説明

金属酸化物粒子及びその製造方法、並びに排ガス浄化触媒

【課題】本発明では、金属塩溶液と塩基性溶液とを均一且つ迅速に混合して、金属酸化物粒子を得る方法を提供する。また本発明では、この方法によって得られる金属酸化物粒子、及びこの金属酸化物粒子を用いて製造される排ガス浄化触媒を提供する。
【解決手段】(a)金属塩溶液と塩基性溶液とを混合して、金属酸化物前駆体を析出させること、及び(b)この金属酸化物前駆体を乾燥及び焼成して、金属酸化物粒子を生成することを含む、金属酸化物粒子の製造方法であって、工程(a)において、金属塩溶液及び塩基性溶液の少なくとも一方を、凍結粒子の状態で混合し、そしてこの凍結粒子を融解させることによって、金属酸化物前駆体を析出させる、金属酸化物粒子の製造方法とする。また、この方法によって製造される金属酸化物粒子、並びにこの金属酸化物粒子に貴金属が担持されてなる排ガス浄化触媒とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物粒子及びその製造方法、並びに排ガス浄化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジン等の内燃機関からの排ガス中には、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等が含まれる。従って一般に、CO及びHCを酸化し、且つNOxを還元する排ガス浄化触媒によって浄化した後で、これらの排ガスを大気中に放出している。この排ガス浄化触媒の代表的なものとしては、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)等の貴金属をγ−アルミナ等の多孔質金属酸化物担体に担持させた三元触媒が知られている。
【0003】
この金属酸化物担体は様々な材料で作ることができるが、高表面積を得るためにアルミナを使用することが一般的である。このような触媒担体のための金属酸化物粒子は、金属塩溶液を塩基性にし、それによって金属水酸化物である金属酸化物前駆体を析出させ、この金属酸化物前駆体を乾燥及び焼成すること等によって得られている。
【0004】
この場合、析出する金属酸化物前駆体の性質は、金属塩溶液を塩基性にする様式に依存する。すなわち例えば、金属塩溶液に塩基性溶液を加えて、金属塩溶液を塩基性にする場合、塩基性溶液を加える過程で金属塩溶液は徐々に塩基性になるので、析出する金属酸化物前駆体の物性が不均一になり、また析出した金属酸化物前駆体が粒成長するという問題がある。
【0005】
近年では、担体の化学的性質を利用して排ガスの浄化を促進するために、セリア(CeO2)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、シリカ(SiO2)などの様々な他の材料を、アルミナと組み合わせて又は組み合わせないで、使用することも提案されている。
【0006】
特に、排ガス中の酸素濃度の変動を吸収して三元触媒の排ガス浄化能力を高めるために、排ガス中の酸素濃度が高いときに酸素を吸蔵し、排ガス中の酸素濃度が低いときに酸素を放出する酸素吸蔵能(OSC能)を有するセリアを、排ガス浄化触媒において用いることが行われている。
【0007】
また、セリアはOSC能を有するだけでなく、その上に担持される貴金属、特に白金との親和性が強いために、貴金属の粒成長(シンタリング又は焼結)を抑制できることが見出されている。排ガス浄化触媒の使用の間に白金がシンタリングすると、触媒の活性点が減少し、それによってNOxの酸化還元効率が低下する。従って白金のシンタリングを抑制することは非常に重要である。
【0008】
このように、排ガス浄化触媒におけるセリアの利用は様々な理由で好ましい。しかしながら、セリアは比較的耐熱性が低く、シンタリングし易い。
【0009】
セリアのような比較的耐熱性が低い金属酸化物の排ガス浄化触媒における使用に関し、低耐熱性金属酸化物の前駆体と共に、アルミナのような高耐熱性金属酸化物の前駆体を金属塩溶液から共沈させて、これらの金属酸化物前駆体を相互に分散させ、それによって得られる金属酸化物担体の耐熱性を改良することが考慮されている。
【0010】
しかしながら複数種の金属酸化物前駆体を共沈させる場合、従来の混合手段でのように、複数種の金属の金属塩を含有している溶液に徐々に塩基性溶液を加えると、ある種の金属酸化物前駆体が先に析出して凝集体を形成し、その後で、他の金属酸化物前駆体が析出して凝集体を形成する。これは、それぞれの金属酸化物前駆体が析出するpHが異なることによる。従って従来の混合手段によっては、異なる金属酸化物を互いに高度に分散させることできないという問題があった。
【0011】
これに関して、特許文献1では、セリウム及びジルコニウムの少なくとも一方の塩とアルミニウム塩とを含有する金属塩溶液を、塩基性溶液と短時間で混合することによって、セリア及びジルコニアの少なくとも一方の粒子とアルミナの粒子とが高度に均一に分散している触媒担体粒子が得られるとしている。このような触媒担体粒子では、セリア及びジルコニアの少なくとも一方の粒子がアルミナ粒子と高度に均一に分散していることによって、セリア及びジルコニアの少なくとも一方の粒子の焼結が、それらの間のアルミナ粒子によって抑制されている。
【0012】
ここでこの特許文献1では、金属塩溶液と塩基性溶液とを短時間で混合する高速混合手段として、(a)一方の溶液を強力に撹拌しながら、その中に他方の溶液を注入する手段、(b)急速回転している円盤上に両方の溶液を同時に供給し、遠心力によって高速に混合する手段、(c)渦巻き状の回転翼を有するシリンダー状容器内で回転翼を回転させ、ここに両方の溶液を供給する手段を例示している。
【0013】
【特許文献1】特許第3262044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明では、金属塩溶液と塩基性溶液とを均一且つ迅速に混合して、金属酸化物粒子を得る方法を提供する。また本発明では、この方法によって得られる金属酸化物粒子、及びこの金属酸化物粒子を用いて製造される排ガス浄化触媒を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
金属酸化物粒子を製造する本発明の方法は、(a)金属塩溶液と塩基性溶液とを混合して、金属酸化物前駆体を析出させること、及び(b)この金属酸化物前駆体を乾燥及び焼成して、金属酸化物粒子、特に触媒担体用の金属酸化物粒子を生成することを含む。ここでこの本発明の方法では、工程(a)において、金属塩溶液及び塩基性溶液の少なくとも一方、特に少なくとも金属塩溶液を、凍結粒子の状態で混合し、そしてこの凍結粒子を融解させることによって、金属酸化物前駆体を析出させる。本発明の方法では、金属塩溶液として、アルミニウム、セリウム、ジルコニウム、チタン及びケイ素からなる群より選択される金属の金属塩溶液を用いることができる。
【0016】
本発明の方法によれば、金属塩溶液と塩基性溶液とを相互に分散させた後で凍結粒子を融解させることによって、実質的な混合を達成し、それによって混合溶液のpHを均一且つ迅速に変化させることができる。従って本発明の方法によれば、混合溶液のpHが徐々に変化することによる金属酸化物前駆体の粗大化及び不均一化を防ぐことができる。
【0017】
また、金属酸化物粒子を製造する本発明の方法では、金属塩溶液は、少なくとも2種類の金属の金属塩を含有していてよい。この少なくとも2種類の金属の金属塩の組合せとしては、アルミニウム塩及びセリウム塩の組み合わせ;アルミニウム塩及びジルコニウム塩の組み合わせ;アルミニウム塩、セリウム塩及びジルコニウム塩の組み合わせ;ケイ素塩及びセリウム塩の組み合わせ;ケイ素塩及びジルコニウム塩の組み合わせ;ケイ素塩、セリウム塩及びジルコニウム塩の組み合わせ;並びにセリウム塩及びジルコニウム塩の組み合わせからなる群より選択される金属塩の組み合わせを挙げることができる。
【0018】
本発明のこの態様によれば、混合溶液のpHを均一且つ迅速に変化させることによって、それぞれの金属の金属酸化物前駆体が有意に異なるpHで析出する場合であっても、これらの金属酸化物前駆体を実質的に同時に析出させ、それによって異なる金属が高度に分散している金属酸化物粒子を得ることができる。
【0019】
本発明の金属酸化物粒子は、本発明の方法によって製造される金属酸化物粒子である。また、本発明の排ガス浄化触媒は、本発明の金属酸化物粒子に貴金属が担持されてなる排ガス浄化触媒である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、(a)金属塩溶液と塩基性溶液とを混合して、金属酸化物前駆体を析出させること、及び(b)この金属酸化物前駆体を乾燥及び焼成して、金属酸化物粒子を生成することを含む、金属酸化物粒子の製造方法に関する。本発明では、工程(a)において、金属塩溶液及び塩基性溶液の少なくとも一方を、凍結粒子の状態で混合し、そしてこの凍結粒子を融解させることによって、金属酸化物前駆体を析出させる。
【0021】
以下では金属酸化物粒子を製造する本発明の方法の各工程についてより具体的に説明する。
【0022】
(a)金属酸化物前駆体の析出
金属酸化物粒子を製造する本発明の方法は、金属塩溶液と塩基性溶液とを混合して、金属酸化物前駆体を析出させること(工程(a))を含み、この工程(a)において、金属塩溶液及び塩基性溶液の少なくとも一方を、凍結粒子の状態で混合し、そしてこの凍結粒子を融解させることによって、金属酸化物前駆体を析出させている。
【0023】
(金属塩溶液)
金属酸化物粒子を製造する本発明の方法で用いることができる金属塩溶液としては、金属酸化物粒子の製造で使用される任意の金属の金属塩溶液、特に金属塩水溶液を挙げることができる。ここでこの塩溶液において金属は、水のような媒体中において金属イオンの状態で存在する。またこれらの金属塩溶液は一般に、pHが酸性になるようにして、金属水酸化物が析出しないようにされている。例えばここで用いることができる金属塩溶液は、塩化物塩、硝酸塩、オキシ硝酸塩又は酢酸塩の溶液、特に硝酸塩の溶液である。
【0024】
具体的にはこの金属塩溶液としては、アルミニウム、セリウム、ジルコニウム、チタン及びケイ素からなる群より選択される金属の金属塩溶液を挙げることができる。但し、本発明の方法において使用できる金属塩溶液はこれらに限定されず、これらの金属塩溶液に加えて、又はこれらの金属塩溶液の代わりに、カリウムのようなアルカリ金属、バリウムのようなアルカリ土類金属、鉄のような遷移金属元素、及びイットリウムのような希土類金属元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属塩溶液を用いることもできる。
【0025】
また金属塩溶液は、2種類又はそれよりも多くの金属の金属塩を含有することもできる。この場合、組み合わされる複数種の金属の金属塩は、最終的に得られる金属酸化物粒子において相互に分散させることが好ましい金属酸化物の組合せに基づいて選択できる。従って例えば、セリアと他の金属酸化物とが相互に分散している又は固溶している金属酸化物粒子を得ることが望ましい場合、セリウム塩とこの金属酸化物を構成する金属の金属塩とを含有している金属塩溶液を用いることができる。
【0026】
より具体的には、本発明で使用される金属塩溶液は、アルミニウム塩及びセリウム塩の組み合わせ;アルミニウム塩及びジルコニウム塩の組み合わせ;アルミニウム塩、セリウム塩及びジルコニウム塩の組み合わせ;ケイ素塩及びセリウム塩の組み合わせ;ケイ素塩及びジルコニウム塩の組み合わせ;ケイ素塩、セリウム塩及びジルコニウム塩の組み合わせ;並びにセリウム塩及びジルコニウム塩の組み合わせからなる群より選択される金属塩の組み合わせを含有することができる。
【0027】
尚、本発明で使用される金属塩溶液が複数種の金属の金属塩を含有する場合、これら複数種の金属の比は、最終的に得られる金属酸化物粒子の性質を考慮して決定することができる。従って排ガス浄化用触媒担体の用途に関し、セリウム(Ce)及び/又はジルコニウム(Zr)とアルミナ(Al)とを相互に均一に分散させた金属酸化物粒子では、Al:(Ce+Zr)原子比は、例えば1:0.01〜5、特に1:0.02〜2、より特に1:0.05〜1とすることができる。ここでは、Ce:Zr原子比は、例えば1:5〜0.2、特に1:0.8〜1.25とすることができる。
【0028】
また、同様に排ガス浄化用触媒担体の用途に関し、アルミナ(Al)とジルコニア(Zr)とを相互に均一に分散させた金属酸化物粒子では、Al:Zr原子比は、例えば1:0.01〜5、特に1:0.02〜2、より特に1:0.02〜1とすることができる。
【0029】
尚、本発明の方法で用いる金属塩溶液は、上記のような金属塩を水、アルコール等の溶媒、特に水性溶媒に溶解させて得ることができる。但し、金属塩溶液を得るために金属塩を直接に使用することは必須ではなく、酸と金属水酸化物、金属等とを溶媒に溶解させて、金属塩溶液を得ることもできる。すなわち例えば、硝酸アルミニウム水溶液を得るために、水酸化アルミニウムと硝酸と水とを混合することもできる。
【0030】
(塩基性溶液)
金属酸化物粒子を製造する本発明の方法で用いることができる塩基性溶液としては、金属塩溶液から金属酸化物前駆体を析出させるのに十分な塩基性を有する塩基性溶液、特に塩基性水溶液を選択することができる。従ってこの塩基性溶液としては、9以上、特に10以上、より特に11以上のpHを有する塩基性溶液を選択することができる。
【0031】
具体的にはこの塩基性溶液としては、水酸化ナトリウムなどのアルカリ又はアルカリ土類金属水酸化物、アンモニア、尿素等の溶液、特に水溶液を挙げることができる。この塩基性溶液としては、加熱によって除去することが容易なアンモニア又は尿素の溶液を用いることが好ましい。
【0032】
(凍結粒子)
本発明の方法で使用される金属塩溶液及び塩基性溶液の少なくとも一方の凍結粒子は、任意の方法で製造することができる。このような凍結粒子の製造のためには、凍結した溶液を粉砕すること、溶液を噴霧し、凍結させること等ができる。また凍結粒子の製造は一般に行われており、例えば特公平8−1345号公報においても開示されている。
【0033】
ここで、溶液を噴霧して凍結させる凍結粒子の製造方法では、溶液を低温雰囲気、例えば液体窒素に向けて噴霧することができる。液体窒素を用いて凍結粒子を生成した場合、液体窒素の沸点よりも高温であって凍結粒子の凍結が維持される温度に、凍結粒子を静置することによって、窒素を除去することができる。但し、このような窒素の除去は必須ではなく、窒素を含む凍結粒子をそのまま用いることもできる。
【0034】
本発明の方法において用いられる凍結粒子の粒径は、凍結粒子同士の混合物又は凍結粒子と他方の溶液との混合物の均一性に影響を与える。従って比較的小さい凍結粒子を得ることが、混合物の均一性を得るために一般に好ましい。また、金属塩溶液の凍結粒子を得る場合、得られる金属酸化物粒子の粒径を調整するために、凍結粒子の粒径を調整することとあわせて、金属塩溶液の濃度を調整することもできる。
【0035】
(混合及び融解)
凍結粒子同士の混合又は凍結粒子と他方の溶液との混合は、これらの均一な混合を達成できる任意の手段で達成することができる。この混合のためには、撹拌子のような混合装置を用いることができる。また、本発明の方法の効果を得るためには、凍結粒子同士の混合又は凍結粒子と他方の溶液との混合を、十分な混合が達成される前に凍結粒子が融解しない条件で行うことが好ましい。すなわち例えば、この混合は、冷却されている混合容器において行うこと、凍結粒子と他方の溶液とを混合する場合には、溶液を予め冷却しておくことができる。
【0036】
凍結粒子同士の混合物又は凍結粒子と他方の溶液との混合物における凍結粒子の融解は、マイクロ波加熱、直接加熱等の加熱手段によって混合物を加熱すること、混合物を加圧すること等によって行うことができる。またこの凍結粒子の融解は、単に凍結粒子と他方の溶液とを混合することによっても行うことができる。
【0037】
(金属酸化物前駆体)
金属塩溶液と塩基性溶液とを混合することによって析出させる金属酸化物前駆体は、一般に金属水酸化物である。また本発明の方法において、2種類又はそれよりも多くの金属の金属塩を用いる場合、得られる金属酸化物前駆体においては、これらの金属の金属酸化物前駆体が相互に分散している。
【0038】
(b)金属酸化物前駆体の乾燥及び焼成
金属酸化物粒子を製造する本発明の方法は、得られた金属酸化物前駆体を乾燥及び焼成すること(工程(b))を含む。またこの乾燥及び焼成の前には随意に、ろ過及び洗浄を行うことができる。ここでこの洗浄は、水、低級アルコール等によって行うことができる。
【0039】
金属酸化物前駆体からの溶媒成分の除去又は乾燥は、任意の方法及び任意の温度で行うことができ、例えば金属酸化物前駆体をろ過し、そして100〜300℃のオーブンに入れて達成できる。このようにして金属酸化物前駆体から溶媒成分を除去及び乾燥して得られた原料を焼成して、金属酸化物粒子を得ることができる。焼成は、金属酸化物合成において一般的に用いられる温度、例えば250〜600℃で行うことができる。
【0040】
(c)貴金属の担持
本発明の方法によって得られた金属酸化物粒子に対して貴金属、特に白金を担持して排ガス浄化触媒を得る場合、本発明の金属酸化物粒子を貴金属塩含有溶液に分散させ、この分散液を撹拌及びろ過し、得られた粒子を乾燥及び焼成して達成することができる。ここで金属酸化物粒子への貴金属の担持量は、例えば金属酸化物粒子に対して0.01〜5質量%、特に0.1〜2質量%にすることができる。本発明の方法によって得られた金属酸化物粒子は、貴金属を担持させる前に予め粉砕して、比較的小さい二次粒子径を有するようにしてもよい。
【0041】
また貴金属を担持している金属酸化物粒子に対して更に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、特にバリウム及びカリウムのようなNO吸蔵元素を担持する場合、この金属酸化物粒子をこれらの金属の金属塩を含有する溶液に分散させ、この分散液を撹拌及びろ過し、得られた粒子を乾燥及び焼成して達成することができる。ここで金属酸化物粒子へのNO吸蔵元素の担持量は、例えば金属酸化物粒子に対して0.01〜5質量%、特に0.1〜2質量%にすることができる。
【0042】
尚、本発明の金属酸化物粒子は、排ガス浄化触媒のための担体としてだけでなく、センサや電池の活性触媒、電極材料、光学材料、半導体材料、構造材料等としても用いることができる。また、本発明の排ガス浄化触媒は、それ自体を成形して用いるだけでなく、アルミナのような他の担体粒子と混合して用いることができ、またモノリス基材、例えばセラミックハニカム基材にコートして用いることもできる。
【実施例】
【0043】
以下では、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
〔実施例1〕
硝酸セリウム6水和物16.3g及び硝酸アルミニウム9水和物234.5gをイオン交換水600ccに溶解させ、1時間にわたって撹拌して金属塩溶液を得た。この金属塩溶液を液体窒素内に噴霧し、金属塩溶液の凍結粒子を得た。その後、得られた凍結粒子を通常の冷凍庫で保存して、窒素を除去した(液体窒素の沸点は−195℃であるので、通常の冷凍庫における静置によって除去可能)。また塩基性溶液としては、イオン交換水800mlに28%アンモニア水170mlを加えて、アンモニア水を得た。
【0045】
上記のようにして得た金属塩溶液の凍結粒子を、塩基性溶液としてのアンモニア水に撹拌を行いながら一度に加え、凍結粒子を融解させて、水酸化物である金属酸化物前駆体を析出させた。得られた混合溶液のpHは9.5であった。その後、金属酸化物前駆体から水分を除去し、イオン交換水で洗浄し、250℃で2時間にわたって乾燥し、500℃で2時間にわたって焼成して、セリア−アルミナ粉末(Al:CeO(質量比)=83:17)を得た。
【0046】
〔実施例2〕
実施例1と同様にして、硝酸セリウム及び硝酸アルミニウムを含有している金属塩溶液の凍結粒子を得、得られた凍結粒子を通常の冷凍庫で保存して、窒素を除去した。
【0047】
また塩基性溶液としては、イオン交換水800mlに28%アンモニア水170mlを加えてアンモニア水を得た。この塩基性溶液を液体窒素内に噴霧し、塩基性溶液の凍結粒子を得た。その後、得られた凍結粒子を通常の冷凍庫で保存して、窒素を除去した。
【0048】
上記のようにして得た金属塩溶液の凍結粒子と塩基性溶液の凍結粒子とを混合し、マイクロ波によって凍結粒子を融解させて、水酸化物である金属酸化物前駆体を析出させた。その後、実施例1の場合と同様にして金属酸化物前駆体から水分を除去し、洗浄し、乾燥及び焼成して、セリア−アルミナ粉末(Al:CeO(質量比)=83:17)を得た。
【0049】
〔比較例〕
硝酸セリウム6水和物16.3g及び硝酸アルミニウム9水和物234.5gをイオン交換水1000ccに溶解させ、1時間にわたって撹拌して金属塩溶液を得た。また塩基性溶液としては、イオン交換水800mlに28%アンモニア水170mlを加えてアンモニア水を得た。
【0050】
上記のようにして得た金属塩溶液を、塩基性溶液としてのアンモニア水に撹拌を行いながら一度に加え、水酸化物である金属酸化物前駆体を析出させた。その後、実施例1の場合と同様にして金属酸化物前駆体から水分を除去し、洗浄し、乾燥及び焼成して、セリア−アルミナ粉末(Al:CeO(質量比)=83:17)を得た。
【0051】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られたセリア−アルミナ粉末におけるセリア粒子径を、X線回折分析によって求めた。またこれらのセリア−アルミナ粉末を、電気炉において800℃で5時間にわたって加熱して耐久を行い、その後でセリア粒子径をX線回折分析によって求めた。得られた初期及び耐久後のセリア粒子径を、図1に示す。
【0052】
図1からは、比較例で得られたセリア−アルミナ粉末と比較して、本発明の実施例で得られたセリア−アルミナ粉末では、小さい初期セリア粒子径を有することが理解される。これは、本発明の実施例の方法では、金属塩溶液と塩基性溶液との混合溶液のpHが、均一且つ迅速に変化していることによって、セリア前駆体の不均一性及び粒成長が抑制されていることによると考えられる。
【0053】
また図1からは、比較例で得られたセリア−アルミナ粉末と比較して、本発明の実施例で得られたセリア−アルミナ粉末では、小さい耐久後セリア粒子径を有することが理解される。これは、本発明の実施例の方法では、金属塩溶液と塩基性溶液との混合溶液のpHが、均一且つ迅速に変化していることによって、セリア前駆体とアルミナ前駆体とが互いに良好に分散している金属酸化物前駆体が得られたことによると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例及び比較例のセリア−アルミナ粒子における初期及び耐久後セリア粒子径を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)金属塩溶液と塩基性溶液とを混合して、金属酸化物前駆体を析出させること、及び(b)この金属酸化物前駆体を乾燥及び焼成して、金属酸化物粒子を生成することを含む、金属酸化物粒子の製造方法であって、
工程(a)において、前記金属塩溶液及び前記塩基性溶液の少なくとも一方を、凍結粒子の状態で混合し、そしてこの凍結粒子を融解させることによって、前記金属酸化物前駆体を析出させる、金属酸化物粒子の製造方法。
【請求項2】
前記金属酸化物粒子が、触媒担体用の金属酸化物粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)において、少なくとも前記金属塩溶液を、凍結粒子の状態で混合する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属塩溶液が、アルミニウム、セリウム、ジルコニウム、チタン及びケイ素からなる群より選択される金属の金属塩溶液である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記金属塩溶液が、少なくとも2種類の金属の金属塩を含有している、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも2種類の金属の金属塩が、アルミニウム塩及びセリウム塩の組み合わせ;アルミニウム塩及びジルコニウム塩の組み合わせ;アルミニウム塩、セリウム塩及びジルコニウム塩の組み合わせ;ケイ素塩及びセリウム塩の組み合わせ;ケイ素塩及びジルコニウム塩の組み合わせ;ケイ素塩、セリウム塩及びジルコニウム塩の組み合わせ;並びにセリウム塩及びジルコニウム塩の組み合わせからなる群より選択される金属塩の組み合わせである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの方法によって製造される、金属酸化物粒子。
【請求項8】
請求項7に記載の金属酸化物粒子に貴金属が担持されてなる、排ガス浄化触媒。

【図1】
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【公開番号】特開2007−302530(P2007−302530A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134156(P2006−134156)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】