説明

鉛フリーはんだ標準物質及びその製造方法

【課題】元素の分布が均一な鉛フリーはんだ標準物質及びその製造方法を提供する。
【解決手段】錫を母材とする鉛フリーはんだ材料粉末と被測定材料を含む化合物をそれぞれ秤量し(S10)、混合して二種類の材料が均一に分散するまで攪拌して混合物を作製する工程(S20)と、混合物を加圧して成形する工程(S30)を有する。鉛フリーはんだ材料粉末に銀、インジウム、銅、亜鉛、ビスマス、アンチモン、ゲルマニウムからなる群より選ばれた少なくとも一種類の元素である含有物質が含有される。また化合物は、鉛、カドミウム、クロム、水銀、ヒ素、セレン、亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも一種類の元素を含み、含有物質に含まれる元素を含まない化合物であるとともに、無機金属、有機金属、有機金属錯体の少なくとも一つからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に蛍光X線分析装置で用いられる鉛フリーはんだ標準物質及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、はんだ合金は錫−鉛(Sn−Pb)系合金が用いられていたが、最近では環境汚染の観点から鉛(Pb)やカドミウム(Cd)等の有害物質が問題となっており、この有害物質の含有量を低減させた鉛フリーはんだへの切り替えが求められている。
有害物質を規制する取り決めの中でも最も重要なものの一つにRoHS指令があり、その中で、鉛は1,000ppm以下、カドミウムは100ppm以下等と、RoHS指令によって特定有害物質の種類とその濃度が定められ、欧州連合加盟国内において販売できるのはこれらの基準を満たした部品を用いた電子・電気機器製品などである。そして電子・電気機器製品などでは、使用されている部品を接合する目的ではんだが用いられている。
【0003】
また、電子・電気機器製品などで用いられている部品中の有害物質を特定し定量する主な装置の一つとして、蛍光X線分析装置がある。この蛍光X線分析装置は、X線を鉛フリーはんだ等の分析したい試料に照射して、試料の蛍光X線を測定し解析することによって、試料のさまざまな構成や含有量などを分析する。
そして蛍光X線分析装置を用いる鉛フリーはんだ分析においては、検量線法が主に用いられる。その際に後述する鉛フリーはんだ材料に、100ppmや1,000ppmという既知量の被測定材料を材質が均一になるように含有させた鉛フリーはんだ標準物質を必要とする。
【0004】
鉛フリーはんだ材料はとしては、錫を母材とするSn−Zn−Bi(錫−亜鉛−ビスマス)系や、Sn−3.0%Ag−0.5%CuなどのSn−Ag−Cu(錫−銀−銅)系などが知られている。
また、鉛フリーはんだ標準物質に含有させる被測定材料としては、有害物質である鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、クロム(Cr)、水銀(Hg)、ヒ素(As)、セレン(Se)、亜鉛(Zn)が挙げられる。
【0005】
従来の鉛フリーはんだ標準物質の第一の製造方法として、特許文献1に示した従来の鉛フリーはんだの製造方法と同様に、鉛フリー合金を溶解する製造方法が知られている。この製造方法は、錫(Sn)を母材として銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)およびビスマス(Bi)からなる群より選ばれた一種類の金属を含有する亜共晶組成からなる合金を、融点以上まで温度を加えて完全に融解した後に、鋳型に流し込んで温度を下降させて凝固させるものである。
さらに従来の鉛フリーはんだ標準物質の第二の製造方法として、錫(Sn)の粉末に、銅(Cu)などの粉末を加え、その金属粉末にカドミウム(Cd)の標準液と、1%鉛(Pb)硝酸溶液を添加して、それを乾燥させた後に粉砕混合し、さらに加圧して形成するものがある(例えば、非特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2005−238328号公報
【非特許文献1】古川博朗、外5名、「蛍光X線分析法による各種金属試料中有害元素の定量分析」、X線分析の進歩、2007年、通号38号、p.347−360
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の鉛フリーはんだ標準物質の第一の製造方法で作製した標準物質は、鉛フリーはんだ材料に鉛、カドミウム、クロム等の被測定材料を添加して融解後に冷却し凝固させるが、その際に被測定材料の分布が偏ってしまう問題があった。
また、第二の製造方法で作製した標準物質は、母材である錫粉末に被測定材料を含む溶液を加えて攪拌するので、錫粉末に添加した標準液が局所的にたまってしまうなど、不均一な状態で乾固することがあり、加圧加工した後の合金の成分が不均一になることがあった。
蛍光X線などの分析方法では、試料の微小領域にX線を絞って照射する必要があるので、鉛フリーはんだ標準物質中の被測定材料の分布に偏りがあった場合には、定量測定の精度が悪くなってしまう。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、元素の分布が均一な鉛フリーはんだ標準物質及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の鉛フリーはんだ標準物質の製造方法は、錫を母材とする鉛フリーはんだ材料粉末と被測定材料を含む化合物を混合し攪拌して混合物を作製する工程と、前記混合物を加圧して成形する工程を有することを特徴としている。
また本発明の鉛フリーはんだ標準物質は、錫を母材とする鉛フリーはんだ材料粉末と被測定材料を含む化合物を混合攪拌して混合物を作製し、作製した該混合物を加圧して成形されてなることを特徴としている。
【0009】
この発明に係る鉛フリーはんだ標準物質及びその製造方法によれば、ともに粉末など固体状態の材料を混合し攪拌するので、合金を一度融解してから冷却させたり、溶液が乾固したときの不均一になる要素がなく、鉛フリーはんだ標準物質中の元素を均一に分散できる。
また混合した材料を加圧して成形するので成形品に残留応力が少なく、残留応力の分布も均一になり、小型で機械的強度が高い標準物質になる。
【0010】
本発明の鉛フリーはんだ標準物質の製造方法は、前記化合物は、無機金属、有機金属、有機金属錯体の少なくとも一つからなることがより好ましいとされている。
この発明に係る鉛フリーはんだ標準物質の製造方法によれば、様々な成分の化合物を有する鉛フリーはんだ標準物質を提供することができる。
【0011】
本発明の鉛フリーはんだ標準物質の製造方法は、前記鉛フリーはんだ材料粉末に銀、インジウム、銅、亜鉛、ビスマス、アンチモン、ゲルマニウムからなる群より選ばれた少なくとも一種類の元素である含有物質が含まれることがより好ましいとされている。
この発明に係る鉛フリーはんだ標準物質の製造方法によれば、測定したい物質を含む鉛フリーはんだ標準物質を製造することができる。
【0012】
本発明の鉛フリーはんだ標準物質の製造方法は、前記化合物は、鉛、カドミウム、クロム、水銀、ヒ素、セレン、亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも一種類の元素を含み、前記含有物質に含まれる元素を含まない化合物であることがより好ましいとされている。
含有物質に鉛が選ばれた場合には、被測定材料を含む化合物は、鉛を含まない、カドミウム、クロム、水銀、ヒ素、セレン、亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも一種類の元素を含む化合物とする。そして、含有物質に鉛が選ばれない場合には、被測定材料を含む化合物は、鉛、カドミウム、クロム、水銀、ヒ素、セレン、亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも一種類の元素を含む化合物とする。
この発明に係る鉛フリーはんだ標準物質の製造方法によれば、測定したい物質を含む鉛フリーはんだ標準物質を製造することができる。
【0013】
本発明の鉛フリーはんだ標準物質の製造方法は、前記化合物は、酸化物系の粉末であることがより好ましいとされている。
この発明に係る鉛フリーはんだ標準物質の製造方法によれば、被測定材料の化合物として酸化物系の粉末を用いるので、材料を容易に入手することができる。
【0014】
本発明の鉛フリーはんだ標準物質の製造方法は、前記鉛フリーはんだ材料粉末の粒径と、前記化合物の粒径がともに50μm以下であることがより好ましいとされている。
この発明に係る鉛フリーはんだ標準物質の製造方法によれば、鉛フリーはんだ材料粉末と被測定材料粉末を含む化合物の粉末において、粒径をともに50μm以下としたので、材料同士が接触する面積が大きくなり機械的強度が高い標準物質を製造できる。粒径が50μmより大きくなると、混合した材料を加圧しても材料同士で接触する面積が少なくなり、標準物質の機械的強度は実用に耐える高さにならない場合がある。
【0015】
本発明の鉛フリーはんだ標準物質は、一次X線の照射によって発生する蛍光X線を分析する蛍光X線分析装置に用いられることがより好ましいとされている。
この発明に係る鉛フリーはんだ標準物質によれば、機械的強度が高く、元素の分布も均一なので、蛍光X線分析における分析の正確性と作業性が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、元素の分布が均一な鉛フリーはんだ標準物質が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面に従って詳細に説明する。図1は本発明の鉛フリーはんだ標準物質の第1実施形態である。鉛フリーはんだ標準物質30は、後述する蛍光X線分析装置10の測定で用いられ、本実施例では錠剤状の形をしている。その直径は10〜32mm、厚さは1〜5mmのものを用いられている。
【0018】
図2は本発明の鉛フリーはんだ標準物質を用いる蛍光X線分析装置の構成を示す断面図である。
図2に示すように、蛍光X線分析装置10は、外筐11と、鉛フリーはんだ標準物質30を支持する試料台12と、鉛フリーはんだ標準物質30に一次X線Pを発生するX線源13と、一次X線Pの照射によって鉛フリーはんだ標準物質30から発生する蛍光X線Qのエネルギー及び強度を検出する検出器14とを備える。
試料台12は、外筐11の内部に設けられており、外筐11の内部を試料台12の上方の試料室11aと、X線源13及び検出器14が配置された計測室11bとに仕切っている。試料室11aの上方には、開口部11cが形成され、試料室上蓋11dが開閉可能に設けられている。
【0019】
試料台12は、上面12aから下面12bに貫通する窓部16を有する。そして、試料台12は、鉛フリーはんだ標準物質30の被照射面30aが窓部16から下方に露出した状態で鉛フリーはんだ標準物質30を上面12aに載置させることができる。
なお、本実施形態の蛍光X線分析装置10では、図示しないがさらに、制御部、計算機部、増幅器、波高分析器、モニターなどを備え、検出した蛍光X線Qを分析する。
そして蛍光X線分析装置10で測定をする際には、上面12aに鉛フリーはんだ標準物質30を載置させるが、試料20を測定する際には、鉛フリーはんだ標準物質30に替えて試料20を載置させる。
【0020】
本発明の鉛フリーはんだ標準物質30の製造方法の第1実施形態に関して、図3は工程を示す説明図であり、図4はフローチャートである。以下ではこの二つの図を参照して、本実施形態では一般的なSn−3.0%Ag−0.5%Cuの鉛フリーはんだ材料に被測定材料として鉛を所定の濃度含有した鉛フリーはんだ標準物質30の製造方法を説明する。
図3の(a)に示すように、錫を母材とする鉛フリーはんだ材料粉末31と、酸化物系の粉末である酸化鉛(PbO)の粉末32が、それぞれ容器51に所定の重量を秤量した状態で収容されている。鉛フリーはんだ材料粉末31は、Sn−3.0%Ag−0.5%Cuの鉛フリーはんだ材料を粒径が50μm以下の粒子にしたものであり、酸化鉛粉末32は、酸化鉛(PbO)を粒径が50μm以下の粒子にしたものである。
なお、酸化鉛(PbO)は、被測定材料である鉛(Pb)を含む化合物であり、無機金属であり、鉛フリーはんだ材料粉末31に含有物質として銀と銅が含まれる。
【0021】
そして、鉛フリーはんだ材料粉末31と、酸化鉛粉末32をそれぞれ所定の重量に秤量し(ステップS10)、図3の(b)に示すように、鉛フリーはんだ材料粉末31と酸化鉛粉末32を一つの容器51で混合し、この二種類の粉末が均一に分散するまで攪拌して混合物52を作製する(ステップS20)。
つぎに図3の(c)に示すように、空洞を有する内筒53内に配置したダイス54の間に、作製した混合物52を入れ、上下のダイス54と押し棒55を介してプレス機(図示せず)を用いて混合物52を加圧しながら保持するダイス法を用いて、図3の(d)に示すような錠剤状の鉛フリーはんだ標準物質30を成形させる(ステップS30)。
【0022】
こうしてSn−3.0%Ag−0.5%Cuの鉛フリーはんだ材料に鉛を所定の濃度含有させた鉛フリーはんだ標準物質30が製造される。
なお、混合物52を鉛フリーはんだ標準物質30に成形するのに、ダイス法でなく、アルミニウムリングの中に作成した混合物52を入れ、上下のダイスを介してプレス機(図示せず)を用いて混合物52を加圧しながら保持するリング法を用いてもよい。
【0023】
こうして本発明の第1実施形態に係る鉛フリーはんだ標準物質の製造方法は、ともに粉末状態の材料を混合し、二種類の材料が均一に分散するまで攪拌する。このため、鉛フリーはんだ標準物質30中の元素の分布が均一になる。
また混合した粉末を加圧して成形するので、錠剤状に成形される各部位の粉末は応力がほぼ均等に加えられて成形される。このため成形品の残留応力が少なく、残留応力の分布も均一になり、機械的強度が高い標準物質が得られる。これに対し、前記従来の第一の製造方法で鋳型に流し込まれた融解した鉛フリーはんだ標準物質は、鋳型に接する部分から凝固して収縮し、最後に中央部が凝固する。このため標準物質中の残留応力が大きくなり、残留応力の分布も不均一になる。
そして無機金属である酸化鉛(PbO)を被測定材料を含む化合物として用いるので、材料を容易に入手することができる。さらに鉛フリーはんだ材料粉末31と酸化鉛(PbO)の粉末32の粒径をともに50μm以下としたので、材料同士が接触する面積が大きくなり、機械的強度が高い標準物質を製造できる。
【0024】
図5は本発明の鉛フリーはんだ標準物質の製造方法の第2実施形態の工程を示す説明図であり、一般的なSn−3.0%Ag−0.5%Cuの鉛フリーはんだ材料に被測定材料として鉛を所定の濃度に含有した鉛フリーはんだ標準物質30の製造方法を説明する。
なお説明の便宜上、本発明の第2実施形態において、前述の第1実施形態で説明した構成要素と同一の構成要素については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0025】
図5の(a)に示すように、鉛フリーはんだ材料となる錫粉末33と、銀粉末34と、銅粉末35と、被測定材料として酸化鉛粉末32が、それぞれ容器51に所定の重量を秤量した状態で収容されている。そして、錫粉末33と、銀粉末34と、銅粉末35と、酸化鉛(PbO)の粉末である酸化鉛粉末32は、それぞれが粒径50μm以下の粒子になっている。
なお、錫粉末33は、錫を母材とする鉛フリーはんだ材料粉末31に含有物質が何も含まれない場合に相当する。
【0026】
そして、図5の(b)に示すように、四種類の粉末を一つの容器51に入れて混合し、この二種類の粉末が均一に分散するまで攪拌して混合物52を作製する。
これ以降の工程は、本発明の第1実施形態と同一なので説明を省略する。
【0027】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0028】
上記第1実施形態及び第2実施形態では、被測定材料を含む化合物が粉末である場合を例にして説明したが、被測定材料を含む化合物は粉末に限られるものではなく、固体状態である形状の材料でもよい。
また、上記第1実施形態及び第2実施形態では、被測定材料を含む化合物を無機金属の酸化鉛(PbO)としたが、無機金属、有機金属、有機金属錯体の少なくとも一つからなる化合物でもよい。
【0029】
また上記第1実施形態及び第2実施形態では、鉛フリーはんだ材料は、錫を母材とし含有物質として銀と銅を含むSn−Ag−Cu(錫−銀−銅)系の合金としたが、本発明はこれに限定されるものではない。
これ以外にSn−Sb(錫−アンチモン)系、Sn−Cu(錫−銅)系、Sn−Cu−Ag(錫−銅−銀)系、Sn−Ag(錫−銀)系、Sn−Ag−Cu−Bi(錫−銀−銅−ビスマス)系、Sn−Ag−Cu−Sb(錫−銀−銅−アンチモン)系、Sn−Ag−Cu−Bi−In(錫−銀−銅−ビスマス−インジウム)系、Sn−Ag−Bi−In(錫−銀−ビスマス−インジウム)系、Sn−Zn(錫−亜鉛)系、Sn−Zn−Bi(錫−亜鉛−ビスマス)系、Sn−Bi(錫−ビスマス)系、Sn−In(錫−インジウム)系、Sn−Bi−Ag(錫−ビスマス−銀)系、Sn−Bi−Ag−Cu−Ge(錫−ビスマス−銀−銅−ゲルマニウム)系の鉛フリーはんだ材料を用いてもよい。
【0030】
また第1実施形態及び第2実施形態では、被測定材料を含む化合物は酸化鉛としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、以下の物質のうちの一種類以上の物質で構成されるものでもよい。ただし、含有物質に鉛が選ばれた場合には、被測定材料がカドミウム、クロム、水銀、ヒ素、セレン、亜鉛である下記の化合物から選択する。
被測定材料が鉛である場合の被測定材料を含む化合物としては、鉛−シクロヘキシル酪酸、クロム酸鉛、硝酸鉛(II)、シクロヘキサンブチル鉛、酢酸鉛(II)三水和物、臭化鉛、炭酸鉛、マレイン酸鉛(II)、酸化鉛、モリブデン酸鉛、硫酸鉛、チオシアン酸鉛がある。
被測定材料がカドミウムである場合の被測定材料を含む化合物としては、シクロヘキサンブチルカドミウム、酸化カドミウム、酢酸カドミウム二水和物、炭酸カドミウム、塩化カドミウム、ヨウ化カドミウム、硝酸カドミウム四水和物がある。
被測定材料がクロムである場合の被測定材料を含む化合物としては、酸化クロム(III)、酸化クロム(VI)、臭化クロム(III)六水和物、塩化クロム(III)六水和物、硝酸クロム(III)九水和物、リン酸クロム(III)六水和物、クロム(III)アセチルアセトナート、クロム(III)ベンジルアセテート、クロム(III)ベンジルアセチックアセテート、クロム酸バリウム、クロム酸ストロンチウム、クロム酸鉛、酸化クロム水和物、クロム−アセチルアセトナート錯体、クロム酸亜鉛がある。
被測定材料が水銀である場合の被測定材料を含む化合物としては、酸化水銀、硫化水銀、酢酸水銀、臭化水銀、シアン化水銀、チオシアン酸水銀、アセタト(フェニル)水銀(II)、ジフェニル水銀、ジクロロアンミン水銀がある。
被測定材料がヒ素である場合の被測定材料を含む化合物としては、トリ−n−ブトキシヒ素、トリエトキシヒ素、トリメトキシヒ素、三酸化二ヒ素、トリ−n−プロポキシヒ素、アルセナゾIII、フェニルアルソン酸、三ヨウ化ヒ素、三塩化ヒ素、三硫化二ヒ素がある。
被測定材料がセレンである場合の被測定材料を含む化合物としては、セレン酸、二酸化セレン、硫化セレン、四フッ化セレン、二塩化二セレン、四臭化セレン、四ヨウ素化セレンがある。
そして被測定材料が亜鉛である場合の被測定材料を含む化合物としては、シクロヘキシルブチル亜鉛、亜鉛アセチルアセトナート錯体、酢酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトナート、安息香酸亜鉛、臭化亜鉛、ホウ酸亜鉛、塩化亜鉛、クエン酸亜鉛がある。
【0031】
また第1実施形態及び第2実施形態では、粉末の粒径を50μm以下としたが、粒径は小さいほうがより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の鉛フリーはんだ標準物質の第1実施形態の斜視図である。
【図2】本発明の鉛フリーはんだ標準物質を用いる蛍光X線分析装置の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の鉛フリーはんだ標準物質の製造方法の第1実施形態の工程を示す説明図である。
【図4】本発明の鉛フリーはんだ標準物質の製造方法の第1実施形態の工程を示すフローチャートである。
【図5】本発明の鉛フリーはんだ標準物質の製造方法の第2実施形態の工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
30 鉛フリーはんだ標準物質
31 鉛フリーはんだ材料粉末
32 酸化鉛粉末(被測定材料粉末)
52 混合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錫を母材とする鉛フリーはんだ材料粉末と被測定材料を含む化合物を混合し攪拌して混合物を作製する工程と、
前記混合物を加圧して成形する工程を有することを特徴とする鉛フリーはんだ標準物質の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の鉛フリーはんだ標準物質の製造方法において、
前記化合物は、無機金属、有機金属、有機金属錯体の少なくとも一つからなることを特徴とする鉛フリーはんだ標準物質の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の鉛フリーはんだ標準物質の製造方法において、
前記鉛フリーはんだ材料粉末に銀、インジウム、銅、亜鉛、ビスマス、アンチモン、ゲルマニウムからなる群より選ばれた少なくとも一種類の元素である含有物質が含まれることを特徴とする鉛フリーはんだ標準物質の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の鉛フリーはんだ標準物質の製造方法において、
前記化合物は、鉛、カドミウム、クロム、水銀、ヒ素、セレン、亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも一種類の元素を含み、前記含有物質に含まれる元素を含まない化合物であることを特徴とする鉛フリーはんだ標準物質の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の鉛フリーはんだ標準物質の製造方法において、
前記化合物は、酸化物系の粉末であることを特徴とする鉛フリーはんだ標準物質の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の鉛フリーはんだ標準物質の製造方法において、
前記鉛フリーはんだ材料粉末の粒径と、前記化合物の粒径がともに50μm以下であることを特徴とする鉛フリーはんだ標準物質の製造方法。
【請求項7】
錫を母材とする鉛フリーはんだ材料粉末と被測定材料を含む化合物を混合攪拌して混合物を作製し、作製した該混合物を加圧して成形されてなることを特徴とする鉛フリーはんだ標準物質。
【請求項8】
請求項7に記載の鉛フリーはんだ標準物質において、
一次X線の照射によって発生する蛍光X線を分析する蛍光X線分析装置に用いられることを特徴とする鉛フリーはんだ標準物質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−90343(P2009−90343A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264414(P2007−264414)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【Fターム(参考)】