説明

金属蒸着用ポリプロピレンフイルムおよび金属化ポリプロピレンフイルム

【課題】 金属蒸着性にすぐれ、金属化層とOPPとの密着力が高く、かつ該表面の光沢度が高い二軸延伸ポリプロピレンフイルムおよびこれを用いた金属化ポリプロピレンフイルムを提供すること。
【解決手段】 ポリプロピレン樹脂層(A)、および融点が145〜158℃であって、かつ、100〜130℃の溶融結晶化ピーク温度を有するプロピレン系共重合体を含む共重合体樹脂層(B)の少なくとも2層から成り、該共重合体樹脂層(B)の表面の酸素(O)と炭素(C)の元素組成比(O/C)が0.2〜0.4である金属蒸着用ポリプロピレンフイルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用、工業用に用いられるポリプロピレンフイルムに関するものであり、特に金属蒸着を施した際に金属蒸着層との接着性に優れ、かつ光沢性に優れるポリプロピレンフイルムおよびそれを用いた金属化ポリプロピレンフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
二軸配向ポリプロピレンフィルム(以下OPP)は、軽量であり、かつ機械特性にも優れることから、包装用途、工業用途に好ましく用いられる。具体的には、スナック・菓子類の食品包装袋、医薬品の包装袋、液体容器のラベル包装用途、粘着テープ等の基材フイルムが例示される。
【0003】
このうち、該OPPの水蒸気・酸素等のバリアー性を向上したり、意匠性を付与するためにアルミニウム、亜鉛、ニッケル、錫等の金属薄膜を該OPPの表面に設けて使用される。特にスナック・餅菓子類では吸湿・酸化により内容物の品質が劣化するために金属及びまたは金属酸化物をOPP表面に設けて包装袋のガスバリア性を高めたり、ボトル類のラベル包装用として意匠性を高めるために金属蒸着層を設けて使用される。
【0004】
このような用途においては、OPPと蒸着層との接着性が重要であるが、ポリプロピレンはその構成要素が基本的には炭素、水素のみからなるために、表面エネルギーが小さく、金属層との密着性は弱く容易に剥離してしまう。このため、該OPP表面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、及びこれらの組み合わせ等の表面処理により、酸素及び/または窒素を導入することで、表面エネルギーを高め、接着性を向上する技術が用いられる。これら処理により導入された官能基はXPSで観測すると、炭素原子に結合した基として、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基等に帰属する酸素、窒素が観測される。
【0005】
このような表面処理により、接着性は向上することができるが、必ずしも充分ではなく、更に接着性を向上する方法として、該表面処理を施す面のポリプロピレンの結晶性を低下させる方法が例示される。具体的にはポリプロピレンの立体規則性を低下させる、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、3メチルブテン−1等のαオレフインを共重合させた共重合ポリプロピレン(以下低結晶性ポリプロピレン)をコアとなるポリプロピレン樹脂層の表面に積層しておき、該低結晶性ポリプロピレンの表面に該表面処理を施す方法である。
【0006】
しかしながら、このような低結晶性ポリプロピレンを積層した場合に、該低結晶性ポリプロピレン樹脂とコアのポリプロピレン樹脂との融点差等に起因して、2軸延伸工程で該低結晶性ポリプロピレン層の表面が粗面化し、金属蒸着した際の光沢度が劣るという問題を生じることがあった。
【0007】
低結晶性ポリプロピレン樹脂を積層したポリプロピレンフイルムにおいて、該表面特性を改善する技術としては、ソルビトール誘導体等の結晶核剤を該低結晶性ポリプロピレン樹脂層に添加する技術が提案されている(特許文献1)。
【0008】
しかしながら、単に結晶核剤を添加したのみでは延伸性を損ねるという問題があった。
【特許文献1】特開平10−138419(特許請求の範囲、請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、金属蒸着性にすぐれ、金属蒸着層とOPPとの密着力が高く、かつ該表面の光沢度が高い二軸延伸ポリプロピレンフイルムおよびこれを用いた金属化ポリプロピレンフイルムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を提案するものである。
【0011】
(1)ポリプロピレン樹脂層(A)、および融点が145〜158℃であって、かつ、100〜130℃の溶融結晶化ピーク温度を有するプロピレン系共重合体を含む共重合体樹脂層(B)の少なくとも2層から成り、該共重合体樹脂層(B)の表面の酸素(O)と炭素(C)の元素組成比(O/C)が0.2〜0.4である金属蒸着用ポリプロピレンフイルム。
【0012】
(2)ポリプロピレン樹脂層(A)がポリブテン−1を0.1〜5重量%含有する上記(1)に記載の金属蒸着用ポリプロピレンフイルム。
【0013】
(3)フイルム厚みが40〜70μmである上記(1)または(2)に記載の金属蒸着用ポリプロピレンフイルム。
【0014】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の金属蒸着用ポリプロピレンフイルムの共重合体樹脂層(B)表面に金属蒸着層が設けられてなり、該金属蒸着層の厚みが100〜800オングストロームである金属化ポリプロピレンフイルム。
【発明の効果】
【0015】
本発明のフイルムは、包装用途、ラベル用途として用いることで、以下の効果を奏するものである。
【0016】
(1)金属蒸着をした際に金属化層とOPPとの接着性に優れ、該金属化表面の光沢度に優れる。
【0017】
(2)金属蒸着加工時のタルミ等が少なく、蒸着加工適性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のポリプロピレンフイルムおよびこれを用いた金属化ポリプロピレンフイルムについて、以下に説明する。
【0019】
本発明ポリプロピレンフイルムは、ポリプロピレン樹脂層(A)とポリプロピレン系共重合体を含む共重合体樹脂層(B)との少なくとも2層からなることを特徴とする(なお、以下においては、上記のポリプロピレン樹脂層(A)を層(A)または樹脂層(A)、共重合体樹脂層(B)を層(B)または樹脂層(B)ということがある)。
【0020】
層(A)を構成するポリプロピレン樹脂は、本発明フイルムの基層を成すものであり、優れた機械特性、耐熱性を付与するために、該樹脂の融点は155〜170℃であることが好ましく、更に好ましくは158〜165℃であることが好ましい。また、該樹脂はプロピレンのみからなるホモポリマーであっても、エチレン、α−オレフインのいずれかから選ばれた、オレフイン類とプロピレンとの共重合体であってもよい。この中で特に好ましいポリプロピレン樹脂としては、構成単位としてプロピレンとブテン−1とを含む共重合体であって、ポリブテン−1を0.1〜5重量%含有する共重合体であることが好ましく、特に好ましくはポリブテン−1が0.5〜3重量%であることが好ましい。ポリブテン−1が0.1重量%を下回ると本発明フイルムの2軸延伸工程で厚み斑が大きくなり、蒸着加工工程でタルミ等を生じ、クーリングキャンとの密着性が劣り蒸着面の白濁等の問題を生じる可能性がある。一方、ポリブテン−1が5重量%を超えるとフイルムの剛性・耐熱性が低下して加工時に問題を生じる可能性がある。なお、共重合体中のポリブテン−1の組成比を、上記の通り重量%(含有量)の形で表している。測定方法等について後述
する。

該層(A)には、ポリプロピレン樹脂の劣化を防止するために公知の熱安定剤、酸化防止剤等を含有せしめることができ、更に触媒残査として残留する塩素を中和するためにステアリン酸カルシウム、エルカ酸カルシウム等の金属石鹸、ハイドロタルサイト類を塩素捕獲剤として含有せしめることができる。特に塩素捕獲剤としてはハイドロタルサイト類に例示される無機塩を含有せしめるとフイルム中の異物発生を低減できるので好ましい。
【0021】
また、フイルムの滑り性を良好にし、加工適性を向上する目的で、その粒子径が0.5〜5μmの酸化珪素、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、ポリメチルメタアクリレート、ベンゾグアナミン、ポリスチレン等の架橋樹脂粒子等を含有せしめることができる。含有量としては300〜3,000ppm(重量基準)であると滑り性を良好として透明性を損なうことが少ないので好ましく、特に好ましくは500〜2,000ppm(重量基準)であることが好ましい。
【0022】
次いでポリプロピレン系共重合体を含む層(B)について説明する。
【0023】
該層(B)を構成するポリプロピレン系共重合体樹脂は、融点が145〜158℃であることが重要であり、好ましくは150〜156℃である。融点が145℃未満であると本発明フイルムの2軸延伸工程でフィルム表面が粗面化することにより、表面平滑性が損なわれて蒸着した際に光沢度が低下する恐れがある。一方融点が158℃を超えると金属化層(金属蒸着層)との接着性が低下する恐れがある。このような融点を有するポリプロピレン系樹脂を得るために、プロピレンにエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4メチルペンテン−1等のαオレフインから選ばれた少なくとも一種のコモノマー成分を総量で0.5〜4モル%をランダムに共重合する方法が好ましく、特に共重合量は1〜3モル%であることが好ましい。また、コモノマーとしては、エチレン、ブテン−1の少なくともいずれかであると経済性に優れるので好ましい。
【0024】
また、該ポリプロピレン系共重合体樹脂は100〜130℃の溶融結晶化ピークを有することが重要であり、好ましくは100〜125℃である。該溶融結晶化ピークが100℃未満であると該層(B)表面のフイルムの耐熱性に劣り、フィルム表面が粗面化することにより、蒸着層の光沢度が低下する恐れがある。一方、溶融結晶化ピークが130℃を超えると延伸時の均一性に劣り、厚み斑が大きくなる等の問題を生じる可能性がある。溶融結晶化ピークを上述の範囲とするためには、たとえば、以下の技術を適用することで達成が可能である。すなわち、ソルビトール誘導体のようにポリマー中でネットワークを形成して運動性を低下させる機能を有する成分を溶融分散させる方法、タルクのようなフィラー類を添加する方法、キナクリドン類の様に特定の顔料を含有せしめる方法等である。しかしながら、本発明においては、高密度ポリエチレン、ポリ3メチルブテン1、ポリ4メチルペンテン1等のαオレフイン類であってその溶融結晶化温度が110℃以上のポリオレフイン樹脂を該ポリプロピレン系共重合体に微分散するよう添加することが好ましい。このような高融点のポリオレフイン類を微分散させる方法としては、それぞれの樹脂を別々の製造装置で重合し、パウダーあるいはペレット形状としておき、再度押出機で溶融混練する方法、ポリプロピレンの重合工程に置いて、該高溶融結晶化温度を有するポリオレフインを前重合する等の技術が例示されるが、特に重合工程で分散させる方法が分散性に優れかつ溶融結晶化ピークの制御が容易となるので好ましい。もちろん、別な方法として該高溶融結晶化温度を有するポリオレフインを重合工程で微分散させたポリプロピレン系樹脂をマスター樹脂として、ポリプロピレン系共重合体と溶融混練する方法も適用できる。この場合、樹脂組成のコントロールが容易となると同時に経済性にも優れるので好ましい。
【0025】
以上の高溶融結晶化温度を有するポリオレフイン樹脂の層(B)中の含有量は300〜10,000ppm(重量基準)としておくことが、接着性と表面光沢度のバランスに優れるので好ましく、更に好ましくは500〜5,000ppm(重量基準)であると好ましい。
【0026】
当該層(B)には樹脂の安定性を付与するため公知の熱安定剤、酸化防止剤、塩素捕獲剤等を含有せしめることができる。塩素捕獲剤については前述の通り、ハイドロタルサイト類が異物の発生が少なく好ましく用いられる。また、滑り性を付与する目的で、前述の通り、有機及び/又は無機のフィラーを300〜5,000ppm(重量基準)含有せしめると好ましく、特に好ましくは800〜3,000ppm(重量基準)であることが好ましい。
【0027】
次いで、該層(B)の表面の酸素(O)と炭素(C)の元素組成比(O/C)は0.2〜0.4であることが重要であり、更に好ましくは、0.22〜0.39である。また、更に窒素原子も存在していることが接着性を向上する上で好ましく、窒素(N)と炭素(C)の元素組成比(N/C)が0.01〜0.08であることが好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.06である。
【0028】
このように酸素原子及び/又は窒素原子が結合した結果として、該樹脂層表面にはカルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、等の有極性基が形成され、表面エネルギーが上昇する。該表面エネルギーはいわゆる濡れ指数で評価した場合には、通常のポリプロピレンフイルムの表面が31mN/m程度であるのに対して、37〜56mN/m、好ましくは40〜56mN/m程度に高めることができる。
【0029】
このような酸素及び窒素原子を炭素原子と結合せしめる方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等が例示されるが、特にコロナ処理が経済性に優れるので好ましい。この場合、コロナ処理は通常の大気中でも可能であるが、前述の樹脂の劣化を防止するために不活性ガス雰囲気で処理することが好ましく、窒素ガス、炭酸ガス等のガスで空気を置換して処理することが好ましい。特に雰囲気の酸素濃度が5%を超えると酸化による樹脂の劣化が促進するため、5%以下に抑制することが好ましい。また、雰囲気ガスの好ましい組成としては窒素ガスを80〜97%、炭酸ガスを3〜20%とした組成であると蒸着金属との接着性が良好となるので好ましい。
【0030】
本発明フイルムは上述の樹脂層(A)と樹脂層(B)との少なくとも2層からなることを特徴とするものであるが、樹脂層(B)を樹脂層(A)の両面に設けることも可能である。また、樹脂層(A)、樹脂層(B)と異なる、樹脂層(C)を設けて、樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(C)の3層構成とすることも可能であり、その用途に応じて適宜層構成を選択することができる。具体的に、樹脂層(C)を設けた場合の該樹脂層(C)を構成としては、エチレンプロピレンブテン3元共重合体としてヒートシール層として活用する構成、エチレンプロピレンのブロック共重合体を用いてマット層として活用する構成等が例示される。
【0031】
樹脂層(B)は金属蒸着層との密着性を付与する機能を有し、層の厚みは0.3μm以上あれば充分であるが、積層の均一性を考慮すると平均厚みとして、0.5〜2μmであることが好ましい。
【0032】
また、本発明フイルムの厚みは、その用いられる用途に応じて適宜選択されるので特に限定されるものではないが、通常10〜100μmであり、特に包装用途では10〜25μmの範囲が好ましく用いられる。一方、ボトルのラベル包装用途においては、フイルムの腰が求められるために30μm以上の厚いフイルムが好ましく用いられ、特に好ましい厚みの範囲は40〜70μmである。本発明フイルムは特に光沢度が優れるために、ラベル包装用途に好ましく用いられるものである。
【0033】
次いで、本発明フイルムの製造方法について以下に説明するが、もちろん、これに限定されるものでは無い。
【0034】
本発明フイルムは基本的に2軸延伸を施されて製造されるものである。延伸が施されていないフイルムの場合、シート成型時に形成された球晶構造により透明性に劣るばかりか、機械特性に劣るものともなる。
【0035】
2軸延伸方法としては、フラットダイ法に基づく逐次2軸延伸法、同時2軸延伸法、円形ダイ法に基づくチューブラー(バブル)法が例示されるが、フイルムの厚み均一性に優れるフラットダイ法が好ましく用いられる。以下逐次2軸延伸法による製造方法を説明する。基層を形成するポリプロピレン樹脂(A)と金属蒸着層の接着性を付与するポリプロピレン系樹脂(B)をそれぞれ別の押出機に導き、溶融混練し均一な溶融体とする。次いでそれぞれの樹脂をポリマーフィルターを通過せしめ異物等を除去した後に、樹脂(A)と樹脂(B)とを積層体とならしめる合流装置にて樹脂(A)/樹脂(B)の積層シートを形成する。これら樹脂(A)と樹脂(B)はそれぞれ、本発明のフィルムの層(A)と層(B)を構成することになる。該合流装置はポリマー管同士を結合し口金に導いてシート成形する方法、フィードブロックにて合流させシート成形する方法、あるいはマルチマニホールドタイプの口金で結合する方法であってもいずれでも構わないが、マルチマニホールドタイプの口金よると樹脂を幅方向に拡幅した後に積層するために樹脂の積層比の均一性が優れるので好ましい。もちろん、該積層工程において、第3あるいはそれ以上の樹脂を準備しておき3層以上の層構成とすることができる。
【0036】
次いで上記のようにして得られた溶融シートを冷却ドラム上に導いて、エアー圧で密着させて冷却固化させる。この際に冷却を充分に行うことで引き続く延伸時の延伸張力を低減せしめ均一な延伸フイルムを得ることができるので好ましく、シートを冷却ドラムに密着させた後に直ちに水槽に導いて冷却する方法、水を霧吹き状にして空気側のフイルム表面を冷却するする方法等の様々な冷却手段を講じることができる。特に2軸延伸後のフイルム厚みが50μmを超える場合には水冷等の冷却手段を講じると得られたフイルムの均一性、透明性が良好となるので好ましい。
【0037】
以上の方法により得られた未延伸シートは複数の加熱ロールに順次接触させフイルム温度を130〜160℃とした後に少なくとも1対の周速差が異なるロール間で長手方向に3〜6倍に延伸する。次いで、該一軸延伸フイルムの両端部をクリップで把持して、熱風オーブンに導いて150〜180℃に予熱して該クリップ間を広げ幅方向に7〜12倍に延伸し、引き続き幅方向に0〜10%のリラックスを許しながら熱固定する。
【0038】
以上により2軸延伸されたフイルムの表面にコロナ放電処理を施し、クリップ把持部分をトリミングして巻き取る。コロナ放電処理については空気雰囲気で行ってもよいが、窒素ガス雰囲気下、又は窒素ガス/炭酸ガス雰囲気下で処理を施すと接着効果が向上するので好ましい。
【0039】
本発明フイルムは以上の少なくとも層(A)/層(B)の少なくとも2層からなるフイルムの層(B)表面を金属蒸着受容面として使用するものである。
【0040】
この際に蒸着される金属種としては金属蒸気化ないしはクラスターイオン化して、真空中をとばすことができるものであれば特に限定されるものではなく、その目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、アルミニウム、亜鉛、銅、ニッケル、クロム、錫、鉄、金、銀等が例示され、更にこれらの2元またはそれ以上を混合あるいは積層して蒸着することができる。また、これらの金属種はフイルム表面に金属層を形成する際に、あるいは金属層が形成された後に、その一部または全てが酸化されていてもよい。金属のみを蒸着した場合でも該金属蒸着膜のフイルム表面側もその反対側も金属酸化層が形成されるのが通常である。本発明フイルムにおいては形成される金属化層(金属蒸着層)の厚みは100〜800オングストロームであることが好ましい。金属化層の厚みが100オングストローム未満であると充分な表面光沢が得難くなる。一方、800オングストローム以上であると金属化層とフイルム層間のストレスが大きくなり、蒸着接着力が低下したり、経済性の点で不利になることがある。通常、充分な表面光沢度を得る目的であれば、該膜厚は300〜700オングストロームであればよい。
【0041】
また、本発明を包装用途あるいは工業用途に使用する場合は、該金属はアルミニウムであることが耐久性と経済性の点で優れている。
【0042】
アルミニウムを金属化層としてフイルム表面に形成するためには、通常、減圧雰囲気下でアルミニウムを加熱・蒸着せしめフイルム表面で凝着させる真空蒸着技術が用いられる。
【0043】
真空蒸着法としては、ロール状に巻かれたフイルムを減圧槽内に設置して蒸着を行うバッチ式蒸着法、フイルムロールを大気中から多段に設置されたニップロール間を通過させながら次第に減圧して蒸着する連続式蒸着法等が例示されるが、以下バッチ式蒸着法について説明する。
【0044】
バッチ式蒸着法では、蒸着加工を施すフイルムをロール状としたものを、真空蒸着装置内に設置して、10−2torr以下の減圧下で巻きだし、−10〜−40℃程度に冷却されたクーリングドラムに密着させながら、アルミニウム蒸発源から金属蒸気を発生せしめ、該クーリングドラム上にあるフイルム表面で凝着せしめ、別な巻き取り軸で巻き取る。
【0045】
この際に単位時間の金属蒸発量と蒸着付着効率並びにフイルムの搬送速度で金属化層の厚みをコントロールすることができる。該金属蒸着前後で適宜、グロー処理等の表面処理を適宜組み合わせることができるし、他の金属及び/または金属酸化物・シリコーン化合物を連続して、あるいは混合して蒸着することも可能である。
【0046】
該金属蒸発源としては、導電性セラミックス製のボートに電流を流し加熱せしめ、そのボート上にワイアー状の金属を連続的にフィードするワイアーフィード方式、坩堝中に金属塊を投入して、該坩堝または金属そのものを誘導加熱または電子ビーム等で加熱蒸発させる方法等が例示される。求められる品位、コストに応じていずれの蒸発源を随時選定することができる。
【実施例】
【0047】
本発明における特性値の測定方法、並びに効果の評価方法は次のとおりである。
【0048】
(1)ポリプロピレン系樹脂の共重合量
例えば以下のとおりである。
【0049】
(ブテン−1共重合量)
プロピレンとブテン−1との共重合体樹脂について、140℃での13C−NMR法による分析を行い、スペクトルを得た。分析条件は次の通りである。
【0050】
約0.3gの樹脂サンプル及び約5mlのo−ジクロロベンゼンをサンプル管に装入し140℃で溶解;10mmφプローブを使用;測定装置 日本電子社製GX−270(6.34T);13C観測周波数 67.94MHz;ロック溶媒 ベンゼン−d6;パルス幅 17μs(90°パルス);積算繰り返し時間 25s;測定温度 140℃;試料回転数 15Hz
<解析条件>
LBを5.0としてフーリエ変換を行い、ポリプロピレン(PP)のメチル炭素のピークを28.29ppm、ポリブテン−1のメチル炭素のピークを34.47ppmとした。Aliceソフト バージョン4.8(日本電子データム社製)を用いて、各ピークの面積積分値を求めた。ポリブテン−1の含有率は、PPのメチル炭素のピーク強度IPPとポリブテン−1のメチル炭素の強度Iを用い、下の計算式より求めた。
【0051】
PB含有率(重量%)=I×56/(IPP×42+I×56)×100
(2)融点、溶融結晶化温度(℃)
セイコー社製RDC220示差走査熱量計を用いて、下記以下の条件で測定を行った。
【0052】
<試料の調整:>
検体1〜5mgを測定用のアルミパンに封入する。尚、フイルムに金属蒸着等が施されている場合は適宜除去する。
【0053】
<測定>
以下の(a)→(b)→(c)のステップでフイルムを溶融・再結晶・再溶融させる。樹脂の融点は2nd Runで観測される融解ピークの内で最も高い融解ピーク温度を融点とした。n=3の平均値を求めた。
【0054】
(a)1st Run 30℃→280℃(昇温速度20℃/分)
(b)Tmc 280℃で5分保持後に20℃/分で 30℃まで冷却
(c)2nd Run 30℃→280℃(昇温速度20℃/分)
(3)溶融流動指数(MFR(g/10分))
ポリプロピレン樹脂の230℃におけるメルトフローレート
JIS K−7210(1999)に示されるポリプロピレン試験方法(230℃、21.18N)、ポリエチレン試験方法(190℃、21.18N)に準じて測定した。
【0055】
(4)フイルム表面の炭素原子に対する酸素原子の割合(O/C)、および窒素原子の割合(N/C)
国際電気株式会社製のESCAスペクトロメーターES200型を用い、以下条件でフィルム表面を測定した。励起X線:Al Kα線(1486.6eV)、X線出力:10Kv 20mA、温度:20℃、運動エネルギー補正:中性炭素(−CH−)の運動エネルギーを1202.0eVに合わせた。得られたエネルギー値からC1sのピークとO1sのピーク面積の比を、O/Cとし、またC1sとN1sのピーク面積の比を、N/Cとした。
【0056】
(5)濡れ指数(濡れ張力)
JIS K−6768(1999)に準じて測定した。
【0057】
(6)フイルムの厚み構成および金属蒸着層の厚み
フィルムの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)にて以下の条件で写真撮影し、フィルムの厚み構成および金属蒸着層の厚みを測定した。装置:日本電子(株)製JEM−1200EX、観察倍率:フイルムの厚み構成の場合1,000倍、金属蒸着層の厚みの場合40万倍、加速電圧:100kV
(7)グロス(光沢度)
JIS K−7105(1981)に準じ、スガ試験機株式会社製 デジタル変角光沢計UGV−5Dを用いて入射角60°受光角60°の条件で測定した5点のデータの平均値を光沢度とする。蒸着面のグロスは400%以上であることが望ましい。
【0058】
(8)蒸着密着力
金属アルミニウムをその厚みが500±50オングストローム(光学濃度(OD)換算2±0.2)となるようにフイルム表面蒸着したものをサンプルとした。該サンプルに日東電工(株)製ポリエステル粘着テープNO.31B を4.2mN/mmの圧力で貼付し、剥離した。
【0059】
金属がフィルムに付着残存していた面積を求め、以下5段階の級別評価を行った。
【0060】
4級以上であれば問題なく使用できるが、2級以下では実用上問題を生じる。
【0061】
5級:残存面積90%以上
4級:残存面積75%以上90%未満
3級:残存面積50%以上75%未満
2級:残存面積25%以上50%未満
1級:残存面積25%未満
(9)フイルムの製膜方法
フイルム層構成としては、3層のポリプロピレン系樹脂層からなるフイルムを製膜して特性評価を行う。
【0062】
樹脂層(A)としては表1に示す樹脂a1、a2を準備した。また、樹脂層(B)としては、表1のb1〜b5に示す特性の樹脂を準備した。高溶融結晶化ポリオレフインとしては高密度ポリエチレン(HDPE)(密度=0.982、MFR=2.0g/10分)を2軸混練機で所定の含有量となるように練り込んだ。また、ポリ3メチルブテン1(P3MB1)はポリプロピレンホモポリマーを重合する際に、第一段目のリアクターに3MB1モノマーを導入し重合せしめポリプロピレン中に分散させた。こうして得られたP3MB1を含有するポリプロピレン樹脂をポリプロピレン系共重合体に所定の添加量になるように溶融ブレンドすることで目的とする樹脂を得た。尚、該b1〜b5についてアンチブロッキング剤としてシルトン(シリカ粒子)を1,500ppm(重量基準)添加した。また樹脂層(C)としては表1に示す樹脂cを準備した。
【0063】
これらの樹脂は、それぞれ単軸押出機3台(バレル径65mmφ:Ex1、30mmφ:Ex2、30mmφ:Ex3)を用いて溶融押出し、層(B)/層(A)/層(C)の3層のからなる樹脂シートを形成できるマルチマニホールドダイに導いてシート状に押出す。該ダイより吐出した溶融シートは30℃に設定した冷却ドラムにエアー圧で密着させ冷却固化した後に6本の加熱ロール群で所定の温度に予熱した後に1対の周速差を設けたロール間で所定の倍率に長手方向に延伸した。次いで該延伸フィルムをクリップで把持して熱風オーブンに導いて所定の温度に予熱した後に幅方向に所定の倍率に延伸し、5%のリラックスをとって熱固定した。こうして得られた2軸延伸フイルムを空気中でコロナ放電処理し、エッジを取り除きロール状に巻き取った。尚、コロナ放電処理をする際の条件は、以下のように設定した。
【0064】
雰囲気:窒素ガス90容積%+炭酸ガス10容積%
フィルム温度:60℃
処理強度:23W/m/min
こうして得られた2軸延伸ポリプロピレンフイルムを坩堝式蒸着機にて金属アルミニウムを膜厚が500オングストロームを中心値として±50オングストロームとなるように蒸着して特性評価を行なった。
【0065】
以下、実施、比較例に基づいて、本発明について説明する。
【0066】
(実施例1)
蒸着面側(層(B))の樹脂として樹脂b1、コア層(層(A))として樹脂a1、蒸着面と反対側の表面層(層(C))として樹脂cを用いて、2軸延伸後のフイルム厚みがそれぞれ、1:13:1μm(合計厚みが15μm)となるように積層した。製膜方法は前記方法に従い、長手方向に150℃に予熱した後に4.8倍に延伸し、更に横方向に164℃に予熱して9倍に延伸した。その後、層(B)表面を空気雰囲気でコロナ放電処理して巻き取った。得られた2軸延伸ポリプロピレンフイルムの層(B)表面の(O/C)は0.23であり、金属蒸着した際の接着力は4級で、表面光沢度は550%であった。
【0067】
こうして得られた2軸配向ポリプロピレンフィルムは、金属蒸着接着力に優れており、表面光沢度も良好であった。
【0068】
(実施例2)
層(B)として樹脂b2、層(A)として樹脂a1、層(C)として樹脂cを選択し、それぞれの層厚みが、1μm、23μm、1μmとなるようにした。製膜条件は、製膜速度を0.6倍とした以外は実施例1と同様の条件を用いた。得られた2軸延伸ポリプロピレンフイルムの層(B)表面の(O/C)は0.39であり、金属蒸着した際の接着力は5級で、表面光沢度は490%であった。
【0069】
こうして得られた2軸配向ポリプロピレンフィルムは、金属蒸着接着力に極めて優れており、表面光沢度も良好であった。
【0070】
(実施例3)
層(B)として樹脂b3、層(A)として樹脂a1、層(C)として樹脂cを選択し、それぞれの層厚みが、1μm、28μm、1μmとなるようにした。製膜条件は長手方向の延伸倍率を4.6倍とし、コロナ放電処理の投入電力条件を1.7倍にした以外は実施例1と同様の条件を用いた。得られた2軸延伸ポリプロピレンフイルムの層(B)表面の(O/C)は0.33であり、金属蒸着した際の接着力は5級で、表面光沢度は440%であった。
【0071】
こうして得られた2軸配向ポリプロピレンフィルムは、金属蒸着接着力に極めて優れており、表面光沢度も良好であった。
【0072】
(実施例4)
層(B)として樹脂b5、層(A)として樹脂a2、層(C)として樹脂cを選択し、それぞれの層厚みが、1μm、48μm、1μmとなるようにした。製膜条件は、長手方向の延伸条件を148℃で4.5倍、幅方向の延伸条件を165℃で8.5倍にし、以外は実施例1と同様の条件を用いた。また、層(B)表面にコロナ放電処理を施す際の投入電力条件は実施例1と同じにし、雰囲気は窒素ガス:炭酸ガスの割合が容積比で9:1となるように設定した。得られた2軸延伸ポリプロピレンフイルムの層(B)表面の(O/C)は0.25、(N/C)は0.04であり、金属蒸着した際の接着力は5級で、表面光沢度は570%であった。
【0073】
こうして得られた2軸配向ポリプロピレンフィルムは、金属蒸着接着力に極めて優れており、表面光沢度も良好であった。
【0074】
(実施例5)
層(B)として樹脂b2、層(A)として樹脂a2、層(C)として樹脂cを選択し、それぞれの層厚みが、1μm、58μm、1μmとなるように設定した。製膜条件は実施例4に準じた。また、層(B)表面にコロナ放電処理を施す際の雰囲気は実施例4と同様にして、処理電力を実施例4の0.8倍となるように設定した。
【0075】
得られた2軸延伸ポリプロピレンフイルムの層(B)表面の(O/C)は0.21、(N/C)は0.01であり、金属蒸着した際の接着力は4級で、表面光沢度は590%であった。
【0076】
こうして得られた2軸配向ポリプロピレンフィルムは、金属蒸着接着力に優れており、表面光沢度も良好であった。
【0077】
(比較例1)
層(B)として樹脂b2、層(A)として樹脂a1、層(C)として樹脂cを選択し、それぞれの層厚みが、1μm、23μm、1μmとなるようにした。製膜条件はコロナ放電処理の投入電力条件を0.5倍にした以外は、実施例2と同様の条件を用いた。得られた2軸延伸ポリプロピレンフイルムの層(B)表面の(O/C)は0.10であり、金属蒸着した際の接着力は1級で、表面光沢度は500%であった。
【0078】
こうして得られた2軸配向ポリプロピレンフィルムは、表面光沢度は良好なものの、金属蒸着接着力に劣り、実用に耐えないものであった。
【0079】
(比較例2)
層(B)として樹脂c、層(A)として樹脂a1、層(C)として樹脂cを選択し、それぞれの層厚みが、1μm、23μm、1μmとなるようにした。製膜条件は実施例2と同様の条件を用いた。
【0080】
得られた2軸延伸ポリプロピレンフイルムの層(B)表面の(O/C)は0.33であり、金属蒸着した際の接着力は2級で、表面光沢度は500%であった。
【0081】
こうして得られた2軸配向ポリプロピレンフィルムは、表面光沢度は良好なものの、金属蒸着接着力に劣り、実用に耐えないものであった。
【0082】
(比較例3)
層(B)として樹脂b4、層(A)として樹脂a1、層(C)として樹脂cを選択し、それぞれの層厚みが、1μm、23μm、1μmとなるようにした。製膜条件は実施例2と同様の条件を用いた。得られた2軸延伸ポリプロピレンフイルムの層(B)表面の(O/C)は0.33であり、金属蒸着した際の接着力は2級で、表面光沢度は340%であった。
【0083】
こうして得られた2軸配向ポリプロピレンフィルムは、金属蒸着接着力に極めて優れているものの、表面光沢度に劣り、実用に耐えないものであった。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン樹脂層(A)、および融点が145〜158℃であって、かつ、100〜130℃の溶融結晶化ピーク温度を有するプロピレン系共重合体を含む共重合体樹脂層(B)の少なくとも2層から成り、該共重合体樹脂層(B)の表面の酸素(O)と炭素(C)の元素組成比(O/C)が0.2〜0.4である金属蒸着用ポリプロピレンフイルム。
【請求項2】
ポリプロピレン樹脂層(A)がポリブテン−1を0.1〜5重量%含有する、請求項1に記載の金属蒸着用ポリプロピレンフイルム。
【請求項3】
フイルム厚みが40〜70μmである、請求項1または2に記載の金属蒸着用ポリプロピレンフイルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の金属蒸着用ポリプロピレンフイルムの共重合体樹脂層(B)の表面に金属蒸着層が設けられてなり、該金属蒸着層の厚みが100〜800オングストロームである金属化ポリプロピレンフイルム。

【公開番号】特開2008−238438(P2008−238438A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78615(P2007−78615)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】