説明

重合性化合物及び重合性組成物

【課題】硬度及び耐熱性等に優れ、更に光学特性にも優れる重合体が得られる重合性化合物及び重合性組成物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される重合性化合物。


(式中、X1〜X3は、各々独立して水素原子又はメチル基を表し、Yは、−COR、−COOR又は−OCOR等を表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は6員環を表し、環A及び環Bは、縮合環又は6員環の環構造を表し、少なくとも一つは縮合環であり、L1〜L3は、各々独立して−COO−又は−OCO−等を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一の縮合環を有し、且つ、両端に(メタ)アクリロイルオキシ基を三官能有する新規な重合性化合物に関し、詳しくは、該(メタ)アクリロイルオキシ基が、一方の末端にスペーサーを介して一官能結合し、他方の末端にスペーサーを介さずに二官能結合しており、これらの(メタ)アクリロイルオキシ基により重合すると、優れた耐熱性、硬度、光学特性及び耐溶剤性等を有する硬化物となる重合性化合物に関する。
また、本発明は、該重合性化合物を用いた重合性組成物、及び該重合性組成物を光重合させることにより作製された重合体に関する。該重合体は、位相差フィルム、偏光板、光偏光プリズム、ディスプレイ用光学フィルム等の光学材料として有用なものである。
【背景技術】
【0002】
液晶物質は、TN型やSTN型に代表されるディスプレイ表示等の液晶分子の可逆的運動を利用した表示媒体への応用以外にも、その配向性と屈折率、誘電率、磁化率、弾性率、熱膨張率等の物理的性質の異方性を利用して、位相差板、偏光板、光偏光プリズム、輝度向上フィルム、ローパス・フィルター、各種光フィルター等の光学異方体への応用が検討されている。
【0003】
上記光学異方体は、例えば、重合性官能基を有する液晶化合物又は該液晶化合物を含有する重合性組成物を液晶状態で均一に配向させた後、液晶状態を保持したまま紫外線等のエネルギー線を照射して光重合により硬化させることによって製造することができるが、この液晶化合物の配向状態は、均一にかつ半永久的に固定化することが求められる。
【0004】
また、上記重合性組成物の液晶相発現温度が高い場合、エネルギー線による光重合だけでなく意図しない熱重合も誘起されて、液晶分子の均一な配向状態が失われるため、所望する配向の固定が困難である。従って、硬化時の温度管理を容易にするために、室温付近で液晶相を示す重合性組成物が求められている。
【0005】
また、重合体は重合性組成物を基板に塗布して重合することによって得られるが、非重合性化合物が含まれると、得られる重合体の強度が不足したり、膜内に応力歪みが残存したりする欠点がある。また、非重合性化合物を溶媒等で取り除くと、膜の均質性が保てずムラが生じたりする問題がある。従って、膜厚が均一な重合体を得るためには、重合性組成物を溶剤に溶かしたものを塗工する方法が好ましく用いられ、液晶化合物又はそれを含む重合性組成物の溶媒溶解性が良好であることが必要とされる。
【0006】
さらに、上記光学異方体は、通常、単独のフィルムとして用いるのではなく、ガラス等の基材に他の機能材料と積層して用いられるため、他の機能材料の塗工に支障がないように、耐溶剤性及び高い硬度を示すことが求められる。
【0007】
上記光学異方体に用いられる重合性化合物としては、重合性官能基が(メタ)アクリル基である化合物が、重合反応性が高く、高い透明性を有する重合物が得られるので、利用が盛んに検討されている。
その中でも、特に(メタ)アクリル基が2官能の単量体及び3官能の単量体は、重合物の耐熱性及び耐溶剤性を改善する上で有効であることが知られており、例えば、特許文献1〜4には、2官能の単量体が提案されており、特許文献5〜7には3官能の単量体が提案されている。
しかし、これらの単量体を用いた場合、重合体に結晶が析出したり、配向の均一制御が困難になる場合があるという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開平11−116534号公報
【特許文献2】特開2002−145830号公報
【特許文献3】特開2003−315553号公報
【特許文献4】特開2005−263789号公報
【特許文献5】特開平11−130729号公報
【特許文献6】特開2005−309255号公報
【特許文献7】国際公開第2006/049111号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、配向の制御が可能で、特に硬度及び耐熱性に優れ、更に光学特性等にも優れる重合体が得られる重合性化合物及び重合性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記一般式(1)で表される重合性化合物を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0011】
【化1】

(一般式(1)中、X1、X2及びX3は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、
Yは、ハロゲン原子、ニトリル基、分岐を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、分岐を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルコキシ基、分岐を有していてもよい炭素原子数2〜8のアルケニル基、分岐を有していてもよい炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基、−COR、−COOR又は−OCORを表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基又は置換基を有してもよい6員環を表し、
環A及び環Bは、縮合環又は6員環の環構造を表し、少なくとも一つは縮合環であり、該縮合環及び該6員環は置換基を有していてもよく、該6員環中の炭素原子はヘテロ原子で置換されていてもよく、
1、L2及びL3は、各々独立して、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−(CH2a−、−(CH2b−O−、−O−(CH2c−、−O−(CH2d−O−、−(CH2e−O−CO−、−CO−O−(CH2f−、−(CH2g−CO−O−、−O−CO−(CH2h−、−(CH2i−O−CO−O−、−O−CO−O−(CH2j−、−O−(CH2k−O−CO−、−CO−O−(CH2l−O−、−O−(CH2m−CO−O−、−O−CO−(CH2n−O−、−O−(CH2o−O−CO−O−、−O−CO−O−(CH2p−O−、−(CH2CH2O)q−、又は−(OCH2CH2r−で表される何れか一種を表し、a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、k、l、m、n、o及びpは各々独立して1〜8の整数を表し、q及びrは各々独立して1〜3の整数を表す。)
【0012】
また、本発明(請求項2記載の発明)は、上記一般式(1)において、Yが−COR、−COOR又は−OCORである請求項1記載の重合性化合物を提供するものである。
【0013】
また、本発明(請求項3記載の発明)は、上記一般式(1)において、環A及び環Bの少なくとも一つがナフタレン環である請求項1又は2記載の重合性化合物を提供するものである。
【0014】
また、本発明(請求項4記載の発明)は、上記一般式(1)において、L1が−COO−であり、L2が−OCO−である請求項1〜3の何れかに記載の重合性化合物を提供するものである。
【0015】
また、本発明(請求項5記載の発明)は、上記一般式(1)において、L3が−(CH2a−又は−O−(CH2c−である請求項1〜4の何れかに記載の重合性化合物を提供するものである。
【0016】
また、本発明(請求項6記載の発明)は、請求項1〜5の何れかに記載の重合性化合物を含有する重合性組成物を提供するものである。
【0017】
また、本発明(請求項7記載の発明)は、さらに液晶化合物を含有する請求項6記載の重合性組成物を提供するものである。
【0018】
また、本発明(請求項8記載の発明)は、上記重合性化合物の含有量と上記液晶化合物の含有量との合計を100質量部としたとき、上記重合性化合物の含有量が3〜100質量部である請求項7記載の重合性組成物を提供するものである。
【0019】
また、本発明(請求項9記載の発明)は、さらにラジカル重合開始剤を含有する請求項6〜8の何れかに記載の重合性組成物を提供するものである。
【0020】
また、本発明(請求項10記載の発明)は、請求項6〜9の何れかに記載の重合性組成物を光重合させることにより作製された重合体を提供するものである。
【0021】
また、本発明(請求項11記載の発明)は、請求項10記載の重合体を使用してなるディスプレイ用光学フィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の重合性化合物、及び該重合性化合物を含有する重合性組成物は、室温付近において液晶状態で重合可能である。該重合性化合物又は該重合性組成物を光重合させることにより作製された本発明の重合体は、硬度、耐熱性、配向制御性、光学特性及び耐溶剤性等に優れ、液晶状態で重合したものは光学材料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の重合性化合物、該重合性化合物を含有する本発明の重合性組成物及び該重合組成物を光重合させることにより作製される本発明の重合体について、その好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0024】
先ず、本発明の重合性化合物について説明する。
上記一般式(1)中のYで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0025】
上記一般式(1)中のYで表される分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0026】
上記一般式(1)中のYで表される分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルコキシ基としては、メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第二ブチルオキシ、第三ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、第三アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、第三ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、第三オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ等が挙げられる。
【0027】
上記一般式(1)中のYで表される分岐を有してもよい炭素原子数2〜8のアルケニル基としては、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、オクテニル等が挙げられる。
【0028】
上記一般式(1)中のYで表される分岐を有してもよい炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基としては、ビニルオキシ、プロペニルオキシ、イソプロペニルオキシ、ブテニルオキシ、イソブテニルオキシ、オクテニルオキシ等が挙げられる。
【0029】
Yで表される上記のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基及びアルケニルオキシ基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、シアノ基等で置換されていてもよい。例えば、置換された炭素原子数1〜8のアルコキシ基としては、クロロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、シアノメチルオキシ、ジクロロエチルオキシ等が挙げられる。
【0030】
Rで表されるハロゲン原子及び分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基としては、例えば、それぞれYで表されるものとして例示したものが挙げられる。
Rで表される置換基を有してもよい6員環としては、例えば、環A又は環Bで表される6員環として後に例示するもの(置換等されたものも含む)が挙げられる。
【0031】
上記一般式(1)中の環A又は環Bで表される縮合環は、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フェナレン環又はフルオレン環である。
【0032】
また、環A又は環Bで表される6員環は、ベンゼン環又はシクロヘキサン環であり、該6員環中の炭素原子を置換するヘテロ原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。窒素原子で置換された6員環としては、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられ、硫黄原子で置換された6員環としては、チオピラン、チオピリリウム等が挙げられ、酸素原子で置換された6員環としては、1,4−ジオキサン−2,6−ジオン、1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、1,3,5−トリオキサン、ピラン等が挙げられ、また、オキサチアン、オキサジン、チアジン等の異なるヘテロ原子で置換された6員環であってもよい。また、上記シクロヘキサン環は不飽和結合を含むものであってもよい。
【0033】
環A又は環Bが有していてもよい置換基としては、例えば、Yで表されるものとして前述したハロゲン原子、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基及びアルコキシ基、及び分岐を有していてもよい炭素原子数2〜8のアルケニル基及びアルケニルオキシ基、並びにシアノ基が挙げられる。
【0034】
本発明の重合性化合物は、2つの(メタ)アクリロイルオキシ基が結合しているベンゼン環、環A及び環Bが直鎖状に並んだ構造であることが好ましい。ここで言う「直鎖状」とは、重合性化合物の分子構造が直線性を保つことであり、具体的には以下のことを意味する。
例えば、環Aがベンゼン環又はシクロヘキサン環である場合は、環の1位及び4位に、L1及びL2が結合する。環Aがナフタレン環、アントラセン環又はフルオレン環である場合は、環の2位又は3位と6位又は7位に、L1及びL2が結合する。環Aがフェナントレン環である場合は、環の1位と8位、2位と7位、又は3位と6位に、L1及びL2が結合する。環Aがフェナレン環である場合は、例えば、L1が環の1位に結合する場合、L2は5位、6位又は7位に結合し、L1が環の2位に結合する場合、L2は5位、6位、7位又は8位に結合し、他の場合もこれらに準ずる。また、環BにおけるL2及びL3の結合も、上述の環AにおけるL1及びL2の結合に準じる。
【0035】
上記一般式(1)で表される本発明の重合性化合物の具体的な構造としては、下記化合物No.1〜144が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物により制限を受けるものではない。
【0036】
【化2】

【0037】
【化3】

【0038】
【化4】

【0039】
【化5】

【0040】
【化6】

【0041】
【化7】

【0042】
【化8】

【0043】
【化9】

【0044】
【化10】

【0045】
【化11】

【0046】
【化12】

【0047】
【化13】

【0048】
【化14】

【0049】
【化15】

【0050】
【化16】

【0051】
【化17】

【0052】
【化18】

【0053】
本発明の重合性化合物の中でも、上記一般式(1)において、Yが−COR、−COOR又は−OCORであるものが、溶媒溶解性に優れるため特に好ましく、L1が−COO−であり、L2が−OCO−である重合性化合物も、溶媒溶解性に優れるため特に好ましい。また、環A及び環Bの少なくとも一つがナフタレン環である重合性化合物は、光学屈折率異方性が高いため好ましい。
【0054】
本発明の重合性化合物は、その製造方法については特に限定されず、公知の反応を応用して製造することができる。例えば、先ず、フェノール化合物又はナフトール化合物の水酸基に対して(メタ)アクリル酸ハロゲン化物をエステル化させることにより、(メタ)アクリロイルオキシ中間体を得る。次いで、2つの(メタ)アクリロイルオキシ基中間体を、下記〔化19〕に示す反応式に従って反応させてL1又はL2を形成することにより、本発明の重合性化合物を得ることができる。尚、下記〔化19〕に示す反応式により得られる本発明の重合性化合物は、L1又はL2が−COO−又は−OCO−のものであり、(メタ)アクリロイルオキシ基は、R1部分及びR2部分それぞれに含まれている。
【0055】
【化19】

【0056】
本発明の重合性化合物は、必要に応じて液晶材料に配合されて、硬度、耐熱性、液晶配向固定化能、光学特性及び耐溶剤性に優れた光学異方体作製用材料として好ましく用いられる他、液晶配向膜、液晶配向制御剤、コーティング材、保護板作製材料等に用いることができる。
【0057】
次に、本発明の重合性組成物について説明する。
本発明の重合性組成物は、本発明の重合性化合物を含有するもので、光学異方体作製用材料として好ましく用いられる。本発明の重合性組成物は、本発明の重合性化合物のほかに、さらに液晶化合物を含有することができる。尚、ここでいう液晶化合物には、従来既知の液晶化合物及び液晶類似化合物並びにそれらの混合物が含まれる。
【0058】
本発明の重合性組成物において、本発明の重合性化合物の含有量は、該重合性化合物の含有量と上記液晶化合物の含有量との合計量を100質量部としたとき3〜100質量部、特に5〜100質量部となるようにすることが好ましい。本発明の重合性化合物の比率が3質量部より少ないと、本発明の効果が得られない場合がある。
また、特に重合体の硬度を高めたい場合には、本発明の重合性化合物の比率を高くする(具体的には70〜100質量部)ことが好ましい。特に配向の均質性を高めたい場合には、本発明の重合性化合物の比率が30〜70質量部となるように、上記液晶化合物を併用することが好ましい。
【0059】
上記液晶化合物としては、通常一般に使用される液晶化合物を使用することができ、該液晶化合物の具体例としては、特に制限するものではないが、例えば、下記〔化20〕に示す液晶化合物が挙げられる。
尚、〔化20〕中のW1は水素原子、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルコキシ基、分岐を有してもよい炭素原子数2〜8のアルケニル基、分岐を有してもよい炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基、分岐を有してもよい炭素原子数2〜8のアルコキシアルキル基、分岐を有してもよい炭素原子数2〜8のアルカノイルオキシ基又は分岐を有してもよい炭素原子数2〜8のアルコキシカルボニル基を表し、W3はシアノ基、ハロゲン原子、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、分岐を有してもよい炭素原子数2〜8のアルカノイルオキシ基又は分岐を有してもよい炭素原子数2〜8のアルコキシカルボニル基を表し、W2及びW4は水素原子、ハロゲン原子又はニトリル基を表す。
【0060】
【化20】

【0061】
また、本発明の重合性組成物においては、上記液晶化合物として、重合性官能基を有する液晶化合物が好ましく使用される。該重合性官能基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、フルオロアクリル基、クロロアクリル基、トリフルオロメチルアクリル基、オキシラン環(エポキシ)、オキセタン環、スチレン化合物(スチリル基)、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルケトン基、マレイミド基、フェニルマレイミド基等が好ましい。該重合性官能基を有する液晶化合物としては、通常一般に使用されるものを用いることができ、その具体例としては、特に制限するものではないが、特開2005−15473号公報の段落[0172]〜[0314]に挙げられている化合物、及び下記〔化21〕〜〔化32〕に示す化合物が挙げられる
【0062】
【化21】

【0063】
【化22】

【0064】
【化23】

【0065】
【化24】

【0066】
【化25】

【0067】
【化26】

【0068】
【化27】

【0069】
【化28】

【0070】
【化29】

【0071】
【化30】

【0072】
【化31】

【0073】
【化32】

【0074】
本発明の重合性組成物は、必要に応じて用いられる他の単量体(エチレン性不飽和結合を有する化合物)及びラジカル重合開始剤と共に、溶剤に溶解して溶液にすることができる。
【0075】
上記他の単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、第二ブチル(メタ)アクリレート、第三ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、アリルオキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1−フェニルエチル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、ジフェニルメチル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、ペンタクロルフェニル(メタ)アクリレート、2−クロルエチル(メタ)アクリレート、メチル−α−クロル(メタ)アクリレート、フェニル−α−ブロモ(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0076】
上記他の単量体は、本発明の重合性組成物を用いて作製される重合体の硬度、耐熱性、耐溶剤性及び光学特性等の効果が損なわれない範囲で使用することができるが、これらの効果を確実に確保するために、他の単量体の含有量は、本発明の重合性光学活性化合物と上記液晶化合物との合計量100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、特に30質量部以下が好ましい。
【0077】
上記ラジカル重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルスルホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフェニルスルホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン/アミン、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0078】
また、上記ラジカル重合開始剤と増感剤との組合せも好ましく使用することができる。かかる増感剤としては、チオキサントン、フェノチアジン、クロロチオキサントン、キサントン、アントラセン、ジフェニルアントラセン、ルプレン等が挙げられる。上記ラジカル重合開始剤及び/又は上記増感剤を添加する場合、それらの添加量は、それぞれ、本発明の重合性化合物と上記液晶化合物との合計量100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下がさらに好ましく、0.1〜3質量部の範囲内がより好ましい。
【0079】
上記溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチレン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等が挙げられる。溶剤は単一化合物であってもよいし、又は混合物であってもよい。これらの溶剤の中でも、沸点が60〜250℃のものが好ましく、60〜180℃のものが特に好ましい。60℃より低いと塗布工程で溶媒が揮発して膜の厚さにムラが生じやすく、250℃より高いと脱溶媒工程で減圧しても溶媒が残留したり、高温での処理による熱重合を誘起したりして配向性が低下する場合がある。
【0080】
また、本発明の重合性組成物には、選択反射波長及び液晶との相溶性を調節することを目的として、光学活性化合物を添加することができる。かかる光学活性化合物を添加する場合、その添加量は、本発明の重合性化合物と上記液晶化合物との合計量100質量部に対し、0.1〜100質量部の範囲内が好ましく、1〜50質量部がより好ましい。かかる光学活性化合物としては、例えば下記〔化33〕〜〔化51〕の化合物を挙げることができる。
【0081】
【化33】

【0082】
【化34】

【0083】
【化35】

【0084】
【化36】

【0085】
【化37】

【0086】
【化38】

【0087】
【化39】

【0088】
【化40】

【0089】
【化41】

【0090】
【化42】

【0091】
【化43】

【0092】
【化44】

【0093】
【化45】

【0094】
【化46】

【0095】
【化47】

【0096】
【化48】

【0097】
【化49】

【0098】
【化50】

【0099】
【化51】

【0100】
また、本発明の重合性組成物には、空気界面側に分布する排除体積効果を有する界面活性剤をさらに含有させることができる。該界面活性剤としては、重合性組成物を支持基板等に塗布することを容易にしたり、液晶相の配向を制御したりする等の効果を与えるものが好ましい。かかる界面活性剤としては、4級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、ポリエチレングリコール及びそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ペルフルオロアルキルスルホン酸塩、ペルフルオロアルキルカルボン酸塩、ペルフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、ペルフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等が挙げられる。界面活性剤を使用する場合、その好ましい使用量は、界面活性剤の種類、組成物の成分比等に依存するが、本発明の重合性化合物と上記液晶化合物との合計量100質量部に対して、0.01〜5質量部の範囲であることが好ましく、0.05〜1質量部の範囲内がより好ましい。
【0101】
また、本発明の重合性組成物には、必要に応じて添加物をさらに含有させてもよい。重合性組成物の特性を調製するための添加物としては、例えば、保存安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、無機物及び有機物等の微粒子化物、並びにポリマー等の機能性化合物が挙げられる。
【0102】
上記保存安定剤は、重合性組成物の保存安定性を向上させる効果を付与することができる。使用できる保存安定剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、2−ナフチルアミン類、2−ヒドロキシナフタレン類等が挙げられる。これらを添加する場合は、本発明の重合性化合物及び上記液晶化合物との合計量100質量部に対して、1質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下が特に好ましい。
【0103】
上記酸化防止剤としては、特に制限なく公知の化合物を使用することができ、ヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、トリフェニルホスファイト、トリアルキルホスファイト等が挙げられる。
【0104】
上記紫外線吸収剤としては、特に制限なく公知の化合物を使用することができ、例えば、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物又はニッケル錯塩系化合物等によって紫外線吸収能をもたせたものを用いることができる。
【0105】
上記微粒子化物は、光学(屈折率)異方性(Δn)を調整したり、重合体の強度を上げたりするために用いることができる。上記微粒子化物の材質としては、無機物、有機物、金属等が挙げられる。凝集防止のため、上記微粒子化物としては、0.001〜0.1μmの粒子径のものが好ましく、0.001〜0.05μmの粒子径のものがさらに好ましい。また、粒子径の分布がシャープであるものが好ましい。上記微粒子化物を使用する場合は、本発明の重合性化合物と上記液晶化合物との合計量100質量部に対して、0.1〜30質量部の範囲内で使用することが好ましい。
【0106】
上記無機物としては、セラミックス、フッ素金雲母、フッ素四ケイ素雲母、テニオライト、フッ素バーミキュライト、フッ素ヘクトライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、モンモリロナイト、バイデライト、カオリナイト、フライポンタイト、ZnO、TiO2、CeO2、Al23、Fe23、ZrO2、MgF2、SiO2、SrCO3、Ba(OH)2、Ca(OH)2、Ga(OH)3、Al(OH)3、Mg(OH)2、Zr(OH)4等が挙げられる。また、炭酸カルシウムの針状結晶等の微粒子は光学異方性を有し、このような微粒子によって重合体の光学異方性を調節できる。
上記有機物としては、カーボンナノチューブ、フラーレン、デンドリマー、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレート、ポリイミド等が挙げられる。
【0107】
上記ポリマーは、重合体の電気特性や配向性を制御することができる。上記ポリマーとしては、上記溶剤に可溶性の高分子化合物が好ましく使用することができる。かかる高分子化合物としては、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエポキサイド、ポリエステル、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0108】
以上に述べた本発明の重合性化合物以外の任意成分(但し、液晶化合物、ラジカル重合開始剤及び溶剤を除く)は、特に制限なく、作製される重合体の特性を損なわない範囲で適宜使用することができるが、本発明の重合性化合物と上記液晶化合物との合計量100質量部に対して、全任意成分の合計で好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下となるようにする。
【0109】
次に、本発明の重合体について説明する。
本発明の重合体は、例えば、上記重合性組成物を溶剤に溶解して溶液とした後、支持基板に塗布して、重合性組成物中の液晶分子を配向させた状態で脱溶媒し、次いでエネルギー線を照射して重合することにより得ることができる。
【0110】
上記支持基板としては、特に限定されないが、好ましい例としては、ガラス板、ポリエチレンテレフタレート板、ポリカーボネート板、ポリイミド板、ポリアミド板、ポリメタクリル酸メチル板、ポリスチレン板、ポリ塩化ビニル板、ポリテトラフルオロエチレン板、セルロース板、シリコン板、反射板、シクロオレフィンポリマー、方解石板等が挙げられる。このような支持基板上に、後述のようにポリイミド系配向膜又はポリビニルアルコール系配向膜を施したものが、特に好ましく使用することができる。
【0111】
上記支持基板に本発明の重合性組成物の溶液を塗布する方法としては、公知の方法を用いることができ、該方法としては、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、流延成膜法等が挙げられる。尚、本発明の重合体の膜厚は、用途等に応じて適宜選択されるが、好ましくは0.001〜30μm、より好ましくは0.001〜10μm、特に好ましくは0.005〜8μmの範囲から選択される。
【0112】
本発明の重合性組成物中の液晶分子を配向させる方法としては、例えば、支持基板上に事前に配向処理を施す方法が挙げられる。配向処理を施す好ましい方法としては、各種ポリイミド系配向膜又はポリビニルアルコール系配向膜からなる液晶配向層を支持基板上に設け、ラビング等の処理を行う方法が挙げられる。また、支持基板上の重合性組成物に磁場や電場等を印加する方法等も挙げられる。
【0113】
本発明の重合性組成物を重合させる方法は、光、電磁波又は熱を用いる公知の方法を適用できる。光又は電磁波による重合反応としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合、リビング重合等が挙げられる。これらの重合反応によれば、重合性組成物が液晶相を示す条件下で、重合を行なわせることが容易である。また、磁場や電場を印加しながら架橋させることも好ましい。支持基板上に形成した液晶(共)重合体は、そのまま使用してもよいが、必要に応じて、支持基板から剥離したり、他の支持基板に転写したりして使用してもよい。
【0114】
上記光の好ましい種類は、紫外線、可視光線、赤外線等である。電子線、X線等の電磁波を用いてもよい。通常は、紫外線又は可視光線が好ましい。好ましい波長の範囲は150〜500nmである。さらに好ましい範囲は250〜450nmであり、最も好ましい範囲は300〜400nmである。光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)等が挙げられるが、高圧水銀ランプ又は超高圧水銀ランプを使用することが好ましい。光源からの光はそのまま重合性組成物に照射してもよく、フィルターによって選択した特定の波長(又は特定の波長領域)を重合性組成物に照射してもよい。好ましい照射エネルギー密度は、2〜5000mJ/cm2であり、さらに好ましい範囲は10〜3000mJ/cm2であり、特に好ましい範囲は100〜2000mJ/cm2である。好ましい照度は0.1〜5000mW/cm2であり、さらに好ましい照度は1〜2000mW/cm2である。光を照射するときの温度は、重合性組成物が液晶相を有するように設定できるが、好ましい照射温度は100℃以下である。100℃以上の温度では、熱による重合が起こり得るので良好な配向が得られない場合がある。
【0115】
本発明の重合体は、光学異方性を有する成形体として利用することができる。この成形体は、例えば、位相差板(1/2波長板、1/4波長板等)、偏光素子、二色性偏光板、液晶配向膜、反射防止膜、選択反射膜、視野角補償膜等の光学フィルム等に用いて光学補償に使用することができる。特にディスプレイ用光学フィルムに好適である。その他に、液晶レンズ、マイクロレンズ等の光学レンズ、高分子分散型液晶(PDLC)電子ペーパー、デジタルペーパー等の情報記録材料にも利用することができる。
【実施例】
【0116】
以下、合成例、実施例、比較例及び評価例をもって本発明を更に説明する。しかしながら、本発明は以下の合成例等によって制限を受けるものではない。尚、下記合成例1は、本発明の重合性化合物の実施例を示すものであり、下記実施例1は、本発明の重合性組成物及び該重合性組成物を用いた本発明の重合体の実施例を示すものである。また、下記評価例においては、実施例1の重合体及び比較例1の重合体の物性を評価した。
【0117】
〔合成例1〕(化合物No.1の製造)
化合物No.1を〔化52〕に示す反応式に従い、下記の手順で合成した。
【0118】
【化52】

【0119】
窒素雰囲気下において、メタンスルホニルクロリド(MsCl)0.76g(6.63mmol)及びテトラヒドロフラン(THF)4gを混合後、−30℃まで冷却し、3,4−ジアクリロイルオキシ安息香酸1.57g(5.99mmol)及びトリエチルアミン(TEA)0.73g(7.21mmol)をテトラヒドロフラン(THF)8gに溶解した溶液を滴下し、1時間攪拌した。攪拌後、4−ジメチルアミノピリジン7mg(0.06mmol)及び〔化52〕に示すフェノール化合物〔2−アクリロイルオキシヘキシルオキシ−6−(3−プロピオニル−4−ヒドロキシ)フェニルオキシカルボニルナフタレン〕3g(6.12mmol)を加え、トリエチルアミン0.73g(7.21mmol)を滴下し、2時間攪拌して反応させた。反応後、水洗を行い、溶媒を留去して残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサンの混合溶媒)により精製し、トルエン/メタノールの混合溶媒で再結晶し、白色固体2.09g(収率46%)を得た。
得られた白色固体について分析を行ったところ、目的物である化合物No.1と同定された。これらの分析結果について下記に示す。
【0120】
(1)1H−NMR[CDCl3](ppm)
1.1(t;3H)、1.3−1.6(m;4H)、1.7(quin;2H)、1.9(quin;2H)、2.9(q;2H)、4.1(t;2H)、4.2(t;2H)、5.8(m;1H)、6.0−6.2(m;3H)、6.2−6.5(m;3H)、6.6(d;2H)、7.1−7.3(m;3H)、7.4−7.5(m;2H)、7.7−7.9(m;3H)、8.1−8.2(m;3H)、8.7(s;1H)
【0121】
(2)IR[KBr錠剤法](cm-1
586、756、799、829、864、903、945、980、1015、1072、1146、1188、1281、1346、1400、1481、1501、1620、1701、1720、1751、2858、2943、3082
【0122】
(3)相転移温度
得られた化合物No.1について、示差走査熱量分析装置(サーモプラスDSC−8230;(株)リガク製)にて、窒素雰囲気下(50ml/min)で、30℃から120℃まで5℃/minで昇温した後、120℃から30℃まで5℃/minで降温した際のDSC曲線のピーク温度、及び偏光顕微鏡を用いた光学組織の観察結果により、下記の相転移温度を確認した。
【0123】
【化53】

【0124】
〔実施例1〕重合性組成物及び重合体の作製
下記の手順([1]重合性組成物溶液の調製、[2]ガラス基板への塗布)に従い、本発明の重合性組成物から重合体を作製した。
【0125】
[1]重合性組成物溶液の調製
表1に記載の配合に従って、実施例1−1及び1−2の重合性組成物をそれぞれ調製した。重合性組成物1.0gを溶媒(メチルエチルケトン)4.0gに添加して溶解し、ラジカル重合開始剤(N−1919;(株)ADEKA製)0.03gを加えて完全に溶解した後に、0.45μmフィルターでろ過処理を実施して、実施例1−1及び1−2の重合性組成物溶液をそれぞれ調製した。
【0126】
[2]ガラス基板への塗布
上記[1]で調製した重合性組成物溶液を、ポリイミドを塗布しラビングを施したガラス基板上に、スピンコーターで塗工した。塗工は、膜厚が約1.0μmになるように、スピンコーターの回転数及び時間を調整して実施した。塗工後、ホットプレートを用いて100℃で3分間乾燥して室温下で5分間冷却し、次いで高圧水銀灯(120W/cm2)を20秒間照射し、塗工膜を硬化させて重合体を得た。
【0127】
〔比較例1〕重合性組成物及び重合体の作製
重合性組成物の配合を変更した以外は〔実施例1〕と同様にして、比較例1−1、1−2及び1−3の重合性組成物をそれぞれ調製し、各重合性組成物を用いて重合体をそれぞれ作製した。尚、重合性組成物の配合は、それぞれ表1に記載した通りとした。
【0128】
〔評価例〕
上記実施例1及び比較例1で得られた重合体について、物性(配向の均質性、鉛筆硬度及び耐熱性)の評価を以下のようにして実施した。これらの結果を下記表1に示す。
【0129】
(1)配向の均質性
得られた重合体の配向の均質性を、偏光顕微鏡を用いて評価した。クロスニコル下で重合体試料を設置したステージを回転させることによって、重合体の配向状態を観察し、配向の均質性について評価した。重合体の配向が均一に得られていれば○、配向が得られても不均一であれば△、重合体に結晶等が発生して配向が全く得られていなければ×とした。
【0130】
(2)鉛筆硬度
得られた重合体の鉛筆硬度を、JIS K−5600−5−4の測定方法に準じて評価した。即ち、水平な重合体の膜表面に対して、次第に硬度の高い鉛筆を45°の角度で押しつけることによって、膜表面に傷が生じた際の鉛筆硬度を求めた。
【0131】
(3)耐熱性
得られた重合体を200℃のオーブンで30分間加熱し、加熱前後のリターデーション(R)を測定した。加熱前後において、リターデーション(R)が5%以上変化した場合は×、5%未満の変化であった場合は○とした。
尚、リターデーション(R)は、偏光顕微鏡を用いてセナルモン法に基づいて、室温25℃で波長546nmにおいて測定した。
【0132】
【表1】

【0133】
【化54】

【0134】
上記表1の結果より、以下のことが明らかである。
本発明以外の重合性化合物である比較化合物1のみを用いて作製した重合体(比較例1−1)は、耐熱性や膜表面の硬度(鉛筆硬度)が満足できるものではなかった。また、三官能の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であるが、本発明の重合性化合物でない比較化合物2を用いた場合(比較例1−2及び比較例1−3)は、膜表面に結晶の析出による白化が認められ、均一な重合体が得られなかった。
それに対して、本発明の重合性化合物を使用した場合(実施例1−1及び1−2)は、膜表面の硬度及び耐熱性が向上し、配向の均質性も実用に耐え得るレベルを確保することができた。
【0135】
以上より、本発明の重合性化合物を含有する重合性組成物を光硬化して得られる重合体は、硬度及び耐熱性に優れ、光学偏光子、位相差板、視覚補償フィルム、輝度向上フィルム及び反射膜等の光学フィルムとして有用であることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される重合性化合物。
【化1】

(一般式(1)中、X1、X2及びX3は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、
Yは、ハロゲン原子、ニトリル基、分岐を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、分岐を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルコキシ基、分岐を有していてもよい炭素原子数2〜8のアルケニル基、分岐を有していてもよい炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基、−COR、−COOR又は−OCORを表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基又は置換基を有してもよい6員環を表し、
環A及び環Bは、縮合環又は6員環の環構造を表し、少なくとも一つは縮合環であり、該縮合環及び該6員環は置換基を有していてもよく、該6員環中の炭素原子はヘテロ原子で置換されていてもよく、
1、L2及びL3は、各々独立して、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−(CH2a−、−(CH2b−O−、−O−(CH2c−、−O−(CH2d−O−、−(CH2e−O−CO−、−CO−O−(CH2f−、−(CH2g−CO−O−、−O−CO−(CH2h−、−(CH2i−O−CO−O−、−O−CO−O−(CH2j−、−O−(CH2k−O−CO−、−CO−O−(CH2l−O−、−O−(CH2m−CO−O−、−O−CO−(CH2n−O−、−O−(CH2o−O−CO−O−、−O−CO−O−(CH2p−O−、−(CH2CH2O)q−、又は−(OCH2CH2r−で表される何れか一種を表し、a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、k、l、m、n、o及びpは各々独立して1〜8の整数を表し、q及びrは各々独立して1〜3の整数を表す。)
【請求項2】
上記一般式(1)において、Yが−COR、−COOR又は−OCORである請求項1記載の重合性化合物。
【請求項3】
上記一般式(1)において、環A及び環Bの少なくとも一つがナフタレン環である請求項1又は2記載の重合性化合物。
【請求項4】
上記一般式(1)において、L1が−COO−であり、L2が−OCO−である請求項1〜3の何れかに記載の重合性化合物。
【請求項5】
上記一般式(1)において、L3が−(CH2a−又は−O−(CH2c−である請求項1〜4の何れかに記載の重合性化合物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の重合性化合物を含有する重合性組成物。
【請求項7】
さらに液晶化合物を含有する請求項6記載の重合性組成物。
【請求項8】
上記重合性化合物の含有量と上記液晶化合物の含有量との合計を100質量部としたとき、上記重合性化合物の含有量が3〜100質量部である請求項7記載の重合性組成物。
【請求項9】
さらにラジカル重合開始剤を含有する請求項6〜8の何れかに記載の重合性組成物。
【請求項10】
請求項6〜9の何れかに記載の重合性組成物を光重合させることにより作製された重合体。
【請求項11】
請求項10記載の重合体を使用してなるディスプレイ用光学フィルム。

【公開番号】特開2008−214411(P2008−214411A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50966(P2007−50966)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】