説明

重合触媒、ポリオレフィンの製造方法、有機遷移金属化合物及びリガンド

本発明は、少なくとも1種の遷移金属化合物を、該遷移金属化合物を少なくとも1種のオレフィンに対して重合活性を示す種への転化が可能な少なくとも1種の助触媒と反応させることにより得られるオレフィンの単独重合体又は共重合体の製造用触媒組成物であって、
遷移金属化合物が、式(I):
【化1】


[但し、Mが元素周期表第3、4、5、6、7、8、9又は10族の元素又はランタニドを表し、
Xが同一でも異なっていてもよく、それぞれアニオン性で、1価の有機又は無機リガンドを表し、且つ相互に結合して、2価の基を形成してもよく、
nが1、2、3又は4を表し、
1が、非荷電の有機又は無機リガンドを表し、
hが0〜4までの整数を表し、
1及びR1’が、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素又は炭素原子数1〜40の有機基を表し、
2及びR2’が、同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換又は無置換のC6〜C40アリール基又はO、N、P若しくはPからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含むC2〜C40ヘテロ芳香族基を表し、
Yが、2個のsp2混成炭素原子間における2価の基を表し、2個の構成員のブリッジとしての−N(R3)−N(R4)−及び−O−N(R5)−並びに1個の構成員のブリッジとしての−O−、−N(R6)−、−N(R7)−及び−N(R89)−からなる群から選択され、且つ
3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9が、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素又は炭素原子数1〜40の有機基を表し、且つ2個の隣接基が相互に結合して、炭素原子数1〜40の2価の有機基(末端に結合する1個以上の原子と合体して、ヘテロ環式基を形成する。)を形成してもよい。]を有することを特徴とする触媒組成物に関する。
更に、本発明は、かかる触媒組成物をポリオレフィンの製造に使用する方法、本発明の触媒組成物の存在下で少なくとも1種のオレフィンを重合又は共重合することによるポリオレフィンの製造方法、式(I)で表される遷移金属化合物、ジイミンリガンド組成物を遷移金属化合物の製造に使用する方法及び遷移金属化合物の製造方法並びに特定のジイミンリガンド組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の遷移金属化合物を、該遷移金属化合物を少なくとも1種のオレフィンに対して重合活性を示す種への転化が可能な少なくとも1種の助触媒と反応させることにより得られるオレフィンの単独重合体又は共重合体の製造用触媒組成物であって、
遷移金属化合物が、式(I):
【0002】
【化1】

【0003】
[但し、Mが元素周期表第3、4、5、6、7、8、9又は10族の元素又はランタニドを表し、
Xが同一でも異なっていてもよく、それぞれアニオン性で、1価の有機又は無機リガンドを表し、且つ相互に結合して、2価の基を形成してもよく、
nが1、2、3又は4を表し、
1が、非荷電の有機又は無機リガンドを表し、
hが0〜4までの整数を表し、
1及びR1’が、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素又は炭素原子数1〜40の有機基を表し、
2及びR2’が、同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換又は無置換のC6〜C40アリール基又はO、N、P若しくはPからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含むC2〜C40ヘテロ芳香族基を表し、
Yが、2個のsp2混成炭素原子間における2価の基を表し、2個の構成員のブリッジとしての−N(R3)−N(R4)−及び−O−N(R5)−並びに1個の構成員のブリッジとしての−O−、−N(R6)−、−N(R7)−及び−N(R89)−からなる群から選択され、且つ
3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9が、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素又は炭素原子数1〜40の有機基を表し、且つ2個の隣接基が相互に結合して、炭素原子数1〜40の2価の有機基(末端に結合する1個以上の原子と合体して、ヘテロ環式基を形成する。)を形成してもよい。]を有することを特徴とする触媒組成物に関する。
【0004】
更に、本発明は、かかる触媒組成物をポリオレフィンの製造に使用する方法、本発明の触媒組成物の存在下で少なくとも1種のオレフィンを重合又は共重合することによるポリオレフィンの製造方法、式(I)で表される遷移金属化合物、ジイミンリガンド組成物を遷移金属化合物の製造に使用する方法及び遷移金属化合物の製造方法並びに特定のジイミンリガンド組成物に関する。
【背景技術】
【0005】
オレフィンの重合体及び共重合体は、経済的に極めて重要である。なぜなら、多量のモノマーが容易に入手可能であり且つ製造処理又は処理パラメータを変更することによってポリマーを広範囲にて変更可能だからである。製造処理において、使用される触媒について特に注意を払う必要がある。チーグラ−ナッタ触媒に加え、種々のシングルサイト触媒の重要性が高まっている。シングルサイト触媒において、詳細に試験された中心原子は、例えば、メタロセン触媒(H.-H. Brintzinger等による非特許文献1)におけるようなZrと、Ni若しくはPd(特許文献1)又はFe及びCo(例えば特許文献2)である。Ni、Pd、Fe及びCoの錯体は、“後周期遷移金属”の錯体とも称されている。
【0006】
メタロセン触媒は、工業的な使用の点において不都合を有している。もっとも屡々使用されるメタロセン、すなわちジルコノセン及びハフノセンは、加水分解に対して不安定である。更に、大抵のメタロセンは、アルコール、エーテル又は一酸化炭素等の多くの触媒毒に対して不安定であり、これによりモノマーを注意して精製する必要がある。
【0007】
Ni又はPd錯体(特許文献1)は、分岐度が高いポリマー(経済的な重要性は殆どない)の形成に触媒作用を及ぼすのに対し、Fe又はCoの錯体を使用することにより、コモノマーの割合が極めて小さく殆ど直鎖のポリエチレンを形成する。
【0008】
G. J. P. Britovsek等により非特許文献2及び非特許文献3に示されているように、極めて用途の広い重合活性錯体に関する研究を継続するのは重要である。なぜなら、ポリオレフィンは経済的に極めて重要だからである。プロセスエンジニアリングの観点から特に望ましい特性を有する重合活性錯体を見出すことに対する関心が存在する。
【0009】
【特許文献1】WO96/23010
【特許文献2】WO98/27124
【非特許文献1】Angew, Chem. 1995, 107, 1255
【非特許文献2】Angew, Chem. 1999, 111, 448
【非特許文献3】Angew, Chem. Int. Ed. Engl 1999, 38, 428
【発明の開示】
【0010】
従って、本発明の目的は、非メタロセンを基礎とするオレフィンの重合用の新規な触媒組成物を見出し、高分子量ポリマーの形成のためのオレフィンの重合に適当な新規錯体を提供し、本発明の錯体の製造方法を提供し、そして本発明の触媒組成物を使用するオレフィンの重合又は共重合のための経済的な方法を提供することにある。
【0011】
本発明者等は、上記目的が冒頭に定義された触媒組成物により達成されることを見出した。
【0012】
式Iにおいて、各記号の定義は下記の通りである:
Mは、元素周期表第3、4、5、6、7、8、9又は10族の元素又はランタニドを表し、例えば、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケ又はパラジウムであり、好ましくは鉄、ニッケル又はパラジウムであり、特に好ましくはニッケル又はパラジウムであり、特にニッケルである。
【0013】
基Xは、同一でも異なっていてもよく、特に同一であり、それぞれアニオン性で、1価の有機又は無機リガンドを表し、且つ2個の基Xが相互に結合して、2価の基を形成してもよい。Xは、ハロゲンを表すのが好ましく、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、好ましくは塩素又は臭素であり、また、水素、C1〜C20、好ましくはC1〜C4アルキル、C2〜C20、好ましくはC2〜C4アルケニル、C6〜C22、好ましくはC6〜C10アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個、好ましくは1〜4個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜22個、好ましくは6〜10個のアルキルアリール又はアリールアルキルを表す。Xは、ハロゲンを表すのが特に好ましい。
【0014】
nは、1、2、3又は4を表し、Mの酸化数に相当するのが一般的である。nは2又は3であるのが好ましく、特に2である。
【0015】
1は、非荷電の有機又は無機リガンドを表す。かかる非荷電リガンドの例示は、ホスフィン、例えばトリフェニルホスフィン、アミン、例えばトリエチルアミン又はN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、エーテル、例えばジアルキルエーテル(例、ジエチルエーテル)又は環式エーテル(例、テトラヒドロフラン)、水、アルコール、例えばメタノール又はエタノール、ピリジン、ピリジン誘導体、例えば2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2,3−ルチジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、2,6−ルチジン又は3,5−ルチジン、一酸化炭素、そしてC1〜C12アルキルニトリル又はC6〜C14アリールニトリル、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル又はベンゾニトリルである。更に、1個以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物もリガンドとして働く場合もある。
【0016】
hは、0〜4までの整数である。
【0017】
1及びR1’は、同一でも異なっていてもよく、同一であるのが好ましく、それぞれ水素又は炭素原子数1〜40の有機基を表す。
【0018】
かかる基の好ましい例は、環式、分岐又は非分岐のC1〜C20、好ましくはC1〜C8アルキル、C2〜C20、好ましくはC2〜C8アルケニル、C6〜C22、好ましくはC6〜C10アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個、好ましくは1〜4個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜22個、好ましくは6〜10個のアルキルアリール又はアリールアルキルであり、これらの基はハロゲン化されていても良く、或いはこれらの基は、置換されていても良い飽和又は不飽和、特に芳香族のヘテロ環式基であっても良く、このヘテロ環式基は、2〜40個、特に4〜20個の炭素原子を有し、少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくはO、N、S及びPからなる群から選択されるヘテロ原子、特にNを含んでいる。
【0019】
1及びR1’は、それぞれ水素、環式、分岐又は非分岐のC1〜C8アルキル、C6〜C10アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜4個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜10個のアルキルアリール又はアリールアルキルを表すのが特に好ましく、或いはR1及びR1’は、単結合を介して結合し且つ置換されていても良い5員又は6員の窒素含有へテロ芳香族化合物を表すのが特に好ましい。
【0020】
1及びR1’の特に好ましい例示は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ベンジル、2−フェニルエチル、フェニル、ペンタフルオロフェニル、2−トリル、3−トリル、4−トリル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,6−ジ(イソプロピル)フェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、3,5−ジ(tert−ブチル)フェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,3,4−トリメチルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、フェナントリル、p−イソプロピルフェニル、p−tert−ブチルフェニル、p−s−ブチルフェニル、p−シクロヘキシルフェニル、p−トリメチルシリルフェニル、N−ピロリル、ピロール−2−イル、ピロール−3−イル、N−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、1,2,4−トリアゾール−3−イル、1,2,4−トリアゾール−4−イル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、N−インドリル及びN−カルバゾリルである:最後に示された窒素含有複素環式化合物は、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル又はフェニル等の置換基を有していても良い。
【0021】
1及びR1’は、C6〜C10アリール又はアルキル部分の炭素原子数が1〜4個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜10個のアルキルアリールを表すのが極めて好ましく、或いはR1及びR1’は、単結合を介して結合し且つ置換されていても良い5員又は6員の窒素含有へテロ芳香族化合物を表すのが極めて好ましい。R1及びR1’は、2,6−ジ−C1〜C4アルキル置換フェニル基を表すのが特に好ましい。
【0022】
2及びR2’は、同一でも異なっていてもよく、好ましくは同一であり、それぞれ置換又は無置換のC6〜C40アリール基又はO、N、S及びPからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子、特にNを含むC2〜C40ヘテロ芳香族基を表す。
【0023】
2及びR2’は、それぞれ置換又は無置換のアリール基、例えばフェニル、ペンタフルオロフェニル、2−トリル、3−トリル、4−トリル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,6−ジ(イソプロピル)フェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、3,5−ジ(tert−ブチル)フェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,3,4−トリメチルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、フェナントリル、p−イソプロピルフェニル、p−tert−ブチルフェニル、p−s−ブチルフェニル、p−シクロヘキシルフェニル又はp−トリメチルシリルフェニルを表すのが好ましい。
【0024】
Yは、sp2混成炭素原子の間に配置され、2個の構成員を有するブリッジとしての−N(R3)−N(R4)−及び−O−N(R5)−並びに1個の構成員を有するブリッジとしての−O−、−N(R6)−、−N(OR7)−及び−N(R89)−からなる群から選択され、好ましくは2個の構成員のブリッジとしての−N(R3)−N(R4)−及び−O−N(R5)−からなる群から選択される2価の基を表し、且つR3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素又は炭素原子数1〜40の有機基を表し、その際に、2個の隣接基が相互に結合して2価の有機基を形成しても良く、この2価の有機基は、炭素原子数1〜40であり且つ末端に結合する1個以上の原子と合体してヘテロ環式基を形成する。
【0025】
基R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の好ましい例示は、環式、分岐又は非分岐のC1〜C20、好ましくはC1〜C8アルキル、C2〜C20、好ましくはC2〜C8アルケニル、C6〜C22、好ましくはC6〜C10アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個、好ましくは1〜4個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜22個、好ましくは6〜10個のアルキルアリール又はアリールアルキルであり、これらの基はハロゲン化されていても良く、或いはこれらの基は、置換されていても良い飽和又は不飽和、特に芳香族のヘテロ環式基であっても良く、このヘテロ環式基は、2〜40個、特に4〜20個の炭素原子を有し、少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくはO、N、S及びPからなる群から選択されるヘテロ原子、特にNを含んでいる。
【0026】
2個の隣接基がこれらの結合する1個以上の原子と結合して、ヘテロ環式基を形成する場合、ヘテロ環式基は、4〜8員、特に5員又は6員の、飽和又は不飽和であっても良い環式基を表すのが好ましい。
【0027】
本発明によれば、基R1、R1’、R2、R2’、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、本発明の触媒組成物の重合特性を変更しない官能基を更に含んでいても良いが、官能基は、重合条件下で化学的に不活性である必要がある。
【0028】
更に、本発明の置換基は、更に限定されない限り、以下のように定義される:
本願発明で用いられる“炭素原子数1〜40の有機基”なる用語は、C1〜C40アルキル基、C1〜C10フルオロアルキル基、C1〜C12アルコキシ基、C3〜C20飽和ヘテロ環式基、C6〜C40アリール基、C2〜C40ヘテロ芳香族基、C6〜C10フルオロアリール基、C6〜C10アリールオキシ基、C3〜C18トリアルキルシリル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基、C7〜C40アリールアルキル基又はC8〜C40アリールアルケニル基を表す。
【0029】
本願発明で用いられる“アルキル”なる用語は、直鎖か、僅かに分岐しているか、又は分岐度の高く、環式であっても良い飽和炭化水素を含んでいる。C1〜C18アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、イソヘキシル、sec−ブチル又はtert−ブチルであるのが好ましい。
【0030】
本願発明で用いられる“アルケニル”なる用語は、直鎖か、僅かに分岐しているか、又は分岐度の高く、1個以上の二重結合(1つにまとまっていても、又は1つおきであっても良い)を有する炭化水素である。
【0031】
本願発明で用いられる“飽和ヘテロ環式基”なる用語は、例えば、単環式又は多環式の、置換されていても良い炭化水素基であり、この炭化水素基において、1個以上の炭素原子、CH基及び/又はCH2基は、O、N、S及びPからなる群から選択されるのが好ましいヘテロ原子で置換されている。置換されていても良い飽和ヘテロ環式基の好ましい例示は、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチエニル等であり、また、これらの、メチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−及びtert−ブチル−置換誘導体である。
【0032】
本願発明で用いられる“アリール”なる用語は、例えば、芳香族で且つ縮合していても良い多環芳香族炭化水素基であり、直鎖又は分岐のC1〜C18アルキル、C1〜C18アルコキシ、C2〜C10アルケニル又はハロゲン、特にフッ素でモノ置換又はポリ置換されていても良い。置換されていても良いアリールの好ましい例示は、特に、フェニル、ペンタフルオロフェニル、4−メチルフェニル、4−エチルフェニル、4−プロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−tert−ブチルフェニル、4−メトキシフェニル、1−ナフチル、9−アントリル、9−フェナントリル、3,5−ジメチルフェニル、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル又は4−トリフルオロメチルフェニルである。
【0033】
本願発明で用いられる“ヘテロ芳香族基”なる用語は、例えば、1個以上の炭素原子が窒素、リン、酸素又は硫黄或いはこれらの組み合わせによって置換されている芳香族炭化水素基である。これは、アリール基のように、直鎖又は分岐のC1〜C18アルキル、C2〜C10アルケニル又はハロゲン、特にフッ素でモノ置換又はポリ置換されていても良い。好ましい例示は、フリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリミジニル、ピラジニル等であり、また、これらの、メチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−及びtert−ブチル−置換誘導体である。
【0034】
本願発明で用いられる“アリールアルキル”なる用語は、例えば、アリール含有置換基であり、アリール含有置換基のアリール基は、アルキル鎖を介して分子の残余部分に結合している。適例は、ベンジル、置換ベンジル、フェネチル、置換フェネチル等である。
【0035】
フルオロアルキル及びフルオロアリールなる用語は、各置換基の少なくとも1個の水素原子、好ましくは1個を超える水素原子、そして全ての水素原子がフッ素原子で置換されていることを意味する。フッ素含有置換基の例は、本願発明の場合、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、4−ペルフルオロ−tert−ブチルフェニル等が好ましい。
【0036】
上述の触媒組成物において、遷移金属化合物は、式(I)[但し、MがNi又はPd、特にNiを表し、Xがハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素又はヨウ素を表し、塩素又は臭素を表すのが好ましく、特に臭素を表し、nが2を表し、hが0を表し、R1及びR1’が同一であり、それぞれ置換又は無置換のC6〜C40アリール基又は炭素原子数4〜20の窒素含有ヘテロ芳香族基を表し、置換されていても良いC6〜C40アリール又はアルキル部分の炭素原子数が1〜10個、好ましくは1〜4個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜22個、好ましくは6〜10個のアルキルアリールを表すのが好ましく、特に2位及び6位が2個のC1〜C4アルキル基で置換されているフェニル基であり、これらの基は、ハロゲン化されていても良く、好ましい例示は、フェニル、ペンタフルオロフェニル、2−トリル、3−トリル、4−トリル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,6−ジ(イソプロピル)フェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、3,5−ジ(tert−ブチル)フェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,3,4−トリメチルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、フェナントリル、p−イソプロピルフェニル、p−tert−ブチルフェニル、p−s−ブチルフェニル、p−シクロヘキシルフェニル又はp−トリメチルシリルフェニルであり、特に2,6−ジメチルフェニル及び2,6−ジ(イソプロピル)フェニルであり、そして他の記号が上記と同義である。]を有する。
【0037】
本発明の触媒組成物の成分として使用され得る式(I)の遷移金属化合物の具体例は、以下の通りであるが、その例示によって限定されるものではない:
【0038】
【化2】

【0039】
各錯体の合成法は、原則として公知であり、EP1336615に記載されているように行うことができる。
【0040】
式(I)で表される上述の遷移金属化合物と合体して本発明の重合活性触媒組成物を形成する助触媒は、遷移金属化合物を、少なくとも1種のオレフィンに対して重合活性を示す種に転化することができる。従って、助触媒は、屡々、活性化合物と称されることもある。重合活性の遷移金属種は、屡々、カチオン性の種である。この場合、助触媒は、屡々、カチオン形成性化合物と称される。
【0041】
好適な触媒又はカチオン形成性化合物は、例えば、アルミノキサン、非荷電の強ルイス酸、ルイス酸カチオンを有するイオン性化合物又はカチオンとしてブレンステッド酸を含むイオン性化合物である。助触媒としてアルミノキサンが好ましい。
【0042】
使用可能なアルミノキサンは、例えば、WO00/31090に記載されている化合物である。特に有用な化合物は、式(III)または(IV):
【0043】
【化3】

【0044】
[但し、基R10が、C1〜C4−アルキル基、好ましくは、メチル又はエチルを表わし、
mが5〜30、好ましくは10〜25の整数を表わす。]
で表わされる開鎖状(直鎖)または環状アルミノキサン化合物である。
【0045】
これらのオリゴマーのアルミノキサン化合物は、トリアルキルアルミニウム溶液と水との反応によって製造されるのが一般的である。このようにして得られたオリゴマーのアルミノキサン化合物は、様々な長さの直鎖状分子と環状分子の混合物の形で存在するのが一般的である。従って、上記のmの値は平均値として見なされる。アルミノキサン化合物は、他のアルキル金属、好ましくはアルキルアルミニウムとの混合物として存在することもある。
【0046】
更に、式(III)または(IV)のアルミノキサン化合物の代わりに、炭化水素基または水素原子の一部をアルコキシ、アリールオキシ、シロキシまたはアミドの各基で置換した変性アルミノキサンを使用することができる。
【0047】
遷移金属化合物とアルミノキサン化合物を、アルミノキサン化合物におけるアルミニウムの、遷移金属化合物における遷移金属に対する原子比が10:1〜1000:1、好ましくは20:1〜500:1、特に30:1〜400:1の範囲になるような量で使用することが有効であることが見出された。
【0048】
非荷電の強ルイス酸として、式(V):
【0049】
【化4】

【0050】
[但し、M1が元素周期表の第13族の元素、好ましくはB、AlまたはGa、特に好ましくはBを表わし、
1、X2およびX3がそれぞれ水素、C1〜C10−アルキル、C6〜C15−アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル部分と炭素原子数6〜20個のアリール部分とを有するアルキルアリール、アリールアルキル、ハロアルキルまたはハロアリール、またはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくはハロアリール、特に好ましくはペンタフルオロフェニルを表わす。]
で表わされる化合物が好ましい。
【0051】
非荷電の強ルイス酸の他の例は、WO00/31090に記載されている。
【0052】
1、X2およびX3が同一である式(V)で表わされる化合物が特に好ましく、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが極めて好ましい。
【0053】
助触媒又はカチオン形成性化合物として適当な非荷電の強ルイス酸は、ボロン酸と2当量のトリアルキルアルミニウムとの反応による反応生成物又はトリアルキルアルミニウムと2当量の酸性のフッ素化、特に過フッ素化炭素化合物、例えばペンタフルオロフェノール又はビス(ペンタフルオロフェニル)ボリン酸との反応による反応生成物を含む。
【0054】
ルイス酸カチオンを有する好適なイオン性化合物には、式(VI):
【0055】
【化5】

【0056】
[但し、Zが元素周期表の第1〜16族に属する元素を表し、
1からQzがC1〜C28−アルキル、C6〜C15−アリール、炭素原子数1〜28個のアルキル部分と炭素原子数6〜20個のアリール部分とを有するアルキルアリールまたはアリールアルキルまたはハロアルキルまたはハロアリール、置換基としてC1〜C10−アルキルを有していてもよいC3〜C10−シクロアルキル、ハロゲン、C1〜C28−アルコキシ、C6〜C15−アリールオキシ、シリル、またはメルカプチル基等のマイナス1価に荷電された基を表わし、
aが1〜6の整数を表わし、
zが0〜5の整数を表わし、
dがа−zの差を表わすが、dは1以上である。]
で表わされるカチオンの塩様化合物が含まれる。
【0057】
特に有用なカチオンは、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、およびスルホニウムカチオン、更にカチオン性遷移金属錯体である。トリフェニルメチルカチオン、銀カチオンおよび1,1’−ジメチルフェロセニルカチオンが特に特記に値する。これらは、非配位の対イオンを有しているのが好ましく、特に、WO91/09882にも記載されているホウ素化合物、特にテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートが好ましい。
【0058】
非配位アニオンを含む塩は、ホウ素またはアルミニウム化合物、例えばアルキルアルミニウムを、2個以上のホウ素またはアルミニウム原子が互いに結合するように反応可能な第2の化合物、例えば水、および上記ホウ素またはアルミニウム化合物とイオン化したイオン性化合物を形成する第3の化合物、例えばトリフェニルクロロメタンに添加することによって製造することもできる。更に、同様にホウ素またはアルミニウム化合物と反応する第4の化合物,例えばペンタフルオロフェノールを添加することができる。
【0059】
カチオンとしてブレンステッド酸を含むイオン性化合物も同様に、非配位対イオンを有しているのが好ましい。ブレンステッド酸として、プロトン化アミンまたはアニリン誘導体が特に好ましい。好ましいカチオンは、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム、N,N−ジメチルベンジルアンモニウム、および後の2つの誘導体である。
【0060】
助触媒又はカチオン形成性化合物として好ましいイオン性化合物は、特に、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート及びN,N−ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0061】
2個以上のボレートアニオンを、2価のアニオン[(C652B−C64−B(C6522-のように互いに結合することができ、或いはボレートアニオンを、ブリッジを介して担体粒子表面の好適な官能基に結合することもできる。
【0062】
他の好適な助触媒又はカチオン形成性化合物は、WO00/31090に列挙されている。
【0063】
非荷電の強ルイス酸、ルイス酸カチオンを有するイオン性化合物、またはカチオンとしてブレンステッド酸を有するイオン性化合物の量は、遷移金属化合物に対して、0.1〜20当量が一般的であり、1〜10当量が好ましい。
【0064】
好適な助触媒又はカチオン形成性化合物は、ジ[ビス(ペンタフルオロフェニル)ボロキシ]メチルアランのようなホウ素−アルミニウム化合物である。この種のホウ素−アルミニウム化合物は、例えばWO99/06414に記載されている。
【0065】
上述の全ての助触媒又はカチオン形成性化合物の混合物を使用することもできる。好ましい混合物は、アルミノキサン、特にメチルアルミノキサンと、イオン性化合物、特にテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンを含む化合物及び/又は非荷電の強ルイス酸、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを含む化合物とから構成されている。
【0066】
遷移金属化合物と助触媒又はカチオン形成性化合物の両方を、溶剤、好ましくは炭素原子数6〜20個の芳香族炭化水素、特にキシレン又はトルエン中で使用するのが好ましい。
【0067】
本発明の触媒組成物は、式(VII):
【0068】
【化6】

【0069】
[但し、M2がアルカリ金属、アルカリ土類金属又は周期表第13族の金属、すなわちホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム又はタリウムを表し、
11が水素、C1〜C10アルキル、C6〜C15アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個で、アリール部分の炭素原子数が6〜20個のアルキルアリールまたはアリールアルキルを表し、
12及びR13が同一でも異なっていても良く、それぞれ水素、ハロゲン、C1〜C10アルキル、C6〜C15アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個で、アリール部分の炭素原子数が6〜20個のアルキルアリール、アリールアルキル又はアルコキシを表し、
rが1〜3までの整数を表し、
s及びtが、0〜2の整数を表し、且つr+s+tの合計がM2の原子価に相当する。]
で表される金属化合物を更に含んでいても良い。
【0070】
尚、式(VII)で表される金属化合物は、助触媒又はカチオン形成性化合物と同一でないのが一般的である。式(VII)で表わされる種々の金属化合物の混合物を使用することも可能である。
【0071】
式(VII)で表わされる金属化合物の中で、M2がリチウム、マグネシウム又はアルミニウムを表し、R12及びR13がC1〜C10−アルキルを表す金属化合物が好ましい。
【0072】
式(VII)で表される特に好ましい金属化合物は、n−ブチルリチウム、n−ブチル−n−オクチルマグネシウム、n−ブチル−n−ヘプチルマグネシウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム及びトリメチルアルミニウム並びにこれらの混合物である。
【0073】
式(VII)で表される金属化合物を使用する場合、本発明の触媒組成物中において、式(I)で表される遷移金属錯体における遷移金属に対する式(VII)におけるM2のモル比が800:1〜1:1、特に200:1〜2:1になるような量で存在しているのが好ましい。
【0074】
本発明の触媒組成物は、更に担体を含んでいるのが特に好ましい。
【0075】
かかる担持触媒組成物を得るために、担持触媒組成物を担体と反応させることができる。担体、遷移金属錯体化合物及び助触媒を組み合わせる順序は原則として重要ではない。遷移金属化合物と助触媒は、相互に独立して、または同時に固定することができる。各工程の後に固体を適当な不活性溶剤、例えば脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素で洗浄することができる。
【0076】
担体として、有機又は無機の不活性固体であっても良い微分散担体(微粒子状の担体)を使用するのが好ましい。特に、担体は、多孔性固体、例えばタルク、シート状シリケート、無機酸化物又は微粒子状のポリマー粉体(例えば、ポリオレフィン)であっても良い。
【0077】
適当な無機酸化物は、元素周期表の第2、3、4、5、13、14、15及び16族の元素(単体)の酸化物の中から見出すことができる。担体として好まし酸化物は、例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム並びに単体のカルシウム、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム及び/又はチタンの混合酸化物、更に対応の酸化物混合物である。単独で、または上述の好ましい酸化物担体との組み合わせとして使用される他の無機酸化物は、例えば、MgO、ZrO2、TiO2又はB23である。好ましい混合酸化物は、例えばか焼されたヒドロタルサイトである。
【0078】
比表面積が10〜1000m2/gであり、細孔容積が0.1〜5ml/gであり、平均粒径が1〜500μmの担体材料を使用するのが好ましい。比表面積が50〜500m2/g、細孔容積が0.5〜3.5ml/g、そして平均粒径が5〜350μmである担体が好ましい。比表面積が200〜400m2/gであり、細孔容積が0.8〜3.0ml/gであり、平均粒径が10〜100μmである担体が特に好ましい。
【0079】
無機担体は、例えば吸着した水分を除去するために熱処理することが可能である。かかる乾燥処理は、通常80℃〜300℃、好ましくは100℃〜200℃で行われる。100〜200℃での乾燥は、減圧下及び/又は不活性ガス(例えば、窒素)のブランケット下に行われるか、或いは無機担体を200〜1000℃でか焼して、所望の固体の構造及び/又は表面の所望のOH基濃度を生成するのが好ましい。担体は、慣用の乾燥剤、例えばアルキル金属、好ましくはアルキルアルミニウム、クロロシラン又はSiCl4、その他にメチルアルミノキサンを用いて化学的に処理することができる。好適な処理方法については、例えばWO00/31090に記載されている。
【0080】
無機担体材料は化学的に変性可能である。例えば、シリカゲルを(NH42SiF6で処理してシリカゲルの表面をフッ素化するか、或いは、シリカゲルを窒素−、フッ素−又は硫黄−含有基を含むシランで処理することにより、適当に変性されたシリカゲル表面が得られる。
【0081】
微粒子状のポリオレフィン粉体(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリスチレン)等の有機担体材料を使用可能であり、そして適当な精製及び使用前の乾燥処理により、吸着湿分、溶剤残留物又は他の不純物等を含まないものとすることが好ましい。更に、官能化したポリマー担体、例えばポリスチレンを基本とし、これらの官能基、例えばアンモニウム又は水酸化物基を間に介している官能化したポリマー担体を用いることも可能であり、少なくとも1種類の触媒成分を固定することができる。
【0082】
本発明の担持触媒組成物を製造する好ましい実施の形態において、式(I)で表される少なくとも1種の遷移金属化合物を活性化合物又はカチオン形成性化合物としての少なくとも1種の助触媒と、溶解性又は不溶性、好ましくは溶解性の反応生成物、付加物、または混合物を与える好適な溶媒中で接触させる。
【0083】
次いで、このようにして得られた組成物を、脱水処理した又は不動態化処理した担体材料と混合し、溶剤を除去し、これにより得られた担持遷移金属触媒組成物を、全ての溶剤又は一部の溶剤が担体材料の細孔から除去されるまで乾燥する。担持触媒は、易流動性粉末として得られる。上述の処理の工業的な方法の例は、WO96/00243、WO98/40419またはWO00/05277に記載されている。
【0084】
別の好ましい実施の形態では、まず担体成分に助触媒又はカチオン形成性化合物を施し、次いで、この担持された助触媒又はカチオン形成性化合物を遷移金属化合物と接触させる。
【0085】
従って、重要な他の助触媒組成物は、以下の成分:
第1成分:少なくとも1種の上記のホウ素又はアルミニウム化合物、
第2成分:少なくとも1種の非荷電化合物(少なくとも1個の酸性の水素原子を有する)、
第3成分:少なくとも1種の担体、好ましくは無機酸化物担体、必要により第4成分としての塩基、好ましくは窒素含有有機塩基、例えばアミン、アニリン誘導体又は窒素を含む複素環式化合物、
を組み合わせることによって得られる混合物である。
【0086】
担持助触媒の製造で用いられるホウ素又はアルミニウム化合物は、式(VIII):
【0087】
【化7】

【0088】
[但し、R14が同一でも異なっていても良く、それぞれ水素、ハロゲン、C1〜C20アルキル、C1〜C20ハロアルキル、C1〜C10アルコキシ、C6〜C20アリール、C6〜C20ハロアリール、C6〜C20アリールオキシ、C7〜C40アリールアルキル、C7〜C40ハロアリールアルキル、C7〜C40アルキルアリール、C7〜C40ハロアルキルアリールを表すか、又は基OSiR15を表し、
15が同一でも異なっていても良く、それぞれ水素、ハロゲン、C1〜C20アルキル、C1〜C20ハロアルキル、C1〜C10アルコキシ、C6〜C20アリール、C6〜C20ハロアリール、C6〜C20アリールオキシ、C7〜C40アリールアルキル、C7〜C40ハロアリールアルキル、C7〜C40アルキルアリール、C7〜C40ハロアルキルアリールを表し、水素、C1〜C8アルキル又はC7〜C20アリールアルキルを表すのが好ましく、
3がホウ素又はアルミニウムを表し、ホウ素を表すのが好ましい。]
の化合物を表すのが好ましい。
【0089】
式(VIII)で表される特に好ましい化合物は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム及びトリイソブチルアルミニウムである。
【0090】
少なくとも1個の酸性の水素原子を有し、式(VIII)で表される化合物と反応可能な非荷電の化合物は、式(IX)、(X)又は(XI):
【0091】
【化8】

【0092】
[但し、R16が同一でも異なっていても良く、それぞれ水素、ハロゲン、C1〜C40ホウ素非含有基、例えばC1〜C20アルキル、C1〜C20ハロアルキル、C1〜C10アルコキシ、C6〜C20アリール、C6〜C20ハロアリール、C6〜C20アリールオキシ、C7〜C40アリールアルキル、C7〜C40ハロアリールアルキル、C7〜C40アルキルアリール、C7〜C40ハロアルキルアリール、基Si(R183又は基CH(SiR1832を表し、
18がC1〜C40ホウ素非含有基、例えばC1〜C20アルキル、C1〜C20ハロアルキル、C1〜C10アルコキシ、C6〜C20アリール、C6〜C20ハロアリール、C6〜C20アリールオキシ、C7〜C40アリールアルキル、C7〜C40ハロアリールアルキル、C7〜C40アルキルアリール、C7〜C40ハロアルキルアリールを表し、
17が2価のC1〜C40基、例えばC1〜C20アルキレン、C1〜C20ハロアルキレン、C6〜C20アリーレン、C6〜C20ハロアリーレン、C7〜C40アリールアルキレン、C7〜C40ハロアリールアルキレン、C7〜C40アルキルアリーレン、C7〜C40ハロアルキルアリーレンを表し、
Dが元素周期表第16族の元素を表すか、NR19を表し、且つR19が水素又はC1〜C20炭化水素基、例えばC1〜C20アルキル又はC6〜C20アリールを表し、Dが酸素を表すのが好ましく、
iが1又は2を表す。]
の化合物が好ましい。
【0093】
式(IX)で表される好適な化合物は、水、アルコール、フェノール誘導体、チオフェノール誘導体又はアニリン誘導体であり、ハロゲン化、特に過フッ素化アルコール及びフェノールが特に重要である。特に有用な化合物の例は、ペンタフルオロフェノール、1,1−ビス(ペンタフルオロフェニル)メタノール及び4−ヒドロキシ−2,2’,3,3’,4’,5,5’,6,6’−ノナフルオロビフェニルである。
【0094】
式(X)で表される好適な化合物は、ボロン酸及びボリン酸であり、特に、過フッ素化アリール基を有するボリン酸、例えば(C652BOHである。
【0095】
式(XI)で表される好適な化合物は、ジヒドロキシ化合物であり、この化合物において、2価の炭素含有基がハロゲン化されるのが好ましく、特に過フッ素化される。かかる化合物の例示は、4,4’−ジヒドロキシ−2,2’、3,3’、5,5’、6,6’−オクタフルオロビフェニルヒドレートである。
【0096】
式(VIII)で表される化合物と式(IX)又は(XI)で表される化合物との組み合わせ例は、特に、トリメチルアルミニウム/ペンタフルオロフェノール、トリメチルアルミニウム/1−ビス(ペンタフルオロフェニル)メタノール、トリメチルアルミニウム/4−ヒドロキシ−2,2’、3,3’、4’、5,5’、6,6’−ノナフルオロビフェニル、トリエチルアルミニウム/ペンタフルオロフェノール又はトリイソブチルアルミニウム/ペンタフルオロフェノール及びトリエチルアルミニウム/4,4’−ジヒドロキシ−2,2’、3,3’、5,5’、6,6’−オクタフルオロビフェニルヒドレートであり、例えば、下式:
【0097】
【化9】

のような反応生成物を形成することができる。
【0098】
式(VIII)で表される少なくも1種の化合物と式(X)で表される少なくとも1種の化合物との反応による反応生成物の例は、下式:
【0099】
【化10】

の通りである。
【0100】
原則として、各成分を組み合わせる順序は重要ではない。
【0101】
必要により、式(VIII)で表される少なくも1種の化合物と式(IX)、(X)又は(XI)で表される少なくとも1種の化合物及び必要により有機窒素塩基との反応による反応生成物を、式(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)で表される有機金属化合物と更に組み合わせた後に、担体と結合させて、担持助触媒組成物を形成する。
【0102】
好ましい変体において、第1成分、例えば式(VIII)で表される化合物を第2成分、例えば式(IX)、(X)又は(XI)で表される化合物と結合させ、そして第3成分としての担体を第4成分としての塩基と結合させ、次に、2種類の混合物を、好ましくは不活性溶剤又は懸濁媒体中で相互に反応させる。これにより形成される担持助触媒から不活性溶剤又は懸濁媒体を除去してから、式(I)で表される遷移金属化合物及び必要により式(VII)で表される金属化合物と反応させて、本発明の触媒組成物を形成する。
【0103】
最初に、本発明の固体触媒をα−オレフィン、好ましくは直鎖状C2〜C10−1−アルケン、特にエチレンまたはプロピレンと予備重合させ、次いで得られた予備重合固体触媒を実際の重合で使用することもできる。予備重合で使用された固体触媒の、この固体触媒上に重合されるモノマーに対する質量比は、1:0.1〜1:200の範囲が一般的である。
【0104】
更に、変性成分としての少量のオレフィン、好ましくはα−オレフィン、例えばビニルシクロヘキサン、スチレンまたはフェニルジメチルビニルシラン、帯電防止化合物または好適な不活性化合物、例えばワックスまたは油を添加剤として本発明の担持触媒組成物の製造中または製造後に添加することができる。遷移金属化合物に対する添加剤のモル比は、通常、1:1000〜1000:1の範囲であり、1:5〜20:1の範囲が好ましい。
【0105】
式(I)で表される上述の遷移金属化合物を基礎とする新規な触媒組成物は、使用される遷移金属化合物を極めて広範な置換形式で容易に合成することができる点において有利である。
【0106】
更に本発明は、第1に、上述の新規な触媒組成物をポリオレフィンの製造に使用する方法を提供し、第2に、上述の新規な触媒組成物の存在下で少なくも1種のオレフィンを重合又は共重合することによるポリオレフィンの製造方法を提供する。
【0107】
一般に、本発明の触媒組成物は、オレフィンを重合又は共重合する場合、本発明の触媒組成物の製造で用いられる式(VII)の金属化合物と異なっていても良い式(VII)の他の金属化合物と一緒に使用される。他の金属化合物はモノマー又は懸濁媒体に添加され、触媒活性を損なうこともある物質のモノマーを除去するために働く。1種以上の他の助触媒化合物又はカチオン形成性化合物を重合処理中に本発明の触媒組成物に更に添加することも可能である。
【0108】
オレフィンは、官能化されたオレフィン性不飽和化合物、例えばアクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミド誘導体、例えばアクリレート、メタクリレートまたはアクリロニトリル、またはアリール置換α−オレフィンを含む無極性のオレフィン性化合物であっても良い。
【0109】
式Rm−CH=CH−Rn{但し、Rm及びRnが同一であっても又は異なっていても良く、それぞれ水素又は炭素原子数1〜20個、特に1〜10個の炭化水素基を表し、或いはRm及びRnがこれらに結合する原子と合体して、1個以上の環を形成しても良い。}で表されるオレフィンを重合するのが好ましい。
【0110】
かかるオレフィンの例は、炭素原子数2〜40個、好ましくは2〜10個の1−オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン又は4−メチル−1−ペンテン、或いは無置換又は置換の芳香族ビニル化合物、例えばスチレン及びスチレン誘導体、又はジエン、例えば1,3−ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン、エチルノルボルナジエン或いは環式オレフィン、例えばノルボルネン、テトラシクロドデセン又はメチルノルボルネンである。エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン又は4−メチル−1−ペンテンが好ましい。
【0111】
本発明の触媒組成物は、エチレンの単独重合、或いはエチレンと他のα−オレフィン、特にC3〜C8−α−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン及び/又は1−オクテン及び/又は環式オレフィン、例えばノルボルネン及び/又は炭素原子数4〜20個のジエン、例えば1,4−ヘキサジエン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン又はエチルノルボルナジエンとの共重合に用いられるのが特に好ましい。エチレンとプロピレン及び/又は1−ブテンとの共重合に用いられるのが極めて好ましい。かかる共重合体の例示は、エチレン/プロピレン、エチレン/1−ブテン、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/1−オクテンの各共重合体、エチレン/プロピレン/エチリデンノルボルネン又はエチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエンの各ターポリマーである。
【0112】
重合は、オレフィンの重合に使用される慣用的な反応器内で、塊状(バルク)、懸濁、気相、または超臨界媒体中で公知の方法により行うことができる。重合は、回分法(バッチ式)により行なうことができ、または、好適には連続的に1段階以上の工程で行なうことができる。溶液法、懸濁法、撹拌気相法または気相流動層法の全てが可能である。溶剤又は懸濁媒体として、不活性炭化水素、例えばイソブタン、或いはその他にモノマー自体を用いることができる。
【0113】
重合は、−60〜300℃の温度および0.5〜3000bar(バール)の圧力下で行われ得る。50〜200℃、特に60〜100℃の範囲の温度、5〜100バール、特に15〜70バールの範囲の圧力が好ましい。平均滞留時間は、0.5〜5時間の範囲が一般的であり、0.5〜3時間の範囲が好ましい。モル質量調節剤として及び/又は活性を増大させるために、水素を重合に用いることができる。更に、一般的な添加剤、例えば耐電防止剤を使用することも可能である。本発明の触媒組成物を重合に直接用いることができる、即ち、本発明の触媒組成物を純粋な形で触媒系に加えるか、或いは本発明の触媒組成物を、不活性成分、例えばパラフィン、オイル又はワックスと混合して、計量導入適性(meterability)を改善する。
【0114】
本発明の触媒組成物は、エチレンの単独重合体及び共重合体の製造に極めて有用である。
【0115】
本発明の触媒は、それ自体公知の1種以上の他の重合触媒と一緒に用いてもよい。従って、本発明の触媒を、例えば、
チーグラ−ナッタ触媒、
元素周期表第4〜6族の遷移金属を含む担持メタロセン触媒、
後周期遷移金属から誘導される触媒(WO96/23010)、
ピリジルジイミンリガンドを有するFe又はCo錯体(WO98/27124に開示)、又は
フィリップス型の酸化クロム触媒、
と一緒に用いることができる。
【0116】
種々の触媒を相互に混合し、混合物を一緒に計量導入するか、又は共通の担体に担持させた共担持錯体を使用するか、或いは種々の触媒を別個に重合容器に同じ箇所又は異なる箇所から計量導入することも可能である。
【0117】
更に本発明は、式(I):
【0118】
【化11】

【0119】
[但し、各記号が上述した通りである。]
で表される遷移金属化合物を提供する。
【0120】
更に本発明は、式(II):
【0121】
【化12】

【0122】
[但し、各記号が式(I)と同義である。]
で表されるリガンド組成物を、遷移金属化合物の製造、好ましくはニッケル又はパラジウム、特にニッケルの遷移金属化合物の製造に使用する方法を提供する。
【0123】
従って、本発明は、式(II)で表されるリガンド組成物を遷移金属化合物と反応させる工程を含む遷移金属化合物の製造方法を提供する。非荷電のジイミンリガンド組成物を、通常、好適な遷移金属化合物、好ましくは遷移金属のハロゲン化物、例えば臭化ニッケル(II)と適当な溶剤又は懸濁媒体中で反応させる。
【0124】
更に本発明は、式(II)で表され、記号R1、R1’、R2及びR2’が式(I)と同義であり、記号Yが−N(R3)−N(R4)−又は−O−N(R5)−[但し、R3、R4及びR5が式(I)と同義である。]であるリガンド組成物を提供する。
【0125】
式(II)で表されるジイミンリガンドの置換形式は、ジイミンリガンド及び同一の遷移金属イオンMを含む遷移金属化合物の重合特性に対して極めて重要となる。
【0126】
リガンドを製造する方法の一例、すなわち塩化イミドを好適な架橋形成剤と反応させることは、公知であり、例えば、J. Org. Chem., 第36巻, No. 8, 1971, 1155-1158頁に記載されている。
【0127】
本発明を以下の実施例に基づき説明するが、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0128】
[一般的な予備備考]
全ての加工処理は、特に述べない限り、標準のシュレンク技術を用い空気及び水分を排除して行った。装置を適宜作製し、化学物質を適宜調製した。ポリマーの粘性をISO1628−3に準拠して測定した。
【0129】
[リガンドの製造]
1)N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−N’−[[(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノ]フェニルメトキシ]−N’−メチルベンズアミジン(1)の製造
a)イミドクロリドN−(2,6−ジイソプロピルフェニル)ベンズイミドクロリド(1a)の製造
【0130】
【化13】

【0131】
1.9gのN−(2,6−ジイソプロピルフェニル)ベンズアミド(6.7ミリモル)を、アルゴンでフラッシュした乾燥シュレンク管に導入した。10mlの塩化チオニルを添加した後、反応溶液を60分間還流した。過剰の塩化チオニルを高真空条件下で取り出し、残った黄色の油(化合物1a)を20mlの塩化メチレン(無水)に溶解させた。
【0132】
b)N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−N’−[[(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノ]フェニルメトキシ]−N’−メチルベンズアミジン(1)の製造
【0133】
【化14】

【0134】
N−メチルヒドロキシルアミンヒドロクロリド(0.28g、3.35ミリモル)をアルゴンでフラッシュした焼付け処理シュレンク管に導入し、無水エタノール(50ml)に溶解させた。10mlのトリエチルアミン(72ミリモル)を添加した後、得られた懸濁液を−40℃に冷却した。a)で調製され、塩化メチレンに溶解させた塩化イミド(1a)を、−40℃の条件下、滴下漏斗から溶液b)に30分でゆっくり添加した。室温まで暖めた後、反応混合物(黄色の懸濁液)を1時間撹拌した。その後の薄層クロマトグラフィ(ジエチルエーテル)によるモニタリングで完全な転化が示されていた:溶媒先端が移動した無極性成分と極性原点が得られた。反応混合物を水(約100ml)に注ぎ、生成物をそれぞれ50mlのエーテルで3回抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥し、乾燥剤をろ過した。溶剤をロータリーエバポレータで除去した後、得られた半晶質の固体を少量の塩化メチレンに溶解させ、シリカゲル床によりろ過した。このようにして、エーテルに極めて容易に溶解した無極性成分を極性成分から完全に分離した。溶剤を除去し、再結晶することにより、1.6gの(1)を黄色の固体として得た。
【0135】
【数1】

【0136】
2)N−(2,6−ジメチルフェニル)−N’−メチル−N’−[[(2,6−ジメチルフェニル)イミノ]フェニルメトキシ]ベンズアミジン(2)の製造
a)イミドクロリドN−(2,6−ジメチルフェニル)ベンズイミドクロリド(2a)の製造
【0137】
【化15】

【0138】
2.3gのN−(2,6−ジメチルフェニル)ベンズアミド(10.2ミリモル)をアルゴンでフラッシュした乾燥シュレンク管に導入した。10mlの塩化チオニルを添加した後、反応溶液を60分間還流した。過剰のSOCl2を高真空条件下で取り出し、残った黄色の油(化合物2a)を20mlの塩化メチレン(無水)に溶解させた。
【0139】
b)N−(2,6−ジメチルフェニル)−N’−メチル−N’−[[(2,6−ジメチルフェニル)イミノ]フェニルメトキシ]ベンズアミジン(2)の製造
【0140】
【化16】

【0141】
N−メチルヒドロキシルアミンヒドロクロリド(0.43g、5.1ミリモル)をアルゴンでフラッシュした焼付け処理シュレンク管に導入し、無水エタノール(40ml)に溶解させた。10mlのトリエチルアミン(72ミリモル)を添加した後、得られた懸濁液を−40℃に冷却した。a)で調製され、塩化メチレンに溶解させた塩化イミド(2a)を、−40℃の条件下、滴下漏斗から溶液b)に30分でゆっくり添加した。室温まで暖めた後、反応混合物(黄色の懸濁液)を1時間撹拌した。その後の薄層クロマトグラフィ(ジエチルエーテル)によるモニタリングで完全な転化が示されていた:溶媒先端が移動した無極性成分(2)と極性原点(副生成物)が得られた。
【0142】
反応混合物を水(約100ml)に注ぎ、生成物をそれぞれ50mlのエーテルで3回抽出した。水性層を中和した後、エーテルで再び抽出した(2×40ml)。有機層を集めてNa2SO4で乾燥し、乾燥剤をろ過した。溶剤をロータリーエバポレータで除去した後、得られた半晶質の固体を少量の塩化メチレンに溶解させ、シリカゲル床によりろ過した。このようにして、エーテルに極めて容易に溶解した無極性成分(2)を極性成分から完全に分離した。溶剤を除去し、再結晶することにより、2.2gの(2)を黄色の固体として得た。
【0143】
【数2】

【0144】
3)N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−N’−[[[(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノ]ベンジル]フェニルアミノ]ベンズアミジン(3)の製造
a)イミドクロリドN−(2,6−ジイソプロピルフェニル)ベンズイミドクロリド(1a)の製造
(1a)を、実施例1a)の方法に類似の方法に基づき2.03gのN−(2,6−ジイソプロピルフェニル)ベンズアミド(7.2ミリモル)及び塩化チオニルから製造した。
【0145】
b)N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−N’−[[[(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノ]ベンジル]フェニルアミノ]ベンズアミジン(3)の製造
【0146】
【化17】

【0147】
対称に置換されたN,N’−ジフェニルヒドラジン(0.70g、3.8ミリモル)をアルゴンでフラッシュした乾燥シュレンク管に導入し、20mlの塩化メチレン(無水)に懸濁させた。1.87gのNa2CO3(18ミリモル)を添加した。
【0148】
反応溶液を−70℃に冷却した後、実施例3a)から得られ、塩化メチレンに溶解させた塩化イミドを滴下漏斗から30分でゆっくり添加した。冷却浴を取り除いた後、混合物を室温で1時間撹拌した。TCL(エーテル/ヘキサン=1/3)を用いた反応の進行の調査では、反応が終了していたことを示していた。
【0149】
反応混合物を水(約100ml)に注ぎ、生成物をそれぞれ50mlのジエチルエーテルで3回抽出した。層分離を改善するために、50mlの塩化ナトリウム飽和溶液を添加した。有機層を集めてNa2SO4で乾燥し、乾燥剤をろ過した。溶剤をロータリーエバポレータで除去した後、得られた粘性油を高真空下で乾燥し、その後、酢酸エチル/ヘキサン溶剤混合物から再結晶させた。(3)を、黄色の固体として0.9gの収量で得た。
【0150】
【数3】

【0151】
[錯体の合成]
C1:N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−N’−[[[(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノ]ベンジル]フェニルアミノ]ベンズアミジンニッケル(II)ジブロミド(C1)の製造
【0152】
【化18】

【0153】
非荷電のジ(イミノ)−[N,N]リガンド(3)(0.26g、0.37ミリモル)を、アルゴンでフラッシュした乾燥シュレンク管に導入し、20mlの塩化メチレン(無水)に溶解させ、ジメトキシエタン安定化遷移金属ハライド(NiBr2×2 DME、0.17g、0.40ミリモル、1.1ミリ当量)を添加し、その後、室温で一晩撹拌した(黄色から緑色への色の変化を伴い錯体が直ぐに形成した)。溶液を高真空下で無水状態となるまで蒸発させ、0.3gの微粒子状の淡緑色の錯体(C1)を単離した。
【0154】
【数4】

【0155】
[重合実験]
[実施例P1]
実施例C1から得られた1.8mgの錯体(C1)、2mlの、トルエン中における30質量%濃度MAO溶液(Witco社製)及び400mlのトルエンを、不活性状態にした1Lのスチール製オートクレーブに導入した。70℃で、エチレンを40バールの圧力まで注入した。この圧力は、90分の重合時間中、更にエチレンを導入することによって一定に保たれていた。排出によって反応を停止させ、ポリマーをろ過によって単離し、次いでメタノールで洗浄し、そして減圧下に乾燥した。これにより、1.7gの、2.5dl/gの粘性を有するポリマーが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の遷移金属化合物を、該遷移金属化合物を少なくとも1種のオレフィンに対して重合活性を示す種への転化が可能な少なくとも1種の助触媒と反応させることにより得られるオレフィンの単独重合体又は共重合体の製造用触媒組成物であって、
遷移金属化合物が、式(I):
【化1】

[但し、Mが元素周期表第3、4、5、6、7、8、9又は10族の元素又はランタニドを表し、
Xが同一でも異なっていてもよく、それぞれアニオン性で、1価の有機又は無機リガンドを表し、且つ相互に結合して、2価の基を形成してもよく、
nが1、2、3又は4を表し、
1が、非荷電の有機又は無機リガンドを表し、
hが0〜4までの整数を表し、
1及びR1’が、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素又は炭素原子数1〜40の有機基を表し、
2及びR2’が、同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換又は無置換のC6〜C40アリール基又はO、N、P若しくはPからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含むC2〜C40ヘテロ芳香族基を表し、
Yが、2個のsp2混成炭素原子の間における2価の基を表し、2個の構成員のブリッジとしての−N(R3)−N(R4)−及び−O−N(R5)−並びに1個の構成員のブリッジとしての−O−、−N(R6)−、−N(R7)−及び−N(R89)−からなる群から選択され、且つ
3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9が、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素又は炭素原子数1〜40の有機基を表し、且つ2個の隣接基が相互に結合して、炭素原子数1〜40の2価の有機基(末端に結合する1個以上の原子と合体して、ヘテロ環式基を形成する。)を形成してもよい。]を有することを特徴とする触媒組成物。
【請求項2】
遷移金属化合物が、式(I)[但し、MがNi又はPdを表し、Xがハロゲンを表し、nが2を表し、hが0を表し、R1及びR1’が同一であり、それぞれ置換又は無置換のC6〜C40アリール基又は炭素原子数4〜20の窒素含有ヘテロ芳香族基を表し、そして他の記号が請求項1と同義である。]を有する請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
助触媒がアルミノキサンである請求項1又は2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
更に担体を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒組成物をポリオレフィンの製造に使用する方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒組成物の存在下で少なくとも1種のオレフィンを重合又は共重合するポリオレフィンの製造方法。
【請求項7】
式(I):
【化2】

[但し、各記号が請求項1又は2と同義である。]
で表される遷移金属化合物。
【請求項8】
式(II):
【化3】

[但し、各記号が請求項1又は2と同義である。]
で表されるリガンド組成物を遷移金属化合物の製造に使用する方法。
【請求項9】
記号R1、R1’、R2及びR2’が請求項1又は2と同義であり、記号Yが−N(R3)−N(R4)−又は−O−N(R5)−[但し、R3、R4及びR5が請求項1又は2と同義である。]を表す請求項8に記載の式(II)で表されるリガンド組成物。
【請求項10】
遷移金属化合物の製造方法であって、請求項8に記載のリガンドを遷移金属化合物と反応させることを特徴とする製造方法。

【公表番号】特表2007−506820(P2007−506820A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527318(P2006−527318)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010377
【国際公開番号】WO2005/030813
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(500585878)バーゼル、ポリオレフィン、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (35)
【Fターム(参考)】