説明

金属加工用のローラ、特に連続鋳造ローラ、とこのようなローラを製造するための方法

本発明は、ローラ、特に連続鋳造ローラ、を特に耐磨耗性にするために、層(3)が、電気メッキされたニッケルを備え、層(3)の表面(4)が、ローラ(1)の作業面を構成することを特徴とする、金属から成るローラボディ(2)とこのローラボディの上に被覆される耐磨耗性の材料から成る層(3)とを備える金属製造及び/又は金属加工用のローラ(1)、特に連続鋳造ローラを提供する。更に本発明は、金属製造及び/又は金属加工用のローラ(1)、特に連続鋳造ローラ、を製造するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属から成るローラボディとこのローラボディの上に被覆される耐磨耗性の材料から成る層とを備える金属製造及び/又は金属加工用のローラ、特に連続鋳造ローラに関する。更に、本発明は、金属製造及び/又は金属加工用のローラ、特に連続鋳造ローラ、を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造装置の申し分のない機能と、鋳造製品の品質と、装置の経済性に対して、ストランドガイドローラは多いに貢献する。ストランドガイドローラの課題は、鋳型を出た後に凝固したストランドを支持し、案内し、曲げ、搬送することにある。この場合、セグメントローラのローラ本体と軸受は、高い熱的負荷、機械的負荷、化学腐食的負荷にさらされている。
【0003】
熱的負荷は、800°C〜1200°Cの鋳造ストランドとローラ本体の表面が直接接触することによって生じる。機械的負荷は、ローラからストランドに伝達されることになる静磁力、曲げ矯正力、駆動力の結果である。加えて、ローラは、ストランドとの摩擦のために摩耗する。例えばモールドパウダの使用に依存した攻撃的な化学結合と関係して、冷却水が大量に必要で、温度が高いために、付加的に、ローラに使用される材料と部品の腐食特性もしくは防食に注意しなければならない。
【0004】
連続鋳造装置のローラを、高い機械的負荷を吸収する状態にあるベース材料としての調質鋼(例えば21CrMoV511V、16CrMo44、24CrMo5、及びS355)から製造することが公知である。但し、この鋼は、大抵は、継続的に熱的負荷と化学腐食的負荷に耐えることに不向きである。高い温度と化学的腐食の影響に対して十分な耐久性を得るために、ローラ本体に肉盛り溶接により軟質マルテンサイト材料を備えさせることが公知である。但し、これは、比較的高価である。
【0005】
特許文献1から、耐磨耗性の材料から成るジャケットを備えた鉄材料から成るコアから成る連続鋳造ローラを製造するための方法が公知である。外側のジャケットと、鉄材料から成るコアの間に、銅又は銅合金から成る層が設けられている。ローラの熱伝導率を最適化するため、銅層の上にニッケル層が被覆されており、この中間層の上に、ニッケルクロムホウ素合金から成る耐摩耗性のカバー層が肉盛り溶接によって被覆される。
【0006】
特許文献2も、中間層を備えたローラボディに耐摩耗性の表面層を被覆することを提案するが、耐摩耗性の層は、クロム酸化物(Cr)から成る。
【0007】
特許文献3でも、連続鋳造ローラが耐摩耗性の層を備えており、この層は、ニッケルをベースにして、炭素、クロム、モリブデンを備える。
【0008】
耐摩耗性のコーティング材料を有する他のローラは、特許文献4〜9から公知である。
【特許文献1】独国特許第40 27 225号明細書
【特許文献2】米国特許5,161,306号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0056539号明細書
【特許文献4】特開昭62−183950号公報
【特許文献5】特開昭62−230462号公報
【特許文献6】特開昭63−086856号公報
【特許文献7】特開昭60−030560号公報
【特許文献8】特開昭59−129754号公報
【特許文献9】特開昭62−207549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の根底にある課題は、説明した欠点を排除し、十分な強度を有し、同時に、ローラの作動中に生じる熱的負荷、機械磨耗的負荷、化学的腐食的負荷に耐え、これを、できるだけ長く、形状変化がなく又は形状変化が少なく、行なうことのできる、金属加工用のローラ、特に連続鋳造ローラ、を提供することにある。同時に、ローラは、低コストで製造可能であるべきである。更に、このようなローラのための相応の製造方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この課題は、ローラボディ上に存在する層が、電気メッキされたニッケルを備え、層の表面が、ローラの作業面を構成することによって解決される。
【0011】
即ち、本発明は、公知の解決策と比べて、その表面がローラの作業面を構成する耐摩耗性の層が、電気的な方法、即ち電解的な方法、によって被覆されるという道を行く。
【0012】
この場合、電気プロセスもしくは電解プロセスによって被覆される層の厚さは、0.01mm〜10mm、特に0.05mm〜2mm、である。
【0013】
本発明の一形成では、層が、純粋なニッケルから成る。
【0014】
但し、層が、ニッケル以外に別の成分を備えることが好ましい。
【0015】
これは、ニッケル以外の他の合金成分、即ち、例えば、コバルト(Co)、燐(P)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、マンガン(Mn)又はクロム(Cr)の成分の1つ又は複数のことである。
【0016】
本発明の好ましい発展形では、層が、ニッケルもしくはベース材料としてニッケルを有する合金以外にセラミック粒子を備える。セラミック粒子は、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ホウ素(B)、クロム(Cr)、及び/又はケイ素(Si)の炭化物でもよい。
【0017】
この場合、本発明の好ましい形成では、層が、ケイ素炭化物から成るセラミック粒子を内包したニッケルコバルト合金から成る。
【0018】
セラミック粒子は、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、ケイ素(Si)、ベリリウム(Be)、又はジルコニウム(Zr)の酸化物でもよい。
【0019】
この場合、好ましい解決策によれば、セラミック粒子の粒径は、1〜5μmである。他の解決策では、明らかに小さい粒子であり、これによれば、セラミック粒子の粒径は、10〜1000nmである。
【0020】
セラミック粒子が、高濃度でニッケルもしくはニッケル合金内に存在することは、特に有利である。これは、特に、ニッケルもしくはニッケル合金内のセラミック粒子の容積割合が、15%〜40%、特に25%〜30%、であると理解すべきである。
【0021】
特に、本発明の有利な形成によれば、層の表面の硬さは、300〜500Hv1(ビッカース硬さ)、特に350〜450Hv1、である。
【0022】
金属製造及び/又は金属加工用のローラ、特に連続鋳造ローラ、を製造するための本発明による方法は、
a)金属から成るローラボディを製造するステップと、
b)電気コーティング槽内にローラボディを収容するステップと、
c)層が少なくとも部分的にニッケルから成り、層の表面がローラの作業面を構成するように、ローラボディの表面の少なくとも一部に層を電気メッキするステップと
を備える。
【0023】
即ち、本発明による提案は、ストランドガイドローラのベース材料に、もはや、公知のように肉盛り溶接された軟質マルテンサイトの表面層を備えさせるのではなく、ニッケル層又はニッケル化合物の層を電気メッキすることに狙いがある。
【0024】
この場合、電気槽では同時に多数のローラがーティング可能なので、ローラ毎の製造コストが抑えられることが有利である。加えて、電気コーティング槽内でのローラの滞留時間に関係して、被覆される層の厚さは、容易に定義もしくは変更することができる。
【0025】
電気メッキ層は、薄く、これにより、ローラのベース材料を、腐食の攻撃を受けないように有効に保護する。同時に、層は、高い硬さを有し、高温に対する良好な耐久性を有し、高い耐火性を有する。従って、連続鋳造ローラの耐磨耗性は、確実で安価に改善される。これにより、提案したローラは、長時間使用可能であり、これは、連続鋳造装置の操業者に対するコストを相応に低減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図面に図示した本発明の実施例を詳細に説明する。
【0027】
図1には、ネック9を備えた連続鋳造ローラ1が見られるが、その他、この連続鋳造ローラは、この実施例ではシリンダ状のローラボディ2から成る。ローラボディ2には、耐摩耗性の材料から成る層3が被覆されており、この層の構成は、図2に詳細に図示されている。
【0028】
層3は、例えば0.05mm〜2.0mmとすることができる層厚さDを有する。層3の表面4が、ローラ1の作業面であり、この作業面は、連続鋳造ローラの場合、高温の鋳造ストランドと接触し、従って、高い熱的負荷、機械的負荷、化学腐食的負荷にさらされている。
【0029】
層3は、ニッケル又はニッケル合金から成り、ローラボディ2に電気(電解)メッキされている(図3参照)。
【0030】
特に、層3の表面4の機械的及び熱的抵抗力を向上させるため、層は、相当な割合の、平均粒径dを有するセラミック粒子5を備える。粒径は、一実施形によれば、1〜5μmの範囲内で変動する。しかしながら、選択的な形成ではナノ粒子であり、即ち、この場合、粒径dは、10〜1000nmである。
【0031】
連続鋳造ローラ1の製造時の基本的の措置が、図3に図示されている。そこには、コーティング槽6が見られ、このコーティング槽内には、電気コーティングもしくは電解コーティングに適した液が存在する。これは、酸(例えば硫酸HSO)である。槽内に、消耗電極を構成するニッケルのブロックによって構成されたアノード7が漬かっている。更に、この実施例では、2つのローラ1が漬かっており、コーティングすべきでないネック9は、図示してないカバーで覆われている。両ローラ1は、カソード8を構成する。アノード7とカソード8は、直流電圧源10に接続されており、この直流電圧源は、それ自身公知のやり方で制御もしくは調整可能である。
【0032】
電源接続時、ローラ1の(カバーされてない)表面に、ニッケルからの金属の析出による電気化学的析出が生じる。電流は、金属イオンを消耗電極7から溶け出させ、この金属イオンが、還元によってローラ1の表面に堆積する。これにより、ローラ1は、全面的に均等にニッケルでコーティングされる。ローラ1が槽6内に長く存在するほど、ローラボディ2上のニッケルの層は厚くなる。
【0033】
セラミック粒子を収容することによって、ニッケル層もしくはニッケル金属合金から成る層の機械技術的特性は、それぞれの適用に最適化することができる。従って、摩耗の応力時には少ない摩耗率しか備えないが、同時に製造時には経済的に処理可能である、化学的耐性を有し、高温時に安定した層を連続鋳造ローラに備えさせることが重要である。例えば、室温で350〜450Hv1の平均硬さを備え、これと共に正当な費用で処理可能で、同時に、高温時でさえも僅かな摩耗率しか備えないニッケル化合物を製造することができる。
【0034】
提案した適応例に対しては、電気的に製造された、1〜5μmの粒径又は10〜1000nmの粒径を有するセラミック粒子、好ましくはケイ素炭化物、が内包されたニッケル/コバルトをベースとする金属合金分散体が、特に適している。
【0035】
使用されるニッケルは、高純度で、予圧を受けていることが、好ましい。
【0036】
即ち、可延性のニッケルマトリクスに固い固体粒子を高濃度で内包させた、ローラボディの電解的な表面改良の使用が好ましい。この組み合わせは、保護すべき部品にとって非常に良好な摩耗プロテクタを生じさせる。即ち、その場合、鋳造ストランドは、もはや直接金属マトリクスの金属上を通過するのではなく、ローラ表面の基本輪郭から突出するセラミック粒子上を通過する。これにより、ニッケルの摩耗を本質的に低減することができ、ローラ寿命の長い、即ち少なくとも10年は使用可能な、ストランドガイドローラを設計するという目標を達成することができる。
【0037】
この場合、複数の電気コーティングをローラボディに被覆することも考えられるが、その場合、常に同じコーティング材料又は異なったコーティング材料を使用することができる。
【0038】
連続鋳造ローラは、公知の全ての適用例で、即ち、特に炭素鋼及び不銹鋼を鋳込むためのインゴッド、丸棒、型鋼、スラブ、薄スラブの装置で、使用可能である。この場合、ストランドガイドローラのローラ直径(表面コーティングを含めた仕上げ直径)は、大抵は80mm〜350mmの間で変動する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】連続鋳造ローラを側面図で概略的に示す。
【図2】図1の詳細Zを示す。
【図3】コーティングすべき連続鋳造ローラと共に電気式もしくは電解式のコーティング装置の構成を概略的に示す。
【符号の説明】
【0040】
1 ローラ(連続鋳造ローラ)
2 ローラボディ
3 層
4 層の表面
5 セラミック粒子
6 コーティング槽
7 アノード(プラス極)
8 カソード(マイナス極)
9 ネック
10 直流電圧源
D 層の厚さ
d セラミック粒子の粒径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属から成るローラボディ(2)とこのローラボディの上に被覆される耐磨耗性の材料から成る層(3)とを備える金属製造及び/又は金属加工用のローラ(1)、特に連続鋳造ローラにおいて、
層(3)が、電気メッキされたニッケルを備え、層(3)の表面(4)が、ローラ(1)の作業面を構成することを特徴とするローラ。
【請求項2】
層(3)の厚さ(D)が、0.01mm〜10mm、特に0.05mm〜2mm、であることを特徴とする請求項1に記載のローラ。
【請求項3】
層(3)が、純粋なニッケルから成ることを特徴とする請求項1又は2に記載のローラ。
【請求項4】
層(3)が、ニッケル以外に別の成分を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のローラ。
【請求項5】
層(3)が、ニッケル以外に、コバルト(Co)、燐(P)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、マンガン(Mn)又はクロム(Cr)の成分の1つ又は複数を備えることを特徴とする請求項4に記載のローラ。
【請求項6】
層(3)が、ニッケル以外にセラミック粒子(5)を備えることを特徴とする請求項4又は5に記載のローラ。
【請求項7】
セラミック粒子(5)が、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ホウ素(B)、クロム(Cr)、及び/又はケイ素(Si)の炭化物であることを特徴とする請求項6に記載のローラ。
【請求項8】
層(3)が、ケイ素炭化物から成るセラミック粒子(5)を内包したニッケルコバルト合金から成ることを特徴とする請求項7に記載のローラ。
【請求項9】
セラミック粒子(5)が、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、ケイ素(Si)、ベリリウム(Be)、又はジルコニウム(Zr)の酸化物であることを特徴とする請求項6に記載のローラ。
【請求項10】
セラミック粒子(5)の粒径(d)が、1〜5μmであることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1つに記載のローラ。
【請求項11】
セラミック粒子(5)の粒径(d)が、10〜1000nmであることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1つに記載のローラ。
【請求項12】
セラミック粒子(5)が、高濃度でニッケルもしくはニッケル合金内に存在することを特徴とする請求項6〜11のいずれか1つに記載のローラ。
【請求項13】
ニッケルもしくはニッケル合金内のセラミック粒子(5)の容積割合が、15%〜40%、特に25%〜30%、であることを特徴とする請求項12に記載のローラ。
【請求項14】
層(3)の表面(4)の硬さが、300〜500Hv1、特に350〜450Hv1、であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載のローラ。
【請求項15】
金属製造及び/又は金属加工用のローラ(1)、特に連続鋳造ローラ、を製造するための方法において、
この方法が、
a)金属から成るローラボディ(2)を製造するステップと、
b)電気コーティング槽(6)内にローラボディ(2)を収容するステップと、
c)層(3)が少なくとも部分的にニッケルから成り、層(3)の表面(4)がローラ(1)の作業面を構成するように、ローラボディ(2)の表面の少なくとも一部に層(3)を電気メッキするステップと
を備えることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−529425(P2009−529425A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557608(P2008−557608)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/000740
【国際公開番号】WO2007/101512
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・ジーマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)
【Fターム(参考)】