説明

鉄筋コンクリート建物外壁構造体の構築工法

【課題】 型枠パネルの再利用、コスト削減、ジャンカ等の不具合確認性を高める。
【解決手段】 型枠パネル1の屋外側の鉄筋スペース2に鉄筋(図示略)を配置し、型枠パネル1に直交してセパレータ3を取り付け、鉄筋(図示略)の屋外側に、型枠パネル1と平行に断熱パネル4を鉄筋スペース2を空けてセパレータ3により取り付け、断熱パネル4の屋外側に、縦鋼管5、横鋼管6及び締結具7から構成される支保工材を用いて支保工を施工し、断熱パネル4と横鋼管6との間に空隙8を形成し、この空隙8に断熱パネル押え角材9を詰め込むように、縦方向に挿入し、挿入作業完了後は、最終的には縦鋼管5、横鋼管6、締結具7を調整して締結し、鉄筋スペース2にコンクリートを流し込み、コンクリート躯体10を形成し、型枠パネル1、セパレータ3、縦鋼管5及び横鋼管6、断熱パネル押え角材9をコンクリート躯体10から撤去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄筋コンクリート建物外壁構造体の構築工法に関し、特に、住宅のコンクリート外壁の型枠施工に関する。
【背景技術】
【0002】
外断熱工法は、コンクリート躯体の外側に断熱材を配置する断熱工法である。欧米では、コンクリート建造物の標準的な断熱工法としてドイツ・北欧を中心に使用されていた。日本では内断熱工法が標準的に使用されてきたが、近年、外断熱工法への注目が高まっている(http://www.glass-fiber.net/naidannetu/3.html)。
(P1)コンクリート断熱工法の場合、コンクリートを合板で組んだ型枠の間に打ち、その型枠を外した後、断熱材を張っている。
(P2)これに対し、型枠兼用断熱材の発明として、特許文献1、2に示す通り、断熱材兼用型枠パネルが屋外側及び屋内側の両面に対して施工されるものが提案されている。
【特許文献1】特開2005−344501号公報
【特許文献2】特開2004−36333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のコンクリート断熱工法P1、P2では、次のような不都合(1)〜(2)があり、未だ十分ではない。
(1)前記従来のコンクリート断熱工法(P1)では、型枠に使用した型枠パネルは、その後、2箇所或いは3箇所の現場での使用が限度であって、実質的に、再利用が困難であった。又、工程数も多い為、コスト高となる。
(2)コンクリート断熱工法(P2)はコストが非常に高く、また、型枠を外す工程がない為、コンクリートの打設にジャンカ等の不具合が起きていても、視認できないという欠点を持つ。特許文献1は、支保工のための下地材の施工が煩雑であり、再利用が困難である。特許文献2は、断熱材が型枠としての構造力を必要とするため、断熱材と外装材が一体となっており、高価で、設計の自由度が少なくなる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上述の課題に鑑みなされたものであり、本発明は、屋外側に向かって、断熱パネル、断熱パネル押え材、支保工材を配置することで、コンクリート躯体形成時に断熱パネル押え材及び支保工材がコンクリートと接触しないようにした発明である。即ち、本発明は、屋内側に型枠パネルを配置した鉄筋の屋外側に、断熱パネルを、セパレータにより支持する断熱パネル支持工と、前記断熱パネルの屋外側に、空隙を設けて、支保工材を構築する支保工と、前記空隙に断熱パネル押え材を詰めて挿入する押え材挿入工と、前記鉄筋にコンクリートを流し込むことによりコンクリート躯体を形成するコンクリート躯体形成工と、前記支保工材、前記断熱パネル押え材、及び、前記型枠パネルを、前記コンクリート躯体から撤去する撤去工、を備えたことを特徴とする鉄筋コンクリート建物外壁構造体の構築工法とする。
【0005】
断熱パネル支持工において、断熱材の材質は特に限定されないが、押出法ポリスチレンフォーム等を採用できる。
【0006】
支保工の支保工材としては、縦パイプと横パイプで縦横に締結具で固定される構成が挙げられる。
【0007】
押え材挿入工において、支保工材と断熱パネルの間に上から隙間に対して押え材を埋め込み、収める。この押え材としては、特に、材質等は限定されないが、例えば、縦材、縦パネル等が挙げられ、それらを組み合わせても使用してもよい。縦材は角材等が挙げられる。縦パネルとしては、例えば、ベニア合板に角材を組み合わせてパネルとしたもの等が挙げられる。断熱パネルが押出法ポリスチレンフォーム等の場合には、角部は応力が集中し破損するおそれがあるため、角材を複数個用いて、L字形に組み、角部で堅固に押さえつけることが好ましい。建物の外壁の角部およびピッチの変わる位置には縦角材、それ以外は、縦パネルを用いてもよい。押え材は、1本ずつ挿入してもよいし、複数本同時に挿入してもよい。
【発明の効果】
【0008】
(1)本発明による押え材及び支保工材は、コンクリート躯体形成後、撤去されてから、何回でも現場で再利用ができ、無駄がない。又、本発明は、高い技術がいらず、工程数も少なく、小人数で設置作業も簡単且つ合理的に施工できることで、建築費のコストダウンが可能となる。
(2)本発明による断熱材は型枠兼用で使用し、且つ、支保工が簡易である。
(3)本発明の断熱材が型枠としての構造力を必要としないため、安価な断熱材を採用できる。
(4)本発明の撤去工により、前記型枠パネルが撤去されるため、ジャンカ等の不具合が起きていても視認できる。
(5)本発明の支保工材がコンクリートと接触しておらず、支保工材を解体することで、すぐに外すことが可能で、連続した工事も可能である。
(6)本発明の押え材は建物の一層分の長さで十分であるので、最低1、2人がいれば工事が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の鉄筋コンクリート建物外壁構造体の構築工法を住宅建築に適用した、実施形態1の鉄筋コンクリート建物外壁構造体の構築工法について図1乃至図4を参照し説明する。
【0010】
(A)断熱パネル支持工
図1(a)に示す通り、型枠パネル1の屋外側の鉄筋スペース2に鉄筋(図示略)を配置し、型枠パネル1に直交してセパレータ3を取り付け、図1(b)に示す通り、鉄筋(図示略)の屋外側に、型枠パネル1と平行に断熱パネル4を鉄筋スペース2を空けてセパレータ3により取り付ける。型枠パネル1は、コンクリートパネル或いは合板パネル(ベニア等)が挙げられる。セパレータ3は、直線形状の締結具であって、型枠パネル1の主面に直交する鉄棒3aと、型枠パネル1を押える押え具3b,3cと、断熱パネル4の屋内側表面を押える押え具3dと、断熱パネル4を貫通し押え具3dに同軸状にねじこまれる断熱パネル止具3eと、を備える。断熱パネル4は、押出法ポリスチレンフォーム等の樹脂発泡体からなる厚み50mmのパネルが例示される。
(B)支保工
図1(c)に示す通り、断熱パネル4の屋外側に、縦鋼管5、横鋼管6及び締結具7(図3参照)から構成される支保工材を用いて支保工を施工し、断熱パネル4と横鋼管6との間に空隙8を形成する。その際、添え木(図示略)を何本か断熱パネル4と横鋼管6との間に挿入し空隙8の厚みを確保する。
(C)押え材挿入工
図2、図3及び図4(a)に示す通り、空隙8に断熱パネル押え角材9を詰め込むように、縦方向に上方から挿入してゆく。図2では挿入の様子を分りやすくするため、横鋼管6を点線で示し、縦鋼管5及び締結具7の図示を略す。
断熱パネル押え角材9としては、一層分の長さ(例えば、3メートル程度)以上であって、横断面積が、例えば、25mm×50mm等の角木材を採用する。空隙8は、断熱パネル押え角材9が挿入しやすいように、嵌め込み寸法よりも多少、厚みを大きくしてあり、挿入作業完了後は、最終的には縦鋼管5、横鋼管6、締結具7を調整して締結する。縦鋼管5は断熱パネル押え角材9の中間部に位置することで断熱パネル4と平行な方向に断熱パネル押さえ角材9がずれないように保持し、横鋼管6は屋外側から屋内側に対して横方向から断熱パネル押え角材9の屋外側面を保持する。
なお、断熱パネル押え角材9を1箇所に施工したら、ほかの場所も同様に支保工を設置し、押え材挿入工を繰り返し行うことが好ましい。
(D)躯体形成工
鉄筋スペース2にコンクリートを流し込むことによりコンクリート躯体10(図4(b)参照)を形成する。
(E)撤去工
型枠パネル1、セパレータ3、縦鋼管5及び横鋼管6、断熱パネル押え角材9をコンクリート躯体10から撤去し、図4(b)に示す施工完了状態とする。ただし、セパレータ3のうち、コンクリート躯体10の部分のものは残置され、他の構成が撤去される。
(F)その他
1階建住宅の施工は、1層分の施工で終了する。2階建住宅の施工の場合には、1階の施工と同様の施工を2階についても行う。
【0011】
以上説明した実施形態1によれば、次の効果がある。
(1)型枠パネル1、セパレータ3、縦鋼管5、横鋼管6、断熱パネル押え角材9は、コンクリート躯体形成後、撤去されるので、セパレータ3、縦鋼管5、横鋼管6、断熱パネル押え角材9は、何回でも現場で再利用ができ、効率的であり、環境保全等に対して有利である。実施形態1は、高い技術が不要で、工程数も少なく、小人数で設置作業も簡単且つ合理的に施工できることで、建築費のコストダウンが可能となる。
(2)断熱パネル4は型枠兼用で使用し、且つ、縦鋼管5及び横鋼管6の支保工が簡易である。
(3)断熱パネル4が型枠としての構造力を必要としないため、安価な断熱材を採用できる。
(4)撤去工により、型枠パネル1が撤去されるため、ジャンカ等の不具合が起きていても視認できる。
(5)縦鋼管5、横鋼管6及び締結具7の支保工材、及び空隙8がコンクリートと接触しておらず、支保工材及び断熱パネル押え角材9を解体することで、すぐに外すことが可能で、連続した工事も可能である。
【0012】
次に本発明実施形態2の鉄筋コンクリート建物外壁構造体の構築工法を図5乃至7を参照して説明する。実施形態2は実施形態1の(C)押え材挿入工を変更したものであり、他の工程は同様であるので、共通する説明は割愛する。
(C)押え材挿入工
図5乃至図7に示す通り、角部については、実施形態1と同様に断熱パネル押え角材9を詰め込み、平面部については、例えば、幅が250mm(合板の両端に40mm×40mmの角材をつけたもの)のタテ枠パネル(例えば、ベニア合板と棧木から構成される木材パネル)である断熱パネル押えパネル9´を詰め込む(図5及び図6参照)。断熱パネル4が押出法ポリスチレンフォーム等の樹脂発泡体で強度が弱い場合、破損しやすいので、角部についてはL字形状に断熱パネル押え角材9を詰め込む(図7参照)。この角材9の本数は図示に限定されず、適宜数を選択できる。断熱パネル押えパネル9´はコストを勘案すると木材が最適であり、重量的に軽く作業が容易である。
断熱パネル押えパネル9´を採用することで、実施形態1よりも詰め込む時間を短縮でき、作業工程が簡素化する。
【0013】
尚、本発明の実施の形態は、上述の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。例えば、当然のことながら、実施形態の一部要素の組合せの変更、一部の要素の交換、一部の要素の削除等もできる。実施形態1又は実施形態2に対し他の要素を組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は本発明実施形態1の鉄筋コンクリート建物外壁構造体の構築工法における、断熱パネル支持工の前段階として行われる、鉄筋と型枠パネルを形成する鉄筋工の施工後の状態を示す平面断面図、(b)は同断熱パネル支持工の施工後の状態を示す平面断面図、(c)は同支保工の施工後の状態を示す平面断面図である。
【図2】同押え材挿入工の様子を示す斜視図である。
【図3】同押え材挿入工の施工後の状態を示す正面図である。
【図4】(a)は同押え材挿入工の施工後の状態を示す平面断面図、(b)は同撤去工の後の状態(鉄筋は図示略)を示す平面断面図である。
【図5】本発明実施形態2の鉄筋コンクリート建物外壁構造体の構築方法における、押え材挿入工の後の状態を示す平面断面図である。
【図6】同押え材挿入工の後における、平面部の状態を示す正面図である。
【図7】同押え材挿入工の後における、角部の状態を示す平面断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1…型枠パネル 2…鉄筋スペース 3…セパレータ 3a…棒状金具 3b…押え具
3c…押え具 3d…押え具 3e…断熱パネル止具 4…断熱パネル 5…縦鋼管
6…横鋼管 7…締結具 8…空隙 9…断熱パネル押え角材 10…コンクリート躯体
9’…断熱パネル押えパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内側に型枠パネルを配置した鉄筋の屋外側に、断熱パネルを、セパレータにより支持する断熱パネル支持工と、
前記断熱パネルの屋外側に、空隙を設けて、支保工材を構築する支保工と、
前記空隙に断熱パネル押え材を詰めて挿入する押え材挿入工と、
前記鉄筋にコンクリートを流し込むことによりコンクリート躯体を形成するコンクリート躯体形成工と、
前記支保工材、前記断熱パネル押え材、及び前記型枠パネルを、前記コンクリート躯体から撤去する撤去工と、
を備えたことを特徴とする鉄筋コンクリート建物外壁構造体の構築工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−8130(P2008−8130A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255902(P2006−255902)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(506222395)有限会社キラックス (1)
【Fターム(参考)】