説明

金属水素化物のための断熱タンク

本発明は、製造が容易であり、素速い動態での水素の吸収を可能にする安全な水素貯蔵タンクであって、体積の変化が小さく、材料およびエネルギーに関して低コストである水素貯蔵タンクに関する。本発明の目的は、水素の発熱性の吸収および吸熱性の放出が可能な少なくとも1つの固形物(10−11)に連通した水素導入部(21)および水素排出部(22)を備えている水素貯蔵タンクであって、前記少なくとも1つの固形物(10−11)が、軽金属水素化物と熱伝導性のマトリクスとを含む圧縮された材料から製作され、前記少なくとも1つの固形物(10−11)が、塩または融解塩化合物を含まず、水素の吸収によって生じる熱を吸収でき、かつ前記吸収した熱を水素の放出のための熱を供給するために放出することができる少なくとも1つの熱回収物質(42)との熱伝達の関係にある水素貯蔵タンクを提供することにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属水素化物のための断熱タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの産業分野において、とくには燃料または反応物(例えば、水素化反応のための)として、水素が使用されている。この文脈において、気体の状態にあるときの体積および空気中での爆発性ゆえに、水素を、サイズの縮小および安全な閉じ込めを保証する形態で貯蔵することが望ましい。
【0003】
今日、最も一般的な貯蔵の態様は、水素ガスを圧縮することからなる。この貯蔵は、高圧と称されるが、350〜700barの間の圧力で行われる。したがって、使用されるタンクは、高い圧力に耐えなければならず、結果として高くつく。さらには、これらのタンクの材料および構造が、不都合に古くなり、充てんサイクルが特定の回数を超えると安全性の問題が生じることが知られている。
【0004】
他の貯蔵の態様は、水素を極低温タンクにおいて低い温度(−253℃)で液化させることからなる。この技術的解決策の主たる欠点の1つは、とくには大衆向けの用途におけるタンクの絶縁である。これは、有効な絶縁にもかかわらず、これらのタンクに収容された水素が、再び暖かくなって気体へと変化し、タンクから逃げ出すからである。蒸発損と呼ばれるこのプロセスは、損失を引き起こし、閉じた環境への応用を不可能にしている。
【0005】
さらに、上述の2種類の貯蔵は、水素の圧縮または冷却に大量のエネルギーを必要とする。したがって、これらの貯蔵の態様によって水素を使用するエネルギー収支は、劣っている。
【0006】
近年では、金属水素化物の形態での水素の貯蔵が、より安全な貯蔵の条件およびエネルギー消費の抑制を可能にする好都合な代案として研究されている。
【0007】
一部の金属または合金は、結晶格子に水素原子を可逆に取り入れることができる。水素は、これらの材料によって、温度および圧力の条件に応じて吸収/放出される。例として、パラジウム(Pd)、マグネシウム(Mg)、ZrMn、MgNi、ならびにMg−MgNiおよびアラナートなどの合金が挙げられる。
【0008】
本明細書において使用されるとき、プロセスの段階に応じて、用語「金属水素化物」が、水素を途中まで取り込み、あるいは完全に取り込んだ金属も包含する。
【0009】
一般に、重水素化物(主に、LaNi、ならびにフェロチタン合金またはTi−V−Cr主体の合金などの合金)および軽水素化物(主として、マグネシウムおよびリチウム)という2種類の金属水素化物の間で区別が行われる。
【0010】
重水素化物の場合には、水素が、周囲温度および周囲圧力で吸収される。反応の発熱性は、一般に穏やかである(35kJ/mol Hを超えない)。次いで、使用時に、水素が周囲温度および周囲圧力で放出される。水素を使用するために必要なエネルギーの入力が、法外でない。したがって、これらの重水素化物は、燃料電池のための水素の供給について一般的に推奨されている。
【0011】
対照的に、軽水素化物においては、軽金属水素化物による水素の吸収に、より高い温度が必要である(MgHの場合には約300℃)。この反応は、きわめて発熱的である(75kJ/mol H)。したがって、水素吸収反応を開始させるために必要なエネルギーの入力は、穏当である。しかしながら、生じる熱が除去されない場合、吸収反応が自然に中断される。さらに、使用の際、水素の放出に、反応が吸熱性であるため大きな熱の入力が必要である。したがって、軽水素化物の使用には、水素の吸収および放出の両方の際に、きわめて正確な温度管理が必要である。
【0012】
1モルのHの吸収で75kJ/molが放出される一方で、後の燃焼では250kJ/molが放出されるにすぎず、したがって反応の熱が回収されない場合、熱効率は約70%である。内燃機関の効率(約27%)または燃料電池の効率(約60%)も考慮する必要があり、結果として、この貯蔵の態様の使用は、熱エネルギー(75kJ/mol)が回収されない限り、エネルギーに関していかなる利点ももたらさない。
【0013】
本発明は、満足できる全体としての効率を達成するために、吸収の熱エネルギーを回収し、放出のために使用することを提案する。
【0014】
しかしながら、これは、危険かつ無効なように見受けられる。すなわち、金属水素化物の粉末のためのタンクであって、発熱性の吸収反応の熱を蓄え、この熱を吸熱性の放出の際に放出する融解塩媒体を含んでいるタンクを建設することが、特許EP0015106においてすでに提案されている。
【0015】
しかしながら、熱伝導率がきわめて低い(約0.5W/m・K)ため、塩の融解の動態は、本発明の材料と比べて3〜10倍も遅い。特許EP0015106は、高い熱出力レベルでの動作の可能性をまったく許していない。さらに、融解塩は、熱伝導率が低いことに加え、腐食性であり、場合によっては有毒または爆発性ですらある。不慮の漏れの場合に、融解塩と金属水素化物との間の反応が、きわめて強烈である。さらに、これらの塩は、固体および液体の状態の間の密度の差が大きく、収縮による大きな空洞を生じさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的は、安全であり、製造が容易であり、高速な水素吸収の動態を提供し、体積の変化を最小限にし、材料およびエネルギーに関して費用がかからない水素貯蔵タンクを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
公知の技術的解決策の欠点を改善するために、本発明は、熱伝導性のマトリクスと一緒に圧縮された軽金属水素化物(とくには、水素化マグネシウム)を、水素化マグネシウムへの水素の吸収の熱の可逆な貯蔵のためのシステム(好ましくは、例えばマグネシウム合金などの金属システム)と組み合わせて使用する水素貯蔵タンクを提案する。
【0018】
この目的のため、本発明は、水素の発熱性の吸収および吸熱性の放出が可能な少なくとも1つの固形物に連通した水素導入部および水素排出部を備えている水素貯蔵タンクであって、前記少なくとも1つの固形物が、軽金属水素化物と熱伝導性のマトリクスとを含む圧縮された材料から形成され、前記少なくとも1つの固形物が、塩または融解塩化合物を含まず、水素の吸収によって生じる熱を吸収でき、かつ前記吸収した熱を水素の放出のための熱を供給するために戻すことができる少なくとも1つの熱回収物質と、熱伝達の関係にある水素貯蔵タンクに関する。
【0019】
他の実施の形態によれば、
・前記少なくとも1つの熱貯蔵物質が、相変化物質であってよく、水素の吸収によって生じる熱が、前記相変化物質が第1の相から第2の相へと変化するときに前記相変化物質に蓄えられ、前記相変化物質が第2の相から第1の相へと変化するときに水素の放出のための熱を供給するために戻され、
・熱伝導性のマトリクスを、膨張天然グラファイト、金属フェルト、非酸化物系セラミック、および非酸化物系セラミックで裏打ちされた発泡銅で構成されるグループから選択することができ、
・前記圧縮された材料が、80〜99重量%の水素化マグネシウムと、20〜1重量%の膨張天然グラファイトとを含むことができ、
・前記金属水素化物を、水素化マグネシウムおよび水素化マグネシウム合金で構成されるグループから選択することができ、
・前記相変化物質が、1〜4barの間の第1の動作圧力における前記圧縮された材料の第1の吸収/放出平衡温度と、10〜20barの間の第2の動作圧力における前記圧縮された材料の第2の吸収/放出平衡温度と、の間の相変化温度を有することができ、
・前記相変化物質が、少なくとも5W/m・K、好都合には少なくとも10W/m・K、典型的には約100W/m・Kに等しい熱伝導率を有することができ、
・前記相変化物質が、金属合金であってよく、
・前記金属合金を、マグネシウム合金、亜鉛合金、スズ合金、インジウム合金、鉛合金、ストロンチウム合金、ビスマス合金、アンチモン合金、アルミニウム合金、ケイ素合金、およびカルシウム合金で構成されるグループから選択することができ、
・前記マグネシウム金属合金は、マグネシウム−亜鉛合金、マグネシウム−スズ合金、およびマグネシウム−ビスマス合金で構成されるグループから選択可能であり、
・前記タンクが、熱伝導性の壁によって境界付けられた少なくとも1つの筒状容器を備えることができ、前記少なくとも1つの容器に、金属水素化物と熱伝導性のマトリクスとを含む圧縮された材料から形成された少なくとも1つの固形物が配置され、前記少なくとも1つの容器が、前記熱貯蔵物質を含んでいる外容器に配置され、
前記タンクが、外容器内に束にて配置され、周囲に前記熱貯蔵物質が配置される複数の筒状容器を備えてもよく、
・前記タンクが、前記少なくとも1つの容器の内部において少なくとも1つの積層方向に沿って積み重ねられた複数の固形物を備えることができ、
・固形物の各々が、中央の穴を備えるペレットの形状を有することができ、
・固形物が、少なくとも2つの部分を含むことができ、各部分を容器の壁に熱的に接触するように押し付けるための手段が前記少なくとも2つの部分に組み合わせられ、
・前記タンクが、前記ペレットまたは半ペレットからの熱を前記熱貯蔵物質へと伝え、前記貯蔵物質からの熱を前記ペレットまたは半ペレットへと伝えるように構成された熱交換器をさらに備えることができ、
・熱交換器が、ペレットまたは2つの半ペレットと交互に積層された金属板を備えることができ、
・前記タンクが、前記熱回収物質(相変化物質など)のうちの空気にさらされる可能性がある領域に接する不活性ガスの存在を保証するように構成された不活性ガス供給部を備えることができ、
・前記少なくとも1つの熱貯蔵物質が、水素の吸収からの熱を使用する吸熱反応において互いに反応して少なくとも1つの反応生成物を生成することができる、少なくとも2つの反応物を含むことができ、前記反応生成物が、水素の放出のための熱を供給する発熱反応において反応し、前記少なくとも2つの反応物を生じることができる。
【0020】
熱伝導性のマトリクスと一緒に圧縮された軽金属水素化物を使用することは、水素の吸収の熱の可逆な貯蔵のためのシステムの使用、および高速な吸収の動態(約数分)の達成に役立つ。さらに、本発明の貯蔵システムは、軽量であり、エネルギーに関して費用がかからず、安全であり、体積の変化を最小限にする。
【0021】
さらに本発明は、軽金属水素化物と熱伝導性のマトリクスとを含む圧縮された材料を、前記圧縮された材料と熱伝達の関係にある熱貯蔵物質を備えるタンクに水素を貯蔵するために使用することに関する。
【0022】
本発明の他の特徴が、以下の詳細な説明において、添付の図面を参照しつつ述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1a〜1cは、それぞれ水素化マグネシウム粉末、熱交換器に組み合わせられた5重量%の膨張天然グラファイトを含む圧縮された水素化マグネシウム材料、および20重量%の膨張天然グラファイトを含む圧縮された水素化マグネシウム材料による水素の吸収の動態の3つの比較図を示している。
【図2】図2は、本発明による水素の貯蔵のための固形物のペレットの概略の斜視図を示している。
【図3】図3は、20重量%の膨張天然グラファイトを含む圧縮された水素化マグネシウムのペレットにおける水素の放出の動態について、ペレットの特徴長および放出圧力の関数としての図を示している。
【図4】図4は、特徴長が5cmであるMgH/ENG(20%)のペレットについて、10barの圧力における吸収の動態の図を、相変化物質の熱伝導率の関数として示している。
【図5】図5は、水素化マグネシウムの水素との反応について、圧力=f(温度)の平衡曲線の図を示している。
【図6】図6は、本発明の水素貯蔵タンクの第1の実施の形態の概略の側面断面図を示している。
【図7】図7は、図6のタンクの概略の横断面図を示している。
【図8】図8は、本発明の水素貯蔵タンクの第2の実施の形態の概略の横断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の説明において、用語「固形物」が、粉末などの流動体と対比して使用される。
【0025】
以下で使用されるとき、用語「圧縮材料」は、その密度が粉末状態の原材料の密度よりも大幅に高い材料を意味する。この材料は、とくには、粉末の形態の原材料の混合物を圧縮することによって得られる。MgH粉末の多孔率は、0.7であるが、10Paでの圧縮後に0.3にまでなりうる。
【0026】
本発明は、これに限られないが、主として水素化マグネシウムMgHに関する。なぜならば、マグネシウムがリサイクル可能である、生体適合性を有する、豊富に存在する、高価でないなど、多数の利点を有するからである。また、水素化マグネシウムは、高い水素貯蔵能力(7.6重量%)および液体水素に近い体積密度を有する。
【0027】
本発明によれば、水素化マグネシウムMgHが、水素化マグネシウムを遷移金属、遷移金属合金、または遷移金属酸化物と一緒に粉砕することによって活性化されるが、そのような遷移金属、遷移金属合金、または遷移金属酸化物は、好ましくは混合物の1〜10原子%の割合で導入される。
【0028】
本明細書において使用されるとき、用語「遷移金属」は、原子状態においてd軌道が完全には満たされていない化学元素、またはd軌道が完全には満たされていない少なくとも1つのイオンを形成する化学元素を意味する。この用語は、とくには、遷移金属V、Nb、Ti、Cr、およびMn、ならびにこれらの炭化物または亜炭化物に関する。
【0029】
活性化された水素化マグネシウムは、好都合には、1〜10μmの間の粒子サイズ分布を有するきわめて細かい粉末の形態である。
【0030】
この活性化は、とくには、チタニウムと、バナジウムと、クロムまたはマンガンのいずれかとを主体とする面心立方構造を有する合金と一緒に粉砕することによって得られる。得られた粉末は、水素の吸収および放出の動態に関して、きわめて良好な性能を有しているが、反応性に富み、空気中で自然着火する可能性がある。
【0031】
このようにして活性化された水素化マグネシウムが、例えば膨張グラファイト、膨張天然グラファイト(ENG)、グラファイト繊維、金属フェルト、非酸化物系セラミック、および裏打ち付きの発泡銅(ただし、これらに限られるわけではない)から選択される熱伝導性のマトリクスと混合される。
【0032】
「熱伝導性のマトリクス」という表現は、粉末と混合され、圧縮によって得られる製品の凝集および熱伝導を促進する材料を意味する。
【0033】
ENGは、化学および熱処理によって変性されたグラファイトの一形態である。グラファイトは、疎水性であり、耐火性であり、熱の良好な伝導体であるため、好都合である。
【0034】
ENGは、マグネシウム粒子よりもはるかに大きなスケールにおいて、きわめて異方性な特性をもたらし、長距離にわたる熱の伝導に好都合である小さなミリメートルサイズのフレークの形態であるため、とくに効果的である。
【0035】
ENG粒子は、好都合には、約500μmの直径および数ミリメートルの長さを有する細長いバーミキュル(vermicules)の形態である。
【0036】
一軸性の圧縮の作用のもとで、バーミキュルが、圧縮の軸に対して実質的に垂直に向けられる。これにより、複合材料に、きわめて異方性の熱的挙動が与えられ、圧縮の軸に対して垂直な熱の伝導が促進される(ENGの割合に応じ、約5〜15W/m・K)。
【0037】
圧縮の際に加えられる力は、とくには、材料の所望の多孔率に応じて選択される。参考として、約1t/cmの圧縮力が、約0.3という多孔率を有する材料のペレット(図2)を得るために適している。
【0038】
組成物中の膨張天然グラファイトの割合は、ENGは水素を吸収しないため、熱伝導率の向上と質量吸収能力の低下との間の妥協を呈する。
【0039】
本発明によれば、圧縮後の材料が、75〜99重量%の水素化マグネシウムと、25〜1重量%の膨張天然グラファイトとを含む。
【0040】
ENGは、発熱性の水素化工程の際に、熱流束のより良好な管理を可能にし、したがって水素の再充てんの時間の大幅な短縮を可能にする。
【0041】
以下の説明においては、固形物である圧縮された材料が、MgH/ENG(X%)と称され、ここでXは、使用されているマトリクス(ENGなど)の割合である。
【0042】
得られた材料は、粉末よりも低い多孔率を有しており、体積水素貯蔵能力が向上している。その堅く締まった形態が、使用を容易にし、所望の形状への加工を可能にする機械的な強度をもたらしている。
【0043】
さらに、MgH/ENG(X%)の圧縮によって得られた固形物の水素化は、体積の増加をわずかしか伴わない。
【0044】
さらに、あらゆる予測に反して、圧縮後に、この複合材料を、たとえ活性化された水素化マグネシウムで作成された場合でも、自然着火の恐れなく空気中で取り扱うことができる。これにより、タンクへのより安全かつより容易な導入が可能になる。
【0045】
図1a〜1cが、圧縮されていない水素化マグネシウム粉末(図1a)、5重量%のENGを含む圧縮された水素化マグネシウム材料(図1b)、および20重量%のENGを含む圧縮された水素化マグネシウム材料(図1c)による水素の吸収の動態の3つの比較図を示している。グラフ1aは、金属水素化物による水素の吸収の熱の自然の除去、すなわち毎分0Nl(標準リットル:標準リットルは、通常の温度および圧力条件における気体1リットルを表わす)の条件について、提示されている。グラフ1bおよび1cは、金属水素化物による水素の吸収の熱の除去の3つの条件、すなわち毎分0Nl、毎分5Nl、および毎分22Nlについて、提示されている。
【0046】
図1aは、水素化マグネシウムの粉末だけでは、水素化が遅いことを示している。典型的には、約150分で最大吸収能力に達する。
【0047】
図1bに使用された圧縮済みの材料は、熱交換器と熱の伝達を行う関係に配置されている。
【0048】
図1bは、5重量%の膨張天然グラファイトを含む圧縮された水素化マグネシウム材料において、冷却がない場合に、約50分で最大吸収能力に達することを示している。冷却が最大(22Nl/分)である場合、わずか約25分で最大能力に達する。
【0049】
図1aおよび1bの比較が、本発明の固形物が、マグネシウム粉末において得られるよりもはるかに高い径方向の熱伝導率を有することを示している。
【0050】
5〜10%の間のENGの割合においては、熱交換を促進するために熱交換器を使用することが好ましい。
【0051】
実際、MgH/ENG(5%)の材料は、単独では、約1時間という充てん時間を可能にする(水素化マグネシウム粉末では、数時間である)。MgH/ENG(5%)の材料を熱交換器と組み合わせると、充てん時間は、約30分に短縮される。
【0052】
使用される熱交換器は、金属フィン(銅)を、少なくとも1つの積層方向に沿ってMgH/ENG(5%)のペレットまたは半ペレットと交互に積層して備える。
【0053】
しかしながら、この熱交換器は、ペレットのマグネシウムの質量と同等の質量の銅をタンク内に使用することを必要とする。換言すると、水素を貯蔵しない銅が、質量のうちの半分を呈する。
【0054】
銅は、高価であることに加え、例えばセラミックコーティングによる保護が行われない場合には、最終的にマグネシウムと反応して二元合金MgCuを形成し、水素の貯蔵に利用することができるマグネシウムの量を減らしてしまう可能性がある。
【0055】
図1cは、20重量%の膨張天然グラファイトを含む圧縮された水素化マグネシウム材料において、冷却がない場合に、約40分で最大吸収能力に達することを示している。冷却が最大(22Nl/分)である場合、この量が、わずか約20分で満たされる。
【0056】
このように、ENGの割合を増すことによって、熱の伝導が改善される。MgH/ENG(5%)の熱伝導率が、約4W/m・Kである一方で、MgH/ENG(20%)の熱伝導率は、約15W/m・Kである。
【0057】
この向上は、ENGの割合が20%に実質的に等しい場合には、熱交換器がもはや不要であるような向上である。この利点は、ENGの割合ゆえの質量吸収能力の低下を、埋め合わせる。実際、同じ質量において、MgH/ENG(5%)の2倍のMgH/ENG(20%)を使用することができる。
【0058】
ペレットのサイズも、材料の特徴熱拡散長に依存する水素の充てん/非充てん時間に顕著な影響を有する。すなわち、図2に示した本発明によるペレットに関して、特徴長Lが、ペレットの外側までの半径Rから中央の穴の半径Rを引き算したものに等しい距離であるとして定義される。外側までの半径Rが9cmであり、中央の穴の半径Rが1cmであるペレットは、特徴長L=8cmを有する。
【0059】
図3が、この特徴長およびタンク出口の圧力の関数として計算された放出時間を示している。これらの水素放出時間は、水素貯蔵材料の熱伝導が反応を制限する因子である場合に得られたものである。数時間という充てん/非充てん(すなわち吸収/放出)時間を保つために、短いペレット特徴長を維持することが好ましい。したがって、充てん/非充てん時間に関してタンクの効率を最適化するために、大きな特徴長を有するペレットの積層を1つだけ有するよりもむしろ、短い特徴長を有するペレットの複数の積層を束に配置して有することが好ましい。
【0060】
例えば、図3は、12cmという特徴長を有するMgH/ENG(20%)のペレットが、4barの出口圧力において6時間でタンクを空にし、あるいは3barの出口圧力において3時間30分でタンクを空にするように働く(昼/夜の動作サイクルに無理なく適合する)ことを示している。
【0061】
本発明は、金属水素化物と熱伝導性のマトリクスとを含んでいるそのような圧縮された材料を、塩または融解塩化合物を含まず、水素の吸収によって生じた熱を吸収することができ、この吸収した熱を水素の放出のための熱を供給するために戻すことができる熱回収材料と、熱伝達の関係にて使用することを提案する。
【0062】
好ましくは、本発明は、金属水素化物と熱伝導性のマトリクスとを含んでいるそのような圧縮された材料を、相変化物質との熱伝達の関係にて使用することを提案する。
【0063】
本発明によれば、使用される相変化物質が、好ましくは金属合金である。
【0064】
したがって、水素の供給時に、水素の吸収によって生じる熱が、相変化物質42が第1の相から第2の相へと変化するときに、相変化物質42に蓄えられる。その後に、使用の際に、蓄えられた熱が、相変化物質が第2の相から第1の相へと変化するときに放出される。これが、吸熱性の放出に必要なエネルギーを供給する。
【0065】
好ましくは、物質が、固相から液相への変化および反対の変化を行うように選択される。これが、高い熱伝導および無理のない外容器の体積を保証するように機能する。
【0066】
蒸発、昇華、および相変化を伴わない吸熱反応も、使用可能である。
【0067】
塩を主体とする相変化物質または本発明による金属合金を含む相変化物質のいずれかを使用することによって、水素充てん速度の相違を示すために、比較の実験を実行した。
【0068】
反応装置が、水素を吸収していない状態のMgH+20% ENGの複合材料で満たされた直径10cmの内部タンクを備えている。この内側タンクを、絶縁されたシリンダへと導入し、Mg 83%−Zn 27%の原子組成を有する金属合金およびNaCl 60%−FeCl 40%のモル組成を有する塩で連続的に満たした。熱貯蔵物質を、あらかじめ330℃に加熱した。7barの水素の圧力が加えられたとき、水素化物の温度が急激に360℃まで上昇し、融解の前面が、相変化物質を伝播した。充てん時間は、塩においては2時間を超え、金属合金においてはわずか15分であった。
【0069】
図4に、10barの圧力における吸収速度が、20重量%のENGを含む圧縮された水素化マグネシウムからなり、5cmという特徴長を有しているペレットについて、相変化物質の熱伝導率λの関数として計算されている。
【0070】
0.5W/m・Kという値が、塩に典型的に相当する。溶解した金属の場合は、100W/m・Kよりも高い。曲線が、10W/m・Kという値を超えると、水素化物の熱伝導率が制限因子になることを示している。
【0071】
使用される相変化物質は、少なくとも5W/m・K、好都合には少なくとも10W/m・K、典型的には約100W/m・Kに等しい熱伝導率を有する。好ましくは200kJ/kgを上回る最大の融解潜熱を有するようにも選択される。
【0072】
水素の吸収の際に生じる熱が、相変化物質に蓄えられ、後に水素の放出のために圧縮された材料へと熱を供給するために使用される。
【0073】
圧縮された材料MgH/ENG(X%)を相変化物質と組み合わせて使用することで、たとえ水素化マグネシウムへの水素の吸収がきわめて発熱性であっても、効果的かつ迅速な水素の貯蔵が可能になる。
【0074】
図5が、水素化マグネシウムの水素との反応について、水素の圧力=f(温度)の熱力学平衡曲線の図を示している。
【0075】
一般に、必要とされる供給圧力Pは、典型的には約10〜20barであり(吸収)、必要とされる動作圧力Pは、典型的には1〜4barを上回る(放出)。これらの供給圧力は、例えば光電池によって駆動される従来からの電解槽の使用によって得られる圧力である。これらの動作圧力は、内燃機関、タービン、および燃料電池における水素の供給に一般的である。
【0076】
これが、水素化マグネシウムの場合には、280℃〜320℃の間の放出温度Tおよび340℃〜400℃の間の吸収温度Tを与える。
【0077】
実際、所与の水素圧力Pが水素を貯蔵すべく加えられるとき、発熱性の吸収反応により、MgH/ENG(X%)材料の全体において温度が急に上昇し、相応の吸収/放出平衡温度Tに達する。平衡曲線の近傍において、反応の動態はきわめて低速であり、反応の熱が効果的に取り除かれない場合、タンクの充てん時間が数十時間に達する可能性がある。反対に、水素を使用すべく圧力がPへと下げられるとき、吸収/放出平衡温度Tへの温度の急な低下が観察される。そのとき、タンクの出口において測定される水素の流量は、水素化物へと注入される加熱力に比例する。
【0078】
本発明によれば、相変化物質が、TとTとの間の融点Tを有している。一方の反応方向が他方の反応方向に対して(充てんまたは非充てん時間に関して)有利になることがないように、Tは、可能なかぎり(T+T)/2に近くなければならない。
【0079】
使用される相変化物質は、好ましくは、マグネシウム、亜鉛、スズ、インジウム、鉛、ストロンチウム、ビスマス、アンチモン、アルミニウム、ケイ素、およびカルシウムを主体とする合金から選択される金属合金である。
【0080】
好ましくは、マグネシウム合金が、高い融解潜熱ならびに上記温度TおよびTの間に位置する融点ゆえに、Mg−Zn系の共融合金から選択される。
【0081】
相変化物質は、相変化温度を調節するための少量の添加元素として使用することができるSn、Si、Pb、Bi、Sb、Al、Ca、などの元素も含むことができる。
【0082】
Mg−SnおよびMg−Bi合金も、使用可能である。
【0083】
高い熱伝導率(少なくとも5W/m・K、好都合には少なくとも10W/m・K、典型的には約100W/m・Kに等しい)を有する相変化物質の存在は、圧縮MgH/熱伝導性マトリクス材料による水素の吸収の速度を向上させる。
【0084】
水素の貯蔵のために、貯蔵圧力P(例えば、15bar)の水素ガスが、本発明の固形物へと供給される。
【0085】
図5の曲線に従い、Mg/ENG(X%)のMgH/ENG(X%)への水素化の高い発熱性の反応に鑑みて、材料の温度が、急激にTへと上昇する。熱が、相変化物質へと移される。
【0086】
熱伝達の関係は、好ましくは、良好な熱伝導の材料からなる密封壁を、水素貯蔵材料と熱貯蔵物質との間に配置することによって得られる。
【0087】
水素化物の温度が温度Tを上回って上昇するとき、相変化物質が融解し始める。その結果、融解の前面が、水素化物と相変化物質との間の壁から伝播する。融解の前面は、相変化物質中を急速に伝播する。この物質は、高い熱伝導率を有するように選択されているため、相変化物質における温度勾配は小さく、境界の壁の温度TiをTfに近く保つことができ、したがって高い反応駆動力を保つことができる。
【0088】
反応の熱が速やかに取り除かれるため、固形物がきわめて迅速に充てんされる。相変化物質の量は、その潜熱によって水素吸収反応によって生じる熱のすべてを蓄えることができるように、充分でなければならない。
【0089】
水素を使用するために、水素の圧力が、動作圧力Pへと下げられる。
【0090】
圧力が下がるにつれて、MgH/ENG(X%)の温度も、温度Tへと低下する。エネルギーの入力がないと、反応は、放出が吸熱性であるため、停止すると考えられる。
【0091】
しかしながら、相変化物質が、高い熱伝導率を有するように選択されているため、熱が速やかにMgH/ENG(X%)へと移される。
【0092】
相変化物質が固化を開始し、放出反応が継続する。
【0093】
本発明の水素貯蔵タンクの第1の実施の形態が、図6および7に示されている。
【0094】
タンク1は、本発明による複数の固形物10を、水素導入部21および水素排出部22に連通させて備えている。
【0095】
固形物は、積層方向Lに沿って管状の容器30の内側に積み重ねられている。容器は、相変化物質42を含んでいる外容器40に配置されている。
【0096】
図6〜8の実施の形態においては、各々の固形物10が、中央の穴12を備えるペレット11の形状を有している(図2、6、および7を参照)。
【0097】
固形物の各々が、水素透過性であって中央の穴に配置されている少なくとも1つの管23を介して、水素導入部21および水素排出部22に連通している。管は、壁に穴が存在することによって透過性であっても、管を製造するために選択される材料によって透過性であってもよい。
【0098】
固形物10は、相変化物質42と熱伝達の関係にある。
【0099】
熱伝達の関係は、好ましくは、各々の容器30の壁31によって得られる。容器30の製造のために、使用される材料は、良好な熱の伝導体でなければならず、水素に対して耐性を有していなければならず、相変化物質の最大使用温度よりも高い融点を有していなければならない。好ましくは、ステンレス鋼を使用すべきである。
【0100】
各々の容器30は、固形物とは異なる膨張係数を有する。したがって、固形物が、1つの単独の要素においてペレット状である場合、それらを収容する容器30は、ペレットよりも膨張することができる。この場合、ペレットが容器30の壁31にもはや接触しないため、熱伝達の関係が変化する。
【0101】
固形物10と熱貯蔵物質との間の絶え間ない熱伝達を保証するために、本発明の一実施の形態は、各々の固形物を少なくとも2つの部分にし、好ましくは2つの半体にする。
【0102】
固形物の各々が、ペレットの全体形状を有するように選択される場合、固形物は、好ましくは2つの半ペレットを含み、そのような半パレットの各々に、2つの半ペレットを同じ平面内で組み合わせることによって中央の穴12が構成されるような凹部が設けられている。固形物の各々が、3つ以上の部分を含む場合には、凹部は、各々の部分を同じ平面内で組み合わせることによって中央の穴12が構成されるような凹部である。
【0103】
さらに本発明は、固形物の各部品を、それらを収容している容器30の壁31へと押し付けるための手段を提供する。好ましくは、この押し付け手段は、固形物の各部分の間に配置された圧縮ばね手段である。例えば、押し付け手段は、各部分を壁31に押し付けるグラファイトひもまたはクッションばねである。
【0104】
圧縮されたMgH/ENG(X%)材料は、ペレット状でなくてもよい。容器または各容器は、中央にスリットが設けられた管状の全体形状を有する固形物を含むことができる。次いで、固形物または各々の固形物が、水素透過性であって中央のスリットに配置される少なくとも1つの管を介して、水素導入部および水素排出部に連通する。各々の管が、複数の部分を含んでもよく、この複数の部分が、管の各々の部分をそれらを収容している容器30の壁31に押し付けるための手段に組み合わせられる。
【0105】
タンクに、前記圧縮されたMgH/ENG(X%)材料から相変化物質へと熱を移すように構成された熱交換器を設けてもよい。
【0106】
図6および7に示した第1の実施の形態によれば、管状の容器30が、束に配置されている。相変化物質42が、容器30の周囲および間に配置されている。
【0107】
熱の伝達を向上させるために、さらにタンクが、容器の間に配置されて相変化物質に熱接触しながら延びている熱伝導板45を備えることができる。
【0108】
図7に示されているこの構成は、一方では、2つの容器30の間で熱を導くように機能し、他方では、中央の容器と残りの容器との間に環状の空間eを配置するように機能する。次いで、この空間eが相変化物質42で満たされ、中央の容器と外容器40の全体の相変化物質42との間の効果的な熱伝達を可能にする。
【0109】
容器が緩い束に配置されている別の実施の形態が、図8に示されている。すなわち、容器が互いに接触しておらず、あるいは互いに実質的に接触していない。容器のそれぞれの間隔は、各々の容器31の周囲に所定の量の相変化物質42を配置するために充分である。
【0110】
圧縮された材料が、90〜95重量%の水素化マグネシウムおよび10〜5重量%の膨張天然グラファイトを含む場合、好ましくはタンクに、熱をペレットから相変化物質へと伝達し、さらには相変化物質からペレットへと伝達するように配置される追加の熱交換器が設けられる。
【0111】
この熱交換器は、ペレットと交互に積層された金属板を備えることができる。さらに、ペレットから熱を集めて相変化物質へと分配するように構成された冷却剤のダクトを備えることもできる。
【0112】
圧縮された材料が、約80重量%の水素化マグネシウムおよび約20重量%の膨張天然グラファイトを含む場合、上述の熱交換器は有用であるが、不要でもある。
【0113】
タンクの外部への熱の喪失を避けるために、このタンクは、集合体を熱的に絶縁するように配置された絶縁材料の層44を備えている。
【0114】
絶縁は、約0.1W/m・kを超えない熱伝導率を有するように選択される。
【0115】
きわめて効率的な絶縁においても含まれる不可避な熱の喪失を補償するために、本発明のタンクは、相変化物質を加熱するための手段47を備えることができる。この手段は、例えば、電気抵抗ヒータであってよい。
【0116】
これは、相変化物質を、相変化の際に蓄えた熱を保つための充分な温度に維持するように機能する。
【0117】
固相/液相の相変化物質においては、加熱手段が、物質を融解した液体の状態に保つように機能する。
【0118】
さらにタンクは、少なくとも1つの水素圧力センサと、所定の圧力を上回ると開き、排出タンク(図示されていない)への水素の除去を可能にする少なくとも1つの安全弁とを備えることができる。これらの装置は、適切な水素の供給も保証する。
【0119】
圧縮されたMgH/ENG(X%)材料は、空気中で引火性ではないが、固形物の表面が徐々に酸化される可能性がある。したがって、各々の容器を気密にすることが好ましい。さらには、本発明の水素貯蔵タンクは、空気にさらされる可能性がある熱回収物質(ここでは、相変化物質)のゾーンに接して不活性ガス(アルゴンまたはヘリウムなど)が存在することを保証するように構成された不活性ガス51の供給部50を備えることができる。不活性ガスは、好ましくは大気圧に比べて高い圧力にある。
【0120】
圧力センサを、この不活性ガス中に設けることができる。このようにして、1つ以上の容器30が漏れ、水素が熱貯蔵物質へと逃げ出す場合に、この水素が、この熱貯蔵物質と結合することなく、この物質を通って表面に向かって拡散する。このやり方で、水素が不活性ガスと混ざり合い、超過圧力を生じさせる。次いで、圧力センサが、この超過圧力を検出し、タンクの動作を停止させる。次いで、安全設備(図示されていない)を作動させ、水素を排出タンクへと取り除き、タンクに不活性ガスを再び供給することができる。
【0121】
250kgの水素化マグネシウムタンクの構成を、図8に示した実施の形態に従って考えることができる。
【0122】
使用される形状は、7つの同一な円筒形容器を緩い束に配置して備える円筒形の外容器である。
【0123】
水素化マグネシウムは、水素の通過を可能にすべく中央に穴が設けられたペレット11の形態で、各々の容器に配置される。
【0124】
そのようなタンクにおいて反応によって生成される熱の量は、555MJである。
【0125】
選択される相変化物質は、マグネシウムが大部分を占める共晶Mg−Zn合金である。反応の熱を蓄えるために使用される合金の量は、2340kg(840リットル)である。
【0126】
250kgのMgHを上述の7つの容器に収めるために、ペレットの積層高さは、約1.5mであり、外容器の外径は、1mでなければならない。
【0127】
厚さ20cmの標準的な絶縁の層(約0.1W/m・Kを超えない熱伝導率)を配置することによって、外容器の外面における対流損失が、24時間について、水素の形態で蓄えられるエネルギーの約2%になる。
【0128】
本発明のタンクは、より特定的には、閑散なときに生成され、あるいは再生可能エネルギーによって生成された電気のバッファ貯蔵、化学用のきわめて大量の水素の貯蔵、など、静的な用途が意図される。
【0129】
多数の変種および代案を、本発明の技術的範囲から外れることなく、考えることができる。とくには、以下のとおりである。
・容器、外容器、および/またはタンク全体の円筒形の形状は、体積に関して材料の量を最適化するように機能する。しかしながら、タンク、とくには外容器および容器が、多角形の断面など、他の形状を有してもよい(正方形、矩形、六角形、取り扱いに合わせて規格化された形状、例えば陸上輸送および海上輸送を目的とするコンテナ(20フィートまたは40フィート)の形状、など)。
・容器を、外容器内に無作為に配置することができる。
・タンクが、水素の貯蔵のための固形物を加熱するための補助手段を備えることができる。この補助手段は、とくにはタンクが短期間しか使用されていない場合に、潜熱の不足に対処するように機能する。
・熱伝導性のマトリクスを、TiNまたはAlNなどの非酸化物系セラミックで構成することができる。
・相変化物質の金属合金は、三元または四元であってよい。
・本発明のタンクは、凝縮相の間の反応熱のエンタルピーを使用することもでき、すなわち液相から気相への変化および反対の変化の際の反応熱のエンタルピーを使用することができる。すなわち、相変化が、用途に適合する物質の蒸発であってよい。化合物および元素の気化熱は、それらの融解熱よりもはるかに大きい。すなわち、亜鉛などの金属においては、これらの熱の間の比がほぼ18であり、Mgにおいては16である。ワックスを使用することが可能であるが、製品の同等の質量のために、Mg−Zn合金の体積よりもはるかに大きな体積が必要であり、高い圧力のタンクが必要である。
・揮発性の系を、必要であれば熱の貯蔵の局在性を解消するために、「冷却剤」として好ましく使用することができる。
・昇華することができる固体の物質を、相変化物質として使用してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素の発熱性の吸収および吸熱性の放出が可能な少なくとも1つの固形物(10−11)に連通した水素導入部(21)および水素排出部(22)を備えている水素貯蔵タンクであって、
前記少なくとも1つの固形物(10−11)が、軽金属水素化物と熱伝導性のマトリクスとを含む圧縮された材料から形成され、
前記少なくとも1つの固形物(10−11)が、塩または融解塩化合物を含まず、水素の吸収によって生じる熱を吸収でき、かつ前記吸収した熱を水素の放出のための熱を供給するために戻すことができる少なくとも1つの熱回収物質(42)と、熱伝達の関係にあることを特徴とする水素貯蔵タンク。
【請求項2】
前記少なくとも1つの熱貯蔵物質(42)が、相変化物質(42)であり、
水素の吸収によって生じる熱が、前記相変化物質(42)が第1の相から第2の相へと変化するときに相変化物質(42)に蓄えられ、前記相変化物質(42)が第2の相から第1の相へと変化するときに水素の放出のための熱を供給するために戻される請求項1に記載の水素貯蔵タンク。
【請求項3】
熱伝導性のマトリクスが、膨張天然グラファイト、金属フェルト、非酸化物系セラミック、および非酸化物系セラミックで裏打ちされた発泡銅で構成されるグループから選択される請求項1または2に記載の水素貯蔵タンク。
【請求項4】
前記圧縮された材料が、75〜99重量%の水素化マグネシウムおよび25〜1重量%の膨張天然グラファイトを含んでいる請求項3に記載の水素貯蔵タンク。
【請求項5】
前記金属水素化物が、水素化マグネシウムおよび水素化マグネシウム合金で構成されるグループから選択される請求項1〜4のいずれか一項に記載の水素貯蔵タンク。
【請求項6】
前記相変化物質(42)が、1〜4barの間の第1の動作圧力(P)における前記圧縮された材料の第1の吸収/放出平衡温度(T)と、10〜20barの間の第2の動作圧力(P)における前記圧縮された材料の第2の吸収/放出平衡温度(T)と、の間の相変化温度を有している請求項1〜5のいずれか一項に記載の水素貯蔵タンク。
【請求項7】
前記相変化物質(42)が、少なくとも5W/m・K、好都合には少なくとも10W/m・K、典型的には約100W/m・Kに等しい熱伝導率を有している請求項6に記載の水素貯蔵タンク。
【請求項8】
前記相変化物質(42)が、金属合金である請求項7に記載の水素貯蔵タンク。
【請求項9】
前記金属合金が、マグネシウム合金、亜鉛合金、スズ合金、インジウム合金、鉛合金、ストロンチウム合金、ビスマス合金、アンチモン合金、アルミニウム合金、ケイ素合金、およびカルシウム合金で構成されるグループから選択される請求項8に記載の水素貯蔵タンク。
【請求項10】
前記マグネシウム金属合金が、マグネシウム−亜鉛合金、マグネシウム−スズ合金、およびマグネシウム−ビスマス合金で構成されるグループから選択される請求項9に記載の水素貯蔵タンク。
【請求項11】
熱伝導性の壁(31)によって境界付けられた少なくとも1つの筒状容器(30)を備えており、
前記少なくとも1つの容器に、金属水素化物と熱伝導性のマトリクスとを含む圧縮された材料から形成された少なくとも1つの固形物が配置され、
前記少なくとも1つの容器が、前記熱貯蔵物質を含んでいる外容器に配置されている請求項1〜10のいずれか一項に記載の水素貯蔵タンク。
【請求項12】
前記外容器内に束にて配置され、周囲に前記熱貯蔵物質が配置されている複数の筒状容器を備えている請求項11に記載の水素貯蔵タンク。
【請求項13】
前記少なくとも1つの容器の内部において少なくとも1つの積層方向に沿って積み重ねられた複数の固形物を備えている請求項11または12に記載の水素貯蔵タンク。
【請求項14】
固形物の各々が、中央の穴を備えるペレットの形状を有している請求項13に記載の水素貯蔵タンク。
【請求項15】
固形物が、少なくとも2つの部分を含んでおり、
各部分を容器の壁に熱的に接触するように押し付けるための手段が前記少なくとも2つの部分に組み合わせられている請求項11〜14のいずれか一項に記載の水素貯蔵タンク。
【請求項16】
前記ペレットからの熱を前記熱貯蔵物質へと伝え、前記貯蔵物質からの熱を前記ペレットへと伝えるように構成された熱交換器をさらに備えている請求項14に記載の水素貯蔵タンク。
【請求項17】
前記熱交換器が、前記ペレットと交互に積層された金属板を備えている請求項16に記載の水素貯蔵タンク。
【請求項18】
前記熱回収物質のうちの空気にさらされる可能性がある領域に接する不活性ガスの存在を保証するように構成された不活性ガス供給部を備えている請求項1〜17のいずれか一項に記載の水素貯蔵タンク。
【請求項19】
前記少なくとも1つの熱貯蔵物質(42)が、水素の吸収からの熱を使用する吸熱反応において互いに反応して少なくとも1つの反応生成物を生成することができる、少なくとも2つの反応物を含んでおり、
前記反応生成物が、水素の放出のための熱を供給する発熱反応において反応し、前記少なくとも2つの反応物を生じることができる請求項1に記載の水素貯蔵タンク。
【請求項20】
軽金属水素化物と熱伝導性のマトリクスとを含む圧縮された材料の使用であって、前記圧縮された材料と熱伝達の関係にある熱貯蔵物質を備えるタンクに水素を貯蔵するための、前記圧縮された材料の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−512125(P2012−512125A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541533(P2011−541533)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/FR2009/001427
【国際公開番号】WO2010/076415
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【出願人】(511146004)
【Fターム(参考)】