説明

銀被覆銅微粒子とその分散液及びその製造方法

【課題】 低温焼成が可能で、低い体積抵抗率が得られ、配線材料用として好適な銀被覆銅微粒子及びその分散液を提供する。
【解決手段】 銅を主成分とする銅微粒子と銅微粒子表面の少なくとも一部を被覆している銀とからなる銀被覆銅微粒子であって、平均粒径が10〜100nm、相対標準偏差(標準偏差σ/平均粒径d)が60%以下であり、銀の銅に対する割合が0.3〜15質量%である。その銀被覆銅微粒子分散液は、溶媒中にエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールの少なくとも1種と、水及びエタノールの少なくとも1種を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀被覆銅微粒子及びその分散液、並びにその製造方法に関するものである。更に詳しくは、粒径が微細で、低温焼成が可能であり、特に電子材料の配線形成用として有用な銀被覆銅微粒子及びその分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属微粒子は、電子材料用の導電性ペーストのような配線形成材料として、プリント配線、半導体の内部配線、プリント配線板と電子部品との接続等に利用されている。特に粒径が100nm以下の金属微粒子は、通常のサブミクロン以上の粒子と異なり焼成温度が極めて低くなるため、低温焼成ペースト等への応用が検討されている。
【0003】
最近では、インクジェットプリンター等を用いて金属微粒子を含有するインクにより配線パターンを印刷し、低温焼成して配線を形成する技術が着目され、研究開発が進められている。低温焼成用のペーストやインクに用いる金属微粒子粉としては、抵抗値が低く耐酸化性の高い銀を用いる技術が数多く開示されている。例えば特開2007−019055号公報には、粒子表面が有機保護剤で覆われた平均粒径50nm以下の銀粒子分散液が提案されている。しかし、銀はエレクトロマイグレーション発生の問題があり、本質的には電子回路形成用途には適さない。また、高価であることも欠点として挙げられる。
【0004】
そのため、導電性に優れ且つエレクトロマイグレーションの発生が少ない金属である銅微粒子の開発が、近年盛んに行なわれている。例えば特開2005−307335号公報には、銅の酸化物、水酸化物又は塩を、エチレングリコール、ジエチレングリコール又はトリエチレングリコールの溶液中において、核生成のために貴金属イオンを添加すると共に、分散剤としてポリビニルピロリドン、還元反応制御剤としてアミン系有機化合物を添加して加熱還元し、銅微粒子を得る方法が提案されている。また、特開2005−330552号公報には、同様にポリオール溶液中で、核生成のためにパラジウムイオンを添加すると共に、分散剤としてポリエチレンイミンを添加して加熱還元し、銅微粒子を得る方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、これらの方法では、平均粒径50nm以下の銅微粒子が得られるが、導電膜を得るためには4%水素−窒素中にて250℃での加熱を必要とするため、適用できる分野が限定されている。また、得られた導電膜の体積抵抗率は200μΩ・cm程度であり、比較的高い抵抗値となっている。その他にも銅微粒子に関する文献は多数存在するが、銅は耐酸化性に劣る欠点を有し、また銀と比べて焼結性が低いため、低温焼成時の体積抵抗率が銀に比べ高くなる傾向がある。
【0006】
銅粉の耐酸化性を向上させ、良好な導電性を得る方法として、銅粒子表面に銀を被覆させる方法が提案されている。例えば特開2000−248303号公報には、還元剤が溶存した水溶液中で金属銅粉と硝酸銀を反応させる銀被覆銅粉の製造方法が提案されている。また、置換反応を利用したものとして、特開2006−161081号公報には、JIS Z 8729に規定される明度Lが50以上である銅粉と、銀イオンが存在する有機溶媒含有溶液中で、銀イオンと金属銅との置換反応により、銀を銅粒子の表面に被覆する銀被覆銅粉の製造方法が記載されている。
【0007】
また、特開2004−052044号公報には、銀コート銅粉における銀の重量パーセントとレーザー回折散乱式粒度分布測定による重量累積粒径D50との積X及び、銀コート銅粉の色差測定によるLの関係が特定式となる銀コート粉と、銅粉とを酸性溶液中に分散し、その銅粉分散液にキレート化剤を加えて銅粉スラリーを調整した後、緩衝剤を添加してpH調整を行い、銅粉スラリーに銀イオン溶液を連続的に添加することで、置換反応により銅粉表面へ銀層を形成する銀コート銅粉の製造方法が提案されている。
【0008】
しかし、これらの方法は、いずれも銅粉の耐酸化性を向上させ、良好な導電性を得ることを目的としているものの、粒径が数μmと大きなものであり、粒径100nm以下の微細な粒子を用いた低温焼成時の体積抵抗率の改善に着目したものではない。このように、従来の技術では、インクジェットプリンター等を用いた配線パターンの印刷への適応が可能であって、低温焼成時の体積抵抗率が十分に低い銅微粒子は開発されていないのが現状である。
【0009】
【特許文献1】特開2007−019055号公報
【特許文献2】特開2005−307335号公報
【特許文献3】特開2005−330552号公報
【特許文献4】特開2000−248303号公報
【特許文献5】特開2006−161081号公報
【特許文献6】特開2004−052044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した従来の事情に鑑み、低温焼成が可能であって且つ低い体積抵抗率が得られ、配線材料用として好適な銀被覆銅微粒子及びその分散液を提供すること、並びに、その銀被覆銅微粒子及びその分散液の大量生産に適した簡便な製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するため、低体積抵抗率が得られる低温焼結性に優れた銅微粒子について検討を重ね、平均粒径が100nm以下で均一な銅微粒子表面に極めて薄い銀被膜を形成することによって、低温焼結性と体積抵抗率が改善されること、及び銅微粒子分散液に特定量の銀イオン含有溶液を添加する簡便な方法で上記銀被覆銅微粒子が得られることを見出し、本発明を完成したものである。
【0012】
即ち、本発明が提供する銀被覆銅微粒子は、銅を主成分とする銅微粒子と銅微粒子表面の少なくとも一部を被覆している銀とからなる銀被覆銅微粒子であって、平均粒径が10〜100nm、相対標準偏差(標準偏差σ/平均粒径d)が60%以下であり、銀の銅に対する割合が0.3〜15質量%であることを特徴とするものである。
【0013】
上記本発明の銀被覆銅微粒子においては、銀被覆銅微粒子の表面に、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミンから選ばれた少なくとも1種の水溶性高分子が吸着していることが好ましく、その水溶性高分子の吸着量は銀被覆銅微粒子の1.5質量%以下であることが好ましい。また、上記本発明の銀被覆銅微粒子は、ハロゲン元素の合計含有量が銅に対して20質量ppm以下であることが好ましい。
【0014】
また、本発明が提供する銀被覆銅微粒子分散液は、上記本発明の銀被覆銅微粒子と溶媒とからなる銀被覆銅微粒子分散液であって、溶媒中にエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールの少なくとも1種と、水及びエタノールの少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0015】
上記本発明の銀被覆銅微粒子分散液においては、前記溶媒中に、更にヒドロキシカルボン酸を含むことが好ましい。また、上記本発明の銀被覆銅微粒子分散液は、基板に塗布後、窒素雰囲気中にて220℃で1時間焼成した際の体積抵抗率が40μΩ・cm以下となることを特徴とするものである。
【0016】
本発明が提供する銀被覆銅微粒子の製造方法は、平均粒径が10〜100nm、相対標準偏差(標準偏差σ/平均粒径d)が60%以下の銅微粒子を含む銅微粒子分散液に、銅微粒子分散液中の銅に対する銀の割合が0.3〜15質量%となるように銀イオン含有溶液を添加し、置換反応によって銀を銅微粒子表面に析出させることを特徴とするものである。
【0017】
上記本発明の銀被覆銅微粒子の製造方法において、前記銅微粒子は、エチレングリコール、ジエチレングリコール又はトリエチレングリコールに、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミンから選ばれた少なくとも1種の水溶性高分子を添加した溶液中において、銅の酸化物、水酸化物又は塩を加熱還元して得られた銅微粒子であることを特徴とする。
【0018】
上記本発明の銀被覆銅微粒子の製造方法においては、前記溶液に、核生成のための貴金属化合物又は貴金属コロイドを添加することが好ましい。また、前記銅微粒子分散液にヒドロキシカルボン酸又はその溶液を添加することにより、銅微粒子に吸着している水溶性高分子の一部をヒドロキシカルボン酸で置換して、銅微粒子に吸着している水溶性高分子の量を1.5質量%未満とすることが好ましい。更に、前記銅微粒子分散液及び銀イオン含有溶液中におけハロゲン元素の合計含有量を、銅に対して20質量ppm未満に制御することが好ましい。
【0019】
また、本発明が提供する銀被覆銅微粒子分散液の製造方法は、エチレングリコール、ジエチレングリコール又はトリエチレングリコールに、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミンから選ばれた少なくとも1種の水溶性高分子を添加した溶液中において、銅の酸化物、水酸化物又は塩を加熱還元して銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子分散液を極性溶媒で溶媒置換及び濃縮した後、銀イオン含有溶液を添加して銀を銅微粒子表面に析出させることを特徴とする。
【0020】
上記本発明の銀被覆銅微粒子分散液の製造方法においては、前記銅微粒子分散液に銀イオン含有溶液を添加して銀を銅微粒子表面に析出させた後、更に極性溶媒で溶媒置換及び濃縮することにより、前記銀イオン含有溶液より混入する余剰のイオンを洗浄除去することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、低温での焼結特性に優れると同時に、配線材料として使用した場合、低温焼成で良好な導電性を示す銀被覆銅微粒子、及びその分散液を提供することができる。しかも、本発明が提供する銀被覆銅微粒子は、平均粒径が10〜100nmと微細であることから、インクジェットプリンター用のインクとしても好適であり、工業的価値は極めて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<銀被覆銅微粒子>
本発明の銀被覆銅微粒子は、銅を主成分とする銅微粒子と、その銅微粒子表面の少なくとも一部を被覆している銀とからなる。そして、本発明の銀被覆銅微粒子は、平均粒径が10〜100nmであり、相対標準偏差(標準偏差σ/平均粒径d)が60%以下であって、銅微粒子の表面を被覆する銀の銅に対する割合が0.3〜15質量%であることを特徴とするものである。
【0023】
上記本発明による銀被覆銅微粒子においては、平均粒径が10〜100nmであること、銅微粒子表面を被覆する銀の銅に対する割合が0.3〜15質量%であることが重要である。即ち、銀被覆銅微粒子の粒径については、粒径を微細化して平均粒径10〜100nmとすることで、焼結温度を低温化することが可能となり、優れた低温焼結性を得ることができる。
【0024】
ただし、銅微粒子の場合は、粒径の微細化によって表面酸化が起こりやすくなるため、微細化による低温焼結性の改善効果が十分得られないという問題が発生する。一方、銅粒子表面を銀により被覆して、低温焼結性、更には体積抵抗率を改善する場合、通常は、銅粒子表面を被覆する銀はある程度以上の厚さが必要となる。特に、粒径を微細化した場合には、表面積の増加により被覆に必要な銀量が飛躍的に増加する、あるいは、小粒径化により銀被覆時の銅粒子の凝集が発生しやすくなる等の問題点があった。
【0025】
例えば、上記特許文献4では、必要な銀量は金属銅粉の比表面積に依存し、比表面積が数/10m/gで、粒径が数μmに相当する銅粉の場合、銅に対して0.5〜10質量%の銀量が好ましく、銀層の厚みにして数nm〜数10nmが好ましいとしている。しかし、このような厚みの銀層でナノオーダーの銅微粒子粉を被覆しようとした場合、銅に対して必要な銀量は大幅に増加して数10質量%以上になると見込まれるため、耐マイグレーション性並びにコストなどの点から現実的なものではない。
【0026】
本発明は、このような相反する問題点を解決して、低温焼結性に優れると同時に、十分に低い体積抵抗率が得られる銀被覆銅微粒子を開発したものである。即ち、銅微粒子を微細化して低温焼結性を向上させると共に、微細化によって発生する表面酸化による焼結性や体積抵抗率の悪化に対しては、銅微粒子表面を被覆する銀層を極めて薄くすることにより抑制することができる。
【0027】
具体的には、平均粒径を10〜100nmとし、より好ましくは10〜50nmとして、低温焼結性を向上させ、同時に、銅微粒子表面を被覆する銀の銅に対する割合を0.3〜15質量%とすることで、焼結性及び体積抵抗率の悪化を抑制している。例えば、平均粒径が30nmの場合、銀量が上記範囲の最大量である15質量%としても、粒子全体を被覆している銀層の厚みは0.6nmと見積もることができる。更に、銀層の厚みは表面が平滑な粒子として比表面積から計算されたものであり、現実的な微細な凹凸がある粒子では比表面積が増加するため、更に銀層の厚みは薄くなることになる。
【0028】
このように非常に薄い銀層では、粒子表面全体を均一な厚さで被覆することは困難であり、粒子表面の一部が銀で被覆されない場合もある。そのような場合であっても、本発明の銀被覆銅微粒子は平均粒径が10〜100nmと微細であるため、優れた低温焼結性を有していることに加え、銅微粒子表面の少なくとも一部が銀で被覆されることによって、上記した焼結性と体積抵抗率の悪化を抑制するという優れた効果を得ることができる。
【0029】
銀被覆銅微粒子の平均粒径が10nm未満の場合は、粒子の表面積が増加するため十分な銀被覆が得られず、被覆による効果が減少して耐酸化性も悪化する。逆に100nmを超える場合には、焼結活性が低下するため、焼成後の体積抵抗率が増加する。また、銀被覆銅微粒子の相対標準偏差(標準偏差σ/平均粒径d)が60%を超える場合、粒径が10nm以下あるいは100nm以上の粒子が多量に存在している可能性が高いため、耐酸化性や焼結性が悪化するばかりか、インクジェットプリンターによる吐出時にノズルが閉塞する危険がある。
【0030】
銅微粒子を被覆している銀の銅に対する割合は、0.3〜15質量%とする。銀の銅に対する割合を0.3〜15質量%の範囲とすることにより、上記した平均粒径10〜100nmの微粒子の効果と相俟って、優れた上記効果が得られる。この割合が0.3質量%未満では低温焼成後の体積抵抗率を十分に低減することができず、また15質量%を超えても体積抵抗率の低減効果に大きな差は見られず、銀の割合が増えることでコストが増大する。
【0031】
また、銅微粒子表面の銀による被覆は、銀と銅の置換による銀の析出によって起こるため、銅に対する銀の割合が大きくなると、銀の析出に伴う銅の溶解量が増加し、銅微粒子の表面状態の変化や有機物の脱離により銅微粒子の凝集や酸化が起こりやすくなる。そのため、最良の体積抵抗率の低減効果を得るためには、上記銀の銅に対する割合を0.3〜5質量%とすることが更に好ましい。
【0032】
本発明に係る銀被覆銅微粒子の表面には、水溶性高分子が吸着していることが好ましい。上記水溶性高分子としては、極性溶媒と親和性が高く、銀被覆銅微粒子に吸着して立体障害を形成し得るものであればよい。具体的には、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミンの内の少なくとも1種を好適に使用することができ、その中でもポリエチレンイミンが特に好ましい。
【0033】
これらの水溶性高分子で銀被覆銅微粒子を被覆することで、銀被覆銅微粒子を溶媒中に分散させて分散液とした場合、水溶性高分子の立体障害により銀被覆銅微粒子の凝集が抑制され、分散液の分散安定性が向上する。また、電子材料用として好適なものとするため、ハロゲン元素を銀被覆銅微粒子から極力除去した場合、銀被覆銅微粒子表面への水溶性高分子の吸着が進まず、立体障害による凝集防止効果が十分得られない場合がある。このような場合でも、ポリエチレンイミンは銅との親和性が高いイミン基を有することから、銀被覆銅微粒子への吸着能が高く、銅微粒子表面に吸着して上記効果を得ることができる。
【0034】
ただし、水溶性高分子は焼成の阻害要因になると同時に、水溶性高分子の量が多いほど焼成後の導電性を低下させやすい。そのため、低温焼成後の良好な体積抵抗率を得るためには、銀被覆銅微粒子表面に吸着している水溶性高分子の量を1.5質量%未満とすることが好ましい。水溶性高分子の量が1.5質量%を超えると、低温焼成後の体積抵抗率が上昇するため配線材料として好ましくない。
【0035】
そこで、本発明においては、銀被覆銅微粒子表面に吸着している水溶性高分子の量を低減させるため、ヒドロキシカルボン酸によって水溶性高分子を置換することができる。尚、水溶性高分子の量を低減させると、導電性が向上する一方で耐酸化性は低下するが、ヒドロキシカルボン酸による被覆により酸化を抑制することが可能である。上記ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸、クエン酸が好ましく、体積抵抗率を改善する効果に優れているクエン酸を用いることが特に好ましい。
【0036】
本発明の銀被覆銅微粒子は、ハロゲン元素の合計含有量が20質量ppm以下であることが好ましい。ハロゲン元素の合計含有量が20質量ppmを超える銀被覆銅微粒子を配線パターン等の導電材料として使用すると、マイグレーションや他の電子材料を腐食させる可能性が有るため好ましくない。また、ハロゲン元素は焼結の阻害要因となり、焼成後の体積抵抗率が上昇する原因となることもあるため、合計含有量を20質量ppmに調整することが好ましい。
【0037】
<銀被覆銅微粒子分散液>
本発明の銀含有銅微粒子分散液は、上記銀被覆銅微粒子と溶媒からなる。溶媒中には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールの内の少なくとも1種のグリコールと、水及びエタノールの内の少なくとも1種が含まれている。尚、上記溶媒としては、溶媒相互の分離を防止するため、水、アルコール、エステルなどの極性溶媒が好ましい。
【0038】
上記水溶性高分子が吸着した銀被覆銅微粒子を溶媒中に分散させた分散液は、粒子表面に吸着した水溶性高分子の立体障害により、酸化並びに凝集を抑制することができる。また、水あるいはエタノールを主成分とする溶媒を使用することにより、非極性有機溶媒を主成分とした場合と比較して、廃液や大気汚染による環境負荷を低減することができる。上記溶媒中には、体積抵抗率の改善のため、更にヒドロキシカルボン酸を含むことが好ましく、その中でも酸化及び凝集の抑制効果が大きいクエン酸を含むことが特に好ましい。
【0039】
本発明の銀被覆銅微粒子分散液は、低温焼成においても良好な導電性を示す。具体的には、銀被覆銅微粒子分散液を基板に塗布した後、通常は乾燥させ、窒素雰囲気中において220℃で1時間焼成したとき、その体積抵抗率が40μΩ・cm以下の導電膜となる。
【0040】
<銀被覆銅微粒子及びその分散液の製造方法>
本発明の銀被覆銅微粒子の製造方法は、平均粒径が10〜100nm、相対標準偏差(標準偏差σ/平均粒径d)が60%以下である銅微粒子を含む銅微粒子分散液に、その銅微粒子分散液に含有される銅に対する銀の割合が0.3〜15質量%となるように銀イオン含有溶液を添加し、置換反応によって銀を銅微粒子表面に析出させることを特徴とするものである。
【0041】
上記銅微粒子分散液に銀イオン含有溶液を添加して、銀を銅微粒子表面の銅と置換反応させることで、容易に銅微粒子表面の少なくとも1部が銀で被覆された銀被覆銅微粒子を得ることができる。また、上記の銀添加量では、ほぼ全量が銅と置換して銅微粒子表面に析出するため、得ようとする銀被覆銅微粒子における銀の銅に対する割合と同等の割合で銀を添加すればよい。ただし、反応条件により質量割合が若干ずれる場合があるが、同一条件では銀の析出量が安定しているため、少量での予備試験を行うことで必要な添加量を簡単に求めることができる。
【0042】
また、上記銀被覆銅微粒子の製造方法においては、平均粒径が10〜100nm、更に好ましくは50nm以下であり、相対標準偏差(標準偏差σ/平均粒径d)が60%以下の銅微粒子の分散液を用いる。このような分散液は、平均粒径及び相対標準偏差が上記範囲のものであれば、市販の銅微粒子分散液を用いてもよく、あるいは銅微粒子を溶媒に分散させて作製した分散液を用いてもよい。
【0043】
上記銅微粒子は、ポリオール法を用いることで容易に製造することができる。即ち、本発明においては、エチレングリコール、ジエチレングリコール又はトリエチレングリコールなどのグリコール溶液中において、銅の酸化物、水酸化物又は塩を加熱還元することにより、銅微粒子を得ることが好ましい。また、加熱還元時には、上記銅微粒子分散液に、分散剤としてポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミンの内の少なくとも1種の水溶性高分子を添加しておくことが好ましい。
【0044】
このようなポリオール法を応用して合成した銅微粒子は、粒子の分散安定性や導電性、耐酸化性が良好であり、且つ大量生産に適したものである。また、銅微粒子は極性溶媒中に分散した状態で得られるため、銀被覆のために銀イオン含有溶液を添加する銅微粒子分散液として用いることができる。更に、分散剤として上記水溶性高分子を添加することで、生成した銅微粒子の凝集を抑制し、分散安定性が高い銅微粒子分散液を得ることができる。
【0045】
以下、上記ポリオール法を用いた銅微粒子の製造方法について更に詳細に説明する。ポリオール法は、銅原料である銅の酸化物、水酸化物又は塩を、上記グリコールなどのポリオール溶液中で加熱還元することにより、液相中で銅微粒子を合成するものである。銅原料として用いる銅の酸化物、水酸化物又は塩としては、例えば、酸化銅、亜酸化銅等の銅の酸化物、水酸化銅等の銅の水酸化物、酢酸銅等の銅の塩を用いることができる。
【0046】
また、本発明ではポリオールとしてグリコールを使用し、具体的には、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール(TEG)のいずれか1種、又は2種以上の混合物を用いる。使用する装置は、通常のポリオール法で用いられる装置を使用することかできるが、装置内に銅微粒子が付着し難いものが好ましく、ガラス容器、フッ素樹脂等で被覆処理された金属容器などが好ましい。また、均一に還元反応を行わせるためには、撹拌手段を備えた装置が好ましい。
【0047】
本発明方法においては、ハロゲン元素を含有しない原料を用いることが重要である。一般に、ハロゲン元素、特に塩素は、合成された銅微粒子表面に吸着するだけでなく内部にまで含有されることから、電子材料用として許容可能な範囲、即ち銅微粒子の銅に対して20質量ppm未満まで除去することが極めて困難である。そのため、銅微粒子中のハロゲン元素の合計含有量を銅に対して20質量ppm以下にまで低ハロゲン化するためには、原料から混入するハロゲン元素の合計含有量を制御することが必要である。
【0048】
即ち、銅原料である銅の酸化物、水酸化物又は塩の他、エチレングリコール、ジエチレングリコール又はトリエチレングリコール、分散剤の水溶性高分子、更には後述する核生成のための貴金属化合物又は貴金属コロイドについてハロゲン元素の含有量を調べ、これらの原料を含むグリコール溶液中のハロゲン元素の合計含有量が銅に対して20質量ppm以下となるように制御することが好ましい。
【0049】
また、上記の各銅原料については、ハロゲン元素含有量が5質量ppm未満であることが好ましい。ハロゲン元素含有量が低ければ、通常のポリオール法で用いられる原料を用いることができる。銅原料については、ハロゲン元素含有量が高い場合でも、洗浄によってハロゲン元素含有量を5質量ppm未満に低減できれば原料として用いることができる。尚、銅原料は、通常の粉末状態で使用することが好ましい。
【0050】
均一で微細な銅微粒子を得るためには、核生成のための貴金属化合物又は貴金属コロイドを上記グリコール溶液に添加することが好ましい。核形成に用いる貴金属化合物としては、溶液中で銅より容易に還元されるものであれば良い。低ハロゲン化の場合には、有害なハロゲン元素を排除する必要から、ハロゲン元素を成分元素としている化合物は用いることができない。また、ハロゲン元素を成分元素としない化合物を用いる場合であっても、不純物として混入する場合があるので注意を要する。
【0051】
上記貴金属化合物は、粉末状態で添加することもできるが、水などの極性溶媒に溶解した状態で添加することによって、均一に溶液中に分散させることができるため、微細な貴金属粒子を均一に形成させることができ、得られる銅微粒子も均一で微細なものになるため好ましい。従って、極性溶媒に可溶性の貴金属化合物、即ち水溶性貴金属化合物を用いることが好ましく、例えば、塩化パラジウムアンモニウム、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、硝酸パラジウムアンモニウムなどのパラジウム塩、硝酸銀、塩化銀などの銀塩が用いられる。特に、低ハロゲン化の場合には、ハロゲン元素を含まない硝酸パラジウム、硝酸パラジウムアンモニウムが好ましい。
【0052】
また、貴金属化合物として、溶解性が低い貴金属水酸化物や貴金属酸化物を用いることもできる。核生成物質として好適な貴金属化合物、例えば、上記した硝酸パラジウムや硝酸パラジウムアンモニウムは強酸化性の硝酸イオンを含んでいるが、水酸化物や酸化物は硝酸イオン等の強酸化性イオンを含まず、有害な元素も成分元素としていない。このため、酸化性イオンによる還元抑制作用がなく、より低い温度で還元が可能になるため工業的には有利である。
【0053】
更に、銅微粒子生成のための核の形成には、貴金属コロイドを用いることもできる。貴金属コロイドを用いる場合、貴金属コロイドの合成を銅微粒子の製造と分離することができるため、貴金属コロイドの合成を最適条件で行うことができ、コロイド中の微細な貴金属微粒子の制御も容易である。即ち、微細な貴金属微粒子は銅微粒子生成の核となることから、貴金属微粒子を制御することで、銅微粒子の粒径制御と粒径の均一性をより向上させることができる。
【0054】
また、貴金属コロイドを限外濾過膜などにより置換洗浄すれば、上記した有害な元素の他、銅微粒子の生成に不要な成分も反応系から極力排除することが可能である。低ハロゲン化する場合、特にハロゲン元素含有量は、上記貴金属化合物の場合と同様に、銅に対して20質量ppm未満に制御することが好ましい。
【0055】
上記貴金属コロイドとしては、溶液中で置換反応を起こさせないため銅よりもイオン化傾向が低いものが好ましく、例えば、銀、パラジウム、白金、金のコロイドが好ましい。また、得られる銅微粒子の粒径は添加された貴金属核数に反比例すること、高価な貴金属の使用量は極力少ないことが望ましいことから、核として添加するコロイド中の貴金属微粒子の平均粒径は20nm以下が好ましく、10nm以下が更に好ましい。貴金属微粒子の平均粒径が20nmを越えると、得られる銅微粒子の粒径が大きくなり過ぎるばかりか、貴金属の使用量が増えて高コストとなる。
【0056】
上記貴金属コロイドとしては、市販のものを用いることもできるが、公知のポリオール法を用いることによって容易に合成できる。例えば、ポリオール溶液中に、水溶性貴金属化合物と水溶性高分子を添加すれば、貴金属コロイドが得られる。水溶性貴金属化合物としては、例えば硝酸パラジウムや硝酸パラジウムアンモニウムなどのハロゲン元素を成分元素としない化合物が好ましい。また、水溶性高分子としては、ポリビニルピロリドンなどが好ましい。水溶性貴金属化合物と水溶性高分子の添加量は、必要な粒径が得られるように温度などの合成条件を加味して定める。例えば、水溶性貴金属化合物の添加量をパラジウム濃度で5g/l、水溶性高分子の添加量を10g/lとすれば、粒径10〜15nmの微粒子を含有したパラジウムコロイドが得られる。
【0057】
上記した核生成用の貴金属化合物あるいは貴金属コロイドの添加量は、その形態にかかわらず、銅に対する貴金属の割合、例えば貴金属/Cu質量比で0.0004〜0.01の範囲とすることが好ましい。貴金属/Cu質量比が0.0004未満では、貴金属微粒子の量が不足するため、銅の還元反応ないし銅微粒子の形成が十分に進まない。銅微粒子形成に至った場合でも、核となる貴金属微粒子数が不足しているため、粒径が粗大化する恐れがある。また、貴金属/Cu質量比が0.01を超えても銅微粒子は得られるが、高価な貴金属の添加量が増える割には粒径の微細化効果は得られないため好ましくない。
【0058】
特に好ましくは、核生成用の貴金属化合物あるいは貴金属コロイドの貴金属としてパラジウム(Pd)を用い、Pd/Cu質量比を0.0006〜0.005の範囲とする。これによって、平均粒径が100nm以下であり、且つ粒径の均一性に優れた銅微粒子を得ることができる。
【0059】
上記銅微粒子の合成の際にグリコール溶液に分散剤として添加する高分子は、極性溶媒であるグリコール溶液中に溶解させるために水溶性高分子を使用する。水溶性高分子は、還元析出した若しくは添加した貴金属微粒子及び銅微粒子の表面に吸着し、立体障害により微粒子同士の接触を防止することによって、凝集がほとんどなく、分散性に優れた銅微粒子の生成を促進する。
【0060】
上記水溶性高分子としては、極性溶媒であるエチレングリコール、ジエチレングリコール又はトリエチレングリコールに溶解し、生成した貴金属微粒子及び銅微粒子に吸着して立体障害を形成し得るものであればよい。具体的には、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンから選ばれた少なくとも1種が好ましく、その中でも銅との親和性が高いポリエチレンイミンが特に好ましい。
【0061】
水溶性高分子であるポリエチレンイミン(PEI)の添加量は、銅に対する質量比、即ちPEI/Cu質量比で、0.005〜0.1の範囲が好ましく、0.01〜0.03の範囲が更に好ましい。PEI/Cu質量比が0.005未満では、微粒子への吸着ないし被覆の割合が低下して、核となる貴金属微粒子あるいは生成した銅微粒子が反応中に凝集し、結果的に得られる銅微粒子が粗大化する。また、PEI/Cu質量比が0.1を越えると、溶液の粘性が高くなり過ぎ、後の極性溶媒との溶媒置換や濃縮に時間がかかるうえ、濃縮後に水溶性高分子の残存量が多くなるため好ましくない。
【0062】
一般に、高分子分散剤は、吸着基によって対象となる微粒子の吸着能が異なっている。そのため、核として反応初期に生成し若しくは添加される貴金属微粒子用と、その貴金属微粒子に還元析出して生成する銅微粒子用として、異なる複数の高分子分散剤を混合して用いることが効果的である。具体的には、上記した銅微粒子用としてのポリエチレンイミンに加えて、貴金属微粒子用としてポリビニルピロリドンとポリアリルアミンの内の少なくとも1種を用いることが特に好ましい。
【0063】
その場合、ポリビニルピロリドン(PVP)及び/又はポリアリルアミン(PAA)の添加量は、銅に対する合計の質量比、即ち(PVP+PAA)/Cuの質量比で0.8未満とすることが好ましく、0.01〜0.5の範囲が更に好ましい。ポリビニルピロリドンあるいはポリアリルアミンの添加により、核となる貴金属微粒子を更に微細にすることができるが、これらの合計添加量が上記質量比で0.8を超えると、ポリエチレンイミンと同様に溶液の粘性が高くなり過ぎ、後の極性溶媒との溶媒置換や濃縮に時間がかかるうえ、濃縮後に水溶性高分子の残存量が多くなるため好ましくない。
【0064】
上記水溶性高分子からハロゲン元素が混入した場合も、最終的に作製した銅微粒子あるいは分散液にハロゲン元素が残留するため、低ハロゲン化する場合にはハロゲン含有量の低い水溶性高分子を使用する必要がある。即ち、水溶性高分子中のハロゲン元素の含有量についても、上記溶液中のハロゲン元素の合計含有量が銅に対して20質量ppm未満となるように制御することが好ましい。具体的には、水溶性高分子中のハロゲン元素含有量を1000質量ppm未満、好ましくは400質量ppm未満に低減することにより、最終的に作製される銅微粒子中のハロゲン含有量を20質量ppm未満にすることができる。
【0065】
特にポリエチレンイミンは製造過程においてハロゲン元素が混入しやすいが、混入した場合には陰イオン交換樹脂を用いてハロゲン元素の多くを除去することができる。陰イオン交換樹脂としては、OH形、NO形等のハロゲンイオン形以外の樹脂を用いることができるが、還元反応に悪影響が出ないOH形の樹脂が好ましい。除去方法としては、水溶性高分子溶液を陰イオン交換樹脂と接触させ、ハロゲンイオンを交換吸着して除去する。樹脂との接触方法としては、バッチ式あるいはカラム式等の公知の方法を用いることができる。
【0066】
次に、本発明による銀被覆銅微粒子の好ましい製造方法を、工程順に更に具体的に説明する。まず、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールの少なくとも1種からなるグリコールの溶液に、銅原料と貴金属化合物又は貴金属コロイドを添加すると共に、分散剤として水溶性高分子を添加する。これらの原料を添加したグリコール溶液を撹拌しながら、所定の温度に昇温して保持することにより銅微粒子が生成する。昇温及び保持中は、反応を均一化させるため撹拌することが好ましい。グリコール溶液は酸化防止作用も持っているが、還元反応を促進させると共に銅微粒子の再酸化を防止するため、昇温及び保持中は窒素ガスを吹き込むことが好ましい。
【0067】
通常は、グリコール溶液に、銅原料、貴金属化合物又は貴金属コロイド、水溶性高分子を添加した後に加熱を開始する。ただし、銅微粒子形成の核を微細且つ均一に生成させるため、貴金属化合物あるいは貴金属コロイドについては、それ以外の原料を添加して昇温中のポリオール溶液に後から添加してもよい。また、水溶性高分子の一部あるいは全部についても、上記と同様に、昇温中のポリオール溶液に後から添加することができる。
【0068】
均一な銅微粒子を合成するためには、グリコール溶液の最高到達温度として120〜200℃の範囲が可能である。この最高到達温度が120℃未満では、銅の還元反応速度が遅くなり、反応完了まで長時間を要するだけでなく、得られる銅微粒子の粗大化を招く。また、温度が200℃を超えると、高分子分散剤による保護効果が薄れ、凝集性の粗大な粒子に成長するため好ましくない。
【0069】
上記方法により、本発明の銀被覆銅微粒子の製造に好適な銅微粒子を得ることができる。また、本発明の銀被覆銅微粒子は粒子表面に吸着している水溶性高分子の量を1.5質量%未満とすることが好ましいが、上記方法により得られた銅微粒子表面の水溶性高分子の量を1.5質量%未満とすることによって、最終的な銀被覆銅微粒子表面の水溶性高分子の量を上記範囲とすることができる。
【0070】
そこで、得られた銅微粒子表面に吸着している水溶性高分子の量を低減させるため、ヒドロキシカルボン酸によって水溶性高分子を置換することが好ましい。この操作は、銀被覆銅微粒子を得た後にも、同様の目的のために行うことができるが、前段階の銅微粒子に対して行うと効果的である。
【0071】
即ち、得られた銅微粒子を含む溶液に、ヒドロキシカルボン酸あるいはヒドロキシカルボン酸溶液を添加して撹拌することにより、銅微粒子の分散性を維持しながら、銅微粒子表面に吸着被覆している水溶性高分子の1部をヒドロキシカルボン酸で置換することができる。遊離した水溶性高分子は、限外濾過により排出する。尚、水溶性高分子の量を低減させると銅微粒子は酸化されやすいが、ヒドロキシカルボン酸による被覆により酸化を抑制することが可能である。また、表面の水溶性高分子が減少するため、後の銀との置換反応が容易になる。
【0072】
上記ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸、クエン酸が好ましく、溶媒への溶解性や粘度調整等を考慮して、これらの1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。ヒドロキシカルボン酸の添加量に関しては、溶液に対して20質量%未満とすることが好ましく、1〜10質量%とすることが更に好ましい。ヒドロキシカルボン酸の添加量が20質量%以上になると、銅微粒子の溶解が進行して、酸化や凝集の原因となるため好ましくない。
【0073】
上記したヒドロキシカルボン酸での置換によって、表面が水溶性高分子及びヒドロキシカルボン酸で被覆され、吸着している水溶性高分子量が1.5質量%未満の銅微粒子が得られる。得られた銅微粒子は上記極性溶媒中に分散した銅微粒子を含むグリコール溶液として得られ、本発明の銀被覆銅微粒子の製造における銅微粒子分散液として用いることが可能である。
【0074】
ただし、このグリコール溶液中には銅微粒子以外に余剰の水溶性高分子が含まれている。この水溶性高分子は、最終的に使用される配線材料用導電性ペースト製品中に過剰に存在すると、電気抵抗の上昇や構造欠陥などの不具合をもたらす原因となる。そこで、上記グリコール溶液を水やアルコール、エステル等の極性溶媒で溶媒置換して濃縮することにより、水溶性高分子をできるだけ除去することが好ましい。尚、溶媒置換に使用する極性溶媒としては、水、アルコール、エステルのいずれか1種、若しくはこれらの2種以上の混合物が好ましい。
【0075】
このようなグリコール溶液を調整する一般的な方法としては、得られた銅微粒子を含むグリコール溶液を、水、アルコール、エステル等の極性溶媒で希釈した後、限外濾過等により溶媒置換及び濃縮を行う方法が用いられる。その際、成膜性の向上のために、ヒドロキシカルボン酸等の添加剤を上記極性溶媒に加えても良い。ヒドロキシカルボン酸の添加量は、上記した水溶性高分子の置換のため銅微粒子を含む溶液に添加する場合と同様に、分散液に対して20質量%未満が好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。その後、必要に応じて、更に極性溶媒による希釈と、溶媒置換及び濃縮を繰り返し、所望の銅濃度と不純物含有量に調整した銅微粒子分散液を得る。
【0076】
上記調整を行ったグリコール溶液は、本発明の銀被覆銅微粒子の製造方法における銅微粒子分散液として好適に用いることができる。次に、この銅微粒子分散液に上記所定量の銀イオン含有溶液を添加し、置換反応によって銀を銅表面に析出させる。尚、本発明の銀被覆銅微粒子では銀被覆層が極めて薄いため、銀被覆前後での粒径の変化は測定不可能な程度に少ない。ただし、銅微粒子の粒径から算出した比表面積と上記銀イオン含有溶液の銀の銅に対する割合(質量比)から、粒径増加分である銀被覆層の厚さを容易に見積もることができる。
【0077】
銅微粒子分散液に添加する銀イオン含有溶液は、硝酸銀、炭酸銀、塩化銀等の銀化合物及び銀メタルを溶解した溶液を用いることができる。用いる溶媒としては、水、アンモニア水、硝酸等の銀化合物及び銀の溶解度が高いものが好ましい。また、銀イオン含有溶液の添加は、均一に銀を析出させるため、撹拌しながら行うことが好ましい。添加速度に関しては、全体に均一に銀を析出させるため、可能な範囲で遅くすることが好ましく、銅100gに対して銀0.1g/分以下の添加速度とすることが好ましい。ただし、生産性を考慮すると、銀0.01g/分以上とすることが好ましい。
【0078】
銀イオン含有溶液を添加して得られた銀被覆銅微粒子分散液は、銀イオン含有溶液に含まれていた銀以外のイオン(以下、余剰イオンと記載)を含んでいる。余剰イオンは、銀被覆銅微粒子の酸化や凝集の原因となる可能性があるため、洗浄除去することが好ましい。洗浄を行うことで余剰イオンを除去し、銀被覆銅微粒子分散液を安定化することができる。洗浄方法としては、限外濾過、デカンテーション、遠心濾過等の一般的な方法を使用することができるが、数十nmの粒子の沈降性及び濾過性の低さを考慮すると、限外濾過による洗浄が好ましい。
【0079】
特に極性溶媒中に分散させた上記銀被覆銅微粒子分散液を限外濾過により洗浄する場合、上記ポリオール溶液の調整と同様の方法を用いることができる。即ち、必要に応じてヒドロキシカルボン酸等の添加剤を加えた水、アルコール、エステル等の極性溶媒で希釈した後、限外濾過等により溶媒置換及び濃縮を必要に応じて繰り返すことで、所望の銅濃度と不純物含有量に調整した銀被覆銅微粒子分散液を得ることができる。更に、耐酸化性及び体積抵抗率の改善のため、銀被覆銅微粒子分散液には、分散液に対して20質量%未満、より好ましくは1〜10質量%のヒドロキシカルボン酸等の添加剤を加えても良い。
【0080】
上記製造方法によって得られた銀被覆銅微粒子分散液は、銀被覆銅微粒子が微細で且つ粗大粒子を含まず、低温焼結性に優れ、低温焼成おいても良好な導電性が得られる。しかも、銀被覆銅微粒子が微粒であるため、分散液中での長期分散性にも優れたものである。このため、本発明の銀被覆銅微粒子分散液は、インクジェットプリンターやスクリーン印刷を用いた微細な配線パターンの印刷形成技術にける専用のインクあるいはペースト用材料として優れており、インクあるいはペースト中で良好な分散性を保つことができる。
【実施例】
【0081】
以下の各実施例により、本発明の銀被覆銅微粒子及びその分散液を製造すると共に評価した。尚、各実施例で使用した原料は下記のとおりである。
銅原料:亜酸化銅(CuO)(Chemet社製)
貴金属化合物:硝酸パラジウムアンモニウム(エヌ・イー・ケムキャット社製)
グリコール溶媒:エチレングリコール(EG)(日本触媒(株)製)
分散剤:ポリエチレンイミン(PEI)(SP−018、日本触媒(株)製)、ポリビニルピロリドン(PVP)(ISP−K15、アイエスピー・ジャパン(株)製)
添加剤:クエン酸(和光純薬(株)製、特級)
銀化合物:硝酸銀(和光純薬(株)製、特級)
【0082】
[実施例1]
塩素含有量40質量ppmの亜酸化銅(CuO)粉600gを、3リットルの0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液に添加してサスペンションとし、80℃で1時間撹拌した後、濾過した。得られた亜酸化銅を3リットルの純水に添加し、30分間撹拌洗浄した後、濾過して得られた洗浄済みCuO粉を80℃で真空乾燥した。この洗浄済みCuO粉の塩素含有量は、Cuに対して2質量ppmであった。
【0083】
一方、塩素含有量が3000質量ppmのポリエチレンイミン(PEI)10gを、10質量%となるように水で希釈し、水酸化ナトリウム水溶液を用いてOH形に変換した陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、SA−10A)10gを添加して8時間撹拌した。その後、樹脂を濾別し、80℃で真空乾燥させることにより、洗浄済みPEIを得た。この洗浄済みPEIの塩素含有量は200質量ppmとなった。
【0084】
溶媒である1リットルのエチレングリコール(EG)に、110gの亜酸化銅(CuO)粉、40gのポリビニルピロリドン(PVP)、1.5gのポリエチレンイミン(PEI)を加え、窒素ガスを吹き込みながら加熱撹拌した。このグリコール溶液に、硝酸パラジウムアンモニウムをアンモニア水で溶解したパラジウム溶液をパラジウム量で0.2g加え、150℃で30分保持して銅微粒子を還元析出させた。
【0085】
得られた銅微粒子を濾過し、SEMで観察したところ、凝集のない微粒子であった。この銅微粒子は、平均粒径dが26nmで、相対標準偏差(標準偏差σ/平均粒径d)が52%であった。尚、SEM観察による粒径測定は、日立ハイテクノロジー(株)製の電界放出型電子顕微鏡(FE−SEM、型式S−4700)を用いて観察し、視野から200個の銅微粒子を無作為に選択して粒径を測定し、平均粒径と相対標準偏差(標準偏差σ/平均粒径d)を算出した。
【0086】
次に、得られた銅微粒子を含む溶液を、0.65μmフィルターに通して残留原料を除去した後、溶媒のエチレングリコール(EG)の大部分を水で置換した銅微粒子分散液を調製した。具体的には、上記銅微粒子を含む溶液(Cu:10質量%)1リットルに、純水とエチレングリコールの混合溶媒(純水:エチレングリコール:=8:1)1リットルにクエン酸10gを添加した洗浄液を追加し、限外濾過により100ccになるまで濃縮した。その後、1リットルになるまで上記と同じ洗浄液を追加し、限外濾過により余剰の分散剤等を含む混合濾液を系外へ排出して、銅微粒子を含む溶液を100ccまで濃縮した。更に、この濃縮液に、再び上記と同じ洗浄液を1リットルになるまで追加し、限外濾過により濾液を系外へ排出して100ccまで濃縮した。
【0087】
得られた銅微粒子分散液に、上記と同じ洗浄液を1リットルになるまで添加し、撹拌しながら予め作製しておいた1質量%硝酸銀水溶液265ccを5cc/分の添加速度(銅100gに対して銀0.032g/分)で定量添加し、添加終了後10分間撹拌しながら保持した。その後限外濾過により100ccになるまで濃縮し、上記と同様の洗浄工程を更に2回繰り返して硝酸イオンを除去し、試料1の銀被覆銅微粒子分散液100ccを得た。
【0088】
得られた試料1の銀被覆銅微粒子のSEM写真を図1に示す。この銀被覆銅微粒子の平均粒径dは28nm、相対標準偏差(標準偏差σ/平均粒径d)は49%であり、銀含有イオン溶液添加前の銅微粒子とほとんど変化が無かった。また、銀被覆銅微粒子分散液は、ICP発光分析法による分析結果から、Cu:57質量%、Ag:1.1質量%、銅に対する銀含有量は1.9質量%であった。
【0089】
また、上記銀被覆銅微粒子分散液に硝酸を添加して粒子を溶解し、硝酸銀を加えて塩化銀を沈殿させ、沈殿物中の塩素(Cl)を検量線による蛍光X線定量分析(PnNalytical製、Magix)にて測定することにより求めたところ、残留塩素量は9質量ppmであった。その他のハロゲン元素に関しては検出されず、残部が純水、エチレングリコール、クエン酸であって、銅に対するハロゲン元素の合計含有量は16質量ppmであった。
【0090】
この試料1の銀被覆銅微粒子分散液は、作製後1ヶ月間静置したが、沈降は認められなかった。また、この銀被覆銅微粒子分散液をガラス基板上に塗布し、乾燥後にX線回折分析を行った結果、銅と銀のピークのみであり、酸化銅のピークは検出されなかった。この結果から、銀被覆銅微粒子は平均粒径が50nm以下という微粒子であるにもかかわらず、耐酸化性に優れていることが確認された。
【0091】
また、この試料1の銀被覆銅微粒子分散液を、真空中において80℃で3時間乾燥させた後、窒素雰囲気中にて600℃までの熱重量分析を行ったところ、300℃〜600℃にかけて1.1質量%の重量減少が検出された。別途実施したクエン酸、PEI、PVPの各熱重量分析結果から、クエン酸に関しては180℃付近から分解し始めて300℃でほぼ完全に分解蒸発し、PEI及びPVPに関しては300℃付近から分解し始めて600℃でほぼ完全に分解蒸発し、Cが固体として残留しないことが確認されている。よって、300℃〜600℃の重量減少は銅に吸着したPEI及びPVPの分解に由来する重量減少であると考えられる。従って、この銀被覆銅微粒子に吸着している水溶性高分子量は1.1質量%となる。
【0092】
この試料1の銀被覆銅微粒子分散液に焼成膜の膜質向上を目的としてクエン酸を分散液に対し5質量%添加して、バーコーターによりガラス基板上にパターン印刷を行った。得られたパターンを乾燥した後、窒素雰囲気中にて220℃×1時間の熱処理を行った結果、体積抵抗率が32μΩ・cmの導電膜が形成されていることが確認できた。尚、体積抵抗率は、日本電子(株)製の分析走査電子顕微鏡(SEM、型式JSM−6360LA)での基板断面観察により測定した膜厚と、(株)ダイアインスツルメンツ製の抵抗率計(ロレスターGP)により測定した表面抵抗率とから求めた。
【0093】
上記した試料1の銀被覆銅微粒子及びその分散液について、銀の銅に対する質量割合(Ag/Cu)、ハロゲン元素の銅に対する質量割合(ハロゲン/Cu)、平均粒径(d)、相対標準偏差(標準偏差σ/平均粒径d)、水溶性高分子量、及び導電膜の体積抵抗率を、下記表1にまとめて示した。
【0094】
[実施例2]
上記実施例1と同様に実施したが、銅微粒子分散液に添加する1%硝酸銀水溶液の添加量を変更し、それぞれ試料2〜5の銀被覆銅微粒子分散液を得た。これら試料2〜5の銀被覆銅微粒子及びその分散液について、上記実施例1と同様に評価した。得られた結果を下記表1に併せて示した。
【0095】
[比較例1]
上記実施例1と同様に実施したが、試料6では銅微粒子分散液に硝酸銀水溶液を添加せず、試料7〜8では銅微粒子分散液に添加する1%硝酸銀水溶液の添加量を変更して、それぞれ試料6〜8の銅微粒子あるいは銀被覆銅微粒子の分散液を得た。これら試料6〜8の銅微粒子あるいは銀被覆銅微粒子及びその分散液についても、上記実施例1と同様に評価した。得られた結果を下記表1に併せて示した。
【0096】
[比較例2]
平均粒径dが0.19μm、相対標準偏差(標準偏差σ/平均粒径d)が22%、BET比表面積が3.7m/gの球状の銅粉100gを、純水1リットル中に懸濁させ、超音波洗浄器(アズワン製、US−3R)中で10分間分散させて銅微粒子分散液を得た。
【0097】
この銅微粒子分散液を撹拌しながら、予め作製しておいた1質量%硝酸銀水溶液470ccを5cc/分の添加速度(銅100gに対して銀0.032g/分)で定量添加し、添加終了後10分間撹拌しながら保持した。得られた粒子を吸引濾過により固液分離し、1リットルの純水中で30分間撹拌洗浄した後、再び吸引濾過して試料9の銀被覆銅微粒子を得た。
【0098】
この試料9の銀被覆銅微粒子を、純水とエチレングリコールの混合溶媒(純水:エチレングリコール:=8:1)100ccにクエン酸を5g添加した溶媒中に懸濁させ、超音波洗浄器で30分間分散させることにより、試料9の銀被覆銅微粒子分散液を得た。
【0099】
得られた試料9の銀被覆銅微粒子分散液を、上記実施例1と同様にガラス基板上に印刷し、窒素雰囲気中にて220℃×1時間の熱処理を行って導電膜を形成した。得られた導電膜の体積抵抗率は1Ω・cm以上と極めて高い値であった。これらの結果を、下記表1に併せて示した。
【0100】
【表1】

【0101】
上記表1に示す結果から分るように、本発明による試料1〜5の各銀被覆銅微粒子分散液は、窒素雰囲気中における220℃×1時間の低温焼成によって、40μΩ・cm以下の非常に低い体積抵抗率を有する焼成膜が得られた。一方、比較例については、試料6の銀を被覆していない銅微粒子分散液、試料7のAg/Cu質量比が本発明の範囲以下である各銀被覆銅微粒子分散液では、焼成膜の体積抵抗率が40μΩ・cmを越えた高い値となった。
【0102】
また、比較例である粒径が本発明の粒径範囲より大きい試料9の銀被覆銅微粒子分散液では、焼成後の体積抵抗率が本発明の銀被覆銅微粒子分散液より大幅に高い結果となった。尚、比較例であるAg/Cu質量比が本発明の範囲を超えた試料8の銀被覆銅微粒子分散液は、銀析出時に銅微粒子が凝集し、沈降してしまったため、その後の評価が不可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】実施例で製造した試料1の銀被覆銅微粒子の電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を主成分とする銅微粒子と銅微粒子表面の少なくとも一部を被覆している銀とからなる銀被覆銅微粒子であって、平均粒径が10〜100nm、相対標準偏差(標準偏差σ/平均粒径d)が60%以下であり、銀の銅に対する割合が0.3〜15質量%であることを特徴とする銀被覆銅微粒子。
【請求項2】
前記銀被覆銅微粒子の表面に、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミンから選ばれた少なくとも1種の水溶性高分子が吸着していることを特徴とする、請求項1に記載の銀被覆銅微粒子。
【請求項3】
前記水溶性高分子の吸着量が銀被覆銅微粒子の1.5質量%以下であることを特徴とする、請求項2に記載の銀被覆銅微粒子。
【請求項4】
前記銀被覆銅微粒子中のハロゲン元素の合計含有量が銅に対して20質量ppm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の銀被覆銅微粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の銀被覆銅微粒子と溶媒とからなる銀被覆銅微粒子分散液であって、溶媒中にエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールの少なくとも1種と、水及びエタノールの少なくとも1種を含むことを特徴とする銀被覆銅微粒子分散液。
【請求項6】
前記溶媒中に、更にヒドロキシカルボン酸を含むことを特徴とする、請求項5に記載の銀被覆銅微粒子分散液。
【請求項7】
基板に塗布後、窒素雰囲気中にて220℃で1時間焼成した際の体積抵抗率が40μΩ・cm以下となることを特徴とする、請求項5又は6に記載の銀被覆銅微粒子分散液。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の銀被覆銅微粒子の製造方法であって、平均粒径が10〜100nm、相対標準偏差(標準偏差σ/平均粒径d)が60%以下の銅微粒子を含む銅微粒子分散液に、銅微粒子分散液中の銅に対する銀の割合が0.3〜15質量%となるように銀イオン含有溶液を添加し、置換反応によって銀を銅微粒子表面に析出させることを特徴とする銀被覆銅微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記銅微粒子は、エチレングリコール、ジエチレングリコール又はトリエチレングリコールに、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミンから選ばれた少なくとも1種の水溶性高分子を添加した溶液中において、銅の酸化物、水酸化物又は塩を加熱還元して得られた銅微粒子であることを特徴とする、請求項8に記載の銀被覆銅微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記溶液に、核生成のための貴金属化合物又は貴金属コロイドを添加することを特徴とする、請求項9に記載の銀被覆銅微粒子の製造方法。
【請求項11】
前記銅微粒子分散液にヒドロキシカルボン酸又はその溶液を添加することにより、銅微粒子に吸着している水溶性高分子の一部をヒドロキシカルボン酸で置換して、銅微粒子に吸着している水溶性高分子の量を1.5質量%未満とすることを特徴とする、請求項9又は10に記載の銀被覆銅微粒子の製造方法。
【請求項12】
前記銅微粒子分散液及び銀イオン含有溶液中におけハロゲン元素の合計含有量を、銅に対して20質量ppm未満に制御することを特徴とする、請求項8〜11のいずれかに記載の銀被覆銅微粒子の製造方法。
【請求項13】
請求項5〜7のいずれかに記載の銀被覆銅微粒子分散液の製造方法であって、エチレングリコール、ジエチレングリコール又はトリエチレングリコールに、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミンから選ばれた少なくとも1種の水溶性高分子を添加した溶液中において、銅の酸化物、水酸化物又は塩を加熱還元して銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子分散液を極性溶媒で溶媒置換及び濃縮した後、銀イオン含有溶液を添加して銀を銅微粒子表面に析出させることを特徴とする銀被覆銅微粒子分散液の製造方法。
【請求項14】
前記銅微粒子分散液に銀イオン含有溶液を添加して銀を銅微粒子表面に析出させた後、更に極性溶媒で溶媒置換及び濃縮することにより、前記銀イオン含有溶液より混入する余剰のイオンを洗浄除去することを特徴とする、請求項13に記載の銀被覆銅微粒子分散液の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−77495(P2010−77495A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247106(P2008−247106)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】