説明

鋼材の接合構造および接合方法ならびに鉄骨造の建築物

【課題】ドリルねじによる接合施工する場合の施工効率を向上させることができる鋼材の接合構造および接合方法並びに鉄骨造の建築物を提供すること。
【解決手段】ドリルねじを用いて鋼材相互の重合部を接合する鋼材の接合構造において、ドリルねじ1の頭部側に位置して接合される鋼材11に先孔13が設けられ、先孔13は、ドリルねじのねじ軸部よりも外径寸法が大きく、かつドリルねじ頭部5を嵌設する大径孔13aと、大径孔13aに接続する小径孔13fとにより構成され、小径孔13fは、ドリルねじ1のねじ部外径寸法よりも小さくされて、ドリルねじ1により雌ねじ孔が設けられて接合されている鋼材の接合構造。前記の接合構造とするにあたり、ドリルねじ1により削られた削りかすを、ドリルねじ1により大径孔13aから鋼材11の外側に排出しながら鋼材11,12を接合する鋼材の接合方法。前記の接合構造を備えた構造鉄骨造の建築物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材の接合部における板状の鋼板相互を重合させて、ドリルねじにより接合する鋼材の接合構造および接合方法ならびに鉄骨造の建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドリルねじを用いた鋼材の接合構造として、スチールハウス等では、接合すべき鋼材における薄鋼板相互を重合すると共にこれらに渡って貫通配置するようにドリルねじを用いて接合することが知られている。前記のうように薄鋼板相互の接合では、高剛性の接合構造を前提としていない接合構造である。
【0003】
ドリルねじにより鋼材を接合する場合、鋼材の板厚が薄い場合には、(1)ドリルねじにより削られた削りかすは、確実にドリルねじにより排出されるため、削りかす排出についての問題が生じることはない。また、(2)、ドリルねじによって空けられる孔の位置が多少偏心しても、鋼材が薄いために、確実の接合される鋼材が、ドリルねじのドリル刃により孔が空けられた後、タッピングされて接合されるため、ドリルねじの偏心されて接合されても特に問題にはならなかった。さらに、(3)接合される裏面の鋼板にドリルねじにおけるドリル刃により孔があく前に、ドリルネジのねじ山が表側の鋼板に干渉することがないため、ドリルねじの打ち込みが困難になることもない。
【0004】
また、従来、少なくとも一方の部材の板厚が2.3mm以上の鉄骨の柱と梁の接合、梁と梁の接合ならびに梁と小梁の接合(いずれも板状部相互の重合部の接合)においては、(1)溶接接合、(2)ボルト接合、リベット接合ならびに(3)高力ボルト接合が適用されていた(例えば、特許文献1〜3参照。)。ドリルねじによる接合は、板厚2.3mm厚以上の鉄骨の柱と梁の接合、梁と梁の接合ならびに梁と小梁の接合(いずれも板状部相互の重合部)においてはドリルねじによる接合は行われていなかった。
【0005】
(1)前記の溶接接合では、接合される鋼材を溶接できる形状に加工し、さらに溶接時の熱により部材が変形しないように温度、溶接手順や拘束条件を管理して溶接を実施していた。また、めっきや塗装など予め防錆処理されていた鋼材を用いる場合にあっては、接合部のめっきや塗装などを剥離したうえ溶接接合し、溶接の後に損傷を受けた防錆処理部の補修も必要となっていた。
【0006】
(2)前記のボルト接合またはリベット接合では、接合される部材のすべてにボルトまたはリベットの軸径以上の孔を穿設したうえ、ボルトおよびナットまたはリベットにより一体化する接合方法としていた。このとき、両被接合部材の双方から作業する必要があった。
【0007】
(3)前記の高力ボルト接合では、前記(2)と同様の作業に加え、重合される部材の接触面を有効に摩擦力が生じるように表面処理する必要があった。
前記のように、(1)溶接接合では、開先加工等を含む溶接できる形状に加工、温度管理等、非常に煩雑で、接合コストも高くなると共に高度の熟練を要するという問題があった。
また、(2)前記のボルト接合またはリベット接合では、接合される部材のすべてにボルトまたはリベットの軸径以上の孔を穿設しなければならず、しかも接合部の表裏両側から作業する必要があり、接合作業効率が低いという問題がある。
また、前記(3)では、前記(2)に加えて摩擦接合面に有効に摩擦力が生じるように表面処理する必要があり、接合コストが増加する問題がある。
【0008】
(比較的厚い板厚の鋼板相互の接合構造について)
前記従来の溶接接合のような作業時の管理や溶接後の防錆補修が不要となり、ボルトやリベットのように部材の両側から作業する必要が無くなり、高力ボルトのように摩擦力のための表面処理を必要としないため、作業効率が向上する接合構造であって、前記の(1)〜(3)課題を有利に解消することができる接合構造として、(4)鋼板板厚が2.3mmを越える比較的厚い板厚の鋼板相互の接合構造にも、ドリルねじによる接合が利用されつつあり、特許出願が行われている。
【0009】
前記の(4)の比較的厚い板厚の鋼板相互の接合構造の場合について、図13を参照して説明すると、ドリルねじ1を鋼板12に対して垂直にねじ込むようにして、鋼板11、12相互を接合する構造である。
【0010】
ドリルねじ1による鋼材相互の接合、特に鋼材における比較的厚い板厚の鋼板部相互の接合は、図13に示すように、(A)ドリルねじ1先端のドリル刃10により、接合される鋼板12の板厚を貫通する孔13gが先にあけられたのち、ドリルねじ1のドリルねじ部3により、鋼板12がタッピングされて、他方の鋼板11とドリルねじ1および鋼板12が密着接合される接合方法である。
各鋼板11,12に先孔が設けられていない場合では、ドリルねじ1のドリル刃10により各鋼板11,12に孔13gが開設された後に、ドリルねじ1頭部側に位置する鋼板11が、ドリルねじ1のドリルねじ部3によりタッピングされると、スムースに雌ねじをタッピングして設けることができるが、反対に、ドリルねじ1におけるドリル刃10により貫通孔13gが開設する前に、ドリルねじ1頭部側に位置する鋼板11がタッピングされ始めると、ドリル刃10による切削して進行する速度は、タッピングして進行する速度(ドリルねじ1回転でねじ1ピッチ分進行する速度)より格段に遅いため、タッピング不能になる特徴がある。
したがって、ドリルねじ1におけるドリル刃10により、ドリルねじ1の先端側よりに位置する下側の鋼板12に孔13gが開けられた後、タッピングされることが必要条件になったり、ドリルねじ1の頭部5側に位置する鋼板11に、ドリルねじ1のドリルねじ部3の外径寸法Dよりも十分内径の大きい大径孔13を設けることが必要になり、ドリルねじ部3が鋼板11の孔内面に干渉するのを防止するようにしている。
【0011】
前記の必要条件を前提とした場合、または比較的厚い鋼板相互をドリルねじにより鋼材を接合する場合、鋼材の板厚が厚くなるにつれて、実際に施工した場合、次のような問題点が生じるようになった。先ず第1に、ドリルねじにより削られた削りかすの排出の問題(1)、第2に、ドリルねじによって空けられる孔の位置が偏心してしまうという問題(2)、その問題(2)に関連して第3に、裏面側の鋼板12に孔13gが開設される前に、ドリルネジのねじ山が表側の鋼板に干渉してしまい、ドリルねじの打ち込みが困難になるという問題(3)がある。
【0012】
また、鋼材の板厚が厚くなると、伝達させる応力も大きくなることを設計上期待されるから、ドリルねじが接合されるとき、鋼板の孔(先孔部分とドリル刃により開けられる孔の両方)の側面とドリルねじが支圧により有効に伝達できるようにする必要が生じるようになった。
【特許文献1】実公昭56−4082号公報
【特許文献2】実公昭56−55365号公報
【特許文献3】特開2002−38608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
先ず、前記(1)のドリルねじによって削られた削りかすの問題について説明する。
【0014】
ドリルねじ1を使用して鋼材(鋼板)相互を重合した状態で接合する場合、接合ドリルねじ1先端のドリル刃10により鋼板12に孔13gがあけられるが、図13に示すように、現在のドリルねじの接合工法では、削りかす13hが有効に排除されずに接合孔13g部分に残ることがある。
【0015】
前記のように、削りかす13hが、ドリルねじ先端7と鋼板12の間に入り込むと、削りかす(切り粉)13hが、接合孔部分内において回転するドリルねじ部3を支承するベアリングのような効果を発生し、ドリルねじ先端7の刃10による鋼材切削効率を極端に低下させ、場合によってはドリルねじ1自体が空回りさせることもあるという問題があった。
【0016】
例えば、図13に示すように、2枚の鋼板11,12を接合する場合には、ドリルねじ1の頭部側に位置して接合される表側の鋼板11に、ドリルねじ部3の山径より大きい径の先孔13を設けて、削りかす13hを排出することも考えられるが、しかしこの場合には、ドリルねじ1と鋼板12の先孔13との筒状の隙間Gが小さく、削りかす13hが有効に排除されないことがある。
【0017】
これまで、ドリルねじ1の使用範囲は、鋼材11,12の板厚が2.3mm未満の板厚が主流であったため、削られる鋼材の削りかす(きりこ)13hの量が少なく、削られる部分から排除される部分までの距離が短いため、削りかす13hを確実に排出でき、削りかす13hについて大きな問題とならなかったが、鋼材の板厚が、2.3mm以上の板厚の接合にドリルねじ1を用いることが可能となり、このようになると、削りかす(きりこ)排出の問題が生じた。
【0018】
前記の削りかすの問題については、ドリルねじ自体に工夫をすることも考えられるが、本発明では、被接合材となる鋼材(例えば、鋼板)側に有効な加工を施すことで、問題を解決しようとするものであり、できるかぎりドリルねじ1は、公知のドリルねじまたはこれに近い形態を利用することを前提とした発明である。
【0019】
次に、前記の(2)ドリルねじにより空けられる孔が偏心する問題点について説明する。
【0020】
図13に示すように、ドリルねじ1における頭部側に位置する鋼板11に設けられる大径孔13が、ドリルねじ1のドリル刃外径寸法D1およびドリルねじ部3の外径寸法Dよりも比較的大きいために、現行のドリルねじ1による鋼材の接合方法では、ドリルねじ1のドリル刃10が横方向の移動を拘束するようにガイドされておらず、ドリル刃10が横方向にずれて偏心し、ドリルねじ1先端により空けられる孔13gの位置が、横方向に偏芯してしまい、また、偏心してしまうと、ドリルねじ1のねじ部3が先孔13内周面をタッピングし始めてしまうという問題がある。このようになると、ドリルねじ1のねじ込みが困難になる。
【0021】
また、ドリルねじ1が偏心した状態で接合されてしまうと、接合されたドリルねじ1の頭部5は、偏心した配置状態となるので、先孔13内面とドリルねじ1の外周面とは、接触している部分と、非接触している部分とが生じ、接合部に支圧耐力にむらが生じるという問題がある。
【0022】
したがって、課題(4)として、鋼材における鋼板とドリルねじが接合されるとき、鋼板の孔(先孔部分とドリル刃により開けられる孔の両方)の側面とドリルねじ外面が、支圧により有効に伝達できるようにする必要がある。
【0023】
本発明は、前記の問題について、種々検討した結果、ドリルねじの頭部側に位置して接合される表面鋼材に設ける先孔の形状を工夫することにより、ドリルねじ接合時の削りかすを容易に排出することができ、ドリルねじの中心軸線と先孔の中心軸線を合致させるようにすることができ、また、前記の先孔の形状に面接触状態で密着するようにドリルねじの頭部形状を設定することにより、ドリルねじを用いた接合構造でも強固な接合構造を構成することができることを知見して本発明を完成させた。
本発明は、前記の課題を有利に解消することができ、ドリルねじ接合時の削りかすを容易に排出することができ、ドリルねじによる接合施工する場合の施工効率を向上させることができる鋼材の接合構造および接合方法並びに鉄骨造の建築物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の鋼材の接合構造においては、ドリルねじを用いて鋼材相互の重合部を接合する鋼材の接合構造において、ドリルねじの頭部側に位置して接合される鋼材に先孔が設けられ、前記先孔は、ドリルねじのねじ軸部よりも外径寸法が大きく、かつドリルねじ頭部を嵌設する大径孔と、その大径孔に接続する小径孔とにより構成され、かつ前記小径孔は、ドリルねじのねじ部外径寸法よりも小さくされて、前記ドリルねじにより雌ねじ孔が設けられて接合されていることを特徴とする。
また、第2発明では、第1発明の鋼材の接合構造において、小径孔は、ドリルねじ先端のドリル刃の外径寸法よりも大きく、かつドリルねじにおけるねじ部の外径寸法よりも小さい内径とされていることを特徴とする。
また、第3発明では、第1発明の鋼材の接合構造において、小径孔は、ドリルねじ先端のドリル刃の外径寸法より小さい内径とされ、ドリルねじにおけるドリル刃により切削されると共にドリルねじ部により雌ねじ孔がタッピングされていることを特徴とする。
また、第4発明では、第1発明〜第3発明のいずれかの鋼材の接合構造において、小径孔における大径孔よりの端部に截頭円錐状の傾斜面が設けられていることを特徴とする。
また、第5発明では、第1発明〜第4発明のいずれかの鋼材の接合構造において、大径孔は、小径孔に向って漸次径が小さくなる傾斜面を有する大径孔とされ、これにドリルねじの頭部が嵌設されていることを特徴とする。
また、第6発明では、第1発明〜第5発明のいずれかの鋼材の接合構造において、大径孔における小径孔側の端部に、ドリルねじのねじ部外径寸法よりも大きく、かつ大径孔内面に接続する環状の平坦面部が設けられ、その平坦面部を介して、小径孔の内面と大径孔の内面とが接続されていることを特徴とする。
また、第7発明では、第1発明〜第6発明のいずれかの鋼材の接合構造において、
大径孔にドリルねじの頭部側が収容されていることを特徴とする。
また、第8発明の鋼材の接合方法においては、第1発明〜第7発明の鋼材の接合構造とするにあたり、ドリルねじにより削られた削りかすを、前記大径孔から鋼材の外側に排出しながら、鋼材を接合することを特徴とする。
また、第9発明の鋼材の接合方法においては、第1発明、第2発明,第4発明〜第7発明のいずれかの鋼材の接合構造とするにあたり、最初に前記小径孔の内面によりドリルねじのドリル刃外側面をガイドして、小径孔の中心軸線と先孔の中心軸線を合致させるようにすると共に、鋼材とドリルねじの偏心を防止しながらドリルねじにより鋼材を接合することを特徴とする。
また、第10発明の鋼材の接合方法においては、第1発明、第3発明,第4発明〜第7発明のいずれかの鋼材の接合構造とするにあたり、最初に小径孔の軸方向端面に、ドリルねじのドリル刃先端傾斜面を当接して、小径孔の中心軸線にドリルねじの軸線を合わせるようにガイドして、ドリルねじの偏心を防止しながらドリルねじをねじ込むことを特徴とする。
また、第11発明の鉄骨造の建築物においては、第1発明〜第7発明のいずれかの鋼材の接合構造が、鉄骨部材の柱と梁の接合部、柱と柱または梁と梁の接合部あるいは梁と小梁の接合部等の鉄骨部材の接合部に用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
第1発明によると、ドリルねじの頭部側に位置して接合される鋼材に設けられる先孔が、ドリルねじのねじ軸部よりも外径寸法が大きく、かつドリルねじ頭部を嵌設する大径孔と、前記大径孔に接続する小径孔とにより構成したので、ドリルねじのドリル刃またはねじ部により切削した削りかすを、前記の大径孔から積極的に鋼材の外側に排出することができるため、削りかすを排出された大径孔の内周面にドリルねじの頭部側外周面を確実に密着した状態で嵌設することができ、ドリルねじ頭部と大径孔の支圧面積を大きくして支圧耐力を向上させて、ドリルねじにより鋼材相互を接合できる。
また、先孔に小径孔が設けられているので、小径孔によりドリルねじにおけるドリル刃をガイドすることができ、先孔の中心軸線とドリルねじの中心軸線とを合致させた、正確な接合構造とすることができる。
また、先孔における小径孔のみに、ドリルねじのねじ軸部により雌ねじがタッピングされて設けられた接合構造とされているので、鋼材相互の接合を確実にすることができる。
第2発明によると、前記第1発明の効果に加えて、先孔における小径孔をドリルねじ先端のドリル刃の外径寸法よりも大きくしたので、ドリル刃の側面を小径孔によりガイドしながらドリルねじをガイドすることができると共に、前記のドリルねじにおけるねじ部により小径孔内周面側をタッピングすることができ、接合される鋼材の両方にねじを刻設して強固な接合構造とすることができる。
第3発明によると、前記第1発明の効果に加えて、小径孔が、ドリルねじ先端のドリル刃の外径寸法より小さくされているので、ドリル刃の先端側の傾斜面を小径孔の内周縁部に当接させながら押し付けることで、ドリルねじの中心軸線を小径孔の中心線に合わせるようにガイドすることができ、またその状態で、小径孔をドリル刃により切削すると共にドリルねじ部によりタッピングして接合されている接合構造となるので、ドリルねじの中心軸線と小径孔の中心軸線との合致精度の高い接合構造となっている。
第4発明によると、小径孔の先端部の傾斜面によって、ドリルねじの先端部をガイドして、ドリルねじの中心軸線を小径孔の中心軸線に合致するようにガイドさせることができ、ドリルねじを正確な位置に配置した接合構造とすることができる。
第5発明によると、大径孔内側の傾斜面によって、ドリルねじの先端部をガイドして、小径孔側にガイドすることができ、また、ドリルねじの中心軸線を大径孔の中心軸線に合致するようにガイドさせることができ、ドリルねじを正確な位置に配置して接合することができる。さらに、ドリルねじの頭部を嵌設した状態では、ドリルねじのねじ軸部の場合のみに比べて、ドリルねじ頭部と大径孔の支圧面積を大きくすることができ、支圧耐力を向上させることができる。
第6発明によると、大径孔内面と小径孔とが環状の平坦面部を介して接続されているので、ドリルねじにおけるねじ軸部が、大径孔側の内周面に干渉するのを防止することができる。
第7発明によると、大径孔にドリルねじの頭部側が収容されているので、鋼材の表面側にドリルねじの頭部による凸部が生じないので、表面仕上げ材を設ける場合に、ドリルねじ頭部を収容する凹部を設ける必要がなく、表面仕上げ材の形状を単純な形状とすることができ、表面仕上げ材の内側面を鋼材に確実に当接させて配置することができる。
第8発明によると、ドリルねじにより削られた削りかすを、ドリルねじにより大径孔から鋼材の外側に排出しながら鋼材を接合するので、大径孔内に削りかすが残留するのを防止することができ、そのため確実にドリルねじ頭部を大径孔に密着状態で嵌設することができる。
第9発明によると、小径孔の内面によりドリルねじのドリル刃外側面をガイドして、小径孔の中心軸線と先孔の中心軸線を合致させるようにすると共に、鋼材とドリルねじの偏心を防止しながらドリルねじにより鋼材を接合するので、ドリルねじを鋼材に対して所定の正確な位置で正確な姿勢で接合することができる。
第10発明によると、小径孔の軸方向端面に、ドリルねじのドリル刃先端傾斜面を当接して、小径孔の中心軸線とドリルねじの軸線を合致させるようにガイドしてドリルねじの偏心を防止するようにしたので、ドリルねじを正確な位置で接合することができると共に鋼材に対して正確な姿勢でドリルねじによりタッピングして接合することができる。そのため、ドリルねじの頭部を、先孔における大径孔に確実に嵌設して、大径孔内周面に頭部外周面を面接触状態で嵌合することができ、ドリルねじと鋼材の支圧となる投影面積を大きくして、支圧耐力を向上させることができる。
第11発明によると、鉄骨部材における鋼材相互のドリルねじによる接合部の剛性が高く、削りかすが排出され、しかも正確な位置にドリルねじが接合されている接合部支圧耐力の高い接合構造の構造物とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図1(a)および図2は本発明の第1実施形態の鋼材の接合構造を示すものであって、ドリルねじ1の頭部側に位置して接合される鋼材における鋼板11に先孔13が設けられ、その先孔13は、深さ寸法を大きくした截頭円錐状の大径孔13aと小径孔13fとから形成されている。
【0028】
前記の各鋼材の板厚寸法は、少なくとも板厚2.3mmを下回らない板厚寸法の鋼材とされ、通常は、2.3mm以上〜6mm程度の鋼板相互の重合部、またはドリルねじ1の頭部側またはドリルねじ1の先端側に位置して接合される鋼材の板厚寸法が、例えば、16mm〜18mm程度またはこれを越える板厚寸法の場合にも可能な、ドリルねじを用いた接合構造および接合構造に適用することができる。
【0029】
前記の截頭円錐状の大径孔13aの形状は、小径孔13fに向って漸次内径が小さくなるように傾斜した内面とされ、前記大径孔13aにおける小径部13jは、ドリルねじ1におけるねじ部2の外径寸法Dよりも僅かに大きな寸法とされ、その小径部に接続する円環状底部37が設けられている。円環状底部37の外径寸法は、ドリルねじ1におけるドリルねじ部3の外径寸法Dと同じ寸法か、僅かに大きい寸法とされ、円環状底部37にドリルねじ1におけるドリルねじ部3によりタッピング可能にされ、また、截頭円錐状の大径孔13a内周面にドリルねじ1のドリルねじ部3が干渉しないようにされている。
【0030】
前記の截頭円錐状の大径孔13aの内面形状は、ドリルねじ1の頭部5を嵌設して収容可能な大きさにされ、したがって、截頭円錐状の大径孔13aの深さ寸法は、ドリルねじ1における頭部5の高さ寸法と同じ寸法か、僅かに大きい寸法とされている。また、ドリルねじ1の頭部5には、六角溝(図示の場合)あるいは十字状等の回動工具係合用溝からなる回動工具係合部6が設けられている。
【0031】
前記の円環状底部37に接続する小径孔13fの内径寸法D3は、ドリルねじ1におけるドリル刃10の外径寸法D1と同じ寸法か、若しくは僅かに大きい内径寸法とされている。
【0032】
前記のように先孔13の形状は、截頭円錐状の形状を基本形態とするのが好ましい。このように截頭円錐状とすることにより、ドリルねじ1の接合後の状態では、鋼材(鋼板)11における大径孔13の内周面に、ドリルねじ1における頭部5外周面が全周に渡って面接触状態で密着できるようになるためである。そのため、大径孔13aにおけるドリルねじ1頭部側の内径を奥側の内径よりも大きい内径とするのが好ましが、後記の実施形態のように、大径孔13におけるドリルねじ1の頭部側の内径と奥側の内径を同じ径としてもよい。また、ドリルねじ1の頭部5の形状は、先孔13における大径孔13a内周面の形状と一致させるのが好ましい。
【0033】
図1(b)に示す形態は、ドリルねじ1の先端側に位置して接合される鋼材11に小径先孔38を設けてもよいことを示すための説明図であって、図示の形態では、ドリルねじ1におけるドリル刃10の外径寸法D1よりも僅かに小さい寸法で、鋼材12を貫通した小径先孔38が設けられている。前記の小径先孔38は必要に応じ設ければよい。
【0034】
ここで、前記の鋼材の接合構造において使用するドリルねじ1の一形態について、図1を参照しながら説明する。
【0035】
図示のドリルねじ1は、ドリル部2とドリルねじ部3とを有する脚部4と、截頭円錐状の頭部5と、その截頭円錐状の頭部5に、横断面六角形状の凹溝からなる回動工具係合部6を備えている。
【0036】
また、前記ドリル部2の先端には、対称に傾斜したドリル刃先端部7が設けられ、ドリル刃先端部7からドリルねじ部3のねじ山8に渡り、重合されて接合される各鋼材の合計厚さ寸法以上の長さの傾斜ガイド溝9が、脚部4の外周上を軸方向に傾斜して設けられて、切り粉を案内排出するようにされている。前記の傾斜ガイド溝9は必要に応じ設ければよい。
【0037】
また、ドリルねじの製造加工時に、脱水素処理させたドリルねじ1は、水素除去不充分によるドリルねじ1のねじ頭部のねじ込み作業後に破断される所謂、首飛び現象が発生しないドリルねじ1であるので、接合金具として信頼性の高いドリルねじ1により鉄骨部材を接合した接合構造の鉄骨造建築物を構築することができる。
【0038】
ドリル部2の外径寸法D1は、ドリルねじ部3の谷の径dよりも大きく、かつドリルねじ部3の山の外径Dよりも小さくされ、ドリル部2の長さ寸法L1およびねじ部3の長さ寸法Lは、重合されて接合される鋼材相互の合計の板厚寸法T(t1+t2)以上とされ、頭部に回動工具係合部6が形成され、電動式レンチ等により回動可能に構成されている。
【0039】
ドリルねじ1の先端には、当該ドリルねじ1のねじ部3の谷の径dと同じ寸法か、または僅かに大きい外径で、かつ、当該ドリルねじ1のねじ部3の山の径Dより小さい外径D1のドリル刃10を有している。
【0040】
ドリルねじ1の呼び径は、例えば、6mm〜8mmあるいは8mmを越える寸法とされ、少なくとも接合される一方の部材の板厚が2.3mm以上の鋼材を一方に含む鋼材11,12同士が重合された鋼材重合部に適用可能にされている。
【0041】
また、ドリルねじ1の表面硬さおよび心部硬さは、JISB1055またはJISB1059の規定に従うものとする。例えば、JISB1059の3.2.1(表面硬さ)項の規定および3.2.2(心部硬さ)項の規定に準じて、JISB1059の11.1.1の試験を行った時に、530HV0.3以上の表面硬さとされ、320HV10〜400HV10の心部硬さとされている。前記のドリルねじ1を使用して接合される部材(鋼材)の材質として軟鋼(400MPa鋼程度以下)の部材であると望ましい。
【0042】
前記の接合構造についてさらに説明すると、、前記のような截頭円錐状の大径孔13aおよび小径孔13fを備えた先孔13を有する鋼材11を接合する場合には、図2(a)に示すように、ドリルねじ1におけるドリル刃10の外側面部分が、小径孔13fの内周面にガイドされて、ドリルねじ1の中心軸線Cと小径孔13fの中心軸線C1がほぼ合致し、この状態でドリルねじ1の刃先側に位置して接合される鋼材12に、ドリルねじ1におけるドリル刃10により、貫通孔13gが空けられた後、ドリルねじ1の頭部5側に位置して接合される鋼板11およびドリルねじ1の刃先側に位置して接合される鋼板12に、ドリルねじ1におけるドリルねじ部3により雌ねじがタッピングされて接合され、截頭円錐状の大径孔13a内周面にドリルねじ1の頭部5の截頭円錐状外周面が面接触状態で接合されるため、強固に鋼板11,12相互を接合することができる。
【0043】
また、この場合に、前記の大径孔13aが、ドリル刃10の外径寸法よりも大きいので、ドリルねじ1を回動工具により回転させながらドリル刃10により他方の鋼板12に貫通孔を設けるべく切削する時に、ドリルねじ1の回転により大径孔13a側から鋼板12の削りかすを積極的に排出することができる。
【0044】
また、前記のように削りかすを積極的に鋼板11,12の外側に排出する点を考慮すると、大径孔13aの形状は、截頭円錐状の内周面であるほうが、円筒状の内周面である場合に比べて、傾斜した内周面により、削りかすが内周面に衝突した場合に、積極的に削りかすを拡径側の傾斜面側にガイドして鋼板11,12の外側に排出することができる。
【0045】
図3(a)(b)には、ドリルねじ1におけるドリル刃10先端部と、前記小径孔13fとの関係を示す説明図であって、小径孔13fの内径寸法D3をドリル刃10の外径寸法D1よりも僅かに大きい寸法とし、ドリル刃先端の傾斜部の高さ寸法aよりも、小径孔13fの軸方向の深さ寸法bを長くすることにより、ドリルねじ先端が鋼板12に接触する時に、小径孔13f内にドリルねじ1におけるドリル刃10本体部分の一部を確実に位置させて、ドリルねじ1の軸心(中心軸線)Cと小径孔13fの中心軸線C1とを確実に一致させることができる。
【0046】
また、図3(b)に示すように、前記高さ寸法aが小径孔13fの深さ寸法よりも長い場合には、ドリルねじ先端が鋼板12に接触する時に、小径孔13fの内径寸法d1をドリルねじ1におけるドリル刃10の外径寸法D1よりも小さくすることにより、ドリル刃10の先端傾斜部7aを小径孔13fの縁部13iに係合させることにより、ドリル刃10先端部をガイドさせて、小径孔13fの中心軸線C1とドリルねじ1の中心軸線Cとを合致させることができる。
【0047】
図4には、大径孔13fの各種形態と、ドリルねじ1の頭部形状の各種形態との組み合わせ形態を示すものであって、図4(a)の場合は、前記実施形態における円環状底部37を設けないで、直接截頭円錐状の大径孔13bに小径孔13fを接続させるように先孔13を設けた形態で、ドリルねじ1の頭部5を、前記ほぼ截頭円錐状の大径孔13bと同じ大きさのほぼ截頭円錐状の頭部5bとするか、僅かに前記截頭円錐状の大径孔13bの深さ寸法よりも短い寸法の截頭円錐状の頭部5bとした形態のドリルねじ1との組み合わせが示されているが、その他の構成は前記実施形態の場合と同様である。
【0048】
図4(b)に示す形態では、大径孔13をほぼ截頭半球状の大径孔13cとし、ドリルねじ1の頭部5を、前記截頭半球状の大径孔13cと同じ大きさのほぼ截頭半球状の頭部5bとするか、僅かに前記截頭半球状の大径孔13cの深さ寸法よりも短い寸法の截頭半球状の頭部5cとした形態のドリルねじ1との組み合わせ形態が示されている。
【0049】
図4(c)に示す形態では、大径孔13をほぼ短円柱状の大径孔13dとし、ドリルねじ1の頭部5を、前記ほぼ短円柱状の大径孔13dと同じ大きさの短円柱状の頭部5dとするか、僅かに前記短円柱状の大径孔13dの深さ寸法よりも短い寸法の短円柱状の頭部5dとした形態のドリルねじ1との組み合わせ形態が示されている。
【0050】
図4(d)に示す形態では、図4(a)に示す形態のさらに変形形態で、この場合は、截頭円錐状の大径孔13aの内周面を内側に向って凸の断面円弧状に湾曲させた傾斜面とした截頭円錐状湾曲傾斜面を備えた大径孔13eとした形態で、また、ドリルねじ1の頭部5形状を、前記の截頭円錐状湾曲傾斜面を備えた大径孔13fに合せて、截頭円錐状で、頭部側周面が中心側に向って凹状に湾曲させた傾斜面を有する頭部側周面とした截頭円錐状湾曲傾斜側周面を備えた頭部5eとした形態のドリルねじ1との組み合わせ形態を示したものである。いずれの形態の場合も、先孔13(13a〜13f)にドリルねじ1の頭部5(5a〜5f)の側周面が、嵌合して密着することにより、鋼板側とドリルねじ1頭部5とが面接触して係合する投影面積(支圧面積)を大きくしている。また、鋼板とドリルねじが接合されるとき、鋼板の孔(、すなわち、先孔部分とドリル刃10により開けられる孔の両方)の内側面とドリルねじが支圧により応力が有効に伝達できるようにされており、また、ドリルねじ1によりタッピングされる、鋼材11における円環状底部37の部分および鋼材12側の雌ねじ孔内面とドリルねじ1の(雄)ねじ部3の外側面が、支圧により応力が有効に伝達できるようにされている。
また、本発明を実施する場合、図14に示すように、小径孔13fにおける大径孔13よりの端部に、大径孔13に向って漸次拡径するように広がる截頭円錐状の傾斜面13kが設けられていると、ドリルねじ1の先端部が前記截頭円錐状の傾斜面13kに係合した場合に、前記截頭円錐状の傾斜面13kによって、ドリルねじ1の先端部を、スムーズに傾斜面13kに沿ってガイドでき、また、ドリルねじ1の中心軸線Cを小径孔13fの中心軸線C1に合致するようにガイドさせることができ、ドリルねじ1を正確な位置に配置した接合構造とすることができる。
【0051】
前記のように、本発明においては、先孔13の内側形状に密着して嵌合する形態のドリルねじ1の頭部形状とし、そのようなドリルねじ1の頭部5を大径孔13に合致させるためにも、先孔13の中心軸線とドリルねじ1の中心軸線が合致していることが必要になる。
【0052】
次に、ドリルねじ1による接合構造の場合についての支圧耐力について説明する。図5にハッチングを付して示すように、ドリルねじ1の頭部側に位置して接合される鋼材における鋼板11とドリルねじ1との支圧面積に着目してみると、図5(a)に示す従来のドリルねじ部3のみを鋼板11に配置する形態に比べて、図5(b)(c)に示すように、ドリルねじ1の頭部5を鋼板11内に位置するように嵌合する形態では、ドリルねじ1と鋼板11の支圧となる投影面積を大きくして、支圧耐力を向上させることができる。
また、前記のように支圧耐力を向上させる技術観点からして、図1および図4(a)〜(d)に示す形態では、大径孔13(13a〜13f)における大径側の半径を同じ寸法とした場合、(a)(b)(c)または(d)の順に、鋼板(鋼材)11とドリルねじ1頭部の支圧面積が大きくなることから、ドリルねじ1の接合部の支圧耐力を高めることできる。
【0053】
次に、ドリルねじ1の頭部5と表面仕上げの関係について説明すると、図6(b)に示すように、ドリルねじ1の頭部5を鋼材における鋼板11の大径孔13内に嵌設するようにすると、鋼材の表面側にドリルねじ1の頭部が収納されるために、接合すべき鋼板11の表面側に突出する部材(表面凸部)がないために仕上げ面を平滑化することができ、また、接合すべき鋼板11の表面側に、床材や壁材を配置して、これらを取り付ける場合に、ドリルねじ1頭部5による突出した凸部がある形態(図6a参照)では、凸部に合せての内側面に凸部収容用凹部36を設ける必要があったが、そのような凸部収容用凹部36を設ける必要ながいために、作業性が向上するとともに、床材または壁材35あるいは表面仕上げ材の断面欠損することを防止することができ、頭部5用の凹部36を設ける必要もなくすことができる。また、ドリルねじ1による接合部の仕上げ面を平滑化することができる。
【0054】
なお、図5(d)に示すように、鋼材における鋼板11表面側に仕上げ板等を配置する必要がない場合では、ドリルねじ1における頭部5の外側に、さらに回動工具係合部6を設けるようにしてもよい。
【0055】
図7〜図12は、図2(b)に示す形態の鋼材の接合構造を、鉄骨部材の柱と梁の接合部、柱と柱または梁と梁の接合部あるいは梁と小梁の接合部等の鉄骨部材における板状部(鋼材)を重合させて、ドリルねじ1により接合する場合の形態を示したものである。
【0056】
図7および図8に示す形態は、直列に隣り合うH形断面の梁14,14の上フランジ17,17相互の上面に渡って上添板15が配設され、また下フランジ18,18相互の下面に渡って下添板16が配設され、さらにウェッブ19,19相互の片面に渡って、縦添板20が配設され、前記各上添板15、下添板16、および縦添板20は、梁14に対して所定の位置が保持されるように、図示を省略するが、板状部相互を圧着仮固定する把持クランプ金具(図示省略)、あるいは梁14のフランジあるいはウェッブに対して各添板15,16,17を固定する接着テープ(図示省略)などが設けられて位置固定される。
【0057】
前記の上添板15および下添板16には、左右方向および前後方向に間隔をおいて多数の大径孔13aおよび小径孔13fからなる先孔13が設けられ、また、縦添板20には、左右方向および上下方向に間隔をおいて、大径孔13aおおよび小径孔13fからなる先孔13が設けられ、上添板15または下添板16あるいは縦添板20側からドリルねじ1が、上添板15または下添板16(あるいは縦添板20)と、H形断面の梁14におけるフランジ17(またはウェッブ19)とにねじ込まれている。
【0058】
前記添板15,16,20側からドリルねじ1が、電動ドライバーあるいは電動式トルクレンチ(図示を省略した)により、フランジ17,18またはウェッブ19にねじ込まれ、ドリルねじ1および各添板15,16,20が、それぞれフランジ17,18またはウェッブ19に圧着されて一体に接合されている。
【0059】
図9および図10に示す形態では、H形断面の柱21におけるフランジ22と、梁14端部の縦端板23とが、梁14側の縦端板23側からドリルねじ1により、縦端板23および柱21のフランジ22にねじ込まれて、前記縦端板23と柱21のフランジ22とが、多数のドリルねじ1により接合されている。この形態では、縦端板23は、梁14における上下のフランジ17,18より外側に突出して、上下のフランジ17,18と縦端板23に固定された補強リブ32により補強され、同様にドリルねじ1により接合されている。
【0060】
図11に示す形態では、予め先孔13が設けられたガセットプレート25が柱21側に固定され、そのガセットプレート25と、梁14のウェッブ19とが重合されて、ガセットプレート25側から梁14のウェッブ19にドリルねじ1がねじ込まれて、ガセットプレート25と、梁14のウェッブ19とが複数(4つ)のドリルねじ1により接合され、同様に、ガセットプレート25と、予め先孔13が設けられたL形鋼からなるブレース26の縦部分26aとが、ブレース26側からガセットプレート25に複数(4つ)のドリルねじ1がねじ込まれて接合されている。
【0061】
図12には、屋根骨組に用いる山形トラス28を構成する傾斜上弦材29と水平な下弦材30との接合またはこれらの間に介在されて接合される斜材31との接合部に適用した形態が示されている。前記の斜材31または傾斜上弦材29の端部に大径孔および小径孔を有する複数の先孔13が設けられている。
【0062】
さらに説明すると、L形鋼からなる傾斜上弦材29の下端部の縦部分29aと、L形鋼からなる水平な下弦材30の端部縦部分30aとが、重合されて、傾斜上弦材29側の縦部分29a側から水平な下弦材30の縦部分30aにドリルねじ1がねじ込まれて、傾斜上弦材29の縦部分29aと水平な下弦材30の縦部分30aとが複数(4つ)のドリルねじ1により接合されている。
【0063】
また、傾斜上弦材29における縦部分29aまたは水平な下弦材30における縦部分30aと、L形鋼からなる斜材31における縦部分31aの端部が重合されて、斜材31側から傾斜上弦材29の縦部分29aまたは水平な下弦材30における縦部分30aにドリルねじ1がねじ込まれて、傾斜上弦材29の縦部分29aに斜材31の上端部とドリルねじ1が圧着されるように接合され、また、水平な下弦材30における縦部分30aに斜材31の下端部とドリルねじ1が圧着されるように接合されている。また、母屋材33とこれを支持する支持材34の接合部も、支持材34側に設けられた大径孔および小径孔を有する先孔13側からドリルねじ1がねじ込まれて、ドリルねじ1により接合された形態が示されている。
【0064】
前記各実施形態のように、先孔を設けてドリルねじ1を使用して部材同士を接合すると、(1)ドリルねじが偏心することなく、ドリルねじを用いて部材同士を接合することができ、特別な技能を有さずとも、確実で強度の高い鉄骨造の接合構造を、簡便でかつ作業性よく容易に施工して、鋼製部材相互を接合することができる。
(2)先端にドリル刃10を加工したドリルねじ1により、重合される鋼板12に孔(貫通孔)をあけ、ねじ部3によって被接合鋼板12(または11を含む)をタッピングして接合し、一体化することで、従来のように溶接のような作業時の管理や溶接後の防錆補修が不要となり、ボルトやリベットのように部材の両側から作業する必要が無くなり、高力ボルトのように摩擦力のための表面処理を必要としないため、作業効率が向上するとともに、ガタ等を誘発するすき間が生ぜず、剛性の高い接合を構築できる。
【0065】
また、前記のような先孔を有する鋼材を使用して鋼材相互を接合すると、接合コストが安価で工期を短縮することができるため、建築施工コストの安価な建築物を構築することができる。
【0066】
本発明を実施する場合、ドリルねじ1の頭部形状としては、六角溝以外の回動工具係合部を有する形状、例えば、横断面矩形状凹溝あるいは横断面十字状溝などの回動工具係合部としてもよいが、ドリルねじ1をねじ込む時に、回転トルクが大きくなるので、ドリルねじ1体に設ける回動工具係合部6としては、六角溝または矩形状溝として電動ドライバーにより回動する場合よりも、電動式レンチにより接合するとよい。
【0067】
本発明を実施する場合、接合する鋼材は、板状部相互である必要があるが、円形あるいは矩形の閉鎖断面部材(鋼管柱、梁)の板状部と、これに重合される断面円弧状あるいは平板状の鋼板部材とをドリルねじ1を用いて、鋼板部材の外側(ワンサイド側)から接合する接合構造および接合方法にも適用することができる。
【0068】
また、ドリルねじ1による接合は、工場においては、各種の設備がある場合が多いので接合作業が容易であるが、現場においては、柱等の建て込まれて位置固定された部材に、他の接合すべき部材を重合してドリルねじ1により接合させるようにするのが好ましい。
【0069】
ドリルねじ1の頭部形状としては、表面仕上げ材35に予め凹部36等が設けられている形態においては、回動工具係合溝を有する頭部形状以外にも、大径孔に嵌設される部分から離れた位置に、六角頭部等の回動工具係合用外面を有するドリルねじ1としてもよい。
【0070】
本発明を実施する場合、図示を省略するが、柱と胴縁支持金具との接合、胴縁と胴縁支持金具との接合、または、屋根トラスと壁上縁材とを連結金物を介して接合する場合の屋根トラスと連結金物あるいは連結金物と壁上縁材との接合その他の鋼材相互の接合にドリルねじ1を使用した接合構造としてもよい。
【0071】
前記実施形態によると、鉄骨部材における鋼材相互の接合部におけるドリルねじの設置位置が正確な位置に配置されていると共に、ドリルねじによる接合部の剛性が高く、さらにドリルねじによる接合の作業性がよく、ドリルねじの接合施工コストの安価な鉄骨造の建築物とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態の鋼材の接合構造または接合方法の形態を説明するための説明図であり、(b)は本発明の他の実施形態の鋼材の接合構造または接合方法の形態を説明するための説明図である。
【図2】(a)は本発明の第1実施形態の鋼材の接合構造または接合方法の形態を説明するための説明図であり、(b)は本発明の第1実施形態の鋼材の接合構造を説明するための説明図である。
【図3】(a)(b)(c)はドリルねじが先孔にガイドされて、ドリルねじの中心軸線が先孔の中心軸線に一致するようにガイドされることを説明するための説明図である。
【図4】(a)〜(d)は先孔の形状とドリルねじ頭部付近の形状の組み合わせを説明するための説明図である。
【図5】(a)〜(d)は先孔にドリルねじが嵌合された状態において、支圧面積が従来の場合よりも拡大されていることを説明するための説明図である。
【図6】(a)(b)(c)は、ドリルねじの頭部形状と表面仕上げ材との関係を示す説明図である。
【図7】本発明を利用して、梁フランジおよび梁ウェッブと添設板とを接合して梁を直列に接合する場合の形態を示す一部縦断側面図である。
【図8】図7の縦断正面図である。
【図9】本発明を利用して、柱フランジと添設板とを接合して梁を直列に接合する場合の形態を示す一部縦断側面図である。
【図10】図9の一部縦断正面図である。
【図11】本発明を利用して、鉄骨ブレースとガセットプレートとを接合する形態を示す側面図である。
【図12】本発明を利用して、トラスの弦材と斜材とを接合する形態を示す側面図である。
【図13】従来の鋼材の接合構造を示す説明図である。
【図14】小径孔における大径孔よりの端部に截頭円錐状の傾斜面を設けた形態の説明図である。
【符号の説明】
【0073】
1 ドリルねじ
2 ドリル部
3 ドリルねじ部
4 脚部
5 頭部
5a 截頭円錐状の頭部
5b 截頭円錐状の頭部
5c 截頭半球状の頭部
5d 短円柱状の頭部
5e 截頭円錐状湾曲傾斜側周面を備えた頭部
5f 小径孔
6 回動工具係合部
7 ドリル刃先端部
8 ねじ山
9 傾斜ガイド溝
10 ドリル刃
11 被接合部材
12 被接合部材
13 大径孔
13a 截頭円錐状の大径孔
13c 截頭円錐状の大径孔
13d 短円柱状の大径孔
13e 截頭円錐状湾曲傾斜面を備えた大径孔
13f 小径孔
13g 貫通孔
13i 縁部
13j 小径部
13k 截頭円錐状の傾斜面
14 梁
15 上添板
16 下添板
17 上フランジ
18 下フランジ
19 ウェッブ
20 縦添板
21 柱
22 フランジ
23 縦端板
25 ガセットプレート
26 ブレース
26a 縦部分
28 山形トラス
29 上弦材
29a 縦部分
30 下弦材
30a 縦部分
31 斜材
31a 縦部分
32 補強リブ
33 母屋材
34 母屋支持材
35 床材または壁材
36 凸部収容用凹部
37 円環状底部
38 小径先孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリルねじを用いて鋼材相互の重合部を接合する鋼材の接合構造において、ドリルねじの頭部側に位置して接合される鋼材に先孔が設けられ、前記先孔は、ドリルねじのねじ軸部よりも外径寸法が大きく、かつドリルねじ頭部を嵌設する大径孔と、その大径孔に接続する小径孔とにより構成され、かつ前記小径孔は、ドリルねじのねじ部外径寸法よりも小さくされて、前記ドリルねじにより雌ねじ孔が設けられて接合されていることを特徴とする鋼材の接合構造。
【請求項2】
小径孔は、ドリルねじ先端のドリル刃の外径寸法よりも大きく、かつドリルねじにおけるねじ部の外径寸法よりも小さい内径とされていることを特徴とする請求項1に記載の鋼材の接合構造。
【請求項3】
小径孔は、ドリルねじ先端のドリル刃の外径寸法より小さい内径とされ、ドリルねじにおけるドリル刃により切削されると共にドリルねじ部により雌ねじ孔がタッピングされていることを特徴とする請求項1に記載の鋼材の接合構造。
【請求項4】
小径孔における大径孔よりの端部に截頭円錐状の傾斜面が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鋼材の接合構造。
【請求項5】
大径孔は、小径孔に向って漸次径が小さくなる傾斜面を有する大径孔とされ、これにドリルねじの頭部が嵌設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の鋼材の接合構造。
【請求項6】
大径孔における小径孔側の端部に、ドリルねじのねじ部外径寸法よりも大きく、かつ大径孔内面に接続する環状の平坦面部が設けられ、その平坦面部を介して、小径孔の内面と大径孔の内面とが接続されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の鋼材の接合構造。
【請求項7】
大径孔にドリルねじの頭部側が収容されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の鋼材の接合構造。
【請求項8】
請求項1〜7の鋼材の接合構造とするにあたり、ドリルねじにより削られた削りかすを、ドリルねじにより大径孔から鋼材の外側に排出しながら鋼材を接合することを特徴とする鋼材の接合方法。
【請求項9】
請求項1、2,4〜7のいずれかの鋼材の接合構造とするにあたり、最初に前記小径孔の内面によりドリルねじのドリル刃外側面をガイドして、小径孔の中心軸線と先孔の中心軸線を合致させるようにすると共に、鋼材とドリルねじの偏心を防止しながらドリルねじにより鋼材を接合することを特徴とする鋼材の接合方法。
【請求項10】
請求項1、3,4〜7のいずれかの鋼材の接合構造とするにあたり、最初に小径孔の軸方向端面に、ドリルねじのドリル刃先端傾斜面を当接して、小径孔の中心軸線にドリルねじの軸線を合わせるようにガイドして、ドリルねじの偏心を防止しながらドリルねじをねじ込むことを特徴とする鋼材の接合方法。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項記載の鋼材の接合構造が、鉄骨部材の柱と梁の接合部、柱と柱または梁と梁の接合部あるいは梁と小梁の接合部等の鉄骨部材の接合部に用いられていることを特徴とする鉄骨造の構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−239960(P2007−239960A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66611(P2006−66611)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】