説明

鉛を含まないスズ合金電気めっき組成物および方法

【課題】鉛を含まないスズ合金電気めっき組成物および方法を提供する。
【解決手段】基体上にスズ合金を堆積するための電解質組成物が開示される。電解質組成物はスズイオン、一種以上の合金形成金属のイオン、フラボン化合物およびジヒドロキシビス−スルフィドを含む。電解質組成物は鉛およびシアン化物を含まない。基体上にスズ合金を堆積する方法および半導体素子上に相互接続バンプを形成する方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉛を含まないスズ合金電気めっき組成物および方法に関する。より詳細には、本発明は、改良されたスズ合金堆積物形態を提供し、改良されたリフロー性能を提供し、および高電流密度で堆積されうる、鉛を含まないスズ合金電気めっき組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スズおよびスズ−鉛合金堆積物は電子産業に有用であり、特に、これらの堆積物の固有の特性が高度に望まれる、プリント配線板、電気接点およびコネクタ、半導体、電気導管(electrical conduit)および他の関連する部品の製造において有用である。様々な電子用途のなかでは、半導体製造産業においてウェハレベルパッケージング(WLP)に現在焦点が当てられている。ウェハレベルパッケージングに関して、IC相互接続が集団でウェハ上に製造され、完全なICモジュールがウェハ上に構築されることができ、その後さいの目に切断される。WLPを用いて得られる利点には、例えば、増大したI/O密度、改良された操作スピード、増大された電力密度および熱マネージメント、並びに低減されたパッケージサイズが挙げられる。
【0003】
WLPについて重要な事項の一つには、ウェハ上でのフリップチップ導電性相互接続バンプの構築がある。これらの相互接続バンプは、半導体部品のプリント配線板への電気的および物理的接続として機能する。半導体素子上に相互接続バンプを形成するいくつかの方法、例えば、ハンダめっきバンプ形成(bumping)、エバポレーションバンプ形成、導電性接着剤接合、ステンシル印刷ハンダバンプ形成、スタッドバンプ形成およびボール配置バンプ形成が提案されてきた。これらの技術の中で、微細ピッチアレイを形成するのに最もコスト効果的な技術はハンダめっきバンプ形成であり、これは一時的なフォトレジストめっき用マスクおよび電気めっきの組み合わせを伴う。この技術は、マイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサおよび特定の集積回路用途のような、高付加価値組み立て物のための全体領域相互接続バンプ技術として素早く採用されている。
【0004】
スズ、スズ−鉛および他のスズ含有合金を堆積する電気めっき方法は周知であり、多くの電解質がこのような金属および合金を電気めっきするために提案されてきた。例えば、米国特許第4,880,507号は、スズ、鉛またはスズ−鉛合金を堆積させるための電解質、システムおよびプロセスを開示する。エレクトロニクス産業は、近年、鉛の毒性、およびその結果として、その使用を禁止するRoHSおよびWEEE指令のような現在の全世界的活動の観点から、スズ−鉛の代替物を探索してきた。スズ−鉛合金の好適な代替物は、望ましくは、所定の用途についてスズ−鉛と同じまたは充分に類似する特性を有する。一旦、好適な代替物が見つかったら、所望の特性を付与するようにこのような物質を堆積することができる電気めっきプロセスの開発が課題でありうる。
産業界は、堆積物の組成が、この物質が所定の用途には高すぎるまたは低すぎる温度で溶融するのを妨げるように効率的に制御されることを望んでいる。劣った組成制御は、結果的に、処理される成分が耐えることができない高すぎる温度、またはその対極である、不完全なはんだ接合の形成をもたらす場合がある。
【0005】
鉛を含まないスズ合金の電気めっきによる共堆積(co−deposition)に関連する困難は、堆積される物質が有意に異なる堆積電位を有する場合に生じる。例えば、スズ(−0.137V)と銅(0.34V)または銀(0.799V)との合金を堆積するのを試みる場合に、面倒な事態が生じうる。このような物質の共堆積を可能にするには、シアン化合物を含む電解質の使用が提案されてきた。例えば、ソビエト連邦特許出願第377435A号は、シアン化銅(I)、シアン化カリウム、スズ酸ナトリウム、水酸化ナトリウムおよび3−メチルブタノールを含む浴から電解的に堆積された銅−スズ合金を開示する。しかし、この電解質組成物は非常に高いシアン化物濃度を有し、全体的な取り扱いおよび廃棄物処理を危険にする。
【0006】
電気めっきによるこのようなスズ合金の共堆積に代わるものが知られている。例えば、米国特許第6,476,494号は、バンプ下地冶金(underbump metallurgy)の露出した部分上に銀を電気めっきし、その銀の上にスズをめっきし、この構造体をリフローして銀−スズ合金ハンダバンプを形成することによる、銀−スズ合金ハンダバンプの形成を開示する。この銀−スズ合金の組成は、正確に制御されなくてはならない多くの変数に依存するので、この銀−スズ合金の組成をこの方法において正確に制御するのは困難である。例えば、スズ中に拡散する銀の量、これによる銀濃度は、リフロー温度、リフロー時間、銀およびスズ層の厚み、並びに他のパラメータの関数である。他に提案されるスズ合金の共堆積の代替法は、スズ電気めっき、これに続く合金金属の置換めっきおよびリフロープロセスを伴う。このような方法は典型的にはかなりのプロセス時間を必要とし、合金濃度の正確な制御が困難な場合がある。
【0007】
バンプを電気めっきする際に頻繁に遭遇する別の問題はバンプの形状である。例えば、スズ−銀マッシュルーム型バンプはフォトレジストで画定されたバイア(via)を通って銅またはニッケルであるバンプ下地金属(under bump metal)上に電気堆積される。フォトレジストは剥ぎ取られ、スズ−銀がリフローされて、球状バンプを形成する。全てのバンプが対応するフリップチップコンポーネント上でその電気接続と接触するような、均一なバンプサイズが重要である。バンプサイズの均一性に加えて、低密度および空隙体積がバンプリフロー中に形成されることが重要である。理想的には、リフロー中に空隙は形成されない。バンプにおける空隙は、その対応するフリップチップコンポーネントと接続される場合に、相互接続信頼性問題ももたらしうる。バンプをめっきすることに関連する別の問題は、多くの従来の走査型電子顕微鏡で容易に検出できるバンプ表面上でのノジュールの形成である。このようなノジュールはリフロー空隙形成を生じさせる場合があり、ノジュールを有する堆積物の外観は商業的に許容できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,880,507号明細書
【特許文献2】ソビエト連邦特許出願第377435A号明細書
【特許文献3】米国特許第6,476,494号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、上記課題を解決するスズ合金電気めっき組成物および方法についての必要性が依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様において、組成物は、1種以上のスズイオン源、金属イオンが銀イオン、銅イオンおよびビスマスイオンからなる群から選択される、1種以上の合金形成金属イオン源、1種以上のフラボン化合物、および式:HOR(R’’)SR’SR(R’’)OH(式中、R、R’およびR’’は同じかまたは異なっており、かつ1〜20の炭素原子を有するアルキレン基である)を有する1種以上の化合物を含む。
別の態様において、方法は、1種以上のスズイオン源、金属イオンが銀イオン、銅イオンおよびビスマスイオンからなる群から選択される、1種以上の合金形成金属イオン源、1種以上のフラボン化合物、および式:HOR(R’’)SR’SR(R’’)OH(式中、R、R’およびR’’は同じかまたは異なっており、かつ1〜20の炭素原子を有するアルキレン基である)を有する1種以上の化合物を含む組成物と基体とを接触させ;並びに当該組成物に電流を流して、スズ合金を基体上に堆積させる;ことを含む。
さらなる態様において、方法は、(a)複数の相互接続バンプパッドを有する半導体ダイを提供し;(b)相互接続バンプパッド上にシード層を形成し;(c)1種以上のスズイオン源、金属イオンが銀イオン、銅イオンおよびビスマスイオンからなる群から選択される1種以上の合金形成金属イオン源、1種以上のフラボン化合物、および式:HOR(R’’)SR’SR(R’’)OH(式中、R、R’およびR’’は同じかまたは異なっており、かつ1〜20の炭素原子を有するアルキレン基である)を有する1種以上の化合物を含む組成物と半導体ダイとを接触させることにより、相互接続バンプパッド上にスズ−合金相互接続バンプ層を堆積させ;並びに(d)相互接続バンプ層をリフローする;ことを含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
当該スズ合金組成物は鉛およびシアン化合物を含まない。当該スズ合金組成物は、共晶または近共晶であり、かつ多くの従来のスズ合金電気めっき組成物よりも高い電流密度およびめっき速度で堆積されうるスズ合金を堆積することができる。また、当該スズ合金組成物は低発泡性である。さらに、当該スズ合金組成物を用いて堆積された相互接続バンプ(interconnect bumps)は実質的に均一な形態を有し、かつリフロー後に、空隙(voids)がないか、または多くの従来のスズ合金電気めっき組成物よりも低減された密度および空隙の体積を有する相互接続バンプを提供する。相互接続バンプは実質的にノジュールも含まない。
【0012】
本明細書を通じて使用される場合、文脈が他のことを明示しない限りは、次の略語は次の意味を有する:℃=摂氏度;g=グラム;mg=ミリグラム;mL=ミリリットル;L=リットル;ppm=百万あたりの部;μm=ミクロン;重量%=重量パーセント;A=アンペア;A/dmおよびASD=アンペア/平方デシメートル;およびmin.=分。堆積電位は水素基準電極に対してもたらされる。電気めっき方法に関連して、用語「堆積」、「コーティング」、「電気めっき」および「めっき」は本明細書を通じて交換可能に使用される。「ハロゲン化物」とは、フッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物をいう。「共晶融点」とは、成分の割合を変更することにより得られうる合金の最も低い融点を意味し;同じ金属の他の組み合わせと比較して最も低い特定の融点を有する。全てのパーセンテージは、他に示されない限りは重量基準である。全ての数値範囲は境界値を含み、かつこのような数値範囲が合計で100%となると解釈されることが論理的である場合を除き、あらゆる組み合わせで組み合わせ可能である。
【0013】
本発明の組成物は1種以上のスズイオン源、合金形成金属イオンが銀イオン、銅イオンおよびビスマスイオンからなる群から選択される、1種以上の合金形成金属イオン(alloying metal ions)源、1種以上のフラボン化合物および式:HOR(R’’)SR’SR(R’’)OH(式中、R、R’およびR’’は同じかまたは異なっており、かつ1〜20の炭素原子、典型的には1〜10の炭素原子を有するアルキレン基である)を有する1種以上の化合物を含む。この組成物は、従来の電気めっき装置を用いて基体上にスズ合金を堆積させるために使用されうる。
【0014】
電解質組成物およびスズ合金は実質的に鉛を含まない。「実質的に鉛を含まない」とは、組成物およびスズ合金が50ppm以下の鉛しか含まないことを意味する。さらに、組成物は典型的にはシアン化物を含まない。シアン化物は、CNアニオンを含む組成物におけるあらゆる金属塩または他の化合物を使用しないことにより第一に回避される。組成物は、典型的には、多くの従来のめっき組成物に含まれるチオ尿素およびその誘導体も除く。
【0015】
電解質組成物は低発泡性でもある。めっき中に電解質組成物がより多く発泡すると、めっき中単位時間あたりでより多くの成分が組成物を離れるので、低発泡性電解質組成物は金属めっき産業において非常に望まれる。めっき中の成分の損失は結果的に商業的に劣った金属堆積物を生じさせる場合がある。よって、作業者は厳密に成分濃度を監視しなければならず、かつ失われた成分をその元の濃度に戻さなければならない。めっき中に成分濃度を監視することは面倒かつ困難な場合がある、というのは、重要な成分のいくつかは比較的低濃度で含まれ、それらは正確に測定し最適なめっき性能を維持するように戻すことは困難だからである。低い発泡性の電解質組成物は合金組成の均一性および基体表面周りの厚みの均一性を向上させ、かつリフロー後に堆積物中で空隙を生じさせる堆積物中に捕捉される有機物質および気泡を低減することができる。
【0016】
組成物におけるスズイオン源はあらゆる水溶性スズ化合物からのものであり得る。好適な水溶性スズ化合物には、これらに限定されないが、塩、例えば、ハロゲン化スズ、硫酸スズ、アルカンスルホン酸スズ、アルカノールスルホン酸スズ、および酸が挙げられる。ハロゲン化スズが使用される場合には、そのハロゲン化物は塩化物であるのが典型的である。スズ化合物は典型的には、硫酸スズ、塩化スズまたはアルカンスルホン酸スズであり、より典型的には硫酸スズまたはメタンスルホン酸スズである。スズ化合物は、一般的に商業的に入手可能であり、または文献において知られた方法によって製造されうる。水溶性スズ化合物の混合物も使用されうる。
【0017】
電解質組成物に使用されるスズ化合物の量は堆積される膜の所望の組成および操作条件に応じて変化する。スズイオン含有量は5〜100g/L、または例えば、5〜80g/L、または例えば、10〜70g/Lの範囲であることができる。
【0018】
使用される1種以上の合金形成金属イオンは、スズと二元、三元および四元合金を形成するのに有用なものである。このような合金形成金属は銀、銅およびビスマスからなる群から選択される。合金の例は、スズ−銀、スズ−銅、スズ−ビスマス、スズ−銀−銅、スズ−銀−ビスマス、スズ−銅−ビスマス、およびスズ−銀−銅−ビスマスである。合金形成金属イオンは、所望の合金形成金属の水溶性金属化合物または水溶性金属化合物の混合物の添加により生じうる。好適な合金形成金属化合物には、これらに限定されないが、所望の合金形成金属の金属ハロゲン化物、硫酸金属塩、金属アルカンスルホン酸塩、および金属アルカノールスルホン酸塩が挙げられる。金属ハロゲン化物が使用される場合には、このハロゲン化物は塩化物であるのが典型的である。典型的には、金属化合物は金属硫酸塩、金属アルカンスルホン酸塩またはこれらの混合物であり、より典型的には金属硫酸塩、金属メタンスルホン酸塩またはこれらの混合物である。金属化合物は概して商業的に入手可能であり、または文献に記載される方法によって製造されうる。
【0019】
電解質組成物中に使用される1種以上の合金形成金属化合物の量は、例えば、堆積される所望の組成および操作条件に応じて変化する。組成物中の合金形成金属イオン含有量は0.01〜10g/L、または例えば、0.02〜5g/Lの範囲であることができる。
【0020】
組成物に他の悪影響を及ぼさないあらゆる水溶性酸が使用されうる。好適な酸には、これらに限定されないが、アリールスルホン酸、アルカンスルホン酸、例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸およびプロパンスルホン酸、アリールスルホン酸、例えばフェニルスルホン酸およびトリルスルホン酸、並びに無機酸、例えば、硫酸、スルファミン酸、塩酸、臭化水素酸およびフルオロホウ酸が挙げられる。典型的には、酸はアルカンスルホン酸およびアリールスルホン酸である。酸の混合物が使用されうるが、単一の酸が使用されるのが典型的である。本発明において有用な酸は概して商業的に入手可能であり、または文献において知られた方法により製造されうる。
【0021】
所望の合金組成および操作条件に応じて変化するが、電解質組成物中の酸の量は0.01〜500g/L、または例えば10〜400g/L、または例えば100〜300g/Lの範囲であることができる。組成物中のスズイオンおよび1種以上の合金形成金属のイオンが金属ハロゲン化物化合物からのものである場合には、対応する酸の使用が望ましい場合がある。例えば、塩化スズ、塩化銀、塩化銅、または塩化ビスマスの1種以上が使用される場合には、酸成分として塩酸の使用が望まれる場合がある。酸の混合物も使用されうる。
【0022】
1種以上のフラボン化合物が組成物中に含まれる。このような化合物は、スズ合金堆積物に良好な粒子構造をもたらし、同時に、この組成物から堆積されるスズ合金相互接続バンプに均一なマッシュルーム形態をもたらす。このようなフラボン化合物には、これらに限定されないが、ペンタヒドロキシフラボン、モリン、クリシン、クエルセチン、フィセチン、ミリセチン、ルチンおよびクエルシトリンが挙げられる。フラボン化合物は1〜200g/L、または例えば、10〜100g/L、または例えば、25〜85g/Lの量で存在することができる。
【0023】
一般式:HOR(R’’)SR’SR(R’’)OH(式中、R、R’およびR’’は同じかまたは異なっており、かつ1〜20の炭素原子、典型的には1〜10の炭素原子を有するアルキレン基である)を有する1種以上の化合物。このような化合物はジヒドロキシ ビス−スルフィド化合物として知られている。これらはスズ合金堆積物の形態を改良し、かつスズ合金バンプにおける空隙の形成を阻害する。このジヒドロキシビス−スルフィド化合物は0.5〜15g/L、または例えば1〜10g/Lの量で存在できる。
【0024】
このようなジヒドロキシビス−スルフィド化合物の例としては、2,4−ジチア−1,5−ペンタンジオール、2,5−ジチア−1,6−ヘキサンジオール、2,6−ジチア−1,7−ヘプタンジオール、2,7−ジチア−1,8−オクタンジオール、2,8−ジチア−1,9−ノナンジオール、2,9−ジチア−1,10−デカンジオール、2,11−ジチア−1,12−ドデカンジオール、5,8−ジチア−1,12−ドデカンジオール、2,15−ジチア−1,16−ヘキサデカンジオール、2,21−ジチア−1,22−ドエイカサンジオール、3,5−ジチア−1,7−ヘプタンジオール、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール、3,8−ジチア−1,10−デカンジオール、3,10−ジチア−1,8−ドデカンジオール、3,13−ジチア−1,15−ペンタデカンジオール、3,18−ジチア−1,20−エイコサンジオール、4,6−ジチア−1,9−ノナンジオール、4,7−ジチア−1,10−デカンジオール、4,11−ジチア−1,14−テトラデカンジオール、4,15−ジチア−1,18−オクタデカンジオール、4,19−ジチア−1,22−ドデエイコサンジオール、5,7−ジチア−1,11−ウンデカンジオール、5,9−ジチア−1,13−トリデカンジオール、5,13−ジチア−1,17−ヘプタデカンジオール、5,17−ジチア−1,21−ウンエイコサンジオール、および1,8−ジメチル−3,6−ジチア−1,8−オクタンジオールが挙げられる。
【0025】
1種以上のフラボン化合物と1種以上のジヒドロキシビス−スルフィド化合物との組み合わせは、改良された相互接続バンプ形態をもたらす。電気めっきされた相互接続バンプの均一性、およびリフロー後のバンプ中の空隙の体積および密度の低減または除去は、電気素子の構成部品間の電気的接続、並びにその素子の性能の信頼性を向上させる。さらに、この化合物の組み合わせは、多くの従来のスズ合金電気めっき組成物によって形成されるバンプと比較して、バンプ上に形成されるノジュールの数を低減するかまたは除去する。
【0026】
場合によっては、1種以上の抑制剤(suppressor)が組成物中に含まれうる。典型的には、それらは0.5〜15g/L、または例えば1〜10g/Lの量で使用される。このような界面活性剤には、これらに限定されないが、アルカノールアミン、ポリエチレンイミンおよびアルコキシ化芳香族アルコールが挙げられる。好適なアルカノールアミンには、これらに限定されないが、置換もしくは非置換のメトキシ化、エトキシ化およびプロポキシ化アミン、例えば、テトラ(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、2−{[2−(ジメチルアミノ)エチル]−メチルアミノ}エタノール、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−エチレンジアミン、2−(2−アミノエチルアミン)−エタノール、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
好適なポリエチレンイミンには、これらに限定されないが、800〜750,000の分子量を有する、置換もしくは非置換の、直鎖もしくは分岐鎖のポリエチレンイミン、またはこれらの混合物が挙げられる。好適な置換基には、例えば、カルボキシアルキル、例えば、カルボキシメチル、カルボキシエチルが挙げられる。
【0028】
本発明において有用なアルコキシ化芳香族アルコールには、これらに限定されないが、エトキシ化ビスフェノール、エトキシ化ベータナフトールおよびエトキシ化ノニルフェノールが挙げられる。
【0029】
場合によっては、1種以上の酸化防止剤化合物が電解質組成物において使用されることができ、第一スズ酸化、例えば、二価から四価の状態への酸化が起こるのを最小にするかまたは妨げることができる。好適な酸化防止剤化合物は当業者に知られており、例えば、米国特許第5,378,347号に開示されている。酸化防止剤化合物には、これらに限定されないが、元素の周期表の第IVB、VBおよびVIB族の元素、例えば、バナジウム、ニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウムおよびタングステンをベースにした多価化合物が挙げられる。これらの中で、多価バナジウム化合物、例えば、価数が5、4、3、2であるバナジウムが典型的に使用される。有用なバナジウム化合物の例としては、バナジウム(IV)アセチルアセトン、バナジウムペントオキシド、硫酸バナジウム、およびバナジン酸ナトリウムが挙げられる。このような酸化防止剤化合物は、組成物において使用される場合、0.01〜10g/L、または例えば、0.01〜2g/Lの量で存在する。
【0030】
還元剤が場合によって電解質組成物に添加されることができ、スズを可溶性の二価の状態に保つのを助けることができる。好適な還元剤には、これらに限定されないが、ヒドロキノンおよびヒドロキシ化芳香族化合物、例えばレゾルシノールおよびカテコールが挙げられる。このような還元剤は、組成物において使用される場合、0.01〜10g/L、または例えば、0.1〜5g/Lの量で存在する。
【0031】
一種以上の他の添加剤が電解質組成物中に含まれることができる。このような添加剤には、これらに限定されないが、界面活性剤および光沢剤が挙げられる。
【0032】
良好な濡れ性能を必要とする用途のためには、1種以上の界面活性剤が電解質組成物中に含まれうる。好適な界面活性剤は当業者に知られており、良好なはんだ付け性、望まれる場合には良好なつや消しもしくは光沢仕上げ、満足できる粒子微細化(grain refinement)を有する堆積物を生じさせ、かつ酸性電解質組成物中で安定なあらゆる界面活性剤が挙げられる。従来の量が使用されうる。
【0033】
光沢の堆積物は本発明の電解質組成物に光沢剤を添加することにより得られうる。このような光沢剤は当業者に周知である。好適な光沢剤には、これらに限定されないが、芳香族アルデヒド、例えば、クロロベンズアルデヒドまたはこれらの誘導体、例えば、ベンザルアセトンが挙げられる。光沢剤についての好適な量は当業者に知られている。
【0034】
他の任意の化合物が電解質組成物に添加されることができ、さらに粒子微細化をもたらすことができる。このような他の化合物には、これらに限定されないが、アルコキシラート、例えば、ポリエトキシ化アミン JEFFAMINE T−403もしくはTRITON RW、または硫酸化アルキルエトキシラート、例えば、TRITON QS−15、およびゼラチンもしくはゼラチン誘導体が挙げられる。組成物において有用なこのような他の化合物の量は当業者に周知であり、存在する場合には、0.1〜20mL/L、または例えば、0.5〜8mL/L、または例えば、1〜5mL/Lの範囲である。
【0035】
場合によっては、1種以上の粒子微細化剤(grain refiner)/安定化剤が組成物中に含まれることができ、電気めっき操作ウィンドウ(operating window)をさらに改良することができる。このような粒子微細化剤/安定化剤には、これらに限定されないが、ヒドロキシ化ガンマ−ピロン、例えば、マルトール、エチルマルトール、コウジ酸、メコン酸;コメン酸、ヒドロキシ化ベンゾキノン、例えば、クロラニル酸、ジヒドロキシベンゾキノン、ヒドロキシ化ナフトール、例えば、クロモトロープ酸、アントラキノン、ヒドロキシ化ピリドン、シクロペンタンジオン、ヒドロキシフラノン、ヒドロキシ−ピロリドン、およびシクロヘキサンジオンが挙げられる。このような化合物は組成物中に、2〜10,000mg/L、または例えば、50〜2000mg/Lの量で含まれうる。
【0036】
電解質組成物から電気めっきされたスズ合金は電子素子の製造に、例えば、ウェハ−レベル−パッケージングにおける半導体素子上の相互接続バンプの形成に使用されることができる。本発明の電解質組成物を含む電気めっき浴は典型的には、1種以上の酸を容器に添加し、続いて、1種以上の溶液可溶性スズ化合物、1種以上のフラボン化合物、1種以上の溶液可溶性合金形成金属化合物、1種以上のジヒドロキシビス−スルフィド化合物、1種以上の任意の添加剤および残部の水を添加することにより製造される。組成物の成分の他の添加順序が使用されうる。水性組成物が製造されたら、望まれない物質が、例えば、ろ過により除かれることができ、次いで、組成物の最終体積を調節するために水が典型的には添加される。増大しためっき速度のために、組成物はあらゆる公知の手段、例えば、攪拌、ポンプ輸送または再循環によって攪拌されることができる。電解質組成物は酸性であり、すなわち、7未満のpH、典型的には1未満のpHを有する。
【0037】
本発明の電解質組成物は、スズ合金が望まれる多くのめっき方法において有用であり、かつ多くの従来の電解質組成物と比較して低発泡性である。めっき方法には、これらに限定されないが、水平もしくは垂直ウェハめっき、バレルめっき、ラックめっきおよび高速めっき、例えば、リールツーリール(reel−to−reel)およびジェットめっきが挙げられる。基体を電解質組成物と接触させ、この電解質に電流を流して、基体上にスズ合金を堆積させる工程によって、スズ合金は基体上に堆積されうる。めっきされうる基体には、これらに限定されないが、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ニッケル−鉄含有物質、電子部品、プラスチック、および半導体ウェハ、例えば、シリコンウェハが挙げられる。めっきされうるプラスチックには、これらに限定されないが、プラスチック積層物、例えば、プリント配線板、特に銅クラッドプリント配線板が挙げられる。電解質組成物は電子部品、例えば、リードフレーム、半導体ウェハ、半導体パッケージ、コンポーネント、コネクタ、接点、チップキャパシタ、チップ抵抗器、プリント配線板およびウェハ相互接続バンプめっき用途の電気めっきのために使用されうる。基体は当該技術分野において知られたあらゆる方法で電解質組成物と接触させられうる。典型的には、基体は電解質組成物を含む浴中に配置される。
【0038】
スズ合金をめっきするのに使用される電流密度は具体的なめっき方法に依存する。概して、電流密度は1A/dm以上、または例えば、1〜200A/dm、または例えば、2〜30A/dm、または例えば、2〜20A/dm、または例えば、2〜10A/dm、または例えば、2〜8A/dmである。
【0039】
スズ合金は、15℃以上、または例えば、15℃〜66℃、または例えば、21℃〜52℃、または例えば、23℃〜49℃の範囲の温度で堆積されうるが、これらに限定されない。概して、所定の温度および電流密度で、より長い時間基体がめっきされると、堆積物がより厚くなり、これに対して、その時間がより短くなると、堆積物がより薄くなる。よって、基体がめっき組成物中にとどまっている時間の長さが、得られるスズ合金堆積物の厚みを制御するために使用されうる。一般に、金属堆積速度は15μm/分もの高さであり得る。典型的には、堆積速度は1μm/分〜10μm/分、または例えば3μm/分〜8μm/分の範囲であり得る。
【0040】
電解質組成物は様々な組成のスズ合金を堆積させるために使用されうる。例えば、スズと1種以上の銀、銅またはビスマスとの合金は、原子吸光分析法(AAS)、X線蛍光(XRF)、誘導結合プラズマ(ICP)または示差走査熱量測定(DSC)で測定される場合に、合金の重量を基準にして、0.01〜25重量%の合金形成金属と75〜99.99重量%のスズとを含むことができ、または例えば、0.01〜10重量%の合金形成金属と90〜99.99重量%のスズとを含むことができ、または例えば、0.1〜5重量%の合金形成金属と95〜99.9重量%のスズとを含むことができる。多くの用途のためには、合金の共晶組成物が使用されうる。このようなスズ合金は実質的に鉛およびシアン化物を含まない。
【0041】
共晶組成物は上述のような様々な用途に使用されうるが、スズ合金組成物の代表的な用途はウェハ−レベル−パッケージングのための相互接続バンプ形成のためである。この方法は複数の相互接続バンプパッドを有する半導体ダイ(die)を提供し、相互接続バンプパッド上にシード層を形成し、半導体ダイを電解質組成物と接触させ、電解質組成物に電流を流して、スズ合金相互接続バンプ層を基体上に堆積させることにより相互接続バンプパッド上にスズ合金相互接続バンプ層を堆積させ、この相互接続バンプ層をリフローすることを含む。
【0042】
一般に、素子(device)は半導体基体を含み、当該半導体基体上には複数の導電性相互接続バンプパッドが形成されている。半導体基体は、単結晶シリコンウェハ、シリコン−オン−サファイア(SOS)基体、またはシリコン−オン−インシュレータ(SOI)基体であることができる。導電性相互接続バンプパッドは、典型的にはスパッタリングのような物理蒸着(PVD)によって形成される、金属、複合体金属、または金属合金の1以上の層であることができる。典型的な導電性相互接続バンプパッド物質には、限定されないが、アルミニウム、銅、窒化チタンおよびこれらの合金が挙げられる。
【0043】
不動態化層(passivation layer)が相互接続バンプパッド上に形成され、そこにこの相互接続バンプパッドに伸びる開口部がエッチングプロセスによって、典型的にはドライエッチングによって形成される。不動態化層は典型的には絶縁物質であり、例えば、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素または酸化ケイ素、例えば、ホスホシリケートガラス(PSG)である。このような物質は化学蒸着(CVD)法、例えばプラズマ(plasma enhanced)CVD(PECVD)によって堆積されうる。
【0044】
複数の金属または金属合金層から典型的に形成されるバンプ下地(under bump)金属化(UBM)構造が素子上に堆積される。UBMは形成されるべき相互接続バンプのための接着層および電気的接触ベース(シード層)として機能する。UBM構造を形成する層はPVD、たとえばスパッタリングまたは蒸発、またはCVDプロセスによって堆積させられうる。限定されるものではないが、UBM構造は、例えば、順に、下部クロム層、銅層および上部スズ層を含む複合体構造であることができる。
【0045】
フォトレジスト層が素子に適用され、続いて標準的なフォトリソグラフィック露光および現像技術が行われて、めっき用マスクを形成する。めっき用マスクはI/OパッドおよびUBM上に、めっき用バイア(plating via)のサイズおよび位置を画定する。限定されるものではないが、マッシュルームめっきプロセスは概して比較的薄いフォトレジスト層、典型的には25〜70μm厚を使用するが、一方で、バイアめっきプロセスは概して比較的厚いフォトレジスト層、典型的には70〜120μm厚を使用する。フォトレジスト物質は商業的に入手可能であり、かつ当該技術分野において周知である。
【0046】
相互接続バンプ物質は、上記電気めっき組成物を使用する電気めっきプロセスによって素子上に堆積させられる。相互接続バンプ物質には、例えば、スズ−銀、スズ−銅、スズ−銀−銅、スズ−ビスマス、スズ−銀−ビスマス合金およびスズ−銀−銅−ビスマス合金が挙げられる。このような合金は上述のような組成を有することができる。このような組成物をその共晶濃度で使用することが望まれる場合がある。バンプ物質はめっき用バイアによって画定された領域に電気めっきされる。この目的のためには、水平または垂直ウェハめっきシステム、例えば、噴水めっき(fountain plating)システムが、直流(DC)またはパルスめっき技術と共に典型的に使用される。マッシュルームめっきプロセスにおいては、相互接続バンプ物質は完全にバイアを充填し、めっきマスクの上面部分の上方に伸びる。これは、リフロー後に所望のボールサイズを達成するのに充分な体積の相互接続バンプ物質が堆積されるのを確実にする。バイアめっきプロセスにおいては、フォトレジストの厚みは、好適な体積の相互接続バンプ物質がめっき用マスクバイア内に含まれるように充分厚い。相互接続バンプ物質をめっきする前に、銅またはニッケルの層がめっき用バイア内に電気めっきされることができる。このような層は、リフローの際に相互接続バンプに対する濡れ性のベースとして機能することができる。
【0047】
相互接続バンプ物質の堆積に続いて、好適な溶媒を用いてめっき用マスクが剥ぎ取られる。このような溶媒は当該技術分野において知られている。UBM構造は次いで公知の技術を用いて選択的にエッチングされて、相互接続バンプの周りのおよび相互接続バンプ間の領域から全ての金属を取り除く。
【0048】
次いで、ウェハは場合によって、相互接続バンプ物質が溶融し、流れてトランケートされた実質的に球状となる温度でリフローオーブン中で流動化され(fluxed)、加熱される。加熱技術は当該技術分野で知られており、例えば、赤外、伝導および対流技術並びにこれらの組み合わせが挙げられる。リフローされた相互接続バンプは概してUBM構造の端と同一の広がりを持つ。熱処理工程は、相互接続バンプ物質の具体的な組成に応じて、不活性ガス雰囲気中でまたは空気中で、特定の処理温度および時間で行われることができる。
【0049】
次の実施例は本発明をさらに説明することを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0050】
実施例1
メタンスルホン酸スズからの50g/Lのスズ、メタンスルホン酸銀からの0.4g/Lの銀、70g/Lのメタンスルホン酸、8g/Lの3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール、1g/Lのエチルマルトール、4g/Lのエトキシ化ビスフェノールA(13エチレンオキシド単位)、30mg/Lのペンタヒドロキシフラボン、1g/Lのヒドロキノンモノスルホン酸カリウム塩および脱イオン水(残り)を30℃で合わせることにより、電解質組成物が製造された。銅シード上にフォトレジストでパターン形成された120μm(直径)×50μm(深さ)のバイアを有する4cm×4cmのウェハセグメントがガラス容器中の組成物に浸せきされ、6A/dmの電流密度でスズ−銀の層をめっきした。
得られたスズ−銀層の形態は日立S2460商標走査型電子顕微鏡で検査された。堆積物は均一で、なめらかで、コンパクトであって、ノジュールはなかった。
サンプルについて得られたスズ−銀層の銀濃度はAAS法によって測定された。測定に使用されたAAS装置はVarian,Inc.(パロアルト、カリフォルニア州)によって製造された。この方法は次の工程を含んでいた:1)フォトレジストが除去された;2)シード層が除かれた;3)各スズ−銀層の重量が測定された、すなわち、平均10mg;4)各スズ−銀層が次いで10〜20mLの30〜40%硝酸を有する別の容器内で溶解された(スズ−銀を溶解するのに必要な場合には、より多くの硝酸が添加された);5)次いで、溶解したスズ−銀を各ビーカーから別の100mLフラスコに移し、脱イオン水で一定の体積し、混合した;並びに6)各溶液中の銀の量を測定し、式:%Ag=[10×AASAg(ppm)]/重量(mg)を用いて、堆積物中の銀の濃度を決定した。スズ−銀層は平均で2.75重量%の銀を含んでいた。
【0051】
実施例2
メタンスルホン酸スズからの50g/Lのスズ、メタンスルホン酸銀からの0.4g/Lの銀、70g/Lのメタンスルホン酸、1g/Lの3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール、1g/Lのエチルマルトール、4g/Lのエトキシ化ビスフェノールA(13エチレンオキシド単位)、10mg/Lのペンタヒドロキシフラボン、1g/Lのヒドロキノンモノスルホン酸カリウム塩および脱イオン水(残り)を30℃で合わせることにより、電解質組成物が製造された。フォトレジストでパターン形成された120μm(直径)×50μm(深さ)のバイア、銅シード層、および5μmの銅スタッドを有する4cm×4cmのウェハセグメントがガラス容器中の組成物に浸せきされ、6A/dmの電流密度でスズ−銀の層をめっきした。めっき後、フォトレジストおよび露出した銅シード層は除かれ、スズ−銀層が日立S2460商標走査型電子顕微鏡で検査された。堆積物は均一で、なめらかで、コンパクトであり、かつノジュールはなかった。
スズ−銀層は、次いで、リフローされてバンプを形成し、このバンプはWBI−Fox X線検査システムを用いて検査された。検出解像度は0.3μmであった。検査はYxlon Internationalによってなされた。バンプ中に空隙は認められなかった。
スズ−銀層バンプの銀濃度は上記実施例1のAAS法によって測定された。スズ−銀バンプのいくつかが、取り付けられたその銅スタッドを伴って外れた場合には、バンプの組成は、式:%Ag=[10×AASAg(ppm)]/{重量(mg)−0.1×[AASCu(ppm)]}を用いて、測定された重量からスタッドの銅含有量を引くことにより銅スタッドについて調整された。スズ−銀バンプは平均で3重量%の銀を含んでいた。
【0052】
実施例3
メタンスルホン酸スズからの50g/Lのスズ、メタンスルホン酸銀からの0.4g/Lの銀、70g/Lのメタンスルホン酸、8g/Lの3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール、1g/Lのエチルマルトール、4g/Lのエトキシ化ビスフェノールA(13エチレンオキシド単位)、50mg/Lのペンタヒドロキシフラボン、1g/Lのヒドロキノンモノスルホン酸カリウム塩および脱イオン水(残り)を30℃で合わせることにより、電解質組成物が製造された。フォトレジストでパターン形成された120μm(直径)×50μm(深さ)のバイア、銅シード層、および5μmの銅スタッドを有する4cm×4cmのウェハセグメントがガラス容器中の組成物に浸せきされ、6A/dmの電流密度でスズ−銀の層をめっきした。めっき後、フォトレジストおよび銅シード層は除かれ、得られたスズ−銀層の形態が上述のように走査型電子顕微鏡で検査された。堆積物は均一で、なめらかで、コンパクトであり、かつノジュールはなかった。
スズ−銀層は、次いで、リフローされてバンプを形成し、WBI−Fox X線検査システムを用いて検査された。バンプ中に空隙は認められなかった。
スズ−銀バンプは、次いで、銀濃度について、上記実施例1および2のAAS法を用いて分析された。このバンプは平均で2.56重量%の銀濃度を有していた。
【0053】
実施例4
メタンスルホン酸スズからの50g/Lのスズ、メタンスルホン酸銀からの0.4g/Lの銀、70g/Lのメタンスルホン酸、5g/Lの3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール、1g/Lのエチルマルトール、7g/Lのエトキシ化ビスフェノールA(13エチレンオキシド単位)、30mg/Lのペンタヒドロキシフラボン、1g/Lのヒドロキノンモノスルホン酸カリウム塩および脱イオン水(残り)を30℃で合わせることにより、電解質組成物が製造された。フォトレジストでパターン形成された120μm(直径)×50μm(深さ)のバイア、銅シード層、および5μmの銅スタッドを有する4cm×4cmのウェハセグメントがガラス容器中の組成物に浸せきされ、6A/dmの電流密度でスズ−銀の層をめっきした。めっき後、フォトレジストおよび銅シード層は除かれ、スズ−銀層の形態が日立走査型電子顕微鏡で検査された。堆積物は均一で、なめらかで、コンパクトであり、かつノジュールはなかった。
スズ−銀層は、次いで、リフローされてバンプを形成し、WBI−Fox X線検査システムを用いて検査された。バンプ中に空隙は認められなかった。
スズ−銀バンプの銀濃度は、上記AAS法によって測定された。このバンプは平均で2.74重量%の銀を含んでいた。
【0054】
実施例5
メタンスルホン酸スズからの50g/Lのスズ、メタンスルホン酸銀からの0.4g/Lの銀、67.5g/Lの70%メタンスルホン酸、2.7g/Lの3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール、1g/Lのエチルマルトール、4g/Lのエトキシ化ビスフェノールA(13エチレンオキシド単位)、50mg/Lのペンタヒドロキシフラボン、1g/Lのヒドロキノンモノスルホン酸カリウム塩および脱イオン水(残り)を30℃で合わせることにより、電解質組成物が製造された。25℃で行われる空気スパージングをしながら、電解質の300mLを1000mLメスシリンダーに入れた。20cmの泡が生じた。スチールハルセル(Hull cell)試験パネル片をハルセル中の組成物に浸せきし、3Aの電流で2分間スズ−銀の層をめっきした。達成された最も高い堆積速度は5.3μm/分であった。
【0055】
比較例6
メタンスルホン酸スズからの20g/Lのスズ、メタンスルホン酸銀からの0.5g/Lの銀、150g/Lの70%メタンスルホン酸、2g/Lの3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール、4g/Lのエトキシ化ノニルフェノール(14エチレンオキシド単位)、および脱イオン水(残り)を30℃で合わせることにより、従来の電解質組成物が製造された。25℃で行われる空気スパージングをしながら、電解質の300mLを1000mLメスシリンダーに入れた。安定な600cmの泡が生じた。スチールハルセル試験パネル片をハルセル中の組成物に浸せきし、3Aの電流で2分間スズ−銀の層をめっきした。達成された最も高い堆積速度は2.4μm/分であった。実施例5の電解質組成物と比較して、従来の電解質組成物は望ましくない水準の泡形成性を有していた。また、実施例5の電解質組成物の堆積速度は従来の組成物の堆積速度よりも大きかった。
【0056】
比較例7
メタンスルホン酸スズからの50g/Lのスズ、メタンスルホン酸銀からの0.4g/Lの銀、70g/Lのメタンスルホン酸、8g/Lの3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール、1g/Lのエチルマルトール、4g/Lのエトキシ化ビスフェノールA(13エチレンオキシド単位)、および脱イオン水(残り)を30℃で合わせることにより、従来の電解質組成物が製造された。フォトレジストでパターン形成された120μm(直径)×50μm(深さ)のバイアを有する4cm×4cmの銅シードウェハセグメントがガラス容器中の組成物に浸せきされ、6A/dmの電流密度でスズ−銀の層をめっきした。得られたスズ−銀層の形態が日立走査型電子顕微鏡で検査された。その層はなめらかで、コンパクトであり、かつノジュールはなかった。しかし、このスズ−銀層はZeiss Axiovert 100A光学顕微鏡のもとでは不均一であった。よって、実施例1〜4のスズ合金組成物で製造されたスズ−銀合金層は、従来の合金によって製造されたスズ−銀層と比較して改良されたスズ−銀形態を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のスズイオン源、金属イオンが銀イオン、銅イオンおよびビスマスイオンからなる群から選択される、1種以上の合金形成金属イオン源、1種以上のフラボン化合物、および式:
HOR(R’’)SR’SR(R’’)OH
(式中、R、R’およびR’’は同じかまたは異なっており、かつ1〜20の炭素原子を有するアルキレン基である)
を有する1種以上の化合物;を含む組成物。
【請求項2】
1種以上の粒子微細化剤/安定化剤化合物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
合金形成金属のイオンが銀である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
1種以上のフラボン化合物が、ペンタヒドロキシフラボン、クリシン、フィセチン、ルチン、クエルセチン、ミリセチンおよびクエルシトリンから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
1種以上の抑制剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
a)1種以上のスズイオン源、金属イオンが銀イオン、銅イオンおよびビスマスイオンからなる群から選択される、1種以上の合金形成金属イオン源、1種以上のフラボン化合物、および式:
HOR(R’’)SR’SR(R’’)OH
(式中、R、R’およびR’’は同じかまたは異なっており、かつ1〜20の炭素原子を有するアルキレン基である)
を有する1種以上の化合物を含む組成物と基体とを接触させ;並びに
b)前記組成物に電流を流して、スズ合金を基体上に堆積させる;
ことを含む方法。
【請求項7】
a)複数の相互接続バンプパッドを有する半導体ダイを提供し;
b)相互接続バンプパッド上にシード層を形成し;
c)1種以上のスズイオン源、金属イオンが銀イオン、銅イオンおよびビスマスイオンからなる群から選択される、1種以上の合金形成金属イオン源、1種以上のフラボン化合物、および式:
HOR(R’’)SR’SR(R’’)OH
(式中、R、R’およびR’’は同じかまたは異なっており、かつ1〜20の炭素原子を有するアルキレン基である)
を有する1種以上の化合物を含む組成物と半導体ダイとを接触させて、前記組成物に電流を流して基体上にスズ合金相互接続バンプ層を堆積させることにより、相互接続バンプパッド上にスズ−合金相互接続バンプ層を堆積させ;並びに
d)相互接続バンプ層をリフローする;
ことを含む方法。

【公開番号】特開2010−174373(P2010−174373A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−141(P2010−141)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】