説明

金属成形プロセスにおける摩擦を低減するためのマイクロ多孔性層

本発明は、金属成形プロセスで使用されてより少ない摩擦およびかじりに対する改良された耐性を提供するマイクロ多孔性層である。この層は、金属基材上に電気化学的に堆積され、その後、堆積された膜の金属のうちの1種が化学的エッチングにより選択的に除去され、それにより、基材の表面上にマイクロ多孔性層またはナノ多孔性層さえも残して潤滑剤の閉込めを促進し、金属成形プロセス時における改良された潤滑をもたらす薄い多孔性金属膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低摩擦金属成形で使用されるマイクロ多孔性層に関する。本発明はさらに、該マイクロ多孔性層の製造プロセスと、金属の冷間成形用、とくにマイクロスケールコンポーネント用の潤滑キャリヤーとしての該層の使用と、に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑の主目的は、摩擦を低減することおよびかじり(galling)を回避することである。後者は、とくに、潤滑剤膜の破壊、工具と被加工物との間の金属間接触、および工具表面上への被加工物材料のピックアップの結果として生じる。十分な潤滑は、満足すべき品質の製品を得るために金属成形に不可欠である。
【0003】
金属の冷間成形、たとえば、据込み加工(upsetting)、シゴキ加工(ironing)、伸線加工、ならびにロッド押出しおよび缶押出しのようなプロセスのトライボロジー条件は、表面の伸展および工具/被加工物境界の通常圧が大きいうえに工具温度の上昇を伴うので、困難なものからきわめて過酷なものまでさまざまである。したがって、ある程度単純な冷間成形操作を除いて、製造で良好な結果を得るには、摩擦を低減しかつかじりを回避すべく高度な潤滑系を使用することが必要である。そのような潤滑系は、マイクロ多孔性コーティングに基づきうる(同時係属出願第xxx号を参照されたい)。
【0004】
こうした注意事項が満たされない場合、直接的な金属間接触が起こり、該接触の結果、摩擦が非常に大きくなってピックアップおよびかじりを生じるので、コンポーネントの表面品質が非常に悪くなり、おそらく工具が破損する。
【0005】
金属成形プロセスでは、摩擦を低減しかつ金属間接触を回避することにより結果的にかじりを回避すべく、典型的には化成皮膜が使用される。
【0006】
化成皮膜の機能は、二元機能、すなわち機械的機能および化学的機能である。そのトポグラフィー的性質(さまざまな配向および傾斜角の結晶粒を有する)に起因して大きい表面領域が形成され、ポケットを有する該表面領域は、潤滑剤を閉じ込めるのに好適である。化成皮膜は、通常、成形操作時の表面伸展に起因して個別のアイランドの形態に破壊され、これらのアイランド間の亀裂に過剰の潤滑剤が流入するので、工具表面と被加工物表面との間の金属間接触が防止される。第2の機能に関して、潤滑剤の多くは、化成皮膜との化学反応が確保されるように選択されるので、被加工物表面への潤滑剤膜の化学結合が達成される。
【0007】
鋼の冷間鍛造用の潤滑系は、以下のようにまとめることが可能である。
【表1】

【0008】
リン酸塩皮膜および石鹸潤滑のための操作シーケンスは、被加工物の清浄化(機械的清浄化、脱脂、冷水による濯ぎ、酸洗い、冷水によるさらなる濯ぎ、それに続く活性化剤を含有する温水による濯ぎを含む)、リン酸化、冷水による濯ぎ、中和、潤滑(石鹸、MoS2などによる)、そして最後に乾燥である。
【0009】
初期反応により、Feは酸化され、かつH+イオンは水素ガスに還元される。
【0010】
Fe + 2H3PO4 → Fe2+ + 2H2PO4- + H2
この酸洗い時、鉄は金属表面から溶解され、かつ表面上へのリン酸亜鉛の堆積が開始されるであろう。H+イオンは初期プロセスに使用されるので、表面近傍の溶液のバランスは、溶液中の利用可能な第一リン酸亜鉛が不溶性第三リン酸亜鉛および遊離リン酸に変換される形で変化する。第三リン酸亜鉛は、溶液から析出しかつ表面上に結晶性堆積物として出現する。
【0011】
3Zn2+ + 2H2PO4- → Zn3(PO4)2 + 4H+
続いて、この結晶性堆積物を表面から除去しなければならない。
【0012】
アルミニウム合金に関して、化成皮膜は、従来法では、リン酸亜鉛皮膜、アルミン酸カルシウム皮膜、およびフッ化アルミニウム皮膜の中から選択される。潤滑剤は、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、およびMoS2の中から選択される。アルミニウム合金の冷間鍛造用の潤滑剤系の選択は、アルミニウム合金の硬度および表面伸展に依存する。
【0013】
自己供給型の固体潤滑剤共堆積金属膜の製造プロセスについては、米国特許第3,787,294号明細書に記載されている。該プロセスでは、摩擦を低減するために、電気メッキにより堆積される金属層が使用される。共堆積を用いて、フッ化黒鉛の粒子が層中にトラップされる。この粒子の存在により摩擦が低減されるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
このおよび他の既存の方法および製品と比較して、本発明は、より少ない摩擦およびかじりに対する改良された耐性を提供する。この事実から、製造速度の増大、ピックアップの低減、および工具摩耗の低減のようないくつかの利点が可能になり、製造停止の減少が示唆される。さらに、本発明は、より精密な許容差を有する製品を可能にする。これらの利点はすべて、コストの削減および/または製品の品質向上につながるであろう。
【0015】
以上に記載したような従来の化成皮膜の適用時に遭遇する環境問題もまた、軽減される。
【0016】
本発明により、通常適用されるものよりも有意に小さい寸法の潤滑剤膜厚が確保されるので、マイクロスケールの製品からかなり大きい製品までに及ぶ多種多様な製品をより精密な許容差で成形することが可能になる。
【0017】
既存の技術と比較して、より薄くかつより均一な潤滑層が得られる。この層は、非常に小さい金属部品を加工する場合でさえも、継続的に機能するであろう。
【0018】
本発明の態様は、被加工物表面上に電気化学的に堆積される薄い多孔性金属膜の形態の新規なタイプの層である。膜中の合金元素は、固溶体ではなく(2種以上の)純金属の微粒子よりなる堆積物の形成が確保されるように注意深く選択される。堆積後、金属のうちの1種は、化学的または電気化学的なエッチングにより、選択的に除去され、それにより、被加工物の表面上にマイクロ多孔性層またはナノ多孔性層さえも残る。続いて該表面に潤滑膜を適用した場合、潤滑剤は細孔中にトラップされ、それにより、1つ以上の後続の金属成形プロセス工程時に潤滑剤の閉込めが促進されて摩擦を低減するのに理想的な表面が形成される。
【0019】
より特定的には、本発明は、金属成形用のマイクロ多孔性層に関する。該層は、(a)金属基材の表面上に電気化学的に堆積された薄い金属膜であり、かつ(b)後続のエッチングにより層中にマイクロ細孔またはナノ細孔が形成されるのでこれらの細孔中に潤滑剤を取り込むことが可能であり、それにより、金属成形プロセスにおける摩擦を低減するのに理想的な表面を提供する。
【0020】
図面を参照しながら本発明を以下で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例2に記載されるように電気メッキするための装置の説明図である。
【図2】エッチング後の堆積層(銅基材)の走査型電子顕微鏡写真を示している。A:30分間かけて8%のZnをエッチングした。B:30分間かけて40%のZnをエッチングした。C:4時間かけて40%のZnをエッチングした。D:24時間かけて40%のZnをエッチングした。
【図3】アルミニウムロッド上に堆積された多孔性皮膜のエッチング後の表面を示している(図4は断面である)。
【図4】アルミニウムロッド上に堆積された多孔性皮膜のエッチング後の表面を示している(図4は断面である)。
【図5】実施例3に記載のサンプル調製(明確に規定された攪拌を行いながらのSnZn合金の堆積)のためのシステムの概略図である。
【図6】実施例4に記載の摩擦測定を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以上に述べたように、本発明は、被加工物(workpiece)表面上に電気化学的に堆積される薄い多孔性金属膜の形態の層に関する。さらに、本発明は、金属成形プロセスにおける摩擦を低減するためのマイクロ多孔性層をそのような金属基材上に作製する方法であって、以下の工程、すなわち、
(1)固溶体ではなく微粒子の混合物よりなる薄い金属膜を提供しうる2つ以上の相でそれぞれ構成される1種以上の合金を選択する工程、
(2)金属基材上に合金を電気化学的に堆積する工程、
(3)化学的または電気化学的なエッチングにより金属または相のうちの1つを選択的に除去する工程、
を行って、基材表面上にマイクロ多孔性層を残す方法に関する。
【0023】
電気化学的に堆積される合金は、FeIn系、SnZn系、AgCo系、AgBi系、AgFe系、AgNi系、InZn系、BiCo系、BiCu系、BiSn系、BiZn系、PdCu系、PdCo系、CoCu系、AgCu系、AuCu系、およびAuCo系の合金の中から選択される。好ましくは、電気化学的に堆積される合金は、SnZn系合金である。
【0024】
薄い金属膜を提供しうる2つ以上の相でそれぞれ構成される1種以上の合金を選択することにより、単位面積あたりの細孔の数さらには個々の細孔の深さを調整することが可能になる。
【0025】
化学的または電気化学的なエッチングは、選択された金属相を溶解する溶液を用いて行われ、該溶液は、濃厚もしくは希薄な無機酸、有機酸、無機塩基、有機塩基、またはそれらの混合物である。好ましくは、エッチングは、とくに電気化学的に堆積される合金がSnZnである場合、希塩酸を用いて行われる。
【0026】
エッチング時間は、酸濃度を増大させることにより、電気化学的エッチングを用いることにより、温度を上昇させることにより、超音波攪拌(もしくは他のタイプの攪拌)を適用することにより、またはこれらの加速手段の組合せにより、加速可能である。
【0027】
エッチング後の多孔性皮膜の表面は、図2〜4の写真からわかる。
【0028】
図2は、SnZnで電気メッキされた後で希HClでエッチングされた銅リングの表面を示している(種々の組成およびエッチング時間)。
【0029】
図3は、SnZnで電気メッキされた後で希HClでエッチングされたアルミニウムロッドの表面を示している。
【0030】
図4は、図3に表面が示されているアルミニウムロッドの断面である。
【0031】
本発明は、マクロスケールの被加工物を処理するためだけでなく、補聴器用のポテンショメーター軸(potentiometer axies)のようなマイクロスケールコンポーネントの冷間成形用の潤滑キャリヤー(lubricant carrier)としても使用可能である。マイクロスケールコンポーネントの成形に関して、リン酸塩皮膜による従来の固体膜潤滑および石鹸潤滑は、(a)過剰の潤滑剤がダイに充填されることおよび(b)潤滑剤の膜厚が成形される精密コンポーネントと同程度の大きさであるため精密許容差が得られないことが原因で、多くの場合、不適切である。液体潤滑剤は好ましいが、かじりの問題が予想されうるので、こうした問題を克服するために超薄多孔性金属膜と液体潤滑剤との組合せを使用する。
【0032】
以下の実施例で本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0033】
この実施例では、銅基材の電気メッキおよびエッチングについて説明する。銅基材(Cu板)をアルカリ性溶液中で陰極脱脂し、そして市販の酸性溶液中で活性化(酸洗い)させた。次に、12分間にわたり市販の電解液中で磁気攪拌(500rpmまで)しながら40℃の浴温で1A/dm2の印加電流密度で銅板上にSnZn合金を電気堆積させた。
【0034】
市販の電解液は次の組成を有していた。0.6 l/l SLOTOLOY ZSN 21、0.013 l/l FS 20、0.04 l/l SLOTOLOY ZSN 22、0.0015 l/l SLOTOLOY ZSN 23、70 g/l ZnCl2、45 g/l KCl、および30 g/l H3BO3
【0035】
電気堆積物の厚さは5μmであった。また、堆積物中のZn含有率は、攪拌に依存して10at.%から40at.%までさまざまでありうる。
【0036】
それぞれ0.5、1、4、および24時間にわたり希HCl(1部の37%濃塩酸および9部の蒸留水)を用いて室温でSnZn合金堆積物中の亜鉛の選択的エッチングを行った。
【0037】
エッチングされたSnZn合金の多孔性皮膜の形状は、組成およびエッチング条件に依存する。エッチングされたSnZn合金の孔の数およびサイズは、Zn含有率と共に増大する。合金堆積物中の約10at.%のZn含有率は、多孔性皮膜を作製するには低すぎる。
【実施例2】
【0038】
この実施例では、リング圧縮試験として知られる摩擦試験を用いて得られた結果を示す。
【0039】
リング圧縮試験では、平面状アンビル(anvil)間に据え込まれた指定の形状のリングの高さの減少と内径の減少との関係により摩擦を測定する。この実施例のために行われた試験では、2:3:6の高さ:内径:外径の比で明確に規定された形状を有する電解的に純粋な銅のリングを使用した。該皮膜付きのリングと該皮膜無しのリングとの組合せを潤滑剤と組み合わせて試験した。
【0040】
Zn含有率は、以下の表2に示されるように、槽内の撹拌速度の増大に伴って減少する。組成は、サンプルの位置によって異なる。また、サンプルの形状がこの問題を引き起こす可能性もある。
【表2】

【0041】
SnZnで電気メッキするために、1Lビーカーを図1に示されるように電気化学槽として使用した。該皮膜を有する試験試料すなわち銅リングの提供は、表3からわかるように、アンビルと試験試料の平面との間の摩擦に有意な影響を及ぼす。両側に同等な皮膜を得るために、銅リングを2つのスズ陽極間の中心に位置決めした。マグネティックスターラーを利用して攪拌を行った。
【0042】
多孔性皮膜(400rpmで磁気攪拌しながら1A/dm2の電流密度で堆積され、その後、続いて4時間にわたり希HCl中でエッチングされた40at.%のZnを有するSnZn合金)と潤滑剤とで被覆されたサンプルの摩擦を測定した。基準として未処理の銅リングを使用した。エッチング後の多孔性皮膜の表面を図2Cに示す。
【0043】
皮膜無しのリング上さらには皮膜付きのリング上で市販の潤滑ペースト(Molykote)を用いて、リング試験により前者の場合はf≒0.25および後者の場合はf≒0.16の摩擦係数を得た。すなわち、多孔性層により36%の摩擦の減少を生じた。
【0044】
該皮膜と潤滑剤ペーストとの3つの組合せを適用した。以下の表3は、組合せおよびアンビルと試験試料の平面との間の摩擦の特性付けを示しており、より少ない摩擦でランク付けされたものが好ましい。
【表3】

【0045】
以上の表からわかるように、該皮膜と組み合わせて潤滑剤を適用すると、試験試料とアンビルとの間の摩擦が最小になる。
【実施例3】
【0046】
代替の摩擦試験(以下の実施例に記載)では、1.88mmの直径を有するワイヤーを用意した。均一組成の堆積された合金を作製するために、遊星ギアを含む回転装置を図5に示されるようにSnZn合金電気堆積用のシステムに設置した。それぞれ1.88mmの直径および13cmの長さを有する10本のワイヤーを回転装置に装着した。
【0047】
不均一組成の問題は、従来のシステムと比較してこのシステムで改良可能であった。堆積物のZn含有率は、撹拌速度にかかわらず、かなり低いことが判明した(1.6±0.2at.%から3.7±0.8at.%まで)。したがって、スズ濃厚液FS 20の量を減少させ、一方、ZnCl2の量を増大させた。その時点で、電解液は次の組成を有していた。0.6 l/l SLOTOLOY ZSN 21;
0.009 l/l FS 20、0.04 l/l SLOTOLOY ZSN 22、0.0015 l/l SLOTOLOY ZSN 23、98 g/l ZnCl2、45 g/l KCl、および30 g/l H3BO3。電流密度は1A/dm2であり、かつ温度は40℃であった。
【0048】
改変された電解液での堆積物の組成をサンプルの上部および底部の両方で分析した。組成分布は均一であった。
【表4】

【0049】
エッチングされたSnZn合金の多孔性皮膜の形状は、従来の系から堆積されたものとは明らかに異なる(図3参照)。すなわち、それは、むしろ三次元網状構造に近い(そして摩擦に影響を及ぼしうる)。
【実施例4】
【0050】
この実施例では、ダブルカップ押出し試験として知られる摩擦試験を用いて得られた結果を示す(図6参照)。
【0051】
ダブルカップ押出し試験では、円柱状スラグが同一の公称直径の容器内に挿入される。上側パンチは下方に移動し、一方、容器および下側パンチは固定された状態に保持される(図6参照)。容器壁に沿った摩擦がゼロである場合、上側および下側のカップは、同等に形成されるであろう。すなわち、hu/hl=1。一方、摩擦が増大すると、上側カップの高さと下側カップの高さとの比は、増大されるであろう。試験は、縮小率(reduction)r=(DP/D0)2=0.69を有するΦ27mm容器内で行われる。ICFGの推奨規格に従ってパンチノーズの形状を選択した。ビレットの高さ/直径比は、h0/d0=1として選択される。試験原理を図6に示す。
【0052】
一軸圧縮試験により決定された応力−歪曲線:σ=295 ε0.27[N/mm2]を有する純銀で実験を行った。3つの異なる表面処理を試験した。すなわち、MoDXペースト(Molykoteと呼ばれる市販品)もしくは鉱油で潤滑された新しい多孔性皮膜または清浄表面上に直接添加されたMoDXペースト。相対パンチ移動量z/h0は、20、40、および60%を目標にする。以下の表に決定された摩擦値を示す。
【0053】
得られた結果から明らかなように、皮膜は、MoDXで潤滑された場合には影響を及ぼさないが、鉱油で潤滑された場合には非常に良好に機能するように思われる。とくに、大きいパンチ移動量z/h0=0.6では、かなり少ない摩擦が得られる。
【表5】

【0054】
結論として、エッチングされたSnZn合金堆積物の多孔性の表面形状は、合金の組成によって決まることが示された。約40at.%のZnが妥当であると思われる。さらに、槽内の攪拌を変化させることにより、組成を制御することが可能である(ただし、同等かつ再現可能な組成を得ることは困難である)。摩擦は、40at.%のZnを有するエッチングされたSnZn合金の多孔性皮膜により、改良される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属成形プロセスにおける摩擦を低減するためのマイクロ多孔性層を金属基材上に作製する方法であって、該層が、
金属基材の表面上に電気化学的に堆積された薄い金属膜であり、かつ
その細孔内に潤滑剤膜を取込み可能であり、
以下の工程、すなわち、
(1)固溶体ではなく微粒子の混合物よりなる薄い金属膜を提供しうる2つ以上の相でそれぞれ構成される1種以上の合金を選択する工程、
(2)金属基材上に合金を電気化学的に堆積する工程、および
(3)化学的または電気化学的なエッチングにより金属または相のうちの1つを選択的に除去する工程、
を行って、基材表面上にマイクロ多孔性層を残し、それにより、該金属成形に理想的な表面を提供する、上記方法。
【請求項2】
電気化学的に堆積される前記合金が、FeIn系、SnZn系、AgCo系、AgBi系、AgFe系、AgNi系、InZn系、BiCo系、BiCu系、BiSn系、BiZn系、PdCu系、PdCo系、CoCu系、AgCu系、AuCu系、およびAuCo系の合金の中から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電気化学的に堆積される前記合金がSnZnである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記化学的または電気化学的なエッチングが、選択された金属相を溶解する溶液を用いて行われ、該溶液が、濃厚もしくは希薄な無機酸、有機酸、無機塩基、有機塩基、またはそれらの混合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記Zn相の化学的エッチングが希塩酸を用いて行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
金属の冷間成形用の潤滑キャリヤーとしての、請求項1に記載の方法により作製されたマイクロ多孔性層の使用。
【請求項7】
金属マイクロスケールコンポーネントの冷間成形用の潤滑キャリヤーとしての、請求項6に記載のマイクロ多孔性層の使用。
【請求項8】
電気化学的に堆積される前記合金がSnZnでありかつ前記Zn相の化学的エッチングが希塩酸を用いて行われる、銅基材の電気メッキのための請求項6または7に記載の使用。
【請求項9】
金属成形プロセスにおける摩擦を低減するためのマイクロ多孔性層であって、請求項1〜5のいずれかに記載の方法により作製される、上記層。
【請求項10】
マイクロ多孔性層の使用であって、該層が、請求項1〜5のいずれかに記載の方法により作製され、かつ金属成形プロセスにおける摩擦を低減すべく多孔性皮膜の細孔中に浸透するのに十分な程度に低い粘度を有する鉱油や有機油のような液体で潤滑されている、上記使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2010−530475(P2010−530475A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512520(P2010−512520)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【国際出願番号】PCT/DK2008/000233
【国際公開番号】WO2008/154925
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(509349897)デンマークス テクニスク ユニヴェルジテイト−ディーティーユー (2)
【Fターム(参考)】