説明

金型回転式射出成形機および金型回転式射出成形機の回転テーブル回転方法

【課題】金型が取付けられた回転テーブルが固定盤または可動盤に対してベルトにより回転可能に設けられた金型回転式射出成形機において、ベルトを回転テーブルに固定する必要がなく、設計の自由度を確保可能かまたはコスト削減の可能な金型回転式射出成形機および金型回転式射出成形機の回転テーブル回転方法を提供する。
【解決手段】金型29a,29bが取付けられた回転テーブル21が固定盤15または可動盤19に対してベルト26により回転可能に設けられた金型回転式射出成形機11において、外周側にベルト係合部28を有する回転テーブル21と、回転テーブル21の側方に設けられた電動機23と、端部同士が接合された接合部32を有し前記電動機23の駆動を前記回転テーブル21に伝達するベルト26とが設けられ、前記ベルト26の接合部32が常時前記ベルト係合部28に当接されて前記回転テーブル21が回転される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型が取付けられた回転テーブルが固定盤または可動盤に対してベルトにより回転可能に設けられた金型回転式射出成形機および金型回転式射出成形機の回転テーブル回転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金型が取付けられた回転テーブルが固定盤または可動盤に対して回転可能に設けられた金型回転式射出成形機としては、電動機を駆動源とする方式と油圧シリンダを駆動源とする方式があり、近年では電動機を駆動源とする方式のものが主流となっている。電動機を駆動源とする方式においては、中心軸に対して電動機の駆動力を伝達して回転テーブルを回転させる方式、回転テーブルの周囲の歯車と電動機の駆動歯車を係合させて回転テーブルを回転させる方式、および回転テーブルの外周側と電動機の駆動歯車の間にタイミングベルトを巻き付けタイミングベルトを介して電動機の駆動力を伝達して回転テーブルを回転させる方式などが知られている。前記の中ではタイミングベルトを使用する方式は歯車を使用する方式よりもバックラッシが小さい等の理由から多く採用されている。
【0003】
従来、金型回転式射出成形機の回転テーブルをタイミングベルトを介して回転させる方式のものとしては特許文献1、特許文献2に記載されたものが知られている。特許文献1は最も一般的なものでエンドレスのタイミングベルトが電動機の駆動プーリと回転テーブルの周囲との間に掛け渡されている。しかし特許文献1については、前記エンドレスのタイミングベルトの価格が高価であることや、ベルトメーカー側でラインアップされた長さの標準品を使用すると設計上の制約を受けるという問題があった。また標準品以外の長さの特注品のエンドレスのベルトを準備することも不可能ではないが、納期が長くなる上に価格が更に高価なものとなってしまうという問題があった。また特許文献2は、所定長さのタイミングベルトを使用し、ベルトの両端を回転テーブルの円周面に固定的に貼着して使用するものである。特許文献2のタイミングベルトは特許文献1のタイミングベルトに比較するとコストは低減でき、またベルトを自由な長さに切断して径の異なる回転テーブルに応じて使用できるという利点がある。しかし特許文献2は、ベルトを回転テーブルに対して固定部材を使用して貼着する必要があり、そのための作業が別途発生するという問題があった。また固定部材を使用してベルトを貼着する方式は、ベルト幅以上の幅の固定部材を使用して回転テーブルの外周部にベルトを固定する必要がある。その結果、回転テーブルの厚みもそれに応じて一定以上の厚みが必要となるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−646号公報(請求項1、図1、図2)
【特許文献2】特開2007−290195号公報(請求項1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように従来の金型回転式射出成形機は、回転テーブルの設計の自由度を確保し、コストを削減する上や、ベルトの固定等の上で問題が残るものであった。本発明では上記の問題を鑑みて、金型が取付けられた回転テーブルが固定盤または可動盤に対してベルトにより回転可能に設けられた金型回転式射出成形機において、ベルトを回転テーブルに固定する必要がなく、設計の自由度を確保可能であるかまたはコスト削減可能である金型回転式射出成形機および金型回転式射出成形機の回転テーブル回転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の金型回転式射出成形機は、金型が取付けられた回転テーブルが固定盤または可動盤に対してベルトにより回転可能に設けられた金型回転式射出成形機において、外周側にベルト係合部を有する回転テーブルと、回転テーブルの側方に設けられた電動機と、端部同士が接合された接合部を有し前記電動機の駆動を前記回転テーブルに伝達するベルトとが設けられ、前記ベルトの接合部が常時前記ベルト係合部に当接されて前記回転テーブルが回転されることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に記載の金型回転式射出成形機は、請求項1において、回転テーブルを回転後、反対方向に反転させることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に記載の金型回転式射出成形機の回転テーブル回転方法は、金型が取付けられた回転テーブルが固定盤または可動盤に対してベルトにより回転可能に設けられた成形機の回転テーブル回転方法において、外周側にベルト係合部を有する回転テーブルと、回転テーブルの側方に設けられた電動機と、端部同士が接合された接合部を有し電動機の駆動を前記回転テーブルに伝達するベルトとが設けられ、前記ベルトの接合部が常時前記ベルト係合部に当接されて前記回転テーブルが回転されることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に記載の金型回転式射出成形機の回転テーブル回転方法は、前記電動機はサーボモータが使用され、位置決め制御により回転テーブルの回転が停止されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の金型回転式射出成形機または金型回転式射出成形機の回転テーブル回転方法は、金型が取付けられた回転テーブルが固定盤または可動盤に対してベルトにより回転可能に設けられた金型回転式射出成形機において、外周側にベルト係合部を有する回転テーブルと、回転テーブルの側方に設けられた電動機と、端部同士が接合された接合部を有し前記電動機の駆動を前記回転テーブルに伝達するベルトとが設けられ、前記ベルトの接合部が常時前記ベルト係合部に当接されて前記回転テーブルが回転されるので、ベルトを回転テーブルに固定する必要がない上に、設計の自由度を確保可能であるかまたはコスト削減可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の金型回転式射出成形機の正面図である。
【図2】本実施形態の金型回転式射出成形機の回転テーブルとベルト部分の拡大正面図である。
【図3】本実施形態の金型回転式射出成形機の回転テーブルと上可動金型を下方から見た図である。
【図4】本実施形態の金型回転式射出成形機のテーブル回転時のベルトと回転テーブルや金型の関係を示す模式図である。
【図5】別の実施形態の金型回転式射出成形機のテーブル回転時のベルトと回転テーブルや金型の関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態の金型回転式射出成形機11について、図1ないし図3を参照して説明する。射出成形機の一種である金型回転式射出成形機11は、型締装置12とその両側方に設けられた第1の射出装置13と第2の射出装置14から基本的な部分が構成される。型締装置12は、下方に設けられた固定盤15に4本のタイバ16が直立方向に固定され、タイバ16の上方に上盤17が固定されている。またタイバ16は可動盤18の四隅近傍に挿通され、可動盤18は固定盤15と上盤17の間で上下方向に移動可能となっている。また上盤17には型締シリンダ19が設けられ、型締シリンダ19のラム20が可動盤18の背面に固定されている。また上盤17と可動盤18の間には、図示しない型開閉機構が設けられている。型開閉機構は、サーボモータとボールネジ機構を用いたものでもよく、油圧シリンダを用いたものでもよい。また型締機構の駆動源は、型締シリンダ19に替えて電動機を用いてもよい。
【0013】
可動盤18の下面には一定の厚みを有する円盤状の回転テーブル21が可動盤18に対して回転自在に取付けられている。回転テーブル21の中心には、上方に向けて中心軸22が固定され、前記中心軸22が可動盤18に設けられたベアリング等により軸支されている。そして可動盤18における回転テーブル21の側方(中心軸から放射方向の側方)には回転テーブル回転用の電動機であるサーボモータ23が取付けられ、制御装置31により回転駆動が制御されるようになっている。そしてサーボモータ23の駆動軸24に固定された歯付駆動プーリ25と回転テーブル21の外周側の歯部が形成されたベルト係合部28の両方には前記電動機の駆動を回転テーブル21に伝達するためのタイミングベルト26(ベルト)が掛け渡されている。なお本発明において回転テーブル21の外周側とは、回転テーブル21の中心から放射方向に最も遠い外周のみを指すものではない。外周側のベルト係合部の直径よりもベルトの離脱を抑える回転テーブル21のフランジ部等の直径のほうが大きいものも当然含まれる。
【0014】
本実施形態において電動機による回転テーブル21の回転は、一方向のみならず、途中から反対方向に回転させる反転が可能となっている。なお回転テーブル21を回転駆動させる電動機は、サーボモータ23以外の電動機であってもよい。そして前記タイミングベルト26は、その歯部が回転テーブル21のベルト係合部28の歯部と噛合するように巻き付けられた後に、可動盤18に設けられたテンションプーリ27,27により外側から押圧され張設されている。テンションプーリ27,27は、タイミングベルト26と、回転テーブル21のベルト係合部28や歯付駆動プーリ25との間での駆動時の「歯飛び」を防止するとともに、タイミングベルト26と回転テーブル21の外周側のベルト係合部28の接触部分が長く取れるようになっている。なおテンションプーリ27,27の配置および個数は図示のものに限定されない。
【0015】
本実施形態で使用されるタイミングベルト26は、特許文献1のように製造当初から継ぎ目の無いエンドレスベルトとして製造されたものではなく、接合部32を有するものが使用される。タイミングベルト26は、図2に示されるように、1本のベルトの一端部と他端部が糸等により結合され、その部分が接合部32となっている。しかしタイミングベルト26は、接合部32がある以外の点では特許文献1のエンドレスベルトと同様に内側に歯部26aを有し、リング状に形成されている。上記のように製造されたタイミングベルト26は、自由な長さに切断したベルトの端部同士を接合するので、当初から継ぎ目の無いエンドレスベルトとして販売されている規格品と比較して、ベルト全長を容易に所望の長さとすることができるという利点がある。また所望に長さの継ぎ目の無いエンドレスベルトをベルトメーカーに特注することも考えられるが、コスト及び納期の点から難点がある。従って自由な長さに切断したベルトの端部同士を接合したタイミングベルト26を使用することは特注品と比較してメリットがある。なお本実施形態に用いられるベルトは主にウレタンゴムからなる歯付きのタイミングベルト26であるが、他の材質や種類のベルトであってもよく歯が形成されていないものや歯を外側に向けて使用するもの等でもよい。
【0016】
また本発明のタイミングベルト26は、特許文献2のように回転テーブルに対しては接合部等を固定部材等により固定して使用するものではなく、当接のみされて使用するものである。そのためにタイミングベルト26を回転テーブル21の外周側のベルト係合部28に固定するための作業が不要である。また特許文献2のようにタイミングベルトを回転テーブルの外周側のベルト係合部に固定するためには、固定部材の幅をベルトの幅よりある程度大きな幅とする必要であり、それに応じて回転テーブルの厚みを厚くする必要があるが、本発明では回転テーブル21の厚みは、特許文献2のタイプに比較して薄くできるという利点がある。
【0017】
そして本発明の両端部を接合したエンドレスのタイミングベルト26は、製造当初から継ぎ目の無いエンドレスベルトに対して、強度の点で若干劣るが、後に詳しく記載するようにタイミングベルト26の接合部32が常時回転テーブル21のベルト係合部28に当接されている状態で使用することにより、実用上、何ら強度上の問題が発生しない。また本発明の両端部を接合したタイミングベルト26(回転テーブル21には固定されない)と、特許文献2のように両端部を固定部材により回転テーブルに固定されたものとを比較した場合にも強度上の問題はない。
【0018】
回転テーブル21の下面には上可動金型29a,29bがそれぞれ金型クランパにより取付けられるようになっている。また下側の固定盤15の上面にも、前記上可動金型29a,29bと対応して2個の下固定金型30a,30bが金型クランパにより取付けられるようになっている。なお回転テーブル21や対向する側の盤に取付けられる金型の数は、2個に限定されず1個でも3個以上の複数個でもよい。また回転テーブル21と可動盤18の間には、回転テーブル21の回転を固定する図示しない位置決め係合ピンが進退可能に設けられている。
【0019】
次に本実施形態の金型回転式射出成形機11による成形作業と、その際の回転テーブル21とタイミングベルト26の関係を中心に説明する。まず或る成形品の成形が完了し、別の種類の成形品の成形に移行する場合、金型交換が行われる。金型交換は、金型回転式射出成形機11から取外した金型を上下セットにして横方向に取り出した後、新しい金型の上下セットを固定盤15上に横方向から搬入し、回転テーブル21を含む可動盤18を下降させる。そして下固定金型30a,30bは固定盤15に、上可動金型29a,29bは回転テーブル21にそれぞれ図示しない金型クランパ等により取付ける。
【0020】
本発明の回転テーブル21の回転パターンは、成形品および金型に応じて決定されるが、いずれも回転テーブル21の正転と反対方向への反転を含むものである。2本(または場合によっては3本)の射出装置を使用し、図4に示されるように回転テーブル21を180°回転(正転)させた後に180°反転させるテーブル回転パターンのものと、3本の射出装置を使用し、図5に示されるように回転テーブル21を120°づつ2回にわたって回転(正転)させ、240°反転させるテーブル回転パターンのものとが代表的なものとしてあげられる。しかし前記以外の回転パターンのものを全て除外するものではない。
【0021】
本実施形態では回転テーブル21の回転はサーボモータ23によりクローズドループ制御により行われる。そしてサーボモータ23の回転駆動による回転テーブル21の回転角度は、当初に設定された制御原点からのパルス等をロータリエンコーダ23aがカウントすることにより検出し、回転角度に応じたパルス数を検出することにより位置決め制御により回転テーブル21の回転が停止される。また停止確認の際のインターロックとしてリミットスイッチ等が使用される。なお回転テーブル21の回転角度が180°正転および180°反転というように常時固定的な角度で使用される金型回転式射出成形機の場合は、電動機をオープン制御とし、回転テーブルが取付けられる盤に設けたストッパと回転テーブルの一部を直接当接させることにより位置決め停止するようにしてもよく、リミットスイッチ等により減速、停止させるようにしてもよい。
【0022】
そして種々の成形条件を入力設定または読み出して成形を開始する。まず図示しない型開閉機構により可動盤18を下降させ型締シリンダ19により型締した上で、1回目の成形が行われる。1回目の成形では、第1の射出装置13から一方の下固定金型30aと上可動金型29aの間の一方のキャビティに溶融樹脂を射出し、1次成形品の成形を行う。また第2の射出装置14から他方の下固定金型30bと上可動金型29bの間の他方のキャビティに溶融樹脂を射出し2次成形を行う。この際のタイミングベルト26の接合部32の位置関係は、図4の上の(a)に示される通りであり、接合部32は回転テーブル21のベルト係合部28に丸印の位置で当接されている。
【0023】
次に金型回転式射出成形機11の型締を解除して可動盤18を型開閉機構により再び上方に移動させ、回転テーブル回転用のサーボモータ23を作動させ、回転テーブル21を180°回転(正転)させる。そのことにより上可動金型29aに付着した状態で離型された1次成形品が他方の2次側に移動される。そしてこの回転テーブル21の180°正転の間、タイミングベルト26の接合部32は、図4の下の(b)において矢印で示されるように、回転テーブル21の外周部のベルト係合部28に常時当接しながら、回転テーブル21の中心軸22を基準にして電動機とは反対側の部分を通過して移動する。そして回転終了後にタイミングベルト26の接合部32は、図4(b)に二重丸印で示される位置に移動するが、回転テーブル21のベルト係合部28に当接された状態を保っている。換言すると、接合部32は、図4の(a)、(b)に示されるタイミングベルト26と回転テーブル21の当接が開始される二つの当接端位置33a、33bを境界として、タイミングベルト26と回転テーブル21が当接されている角度Aの範囲内を移動されることになる。そして位置決め係合ピンにより可動盤18と回転テーブル21の位置固定が行われ、再び可動盤18が下降されて型締した上、2回目の成形が行われる。2回目の成形では、下固定金型30aと上可動金型29bの間の一方のキャビティで1次成形が行われるとともに、下固定金型30bと上可動金型29aの間の他方のキャビティでは前記一次成形品に追加して2次成形が行われる。
【0024】
そして2回目の成形が完了すると、次に再び可動盤18が上昇されて、次に先ほどの回転テーブル21の回転方向とは逆方向に回転テーブル21を180°反転させる。そのことにより再び上可動金型29bに付着した状態で離型された1次成形品が他方の2次側に移動され、他方の上可動金型29aに付着した状態で離型された2次成形の完了した成形品が一方に移動され、その後エジェクタにより突き出されて取り出される。なお2次成形の完了した成形品は回転テーブル21の回転前に取り出されるようにしてもよい。この際の回転テーブル21とタイミングベルト26の接合部32の関係は、図4の(b)に示される状態から図4の(a)に示されるように180°反転している間も常時、タイミングベルト26の接合部32は回転テーブル21のベルト係合部28に当接されている。そしてタイミングベルト26の接合部32は図4の(b)の二重丸印から、図4の(a)の丸印の位置へ復帰される。このように常にタイミングベルト26の接合部32が回転テーブル21のベルト係合部28に当接されるように回転されるのは、次の理由によるものである。本発明のタイミングベルト26は、当初からエンドレスベルトとして製造されたものではなく、端部同士が接合されたベルトであるので、接合部32の部分の引張強度が若干劣ることが想定される。そのためタイミングベルト26の接合部32を常時ベルト係合部28に当接させ、前記接合部32に引張り方向の許容値を超える負荷がかからないようにしている。
【0025】
なおタイミングベルト26の接合部32の停止位置は、回転テーブル21と当接する角度Aの範囲内であることは上記に記載した通りであるが、図4に示されるタイミングベルト26と回転テーブル21の当接が開始される当接端位置33a、33bに近い角度Bの範囲内には接合部32を停止させないことが望ましい。換言すれば、ベルト当接端位置33a,33bから前記角度B以上離れた側の位置(角度Cの範囲内)で回転テーブル21の回転を停止させることが好ましい。何故ならタイミングベルト26の接合部32が回転テーブル21の係合部と当接した状態(角度Aの範囲)であっても、当接端位置33a,33b(角度)から角度Bの範囲内では、回転テーブル21を回転させる際にタイミングベルト26の接合部32に前記引張方向の力が強く働くからである。この当接端位置32a,33b(角度)からタイミングベルト26の接合部32を停止さないことが望ましい角度Bは、15°以上が望ましく、更には20°以上がより望ましい。また前記の角度Bをタイミングベルト26の歯数で表すと、回転テーブル21の直径やベルトのタイプによっても相違するので限定はされないが、歯5個分以上がより望ましく、更には歯6個分以上がより一層望ましい。
【0026】
また本発明の別の実施形態として、図5に示されるように、3本の射出装置を使用し、
上可動金型29a,29b,29cが取付けられた回転テーブル21を120°づつ回転させるテーブル回転パターンも考えられる。回転テーブル21を120°づつ回転させる場合については、タイミングベルト26の接合部32は、図5の上の(a)の丸印の位置で型締して1回目の成形を行ってから型開し、120°正転して図5の真ん中の(b)の二重丸印の位置へ移動し再び型締して次の2回目の成形を行う。そして再び型開した後、120°正転して図5の下の(c)の三重丸印の位置へ移動する。そして図5の(c)の位置で再び型締して次の3回目の成形を行う。そして更に再び型開した後、前記正転方向と反対方向へ240°反転を行って回転テーブル21は元の図5の(a)の丸印の位置に復帰される。この場合についてもタイミングベルト26の接合部32については、常時、回転テーブル21のベルト係合部28に当接されているので、タイミングベルト26の接合部32のみに強い負荷が加わることがない。またタイミングベルト26と回転テーブル21の当接が開始される当接端位置33a,33bの近傍の接合部32を停止させないほうが望ましい範囲(角度B)も図示はしないが先の図4の実施形態と同様に設定される。
【0027】
そして別の実施形態の場合、回転テーブル21の回転角度は一方方向に向けて240°であるから、タイミングベルト26と回転テーブル21の接合部32が当接している部分の角度Aは最低でも270°以上は必要となり、280°以上がより望ましい。この別の実施形態では角度Aは290°である。また可動盤24側のストッパに回転テーブル21を当接させてサーボモータ23の原点を出す場合などで、成形時の回転テーブル21の回転角度に加えて更に別の作業時の回転テーブル21の回転角度が加算される場合も考えられる。その場合、それらの別の作業時の回転テーブル21の回転角度も特殊な調整を除き、
上記の回転を停止させることが好ましい範囲である角度Cの中に含まれるようにすることが望ましい。
【0028】
本発明では回転テーブル21の側方に設けた電動機の駆動プーリと回転テーブル21の間にタイミングベルト26が掛け渡されているので、タイミングベルト26には回転テーブル21が当接しない部分26bができる。そして本発明では、タイミングベルト26の接合部32は常時回転テーブル21に当接されるように使用されるので、どのような回転パターンのものであっても回転テーブル21が360°同じ方向へ回転されるものは不適切であり、回転テーブル21は反転されるものが対象となる。なお金型回転式射出成形機11において、回転テーブル21に固定される金型に対する通水や送電等する機構についても、回転テーブル21を常時同じ方向に回転させるものよりも反転させるものの方が構造が簡単となり、水漏れ等の可能性も低くなるという利点もある。
【0029】
なお本発明の実施形態では、金型が取付けられた回転テーブル21が上側の可動盤18に対して回転可能に取付けられた例について説明したが、別の構造の型締装置であって、上側の固定盤(上固定盤)、下側の可動盤(下可動盤)、および下側の固定盤(下固定盤)のいずれかに回転テーブルが取付けられたものでもよい。また本実施形態では、回転テーブル21の側の金型と対向する盤の側の金型の数は一致しているが、一致しないものでもよい。また射出装置の数も限定されず、1本や4本以上のものでもよい。例えば第1のステージでインサート物をセットした後に、回転テーブルを回転させて成形位置へ移動させ1本の射出装置から射出を行うものでもよく、その場合、射出装置は縦方向に設けられたものでもよい。そして型締め機構や型開閉機構も上記のものに限定されず一例としてトグル機構などを用いたものでもよい。更に金型回転式射出成形機は、縦型の型締装置に限定されず、水平方向に型開閉される横型の型締装置にも応用できる。横型の型締装置の場合も上記した縦型の型締装置と同様に、種々のパターンが考えられ、ベルトの接合部と回転テーブルの関係も同様に作動される。
【産業上の利用可能性】
【0030】
また本発明の成形機は、樹脂により射出成形を行うもの以外にも、金属や無機質材料を用いて射出成形するものであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
11 金型回転式射出成形機
12 型締装置
13 第1の射出装置
14 第2の射出装置
15 固定盤
16 タイバ
17 上盤
18 可動盤
19 型締シリンダ
21 回転テーブル
23 サーボモータ(電動機)
26 タイミングベルト(ベルト)
28 ベルト係合部
29a,29b 上可動金型(金型)
32 接合部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型が取付けられた回転テーブルが固定盤または可動盤に対してベルトにより回転可能に設けられた金型回転式射出成形機において、
外周側にベルト係合部を有する回転テーブルと、
回転テーブルの側方に設けられた電動機と、
端部同士が接合された接合部を有し前記電動機の駆動を前記回転テーブルに伝達するベルトとが設けられ、
前記ベルトの接合部が常時前記ベルト係合部に当接されて前記回転テーブルが回転されることを特徴とする金型回転式射出成形機。
【請求項2】
回転テーブルを回転後、反対方向に反転させることを特徴とする請求項1に記載の金型回転式射出成形機。
【請求項3】
金型が取付けられた回転テーブルが固定盤または可動盤に対してベルトにより回転可能に設けられた成形機の回転テーブル回転方法において、
外周側にベルト係合部を有する回転テーブルと、
回転テーブルの側方に設けられた電動機と、
端部同士が接合された接合部を有し電動機の駆動を前記回転テーブルに伝達するベルトとが設けられ、
前記ベルトの接合部が常時前記ベルト係合部に当接されて前記回転テーブルが回転されることを特徴とする金型回転式射出成形機の回転テーブル回転方法。
【請求項4】
前記電動機はサーボモータが使用され、位置決め制御により回転テーブルの回転が停止されることを特徴とする請求項3に記載の金型回転式射出成形機の回転テーブル回転方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−206398(P2012−206398A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74083(P2011−74083)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】