説明

鋼の連続鋳造方法

【課題】溶鋼にREMを添加してもノズルの閉塞が起こりにくい鋼の連続鋳造方法を提供する。
【解決手段】1または2以上のノズルを介して鋳型内に溶鋼を注入し、該鋳型下部から鋳片を連続的に引き出す鋼の連続鋳造方法において、前記溶鋼には0.0003質量%以上のREM(希土類元素)と、0.1質量%以上のAlとを含み、かつ、前記溶鋼中のREM濃度とAl濃度の比がAl/REM>20となるように調整し、しかも、前記ノズルの少なくとも1には前記溶鋼と接する内面の少なくとも一部にCaOを10質量%以上含有する耐火物が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼の連続鋳造方法に関する。より具体的には、本発明は、ノズルの閉塞や溶損を起こさずにREM(希土類元素)を含有する鋼の連続鋳造を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼の材料特性を改善する手段として、鋼中にREMを添加することはよく知られている。例えば、特許文献1に開示されているように、溶鋼成分として、0.01質量%以下のC(炭素)、0.1質量%以上でかつ7.0質量%以下のSi(ケイ素)、0.1質量%以上でかつ3.0質量%以下のAl(アルミニウム)およびその他の元素を含有する無方向性電磁鋼板用鋼に、0.0003質量%以上でかつ0.05質量%以下のREM(希土類元素)を添加する場合において、生成するREMオキサイド、REMサルファイド、REMオキシサルファイド等の介在物または析出物のサイズ、形態および個数を制御し、結晶粒の成長を促進することで鋼材の材質(鉄損)を改善する試みがなされている。
また、特許文献2では、形成されるREMオキシサルファイドが高温でのオーステナイト粒の成長を抑制することを利用した、REMを0.0020〜0.010質量%含有し、優れた溶接熱影響部靭性を有する溶接構造用高張力鋼に関する発明が開示されている。
一方、鋼の連続鋳造においては、溶鋼供給ノズルの耐火物材質として、高温の溶鋼を受鋼した際のヒートショック(スポーリング)に強く、かつ、溶鋼との反応による溶損が少ないアルミナ−グラファイト系(AG系)耐火物が広く一般的に使用されてきた。しかし、強脱酸・強脱硫元素であるREMの鋼への添加により、REMオキサイド、REMサルファイド、REMオキシサルファイド等の介在物が多量に生成した場合、AG系耐火物を用いた溶鋼供給ノズルの内面にはこれらの介在物が付着しやすいためにノズル閉塞が生じ易くなり、最悪の場合には操業停止に至ることもあった。
【0003】
そこで、特許文献3には、Alを含有するREM添加鋼の鋳造にあたり、少なくとも内面が、SiO2含有量が1質量%未満のアルミナ−グラファイト系(AG系)耐火物、アルミナ含有量が95質量%以上のアルミナ質耐火物、またはZrO2とCaOとCとを基本成分とする耐火物により構成されている浸漬ノズルを用いる方法が提案されている。
また、特許文献3では、溶鋼の酸素ポテンシャルを低めつつ鋼の溶接性劣化や脆化相析出を回避するために、Alの含有量を0.01質量%以上でかつ0.5質量%以下と特定し、実施例あるいは比較例として、Alの含有量を0.008、0.05、0.08質量%とした場合の結果について記載されている(明細書中の表2、表5、および段落0017〜20)。
さらに、浸漬ノズル内面に形成された付着物は、浸漬ノズル耐火物中の酸化物がREMにより還元されて生じたREM酸化物(オキサイド)であることが記載されており、安定な酸化物系耐火物としてZrO2−CaO−C(ZCG)系耐火物が記載されている。
【0004】
【特許文献1】国際公開第2004/099457号パンフレット
【特許文献2】特開平10−88276号公報
【特許文献3】特開2003−342630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3に記載の方法においては、Al含有量が0.1質量%未満の場合には脱酸が不十分であるため、浸漬ノズル内面等に、REMオキサイドおよびREMオキシサルファイド等を含む付着物が生成し、特許文献3記載のような40tスケールの溶鋼の鋳造は可能であっても、200t以上、例えば350t規模の溶鋼の鋳造ではREM添加鋼を連続鋳造する際のノズル閉塞を十分に抑制できなかった。
本発明は、上述したようにREM添加溶鋼を連続鋳造する際のノズル閉塞という課題に鑑みてなされたもので、溶鋼にREMを添加してもノズルの閉塞が起こりにくい鋼の連続鋳造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る鋼の連続鋳造方法は、1または2以上のノズルを介して鋳型内
に溶鋼を注入し、該鋳型下部から鋳片を連続的に引き出す鋼の連続鋳造方法において、前記溶鋼には0.0003質量%以上のREM(希土類元素)と、0.1質量%以上のAlとを含み、かつ、前記溶鋼中のREM濃度とAl濃度の比がAl/REM>20となるように調整し、しかも、前記ノズルの少なくとも1には前記溶鋼と接する内面の少なくとも一部にCaOを10質量%以上含有する耐火物が配置されている
なお、本発明において「REM」とは、原子番号が57のランタン(La)から71のルテシウム(Lu)までの15元素に、原子番号が21のスカンジウム(Sc)および原子番号が39のイットリウム(Y)を加えた、合計17元素の総称を意味する。これらの一部または全部を指す場合を、以下にREMと記す。
溶鋼中に0.1重量%以上のAlを含有させると、溶鋼へのREMの添加により生成した、REMオキサイド(以下「REM−O」という)、REMサルファイド(以下「REM−S」という)、REMオキシサルファイド(以下「REM−(O,S)」という)を主体とした介在物中に、少量(前記介在物の0.1〜30質量%程度)のAlが取り込まれる。耐火物に10質量%以上のCaOが含まれていると、耐火物表面でCaOと前記介在物に取り込まれたAlとが反応し、低融点の介在物を生成するため、ノズルへの介在物の付着およびそれに伴うノズルの閉塞が抑制される。
【0007】
更に、工業的に安定して介在物付着を防止するためには、溶鋼中のAl濃度とREM濃度の比がAl/REM>20となるように溶鋼成分を調整した後、連続鋳造する。REM−OとAlで構成される介在物の組成を調査すると、Al/REM>20では介在物はREM−Oが主体であるがこれにAlが20%以上と比較的多く含まれているのに対して、Al/REM≦20では介在物はREM−Oが主体でAlは20%未満と少ない。この結果、Al/REM>20はノズル耐火物中のCaOと反応して低融点相を形成するだけの十分なAlが存在するが、Al/REM≦20ではノズル耐火物中のCaOと反応して低融点相を形成するだけのAlの存在が不十分であるためCaOとREM−Oが反応して高融点化合物を形成し介在物付着をかえって促進することもある。
【0008】
本発明に係る鋼の連続鋳造方法において、前記ノズルは、取鍋とタンディッシュとの間に配置される第1の溶鋼供給ノズル、該タンディッシュと前記鋳型との間に使用される第2の溶鋼供給ノズル、該第2の溶鋼供給ノズルに隣接して配置される流量調整ノズル、およびこれらのいずれかのノズルをそれぞれ対応する前記取鍋または前記タンディッシュに接続するための接続ノズルのいずれかであることが好ましい。
鋳型への溶鋼注入に用いられるノズルの少なくとも1つにCaOを10質量%以上含有する耐火物を使用することにより、溶鋼に内面が接するノズルの閉塞を未然に防止することが可能になる。
【0009】
本発明に係る鋼の連続鋳造方法において、前記CaOを10質量%以上含む耐火物は、CaOおよびMgOを主成分とする耐火物であることが好ましい。
CaOおよびMgOを主成分とする耐火物を使用するので、耐火物中のCaOは反応により消費されるが、MgO粒子は溶鋼との接触面に残留して濃縮される結果、MgO含有量が50%以上のMgOリッチなバリア層を形成する。このバリア層により、溶鋼の耐火物中への浸潤を低減して耐火物の耐溶損性が改善される上、CaOは、バリア層のMgO粒子間を通して溶鋼との接触面に供給される。
【0010】
本発明に係る鋼の連続鋳造方法において、前記CaOおよびMgOを主成分とする耐火物は、MgOの含有率が20質量%以上でかつ70質量%以下であり、CaOの含有率W1とMgOの含有率W2の比W1/W2が、0.33以上でかつ3以下であることが好ましい。
介在物付着抑制能を有するが耐溶損特性改善能を有しないCaOと、逆に耐溶損特性改善能を有するが介在物付着抑制能を有しないMgOとについて、両成分の含有率比W1/W2が上記の範囲内となるように両者の含有率を調整することにより、十分なMgOリッチなバリア層の形成および十分量のCaOの溶鋼接触面への供給の両者が確保されるため、優れた耐溶損性および鋼中介在物の付着防止能とを兼ね備えたノズル用耐火物が提供される。
【0011】
本発明に係る鋼の連続鋳造方法において、前記CaOおよびMgOを主成分とする耐火物におけるCの含有量が0.1質量%以上でかつ10質量%以下であることが好ましい。耐火物中のCの含有率を上記の範囲内になるよう調節することにより、溶鋼と接触する部位の耐火物の熱膨張歪を吸収、緩和して、耐火物の構造体としての安定性を向上させつつ、酸化、溶損による劣化を最小限に抑制することが可能になる。
【0012】
本発明に係る鋼の連続鋳造方法において、前記溶鋼は、0.001質量%以上でかつ0.01質量%以下のC、0.1質量%以上でかつ7質量%以下のSi、0.1質量%以上でかつ3質量%以下のAl、0.0003質量%以上でかつ0.05質量%以下のREM、並びに、残部Feおよび不可避的不純物を含み、前記鋳片は、圧延して、最終的に無方向性電磁鋼板用鋼として使用されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜6記載の鋼の連続鋳造方法においては、溶鋼中のREMおよびAlの含有率や比率、並びにノズルに使用する耐火物中のCaOの含有率を最適化することにより、REMを含有する鋼の連続鋳造中のノズル内面への鋼中介在物の付着、およびそれに伴うノズルの閉塞を防止することが可能になる。
その結果、REM添加による、例えば、無方向性電磁鋼板における磁気特性等の材質改善効果を有する鉄鋼材料の連続鋳造を工業的規模で安定して行うことが可能になる。
【0014】
特に、請求項2記載の鋼の連続鋳造方法においては、鋳型への溶鋼注入に用いられ、溶鋼の内面と接する第1、第2の溶鋼供給ノズル、流量調整ノズル、接続ノズルにCaOを10質量%以上含有する耐火物を使用することにより、溶鋼に内面が接する連続鋳造装置内のノズルにおいて閉塞を未然に防止しつつ、REM添加鋼の連続鋳造を安定して行うことが可能になる。
請求項3記載の鋼の連続鋳造方法においては、CaOおよびMgOを主成分とする耐火物を使用することにより、耐溶損性に優れたMgOリッチなバリア層が耐火物表面に形成され、このバリア層のMgO粒子間を通してCaOが溶鋼との接触面に供給されるため、ノズルに使用される耐火物の耐溶損特性の改善および継続的な介在物付着防止能の両立が可能になる。
【0015】
請求項4記載の鋼の連続鋳造方法において、MgOとCaOの含有率を所定範囲にするので、十分なMgOリッチなバリア層の形成および十分量のCaOの溶鋼接触面への供給の両者が確保される。ノズルに使用される耐火物が優れた耐溶損性および鋼中介在物の付着防止能とを兼ね備えることが可能になる。
請求項5記載の鋼の連続鋳造方法において、耐火物のCの含有率を0.1質量%以上でかつ10質量%以下にすることにより、ノズルに使用する耐火物の構造体としての安定性を向上させつつ、酸化、溶損による劣化を最小限に抑制することが可能になる。
請求項6記載の鋼の連続鋳造方法においては、0.001質量%以上でかつ0.01質量%以下のC、0.1質量%以上でかつ7質量%以下のSi、0.1質量%以上でかつ3質量%以下のAl、0.0003質量%以上でかつ0.05質量%以下のREM、並びに、残部Feおよび不可避的不純物を含有する溶鋼を連続鋳造して、無方向性電磁鋼板用鋼とすることにより、鉄損に優れた無方向性電磁鋼板を安定して連続生産することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
続いて、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
鋼の連続鋳造は、鋼の強度、加工性、および耐疲労性等の低下の原因となる酸化物等の介在物を溶鋼から除去するとともに、次の圧延工程において加工しやすいように一定の形状を有する半製品を製造することを目的として行われている。
本発明の一実施の形態に係る鋼の連続鋳造方法を適用する連続鋳造機10を図1に示す。以下、連続鋳造機10について説明するとともに、本実施の形態に係る鋼の連続鋳造方法について詳細に説明する。
【0017】
転炉で産生された溶鋼は、直接、または必要に応じて二次精錬工程を経た後、連続鋳造機10の最上部に位置する取鍋12に注入される。取鍋12では、溶鋼11中に存在する介在物が浮上するので、これを除去する。
次いで溶鋼11は、ノズルの一例である第1の溶鋼供給ノズル13を介して、取鍋12のすぐ下に設けられたタンディッシュ14に注入される。タンディッシュ14に貯留された溶鋼11から更に介在物が浮上するため、これを除去することにより、溶鋼11から介在物を効果的に除去することができる。次に溶鋼11は、ノズルの一例である第2の溶鋼供給ノズル15を介して鋳型16の最上部に注入される。鋳型16は熱伝導率の高い銅製であり、常に水冷されているため、溶鋼11は急冷され凝固を開始する。凝固を開始した鋳片17は、鋳片支持ロール18により鋳型16の下部から連続的に引き出されるとともに、鋳片冷却装置19により冷却水の噴射等により更に冷却され、凝固完了点(クレータエンド)20において完全に凝固する。完全に凝固した鋳片17は、鋳片引き抜きロール21により連続鋳造機10から引き抜かれ、鋳片搬送ロール22によって圧延工程へ搬送される。
【0018】
次に、溶鋼11中のREMおよびAlの含有率について説明する。
溶鋼中のREMの含有率が0.0003質量%未満の場合には、REMの添加による材料特性の改善が顕著に現れないことに加え、そもそも介在物の付着による溶鋼供給ノズルの閉塞の問題が生じない。したがって、溶鋼中のREMの含有率は、0.0003質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.002質量%以上である。REM含有量の上限は、溶鋼中のAlの含有率および耐火物の組成等にも依存するため一義的に決定するのは困難であるが、Alの含有率の増大による製造コストの上昇を考慮すると0.05質量%以下、好ましくは0.03質量%未満、より好ましくは0.01質量%以下である。
溶鋼中のAlの含有率が0.1質量%未満である場合、溶鋼にREMを添加した際に生成する介在物はAlを殆ど含有しないため、CaOを10質量%以上含有する耐火物をノズル内面に配置しても、低融点介在物の生成による閉塞防止効果が発現しない。したがって、溶鋼中に含有させるAlの含有率は、0.1質量%以上、好ましくは0.13質量%以上である。
【0019】
さらに、上述の条件を満たしていても、溶鋼中に含有されるREM濃度との関係で、REM濃度に対してAl濃度が相対的に小さい場合には、溶鋼中に生成する介在物はAlを殆ど含有しないREM−Oとなるため介在物付着によるノズル閉塞防止効果は発現しない。この臨界条件について、詳細な実験的検討を行った結果、溶鋼中のREM濃度とAl濃度の比をAl/REM>20とすることで、溶鋼中に適度な量のAl介在物を生成させ、ノズル耐火物中のCaOと反応させることで、低融点相を形成し安定したノズル閉塞防止効果が得られることを知見した。
また、好ましいAlの含有率の上限は、鉄鋼製品の用途に応じて決定される。例えば、無方向性電磁鋼板用鋼として使用する場合には、製造コストの観点から上限を3質量%とすることが好ましく、また、溶接される材料であれば、溶接性や連続鋳造の困難さから上限を0.5質量%とすることが好ましい。
なお、本実施の形態において、溶鋼11中のCの含有率は、0.001質量%以上でかつ0.01質量%以下、Siの含有率は、0.1質量%以上でかつ7質量%以下であり、残部Feおよび不可避的不純物を含んでいる。
【0020】
第2の溶鋼供給ノズル15(第1の溶鋼供給ノズル13も同様)の内面に配置される耐火物24(図2参照)は、CaOを10質量%以上含有するものである。
耐火物中のCaOの含有率が10質量%未満の場合、CaO−Al系低融点化合物(カルシウムアルミネート)を形成するためのCaO供給量が不足するため、耐火物の溶鋼接触面に、REM−O、REN−S、REM−(O,S)、Al系介在物および地金が付着し易くなる。したがって、耐火物中のCaOの含有率は、10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。
一方、CaOの含有率が70質量%を超えると、耐火物の熱膨張率が上昇するため、溶鋼供給ノズルのその他の部分との熱膨張率差に起因する亀裂が発生し、耐火物の寿命が低下する。したがって、耐火物中のCaOの含有率は70質量%以下であることが好ましい。
CaOを10質量%以上含有する耐火物24は、第2の溶鋼供給ノズル15の溶鋼と接する内面(溶鋼接触面)の少なくとも一部に配置される。耐火物24がノズルの溶鋼接触面内のどの位置および範囲に配置されるかは、溶鋼の組成、温度、および流速等に応じて適宜決定される。
耐火物24の配置位置は、図2(A)に示すように、ノズル本体23の溶鋼接触面の全体に配置する場合、図2(B)に示すように、溶鋼接触面のうち湯面25よりも下部のみに配置する場合、および図2(C)に示すように、溶鋼接触面のうち吐出口26周辺のみに配置される場合等が挙げられる。
【0021】
本実施の形態においては、ノズルとして、取鍋12とタンディッシュ14との間に使用される第1の溶鋼供給ノズル13、タンディッシュ14と鋳型16との間に使用される第2の溶鋼供給ノズル15(例えば、浸漬ノズル、ロングノズル等)に、CaOを10質量%以上含有する耐火物を配置したが、さらに、第2の溶鋼供給ノズル15に隣接して配置される図示されない流量調整ノズル(例えば、スライディングノズル等)、および第1、第2の溶鋼供給ノズル13、15、流量調節ノズルのいずれかを取鍋12またはタンディッシュ14に(即ち、第1の溶鋼供給ノズル13は取鍋12に、第2の溶鋼供給ノズル15、流量調節ノズルはタンディッシュ14に)接続するための図示されない接続ノズル(例えば、上ノズル、下ノズル等)等のノズルのうち、溶鋼の組成、温度、および流速等に応じて選択された1つまたは複数において、前記耐火物を溶鋼接触面の少なくとも一部に配置することができる。
【0022】
耐火物24は、ドロマイトクリンカーを含有する耐火物であって、CaOとMgOを主成分としている。ドロマイトクリンカー中のMgO粒子が、溶鋼11との接触面にMgO含有量が50%以上のMgOリッチなバリア層を形成することによって、耐火物24の耐溶損性が改善される。また、MgO粒子間を通して溶鋼11との接触面にCaOを供給することが可能であるため、継続的な介在物付着防止が実現できる。
ドロマイトクリンカーとしては、一般にドロマイト系耐火物の原料として使用されている任意のドロマイトクリンカーを使用することができる。成分組成の一例として、例えば、CaOを57質量%、MgOを40質量%含むものが挙げられる。耐火物として使用するドロマイトクリンカーは、天然のドロマイトを熱処理したドロマイトクリンカーであってもよく、人工原料によって任意の組成に調合した合成ドロマイトクリンカーであってもよい。
耐火物24のMgO含有量は、20質量%以上でありかつ70質量%以下である。耐火物に使用するMgOの含有率が20質量%未満である場合には、前記のようなMgOリッチなバリア層が十分に形成されないため、耐火物の耐溶損性が低下し、溶鋼供給ノズルの寿命が短くなる。
また、MgOの含有率が70質量%を超えると、MgOリッチなバリア層のMgO粒子間を通して溶鋼との接触面に供給されるCaO量が不足し、耐火物表面に介在物が付着しやすくなる。
【0023】
耐火物24のCaOの含有率W1とMgOの含有率W2との比W1/W2は、0.33以上3以下としている。比W1/W2が、0.33未満の場合、W1が20質量%以上であっても、溶鋼との接触面に供給されるCaO量が不足して十分な付着防止効果を発現できず、MgO量が多すぎるためにスポーリングや割れ等が発生しやすくなる。
また、比W1/W2が3を超える場合、溶鋼との接触面に供給されるCaO量が過多となるために、MgOの含有率が20質量%以上であっても、保護層となるMgOリッチなバリア層の形成が阻害されるため耐溶損特性が悪化する。なお、比W1/W2は、0.90以上でかつ2.6以下であることが更に好ましい。
比W1/W2は、使用するドロマイトクリンカーに含まれるMgOおよびCaOの含有率のみならず、別途添加するMgOクリンカーの添加量等によってもコントロールすることができる。
【0024】
耐火物に含有される炭素により、溶鋼と接触する部位の耐火物の熱膨張歪みが吸収、緩和されるため、耐火物に炭素を含有させることにより耐火物の構造体としての安定性を高めることができる。本実施の形態において用いられる耐火物24中の炭素の含有率は、0.1質量%以上でかつ10質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上でかつ5質量%以下である。炭素の含有率が0.1質量%未満の場合には十分な効果を得ることができず、10質量%を超える場合には炭素成分が溶鋼中の酸素による酸化や、溶鋼中への溶解による溶損が大きくなるため、ともに好ましくない。
【実施例】
【0025】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
REMの添加によって磁気特性(鉄損)が改善される無方向性電磁鋼板を鋳造鋼種として用い、鋳型内寸法250mm(厚)×1000mm(幅)の湾曲半径10.5mの連続鋳造機(スラブ連鋳機、図1参照)を用いて、1〜1.2m/分の鋳造速度で連続鋳造を行った。溶鋼に添加するREMとしては、La、Ce、Nd等を主成分とするミッシュメタルを使用した。
CaOおよびMgOを主成分とする耐火物としてはドロマイトクリンカーを使用した。CaO、MgO、およびC以外の主な成分は、ZrO2(0を超え5質量%以下)、SiC(0を超え3質量%以下)、SiO2(0を超え1質量%以下)、およびFe(0を超え0.1質量%以下)である。
また、ドロマイトクリンカーとの比較のために、ZCG(CaOおよびC以外に、55質量%のZrO2、1.2質量%のSiCを含有。残部はSiO2、アルミナおよびFeO)およびアルミナ−グラファイト(AG)系耐火物(C以外はほぼアルミナ)を使用した。これらの耐火物を、タンディッシュと鋳型間の第2の溶鋼供給ノズル(浸漬ノズル)の内面に図2(A)〜(C)に示すような態様で配置した。
【0026】
本実施例において、途中で溶鋼供給ノズルの閉塞を起こすことなく供給した全ての溶鋼について連続鋳造を行うことが可能であることを「完全鋳造可能」、介在物の付着や閉塞、および耐火物の溶損による溶鋼供給ノズルの交換を行うことなく2回連続して完全鋳造可能であることを「完全鋳造2回可能」、溶鋼供給ノズルの交換を行うことなく3回以上連続して完全鋳造可能であることを「完全鋳造3回以上可能」と、それぞれ定義する。
溶鋼350tを鋳込み単位とする連続鋳造試験を前記条件の下で行い、試験結果について、「350tの完全鋳造不可」、「350tの完全鋳造可能」、「350tの完全鋳造2回可能」、「350tの完全鋳造3回以上可能」の判定を行った。連続鋳造試験終了または中止後に、溶鋼供給ノズル中の耐火物への介在物の付着や閉塞の有無についても併せて検討した。
連続鋳造により得られたスラブから、公知の方法に従って無方向性電磁鋼板を製造した。こうして得られた無方向性電磁鋼板の材料特性として、磁気特性(鉄損:W15/50(w/kg))の評価を行い、その結果を、通常値、および高位な値に区分した。
種々の実験条件(溶鋼中のREMおよびAlの含有率、耐火物の材質、CaO、MgO、およびCの含有率、溶鋼供給ノズル内面への配置態様)下で行った連続鋳造試験(実施例1〜18および比較例1〜11)について、実験条件および結果をまとめたものを表1、表2に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
表1、表2において、「耐火物材質の列における「D」はドロマイトを、「ZCG」はZCG(ZrO2−CaO−C)、「AG」はアルミナグラファイトをそれぞれ意味する。
また、表1、表2において、「連続鋳造回数およびノズル状態」の列に記載した記号「◎」は、「350tの完全鋳造3回以上可能」、「○」は、「350tの完全鋳造2回可能」、「△」は、「350tの完全鋳造可能」、そして「×」は、「350tの完全鋳造不可」をそれぞれ意味する。
【0030】
これらの実験結果を基に、まず、溶鋼成分中のREMの含有率について検討を行う。
Alの含有率がほぼ同一(0.11〜0.15質量%)である実施例7(REMの含有率0.0003質量%)、比較例1、2、および4(REMの含有率0.0002質量%)の結果について比較を行った。
その結果、磁気特性値(鉄損:W15/50)は、比較例1、2、および4については「通常」であるのに対し、実施例7については「高位」であった。
また、比較例1においては、CaOを含まないアルミナグラファイト質耐火物を溶鋼供給ノズルの溶鋼接触面に使用して、REMの含有率が0.0002質量%である溶鋼の350t連続鋳造を行った。結果は「完全鋳造可能」であったが、REMの含有率が低いにもかかわらず、1度目の350t連続鋳造終了後にノズルは閉塞傾向にあった。
同じ耐火物を使用した比較例3に示すように、REMの含有率を0.0031質量%まで増加させると、1度目の350t連続鋳造の途中でノズルは閉塞を起こし、結果は「完全鋳造不可」であった。
以上の結果から、REMの含有率が0.0003質量%以上になると、無方向性電磁鋼板の鉄損(W15/50)は改善され、一方でREMの含有率が0.0002質量%を超えると、CaOを含まない耐火物を使用した場合特に、溶鋼供給ノズルの閉塞の問題が顕著になることがわかる。
【0031】
次に、溶鋼中のAlの含有率について検討を行う。
比較例6、7、11および実施例17は、溶鋼中のREMの含有率が0.0034〜0.0046質量%であり、10質量%以上のCaOを含有する耐火物を使用している点で共通するが、Alの含有率が0.10質量%未満である比較例6、7、11においては「350tの完全鋳造不可」であったのに対し、Al含有率が0.10質量%であった実施例17においては、350t鋳造したところでノズル閉塞したものの、「350tの完全鋳造可能」であった。
これらの結果から、溶鋼供給ノズルへの介在物の付着を防止するためには、少なくとも0.1質量%以上のAlを溶鋼中に含有させる必要があることがわかる。
【0032】
さらに、工業的に安定した効果を得るために詳細な検討を行う。溶鋼中のAl質量%とREM質量%の比Al/REMに着目すると、実施例1〜18は0.0003質量%以上のREMと、0.1質量%以上のAlとを含み、かつ、Al/REM>20となるように調整され、前記溶鋼と接する内面の少なくとも一部にCaOを10質量%以上含有する耐火物を配置して連続鋳造した例であり、これらの条件では、REM添加による磁気特性改善効果とノズル閉塞の抑制を両立できることがわかる。
一方、比較例1〜11は、前記条件のいずれか一つ以上が満足されていない例であり、REM添加による磁気特性改善効果とノズル閉塞の抑制を両立できない。とくに、比較例8〜10は、0.0003質量%以上のREMを添加し、耐火物中のCaOと反応させるAlを0.1質量%以上鋼中に含有する例であるが、複数回評価すると350t鋳造完了前にノズル閉塞が発生する場合のあることが認められる。この理由は、鋼中のAl含有量に対して相対的に多量のREMを添加したため、生成した介在物中のAl2割合が不足したためである。AlとREMの相対比の適正値は、図3にも前記結果を整理して示すようにAl/REM>20とみなすことができる。
【0033】
次に、耐火物中のCaOの含有率が及ぼす影響について検討を行う。
比較例3、実施例14および17は、いずれも溶鋼中のREMの含有率が0.0003質量%以上(0.0031〜0.0046質量%)であり、溶鋼中のAlの含有率が0.1質量%以上(0.10〜0.14質量%)である点において共通するが、使用した耐火物種が異なる。
CaOを含有しない耐火物を使用した比較例3においては、1度目の連続鋳造の途中でノズルの閉塞が起こり、「350tの完全鋳造不可」であった。
耐火物(ドロマイト)中のCaOの含有率が10質量%である実施例14においては、「350tの完全鋳造可能」であり、鋳造終了後のノズルには介在物が付着する傾向が見られた。耐火物(ZCG)中のCaOの含有率が19質量%である実施例17においては、「350tの完全鋳造可能」であったものの、350t鋳造したところでノズルが閉塞した。
以上から、連続鋳造時のノズル閉塞を防止するためには、耐火物のCaO量は10質量%以上あることが好ましいことがわかる。また、ドロマイトを含有する耐火物の方がCaOの含有率が低かったにもかかわらず、ZCGよりも高い介在物付着防止効果を有することがわかる。
【0034】
本発明において用いられる耐火物として、ドロマイトを含有する耐火物が最も好ましいことは、下記の検討結果からも明らかである。
実施例17、18、14、および11は、いずれも溶鋼中のREMの含有率が0.0003質量%以上(0.0035〜0.0048質量%)、溶鋼中のAlの含有率が0.1質量%以上(0.10〜0.19質量%)であり、いずれにおいてもCaOを10質量%以上含有する耐火物を使用しているが、実施例17、18においてはZCG耐火物、実施例14、および11においてはドロマイトクリンカーを含有する耐火物を用いた点で相違する。
【0035】
ZCG耐火物を用いた実施例17、18においては、「350tの完全鋳造可能」であったものの、350t鋳造したところで溶鋼供給ノズルが閉塞した。一方、ドロマイト含有耐火物を用いた実施例14においては、「350tの完全鋳造可能」であったが、鋳造後のノズル内面には介在物が付着する傾向が見られ、ノズル交換なしで2度目の350tの連続鋳造完了はできないものと判断された。同じくドロマイトを含有する耐火物を用いた実施例11においては、2度目の連続鋳造終了後のノズルは閉塞傾向であったものの、「350tの完全鋳造2回可能」であった。
以上の結果から、耐火物の材質としては、CaOを10質量%以上含有する耐火物のなかでも、ドロマイトクリンカーを含有する耐火物が最も好ましいことがわかる。
【0036】
次に、CaOおよびMgOを主成分とする耐火物における両者の含有率比(前記W1/W2)について検討を行う。
実施例2、3、4、6、7、9は、いずれも溶鋼中のREMの含有率が0.0003質量%以上(0.0003〜0.0038質量%)、溶鋼中のAlの含有率が0.1質量%以上(0.14〜0.25質量%)であり、溶鋼中のAl質量%とREM質量%の比Al/REMは20超であり、更にCaOを10質量%以上含有し、ドロマイトクリンカーを含有する耐火物を用いた例である。耐火物の含有率は、CaOが45〜65質量%、MgOが25〜50質量%であり、CaO含有量W1とMgO含有量W2の比W1/W2は、0.90以上でかつ2.60以下の範囲内である。
いずれの場合も350tの完全鋳造を2回連続して行うことが可能であり、2度目の連続終了後において、溶鋼供給ノズルの閉塞もなく、溶損も見られなかった。したがって、いずれの場合においても「350t完全鋳造3回以上可能」と判定された。
【0037】
次に、耐火物中のMgOの含有率について検討を行う。
実施例9、実施例8、および実施例13はいずれも、溶鋼中のREMの含有率が0.0003質量%以上(0.0029〜0.0038質量%)、溶鋼中のAlの含有率が0.1質量%以上(0.17〜0.25質量%)で、CaOを10質量%以上(60〜75質量%)含有する耐火物であるドロマイトクリンカーを含有する耐火物を用いた点で共通しているが、実施例9、8、13の順に、耐火物中のMgOの含有率が25質量%、20質量%、15質量%と減少しており、これに伴いCaOやC(グラファイト)の含有率を変更させている。
MgO量の減少に従い溶損傾向がより顕著に見られるようになり、実施例9においては「350tの完全鋳造3回以上可能」であったのが、実施例8においては、2度目の連続鋳造終了後にノズルの溶損傾向が見られたため「350tの完全鋳造が2回可能」にとどまり、実施例13においては、1度目の連続鋳造終了後に既にノズルの溶損傾向が見られたため「350tの完全鋳造可能」であった。
以上の結果から、耐火物におけるMgOの含有率の下限値は、350tの連続鋳造を少なくとも1回行うことが可能である15質量%以上であることが必要であり、好ましくは20質量%、更に好ましくは25質量%である。
【0038】
実施例3、実施例10、実施例11、および実施例14はいずれも、溶鋼中のREMの含有率が0.0003質量%以上(0.0031〜0.0043質量%)、溶鋼中のAlの含有率が0.1質量%以上(0.13〜0.21質量%)で、CaOを10質量%以上含むドロマイトクリンカーを含有する耐火物を用いた点で共通しているが、実施例3、10、11、14の順に耐火物のMgO量が50質量%、60質量%、70質量%、75質量%と増加しており、これに伴いCaOの含有率を減少させている。
MgO量の増加に伴い、ノズルへの介在物付着傾向が顕著に見られるようになり、実施例3、10、11、14の順に鋳造結果も、実施例3において「350tの完全鋳造3回以上可能」であったのが、実施例10においては、2度目の連続鋳造終了後に軽微ながらノズルの閉塞傾向が見られたため、「350tの完全鋳造2回可能」となり、実施例11においても、2度目の連続鋳造終了後にノズルの閉塞傾向が見られたため、「350tの完全鋳造2回可能」となり、実施例14においては、1度目の連続鋳造終了後に既にノズルの溶損傾向が見られたため「350tの完全鋳造可能」であった。
以上から、耐火物におけるMgOの含有率の上限値は、350tの連続鋳造を少なくとも1回行うことが可能である75質量%以下である必要があり、好ましくは70質量%、より好ましくは60質量%、更に好ましくは50質量%であることがわかる。
【0039】
次に、耐火物中のCaOの含有率W1とMgOの含有率W2の比W1/W2について検討を行う。
実施例9、実施例11、実施例14、実施例8、および実施例13はいずれも、溶鋼中のREMの含有率が0.0003質量%以上(0.0029〜0.0043質量%)、溶鋼中のAlの含有率が0.1質量%以上(0.13〜0.25質量%)で、CaOを10質量%以上(10〜75質量%)含むドロマイトクリンカーを含有する耐火物を用いた点で共通するが、実施例9、11、14の順に前記W1/W2の値が、2.6、0.33、0.13と減少している。これに伴い鋳造状況はノズル閉塞する傾向が強くなり、前記した実施例の順に、「350tの完全鋳造3回以上可能」(実施例9)、「350tの完全鋳造2回可能」(実施例11)、「350tの完全鋳造可能」(実施例14)と、ノズル交換なしに連続鋳造可能な回数は減少した。
以上の結果から、前記W1/W2は、0.33以上であることが好ましいことがわかる。
【0040】
次に、実施例9、8、および13について比較を行う。前記W1/W2の値は、実施例9、8、13の順に、2.6、3.0、5.0と増加する。これに伴いノズルが溶損する傾向がより顕著になり、前記した実施例の順に、「350tの完全鋳造3回以上可能」(実施例9)、「350tの完全鋳造2回可能」(実施例8)、「350tの完全鋳造可能」(実施例13)と、ノズル交換なしに連続鋳造可能な回数は減少した。
以上の結果から、前記W1/W2は、3.0以下であることが好ましいことがわかる。
以上の検討結果から、介在物付着を抑制する効果を有するが溶損を招き易いCaOおよび溶損のバリア効果を発現するが付着を招き易いMgOの含有量をバランスさせることが肝要で、前記したW1/W2は、0.33以上でかつ3.0以下であることが好ましいことがわかる。
【0041】
次に、耐火物中のCの含有量について検討を行う。
実施例3、実施例2、実施例1、および実施例12はいずれも、溶鋼中のREMの含有率が0.0003質量%以上(0.0032〜0.0038質量%)、溶鋼中のAlの含有率が0.1質量%以上(0.13〜0.21質量%)で、CaOを10質量%以上(40〜50質量%)含み、CaOとMgOはほぼ同量(0.90≦W1/W2≦1.11)であるドロマイトクリンカーを含有する耐火物を用いた点で共通しているが、実施例3、2、1、12の順に、耐火物中のCの含有率が、1質量%、4質量%、10質量%、20質量%と増加している。
【0042】
Cの含有率の増加に伴い、鋳造状況はノズルの溶損傾向が強まり、鋳造結果は実施例3、2、1、12の順に、実施例3および2においては「350tの完全鋳造3回以上可能」であったが、実施例1においては、2度目の連続鋳造終了後に軽微ながらノズルの溶損が見られたため「350tの完全鋳造2回可能」となり、実施例12においては、1度目の連続鋳造終了後に既にノズルの溶損が見られたため、「350tの完全鋳造可能」となった。
また、耐火物のCaOとMgOはほぼ同量でない点において実験条件が相違するが、Cの含有量が5質量%である実施例9および10のように、溶鋼供給ノズルの交換なしに350tの完全鋳造を2回以上連続して行うことが可能な場合もあった。
以上から、耐火物におけるCの含有率の上限は、350tの連続鋳造を少なくとも1回行うことが可能である10質量%以下である必要があり、好ましくは5質量%、更に好ましくは4質量%であることがわかる。
【0043】
次に、CaOを10質量%以上含む耐火物の溶鋼供給ノズル内面の溶鋼接触面への配置が異なる場合について、実施例4、実施例15、および実施例16に基づいて説明する。これらの実施例においては、同一の耐火物(ドロマイトクリンカー含有、CaOの含有率45質量%、MgOの含有率49質量%、Cの含有率1質量%)を使用しているが、実施例4においては、ノズルの内面に前記耐火物を図2(A)に示すように、実施例15においては図2(B)に示すように、実施例16においては図2(C)に示すように、それぞれ配置したものである。
実施例4、15、16のいずれについても、連続鋳造試験の結果は「350tの完全鋳造3回以上可能」と判定された。
いずれの場合についても、実用上問題となるノズルの閉塞は見られず、これらの実施例においては、耐火物の配置の相違による影響は見られなかった。
【0044】
本発明は、前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部または全部を組み合わせて本発明の鋼の連続鋳造方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
例えば、本発明方法において用いられる連続鋳造機は、図1に示したような湾曲型のものであってもよいが、垂直曲げ型の連続鋳造機を用いることももちろん可能である。
また、本発明方法において用いられる耐火物は、ドロマイトクリンカーに限定されず、CaOおよびMgOの含有率W1、W2、または比W1/W2が上述の範囲内である任意の耐火物を用いることができる。
さらに、連続鋳造に用いる鋼の種類は、実施例において例示した無方向性電磁鋼板用鋼に限定されず、REMの添加により材料特性が改善される任意の鋼の連続鋳造について本発明は適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上述べたように、本発明は、材料特性を改善するためにREMを添加した無方向性電磁鋼板用鋼等の鋼の連続鋳造に利用することが可能であり、溶鋼供給ノズルの長寿命化、連続鋳造機の安定稼動等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施の形態に係る鋼の連続鋳造方法を適用する連続鋳造機の概要図である。
【図2】(A)〜(C)はそれぞれ、同鋼の連続鋳造方法に用いられるノズルの耐火物の配置位置を示す説明図である。
【図3】本発明に係る実施例を、横軸をREM質量%、縦軸をAl質量%で整理した説明図であり、溶鋼供給ノズルの内面の少なくとも一部にCaOを10質量%以上含有する耐火物を配置した例のみを示している。
【符号の説明】
【0047】
10:連続鋳造機、11:溶鋼、12:取鍋、13:第1の溶鋼供給ノズル、14:タンディッシュ、15:第2の溶鋼供給ノズル、16:鋳型、17:鋳片、18:鋳片支持ロール、19:鋳片冷却装置(スプレー)、20:凝固完了点(クレータエンド)、21:鋳片引き抜きロール、22:鋳片搬送ロール、23:ノズル本体、24:耐火物、25:湯面、26:吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または2以上のノズルを介して鋳型内に溶鋼を注入し、該鋳型下部から鋳片を連続的に引き出す鋼の連続鋳造方法において、
前記溶鋼には0.0003質量%以上のREM(希土類元素)と、0.1質量%以上のAlとを含み、かつ、前記溶鋼中のREM濃度(質量%)とAl濃度(質量%)の比がAl/REM>20となるように調整し、しかも、前記ノズルの少なくとも1には前記溶鋼と接する内面の少なくとも一部にCaOを10質量%以上含有する耐火物が配置されていることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
【請求項2】
請求項1記載の鋼の連続鋳造方法において、前記ノズルは、取鍋とタンディッシュとの間に配置される第1の溶鋼供給ノズル、該タンディッシュと前記鋳型との間に使用される第2の溶鋼供給ノズル、該第2の溶鋼供給ノズルに隣接して配置される流量調整ノズル、および、これらのいずれかのノズルをそれぞれ対応する前記取鍋または前記タンディッシュに接続するための接続ノズルのいずれかであることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
【請求項3】
請求項1および2のいずれか1項に記載の鋼の連続鋳造方法において、前記耐火物は、CaOおよびMgOを主成分とすることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
【請求項4】
請求項3記載の鋼の連続鋳造方法において、前記耐火物は、MgOの含有率が20質量%以上でかつ70質量%以下であり、CaOの含有率W1とMgOの含有率W2の比W1/W2が、0.33以上でかつ3以下であることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
【請求項5】
請求項4記載の鋼の連続鋳造方法において、前記耐火物におけるCの含有量が0.1質量%以上でかつ10質量%以下であることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋼の連続鋳造方法において、前記溶鋼は、0.001質量%以上でかつ0.01質量%以下のC、0.1質量%以上でかつ7質量%以下のSi、0.1質量%以上でかつ3質量%以下のAl、0.0003質量%以上でかつ0.05質量%以下のREM、並びに、残部Feおよび不可避的不純物を含み、前記鋳片は圧延して、最終的に無方向性電磁鋼板用鋼として使用されることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−173660(P2008−173660A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8224(P2007−8224)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】