説明

鉛フリーバンプおよびその形成方法

本発明は、めっき膜中でのAg濃度を調整したSn−Ag系はんだ合金めっき膜をリフローすることにより得られるボイドの発生が抑制された鉛フリーバンプおよびその形成方法に関する。本発明の鉛フィリーバンプは、Sn−Agの共晶形成濃度より低いAg含量のSn−Ag系合金膜をめっきにより形成し、当該合金めっき膜をリフローすることにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、鉛フリーバンプおよびその形成方法に関し、更に詳細には、めっき膜中でのAg濃度を調整したSn−Ag系はんだ合金めっき膜をリフローすることにより得られる、ボイドの発生が抑制された鉛フリーバンプおよびその形成方法、並びに鉛フリーバンプ形成用めっき装置に関する。
【背景技術】
半導体素子などの表面実装技術において、はんだ付けを信頼性良く行うことは非常に重要である。これまで、はんだとして鉛含有の共晶はんだ(Sn:Pn=63:37)が広く使われてきたが、環境汚染や鉛から発生するα線の問題から、鉛フリーのはんだの開発が進められている。
例えば、印刷法や電気めっき法による鉛フリーはんだの研究が進められているが、印刷法では金属マスクによるファインピッチへの対応に限界があるため、例えばウエハバンプの形成には電気めっき法が主流になりつつある。
ところで、ウエハバンプを電気めっきで形成する場合、形成しためっき膜をボール形態にするために加熱操作(リフロー)を行うのが普通である。このリフロー温度は、基板に存在する他の部品への熱損傷を回避するために、できるだけ低い温度であることが好ましい。そのために多くのはんだ合金の開発では、共晶点を利用し、合金の組成比を限りなく共晶組成に近づけることが考えられてきた。
しかし、電気めっき法により形成したバンプをリフローした場合、バンプ内にボイドが発生するという問題があった。特にSn−Ag系合金のバンプの場合、ボイドの発生率が高く、バンプとしての信頼性を著しく低下させていた。
【発明の開示】
従って、電気めっき法により、リフロー後にボイド発生の無いSn−Ag系の鉛フリーバンプを形成する手段の開発が求められており、このような手段を提供することが本発明の課題である。
本発明者らは、ボイド発生のない鉛フリーバンプを得るべく検討を行った結果、Sn−Ag系はんだ合金めっきによりバンプを形成する場合は、このめっき膜中に含有されるAg濃度がボイド発生に大きく影響することを知った。より詳しくは、Sn−Ag系の鉛フリーバンプに含有するAg濃度がSn−Agの共晶組成比近傍から組成比以上になるとリフロー後にバンプ内にボイドが発生することが判った。そこで、更に研究を行った結果、Sn−Ag系はんだ合金めっき膜をバンプに使用したときに、確実にバンプ内のボイド発生を防ぐためには、Sn−Agの共晶組成比(重量比、Sn:Ag=96.5:3.5/Ag含量、3.5質量%)よりも低いAg濃度の合金めっき膜を用いてバンプを形成することが必要であることを見出した。
しかも、Sn−Agの共晶組成比よりもAg濃度が低下すると、リフロー温度が上昇すると思われていたが、Ag含有濃度を下げていっても、融点に大きな上昇は見られず、リフロー温度も大きく上昇する必要が無いことも見出した。
本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、Sn−Agの共晶形成濃度より低いAg含量のSn−Ag系合金膜をめっきにより形成し、当該合金めっき膜をリフローすることにより得られる鉛フリーバンプを提供する。
また本発明は、バンプを形成すべき部分に、Sn−Agの共晶形成濃度より低いAg含量のSn−Ag系合金めっき膜が形成されるようめっき浴組成及び電析条件を制御しつつSn−Ag系合金めっきを行い、次いで得られた当該合金めっき膜をリフローすることを特徴とする鉛フリーバンプの形成方法を提供する。
更に本発明は、AgイオンおよびSnイオンを含有するめっき液を入れるめっき槽と、アノード電極と、被処理物を保持して該被処理物に給電するホルダと、前記アノード電極及び前記ホルダで保持した被処理物の各々に給電する電析用電源と、Agイオン及びSnイオンを補充する補充機構と、Agイオン及びSnイオンをモニターする分析装置と、前記分析装置からの分析情報を基に、前記被処理物の表面に形成されるSn−Ag系合金めっき膜中のAg含量をSn−Agの共晶形成濃度よりも低く制御するための制御機構とを有する鉛フリーバンプ形成用めっき装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
図1は、合金めっき液中のAgイオンとSnイオンの濃度比とめっき膜中のAg含有濃度の関係を示す図面である。
図2は、直流を連続的に印加してめっきを行ったときにおける電流密度とめっき膜中のAg含有濃度の関係を示す図面である。
図3は、直流を連続的に印加してめっきを行ったとき(連続直流めっき)と直流を間歇的に印加してめっきを行ったとき(間歇めっき)でのめっき膜中のAg含有濃度の相違を示す図面である。
図4は、本発明のめっき装置の一例を示す図面である。
図5は、リフロー処理に用いる赤外線加熱炉の一例を示す図面である。
図6Aは、実施例1でAgの定量分析を行う際における試料のリフロー前の採取部を示す図で、図6Bは、実施例1でAgの定量分析を行う際における試料のリフロー後の採取部を示す図である。
図7Aは、実施例1におけるリフロー前のバンプを示すSEM写真で、図7Bは、図7Aで示すバンプを225℃でリフローした後のSEM写真で、図7Cは、図7Aに示すバンプを230℃でリフローした後のSEM写真で、図7Dは、図7Aに示すバンプを238℃でリフローした後のSEM写真である。
図8は、Ag濃度が2.6質量%のSn−Ag系合金めっき膜を238℃でリフローして形成したバンプ断面のSEM写真である。
図9は、Ag濃度が3.4質量%のSn−Ag系合金めっき膜を238℃でリフローして形成したバンプ断面のSEM写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の鉛フリーバンプは、Ag濃度をSn−Agの共晶形成濃度より低い含量(3.5質量%以下)となるよう電析条件を制御したSn−Ag系合金めっき(以下、単に「合金めっき」という)によりSn−Ag系合金めっき膜を析出させ、次いでこれをリフローすることにより得られる。
ボイドの発生防止の観点からは、合金めっき膜中のAg濃度の上限を上記濃度に制御するのみでよいが、Ag濃度が2.6〜3.5質量%の間では、ボイドが発生したり、発生しなかったりするので、ボイドを完全に避けるという意味で、合金めっき膜中のAg濃度を2.6質量%以下とすることが好ましい。
また、実用性の面からは、リフロー温度をあまり上げないこと(例えば、最高リフロー温度240℃以下)が望ましい。このためには、合金めっき膜中に含有するAg濃度の下限を1.6質量%とすることが好ましい。すなわち、実用的に好ましいバンプを形成するためには、合金めっき膜中のAg濃度が1.6〜2.6質量%にあることが好ましい。
このように、本発明では、合金めっき膜中のAg濃度を3.5質量%以下、好ましくは1.6〜2.6質量%となるよう制御しつつめっきを行うことが必要である。
また、前述のようにして、合金めっき膜をリフローして得られる鉛フリーバンプは、その表面から放出されるα線放出量が0.02cph/cm以下であることが好ましい。
鉛には、天然放射性元素を含む複数の同位体がある。鉛の同位体は、ウランおよびトリウム崩壊系列中の中間生成物あるいは最終生成物であり、崩壊過程においてα線を放出する。α線は、半導体集積回路の半導体素子に作用してソフトエラーを引き起こす問題点がある。Snや他の元素にも、これら天然放射性元素を僅かではあるが含み、このため、Sn−Ag系鉛フリーバンプにおいても、α線が放出され、その放出量を低く抑えることは重要である。そこで、鉛フリーバンプの表面から放出されるα線放出量を0.02cph/cm以下に低く抑えることで、半導体集積回路素子のα線の影響によるソフトエラーを抑えることができる。
一般に合金めっきにおける析出成分組成は、めっき液中の各成分濃度や、電析条件で決定する。従って、本発明の合金めっきにおいても、合金めっき液中のAgイオンとSnイオンとの濃度比を調整したり、電析条件を制御したりすることにより、合金めっき膜中のAg濃度を上記範囲とすることができる。具体的には、(a)めっき浴中のAgイオンとSnイオンの濃度比を一定にし、電析条件を変化させることにより合金めっき膜中のAg濃度を制御する方法や、(b)電析条件を一定にし、めっき浴中のAgイオンとSnイオンの濃度比を変化させることにより合金めっき膜中のAg濃度を制御することができる。
すなわち、合金めっき液中には、合金を形成する金属のイオンの他、金属イオンを安定化する錯化剤や、めっき膜表面を綺麗に形成するための光沢剤、あるいはその他の添加剤が配合されている。しかし、合金めっき膜中のAg濃度を主に決めるものは合金めっき浴中のAgイオンとSnイオンの濃度比であるから、実験的に好ましい範囲を見出し、この濃度比を維持しつつめっきすることにより、Ag濃度が制御された合金めっき膜が得られる。実際、電析条件を固定した状態で、合金めっきを行った場合、合金めっき膜中のAg濃度は、模式的に図1に示すように、めっき液中に存在するAgイオンとSnイオンとの濃度比と比例関係にあった。
従って、被処理物を、AgイオンとSnイオンを所定の濃度比とした合金めっき液に浸漬させ、一定の電析条件でめっきすれば、Ag濃度の制御された合金めっき膜が得られ、これをリフローすることにより、ボイド発生のないバンプが得られる。
本発明で使用される合金めっき液の一例としては、次のめっき液を挙げることができる。
組成:
Snイオン(Sn2+):10〜100g/L(好適には35〜50g/L)
Agイオン(Ag):0.3〜8g/L(好適には0.6〜4g/L)
メタンスルホン酸: 100g/L
また、合金めっきでは、電析条件により析出成分組成が異なることは知られており、本発明の合金めっきでも、電析条件を変化させることにより、合金めっき膜中のAg濃度を変化させることができる。
本発明の合金めっきは、種々の電流パターンで行うことができ、直流電流を連続的に印加してめっきを行う直流めっきであっても、直流電流を間歇的に印加してめっきを行うことで周期的に休止期が存在する間歇めっきであっても良い。
直流電流を連続的に印加してめっきを行う直流めっきの場合は、図2に模式的に示すように、電流密度が高くなるほど合金めっき膜中のAg含有濃度が低下する関係があるので、好ましい電流条件を実験的に決め、この条件を維持しつつめっきすればよい。この直流めっきの場合の好ましい電流密度は、10〜100mA/cm程度である。
また、直流電流を間歇的に印加してめっきを行うことで周期的に休止期が存在する間歇めっきの場合は、図3に模式的に示すように、直流を連続して印加する場合と同じ電流を間歇的に印加する場合のAg含有濃度が異なるので、この場合も、好ましい印加電圧、休止時間の割合等を実験的に定め、この条件を維持しつつめっきすればよい。この間歇めっきの場合の好ましい印加時電流密度は、10〜200mA/cm程度であり、休止時間(ゼロ電流)は、印加時間の1/10〜1の範囲である。
上記両めっきでの印加電圧は、電流強度、下地材料、厚さ、めっき液、アノードなどの条件によっても変動するが、1〜5V程度であることが好ましい。
上記した合金めっきを実施するための装置としては、特に制約はなく、一般のディップ式めっき装置等を使用することができる。しかし、実際の作業にあたっては、被処理物の機械的条件を考慮した治具構造、金属イオンをウエハ等の被処理物の全面に均一かつ迅速供給するための撹拌機構(パドル構造)、電場分布を均一にさせるためのマスクの形状と大きさ、異物をとり、めっき液の変質を防ぎ、金属イオンを被処理物全面に均一かつ迅速に提供するためのめっき液循環システム等を考慮した装置を使用することが好ましい。
また、前記のように、めっき液中のAgイオンやSnイオンの濃度の調整や、電析条件を制御しつつ合金めっきを行うことが必要であるため、Agイオン及びSnイオンを補充する補充機構、Agイオン及びSnイオンをモニターする分析装置および分析装置からの分析情報をもとに、合金めっき液中のAgイオンやSnイオンの濃度の調整および/または電析条件を制御するための制御機構を有するめっき装置を使用することが好ましい。このめっき装置の一例を図4に示す。
図4中、1はめっき装置、2はめっき槽、3はアノード電極、4はホルダ、5は被処理物、6は電析用電源、7は導電線、8a〜8cは補充機構、9は分析装置、10は制御機構、11はオートサンプラー、12a〜12cは送液ポンプ、13は開閉弁、14は排液口をそれぞれ示す。
このうち、分析装置9は、めっき制御の指針として、めっき装置の運転中に消費されたり損失されたりすることに伴うAgイオン及びSnイオンの濃度変化を定期的にまたは連続的に分析しモニターする装置であり、例えば、原子吸光分析装置等が使用できる。
また制御機構10は、例えば制御用コンピュータであり、分析装置9からの分析情報により、Agイオン(溶液)、Snイオン(溶液)等の最適補充量を求め、補充機構8a〜8cの結合された送液ポンプ12a〜12cを作動させ、Agイオン(溶液)やSnイオン(溶液)等をめっき液中に添加する。
更に、補充機構8a〜8cには、Agイオン溶液や、Snイオン溶液を補充する部分の他、めっき液組成を調整するための水や添加剤を補充する部分を追加しても構わない。
前記アノード電極3、ホルダ4およびめっき槽2は、めっき装置1によって形成されるSn−Ag系合金めっき膜の表面から放出されるα線放出量が、0.02cph/cm以下となるように、α線放出量が低く抑えられている材料で構成されている。このように、めっきにより形成される合金めっき膜からなるバンプに取り込まれる前記天然放射性元素を低く抑えることにより、バンプから放出されるα線量を低く抑えて、半導体集積回路素子のアルファー線影響によるソフトエラーを抑えることができる。
アノード電極3は、不溶解性アノードであっても、溶解性アノードであってもよい。アノード電極3を不溶解性アノードとすることで、交換することなく、継続して使用することができる。また、アノード電極3としてとして溶解性アノードを使用した場合には、Snアノードを使用することで、アノードからSnイオンをめっき運転中にめっき液に供給することができ、これによって、めっき液の管理や金属イオン補給作業を軽減することができる。
前記制御機構10は、めっき液組成に対する最適な電析条件(上記の印加電流密度及び電圧印加方法)に制御することが望ましく、少なくとも前記のAgイオン及びSnイオンの補充量による制御とのどちらか一方を持つことが必要である。
実際のめっきの析出挙動は、前記の合金めっき液中のAgイオンとSnイオンの濃度比や、電析条件のみならず、多くの要因によって影響を受ける。例えば、めっき液中に添加される多種の添加剤によっても、合金めっき膜中のAg濃度は変化する。しかし、多くの場合、これらの添加剤の物質名や添加量は、添加剤メーカーのノウハウとして開示されない。
従って、本発明のバンプの形成に当たっては、一定の合金めっき液において、予め、電気めっきの電流密度、電圧印加方法、めっき液中のAgイオンとSnイオンとの濃度比を振って実験を行い、形成したバンプ中に含有するAgの重量濃度を測定し、これをもとに最適条件を求めて合金めっきを行うことが必要となる。
このようにすることにより、めっき液の組成を安定化し、更には所望のAg含有濃度を有するバンプを安定して形成することが可能となる。
以上のようにして形成された合金めっき膜は、次にリフロー処理に付され、バンプとされる。このリフロー処理は、例えば図5に示す装置(赤外線加熱炉)を使用し、不活性ガス雰囲気(たとえば窒素やアルゴン雰囲気)中で加熱することにより行なわれる。図5中、20は赤外線加熱炉、21はチャンバ、22はステージ、23は石英ガラス窓、24は赤外線ランプ、25は被処理物を示す。
この装置によるリフローは、例えば、チャンバ21中に合金めっきが行われた被処理物25をセットし、このチャンバ21中に窒素ガスを8〜30L/min程度で流して、十分にガス置換を行った後、石英ガラス窓23を通し、赤外線ランプ24で加熱することにより行われる。
本発明のバンプ形成においては、リフロー温度は重要である。バンプはプリント回路板等の上に形成されるが、一般的な電子部品の耐熱温度は、240℃といわれている。このため、合金めっきにより形成された合金めっき膜のリフロー工程での最高温度は、240℃以下に抑える必要がある。また、一般にはSn−Ag系のはんだの融点は221℃であり、一般にリフローが可能な最低温度は、融点+10℃で、15秒から45秒保持する必要があるといわれている。このような条件を考慮した場合におけるリフローの温度条件の一例としては、231℃を30秒間保持し、最高到達温度を238℃とする温度条件が挙げられる。
以上説明した本発明の鉛フリーバンプは、例えば、実装基板における配線パッド上のボール状バンプとして利用することができる。
このボール状バンプの形成は、まず、金属ボンドパッドを形成した後、バンプの形状を残してレジストを塗布し、レジストパターンを形成する。ついで、前記方法に従ってAg濃度が制御されたSn−Ag系合金めっき膜を形成する。その後、レジストを剥離し、所定のリフロー温度で処理することにより行われる。
上記方法における、金属ボンドパッドの形成、レジストパターンの形成およびレジストの除去は、何れもこの技術分野における常法に従って行うことができる。
また、本発明の鉛フリーバンプは、種々の半導体基板上に配線パッドを形成するために使用される。具体的には、次の(I)から(IV)の工程により、半導体素子の半導体基板上に鉛フリーバンプを形成することができる。
(I)半導体素子の半導体基板上に配線パッドを形成する工程。
(II)形成された配線パッド上にバリアメタルを形成する工程。
(III)バリアメタル上にSn−Ag系めっきを形成する工程。
(IV)Sn−Ag系めっきをリフローする工程。
上記(I)の半導体素子としては、集積回路(IC)などが含まれる。また、配線パッドに形成される(II)のバリアメタルとしては、公知のバリアメタルが使用される。
次に、実施例および比較例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら制約をされるものではない。
【実施例1】
(1)Sn−Ag系のバンプの調製
ウエハ上に、数多くの開口径φ100μmの穴ができるようレジストを120μm厚で塗布し試料とした。この試料のめっき面積は、149.63cmであった。この試料について次の工程および条件でめっきを行った。
(めっき工程)
脱気(10分)→10%硫酸による前洗浄(1分)→銅めっき→水洗→Niめっき→水洗→Sn−Ag系合金めっき
(めっき条件)
(a)Cuめっき
めっき浴組成:
Cu2+ 220g/L
SO 200g/L
HCl 5mL/L
添加剤 5mL/L
めっき温度:25℃
撹拌:機械撹拌(パドル撹拌速度10m/min)
めっき液循環:流量2.5L/min
電極:銅陽極、電極間距離約7.5mm、アノードマスクφ250mm
陰極電流密度(総電流):5A/dm(7.48A)
めっき厚:2μm
(b)Niめっき
めっき浴組成
Ni(NHSO)・4HO 450g/L
BO 30g/L
NiCl・6HO 10g/L
添加剤 2mL/L
めっき温度:50℃
撹拌:機械撹拌(パドル撹拌速度10m/min)
めっき液循環:流量2.5L/min
電極:ニッケル陽極、電極間距離約75mm、アノードマスクφ250mm
陰極電流密度(総電流):3A/dm(4.49A)
めっき厚:3μm
(c)Sn−Agめっき
めっき浴組成
Sn2+ 40g/L
Ag 1.5g/L
メタンスルホン酸 100g/L
添加剤 10g/L
(ポリオキシエチレン系界面活性剤、チオ尿素、カテコールを重量比で
2:2:1としたもの)
めっき温度:25℃
撹拌:機械撹拌(パドル撹拌速度10m/min)
めっき液循環:流量2.5L/min
電極:チタン陽極、電極間距離約7.5mm、アノードマスクφ250mm
陰極電流密度(総電流):10A/dm(14.9A)、直流めっき
めっき厚:140μm
(2)リフロー処理
上記(1)のめっき後、レジストを除去し、めっき部分を露出させた。このめっき部分について、図5に示すような赤外線加熱炉を用いて、リフロー処理を行った。赤外線加熱炉の温度の制御は、中心の最表層に熱電対を埋め込んだ2インチのシリコンウエハ(センサレー社製、温度計測ウエハ)を赤外線加熱炉のステージ上に置くことにより行った。また、リフローする試料は、そのシリコンウエハ上の熱電対に近づけた位置に置いた。リフロー温度条件は、予備加熱を150〜170℃で90秒、で行った後、30秒で最高温度まで昇温させた。最高温度は238℃とし、リフロー可能最低温度の231℃以上を30秒間保持した後、冷却するというものであった。
また、この加熱炉雰囲気は、窒素で置換し、加熱時も窒素を8L/minで流しながら行った。赤外線加熱炉は、急加熱、急冷が容易に行えるという特徴をもつため利用した。
(3)バンプの組成分析
Sn−Ag合金の元素組成比を次のようにして評価した。当該バンプを樹脂に埋め込み、断面を削りだし、研磨した後に、電子線マイクロ分析(Electron Probe Microanalysis:EPMA)で元素マッピングを行うとともに、図6A及び図6Bに示すような断面内の約10μm×10μmの微小領域の3箇所(l、c、r)でAgの定量分析を行い、それらの平均値をAgの含量とした。
なお、μ蛍光X線分析装置を用いれば、断面を削り出さなくても、大まかな組成比を測定可能であり、また、バンプを酸に溶解し、誘導結合プラズマ質量分析計(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer:ICP−MS)によりウエハ内の組成分布の分析を行うことも可能である。
(4)バンプ形状の確認
Sn−Ag合金めっきを行った後、レジストを除去しためっき部分および各温度でリフローした後のバンプ形状をSEMで観察した。図7Aは、リフロー前のバンプのSEM写真を、図7Bは、225℃でリフローした後のSEM写真を、図7Cは、230℃でリフローした後のSEM写真を、図7Dは、238℃でリフローした後のSEM写真をそれぞれ示す。
(5)ボイドの確認
リフロー温度238℃でリフローした後のバンプの断面形状をSEMで観察した。観察は、ウエハごと樹脂に埋め込み、断面を削りだし、研磨した後に行った。この結果、本実施例のAg濃度が2.6質量%である合金めっき膜(バンプ)では、図8に示すようにボイドのないものであった、これに対し、Ag濃度が3.4質量%である合金めっき膜により形成したバンプでは、図9に示すようなボイドが発生する場合があった。
【実施例2】
合金めっき液中の全金属に対するAgの割合、めっき時の電流密度、電流印加法をそれぞれ変化させて合金めっきを行い、更に238℃でリフローさせた。得られたバンプについて、実施例1と同様にしてバンプ中のAgの含有量、形状およびボイドの有無を調べた。この結果を表1に示す。
【表1】

この結果から明らかなように、バンプ(合金めっき膜)中のAg含有量が2.9%以下の場合にボイドができず、特にAg含有量が1.8〜2.6%の場合は、最高リフロー温度238℃でボール化し、かつボイドができないので、実用性の高い鉛フリーバンプが得られることが示された。
本発明の鉛フリーバンプは、ボイドが発生せず、かつそれほど温度を上げなくても好ましい形状のバンプとなるものである。また、このバンプは鉛を含まず、α線放出による集積回路の誤作動や、環境影響の無いものである。
このように本発明の鉛フリーバンプは、半導体素子などの表面実装技術(SMT)において広く使用することができ、鉛フリーでありながら、はんだ付けを信頼性よく行うことが可能となる。
【産業上の利用の可能性】
本発明は、めっき膜中でのAg濃度を調整したSn−Ag系はんだ合金めっき膜をリフローすることにより得られるボイドの発生が抑制された鉛フリーバンプおよびその形成方法に関する。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】



【図8】

【図9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Sn−Agの共晶形成濃度より低いAg含量のSn−Ag系合金膜をめっきにより形成し、当該合金めっき膜をリフローすることにより得られる鉛フリーバンプ。
【請求項2】
Sn−Ag系合金めっき膜中のAg濃度が、1.6〜2.6質量%である請求項1記載の鉛フリーバンプ。
【請求項3】
前記合金めっき膜をリフローする時の最高温度が、240℃以下である請求項1記載の鉛フリーバンプ。
【請求項4】
前記Sn−Ag系合金膜をめっきにより形成するに当たり、めっき浴組成および電析条件を制御して、該合金めっき膜に含有されるAg濃度をSn−Agの共晶形成濃度より低い量に調整する請求項1記載の鉛フリーバンプ。
【請求項5】
表面から放出されるα線放出量が0.02cph/cm以下である請求項1記載の鉛フリーバンプ。
【請求項6】
バンプを形成すべき部分に、Sn−Agの共晶形成濃度より低いAg含量のSn−Ag系合金めっき膜が形成されるようめっき浴組成及び電析条件を制御しつつSn−Ag系合金めっきを行い、次いで得られた当該合金めっき膜をリフローすることを特徴とする鉛フリーバンプの形成方法。
【請求項7】
Sn−Ag系合金めっき膜中のAg濃度が、1.6〜2.6質量%である請求項6記載の鉛フリーバンプの形成方法。
【請求項8】
前記合金めっき膜をリフローする時の最高温度が、240℃以下である請求項第7記載の鉛フリーバンプの形成方法。
【請求項9】
めっき浴組成及び電析条件の制御を、めっき浴中のAgイオンとSnイオンの濃度比を一定にし、電析条件を変化させることにより行う請求項6記載の鉛フリーバンプの形成方法。
【請求項10】
めっき浴組成及び電析条件の制御を、電析条件を一定にし、めっき浴中のAgイオンとSnイオンの濃度比を変化させることにより行う請求項6記載の鉛フリーバンプの形成方法。
【請求項11】
AgイオンおよびSnイオンを含有するめっき液を入れるめっき槽と、
アノード電極と、
被処理物を保持して該被処理物に給電するホルダと、
前記アノード電極及び前記ホルダで保持した被処理物の各々に給電する電析用電源と、
Agイオン及びSnイオンを補充する補充機構と、
Agイオン及びSnイオンをモニターする分析装置と、
前記分析装置からの分析情報を基に、前記被処理物の表面に形成されるSn−Ag系合金めっき膜中のAg含量をSn−Agの共晶形成濃度よりも低く制御する制御機構とを有する鉛フリーバンプ形成用めっき装置。
【請求項12】
Sn−Ag系合金めっき膜中のAg含量を、1.6〜2.6質量%となるよう制御する請求項第11項記載の鉛フリーバンプ形成用めっき装置。
【請求項13】
Sn−Ag系合金めっき膜中のAg含量の制御を、前記めっき液中のAgイオン及びSnイオンの濃度調整及び/又は電析条件の変更により行う請求項第11記載の鉛フリーバンプ形成用めっき装置。
【請求項14】
Sn−Ag系合金めっき膜の表面から放出されるα線放出量が、0.02cph/cm以下となるように、前記アノード電極、ホルダおよびめっき槽は、α線放出量が低く抑えられている材料で構成されていることを特徴とする請求項11記載の鉛フリーバンプ形成用めっき装置。
【請求項15】
前記アノード電極が、不溶解性アノードであることを特徴とする請求項11記載の鉛フリーバンプ形成用めっき装置。
【請求項16】
前記アノード電極が、溶解性アノードであることを特徴とする請求項11記載の鉛フリーバンプ形成用めっき装置。
【請求項17】
前記アノード電極が、Snアノードであることを特徴とする請求項第16項記載の鉛フリーバンプ形成用めっき装置。

【国際公開番号】WO2004/059042
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【発行日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562939(P2004−562939)
【国際出願番号】PCT/JP2003/016720
【国際出願日】平成15年12月25日(2003.12.25)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】