間の調節とを可能にする実質的な柔軟性が導入される。たとえば、長い包装寿命を達成するには、比較的大量の活性材料をマトリクスと関連させればよく、水素生成手段への水分の移動を制御することで、活性材料の消費の速度同様に水素生成の速度が制御される。これとは対照的に、制御手段の非存在下、比較的大量の活性材料がさらに速い速度で水素を生成し、さらに速く消費されることもあり、容器の包装寿命が短めであることを意味する。
【0066】
前記制御手段は、水蒸気透過率が2.0g.mm/m.日未満、好適には1.5g.mm/m.日未満、好ましくは0.8g.mm/m.日未満、一層好ましくは0.4g.mm/m.日未満のポリマー材料などの材料の層を含むものであってもよい。
【0067】
前記制御手段は、ポリオレフィンホモポリマー、ランダムまたはブロックコポリマー(HDPE、PP、LDPEなど)、PET、EVA、SEBSおよびNylon(Nylon−6など)から選択されるポリマー材料の層または複数の層を含むものであってもよい。
【0068】
前記制御手段は、総厚が少なくとも0.010mm、好ましくは少なくとも0.025mm、一層好ましくは少なくとも0.045mmであるポリマー材料などの材料の1以上の層を含むものであってもよい。厚さは、0.5mm、0.2mmまたは0.1mm未満であってもよい。
【0069】
さまざまな手段を用いて、水分の移動を制御するための制御手段を画定してもよい。一実施形態では、前記制御手段は、前記水素生成手段と容器内の水分源との間に適切に位置決めされる、材料(シート材料など)の層を含むものであってもよい。材料の前記層は、好適には、前述のようなポリマー材料を含む。層については、水素生成手段に接着させてもよいし、水素生成手段との同時押出などによって直接的に接触させてもよい。
【0070】
制御手段は、厚さが少なくとも0.010mm、好ましくは少なくとも0.025mm、一層好ましくは少なくとも0.045mmであってもよい。厚さは、0.5mm、0.2mmまたは0.1mm未満であってもよい。
【0071】
制御手段のポリマー材料などの材料は、好適には、水素および水蒸気に対して透過性である。好ましくは、これは容器内に入り込むことのある水素生成手段の副生物に対して不透過性である。
【0072】
本発明の第5の態様によれば、容器用のクロージャであって、第1の態様による水素生成組成物を含む前記クロージャが得られる。クロージャは、本明細書にて上述したような制御手段を含むものであってもよい。
【0073】
本発明の第6の態様によれば、第1の態様の水素生成組成物が組み込まれる容器内で、高速な初期水素生成速度を生むための水素化カルシウムの使用法が得られる。
本明細書に記載したどの発明または実施形態の、いずれの態様のどのような特徴も、変更すべきところは変更して、本明細書に記載した他の発明または実施形態の任意の態様のどのような特徴とでも組み合わせることができる。
特定の実施形態
以下、添付の図面を参照し、一例として本発明の特定の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】プリフォームの横断面図である。
【図2】ボトルの横断面図である。
【図3】クロージャを含むボトルの側面図である。
【図4】クロージャの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下、下記の材料を示す。
エチレン酢酸ビニルコポリマー(15%ビニルアセテート含有量)−DuPontから提供されるElvax 550。
【0076】
低密度ポリエチレン(LDPE)−ExxonMobilから提供されるLD605BA。
スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー−GLS Corporationから提供されるVersaflex HCMT555。
【0077】
Rohm & Hassからの水素化ホウ素ナトリウム(Venpure SF)。
Sigma−Aldrichからの水素化カルシウム(純度99%)。
図1に示すプリフォーム10は、ブロー成形によって図2に示す容器22を形成できるものである。容器22は、口部28を画定する、ねじ山が設けられたネックフィニッシュ26と、ねじ山が設けられたネックフィニッシュの下にあるキャップ用フランジ30と、キャップ用フランジから延在する傾斜部32と、傾斜部の下に延在する本体部34と、容器底部のベース36と、を有するシェル24を含む。容器10は、図3に示すような容器入り飲料38を製造するのに適切に用いられる。容器入り飲料38は、飲料を含む。飲料は、炭酸飲料であっても非炭酸飲料であってもよい。好適な飲料の例として、ソーダ、ビール、ワイン、果汁、茶、水があげられる。特定の一実施形態では、飲料が酸素感受性の飲料である。もうひとつの実施形態では、飲料が、ビタミンC含有果汁、ビタミンCを補った飲料あるいは、少なくとも1種類のジュースにビタミンCを含むジュースの組み合わせなどのビタミンC含有飲料である。この実施形態では、飲料が容器22に入れられて、クロージャ40で容器22の口部28を密封する。
【0078】
図4を参照すると、横断面が円形のクロージャ40は、クロージャをねじ山が設けられたネックフィニッシュ26に螺合するためのねじ切り部44を有する本体42を含む。ねじ切り部44の内側は、水素化カルシウムを組み込む水素生成装置を含むライナ46である。ライナ46はディスク形であり、対応する円形の横断面を有するクロージャの本体42内に摩擦係止されている。よって、ライナ46は、円形の横断面上に重畳され、その全周が本体42の内側部分の周縁壁まで延在してこれと接触するため、ライナが内側部分を効果的に埋めることになる。
【0079】
摩擦係止させる代わりに、ライナを本体42内に締まりばめ式に係止してもよいおよび/または接着剤または他の手段で固定してもよい。接着剤を用いる場合、ライナが本体42の内側部分を埋める必要はない。
【0080】
容器のシェル24は、触媒を含む。触媒は、プリフォーム10を画定するためにパラジウム化合物などの触媒とポリマーマトリクス材料を射出成形することでシェル24を画定する、PETなどのポリマーマトリクスに分散されてもよく、これを後にブロー成形して容器22を画定する。
【0081】
使用時、飲料およびクロージャ40を適切な位置に含む容器22では、容器内の上部空間が水蒸気で飽和する。この蒸気は、ライナ46に入ってライナに関連した水素化カルシウムと接触する。結果として、水素化カルシウムによって分子水素が生成され、これがシェル24のポリマーマトリクスまで移動して、透過性の壁を介して容器内に入っていることのある酸素と組み合わさる。触媒によって触媒されて水素と酸素との反応が起こり、水が生成される。よって、容器に侵入することがある酸素は捕捉され、容器の中身が酸化せずに保護される。捕捉効果は、容器内で水素が生成されるかぎりは維持され、この時間も、特にライナにおける水素化物の量を変えることで制御できるものである。
【0082】
上述したように、水素化カルシウムは、本明細書に記載の水素生成装置に用いられる。以下の実施例は、水素化物を含有する組成物の調製について説明し、水素化カルシウムの特徴と水素化ホウ素ナトリウム(国際公開第2008/090354号パンフレットの焦点である)の特徴とを比較するものである。
【実施例】
【0083】
実施例1〜6は、ポリマー材料を水素化物と化合することについて説明するものである。実施例7は、調製した組成物からのプラックの調製について説明するものである。実施例8は、水素化ホウ素ナトリウムまたは水素化カルシウムを含有する組成物のフレーバ(アセトアルデヒドなど)スキャルピングの可能性を比較するための実験について説明するものである。実施例9は、水素化ホウ素ナトリウムまたは水素化カルシウムを含有する組成物の水素生成特性を比較するための実験について説明するものである。
【0084】
実施例において、水素化ホウ素ナトリウムおよび水素化カルシウムのそれぞれの量は、これらを含有する組成物が、分子量と水素化物の式とを考慮して同じモル量の水素を送達するよう構成されるように選択される。
実施例1
2kgの水素化ホウ素ナトリウムを、ダイフェースカッターを取り付けた24mmのPrism TSE 24HC二軸スクリュー押出機にて、23kgのElvax 550と化合させた。押出機の供給ゾーンを窒素ブランケット下で維持した。供給ゾーンの温度を50℃に設定し、押出機の他の10か所のゾーンは130℃に設定した。化合物をペレット化し、乾燥窒素雰囲気中にて保管した。3mm厚のプラック(6×4cm)を、Boy 22M射出成形機を用いて190℃で、水素化ホウ素ナトリウム化合物から成形した。
実施例2
2kgの水素化ホウ素ナトリウムを、ダイフェースカッターを取り付けた24mmのPrism TSE 24HC二軸スクリュー押出機にて、23kgのVersaflex HCMT555と化合させた。押出機の供給ゾーンを窒素ブランケット下で維持した。供給ゾーンの温度を50℃に設定し、押出機の他の10か所のゾーンは130℃に設定した。化合物をペレット化し、乾燥窒素雰囲気中にて保管した。3mm厚のプラック(6×4cm)を、Boy 22M射出成形機を用いて200℃で、水素化ホウ素ナトリウム化合物から成形した。
実施例3
2kgの水素化ホウ素ナトリウムを、ダイフェースカッターを取り付けた24mmのPrism TSE 24HC二軸スクリュー押出機にて、23kgのLDPE(ExxonMobile LD605BA)と化合させた。押出機の供給ゾーンを窒素ブランケット下で維持した。供給ゾーンの温度を50℃に設定し、押出機の他の10か所のゾーンは140℃に設定した。化合物をペレット化し、乾燥窒素雰囲気中にて保管した。3mm厚のプラック(6×4cm)を、Boy 22M射出成形機を用いて190℃で、水素化ホウ素ナトリウム化合物から成形した。
実施例4
2kgの水素化カルシウムを、ダイフェースカッターを取り付けた24mmのPrism TSE 24HC二軸スクリュー押出機にて、9.1kgのElvax 550と化合させた。押出機の供給ゾーンを窒素ブランケット下で維持した。供給ゾーンの温度を50℃に設定し、押出機の他の10か所のゾーンは130℃に設定した。化合物をペレット化し、乾燥窒素雰囲気中にて保管した。3mm厚のプラック(6×4cm)を、Boy 22M射出成形機を用いて190℃で、水素化カルシウム化合物から成形した。
実施例5
2kgの水素化カルシウムを、ダイフェースカッターを取り付けた24mmのPrism TSE 24HC二軸スクリュー押出機にて、9.1kgのVersaflex HCMT555と化合させた。押出機の供給ゾーンを窒素ブランケット下で維持した。供給ゾーンの温度を50℃に設定し、押出機の他の10か所のゾーンは130℃に設定した。化合物をペレット化し、乾燥窒素雰囲気中にて保管した。3mm厚のプラック(6×4cm)を、Boy 22M射出成形機を用いて200℃で、水素化カルシウム化合物から成形した。
実施例6
2kgの水素化カルシウムを、ダイフェースカッターを取り付けた24mmのPrism TSE 24HC二軸スクリュー押出機にて、9.1kgのLDPE(ExxonMobile LD605BA)と化合させた。押出機の供給ゾーンを窒素ブランケット下で維持した。供給ゾーンの温度を50℃に設定し、押出機の他の10か所のゾーンは190℃に設定した。化合物をペレット化し、乾燥窒素雰囲気中にて保管した。3mm厚のプラック(6×6cm)を、Boy 22M射出成形機を用いて190℃で、水素化カルシウム化合物から成形した。
実施例7
Boy 22M射出成形機を用いて200℃で、SEBS(Versaflex HCMT555)から3mm厚のプラックを成形した。
実施例8
実施例2、3、5、6、7で作成した成形プラックから、26mmのディスクを切り出した。各ディスクを別々の200ml容のガラスボトルに入れた。各ボトルを密封し、ボトル内の雰囲気を、パージによって、25ppmのアセトアルデヒド(AA)を含有するヘリウムと交換した。各ボトルから2mlのガス試料を取り出し、室温にて12日間保管後と21日間保管後にCGで分析した。開始濃度のパーセンテージとして表される各実施例の残りのAA濃度を表1に示す。
【0085】
【表1】

実施例9
実施例1〜6で作成した成形プラックから矩形の細片(約5cm×1.5cm)を切り出した。各試料をグラム単位で小数点以下第2位まで正確に秤量した。逆さまにして水を満たした1リットルのビーカーに入れた100ml容の目盛り付きガラス製ガスビュレットの底部に、各試料を打ち込んだ。3mmの可撓性ポリエチレン管をビュレットの頂部に挿入し、ポリエチレン管の他端に接続した注射器で空気を取り除くことで、ビュレットに試料のすぐ下まで水を満たした。経時的に各管から流れてくる水の量を記録することで、生成される水素を測定した。実施例1〜6での水素ガス発生結果(試料1グラムあたりのガスの量をmlで示す(ml/g))を、表2にあげておく。
【0086】
【表2】

表1を参照すると、実施例2(NaBH/SEBS)の化合物が、10日の保管期間未満の経過日数でボトル内のAA濃度をゼロまで下げるのに対し、SEBS中の水素化物をNaBHからCaH(実施例5)に変更すると、AA消費の低下を有意に遅らせる−21日間の保管後、AAレベルの低下が14%の下限に近づくことに注意されたい。実施例6は、CaH/LDPE化合物に切り替えるとAAの損失がさらに遅れることを示している−21日間の保管後、AAの下限がさらに43%まで増加した。これらの結果から、容器に存在する上部空間にアルデヒド(アセトアルデヒドなど)があると、水素化ホウ素ナトリウム含有組成物によって比較的短時間で反応してなくなってしまう、極めて大きな危険性があることが示される。容器内の生成物が、かなりの量で上部空間にアルデヒドベースのフレーバ成分を生む果汁などである場合、水素化ホウ素ナトリウムとの反応によってこのようなフレーバ成分が徐々に除去されることがあり、それがジュースのフレーバに有害に影響することもある。この潜在的なフレーバスキャルピング作用は、水素化ホウ素ナトリウムの代わりに水素化カルシウム含有組成物を用いるとかなり低くなる。
【0087】
表2を参照すると、これらの結果から、CaH化合物の場合の水素生成速度が類似のNaBH化合物より有意に高いことが明らかに示される。たとえば、CaH/EVA化合物(実施例2)では105ml/gの水素が10日以内に生成されるのに対し、類似のNaBH/EVA化合物(実施例1)では10日後に26ml/gの水素が生成されただけであった。全体として、これらの結果は、水素化カルシウム化合物を適切に選択することで、水素生成の速度の制御範囲を有意に延長できることを示している。たとえば、水素化カルシウムを使用して、極めて急速な初期水素生成速度とすることが可能であり、これを用いて密封容器の上部空間内の酸素を迅速に捕捉し、よって、酸素感受性材料がすぐに分解されるのを阻止することが可能である。
【0088】
また、水素化ホウ素ナトリウムが、エステル結合を有するポリマーなどのいくつかのポリマーと反応可能であることも見出された。これは、このようなポリマー(アクリル酸またはポリエステルポリマーなど)の組成物を水素生成ポリマー組成物として使用できないことを意味する。また、水素化ホウ素ナトリウムを用いる水素生成反応の結果として存在し得るホウ素化合物は、このような化合物が消費者に曝露されることに対する規制上の制約から、ホウ化水素が関連される容器内の飲料と接触しないようにしておく必要がある場合もあるのに対し、水素化カルシウムからの副生物に対するそのような制約は、それほど制限の厳しいものではない。
【0089】
本発明は、上記の実施形態の詳細に制限されるものではない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書、図面を含む)に開示した特徴の新規なもの、あるいは新規な組み合わせあるいは、ここに開示した方法またはプロセスのステップの新規なもの、あるいは新規な組み合わせにもおよぶものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス材料と関連した水素化カルシウムを含む、水素生成組成物。
【請求項2】
前記水素化カルシウムは前記マトリクス材料に分散されており、前記マトリクス材料の水蒸気透過率は0.2g.mm/m.日を超える、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記マトリクス材料は熱可塑性ポリマー材料を含み、前記マトリクス材料の水蒸気透過率は5g.mm/m.日未満である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記水素化カルシウムは、約0.5μm〜500μmのメジアン粒度の粉末を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記水素化カルシウムは、水との接触の結果として分子水素を放出すべく構成される前記水素生成組成物中の全活性物質の少なくとも50wt%を構成する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
水との接触時に分子水素を放出すべく構成される前記水素生成組成物中の活性物質の量の合計が16wt%を超える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
16wt%を超える水素化カルシウムを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
16.5〜40wt%の水素化カルシウムを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも60wt%の有機ポリマーを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
マトリクス材料のwt%の合計を前記組成物中の水素化カルシウムのwt%で割った商が少なくとも2である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
16.5〜30wt%の水素化カルシウムと、70〜83.5wt%のマトリクス材料とを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
ペレットまたは顆粒の形態であるか、シートの形態である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物を生成する方法であって、水素化カルシウムとマトリクス材料とを接触させることを含む、方法。
【請求項14】
前記マトリクス材料との混合前に水素化カルシウムをキャリア媒質にあらかじめ分散させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
包装容器に組み込むことが可能な形状に前記組成物を押出または成形することを含む、請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の水素生成組成物を収容するパッケージであって、前記パッケージは、前記組成物中の水素化カルシウムへの水分の移動を制限するよう構成される、パッケージ。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の水素生成組成物を含む容器。
【請求項18】
前記水素生成手段は前記容器のクロージャと関連される、請求項17に記載の容器。
【請求項19】
前記水素生成手段への水分の移動を制御するための制御手段を含み、前記制御手段は、前記制御手段が存在しない場合の速度に比して前記水素生成手段による水素生成の速度を低減するように水分の移動を制御すべく構成される、請求項17または請求項18に記載の容器。
【請求項20】
前記制御手段は、水蒸気透過率が2.0g.mm/m.日未満である材料の層を含む、請求項19に記載の容器。
【請求項21】
容器用のクロージャであって、請求項1〜12のいずれか1項に記載の水素生成組成物を含むクロージャ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2012−523362(P2012−523362A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504087(P2012−504087)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050607
【国際公開番号】WO2010/116192
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(509166685)カラーマトリックス ホールディングス インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】COLORMATRIX HOLDINGS,INC.
【Fターム(参考)】