説明

鉄骨鉄筋コンクリート造の躯体施工法

【課題】輸送時にはコンパクトに纏めた状態で安価にて輸送できると共に、現場の資材管理作業場における組み付けを簡略化して、その安全性を確保できる鉄骨鉄筋コンクリート造の躯体施工法を提供する。
【解決手段】現場の資材管理作業場10において二本の柱鉄骨1の間に梁鉄骨2を連結し両柱鉄骨にさらに梁鉄骨を連結するための継手部を形成し且つ柱筋及び梁筋を配筋したサの字先組部材12と、前記継手部間に接続される梁鉄骨と梁筋を有する梁先組部材7とを地組みした後に、クレーンによって前記サの字先組部材を施工階に搬送して下層階の柱鉄骨に接続するとともにクレーンによって前記梁先組部材を施工階に搬送してサの字先組部材と連結して1層1節の鉄骨の建て方を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物を構築するための躯体施工法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨鉄筋コンクリートの建築物では、鉛直方向に配置された柱鉄骨と水平方向に配置された梁鉄骨を組み合わせて躯体が形成される。また、各鉄骨にはその周囲に柱筋、梁筋が配筋されている。躯体施工法は鉄骨の全階建て方を完了した後に、各階毎に型枠工事、鉄筋工事を、コンクリート打設といった躯体工事を行う方法から、数階を1節として躯体の施工を行うもの、さらには1階ごとに躯体の施工を行う方法がある。
【0003】
特許文献1(特開2000−17727号公報)には、1階毎に鉄骨の建て方を行う1層1節の鉄骨の建て方を行う躯体施工法が記載されている。この躯体施工法では、2本の鉄骨柱と2本の鉄骨大梁を組み付けて形成された鉄骨ユニットを現地に輸送し、これをクレーンによって施工階に吊り込んで組み付けることにより1層1節の鉄骨の建て方を行う。ユニット化された鉄骨柱と鉄骨大梁を施工階に揚重することにより、クレーンの使用回数を少なくして施工にかかる時間および費用の低減を図ることができる。
【特許文献1】特開2000−17727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載の躯体施工法では、歪な形状の鉄骨ユニットを現場まで輸送する必要があり、これが輸送費の増大を招く要因となっていた。また、左右対称でない鉄骨ユニットを施工階において組み付けるときにはバランスが悪いため施工性が悪く、歪みのない建造が困難になるという問題もあった。
【0005】
本発明は上述の事柄を考慮に入れてなされたものであって、その目的は、現場への輸送時にはコンパクトに収納した状態で安価にて輸送できると共に、現場の資材管理作業場における組み付けを簡略化して、その安全性を確保できる鉄骨鉄筋コンクリート造の躯体施工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、現場の資材管理作業場において二本の柱鉄骨の間に梁鉄骨を連結し両柱鉄骨にさらに梁鉄骨を連結するための継手部を形成し且つ柱筋及び梁筋を配筋したサの字先組部材と、前記継手部間に接続される梁鉄骨と梁筋を有する梁先組部材とを形成した後に、クレーンによって前記サの字先組部材を施工階に搬送して下層階の柱鉄骨に接続するとともにクレーンによって前記梁先組部材を施工階に搬送してサの字先組部材と連結して1層1節の鉄骨の建て方を行うことを特徴とする鉄骨鉄筋コンクリート造の躯体施工法を提供する(請求項1)。
【0007】
前記躯体施工法では、現場の資材管理作業場においてサの字先組部材と梁先組部材を組み立てるので、現場へは、直線的な鉄骨や鉄筋等の資材を搬入すればよく、たとえ、柱鉄骨に予め前記梁鉄骨を連結するための継手部を接続して十字先組部材を形成して現場まで搬送し、現場の資材管理作業場において一対の十字先組部材間に前記梁先組部材を連結して前記サの字先組部材を形成する場合(請求項2)であっても、十字先組部材はサの字先組部材に比してコンパクトであり、比較的に無駄なく密に並べて配置した状態で搬送することができるので輸送費を削減することができる。
【0008】
また、サの字先組部材は現場の資材管理作業場において組付けられるので、この組付けを行うときに高所作業を必要としておらず、安全を確保した状態でより正確な組付けを行うことができる。加えて、サの字先組部材は左右のバランスが良いので、これをクレーンによって施工階に搬送するときに安定し、下層階の鉄骨に接続するときにも偏った力がかかる部分がないため、1層1節の鉄骨の建て方を行う場合にも、正確な建て方を容易に行うことができる。サの字先組部材間に梁先組部材を連結することにより1層分の鉄筋の建て方を終えることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明のように、前記柱鉄骨に予め前記梁鉄骨を連結するための継手部を接続して十字先組部材を形成して現場まで搬送し、現場の資材管理作業場において一対の十字先組部材間に前記梁先組部材を連結して前記サの字先組部材を形成する場合には、柱鉄骨に剛接合される継手部は梁先組部材を構成する梁鉄骨に比べて高い剛性を備えたものにすることにより製造コストの削減と強度の確保を両立することができる。
【0010】
なお、十字先組部材を構成する柱鉄骨に対する継手部の接続状態は、この十字先組部材が配置される位置によって異なる。すなわち、建造物の角部に配置される十字先組部材には2本の継手部が平面視L字状になるように接続し、建造物の外周に配置される十字先組部材には3本の継手部が平面視T字状になるように接続し、建造物の内部に配置される十字先組部材には4本の継手部が平面視十字状になるように接続する。何れの十字先組部材も側面視形状は十字状である。
【0011】
前記継手部をその梁成の1〜2倍の長さに形成する場合(請求項3)には、柱鉄骨に剛接合された継手部と継手部間に接続される梁先組部材を構成する梁鉄骨に、その中央側の梁鉄骨の下端と、柱鉄骨近くの梁鉄骨の上端に引張力が作用するので、その曲げモーメント図を描いたときに継手部と梁先組部材の接続部の位置において曲げモーメントの反曲点となり、この接続部には引張りも圧縮も作用することがない。すなわち、梁成の1〜2倍の長さの継手部を形成することにより、継手部と梁先組部材の接続部を前記反曲点の位置に合わせることができ、これによって建造物の信頼性を引き上げることができる。
【0012】
デッキプレートを前記梁先組部材に架設した小梁鉄骨の上に敷設し、このデッキプレートを上層階の施工時における足場とする場合(請求項4)には、施工階毎にコンクリート打設を行うことなく足場を確保することができるので、速やかな施工を行なうことができる。デッキプレートによって形成される足場は高所作業を無くして、作業者の安全を確保するものとなる。なお、施工階における鉄骨の建て方を行った後に、この階の壁筋および梁鉄骨間に渡る床筋を配置して、コンクリート打設を行なってもよいことはいうまでもない。
【発明の効果】
【0013】
上記構成の躯体施工法によれば、鉄骨の建て方を行うときに、高所作業および作業者の上下方向の移動を可能な限り少なくして作業の安全性を確保することができる。また、鉄骨の現場までの輸送費、クレーンによる揚重作業にかかるコストの削減および作業時間の低減を図ることができる。さらに、鉄骨の建て方後における各サの字先組部材の配置時におけるバランスが良いので、作業効率が良いだけでなく施工後の安定性が良い。
【0014】
また、現場の資材管理作業場において先組部材を形成することにより、鉄骨への吊り足場、この足場の昇降用タラップ、垂直・水平ブレース等の仮設費の低減を図ることができる。加えて、デッキプレートなどによって形成された施工階のフロアに脚立などを置くことが可能となるので、足場の設置を不要とすることも可能である。さらに、鉄骨の連結および鉄筋の配筋などを躯体工事の一連のサイクル工程の中に組み込むことが可能であるから、労務の平準化を図ることができる。
【0015】
柱鉄骨に剛接合される継手部と継手部間に連結される梁鉄骨の鉄骨メンバーを変更することにより、十分な強度を有しながら製造コストを低く抑えた躯体の施工を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1,2は本発明の実施形態にかかる鉄骨鉄筋コンクリート造の躯体施工法を説明するものであり、図1は鉄骨鉄筋コンクリート造の躯体施工法の全体を説明する図、図2は躯体施工法の各ステップを説明する図である。
【0017】
図1において、1は鉛直方向に配置される鉄骨からなる柱鉄骨、2は水平方向に配置される鉄骨からなる梁鉄骨、3は柱や梁の主筋、4はフープ筋とスターラップ、5は主筋用の継手である。
【0018】
また、本実施形態における梁鉄骨2は、一本の柱鉄骨1に直角方向に剛接合された継手部6を構成する部分2Aと、この継手部6間に連結される梁先組部材7を構成する部分2Bとに分かれており、梁鉄骨2Aは梁鉄骨2Bと異なる鉄骨メンバーからなり、梁鉄骨2Aは梁鉄骨2Bより高い剛性を備え、梁鉄骨2Bは梁鉄骨2Aに比べて軽量である。また、前記継手部6の長さは梁成の1〜2倍の長さに形成されている。
【0019】
さらに、柱鉄骨1には予め複数の継手部6を接続して十字先組部材8を構成している。これらの部材1〜8は現場の資材管理作業場10まで搬送する。なお、部材1〜8はその搬送時には容易に重ねることができるものであるので、運送にかかるコストを削減することができる。
【0020】
なお、柱鉄骨2に対する継手部6の接続状態は、この十字先組部材8が配置される位置によって異なる。すなわち、建物の角部に配置される十字先組部材8には2本の継手部が平面視L字状になるように接続し、建物の外周に配置される十字先組部材8には3本の継手部が平面視T字状になるように接続し、建物の内部に配置される十字先組部材8には4本の継手部が平面視十字状になるように接続する。何れの十字先組部材8も側面視形状は十字状である。
【0021】
11は資材管理作業場10に設置され、2本の柱鉄骨1を所定の間隔をおいて立設支持した状態でサの字先組部材12を形成するためのサの字先組支持台、13はこのサの字先組支持台11の周囲に設けた足場、14は資材管理作業場10に設置された梁鉄骨2を支持する梁先組支持台、15はこの梁先組支持台14の周囲に設けた足場である。
【0022】
16は鉄骨の建て方が行われている施工階、17はこの施工階16のフロア、18は下層階に形成されたコンクリート打設部分である。なお、本実施形態ではフロア17は各梁先組部材7や小梁鉄骨(図示せず)に架設したデッキプレート又は床型枠からなる。
【0023】
すなわち、本実施形態の躯体施工法では、まず、前記柱鉄骨1に梁鉄骨2Bを連結するための継手部2Aを予め接続してなる十字先組部材8、梁鉄骨2A、主筋用の鉄筋3、フープ筋とスターラップ4、主筋用の継手5、小梁鉄骨(図示せず)等の資材を現場まで輸送する。
【0024】
次いで、現場の資材管理作業場10に設置されたサの字先組支持台11に2本の柱鉄骨1,1を立設支持させ、各柱鉄骨1,1に取り付けられた継手部2A,2A間に梁鉄骨2Bを連結し、かつ、柱鉄骨1の周囲に主筋3とフープ筋4による柱筋を配筋し、梁鉄骨2の周囲には主筋3とスターラップ4による梁筋を配筋して、サの字先組部材12を地組み
する(地面近くの低位置で形成する)。
【0025】
一方、梁先組支持台14には別の梁鉄骨2Bを搭載し、この梁鉄骨2Bの周囲に主筋3とスターラップ4による梁筋を配筋して梁先組部材7を地組みする。この先組部材7,12の形成時に、作業者は資材管理作業場10に設置された足場13,15を活用して楽に作業を行うことができるだけでなく、資材管理作業場10の地表面に近い位置において作業を行うことができるので、作業者の安全性を確保することができる。また、支持台11,14がそれぞれの部材を安定して支持した状態で先組部材7,12の組付を行うことができるので、歪みの原因となるアンバランスが発生することがなく、より正確な組付を容易に行うことができる。
【0026】
図2(A)に示すように、現場の資材管理作業場10において一対の十字先組部材8を所定の位置に配置し、図2(B)に示すように、両梁鉄骨2A間に梁鉄骨2Bを例えばボルトナットとスプライスプレートを用いて連結する。図2(C)は、フープ筋4とスターラップ4を所定間隔に拡げて主筋3に結束等の手段で固定して、継手の近辺以外の配筋を完了した状態を示す。なお、このようにしてサの時先組部材12を形成する。
【0027】
次いで、図2(D)に示すように、形成された前記サの字先組部材12をクレーンによって施工階に搬送し、施工階のフロア17から突出している下層階の柱鉄骨および柱筋に接続する。このとき、鉄骨1同士は例えばボルトナットとスプライスプレートなどを用いて連結し、主筋3同士は主筋用継手5を用いて接続する。主筋3の接続部は1階分の柱鉄骨1の中間部となるように配置しているので、柱鉄骨1および主筋3の接続作業をフロア17上の作業者が容易に行うことができる。
【0028】
上述の手順によって、複数のサの字先組部材12をフロア17上に並べて配置したのちに、隣接するサの字先組部材12間の継手部6に前記梁先組部材7を連結する。このとき、梁鉄骨2A,2Bは例えばボルトナットとスプライスプレートなどを用いて連結し、主筋3同士は主筋用継手5を用いて接続する。なお、サの字先組部材12は対称形状であるから、クレーンによって吊り上げた状態および設置状態の何れにおいてもバランスが良く、さらに精度の高い鉄骨の建て方を行うことができる。
【0029】
また、梁先組部材7とサの字先組部材12の接続を行った後に前記梁先組部材7に小梁鉄骨を架設して、その上にデッキプレートを敷設する。このデッキプレートは次の作業階(上層階)のフロア17となる。すなわち、現場のどの作業時においても作業者に高所作業や無駄な労力を消費させることがないので製造コストを引き下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態にかかる躯体施工法の全体を示す図である。
【図2】前記躯体施工法の要部方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0031】
1 柱鉄骨
2(2A,2B) 梁鉄骨
3 主筋
4 フープ筋、スターラップ
6 継手部
7 梁先組部材
8 十字先組部材
10 資材管理作業場
12 サの字先組部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現場の資材管理作業場において二本の柱鉄骨の間に梁鉄骨を連結し両柱鉄骨にさらに梁鉄骨を連結するための継手部を形成し且つ柱筋及び梁筋を配筋したサの字先組部材と、前記継手部間に接続される梁鉄骨と梁筋を有する梁先組部材とを形成した後に、クレーンによって前記サの字先組部材を施工階に搬送して下層階の柱鉄骨に接続するとともにクレーンによって前記梁先組部材を施工階に搬送してサの字先組部材と連結して1層1節の鉄骨の建て方を行うことを特徴とする鉄骨鉄筋コンクリート造の躯体施工法。
【請求項2】
前記柱鉄骨には予め前記梁鉄骨を連結するための継手部を接続して十字先組部材を形成して現場まで搬送し、現場の資材管理作業場において一対の十字先組部材間に前記梁先組部材を連結して前記サの字先組部材を形成する請求項1に記載の鉄骨鉄筋コンクリート造の躯体施工法。
【請求項3】
前記継手部をその梁成の1〜2倍の長さに形成する請求項1または請求項2に記載の鉄骨鉄筋コンクリート造の躯体施工法。
【請求項4】
デッキプレートを前記梁先組部材に架設した小梁鉄骨の上に敷設し、このデッキプレートを上層階の施工時における足場とする請求項1〜4の何れかに記載の鉄骨鉄筋コンクリート造の躯体施工法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−144388(P2010−144388A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321844(P2008−321844)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000150615)株式会社長谷工コーポレーション (94)
【Fターム(参考)】