説明

金属化フィルムコンデンサ

【課題】金属化フィルムを使用した複数のコンデンサ素子を開口部があるケースに収納し、充填樹脂を充填した金属化フィルムコンデンサにおいて、充填する樹脂が固化するときの、ケースの変形を抑制し、個々のコンデンサ素子にかかるストレスを軽減することを課題とする。
【解決手段】ケース内に、コンデンサ素子をわけるケースから一体的にまたは別部品で配置した仕切り板を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属化フィルムを使用した複数のコンデンサ素子を開口部があるケースに収納し、充填樹脂を充填した金属化フィルムコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属化フィルムコンデンサは、低温特性に優れ、耐圧やリプル電流も多くとれることから、利用が拡大しているが、体積あたりの容量が小さいことから、大容量向けの用途には、複数並列に接続して用いられている。
【0003】
従来、大容量向けの金属化フィルムコンデンサは、二枚の金属化フィルムを重ねて巻回、または積層し、電極を引き出すために巻回、または積層した端面に亜鉛などの金属を溶射しメタリコンを施したコンデンサ素子を複数製作する。次に、この複数のコンデンサ素子の両端の電極に外部端子を接続し、開口部がある樹脂ケースに収納した後、充填樹脂を充填している。
【0004】
このような大容量向けのケース付き金属化フィルムコンデンサとしては、特許文献1または2に示されるように、複数のコンデンサ素子を単に開口部があるケースに収納し、開口部側から樹脂を流し込んで樹脂を充填していた。
【特許文献1】特開2006−319300号公報
【特許文献2】特開2007−142454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ひとつのコンデンサ素子をひとつのケースに収納し、開口部側から樹脂を流し込んで樹脂充填する場合でも、充填する樹脂が固化するときは、樹脂が収縮してケースを多少なりにも変形させる場合があるが、複数のコンデンサ素子をひとつのケースに収納する場合、ケース全体を変形させるため、歪みが大きくなる部分が発生しやすく、そのためにその部分のコンデンサ素子には大きなストレスを生ずる場合がある。
ケース全体が変形する、たとえばケース全体にねじれが発生すると、コンデンサ素子から引き出される引き出し電極の位置がずれる場合がある。
また、コンデンサ素子に大きなストレスが発生していると、ヒートサイクル等で、コンデンサ素子の金属化フィルムとメタリコン部分の電気的接続が不良になりやすく、タンデルやESR(等価直列抵抗)の増加する場合がある。
【0006】
本発明は、充填する樹脂が固化するときの、ケースの変形を抑制し、個々のコンデンサ素子にかかるストレスを軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、課題を解決するための手段として、上端面が開放されたケースと、このケース内に収納される金属化フィルムを使用した複数のコンデンサ素子と、前記ケース内に充填され前記コンデンサ素子を埋没させる充填樹脂とを備えた金属化フィルムコンデンサであって、前記ケース内には、前記コンデンサ素子をわける仕切板を配置した。
また、上記仕切板を、ケースと一体的に配置した。
また、上記ケース底部を、コンデンサ素子の底部形状に沿って部分的に上げ底した。
【発明の効果】
【0008】
本発明の金属化フィルムコンデンサは、収納ケースに個々のコンデンサ素子をわける仕切板を配置しているので、充填する樹脂が固化するときのケースの変形を抑制し、個々のコンデンサ素子にかかるストレスを軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に述べるケースは、一般的にフィルムコンデンサに使用している容器で、金属化フィルムを使用した複数のコンデンサ素子を収納する開口部を有し、ケース内にはコンデンサ素子を設け、充填樹脂で充填する。
ケースの材質としては、たとえば、プラスチックまたは金属からなる。プラスチックであれば、たとえば、ポリエチレンテレフタレート系、ポリブチレンテレフタレート系、ポリカーボネート系、またはポリフェニレンスルフィド系の樹脂等からなる。また、必要に応じてフィラー等を混ぜたものである。フィラーとしては、珪素、チタン、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭化物、窒化物、これらの複合物などが使用できる。必要があれば、難燃剤、酸化防止剤を添加してもよい。金属であれば、たとえば、アルミニウム、鉄、ステンレス等が使用できる。特に金属は、加工性、体積、または重量等の制約から、充填樹脂の固化時の収縮により変形しやすい柔らかい金属や薄い厚さの金属が好ましい。
【0010】
本発明に述べるコンデンサ素子は、二枚の金属化フィルムを重ねて巻回または積層し、端面に銅、亜鉛、アルミニウム、錫、半田などの金属を溶射したメタリコン電極を施したものである。
【0011】
本発明に述べる充填樹脂は、ケース内の空間を充填するため樹脂で、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂に必要に応じてフィラー等を混ぜたものである。一般的にフィルムコンデンサの充填用に使用できる。フィラーとしては、珪素、チタン、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭化物、窒化物、これらの複合物などが使用できる。必要があれば、難燃剤、酸化防止剤を添加してもよい。
【0012】
本発明に述べる仕切板は、コンデンサ素子とコンデンサ素子のあいだに設けるもので、コンデンサ素子が全て隠れるほど大きな幅や高さのほか、一部隠れる程度でもよい。
一般的には板状であるが、コンデンサ素子とコンデンサ素子のあいだを埋めるような形状でもよい。単なる板のほか、格子状でもよい。また、仕切板の内部は、強度がゆるすかぎり、空洞でも、また、内部または表面に補強体がある複合体でもよい。
材質は、ケースと同様のもので、ケースに配置したときにはすでに高分子化した樹脂成形体であり、ケース内に充填する固化した後の充填樹脂と同等あるいはそれより小さい線膨張係数を有するものか、または、ケースの線膨張係数と同程度のものがよい。
また、仕切板は、ケースと一体的に成形してもよいし、別部品でもよい。ケースと一体的に成形した場合、部品点数と工数の削減とになりまた、ケース強度にも有利になる。別部品の場合には、コンデンサの仕様変更に対応が容易となる。別部品の場合、ケース内に単に設置してもよいが、はめ込んだり、接着、融着またはネジ止めするほうが、ケース強度の点で好ましい。
また、仕切板にはコンデンサ素子に影響を与えない程度に貫通穴または溝を1つ以上設けてもよい。そうすることにより、充填樹脂が平均にケース内に充填されやすい場合がある。
【0013】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて説明する。図1は、本発明に係る金属化フィルムコンデンサの、縦断面概略図(a)と横断面概略図(b)と上面概略図(c)を示している。
1は、上方面が開放しているケースで、金属またはプラスチックからできている。
2は、コンデンサ素子で、2枚の金属化フィルム、すなわち片面にアルミニウム等を蒸着して金属電極を形成した薄い帯状の絶縁フィルム(通常、ポリエステルフィルム)を2枚重ね合わせて所定の回数巻回したものやまたは積層したものであり、その両端面に、銅、亜鉛、アルミニウム、錫、半田等の金属または合金の溶射によって形成されるメタリコン電極3を設けたものである。図1では、長円形の柱状体に扁平化していて、ケース1内に縦に3個、横に2個収納している。
4は、リード端子で、一端はコンデンサ素子2の各メタリコン電極3に接続し、他端はケースから突出して外部と接続する。リード端子4は、一般的には金属板を加工したものを使用するが、金属線や金属箔でもよい。
5は、仕切板で、ケース1とは別部品で、格子状で底板付きになっている。底板付きでない場合には仕切板5の各縦平板と横平板を格子状に組んでもよい。
6は、充填樹脂で、ケース内を充填する。なお、図1(c)では、充填が途中までの状態を示している。
【0014】
図2は、本発明に係る金属化フィルムコンデンサの別の縦断面概略図を示している。
7は、上げ底部で、コンデンサ素子2が、長円形の柱状体等に扁平化している場合にできるコンデンサ素子2間やコンデンサ素子2とケース1側面にできる空間部分を埋めるように、ケース1底部に一体的に設ける。このような上げ底形状は一部仕切板の機能をはたすほか、ケース底部の強度を向上させ、ケースのねじれ、そりなどの変形に対して有効であり、またケース内の充填樹脂6を少なくすることができる。
5は、仕切板で、上げ底部7の頂上付近にケースから一体的に突出して設けられていることを示している。
【0015】
図3は、本発明に係る金属化フィルムコンデンサの別の縦断面概略図を示している。図3(a)は、コンデンサ素子をケースに収納する前、図3(b)は、ケースに収納した後を示している。
仕切板5には上下のコンデンサ素子2を分ける水平部分8と、左右のコンデンサ素子を分ける垂直部分9を有し、ケース1に収納する前に仕切板5上にコンデンサ素子2を配置する。またコンデンサ素子2とリード端子4とは接続しておく。
次に、仕切板5の下方の垂直部分9の先端部分がケース1に設けた凹部10にはめ込まれるようにして、コンデンサ素子2をケース1に収納する。
次に、開口部側からケース1内に充填樹脂6を流し込む。このとき、仕切板5に、貫通穴11を設けておくと、充填樹脂6を容易に充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る金属化フィルムコンデンサの概略図を示している。
【図2】本発明に係る金属化フィルムコンデンサの別の概略図を示している。
【図3】本発明に係る金属化フィルムコンデンサの別の概略図を示している。
【符号の説明】
【0017】
1 ケース
2 コンデンサ素子
3 メタリコン電極
4 リード端子
5 仕切板
6 充填樹脂
7 上げ底部
8 水平部分
9 垂直部分
10凹部
11貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端面が開放されたケースと、このケース内に収納される金属化フィルムを使用した複数のコンデンサ素子と、前記ケース内に充填され前記コンデンサ素子を埋没させる充填樹脂とを備えた金属化フィルムコンデンサであって、前記ケース内には、前記コンデンサ素子をわける仕切板を配置した金属化フィルムコンデンサ。
【請求項2】
仕切板を、ケースと一体的に配置した請求項1の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項3】
ケース底部を、コンデンサ素子の底部形状に沿って部分的に上げ底した請求項1のまたは2の金属化フィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−40832(P2010−40832A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202933(P2008−202933)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(309035062)日立エーアイシー株式会社 (47)
【Fターム(参考)】