重合可能なアルキレングリコール(メタ)アクリレートモノマーから調製されるポリマー粒子
本発明は、水媒体中で10〜90℃の下限臨界共溶温度を示す1つ以上のポリマーである表面処理界面活性剤の存在下で行われる乳化法、拡散法及び蒸着法から選択される方法で得られるポリマー粒子を提供する。前記ポリマーは、重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマーと重合可能なアルキレングリコールメタクリレートモノマーから選択される1つ以上のモノマーの重合生成物である。前記ポリマー粒子は、香味放出用途、芳香放出用途及び生物医学的用途等の放出制御用途において使用することができる。また、本発明は、前記ポリマー粒子を含む細胞支持体マトリックスを提供する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、安定化したポリマー粒子、及び放出制御用途での前記ポリマー粒子の使用に関する。このポリマー粒子は、細胞送達用として使用してもよく、例えば細胞支持体マトリックスとして使用してもよい。この安定したポリマー粒子は、LCSTポリマーを使って調製される。このようなLCSTポリマー(水媒体中で10〜90℃の下限臨界共溶温度(LCST)を示すポリマー)及びその製造プロセスについても述べる。
【0002】
新しい分野である再生医療は、臨床現場での使いやすさを保ちながら細胞を標的部位に送達する能力と細胞増殖を支持する能力を併せ持つ材料に依存している。担体を用いずに体内に細胞懸濁液を直接注射すれば、細胞の生存率が犠牲になると同時に、組織再生の開始条件が悪化し、非効率的である。
【0003】
細胞送達材料は、室温で細胞と配合(formulate)可能であるが、体内に細胞と同時注入した場合は生体内原位置で凝集し、細胞を保護して組織成長を促進する多孔質ゲルを形成することが求められる。
【0004】
熱応答性ポリマー(即ち、熱の刺激に反応して立体構造や相の変化を起こす材料)は、現在では37℃近辺で相転移を起こす多くのポリマーが入手可能なため、組織工学の用途で特に注目されてきた。ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAm)は、このような種類のポリマーとして最も広く研究されてきたが、現在のところ臨床用としてFDAから認可されていない。
【0005】
あるポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキサイド)(PEO−PPO)コポリマーは、水中で逆熱ゲル化挙動を示し、下限臨界共溶温度(LCST)を超える温度まで加熱されると半固体ゲルを形成する。また、ベースポリマーであるPEO及びPPOは生体適合性であるため、医薬業界で使用されている。このような挙動を示す他の材料として、ポリ(カプロラクトン)(PCL)や、ポリ(ラクチド)−(PLA)ブロックコポリマー(例えば、PEO−PCL−PEO)が挙げられる。
【0006】
しかし、このようなポリマーから形成されるゲルは、細胞足場/細胞送達用として使用するには機械的に不安定であるか、又は体内導入時に安定したゲルを形成するために必要な濃度が高すぎて実際の使用には向いていない。
【0007】
このような問題は、Journal of the American Chemical Society、第127巻、16892−16899頁(2005)(Joralemonら)に記載のように、架橋性のコア又はシェルを有するミセル形成ポリマーを調製することによって解決することが試みられている。
【0008】
応答性表面を有する安定した粒子を生成することも可能であるが、その合成は手間がかかり、また、毒物学的に受容可能であるとは見なされないモノマー又は架橋剤を必要とする。例えば、Langmuir 第20巻、10809−10817頁(2004)(Halesら)、Journal of the American Chemical Society 第127巻、7304−7305頁(2005)(Fujiiら)、及びLangmuir 第21巻、3808−3813頁(2005)(Pilonら)を参照されたい。
【0009】
表面における熱応答性ポリマーの自己集合化凝集塊(self−assembling aggregates)は、シリカ及び金粒子から調製した。Macromolecules 第38巻、9813−9820頁(2005)(Zhangら)、及びMacromolecular Chemistry and Physics 第206巻、1941−1946頁(2005)(Kim,D.J.ら)を参照。
【0010】
しかし、今日までのところ、生体適合性熱応答性ポリマーを表面処理して生分解性粒子を形成し、多孔性の細胞−ポリマー複合体ゲルを生成したという報告はなされていない。
本発明では、容易に調製できる新しい表面処理された「スマート」微粒子を提供する。この微粒子は、37℃以下の温度では細胞と共に分散して流動性懸濁液を形成し、体温では細胞増殖を支持する空間充填型ゲルを形成する。このような微粒子は、新規な生体適合性熱応答性ポリマーを含む。このようなポリマーは、粒子調製中に生分解性ポリマー球体の表面に分配されることで、単純な単一工程手順で高度に制御可能なコロイド安定性と生体材料特性を有する微粒子が生成され得るよう設計される。
【0011】
従って、本発明は、新規な生体適合性熱応答性ポリマーの合成にも関与する。具体的には、本発明は、体温より僅かに低い温度では鎖延長され且つ高い水溶性を示すが、37℃では不溶性である、生体適合性両親媒性コポリマーの合成を提供する。上記のような特徴のため、このポリマーは、第一条件下ではコロイド粒子を安定化するが、第二条件下ではコロイド粒子を凝集する機能を有し得る。
【0012】
生分解性ポリマーコア及び特別に設計された熱応答性生体適合性コポリマーコロナを有する表面処理された微粒子を、単純なワンポット手順で製造することができる。これらの粒子は、37℃以下で流動性懸濁液を形成し得るが、37℃を超えるとコポリマーコロナの鎖崩壊により可逆的に多孔性空間充填型ゲルを形成し得る。従って、これらの粒子は、37℃未満で生体材料と混合し、その後体温で安定したカプセル化ゲルを形成し得る。この安定したカプセル化ゲルはそのゲル内で細胞増殖を支持し得る。
【0013】
調製の容易性、スケールアップの可能性、及び制御合成により可能となるコポリマーコロナ層の幅広いバリエーションの組み合わせにより、上記システムは新しいタイプの生物学的送達媒体及び組織成長支持体として期待できる。
【0014】
本発明は、とりわけ、スマート粒子、上記材料の製造プロセス、及び細胞支持体マトリックスとしてのスマート粒子の使用を提供する。
(発明の要旨)
本発明は、第1局面において、水媒体中で10〜90℃の下限臨界共溶温度を示すポリマーの調製方法を提供する。本方法は、重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマー及び重合可能なアルキレングリコールメタクリレートモノマーから選択される1つ以上のモノマーを重合反応のモノマーとして使用することを含む。
【0015】
下限臨界共溶温度は、LCST又は逆溶解温度関係と呼んでもよい。LCSTは、Beckman製DU−640分光光度計内で1.0℃.min-1で加熱することにより決定してもよい。この場合、550nmで吸光度が急激な上昇を開始した温度をLCSTとする。
【0016】
上記方法は、
重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマーと重合可能なアルキレングリコールメタクリレートモノマーから選択される1つ以上のモノマーを提供する工程と、
モノマーの重合を行い、水媒体中の下限臨界共溶温度が10〜90℃のポリマーを生成する工程と、を含む。
【0017】
従って、本発明の進歩性において重要となるのは、水媒体中の下限臨界共溶温度が10〜90℃で変化するようなポリマーを生成するため、重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマーとアルキレングリコールメタクリレートモノマーを、単一で又は様々な組み合わせで使用することである。
【0018】
重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマーと重合可能なアルキレングリコールメタクリレートモノマーは、ジ(エチレングリコール)−アクリレート、オリゴ(エチレングリコール)−アクリレート、ポリ(エチレングリコール)−アクリレート、ジ(エチレングリコール)−メタクリレート、オリゴ(エチレングリコール)−メタクリレート、ポリ(エチレングリコール)−メタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)−アクリレート、及びポリ(プロピレングリコール)−メタクリレートから、単一で又は様々な組み合わせで選択されてもよい。
【0019】
1つの実施形態では、2つのモノマーを組み合わせて使用する。即ち、得られるポリマーはコポリマーである。例えば、上記方法は、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)とポリ(プロピレングリコール)メタクリレート(PPGMA)の重合を含み得る。1つの実施形態では、PEGMAのMnは約475、PPGMAのMnは約430であってもよい。
【0020】
本発明の方法では、ポリマー材料を生成するために任意の重合技術を使用することができる。特に好ましいのは、原子移動ラジカル重合(ATRP)を非限定的に含む、フリーラジカル法及び制御フリーラジカル法である。
【0021】
生成されるポリマー中のモノマー単位の組み合わせを無作為にすること、又は制御することができることで、モノマーの任意の組み合わせで配列特異的ブロックコポリマーが製造される。
【0022】
出発モノマー(特にそのモル質量)の選択及び重合条件を制御して、生成されるポリマーのモル質量を変化させることができる。生成されるポリマーのモル質量は、1〜1000kDa超までの範囲で変化させることができる。好ましくは、生物医学的用途では、ポリマーのモル質量は25〜75kDa、多分散性(Mw/Mn)指数は1〜2.5である。
【0023】
また、本発明は、第2局面において、第1局面の方法により得られる、水媒体中で10〜90℃の下限臨界共溶温度を示すポリマーを提供する。
従って、本発明は、重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマーと重合可能なアルキレングリコールメタクリレートモノマーから選択される1つ以上のモノマーの重合生成物である、水媒体中で10〜90℃の下限臨界共溶温度を示すポリマーを提供する。
【0024】
上記ポリマーは、無作為の、又は制御された、配列特異的ブロックコポリマーであり得る。
上記ポリマーのモル質量は、1〜1000kDa超であり得る。好ましくは、生物医学的用途では、上記ポリマーのモル質量は25〜75kDa、多分散性(Mw/Mn)指数は1〜2.5である。
【0025】
上記ポリマーは、ジ(エチレングリコール)−アクリレート、オリゴ(エチレングリコール)−アクリレート、ポリ(エチレングリコール)−アクリレート、ジ(エチレングリコール)−メタクリレート、オリゴ(エチレングリコール)−メタクリレート、ポリ(エチレングリコール)−メタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)−アクリレート、及びポリ(プロピレングリコール)−メタクリレートから、単一で又は様々な組み合わせで選択される1つ以上のモノマーの重合生成物であってもよい。
【0026】
1つの実施形態では、上記ポリマーは、2つのモノマーの重合生成物、即ちコポリマーである。例えば、上記ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)とポリ(プロピレングリコール)メタクリレート(PPGMA)の重合生成物であってもよい。1つの実施形態では、PEGMAのMnは約475、PPGMAのMnは約430であってもよい。PEGAM−PPGMAコポリマーのMnは約15,500であってもよい。
【0027】
本発明のポリマーは、以下においては、LCSTポリマーと称されてもよい。
上記ポリマーは、適切には、体温直下の温度では鎖延長し高い水溶性を示すが、37℃では不溶性である、生体適合性両親媒性コポリマーである。このように、本ポリマーは、第一条件下ではコロイド粒子を安定化するが第二条件下では粒子を凝集する機能を有し得る。
【0028】
従って、本発明は、第3局面において、乳化法、拡散法及び蒸着法から選択される方法でポリマー粒子を調製する際の表面処理界面活性剤として、第2局面のポリマーを単一で又は組み合わせて使用することを提供する。
【0029】
従って、本発明は、第4局面において、
−第2局面による1つ以上のポリマーを提供すること、及び
−乳化法、拡散法及び蒸着法から選択される方法でポリマー粒子を調製するための反応混合物に、表面処理界面活性剤として上記ポリマーを添加すること、
を含むポリマー粒子調製方法もさらに提供する。
【0030】
また、本発明は、第5局面において、第4局面の方法で得られるポリマー粒子を提供する。
従って、本発明は、第2局面による1つ以上のポリマーである表面処理界面活性剤の存在下で行われる乳化法、拡散法及び蒸着法から選択される方法で得られるポリマー粒子を提供する。
【0031】
本発明は、生分解性ポリマーコアと熱応答性生体適合性コポリマーコロナを有するポリマー粒子を提供する。この場合、本コポリマーは第2局面によるポリマーである。
本発明のポリマー粒子は、任意の有機組成物のバルク相/コアを有し得るが、特に好ましいのはポリ乳酸−コ−グリコール酸(PLGA)又はその成分であるホモポリマー等の生分解性ポリマーである。従って、本発明のポリマー粒子は、ポリ乳酸−コ−グリコール酸、ポリ(乳酸)又はポリグリコール酸のバルク相/コアを有することが好ましい。
【0032】
PLGAを用いた乳化/拡散/蒸着合成手順中にLCSTポリマーを使用することにより、直径が100nm〜100μmの安定したポリマー粒子が形成される。生物医学的用途において最も好ましい直径は、500nm〜5μmである。
【0033】
従って、1つの実施形態では、PLGAのバルク相/コアを有し、且つ第2局面による1つ以上のポリマーである表面処理界面活性剤の存在下で行われる乳化法、拡散法及び蒸着法から選択される方法により得られる、ポリマー粒子が提供される。
【0034】
1つの実施形態では、本発明は、生分解性ポリマーコアと熱応答性生体適合性コポリマーコロナを有するポリマー粒子を提供する。この場合、生分解性ポリマーコアはPLGAであり、コポリマーはPEGMA及びPPGMAの重合生成物である。
【0035】
進歩性において重要となる局面は、水媒体中においてそのLCST以下でバルクポリマー粒子を立体的に安定化するがLCSTを超えると安定性の低下を示すLCSTポリマーの能力である。
【0036】
従って、第5局面によるポリマー粒子は、第2局面のポリマーのLCST以下の温度では安定化するが第2局面のポリマーのLCSTを超える温度では安定性が低下するという点で、驚くべき利点を発揮する。この変化は、LCSTポリマー及びLCSTポリマーの組み合わせとバルクポリマー粒子とを結合/解離する誘因として、利用することができる。
【0037】
本発明は、LCSTポリマーの立体安定性に変化を起こすために温度の変化を利用することについて主に説明されているが、LCSTポリマーのLCSTは、粒子が存在する溶液の他の特性に従って変化し得る。例えば、LCSTは、イオン強度、電界、pH、溶媒組成、及び共溶媒として用いられる任意の薬剤に影響され得る。LCSTポリマーの下限臨界共溶温度を変える要因は様々であり、そのためLCSTポリマーの立体安定性が変化し、さらに第5局面のポリマー粒子の安定性が変化し得る。
【0038】
このように、下限臨界共溶温度に影響する溶媒特性、即ち液体又は液体混合物の溶質溶解能力、の任意の変化を、LCSTポリマー及びLCSTポリマーの組み合わせと粒子とを結合/解離する誘因として、利用することができると考えることができる。
【0039】
従って、本発明は、溶液/懸濁液から可逆的に結合し得るポリマー粒子、及び生物医学分野における前記ポリマー粒子の用途に関する。
本発明の主な用途は、香味/芳香放出等の放出制御、及び特に生物医学分野である。ポリマー粒子バルクは、活性物質を取り込み得る。この活性物質は、生物医学的用途では、従来の薬物送達用の小分子薬剤及び生物薬剤、又は、組織成長、臓器修復及び再生医療のための緩効性成長因子およびその他の可溶性分子であろう。
【0040】
従って、本発明のポリマー粒子は、香味剤、芳香剤、小分子薬剤及び生物薬剤、並びに、組織成長、臓器修復及び再生医療のための緩効性成長因子等の可溶性分子から選択される活性成分を含んでもよい。これらの活性成分は、適切には、ポリマー粒子バルクに取り込まれる。
【0041】
実施された例では、粒子のバルクに取り込まれる活性物質の例として蛍光ラベルが挙げられるが、生物医学的用途では、従来の薬物送達用小分子薬剤及び生物薬剤、又は緩効性成長因子等の組織成長のための可溶性分子が挙げられよう。
【0042】
従って、第6局面において、本発明は、放出制御用途における第5局面のポリマー粒子の使用を提供する。
上記用途は、例えば、香味放出用途、芳香放出用途、及び従来の薬物送達用途等の生物医学的用途から選択されてもよい。詳細には、上記用途は、従来の薬物送達用の小分子薬剤又は生物薬剤の放出、あるいは、組織成長、臓器修復及び再生医療のための緩効性成長因子等の可溶性分子の放出に関与してもよい。
【0043】
粒子は、37℃以下の温度では細胞又は他の生体材料と共に分散して流動性懸濁液を形成し、体温では細胞増殖を支持する空間充填型ゲルを形成してもよい。
従って、第7局面において、本発明は、第5局面のポリマー粒子と細胞等の生体材料を含む生成物を提供する。
【0044】
このような生成物は、第2局面のポリマーの下限臨界共溶温度以下では分散物となる。従って、最初は流動性懸濁液として提供されてもよい。
かかる生成物を用いて、第2局面のポリマーの下限臨界共溶温度を超えた場合には細胞等の生体材料をカプセル化することができる。前記生成物は、かかる温度では、細胞等の生体材料の成長を支持する空間充填型ゲルを形成する。
【0045】
好ましくは、第2局面のポリマーの下限臨界共溶温度は、体温直下の温度である。そうすれば、生成物は、室温では分散物となり、体温ではゲルとなる。
本質的に、粒子とともに細胞が提供される場合、粒子は細胞増殖中に細胞のための多孔性繭(cocoon)を形成し得る。これにより、細胞と細胞の接触を促進し組織生成の拡大を助長し得るマトリックス構造が生成される。
【0046】
従って、本発明のポリマー粒子は、コロイド性細胞送達システムと見なすことができる。
また、本発明は、第8局面において、細胞支持体マトリックスとしての第5局面のポリマー粒子の使用を提供する。
【0047】
また、本発明は、第9局面において、第5局面のポリマー粒子を含む細胞支持体マトリックスを提供する。
また、本発明は、第10局面において、37℃以下の温度で(i)細胞と(ii)第5局面のポリマー粒子を含む流動性懸濁液を提供する。
【0048】
また、本発明は、第11局面において、体温で(i)細胞と(ii)第5局面のポリマー粒子を含む細胞増殖を支持する空間充填型ゲルを提供する。
また、本発明は、37℃以下の温度では細胞と共に分散して流動性懸濁液を形成し、体温では細胞増殖を支持する空間充填型ゲルを形成する微粒子を調製するために、第2局面のポリマーを単一で又は組み合わせて使用することを提供する。
【0049】
また、本発明は、粒子調製中に生分解性ポリマー球体の表面に分配するために、第2局面のポリマーを単一で又は組み合わせて使用することを提供する。従って、高度に制御可能なコロイド安定性及び生体材料特性を有する微粒子が生成される。
【0050】
図1は、本発明の概念を例示している。
図1の(a)は、微粒子の立体安定化の基礎をなす概念を示している。即ち、水和PEGMA−コ−PPGMAコロナの鎖延長により、粒子間引力が支配的になることが回避される。図1の(b)では、LCSTを超えた温度では、PEGMA−コ−PPGMA層は崩壊してコロイド安定性が減少し、粒子間の引力相互作用により凝集している様子がわかる。
【0051】
LCST以下での粒子と細胞の分散物への本概念の拡張が図1の(c)に示されている。LCSTを超えると、図1の(d)に示されているように細胞のカプセル化が生じる。
本発明において、調製が簡単で、十分に制御された熱応答性挙動を示し、且つ生体適合性及び生分解性を有する、表面処理されたスマート粒子が提供される。このような材料により、細胞送達及び組織工学の用途で数多くの可能性が提供される。
【0052】
例えば、最初の重合でコモノマーを改質することによりLCSTポリマーの界面化学を制御して、本質的に生物模倣型の機能及び反応を追加することが可能となるであろう。これには、PLGA分解の調節を助ける酸塩基反応、又は細胞外マトリックスの重要な特徴を模倣する生体接着機能が含まれるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】コロイド性の細胞送達システムとして機能し得る本発明のポリマー粒子の概略図である。
【図2】熱応答性生分解性微粒子である本発明のポリマー粒子の合成及び特性を例示している。
【図3】本発明のポリマー粒子から形成されたコロイド性懸濁液及び熱可逆性ゲルの構造・プローブ分析(texture probe analysis)を示している。
【図4】本発明のポリマー粒子による生体内原位置での細胞のカプセル化、及び本発明のポリマー粒子からの組織足場の形成を示している。
【図5】本発明のLCSTポリマーであるコポリマーPEGMA−コ−PPGMA(25/75)のH NMRスペクトルを示している。
【図6】本発明によるPLGA微粒子の典型的な粒径を示している。
【図7】一軸圧縮試験に使用される装置を示している。
【図8】Aは本発明のポリマー粒子のマイクロCT回転スキャン、Bは本発明のポリマー粒子のマイクロCT再構成スキャンを示している。
【図9】様々な環境での本発明のLCSTポリマーの特徴を示している。
【図10】本発明のLCSTポリマーであるコポリマーPEGMA−PPGMA(25/75)水溶液について、DLSによって観察された相転移を示している。
【図11】本発明によるPLGA微粒子の20〜45℃のレオロジー・データを示している。
【発明を実施するための形態】
【0054】
〔発明の詳細な説明〕
本発明の実施例は、以下のように調製された。
<材料>
使用材料は以下の通りであった。
−PLGA(モル比75/25のラクチド/グリコリド、分子量Mn=12,000、PDI=1.50)をアストラゼネカ(AstraZeneca)社から購入し、供給されている通りに使用した。
−ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA、Mn=475、Aldrich社製)とポリ(プロピレングリコール)メタクリレート(PPGMA、Mn=430、Aldrich社製)の共重合により、後述するように、ポリマー(界面活性剤−コポリマー又はLCSTポリマー)PEGMA−コ−PPGMA(PEGMA/PPGMA=25:75、分子量Mn=15,500、PDI=1.61)を調製した。
−酢酸エチル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)及び1−ドデカンチオールは、Aldrich社製の分析グレードのものであり、供給されている通りに使用した。
−臭化銅(I)(Aldrich社製、98%)及び塩化銅(I)(Acros社製、95%)は、いかなる可溶性の酸化種も除去するため、氷酢酸で洗浄し、濾過し、エタノールで洗浄し、乾燥した。
【0055】
<方法>
1.LCSTコポリマー:PEGMA−コ−PPGMAの調製
a)従来のフリーラジカル重合
三方活栓に取り付けた丸底フラスコに、脱酸素ブタノン(deoxygenated butanone)(30ml)中AIBN(0.957g、6.1ミリモル)、PEGMA(5.532g、11.6ミリモル)、PPGMA(15g、34.9ミリモル)及び1−ドデカンチオール(0.38g、1.86ミリモル)を添加した。得られた溶液を内容物が完全に溶解するまで10分間撹拌し、それから凍結融解サイクル(×3)とその後の窒素パージにより内容物から酸素を除去した。フラスコを油浴に浸漬し、70℃で8時間、重合を行った。得られた溶液をアセトンで希釈し、大過剰のヘキサン中に沈殿させた。上部溶媒層を除去した後、沈殿したポリマーを真空中で乾燥し、残留溶媒を取り除いた。それから、ポリマーを脱イオン水中に溶解し、引き続いて新鮮な脱イオン水に対する透析(分画分子量:6000)で精製した。最後に、エタノールを使った共沸蒸留で水を除去し、両親媒性コポリマーが残った。
b)原子移動ラジカル重合
三方活栓に取り付けた丸底フラスコに、CuBr(64.5mg、0.448ミリモル)、ビピリジン(139mg、0.891ミリモル)を添加し、その後窒素ライン又は真空ポンプのいずれかに接続した。真空−窒素サイクルを繰り返して酸素を除去した。フラスコが窒素で満たされたら、脱気したPEGMA(5.532g、11.6ミリモル)、PPGMA(15g、34.9ミリモル)及びブタノン(30ml)を充填した。室温で1時間撹拌した後、ブタノン(0.42M)中メチル 2−ブロモプロピオネート溶液(1.1mL)を加え、所望の温度(典型的には60℃)で10時間重合を行った。重合の後、得られた溶液をアセトンで希釈し、シリカカラムを通過させて銅触媒を除去し、大過剰のヘキサン中に沈殿させた。上述のように、再沈殿及び透析の後、凍結乾燥を行い、さらに精製した。
2.ダンシル−コポリマーPEGMA−コ−PPGMAの調製
1gのPEGMA−コ−PPGMA(Mn=15,500)をTHF(15ml)中に溶解した。得られた溶液に、トリエチルアミン(0.0139g、0.137ミリモル)及び塩化ダンシル(0.037g、0.137ミリモル)を加えた。その後室温で一晩、暗所で撹拌しながら反応させた。反応溶液を濾過し、その後激しく撹拌しながらヘキサン中に滴加した。その後得られた溶液を30分間静置し、沈殿したポリマーのサンプルを収集した。3回沈殿させてポリマーを精製し、最後に真空オーブン中で、室温で乾燥した。
3.コポリマーPEGMA−コ−PPGMAでコーティングされたPLGA微粒子の調製
乳化−蒸着−拡散法(図2に例示)によりPLGA微粒子を調製した。典型的には、PLGA(200mg)を酢酸エチル(5mL)中で溶解し、水中コポリマーPEGMA−コ−PPGMA溶液(10mL、2mg.mL-1)に加えた。得られた乳化液を11000rpmで45秒間均質化し、第2のPEGMA−コ−PPGMA溶液(15ml、2mg.mL-1)に加え、さらに1100rpmで45秒間均質化を行った。真空中で粒子コアから有機溶媒を除去した。遠心分離(2500rpm)で水相から微粒子を分離し、凍結乾燥の前に水中で再懸濁した。
<分析技術の説明>
i.下限臨界共溶温度(LCST)の決定
PBS中PEGMA−コ−PPGMAポリマー溶液(pH7.4、3mg.mL-1)をBeckman製DU−640分光光度計内にて1.0℃.min-1で加熱した。550nmで吸光度が急激に増加し始める温度を、コポリマーシステムのLCSTと見なした。
ii.ゲル浸透クロマトグラフィー
三重検出のゲル浸透クロマトグラフィー(PL−120及びPL−50、Polymer Labs製)で、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び多分散性(Mw/Mn)を得た。カラム(30cm PLgel Mixed−C、直列で2本)をTHFとともに溶出し、ポリスチレン標準で較正した。較正及び分析は全て40℃及び流量1mL/minで行った。このような条件下では、全ての生成物は完全にTHF中に溶解し、背圧をほとんど又は全く観察することなく注入前に0.2μmフィルターを通過した。
iii.粒径の測定
Malvern Zetasizer Nano及びCoulter LS 230(Beckman Coulter製)の装置を使って、ミセル及び微粒子の粒径と分布を測定した。動的光散乱実験では、DI水(脱イオン水)中でPEGMA−コ−PPGMA溶液(1mg.mL-1)を調製し、測定前に0.45umの使い捨てフィルター(PTPE Acrodisc CR)を使って12.5×12.5mmポリスチレン使い捨てキュベット中で濾過した。Coulter LS230を用いた微粒子の粒径の測定では、不透明値(obscuration value)8%〜12%で、サンプルをDI水中で再懸濁した。
iv.一軸圧縮試験
テクスチャーアナライザー(TA HDPlus、Stable Micro Systems製)を使って周囲条件で一軸圧縮試験を行った。注射器ノズル(1mlのBD Plastipak(登録商標))を介して2mm/secで注入性(Injectability)を決定した。直径4.5mmの注射筒内でゲルが形成された後、37℃で30分間、足場の圧縮強度(湿潤時及び乾燥時)を0.01mm/secで決定した。
【0056】
図7は一軸圧縮試験で使用した装置を示している。
v.走査電子顕微鏡法
JEOL製JSM−6060LVの機器を使って、走査電子顕微鏡写真を記録した。ポリマー微粒子を白金製スタブ(stubs)上に置き、4分間スパッタリングでコーティングした。この際、複雑な回転惑星(planetary)運動により、不規則な表面を均一にコーティングすることができる。
vi.細胞培養
37℃及び5%CO2の加湿したインキュベーター内にて、10%ウシ胎仔血清(FBS)、1%グルタミン及び2.5mg/mLアンホテリシンB(抗生物質/抗カビ剤溶液)を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で、細胞株C2C12から細胞を培養した。2〜3日おきにPBS中0.25%トリプシン/0.02%EDTAを用いて細胞を継代培養し、使用前に再び種をまいた。顕微鏡実験では、PLGA微粒子をEppendorf製バイアル管に入れ、2時間紫外線で殺菌した。C2C12細胞をトリプシン処理し、DMEM中で再懸濁し、その後蛍光染料(C34551、Cell Tracker Orange CMRA)を含むDMEM中で45分間遠心分離及び再懸濁を行った。それから、標識細胞を遠心分離し、ハンクス緩衝液(HBSS)に加えた。約500000細胞(0.25mlのHBSS緩衝液中)をPLGA微粒子(150mg)と混合した。得られた混合物を6ウェルの非組織培養プレート内にて37℃で30分間培養して足場を形成し、続いてDMEMを追加してさらに培養した。細胞を無菌PBSで洗浄して6ウェルの新しい非組織培養プレートに移した後、蛍光画像を得た。アラマーブルー(AlamarBlue)アッセイ(Biosource Europe社製)を用いて細胞生存率を評価した。
【0057】
<分析>
A.PEGMAとPPGMAのコポリマーの特徴
上述の方法により様々なモノマー比率のポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)とポリ(プロピレングリコール)メタクリレート(PPGMA)の重合によって合成された新しい生体適合性応答性ポリマーを表1に示している。
【0058】
【表1】
【0059】
従来のフリーラジカル重合(FRP)と原子移動ラジカル重合(ATRP)の両方の経路を用いて、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で下限臨界共溶温度(LCSTs)を示す、くし状コポリマーを生成することができる。
【0060】
体温でLCSTを示すポリマーに関心が持たれている。37℃近辺のLCSTにおいて、様々なモル質量及び多分散性のPEGMA25−PPGMA75コポリマーの調製に成功した。
【0061】
ATRP経路での開始剤:モノマーの比率及び連鎖移動剤(CTA):モノマーの比率を制御することにより、モル質量の制御が可能である。一方、コモノマー比率により、幅広い温度範囲内でLCSTを調整することが可能である。
【0062】
コポリマーPEGMA−コ−PPGMA(25/75)について1HNMRを実施し、そのスペクトルを図5に示している。
(モノマー成分が同じであるコポリマーを用いて、)分子量がポリマーのLCSTに与える効果を評価した。その結果を図9のAに示している。図9のBは、コポリマーPEGMA−コ−PPGMAの加熱時と冷却時のLCSTを示している。図9のCは、pHがコポリマーのLCSTに与える効果を示している。図9のDは、NaCl濃度がLCSTに与える効果を示している。全ての図において、PEGMA−コ−PPGMA(25/75)を使用し、コポリマーの濃度は各ケースで3mg/mlであった。
【0063】
図2の(iii)に、PEGMAxPPGMAyコポリマーのコイルから小球への相転移を光散乱の上昇によって示している。この合成ポリマーの相転移は急激に起こっていることがわかる。
【0064】
疎水性のPPGMAモノマーに対する親水性のPEGMA成分の比率が高まると、予想通りLCSTが上昇した(表1及び図2の(iii)参照)。しかし、そして本用途で重要なのは、所定のPEGMA:PPGMAモル比のLCSTが、幅広いモル質量範囲で同様であったことである。
【0065】
図2の(iv)は、LCSTポリマーのゾル−ゲル転移を示している。LCST以下では、低〜中程度のモル質量(<30kDa)のPEGMA25PPGMA75コポリマーで低粘度溶液を形成した。このようなポリマーはLCSTを超えると溶液から沈殿した。
【0066】
PEGMA25PPGMA75のモル質量を160kDaまで増加すると、LCSTを超える水中で安定したゲルが得られた。LCST以下のサンプルは左側、LCST超のサンプルは右側である。
【0067】
動的光散乱で示されているように、水中約1mg.mL-1の濃度で、PEGMA25PPGMA75ポリマーはミセルを形成した。この際、温度がLCST(約35℃)以下からLCST超に上昇するのに伴い、流体力学的半径はそれぞれ約100nmから350nmに変化した。
【0068】
図10は、コポリマーPEGMA−PPGMA(25/75)水溶液(1mg/ml)についてDLSで測定した、温度(x軸、℃)と流体力学的半径Rh(y軸)の相関関係のプロットを示している。
B.熱応答性生分解性微粒子の合成及び特性
図2の(i)にはモノマーPEGMA及びPPGMAが示されている。これらのモノマーは、フリーラジカル又は制御ラジカル(ATRP)の技術で共重合され、図2の(ii)に示すようなくし状コポリマーが生成される。
【0069】
表面処理されたスマート粒子の調製を図2の(v〜viii)に示している。PEGMA−PPGMAコポリマーにより安定化されたポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)粒子の調製を、乳化/拡散/蒸着法により行った。具体的には、図2の(v)に示すように、酢酸エチル中PLGA溶液を水中PEGMA−コ−PPGMAポリマーに加えて撹拌し、乳濁液を生成する。図2の(vi)に示すように、両親媒性コポリマーは、激しく撹拌している間PLGAを含む溶媒の小滴を安定化する。図2の(vii)に示すように、この有機相から溶媒を蒸着することにより、PEGMA−コPPGMAでコーティングされたPLGA粒子が残る。図2の(viii)に示すように、これらの粒子は遠心分離により回収され、水中で再懸濁される。
【0070】
PEGMA−コ−PPGMA層の表面応答の概略を図2の(ix)及び図2の(x)に示している。得られた微粒子の直径は2〜4μmであり、応答性LCSTポリマーの表面「コロナ」が存在することがわかる。
【0071】
これらの粒子は、水及びPBS中では安定した分散物を形成したが、光散乱で示されるように低濃度では沈殿した。図2の(xi)は、粒子がLCSTを超えると沈殿する時に生じる光散乱の減少を示している。
【0072】
これらの粒子は、高濃度中に存在するときは、水和した自立型(free−standing)ゲルを形成した。LCSTより高い温度への温度変化に伴って、粒子の流動性懸濁液(左)から空間充填型ゲル(右)が形成される様子が、図2の(xii)に示されている。
【0073】
走査電子顕微鏡法(SEM)により、粒子の形態を確認した。粒子のSEM分析結果を図2の(xiii)に示している。これは、低多分散性の球状粒子を示している。
PLGAコア内の疎水性が「有効」であることを示すナイルレッド(NileRed)のカプセル化は、PLGA成分の検出を容易にした。また、顕微鏡の選択フィルターは、カプセル化された染料と表面封入PEGMA−PPGMA層の両方の存在を示した。
【0074】
図2の(xiv)に示すように、コーティングされた粒子の多層構造は、PLGAコア内のカプセル化されたナイルレッドとともに、蛍光顕微鏡検査法(テキサスレッド(Texas Red)発光フィルター)によって確認された。
【0075】
ダンシル標識PEGMA−PPGMAコポリマーの使用により、蛍光顕微鏡検査法で表面コロナを検出することができた。ダンシル標識PEGMA−コ−PPGMAは、図2の(xv)(DAPI発光フィルター)に示された表面のコーティングが、図2の(xvi)(テキサスレッド発光フィルター)に示されたPLGAコア内のカプセル化されたナイルレッドと共局在化していることを明らかにした。
【0076】
図6は、本発明のPLGA微粒子の典型的な粒径を示している。
図11は、20℃〜45℃でのPLGA微粒子(PLGA微粒子の濃度、25% w/v)のレオロジー・データを示している。
【0077】
PEGMA−コ−PPGMA:PLGA比を変化させることにより粒径を制御することができた。即ち、PLGAに対するPEGMA−コ−PPGMAの比率を高めることにより、ビーズを小さくし、且つ多分散性を低くすることができた。典型的な調製では、PLGA:PEGMA−PPGMA比(w/w)を2:1とし、直径2.4μmの粒子を得た。変動係数は63%で、直径が<5μmの粒子は>90%であった。PLGA:PEGMA−PPGMA比が0.4:1でも同様の粒径が得られるであろうが、PLGA:PEGMA−コ−PPGMA比が4:1を超えると粒径が6μmを超え、その結果凝集が生じる。
【0078】
粒子のコロイド安定性はPEGMA−コ−PPGMAコーティングの水和殻によって決まり、モル質量によって変化する。
従って、モル質量の高いポリマーは、図1に示すように、立体遮へい層のさらなる拡張により、大きな粒子のコロイド安定性を維持することができる。
C.コロイド性懸濁液及び熱可逆性ゲルの注入性及び機械的特性
ポリマー粒子から形成されたコロイド性懸濁液及び熱可逆性ゲルの注入性及び機械的特性を、テクスチャーアナライザーを使って調査した(図3)。
【0079】
粒子の懸濁液(PBS中60%w/v)を注入するために必要な力は、緩衝液及び注射筒の動きと比べるとほんの僅かに異なることが示されている。このことは、図3のaに示されている。上のラインは粒子懸濁液、真ん中のラインは注射筒の動き、及び下のラインは緩衝液である。
【0080】
本グラフは、空の注射器の出口が1.6mmのテーパ型ノズルを介した注入のピーク力を、緩衝液及び60%w/wの足場用固体懸濁液と比較して示している。空の注射器は、1.17±0.15Nのピーク力を、また緩衝液の場合は1.125±0.18N、粒子懸濁液の場合は2±0.03Nのピーク力を必要とする。分散物のピーク注入力は、ピストンの手動操作における許容範囲内に十分おさまっている。60%w/w固体懸濁液の結果の繰返し精度は、臨床医が必要とする時間尺度の範囲内に十分おさまっていることを示している。
【0081】
図3のbでは、湿潤時及び乾燥時の凝集粒子の力−距離曲線は、高い強度のゲルを示している。
37℃で30分間培養した後の湿潤時及び乾燥時のゲル強度を比較した結果、それぞれ17N及び19Nと同様の数値を示した。これは、構造形成が、短い培養期間内に生じていることを示すものである。
D.細胞の生体内原位置でのカプセル化及び組織足場の形成
方法の項目3で上述した乳化/拡散/蒸着法により調製された、本発明による表面処理された微粒子を、モデル細胞株であるC2C12筋芽細胞と混合し、PEGMA25PPGMA75のLCST以下で流動性懸濁液を形成した。
【0082】
室温で粒子とともに細胞を分散させた後、37℃で細胞のカプセル化が生じ、安定したゲルが得られた。図4のaは、培養培地内で懸濁された前記ゲルを示している。従って、ポリマー粒子のみに関して、37℃(即ち、LCSTポリマーの下限臨界共溶温度より高い温度)でポリマー粒子と細胞の混合懸濁液を培養することにより、ゲルが生成された。
【0083】
DMEMでの1週間の培養後のゲルの顕微鏡写真が図4のb及び4のcに示されている。これらのSEM画像では、ゲルの多孔性が明らかである。このことは、マイクロコンピューター断層撮影法(μCT)からも明らかである。
【0084】
図8は、PLGA微粒子から形成されたゲルのμCT画像を示している。図8のAはμCT回転スキャン画像、図8のBは3D再構成画像を示している。これらの画像は、細胞のカプセル化及び乾燥後のマクロ孔及び空洞を示している。
【0085】
Cell Tracker(登録商標)標識を使って、多孔性マトリックス内の細胞を視覚化した。蛍光顕微鏡検査法により、非組織培養プラスチックでの対照実験(図4のd)と比べて、ゲル全体に細胞が均一に分布している様子が示された。PEGMA−PPGMAでコーティングされたPLGAゲル切片内でこのようにC2C12細胞をCell Tracker(登録商標)で染色することにより、ゲル内の細胞生存率が高まったことが示される。
【0086】
Live/Dead(登録商標)染色剤を使用することにより、ゲル深部での細胞生存率が示された(図4のe)。Live/Dead(登録商標)染色剤を含む標識C2C12細胞は蛍光グリーンを示し、マトリックス粒子はレッドに染色している。
【0087】
アラマーブルー(Alamar Blue)アッセイにより、生存率及び代謝率を評価した。得られたデータが示すように、生体内原位置での熱ゲル化過程による細胞のカプセル化は、24時間後に生存率を完全に維持したまま生じ、またこれらの細胞はこの時点で依然として成長を続けていた。アラマーブルー(Alamar Blue)アッセイのデータは図4のfに示されている。これは、非組織培養プラスチック上のC2C12細胞(ブランク)と比較して、ゲルマトリックス内及びゲルマトリックス上の細胞の生存率は同様であることを確認している。対照サンプルは、PEGMA−PPGMAでコーティングされたPLGAゲルのみからの蛍光である。
【0088】
顕著には、ゲル内におけるC2C12細胞の全体的な生存率は、事前に形成されたPEGMA−コ−PPGMA−PLGAマトリックスの表面に付着させた同じ細胞と同様に高かった。従って、初期期間を通して栄養分の浸入を防ぐバリアは存在せず、細胞増殖は支持体内で起こり得ることを示している。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、安定化したポリマー粒子、及び放出制御用途での前記ポリマー粒子の使用に関する。このポリマー粒子は、細胞送達用として使用してもよく、例えば細胞支持体マトリックスとして使用してもよい。この安定したポリマー粒子は、LCSTポリマーを使って調製される。このようなLCSTポリマー(水媒体中で10〜90℃の下限臨界共溶温度(LCST)を示すポリマー)及びその製造プロセスについても述べる。
【0002】
新しい分野である再生医療は、臨床現場での使いやすさを保ちながら細胞を標的部位に送達する能力と細胞増殖を支持する能力を併せ持つ材料に依存している。担体を用いずに体内に細胞懸濁液を直接注射すれば、細胞の生存率が犠牲になると同時に、組織再生の開始条件が悪化し、非効率的である。
【0003】
細胞送達材料は、室温で細胞と配合(formulate)可能であるが、体内に細胞と同時注入した場合は生体内原位置で凝集し、細胞を保護して組織成長を促進する多孔質ゲルを形成することが求められる。
【0004】
熱応答性ポリマー(即ち、熱の刺激に反応して立体構造や相の変化を起こす材料)は、現在では37℃近辺で相転移を起こす多くのポリマーが入手可能なため、組織工学の用途で特に注目されてきた。ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAm)は、このような種類のポリマーとして最も広く研究されてきたが、現在のところ臨床用としてFDAから認可されていない。
【0005】
あるポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキサイド)(PEO−PPO)コポリマーは、水中で逆熱ゲル化挙動を示し、下限臨界共溶温度(LCST)を超える温度まで加熱されると半固体ゲルを形成する。また、ベースポリマーであるPEO及びPPOは生体適合性であるため、医薬業界で使用されている。このような挙動を示す他の材料として、ポリ(カプロラクトン)(PCL)や、ポリ(ラクチド)−(PLA)ブロックコポリマー(例えば、PEO−PCL−PEO)が挙げられる。
【0006】
しかし、このようなポリマーから形成されるゲルは、細胞足場/細胞送達用として使用するには機械的に不安定であるか、又は体内導入時に安定したゲルを形成するために必要な濃度が高すぎて実際の使用には向いていない。
【0007】
このような問題は、Journal of the American Chemical Society、第127巻、16892−16899頁(2005)(Joralemonら)に記載のように、架橋性のコア又はシェルを有するミセル形成ポリマーを調製することによって解決することが試みられている。
【0008】
応答性表面を有する安定した粒子を生成することも可能であるが、その合成は手間がかかり、また、毒物学的に受容可能であるとは見なされないモノマー又は架橋剤を必要とする。例えば、Langmuir 第20巻、10809−10817頁(2004)(Halesら)、Journal of the American Chemical Society 第127巻、7304−7305頁(2005)(Fujiiら)、及びLangmuir 第21巻、3808−3813頁(2005)(Pilonら)を参照されたい。
【0009】
表面における熱応答性ポリマーの自己集合化凝集塊(self−assembling aggregates)は、シリカ及び金粒子から調製した。Macromolecules 第38巻、9813−9820頁(2005)(Zhangら)、及びMacromolecular Chemistry and Physics 第206巻、1941−1946頁(2005)(Kim,D.J.ら)を参照。
【0010】
しかし、今日までのところ、生体適合性熱応答性ポリマーを表面処理して生分解性粒子を形成し、多孔性の細胞−ポリマー複合体ゲルを生成したという報告はなされていない。
本発明では、容易に調製できる新しい表面処理された「スマート」微粒子を提供する。この微粒子は、37℃以下の温度では細胞と共に分散して流動性懸濁液を形成し、体温では細胞増殖を支持する空間充填型ゲルを形成する。このような微粒子は、新規な生体適合性熱応答性ポリマーを含む。このようなポリマーは、粒子調製中に生分解性ポリマー球体の表面に分配されることで、単純な単一工程手順で高度に制御可能なコロイド安定性と生体材料特性を有する微粒子が生成され得るよう設計される。
【0011】
従って、本発明は、新規な生体適合性熱応答性ポリマーの合成にも関与する。具体的には、本発明は、体温より僅かに低い温度では鎖延長され且つ高い水溶性を示すが、37℃では不溶性である、生体適合性両親媒性コポリマーの合成を提供する。上記のような特徴のため、このポリマーは、第一条件下ではコロイド粒子を安定化するが、第二条件下ではコロイド粒子を凝集する機能を有し得る。
【0012】
生分解性ポリマーコア及び特別に設計された熱応答性生体適合性コポリマーコロナを有する表面処理された微粒子を、単純なワンポット手順で製造することができる。これらの粒子は、37℃以下で流動性懸濁液を形成し得るが、37℃を超えるとコポリマーコロナの鎖崩壊により可逆的に多孔性空間充填型ゲルを形成し得る。従って、これらの粒子は、37℃未満で生体材料と混合し、その後体温で安定したカプセル化ゲルを形成し得る。この安定したカプセル化ゲルはそのゲル内で細胞増殖を支持し得る。
【0013】
調製の容易性、スケールアップの可能性、及び制御合成により可能となるコポリマーコロナ層の幅広いバリエーションの組み合わせにより、上記システムは新しいタイプの生物学的送達媒体及び組織成長支持体として期待できる。
【0014】
本発明は、とりわけ、スマート粒子、上記材料の製造プロセス、及び細胞支持体マトリックスとしてのスマート粒子の使用を提供する。
(発明の要旨)
本発明は、第1局面において、水媒体中で10〜90℃の下限臨界共溶温度を示すポリマーの調製方法を提供する。本方法は、重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマー及び重合可能なアルキレングリコールメタクリレートモノマーから選択される1つ以上のモノマーを重合反応のモノマーとして使用することを含む。
【0015】
下限臨界共溶温度は、LCST又は逆溶解温度関係と呼んでもよい。LCSTは、Beckman製DU−640分光光度計内で1.0℃.min-1で加熱することにより決定してもよい。この場合、550nmで吸光度が急激な上昇を開始した温度をLCSTとする。
【0016】
上記方法は、
重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマーと重合可能なアルキレングリコールメタクリレートモノマーから選択される1つ以上のモノマーを提供する工程と、
モノマーの重合を行い、水媒体中の下限臨界共溶温度が10〜90℃のポリマーを生成する工程と、を含む。
【0017】
従って、本発明の進歩性において重要となるのは、水媒体中の下限臨界共溶温度が10〜90℃で変化するようなポリマーを生成するため、重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマーとアルキレングリコールメタクリレートモノマーを、単一で又は様々な組み合わせで使用することである。
【0018】
重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマーと重合可能なアルキレングリコールメタクリレートモノマーは、ジ(エチレングリコール)−アクリレート、オリゴ(エチレングリコール)−アクリレート、ポリ(エチレングリコール)−アクリレート、ジ(エチレングリコール)−メタクリレート、オリゴ(エチレングリコール)−メタクリレート、ポリ(エチレングリコール)−メタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)−アクリレート、及びポリ(プロピレングリコール)−メタクリレートから、単一で又は様々な組み合わせで選択されてもよい。
【0019】
1つの実施形態では、2つのモノマーを組み合わせて使用する。即ち、得られるポリマーはコポリマーである。例えば、上記方法は、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)とポリ(プロピレングリコール)メタクリレート(PPGMA)の重合を含み得る。1つの実施形態では、PEGMAのMnは約475、PPGMAのMnは約430であってもよい。
【0020】
本発明の方法では、ポリマー材料を生成するために任意の重合技術を使用することができる。特に好ましいのは、原子移動ラジカル重合(ATRP)を非限定的に含む、フリーラジカル法及び制御フリーラジカル法である。
【0021】
生成されるポリマー中のモノマー単位の組み合わせを無作為にすること、又は制御することができることで、モノマーの任意の組み合わせで配列特異的ブロックコポリマーが製造される。
【0022】
出発モノマー(特にそのモル質量)の選択及び重合条件を制御して、生成されるポリマーのモル質量を変化させることができる。生成されるポリマーのモル質量は、1〜1000kDa超までの範囲で変化させることができる。好ましくは、生物医学的用途では、ポリマーのモル質量は25〜75kDa、多分散性(Mw/Mn)指数は1〜2.5である。
【0023】
また、本発明は、第2局面において、第1局面の方法により得られる、水媒体中で10〜90℃の下限臨界共溶温度を示すポリマーを提供する。
従って、本発明は、重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマーと重合可能なアルキレングリコールメタクリレートモノマーから選択される1つ以上のモノマーの重合生成物である、水媒体中で10〜90℃の下限臨界共溶温度を示すポリマーを提供する。
【0024】
上記ポリマーは、無作為の、又は制御された、配列特異的ブロックコポリマーであり得る。
上記ポリマーのモル質量は、1〜1000kDa超であり得る。好ましくは、生物医学的用途では、上記ポリマーのモル質量は25〜75kDa、多分散性(Mw/Mn)指数は1〜2.5である。
【0025】
上記ポリマーは、ジ(エチレングリコール)−アクリレート、オリゴ(エチレングリコール)−アクリレート、ポリ(エチレングリコール)−アクリレート、ジ(エチレングリコール)−メタクリレート、オリゴ(エチレングリコール)−メタクリレート、ポリ(エチレングリコール)−メタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)−アクリレート、及びポリ(プロピレングリコール)−メタクリレートから、単一で又は様々な組み合わせで選択される1つ以上のモノマーの重合生成物であってもよい。
【0026】
1つの実施形態では、上記ポリマーは、2つのモノマーの重合生成物、即ちコポリマーである。例えば、上記ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)とポリ(プロピレングリコール)メタクリレート(PPGMA)の重合生成物であってもよい。1つの実施形態では、PEGMAのMnは約475、PPGMAのMnは約430であってもよい。PEGAM−PPGMAコポリマーのMnは約15,500であってもよい。
【0027】
本発明のポリマーは、以下においては、LCSTポリマーと称されてもよい。
上記ポリマーは、適切には、体温直下の温度では鎖延長し高い水溶性を示すが、37℃では不溶性である、生体適合性両親媒性コポリマーである。このように、本ポリマーは、第一条件下ではコロイド粒子を安定化するが第二条件下では粒子を凝集する機能を有し得る。
【0028】
従って、本発明は、第3局面において、乳化法、拡散法及び蒸着法から選択される方法でポリマー粒子を調製する際の表面処理界面活性剤として、第2局面のポリマーを単一で又は組み合わせて使用することを提供する。
【0029】
従って、本発明は、第4局面において、
−第2局面による1つ以上のポリマーを提供すること、及び
−乳化法、拡散法及び蒸着法から選択される方法でポリマー粒子を調製するための反応混合物に、表面処理界面活性剤として上記ポリマーを添加すること、
を含むポリマー粒子調製方法もさらに提供する。
【0030】
また、本発明は、第5局面において、第4局面の方法で得られるポリマー粒子を提供する。
従って、本発明は、第2局面による1つ以上のポリマーである表面処理界面活性剤の存在下で行われる乳化法、拡散法及び蒸着法から選択される方法で得られるポリマー粒子を提供する。
【0031】
本発明は、生分解性ポリマーコアと熱応答性生体適合性コポリマーコロナを有するポリマー粒子を提供する。この場合、本コポリマーは第2局面によるポリマーである。
本発明のポリマー粒子は、任意の有機組成物のバルク相/コアを有し得るが、特に好ましいのはポリ乳酸−コ−グリコール酸(PLGA)又はその成分であるホモポリマー等の生分解性ポリマーである。従って、本発明のポリマー粒子は、ポリ乳酸−コ−グリコール酸、ポリ(乳酸)又はポリグリコール酸のバルク相/コアを有することが好ましい。
【0032】
PLGAを用いた乳化/拡散/蒸着合成手順中にLCSTポリマーを使用することにより、直径が100nm〜100μmの安定したポリマー粒子が形成される。生物医学的用途において最も好ましい直径は、500nm〜5μmである。
【0033】
従って、1つの実施形態では、PLGAのバルク相/コアを有し、且つ第2局面による1つ以上のポリマーである表面処理界面活性剤の存在下で行われる乳化法、拡散法及び蒸着法から選択される方法により得られる、ポリマー粒子が提供される。
【0034】
1つの実施形態では、本発明は、生分解性ポリマーコアと熱応答性生体適合性コポリマーコロナを有するポリマー粒子を提供する。この場合、生分解性ポリマーコアはPLGAであり、コポリマーはPEGMA及びPPGMAの重合生成物である。
【0035】
進歩性において重要となる局面は、水媒体中においてそのLCST以下でバルクポリマー粒子を立体的に安定化するがLCSTを超えると安定性の低下を示すLCSTポリマーの能力である。
【0036】
従って、第5局面によるポリマー粒子は、第2局面のポリマーのLCST以下の温度では安定化するが第2局面のポリマーのLCSTを超える温度では安定性が低下するという点で、驚くべき利点を発揮する。この変化は、LCSTポリマー及びLCSTポリマーの組み合わせとバルクポリマー粒子とを結合/解離する誘因として、利用することができる。
【0037】
本発明は、LCSTポリマーの立体安定性に変化を起こすために温度の変化を利用することについて主に説明されているが、LCSTポリマーのLCSTは、粒子が存在する溶液の他の特性に従って変化し得る。例えば、LCSTは、イオン強度、電界、pH、溶媒組成、及び共溶媒として用いられる任意の薬剤に影響され得る。LCSTポリマーの下限臨界共溶温度を変える要因は様々であり、そのためLCSTポリマーの立体安定性が変化し、さらに第5局面のポリマー粒子の安定性が変化し得る。
【0038】
このように、下限臨界共溶温度に影響する溶媒特性、即ち液体又は液体混合物の溶質溶解能力、の任意の変化を、LCSTポリマー及びLCSTポリマーの組み合わせと粒子とを結合/解離する誘因として、利用することができると考えることができる。
【0039】
従って、本発明は、溶液/懸濁液から可逆的に結合し得るポリマー粒子、及び生物医学分野における前記ポリマー粒子の用途に関する。
本発明の主な用途は、香味/芳香放出等の放出制御、及び特に生物医学分野である。ポリマー粒子バルクは、活性物質を取り込み得る。この活性物質は、生物医学的用途では、従来の薬物送達用の小分子薬剤及び生物薬剤、又は、組織成長、臓器修復及び再生医療のための緩効性成長因子およびその他の可溶性分子であろう。
【0040】
従って、本発明のポリマー粒子は、香味剤、芳香剤、小分子薬剤及び生物薬剤、並びに、組織成長、臓器修復及び再生医療のための緩効性成長因子等の可溶性分子から選択される活性成分を含んでもよい。これらの活性成分は、適切には、ポリマー粒子バルクに取り込まれる。
【0041】
実施された例では、粒子のバルクに取り込まれる活性物質の例として蛍光ラベルが挙げられるが、生物医学的用途では、従来の薬物送達用小分子薬剤及び生物薬剤、又は緩効性成長因子等の組織成長のための可溶性分子が挙げられよう。
【0042】
従って、第6局面において、本発明は、放出制御用途における第5局面のポリマー粒子の使用を提供する。
上記用途は、例えば、香味放出用途、芳香放出用途、及び従来の薬物送達用途等の生物医学的用途から選択されてもよい。詳細には、上記用途は、従来の薬物送達用の小分子薬剤又は生物薬剤の放出、あるいは、組織成長、臓器修復及び再生医療のための緩効性成長因子等の可溶性分子の放出に関与してもよい。
【0043】
粒子は、37℃以下の温度では細胞又は他の生体材料と共に分散して流動性懸濁液を形成し、体温では細胞増殖を支持する空間充填型ゲルを形成してもよい。
従って、第7局面において、本発明は、第5局面のポリマー粒子と細胞等の生体材料を含む生成物を提供する。
【0044】
このような生成物は、第2局面のポリマーの下限臨界共溶温度以下では分散物となる。従って、最初は流動性懸濁液として提供されてもよい。
かかる生成物を用いて、第2局面のポリマーの下限臨界共溶温度を超えた場合には細胞等の生体材料をカプセル化することができる。前記生成物は、かかる温度では、細胞等の生体材料の成長を支持する空間充填型ゲルを形成する。
【0045】
好ましくは、第2局面のポリマーの下限臨界共溶温度は、体温直下の温度である。そうすれば、生成物は、室温では分散物となり、体温ではゲルとなる。
本質的に、粒子とともに細胞が提供される場合、粒子は細胞増殖中に細胞のための多孔性繭(cocoon)を形成し得る。これにより、細胞と細胞の接触を促進し組織生成の拡大を助長し得るマトリックス構造が生成される。
【0046】
従って、本発明のポリマー粒子は、コロイド性細胞送達システムと見なすことができる。
また、本発明は、第8局面において、細胞支持体マトリックスとしての第5局面のポリマー粒子の使用を提供する。
【0047】
また、本発明は、第9局面において、第5局面のポリマー粒子を含む細胞支持体マトリックスを提供する。
また、本発明は、第10局面において、37℃以下の温度で(i)細胞と(ii)第5局面のポリマー粒子を含む流動性懸濁液を提供する。
【0048】
また、本発明は、第11局面において、体温で(i)細胞と(ii)第5局面のポリマー粒子を含む細胞増殖を支持する空間充填型ゲルを提供する。
また、本発明は、37℃以下の温度では細胞と共に分散して流動性懸濁液を形成し、体温では細胞増殖を支持する空間充填型ゲルを形成する微粒子を調製するために、第2局面のポリマーを単一で又は組み合わせて使用することを提供する。
【0049】
また、本発明は、粒子調製中に生分解性ポリマー球体の表面に分配するために、第2局面のポリマーを単一で又は組み合わせて使用することを提供する。従って、高度に制御可能なコロイド安定性及び生体材料特性を有する微粒子が生成される。
【0050】
図1は、本発明の概念を例示している。
図1の(a)は、微粒子の立体安定化の基礎をなす概念を示している。即ち、水和PEGMA−コ−PPGMAコロナの鎖延長により、粒子間引力が支配的になることが回避される。図1の(b)では、LCSTを超えた温度では、PEGMA−コ−PPGMA層は崩壊してコロイド安定性が減少し、粒子間の引力相互作用により凝集している様子がわかる。
【0051】
LCST以下での粒子と細胞の分散物への本概念の拡張が図1の(c)に示されている。LCSTを超えると、図1の(d)に示されているように細胞のカプセル化が生じる。
本発明において、調製が簡単で、十分に制御された熱応答性挙動を示し、且つ生体適合性及び生分解性を有する、表面処理されたスマート粒子が提供される。このような材料により、細胞送達及び組織工学の用途で数多くの可能性が提供される。
【0052】
例えば、最初の重合でコモノマーを改質することによりLCSTポリマーの界面化学を制御して、本質的に生物模倣型の機能及び反応を追加することが可能となるであろう。これには、PLGA分解の調節を助ける酸塩基反応、又は細胞外マトリックスの重要な特徴を模倣する生体接着機能が含まれるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】コロイド性の細胞送達システムとして機能し得る本発明のポリマー粒子の概略図である。
【図2】熱応答性生分解性微粒子である本発明のポリマー粒子の合成及び特性を例示している。
【図3】本発明のポリマー粒子から形成されたコロイド性懸濁液及び熱可逆性ゲルの構造・プローブ分析(texture probe analysis)を示している。
【図4】本発明のポリマー粒子による生体内原位置での細胞のカプセル化、及び本発明のポリマー粒子からの組織足場の形成を示している。
【図5】本発明のLCSTポリマーであるコポリマーPEGMA−コ−PPGMA(25/75)のH NMRスペクトルを示している。
【図6】本発明によるPLGA微粒子の典型的な粒径を示している。
【図7】一軸圧縮試験に使用される装置を示している。
【図8】Aは本発明のポリマー粒子のマイクロCT回転スキャン、Bは本発明のポリマー粒子のマイクロCT再構成スキャンを示している。
【図9】様々な環境での本発明のLCSTポリマーの特徴を示している。
【図10】本発明のLCSTポリマーであるコポリマーPEGMA−PPGMA(25/75)水溶液について、DLSによって観察された相転移を示している。
【図11】本発明によるPLGA微粒子の20〜45℃のレオロジー・データを示している。
【発明を実施するための形態】
【0054】
〔発明の詳細な説明〕
本発明の実施例は、以下のように調製された。
<材料>
使用材料は以下の通りであった。
−PLGA(モル比75/25のラクチド/グリコリド、分子量Mn=12,000、PDI=1.50)をアストラゼネカ(AstraZeneca)社から購入し、供給されている通りに使用した。
−ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA、Mn=475、Aldrich社製)とポリ(プロピレングリコール)メタクリレート(PPGMA、Mn=430、Aldrich社製)の共重合により、後述するように、ポリマー(界面活性剤−コポリマー又はLCSTポリマー)PEGMA−コ−PPGMA(PEGMA/PPGMA=25:75、分子量Mn=15,500、PDI=1.61)を調製した。
−酢酸エチル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)及び1−ドデカンチオールは、Aldrich社製の分析グレードのものであり、供給されている通りに使用した。
−臭化銅(I)(Aldrich社製、98%)及び塩化銅(I)(Acros社製、95%)は、いかなる可溶性の酸化種も除去するため、氷酢酸で洗浄し、濾過し、エタノールで洗浄し、乾燥した。
【0055】
<方法>
1.LCSTコポリマー:PEGMA−コ−PPGMAの調製
a)従来のフリーラジカル重合
三方活栓に取り付けた丸底フラスコに、脱酸素ブタノン(deoxygenated butanone)(30ml)中AIBN(0.957g、6.1ミリモル)、PEGMA(5.532g、11.6ミリモル)、PPGMA(15g、34.9ミリモル)及び1−ドデカンチオール(0.38g、1.86ミリモル)を添加した。得られた溶液を内容物が完全に溶解するまで10分間撹拌し、それから凍結融解サイクル(×3)とその後の窒素パージにより内容物から酸素を除去した。フラスコを油浴に浸漬し、70℃で8時間、重合を行った。得られた溶液をアセトンで希釈し、大過剰のヘキサン中に沈殿させた。上部溶媒層を除去した後、沈殿したポリマーを真空中で乾燥し、残留溶媒を取り除いた。それから、ポリマーを脱イオン水中に溶解し、引き続いて新鮮な脱イオン水に対する透析(分画分子量:6000)で精製した。最後に、エタノールを使った共沸蒸留で水を除去し、両親媒性コポリマーが残った。
b)原子移動ラジカル重合
三方活栓に取り付けた丸底フラスコに、CuBr(64.5mg、0.448ミリモル)、ビピリジン(139mg、0.891ミリモル)を添加し、その後窒素ライン又は真空ポンプのいずれかに接続した。真空−窒素サイクルを繰り返して酸素を除去した。フラスコが窒素で満たされたら、脱気したPEGMA(5.532g、11.6ミリモル)、PPGMA(15g、34.9ミリモル)及びブタノン(30ml)を充填した。室温で1時間撹拌した後、ブタノン(0.42M)中メチル 2−ブロモプロピオネート溶液(1.1mL)を加え、所望の温度(典型的には60℃)で10時間重合を行った。重合の後、得られた溶液をアセトンで希釈し、シリカカラムを通過させて銅触媒を除去し、大過剰のヘキサン中に沈殿させた。上述のように、再沈殿及び透析の後、凍結乾燥を行い、さらに精製した。
2.ダンシル−コポリマーPEGMA−コ−PPGMAの調製
1gのPEGMA−コ−PPGMA(Mn=15,500)をTHF(15ml)中に溶解した。得られた溶液に、トリエチルアミン(0.0139g、0.137ミリモル)及び塩化ダンシル(0.037g、0.137ミリモル)を加えた。その後室温で一晩、暗所で撹拌しながら反応させた。反応溶液を濾過し、その後激しく撹拌しながらヘキサン中に滴加した。その後得られた溶液を30分間静置し、沈殿したポリマーのサンプルを収集した。3回沈殿させてポリマーを精製し、最後に真空オーブン中で、室温で乾燥した。
3.コポリマーPEGMA−コ−PPGMAでコーティングされたPLGA微粒子の調製
乳化−蒸着−拡散法(図2に例示)によりPLGA微粒子を調製した。典型的には、PLGA(200mg)を酢酸エチル(5mL)中で溶解し、水中コポリマーPEGMA−コ−PPGMA溶液(10mL、2mg.mL-1)に加えた。得られた乳化液を11000rpmで45秒間均質化し、第2のPEGMA−コ−PPGMA溶液(15ml、2mg.mL-1)に加え、さらに1100rpmで45秒間均質化を行った。真空中で粒子コアから有機溶媒を除去した。遠心分離(2500rpm)で水相から微粒子を分離し、凍結乾燥の前に水中で再懸濁した。
<分析技術の説明>
i.下限臨界共溶温度(LCST)の決定
PBS中PEGMA−コ−PPGMAポリマー溶液(pH7.4、3mg.mL-1)をBeckman製DU−640分光光度計内にて1.0℃.min-1で加熱した。550nmで吸光度が急激に増加し始める温度を、コポリマーシステムのLCSTと見なした。
ii.ゲル浸透クロマトグラフィー
三重検出のゲル浸透クロマトグラフィー(PL−120及びPL−50、Polymer Labs製)で、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び多分散性(Mw/Mn)を得た。カラム(30cm PLgel Mixed−C、直列で2本)をTHFとともに溶出し、ポリスチレン標準で較正した。較正及び分析は全て40℃及び流量1mL/minで行った。このような条件下では、全ての生成物は完全にTHF中に溶解し、背圧をほとんど又は全く観察することなく注入前に0.2μmフィルターを通過した。
iii.粒径の測定
Malvern Zetasizer Nano及びCoulter LS 230(Beckman Coulter製)の装置を使って、ミセル及び微粒子の粒径と分布を測定した。動的光散乱実験では、DI水(脱イオン水)中でPEGMA−コ−PPGMA溶液(1mg.mL-1)を調製し、測定前に0.45umの使い捨てフィルター(PTPE Acrodisc CR)を使って12.5×12.5mmポリスチレン使い捨てキュベット中で濾過した。Coulter LS230を用いた微粒子の粒径の測定では、不透明値(obscuration value)8%〜12%で、サンプルをDI水中で再懸濁した。
iv.一軸圧縮試験
テクスチャーアナライザー(TA HDPlus、Stable Micro Systems製)を使って周囲条件で一軸圧縮試験を行った。注射器ノズル(1mlのBD Plastipak(登録商標))を介して2mm/secで注入性(Injectability)を決定した。直径4.5mmの注射筒内でゲルが形成された後、37℃で30分間、足場の圧縮強度(湿潤時及び乾燥時)を0.01mm/secで決定した。
【0056】
図7は一軸圧縮試験で使用した装置を示している。
v.走査電子顕微鏡法
JEOL製JSM−6060LVの機器を使って、走査電子顕微鏡写真を記録した。ポリマー微粒子を白金製スタブ(stubs)上に置き、4分間スパッタリングでコーティングした。この際、複雑な回転惑星(planetary)運動により、不規則な表面を均一にコーティングすることができる。
vi.細胞培養
37℃及び5%CO2の加湿したインキュベーター内にて、10%ウシ胎仔血清(FBS)、1%グルタミン及び2.5mg/mLアンホテリシンB(抗生物質/抗カビ剤溶液)を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で、細胞株C2C12から細胞を培養した。2〜3日おきにPBS中0.25%トリプシン/0.02%EDTAを用いて細胞を継代培養し、使用前に再び種をまいた。顕微鏡実験では、PLGA微粒子をEppendorf製バイアル管に入れ、2時間紫外線で殺菌した。C2C12細胞をトリプシン処理し、DMEM中で再懸濁し、その後蛍光染料(C34551、Cell Tracker Orange CMRA)を含むDMEM中で45分間遠心分離及び再懸濁を行った。それから、標識細胞を遠心分離し、ハンクス緩衝液(HBSS)に加えた。約500000細胞(0.25mlのHBSS緩衝液中)をPLGA微粒子(150mg)と混合した。得られた混合物を6ウェルの非組織培養プレート内にて37℃で30分間培養して足場を形成し、続いてDMEMを追加してさらに培養した。細胞を無菌PBSで洗浄して6ウェルの新しい非組織培養プレートに移した後、蛍光画像を得た。アラマーブルー(AlamarBlue)アッセイ(Biosource Europe社製)を用いて細胞生存率を評価した。
【0057】
<分析>
A.PEGMAとPPGMAのコポリマーの特徴
上述の方法により様々なモノマー比率のポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)とポリ(プロピレングリコール)メタクリレート(PPGMA)の重合によって合成された新しい生体適合性応答性ポリマーを表1に示している。
【0058】
【表1】
【0059】
従来のフリーラジカル重合(FRP)と原子移動ラジカル重合(ATRP)の両方の経路を用いて、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で下限臨界共溶温度(LCSTs)を示す、くし状コポリマーを生成することができる。
【0060】
体温でLCSTを示すポリマーに関心が持たれている。37℃近辺のLCSTにおいて、様々なモル質量及び多分散性のPEGMA25−PPGMA75コポリマーの調製に成功した。
【0061】
ATRP経路での開始剤:モノマーの比率及び連鎖移動剤(CTA):モノマーの比率を制御することにより、モル質量の制御が可能である。一方、コモノマー比率により、幅広い温度範囲内でLCSTを調整することが可能である。
【0062】
コポリマーPEGMA−コ−PPGMA(25/75)について1HNMRを実施し、そのスペクトルを図5に示している。
(モノマー成分が同じであるコポリマーを用いて、)分子量がポリマーのLCSTに与える効果を評価した。その結果を図9のAに示している。図9のBは、コポリマーPEGMA−コ−PPGMAの加熱時と冷却時のLCSTを示している。図9のCは、pHがコポリマーのLCSTに与える効果を示している。図9のDは、NaCl濃度がLCSTに与える効果を示している。全ての図において、PEGMA−コ−PPGMA(25/75)を使用し、コポリマーの濃度は各ケースで3mg/mlであった。
【0063】
図2の(iii)に、PEGMAxPPGMAyコポリマーのコイルから小球への相転移を光散乱の上昇によって示している。この合成ポリマーの相転移は急激に起こっていることがわかる。
【0064】
疎水性のPPGMAモノマーに対する親水性のPEGMA成分の比率が高まると、予想通りLCSTが上昇した(表1及び図2の(iii)参照)。しかし、そして本用途で重要なのは、所定のPEGMA:PPGMAモル比のLCSTが、幅広いモル質量範囲で同様であったことである。
【0065】
図2の(iv)は、LCSTポリマーのゾル−ゲル転移を示している。LCST以下では、低〜中程度のモル質量(<30kDa)のPEGMA25PPGMA75コポリマーで低粘度溶液を形成した。このようなポリマーはLCSTを超えると溶液から沈殿した。
【0066】
PEGMA25PPGMA75のモル質量を160kDaまで増加すると、LCSTを超える水中で安定したゲルが得られた。LCST以下のサンプルは左側、LCST超のサンプルは右側である。
【0067】
動的光散乱で示されているように、水中約1mg.mL-1の濃度で、PEGMA25PPGMA75ポリマーはミセルを形成した。この際、温度がLCST(約35℃)以下からLCST超に上昇するのに伴い、流体力学的半径はそれぞれ約100nmから350nmに変化した。
【0068】
図10は、コポリマーPEGMA−PPGMA(25/75)水溶液(1mg/ml)についてDLSで測定した、温度(x軸、℃)と流体力学的半径Rh(y軸)の相関関係のプロットを示している。
B.熱応答性生分解性微粒子の合成及び特性
図2の(i)にはモノマーPEGMA及びPPGMAが示されている。これらのモノマーは、フリーラジカル又は制御ラジカル(ATRP)の技術で共重合され、図2の(ii)に示すようなくし状コポリマーが生成される。
【0069】
表面処理されたスマート粒子の調製を図2の(v〜viii)に示している。PEGMA−PPGMAコポリマーにより安定化されたポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)粒子の調製を、乳化/拡散/蒸着法により行った。具体的には、図2の(v)に示すように、酢酸エチル中PLGA溶液を水中PEGMA−コ−PPGMAポリマーに加えて撹拌し、乳濁液を生成する。図2の(vi)に示すように、両親媒性コポリマーは、激しく撹拌している間PLGAを含む溶媒の小滴を安定化する。図2の(vii)に示すように、この有機相から溶媒を蒸着することにより、PEGMA−コPPGMAでコーティングされたPLGA粒子が残る。図2の(viii)に示すように、これらの粒子は遠心分離により回収され、水中で再懸濁される。
【0070】
PEGMA−コ−PPGMA層の表面応答の概略を図2の(ix)及び図2の(x)に示している。得られた微粒子の直径は2〜4μmであり、応答性LCSTポリマーの表面「コロナ」が存在することがわかる。
【0071】
これらの粒子は、水及びPBS中では安定した分散物を形成したが、光散乱で示されるように低濃度では沈殿した。図2の(xi)は、粒子がLCSTを超えると沈殿する時に生じる光散乱の減少を示している。
【0072】
これらの粒子は、高濃度中に存在するときは、水和した自立型(free−standing)ゲルを形成した。LCSTより高い温度への温度変化に伴って、粒子の流動性懸濁液(左)から空間充填型ゲル(右)が形成される様子が、図2の(xii)に示されている。
【0073】
走査電子顕微鏡法(SEM)により、粒子の形態を確認した。粒子のSEM分析結果を図2の(xiii)に示している。これは、低多分散性の球状粒子を示している。
PLGAコア内の疎水性が「有効」であることを示すナイルレッド(NileRed)のカプセル化は、PLGA成分の検出を容易にした。また、顕微鏡の選択フィルターは、カプセル化された染料と表面封入PEGMA−PPGMA層の両方の存在を示した。
【0074】
図2の(xiv)に示すように、コーティングされた粒子の多層構造は、PLGAコア内のカプセル化されたナイルレッドとともに、蛍光顕微鏡検査法(テキサスレッド(Texas Red)発光フィルター)によって確認された。
【0075】
ダンシル標識PEGMA−PPGMAコポリマーの使用により、蛍光顕微鏡検査法で表面コロナを検出することができた。ダンシル標識PEGMA−コ−PPGMAは、図2の(xv)(DAPI発光フィルター)に示された表面のコーティングが、図2の(xvi)(テキサスレッド発光フィルター)に示されたPLGAコア内のカプセル化されたナイルレッドと共局在化していることを明らかにした。
【0076】
図6は、本発明のPLGA微粒子の典型的な粒径を示している。
図11は、20℃〜45℃でのPLGA微粒子(PLGA微粒子の濃度、25% w/v)のレオロジー・データを示している。
【0077】
PEGMA−コ−PPGMA:PLGA比を変化させることにより粒径を制御することができた。即ち、PLGAに対するPEGMA−コ−PPGMAの比率を高めることにより、ビーズを小さくし、且つ多分散性を低くすることができた。典型的な調製では、PLGA:PEGMA−PPGMA比(w/w)を2:1とし、直径2.4μmの粒子を得た。変動係数は63%で、直径が<5μmの粒子は>90%であった。PLGA:PEGMA−PPGMA比が0.4:1でも同様の粒径が得られるであろうが、PLGA:PEGMA−コ−PPGMA比が4:1を超えると粒径が6μmを超え、その結果凝集が生じる。
【0078】
粒子のコロイド安定性はPEGMA−コ−PPGMAコーティングの水和殻によって決まり、モル質量によって変化する。
従って、モル質量の高いポリマーは、図1に示すように、立体遮へい層のさらなる拡張により、大きな粒子のコロイド安定性を維持することができる。
C.コロイド性懸濁液及び熱可逆性ゲルの注入性及び機械的特性
ポリマー粒子から形成されたコロイド性懸濁液及び熱可逆性ゲルの注入性及び機械的特性を、テクスチャーアナライザーを使って調査した(図3)。
【0079】
粒子の懸濁液(PBS中60%w/v)を注入するために必要な力は、緩衝液及び注射筒の動きと比べるとほんの僅かに異なることが示されている。このことは、図3のaに示されている。上のラインは粒子懸濁液、真ん中のラインは注射筒の動き、及び下のラインは緩衝液である。
【0080】
本グラフは、空の注射器の出口が1.6mmのテーパ型ノズルを介した注入のピーク力を、緩衝液及び60%w/wの足場用固体懸濁液と比較して示している。空の注射器は、1.17±0.15Nのピーク力を、また緩衝液の場合は1.125±0.18N、粒子懸濁液の場合は2±0.03Nのピーク力を必要とする。分散物のピーク注入力は、ピストンの手動操作における許容範囲内に十分おさまっている。60%w/w固体懸濁液の結果の繰返し精度は、臨床医が必要とする時間尺度の範囲内に十分おさまっていることを示している。
【0081】
図3のbでは、湿潤時及び乾燥時の凝集粒子の力−距離曲線は、高い強度のゲルを示している。
37℃で30分間培養した後の湿潤時及び乾燥時のゲル強度を比較した結果、それぞれ17N及び19Nと同様の数値を示した。これは、構造形成が、短い培養期間内に生じていることを示すものである。
D.細胞の生体内原位置でのカプセル化及び組織足場の形成
方法の項目3で上述した乳化/拡散/蒸着法により調製された、本発明による表面処理された微粒子を、モデル細胞株であるC2C12筋芽細胞と混合し、PEGMA25PPGMA75のLCST以下で流動性懸濁液を形成した。
【0082】
室温で粒子とともに細胞を分散させた後、37℃で細胞のカプセル化が生じ、安定したゲルが得られた。図4のaは、培養培地内で懸濁された前記ゲルを示している。従って、ポリマー粒子のみに関して、37℃(即ち、LCSTポリマーの下限臨界共溶温度より高い温度)でポリマー粒子と細胞の混合懸濁液を培養することにより、ゲルが生成された。
【0083】
DMEMでの1週間の培養後のゲルの顕微鏡写真が図4のb及び4のcに示されている。これらのSEM画像では、ゲルの多孔性が明らかである。このことは、マイクロコンピューター断層撮影法(μCT)からも明らかである。
【0084】
図8は、PLGA微粒子から形成されたゲルのμCT画像を示している。図8のAはμCT回転スキャン画像、図8のBは3D再構成画像を示している。これらの画像は、細胞のカプセル化及び乾燥後のマクロ孔及び空洞を示している。
【0085】
Cell Tracker(登録商標)標識を使って、多孔性マトリックス内の細胞を視覚化した。蛍光顕微鏡検査法により、非組織培養プラスチックでの対照実験(図4のd)と比べて、ゲル全体に細胞が均一に分布している様子が示された。PEGMA−PPGMAでコーティングされたPLGAゲル切片内でこのようにC2C12細胞をCell Tracker(登録商標)で染色することにより、ゲル内の細胞生存率が高まったことが示される。
【0086】
Live/Dead(登録商標)染色剤を使用することにより、ゲル深部での細胞生存率が示された(図4のe)。Live/Dead(登録商標)染色剤を含む標識C2C12細胞は蛍光グリーンを示し、マトリックス粒子はレッドに染色している。
【0087】
アラマーブルー(Alamar Blue)アッセイにより、生存率及び代謝率を評価した。得られたデータが示すように、生体内原位置での熱ゲル化過程による細胞のカプセル化は、24時間後に生存率を完全に維持したまま生じ、またこれらの細胞はこの時点で依然として成長を続けていた。アラマーブルー(Alamar Blue)アッセイのデータは図4のfに示されている。これは、非組織培養プラスチック上のC2C12細胞(ブランク)と比較して、ゲルマトリックス内及びゲルマトリックス上の細胞の生存率は同様であることを確認している。対照サンプルは、PEGMA−PPGMAでコーティングされたPLGAゲルのみからの蛍光である。
【0088】
顕著には、ゲル内におけるC2C12細胞の全体的な生存率は、事前に形成されたPEGMA−コ−PPGMA−PLGAマトリックスの表面に付着させた同じ細胞と同様に高かった。従って、初期期間を通して栄養分の浸入を防ぐバリアは存在せず、細胞増殖は支持体内で起こり得ることを示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー粒子の調製方法であって、
−水媒体中で10〜90℃の下限臨界共溶温度を示すポリマーである1つ以上のポリマーであって、重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマーと重合可能なアルキレングリコールメタクリレートモノマーとから選択される1つ以上のモノマーの重合生成物であるポリマーを提供すること、及び
−乳化法、拡散法及び蒸着法から選択される方法によりポリマー粒子を調製するために、表面処理界面活性剤として前記ポリマーを反応混合物に添加すること、
を含む方法。
【請求項2】
水媒体中で10〜90℃の下限臨界共溶温度を示す1つ以上のポリマーである表面処理界面活性剤の存在下で行われる乳化法、拡散法及び蒸着法から選択される方法で得られるポリマー粒子であって、重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマーと重合可能なアルキレングリコールメタクリレートモノマーとから選択される1つ以上のモノマーの重合生成物であるポリマー粒子。
【請求項3】
生分解性ポリマーコアと熱応答性生体適合性コポリマーコロナを有するポリマー粒子であって、
前記コポリマーは、水媒体中で10〜90℃の下限臨界共溶温度を示すポリマーであり、
前記ポリマーは、重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマーと重合可能なアルキレングリコールメタクリレートモノマーから選択される1つ以上のモノマーの重合生成物であることを特徴とするポリマー粒子。
【請求項4】
前記ポリマー粒子は、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(乳酸)及びポリ(グリコール酸)から選択される生分解性ポリマーのバルク相又はコアを有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項の発明。
【請求項5】
前記ポリマー粒子は、そのバルク相又はコア内に、香味剤、芳香剤、小分子薬剤及び生物薬剤、並びに、組織成長、臓器修復及び再生医療のための緩効性成長因子およびその他の可溶性分子から選択される活性成分を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項の発明。
【請求項6】
放出制御用途における、請求項2又は3、あるいはそのいずれかの従属項に記載のポリマー粒子の使用。
【請求項7】
前記用途は、香味放出用途、芳香放出用途及び生物医学的用途から選択されることを特徴とする、請求項6の使用。
【請求項8】
前記用途は、従来の薬物送達のための小分子薬剤又は生物薬剤の放出、又は、組織成長、臓器修復及び再生医療のための緩効性成長因子およびその他の可溶性分子の放出を含むことを特徴とする、請求項7の使用。
【請求項9】
請求項2又は請求項3、あるいはそのいずれかの従属項に記載のポリマー粒子と、生体材料を含む生成物。
【請求項10】
前記生体材料は細胞であることを特徴とする、請求項9の生成物。
【請求項11】
細胞支持体マトリックスとしての、請求項2又は請求項3、あるいはそのいずれかの従属項に記載のポリマー粒子の使用。
【請求項12】
請求項2又は請求項3、あるいはそのいずれかの従属項に記載のポリマー粒子を含む細胞支持体マトリックス。
【請求項13】
前記ポリマー粒子は細胞増殖を支持することを特徴とする、請求項11又は請求項12の発明。
【請求項14】
37℃以下の温度で、(i)細胞と、(ii)請求項2又は請求項3、もしくはそのいずれかの従属項に記載のポリマー粒子を含む、流動性懸濁液。
【請求項15】
体温で、(i)細胞と、(ii)請求項2又は請求項3、もしくはそのいずれかの従属項に記載のポリマー粒子を含む、細胞増殖を支持する空間充填型ゲル。
【請求項16】
水媒体中で10〜90℃の下限臨界共溶温度を示すポリマーの調製方法であって、重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマーと重合可能なアルキレングリコールメタクリレートモノマーとから選択される1つ以上のモノマーを重合反応でのモノマーとして使用することを含む方法。
【請求項17】
使用する重合技術は、フリーラジカル法及び制御フリーラジカル法から選択されることを特徴とする、請求項16の方法。
【請求項18】
水媒体中で10〜90℃の下限臨界共溶温度を示すポリマーであって、重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマーと重合可能なアルキレングリコールメタクリレートモノマーとから選択される1つ以上のモノマーの重合生成物であるポリマー。
【請求項19】
前記重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマーと重合可能なアルキレングリコールメタクリレートモノマーは、ジ(エチレングリコール)−アクリレート、オリゴ(エチレングリコール)−アクリレート、ポリ(エチレングリコール)−アクリレート、ジ(エチレングリコール)−メタクリレート、オリゴ(エチレングリコール)−メタクリレート、ポリ(エチレングリコール)−メタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)−アクリレート、及びポリ(プロピレングリコール)−メタクリレートから選択されることを特徴とする、請求項1から18のいずれか1項の発明。
【請求項20】
前記下限臨界共溶温度を示すポリマーは、2つのモノマーの重合生成物であることを特徴とする、請求項1から19のいずれか1項の発明。
【請求項21】
前記2つのモノマーは、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)とポリ(プロピレングリコール)メタクリレート(PPGMA)であることを特徴とする、請求項20の発明。
【請求項22】
前記下限臨界共溶温度を示すポリマーのモル質量は、25〜75kDaであり、多分散性(Mw/Mn)指数は1〜2.5であることを特徴とする、請求項1から21のいずれか1項の発明。
【請求項23】
乳化法、拡散法及び蒸着法から選択される方法によるポリマー粒子の調製中の表面処理界面活性剤として、請求項18又はそのいずれかの従属項に記載のポリマーの単一での又は組み合わせての使用。
【請求項24】
37℃以下の温度では細胞とともに分散して流動性懸濁液を形成し、体温では細胞増殖を支持する空間充填型ゲルを形成する微粒子を調製するための、請求項18又はそのいずれかの従属項に記載のポリマーの単一での又は組み合わせての使用。
【請求項25】
粒子調製中に生分解性ポリマー球体の表面内に分配することにより高度に制御可能なコロイド安定性及び生体材料特性を有する微粒子を生成するための、請求項18又はそのいずれかの従属項に記載のポリマーの単一での又は組み合わせての使用。
【請求項1】
ポリマー粒子の調製方法であって、
−水媒体中で10〜90℃の下限臨界共溶温度を示すポリマーである1つ以上のポリマーであって、重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマーと重合可能なアルキレングリコールメタクリレートモノマーとから選択される1つ以上のモノマーの重合生成物であるポリマーを提供すること、及び
−乳化法、拡散法及び蒸着法から選択される方法によりポリマー粒子を調製するために、表面処理界面活性剤として前記ポリマーを反応混合物に添加すること、
を含む方法。
【請求項2】
水媒体中で10〜90℃の下限臨界共溶温度を示す1つ以上のポリマーである表面処理界面活性剤の存在下で行われる乳化法、拡散法及び蒸着法から選択される方法で得られるポリマー粒子であって、重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマーと重合可能なアルキレングリコールメタクリレートモノマーとから選択される1つ以上のモノマーの重合生成物であるポリマー粒子。
【請求項3】
生分解性ポリマーコアと熱応答性生体適合性コポリマーコロナを有するポリマー粒子であって、
前記コポリマーは、水媒体中で10〜90℃の下限臨界共溶温度を示すポリマーであり、
前記ポリマーは、重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマーと重合可能なアルキレングリコールメタクリレートモノマーから選択される1つ以上のモノマーの重合生成物であることを特徴とするポリマー粒子。
【請求項4】
前記ポリマー粒子は、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(乳酸)及びポリ(グリコール酸)から選択される生分解性ポリマーのバルク相又はコアを有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項の発明。
【請求項5】
前記ポリマー粒子は、そのバルク相又はコア内に、香味剤、芳香剤、小分子薬剤及び生物薬剤、並びに、組織成長、臓器修復及び再生医療のための緩効性成長因子およびその他の可溶性分子から選択される活性成分を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項の発明。
【請求項6】
放出制御用途における、請求項2又は3、あるいはそのいずれかの従属項に記載のポリマー粒子の使用。
【請求項7】
前記用途は、香味放出用途、芳香放出用途及び生物医学的用途から選択されることを特徴とする、請求項6の使用。
【請求項8】
前記用途は、従来の薬物送達のための小分子薬剤又は生物薬剤の放出、又は、組織成長、臓器修復及び再生医療のための緩効性成長因子およびその他の可溶性分子の放出を含むことを特徴とする、請求項7の使用。
【請求項9】
請求項2又は請求項3、あるいはそのいずれかの従属項に記載のポリマー粒子と、生体材料を含む生成物。
【請求項10】
前記生体材料は細胞であることを特徴とする、請求項9の生成物。
【請求項11】
細胞支持体マトリックスとしての、請求項2又は請求項3、あるいはそのいずれかの従属項に記載のポリマー粒子の使用。
【請求項12】
請求項2又は請求項3、あるいはそのいずれかの従属項に記載のポリマー粒子を含む細胞支持体マトリックス。
【請求項13】
前記ポリマー粒子は細胞増殖を支持することを特徴とする、請求項11又は請求項12の発明。
【請求項14】
37℃以下の温度で、(i)細胞と、(ii)請求項2又は請求項3、もしくはそのいずれかの従属項に記載のポリマー粒子を含む、流動性懸濁液。
【請求項15】
体温で、(i)細胞と、(ii)請求項2又は請求項3、もしくはそのいずれかの従属項に記載のポリマー粒子を含む、細胞増殖を支持する空間充填型ゲル。
【請求項16】
水媒体中で10〜90℃の下限臨界共溶温度を示すポリマーの調製方法であって、重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマーと重合可能なアルキレングリコールメタクリレートモノマーとから選択される1つ以上のモノマーを重合反応でのモノマーとして使用することを含む方法。
【請求項17】
使用する重合技術は、フリーラジカル法及び制御フリーラジカル法から選択されることを特徴とする、請求項16の方法。
【請求項18】
水媒体中で10〜90℃の下限臨界共溶温度を示すポリマーであって、重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマーと重合可能なアルキレングリコールメタクリレートモノマーとから選択される1つ以上のモノマーの重合生成物であるポリマー。
【請求項19】
前記重合可能なアルキレングリコールアクリレートモノマーと重合可能なアルキレングリコールメタクリレートモノマーは、ジ(エチレングリコール)−アクリレート、オリゴ(エチレングリコール)−アクリレート、ポリ(エチレングリコール)−アクリレート、ジ(エチレングリコール)−メタクリレート、オリゴ(エチレングリコール)−メタクリレート、ポリ(エチレングリコール)−メタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)−アクリレート、及びポリ(プロピレングリコール)−メタクリレートから選択されることを特徴とする、請求項1から18のいずれか1項の発明。
【請求項20】
前記下限臨界共溶温度を示すポリマーは、2つのモノマーの重合生成物であることを特徴とする、請求項1から19のいずれか1項の発明。
【請求項21】
前記2つのモノマーは、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)とポリ(プロピレングリコール)メタクリレート(PPGMA)であることを特徴とする、請求項20の発明。
【請求項22】
前記下限臨界共溶温度を示すポリマーのモル質量は、25〜75kDaであり、多分散性(Mw/Mn)指数は1〜2.5であることを特徴とする、請求項1から21のいずれか1項の発明。
【請求項23】
乳化法、拡散法及び蒸着法から選択される方法によるポリマー粒子の調製中の表面処理界面活性剤として、請求項18又はそのいずれかの従属項に記載のポリマーの単一での又は組み合わせての使用。
【請求項24】
37℃以下の温度では細胞とともに分散して流動性懸濁液を形成し、体温では細胞増殖を支持する空間充填型ゲルを形成する微粒子を調製するための、請求項18又はそのいずれかの従属項に記載のポリマーの単一での又は組み合わせての使用。
【請求項25】
粒子調製中に生分解性ポリマー球体の表面内に分配することにより高度に制御可能なコロイド安定性及び生体材料特性を有する微粒子を生成するための、請求項18又はそのいずれかの従属項に記載のポリマーの単一での又は組み合わせての使用。
【図5】
【図7】
【図8】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図9】
【図10】
【図7】
【図8】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2012−505305(P2012−505305A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531565(P2011−531565)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051362
【国際公開番号】WO2010/043892
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511093498)ザ ユニバーシティ オブ ノッティンガム (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051362
【国際公開番号】WO2010/043892
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511093498)ザ ユニバーシティ オブ ノッティンガム (1)
【Fターム(参考)】
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