説明

銀ナノ粒子及びその製造方法

【課題】より分散性に優れた銀ナノ粒子を提供する。
【解決手段】銀ナノ粒子を製造する方法であって、(1)アミン化合物、(2)銀塩及び(3)カルボキシル基を有する多環式炭化水素化合物を含む出発原料を熱処理する工程を含むことを特徴とする製造方法に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀ナノ粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な導電回路を形成できる銀ナノ粒子ペーストに対する期待の高まりとともに、その研究開発も各方面で進められている。近年では、回路形成の微細化の要請に伴い、スクリーン印刷だけでなく、インクジェット方式にも対応できる銀ナノ粒子ペーストの開発も要請されつつある。このようなニーズに応えるためには、銀ナノ粒子が有機溶媒等に対する分散性に優れていることが必要不可欠とされる。
【0003】
ところが、従来技術では、有機保護層として長鎖アルキル基を有する脂肪族アミンや直鎖カルボン酸しか導入できないため、銀ナノ粒子を分散させる溶媒の種類が制約されたり、その分散濃度にも限界がある。
【特許文献1】WO2004/012884
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の主な目的は、より分散性に優れた銀ナノ粒子を提供することにある。さらに、本発明は、水及び/又は水溶性有機溶媒に対する分散性に優れた銀ナノ粒子を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の製造方法を採用するによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記の銀ナノ粒子の製造方法に係る。
1. 銀ナノ粒子を製造する方法であって、(1)アミン化合物、(2)銀塩及び(3)カルボキシル基を有する多環式炭化水素化合物を含む出発原料を熱処理する工程を含むことを特徴とする製造方法。
2. 出発原料に溶媒が含まれる、前記項1に記載の製造方法。
3. 銀塩が炭酸銀である、前記項1又は2に記載の製造方法。
4. アミン化合物がアルカノールアミン類及びモルホリン類の少なくとも1種を含む、前記項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
5. アミン化合物が、下記(1)〜(3)の少なくとも1種;
(1)RNH(ただし、Rは、置換基を有していても良いアルキル基又はアリール基を示す。)、
(2)RNH(ただし、R〜Rは、同一又は異なって、置換基を有していても良いアルキル基又はアリール基を示す。R〜Rは、環状につながっていても良い。)、
(3)RN(ただし、R〜Rは、同一又は異なって、置換基を有していても良いアルキル基又はアリール基を示す。R〜Rは、環状につながっていても良い。)
である、前記項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
6. 前記多環式炭化水素化合物が、コール酸、デオキシコール酸、デヒドロコール酸、ケノデオキシコール酸、12−オキソケノデオキシコール酸、グリココール酸、コラン酸、リトコール酸、ヒオデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、アポコール酸、タウロコール酸、アビエチン酸、グリチルリチン酸及びグリシルリジン酸の少なくとも1種である、前記項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
7. 前記項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られる銀ナノ粒子。
8. 溶剤及び前記項7に記載の銀ナノ粒子を含む塗膜形成用組成物。
9. 溶剤及び前記項7に記載の銀ナノ粒子を含む導電回路形成用組成物。
10. 溶剤及び前記項7に記載の銀ナノ粒子を含む装飾層形成用組成物。
11. 溶剤及び前記項7に記載の銀ナノ粒子を含むめっき代替組成物。
12. 溶剤が、水及び水溶性有機溶媒の少なくとも1種である、前記項8〜11のいずかに記載の組成物。
13. 前記項12に記載の組成物をインキとして用い、インクジェットプリンターにより基材上に塗膜を形成する方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によれば、特定の成分を含む出発原料を用いることから、分散性に優れた銀ナノ粒子を効率良く製造することができる。このため、スクリーン印刷、インクジェット方式等による印刷用インキとしても好適に用いることができる。特に、本発明の製造方法で得られる銀ナノ粒子は、水及び/又は水溶性有機溶媒に対する分散性にも優れることから、水性組成物の形態でも用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の製造方法は、銀ナノ粒子を製造する方法であって、(1)アミン化合物、(2)銀塩及び(3)カルボキシル基を有する多環式炭化水素化合物を含む出発原料を熱処理する工程を含むことを特徴とする。
【0009】
アミン化合物
アミン化合物は、特に限定されず、各種のアミンを用いることができる。本発明では、少なくともアルカノールアミン類及びモルホリン類の少なくとも1種を用いることが望ましい。アルカノールアミン類又はモルホリン類を用いる場合には、より優れた水分散性を有する銀ナノ粒子を製造することができる。アルカノールアミン類としては、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシン等を挙げることができる。モルホリン類としては、モルホリン又はその誘導体を挙げることができる。これらの中でも、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びモルホリンの少なくとも1種を用いることがより望ましい。
【0010】
アルカノールアミン類及びモルホリン類以外では、各種の1級アミン、2級アミン、3級アミンを用いることができる。
【0011】
例えば、下記(1)〜(3)の少なくとも1種;
(1)RNH(ただし、Rは、置換基を有していても良いアルキル基又はアリール基を示す。)、
(2)RNH(ただし、R〜Rは、同一又は異なって、置換基を有していても良いアルキル基又はアリール基を示す。R〜Rは環状につながっていても良い。)、
(3)RN(ただし、R〜Rは、同一又は異なって、置換基を有していても良いアルキル基又はアリール基を示す。R〜Rは環状につながっていても良い。)
を好適に用いることができる。
【0012】
アミン化合物の使用量は、用いるアミン化合物の種類等に応じて適宜設定することができる。一般的には、後記の銀塩における銀1モルに対して1〜20モル、特に1〜10モルとすることが望ましい。
【0013】
銀塩
銀塩としては、銀の有機酸塩又は無機酸塩から適宜選択することができる。例えば脂肪酸銀、酢酸銀、安息香酸銀、クエン酸銀、炭酸銀、酸化銀、硫酸銀、硝酸銀、テトラフルオロホウ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀、ヘキサフルオロアンチモン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、トリフルオロ酢酸銀等を挙げることができる。この中でも、特に、炭酸銀(AgCO)を好適に用いることができる。
【0014】
カルボキシル基を有する多環式炭化水素化合物
カルボキシル基を有する多環式炭化水素化合物は、多環式炭化水素化合物に1又は2以上のカルボキシル基を有するものであれば良い。また、カルボキシル基は、炭化水素環に直接結合していても良いし、あるいは炭化水素基を介して結合していても良い。特に、本発明では、コール酸、デオキシコール酸、デヒドロコール酸、ケノデオキシコール酸、12−オキソケノデオキシコール酸、グリココール酸、コラン酸、リトコール酸、ヒオデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、アポコール酸、タウロコール酸、アビチエン酸、グリチルリチン酸及びグリシルリジン酸の少なくとも1種を用いることが好ましい。これらは、公知又は市販のものを用いることができる。
【0015】
これら化合物の使用量は、一般的には、前記の銀塩における銀1モルに対して1〜5モル、特に1〜3モルとすることが望ましい。
【0016】
溶媒
本発明では、溶媒を用いることが好ましい。溶媒の種類は特に限定されないが、水及びアルコールの少なくとも1種を用いることが望ましい。アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等を挙げることができる。特に、水及び/又はエタノールを用いるのがより好ましい。
【0017】
溶媒の使用量は、一般的には出発原料中40〜99重量%となる範囲内で適宜設定することができる。
【0018】
熱処理
熱処理方法は限定的でなく、例えば1)オイルバス中での加熱、2)マイクロ波による加熱等のいずれであっても良い。また、出発原料中に溶媒が含まれる場合は加熱環流、マイクロ波加熱等により熱処理することもできる。
【0019】
熱処理は、得られる銀ナノ粒子中に有機成分が1〜65重量%含まれるように実施されることが望ましい。これは、熱処理温度、熱処理時間、雰囲気等を調整することにより制御することができる。
【0020】
熱処理温度は、用いる溶媒、銀塩、多環式炭化水素化合物又はアミン化合物の種類等に応じて適宜決定することができる。特に、200℃以下、特に50〜100℃の範囲内で適宜設定することができる。
【0021】
熱処理時間は、使用する出発原料の組成、熱処理温度等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は0.5〜10時間程度、好ましくは0.5〜3時間とすれば良い。
熱処理温度及び時間によって、粒子径も制御することができる。一般に、反応温度が高いほど、また反応時間が長いほど、粒子径が大きくなる傾向がある。
【0022】
熱処理雰囲気(出発原料中に溶媒が含まれる場合も含む。)は、特に制限されない。例えば、大気中、不活性ガス雰囲気、還元性雰囲気、真空中等のいずれであっても良い。不活性ガス雰囲気の場合は、例えば窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを使用すれば良い。
【0023】
熱処理が終了した後、必要に応じて精製を行う。精製方法は、公知の精製法を採用することができる。例えば、再沈殿、ろ過、洗浄、遠心分離、膜精製、溶媒抽出等を用いることができる。
【0024】
銀ナノ粒子
本発明は、前記の製造方法により得られる銀ナノ粒子を包含する。
【0025】
粒子中の銀含有量は、最終製品の用途、得られる粒子の粒子径等によるが、通常は60〜99重量%程度、特に70〜99重量%とすることが望ましい。本発明では、80重量%以上という高い含有率であっても、有機溶媒等に対する分散性に優れているという特徴を有している。
【0026】
有機成分は、一般的には、多環式炭化水素化合物及び/又はアミン化合物に由来する有機成分である。有機成分の存在により、銀ナノ粒子の分散安定性の向上等を図ることができる。
【0027】
銀ナノ粒子の平均粒子径は、通常は1〜100nm程度の範囲内で適宜設定できるが、特に1〜50nm、さらには1〜20nmであることが好ましい。
【0028】
銀ナノ粒子の形状は特に限定されない。球状、ロッド状、ワイヤー状、多角形状、多面体状、不定形状等のいずれであっても良い。
【0029】
本発明の銀ナノ粒子は、例えば電子材料(プリント配線、導電性材料、電極材料、接合材料等)、磁性材料(磁気記録媒体、電磁波吸収体、電磁波共鳴器等)、触媒材料(高速反応触媒、センサー等)、構造材料(遠赤外材料、複合皮膜形成材等)、セラミックス・金属材料(ろう付材料、焼結助剤、コーティング材料等)、陶磁器用装飾材料、医療材料等の各種の用途に幅広く用いることが可能である。特に、導電回路形成用として好適に用いることができる。
【0030】
銀ナノ粒子は、そのままの形態で使用することもできるが、溶剤と混合して用いることもできる。すなわち、銀ナノ粒子及び溶剤を含む塗膜形成用組成物として好適に用いることができる。本発明の銀ナノ粒子は、前記のような有機成分を含むので、高い銀含有率であっても、溶剤に対して高い分散安定性を示し、可溶化状態とすることができる。溶剤としては、例えばテルペン系溶剤のほか、アセトン、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ジエチルエーテル、ケロシン等の有機溶剤を用いることができる。特に、本発明では、水及び水溶性有機溶媒の少なくとも1種(水系溶媒)を溶剤として好適に用いることもできる。水溶性有機溶媒としては、水溶性であれば制限されない。本発明では、水溶性有機溶媒として、水溶性の1価アルコール及び多価アルコールならびにその誘導体の少なくとも1種を好適に用いることができる。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールジエチルエーテル、グリセリン、グリセリングリシジルエーテル等の多価アルコール又はその誘導体を挙げることができる。例えば、前記の製造方法において、銀塩として炭酸銀、アミン化合物としてモルホリン類及び/又はアルカノールアミン類、多環式炭化水素化合物としてコール酸又はグリシルリジン酸をそれぞれ用いる場合は、水又は水系溶媒(水と水溶性有機溶媒との混合溶液)に対してより優れた分散性を有する銀ナノ粒子を提供することができる。
【0031】
また、本発明では、公知のペースト化剤に配合してペーストとして用いることもできる。
【0032】
このような塗膜形成用組成物は、例えば導電回路形成用組成物、装飾層形成用組成物、めっき代替組成物等として好適に用いることができる。
【0033】
特に、塗膜形成用組成物は、スクリーン印刷、インクジェット方式等に用いるインキとしても好適である。特に、上記組成物はインクジェット用インキとして好適に用いることができる。とりわけ、溶媒として水系溶媒を用いた塗膜形成用水系組成物が有利である。この理由は、1)本願発明の塗膜形成用水系組成物では、水が持つ高い表面張力が少量のインクの射出にも適している点、2)従来の溶剤系インキでは、インクジェットプリンターのヘッドがプラスチック製の場合、溶剤によりヘッドが劣化してしまうのに対し、本発明の塗膜形成用水系組成物では、そのような溶剤による問題を回避することができる点等が挙げられる。このように、前記組成物(特に水系組成物)をインキとして用い、インクジェットプリンターにより基材上に塗膜を好適に形成することができる。
【0034】
本発明組成物をめっき代替用組成物として用いる場合には、例えば、皮膜を形成させる部分に対して前記めっき代替用組成物による塗膜を形成し、必要に応じて自然乾燥又は強制乾燥させた後、大気中50〜350℃程度で熱処理することにより、従来のめっき法(湿式めっき法)によるめっき皮膜と同等の金属皮膜を得ることができる。すなわち、本発明組成物では、湿式めっき法を経ることなく、めっき(皮膜)と同等の金属皮膜をドライな環境下で形成することができる。これにより、湿式めっき法による廃水処理、安全性等の問題を回避することもできる。また、電気めっきや無電解めっきのような湿式めっき法では、強酸性又は強アルカリ性のめっき液に被処理体全部を浸漬して実施されるのに対し、めっき代替用組成物を用いる場合には必要な部分だけ皮膜を形成することができる。さらに、本発明組成物により金属皮膜を形成する場合には、その塗膜を乾燥するだけでも金色、銀色、青銀色等の金属光沢を呈する皮膜を得ることができる。このため、本発明組成物は、表面装飾(表面修飾)にも好適に利用することができる。
【0035】
銀ナノ粒子を用いて導電回路(導電膜)等を形成する場合は、例えば前記に例示した塗膜形成用組成物を用いて所定の回路パターンを基板上に形成した後、熱処理すれば良い。熱処理は、通常100〜600℃、好ましくは150〜350℃の範囲内とすれば良い。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を示し、本発明の特徴とするところをより一層明確にする。ただし、本発明は、実施例の範囲に限定されない。
【0037】
なお、各実施例における各物性の測定は、次のようにして実施した。
(1)定性分析
金属成分の同定は、強力X線回折装置「Rigaku RINT 2500」(リガク製)を用いた粉末X線回折分析法で行った。
(2)平均粒子径
透過型電子顕微鏡(TEM)「JEM1200EX」(日本電子社製)により測定し、任意に選んだ粒子200個の直径の算術平均値を求め、その値をもって平均粒子径とした。
(3)金属成分の含有量
熱分析装置「SSC/5200」(セイコー電子工業製)を用い、TG/DTA分析することにより求めた。
(4)有機成分等の分析
有機成分の確認は、GC/MS(ガスクロマトグラフ質量分析)装置「Hewlett−Packard 6890 GC system」(ヒューレット パッカード社製)を用いて行った。
【0038】
実施例1
炭酸銀とコール酸とエタノールアミンから銀ナノ粒子の調製
エタノール(1.5L)にコール酸(81.71g、200mmol)、炭酸銀(27.58g、100mmol)及びエタノールアミン(24.40g、400mmol)を加え、撹拌しながら3時間加熱還流したところ、茶色溶液が得られた。室温まで放冷し、アセトン(3L)を添加し、静置した後、桐山ロートで濾過し、減圧下で乾燥させることにより、青色粉末を得た。この粉末は、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールのいずれにも安定に分散した。すなわち、可溶化状態(ほぼ透明)になっていることを確認した。
【0039】
銀含有量は、TG/DTAより69%であることが確認された。図1のTEM写真観察より、得られた銀ナノ粒子は球状で平均粒子径は3.5±0.59nm、粒子径の分布は1.1nm〜4.8nmであった。GC/MSよりエタノールアミン(m/z=61)やコール酸に由来する有機物のピークが観測されたことから、この銀ナノ粒子は用いた有機物で保護された粒子であることが確認された。
【0040】
実施例2
炭酸銀とコール酸とトリエタノールアミンから銀ナノ粒子の調製
エタノール(5ml)にコール酸(82mg、0.2mmol)、炭酸銀(276mg、1mmol)及びトリエタノールアミン(149mg、1mmol)を加え、撹拌しながら3時間加熱還流したところ、濃黄色溶液が得られた。室温まで放冷し、アセトン(5ml)を添加し、静置した後、桐山ロートで濾過し、減圧下で乾燥させ、茶色粉末を得た。銀含有量はTG/DTAより75%であった。
【0041】
実施例3
炭酸銀とコール酸とモルホリンから銀ナノ粒子の調製
水(28.75g)にコール酸(8.18g、20mmol)、炭酸銀(2.76g、10mmol)及びモルホリン(3.48g、40mmol)を加え、撹拌しながら2.5時間加熱還流したところ、赤茶色溶液が得られた。室温まで放冷し、メタノール(60ml)を添加し、静置した後、桐山ロートで濾過し、減圧下で乾燥させ、青緑色の金属光沢を有する粉末を得た。この粉末は水に安定に分散した。すなわち、可溶化状態(ほぼ透明)になっていることを確認した。
【0042】
図2のTEM写真観察より、得られた銀ナノ粒子は球状で平均粒子径は7.9±4.1nm、粒子径の分布は2.4nm〜21.1nmであった。銀含有量は、TG/DTAより38%であった。
【0043】
実施例4
炭酸銀とコール酸と二種類のアミンから銀ナノ粒子の調製(1)
エタノール(7ml)にコール酸(818mg、2mmol)、炭酸銀(276mg、1mmol)、エタノールアミン(122mg、2mmol)及びオクチルアミン(259mg、2mmol)を加え、撹拌しながら1時間加熱還流したところ、赤茶色溶液が得られた。室温まで放冷し、アセトン(10ml)を添加し、静置した後、桐山ロートで濾過し、減圧下で乾燥させ、赤茶色粉末を得た。この粉末はエタノール、プロパノール及びイソプロパノールのいずれにも安定に分散した。すなわち、可溶化状態(ほぼ透明)になっていることを確認した。
【0044】
図3のTEM写真観察より、得られた銀ナノ粒子は球状で平均粒子径は7.6±2.0nm、粒子径の分布は2.8nm〜12.5nmであった。
【0045】
実施例5
炭酸銀とコール酸と二種類のアミンから銀ナノ粒子の調製(2)
エタノール(7ml)にコール酸(818mg、2mmol)、炭酸銀(276mg、1mmol)、エタノールアミン(122mg、2mmol)及びジオクチルアミン(483mg、2mmol)を加え、撹拌しながら1時間加熱還流したところ、赤茶色溶液が得られた。室温まで放冷し、アセトン(10ml)を添加し、静置した後、桐山ロートで濾過し、減圧下で乾燥させ、赤茶色粉末を得た。この粉末は、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールのいずれにも安定に分散した。すなわち、可溶化状態(ほぼ透明)になっていることを確認した。
【0046】
図4のTEM写真観察より、得られた銀ナノ粒子は球状で平均粒子径は6.0±1.3nm、粒子径の分布は2.5nm〜9.1nmであった。
【0047】
実施例6
炭酸銀とコール酸と二種類のアミンから銀ナノ粒子の調製(3)
エタノール(7ml)にコール酸(818mg、2mmol)、炭酸銀(276mg、1mmol)、エタノールアミン(122mg、2mmol)及びトリオクチルアミン(707mg、2mmol)を加え、撹拌しながら1時間加熱還流したところ、赤茶色溶液が得られた。室温まで放冷し、アセトン(10ml)を添加し、静置した後、桐山ロートで濾過し、減圧下で乾燥させ、赤茶色粉末を得た。この粉末はエタノール、プロパノール及びイソプロパノールのいずれにも安定に分散した。すなわち、可溶化状態(ほぼ透明)になっていることを確認した。
【0048】
図5のTEM写真観察より、得られた銀ナノ粒子は球状で平均粒子径は11.5±4.3nm、粒子径の分布は2.9nm〜22.6nmであった。
【0049】
実施例7
炭酸銀とコール酸と二種類のアミンから銀ナノ粒子の調製(4)
エタノール(7ml)にコール酸(818mg、2mmol)、炭酸銀(276mg、1mmol)、エタノールアミン(122mg、2mmol)及び2−エチルヘキシルアミン(259mg、2mmol)を加え、撹拌しながら1時間加熱還流したところ、赤茶色溶液が得られた。室温まで放冷し、アセトン(10ml)を添加し、静置した後、桐山ロートで濾過し、減圧下で乾燥させ、赤茶色粉末を得た。この粉末はエタノール、プロパノール及びイソプロパノールのいずれにも安定に分散した。すなわち、可溶化状態(ほぼ透明)になっていることを確認した。
【0050】
図6のTEM写真観察より、得られた銀ナノ粒子は球状で平均粒子径は16.7±1.9nm、粒子径の分布は9.0nm〜23.3nmであった。
【0051】
実施例8
炭酸銀とコール酸と二種類のアミンから銀ナノ粒子の調製(5)
エタノール(7ml)にコール酸(818mg、2mmol)、炭酸銀(276mg、1mmol)、エタノールアミン(122mg、2mmol)及びビス(2−エチルヘキシル)アミン(483mg、2mmol)を加え、撹拌しながら1時間加熱還流したところ、赤茶色溶液が得られた。室温まで放冷し、アセトン(10ml)を添加し、静置した後、桐山ロートで濾過し、減圧下で乾燥させ、赤茶色粉末を得た。この粉末はエタノール、プロパノール及びイソプロパノールのいずれにも安定に分散した。すなわち、可溶化状態(ほぼ透明)になっていることを確認した。
【0052】
図7のTEM写真観察より、得られた銀ナノ粒子は球状で平均粒子径は5.6±1.4nm、粒子径の分布は2.1nm〜9.0nmであった。
【0053】
実施例9
炭酸銀とコール酸と二種類のアミンから銀ナノ粒子の調製(6)
エタノール(7ml)にコール酸(818mg、2mmol)、炭酸銀(276mg、1mmol)、エタノールアミン(122mg、2mmol)及びトリス(2−エチルヘキシル)アミン(707mg、2mmol)を加え、撹拌しながら1時間加熱還流したところ、赤茶色溶液が得られた。室温まで放冷しアセトン(10ml)を添加し、静置した後、桐山ロートで濾過し、減圧下で乾燥させ、赤茶色粉末を得た。この粉末はエタノール、プロパノール及びイソプロパノールのいずれにも安定に分散した。すなわち、可溶化状態(ほぼ透明)になっていることを確認した。
【0054】
図8のTEM写真観察より、得られた銀ナノ粒子は球状で平均粒子径は10.6±2.4nm、粒子径の分布は5.4nm〜17.4nmであった。
【0055】
実施例10
炭酸銀とコール酸とエタノールアミンとN−メチルピロリドンから銀ナノ粒子の調製
エタノール(7ml)にコール酸(818mg、2mmol)、炭酸銀(276mg、1mmol)、エタノールアミン(122mg、2mmol)及びN−メチルピロリドン(198mg、2mmol)を加え、撹拌しながら1時間加熱還流したところ、赤茶色溶液が得られた。室温まで放冷し、アセトン(10ml)を添加し、静置した後、桐山ロートで濾過し、減圧下で乾燥させ、赤茶色粉末を得た。この粉末はエタノール、プロパノール及びイソプロパノールのいずれにも安定に分散した。すなわち、可溶化状態(ほぼ透明)になっていることを確認した。
【0056】
図9のTEM写真観察より、得られた銀ナノ粒子は球状で平均粒子径は5.2±0.88nm、粒子径の分布は3.5nm〜10.0nmであった。
【0057】
実施例11
炭酸銀とグリシルリジン酸とエタノールアミンから銀ナノ粒子の調製
水(5ml)にグリシルリジン酸(412mg、0.5mmol)、炭酸銀(276mg、1mmol)及びエタノールアミン(122mg、2mmol)を加え、撹拌しながら1時間加熱還流したところ、赤茶色溶液が得られた。室温まで放冷し、メタノール(5ml)を添加し、静置した後、桐山ロートで濾過し、減圧下で乾燥させ、緑色粉末を得た。この粉末は水に安定に分散した。すなわち、可溶化状態(ほぼ透明)になっていることを確認した。
【0058】
図10のTEM写真観察より、得られた銀ナノ粒子は球状で平均粒子径は4.6±1.6nm、粒子径の分布は2.1nm〜12.8nmであった。
【0059】
実施例12
炭酸銀とグリシルリジン酸とモルホリンから銀ナノ粒子の調製
水(5ml)にグリシルリジン酸(412mg、0.5mmol)、炭酸銀(276mg、1mmol)及びモルホリン(174mg、2mmol)を加え、撹拌しながら1時間加熱還流したところ、赤茶色溶液が得られた。室温まで放冷し、メタノール(5ml)を添加し、静置した後、桐山ロートで濾過し、減圧下で乾燥させ、金属光沢を有する緑色粉末を得た。この粉末は水に安定に分散した。すなわち、可溶化状態(ほぼ透明)になっていることを確認した。
【0060】
銀含有量はTG/DTAより92%であった。図11のTEM写真観察より、得られた銀ナノ粒子は球状で平均粒子径は12.0±3.5nm、粒子径の分布は4.0nm〜25.0nmであった。図12のXRDより金属銀のピークパターンが観測されたことから、銀ナノ粒子であることがわかった。
【0061】
実施例13
炭酸銀とアビエチン酸とN−メチルピロリドンから銀ナノ粒子の調製
炭酸銀(64.3g、0.233mol)を4つ口フラスコに入れ、続いてオクチルアミン(125g、0.966mol)を加えた。さらに、N−メチルピロリドン(41.3g、0.416mol)とアビエチン酸(15.0g、0.050mol)を加えてオイルバスで加熱し、90℃で4時間加熱した。反応後、70℃まで冷却し、メタノール(100ml×3)で洗浄し、銀ナノ粒子を固体として桐山ロートでろ別した。収量49.0g。得られた粒子はトルエンに分散することができた。すなわち、可溶化状態(ほぼ透明)になっていることを確認した。
【0062】
銀含有量は、TG/DTAより96%であった。図13のXRDより金属銀のピークパターンが観測されたことから、銀ナノ粒子であることがわかった。GC/MSよりN−メチルピロリドン(m/z=99)やアビエチン酸に由来する有機物のピークが観測されたことから、この銀ナノ粒子は用いた有機物で保護された粒子であることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例1で得られた銀ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を示す図(イメージ図)である。
【図2】実施例3で得られた銀ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を示す図(イメージ図)である。
【図3】実施例4で得られた銀ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を示す図(イメージ図)である。
【図4】実施例5で得られた銀ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を示す図(イメージ図)である。
【図5】実施例6で得られた銀ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を示す図(イメージ図)である。
【図6】実施例7で得られた銀ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を示す図(イメージ図)である。
【図7】実施例8で得られた銀ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を示す図(イメージ図)である。
【図8】実施例9で得られた銀ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を示す図(イメージ図)である。
【図9】実施例10で得られた銀ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を示す図(イメージ図)である。
【図10】実施例11で得られた銀ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を示す図(イメージ図)である。
【図11】実施例12で得られた銀ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を示す図(イメージ図)である。
【図12】実施例12で得られた銀ナノ粒子のX線回折分析(XRD)の結果を示す図である。
【図13】実施例13で得られた銀ナノ粒子のX線回折分析(XRD)の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀ナノ粒子を製造する方法であって、(1)アミン化合物、(2)銀塩及び(3)カルボキシル基を有する多環式炭化水素化合物を含む出発原料を熱処理する工程を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
出発原料に溶媒が含まれる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
銀塩が炭酸銀である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
アミン化合物がアルカノールアミン類及びモルホリン類の少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
アミン化合物が、下記(1)〜(3)の少なくとも1種;
(1)RNH(ただし、Rは、置換基を有していても良いアルキル基又はアリール基を示す。)、
(2)RNH(ただし、R〜Rは、同一又は異なって、置換基を有していても良いアルキル基又はアリール基を示す。R〜Rは、環状につながっていても良い。)、
(3)RN(ただし、R〜Rは、同一又は異なって、置換基を有していても良いアルキル基又はアリール基を示す。R〜Rは、環状につながっていても良い。)
である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記多環式炭化水素化合物が、コール酸、デオキシコール酸、デヒドロコール酸、ケノデオキシコール酸、12−オキソケノデオキシコール酸、グリココール酸、コラン酸、リトコール酸、ヒオデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、アポコール酸、タウロコール酸、アビエチン酸、グリチルリチン酸及びグリシルリジン酸の少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られる銀ナノ粒子。
【請求項8】
溶剤及び請求項7に記載の銀ナノ粒子を含む塗膜形成用組成物。
【請求項9】
溶剤及び請求項7に記載の銀ナノ粒子を含む導電回路形成用組成物。
【請求項10】
溶剤及び請求項7に記載の銀ナノ粒子を含む装飾層形成用組成物。
【請求項11】
溶剤及び請求項7に記載の銀ナノ粒子を含むめっき代替組成物。
【請求項12】
溶剤が、水及び水溶性有機溶媒の少なくとも1種である、請求項8〜11のいずかに記載の組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の組成物をインキとして用い、インクジェットプリンターにより基材上に塗膜を形成する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−63580(P2007−63580A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−248058(P2005−248058)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(591030499)大阪市 (64)
【出願人】(591040292)大研化学工業株式会社 (59)
【Fターム(参考)】