説明

金属表面保護被膜として独得なナノ構造材料

【課題】航空機及び航空宇宙機用の金属表面保護被膜の構成成分としてのナノ構造材料とその製造方法の提供。
【解決手段】式(1)、(2)または(3):Z4−xSi((R’)−F)(1)Z4−x−y(F’−(R’)Si((R’)−F)(2)n−ma−mb(F’−L)maM(L−F)mb(3)の官能化剤を少なくとも2種用いて官能化された、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタンまたは酸化セリウム(IV)を主成分とする少なくとも1種のナノビルディングブロックを含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、特に航空機および航空宇宙機用の金属表面保護被膜の構成成分としてのナノ構造材料とその製造方法に係わる。
航空機産業の分野において腐食からの保護は通常、例えばクロム陽極酸化法もしくは化成被覆法を用いるクロム(VI)利用の表面処理によって行なわれる。
しかし、クロム(VI)は有毒で、発癌性を有し、かつ環境に害を及ぼすことが判明しており、その使用は早晩禁止されよう。
従って、腐食からの保護のみならず掻き傷などからの保護も実現する、既存の系と同等以上に高性能の新たな系を見出さなければならない。
当該技術分野では、ゾルゲル法で製造される有機/無機ハイブリッド材料がすでに構想されている。
例えば、米国特許出願公開第2003/024432号には、酢酸などの有機触媒の存在下にアルコキシジルコニウムなどの有機金属塩、オルガノシラン、およびボレート、亜鉛またはホスフェート官能基を有する1種以上の化合物から出発するゾルゲル法により製造される、耐食性を具えた被膜が記載されている。
米国特許第6,261,638号および欧州特許第1 097 259号には、多官能シランを主成分とする処理溶液の適用、および鎖中に数個の硫黄原子を有する二官能シランを主成分とする処理溶液の適用を含む金属腐食防止方法がそれぞれ記載されている。
しかし、これらの材料はマイクロ構造またはナノ構造を有しないという欠点が有り、すなわち当該材料中での有機領域および無機領域の分布をマイクロメートルレベルまたはナノメートルレベルで制御することができない。このようにランダムな分布は材料の諸特性の再現性を損いかねない。
ゾルゲル法の利点の一つは、穏和条件と称される条件下に、すなわち水中、または従来の表面処理に用いられるものほど環境を害しない水/溶媒媒質中で200℃より低温で開始前駆物質から三次元網状構造を構築できることである。
ゾルゲル法で通常用いられる開始前駆物質は、1個以上の加水分解性基を有する金属アルコキシドである。金属アルコキシドの例としては、単独物質または混合物としてのケイ素またはジルコニウムアルコキシドを特に挙げることができる。
論文“The self−assembled nanophase particle(SNAP) process: a nanoscience approach to coatings”, M. S. Donley et al., Progress in Organic Coatings, 47, 401−415, 2003には、テトラメトキシシランおよびグリシドプロピルトリメトキシシランを含む水溶液から出発して穏和条件下に得られる非晶質材料製被膜が記載されている。前記材料には腐食抑制剤が導入される。
米国特許第6,929,826号には、アルコキシシラン、エポキシアルコキシシランおよび水を含む水性組成物から出発して金属表面を処理する方法が記載されている。この方法は特に、組成物の成分同士を混合する工程、得られた組成物を熟成させる工程、架橋剤、界面活性剤、および場合によっては水を添加する工程、最終組成物を金属支持体に塗布する工程、および前記支持体を乾燥する工程を含む。
【0002】
驚くべきことに、ナノスケールレベルで構造を制御すれば新規な巨視的特性が得られることを、本願出願人は見出した。巨視的特性とは、随意に調節できる機械的強度、膜の厚みおよび品質、密度、色ならびに疎水性といった、各成分の特性の総和として得られる特性のみでなく、実際に新規な特性のことでもある。そのような特性はナノスケールレベルでの成分同士の相乗作用によって得られる。しかも、ナノスケールレベルでの構造制御によって諸特性が再現可能となる。
上記制御はナノ構造材料によって達成される。
「ナノ構造材料」という文言は、その構造がナノスケールレベルで制御された材料を意味するものと理解される。そのような材料の構造は、特に小角X線散乱およびX線回折、透過型電子顕微鏡(TEM)検査、または原子間力電子顕微鏡(AFM)検査によって確認され得る。
上記のような材料は、論文“Designed hybrid organic−inorganic nanocomposites from functional nanobuilding blocks” by C. Sanchez et al., Chem. Mater., 2001, 13, 3061−3083から公知であり、明確に定義されたナノスケールサイズのビルディングブロック(もしくはナノビルディングブロック(NBB))であって好ましくは前官能化または後官能化されたものと、ポリマーまたは有機/無機ハイブリッド樹脂とから合成される。
この材料の一方の部分、すなわちゾルゲル法によって得られるマトリックスなどは非晶質であるが、他方の部分はナノスケールサイズの結晶質領域から構成される。
この材料は、金属支持体への良好な付着を確実にすると共に、支持体(もしくは表面)、特に例えばアルミニウム合金またはチタン合金に対して腐食からの保護、耐引掻き性の付与、優れた機械的強度の付与、および/または着色を行なうことを可能にする様々な機能を有し得る。
しかもこの材料は、通常は共存しない幾つかの異なる機能の共存を可能にし得、また例えば浴に浸漬する、スピン塗布、スプレー塗布または層流塗布(laminar−flow coating)により支持体にデポジットする、ブラシでデポジットするなどといった通常手法のいずれかで塗布され得る。個々の成分を、その貯蔵寿命が工業生産サイクルに適合するように、例えば12ヵ月以上となるように形成し、それらを材料適用の直前に混合することも可能である。この材料の調製には、環境規制に抵触しない成分が用いられ、特に主として水性媒質中で用いられるという付加的な利点も有る。
本発明は、金属支持体に確実に付着しつつ、腐食から保護されている、耐引掻き性を有する、機械的強度に優れる、および/または着色されている、といった、より優れた特性を付与し得る新規なナノ構造材料を主題の一つとする。
本発明によるナノ構造材料は、
式(1)、(2)または(3):
4−xSi((R’)−F) (1)
4−x−y(F’−(R’)Si((R’)−F) (2)
n−ma−mb(F’−L)maM(L−F)mb (3)
〔式中、
各Zは互いに独立に、F、Cl、BrもしくはIといったハロゲン原子、好ましくはClもしくはBrであるか、または−OR基であり、
Rはアルキル基、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチルまたはt−ブチルといったC1〜4アルキル基であり、好ましくはメチルまたはエチル基であり、
xおよびyは1から3までの整数であり、ただし式(1)では4−x≧1、式(2)では4−x−y≧0であり、
各R’は互いに独立に、アルキレン基、好ましくはC1〜4アルキレン基、例えばメチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレン基;アルケニレン基、特にビニレン基、1−プロペニレン基およびブテニレン基などのC2〜4アルケニレン基;ならびにフェニレン基およびナフチレン基などのC6〜10アリーレン基の中から選択される有機スペーサー基であり、
pは0または1であり、
各Fは、アルキル基、特にC1〜4アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピルまたはブチル基;アルケニル基、特にビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基およびブテニル基などのC2〜4アルケニル基;アルキニル基、特にアセチレニル基およびプロパルギル基などのC2〜4アルキニル基;アリール基、特にフェニル基およびナフチル基などのC6〜10アリール基;メタクリルオキシプロピル基などのメタクリルまたはメタクリルオキシ(C1〜10アルキル)基;グリシジル基およびグリシジルオキシ(C1〜10アルキル)基などの、エポキシアルキルまたはエポキシアルコキシアルキル基であってそのアルキル基が直鎖、分枝鎖または環状のC1〜10アルキル基であり、アルコキシ基は炭素数1〜10であるもの;クロロプロピル基などのC2〜10ハロアルキル基;ペルフルオロプロピル基などのC2〜10ペルハロアルキル基;メルカプトプロピル基などのC2〜10メルカプトアルキル基;3−アミノプロピル基などのC2〜10アミノアルキル基;3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基などのアミノ(C2〜10アルキル)アミノ(C2〜10アルキル)基;3−[ジエチレントリアミノ]プロピル基などのジ(C2〜10アルキレン)トリアミノ(C2〜10アルキル)基;およびイミダゾリル(C2〜10アルキル)基の中から選択され、
各F’および各Lはそれぞれ単座または多座の錯化配位子、好ましくは多座錯化配位子で、例えば酢酸などのカルボン酸、アセチルアセトンなどのβ−ジケトン、アセト酢酸メチルなどのβ−ケトエステル、乳酸などのα−またはβ−ヒドロキシ酸、アラニンなどのアミノ酸、(3−トリトメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン(すなわちDETA)などのポリアミン、ホスホン酸、およびホスホネートであり、
MはAl(III)、Ce(III)、Ce(IV)、Zr(IV)、Ti(IV)、Sn(IV)、Nb(V)、V(V)、Ta(V)、Hf(V)、好ましくはAl(III)、Ce(III)、Ce(IV)、Zr(IV)もしくはTi(IV)であるか、またはY(III)、La(III)およびEu(III)などの希土類元素であり、括弧内の数字はM原子の原子価を示し、
nはM原子の配位状態を表わし、
mはキレート化剤Lと金属Mとの間の配位結合の数であり、
aおよびbはma+mb=nとなるような整数である〕
の官能化剤を少なくとも2種用いて官能化された、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタンまたは酸化セリウム(IV)を主成分とする少なくとも1種のナノビルディングブロックを含む。
式(1)および(2)において、各((R’)−F)、および((R’)−F’)は非加水分解性基であり、Fは、好ましくは任意の有機またはハイブリッドマトリックスに対して親和性を有する官能基であり、F’は、好ましくはナノビルディングブロックの表面に対して親和性を有する官能基である。
式(3)の(L−F)および(L−F’)は、いずれもLを介して金属Mを錯化する基であり、好ましくは任意の有機またはハイブリッドマトリックスに対して親和性を有する官能基F、および好ましくはナノビルディングブロックの表面に対して親和性を有する官能基F’をそれぞれ有する。
ナノビルディングブロックはクラスター状、またはナノ粒子の形態であり得、ナノ粒子の大きさは好ましくは2〜100nmで、2〜50nmであればなお好く、2〜20nmであればさらに好い。ナノ粒子の直径は、小角X線散乱およびX線回折、透過型電子顕微鏡(TEM)検査、または光散乱によって測定され得る。
ナノビルディングブロックは主として少なくとも1種の金属酸化物を主成分とし、この金属酸化物は、例えばアルミニウム、セリウム(IV)、ケイ素、ジルコニウムおよびチタンの酸化物の中から選択される。ナノビルディングブロックの製造には幾つかの合成方法を用いることができる。
第1の方法では、ナノビルディングブロックを金属塩から沈澱によって合成する。例えばカルボン酸、β−ジケトン、β−ケトエステル、α−またはβ−ヒドロキシ酸、ホスホネート、ポリアミンおよびアミノ酸などの単座または多座錯化剤でナノブロックの表面の80〜100%を官能化することにより、形成されるナノビルディングブロックの大きさを制御して該ブロックの溶媒中での分散を確実にするべく、反応媒質中に錯化剤を導入してもよい。無機成分と有機成分との重量比は、特に20〜95%とする。
ナノビルディングブロックを、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタンまたはセリウム(IV)の少なくとも1種のアルコキシドまたはハロゲン化物から加水分解処理または非加水分解処理によって得ることも可能である。加水分解処理では、一般式:
(Zn1 (4)、
(R’)x1(Zn1−x1 (5)、
(Lm1x1(Zn1−m1x1 (6)、または
(RO)Si−R−Si(OR (7)
を有するケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタンまたはセリウム(IV)の少なくとも1種のアルコキシドまたはハロゲン化物に対して制御加水分解を行なう。式(4)、(5)、(6)および(7)中、
はAl(III)、Ce(IV)、Si(IV)、Zr(IV)またはTi(IV)であり、括弧内の数字はM原子の原子価を示し、
はM原子の原子価を示し、
は1からn−1までの整数であり、
はハロゲン原子または−ORであり、
はアルキル基、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、
’は、アルキル基、特にC1〜4アルキル基、アルケニル基、特にC2〜4アルケニル基、アルキニル基、特にC2〜4アルキニル基、アリール基、特にC6〜10アリール基、メタクリルまたはメタクリルオキシ(C1〜10アルキル)基、エポキシアルキルまたはエポキシアルコキシアルキル基であってそのアルキル基が直鎖、分枝鎖または環状のC1〜10アルキル基であり、アルコキシ基は炭素数1〜10であるものの中から選択される非加水分解性基であり、
は単座または多座の錯化配位子、好ましくは多座錯化配位子であり、
は配位子Lのヒドロキシル化度を表わし、
は、アルキレン基、好ましくはC1〜4アルキレン基、アルケニレン基、特にC2〜4アルケニレン基、アルキニレン基、特にC2〜4アルキニレン基、アリーレン基、特にC6〜10アリーレン基、メタクリル基およびメタクリルオキシ(C1〜10アルキル)基、エポキシアルキルまたはエポキシアルコキシアルキル基であってそのアルキル基が直鎖、分枝鎖または環状のC1〜10アルキル基であり、アルコキシ基は炭素数1〜10であるものの中から選択される2価の非加水分解性基である。
好ましくは、Rはメチルまたはエチル基であり、R’は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、ブテニル基、アセチレニル基、プロパルギル基、フェニル基、ナフチル基、メタクリル基、メタクリルオキシプロピル基、グリシジル基およびグリシジルオキシ(C1〜10アルキル)基の中から選択される非加水分解性基であり、Lは、カルボン酸、β−ジケトン、β−ケトエステル、α−およびβ−ヒドロキシ酸、アミノ酸ならびにホスホネートの中から選択される錯化配位子である。
「制御加水分解」という文言は、前駆物質の反応性を低下させるべく、媒質中に導入する水の量を制御し、かつ場合によっては、中心金属原子に作用する錯化剤を導入することにより、形成される種の成長を制限することを意味すると理解される。
ナノビルディングブロックは、好ましくは非晶質または結晶質のナノ粒子の形態を取る。ナノビルディングブロックの官能化は先に定義したような官能化剤の存在下に、ナノビルディングブロック合成時に直接行なうか、または合成に続く第2の工程の間に行ない、好ましくは第2の工程の間に行なう。これらの官能化のことを、前官能化および後官能化とそれぞれ呼称する。
本発明によれば、官能化度は50%を上回ることが好ましく、80%を越えればなお好い。
上記に定義したような本発明のナノ構造材料は、ポリマーまたは無機/有機ハイブリッドマトリックス、好ましくはゾル/ゲル型のハイブリッドマトリックスをさらに含み得る。
合成し、官能化を終えたナノビルディングブロックを上記マトリックス中に導入することができる。マトリックスが結合剤(connector)として機能し、その結果ビルディングブロックは三次元網状構造を構成する。
無機/有機ハイブリッドマトリックスは典型的には、溶媒および場合によっては触媒の存在下に少なくとも1種の金属アルコキシドまたは金属ハロゲン化物を重縮合させることによって得られる。用いられる金属アルコキシドまたは金属ハロゲン化物は好ましくは、一般式:
M’Z′n’ (8)
R″x’M’Z′n’−x’ (9)
L’m’x’M’Z′m’x’ (10)
Z′n’−1M’−R″′−MZ′n’−1 (11)
を有するものの中から選択される。上記式中、
n’はM’金属原子の原子価を示し、好ましくは3、4または5であり、
x’は1からn’−1までの整数であり、
M’はAlなどの三価金属原子、Si、Ce、ZrおよびTiなどの四価金属原子、またはNbなどの五価金属原子である。好ましくは、M’はケイ素(n’=4)、セリウム(n’=4)またはジルコニウム(n’=4)で、より好ましくはケイ素である。
Z′は、ハロゲン原子、例えばF、Cl、BrおよびI、好ましくはClおよびBr;アルコキシ基、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基およびブトキシ基などのC1〜4アルコキシ基;アリールオキシ基、特にフェノキシ基などのC6〜10アリールオキシ基;アシルオキシ基、特にアセトキシ基およびプロピオニルオキシ基などのC1〜4アシルオキシ基;およびアセチル基などのC1〜10アルキルカルボニル基の中から選択される加水分解性基である。好ましくは、Z′はアルコキシ基、特にエトキシまたはメトキシ基である。
R″は、アルキル基、好ましくはC1〜4アルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基;アルケニル基、特にビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基およびブテニル基などのC2〜4アルケニル基;アルキニル基、特にアセチレニル基およびプロパルギル基などのC2〜4アルキニル基;アリール基、特にフェニル基およびナフチル基などのC6〜10アリール基;メタクリルオキシプロピル基などのメタクリルまたはメタクリルオキシ(C1〜10アルキル)基;グリシジル基およびグリシジルオキシ(C1〜10アルキル)基などの、エポキシアルキルまたはエポキシアルコキシアルキル基であってそのアルキル基が直鎖、分枝鎖または環状のC1〜10アルキル基であり、アルコキシ基は炭素数1〜10であるものの中から選択される1価の非加水分解性基である。R″は好ましくはメチル基、またはグリシジルオキシプロピル基などのグリシジルオキシ(C1〜10アルキル)基であり、
R″′は、アルキレン基、好ましくはC1〜4アルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基およびブチレン基;アルケニレン基、特にビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基およびブテニレン基などのC2〜4アルケニレン基;アルキニレン基、特にアセチレニレン基およびプロパルギレン基などのC2〜4アルキニレン基;アリーレン基、特にフェニレン基およびナフチレン基などのC6〜10アリーレン基;メタクリルオキシプロピル基などのメタクリルまたはメタクリルオキシ(C1〜10アルキル)基;グリシジル基およびグリシジルオキシ(C1〜10アルキル)基などの、エポキシアルキルまたはエポキシアルコキシアルキル基であってそのアルキル基が直鎖、分枝鎖または環状のC1〜10アルキル基であり、アルコキシ基は炭素数1〜10であるものの中から選択される2価の非加水分解性基である。R″′は好ましくはメチレン基、またはグリシジルオキシプロピル基などのグリシジルオキシ(C1〜10アルキル)基であり、
L’は、好ましくは多座の錯化配位子であり、
m′は配位子L’のヒドロキシル化度を表わし、L’が単座配位子の場合はm’=1、L’が多座配位子の場合はm’=2である。
好ましい一実施形態において、マトリックスは少なくとも3種のケイ素アルコキシド:
Si(OR
Si(ORおよび
Si(OR
の混合物から得られ、前記式中、
はメチルまたはエチル基であり、
およびRはそれぞれ、(メタ)アクリレート基、ビニル基、エポキシアルキルまたはエポキシアルコキシアルキル基であってそのアルキル基が直鎖、分枝鎖および/または環状のC1〜10アルキル基であり、アルコキシ基は炭素数1〜10であるもの、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、またはグリシジルオキシプロピル基などのグリシジルオキシ(C1〜10アルキル)基であり、
はメチル基などのC1〜10アルキル基である。
好ましくは、前駆物質RSi(ORが比率において半ばを越え、その際前駆物質RSi(ORの比率は半ばに満たず、例えば前駆物質混合物の総重量に対して5〜30重量%である。
特定の一実施形態では、前駆物質混合物の総重量に対して例えば10重量%、60重量%および30重量%の比率でそれぞれ用いられる3種のケイ素アルコキシドRSi(OR、RSi(ORおよびSi(ORからマトリックスが製造され得る。
溶媒は主として水から成る。好ましくは、溶媒は溶媒総重量に対して80〜100重量%の水を含み、場合によってはC1〜4アルコール、好ましくはエタノールまたはイソプロパノールをも含む。
触媒は好ましくは酸またはCOであり、酸は酢酸であればなお好い。
デポジション液は主として、液の総重量に対して例えば5〜30重量%、好ましくは20重量%前後のシランの混合物から成り得る。酸のケイ素に対するモル比は、好ましくは1%前後である。付加的な官能化ナノビルディングブロックのケイ素に対するモル比は、好ましくは20%未満である。例えば酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムの場合、好ましくはそれぞれ5%および10%である。
上述のようなナノ構造材料は、先に定義したナノビルディングブロックとは異なるナノビルディングブロックであって、官能化されているかまたはされていないものをさらに含んでもよい。
本発明は、本発明によるナノ構造材料を製造する方法もその主題とする。
本発明によるナノ構造材料は、特に、
a)少なくとも1種の上述のような金属アルコキシドからナノビルディングブロックを加水分解処理または非加水分解処理により製造する工程、および
b)ナノビルディングブロックを上述のような官能化剤で官能化する工程
を含み、場合によっては
c)先に定義したような3種のケイ素アルコキシドから有機/無機ハイブリッドマトリックスを、上述のような溶媒および場合によっては触媒の存在下にゾルゲル法を行なうことにより製造する工程をも含み、その場合、
d)工程b)で得られた官能化ナノビルディングブロックと工程c)で得られたマトリックスとを混合する工程
を任意に含む方法によって製造することができる。
好ましくは、官能化工程b)では下記成分:
1)溶媒中、好ましくは水中に分散させた、工程a)で得られたナノビルディングブロック、
2)懸濁液のpHを酸性pH、例えば3〜4に調節するための酸、好ましくは硝酸、および
3)好ましくは滴下される、少なくとも2種の官能化剤の混合物
を記載したとおりの順序で混合し、得られた懸濁液を、好ましくは少なくとも24時間攪拌する。
場合によっては少なくとも1種の上記のような添加剤を工程a)もしくは工程d)、または工程a)およびd)の両方において添加してもよい。
添加剤を工程a)で添加すると、工程d)によってもたらされる最終材料は、添加剤で構成されたコアと、ナノビルディングブロックで構成されたシェルとを有するコア/シェル型となり得る。
本発明で用い得る添加剤は特に、3Mから商標FC 4432およびFC 4430の下に販売されているノニオン性フルオロポリマーなどの、金属支持体に対するゾルの湿潤性を改善するための界面活性剤;着色剤、例えばローダミン、フルオレセイン、メチレンブルーおよびエチルバイオレット;(3−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン(DETA)などの架橋剤;アミノプロピルトリエトキシシラン(APTS)などのカップリング剤;ナノ顔料;ベンゾトリアゾールなどの腐食抑制剤;またはこれらの混合物である。
上記方法は穏和と称される条件下に、すなわち20〜25℃前後の周囲温度および大気圧の下で実施される。
例えばチタン、アルミニウム、またはこれらの合金の一つで形成された金属支持体と、少なくとも1種の先に定義したようなナノ構造材料から成る少なくとも一つの被膜とを含む物品も、本発明の主題である。
上述のナノ構造材料で被覆するべく用いられる金属支持体の例としては、チタン、アルミニウム、およびこれらそれぞれの合金、例えばTA6Vチタン、2000系アルミニウム、特にめっきされたかまたはされていないAl 2024、7000系アルミニウム、特にAl 7075または7175、および6000または5000系アルミニウムなどが挙げられる。
上記金属の表面に設けられた、上述のようなナノ構造材料から得られる被膜は金属支持体表面に良好に付着すると共に、随意に調節可能な、腐食からの保護、耐引掻き性、色および疎水性の獲得を特に可能にする。
そのうえこの被膜は、例えば浴への浸漬、スピン塗布、スプレー塗布もしくは層流塗布による支持体へのデポジション、またはブラシでのデポジションといった、実施し易い手法を用いて金属表面に設けられる。しかも、そのような手法では環境に配慮した製品が用いられる。
本発明による物品は、通常の被覆方法であって、少なくとも1種の先に定義したようなナノ構造材料の浴に浸漬するか、該材料をスピン塗布、スプレー塗布もしくは層流塗布により支持体にデポジットするか、またはブラシを用いてデポジットする工程を含む方法によって製造することができる。
本発明とその利点は、実施形態を例示する以下の実施例からより良く理解される。
【0003】
実施例
<実施例1>
SiO/GPTMS/DMDESから製造されるナノ粒子溶液の調製(NBB1)
市販のシリカナノ粒子懸濁液(水中に30wt%コロイダルシリカ;Sigma−Aldrichが商標Ludox(R)の下に販売;平均粒径12nm)10gを50gの脱塩水で稀釈した。得られたシリカ懸濁液のpHをHNO溶液(1mol/l(もしくはM))の添加によって4に調節した。この懸濁液に、30.3gの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)と4gのジメチルジエトキシシラン(DMDES)との混合物を滴下した。その後、全混合物を室温で24時間攪拌した。
<実施例2>
SiO−NH/GPTMS/DMDESから製造されるナノ粒子溶液の調製(NBB2)
市販のシリカナノ粒子懸濁液(水中に30wt%コロイダルシリカ;Sigma−Aldrichが商標Ludox(R)の下に販売;平均粒径12nm)10gを60gの脱塩水中に分散させた。得られたシリカ懸濁液のpHを(1M)HCl溶液の添加によって9に調節した。混合物の総重量に対して20重量%のアミノプロピルトリエトキシシランを添加した。懸濁液を室温で2時間攪拌した。粒子を濾別し、遠心(10,000rpmで3×20分間実施)によりエタノールで洗浄し、最後に室温で8時間乾燥した。
3gのNBB2官能化ナノ粒子を60gの脱塩水中に分散させた。得られたシリカ懸濁液のpHをHNO溶液(1M)の添加によって4に調節した。この懸濁液に、30.3gのGPTMSと4gのDMDESとの混合物を滴下した。その後、全混合物を室温で24時間攪拌した。
<実施例3>
Al/GPTMS/DMDESから製造されるナノ粒子溶液の調製(NBB3)
Alナノ粒子(粉末状;商標Meliorum Technologiesの下に販売;平均粒径10nm)3gを50gの脱塩水中に分散させた。得られた酸化アルミニウム懸濁液のpHをHNO溶液(1M)の添加によって4に調節した。この懸濁液に、30.3gのGPTMSと4gのDMDESとの混合物を滴下した。その後、全混合物を室温で24時間攪拌した。
<実施例4>
ZrO/GPTMS/DMDESから製造されるナノ粒子溶液の調製(NBB4)
市販の酸化ジルコニウムナノ粒子懸濁液(10wt%水中コロイド懸濁液;Applied Nanoworksが商標Pinnacle Zirconium Dioxide(R)の下に販売;平均粒径3〜5nm)30gを20gの脱塩水中に分散させた。得られた懸濁液に、30.3gのGPTMSと4gのDMDESとの混合物を滴下した。その後、全混合物を室温で24時間攪拌した。
<実施例5>
SiO/GPTMS/DMDES+CeO−NHから製造されるナノ粒子溶液の調製(NBB5)
1.65gの6−アミノカプリン酸を、Rhodiaから販売されている酸化セリウムナノ粒子液(商標Rhodigard W200;pH8.5)9.65mlに添加した(カルボキシレート/Ceモル比=1)。4時間後、得られた懸濁液8mlを、実施例1で得られたNBB1の液に添加した。
<実施例6>
SiO−NH/GPTMS/DMDES+CeO−NHから製造されるナノ粒子溶液の調製(NBB6)
NBB1の液を実施例2で得られたNBB2の液に替えた以外は実施例5の手順に倣った。
<実施例7>
Al/GPTMS/DMDES+CeO−NHから製造されるナノ粒子溶液の調製(NBB7)
NBB1の液を実施例3で得られたNBB3の液に替えた以外は実施例5の手順に倣った。
<実施例8>
ZrO/GPTMS/DMDES+CeO−NHから製造されるナノ粒子溶液の調製(NBB8)
NBB1の液を実施例4で得られたNBB4の液に替えた以外は実施例5の手順に倣った。
<実施例9>
SiO/GPTMS/DMDES+CeO−NH+ZrOから製造されるナノ粒子溶液の調製
テトラプロポキシジルコニウム(TPOZ)/CHCOOH/HO混合物(9.75g/5g/3.75g)を30分攪拌後、実施例5で得られた液に添加した。
<実施例10>
SiO/GPTMS/DMDES+CeO−NH+ZrO+DETA+着色剤から製造されるナノ粒子溶液の調製
架橋剤、すなわち式(OMe)Si(CHNH(CHNH(CHNHを有する(3−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン(DETA)の溶液6.63gを滴下し、得られた不透明な液を、該液が再び透明となるように激しくかつ規則的な攪拌下に室温で一晩放置した。最後に、デポジション直前の液に50mgの着色剤すなわちローダミンBを、最終液中でのその濃度が10−3M前後となるような量で添加した。
めっきされていない合金Al 2024 T3から成り、デポジション直前に1dmの総表面積を与える125mm×80mm×1.6mmの寸法を有する支持体を、アルカリ脱脂とこれに続く酸洗いなどの当業者に公知の方法に従って準備した。
取り出し速度0.68cm/s−1での2分間の浸漬塗布によって支持体上に膜をデポジットし、その後オーブン内で110℃で1時間乾燥した。
<実施例11>
TMOS/GPTMS/DMDESマトリックス+ZrO+DETA+着色剤を製造する観点からの液の調製
65mlの0.05M酢酸水溶液に9.3gのテトラメトキシシラン(TMOS)と、37.4gの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)と、4.9gのジメチルジエトキシシラン(DMDES)との混合物を、室温で攪拌下に滴下した。得られた溶液を室温で1日攪拌した。
次に、重量比11.7g/6g/4.5gのプロパノール/CHCOOH/HOを溶媒とするテトラプロポキシジルコニウム(TPOZ)の70%溶液から成る混合物を30分攪拌した後添加した。最終液を室温で30分攪拌し、その後架橋剤として(3−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミンを7.96g滴下した。全混合物を激しくかつ規則的な攪拌下に室温で15時間放置した。次いで、ローダミンBを、最終液中でのその濃度が10−3M前後となる60mgの量で添加した。
実施例10と同様にして支持体を準備し、直後にデポジションを行なった。
取り出し速度0.68cm/s−1での2分間の浸漬塗布によって支持体上に膜をデポジットし、その後オーブン内で110℃で1時間乾燥した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)、(2)または(3):
4−xSi((R’)−F) (1)
4−x−y(F’−(R’)Si((R’)−F) (2)
n−ma−mb(F’−L)maM(L−F)mb (3)
〔式中、
各Zは互いに独立にハロゲン原子または−OR基であり、
Rはアルキル基、好ましくはC1〜4アルキル基であり、
xおよびyは1から3までの整数であり、ただし式(1)では4−x≧1、式(2)では4−x−y≧0であり、
各R’は互いに独立に、アルキレン基、好ましくはC1〜4アルキレン基、アルケニレン基、特にC2〜4アルケニレン基、およびC6〜10アリーレン基の中から選択される有機スペーサー基であり、
pは0または1であり、
各Fは、アルキル基、特にC1〜4アルキル基、アルケニル基、特にC2〜4アルケニル基、アルキニル基、特にC2〜4アルキニル基、アリール基、特にC6〜10アリール基、メタクリルまたはメタクリルオキシ(C1〜10アルキル)基、エポキシアルキルまたはエポキシアルコキシアルキル基であってそのアルキル基が直鎖、分枝鎖または環状のC1〜10アルキル基であり、アルコキシ基は炭素数1〜10であるもの、C2〜10ハロアルキル基、C2〜10ペルハロアルキル基、C2〜10メルカプトアルキル基、C2〜10アミノアルキル基、アミノ(C2〜10アルキル)アミノ(C2〜10アルキル)基、ジ(C2〜10アルキレン)トリアミノ(C2〜10アルキル)基、およびイミダゾリル(C2〜10アルキル)基の中から選択され、
各F’および各Lはそれぞれ単座または多座の錯化配位子、好ましくは多座錯化配位子であり、
MはAl(III)、Ce(III)、Ce(IV)、Zr(IV)、Ti(IV)、Sn(IV)、Nb(V)、V(V)、Ta(V)、Hf(V)、またはY(III)、La(III)およびEu(III)などの希土類元素であり、括弧内の数字はM原子の原子価を示し、
nはM原子の配位状態を表わし、
mはキレート化剤Lと金属Mとの間の配位結合の数であり、
aおよびbはma+mb=nとなるような整数である〕
の官能化剤を少なくとも2種用いて官能化された、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタンまたは酸化セリウム(IV)を主成分とする少なくとも1種のナノビルディングブロックを含むナノ構造材料。
【請求項2】
MがAl(III)、Ce(III)、Ce(IV)、Zr(IV)またはTi(IV)であることを特徴とする請求項1に記載のナノ構造材料。
【請求項3】
Rがメチルまたはエチル基であり、
R’はメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ビニレン基、1−プロペニレン基、ブテニレン基、フェニレン基およびナフチレン基の中から選択される有機スペーサー基であり、
Fはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、ブテニル基、アセチレニル基、プロパルギル基、フェニル基、ナフチル基、メタクリル基、メタクリルオキシプロピル基、グリシジル基、グリシジルオキシ(C1〜10アルキル)基、クロロプロピル基、ペルフルオロプロピル基、メルカプトプロピル基、3−アミノプロピル基、3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基および3−[ジエチレントリアミノ]プロピル基の中から選択される非加水分解性基であり、
F’およびLはカルボン酸、β−ジケトン、β−ケトエステル、α−およびβ−ヒドロキシ酸、アミノ酸、ポリアミン、ホスホン酸ならびにホスホネートの中から選択される
ことを特徴とする請求項1または2に記載のナノ構造材料。
【請求項4】
ナノブロックがクラスター状であるか、またはナノ粒子の形態であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のナノ構造材料。
【請求項5】
ナノ粒子の大きさが2〜100nmであることを特徴とする請求項4に記載のナノ構造材料。
【請求項6】
ナノ粒子の大きさが2〜50nmであることを特徴とする請求項5に記載のナノ構造材料。
【請求項7】
ナノビルディングブロックが金属塩から沈澱により合成されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のナノ構造材料。
【請求項8】
ナノビルディングブロックがケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタンまたはセリウム(IV)の少なくとも1種のアルコキシドまたはハロゲン化物から加水分解処理または非加水分解処理によって得られることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のナノ構造材料。
【請求項9】
加水分解処理で用いられる前記アルコキシドまたはハロゲン化物が次式:
(Zn1 (4)、
(R’)x1(Zn1−x1 (5)、
(Lm1x1(Zn1−m1x1 (6)、または
(RO)Si−R−Si(OR (7)
に対応し、式(4)、(5)、(6)および(7)中、
はAl(III)、Ce(IV)、Si(IV)、Zr(IV)またはTi(IV)であり、括弧内の数字はM原子の原子価を示し、
はM原子の原子価を示し、
は1からn−1までの整数であり、
はハロゲン原子または−ORであり、
はアルキル基、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、
’は、アルキル基、特にC1〜4アルキル基、アルケニル基、特にC2〜4アルケニル基、アルキニル基、特にC2〜4アルキニル基、アリール基、特にC6〜10アリール基、メタクリルまたはメタクリルオキシ(C1〜10アルキル)基、エポキシアルキルまたはエポキシアルコキシアルキル基であってそのアルキル基が直鎖、分枝鎖または環状のC1〜10アルキル基であり、アルコキシ基は炭素数1〜10であるものの中から選択される非加水分解性基であり、
は単座または多座の錯化配位子、好ましくは多座錯化配位子であり、
は配位子Lのヒドロキシル化度を表わし、
は、アルキレン基、好ましくはC1〜4アルキレン基、アルケニレン基、特にC2〜4アルケニレン基、アルキニレン基、特にC2〜4アルキニレン基、アリーレン基、特にC6〜10アリーレン基、メタクリルおよびメタクリルオキシ(C1〜10アルキル)基、エポキシアルキルまたはエポキシアルコキシアルキル基であってそのアルキル基が直鎖、分枝鎖または環状のC1〜10アルキル基であり、アルコキシ基は炭素数1〜10であるものの中から選択される2価の非加水分解性基である
ことを特徴とする請求項8に記載のナノ構造材料。
【請求項10】
がメチルまたはエチル基であり、R’は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、ブテニル基、アセチレニル基、プロパルギル基、フェニル基、ナフチル基、メタクリル基、メタクリルオキシプロピル基、グリシジル基およびグリシジルオキシ(C1〜10アルキル)基の中から選択される非加水分解性基であり、Lは、カルボン酸、β−ジケトン、β−ケトエステル、α−およびβ−ヒドロキシ酸、アミノ酸、ホスホン酸ならびにホスホネートの中から選択される錯化配位子であることを特徴とする請求項9に記載のナノ構造材料。
【請求項11】
ポリマーまたは有機/無機ハイブリッドマトリックスをさらに含む、請求項1から10のいずれかに記載のナノ構造材料。
【請求項12】
マトリックスが、溶媒および場合によっては触媒の存在下に少なくとも1種の金属アルコキシドまたは金属ハロゲン化物を重縮合させることによって得られる有機/無機ハイブリッドマトリックスであることを特徴とする請求項11に記載のナノ構造材料。
【請求項13】
金属アルコキシドまたは金属ハロゲン化物が一般式:
M’Z′n’ (8)
R″x’M’Z′n’−x’ (9)
L’m’x’M’Z′m’x’ (10)
Z′n’−1M’−R″′−MZ′n’−1 (11)
〔式中、
n’はM’金属原子の原子価を示し、好ましくは3、4または5であり、
x’は1からn’−1までの整数であり、
M’はAlなどの三価金属原子、Si、Ce、ZrおよびTiなどの四価金属原子、またはNbなどの五価金属原子であり、
Z′は、ハロゲン原子、アルコキシ基、好ましくはC1〜4アルコキシ基、アリールオキシ基、特にC6〜10アリールオキシ基、アシルオキシ基、特にC1〜4アシルオキシ基、およびC1〜10アルキルカルボニル基の中から選択される加水分解性基であり、
R″は、アルキル基、好ましくはC1〜4アルキル基、アルケニル基、特にC2〜4アルケニル基、アルキニル基、特にC2〜4アルキニル基、アリール基、特にC6〜10アリール基、(メタ)アクリルまたはメタクリルオキシ(C1〜10アルキル)基、およびエポキシアルキルまたはエポキシアルコキシアルキル基であってそのアルキル基が直鎖、分枝鎖または環状のC1〜10アルキル基であり、アルコキシ基は炭素数1〜10であるものの中から選択される1価の非加水分解性基であり、
R″′は、アルキレン基、好ましくはC1〜4アルキレン基、アルケニレン基、特にC2〜4アルケニレン基、アルキニレン基、特にC2〜4アルキニレン基、アリーレン基、特にC6〜10アリーレン基、メタクリルまたはメタクリルオキシ(C1〜10アルキル)基、およびエポキシアルキルまたはエポキシアルコキシアルキル基であってそのアルキル基が直鎖、分枝鎖または環状のC1〜10アルキル基であり、アルコキシ基は炭素数1〜10であるものの中から選択される2価の非加水分解性基であり、
L’は、好ましくは多座の錯化配位子であり、
m′は配位子L’のヒドロキシル化度を表わす〕
を有することを特徴とする請求項12に記載のナノ構造材料。
【請求項14】
n’が4であり、
x’は1から3までの整数であり、
M’はケイ素、セリウムまたはジルコニウム原子であり、
Z’は、ClおよびBr、ならびにメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基およびアセチル基の中から選択される加水分解性基であり、
R″は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、ブテニル基、アセチレニル基、プロパルギル基、フェニル基、ナフチル基、メタクリル基、メタクリルオキシプロピル基、グリシジル基およびグリシジルオキシ(C1〜10アルキル)基の中から選択される1価の非加水分解性基であり、
R″′は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、ブテニレン基、アセチレニレン基、プロパルギレン基、フェニレン基、ナフチレン基、メタクリル基、メタクリルオキシプロピル基、グリシジル基およびグリシジルオキシ(C1〜10アルキル)基の中から選択される2価の非加水分解性基であり、
L’はカルボン酸、β−ジケトン、β−ケトエステル、α−もしくはβ−ヒドロキシ酸、アミノ酸、ホスホン酸、またはホスホネートである
ことを特徴とする請求項13に記載のナノ構造材料。
【請求項15】
溶媒が主として水から成ることを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載のナノ構造材料。
【請求項16】
溶媒が溶媒総重量に対して80〜100重量%の水を含み、場合によってはC1〜4アルコールをも含むことを特徴とする請求項15に記載のナノ構造材料。
【請求項17】
触媒が酸、好ましくは酢酸、またはCOであることを特徴とする請求項12から16のいずれかに記載のナノ構造材料。
【請求項18】
少なくとも1種の、請求項1に定義したものとは異なる官能化ナノビルディングブロックまたは非官能化ナノビルディングブロックをさらに含む、請求項1から17のいずれかに記載のナノ構造材料。
【請求項19】
請求項1から10のいずれかに記載のナノ構造材料の製造方法であって、
(a)少なくとも1種の請求項9および10に定義したような金属アルコキシドまたは金属ハロゲン化物からナノビルディングブロックを加水分解処理または非加水分解処理により製造する工程、および
(b)ナノビルディングブロックを請求項1に定義したような官能化剤で官能化する工程
を含む製造方法。
【請求項20】
請求項11から17のいずれかに記載のナノ構造材料の製造方法であって、請求項19に記載の製造方法と、
(c)少なくとも1種の請求項13または14に定義したような金属アルコキシドから有機/無機ハイブリッドマトリックスを、溶媒および場合によっては触媒の存在下にゾルゲル法を行なうことにより製造する工程、および
(d)工程b)で得られた官能化ナノビルディングブロックと工程c)で得られたマトリックスとを混合する工程
とを含む製造方法。
【請求項21】
工程a)もしくは工程d)、または工程a)およびd)の両方において少なくとも1種の添加剤を添加することを特徴とする請求項19または20に記載の製造方法。
【請求項22】
添加剤が工程a)において添加され、工程d)によってもたらされる最終材料はコア/シェル型であり、そのコアは添加剤で構成され、シェルはナノビルディングブロックで構成されることを特徴とする請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
添加剤が、金属支持体に対するゾルの湿潤性を改善するための界面活性剤、着色剤、架橋剤、カップリング剤、腐食抑制剤、およびこれらの混合物の中から選択されることを特徴とする請求項21または22に記載の製造方法。
【請求項24】
請求項1から18のいずれかに記載のナノ構造材料の航空機産業および航空宇宙機産業における金属表面保護被膜としての使用方法。
【請求項25】
金属支持体と、少なくとも1種の請求項1から18のいずれかに記載のナノ構造材料から成る少なくとも一つの被膜とを含むことを特徴とする物品。
【請求項26】
金属支持体がチタン、アルミニウム、またはこれらの合金の一つで形成されていることを特徴とする請求項25に記載の物品。
【請求項27】
少なくとも1種の請求項1から18のいずれかに記載のナノ構造材料を、浴に浸漬するか、スピン塗布、スプレー塗布もしくは層流塗布により支持体にデポジットするか、またはブラシを用いてデポジットする工程を含むことを特徴とする、請求項25または26に記載の物品の製造方法。

【公開番号】特開2009−24158(P2009−24158A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−99280(P2008−99280)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(507346236)ユーロピアン エアロノティック ディフェンス アンド スペース カンパニー イーズ フランス (10)
【氏名又は名称原語表記】EUROPEAN AERONAUTIC DEFENCE AND SPACE COMPANY EADS FRANCE
【出願人】(507416908)ユニヴェルシテ ピエール エ マリ キュリー パリ 6 (5)
【出願人】(508106611)サントル ナシオナル ド ラ ルシェルシュ シアンティフィック (セーエヌエールエス) (10)
【Fターム(参考)】