説明

鉄道車両車軸軸受の試験装置

【課題】軸受にアキシアルモーメント荷重が負荷される軸箱支持方式であっても、実車で使用される軸受の性能を的確に評価できる鉄道車両車軸軸受の試験装置を提供することである。
【解決手段】試験軸受1を収納した軸箱2に軸方向と直角に張り出す張り出し部2aを設け、この張り出し部2aをアキシアル荷重負荷シリンダ15で軸方向に押圧して、試験軸受1に負荷されるアキシアル荷重にモーメントを付与することにより、軸受にアキシアルモーメント荷重が負荷される軸箱支持方式であっても、実車で使用される軸受の性能を的確に評価できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両車軸軸受の試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両車軸軸受の試験装置には、回転駆動される鉄道車両車軸を支持する試験軸受を軸箱に収納して、ラジアル荷重とアキシアル荷重を負荷するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
鉄道車両車軸軸受を収納した軸箱を台車に支持する軸箱支持方式には種々のものがあるが、車軸の前後に配設された1対の軸ばねで軸箱を支持し、円筒シリンダで軸箱の上下動を案内する円筒案内式(シュリーレン式)と、車軸の直上に配設された軸ばねと、ゴムブッシュを介して台車に片持ち支持された軸はりとで軸箱を上下動可能に支持した軸はり式のものが多く採用されている。いずれの軸箱支持方式でも軸受にはラジアル荷重とアキシアル荷重が負荷されるが、軸箱に作用するスラスト力に起因するアキシアル荷重は、軸箱が車軸の前後で対称な構造で指示された円筒案内式等のものでは、モーメントのない純粋なアキシアル荷重となるのに対して、軸箱が車軸の前後で非対称な構造で指示された軸はり式等のものでは、モーメントが付与されたアキシアルモーメント荷重となる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−219160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された鉄道車両車軸軸受の試験装置は、試験軸受に純粋なアキシアル荷重を負荷するようにしているので、軸はり式等の軸箱支持方式のように、軸受にアキシアルモーメント荷重が負荷されるものに対しては、試験条件が実車での使用条件とかけ離れたものとなり、実車で使用される軸受の性能を的確に評価できない問題がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、軸受にアキシアルモーメント荷重が負荷される軸箱支持方式であっても、実車で使用される軸受の性能を的確に評価できる鉄道車両車軸軸受の試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、回転駆動される鉄道車両車軸を支持する試験軸受を軸箱に収納して、ラジアル荷重とアキシアル荷重を負荷する鉄道車両車軸軸受の試験装置において、前記試験軸受に負荷されるアキシアル荷重にモーメントを付与する手段を設けた構成を採用した。
【0008】
すなわち、軸箱に収納された試験軸受に負荷されるアキシアル荷重にモーメントを付与する手段を設けることにより、軸受にアキシアルモーメント荷重が負荷される軸箱支持方式であっても、実車で使用される軸受の性能を的確に評価できるようにした。
【0009】
前記アキシアル荷重にモーメントを付与する手段としては、前記軸箱に軸方向と直角に張り出す張り出し部を設け、この張り出し部を介してアキシアル荷重を負荷して、モーメントを付与する方法を採用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の鉄道車両車軸軸受の試験装置は、軸箱に収納された試験軸受に負荷されるアキシアル荷重にモーメントを付与する手段を設けたので、軸受にアキシアルモーメント荷重が負荷される軸箱支持方式であっても、実車で使用される軸受の性能を的確に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。この鉄道車両車軸軸受の試験装置は、図1および図2に示すように、試験軸受1が収納された軸箱2を装着された車軸3が基台11上に支持軸受12で支持され、プーリ13を介してモータ(図示省略)で回転駆動されるようになっており、基台11に取り付けられた主フレーム11aの天井部に、ラジアル荷重を負荷するラジアル荷重負荷シリンダ14が取り付けられ、主フレーム11aの側壁に取り付けられた副フレーム11bに、アキシアル荷重を負荷するアキシアル荷重負荷シリンダ15が取り付けられている。この実施形態では、試験軸受1は一対の円錐ころ軸受とされている。
【0012】
前記ラジアル荷重負荷シリンダ14は、球面受け部材16を介して軸箱2を上方から押圧し、試験軸受1にラジアル荷重を負荷するようになっている。
【0013】
また、前記アキシアル荷重負荷シリンダ15は、軸箱2に設けられた軸方向と直角に張り出す張り出し部2aを軸方向に押圧し、試験軸受1にモーメントが付与されたアキシアルモーメント荷重を負荷するようになっており、軸はり式等のアキシアルモーメント荷重が負荷される軸箱支持方式のものを的確にシミュレートすることができる。
【0014】
なお、図示は省略するが、円筒案内式等の純粋なアキシアル荷重が負荷される軸箱支持方式のものをシミュレートする場合は、主フレーム11aへの副フレーム11bの取り付け位置を変更して、アキシアル荷重負荷シリンダ15の軸心を車軸3の軸心と合致させ、別途の押圧部材を介して軸箱2の外周部を押圧することができる。
【0015】
上述した実施形態では、車軸がプーリを介して回転駆動されるものとしたが、車軸はモータで直接、または歯車等を介して回転駆動してもよい。また、試験軸受を円錐ころ軸受としたが、試験軸受は、アンギュラ玉軸受等の他の転がり軸受であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】鉄道車両用軸受の評価試験装置の実施形態を示す切欠き縦断面図
【図2】図1のII−II線に沿った断面図
【符号の説明】
【0017】
1 試験軸受
2 軸箱
2a 張り出し部
3 車軸
11 基台
11a、11b フレーム
12 支持軸受
13 プーリ
14 ラジアル荷重負荷シリンダ
15 アキシアル荷重負荷シリンダ
16 球面受け部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動される鉄道車両車軸を支持する試験軸受を軸箱に収納して、ラジアル荷重とアキシアル荷重を負荷する鉄道車両車軸軸受の試験装置において、前記試験軸受に負荷されるアキシアル荷重にモーメントを付与する手段を設けたことを特徴とする鉄道車両車軸軸受の試験装置。
【請求項2】
前記アキシアル荷重にモーメントを付与する手段が、前記軸箱に軸方向と直角に張り出す張り出し部を設け、この張り出し部を介してアキシアル荷重を負荷して、モーメントを付与するものである請求項1に記載の鉄道車両車軸軸受の試験装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−82720(P2008−82720A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259987(P2006−259987)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】