説明

金属溶湯用容器、及び金属溶湯用容器の内張方法

【課題】より耐火煉瓦3の脱落を防止することができる金属溶湯用容器及び金属溶湯用容器の内張方法を提供することを目的とする。
【解決手段】鉄製の側壁2内面に沿って耐火煉瓦3を積み上げると共に1又は2以上の耐火煉瓦3間の目地に対し不定形耐火物5を施すことで上記鉄製の側壁2に耐火煉瓦3を内張した金属溶湯用容器である。1又は2以上の耐火煉瓦3間に対し、上記側壁内面から容器の内側に向けて突設する板状の煉瓦受け金物4を設けて、当該煉瓦受け金物4で耐火煉瓦3を受ける。また、上記煉瓦受け金物4と耐火煉瓦3との目地には、不定形耐火物5が介在しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取鍋や転炉などの金属溶湯を収容するための金属溶湯用容器、及びその内張方法に関する。
【背景技術】
【0002】
取鍋の内張の構造としては、例えば特許文献1に記載の構造がある。
この内張構造は、鉄製の側壁である鉄皮内面に沿って耐火煉瓦が積み上げ、その最上段の耐火煉瓦を上側から押さえるために押さえ金物が設けられている。また、最上段の耐火煉瓦と押さえ金物下面との隙間からなる目地に対して、不定形耐火物を充填している。
この構造によって、取鍋に溶湯を収容するときの熱によって耐火煉瓦が熱膨張する際に、耐火煉瓦の上端部を押さえ金物で上側から押さえることで、耐火煉瓦の脱落を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-10317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
押さえ金物51と耐火煉瓦50との間の目地には、耐火煉瓦の熱膨張による力だけでなく、鉄と煉瓦の膨張量の差による格差が生じることで、図5のように、目地に施工した不定形耐火物52の一部が損傷する場合がある。すなわち、最上段の耐火煉瓦50と押さえ金物51下面との目地に施された上記不定形耐火物52に着目すると、熱による鉄皮の変形や、押さえ金物51と耐火煉瓦50の熱膨張差による負荷によって、上記不定形耐火物52の一部が損傷する場合がある。
【0005】
上記不定形耐火物52は、熱膨張した耐火煉瓦50によって下側から押さえ金物51を突き上げる力を均等化する役割もある。しかし、上記のように不定形耐火物52の一部が損傷した状態となると、部分的に目地が無い状態となるため、上記熱膨張した耐火煉瓦50による上記押さえ金物51を突き上げる力が、押さえ金物51の一部に集中して掛かってしまうことで、当該押さえ金物51が変形したり脱落したりする。
【0006】
押さえ金物51が変形したり脱落したりすると、上記内張用の耐火煉瓦が脱落するおそれがある。この耐火煉瓦の脱落を防止しようとすると、内張の保守点検作業の間隔を短くするなどの対策が要求される。
本発明は、上記のような点に着目したもので、より耐火煉瓦の脱落を防止することができる金属溶湯用容器及び金属溶湯用容器の内張方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、金属溶湯を収容するための容器であって、鉄製の側壁内面に沿って耐火煉瓦を積み上げると共に1又は2以上の耐火煉瓦間の目地に対し不定形耐火物を施すことで上記鉄製の側壁に耐火煉瓦を内張した金属溶湯用容器において、
1又は2以上の耐火煉瓦間に対し、上記側壁内面から容器の内側に向けて突設する板状の煉瓦受け金物を設けて、当該煉瓦受け金物で耐火煉瓦を受けると共に、
上記煉瓦受け金物と耐火煉瓦との目地には、不定形耐火物が介在しないことを特徴とするものである。
【0008】
次に、請求項2に記載した発明は、上記煉瓦受け金物は、互いに上下方向に間隔を開けた2カ所以上の位置に設けられていることを特徴とする。
次に、請求項3に記載した発明は、鉄製の側壁内面に沿って耐火煉瓦を積み上げると共に、1又は2以上の耐火煉瓦間の目地に対し不定形耐火物を施すことで、上記鉄製の側壁に内張を施す金属溶湯用容器の内張方法において、
1又は2以上の耐火煉瓦間に対し、上記側壁内面から容器の内側に向けて突設する板状の煉瓦受け金物を設けて、当該煉瓦受け金物で耐火煉瓦を受けると共に、
上記煉瓦受け金物と耐火煉瓦との目地に対し、不定形耐火物を施さないことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1及び3に係る発明によれば、煉瓦受け金物と耐火煉瓦との目地以外の目地に対し不定形耐火物を施しているため、煉瓦受け金物に対して耐火煉瓦から直接、力が伝達される構造となる。この構造によって、熱膨張した耐火煉瓦による煉瓦受け金物を下側から突き上げる力は、当該煉瓦受け金物に対し均等に力が分散されて伝達され易くなる。これによって、煉瓦受け金物の変形や脱落が抑えられる結果、耐火煉瓦がより脱落し難くなる。
【0010】
また請求項2に係る発明によれば、上下に離れた2以上の箇所に煉瓦受け金物を設けることで、所定の2カ所の煉瓦受け金物間の耐火煉瓦を部分的に補修することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る転炉を示す断面図である。
【図2】煉瓦受け金物の配置位置の一部を例示する図である。
【図3】煉瓦受け金物と耐火煉瓦との関係を説明する断面図である。
【図4】煉瓦受け金物と耐火煉瓦との関係を説明する図である。
【図5】従来の問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態では、金属溶湯を収容するための金属溶湯用容器として転炉を例示する。金属溶湯用容器は、取鍋などであっても適用可能である。
【0013】
(構成)
転炉1は、鉄皮の内側に耐火煉瓦3が内張されて構成されている。すなわち、上記鉄皮からなる鉄製の側壁2の内面に沿って耐火煉瓦3を積み上げると共に、1又は2以上の耐火煉瓦3間の目地に対し不定形耐火物5が施されることで耐火煉瓦3が内張されている。上記不定形耐火物5としては目地モルタルが例示出来る。
【0014】
また、鉄製の側壁2内面には、所定高さの耐火煉瓦3間に対し、上記側壁2の内面から容器の内側に向けて突設する板状の煉瓦受け金物4が取り付けられている。本実施形態では、図1に示すように、上下方向に間隔を開けて複数箇所に煉瓦受け金物4を設けている。図2に対し煉瓦受け金物4を配置した位置を破線で示す。この破線で示すように、周方向に延在するように煉瓦受け金物4が配置されている。
【0015】
本実施形態の煉瓦受け金物4は、図3に示すように、平板状のプレート材から構成されて、一端部が鉄皮からなる鉄製の壁面に対して溶接によって固定されると共に容器内側に向けて突出している。
また、鉄皮に沿って耐火煉瓦3が積み上げられることで、図3及び図4のように、煉瓦受け金物4の下面が耐火煉瓦3aの上面に直接接触した状態としてある。
【0016】
ここで、上記積み上げられる耐火煉瓦3間の目地の一部に対して不定形耐火物5を充填している。
また、煉瓦受け金物4の上面も、図3に示すように、耐火煉瓦3bの下面に直接接触した状態となっている。
【0017】
さらに、煉瓦受け金物4の前方(炉の内方側)における耐火煉瓦3a、3b間の隙間に対して不定形耐火物6を充填している。不定形耐火物6を充填しても、煉瓦受け金物4の下面と耐火煉瓦3aとは直接接触した状態は維持される。
【0018】
なお、煉瓦受け金物4の上側に配置される耐火煉瓦3bの下部を、煉瓦受け金物4の形状に沿ってはつっておいて、煉瓦受け金物4と上下で対向しない耐火煉瓦3bを、直下の耐火煉瓦3aの上面と接触するようにしておいても良い。
【0019】
ここで、各煉瓦受け金物4は、耐火煉瓦3を積み上げながら、順番に鉄皮(鉄製の側壁2)に取り付けても良い。また、先に煉瓦受け金物4を取り付けてから、煉瓦受け金物4間に耐火煉瓦3を積み上げても良い。但し、上記のように煉瓦受け金物4の下面に耐火煉瓦3が当接するように、耐火煉瓦3間の目地の一部に対し、目地材としての不定形耐火物5を充填する。
【0020】
(作用効果)
煉瓦受け金物4と耐火煉瓦3との目地以外の目地に対し不定形耐火物5を施すことで、煉瓦受け金物4の下面は、下側の耐火煉瓦3aに対して直接接触した状態となる。
このため、転炉1に溶鋼などの金属溶湯を収容した際に、耐火煉瓦3が熱膨張することによる当該耐火煉瓦3から煉瓦受け金物4の下面に作用する突き上げ力は、当該煉瓦受け金物4に対して均等に力を分散して伝達されるようになる。この結果、煉瓦受け金物4の変形や脱落が抑えられることで、耐火煉瓦3がより脱落し難くなる。
【0021】
実際に、煉瓦受け金物4と耐火煉瓦3との目地に目地モルタルを充填した場合と、上記実施形態のように、煉瓦受け金物4の下面を直接耐火煉瓦3に接触させる構造とした場合とで、耐火煉瓦3の脱落の有無を観察したところ、本発明のように煉瓦受け金物4と耐火煉瓦3との目地に目地モルタルを充填しなかった場合の方が、大幅に耐火煉瓦3の脱落が抑えられることを確認した。
【0022】
また、炉の側壁に対して、上下方向に離れた複数箇所に対してそれぞれ煉瓦受け金物4を設けた場合には、各煉瓦受け金物4は、その上側に配置される耐火煉瓦3を受けているので、所定の2カ所の煉瓦受け金物4間の耐火煉瓦3を部分的に補修することが可能となる。
【0023】
(変形例)
ここで、上記説明では、煉瓦受け金物4をプレート材で構成する場合を例示したが、これに限定されず、アングル材など耐火煉瓦を上方から押さえることが可能な形状な金物であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 転炉
2 鉄製の側壁
3 耐火煉瓦
4 煉瓦受け金物
5 不定形耐火物
6 不定形耐火物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属溶湯を収容するための容器であって、鉄製の側壁内面に沿って耐火煉瓦を積み上げると共に1又は2以上の耐火煉瓦間の目地に対し不定形耐火物を施すことで上記鉄製の側壁に耐火煉瓦を内張した金属溶湯用容器において、
1又は2以上の耐火煉瓦間に対し、上記側壁内面から容器の内側に向けて突設する板状の煉瓦受け金物を設けて、当該煉瓦受け金物で耐火煉瓦を受けると共に、
上記煉瓦受け金物と耐火煉瓦との目地には、不定形耐火物が介在しないことを特徴とする金属溶湯用容器。
【請求項2】
上記煉瓦受け金物は、互いに上下方向に間隔を開けた2カ所以上の位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載した金属溶湯用容器。
【請求項3】
鉄製の側壁内面に沿って耐火煉瓦を積み上げると共に、1又は2以上の耐火煉瓦間の目地に対し不定形耐火物を施すことで、上記鉄製の側壁に内張を施す金属溶湯用容器の内張方法において、
1又は2以上の耐火煉瓦間に対し、上記側壁内面から容器の内側に向けて突設する板状の煉瓦受け金物を設けて、当該煉瓦受け金物で耐火煉瓦を受けると共に、
上記煉瓦受け金物と耐火煉瓦との目地に対し、不定形耐火物を施さないことを特徴とする金属溶湯用容器の内張方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−47428(P2012−47428A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192096(P2010−192096)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】