説明

金属地金を金属浴内に導入するための装置

本発明は、金属地金2を金属浴3内に、特に亜鉛地金を亜鉛浴内に導入するための装置1であって、装置1が地金2を金属浴3に供給することができる供給手段4を備え、かつ装置1が地金2を金属浴3内に供給する前に及び/又はその間に地金2を所望の温度に加熱できる加熱手段5を備える装置に関する。プロセス制御を改良するために、本発明によれば、加熱手段5は、少なくとも1つの自主的作動の加熱要素を備え、この加熱要素は、装置1が協働する他の設備部分から独立して作動されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属地金を金属浴内に、特に亜鉛地金を亜鉛浴内に導入する(Einbringen)ための装置であって、装置が地金を金属浴に供給することができる供給手段を備え、かつ装置が地金を金属浴内に供給する前に及び/又はその間に地金を所望の温度に加熱できる加熱手段を備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融亜鉛めっき装置では、亜鉛めっきされるべきストリップは、液状亜鉛合金を有する金属浴を通して案内される。この場合、被覆用に使用される亜鉛は、これによって亜鉛浴から連続的に排出される。したがって、亜鉛浴の一定の充填度を維持するために亜鉛を亜鉛浴内に供給しなければならない。
【0003】
これについては、溶融金属を有する容器内に金属地金を搬送できる装入装置が公知である。この場合、新しい地金材料を加えると、溶融金属の温度が変わってしまうことが欠点である。供給された低温の地金は、奪熱によって収容容器内の、特に付加位置の領域内の溶湯を冷却し、この結果、被覆の工程が妨げられる可能性がある。さらに、このようにして、亜鉛スラグの形成が促進されるという欠点がある。
【0004】
このため、金属浴に供給されるべき溶融物(Schmelze)を、固有の被覆浴から分離される前溶融容器(Vorschmelzbehaelter)で最初に溶融し、次にこの点で温度調節された溶融物をスラグなしに被覆浴に加えることが公知である。スラグの除去は前溶融容器内で行われる。しかし、この場合、事前溶融容器の使用が比較的高価であり、システムが追加の場所を必要とし、さらに高価となるという欠点がある。
【0005】
これらの欠点を回避するために、欧州特許第1091011B1号明細書(特許文献1)から、溶融容器内に供給する前に加えられるべき金属地金を予熱することが公知である。このことは、地金を所望の温度に加熱するために、溶融浸漬被覆工程のためにいずれにしろ必要な炉の熱が供給されるべき地金に導かれるように行われる。この場合、高温の空気が炉から送風機を介して、空気を加熱する熱交換器に導かれ、次にこの空気により地金が加熱される。
【0006】
同様の解決方法が特開平11−281264号明細書(特許文献2)から公知である。この場合も、熱が溶融炉から高温の空気の形態で、供給されるべき地金の上に導かれ、地金がある程度の温度を有したときに初めて地金は金属浴に供給される。
【0007】
上述の方法の欠点は、工程の制御が比較的難しいことである。地金用の導入装置に近い炉の(排)熱を利用することで、すなわち、この炉からのエネルギを利用することができる。当然、熱交換工程は比較的緩慢であり、この結果、供給されるべき地金の正確かつ迅速な加熱を円滑に行うことはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第1091011B1号明細書
【特許文献2】特開平11−281264号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、このことに関し対策を講じかつ金属地金を金属浴内に導入するための上記の負の効果が生じることができない装置を提案することである。本装置は、より簡単なプロセス制御が可能であり、かつ必要なプロセスパラメータがより正確にかつより速く調整可能であることによって傑出している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、本発明によれば、本装置の加熱手段が少なくとも1つの自主的作動の加熱要素(autark betriebene Heizelement)を備え、この加熱要素が、本装置が協働する他の設備部分から独立して作動されることができることによって解決される。
【0011】
提案した加熱要素が他の設備部分のエネルギ供給に頼らないことによって、供給されるべき地金の温度調節を非常にはるかに速くかつより精密に行うことができ、この結果、プロセス制御がより容易になる。
【0012】
加熱要素の場合、ガスバーナ又は電気作動要素を対象とすることができ、後者の場合に、特に誘導加熱要素が適切である。
【0013】
供給手段は、少なくとも1つの地金用の保持装置を備えることができ、この保持装置によって、地金の少なくとも一部が金属浴内に浸漬するように地金を保持することができる。この場合、保持装置は、地金が金属浴の外側にある第1の位置と、地金の少なくとも一部が金属浴の内部にある第2の位置との間で移動できる移動手段を装備することが好ましい。この場合、保持装置の移動手段は、保持装置がストローク及び傾斜の組み合わせ運動(kombinierte Hub− und Kippbewegung)を実施できるように形成することができる。これによって、金属材料の所望の程度の溶融が行われるように、溶融されるべき地金を金属浴内に正確に送ることができる。
【0014】
このような解決方法の場合、加熱手段が、特に保持装置の領域内における供給手段に、移動可能に配置されることが有利に意図される。
【0015】
しかし、代わりに、加熱手段を、供給手段の領域において、搬送方向において金属浴の手前に、位置固定して配置することが可能である。この場合、加熱手段は、供給手段の部分の領域に配置することができ、この領域で地金が水平方向に搬送される。
【0016】
可能な限り自動化された運転を可能にするために、装置は、地金を載置ステーション又は貯蔵ステーションから保持装置に好ましくは自動的に搬送するための搬送手段を有することが好ましい。この場合、搬送手段はストロークビームコンベヤ(Hubbalkenfoerderer)及び/又は摺動機構を備えることができる。搬送手段はまた、地金用の平行に配置された2つの保持装置に装入することができる。
【0017】
提案した装置により、金属浴に供給されるべき地金の温度を所望の温度に迅速かつ正確に予熱することが可能であり、この結果、最適なプロセス制御を行うことができる。予熱は正確にかつ経済的に行われる。
【0018】
提案した措置により、地金加熱を浴面調整に含めることがさらに可能である。地金の予熱の温度上昇は、地金の溶融を促進する。これによって、浴面が高められる。逆に予熱の温度の低下は浴面の低下をもたらす。
【0019】
図面に、本発明の実施例が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態による亜鉛地金装入装置の斜視図である。
【図2】亜鉛地金装入装置の代わりの実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に、亜鉛地金2を金属浴3内に導入するための装置1が示されている。金属浴3から、公知の方法で、炉スナウト(Ofenruessel)11が突出し、この中で、被覆されるべき金属ストリップ(図示せず)が案内される。金属浴3内への地金2の供給は、図示した供給手段4により行われる。供給手段4の構成部材は保持装置6であり、この保持装置は、金属浴3内に導入されるべき地金2を保持し、地金2が所望の程度金属浴3内に浸漬して、このように溶融できるようにする。
【0022】
装置1の重要な構成部分は、装置1が協働する他の設備部分から独立して作動されることができる自主的作動の加熱要素(詳細に図示せず)を備える加熱手段5である。とりわけ、加熱要素は、他の設備部分に結合されない専用のエネルギ供給部を備える。特に、地金2を加熱するために、他の炉の熱は利用されない。
【0023】
加熱要素として、ガスバーナ又は電気加熱装置を使用することができる。特に、地金2の迅速な加熱が可能である誘導加熱の使用が実証されている。
【0024】
独自性は、加熱手段5が移動可能に配置されるという点にある。図1の両方の装入装置1の概略図に見ることができるように、加熱手段5は、保持装置6の(ストローク及び傾斜)運動を担う。これによって、地金2は、金属浴3内に浸漬するまで正確に温度調節して保持される。すなわち、加熱手段5は、装入装置の上で共に移動可能に固定される。地金2は、一定に加熱することができ、なお溶融工程中にそれ自体で温度調節されることができる。
【0025】
他の方法が図2に示されている。そこでは加熱手段5が固定配置され、詳しくは、地金2が供給手段4の上で水平に案内される領域に配置される。この場合、地金2を待機位置で加熱することができ、一方、前述の地金は金属浴で溶融する。このように予熱された地金2は、金属浴内に浸漬する際に、予熱なしには地金によって引き起こされるであろう温度差を低減させる。
【0026】
図では、2つの装入装置1が炉スナウト11の側方に配置される構成が示されている。左側又は後方の装入装置は、この場合、金属地金2を金属浴3内に浸漬させ、この結果、地金は溶融することができる。右側又は前方の装入装置1は、まだ浸漬していない位置に地金2を保持する。理解されるように、保持装置6は、2つの位置の間で、すなわち、金属地金2がまだ金属浴3内に浸漬していない第1の位置(右側又は前方)と、金属地金2が浸漬して溶融する第2の位置(左側又は後方)との間で移動することができる。この場合、地金2の保持は籠要素10によって行われる。
【0027】
地金2の一般的な取扱いは、図による別の装置形態から明らかである。すなわち、亜鉛地金2の装入は、ストロークビームコンベヤ7の端部にある載置又は貯蔵ステーション9でフォークリフトによって行われる。地金2は、好ましくは操作側から、ステップコンベヤとして形成されたストロークビームコンベヤ7に送り込まれる。ストロークビームコンベヤ7の搬送運動によって、亜鉛地金2は設備の中心に向かって移送される。
【0028】
亜鉛地金2がストロークビームコンベヤ7に達すると、亜鉛地金は、付設された摺動機構8によってさらに移送され、亜鉛地金2は、今や、供給コンベヤ7に対し90度の角度で、保持装置6の方向に移動される。移送面として、ステンレス鋼板を有する移行テーブル12が使用され、このテーブルを介して地金2が移動される。コンベヤ7と保持装置6との間に、なお1つの中間位置がある。この中間位置は、コンベヤア7と保持装置6との間の間隔を繋ぐために使用され、かつ亜鉛地金を供給する際の供給隘路の場合の貯蔵部として使用される。
【0029】
摺動機構8のストロークにより、地金2はコンベヤ7から中間位置に移送され、同時に、地金2は中間位置から保持装置6内に又はその上に移送される。保持装置6は、地金2の装入後に、詳細に示していない移動手段によって、亜鉛地金2を移行テーブル12から取り除き、地金2を金属浴3の方向に同時に傾斜させる。この場合、亜鉛地金2は籠要素10に支持される。ストローク経路の最後の部分で、籠要素10は、亜鉛地金2と共に金属浴3内の液状亜鉛内に浸漬される。
【符号の説明】
【0030】
1 金属地金を導入するための装置
2 金属地金(亜鉛地金)
3 金属浴
4 供給手段
5 加熱手段
6 保持装置
7 搬送手段(ストロークビームコンベヤ)
8 搬送手段(摺動機構)
9 載置又は貯蔵ステーション
10 籠要素
11 炉スナウト
12 移行テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属地金(2)を金属浴(3)内に、特に亜鉛地金を亜鉛浴内に導入するための装置(1)であって、装置(1)が地金(2)を金属浴(3)に供給することができる供給手段(4)を備え、かつ装置(1)が地金(2)を金属浴(3)内に供給する前に及び/又はその間に地金(2)を所望の温度に加熱できる加熱手段(5)を備える装置(1)において、
加熱手段(5)が少なくとも1つの自主的作動の加熱要素を備え、この加熱要素が、装置(1)が協働する他の設備部分から独立して作動されることができることを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
加熱要素がガスバーナであることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
加熱要素が電気作動の要素であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
加熱要素が誘導加熱要素であることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
供給手段(4)が、少なくとも1つの地金(2)用の保持装置(6)を備え、この保持装置によって、地金(2)の少なくとも一部が金属浴(3)内に浸漬するように地金(2)を保持することができることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
保持装置(6)が、地金(2)が金属浴(3)の外側にある第1の位置と、地金(2)の少なくとも一部が金属浴(3)の内部にある第2の位置との間で移動できる移動手段を装備することを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
保持装置(6)の移動手段が、保持装置(6)のストローク及び傾斜の組み合わせ運動を実施できるように形成されることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
加熱手段(5)が、特に保持装置(6)の領域内における供給手段(4)に、移動可能に配置されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
加熱手段(5)が、供給手段(4)の領域において、搬送方向において金属浴(3)の手前に、位置固定して配置されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
加熱手段(5)が、供給手段(4)の部分の領域に配置され、この領域で地金(2)が水平方向に搬送されることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
装置(1)が、地金(2)を載置ステーション又は貯蔵ステーション(9)から保持装置(6)に好ましくは自動的に搬送するための搬送手段(7、8)を備えることを特徴とする、請求項5〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
搬送手段(7、8)が、ストロークビームコンベヤ(7)及び/又は摺動機構(8)を備えることを特徴とする、請求項11に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−523813(P2010−523813A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501384(P2010−501384)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001310
【国際公開番号】WO2008/119416
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・ジーマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)
【Fターム(参考)】