説明

金属酸化物の廃棄物源を利用するための方法およびシステム

炭酸塩を含む組成物を製造するための方法が提供され、その方法には金属酸化物の廃棄物源を利用することが含まれる。二価カチオンの水溶液(その一部または全部が、金属酸化物の廃棄物源から得られる)を、CO2と接触させ、沈殿条件に置くと、炭酸塩を含む組成物を得ることができる。いくつかの実施態様においては、燃焼アッシュが、二価カチオンを含む水溶液のための金属酸化物の廃棄物源である。いくつかの実施態様においては、燃焼アッシュを使用して、プロトン除去剤の供給源、二価カチオン、シリカ、金属酸化物、もしくはその他所望の構成成分、またはそれらの組合せが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許仮出願第61/073,319号明細書(出願日、2008年6月17日)および米国特許仮出願第61/079,790号明細書(出願日、2008年7月10日)の利益を主張するものである(上記出願を参考として引用し本明細書に組み入れる)。本出願はさらに、米国特許出願第12/344019号明細書(出願日、2008年12月24日)(その全体を参考として引用し本明細書に組み入れる)の一部継続出願であり、その出願に対して、米国特許法第120条に従って優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO2)の排出は、地球温暖化現象の主因と見なされてきた。CO2は燃焼の副生物であり、運転上の問題、経済的な問題、および環境的な問題を引き起こしている。CO2およびその他の温室効果ガスの大気中濃度が上がることによって、大気中における熱の蓄積が増大し、それによって地表温度の上昇および急速な気候変動がもたらされると予想されている。さらに、大気中のCO2のレベルが高くなると、CO2が溶解して炭酸が生成するために、世界中の海洋がさらに酸性化されるとも予想されている。気候変動および海洋の酸性化の影響は、時宜を得た対策をとらないと、経済的にも高くつき、環境的にも危険となるであろう。気候変動によるリスクの可能性を抑制するためには、各種の人為的プロセスからのCO2を封じ込め、排除することが必要となるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
提供されるのは、水溶液を工業プロセスからの金属酸化物の供給源と接触させる工程;その水溶液に工業プロセスからの二酸化炭素の供給源からの二酸化炭素をチャージする工程;およびその水溶液を大気圧下の沈殿条件に置いて、炭酸塩含有沈殿物質を生成させる工程;を含む方法である。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源とその二酸化炭素の供給源が、同一の工業プロセスからのものである。いくつかの実施態様においては、水溶液を金属酸化物の供給源と接触させることを、水溶液に二酸化炭素の供給源をチャージすることよりも前に行わせる。いくつかの実施態様においては、水溶液を金属酸化物の供給源と接触させることを、水溶液に二酸化炭素の供給源をチャージするのと同時に行わせる。いくつかの実施態様においては、水溶液を金属酸化物の供給源と接触させることと、その水溶液に二酸化炭素の供給源をチャージすることと、その水溶液を沈殿条件に置くこととを、同時に行わせる。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源とその二酸化炭素の供給源とが、同一の廃棄物流を供給源とする。いくつかの実施態様においては、その廃棄物流れが、石炭専焼火力発電所からの煙道ガスである。いくつかの実施態様においては、その石炭専焼火力発電所が褐炭専焼火力発電所である。いくつかの実施態様においては、その廃棄物流れが、セメントプラントからのキルン排出物である。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、フライアッシュである。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、セメントキルンダストである。いくつかの実施態様においては、その廃棄物流れに、SOx、NOx、水銀、またはそれらの各種組合せがさらに含まれる。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、沈殿物質を生成させるための二価カチオンをさらに与える。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源とその水溶液の両方に、沈殿物質を生成させるための二価カチオンが含まれる。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、フライアッシュまたはセメントキルンダストである。いくつかの実施態様においては、その水溶液が、ブライン、海水、または淡水を含む。いくつかの実施態様においては、その二価カチオンが、Ca2+、Mg2+、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、沈殿物質を生成させるためのプロトン除去剤を与える。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、その水溶液中においてCaO、MgO、またはそれらの組合せを水和させて、プロトン除去剤を与える。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、シリカをさらに与える。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、アルミナをさらに与える。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、酸化第二鉄をさらに与える。いくつかの実施態様においては、ボーキサイト加工からの赤泥または褐泥が、プロトン除去剤をも与える。いくつかの実施態様においては、プロトン除去に影響する電気化学的方法が、沈殿物質の生成をさらに与える。
【0004】
いくつかの実施態様においては、その方法に、沈殿物質が生成した水溶液から沈殿物質を分離する工程をさらに含む。いくつかの実施態様においては、その沈殿物質に、CaCO3を含む。いくつかの実施態様においては、CaCO3に、方解石、あられ石、バテライト、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施態様においては、その沈殿物質に、MgCO3をさらに含む。いくつかの実施態様においては、そのCaCO3にあられ石を含み、そのMgCO3にネスケホナイトを含む。いくつかの実施態様においては、その方法に、その沈殿物質を加工して建築材料を形成させることを含む。いくつかの実施態様においては、その建築材料が水硬セメントである。いくつかの実施態様においては、その建築材料がポゾランセメントである。いくつかの実施態様においては、その建築材料が骨材である。
【0005】
さらに提供されるのは、水溶液を二酸化炭素を含む廃棄物流れおよび金属酸化物を含む供給源と接触させる工程、ならびにその水溶液を沈殿条件に置いて炭酸塩含有沈殿物質を生成させる工程、を含む方法である。いくつかの実施態様においては、その廃棄物流れが、石炭専焼火力発電所からの煙道ガスである。いくつかの実施態様においては、その石炭専焼火力発電所が褐炭専焼火力発電所である。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、フライアッシュである。いくつかの実施態様においては、その廃棄物流れが、セメントプラントからのキルン排出物である。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、セメントキルンダストである。いくつかの実施態様においては、その廃棄物流れに、SOx、NOx、水銀、またはそれらの各種組合せがさらに含まれる。いくつかの実施態様においては、沈殿物質を生成させるための二価カチオンが、金属酸化物の供給源、水溶液、またはそれらの組合せにより与えられる。いくつかの実施態様においては、その水溶液が、ブライン、海水、または淡水を含む。いくつかの実施態様においては、その二価カチオンが、Ca2+、Mg2+、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、沈殿物質を生成させるためのプロトン除去剤をさらに与える。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、その水溶液中においてCaO、MgO、またはそれらの組合せを水和させて、プロトン除去剤を与える。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、シリカをさらに与える。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、アルミナをさらに与える。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、酸化第二鉄をさらに与える。いくつかの実施態様においては、ボーキサイト加工からの赤泥または褐泥が、プロトン除去剤をも与える。いくつかの実施態様においては、プロトン除去に影響する電気化学的方法が、沈殿物質の生成をさらに与える。いくつかの実施態様においては、その沈殿物質に、CaCO3を含む。いくつかの実施態様においては、CaCO3に、方解石、あられ石、バテライト、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施態様においては、その方法に、沈殿物質が生成した水溶液から沈殿物質を分離する工程をさらに含む。いくつかの実施態様においては、その方法に、その沈殿物質を加工して建築材料を形成させることを含む。いくつかの実施態様においては、その建築材料が水硬セメントである。いくつかの実施態様においては、その建築材料がポゾランセメントである。いくつかの実施態様においては、その建築材料が骨材である。
【0006】
さらに提供されるのは、合成炭酸カルシウムを含むシリカ質組成物であるが、ここでその炭酸カルシウムは、方解石、あられ石、およびバテライトから選択される少なくとも二つの形態で存在している。いくつかの実施態様においては、炭酸カルシウムのその少なくとも二つの形態が、方解石およびあられ石である。いくつかの実施態様においては、方解石とあられ石とが、20:1の比率で存在している。いくつかの実施態様においては、炭酸カルシウムとシリカとが、少なくとも1:2の炭酸塩対シリカの比率で存在している。いくつかの実施態様においては、そのシリカの75%が、粒子サイズが45ミクロン未満の非晶質シリカである。いくつかの実施態様においては、シリカ粒子が、合成炭酸カルシウムまたは合成炭酸マグネシウムによって、全面的または部分的に封入されている。
【0007】
さらに提供されるのは、合成炭酸カルシウムおよび合成炭酸マグネシウムを含むシリカ質組成物であるが、ここでその炭酸カルシウムが、方解石、あられ石、およびバテライトから選択される少なくとも一つの形態で存在し、そしてここでその炭酸マグネシウムが、ネスケホナイト、マグネサイト、およびハイドロマグネサイトから選択される少なくとも一つの形態で存在している。いくつかの実施態様においては、その炭酸カルシウムがあられ石として存在し、その炭酸マグネシウムがネスケホナイトとして存在している。いくつかの実施態様においては、シリカが、シリカ質組成物の20%以下である。いくつかの実施態様においては、シリカが、シリカ質組成物の10%以下である。いくつかの実施態様においては、シリカ粒子が、合成炭酸カルシウムまたは合成炭酸マグネシウムによって、全面的または部分的に封入されている。
【0008】
さらに提供されるのは、金属酸化物の廃棄物源を消和させるために適合させた石灰消和機、沈殿反応機、および液固分離機を含むシステムであるが、ここで、その沈殿反応機は、石灰消和機および液固分離機の両方に操作可能に接続され、さらにここで、そのシステムが、1トン/日を超える量で炭酸塩含有沈殿物質を製造するように構成されている。いくつかの実施態様においては、そのシステムが、10トン/日を超える量で炭酸塩含有沈殿物質を製造するように構成されている。いくつかの実施態様においては、そのシステムが、100トン/日を超える量で炭酸塩含有沈殿物質を製造するように構成されている。いくつかの実施態様においては、そのシステムが、1000トン/日を超える量で炭酸塩含有沈殿物質を製造するように構成されている。いくつかの実施態様においては、そのシステムが、10,000トン/日を超える量で炭酸塩含有沈殿物質を製造するように構成されている。いくつかの実施態様においては、その石灰消和機が、スラリー滞留石灰消和機、ペースト石灰消和機、およびボールミル石灰消和機から選択される。いくつかの実施態様においては、そのシステムに二酸化炭素の供給源がさらに含まれる。いくつかの実施態様においては、その二酸化炭素の供給源が、石炭専焼火力発電所またはセメントプラントからのものである。いくつかの実施態様においては、そのシステムにプロトン除去剤の供給源がさらに含まれる。いくつかの実施態様においては、そのシステムに二価カチオンの供給源がさらに含まれる。いくつかの実施態様においては、そのシステムが、液固分離機の固体生成物から建築材料を生成させるように構成された、建築材料生成ユニットをさらに含む。
【0009】
本発明の新規性のある特徴は、添付された特許請求項に特に述べられている。以下の、本発明の原理が利用されている、説明のための実施態様で言及されている詳細な説明、および添付の図面を参照することにより、本発明の特徴と利点がよりよく理解されることであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ESPおよびFGDを使用した、発電所煙道ガス処理プロセスの一例の模式的概略図である。
【図2】本発明の実施態様を利用した、発電所煙道ガス処理プロセスの一例の模式的概略図である。
【図3】実施例2の沈殿物質を、1000倍、2500倍、および6000倍に拡大した、SEM画像である。
【図4】実施例2の沈殿物質についてのXRDである。
【図5】実施例2の沈殿物質についてのTGAである。
【図6】実施例3の沈殿物質を、2,500倍に拡大した、SEM画像である。
【図7】実施例3の沈殿物質のXRDである。
【図8】実施例3の沈殿物質のTGAである。
【図9】実施例4のオーブン乾燥させた沈殿物質を、2,500倍に拡大した、SEM画像である。
【図10】実施例4のオーブン乾燥させた沈殿物質のFT−IRである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明をさらに詳細に説明する前に、本発明は、記載された特定の実施態様に限定されるものではなく、したがって、言うまでもなく、変更を加えてもよいということは理解されたい。さらに、本明細書において使用される用語は、特定の実施態様を記述するためだけのものであって、限定を加えることを意図したものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求項によってのみ限定されるであろうということも理解されたい。
【0012】
数値が範囲で与えられている場合には、その文脈で他の事柄を明確に指示されていない限り、その範囲の上限と下限との間に入るそれぞれの中間値(下限の単位の10分の1まで)、およびその規定された範囲の中のその他のいかなる規定された数値または中間値も、本発明の中に包含されると理解されたい。これらより狭い範囲の上限および下限は、独立して、そのより狭い範囲の中に含まれていてよく、規定された範囲の中で特に除外された限度があればそれに従って、これまた本発明の中に包含される。規定され範囲に、一方または両方に限度が含まれている場合には、それら含まれている限度の一方または両方にわたる範囲もまた、本発明の中に包含される。
【0013】
本明細書においては、ある種の範囲は、「約(about)」という先行詞を伴う数値を用いて表されている。本明細書においては、「約(about)」という用語は、その後に続くまさにその数字と、さらにはその用語に続く数字の近傍にあるかまたはおよその数字とに、文字通り支持を与えるために使用されている。ある数字が、明確に記述された数字の近傍にあるかまたはおよその数字であるかどうかの判断では、その近傍にあるかまたはおよそである報われない数字が、それが表明された文脈において、その明確に記述された数字と実質的に等価となる数字であってよい。
【0014】
特に断らない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語は、本発明が属する業界の当業者によって通常に理解されているのと同じ意味合いを有している。本明細書において記述されるものに類似していたり等価であったりするいかなる方法および物質も、本発明実施または試験において使用することがまた可能ではあるが、説明のための代表的な、方法および物質について以下に説明する。
【0015】
本明細書の中に引用されたすべての公刊物、特許、および特許出願は、それら個々の公刊物、特許、または特許出願が、明示的かつ個別的に参照として組み入れられたものとして、同じ程度に参考として引用し本明細書に組み入れられたものとする。さらに、それぞれ引用された公刊物、特許、または特許出願は、それらの公刊物が引用されたものとの関連で主題を開示し、記述する目的で、参考として引用し本明細書に組み入れる。いかなる刊行物の引用も、本出願日よりも前にその開示があったとするためであり、その引用によって、先願発明によりそのような公刊が以前にあったとして、本明細書において記載された本発明が権利を与えられないということを容認したと受け取ってはならない。さらに、提示されている公刊年月日は、実際の公刊年月日とは異なっている可能性があり、それは個別に確認する必要がある。
【0016】
本明細書および添付された特許請求項において使用するとき、単数の形の冠詞「a」、「an」および「the」には、文脈において明白に異なっていることが指示されていない限り、複数のニュアンスも含まれていることに留意されたい。特許請求項は、いかなる随意的な要素も排除するように起草することが可能であるということにも留意されたい。したがって、この文言は、特許請求項の構成要素の記述に関連して、「単に(solely)」および「単なる(only)」などのような排他的な用語を使用するため、あるいは「消極的な」限定を使用するための先行的な根拠として役立つことを意図したものである。
【0017】
この開示を読めば、当業者には明白であろうが、本明細書において記載され、説明された個々の実施態様のそれぞれが、本発明の範囲および精神から外れることなく、容易に他のいくつかの実施態様のいずれかの特徴から分けたり、それらと組み合わせたりすることが可能な、個々独立した構成要素と特徴とを有している。記述された方法のいずれもが、記述された事象の順序通りに実施することもできるし、あるいは、論理的に可能でありさえすれば、いかなる他の順序でも実施することができる。
【0018】
物質
後にさらに詳しく説明するように、本発明では、CO2の供給源、プロトン除去剤の供給源(および/またはプロトン除去を起こさせる方法)、および二価カチオンの供給源を利用する。金属酸化物の廃棄物源(たとえば、燃焼アッシュたとえば、フライアッシュ、ボトムアッシュ、ボイラースラグ;セメントキルンダスト;ならびにスラグたとえば、鉄スラグおよびリンスラグ)は、全面的または部分的に、プロトン除去剤の供給源および/または二価カチオンの供給源を与えることができる。したがって、金属酸化物の廃棄物源たとえば、燃焼アッシュ(たとえば、フライアッシュ、ボトムアッシュ、ボイラースラグ)、セメントキルンダスト、およびスラグ(たとえば、鉄スラグ、リンスラグ)は、本明細書に記載の組成物を調製するための、二価の金属カチオンおよびプロトン除去剤の単一の供給源となりうる。廃棄物源たとえば、アッシュ、セメントキルンダスト、スラグ(たとえば、鉄スラグ、リンスラグ)はさらに、二価カチオンまたはプロトン除去剤の補助的な供給源と組み合わせて使用してもよい。二酸化炭素の供給源、補助的な二価カチオンの供給源、および補助的なプロトン除去供給源(およびプロトン除去を起こさせる方法)についてまず説明して、二価カチオンおよびプロトン除去剤の供給源としての金属酸化物の廃棄物源に対する状況説明とする。その後で、金属酸化物の廃棄物源、たとえば、燃焼アッシュ、セメントキルンダスト、およびスラグ(たとえば、鉄スラグ、リンスラグ)についての説明をし、それに続けて、これらの金属酸化物の廃棄物源を使用して炭酸塩を含む組成物を生成させる方法について述べる。
【0019】
二酸化炭素
本発明の方法には、ある容積の二価カチオンの水溶液をCO2の供給源と接触させる工程、次いでそうして得られた溶液を沈殿条件に置く工程が含まれる。その二価カチオン含有溶液の中に、(たとえば、海水から)十分な量の炭酸塩含有沈殿物質を沈殿させるのに十分な二酸化炭素が存在すればよいが、通常は追加の二酸化炭素を使用する。そのCO2の供給源は、各種都合のよいCO2供給源であってよい。そのCO2供給源は、ガス、液体、固体(たとえば、ドライアイス)、超臨界流体、あるいは液体の中に溶解されたCO2であってよい。いくつかの実施態様においては、そのCO2供給源が、ガス状のCO2供給源である。そのガス状の流れは、実質的に純粋なCO2であってもよいし、あるいは、CO2と、1種または複数のさらなるガスおよび/またはその他の物質たとえばアッシュまたはその他の粒状物と、を含む複数成分を含んでいてもよい。いくつかの実施態様においては、そのガス状のCO2供給源が、廃棄物フィード(すなわち、工業プラントの実動プロセスの副生物)、たとえば工業プラントからの排出物である。工業プラントのタイプは変えることが可能で、対象となる工業プラントとしては次のものが挙げられる(これらに限定される訳ではない):発電所、化学加工プラント、機械加工プラント、製油所、セメントプラント、鉄鋼プラント、ならびに、燃料燃焼またはその他の加工工程の副生物としてCO2が生成するその他の工業プラント(たとえば、セメントプラントによるか焼)。
【0020】
CO2を含む廃ガス流れには、還元性条件流れ(たとえば、合成ガス、シフト化合成ガス、天然ガス、水素など)と、酸化性条件流れ(たとえば、燃焼からの煙道ガス)との両方が含まれる。本発明にとって好都合となりうる具体的な廃ガス流れとしては、以下のものが挙げられる:酸素含有燃焼工業プラント煙道ガス(たとえば、石炭またはその他の炭素系で、煙道ガスの前処理をほとんどまたはまったくしていないもの)、ターボチャージボイラー生成ガス、石炭ガス化生成ガス、シフト化石炭ガス化生成ガス、嫌気性消化装置生成ガス、ウェルヘッド天然ガス流れ、改質天然ガス、またはメタンハイドレートなど。各種好都合な供給源からの燃焼ガスを、本発明の方法およびシステムにおいて使用することができる。いくつかの実施態様においては、工業プラントたとえば、発電所、セメントプラント、および石炭加工プラントの後燃焼排出煙突の中の燃焼ガスが使用される。
【0021】
したがって、廃棄物流れは、各種各様のタイプの工業プラントから生成したものでよい。本発明において好適な廃棄物流れとしては、化石燃料(たとえば、石炭、石油、天然ガス)および天然由来の有機燃料堆積物(たとえば、タールサンド、重油、オイルシェールなど)からの人為的燃料生成物を燃焼させる工業プラントで生成する廃棄物流れが挙げられる。いくつかの実施態様においては、本発明のシステムおよび方法に好適な廃棄物流れは、石炭専焼火力発電所たとえば、微粉炭発電所、超臨界石炭発電所、質量燃焼石炭発電所、流動床石炭発電所を供給源とするものであり、いくつかの実施態様においては、その廃棄物流れが、ガスもしくは重油燃焼ボイラーおよび蒸気タービン発電所、ガスもしくは重油燃焼ボイラーシンプルサイクルガスタービン発電所、またはガスもしくは重油燃焼ボイラーと組み合わせたサイクルガスタービン発電所を供給源とするものである。いくつかの実施態様においては、合成ガス(すなわち、有機物質たとえば、石炭、バイオマスなどのガス化によって生成するガス)を燃焼させる発電所により生成する廃棄物流れが使用される。いくつかの実施態様においては、複合ガス化コンバインドサイクル(integrated gasification combined cycle、IGCC)プラントからの廃棄物流れが使用される。いくつかの実施態様においては、排熱回収ボイラー(Heat Recovery Steam Generator,HRSG)プラントにより生成した廃棄物流れを使用して、本発明のシステムおよび方法による骨材が生産される。
【0022】
セメントプラントにより生成する廃棄物流れもまた、本発明のシステムおよび方法に適している。セメントプラントの廃棄物流れには、湿式プロセスプラントおよび乾式プロセスプラント両方からの廃棄物流れが含まれるが、それらのプラントではシャフトキルンまたはロータリーキルンを採用していてよく、また前か焼炉が含まれていてもよい。これらの工業プラントではそれぞれ、単一の燃料を燃焼していてもよいし、あるいは、2種以上の燃料を順次または同時に燃焼していてもよい。
【0023】
工業的な廃ガス流れには、主たる空気非由来の成分として二酸化炭素が含まれてよいし、あるいは、特に石炭専焼火力発電所の場合においては、さらなる成分たとえば、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、および1種または複数のさらなるガスが含まれていてもよい。さらなるガスおよびその他の成分としては、CO、水銀およびその他の重金属、ならびに(たとえば、か焼および燃焼プロセスからの)ダスト粒子などが挙げられる。ガス流れの中のその他の成分としてはさらに、ハライドたとえば塩化水素およびフッ化水素、粒状物質たとえばフライアッシュ、ダスト、および、金属たとえばヒ素、ベリリウム、ホウ素、カドミウム、クロム、クロムVI、コバルト、鉛、マンガン、水銀、モリブデン、セレン、ストロンチウム、タリウム、およびバナジウム、ならびに有機物たとえば炭化水素、ダイオキシン、およびPAH化合物などが挙げられる。処理することが可能な好適なガス状の廃棄物流れには、いくつかの実施態様においては、存在しているCO2の量が、200ppm〜1,000,000ppm、200,000ppm〜1000ppm、200,000ppm〜2000ppm、180,000ppm〜2000ppm、180,000ppm〜5000ppm、または180,000ppm〜10,000ppmである。廃棄物流れ、特に各種の燃焼ガスの廃棄物流れには、1種または複数のさらなる成分、たとえば、水、NOx(一窒素酸化物:NOおよびNO2)、SOx(一硫黄酸化物:SO、SO2およびSO3)、VOC(揮発性有機化合物)、重金属たとえば水銀、および粒状物質(ガス中に懸濁している固体または液体の粒子)が含まれていてよい。煙道ガスの温度も、可変である。いくつかの実施態様においては、その煙道ガスの温度が、0℃〜2000℃、たとえば60℃〜700℃、たとえば100℃〜400℃である。
【0024】
各種の実施態様においては、1種または複数のさらなる成分が、それらのさらなる成分を含む廃ガス流れを、二価カチオン(たとえば、アルカリ土類金属イオンたとえばCa2+およびMg2+)を含む水溶液と接触させることによって形成される沈殿物質の中で沈殿する。カルシウムおよびマグネシウムの硫酸塩および/または亜硫酸塩を、SOx(たとえば、SO)を含む廃ガス流れから生成した沈殿物質(さらに炭酸カルシウムおよび/または炭酸マグネシウムを含む)の中に沈殿させてもよい。マグネシウムおよびカルシウムが反応して、CaSO4、MgSO4、さらにはその他のカルシウム含有およびマグネシウム含有化合物(たとえば、亜硫酸塩)を形成して、たとえば煙道ガス脱硫(「FGD」)のような脱硫工程がなくても、煙道ガス流れから硫黄を効率よく除去できる。さらに、CaCO3、MgCO3、および関連の化合物は、CO2をさらに放出することなく形成させることができる。その二価カチオンの水溶液が高いレベルの硫黄化合物(たとえば、硫酸塩)を含んでいるような場合には、その水溶液のカルシウムおよびマグネシウム含量を高めることで、CaSO4、MgSO4、および関連の化合物が生成した後またはそれらの生成に加えて、カルシウムおよびマグネシウムが炭酸塩化合物を形成するのに利用できるようにしてもよい。いくつかの実施態様においては、脱硫工程を炭酸塩含有沈殿物質の沈殿と一致させてもよいし、あるいは、沈殿を起こすより前に脱硫工程を置いてもよい。いくつかの実施態様においては、複数の反応生成物(たとえば、炭酸塩含有沈殿物質、CaSO4など)を異なった工程で捕集するが、それに対して、他の実施態様においては、単一の反応生成物(たとえば、炭酸塩、硫酸塩などを含む沈殿物質)を捕集する。これらの実施態様を伴う工程においては、その他の成分たとえば、重金属(たとえば、水銀、水銀塩、水銀含有化合物)を、炭酸塩含有沈殿物質の中にトラップさせてもよいし、あるいは別途に沈殿させてもよい。
【0025】
工業プラントからのガス状の廃棄物流れの一部(すなわち、ガス状の廃棄物流れ全部ではない)を使用して、沈殿物質を生成させてもよい。これらの実施態様においては、沈殿物質を沈殿させるのに採用するガス状の廃棄物流れの割合を、ガス状の廃棄物流れの75%以下、たとえば60%以下、たとえば50%以下とするのがよい。さらに他の実施態様においては、工業プラントによって生成したガス状の廃棄物流れの実質的に全部(たとえば、80%以上)を用いて、沈殿物質を沈殿させる。これらの実施態様においては、供給源で生成したガス状の廃棄物流れ(たとえば、煙道ガス)の80%以上、たとえば90%以上、たとえば95%以上、最高100%までを、沈殿物質を沈殿させるために使用してもよい。
【0026】
工業的廃ガスでは、燃焼ガスの比較的に濃縮された供給源を提供するが、本発明の方法およびシステムはさらに、たとえば煙道ガスよりもはるかに低い濃度の汚染物質を含む、濃縮度がより低い供給源(たとえば、大気)から燃焼ガス成分を除去するのに適用することもできる。したがって、いくつかの実施態様においては、それらの方法およびシステムには、安定な沈殿物質を生成させることによって、大気中の汚染物質の濃度を低下させることが包含される。これらの場合において、大気中の割合としての汚染物質、たとえばCO2の濃度を、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、99.9%以上、または99.99%低下させることができる。大気汚染物質におけるそのような低下は、ここに記載したような収率、またはより高いもしくはより低い収率で達成することができるが、それは一段の沈殿工程で達成しても、一連の沈殿工程で達成してもよい。
【0027】
二価カチオン
上述のように、金属酸化物の廃棄物源たとえば燃焼アッシュ(たとえば、フライアッシュ、ボトムアッシュ、ボイラースラグ)、セメントキルンダスト、およびスラグ(たとえば、鉄スラグ、リンスラグ)(それらのそれぞれについては、以下のそれぞれのセクションにおいてさらに詳しく説明する)が、本明細書に記載の組成物を調製するための二価の金属カチオンの単一の供給源であってもよいが、アッシュ、セメントキルンダスト、スラグ(たとえば、鉄スラグ、リンスラグ)のような廃棄物源を、このセクションに記載する二価カチオンの補助的な供給源と組み合わせて使用してもよい。
【0028】
本発明の方法には、ある容積の二価カチオンの水溶液をCO2の供給源と接触させる工程、およびそうして得られた溶液を沈殿条件に置く工程が含まれる。二価カチオンの廃棄物源に加えて、特定の場所における入手可能性に応じて、各種多くの二価カチオン供給源から二価カチオンを得てもよい。そのような供給源としては、産業廃棄物、海水、ブライン、硬水、鉱物質、およびその他各種の適切な供給源が挙げられる。
【0029】
いくつかの場所においては、各種の工業プロセスからの産業廃棄物流れが、二価カチオン(さらには、場合によっては、プロセスにおいて有用なその他の物質、たとえば、金属水酸化物)の好都合な供給源を与える。そのような廃棄物流れとしては、以下のようなものがある(これらに限定される訳ではない):採鉱廃棄物;化石燃料燃焼アッシュ(たとえば、フライアッシュ、本明細書においてさらに詳しく説明する);スラグ(たとえば、鉄スラグ、リンスラグ);セメントキルン廃棄物(本明細書においてさらに詳しく説明する);製油所/石油精製工場廃棄物(たとえば、油田およびメタン層ブライン);石炭層廃棄物(たとえば、ガス化ブラインおよび石炭層ブライン);紙加工廃棄物;軟水化廃棄物ブライン(たとえば、イオン交換排水);ケイ素加工廃棄物;農業廃棄物;金属仕上廃棄物;高pH織物廃棄物;および苛性スラッジ。
【0030】
いくつかの場所においては、本発明のシステムおよび方法において使用するのに都合のよい二価カチオンの供給源は、水(たとえば、二価カチオンを含む水溶液、たとえば海水または表面ブライン)であるが、それは、本発明を実施する特定の場所に依存して変わってよい。使用可能な好適な二価カチオンの水溶液としては、1種または複数の二価カチオン、たとえばCa2+およびMg2+のようなアルカリ土類金属カチオンを含む溶液が挙げられる。いくつかの実施態様においては、二価カチオンの供給源の水溶液にはアルカリ土類金属カチオンが含まれる。いくつかの実施態様においては、そのアルカリ土類金属カチオンには、カルシウム、マグネシウム、またはそれらの混合物が含まれる。いくつかの実施態様においては、その二価カチオンの水溶液にはカルシウムを、50〜50,000ppm、50〜40,000ppm、50〜20,000ppm、100〜10,000ppm、200〜5000ppm、または400〜1000ppmの範囲の量で含む。いくつかの実施態様においては、その二価カチオンの水溶液にはマグネシウムを、50〜40,000ppm、50〜20,000ppm、100〜10,000ppm、200〜10,000ppm、500〜5000ppm、または500〜2500ppmの範囲の量で含む。いくつかの実施態様において、Ca2+とMg2+との両方が存在している場合には、その二価カチオンの水溶液中におけるCa2+のMg2+に対する比率(すなわち、Ca2+:Mg2+)が、(1:1)〜(1:2.5)、(1:2.5)〜(1:5)、(1:5)〜(1:10)、(1:10)〜(1:25)、(1:25)〜(1:50)、(1:50)〜(1:100)、(1:100)〜(1:150)、(1:150)〜(1:200)、(1:200)〜(1:250)、(1:250)〜(1:500)、または(1:500)〜(1:1000)である。いくつかの実施態様においては、その二価カチオンの水溶液中におけるMg2+のCa2+に対する比率(すなわち、Mg2+:Ca2+)が、(1:1)〜(1:2.5)、(1:2.5)〜(1:5)、(1:5)〜(1:10)、(1:10)〜(1:25)、(1:25)〜(1:50)、(1:50)〜(1:100)、(1:100)〜(1:150)、(1:150)〜(1:200)、(1:200)〜(1:250)、(1:250)〜(1:500)、または(1:500)〜(1:1000)である。
【0031】
二価カチオンの水溶液には以下のものに由来する二価カチオンを含んでいてよい:淡水、汽水、海水、またはブライン(たとえば、天然由来のブラインまたは人為的ブラインたとえば、地熱発電所廃水、脱塩プラント廃水)、さらには淡水の塩度よりは高い塩度を有するその他の塩水(そのいずれもが、天然由来であっても、人為的なものであってもよい)。汽水とは、淡水よりは塩度が高いが、海水ほどの塩度がないものである。汽水は、約0.5〜約35ppt(parts per thousand=千分率)の塩度を有している。海水は、海、海洋、またはその他の、約35〜約50pptの範囲の塩度を有する塩含有水からの水である。ブラインは、塩で飽和されているか、ほとんど飽和されている水である。ブラインは、約50ppt以上の塩度を有している。いくつかの実施態様においては、それから二価カチオンを引き出す塩水の供給源が、海、海洋、湖、沼地、入江、潟、表面ブライン、ディープブライン、アルカリ性湖沼、内海などから選択される天然由来の供給源である。いくつかの実施態様においては、それから二価カチオンを引き出す塩水の供給源が、地熱発電所廃水または脱塩廃水から選択される人為的ブラインである。
【0032】
淡水が好都合な二価カチオン(たとえば、アルカリ土類金属たとえばCa2+およびMg2+のカチオン)の供給源となることも多い。各種多くの好適な淡水供給源を使用してよいが、それには、鉱物質が比較的少ない供給源から鉱物質が比較的リッチな供給源までの範囲の淡水供給源が含まれる。鉱物質リッチな淡水供給源は、天然由来のものであってよく、たとえば各種の硬水供給源、湖または内海が挙げられる。いくつかの鉱物質リッチな淡水供給源たとえばアルカリ性に湖または内海(たとえば、TurkeyのLake Van)もまた、pH変性剤の供給源となる。鉱物質リッチな淡水供給源が人為的なものであってもよい。たとえば、鉱物質に乏しい水(軟水)を、二価カチオンたとえばアルカリ土類金属カチオン(たとえば、Ca2+、Mg2+など)の供給源に接触させて、本明細書に記載の方法およびシステムに好適な鉱物質リッチな水を作り出してもよい。二価カチオンまたはそれらの前駆体(たとえば、塩、鉱物質)を、各種好都合な手順(たとえば、固体、懸濁液、または溶液の添加など)を使用して、淡水(または各種その他のタイプの本明細書に記載の水)に添加してもよい。いくつかの実施態様においては、Ca2+およびMg2+から選択される二価カチオンを淡水に添加する。いくつかの実施態様においては、NaおよびKから選択される一価カチオンを淡水に添加する。いくつかの実施態様においては、Ca2+を含む淡水を、ケイ酸マグネシウム(たとえば、かんらん石または蛇紋石)またはそれからの生成物もしくは加工した形態のものと組み合わせて、カルシウムおよびマグネシウムカチオンを含む溶液を得る。
【0033】
多くの鉱物質が二価カチオンの供給源となるが、さらに、いくつかの鉱物質は塩基の供給源でもある。苦鉄質および超苦鉄質の鉱物質たとえばかんらん石、蛇紋石、およびその他各種の好適な鉱物質は、各種好都合な手順を使用して溶解させればよい。ウォラストナイトのようなその他の鉱物質を使用してもよい。表面積を増大させることによって溶解を加速することができるが、それにはたとえば、通常の手段による粉砕、たとえばジェットミル粉砕、さらにはたとえば超音波手段が使用できる。さらに、酸または塩基に暴露させることによって鉱物質の溶解を加速させてもよい。金属ケイ酸塩(たとえば、ケイ酸マグネシウム)および対象となるカチオンを含むその他の鉱物質を、たとえば、(場合によっては電気化学的プロセスからの)HClのような酸の中で溶解させて、沈殿物質の中で使用するための、たとえば、マグネシウムおよびその他の金属のカチオンを生成させてもよい。いくつかの実施態様においては、ケイ酸マグネシウムおよびその他の鉱物質を、二酸化炭素および廃ガス(たとえば、燃焼ガス)のその他の成分の添加によってすでに酸性となっている水溶液の中で消化させるか、または溶解させてもよい。別な方法として、その他の金属種たとえば、金属水酸化物(たとえば、Mg(OH)2、Ca(OH)2)は、アルカリ水酸化物(たとえば、NaOH)または各種その他の適切なアルカリ性物質の水溶液を用いて、1種または複数の金属ケイ酸塩(たとえば、かんらん石および蛇紋石)を溶解させることによって、使用できるようにしてもよい。高度に濃厚または極めて希釈な溶液を含めて、各種適切な濃度のアルカリ水酸化物またはその他のアルカリ性物質の水溶液を使用して金属ケイ酸塩を分解させてもよい。溶液中のアルカリ水酸化物(たとえば、NaOH)の(重量)濃度は、たとえば30%〜80%で、水が70%〜20%である。有利には、アルカリ水酸化物水溶液を用いて消化させた金属ケイ酸塩などを直接使用して、沈殿物質を生成させてもよい。さらに、その沈殿反応混合物から塩基値を取り戻して、さらなる金属ケイ酸塩などの消化に再利用してもよい。
【0034】
いくつかの実施態様においては、二価カチオンの水溶液を、燃焼ガス流れも与えている工業プラントから得てもよい。たとえば、水冷却の工業プラントたとえば海水冷却工業プラントにおいては、工業プラントにおいて冷却のために使用された水を、次いで、沈殿物質を生成させるために使用してもよい。所望により、その水を冷却してから、沈殿システムに導入してもよい。そのようなアプローチ方法は、たとえば1回通過冷却システムで採用してもよい。たとえば、工業プラントのための1回通過冷却システムとしては、市水または農業用水の給水を採用してもよい。次いで、沈殿物質を生成させるためにその工業プラントからの水を使用してよいが、この場合排出される水は、硬度が低下し、純度が上がっている。所望により、そのようなシステムを修正して、安全手段(たとえば、毒物の混入のような不正行為の検出)を含めたり、行政機関(たとえば、Homeland Securityその他の機関)と連携したりしてもよい。そのような実施態様においては、不正行為または攻撃に対するさらなる防御処置を採用してもよい。
【0035】
プロトン除去剤および方法
上述のように、金属酸化物の廃棄物源たとえば燃焼アッシュ(たとえば、フライアッシュ、ボトムアッシュ、ボイラースラグ)、セメントキルンダスト、およびスラグ(たとえば、鉄スラグ、リンスラグ)(それらのそれぞれについては、以下のそれぞれのセクションにおいてさらに詳しく説明する)が、本明細書に記載の組成物を調製するためのプロトン除去剤の単一の供給源であってもよいが、アッシュ、セメントキルンダスト、スラグ(たとえば、鉄スラグ、リンスラグ)のような廃棄物源を、このセクションに記載するプロトン除去剤(およびプロトン除去を生じさせるための方法)の補助的な供給源と組み合わせて使用してもよい。
【0036】
本発明の方法には、(CO2を溶解させるために)ある容積の二価カチオンの水溶液をCO2の供給源と接触させる工程、およびそうして得られた溶液を沈殿条件に置く工程が含まれる。二価カチオンの水溶液の中にCO2が溶解すると、重炭酸塩および炭酸塩の両方と平衡状態にある化学種の炭酸が生成する。炭酸塩含有沈殿物質を生成させるためには、二価カチオン含有溶液中の各種の化学種(たとえば、炭酸、重炭酸塩、ヒドロニウムなど)からプロトンを除去して、平衡を炭酸塩の方向にシフトさせる。プロトンが除去されるにつれて、溶液の中に入るCO2が増えていく。いくつかの実施態様においては、沈殿反応の一つの相において二価カチオン含有水溶液をCO2と接触させながらCO2の吸収を増大させる、プロトン除去剤および/または方法を使用するが、この際、pHを一定に保っても、高めても、あるいはさらに低めてもよく、(たとえば、塩基を添加することによって)プロトンを急速に除去して、炭酸塩含有沈殿物質を急速に沈殿させる。各種都合のよいアプローチ方法で、各種の化学種(たとえば、炭酸、重炭酸塩、ヒドロニウムなど)からプロトンを除去してよいが、そのような方法としては、たとえば、天然由来のプロトン除去剤の使用、微生物および真菌類の使用、合成の化学的プロトン除去剤の使用、人工廃棄物流れの回収、および電気化学的手段の使用などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0037】
天然由来のプロトン除去剤に含まれるのは、塩基性の局所環境を作り出すかまたはそれを有するより広い環境において見出すことが可能な、各種のプロトン除去剤である。いくつかの実施態様では、溶液に添加(すなわち、溶解)すると塩基性の環境を作り出す鉱物質を含む天然由来のプロトン除去剤が提供される。そのような鉱物質としては、以下のものが挙げられる(これらに限定される訳ではない):石灰(CaO);ペリクレース(MgO);火山灰;超苦鉄質岩および蛇紋石のような鉱物質;ならびに水酸化鉄鉱物質(たとえば、針鉄鉱および褐鉄鉱)。そのような岩石および鉱物質を溶解させる方法が、本明細書において提供される。いくつかの実施態様では、天然由来のプロトン除去剤として、天然のアルカリ水性物体(alkaline bodies of water)の使用を提供する。天然のアルカリ水性物体の例としては、以下のものが挙げられる(これらに限定される訳ではない):地表水供給源(たとえば、アルカリ性の湖、たとえばCaliforniaのMono Lake)および地下水供給源(たとえば、塩基性帯水層)。その他の実施態様では、AfricaのGreat Rift ValleyにあるLake Natron沿いの地殻のような、乾燥したアルカリ水性物体からの堆積物の使用が提供される。いくつかの実施態様においては、それらの通常の代謝作用において塩基性の分子または溶液を排出するような生物体を、プロトン除去剤として使用する。そのような生物体の例としては、アルカリプロテアーゼを生成する真菌(たとえば、深海真菌のアウペルギルス・ウスツス(Aspergillus ustus)、最適pH、9)およびアルカリ性分子を生成する細菌(たとえば、シアノ細菌、たとえばBritish Columbia州のAtlin湿地からのリングビア(Lyngbya)属、このものは、光合成の副生物によりpHを上げる)が挙げられる。いくつかの実施態様においては、生物体を使用してプロトン除去剤を生成させるが、その生物体(たとえば、バチルス(Bacillus)殺菌(pasteurizing)、このものは尿素を加水分解してアンモニアにする)が、汚染物(たとえば、尿素)を代謝して、プロトン除去剤、またはプロトン除去剤(たとえば、アンモニア、水酸化アンモニウム)を含む溶液を生成する。いくつかの実施態様においては、沈殿反応混合物とは別にして生物体を培養するが、その場合、沈殿反応混合物に加えるために、プロトン除去剤またはプロトン除去剤を含む溶液を使用する。いくつかの実施態様においては、炭素脱水酵素を、プロトンを除去するための天然由来のプロトン除去剤として使用して、沈殿物質の沈殿を引き起こさせる。植物および動物によって生成される酵素である炭素脱水酵素が、水溶液中の炭酸から重炭酸塩への変換を加速させる。
【0038】
プロトン除去に効果のある化学薬剤は、一般的に合成化学薬剤と呼ばれ、大量に生産されて、市販されている。たとえば、プロトンを除去するための化学薬剤としては、水酸化物、有機塩基、超塩基、酸化物、アンモニア、および炭酸塩などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。水酸化物としては、溶液中で水酸化物アニオンを与える化学種、たとえば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、または水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)などが挙げられる。有機塩基は、一般的に窒素系塩基である炭素含有分子であって、たとえば、一級アミンたとえばメチルアミン、二級アミンたとえばジイソプロピルアミン、三級アミンたとえばジイソプロピルエチルアミン、芳香族アミンたとえばアニリン、複素芳香族たとえばピリジン、イミダゾール、およびベンズイミダゾール、ならびにそれらの各種の形態が挙げられる。いくつかの実施態様においては、ピリジン、メチルアミン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ヒスチジン、およびホファゼン(phophazene)から選択される有機塩基が、沈殿物質を沈殿させるために、化学種(たとえば、炭酸、重炭酸塩、ヒドロニウムなど)からプロトンを除去するのに使用される。いくつかの実施態様においては、アンモニアを使用して、二価カチオンと産業廃棄物流れの溶液から沈殿物質を沈殿させるために十分なレベルにまでpHを上げる。プロトン除去剤として使用するのに適した超塩基としては、ナトリウムエトキシド、ナトリウムアミド(NaNH2)、水素化ナトリウム(NaH)、ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムジエチルアミド、およびリチウムビス(トリメチルシリル)アミドが挙げられる。酸化物、たとえば、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化ベリリウム(BeO)、および酸化バリウム(BaO)などもまた、使用可能なプロトン除去剤として好適である。本発明において使用する炭酸塩としては炭酸ナトリウムが挙げられるが、これに限定される訳ではない。
【0039】
対象となるカチオンおよびその他の好適な金属の形態に加えて、各種の工業プロセスからの廃棄物流れがプロトン除去剤を与えてもよい。そのような廃棄物流れとしては、以下のようなものがある(これらに限定される訳ではない):採鉱廃棄物;化石燃料燃焼アッシュ(たとえば、フライアッシュ、本明細書においてさらに詳しく説明する);スラグ(たとえば、鉄スラグ、リンスラグ);セメントキルン廃棄物;製油所/石油精製工場廃棄物(たとえば、油田およびメタン層ブライン);石炭層廃棄物(たとえば、ガス化ブラインおよび石炭層ブライン);紙加工廃棄物;軟水化廃棄物ブライン(たとえば、イオン交換排水);ケイ素加工廃棄物;農業廃棄物;金属仕上廃棄物;高pH織物廃棄物;および苛性スラッジ。採鉱廃棄物としては、大地からの金属またはその他の貴重なもしくは有用な鉱物質の抽出からの各種の廃棄物が挙げられる。いくつかの実施態様においては、採鉱からの廃棄物が、pHを調整するために使用されるが、その廃棄物は、Bayer法アルミニウム抽出プロセスからの赤泥;海水からのマグネシウム抽出からの廃棄物(たとえば、Mg(OH)2、たとえばCalifornia州Moss Landingで見出されるもの;および、リーチングを含めた採鉱プロセスからの廃棄物から選択される。たとえば、米国特許仮出願第61/161369号明細書(出願日、2009年3月18日)に記載されているように、赤泥を使用してpHを調整してもよい(この特許を参照することにより、その全てを本明細書に取り入れたものとする)。農業廃棄物は、動物からの廃棄物または過剰な化学肥料使用いずれからきたものであっても、水酸化カリウム(KOH)またはアンモニア(NH3)またはその両方を含んでいる可能性がある。したがって、本発明のいくつかの実施態様において、農業廃棄物をプロトン除去剤として使用してもよい。この農業廃棄物は、池から採取することが多いが、それを採取して使用できるのであれば、帯水層の中に浸出したものであってもよい。
【0040】
電気化学的方法は、溶液の各種の化学種からプロトンを除去するためのまた別な手段であるが、そのためには、溶質からプロトンを除去するか(たとえば、炭酸または重炭酸塩の脱プロトン化)または、溶媒からプロトンを除去するか(たとえば、ヒドロニウムまたは水の脱プロトン化)のいずれかの方法による。たとえば、CO2溶解からのプロトンの生成が、溶質分子からの電気化学的なプロトン除去とバランスするか、またはそれを超えると、溶媒の脱プロトン化が起きる。別な方法として、電気化学的方法を使用して、たとえばクロルアルカリプロセスまたはそれの改良法によって、アルカリ性の分子(たとえば、水酸化物)を生成させてもよい。二価カチオン含有水溶液またはガス状の廃棄物流れをチャージした(たとえば、CO2をチャージした)溶液を含む装置の中に電極(すなわち、陰極および陽極)を存在させ、選択的バリヤーたとえば膜によって、それらの電極を分離すればよい。プロトンを除去するための電気化学的システムおよび方法は、副生物(たとえば、水素)を生じる可能性があるが、それらを集めて、他の用途に使用してもよい。本発明のシステムおよび方法において使用してもよいさらなる電気化学的アプローチ方法としては次の特許出願に記載されているものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:米国特許出願第61/081,299号明細書および米国特許出願第61/091,729号明細書(参照することにより、その開示を本明細書に取り入れたものとする)。
【0041】
いくつかの実施態様においては、低電圧電気化学的方法を使用して、プロトンを除去するが、たとえば、CO2が、沈殿反応混合物、または沈殿反応混合物への前駆体溶液の中に溶解するからである。沈殿混合物への前駆体溶液には、たとえば、二価カチオンを含んでいても、含んでいなくてもよい。いくつかの実施態様においては、二価カチオンを含まない水溶液の中に溶解させたCO2を、低電圧電気化学的方法によって処理して、CO2を溶解させたことによって生じた、炭酸、重炭酸塩、ヒドロニウム、もしくは各種化学種、またはそれらの組合せからプロトンを除去する。低電圧電気化学的方法は、2、1.9、1.8、1.7、もしくは1.6V以下、たとえば1.5、1.4、1.3、1.2、1.1V以下、たとえば1V以下、たとえば0.9V以下、0.8V以下、0.7V以下、0.6V以下、0.5V以下、0.4V以下、0.3V以下、0.2V以下、または0.1V以下の平均電圧で実施する。本発明のシステムおよび方法において使用するには、塩素ガスを発生しない低電圧電気化学的方法を使用するのが好都合である。プロトンを除去するための、酸素ガスを発生しない低電圧電気化学的方法もまた、本発明のシステムおよび方法において使用するには好都合である。いくつかの実施態様においては、低電圧電気化学的方法が、陰極で水素ガスが発生するので、それを陽極に輸送して、そこでその水素ガスをプロトンに転換させる。水素ガスを発生しない電気化学的方法もまた、好都合である。場合によっては、プロトンを除去するための電気化学的方法が、ガス状の副生物をまったく発生させない。たとえば以下の特許出願を参照されたい:米国特許出願第12/344,019号明細書(出願日、2008年12月24日)、米国特許出願第12/375,632号明細書(出願日、2008年12月23日)、PCT特許出願第PCT/US08/088242号明細書(出願日、2008年12月23日)、およびPCT特許出願第PCT/US09/32301号明細書(出願日、2009年1月28日)(それらの出願を、参照することにより本明細書にそれらの全内容を取り入れたものとする)。
【0042】
燃焼アッシュ、セメントキルンダスト、およびスラグ
金属酸化物の廃棄物源(たとえば、燃焼アッシュたとえばフライアッシュ、セメントキルンダストなど)を、本明細書に記載の組成物を調製するための、唯一のプロトン除去剤の供給源としてもよい。別の言い方をすれば、金属酸化物の廃棄物源たとえば、燃焼アッシュ、セメントキルンダストなどを、それから本発明の組成物を生成させる反応混合物のpHを修正するために使用する、唯一のプロトン除去剤の供給源としてもよい。したがって、いくつかの実施態様においては、その唯一のプロトン除去剤の供給源が、フライアッシュ、ボトムアッシュ、およびボイラースラグから選択される燃焼アッシュである。いくつかの実施態様においては、その唯一のプロトン除去剤の供給源が、セメントキルンダストである。いくつかの実施態様においては、その唯一のプロトン除去剤の供給源が、スラグ(たとえば、鉄スラグ、リンスラグ)である。同様にして、金属酸化物の廃棄物源(たとえば、燃焼アッシュたとえばフライアッシュ、セメントキルンダストなど)を、本明細書に記載の組成物を調製するための、唯一の二価金属カチオンの供給源としてもよい。別の言い方をすれば、金属酸化物の廃棄物源たとえば、燃焼アッシュ、セメントキルンダストなどを、それから本発明の組成物を生成させる、唯一の二価カチオンの供給源としてもよい。したがって、いくつかの実施態様においては、その唯一の二価カチオンの供給源が、フライアッシュ、ボトムアッシュ、およびボイラースラグから選択される燃焼アッシュである。いくつかの実施態様においては、その唯一の二価カチオンの供給源が、セメントキルンダストである。いくつかの実施態様においては、その唯一の二価カチオンの供給源が、スラグ(たとえば、鉄スラグ、リンスラグ)である。いくつかの実施態様においては、金属酸化物の廃棄物源(たとえば、燃焼アッシュたとえばフライアッシュ、セメントキルンダストなど)が、本発明による沈殿物質を沈殿させるための、唯一の二価カチオンおよびプロトン除去剤の供給源である。たとえば、フライアッシュが、沈殿物質を沈殿させるための二価カチオンとプロトン除去剤との両方を与えてもよい。さらに、金属酸化物の廃棄物源と、二価カチオンおよび/またはプロトン除去剤のいずれかのその他の供給源とを組み合わせることについて、ここでさらに詳しく説明する。
【0043】
石炭のような炭素系燃料は、燃焼アッシュ廃棄産物、たとえばフライアッシュ、ボトムアッシュ、およびボイラースラグを発生するが、それらは廃棄の手段として、多くの場合埋立処理されたり、低価値の用途に利用されたりする。それらの廃棄産物には多くの場合、滲出性の汚染物質が含まれていて、埋立処理すると、地下水を汚染する可能性がある。The American Coal Ash Associationの報告では、米国で年間165,000,000トンの石炭燃焼生成物の56%を超えるものが、石炭燃焼事業者の実質的なコスト負担であっさりと埋立地に送られている。化石燃料(たとえば、石炭専焼火力発電所における石炭)を燃焼させることにより発生する燃焼アッシュは、多くの場合、CaOまたはその他の金属酸化物に富んでいて、それらは塩基性の環境を作り、溶液の中では二価カチオンを与える。火山の噴火により放出される火山灰(一般的には、これはそれぞれ、燃焼アッシュと考えられる)も含めて、石炭、木材、およびその他の供給源からの燃焼生成物には、各種の酸化物たとえば、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、およびカルシウム、マグネシウム、鉄などの酸化物も含まれていて、それがある種の化学反応を促進させて、セメントが得られる。本発明において採用される石炭アッシュ(すなわち、石炭を燃焼させることにより生じる燃焼アッシュ)とは、発電所ボイラーまたは石炭燃焼炉(たとえば、チェーングレートボイラー、ドライボトム微粉炭ボイラー、スラグタップボイラー、サイクロンボイラー、および流動床ボイラー)の中で、微粉化させた無煙炭、亜炭、瀝青炭、亜瀝青炭、または褐炭を燃焼させることにより生じるアッシュ物質を指している。そのような石炭アッシュには、以下のものが含まれる:フライアッシュ(これは、排出物または煙道ガスにより炉から運び出される微細な石炭アッシュである);ボトムアッシュ(これは、(たとえば、ドライボトムボイラーにおいて)凝集物として炉の基部で捕集されるものである);およびボイラースラグ(これは、ウェットボトムボイラーのアッシュホッパーで捕集されるものである)。
【0044】
低硫黄炭よりも豊富にあり、比較的にコストが安い高硫黄炭では、通常、煙道ガス放出物から硫黄酸化物(「SOx」)を除去するために煙道ガス脱硫(FGD)を行う必要がある。このプロセスでは一般的には、CaSO4(セッコウ)を製造するための反応剤として石灰石を利用するために、大気中へのCO2の放出がさらに増える。このプロセスでは、プロセスの中の石灰石から放出されるカルシウムのために、高カルシウムフライアッシュが生成するが、そこでは、カルシウムが酸化カルシウム(CaO)の形になっている。通常の発電所または工業用の石炭燃焼設備において、大気放出の前に行う煙道ガスの前処理には、電気集塵(「ESP」)、湿式もしくは乾式スクラビング、および煙道ガス脱硫(「FGD」)のようなプロセスが含まれていてよい。多くのFGDプロセスにおいては、ESP処理をした後の煙道ガスを、FGD吸収タンクの中に導入し、そこで石灰石スラリーと反応させて、CaSO4を形成させて、煙道ガスから硫黄を除去する。この方法で形成されるCaSO4のそれぞれの分子がCO2の分子を放出し、石炭のような化石燃料の燃焼に伴うCO2の大量の放出をさらに悪化させる。
【0045】
フライアッシュは一般的には極めて不均質であって、石英、ムライト、ヘマタイト、マグネタイトのような同定可能な種々の結晶相を有するガラス状粒子と、さらに各種の酸化鉄の混合物を含んでいる。問題となるフライアッシュは、タイプFとタイプCのフライアッシュである。上記のように呼ばれているタイプFとタイプCのフライアッシュは、CSA Standard A23.5およびASTM C618に定義されている。それらのタイプの間の主な違いは、アッシュの中のカルシウム、シリカ、アルミナ、および鉄の含量である。フライアッシュの化学的性質は、燃焼させた石炭(たとえば、無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、亜炭、褐炭)の化学成分の影響を大きく受ける。フライアッシュの性質はさらに、温度履歴、使用したバーナーのタイプ、燃焼後の処理、スクラバーの効果、ならびに滞留(impounding)時間および条件にも依存する可能性がある。対象となるフライアッシュには、実質的な量のシリカ(二酸化ケイ素、SiO2)(非晶質と結晶質の両方)および石灰(酸化カルシウム、CaO、酸化マグネシウム、MgO)が含まれる。フライアッシュの外側表面は一般的には、CaOおよびMgOに富んでいるが、CaOおよびMgOの濃度は、フライアッシュの外側表面から中心に向かって低下していく。CaOおよびMgOの減少にしたがって、それに見合った濃度でSiO2が増加する。後に述べるいくつかの実施態様において使用される高剪断混合および湿式摩砕によって、フライアッシュの中に存在する全部のCaOおよびMgOに対するアクセスを、より大きくすることが可能となる。次の表1に、本発明の実施態様において使用可能な、各種のタイプのフライアッシュの化学組成を示す。
【0046】
【表1】

【0047】
より硬く、より古い無煙炭および瀝青炭を燃焼させると、典型的には、クラスFのフライアッシュが生成する。クラスFのフライアッシュは、ポゾラン的な性質を有し(すなわち、湿分の存在下で、微細なシリカまたはアルミノシリケートがCa(OH)2と反応してセメント様の性質を有する化合物を形成するが、シリカまたはアルミノシリケート単独では、セメント様の性質をほとんど、またはまったく有していない)、石灰(CaO)の含量は10%未満である。より若い亜炭または亜瀝青炭を燃焼させて生成するフライアッシュは、ポゾラン的な性質を有していることに加えて、いくぶんかの自己固化性(self−cementing properties)も有している。水の存在下では、クラスCのフライアッシュが硬化し、時間の経過と共に強度が上がる。クラスCのフライアッシュは一般的には、20%を超える石灰(CaO)を含む。アルカリおよび硫酸塩(SO4)の含量は、一般的には、クラスCのフライアッシュの方が高い。
【0048】
フライアッシュ物質は排気ガス中に懸濁している間に固化し、各種のアプローチ方法、たとえば電気集じん機またはフィルターバッグを使用して捕集される。それらの粒子が、排気ガス中に懸濁している間に固化するので、フライアッシュ粒子は一般的には、球状の形状を有し、サイズが0.5μm〜100μmの範囲である。対象としているフライアッシュは、少なくとも約80重量%が、45ミクロン未満の粒子であるものである。
【0049】
本発明のある種の実施態様で興味深いのは、高度アルカリ性流動床燃焼装置(FBC)フライアッシュの使用である。
【0050】
本発明の実施態様においてこれまた興味深いのは、ボトムアッシュの使用である。ボトムアッシュは、石炭燃焼ボイラーにおける石炭燃焼からの凝集物として形成される。その凝集物は、凝集物の90%が、0.1mm〜20mmの範囲の粒子サイズの中に入るようなサイズを有し、そのボトムアッシュ凝集物が、この範囲の中での凝集物サイズの分布が広い。燃焼ボイラーは、ウェットボトムボイラーであっても、ドライボトムボイラーであってもよい。ウェットボトムボイラーの中で発生した場合には、水を用いてそのボトムアッシュを冷却し、ボイラースラグを生成させる。ボトムアッシュの主たる化学的成分は、シリカおよびアルミナであり、より少ない量で、Fe、Ca、Mg、Mn、NaおよびKの酸化物、さらには硫黄および炭素が含まれる。
【0051】
ある種の実施態様において、さらに興味深いのは、アッシュとしての火山灰の使用である。火山灰は、直径2ミリメートル(0.079インチ)未満の小さいテフラ(すなわち、火山の噴火により形成された多数の微粉化された岩石とガラス)からできている。
【0052】
セメントキルンダストもまた金属酸化物の廃棄物源としては有用であり、たとえばCaOおよびMgOを与えるが、それらは、二価カチオン供給源としておよびプロトン除去剤供給源としていずれにも使用することができる。
【0053】
セメント製造時の微細な副生物であって、ダスト捕集システム(たとえば、サイクロン、電気集じん機、バグハウス(bughouse)など)で捕集される、セメントキルンダストを、分級して4種のカテゴリーの一つとすることが可能で、それらそれぞれが、本発明のための金属酸化物の廃棄物源として好適である。その4種のカテゴリーは、2種の異なったセメントキルンプロセスと、2種の異なったダスト捕集プロセスに基づいたものである。このことを考慮に入れると、フィード物質をスラリーの形態で受け入れる湿式法キルンプロセス、およびフィード物質を乾燥して、摩砕されて形態で受け入れる乾式法キルンプロセスからのセメントキルンダストが、本発明において使用するのに適している。それぞれのタイプのキルンにおいて、ダストは二つの方法で捕集することができる:ダストの一部を、キルンに最も近いダスト捕集システム(たとえば、サイクロン)から、分離されてキルンに戻してもよいし、あるいは生成したダストの全量をリサイクルまたは廃棄してもよい。いずれのタイプの捕集システムから得られたセメントキルンダストも、本発明において使用するには適している。
【0054】
セメントキルンダストの化学的および物理的特性は、そのセメント製造設備で採用されているダスト捕集方法に大きく依存する。化学的には、セメントキルンダストは、通常のポルトランドセメントに類似した組成を有している。セメントキルンダストの主たる構成成分は、石灰、鉄、シリカ、およびアルミナの化合物である。セメントキルンダストの中の遊離石灰の濃度は、キルンに一番近いところで捕集された粗い粒子で最も高い。したがって、遊離石灰の濃度が高い粗い粒子は、本発明の方法およびシステムには特に好適である。しかしながら、セメントキルンダストのより細かい粒子は、硫酸塩および/またはアルカリのより高い濃度を示す傾向があり、より細かい粒子もたとえば、CaOを有用な濃度で含んでいるので、これまた本発明には適している。セメントキルンダストのより粗い粒子が分離されずにキルンに戻されるようなシステムにおいては、全部のダストで遊離石灰の比率が高くなるであろう(その理由は、それには、いくぶんかの粗い粒子を含んでいるからである)。このセメントキルンダストは、二価カチオンおよびプロトン除去剤を与える、金属酸化物の廃棄物源として使用してもよい。表2(Collins,R.J.およびJ.J.Emery,「Kiln Dust−Fly Ash Systems for Highway Bases and Subbases」,Federal Highway Administration,Report No.FHWA/RD−82/167,Washington,DC,Septemper,1983)は、フレッシュおよび備蓄セメントキルンダストについての典型的な組成を列記したものであるが、これからもわかるように、備蓄されていて、長期間にわたって外気に暴露されていたセメントキルンダストの中では、遊離の石灰または遊離のマグネシアの含量が、たとえあるとしても、極めて低い。したがって、フレッシュなセメントキルンダストの方が、顕著に長い期間外気に暴露された備蓄されていたセメントキルンダストよりも好ましい。
【0055】
【表2】

【0056】
たとえばCO2をチャージした沈殿反応混合物のpHを上げるためのプロトン除去剤(さらには二価カチオンの供給源)として、スラグを採用してもよい。スラグは、単一のプロトン除去剤として使用してもよいし、あるいは1種または複数のさらなるプロトン除去剤(たとえば、先に記したような、その他の金属酸化物の廃棄物源、補助的なプロトン除去剤など)と組み合わせて使用してもよい。同様にして、スラグを、単一の二価カチオンの供給源としてもよいし、あるいは1種または複数の二価カチオンのさらなる供給源(たとえば、先に記したような、その他の金属酸化物の廃棄物源、二価カチオンの補助的な供給源など)と組み合わせて使用してもよい。スラグは、金属の鉱石の加工(すなわち、金属鉱石を製錬して金属を精製すること)の際に発生し、酸化カルシウムおよび酸化マグネシウム、さらには鉄、ケイ素、およびアルミニウムの化合物を含んでいる。いくつかの実施態様においては、プロトン除去剤または二価カチオンの供給源としてスラグを使用することによって、沈殿生成物に反応性のケイ素およびアルミナを導入できるというさらなるメリットが得られる。本発明において好適となりうるスラグとしては、以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:鉄製錬からの溶鉱炉スラグ、鋼のアーク炉または高炉加工からのスラグ、銅スラグ、ニッケルスラグ、およびリンスラグ。
【0057】
添加物
生成する沈殿物質の性質に影響を及ぼすために、プロトン除去剤以外の添加物を沈殿反応混合物に加えてもよい。したがって、いくつかの実施態様においては、沈殿反応混合物を沈殿条件に置くより前か、または置いているときに、沈殿反応混合物に添加物を加える。微量のある種の添加物が、ある種の炭酸カルシウムの多形体に有利に働く。たとえば、バテライトは、高度に不安定なCaCO3の多形体であって、各種の多形で沈殿して、急速に転化して方解石となるが、このバテライトを、微量のランタン、たとえば塩化ランタンを加えることで極めて高い収率で得ることができる。炭酸カルシウムの多形体を生成させるために、その他の遷移金属などを添加してもよい。たとえば、第一鉄または第二鉄を添加すると、乱雑な構造のドロマイト(プロトドロマイト)が生成しやすくなることは公知である。
【0058】
方法
本発明の方法およびシステムは、溶解された二酸化炭素を含む水溶液(たとえば、CO2を含む産業廃棄物流れからのもの)から調製される炭酸塩含有組成物、二価カチオン(たとえば、Ca2+、Mg2+)、およびプロトン除去剤(またはプロトン除去を起こさせる方法)を提供するが、これらについては以下においてより詳しく説明する。
【0059】
金属酸化物の廃棄物源たとえば、燃焼アッシュ(たとえば、フライアッシュ、ボトムアッシュ、ボイラースラグ)、セメントキルンダスト、またはスラグ(たとえば、鉄スラグ、リンスラグ)は、本明細書に記載の組成物を調製するための、二価の金属カチオンの単一の供給源となりうる。したがって、いくつかの実施態様においては、その唯一の二価の金属カチオンの供給源が、フライアッシュ、ボトムアッシュ、およびボイラースラグから選択される燃焼アッシュである。いくつかの実施態様においては、その唯一の二価の金属カチオンの供給源が、セメントキルンダストである。いくつかの実施態様においては、その唯一の二価の金属カチオンの供給源が、スラグ(たとえば、鉄スラグ、リンスラグ)である。金属酸化物の廃棄物源たとえば、燃焼アッシュ(たとえば、フライアッシュ、ボトムアッシュ、ボイラースラグ)、セメントキルンダスト、またはスラグ(たとえば、鉄スラグ、リンスラグ)もまた、本明細書に記載の組成物を調製するための、プロトン除去剤の単一の供給源となりうる。したがって、いくつかの実施態様においては、その唯一のプロトン除去剤の供給源が、フライアッシュ、ボトムアッシュ、およびボイラースラグから選択される燃焼アッシュである。いくつかの実施態様においては、その唯一のプロトン除去剤の供給源が、セメントキルンダストである。いくつかの実施態様においては、その唯一のプロトン除去剤の供給源が、スラグ(たとえば、鉄スラグ、リンスラグ)である。いくつかの実施態様においては、金属酸化物の廃棄物源たとえば、燃焼アッシュ(たとえば、フライアッシュ、ボトムアッシュ、ボイラースラグ)、セメントキルンダスト、またはスラグ(たとえば、鉄スラグ、リンスラグ)を淡水または蒸留水に添加することによって、水供給源を二価カチオンに富ませることにより、水の中の鉱物質含量を高めることができるが、ここでその淡水または蒸留水は、鉱物質含量が低いかゼロである。これらの実施態様においては、その金属酸化物の廃棄物源が、二価カチオンのみならず、プロトン除去剤の供給源となっている。
【0060】
いくつかの実施態様においては、金属酸化物の廃棄物源が、プロトン除去剤の一部たとえば、10%以下、20%以下、40%以下、60%以下、80%以下を与え、残りの部分のプロトン除去剤(またはプロトン除去を起こさせる方法)が、本明細書の記載に従って得られる。
【0061】
各種好都合な手順を使用して、水を、金属酸化物の廃棄物源たとえば、燃焼アッシュ(たとえば、フライアッシュ)またはセメントキルンダストと接触させて、所望のpH(プロトン除去剤の添加の手段による)または二価カチオン濃度になるようにしてよい。いくつかの実施態様においては、石炭専焼火力発電所からの煙道ガスを、電気集じん機などを使用せず、フライアッシュを予め除去することなく、沈殿反応機の中に直接通す。いくつかの実施態様においては、セメントキルンダストを、セメントキルンから直接沈殿反応機に入れる。いくつかの実施態様においては、予め捕集しておいたフライアッシュを、水を保持した沈殿反応機の中に入れてもよいが、ここで、添加するフライアッシュの量を、pHを所望のレベル(たとえば、炭酸塩含有沈殿物質の沈殿を起こさせるpH)、たとえばpH7〜14、pH8〜14、pH9〜14、pH10〜14、pH11〜14、pH12〜14、またはpH13〜14にまで上げるに十分な量とする。フライアッシュ−水混合物のpHは、たとえば、pH約12.2〜12.4とするのがよい。セメントキルンダスト−水混合物のpHも同様に、pH約12とするのがよい。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の廃棄物源は、カラムまたはベッドに固定される。そのような実施態様においては、水のpHを上げるに十分な量のアッシュの中または上に水を通して、所望のpHにしたり、特定の二価カチオン濃度にしたりする。固定された金属酸化物の廃棄物源(たとえば、フライアッシュ)は、フライアッシュの不動態化(すなわち、たとえばCaCO3によるフライアッシュの封じ込め(沈殿条件下でCaCO3が形成されるのがその理由))を緩和させるのに有用である。しかしながら、いくつかの実施態様においては、フライアッシュの不動態化が望ましいこともあるが、その理由は、不動態化されたフライアッシュを含む沈殿物質では、ポゾラン的な反応性(すなわち、シリカおよび/またはアルミノシリカとCa(OH)2との反応)が低下しており、そのことによって、反応性が低い方が望ましいようなさらなる用途が開けるからである。セメントキルンダストおよび燃焼アッシュたとえばフライアッシュのいずれもが、高い塩基値を有しているので、それらはかなりの塩基性であると考えられる。塩基値および/または二価カチオン値を除去することにより、さらなる塩基値および/または二価カチオン値が、廃棄物源−水混合物から得ることができる。たとえば、廃棄物源−水混合物をCO2供給源(これが、溶液中で炭酸を生成する)と接触させて、炭酸カルシウムを含む沈殿物質を形成させることができるが、それが生成したことによって、CaOがCa(OH)2にさらに転換され、さらなる二価カチオンができる。同様にして、廃棄物源−水混合物を水性の酸たとえばHNO3、HCl、およびHF(これらに限定される訳ではない)と接触させてもよい。HNO3およびHClのような酸を用いてフライアッシュを酸消化させることによって、フライアッシュの中に存在するCaOおよびMgOへのアクセスを、より大きく(70%以上)することが可能となる。水性のHFを用いた酸消化によって、シリカとの反応およびそれにより生成する化学種の溶解があるために、CaOおよびMgOへのアクセスを、より大きくすることが可能となる。反応時間および酸の強度を変化させて、フライアッシュから浸出されるCaOおよび/またはMgOの量を増減させてもよい。
【0062】
いくつかの実施態様においては、金属酸化物の廃棄物源たとえばフライアッシュまたはセメントキルンダストを消和(すなわち、CaOからCa(OH)2へ、そしてMgOからMg(OH)2への転換など)させてもよい。燃焼アッシュ(たとえば、フライアッシュ、ボトムアッシュ)またはセメントキルンダストの消和に有効な各種の好都合なシステムまたは方法を使用すればよい。金属酸化物の廃棄物源の消和は、スラリー滞留消和機、ペースト石灰消和機、ボールミル石灰消和機、またはそれらを各種組み合わせるかもしくは変型させたものを用いて達成すればよいが、消和装置の選択は、消和させる金属酸化物の廃棄物源、水の利便性、所要スペースなどに依存する。たとえば、スペースに限度があり、また消和のための水の供給にも限度があるような場合には、コンパクトなペースト石灰消和機が、本発明のシステムおよび方法において使用するには好都合となるであろう。いくつかの実施態様においては、ボールミル石灰消和機が使用される。金属酸化物の廃棄物源にも依存するが、消和効率は以下の因子の影響を受ける可能性がある:か焼に使用するための石灰石のタイプ、特定のか焼プロセス(たとえば、温度履歴、使用したバーナーのタイプ、燃焼後処理、スクラバー効果、滞留時間および条件など)、消和温度、廃棄物源対水の比率、消和の際の撹拌の程度、スラリーの粘度、消和時間、および(金属酸化物の廃棄物源混合する前の)水の温度。水のタイプもまた、消和効率に影響する可能性がある。たとえば、一般的には海水よりも二価カチオンの濃度が低い淡水は、フライアッシュからCaOおよびMgOを抽出するには遙かに効率が高い可能性があるが、水のタイプは、一般的にはその沈殿プラントの所在地での入手性に依存するであろう。したがって、本発明の方法には、タイミングのよい消和(すなわち、工業プロセスを効率化させることが可能な時間スケールでの消和)のためにそれらの因子を修正することも含まれる。たとえば、消和温度を修正してもよい。いくつかの実施態様においては、その消和温度が、室温(約70゜F)から約220゜Fまでの範囲である。いくつかの実施態様においては、その消和温度が、70〜100゜F、100〜220゜F、120〜220゜F、140〜220゜F、160〜220゜F、160〜200゜F、または160〜185゜Fである。(CaOからCa(OH)2への発熱的な転換反応から得られる温度を超えて)消和温度を高くするために、補助的な加熱が必要であるならば、たとえば、煙道ガスからの廃熱を使用してもよい。同様にして、その他の外部からの熱供給源(たとえば、加熱水)を使用してもよい。金属酸化物の廃棄物源の反応性が高い(すなわち、高い濃度でたとえばCaOを含むフライアッシュまたはセメントキルンダスト)ために、消和温度を下げる必要があるようならば、その熱を、たとえば、沈殿物質の乾燥に使用するための空気流れを加熱するのに使用してもよい。たとえば、消和圧力を修正してもよい。いくつかの実施態様においては、その消和圧力が通常の大気圧(約1バール)から約50バールまでである。いくつかの実施態様においては、その消和圧力が、1〜2.5バール、1〜5バール、1〜10バール、10〜50バール、20〜50バール、30〜50バール、または40〜50バールである。いくつかの実施態様においては、消和を周囲条件下(すなわち、標準大気温度および圧力)で実施する。水の廃棄物源に対する比率も修正してよい。いくつかの実施態様においては、水の金属酸化物の廃棄物源に対する比率が、(1:1)〜(1:1.5)、(1:1.5)〜(1:2)、(1:2)〜(1:2.5)、(1:2.5)〜(1:3)、(1:3)〜(1:3.5)、(1:3.5)〜(1:4)、(1:4)〜(1:4.5)、(1:4.5)〜(1:5)、(1:5)〜(1:6)、(1:6)〜(1:8)、(1:8)〜(1:10)、(1:10)〜(1:25)、(1:25)〜(1:50)、または(1:50)〜(1:100)である。廃棄物源の水に対する比率もまた、修正してよい。いくつかの実施態様においては、金属酸化物の廃棄物源の水に対する比率が、(1:1)〜(1:1.5)、(1:1.5)〜(1:2)、(1:2)〜(1:2.5)、(1:2.5)〜(1:3)、(1:3)〜(1:3.5)、(1:3.5)〜(1:4)、(1:4)〜(1:4.5)、(1:4.5)〜(1:5)、(1:5)〜(1:6)、(1:6)〜(1:8)、(1:8)〜(1:10)、(1:10)〜(1:25)、(1:25)〜(1:50)、または(1:50)〜(1:100)である。いくつかの実施態様において、フライアッシュのような金属酸化物の廃棄物源が沈殿反応機に直接供給されるような場合には、その廃棄物源の水に対する比率は、極めて低くてよい。そのような実施態様においては、追加の廃棄物源(たとえば、フライアッシュ)をその沈殿反応機に添加して、廃棄物源の水に対する比率を上げてもよいし、あるいは、廃棄物源の水に対する比率を低くして消和を実施してもよい。消和時間も、それが消和効率に影響するので、修正してよい。いくつかの実施態様においては、水和(たとえば、CaOからのCa(OH)2の生成)を完了させるのに必要な消和時間が、12〜20時間、20〜30時間、30〜40時間、40〜60時間、60〜100時間、100〜160、100〜180、および180〜200時間の間である。いくつかの実施態様においては、水和を完了させるまでに必要な消和時間が、12時間未満、6〜12時間、3〜6時間、1〜3時間の間、または1時間未満である。いくつかの実施態様においては、水和を完了させるまでに必要な消和時間が、30分間〜1時間の間である。いくつかの実施態様においては、その消和時間が、15〜30分間、15〜25分間、および15〜20分間の間である。いくつかの実施態様においては、その消和時間が、5〜30分間、5〜20分間、5〜15分間、および5〜10分間の間である。いくつかの実施態様においては、その消和時間が、1〜5分間、1〜3分間、および2〜3分間の間である。撹拌もまた、たとえばホットスポットおよびコールドスポットを無くすことによって、消和効率に影響する可能性がある。さらに、金属酸化物の廃棄物源を前処理することによって、消和効率を効率化させてもよい。たとえば、消和より前にフライアッシュを、ジェットミル処理またはボールミル処理してもよい。上述の消和因子のいずれか一つを変化させることにより、さらなる消和因子にも変化がおよんで、それぞれの消和の手順が、利用できる物質に依存して変化するであろうということが認識されるであろう。したがって、本発明における消和は、廃棄物源中に存在するCaOをCa(OH)2に転換させる割合を、10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、97%超、98%超、99%超、または99.9%超とすることができる。同様に、本発明における消和は、廃棄物源中に存在するMgOをMg(OH)2に転換させる割合を、10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、97%超、98%超、99%超、または99.9%超とすることができる。転換率が高いほど、消和プロセスの効率が高い。
【0063】
金属酸化物の廃棄物源たとえば、燃焼アッシュ、セメントキルンダスト、またはスラグ(たとえば、鉄スラグ、リンスラグ)を、補助的な二価カチオンの供給源たとえば、燃焼アッシュ、セメントキルンダスト、またはスラグ(たとえば、鉄スラグ、リンスラグ)の混合物と組み合わせて使用してもよい。したがって、いくつかの実施態様においては、その二価カチオンの供給源が、二価カチオン供給源と、フライアッシュ、ボトムアッシュ、およびボイラースラグから選択される燃焼アッシュとの組合せである。たとえば、その二価カチオンの供給源が、フライアッシュと海水との組合せであってもよい。組合せ(たとえば、燃焼アッシュと他の二価カチオンの供給源との組合せ)として使用する場合には、燃焼アッシュをいかなる順序で使用してもよい。たとえば、塩基性溶液が、燃焼アッシュを添加するより前に既に二価カチオン(たとえば、海水)を含んでいてもよいし、あるいは、二価カチオンの供給源を、フライアッシュの水中のスラリーに添加してもよい。これらの実施態様のいずれにおいても、CO2は、燃焼アッシュの前後いずれで添加してもよいが、これについては以下においてさらに詳しく説明する。
【0064】
廃棄物源たとえば、燃焼アッシュ、セメントキルンダスト、またはスラグ(たとえば、鉄スラグ、リンスラグ)を、補助的なプロトン除去剤の供給源たとえば、燃焼アッシュ、セメントキルンダスト、またはスラグ(たとえば、鉄スラグ、リンスラグ)の混合物と組み合わせて使用してもよい。したがって、いくつかの実施態様においては、そのプロトン除去剤の供給源が、プロトン除去剤と、フライアッシュ、ボトムアッシュ、およびボイラースラグから選択される燃焼アッシュとの組合せである。使用可能なプロトン除去剤の例としては以下のものが挙げられる:酸化物(たとえば、CaO)、水酸化物(たとえば、KOH、NaOH、水滑石(Mg(OH)2など)、炭酸塩(たとえば、Na2CO3)、蛇紋石など。反応混合物の中にシリカおよびマグネシウムも放出する蛇紋石からは、究極的には、(燃焼アッシュの中に見られるものに追加の形の)炭酸塩およびシリカを含む組成物が得られる。使用する補助的なプロトン除去剤の量は、その補助的なプロトン除去剤の具体的な性質と、その中に補助的なプロトン除去剤を添加する水の容積とに依存する。補助的なプロトン除去剤に代わるものとしては、先にプロトン除去をもたらすと説明したような、電気化学的方法の利用がある。電気分解を採用してもよい。各種の電気分解プロセスを使用してよいが、そのようなプロセスとしては、Castner−Kellnerプロセス、および隔膜電解槽プロセス(diaphragm cell process、membrane cell process)が挙げられる。加水分解生成物の副生物(たとえば、H2、ナトリウム金属)は、捕集して他の目的に使用してよい。プロトン除去剤の組合せ(たとえば、燃焼アッシュと、他のプロトン除去剤供給源との組合せ)を使用する場合には、その燃焼アッシュは、いかなる順序で使用してもよい。たとえば、燃焼アッシュ、またはフライアッシュの水中スラリーを添加する前に既に塩基性である二価カチオン含有溶液(たとえば、海水)に、追加のプロトン除去剤を加えてさらに塩基性としてもよい。これらの実施態様のいずれにおいても、CO2は、燃焼アッシュの前後いずれで添加してもよいが、これについては以下においてさらに詳しく説明する。
【0065】
先に説明したように、金属酸化物の廃棄物源たとえば、燃焼アッシュ、セメントキルンアッシュ、およびスラグ(たとえば、鉄スラグ、リンスラグ)を、補助的なプロトン除去剤有り、または無しのいずれかで、各種の組合せで使用してもよい。補助的なプロトン除去剤(およびプロトン除去に影響をおよぼす方法)を使用する場合、それらの補助的なプロトン除去剤もまた、各種適切な組合せで使用してよい。本発明のいくつかの実施態様では、次のような組合せを提供する:人為的廃棄物(たとえば、ボーキサイト加工からの赤泥または褐泥)と市販の塩基(たとえば、NaOH)との組合せの使用;人為的廃棄物と、電気化学的方法(すなわち、炭酸、重炭酸塩、ヒドロニウムなどの脱プロトン化)および天然由来のプロトン除去剤(たとえば、蛇紋石鉱物質)との組合せ;または、人為的廃棄物と、市販の塩基および天然由来のプロトン除去剤とを組み合わせ、その後で次いで電気化学的方法と組み合わせた蛇紋石鉱物質に移行。プロトン除去に影響をおよぼす各種の方法の割合を、条件と入手可能性に従って調節してもよく、たとえば、沈殿プラントの耐用期間の内の最初の5年は、人為的廃棄物を市販の塩基および天然由来のプロトン除去剤と組み合わせて使用し、その後は、蛇紋石鉱物質と、プロトンを除去するための電気化学的方法との組合せに移行してもよい(これらの方が、より入手しやすいからである)。
【0066】
いくつかの実施態様においては、プロトン除去剤(およびプロトン除去に影響をおよぼす方法)を組み合わせて、プロトン除去剤の1〜30%がフライアッシュから供給され、プロトン除去剤の20〜80%が、廃棄物(たとえば、赤泥)、鉱物質たとえば蛇紋石、またはそれらの組合せから供給され、プロトン除去の10〜50%を電気化学的方法でまかなうようにする。たとえば、いくつかの実施態様では、プロトン除去剤と電気化学的方法との組合せを提供して、プロトン除去剤の10%がフライアッシュから供給され、プロトン除去剤の60%が、採鉱プロセス(たとえば、赤泥)からの廃棄物から供給され、プロトン除去の30%を電気化学的方法でまかなうようにする。いくつかの実施態様では、プロトン除去剤と電気化学的方法との組合せを提供して、プロトン除去剤の10%がフライアッシュから供給され、プロトン除去剤の60%が、天然由来の鉱物質供給源(たとえば、溶解させた蛇紋岩)からの廃棄物から供給され、プロトン除去の30%を電気化学的方法でまかなうようにする。いくつかの実施態様では、プロトン除去剤と電気化学的方法との組合せが提供するが、その場合、沈殿プラントの耐用期間の内の最初の5年の間は、プロトン除去剤の30%が、フライアッシュから供給され、プロトン除去剤の70%が採鉱プロセスからの廃棄物(たとえば、赤泥)から提供されるようにし、その6年目の最初以降は、プロトン除去剤の10%が、フライアッシュから供給され、プロトン除去剤の60%が、天然由来の鉱物質供給源(たとえば、蛇紋石)を溶解させた結果であり、プロトン除去の30%を電気化学的方法によってまかなうようにする。
【0067】
二価カチオン(たとえば、アルカリ土類金属カチオン、たとえばCa2+およびMg2+)を含む水溶液を、その二価カチオン含有溶液を沈殿条件(すなわち、たとえばpHにも基づいて、1種または複数の物質の沈殿を起こさせるような条件)にかける、前、途中、または後のいずれかのタイミングでCO2の供給源と接触させてもよい。したがって、いくつかの実施態様においては、炭酸塩および/または重炭酸塩化合物の生成を有利にするために、その水溶液を沈殿条件に置くより前に、二価カチオンの水溶液をCO2の供給源と接触させる。いくつかの実施態様においては、炭酸塩および/または重炭酸塩化合物の生成を有利にするために、その水溶液を沈殿条件に置いている最中に、二価カチオンの水溶液をCO2の供給源と接触させる。いくつかの実施態様においては、炭酸塩および/または重炭酸塩化合物の生成を有利にするために、その水溶液を沈殿条件に置くより前および置いている最中に、二価カチオンの水溶液をCO2の供給源と接触させる。いくつかの実施態様においては、炭酸塩および/または重炭酸塩化合物の生成を有利にするために、その水溶液を沈殿条件に置いた後に、二価カチオンの水溶液をCO2の供給源と接触させる。いくつかの実施態様においては、炭酸塩および/または重炭酸塩化合物の生成を有利にするために、その水溶液を沈殿条件に置く前、途中、および後に、二価カチオンの水溶液をCO2の供給源と接触させる。いくつかの実施態様においては、二価カチオン含有水溶液を2回以上サイクルさせてもよいが、その場合、沈殿の第一回目のサイクルでは、主として炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウム鉱物質を除去して、アルカリ性溶液が残るが、それに対して追加の二価カチオンを加えてもよい。二酸化炭素を二価カチオンのリサイクルされた溶液と接触させると、より多くの炭酸塩および/または重炭酸塩化合物を沈殿させることが可能となる。これらの実施態様においては、第一回目の沈殿サイクルの後の水溶液を、二価カチオンが添加される前、途中および/または後に、CO2供給源と接触させてもよいということは認識されるであろう。いくつかの実施態様においては、二価カチオンを含まないか、または二価カチオンの濃度が低い水溶液をCO2と接触させる。これらの実施態様においては、水はリサイクルさせてもよいし、あるいは新たに導入してもよい。したがって、CO2と金属酸化物の廃棄物源の添加順序は変えてもよい。たとえば、それらそれぞれが、二価カチオン、プロトン除去剤、またはその両方を与える、金属酸化物の廃棄物源たとえば、フライアッシュ、セメントキルンダスト、またはスラグを、たとえばブライン、海水、または淡水に加え、その後でCO2を添加してもよい。また別な例においては、CO2を、たとえばブライン、海水、または淡水に加え、その後で、フライアッシュ、セメントキルンダスト、またはスラグを添加してもよい。
【0068】
二価カチオン含有水溶液は、各種好都合な手順を用いて、CO2供給源と接触させればよい。そのCO2がガスである場合には、対象となる接触手順としては以下のものが挙げられる(これらに限定される訳ではない):直接接触手順(たとえば、CO2ガスを水溶液の中にバブリングさせる)、並流接触手段(すなわち、一つの方向に流れているガス相流れと液相流れとの間の接触)、向流手段(すなわち、反対方向に流れているガス相流れと液相流れとの間の接触)など。したがって、接触は、都合に合わせて、インフューザー、バブラー、流体ベンチュリー反応器、スパージャー、ガスフィルター、スプレー、トレイ、充填塔反応器などを使用して実施すればよい。いくつかの実施態様においては、フラットジェットノズルを用いて溶液の液膜(liquid sheet)を形成させ、CO2ガスとその液膜を、向流、並流、または十字流の方向、またはその他各種適切な方法で移動させることにより、気液接触を実施する。たとえば、米国特許出願第61/158,992号明細書(出願日、2009年3月10日)を参照されたい(この出願を参照することによりそのすべてを本明細書に取り入れたものとする)。いくつかの実施態様においては、500マイクロメートル以下、たとえば100マイクロメートル以下の平均直径を有する溶液の液滴をCO2ガス供給源と接触させることにより、気液接触を実施する。いくつかの実施態様においては、溶液の中への二酸化炭素の溶解を加速させるために触媒を使用して、その反応が平衡に向かうのを加速させるが、その触媒は、無機物質たとえば二塩化亜鉛もしくはカドミウム、または有機物質たとえば酵素(たとえば、炭素脱水酵素)などであってよい。
【0069】
本発明の方法においては、上述のようにして生成させたある容積のCO2をチャージした水を、炭酸塩含有沈殿物質と上澄み(すなわち、沈殿物質が沈殿した後に取り残される、沈殿反応混合物の一部)とを生成させるに十分な炭酸塩化合物の沈殿条件に置く。各種都合のよい沈殿条件を採用すればよいが、その条件は、CO2がチャージされた沈殿反応混合物から炭酸塩含有沈殿物質が生成する結果が得られるものである。沈殿条件としては、CO2がチャージされた沈殿反応混合物の物理的な環境を調節して、所望の沈殿物質が生成するようにさせる条件が挙げられる。たとえば、CO2がチャージされた沈殿反応混合物の温度を、所望の炭酸塩含有沈殿物質を沈殿させるのに適した状況となる点にまで上げてもよい。そのような実施態様においては、CO2がチャージされた沈殿反応混合物の温度を、5℃〜70℃、たとえば20℃〜50℃、たとえば25℃〜45℃の値にまで上げてもよい。所定の一連の沈殿条件に、0℃〜100℃の範囲の温度が含まれていてもよく、ある種の実施態様においては、その温度を上げて所望の沈殿物質が生成するようにしてもよい。ある種の実施態様においては、二酸化炭素排出が低いかまたはゼロの供給源(たとえば、太陽エネルギー供給源、風力エネルギー供給源、水力発電エネルギー供給源、炭素排出装置の煙道ガスからの廃熱など)から発生するエネルギーを使用して、沈殿反応混合物の温度を上昇させる。いくつかの実施態様においては、石炭またはその他の燃料の燃焼からの煙道ガスからの熱を利用して、沈殿反応混合物の温度を上昇させてもよい。CO2がチャージされた沈殿反応混合物のpHを、所望の炭酸塩含有沈殿物質を沈殿させるのに適したpHとなるまで上げてもよい。そのような実施態様においては、そのCO2がチャージされた沈殿反応混合物のpHを、沈殿をさせるためのアルカリ性のレベルにまで上げるが、その炭酸塩が重炭酸塩であるのが好ましい。pHは、pH9以上、たとえばpH10以上、たとえばpH11以上に上げてもよい。たとえば、沈殿反応混合物または沈殿反応混合物の前駆体のpHを上げるためにフライアッシュを使用する場合には、そのpHをpH約12.5以上としてもよい。
【0070】
従って、沈殿反応混合物から所望の沈殿物質を生成させるための一連の沈殿条件には、上述のように、温度およびpH、さらには場合によっては、水中の添加物およびイオン性化学種の濃度が含まれる。沈殿条件にはさらに、次のような因子も含まれていてよい:混合速度、撹拌の形態(たとえば超音波)、ならびに、シード結晶、触媒、膜、または基材の存在。いくつかの実施態様においては、沈殿条件には、過飽和条件、温度、pH、および/または濃度勾配、またはこれらのパラメーターの各種繰り返しもしくは変更などが含まれる。本発明において炭酸塩含有沈殿物質を調製するために採用される手順(出発点のたとえばフライアッシュの消和から、終了点のたとえば、沈殿物質の乾燥または、沈殿物質の骨材への成形まで)は、バッチ式であっても、セミバッチ式であっても、または連続式手順であってもよい。セミバッチ式またはバッチ式システムに比較して、連続フローシステムにおいては、所定の沈殿物質を生成させるための沈殿条件が異なっていてもよいということは認識されるであろう。
【0071】
炭酸塩含有沈殿物質は、沈殿反応混合物から生成した後で、その反応混合物から分離されて、図1に見られるように、分離された沈殿物質(たとえば、ウェットケーキ)と上澄みとになる。沈殿物質は、ある程度の時間のあいだは上澄みの中に貯蔵し、その後で沈殿し、(たとえば、乾燥により)分離してもよい。たとえば、沈殿物質は上澄みの中に、1〜1000日以上、たとえば1〜10日以上の範囲の期間、1℃〜40℃、たとえば20℃〜25℃の範囲の温度で貯蔵してもよい。沈殿反応混合物からの沈殿物質の分離は、数多くの好都合なアプローチ方法のいずれかを使用して実施するが、そのような方法としては以下のものが挙げられる:水切り法(たとえば、沈殿物質を重力沈降させてから、水切りをする)、デカント法、濾過法(たとえば、重力濾過法、真空濾過法、強制空気を使用した濾過法)、遠心分離法、加圧法、またはそれらの各種組合せ。沈殿物質からバルクの水を分離すると、沈殿物質のウェットケーキ、または脱水した沈殿物質が生成する。米国特許出願第61/170086号明細書(出願日、2109年4月16日、参照することにより本明細書に取り入れたものとする)に詳細が記述されているように、液固分離機たとえば、EpuramatのExtrem−Separator(「ExSep」)液固分離機、Xerox PARCのスパイラル濃縮機、またはEpuramatのExSepもしくはXerox PARCのスパイラル濃縮機のいずれかを改良したものが、沈殿反応混合物から沈殿物質を分離するには有用である。
【0072】
いくつかの実施態様においては、そうして得られた脱水された沈殿物質を次いで、乾燥させて、製品(たとえば、セメント、ポゾランセメント、骨材、または非反応性で貯蔵安定性のあるCO2封鎖(CO2−sequestering)製品)を製造する。乾燥は、その沈殿物質を通気乾燥させることによって実施してもよい。沈殿物質を通気乾燥させる場合、その通気乾燥は、−70℃〜120℃の範囲の温度で実施するのがよい。ある種の実施態様においては、凍結乾燥(freeze−drying、すなわちlyophilization)によって乾燥を実施するが、この場合、沈殿物質を凍結させ、周囲圧力を減圧し、沈殿物質中の凍結した水が、直接気体として昇華するのに十分な熱を加える。さらにまた別な実施態様においては、沈殿物質をスプレー乾燥させて沈殿物質を乾燥させるが、この場合、高温のガス(たとえば、発電所からのガス状の廃棄物流れ)の中に沈殿物質を含む液体をフィードすることにより乾燥させるが、その液体のフィード物はポンプで主乾燥チャンバーの中にアトマイザーを通過させ、高温ガスは、そのアトマイザーの方向と並流または向流で通過させる。システムの特定の乾燥手順に応じて、乾燥ステーション(以下において詳述)には、濾過要素、凍結乾燥構造、スプレー乾燥構造などが含まれていてもよい。ある種の実施態様においては、適切であるならば、発電所または類似の設備からの廃熱を使用して、乾燥工程を実施してよい。たとえば、いくつかの実施態様においては、高温(たとえば、発電所からの廃熱)、圧力、またはそれらの組合せを使用して、骨材を製造する。
【0073】
沈殿物質を上澄みから分離した後で、所望により、その分離した沈殿物質をさらに加工してもよいが、その沈殿物質を、長期間の貯蔵ができ、CO2を封鎖するための場所に単に移送してもよい。たとえば、その炭酸塩含有沈殿物質を、長期貯蔵サイト、たとえば、地上(貯蔵安定性のあるCO2封鎖物質として)、地下、深海中などに移送して、保管してもよい。
【0074】
沈殿プロセスの結果得られた上澄み、または沈殿物質のスラリーは、所望により加工してもよい。たとえば、その上澄みまたはスラリーを、二価カチオン含有水溶液の供給源(たとえば、海洋)または別な場所に戻してもよい。いくつかの実施態様においては、その上澄みをCO2の供給源と接触させて、先に説明したように、さらなるCO2を封鎖してもよい。たとえば、上澄みを海洋に戻す実施態様においては、その上澄み中に存在する炭酸塩の濃度を上昇させるに十分な方法で、その上澄みをガス状のCO2廃棄物源と接触させてもよい。先に説明したように、接触は、各種好都合な手順を用いて実施すればよい。いくつかの実施態様においては、その上澄みがアルカリ性のpHを有していて、CO2供給源との接触を、そのpHが、pH5〜9、pH6〜8.5、またはpH7.5〜8.2の範囲に低下するような方法で実施する。
【0075】
本発明の方法は、次のような場所で実施してよい:地上(たとえば、適切な二価カチオン含有供給源が存在しているか、または容易かつ低コストで運び込める場所で)、海で、海洋中、または、その他二価カチオンが含まれる集合体(body)(その集合体は天然由来のものであっても人工のものであってもよい)。いくつかの実施態様においては、上述の方法を実施するためにはシステムを採用するが、そのようなシステムには、以下においてさらに詳しく説明するようなものが含まれる。
【0076】
本発明のいくつかの実施態様においては、唯一のまたは主な二価カチオンの供給源、および/または炭酸塩含有沈殿物質を沈殿させるためのプロトン除去剤として、フライアッシュを使用する。そのような実施態様においては、水(たとえば、淡水、海水、ブライン)を用いてフライアッシュを消和させて、消和されたフライアッシュ混合物を生成させてよいが、その消和されたフライアッシュ混合物のpHは、pH7〜14、pH8〜14、pH9〜14、pH10〜14、pH11〜14、pH12〜14、またはpH13〜14であってよい。そのような消和されたフライアッシュ混合物においては、水の中のフライアッシュ濃度は、1〜10g/L、10〜20g/L、20〜30g/L、30〜40g/L、40〜80g/L、80〜160g/L、160〜320g/L、320〜640g/L、または640〜1280g/Lの間とするのがよく、さらに消和温度は、室温(約70゜F)〜約220゜F、70〜100゜F、100〜220゜F、120〜220゜F、140〜220゜F、160〜220゜F、160〜200゜F、または160〜185゜Fとするのがよい。抽出、およびCaOからCa(OH)2への転換を最適化させるには、高剪断混合、湿式摩砕、および/または超音波処理を使用して、フライアッシュの空孔(open spheres)を破壊して、閉じ込められているCaOに到達できるようにするのがよい。高剪断混合、湿式摩砕、および/または超音波処理することは、フライアッシュの母材(たとえば、SiO2母材)の中に閉じ込められているCaOへの到達を与えることに加えて、セメント、ポゾランセメント、および関連の最終製品の強度を向上させる。高剪断混合および/または湿式摩砕をした後で、消和されたフライアッシュ混合物を、(フライアッシュ混合物の希釈をするか、またはせずに)二酸化炭素の供給源、たとえば石炭専焼火力発電所からの煙道ガスまたはセメントキルンからの排気ガスと、接触させる。先に述べた多くの気液接触手順のいずれかを利用すればよい。沈殿反応混合物のpHが一定になるまで気液接触を続け、その後でその沈殿反応混合物を一夜撹拌させておく。pHを低下させる速度は、気液接触の間に補助的なフライアッシュを加えることによって調節すればよい。さらに、通気の後で、補助的なフライアッシュを添加して、pHを上げて沈殿物質の一部または全部を沈殿させるための塩基性レベルにまで戻してもよい。いずれの場合においても、沈殿反応混合物中のある種の化学種(たとえば、炭酸、重炭酸塩、ヒドロニウム)からプロトンを除去することで、沈殿物質を生成させることができる。次いで、炭酸塩およびシリカ質化合物を含む沈殿物質を分離し、場合によってはさらに加工すればよい。
【0077】
上述のように、本発明のいくつかの実施態様においては、唯一のまたは主な二価カチオンの供給源、および/または炭酸塩含有沈殿物質を沈殿させるためのプロトン除去剤として、フライアッシュを使用する。そのような実施態様においては、水(たとえば、淡水、海水、ブライン)を用いてフライアッシュを消和させて、消和されたフライアッシュ混合物を生成させてよいが、その消和されたフライアッシュ混合物のpHは、pH7〜14、pH8〜14、pH9〜14、pH10〜14、pH11〜14、pH12〜14、またはpH13〜14であってよい。そのような消和されたフライアッシュ混合物においては、水の中のフライアッシュ濃度は、1〜10g/L、10〜20g/L、20〜30g/L、30〜40g/L、40〜80g/L、80〜160g/L、160〜320g/L、320〜640g/L、または640〜1280g/Lの間とするのがよく、さらに消和温度は、室温(約70゜F)〜約220゜F、70〜100゜F、100〜220゜F、120〜220゜F、140〜220゜F、160〜220゜F、160〜200゜F、または160〜185゜Fとするのがよい。上述のように、抽出およびCaOからCa(OH)2への転換は、高剪断混合および/または湿式摩砕を用いることで最適化することができる。しかしながら、いかなる追加の加工の後でも、フライアッシュを消和されたフライアッシュ混合物から分離して、乾燥させてポゾラン(下記参照)として使用可能であるフライアッシュスラッジと、二価カチオンおよび炭酸塩含有沈殿物質を沈殿させるためのプロトン除去剤を含む上澄みとを生成させてよい。次いでその上澄みを、(フライアッシュ混合物の希釈をするか、またはせずに)二酸化炭素の供給源、たとえば石炭専焼火力発電所からの煙道ガスまたはセメントキルンからの排気ガスと接触させてもよい。pHが一定になるまで気液接触を続け、その後でその沈殿反応混合物を一夜撹拌させておく。pHが低下する速度は、気液接触の間に補助的なフライアッシュを加えることによって調節すばよい。さらに、気液接触の後で、補助的なフライアッシュを添加して、pHを上げて沈殿物質の一部または全部を沈殿させるための塩基性レベルにまで戻してもよい。いずれの場合においても、沈殿反応混合物中のある種の化学種(たとえば、炭酸、重炭酸塩、ヒドロニウム)からプロトンを除去することで、沈殿物質を生成させることができる。次いで、炭酸塩を含む沈殿物質を分離し、場合によってはさらに加工すればよい。たとえば、シリカ質の物質をほとんどまたはまったく含まない炭酸塩含有沈殿物質は、乾燥させて、最終製品に使用してもよい。炭酸塩含有沈殿物質は、それとは異なり、分離されたフライアッシュスラッジと組み合わせるのがよいが、その場合、その沈殿物質とフライアッシュスラッジとを湿式混合するか、乾燥させるか、またはその両方を組み合わせて、炭酸塩を含むシリカ質組成物を生成させる。そのような物質は、ウェット(すなわち、フライアッシュスラッジ)またはドライ(すなわち、乾燥フライアッシュスラッジ)なフライアッシュベースのポゾランの添加から誘導される、ポゾラン的な性質を有することができる。
【0078】
本発明のいくつかの実施態様においては、二価カチオンの供給源、および/または炭酸塩含有沈殿物質を沈殿させるためのプロトン除去剤と組み合わせて、フライアッシュを使用する。そのような実施態様においては、水(たとえば、淡水、海水、ブライン)を用いてフライアッシュを消和させて、消和されたフライアッシュ混合物を生成させるのがよい。次いで、その消和されたフライアッシュ混合物に補助的なプロトン除去剤を添加して、高pHの消和されたフライアッシュ混合物を生成させてもよいが、その場合、その高pHの消和されたフライアッシュ混合物のpHは、pH7〜14、pH8〜14、pH9〜14、pH10〜14、pH11〜14、pH12〜14、またはpH13〜14とするのがよく、また、フライアッシュは完全に溶解させても、あるいはいくぶんかその程度を変えて溶解させてもよい。たとえば、補助的なプロトン除去剤を添加することによって、75%のフライアッシュが溶解するようにしてもよい。そのような消和されたフライアッシュ混合物においては、水の中のフライアッシュ濃度は、1〜10g/L、10〜20g/L、20〜30g/L、30〜40g/L、40〜80g/L、80〜160g/L、160〜320g/L、320〜640g/L、または640〜1280g/Lの間とするのがよく、さらに消和温度は、室温(約70゜F)〜約220゜F、70〜100゜F、100〜220゜F、120〜220゜F、140〜220゜F、160〜220゜F、160〜200゜F、または160〜185゜Fとするのがよい。各種未溶解のフライアッシュの溶解を容易とするために、高剪断混合および/または湿式摩砕を用いてフライアッシュの空孔を破壊して、より小さなフライアッシュ粒子が得られるようにしてもよい。高剪断混合および/または湿式摩砕をした後で、消和されたフライアッシュ混合物を、(フライアッシュ混合物の希釈をするか、またはせずに)二酸化炭素の供給源、たとえば石炭専焼火力発電所からの煙道ガスまたはセメントキルンからの排気ガスと、接触させてもよい。先に述べた多くの気液接触手順のいずれかを利用すればよい。pHが一定になるまで気液接触を続け、その後でその沈殿反応混合物を一夜撹拌させておいてもよい。pHが低下する速度は、気液接触の間に補助的なフライアッシュまたはその他の補助的なプロトン除去剤を加えることによって調節すればよい。さらに、気液接触の後で、補助的なフライアッシュを添加して、pHを上げて沈殿物質の一部または全部を沈殿させるための塩基性レベルにまで戻してもよい。いずれの場合においても、沈殿反応混合物中のある種の化学種(たとえば、炭酸、重炭酸塩、ヒドロニウム)からプロトンを除去することで、沈殿物質を生成させることができる。次いで、炭酸塩およびシリカ質化合物を含む沈殿物質を分離し、場合によってはさらに加工すればよい。
【0079】
したがって、提供されるのは、水溶液を工業プロセスからの金属酸化物の供給源と接触させる工程;その水溶液に工業プロセスからの二酸化炭素の供給源からの二酸化炭素をチャージする工程;およびその水溶液を大気圧下の沈殿条件に置いて、炭酸塩含有沈殿物質を生成させる工程、を含む方法である。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源とその二酸化炭素の供給源が、同一の工業プロセスからのものである。いくつかの実施態様においては、水溶液を金属酸化物の供給源と接触させることを、水溶液に二酸化炭素の供給源をチャージすることよりも前に行わせる。いくつかの実施態様においては、水溶液を金属酸化物の供給源と接触させることを、水溶液に二酸化炭素の供給源をチャージするのと同時に行わせる。いくつかの実施態様においては、水溶液を金属酸化物の供給源と接触させることと、その水溶液に二酸化炭素の供給源をチャージすることと、その水溶液を沈殿条件に置くこととを、同時に行わせる。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源とその二酸化炭素の供給源が、同一の廃棄物流れから供給される。いくつかの実施態様においては、その廃棄物流れが、石炭専焼火力発電所からの煙道ガスである。いくつかの実施態様においては、その石炭専焼火力発電所が褐炭専焼火力発電所である。いくつかの実施態様においては、その廃棄物流れが、セメントプラントからのキルン排出物である。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、フライアッシュである。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、セメントキルンダストである。いくつかの実施態様においては、その廃棄物流れに、SOx、NOx、水銀、またはそれらの各種組合せがさらに含まれる。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、沈殿物質を生成させるための二価カチオンをさらに与える。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源とその水溶液の両方に、沈殿物質を生成させるための二価カチオンを含む。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、フライアッシュまたはセメントキルンダストである。いくつかの実施態様においては、その水溶液が、ブライン、海水、または淡水を含む。いくつかの実施態様においては、その二価カチオンが、Ca2+、Mg2+、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、沈殿物質を生成させるためのプロトン除去剤を与える。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、その水溶液中においてCaO、MgO、またはそれらの組合せを水和させて、プロトン除去剤を与える。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、シリカをさらに与える。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、アルミナをさらに与える。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、酸化第二鉄をさらに与える。いくつかの実施態様においては、ボーキサイト加工からの赤泥または褐泥が、プロトン除去剤をも与える。いくつかの実施態様においては、プロトン除去に影響する電気化学的方法が、沈殿物質の生成をさらに与える。
【0080】
いくつかの実施態様においては、その方法に、沈殿物質が生成した水溶液から沈殿物質を分離する工程をさらに含む。いくつかの実施態様においては、その沈殿物質に、CaCO3を含む。いくつかの実施態様においては、CaCO3に、方解石、あられ石、バテライト、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施態様においては、その沈殿物質に、MgCO3をさらに含む。いくつかの実施態様においては、そのCaCO3にあられ石を含み、そのMgCO3にネスケホナイトを含む。いくつかの実施態様においては、その方法に、その沈殿物質を加工して建築材料を形成させることを含む。いくつかの実施態様においては、その建築材料が水硬セメントである。いくつかの実施態様においては、その建築材料がポゾランセメントである。いくつかの実施態様においては、その建築材料が骨材である。
【0081】
さらに提供されるのは、水溶液を二酸化炭素を含む廃棄物流れおよび金属酸化物を含む供給源と接触させる工程、ならびにその水溶液を沈殿条件に置いて炭酸塩含有沈殿物質を生成させる工程、を含む方法である。いくつかの実施態様においては、その廃棄物流れが、石炭専焼火力発電所からの煙道ガスである。いくつかの実施態様においては、その石炭専焼火力発電所が褐炭専焼火力発電所である。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、フライアッシュである。いくつかの実施態様においては、その廃棄物流れが、セメントプラントからのキルン排出物である。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、セメントキルンダストである。いくつかの実施態様においては、その廃棄物流れに、SOx、NOx、水銀、またはそれらの各種組合せがさらに含まれる。いくつかの実施態様においては、沈殿物質を生成させるための二価カチオンが、金属酸化物の供給源、水溶液、またはそれらの組合せにより与えられる。いくつかの実施態様においては、その水溶液が、ブライン、海水、または淡水を含む。いくつかの実施態様においては、その二価カチオンが、Ca2+、Mg2+、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、沈殿物質を生成させるためのプロトン除去剤をさらに与える。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、その水溶液中においてCaO、MgO、またはそれらの組合せを水和させて、プロトン除去剤を与える。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、シリカをさらに与える。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、アルミナをさらに与える。いくつかの実施態様においては、その金属酸化物の供給源が、酸化第二鉄をさらに与える。いくつかの実施態様においては、ボーキサイト加工からの赤泥または褐泥が、プロトン除去剤をも与える。いくつかの実施態様においては、プロトン除去に影響する電気化学的方法が、沈殿物質の生成をさらに与える。いくつかの実施態様においては、その沈殿物質に、CaCO3を含む。いくつかの実施態様においては、CaCO3に、方解石、あられ石、バテライト、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施態様においては、その方法に、沈殿物質が生成した水溶液から沈殿物質を分離する工程をさらに含む。いくつかの実施態様においては、その方法に、その沈殿物質を加工して建築材料を形成させることを含む。いくつかの実施態様においては、その建築材料が水硬セメントである。いくつかの実施態様においては、その建築材料がポゾランセメントである。いくつかの実施態様においては、その建築材料が骨材である。
【0082】
組成物およびその他の生成物
本発明は、金属酸化物の廃棄物源を利用して、CO2から炭酸塩含有組成物を生成させるための方法およびシステムを提供するが、ここでそのCO2は、広く各種の供給源(たとえば産業廃棄副生物、たとえば発電所で炭素系燃料を燃焼させることにより発生するガス状の廃棄物流れ)からのものであってよい。したがって、本発明は、CO2のガス状の廃棄物源からCO2を除去または分離する方法、およびそのCO2を非ガス状で、貯蔵安定性のある形態(たとえば、ビルディングおよびインフラストラクチャーのような構造物を建設するための材料、さらには構造物そのもの)に固定して、そのCO2を大気中に逃がさないようにする方法を提供する。さらに、本発明は、CO2を封鎖するため、さらにはCO2を使用可能な製品の中に長期貯蔵するために、有効な方法をも提供する。
【0083】
貯蔵安定性のある形態にある沈殿物質(それは、単に乾燥させただけの沈殿物質であってもよい)は、たとえば、1年以上、5年以上、10年以上、25年以上、50年以上、100年以上、250年以上、1000年以上、10,000年以上、1,000,000年以上、またはさらには100,000,000年以上の長期間(たとえあるとしても)顕著な分解を起こすことなく、露出された(すなわち、大気に開放された)条件下で地上に貯蔵されてもよい。その沈殿物質の貯蔵安定性のある形態では、通常の雨水のpHの条件下で地上に貯蔵している間にも(たとえあるとしても)わずかしか分解しないので、その生成物から放出されるCO2ガスとして測定した(もしあるとしたときの)分解の量は、5%/年を超えない、ある種の実施態様において1%/年を超えないであろう。その沈殿物質の地上での貯蔵安定性のある形態は、各種異なった環境条件下、たとえば、−100℃〜600℃の範囲の温度および0〜100%の範囲の湿度では安定であり、その天候条件は晴天であっても、風が強くても、嵐であってもよい。いくつかの実施態様においては、本発明の方法によって生成した沈殿物質を、建築材料(たとえば各種のタイプの人工構造物、たとえばビルディング、道路、橋梁、ダムなどのための建設材料)として採用して、その建設された環境の中にCO2を効果的に封じ込める。各種の人工構造物、たとえば基礎、駐車場構造物、家屋、オフィスビルディング、商用オフィス、官庁ビルディング、インフラストラクチャー(たとえば、舗道;道路;橋梁;オーバーパス;壁;門、フェンスおよびポールのための基礎;など)が、建築環境の一部と考えられる。本発明のモルタルは、建材ブロック(たとえば、煉瓦)をつなぎ合わせ、建材ブロックの間の隙間を充填するという用途が見出されている。モルタルは、各種の用途がある内でも特に、既存の構造物を固定する(たとえば、もともとのモルタルが傷んだり、脆くなったりした部分を置き換える)のに使用することもできる。
【0084】
ある種の実施態様においては、その炭酸塩含有組成物を、水硬セメントの成分として採用するが、そのものは、水と組み合わせた後では、凝結し、硬化する。沈殿物質をセメントおよび水と組み合わせることによって得られる製品の凝結および硬化が、セメントと水とが反応して形成される水和物をもたらすが、ここで、その水和物は、水には事実上溶解しない。そのような炭酸塩化合物の水硬セメント、それを製造するための方法、および使用は、米国特許出願第12/126,776号明細書(発明の名称:「Hydraulic Cements Comprising Carbonate Compounds Composition」、出願日:2008年5月23日)に記載がある(この出願の開示は、参照することにより本明細書に取り入れたものとする)。
【0085】
沈殿をさせるときの主たるイオンの比率を調節することで、沈殿物質の性質を変えることができる。主たるイオンの比率は、多形体の生成にかなりの影響を与える。たとえば、水中でのマグネシウム:カルシウムの比率を高くしていくと、低マグネシウムの方解石よりも、あられ石が沈殿物質中の炭酸カルシウムの多形体が主成分となっていく。マグネシウム:カルシウムの比率が低いと、低マグネシウムの方解石が主たる多形体となる。いくつかの実施態様においては、Ca2+とMg2+との両方が存在している場合には、その沈殿物質におけるCa2+のMg2+に対する比率(すなわち、Ca2+:Mg2+)が、(1:1)〜(1:2.5)、(1:2.5)〜(1:5)、(1:5)〜(1:10)、(1:10)〜(1:25)、(1:25)〜(1:50)、(1:50)〜(1:100)、(1:100)〜(1:150)、(1:150)〜(1:200)、(1:200)〜(1:250)、(1:250)〜(1:500)、または(1:500)〜(1:1000)である。いくつかの実施態様においては、その沈殿物質におけるMg2+のCa2+に対する比率(すなわち、Mg2+:Ca2+)が、(1:1)〜(1:2.5)、(1:2.5)〜(1:5)、(1:5)〜(1:10)、(1:10)〜(1:25)、(1:25)〜(1:50)、(1:50)〜(1:100)、(1:100)〜(1:150)、(1:150)〜(1:200)、(1:200)〜(1:250)、(1:250)〜(1:500)、または(1:500)〜(1:1000)である。
【0086】
沈殿速度もまた、化合物相の形成には大きな影響があるが、最も急速な沈殿速度は、所望の相を含む溶液をシーディングさせることによって達成される。シーディングを用いない場合では、沈殿反応混合物のpHを急速に上げることによって急速な沈殿を達成することができるが、その場合には、より非晶質な成分が得られる。反応速度が速いほど、シリカが沈殿反応混合物の中に存在しているならば、より多くのシリカが炭酸塩含有沈殿物質の中に組み入れられる。さらに、pHが高いほど、沈殿がより急速となり、より非晶質な沈殿物質が生成する。
【0087】
沈殿反応のマグネシウム含有およびカルシウム含有生成物に加えて、ケイ素、アルミニウム、鉄、およびその他のものを含む化合物および物質を、本発明の方法およびシステムを用いて、調製してもよい。そのような化合物の沈殿は、そのプロセスから得られた沈殿物質を含むセメントの反応性を変化させたり、それらから製造したセメントおよびコンクリートの硬化物の性質を変化させたりするのには望ましい。いくつかの実施態様においては、燃焼アッシュたとえばフライアッシュを沈殿反応混合物に、それらの成分の一つの供給源として添加して、1種または複数の成分たとえば、非晶質シリカ、非晶質アルミノシリケート、結晶質シリカ、ケイ酸カルシウム、カルシウムアルミナシリケートなどを含む、炭酸塩含有沈殿物質を生成させる。いくつかの実施態様においては、その沈殿物質が、炭酸塩(たとえば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム)およびシリカを、以下の比率の炭酸塩:シリカで含む:(1:1)〜(1:1.5)、(1:1.5)〜(1:2)、(1:2)〜(1:2.5)、(1:2.5)〜(1:3)、(1:3)〜(1:3.5)、(1:3.5)〜(1:4)、(1:4)〜(1:4.5)、(1:4.5)〜(1:5)、(1:5)〜(1:7.5)、(1:7.5)〜(1:10)、(1:10)〜(1:15)、または(1:15)〜(1:20)。いくつかの実施態様においては、その沈殿物質が、シリカおよび炭酸塩(たとえば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム)、以下の比率のシリカ:炭酸塩で含む:(1:1)〜(1:1.5)、(1:1.5)〜(1:2)、(1:2)〜(1:2.5)、(1:2.5)〜(1:3)、(1:3)〜(1:3.5)、(1:3.5)〜(1:4)、(1:4)〜(1:4.5)、(1:4.5)〜(1:5)、(1:5)〜(1:7.5)、(1:7.5)〜(1:10)、(1:10)〜(1:15)、または(1:15)〜(1:20)。
【0088】
シリカおよびアルミノシリケートを含む沈殿物質は、微細なシリカ質および/またはアルミノシリカ質物質が存在しているために、セメントおよびコンクリート産業においてポゾランセメントとして容易に採用することができる。シリカ質および/またはアルミノシリカ質の沈殿物質は、ポルトランドセメントと共に使用してブレンドセメントを製造したり、コンクリート混合物の中への直接的な鉱物質混合物として使用してもよい。いくつかの実施態様においては、沈殿物質単独であっても、あるいは追加のフライアッシュおよび/またはウェットもしくはドライなフライアッシュスラッジと共に混合してもよい、ポゾラン的な物質には、カルシウムとマグネシウムとを、得られる水和生成物の凝結時間、剛化性、および長期間安定性を完璧なものとするような比率(上述)で含む。炭酸塩の結晶性、沈殿物質中における塩化物、アルカリなどの濃度を調節することによって、ポルトランドセメントとの相互作用を改良してもよい。いくつかの実施態様においては、シリカ質沈殿物質には、シリカを含むが、ここでそのシリカの10〜20%、20〜30%、30〜40%、40〜50%、50〜60%、60〜70%、70〜80%、80〜90%、90〜95%、95〜98%、98〜99%、99〜99.9%が、(たとえば、最大寸法で)45ミクロン未満の粒子サイズを有する。いくつかの実施態様においては、シリカ質沈殿物質には、アルミノシリカを含むが、ここでそのアルミノシリカの10〜20%、20〜30%、30〜40%、40〜50%、50〜60%、60〜70%、70〜80%、80〜90%、90〜95%、95〜98%、98〜99%、99〜99.9%が、45ミクロン未満の粒子サイズを有する。いくつかの実施態様においては、シリカ質沈殿物質には、シリカとアルミノシリカとの混合物を含むが、ここでその混合物の10〜20%、20〜30%、30〜40%、40〜50%、50〜60%、60〜70%、70〜80%、80〜90%、90〜95%、95〜98%、98〜99%、99〜99.9%が、(たとえば、最大寸法で)45ミクロン未満の粒子サイズを有する。
【0089】
したがって、提供されるのは、合成炭酸カルシウムを含むシリカ質組成物であるが、ここでその炭酸カルシウムは、方解石、あられ石、およびバテライトから選択される少なくとも二つの形態で存在している。いくつかの実施態様においては、炭酸カルシウムのその少なくとも二つの形態が、方解石およびあられ石である。いくつかの実施態様においては、方解石とあられ石とが、20:1の比率で存在している。いくつかの実施態様においては、炭酸カルシウムとシリカとが、少なくとも1:2の炭酸塩対シリカの比率で存在している。いくつかの実施態様においては、そのシリカの75%が、粒子サイズが45ミクロン未満の非晶質シリカである。いくつかの実施態様においては、シリカ粒子が、合成炭酸カルシウムまたは合成炭酸マグネシウムによって、全面的または部分的に封入されている。
【0090】
さらに提供されるのは、合成炭酸カルシウムおよび合成炭酸マグネシウムを含むシリカ質組成物であるが、ここでその炭酸カルシウムが、方解石、あられ石、およびバテライトから選択される少なくとも一つの形態で存在し、そしてここでその炭酸マグネシウムが、ネスケホナイト、マグネサイト、およびハイドロマグネサイトから選択される少なくとも一つの形態で存在している。いくつかの実施態様においては、その炭酸カルシウムがあられ石として存在し、その炭酸マグネシウムがネスケホナイトとして存在している。いくつかの実施態様においては、シリカが、20%以下のシリカ質組成物を含む。いくつかの実施態様においては、シリカが、10%以下のシリカ質組成物を含む。いくつかの実施態様においては、シリカ粒子が、合成炭酸カルシウムまたは合成炭酸マグネシウムによって、全面的または部分的に封入されている。
【0091】
いくつかの実施態様においては、その得られた沈殿物質から、骨材が製造される。そのような実施態様においては、乾燥プロセスによって所望のサイズの粒子が生成するが、骨材を製造するための追加のプロセスが必要とすることは、あるとしても極めて少ない。さらに他の実施態様においては、沈殿物質にさらなる加工を実施して、所望の骨材を製造する。たとえば、沈殿物に固体生成物の形成を起こさせるに十分な条件で沈殿物質を淡水と組み合わせてもよいが、ここで、その沈殿物の中に存在していた準安定な炭酸塩化合物は、淡水の中で安定な形態に転換させておく。そのウェットな物質の水含量を調節することによって、最終的な骨材の多孔度、最終的な強度および密度を調節してもよい。典型的には、ウェットケーキは、40〜60容積%の水を含むであろう。より密度の高い骨材とするためには、ウェットケーキを水分50%未満とし、より密度の低いケーキとするためには、ウェットケーキの水分が50%を超えるようにする。硬化させてから、生成した固体生成物を機械的に加工、たとえば、圧潰その他の方法で破砕し、分類して所望の特性たとえばサイズ、特定の形状などを有する骨材を製造すればよい。これらのプロセスにおいては、凝結および機械的加工の工程は、実質的に連続の方式で実施してもよいし、あるいは別なタイミングで実施してもよい。ある種の実施態様においては、大量の沈殿物を野外環境に貯蔵して、そこでその沈殿物を大気に暴露させてもよい。凝結工程では、その沈殿物を、都合のよい方式で淡水を注水したり、自然にまたは意図的に雨にうたせたりして、凝結生成物を製造できるようにする。そのようにして凝結させた生成物を、次いで上述のようにして機械的に加工してもよい。沈殿物を生成させた後に、その沈殿物を加工して、所望の骨材を製造する。いくつかの実施態様においては、その沈殿物を、雨水を淡水供給源として使用することが可能な屋外に放置してもよいが、それによって天水安定化(meteoric water stabilization)反応を起こさせ、その沈殿物を硬化させて骨材を形成させる。
【0092】
本発明の一つの実施態様の一例においては、その沈殿物を、ベルトコンベヤーおよびハイウェイグレーダーを使用して、圧縮された地表の上に目的とする深さ、たとえば12インチまで、たとえば1〜12インチ、たとえば6〜12インチになるまで、機械的に均一に散布する。次いで、その散布した物質に、淡水を用いて、適切な割合、たとえば沈殿物1立方フィートあたり1.5ガロンの水を注水する。次いでその物質を、スチールローラー、たとえばアスファルトを圧縮するために使用されるようなものを用いて、何回もかけて圧縮する。その表面に弱塩基性のものを再注水し、その物質が所望の化学的および機械的性質を示すまで続けると、その時点でその材料を機械的に加工して、破砕により骨材とする。
【0093】
本発明のさらなる実施態様の一例においては、沈殿反応混合物から一旦分離した炭酸塩含有沈殿物質を、淡水を用いて洗浄し、次いでフィルタープレスにかけて、固形分が30〜60%のフィルターケーキを生成させる。次いでこのフィルターケーキを、各種好都合な手段、たとえば油圧プレスを使用して、適切な圧力たとえば、5〜5000psi、たとえば1000〜5000psiをかけて、型の中で機械的に圧縮して、成形固形物たとえば、直方体の煉瓦を形成させる。次いで、このようにして得られた固形物を、たとえば、屋外に置いて放置したり、それらに高湿高温を与えるチャンバーの中に置いたりなどして、硬化させる。そのようにして得られた硬化固形物を、次いで、そのままで建築材料とするか、あるいは破砕して骨材を製造する。そのような骨材を製造する方法は、米国特許出願第12/475,378号明細書(出願日、2009年5月29日)に記載がある(この出願の開示は、参照することにより本明細書に取り入れたものとする)。
【0094】
温度および圧力の使用を含むプロセスにおいては、その脱水された水性沈殿物のケーキは、一般的には、まず乾燥させる。次いでそのケーキを、水の再添加と、所定時間のあいだ温度および/または圧力を上昇させることとを組み合わせたものに、暴露させる。再添加した水の量、温度、圧力、および暴露時間、さらにはケーキの厚みの組合せは、出発物質の組成および所望する結果に従って、変化させることができる。その物質を温度および圧力に暴露させる各種多くの方法が、本明細書に記載されており、いずれか好都合な方法を使用すればよいということは認識されるであろう。乾燥手順の一例としては、40℃における24〜48時間の暴露が挙げられるが、温度と時間は都合に応じて増減してよく、たとえば、20〜60℃で3〜96時間またはそれ以上としてもよい。水を再添加して、所望のパーセンテージ、たとえば1%〜50%、たとえば1%〜10%、たとえば1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10%(w/w)、たとえば5%(w/w)、または4〜6%(w/w)、または3〜7%(w/w)とする。いくつかの場合においては、屋外に貯蔵されて天水沈殿(meteoric precipitation)に暴露されている物質のように、再添加する水の正確な量はあまり重要ではない。ケーキの厚みとサイズは、所望により決めてよい。その厚みは、いくつかの実施態様においては、0.05インチ〜5インチ、たとえば、0.1〜2インチ、または0.3〜1インチの間で変化させることができる。いくつかの実施態様においては、そのケーキの厚みが、0.5インチ〜6フィートまたはもっと厚いものであってよい。次いでそのケーキを、各種好都合な方法、たとえば加熱したプラテンを使用するプラテンプレスなどによって、所定の時間、高い温度および/または圧力に暴露させる。たとえばプラテンのための、温度を上げるための熱は、たとえば、工業的な廃ガス流れたとえば煙道ガス流れからの熱によって与えればよい。その温度は各種適切な温度であってよいが、一般的には、ケーキが厚いほど高い温度が望ましく、温度範囲の例を挙げれば、40〜150℃、たとえば、60〜120℃、たとえば70〜110℃、または80〜100℃である。同様にして、圧力も、所望の結果が得られる各種適切な圧力であってよいが、圧力の例としては、1000〜100,000ポンド/平方インチ(psi)、たとえば2000〜50,000psi、または2000〜25,000psi、または2000〜20,000psi、または3000〜5000psiである。最後に、ケーキを圧縮する時間も各種適切な時間であってよく、たとえば、1〜100秒間、または1〜100分間、または1〜50分間、または2〜25分間、または1〜10,000日間である。次いで、このようにして得られた固いタブレットを、場合によっては、たとえば、屋外に置いて放置したり、それらに高湿高温を与えるチャンバーの中に置いたりなどして硬化させる。それらの、場合によっては硬化された固いタブレットを、次いで、そのままで建築材料とするか、あるいは破砕して骨材を製造する。
【0095】
温度および圧力与えるための一つの方法は、脱水および乾燥されたスラブを積み重ねることである。たとえば、そのような方法においては、脱水された沈殿物を、たとえば煙道ガスを用いて乾燥させてよく、たとえば厚み1インチ〜10フィート、または厚み1フィート〜10フィートのスラブとする。スラブを相互に積み重ねて圧力をかけるが、スラブ層の厚みが厚いほど、たとえば、10〜1000フィートまたはそれ以上、たとえば100〜5000フィートであれば、より高い圧力が得られる。所望する結果に依存して、数日間、数週間、数ヶ月、あるいはさらには数年かもしれないが、適切な時間が経過したところで、層の所定のレベルから、たとえば底部からの都市化された(citified)スラブを、たとえば採石法によって取り出し、所望に従って処理して、骨材またはその他の岩石材料を製造する。
【0096】
温度および圧力を与えるためのまた別な方法は、プレスを使用するものであるが、これについては、米国特許出願第12/475,378号明細書(出願日、2009年5月29日)により詳しく記載されている。適切なプレス、たとえばプラテンプレスを使用して、所望の温度(たとえば煙道ガスによるか、または沈殿物を生成させるためのプロセスの他の工程、たとえば電気化学的プロセスから供給される熱を使用)で、所望の時間のあいだ圧力を加えてもよい。同様な方式で、一連のローラーを使用してもよい。
【0097】
ケーキを高温高圧に暴露させるためのまた別な方法は、エクストルーダー、たとえばスクリュータイプのエクストルーダーの手段によるものであり、これまた、米国特許出願第12/475,378号明細書(出願日、2009年5月29日)に記載されている。エクストルーダーのバレルは、たとえばジャケットによって、高温を受け入れられるように装備されているが、その高温は、たとえば煙道ガスなどによって供給することができる。押出加工は、加圧操作より前に、供給原料を予備加熱および乾燥させる手段として使用してもよい。そのような加圧は、圧縮型の手段によるか、ローラーを介してか、成形された窪みを有するローラー(これは、実質的に所望するいかなる形状の骨材も与えることが可能である)を介してか、移動しながら圧縮を与えるベルトの間を通してか、あるいは各種その他の好都合な方法によって、実施することができる。別な方法として、エクストルーダーを使用して、ダイを通して材料を押出し、材料をそのダイに強制的に通過させることでそれに圧力をかけ、そして各種所望の形状を与えてもよい。いくつかの実施態様においては、炭酸塩の鉱物質沈殿物を淡水と混合してから、回転スクリューエクストルーダーのフィードセクションに入れる。そのエクストルーダーおよび/または出口のダイを加熱しておいて、そのプロセスをさらに支援させてもよい。スクリューの回転が、材料をその長さ方向に運び、スクリューのフライトデプス(flite depth)が小さくなるにつれて、圧縮する。エクストルーダーのスクリューとバレルには、バレル中のベントがさらに含まれていてもよく、バレルベントの開口と一致させたスクリューの中に減圧ゾーンを有する。加熱エクストルーダーの場合においては特に、これらのベント領域によって、運ばれている物質からのスチームを放出し、その材料からの水の除去を可能としている。
【0098】
次いで、スクリューで運ばれた材料は、ダイセクションを強制的に通過させられ、ダイセクションは材料をさらに圧縮して、成形する。ダイにおける典型的な開口は、円、楕円、正方形、長方形、台形などとすることができるが、最終的な骨材で望まれるいかなる形状でも、開口の形状を調節することによって作ることができるであろう。ダイから押し出された材料は、各種好都合な方法、たとえばフライナイフ(fly knife)によって、各種適切な長さに切断すればよい。典型的な長さは0.05インチ〜6インチとすることができるが、この範囲の外側の長さであってもよい。典型的な直径は0.05インチ〜1.0インチとすることができるが、この範囲の外側の直径であってもよい。
【0099】
加熱ダイセクションを使用すれば、炭酸塩鉱物質を固くて安定な形態へ変換させることが加速されるので、骨材の形成がより容易となる可能性がある。バインダーの場合にも、バインダーを硬化させたり凝結させたりするために、加熱ダイを使用してもよい。加熱ダイセクションにおいては通常、100℃〜600℃の温度が使用される。加熱ダイのための熱は、全面的または部分的に、沈殿物を生成させるプロセスの中で使用される煙道ガスまたはその他の工業ガスから受け取ってもよいが、この場合、煙道ガスは、最初にダイに送って、高温の煙道ガスからダイへと熱を移行させる。
【0100】
さらに他の実施態様においては、沈殿物を、インサイチューまたは現場成形構造製作で採用してもよい。たとえば、道路、舗装領域、またはその他の構造物を、たとえば、先に説明したように、沈殿物の層をたとえば地面、路床などのような基材に適用し、次いでたとえば雨の形の天然で供給される水または注水に暴露させることによってその沈殿物を水和させることによって、その沈殿物から製作してもよい。水和によって沈殿物を固化させて、所望のインサイチューまたは現場成形構造物、たとえば、道路、舗装領域などとする。たとえば、より厚いインサイチューで形成された構造物が望まれるような場合には、そのプロセスを繰り返してもよい。
【0101】
システム
本発明の態様にはさらに、上述のような方法を実施するためのシステム、たとえば加工プラントまたは工場も含まれる。本発明のシステムには、対象となる特定の製造方法の実施を可能とする各種の構成が含まれていてよい。いくつかの実施態様においては、そのシステムが、1トン/日を超える量で炭酸塩含有沈殿物質を製造するように構成されている。いくつかの実施態様においては、そのシステムが、10トン/日を超える量で炭酸塩含有沈殿物質を製造するように構成されている。いくつかの実施態様においては、そのシステムが、100トン/日を超える量で炭酸塩含有沈殿物質を製造するように構成されている。いくつかの実施態様においては、そのシステムが、1000トン/日を超える量で炭酸塩含有沈殿物質を製造するように構成されている。いくつかの実施態様においては、そのシステムが、10,000トン/日を超える量で炭酸塩含有沈殿物質を製造するように構成されている。
【0102】
ある種の実施態様においては、そのシステムには、水溶液のための入口を有する構造のような、二価カチオン含有水溶液の供給源が含まれる。たとえば、そのシステムには、二価カチオン含有水溶液のパイプラインまたは同様のフィードが含まれていてよいが、ここでその二価カチオン含有水溶液は、ブライン、海水、または淡水である。いくつかの実施態様においては、そのシステムには、二価カチオンを含まないか、あるいは二価カチオンを低濃度で含む水のための入口を有する構造物が含まれる。いくつかの実施態様においては、その構造物と入口とが、1、10、100、1,000、または10,000トン/日を超える沈殿物質を生成させるのに十分な(二価カチオン有り、または無しの)水を供給できるように構成されている。
【0103】
さらに、そのシステムには、その沈殿反応機に導入された水を、炭酸塩化合物の(上述のような)沈殿条件として、沈殿物質および上澄みを生成させるような沈殿反応機を含むであろう。いくつかの実施態様においては、その沈殿反応機が、1、10、100、1,000、または10,000トン/日を超える沈殿物質を製造するのに十分な、(二価カチオン有り、または無しの)水を供給できるように構成されている。その沈殿反応機がさらに、たとえば以下のような各種の異なった要素のいくつかを含むように構成されていてもよい:温度調節要素(たとえば、水を所望の温度にまで加熱するように構成されたもの)、化合物添加要素(たとえば、二価カチオン、プロトン除去剤などを沈殿反応混合物の中に導入するように構成されたもの)、電気分解要素(たとえば、陰極、陽極など)など。
【0104】
そのシステムにはさらに、CO2の供給源および金属酸化物の廃棄物源、さらには、それらの供給源を、水(場合によっては二価カチオン含有水溶液、たとえばブラインまたは海水)と、沈殿反応機より前、または沈殿反応機の中のある地点で組み合わせるための構成要素が含まれる。したがって、その沈殿システムには、たとえば独立したCO2の供給源が含まれていてもよく、その場合、そのシステムは、二価カチオンの水溶液および/または上澄みが、そのプロセスの間のあるタイミングで、二酸化炭素供給源と接触されるような実施態様において採用されるように構成されている。この供給源は、先に説明したいずれのものであってもよく(たとえば、工業的発電所からの廃棄物フィード)、ガス接触は、たとえば、米国特許仮出願第61/178475号明細書(出願日、2009年5月14日)に記載されているような気液接触装置で実施してよい(この出願は、参照することによりそのすべてを本明細書に取り入れたものとする)。いくつかの実施態様においては、その気液接触装置が、1、10、100、1,000、または10,000トン/日を超える沈殿物質を生成させるのに十分なCO2と接触できるように構成されている。
【0105】
ガス状の廃棄物流れは、工業プラントから沈殿のサイトまで、工業プラントからのガス状の廃棄物流れを沈殿プラントへと輸送する各種の好都合な方法で送ってよい。いくつかの実施態様においては、そのガス状の廃棄物流れが、工業プラントのサイト(たとえば、工業プラントの煙道)から、沈殿サイトの一つまたは複数の場所にまで走っているガス輸送路(たとえば、ダクト)を用いて送られる。ガス状の廃棄物流れの供給源が、沈殿のサイトからみて離れた場所にあってもよく、たとえば、ガス状の廃棄物流れの供給源が、沈殿の場所から、1マイル以上、たとえば10マイル以上、たとえば100マイル以上離れていてもよい。たとえば、ガス状の廃棄物流れが、CO2ガス輸送システム(たとえば、パイプライン)を介して、離れた工業プラントから沈殿のサイトまで輸送されていてもよい。工業プラントで発生したCO2含有ガスは、沈殿サイト(すなわち、そこで沈殿および/または骨材の製造が実施されるサイト)に到着するまでに、(たとえば、他の成分の除去のような)加工をされても、あるいは加工されていなくてもよい。さらに他の例においては、そのガス状の廃棄物流れの供給源が、沈殿サイトの近傍にある。たとえば、沈殿サイトが、ガス状の廃棄物流れの供給源と一体化されている、たとえば、骨材を製造するのに使用できる沈殿物質を沈殿させるための沈殿反応機が併設されている発電所である。
【0106】
先にも説明したように、そのガス状の廃棄物流れが、工業プラントの煙道または同様の構造物から得られるものであってもよい。これらの実施態様においては、ライン(たとえば、ダクト)が煙道に接続されていて、そのラインを通ってガスが煙道から取り出され、沈殿システムのある適切な場所へと運ばれる。ガス状の廃棄物流れが利用される地点での沈殿システムの特定の構造に依存して、それからガス状の廃棄物流れが得られる供給源の場所を(たとえば、適切であるかまたは所望の温度を有する廃棄物流れを得る目的で)変更してもよい。したがって、ある種の実施態様において、0℃〜1800℃、たとえば60℃〜700℃の範囲の温度を有するガス状の廃棄物流れが望ましいような場合には、その煙道ガスを、ボイラーもしくはガスタービン、キルンの出口地点、または発電所もしくは煙突の所望の温度が得られる地点で取り出せばよい。所望により、煙道ガスを露点(たとえば、125℃)よりも高い温度に維持して、凝縮およびそれに関連するトラブルを避けるようにする。温度を露点より高くに維持できないのであれば、凝縮の悪影響を抑制する様な手段を講じて(たとえば、ステンレス鋼、フルオロカーボン(たとえばポリ(テトラフルオロエチレン))でライニングしたダクトを採用する、水で希釈する、pHを調節するなど)、ダクトが急激に劣化しないようにする。
【0107】
システムで利用して炭酸塩化合物組成物を作製する塩水の供給源が海水である場合には、その入口が海水の供給源と流体連通状態にある、たとえばその入口が海洋水から陸上のシステムまでのパイプラインまたはフィードであるか、または、入口部分が船舶の船殻の中にある、たとえばそのシステムが船の一部である、たとえば洋上システムである。
【0108】
そのシステムにはさらに、炭酸塩含有沈殿物質を、それが製造された元の反応混合物から分離するための、液体分離機が含まれる。米国特許仮出願第61/170086号明細書(出願日、2109年4月16日、参照することにより本明細書に取り入れたものとする)に詳細が記述されているように、液固分離機たとえば、EpuramatのExtrem−Separator(「ExSep」)液固分離機、Xerox PARCのスパイラル濃縮機、またはEpuramatのExSepもしくはXerox PARCのスパイラル濃縮機のいずれかを改良したものが、沈殿反応混合物から沈殿物質を分離するには有用である。ある種の実施態様においては、その分離機が、炭酸塩鉱物質沈殿ステーションで生成した、沈殿した炭酸塩鉱物質組成物を乾燥させるための乾燥ステーションである。システムの特定の乾燥手順に応じて、その乾燥ステーションには、濾過要素、凍結乾燥構造、スプレー乾燥構造などが含まれていてもよいが、これらについては以下においてさらに詳しく説明する。
【0109】
ある種の実施態様においては、そのシステムには、その沈殿物から建築材料たとえば、セメントまたは骨材を調製するためのステーションがさらに含まれるであろう。たとえば以下の特許を参照されたい:米国特許出願第12/126,776号明細書(発明の名称:「Hydraulic Cements Comprising Carbonate Compounds Compositions」、出願日、2008年5月23日)、および米国特許仮出願第61/056,972号明細書(発明の名称:「CO2 Sequestering Aggregate, and Methods of Making and Using the Same」、出願日、2008年5月23日)(これらの出願の開示を参照することにより本明細書に取り入れたものとする)。
【0110】
先にも説明したように、このシステムは陸上にあっても、海上にあってもよい。たとえば、そのシステムが、たとえば海水の供給源に近い海岸地域にある陸上システムであってもよいし、あるいは、内陸部にあって、塩水供給源たとえば海洋から水をそのシステムにパイプ輸送するようなものであってもよい。別な形で、そのシステムが水上システム、すなわち水の上または水の中にあるシステムであってもよい。そのようなシステムは、所望により、船舶の上、海洋プラットフォームなどに存在させてよい。
【0111】
図1は、石炭を燃焼させ、アッシュおよび硫黄のような廃棄物を除去する、典型的な発電所プロセスを示している。石炭500をスチームボイラー501の中で燃焼させると、発生したスチームがタービン発電機を駆動して、電力が発生する。石炭を燃焼させることで煙道ガス502が発生するが、それにはCO2、SOx、NOx、Hgなど、さらにはフライアッシュが含まれる。石炭の燃焼ではさらに、ボトムアッシュ510も生成するが、それは埋立地に送ってもよいし、あるいは低価値の骨材として使用してもよい。煙道ガス502は分離機器520、一般的には電気集じん機を通過し、そこで、煙道ガス502からフライアッシュ530が除去される。燃焼の方式および石炭のタイプに依存して、フライアッシュ530は、コンクリートにおいて有利に使用されることもあり得るが、より一般的には、埋立処理される。
【0112】
ファン540が、硫黄含有煙道ガス521をFGDタンク550に送り、そこで、水551およびか焼石灰552から調製された石灰スラリー553への煙道ガスの暴露処理が行われる。石灰のか焼では、大気中へCO2が放出されるが、石灰の製造では、使用される石灰1モルあたり、1モルのCO2が放出される。FGDタンク550の中で、石灰552が煙道ガス521からのSOxと結合して、セッコウ(CaSO4)が生成する。したがって、煙道ガスから除去される硫黄1分子あたり、1分子のCO2が石灰のか焼から大気中へ放出されていたことになる。
【0113】
硫黄を含まない煙道ガス556は、パイプを通してFGDタンク550から煙突560へ送られ、大気中にガス580として放出されるが、放出の前に、さらなる処理を行ってNOx、Hgなどを除去してもよい。大気に放出されるガス580には、石炭500の燃焼により発生したCO2の、全部ではないにしてもほとんどが含まれていることに注意されたい。
【0114】
FGDタンク550の中で、か焼石灰スラリー553が硫黄含有煙道ガス521と反応して、セッコウスラリー554が生成するので、それをポンプ555の手段によりハイドロサイクロン570に送る。ハイドロサイクロン570で、スラリー554から水571が除去され、より濃縮されたセッコウスラリー579が生成するので、それをフィルター580に送って、さらに脱水する。ハイドロサイクロン570およびフィルター580で除去された水は、再生水タンク572に送られて、過剰の固形分を沈降分離させて、埋立地511に送る。廃水574を排出するが、いくぶんかの再生水573は、FGDタンク550に送り返す。フィルター580から除去したフィルターケーキ581は、乾燥機583に送って、そこで水を除去して、乾燥セッコウ粉体590を生成させる。セッコウ粉体590は、埋立地511に送ってもよいし、あるいは、ウォールボードのような建築材料を製造するのに使用してもよい。
【0115】
図2に、本発明の一つの実施態様の例を示すが、ここでは、CO2、フライアッシュ、NOx、SOx、Hgおよびその他の汚染物質を、炭酸塩化合物沈殿プロセスにおける反応剤として利用して、それらの成分を除去し、たとえばそれらを水硬セメントに使用して、それらを建材環境の中に封じ込める。この例においては、フライアッシュおよびボトムアッシュを反応剤として利用して、pHを低下させると同時に、ケイ素およびアルミニウムのような有益な共反応性カチオンを与える。
【0116】
石炭600をスチームボイラー601の中で燃焼させると、発生したスチームがタービン発電機を駆動して、電力が発生する。石炭を燃焼させることで煙道ガス602が発生するが、それにはCO2、SOx、NOx、Hgなど、さらにはフライアッシュが含まれる。この実施態様においては、使用する石炭は、高硫黄の亜瀝青炭であるが、このものは安価に入手できるものの、大量のSOxおよびその他の汚染物質を発生させる。煙道ガス602、ボトムアッシュ610、海水620、およびいくつかの実施態様においては追加アルカリ供給源625を、反応器630に仕込むと、そこで炭酸塩鉱物質沈殿プロセスが実施され、スラリー631が生成する。
【0117】
ポンプ640を介してスラリー631を乾燥システム650にポンプ輸送するが、それには、いくつかの実施態様においては、濾過工程とそれに続くスプレー乾燥が含まれる。乾燥システム650で分離された水651を排出し、それと同時に、大気中に放出可能となったクリーンガス680も排出する。乾燥システム650から得られた固形物または粉体660を、水硬セメントとして利用して建築材料を製造するが、これは、CO2、SOx、および、いくつかの実施態様においてはその他の汚染物質たとえば水銀および/またはNOxを建材環境の中に効果的に封じ込めている。
【0118】
したがって、提供されるのは、金属酸化物の廃棄物源を消和させるために適合させた石灰消和機、沈殿反応機、および液固分離機を含むシステムであるが、ここで、その沈殿反応機は、石灰消和機および液固分離機の両方に操作可能に接続され、さらにここで、そのシステムが、1トン/日を超える量で炭酸塩含有沈殿物質を製造するように構成されている。いくつかの実施態様においては、そのシステムが、10トン/日を超える量で炭酸塩含有沈殿物質を製造するように構成されている。いくつかの実施態様においては、そのシステムが、100トン/日を超える量で炭酸塩含有沈殿物質を製造するように構成されている。いくつかの実施態様においては、そのシステムが、1000トン/日を超える量で炭酸塩含有沈殿物質を製造するように構成されている。いくつかの実施態様においては、そのシステムが、10,000トン/日を超える量で炭酸塩含有沈殿物質を製造するように構成されている。いくつかの実施態様においては、その石灰消和機が、スラリー滞留石灰消和機、ペースト石灰消和機、およびボールミル石灰消和機から選択される。いくつかの実施態様においては、そのシステムに二酸化炭素の供給源がさらに含まれる。いくつかの実施態様においては、その二酸化炭素の供給源が、石炭専焼火力発電所またはセメントプラントからのものである。いくつかの実施態様においては、そのシステムにプロトン除去剤の供給源がさらに含まれる。いくつかの実施態様においては、そのシステムに二価カチオンの供給源がさらに含まれる。いくつかの実施態様においては、そのシステムが、液固分離機の固体生成物から建築材料を生成させるように構成された、建築材料生成ユニットをさらに含む。
【0119】
以下の実施例は、本発明の製造法および使用法の完全な開示および説明を当業者に提供しようとするものであるが、それらは、本願発明者らが発明と見なしているものの範囲を限定することを意図したものではないし、また、以下に示す実験が、実施された実験のすべてであるとか、これだけしか実験していないとかということを表明しようとするものでもない。使用した数値(たとえば、量、温度など)に関しては正確を期してはいるものの、幾分かの実験誤差および偏差は許されたい。特に記さない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧またはそれに近いものである。
【実施例】
【0120】
以下の分析機器およびそれらの使用方法を用いて、以下の実施例で得られた物質の特性解析を行った。
【0121】
電量計:2.0Nの過塩素酸(HClO4)を用いて、液体および固体の炭素含有サンプルを酸性化させて、ガス流れの中で二酸化炭素ガスを発生させ、次いでpH3.0の3(w/v)%の硝酸銀にスクラビングさせて、発生した硫黄ガスをすべて除去してから、無機炭素電量計(UIC Inc、モデルCM5015)により分析した。セメント、フライアッシュ、および海水のサンプルは、過塩素酸を添加した後に加熱ブロックを用いて加熱して、サンプルの消化を促進させた。
【0122】
Brunauer−Emmett−Teller(「BET])比表面積:比表面積(SSA)の測定は、二窒素を用いた表面吸収によった(BET法)。乾燥サンプルのSSAは、Flowprep(商標)060サンプル脱ガスシステムを用いてサンプルを調製した後で、Micromeritics Tristar(商標)II3020 Specific Surface Area and Porosity Analyzerを用いて測定した。簡潔に述べれば、サンプル調製法には、約1.0gの高温乾燥サンプルを脱ガスし、同時に二窒素ガスの流れに暴露させて、サンプルの表面から残存している水蒸気およびその他の吸着物質を除去したことが含まれる。次いで、サンプルホルダーの中のパージガスを真空除去し、サンプルを冷却してから、(吸着膜の厚みに関連して)圧力を増大させながら二窒素ガスに暴露させた。その表面が覆われた後で、サンプルホルダーの中の圧力を系統的に減圧していくことにより、粒子の表面から二窒素を放出させた。脱着されたガスを測定して、全表面積測定値に換算した。
【0123】
粒子サイズ分析法(「PSA」):粒子サイズ分析および分布は静的光散乱法を使用して測定した。乾燥させた粒子をイソプロピルアルコールの中に懸濁させ、二波長/レーザー構成のHoriba Particle Size Distribution Analyzer(Model LA−950V2)を使用して分析した。Mie散乱理論を使用して、粒子の個数を、0.1mm〜1000mmの間のサイズ画分の関数とし計算した。
【0124】
粉体X線回折法(「XRD」):粉体X線回折は、Rigaku Miniflex(商標)(Rigaku)を用いて測定して、結晶質相を同定し、各種の同定可能なサンプル相の質量分率を推測した。乾燥させた固形のサンプルを手動で粉砕して微細粉体とし、サンプルホルダーに載せた。X線源は、銅陽極(Cu kα)で、出力は30kV、15mAであった。X線は、5〜90度(2θ)の範囲でスキャンし、スキャン速度が2度(2θ)/分、ステップサイズが0.01度(2θ)/ステップであった。X線回折プロファイルを、X線回折パターン解析ソフトウェアのJade(商標)(バージョン9,Material Data Inc.(MDI))を使用し、Rietveld改良法により解析した。
【0125】
フーリエ変換赤外線(「FT−IR」)分光法:FT−IR分析は、Smart Diffuse Reflectanceモジュールを取り付けた、Nicolet380で実施した。すべてのサンプルを、3.5±0.5mgに秤量し、0.5gのKBrと共に手動で粉砕し、次いで加圧し、FT−IRの中に装入する前に、5分間の窒素パージにより平均化させた。400〜4000cm−1の範囲でスペクトルを記録した。
【0126】
走査型電子顕微光法(「SEM」):SEMは、Hitachi TM−1000タングステンフィラメント卓上型顕微鏡で、固定加速電圧15kV、使用圧力30〜65Pa、シングルBSE半導体検出器を使用して実施した。固体のサンプルを、炭素系の接着剤を用いてステージに固定させた。液状のサンプルは、グラファイトのステージに真空乾燥させてから分析した。
【0127】
塩化物濃度:塩化物濃度は、試験範囲が300〜6000mg塩化物/L−溶液、100〜200ppm間隔の、Chloride QuanTab(登録商標)Test Strips(商品番号2751340)を用いて測定した。
【0128】
実施例1.フライアッシュのpHの検討
A.実験
ガラスビーカー中で、マグネチックスターラーバーを用いて、500mLの海水(初期pH=8.01)を連続的に撹拌した。その反応液のpHおよび温度を連続的にモニターした。クラスFのフライアッシュ(約10%CaO)を、粉体として段階的に加え、その添加の間にpHが平衡に達するようにした。
【0129】
B.結果および考察
(リストにあるフライアッシュの量は、累積総量すなわち、実験のその時点で加えられている総量である。)
【0130】
5.00gのフライアッシュを添加した後では、pHが9.00に達した。
【0131】
【数1】

【0132】
海水のpHを上げるには、蒸留水の場合よりも、はるかに多くのフライアッシュが必要であった。pHにおける最初の上昇(pH8からpH9へ)には、その後でpHを同じ大きさで上げるのに比べて、必要とするフライアッシュが、はるかに少なかった。多くの反応では、pHは約9.7にかなり安定に留まった。pHの速度は、約10の後で上がった。フライアッシュを添加すると、pHが最初は低下することにも気づいた。このpHにおける低下は、水酸化カルシウムの効果によりすみやかに打ち消される。反応からの真空乾燥されたスラリーのSEM画像から、フライアッシュの空孔のいくぶんかが、部分的に溶解された可能性があることを示していた。残りの空孔は、おそらくは、セメント質物質の中に包み込まれているようにも見えた。
【0133】
C.結論
淡水(蒸留水)においては、少量のクラスFのフライアッシュ(1g/L未満)によって直ちに、pHが7(中性)から約11にまで上昇するのが見られた。pHを上昇させるのに少量しか必要としないという最大の理由は、蒸留水が緩衝されていないことにあると思われる。海水は、炭酸塩系によって強度に緩衝されていて、そのために、pHのレベルを同様に上げるには、はるかに多くのフライアッシュが必要なのである。
【0134】
実施例2:二価カチオンの供給源およびプロトン除去剤としてフライアッシュを使用した沈殿物質
手順
A.消和
1.フライアッシュ(322.04gのFAF11−001)を、500mLのプラスチック製反応容器の中に秤込んだ。
2.脱イオン水(320.92g)をその反応容器に加えて、フライアッシュ対水の比率が1:1になるようにした。
3.得られた混合物を撹拌して、均質なスラリーとした。
4.反応容器に蓋をして、テープを用いて密封した。
5.スラリーを24時間回転させた。
B.沈殿
1.脱イオン水(680mL,pH7.13)を、大きなスターラーバーを入れた2Lのプラスチック製反応容器に加え、250rpmで撹拌した。
2.撹拌しながら、消和されたスラリーを徐々に添加すると、反応混合物が得られるが、それは約320gフライアッシュ/Lの濃度であった。
3.pHレベルが安定(pH12.40)に達するまで撹拌を続けた。
4.反応混合物の中の可能な限り低い(スターラーバーを妨害しない)位置に設けたスパージャーを使用して、圧縮空気中15%のCO2を導入した(CO2:0.4scfh、圧縮空気:2.1scfh、合計:2.5scfh)。
5.反応容器にカバーをかけたが、ガスチューブとpHプローブのために僅かな隙間を残した。
6.pHを5時間にわたってモニターし、記録した。
7.その反応スラリーに十分なCO2(すなわち、XRFで測定したフライアッシュ中のCaO/MgOをベースとして約2倍当量)を添加した後で、(スパージャーを抜き出すことで)CO2の吹き込みを停止し、その反応容器を密封し、その沈殿反応混合物を一夜250rpmで撹拌しておいた。
【0135】
処理
1.一夜撹拌した後に測定した沈殿反応混合物のpHは、pH8.37であった。
2.撹拌を停止し、沈殿反応混合物の濾過を行った。
3.得られた沈殿物質を50℃で一夜かけて乾燥させた。
4.得られた上澄みを採取した。
【0136】
分析
1.沈殿物質について、SEM、XRD、TGA、電量分析、およびFT−IRにより分析した。図3は、1000倍、2500倍、および6000倍に拡大した沈殿物質のSEM画像である。図4に、沈殿物質のXRDを提供する。図5に、沈殿物質のTGAを提供する。電量分析から、その沈殿物質には1.795%の炭素が含まれていることがわかった。
2.上澄みについて、アルカリ度および硬度を使用して分析した。
【0137】
【表3】

【0138】
実施例3:二価カチオンの供給源およびプロトン除去剤としてセメントキルンダストを使用した沈殿物質
手順
A.消和
1.セメントキルンダスト(318.01g)を、500mLのプラスチック製反応容器の中に秤込んだ。
2.脱イオン水(319.21g)をその反応容器に加えて、セメントキルンダスト対水の比率が1:1になるようにした。
3.得られた混合物を撹拌して、均質なスラリーとした。
4.反応容器に蓋をして、テープを用いて密封した。
5.スラリーを18時間回転させた。
B.沈殿
1.大きなスターラーバーを入れた2Lのプラスチック製反応容器の中で、脱イオン水(680mL)をセメントキルンダストの均質なスラリーと組み合わせると、1リットルあたり約318gのセメントキルンダストを含む反応混合物が得られた。
2.その反応混合物を、適切なpHレベル(pH12.41)に達するまで、250rpmで撹拌した。
3.反応混合物の中の可能な限り低い(スターラーバーを妨害しない)位置に設けたスパージャーを使用して、圧縮空気中15%のCO2を導入した(CO2:0.4scfh、圧縮空気:2.1scfh、合計:2.5scfh)。
4.反応容器にカバーをかけたが、ガスチューブとpHプローブのために僅かな隙間を残した。
5.圧縮空気中15%のCO2をその反応混合物に、一夜吹き込んだ。
6.(スパージャーを抜き出すことによって)CO2の吹き込みを停止し、反応容器を密閉して、その沈殿反応混合物を一夜250rpmで撹拌しておいた。
【0139】
処理
1.一夜撹拌した後に測定した沈殿反応混合物のpHは、pH6.88であった。
2.撹拌を停止し、沈殿反応混合物の濾過を行った。
3.得られた沈殿物質を50℃で一夜かけて乾燥させた。
4.得られた上澄みを採取した。
【0140】
分析
1.沈殿物質について、SEM、XRD、TGA、電量分析、および可溶性塩化物パーセントにより分析した。図6に、沈殿物質を、2,500倍に拡大したSEM画像を提供する。図7に、沈殿物質のXRDを提供する。図8に、沈殿物質のTGAを提供する。電量分析から、その沈殿物質には7.40%の炭素が含まれていることがわかった。沈殿物質中の可溶性塩化物パーセントは、2.916%の可溶性塩化物であることがわかった。
2.上澄みについて、アルカリ度および硬度を使用して分析した。
【0141】
【表4】

【0142】
実施例4:二価カチオンの供給源およびプロトン除去剤としてセメントキルンダストを使用した沈殿物質
手順
1.セメントキルンダスト(80g)を、1.5Lのプラスチック製反応容器の中に秤込んだ。
2.脱イオン水(1L)をその反応容器に加え、得られた混合物を250rpm(pH12.45)で撹拌した。
3.吸着カップを用いて反応混合物の底部に設けたスパージャーを使用して、圧縮空気中15%のCO2を導入した(CO2:0.3scfh、圧縮空気:2.0scfh、合計:2.3scfh)。
4.反応容器にカバーをかけたが、ガスとpHプローブのために僅かな隙間を残した。
5.pHを約4時間にわたってモニターし、記録した。
6.その沈殿反応混合物に十分なCO2(すなわち、XRFで測定したセメントキルンダスト中のCaO/MgOをベースとして約2倍当量)を添加した後で、CO2の吹き込みを停止し、その反応容器を密封し、その沈殿反応混合物を一夜250rpmで撹拌しておいた。
【0143】
サンプル処理
1.一夜撹拌した後で、その沈殿反応混合物のpHを測定した。
2.撹拌を停止し、沈殿反応混合物の濾過を行った。
3.得られた沈殿物質を40℃で一夜かけて乾燥させた。
4.得られた上澄みを採取した。
【0144】
分析
1.沈殿物質を、SEM、FT−IR、および電量分析により分析した。図9に、オーブン乾燥させた沈殿物質を、2,500倍に拡大したSEM画像を提供する。図10は、オーブン乾燥させた沈殿物質のFT−IRである。電量分析から、その沈殿物質には7.75%の炭素が含まれていることがわかった。
【0145】
実施例5.沈殿物質および出発物質のδ13C値の測定
この実験においては、ボトル詰めの二酸化硫黄(SO2)ガスおよびボトル詰めの二酸化炭素(CO2)ガスおよび金属酸化物の廃棄物源としてのフライアッシュの混合物を使用して、炭酸塩含有沈殿物質を調製した。この手順は、密閉容器の中で実施した。
【0146】
出発物質は、市販のボトル詰めのSO2およびCO2ガス(SO2/CO2ガス、または「模擬煙道ガス」)、脱イオン水、および金属酸化物の廃棄物源としてのフライアッシュの混合物であった。
【0147】
容器に脱イオン水を充満させた。消和した後のフライアッシュをその脱イオン水に加え、(アルカリ性の)pHと、CO2を大気中に放出することなく炭酸塩含有沈殿物質を沈殿させるのに適した二価カチオン濃度とを与えた。そのアルカリ性溶液から沈殿物質を沈殿させるのに適した速度と時間で、SO2/CO2ガスを吹き込んだ。反応成分が相互作用をするのに十分な時間のあいだ放置した後で、沈殿物質を残りの溶液(「沈殿反応混合物」)から分離すると、ウェットな沈殿物質と上澄みとが得られた。
【0148】
プロセスの出発物質、沈殿物質、および上澄みのδ13C値を測定した。使用した分析システムは、Los Gatos Research製のもので、直接吸光光度法を使用して、2%〜20%の範囲のCO2の乾燥ガスについてのδ13Cおよび濃度データを与えるものであった。その測定器は、公知の同位体組成物を用いた標準の5%CO2ガスを使用して較正し、2M過塩素酸中で消化させたトラバーチンおよびIAEA大理石#20のサンプルから発生させたCO2を測定すると、文献記載の値から受容可能な測定誤差の範囲内であるような数値が得られた。CO2供給源のガスを、シリンジを使用してサンプリングした。そのCO2ガスを、ガス乾燥器(Perma Pure MD Gas Dryer、Model MD−110−48F−4、Nafion(登録商標)ポリマー製)の中を通過させてから、卓上型の市販の炭素同位元素分析システムの中に導入した。固形のサンプルはまず、加熱した過塩素酸(2MのHClO4)を用いて消化させた。CO2ガスが密閉した消化システムから発生し、次いでそのガス乾燥器の中を通過させた。そこから、ガスを捕集して、分析システムの中に注入して、δ13C値を得た。同様にして、上澄みも消化させてCO2ガスを発生させ、次いでそれを乾燥させてから、分析機器野中へ導入して、δ13Cデータを得た。
【0149】
SO2/CO2ガス、金属酸化物の廃棄物源(すなわち、フライアッシュ)、炭酸塩含有沈殿物質、および上澄みの分析からの測定値を表5に示す。沈殿物質および上澄みにおけるδ13C値は、それぞれ、−15.88‰および−11.70‰である。反応のいずれの生成物のδ13C値も、SO2/CO2ガス(δ13C=−12.45‰)およびフライアッシュ(完全に燃焼されてガスになっていない幾分かの炭素を含む、δ13C=−17.46‰)が組み込まれていることを反映している。そのものが化石燃料の燃焼からの生成物である、フライアッシュは、使用したCO2よりもより大きなマイナスのδ13Cを有していたので、沈殿物質の総括的なδ13C値は、CO2そのものの値よりもよりマイナスが大きいことを反映している。この実施例は、炭酸塩含有組成物物質の中の炭素の本来的な供給源を確認するためにδ13C値を使用してもよいということを示している。
【0150】
【表5】

【0151】
実施例6.セメントの製造
A.セメント#1
1.原料物質の沈殿
1000mLのSanta Cruz Harborで採取した海水(pH=8.07、T=20.3℃)。海水に、1MのNaOHを滴下により添加。約pH10で、沈殿物の生成が開始した(反応混合物が濁ることから確認した)。NaOHの添加を続けても、pHは、pH約10.15よりも高くはならなかった。塩基の添加を停止すると、pHはより低いpH値に低下した。塩基を添加していくと、溶液が次第に濁ってきて、沈殿が進んでいることを示していた。約20分間後に、pHの低下が止まったので、塩基の添加を停止した。次いでその沈殿反応混合物を、Watman410の1μmフィルターを通して濾過し、濾液を凍結乾燥させた。
【0152】
2.セメント
直前の記載に従って製造した凍結乾燥粉体を、フレッシュな蒸留水を滴下により添加することで水和させて、セメントペーストを形成させ、それを瑪瑙製の乳鉢および乳棒で約30秒間混合し、そのセメントペーストが、練り歯磨きの稠度になるようにした。そのペーストのpHを、pH試験紙を用いて測定すると、そのpHがpH11〜pH12の間であることが見出された。そのセメントペーストを成形して球とし、乳鉢の中に残し、(乳鉢と共に)適切なプラスチックバッグの中に1日間封入した。1日後には、そのセメントの球は、固くなり、乾燥させている間のスランプのために卵状の形状となっていた。
【0153】
B.セメント#2
非晶質炭酸カルシウムマグネシウム(AMCC)、シリカフューム、バテライト、および水滑石(水酸化マグネシウム)からなるセメント粉体を、以下の質量比で配合した:3AMCC:5シリカフューム:7バテライト:0.2水滑石。
【0154】
そのAMCCは、周囲温度で46,000ppmの塩度にまで濃縮された、海水脱塩プラントの副生物から沈殿させた。その濃縮された水性副生物に水酸化ナトリウムを添加して、pHが11を超えるようにして沈殿が開始されるまで加え、pHをpH11に維持できるように水酸化ナトリウムを添加することにより、AMCCの沈殿を起こさせた。そのAMCC沈殿物は、連続的に濾過をしてシステムから取り出し、凍結乾燥して貯蔵した。
【0155】
シリカフュームは、商業的供給源から得た。
【0156】
バテライトは、温度約45℃で、2μmol/kgのLaCl3を用いて安定化させた海水から沈殿させた。脱塩装置で加工された海水は、取り入れた海水よりもすでに5〜10度温かかった。必要とされるならば、45℃にまでさらに加熱することを、バテライトを沈殿させるより前に、その海水をソーラーパネルの中を通過させることによって達成してもよい。
【0157】
水滑石もまた、商業的供給源から得た。
【0158】
水を上述の混合物に水:セメントの質量比が0.4:1.0(L/S=0.4)となるように添加して、アルカリ性のpHを有する、使い物になるペーストを形成させた。そのペーストは約1時間後には増粘し、2時間までに凝結して硬化セメントとなる。そのセメントでは、さらに数週間後には、その圧縮強度の90%以上が得られた。
【0159】
C.セメント#3
あられ石、非晶質炭酸カルシウムマグネシウム(AMCC)、およびフライアッシュからなるセメント粉体を、以下の質量比で配合した:4あられ石:3AMCC:3シリカフューム:0.4ベトニーズクレー(Betonies Clay)。
【0160】
そのあられ石は、60℃で46,000ppmの塩度にまで濃縮された、海水脱塩プラントの副生物から沈殿させた。脱塩装置で加工された海水は、取り入れた海水よりもすでに5〜10度温かかった。必要とされるならば、60℃にまでさらに加熱することを、あられ石を沈殿させるより前に、その水をソーラーパネルの中を通過させることによって達成してもよい。その水に水酸化ナトリウムを添加して、pHが9を超えるようにして沈殿が開始されるまで加え、pHがpH9に維持できるように水酸化ナトリウムを添加することにより、その沈殿を起こさせた。そのあられ石の沈殿物は、連続的に濾過をしてシステムから取り出し、凍結乾燥して貯蔵した。
【0161】
そのAMCCは、周囲温度で46,000ppmの塩度にまで濃縮された、海水脱塩プラントの副生物から沈殿させる。その水に水酸化ナトリウムを添加して、pHが11を超えるようにして沈殿が開始されるまで加え、pHをpH11に維持できるように水酸化ナトリウムを添加することにより、その沈殿を起こさせた。そのAMCC沈殿物は、連続的に濾過をしてシステムから取り出し、凍結乾燥して貯蔵した。
【0162】
フライアッシュは、石炭専焼火力発電所供給源から得た。
【0163】
水を上述の混合物に水:セメントの質量比が0.25:1.0(L/S=0.25)となるように添加して、アルカリ性のpHを有する、使い物になるペーストを形成させた。そのペーストは約1時間後には増粘し、約2時間までに凝結して硬化セメントとなった。そのセメントでは、さらに数週間後には、その圧縮強度の約90%以上が得られた。
【0164】
実施例7:沈殿物質を含む水硬セメントモルタルの立方体の圧縮強度
水硬セメントモルタルの立方体を調製し、ASTM C109に従って圧縮強度の試験をした。下の表6に見られるように、水硬セメントモルタルの立方体を、100%OPC、80%OPC4−1+20%フライアッシュ、80%OPC4−1+20%PPT1、80%OPC4−1+20%PPT2、おおび50%OPC+50%PPT2の組成で調製したが、ここでPPT1およびPPT2は、実施例2において調製した沈殿物質である。OPCと沈殿物質のブレンド物は乾燥状態で混合し、その後で水と組み合わせた(w/c=0.50)。100%OPCもまた、水/セメントの比率が0.50で、水と組み合わせた。
【0165】
【表6】

【0166】
表6に示したデータから明らかなように、沈殿物質を含む水硬セメントモルタルの立方体の圧縮強度は、一般的には、OPC単独の水硬セメントモルタルの立方体と同等か、またはそれより良好である。
【0167】
実施例8:沈殿物質からの骨材の調製
Wabash油圧プレス(Model No.:75−24−2TRM;ca.1974)の鋼製金型をきれいにし、プラテンを予熱して、プラテン表面(金型キャビティおよびパンチを含む)を最低で1時間、90℃となるようにした。
【0168】
実施例1からの沈殿物質のフィルターケーキのいくつかを、40℃で48時間かけて、シートパンの中でオーブン乾燥させ、次いで、ブレンダーの中で圧潰粉砕して、その粉砕物質がNo.8篩を通過するようにした。次いでその粉砕物質を、水と混合して、90〜95%が固形分で残りが添加した水(5〜10%)であるような混合物を得た。
【0169】
Wabashプレスの中の4インチ×8インチの金型に粉砕した沈殿物質の湿った混合物を充填し、その沈殿物質に64トン(4000psi)の圧力を約10秒間かけた。次いで圧力を開放し、金型を再び開けた。金型の側面に張り付いている沈殿物質を剥がして、金型の中心に移動させた。次いで、金型を再び閉じて、64トンの圧力を、合計して5分間かけた。次いで圧力を開放し、金型を再び開け、加圧した沈殿物質(今では骨材となっている)を金型から取り出し、環境条件下で冷却させた。場合によっては、その骨材を金型から110℃のオーブン中の乾燥ラックに移し、16時間乾燥させてから、環境条件下で冷却させた。
【0170】
上述の発明を、明確な理解を与える目的で、図面と実施例の方法によりいくぶん詳しく説明してきたが、本発明の教示を考慮すれば、添付された特許請求項の精神および範囲から逸脱することなく、ある種の変更および修正を加えることが可能であることは、当業者には容易に明らかであろう。したがって、これまでの記述は、本発明の原理を単に説明しているだけのものである。当業者ならば、本明細書において明確に記述または明示されていなくても、本発明の原理を具体化し、本発明の精神および範囲に含まれている各種の組立を工夫することが可能であろうということは認識されるであろう。さらに、本明細書において引用されたすべての実施例および条件の記述は、主として、読者が、技術を進歩させるための本発明の原理および、本願発明者らの寄与によるコンセプトを理解するのを助けることを意図しており、そのような特定の引用した実施例および条件に限定されるものではないと受け取られたい。さらに、本発明の原理、態様、および実施態様、さらにはそれらの具体例を引用した、本明細書におけるすべての陳述は、それらの構造的および機能的両方の等価物を包含することを意図している。さらに、そのような等価物には、現在公知の等価物、ならびに将来開発されるであろう等価物すなわち、構造とは関わりなく、同一の機能を発揮する各種の開発された要素、の両方が含まれることが意図されている。したがって、本発明の範囲が、本明細書に明示され、記述された例示的な実施態様に限定されることは意図されていない。意図されているのは、以下の特許請求項が、本発明の範囲を定義していること、およびそれらの特許請求項の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの等価物が、それによって網羅されていることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)水溶液を、工業プロセスからの金属酸化物の供給源と接触させる工程;
b)前記水溶液に、工業プロセスからの二酸化炭素の供給源からの二酸化炭素をチャージする工程;および
c)前記水溶液を大気圧下の沈殿条件に置いて、炭酸塩含有沈殿物質を生成させる工程;
を含む、方法。
【請求項2】
前記金属酸化物の供給源と前記二酸化炭素の供給源とが、同一の工業プロセスからのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶液を前記金属酸化物の供給源と接触させることを、前記水溶液に二酸化炭素の供給源をチャージすることよりも前に行わせる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水溶液を前記金属酸化物の供給源と接触させることを、前記水溶液に二酸化炭素の供給源をチャージするのと同時に行わせる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記水溶液を前記金属酸化物の供給源と接触させることと、前記水溶液に二酸化炭素の供給源をチャージすることと、前記水溶液を沈殿条件に置くこととを、同時に行わせる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記金属酸化物の供給源と前記二酸化炭素の供給源とが、前記同一の廃棄物流を供給源とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記廃棄物流れが、石炭専焼火力発電所からの煙道ガスである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記石炭専焼火力発電所が、褐炭専焼火力発電所である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記廃棄物流れが、セメントプラントからのキルン排出物である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記金属酸化物の供給源が、フライアッシュである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記金属酸化物の供給源が、セメントキルンダストである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記廃棄物流れに、SOx、NOx、水銀、またはそれらの各種組合せがさらに含まれる、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記金属酸化物の供給源が、沈殿物質を生成させるための二価カチオンをさらに与える、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記金属酸化物の供給源と前記水溶液との両方に、前記沈殿物質を生成させるための二価カチオンが含まれる、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記金属酸化物の供給源が、フライアッシュまたはセメントキルンダストである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記水溶液が、ブライン、海水、または淡水を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記二価カチオンが、Ca2+、Mg2+、またはそれらの組合せを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記金属酸化物の供給源が、前記沈殿物質を生成させるためのプロトン除去剤を与える、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記金属酸化物の供給源が、前記水溶液中においてCaO、MgO、またはそれらの組合せを水和させて、プロトン除去剤を与える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記金属酸化物の供給源が、シリカをさらに与える、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記金属酸化物の供給源が、アルミナをさらに与える、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記金属酸化物の供給源が、酸化第二鉄をさらに与える、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
ボーキサイト加工からの赤泥または褐泥が、プロトン除去剤をさらに与える、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
プロトン除去に影響する電気化学的方法が、沈殿物質の生成をさらに与える、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記水溶液(それから前記沈殿物質が生成する)から前記沈殿物質を分離することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項26】
前記沈殿物質が、CaCO3を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
CaCO3に、方解石、あられ石、バテライト、またはそれらの組合せが含まれる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記沈殿物質が、MgCO3をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記CaCO3が、あられ石を含み、前記MgCO3がネスケホナイトを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記沈殿物質を加工して建築材料を形成させることをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記建築材料が、水硬セメントである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記建築材料が、ポゾランセメントである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記建築材料が、骨材である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
a)水溶液を、二酸化炭素を含む廃棄物流れおよび金属酸化物を含む供給源と接触させる工程、および
b)前記水溶液を沈殿条件に置いて、炭酸塩含有沈殿物質を生成させる工程;
を含む、方法。
【請求項35】
前記廃棄物流れが、石炭専焼火力発電所からの煙道ガスである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記石炭専焼火力発電所が、褐炭専焼火力発電所である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記金属酸化物の供給源が、フライアッシュである、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記廃棄物流れが、セメントプラントからのキルン排出物である、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記金属酸化物の供給源が、セメントキルンダストである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記廃棄物流れに、SOx、NOx、水銀、またはそれらの各種組合せがさらに含まれる、請求項35または38に記載の方法。
【請求項41】
前記沈殿物質を生成させるための二価カチオンが、前記金属酸化物の供給源、前記水溶液、またはそれらの組合せにより与えられる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記水溶液が、ブライン、海水、または淡水を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記二価カチオンが、Ca2+、Mg2+、またはそれらの組合せを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記金属酸化物の供給源が、前記沈殿物質を生成させるためのプロトン除去剤をさらに与える、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記金属酸化物の供給源が、前記水溶液中においてCaO、MgO、またはそれらの組合せを水和させて、プロトン除去剤を与える、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記金属酸化物の供給源が、シリカをさらに与える、請求項34に記載の方法。
【請求項47】
前記金属酸化物の供給源が、アルミナをさらに与える、請求項34に記載の方法。
【請求項48】
前記金属酸化物の供給源が、酸化第二鉄をさらに与える、請求項34に記載の方法。
【請求項49】
ボーキサイト加工からの赤泥または褐泥が、プロトン除去剤をさらに与える、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
プロトン除去に影響する電気化学的方法が、沈殿物質の生成をさらに与える、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
前記沈殿物質が、CaCO3を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項52】
CaCO3に、方解石、あられ石、バテライト、またはそれらの組合せが含まれる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記水溶液(それから前記沈殿物質が生成する)から前記沈殿物質を分離することをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項54】
前記沈殿物質を加工して建築材料を形成させることをさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記建築材料が、水硬セメントである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記建築材料が、ポゾランセメントである、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記建築材料が、骨材である、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
合成炭酸カルシウムを含むシリカ質組成物であって、
前記炭酸カルシウムが、方解石、あられ石、およびバテライトから選択される少なくとも二つの形態で存在している、
組成物。
【請求項59】
前記炭酸カルシウムの少なくとも二つの形態が、方解石およびあられ石である、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
方解石とあられ石とが、20:1の比率で存在している、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
炭酸カルシウムとシリカとが、少なくとも1:2の炭酸塩対シリカの比率で存在している、請求項60に記載の組成物。
【請求項62】
前記シリカの75%が、粒子サイズが45ミクロン未満の非晶質シリカである、請求項60に記載の組成物。
【請求項63】
シリカ粒子が、合成炭酸カルシウムまたは合成炭酸マグネシウムによって、全面的または部分的に封入されている、請求項60に記載の組成物。
【請求項64】
合成炭酸カルシウムおよび合成炭酸マグネシウムを含むシリカ質組成物であって、
前記炭酸カルシウムが、方解石、あられ石、およびバテライトから選択される少なくとも一つの形態で存在しており、そして
炭酸マグネシウムが、ネスケホナイト、マグネサイト、およびハイドロマグネサイトから選択される少なくとも一つの形態で存在している、
組成物。
【請求項65】
前記炭酸カルシウムがあられ石として存在し、前記炭酸マグネシウムがネスケホナイトとして存在している、請求項64に記載の組成物。
【請求項66】
シリカが、前記シリカ質組成物の20%以下である、請求項65に記載の組成物。
【請求項67】
シリカが、前記シリカ質組成物の10%以下である、請求項65に記載の組成物。
【請求項68】
シリカ粒子が、合成炭酸カルシウムまたは合成炭酸マグネシウムによって、全面的または部分的に封入されている、請求項64に記載の組成物。
【請求項69】
a)金属酸化物の廃棄物源を消和させるために適合させた石灰消和機;
b)沈殿反応機;および
c)液固分離機;
を含み、
前記沈殿反応機が、前記石灰消和機と前記液固分離機との両方に操作可能に接続され、そしてさらに
前記システムが、1トン/日を超える量で炭酸塩含有沈殿物質を製造するように構成されている、
システム。
【請求項70】
前記システムが、10トン/日を超える量で炭酸塩含有沈殿物質を製造するように構成されている、請求項69に記載のシステム。
【請求項71】
前記システムが、100トン/日を超える量で炭酸塩含有沈殿物質を製造するように構成されている、請求項69に記載のシステム。
【請求項72】
前記システムが、1000トン/日を超える量で炭酸塩含有沈殿物質を製造するように構成されている、請求項69に記載のシステム。
【請求項73】
前記システムが、10,000トン/日を超える量で炭酸塩含有沈殿物質を製造するように構成されている、請求項69に記載のシステム。
【請求項74】
前記石灰消和機が、スラリー滞留石灰消和機、ペースト石灰消和機、およびボールミル石灰消和機から選択される、請求項69に記載のシステム。
【請求項75】
二酸化炭素の供給源をさらに含む、請求項69のいずれかのシステム。
【請求項76】
前記二酸化炭素の供給源が、石炭専焼火力発電所またはセメントプラントからのものである、請求項65に記載のシステム。
【請求項77】
プロトン除去剤の供給源をさらに含む、請求項69のいずれかのシステム。
【請求項78】
二価カチオンの供給源をさらに含む、請求項69のいずれかのシステム。
【請求項79】
前記液固分離機の固体生成物から建築材料を製造するように構成された、建築材料生成ユニットをさらに含む、請求項69のいずれかのシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2011−524253(P2011−524253A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514787(P2011−514787)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/047711
【国際公開番号】WO2009/155378
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(309032278)カレラ コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】