説明

金属蒸着フィルム、及びこれを利用した金属粉末

【課題】積層セラミックコンデンサの薄層内部電極を形成するに好適な金属粒子、およびその製造方法ならびに製造に使用する金属蒸着フィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルム上にロール・ツー・ロール方式で正方形状の凹凸パターンを形成しその上に金属を蒸着し金属蒸着フィルムを得る。得られた金属蒸着フィルムから金属を分離させ、厚さ20〜50nm、平均粒径が4〜6μmの板状金属粒子を得る。金属はニッケル、銅、金、銀、白金、鉄鋼、クロムおよびインジウムからなるグループから選ばれる一種以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属蒸着フィルムとこれを利用して製造された金属粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型セラミックキャパシタ(Multi layered ceramic capacitor、MLCC)の超高容量化を果たすためには誘電体及び内部電極層の薄膜化が必須であり、次世代開発目標機種の場合は0.2μm水準の内部電極の厚さを具現することが必要である。
【0003】
このような目標容量を確保するためには電極連結性(coverage)が確保されなければならず、クラックの発生を抑制するために焼成過程で誘電体層とのマッチング性が求められる。この際、電極層に用いられる金属粉末粒子の形状が板状に形成される場合、焼成時に収縮方向に対する安定性を確保することができ、収縮速度の制御が可能になる。
【0004】
現在、MLCCに用いられる微粒の金属粉末としては、ニッケル金属粉末が代表的であり、その合成方法は下記表1に要約した通りである。例えば、液相熱分解法、RF−プラズマ法などがあり、様々な物理化学的合成方法などを利用することもできる。
【0005】
【表1】

【0006】
上記のような従来方式によって製造された金属粉末は図1に示すように、主に球状のナノ粒子であり、ニッケルとニッケルを覆っている薄い酸化膜層で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2008−0003919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述のような従来技術の問題を解決するためのものであり、本発明の目的は、金属粉末の製造時に用いられる金属蒸着フィルムを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、前記金属蒸着フィルムを利用して製造された金属粉末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための本発明による金属蒸着フィルムは、基材フィルムと、前記基材フィルム上に形成された凹凸パターンと、前記凹凸パターン上に蒸着された金属と、を含む構造を有する。
【0010】
前記凹凸パターンは、ロール・ツー・ロール方式で形成されることが好ましい。
【0011】
前記凹凸パターンは、アクリルエポキシ樹脂を含む紫外線硬化型樹脂を利用したものであることができる。
【0012】
また、前記凹凸パターンは、シリカを含む無機物をベースとした紫外線硬化型及び熱硬化型材料からなるグループから選ばれる1種以上を利用したものであることができる。
【0013】
前記凹凸パターンは正方形状であり、横と縦の長さが同一であることが好ましい。
【0014】
また、前記金属は、ニッケル、銅、金、銀、白金、鋼鉄、クロム、及びインジウムからなるグループから選ばれる1種以上であることができる。
【0015】
また、本発明の他の課題を解決するために、前記金属蒸着フィルムを利用した金属粉末を提供することができる。
【0016】
本発明の実施形態によると、前記金属粉末は、厚さ20〜50nmの板状(plank)であることが好ましい。
【0017】
また、前記金属粉末は、平均粒子サイズ4〜6μmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、超高容量MLCCの内部電極用として用いられる板状の金属粉末を大量に合成する時に必要な金属蒸着フィルムの構造を効果的に制御することにより、これを利用して金属粉末を大量に製造することができる。このような金属蒸着フィルムは、ロール形態で保管及び移動する場合、変質の可能性が低く、取り扱い時の制約条件が厳しくないため、その自体で製品化されることができる。
【0019】
また、前記金属蒸着フィルムを利用してロール・ツー・ロール方式で金属粉末を製造する場合、従来のようなウェーハを利用する場合より、コスト低減及び生産性向上の改善効果が優れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来方式によって製造された球状のナノ粉末形状を示した図面である。
【図2】本発明の一実施形態による金属蒸着フィルムの一部構造を示した図面である。
【図3】本発明の一実施形態による大面積金属蒸着フィルムの構造を示した図面である。
【図4】本発明の一実施形態によって製造された板状の金属粉末の形状を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
【0022】
本明細書で用いられる用語は、特定の実施例を説明するために用いられ、本発明を限定しようとするものではない。本明細書に用いられたように、単数型は文脈上異なる場合を明白に指摘するものでない限り、複数型を含むことができる。また、本明細書で用いられる「含む(comprise)」及び/または「含んでいる(comprising)」は言及された形状、数字、段階、動作、部材、要素、及び/またはこれらの組み合わせが存在することを特定するものであり、一つ以上の他の形状、数字、段階、動作、部材、要素、及び/またはこれらの組み合わせの存在または付加を排除するものではない。
【0023】
本発明は、超高容量のMLCC内部電極用として用いられる金属粉末の大量供給のために用いられる金属蒸着フィルムと、これを利用して金属粉末を製造する方法に関する。
【0024】
まず、金属粉末の製造に用いられる金属蒸着フィルムについて説明する。本発明による金属蒸着フィルムは、基材フィルムと、前記基材フィルム上に形成された凹凸パターンと、前記凹凸パターン上に蒸着された金属と、を含む構造を有する。
【0025】
これを具体的に示した図2を参照すると、基材フィルム10上に一定間隔で凹凸が形成されるように凹凸パターン20を形成し、前記凹凸パターン20上に金属30を蒸着することにより、金属蒸着フィルムを製造することができる。
【0026】
前記基材フィルム10はポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましく、その厚さは50〜188μmであることができる。
【0027】
また、前記PET基材フィルム10上に形成される凹凸パターン20はロール・ツー・ロール方式を利用することが好ましく、これは、本発明の凹凸パターン20が、横と縦の長さが同一である正方形状を有するようにするためである。
【0028】
また、このために、本発明による前記凹凸パターンは有機物や無機物を全て利用することができる。
【0029】
前記凹凸パターンを有機物を利用して形成する場合、アクリルエポキシ樹脂を含む紫外線硬化型樹脂を利用することが好ましい。熱硬化を用いる場合には基材フィルムであるPETの変形が発生する可能性があるため、紫外線硬化を用いることが好ましい。
【0030】
また、前記凹凸パターンを無機物を利用して形成する場合、シリカを含む無機物をベースとした紫外線硬化型及び熱硬化型材料からなるグループから選ばれる1種以上を利用することができる。
【0031】
前記凹凸パターンの高さは2〜3μmであることが好ましく、基材フィルム10と前記凹凸パターン20の間の角度は70〜80゜であることが好ましい。
【0032】
従って、上述のような横と縦の長さが同一である正方形状の凹凸パターン20が連続的に形成されるため、前記凹凸パターンのサイズだけ離隔された凹凸パターンが多数存在するようになる。
【0033】
次に、前記凹凸パターン20上に金属30を蒸着する。前記金属は、ニッケル、銅、金、銀、白金、鋼鉄、クロム、及びインジウムからなるグループから選ばれる1種であることができ、前記金属30の蒸着方法は特に限定されない。
【0034】
従って、最終金属蒸着フィルムの構造は図3に示した通りである。図3に示したように、一定間隔の凹凸パターン20が形成され、その上に金属30が蒸着された構造を有する。
【0035】
本発明による金属蒸着フィルムはフィルム状態であるため、ロールのような巻取形態で保管することができる。従って、これを移動または取り扱う場合、変質の可能性が低く、取り扱い時の制約条件が厳しくないため、その自体で製品化されることができる。
【0036】
一方、本発明では、前記金属蒸着フィルムを利用して板状の金属粉末を大量に製造することができる。
【0037】
本発明による金属粉末は、前記金属蒸着フィルムから金属を分離させることにより得られる。
【0038】
前記金属蒸着フィルムを利用して得られた本発明の金属粉末は、図4に示すように、平均粒子サイズが4〜6μmである板状の形態を有する。
【0039】
また、前記金属粉末は厚さ20〜50nmの板状(plank)であることが好ましい。
【0040】
以下、本発明の好ましい実施例を説明すると次の通りである。本発明の実施例は該当技術分野において通常の知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものであり、下記実施例は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。むしろ、これら実施例は本開示をより充実かつ完全になるようにし、そして当業者に本発明の思想を完全に伝達するために提供されるものである。
【0041】
実施例1
横、縦のサイズが1m×0.5mであるPET基材フィルム(厚さ100μm)上に、紫外線硬化型アクリルエポキシ樹脂をロール・ツー・ロール方式で高さ2μmに塗布し、一定間隔で凹凸パターン(横と縦の長さは全て5μmである)を有するように形成した。前記凹凸パターン上にニッケル金属を蒸着してニッケル蒸着フィルムを得た。前記ニッケル金属の蒸着速度は0.5000m2/minであり、蒸着されるニッケル重量は75mgであった。
【0042】
前記ニッケル蒸着フィルムからニッケル金属を分離させ、粉末を得た。分離されたニッケル金属粉末は図4に示した通りであり、その粒子サイズは4〜6μm、厚さ20〜50nmの板状(plank)であった。
【0043】
比較例1
金属蒸着フィルムを利用せず、サイズが6インチであるウェーハ(Si/SiO)を利用してニッケル金属を蒸着した。蒸着速度は0.0005m2/minであり、蒸着されるニッケル重量は1mgであった。
【0044】
ウェーハ処理方式は、E−beam基準に1batch(1分)に6インチのウェーハが6枚処理されることに仮定し、毎回の作業時毎にVacuum→Ventの過程が追加的に繰り返された。
【0045】
試験例
前記実施例1のフィルムと比較例1によるウェーハ上にニッケル金属を蒸着するにあたり、蒸着速度及び蒸着されるニッケル含量を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0046】
【表2】

【0047】
前記表2の結果に示されるように、本発明の金属蒸着フィルムを利用する場合、ウェーハを利用する場合より、ニッケル金属の蒸着速度及び蒸着されるニッケル含量が著しく改善されたことが分かる。また、ウェーハよりはPETフィルムの単価が相対的に安価であるため、費用面においても改善された効果を有することができる。
【0048】
これにより、ニッケル蒸着フィルムから得られる最終ニッケル粉末の含量も増大され、ニッケル金属粉末を大量に製造することができる効果が得られる。また、製造されたニッケル粉末は板状の形態を有するため、焼成時に収縮方向に対する安定性を確保することができ、収縮速度の制御が可能であり、多層セラミックキャパシタなどの電極として用いられる時、誘電体層とのマッチング性が優れた効果を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、
前記基材フィルム上に形成された凹凸パターンと、
前記凹凸パターン上に蒸着された金属と、
を含む金属蒸着フィルム。
【請求項2】
前記凹凸パターンは、ロール・ツー・ロール方式で形成されたものである請求項1に記載の金属蒸着フィルム。
【請求項3】
前記凹凸パターンは、アクリルエポキシ樹脂を含む紫外線硬化型樹脂を利用したものである請求項1に記載の金属蒸着フィルム。
【請求項4】
前記凹凸パターンは、シリカを含む無機物をベースとした紫外線硬化型及び熱硬化型材料からなるグループから選ばれる1種以上を利用したものである請求項1に記載の金属蒸着フィルム。
【請求項5】
前記凹凸パターンは正方形状である請求項1に記載の金属蒸着フィルム。
【請求項6】
前記金属は、ニッケル、銅、金、銀、白金、鋼鉄、クロム、及びインジウムからなるグループから選ばれる1種以上である請求項1に記載の金属蒸着フィルム。
【請求項7】
請求項1による前記金属蒸着フィルムを利用した金属粉末。
【請求項8】
前記金属粉末は、厚さ20〜50nmの板状(plank)である請求項7に記載の金属粉末。
【請求項9】
前記金属粉末は、平均粒子サイズが4〜6μmである請求項7に記載の金属粉末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−188753(P2012−188753A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−35943(P2012−35943)
【出願日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】