説明

錠装置

【課題】メカニカルキーのより一層の薄型化を図ることが可能な錠装置を提供する。
【解決手段】ケース7に対して相対変位可能に設けられた作動体10には、ケース7に対する作動体10の相対変位を規制するタンブラ21,22が設けられている。タンブラ21,22は、作動体10のタンブラ収容部12に、回転軸14を中心として回転可能に軸支されている。タンブラ21,22は、鍵孔11に挿入されたキープレートと係合し挿抜方向に変位して、当該タンブラ21,22を、回転軸14を中心として回転させる照合部21a,22aを備えている。また、タンブラ21,22は、タンブラ21,22の回転軸14を中心とした回転角度に応じて、作動体10とケース7とを係合させる係合部21b,21c,22bとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、カード状のキープレートにキーコードとして複数の孔群から成るコード孔が形成されてなるメカニカルキーと協働して施錠・解錠を行う錠装置がある。
【0003】
この錠装置は、図12に示すように、車両や玄関等のドアに取り付けられるケース51と、該ケース51内に摺動可能に挿入された作動体52とを備えている。作動体52には、前記キープレート5を挿入するための溝53が設けられている。ケース51及び作動体52において前記溝53にキープレート5を挿入した際に同キープレート5のコード孔5aに対応する部位には、それぞれキープレート5に直交する方向に延びる孔54a,54bが形成されている。これら孔54a,54bは、互いに一致して単一の長孔54を形成している。この長孔54には、キープレート5に近い側から順に、キープレート5のコード孔5aに係合するボール55と、作動体52の移動を阻止・開放するための施錠ピン56a,56bと、該施錠ピン56a,56bをボール55側へ付勢するばね57とが収容されている。施錠ピン56a,56bは、その長手方向において分断されており、その分断された位置が、正規のキープレート5が挿入された場合にケース51及び作動体52の境界に一致するように設定されている。具体的には、コード孔5aに対応する施錠ピン56aは、キープレート5が挿入されていない状態において、その分断された位置が作動体52及びケース51の境界に一致するように設定されている。また、コード孔5aに対応しない施錠ピン56bは、キープレート5が挿入されていない状態において、その分断された位置がキープレート5の厚さの分だけ作動体52及びケース51の境界よりもボール55側に配置されるように設定されている。
【0004】
これにより、図13(a)に示すように、正規のキープレート5が溝53に挿入された場合は、施錠ピン56a,56bの境界がケース51及び作動体52の境界に一致するので、作動体52とケース51との相対変位が可能となり、ロック装置の施解錠操作が可能となる。一方、図13(b)に示すように、不正なキープレート5が挿入された場合は、施錠ピン56a,56bの境界が当該キープレート5の厚さの分だけ作動体52及びケース51の境界からずれた位置に配置され、施錠ピン56a,56bを介して作動体52とケース51とが係合する状態となるので、作動体52とケース51との間の相対変位が不能となり、ロック装置の施解錠操作が不能となる。
【0005】
また、従来、ユーザが所持する携帯機と車両や住宅等に搭載されたロック装置との間で所定の無線通信を通じて識別コードの送受信を行うことにより、同ロック装置の施錠・解錠を可能とする電子キーシステムが知られている。この電子キーシステムは、識別コードに基づくユーザ認証を行うことで、より高い安全性を確保することができるとともに、キーを鍵孔に挿入する必要がなく利便性が高いことから、車両や住宅等の用途において急速に普及が進んでいる。このような電子キーシステムにおいて、上述したロック装置を手動で施錠・解錠するメカニカルキーは、例えば携帯機の電気系・通信系の不具合により電子キーシステムが適切に動作しなくなった場合に使用できるよう、通常、携帯機に設けられた収容部に収容されている。このような携帯機においては、その携帯性の向上のため、より一層の小型化が望まれている。携帯機にメカニカルキーを収容する場合、携帯機のサイズを決める要因の中でもメカニカルキーの収容スペースは重要であり、これにともない、メカニカルキーの薄型化が望まれている。また、携帯機に収容されないメカニカルキーについても、携帯性の観点から、薄型化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−307058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した従来の錠装置では、キープレート5がボール55を当該キープレート5の厚さ方向へ押し上げることにより施錠ピン56a,56bが変位するため、施錠ピン56a,56bの境界は、ケース51及び作動体52の境界から該キープレート5の厚さの分だけずれた位置に配置される。従って、当該キープレート5を薄くすると、施錠ピン56a,56bの境界からケース51及び作動体52の境界までの距離が短くなり、施錠ピン56a,56bがケース51及び作動体52に引っかかり難くなってしまう。このため、ケース51と作動体52との間の係合が不十分となり、ケース51と作動体52との間の相対変位を確実に規制することができなくなってしまうことが懸念される。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、メカニカルキーのより一層の薄型化を図ることが可能な錠装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、設置対象に固定されるケースと、キーコードとして複数のコード孔が形成されたキープレートが挿入される鍵孔を備えるとともに該ケースに対して相対変位可能に設けられた作動体と、前記鍵孔に正規のキープレートが挿入されていない状態において前記ケースと前記作動体とを係合させて前記作動体の前記ケースに対する相対変位を規制する複数のタンブラとを備え、前記鍵孔に正規のキープレートが挿入されることにより、前記タンブラによる前記作動体と前記ケースとの係合が解除されて当該作動体の前記ケースに対する相対変位を許容する錠装置であって、前記タンブラは、前記鍵孔に挿抜されるキープレートの厚さ方向において前記作動体の前記ケース側の外側面と前記鍵孔とを連通するタンブラ収容部に、前記鍵孔に挿入される前記キープレートの幅方向の回転軸を中心として該キープレートの挿抜方向に回転可能に軸支されるとともに、前記鍵孔にキープレートが挿入されていない状態において該鍵孔に挿入される前記キープレートに係合する中立位置に配置され、前記鍵孔に挿入されたキープレートと係合しその挿入方向に回転変位して、当該タンブラを、前記回転軸を中心として回転させ前記コード孔の有無に応じて中立状態又は回転変位状態をとる照合部と、前記タンブラの前記回転軸を中心とした回転角度に応じて、前記タンブラ収容部から前記ケース側への突出量が変化し、前記照合部と前記コード孔との対応関係に基づき前記作動体と前記ケースとを係合状態又は非係合状態とする係合部とを備え、前記照合部が前記中立位置に配置されるように前記タンブラを回転付勢する付勢手段をさらに備えたことをその要旨とする。
【0010】
本発明によれば、タンブラは、鍵孔に挿入されるキープレートの幅方向の回転軸を中心として該キープレートの挿抜方向に回転可能に軸支されている。タンブラの照合部が鍵孔に挿入されたキープレートと係合しその挿入方向に変位すると、タンブラは、回転軸を中心として回転する。そして、タンブラの係合部は、タンブラの回転軸を中心とした回転角度に応じてタンブラ収容部からケース側へ突出し、作動体とケースとを係合させる。即ち、キープレートの厚みが、タンブラの係合部のケース側への突出量、言い換えれば、ケース及び作動体の間の係合力に何ら影響を及ぼさない。よって、キープレートの厚さをより一層薄くした場合でもケースと作動体とを確実に係合させることが可能となり、メカニカルキーのより一層の薄型化を図ることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、複数の前記タンブラは、前記鍵孔に挿入される正規のキープレートの前記コード孔に対応する位置に配置される第1タンブラと、当該正規のキープレートの前記コード孔に対応しない位置に配置される第2タンブラとを含み、前記第1タンブラは、前記キープレートが挿入されていない状態、又は挿入されたキープレートのコード孔に前記照合部が対応した状態においては、前記照合部は、前記中立位置にあり、前記係合部は、前記タンブラ収容部内に収容され前記ケースと前記作動体との係合を解除するとともに、挿入されたキープレートのコード孔に対応しない部位に前記照合部が対応した状態においては、前記照合部は、回転変位状態をとり、前記係合部は、前記タンブラ収容部から前記ケース側に突出し前記ケースと前記作動体とを係合させ、前記第2タンブラは、前記キープレートが挿入されていない状態、又は挿入されたキープレートのコード孔に前記照合部が対応した状態においては、前記照合部は、前記中立位置にあり、前記係合部は、前記タンブラ収容部から前記ケース側に突出し前記ケースと前記作動体とを係合させるとともに、挿入されたキープレートのコード孔に対応しない部位に前記照合部が対応した状態においては、前記照合部は、回転変位状態をとり、前記係合部は、前記タンブラ収容部内に収容され前記ケースと前記作動体との係合を解除することをその要旨とする。
【0012】
本発明によれば、第1タンブラは、鍵孔に挿入される正規のキープレートのコード孔に対応する位置に配置されるため、この状態において第1タンブラの照合部はキープレートと係合しない。従って、照合部は中立位置に配置され、当該第1タンブラの係合部は、タンブラ収容部内に収容される。これにより、ケースと作動体との係合が解除される。一方、第2タンブラは、鍵孔に挿入される正規のキープレートのコード孔に対応しない位置に配置されるため、この状態において第2タンブラの照合部はキープレートと係合し当該キープレートの挿入方向に変位した状態に保持される。従って、第2タンブラは、その係合部が、タンブラ収容部内に収容された状態に保持される。これにより、ケースと作動体との係合が解除される。よって、鍵孔に正規のキープレートが挿入されることにより、第1タンブラ及び第2タンブラによるケースと作動体との係合が全て解除されて、当該作動体のケースに対する相対変位が許容される。従って、第1タンブラ及び第2タンブラの組み合わせや配置を変更することにより、複数種類のキーコードを当該錠装置に対応するキーコードとして設定することができる。
【0013】
また、第2タンブラは、照合部が中立位置にある状態においてケースと作動体とを係合させるため、当該第2タンブラによって、鍵孔にキープレートが挿入されていない状態における作動体のケースに対する相対変位が規制される。従って、鍵孔に正規のキープレートが挿入されていない状態で作動体のケースに対する相対変位が許容されることはない。また、不正なキープレートが挿入された場合には、同キープレートのコード孔と該コード孔が設けられていない部位とが、第1タンブラ及び第2タンブラに対応していないので、作動体のケースに対する相対変位が規制される。以上のことから、錠装置のセキュリティ性が向上する。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記タンブラの外周面は、その周方向において滑らかに連続する曲面状に形成されたことをその要旨とする。
本発明によれば、タンブラの外周面は、その周方向において滑らかに連続する曲面状に形成されているため、タンブラの照合部とキープレートとを滑らかに係合させることが可能となり、キープレートの挿抜時における操作感を向上させることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記鍵孔の挿入方向からみて前記照合部の形状が一致するように形成されたことをその要旨とする。
本発明によれば、タンブラは、鍵孔の挿入方向からみて照合部の形状が一致するように形成されたため、鍵孔から覗いても照合部の形状から当該照合部に対応するタンブラの係合部によるケースと作動体との係合状態を判別することができない。このため、錠装置のセキュリティ性が向上する。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記作動体は、該作動体の前記ケース側の外側面に設けられ前記タンブラ収容部に連通する係合部材収容部と、該係合部材収容部に前記作動体及び前記ケースに跨って配置される係合位置と前記作動体の内側に配置される非係合位置との間を変位可能に収容された係合部材と、該係合部材を前記係合位置から前記非係合位置へ変位させる方向へ付勢する第2付勢手段とを備え、前記係合部材は、前記タンブラの回転に伴い前記タンブラ収容部から前記ケース側へ突出した前記係合部に押圧されることにより、前記非係合位置から前記係合位置へ変位することをその要旨とする。
【0017】
本発明によれば、係合部材収容部に設けられた係合部材が、タンブラの回転に伴いタンブラ収容部から突出した係合部に押圧されることにより、当該係合部材が作動体及びケースに跨って配置される。このように、係合部材を介して作動体とケースとが係合するため、タンブラ自体をケースに係合させることなく作動体とケースとを係合させることができる。ここで、例えば作動体がケースに対してキープレートの挿抜方向、即ちタンブラの回転方向に相対変位可能となっている場合、各タンブラの係合部とケースとが係合する方向がタンブラの回転方向と一致するため、作動体が操作されることにより係合部が回転軸から離れた位置でケースと係合することで、タンブラが回転してしまうことが懸念される。この点、本発明によれば、タンブラをケースに係合させることなく作動体とケースとを係合させることができるため、タンブラの係合部がケースに係合して同タンブラが回転軸を中心として回転してしまうことを防止することが可能となり、作動体とケースとをより確実に係合させることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、前記キープレートは、全体としてカード状に形成されたカード型キーであることをその要旨とする。
本発明によれば、キープレートは全体としてカード状に形成されるため、キープレートの携帯性が向上する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、メカニカルキーのより一層の薄型化を図ることが可能な錠装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】電子キーシステムの概略構成図。
【図2】(a)携帯機の斜視図、(b)メカニカルキーの平面図。
【図3】錠装置の概略構成を示す斜視図。
【図4】錠装置の概略構成を示す断面図。
【図5】図4のA−A断面図。
【図6】図4のB−B断面図。
【図7】(a)〜(c)第1タンブラの作用を説明するための断面図。
【図8】(a)〜(c)第2タンブラの作用を説明するための断面図。
【図9】錠装置の作用を説明するための断面図。
【図10】(a)第2の実施の形態の錠装置の概略構成を示す断面図、(b)同錠装置の作用を説明するための断面図。
【図11】(a)別例の第1タンブラの概略構成を示す断面図、(b)別例の第2タンブラの概略構成を示す断面図。
【図12】従来の錠装置の概略構成を示す断面図。
【図13】(a)及び(b)従来の錠装置の作用を説明するための一部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1の実施の形態>
以下、本発明を、車両との無線通信を通じてロック装置としてのドア錠を電子的に施錠・解錠する電子キーシステムに具体化した第1の実施の形態を図面に従って説明する。
【0022】
図1に示すように、電子キーシステム1は、ユーザが所持する携帯機2と、車両3に搭載されるとともに携帯機2との無線通信を通じてドア錠4aの施錠・解錠を行う制御装置4とを備えている。
【0023】
ユーザが携帯機2を所持して車両の所定領域に接近すると、携帯機2は制御装置4から送信されるリクエスト信号を受信する。このリクエスト信号はIDコードの送信を携帯機2に要求する旨の信号である。携帯機2は前記リクエスト信号を受信すると、予め記録された自身のIDコードを含むID信号を送信する。制御装置4は、携帯機2から送信されてきたID信号を受信すると、このID信号に含まれる携帯機2側のIDコードと予め記憶された車両3側のIDコードとを照合し、両IDコードが一致したことを条件としてドア錠4aを解錠する。一方、携帯機2を所持したユーザが車両3から離間して前記所定領域外に移動すると、制御装置4は、携帯機2から送信されるID信号を受信不能となる。制御装置4は携帯機2側のID信号を受信不能になったことを条件として車両のドア錠4aを施錠する。従って、ユーザが車両に触れることなくドア錠4aの施錠・解錠が行われる。
【0024】
図2(a)に示すように、携帯機2は、全体として直方体状に形成されている。携帯機2の内部には、前記制御装置4との間で無線通信を行うための通信回路等を構成するアンテナや各種電子部品が実装された回路基板2aが収容されている。また、携帯機2の一側部に設けられたキー収容部2bには、メカニカルキーとしてのキープレート5が収容されている。回路基板2aとキー収容部2bは、携帯機2の厚さ方向において重ねて配置されている。キープレート5は、車両ドア3aに設けられた錠装置6(図3参照)に対応するものであり、当該携帯機2の電気系・通信系の不具合により電子キーシステム1が適切に動作しなくなった場合には、該キープレート5により前記ドア錠4aを手動で施錠・解錠することができるようになっている。
【0025】
図2(b)に示すように、キープレート5は、樹脂材料からなり、全体として長方形の板状に形成されている。キープレート5には、図2(b)に実線で示されるように、前記錠装置6に対応するキーコードとして当該キープレート5を厚さ方向(図2(b)において紙面奥行き方向)に貫通する10個のコード孔5aが形成されており、当該キープレート5の一端部(図2(b)において左端部)のコード孔5aが形成されていない部分は、キープレート5を把持するための把持部となっている。各コード孔5aは、キープレート5の板厚方向から見て同キープレート5の長手方向に延びる長方形状に形成されている。
【0026】
図3に示すように、錠装置6のケース7は、全体として直方体状の外形を有しており、その一側面7aが車両ドア3aの外側面と面一となるように車両ドア3aに固定されている。ケース7の一側面7aには、その長手方向(図3において略左右方向)に延びるスリット7bが形成されており、該スリット7bは、ケース7の内部に設けられた作動体収容部7cにつながっている。図4に示すように、作動体収容部7cは、同ケース7の外形に対応する直方体状に形成されている。作動体収容部7cの内頂面の略中央部分には、同図4において2点鎖線で示すように、スリット7bに直交する方向へ延びる直線状の4つの係合凹部7dが、当該スリット7bの長手方向(図4において上下方向)に並んで設けられている。
【0027】
同図4に示すように、作動体収容部7cには、直方体状に形成された作動体10が、ケース7の内側面に沿って前記スリット7bの長手方向(図4において上下方向)両側へスライド可能に収容されている。作動体10は、作動体収容部7cに設けられた図示しない復帰機構により作動体収容部7cの長手方向中央に保持されている。作動体10にはドア錠4aを施錠・解錠する図示しないロック機構が作動連結されており、作動体10が前記スリット7bの長手方向に沿った操作方向へスライド操作されると、前記ロック機構を通じてドア錠4aが施錠・解錠されるようになっている。具体的には、作動体10が図4において上方の解錠方向へ操作されると該ロック機構はドア錠4aを解錠し、作動体10が図4において下方の施錠方向へ操作されると該ロック機構はドア錠4aを施錠する。
【0028】
作動体10において、前記スリット7bに対応する部位には、該スリット7b側(図4において左側)に開口し前記キープレート5が挿入される断面長方形状の鍵孔11が形成されている。キープレート5は、作動体10のスライド方向に直交する方向(図4において左方向)からスリット7bを介して鍵孔11に挿入される。作動体10は、鍵孔11に対するキープレート5の挿入方向(挿抜方向)に対して直交する操作方向へ操作される。作動体10において、該鍵孔11に挿入されるキープレート5の厚さ方向一側(図4において紙面手前側)の外側面10aには、20個のタンブラ収容部12が設けられている。タンブラ収容部12は、前記作動体収容部7cの係合凹部7dの長手方向であって前記鍵孔11に対する前記キープレート5の挿入方向に所定間隔毎に5個を1列とし、4列設けられている。タンブラ収容部12の4つの列は、前記復帰機構により作動体10が作動体収容部7cの長手方向中央に配置された状態で、図4において2点鎖線で示す4つの係合凹部7dにそれぞれ対応する位置に設けられている。各タンブラ収容部12は、作動体10の外側面10aと前記鍵孔11とを連通しており(図5参照)、該鍵孔11へのキープレート5の挿入方向(図4において左右方向)に延びる断面長方形状に形成されている。各タンブラ収容部12の幅は、対応する係合凹部7dの幅と略等しくなっている。また、作動体10の外側面10aにおいて、前記キープレート5の幅方向で隣り合うタンブラ収容部12の間には、両タンブラ収容部12を連通するばね収容凹部13が形成されている。
【0029】
図5に示すように、作動体10において、各ばね収容凹部13と該ばね収容凹部13により連通するタンブラ収容部12とからなる中空部分には、回転軸14が作動体10に対して回転可能に配置されている。回転軸14は、前記鍵孔11に挿入されるキープレート5の幅方向(図5において左右方向)に沿って延び、対応するばね収容凹部13及びタンブラ収容部12の、キープレート5の挿抜方向(図5において紙面奥行き方向)及び厚さ方向(図5において上下方向)における略中央を通っている。回転軸14において各タンブラ収容部12に対応する部位には、第1タンブラ21若しくは第2タンブラ22が当該回転軸14を中心として回転可能に支持されている。第1タンブラ21及び第2タンブラ22は、作動体10のスライド方向(図5において左右方向)における幅が、同じくスライド方向において対向するタンブラ収容部12の2つの内側面の間の距離と略等しく設定されている。第1タンブラ21は、鍵孔11に正規のキープレート5が完全に挿入された場合、当該キープレート5のコード孔5aに対応する位置に配置される。一方、第2タンブラ22は、鍵孔11に正規のキープレート5が完全に挿入された場合、当該キープレート5のコード孔5aに対応しない位置(図2において2点鎖線で示す)に配置される。
【0030】
また、回転軸14において各ばね収容凹部13に対応する部位の外周には、付勢手段としての捻りコイルばね23がそれぞれ設けられている。捻りコイルばね23の中央部は、ばね収容凹部13の底部に設けられたばね係止部13aに係止されている。また、捻りコイルばね23の両端部23a,23aは、前記回転軸14の軸方向両側に延びるように形成されている。捻りコイルばね23の両端部23a,23aは、対応するばね収容凹部13の両側のタンブラ収容部12にそれぞれ収容された第1タンブラ21若しくは第2タンブラ22に、それぞれ固定されている。即ち、1つの捻りコイルばね23に2つのタンブラ(第1タンブラ21若しくは第2タンブラ22)が固定されている。第1タンブラ21及び第2タンブラ22は、捻りコイルばね23により、該鍵孔11に挿入されるキープレート5と係合可能な状態に保持されている。
【0031】
次に、第1タンブラ21及び第2タンブラ22の構造について詳しく説明する。
図6に示すように、第1タンブラ21は、前記回転軸14の軸方向(キープレート5の幅方向)から見て、略三角形状に形成されている。第1タンブラ21は、前記回転軸14を中心とし前記キープレート5の厚さ方向(図6において上下方向)におけるタンブラ収容部12の幅の略半分の半径r1を有する円周(図6において2点鎖線で示す)から径方向に突出する略三角形状の1つの照合部21aと、同じく略三角形状の2つの係合部21b,21cとを備えている。照合部21aは、第1タンブラ21の回転軸14を中心とした回転角度に応じてタンブラ収容部12から鍵孔11側(図6において下側)へ突出する。一方、係合部21b,21cは、第1タンブラ21の回転軸14を中心とした回転角度に応じてタンブラ収容部12からケース7の係合凹部7d側(図6において上側)へ突出する。照合部21a及び係合部21b,21cは、それらのタンブラ収容部12からの突出量が等しくなるように形成されている。第1タンブラ21の照合部21a及び係合部21b,21cは、前記回転軸14の軸方向から見て互いに同一の形状となるように形成されている。照合部21a及び係合部21b,21cは、周方向に略120°間隔で設けられている。また、第1タンブラ21は、当該第1タンブラ21の外周面が、その周方向において滑らかに連続する曲面状になるように形成されている。
【0032】
前述したように、第1タンブラ21は、捻りコイルばね23により、該鍵孔11に挿入されるキープレート5と係合可能な状態に保持されている。具体的には、鍵孔11にキープレート5が挿入されていない状態において、第1タンブラ21は、その照合部21aがタンブラ収容部12から前記鍵孔11に突出し、且つ、その2つの係合部21b,21cがタンブラ収容部12内に収容されて同タンブラ収容部12からケース7側へ突出していない状態(中立状態)で保持されている(図5参照)。捻りコイルばね23は、初期負荷を有していない状態で、即ち、前記回転軸14を中心として巻き取られていない状態で第1タンブラ21に固定されている。第1タンブラ21の照合部21aは、鍵孔11に挿入されたキープレート5と係合し、その挿入方向へ回転変位する。これにより、第1タンブラ21は、回転軸14を中心として回転する。そして、第1タンブラ21の係合部21b,21cは、当該第1タンブラ21の回転軸14を中心とした回転角度に応じてタンブラ収容部12からケース7側への突出量を変化させ、作動体10とケース7とを係合させる。
【0033】
具体的には、図7(a)に示すように、鍵孔11にキープレート5が挿入されると、第1タンブラ21の照合部21aが、挿入されたキープレート5と係合し、当該キープレート5に押圧されてその挿入方向に変位する。これにより、第1タンブラ21は、捻りコイルばね23の弾性力に抗して回転軸14を中心として図7(a)において反時計回り方向へ回転する。そして、図7(b)に示すように、第1タンブラ21の照合部21aに対応する位置にキープレート5のコード孔5aが設けられていない部位が配置されると、照合部21aが回転変位状態となり、タンブラ収容部12に収容されていた2つの係合部21b,21cの内一方の係合部21bがタンブラ収容部12からケース7側に突出する。第1タンブラ21が作動体10とケース7とに跨って配置されることにより、当該第1タンブラ21を介して作動体10とケース7とが係合する。また、このとき、第1タンブラ21が回転軸14を中心として回転することで捻りコイルばね23(図5参照)が巻き取られ、当該捻りコイルばね23に弾性力が蓄積される。
【0034】
図7(c)に示すように、キープレート5がさらに挿入され、照合部21aに対応する位置に、前記キープレート5のコード孔5aが配置されると、キープレート5と照合部21aとの間の係合が解除され、第1タンブラ21が回転軸14を中心として回転可能となる。このため、第1タンブラ21は、捻りコイルばね23に蓄積された弾性力により、その照合部21aが元の中立位置に配置されるように時計回り方向へ回転し中立状態をとり、その係合部21bがタンブラ収容部12に収容される。これにより、第1タンブラ21による作動体10とケース7との係合が解除される。
【0035】
また、鍵孔11に挿入されていたキープレート5が抜出されると、キープレート5の挿入時において照合部21aに対応する位置に前記キープレート5のコード孔5aが配置される場合と同様に、第1タンブラ21は、キープレート5との係合を通じて時計回り方向へ回転する。そして、キープレート5が完全に引き抜かれてキープレート5と照合部21aとの間の係合が解除されると、第1タンブラ21は、捻りコイルばね23に蓄積された弾性力により、その照合部21aが図7(c)に示す元の中立位置に配置されるように反時計回り方向へ回転し中立状態をとり、その係合部21b,21cがタンブラ収容部12内に収容される。これにより、第1タンブラ21による作動体10とケース7との係合が解除される。
【0036】
即ち、第1タンブラ21は、その照合部21aに対応する位置にキープレート5が配置された場合、照合部21aが回転変位状態をとり、作動体10とケース7とを係合させる。一方、第1タンブラ21は、その照合部21aに対応する位置にキープレート5が配置されていない場合、照合部21aが中立位置に配置され中立状態をとり、作動体10とケース7との係合を解除する。
【0037】
図6に示すように、第2タンブラ22は、前記回転軸14の軸方向(キープレート5の幅方向)から見て、略楕円形状に形成されている。第2タンブラ22は、前記回転軸14を中心とし前記キープレート5の厚さ方向(図6において上下方向)におけるタンブラ収容部12の幅の略半分の半径r1を有する円周(図6において2点鎖線で示す)から径方向に突出する略三角形状の1つの照合部22aと、同じく略三角形状の1つの係合部22bとを備えている。照合部22aは、第2タンブラ22の回転軸14を中心とした回転角度に応じてタンブラ収容部12から鍵孔11側へ突出する。一方、係合部22bは、第2タンブラ22の回転軸14を中心とした回転角度に応じてタンブラ収容部12からケース7の係合凹部7d側へ突出する。照合部22a及び係合部22bは、それらのタンブラ収容部12からの突出量が等しくなるように形成されている。第2タンブラ22の照合部22a及び係合部22bは、前記回転軸14の軸方向から見て互いに同一の形状となるように形成されている。照合部22a及び係合部22bは、周方向に略180°間隔で設けられている。また、第2タンブラ22の照合部22a及び係合部22bは、鍵孔11に対するキープレート5の挿入方向から見て前記第1タンブラ21の照合部21a及び係合部21b,21cと同一の形状となるように形成されている。このため、鍵孔11に対するキープレート5の挿入方向から見て、第1タンブラ21及び第2タンブラ22の判別が不能となっている。また、第2タンブラ22は、当該第2タンブラ22の外周面が、その周方向において滑らかに連続する曲面状になるように形成されている。このため、鍵孔11に挿入されたキープレート5と滑らかに係合する。
【0038】
前述したように、第2タンブラ22は、捻りコイルばね23により、該鍵孔11に挿入されるキープレート5と係合可能な状態に保持されている。具体的には、鍵孔11にキープレート5が挿入されていない状態において、第2タンブラ22は、その照合部22aがタンブラ収容部12から前記鍵孔11に突出し、且つ、その係合部22bがタンブラ収容部12からケース7側へ突出した状態(中立状態)で保持されている。捻りコイルばね23は、初期負荷を有していない状態で、即ち、前記回転軸14を中心として巻き取られていない状態で第2タンブラ22に固定されている。第2タンブラ22の照合部22aは、鍵孔11に挿入されたキープレート5と係合し、その挿入方向へ回転変位する。これにより、第2タンブラ22は、回転軸14を中心として回転する。そして、第2タンブラ22の係合部22bは、当該第2タンブラ22の回転軸14を中心とした回転角度に応じてタンブラ収容部12からケース7側への突出量を変化させ、作動体10とケース7とを係合させる。
【0039】
具体的には、図8(a)に示すように、鍵孔11にキープレート5が挿入されると、第2タンブラ22の照合部22aが、挿入されたキープレート5と係合し、当該キープレート5に押圧されてその挿入方向に変位する。これにより、第2タンブラ22は、捻りコイルばね23の弾性力に抗して回転軸14を中心として図8(a)において反時計回り方向へ回転する。そして、図8(b)に示すように、第2タンブラ22の照合部22aに対応する位置にキープレート5のコード孔5aが設けられていない部位が配置されると、照合部22aが回転変位状態となり、タンブラ収容部12から突出していた係合部22bがタンブラ収容部12に収容され、当該第2タンブラ22による作動体10とケース7との係合が解除される。また、このとき、第2タンブラ22が回転軸14を中心として回転することで捻りコイルばね23が巻き取られ、当該捻りコイルばね23に弾性力が蓄積される。
【0040】
図8(c)に示すように、キープレート5がさらに挿入され、照合部22aに対応する位置に、前記キープレート5のコード孔5aが配置されると、キープレート5と照合部22aとの間の係合が解除され、第2タンブラ22が回転軸14を中心として回転可能となる。このため、第2タンブラ22は、捻りコイルばね23に蓄積された弾性力により、その照合部22aが図8(c)に示す元の中立位置に配置されるように時計回り方向へ回転し中立状態をとり、その係合部22bがタンブラ収容部12からケース7側へ突出する。第2タンブラ22が作動体10とケース7とに跨って配置されることにより、第2タンブラ22を介して作動体10とケース7とが係合する。
【0041】
また、鍵孔11に挿入されていたキープレート5が抜出されると、キープレート5の挿入時において照合部22aに対応する位置に前記キープレート5のコード孔5aが配置される場合と同様に、第2タンブラ22は、キープレート5との係合を通じて時計回り方向へ回転する。そして、キープレート5が完全に引き抜かれてキープレート5と照合部22aとの間の係合が解除されると、第2タンブラ22は、捻りコイルばね23に蓄積された弾性力により、その照合部22aが図8(c)に示す元の中立位置に配置されるように反時計回り方向へ回転し中立状態をとり、その係合部22bがタンブラ収容部12からケース7側へ突出する。第2タンブラ22が作動体10とケース7とに跨って配置されることにより、第2タンブラ22を介して作動体10とケース7とが係合する。
【0042】
即ち、第2タンブラ22は、その照合部22aに対応する位置にキープレート5が配置された場合、照合部22aが回転変位状態をとり、作動体10とケース7との係合を解除する。一方、第2タンブラ22は、その照合部22aに対応する位置にキープレート5が配置されていない場合、照合部22aが中立位置に配置され中立状態をとり、作動体10とケース7とを係合させる。
【0043】
次に、前述のように構成した錠装置とメカニカルキーとを協働させて施錠・解錠を行う場合の作用を説明する。
図6に示すように、錠装置6の鍵孔11にキープレート5が挿入されていない場合、第1タンブラ21は、捻りコイルばね23により、その係合部21b,21cがタンブラ収容部12内に収容された状態である中立状態に保持される。また、第2タンブラ22は、捻りコイルばね23により、その係合部22bがタンブラ収容部12からケース7側へ突出した状態である中立状態に保持される。第2タンブラ22が作動体10とケース7とに跨って配置されることにより、第2タンブラ22を介して作動体10とケース7とが係合し、作動体10及びケース7の相対変位が規制される。よって、錠装置6の施解錠操作が規制される。
【0044】
錠装置6の鍵孔11に当該錠装置6に対応する正規のキープレート5が挿入されると、各タンブラ21,22の照合部21a,22aがキープレート5の先端部に押圧されてその挿入方向へ回転変位する。これにより、各タンブラ21,22は、回転軸14を中心として反時計回り方向へ回転する。そして、図9に示すように、鍵孔11に正規のキープレート5が完全に挿入されると、第1タンブラ21は、鍵孔11に挿入される正規のキープレート5のコード孔5aに対応する位置に配置される。このため、第1タンブラ21の照合部21aはキープレート5と係合しない。従って、照合部21aは中立位置に配置され、当該第1タンブラ21の係合部21b,21cは、タンブラ収容部12内に収容される。一方、鍵孔11に正規のキープレート5が完全に挿入されると、第2タンブラ22は、鍵孔11に挿入される正規のキープレート5のコード孔5aに対応しない位置に配置される。このため、第2タンブラ22の照合部22aはキープレート5と係合し当該キープレート5の挿入方向に変位した状態である回転変位状態に保持される。従って、第2タンブラ22は、その係合部22bが、タンブラ収容部12内に収容された状態に保持される。よって、鍵孔11に正規のキープレート5が挿入されることにより、全てのタンブラ21,22の係合部21b,21c,22bは、タンブラ収容部12内に収容される。このため、タンブラ21,22によるケース7と作動体10との係合が全て解除されて、前記キープレート5の挿入方向に直交する操作方向への作動体10のケース7に対する相対変位が許容され、錠装置6の施解錠操作が可能となる。
【0045】
錠装置6の鍵孔11からキープレート5が抜出されると、各タンブラ21,22はキープレート5の挿入時に捻りコイルばね23に蓄積された弾性力により、各照合部21a,22aが元の中立位置に配置されるように回転する。各タンブラ21,22が図6に示す元の状態(中立状態)に復帰した状態においては、第2タンブラ22の係合部22bがタンブラ収容部12から突出し、第2タンブラ22が作動体10とケース7とに跨って配置される。これにより、第2タンブラ22を介して作動体10とケース7とが係合し、前記キープレート5の挿入方向に直交する操作方向への作動体10のケース7に対する相対変位が規制される。よって、錠装置6の施解錠操作が規制される。
【0046】
なお、錠装置6の鍵孔11に不正なキープレートが挿入された場合、同キープレートのコード孔と該コード孔が設けられていない部位とが、第1タンブラ21及び第2タンブラ22に対応していないので、タンブラ21,22によるケース7と作動体10との係合が全て解除されない。例えば、不正なキープレートとして板状の部材が挿入された場合、第1タンブラ21は、その係合部21bがタンブラ収容部12からケース7側へ突出した状態で保持され(図7(b)参照)、また、第2タンブラ22は、その係合部22bがタンブラ収容部12内に収容された状態で保持される(図8(b)参照)。従って、第1タンブラ21を介して作動体10とケース7とが係合し、前記キープレートの挿入方向に直交する操作方向への作動体10のケース7に対する相対変位が規制される。よって、錠装置6の施解錠操作が規制される。
【0047】
次に、上記実施の形態の作用効果を以下に記載する。
(1)錠装置6のタンブラ21,22は、鍵孔11に挿入されるキープレート5の幅方向の回転軸14を中心として該キープレート5の挿抜方向に回転可能に軸支されている。タンブラ21,22の照合部21a,22aが鍵孔11に挿入されたキープレート5と係合しその挿入方向に変位すると、タンブラ21,22は、回転軸14を中心として回転する。そして、タンブラ21,22の係合部21b,21c,22bは、タンブラ21,22の回転軸14を中心とした回転角度に応じてタンブラ収容部12からケース7側へ突出し、作動体10とケース7とを係合させる。即ち、キープレート5の厚みが、タンブラ21,22の係合部21b,21c,22bのケース7側への突出量、言い換えれば、ケース7及び作動体10の間の係合力に何ら影響を及ぼさない。よって、キープレート5の厚さをより一層薄くした場合でもケース7と作動体10とを確実に係合させることが可能となり、キープレート5のより一層の薄型化を図ることができる。
【0048】
(2)また、この錠装置6では、照合部21a,22aが中立位置に配置されるようにタンブラ21,22を回転させる捻りコイルばね23がタンブラ21,22の軸方向に配置される。このため、図12に示す従来の錠装置と比較して、錠装置6の薄型化を図ることができる。
【0049】
(3)錠装置6は、鍵孔11に挿入される正規のキープレート5のコード孔5aに対応する位置に配置される第1タンブラ21と、当該正規のキープレート5のコード孔5aに対応しない位置に配置される第2タンブラ22とを備えている。このため、第1タンブラ21及び第2タンブラ22の組み合わせや配置を変更することにより、複数種類のキーコードを当該錠装置6に対応するキーコードとして設定することができる。
【0050】
また、第2タンブラ22は、照合部22aが中立位置にある状態においてケース7と作動体10とを係合させるため、当該第2タンブラ22によって、鍵孔11にキープレート5が挿入されていない状態における作動体10のケース7に対する相対変位が規制される。従って、鍵孔11に正規のキープレート5が挿入されていない状態で作動体10のケース7に対する相対変位が許容されることはない。また、不正なキープレートが挿入された場合には、同キープレートのコード孔と該コード孔が設けられていない部位とが、第1タンブラ21及び第2タンブラ22に対応していないので、作動体10のケース7に対する相対変位が規制される。以上のことから、錠装置6のセキュリティ性が向上する。
【0051】
(4)タンブラ21,22の外周面は、その周方向において滑らかに連続する曲面状に形成されているため、タンブラ21,22の照合部21a,22aとキープレート5とを滑らかに係合させることが可能となり、キープレート5の挿抜時における操作感を向上させることができる。
【0052】
(5)第1タンブラ21及び第2タンブラ22は、鍵孔11のキープレート5の挿入方向からみて前記照合部21a,22aの形状が一致するように形成されたため、鍵孔11から覗いても照合部21a,22aの形状から当該照合部21a,22aに対応するタンブラ21,22の係合部21b,21c,22bによるケース7と作動体10との係合状態を判別することができない。このため、錠装置6のセキュリティ性が向上する。
【0053】
(6)キープレート5は全体としてカード状に形成されるため、キープレート5の携帯性が向上する。
(7)上述した錠装置6を採用することにより携帯機2のキー収容部に収容されるメカニカルキーの薄型化が図られる。このため、携帯機2の小型化が可能となり、携帯機2の携帯性を向上させることができる。
【0054】
(8)キープレート5を樹脂材料から形成したため、当該キープレート5を携帯機2において送信アンテナなどが実装された回路基板2aと重ねて配置することができる。このため、設計の自由度が向上する。なお、この場合、上述したようにキープレート5の薄型化が図られているため、回路基板2aと重ねて配置しても携帯機2が大幅に厚くなってしまうことはない。
【0055】
(9)2つのタンブラ(第1タンブラ21若しくは第2タンブラ22)を1つの捻りコイルばね23によって該鍵孔11に挿入されるキープレート5と係合可能な状態に保持するようにしたため、部品点数を削減することができる。
【0056】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態は、前記タンブラ21,22に加えて、該タンブラ21,22の回転に伴いケース7と作動体10とを係合させる係合部材を設けた点で前記第1の実施の形態と異なる。従って、前記第1の実施の形態と同様の部材構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0057】
図10(a)に示すように、作動体収容部7cには、直方体状に形成された作動体10が、ケース7の内側面に沿って前記スリット7bに直交する方向(図10(a)において右方向)へスライド可能に収容されている。作動体10は、図示しない復帰機構により作動体収容部7cのスリット7b側(図10(a)において左側)の内側面に当接した状態に保持されている。作動体10にはドア錠4aを施錠・解錠する図示しないロック機構が作動連結されており、作動体10が鍵孔11に対するキープレート5の挿入方向に沿った操作方向へ押圧操作されると、前記ロック機構を通じてドア錠4aが施錠・解錠されるようになっている。具体的には、ドア錠4aが解錠状態の場合に作動体10が図10(a)において右方へ押圧操作されるとロック機構はドア錠4aを施錠し、ドア錠4aが施錠状態の場合に作動体10が図10(a)において右方へ押圧操作されるとロック機構はドア錠4aを解錠する。
【0058】
作動体10において、該鍵孔11に挿入されるキープレート5の厚さ方向一側(図10(a)において上側)の外側面10aには、鍵孔11に対するキープレート5の挿入方向に延びる直線状の4つの係合部材収容部15が凹設されている。各係合部材収容部15は、前記復帰機構により作動体10が作動体収容部7cのスリット7b側の端部に配置された状態で、前記作動体収容部7cの各係合凹部7dに対応する位置に設けられている。係合部材収容部15の幅は、対応する係合凹部7dの幅と略等しくなっている。これにより、当該タンブラ21,22の係合部21b,21c,22bは、係合部材収容部15内へ進入可能になっている。
【0059】
各係合部材収容部15には、係合部材25が収容されている。各係合部材25は、各係合部材収容部15の内形形状に対応する直方体状に形成されており、作動体10及びケース7に跨って配置される係合位置と、作動体10の内側に配置される非係合位置との間を変位可能に収容されている。キープレート5の非挿入状態において、係合部材25は、係合部材収容部15内へ突出した第2タンブラ22の係合部22bに押圧されて作動体10及びケース7に跨って配置され、作動体10とケース7とを係合させる。
【0060】
各係合部材25の第1タンブラ21及び第2タンブラ22とは反対側の側面には、付勢部材収容部26が凹設されており、該付勢部材収容部26の開口部には、作動体10に対してかしめられて固定された略平板状の固定部材27が配置されている。固定部材27は、作動体10に対して、当該固定部材27の外側面が当該作動体10の外側面10aと面一になるように固定されている。
【0061】
付勢部材収容部26の内部において、当該付勢部材収容部26の内底面と固定部材27との間には、第2付勢手段としてのコイルばね28が配設されている。コイルばね28の一端部は、付勢部材収容部26の内底面に固定され、他端部は、固定部材27に固定されている。コイルばね28は、初期荷重を有した状態、つまり若干圧縮された状態で設けられている。係合部材25はコイルばね28の弾性力により係合部材収容部15の底部に当接するように、即ち、第1タンブラ21及び第2タンブラ22側へ付勢されている。係合部材25の第1タンブラ21及び第2タンブラ22側(係合部材収容部15に没入する方向)への変位は、当該係合部材25の底面が各第1タンブラ21及び第2タンブラ22に当接することにより規制される。即ち、第1タンブラ21及び第2タンブラ22の係合部21b,21c,22bが係合部材収容部15内に進入した状態において、係合部材25は係合位置に配置され、該係合部21b,21c,22bが係合部材収容部15から突出した状態において、係合部材25は非係合位置に配置される。
【0062】
次に、前述のように構成した錠装置とメカニカルキーとを協働させて施錠・解錠を行う場合の作用を説明する。
第1の実施の形態と同様に、錠装置6aの鍵孔11にキープレート5が挿入されていない場合、第1タンブラ21は、捻りコイルばね23により、その係合部21b,21cがタンブラ収容部12内に収容された状態で保持される。また、第2タンブラ22は、捻りコイルばね23により、その係合部22bが係合部材収容部15の内部に進入した状態で保持される。このため、係合部材25は、その底面が各第2タンブラ22の係合部22bに当接することにより下方への変位が規制され、作動体10及びケース7に跨って配置される係合位置に保持される。これにより、当該係合部材25を介して作動体10とケース7とが係合し、作動体10及びケース7の相対変位が規制される。よって、錠装置6aの施解錠操作が規制される。
【0063】
錠装置6aの鍵孔11に当該錠装置6aに対応する正規のキープレート5が挿入されると、各タンブラ21,22の照合部21a,22aがキープレート5の先端部に押圧されてその挿入方向へ変位する。これにより、各タンブラ21,22は、回転軸14を中心として反時計回り方向へ回転する。そして、図10(b)に示すように、鍵孔11に正規のキープレート5が完全に挿入されると、第1タンブラ21は、鍵孔11に挿入される正規のキープレート5のコード孔5aに対応する位置に配置される。このため、第1タンブラ21の照合部21aはキープレート5と係合しない。従って、照合部21aは中立位置に配置され、当該第1タンブラ21の係合部21b,21cは、タンブラ収容部12内に収容される。一方、鍵孔11に正規のキープレート5が完全に挿入されると、第2タンブラ22は、鍵孔11に挿入される正規のキープレート5のコード孔5aに対応しない位置に配置される。このため、第2タンブラ22の照合部22aはキープレート5と係合し当該キープレート5の挿抜方向に変位した状態に保持される。従って、第2タンブラ22は、その係合部22bが、タンブラ収容部12に収容された状態に保持される。よって、鍵孔に正規のキープレートが挿入されることにより、全てのタンブラ21,22の係合部21b,21c,22bは、タンブラ収容部12内に収容される。このため、係合部材25は、第1タンブラ21及び第2タンブラ22側へ変位し、作動体10の内側に配置される非係合位置に配置される。これにより、当該係合部材25によるケース7と作動体10との係合が解除されて、前記キープレート5の挿入方向に沿った作動体10のケース7に対する相対変位が許容され、錠装置6aの施解錠操作が可能となる。
【0064】
錠装置6aの鍵孔11からキープレート5が抜出されると、各タンブラ21,22はキープレート5の挿入時にコイルばね23に蓄積された弾性力により、各照合部21a,22aが図10(b)に示す元の中立位置に配置されるように回転する。第2タンブラ22の係合部22bがタンブラ収容部12から突出して係合部材収容部15内へ進入するにつれて、係合部材25は該係合部22bに押圧されて上方(第1タンブラ21及び第2タンブラ22とは反対側)へ変位し、照合部22aが中立位置に至ったとき、作動体10及びケース7に跨って配置される係合位置に至る。これにより、当該係合部材25を介して作動体10とケース7とが係合し、前記鍵孔11に対するキープレート5の挿入方向に沿った作動体10の相対変位が規制される。よって、錠装置6aの施解錠操作が規制される。
【0065】
なお、錠装置6aの鍵孔11に不正なキープレートが挿入された場合、同キープレートのコード孔と該コード孔が設けられていない部位とが、第1タンブラ21及び第2タンブラ22に対応していないので、何れかのタンブラ21,22の係合部21b,21c,22bが係合部材収容部15の内部に進入した状態となる。例えば、不正なキープレートとして板状の部材が挿入された場合、第1タンブラ21は、その係合部21bが係合部材収容部15の内部に進入した状態で保持され、また、第2タンブラ22は、その係合部22bがタンブラ収容部12に収容された状態で保持される。このため、係合部材25は第1タンブラ21の係合部21bに押圧されて作動体10及びケース7に跨って配置される係合位置に配置される。これにより、当該係合部材25を介して作動体10とケース7とが係合し、前記鍵孔11に対するキープレート5の挿入方向に沿った作動体10の相対変位が規制される。よって、錠装置6aの施解錠操作が規制される。
【0066】
次に、上記実施の形態の作用効果を以下に記載する。
(1)係合部材収容部15に設けられた係合部材25が、タンブラ21,22の回転に伴いタンブラ収容部12から突出した係合部21b,21c,22bに押圧されることにより、当該係合部材25が作動体10及びケース7に跨って配置される。このように、係合部材25を介して作動体10とケース7とが係合するため、タンブラ21,22自体をケース7に係合させることなく作動体10とケース7とを係合させることができる。ここで、作動体10がケース7に対してキープレート5の挿抜方向、即ちタンブラ21,22の回転方向に相対変位可能となっている本実施の形態において、前記第1の実施の形態のように、タンブラ21,22の係合部21b,21c,22bが自身をケース7に係合させることも考えられる。しかし、この場合には、作動体10が操作される際に、タンブラ21,22が回転軸14を中心として回転してしまうことが懸念される。これは、各タンブラ21,22の係合部21b,21c,22bとケース7とが係合する方向が、タンブラ21,22の回転方向と一致するため、作動体10が操作されることにより、係合部21b,21c,22bが回転軸14から離れた位置でケース7と係合することで、回転軸14回りでモーメントが発生するためである。この点、本実施の形態によれば、タンブラ21,22をケース7に係合させることなく作動体10とケース7とを係合させることができるため、作動体10の操作方向とタンブラ21,22の回転方向とを同じとした場合であれ、作動体10の操作時にタンブラ21,22が回転軸14を中心として回転することはなく、作動体10とケース7とをより確実に係合させることができる。
【0067】
(2)また、係合部材25に対応する何れか1つのタンブラ21,22の係合部21b,21c,22bがタンブラ収容部12からケース7側へ突出していれば、当該係合部材25により作動体10とケース7とが係合した状態となる。このため、作動体10とケース7との係合状態から各タンブラ21,22の状態を判別できなくなり、例えばピッキングによって当該錠装置6aが不正に解錠され難くなり、錠装置6aのセキュリティ性が向上する。
【0068】
尚、上記実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記各実施の形態では、ケース7の係合凹部7dを、スリット7bに直交する方向へ延びる直線状に形成したが、例えば、係合凹部7dを、作動体10に設けられたタンブラ収容部12と対応する位置に点在させてもよい。
【0069】
・上記各実施の形態では、キープレート5に10個のコード孔5aを設け、作動体10に20個のタンブラ収容部12を設けたが、コード孔5aに対応する位置に第1タンブラ21を配置し、コード孔5aに対応しない位置に第2タンブラ22を配置すれば、コード孔5a及びタンブラ収容部12の数は、製品仕様等に応じて適宜変更可能である。また、キープレート5のコード孔5a及びタンブラ収容部12を千鳥格子状に配置してもよい。このように配置すれば、コード孔5aをより密に配置することができるため、キープレート5の小型化、ひいては携帯機2の小型化に貢献することができる。
【0070】
・上記各実施の形態では、2つのタンブラ(第1タンブラ21若しくは第2タンブラ22)を1つの捻りコイルばね23によって該鍵孔11に挿入されるキープレート5と係合可能な状態に保持したが、2つのタンブラを2つの捻りコイルばね23によって該鍵孔11に挿入されるキープレート5と係合可能な状態に保持してもよい。
【0071】
・上記各実施の形態では、2種類のタンブラ(第1タンブラ21及び第2タンブラ22)を設けたが、例えば、タンブラ収容部から係合部が突出するタンブラの回転角度がそれぞれ異なる3種類以上のタンブラを設けてもよい。また、キープレート5が挿入されていない状態において作動体10とケース7とを係合させる第1タンブラ21のみを設けてもよい。
【0072】
・上記実施の形態では、各タンブラ(第1タンブラ21及び第2タンブラ22)の照合部21a,22a及び係合部21b,21c,22bは、それらのタンブラ収容部12からの突出量が等しくなるように設定したが、このような態様に限定されない。例えば図11(a)及び図11(b)に示すように、タンブラ収容部12から突出した状態における係合部21b,21c,22bのケース7側への突出量d1を、中立位置に配置された状態における照合部21a,22aの鍵孔側への突出量d2よりも大きく設定してもよい。このように構成すれば、ケース7と作動体10とをより確実に係合させることができる。
【0073】
・上記各実施の形態では、第1タンブラ21の照合部21a及び係合部21b,21cと、第2タンブラ22の照合部22a及び係合部22bとが、前記回転軸14の軸方向から見て同一の形状となるように形成したが、異なるように形成してもよい。
【0074】
・上記各実施の形態では、第1タンブラ21及び第2タンブラ22は、それらの外周面が、その周方向において滑らかに連続する曲面状になるように形成したが、角部が形成されていてもよい。
【0075】
・上記各実施の形態では、回転軸14を作動体10に対して回転可能に設けたが、回転軸14を作動体10に対して固定してもよい。
・上記各実施の形態では、キーコードとして当該キープレート5を厚さ方向に貫通するコード孔5aを設けたが、複数のコード孔5aを凹設してもよい。
【0076】
・上記各実施の形態では、キープレート5を全体として長方形の板状に形成したが、例えば、キープレート5の一端に把持部材を設けてもよい。この場合、例えば作動体10の鍵孔11の開口部にキープレート5の把持部材を嵌着可能とし当該把持部を介して作動体10を操作することが可能な構成とすれば、キープレート5によって作動体10を押圧することなく錠装置6,6aの施解錠操作が可能となるため、キープレート5のより一層の薄型化を図ることができる。
【0077】
・上記各実施の形態では、キープレート5のコード孔5aは、キープレート5の板厚方向から見て同キープレート5の長手方向に延びる長方形状に形成したが、各タンブラ21,22の照合部21a,22aがタンブラ収容部12内に没入可能な形状であれば、楕円状に形成してもよく、また円状に形成してもよい。
【0078】
・上記各実施の形態では、キープレート5を樹脂材料から形成したが、金属などから形成してもよい。なお、この場合、上記各実施の形態のように携帯機2においてキープレート5を回路基板2aと重ねて配置することは好ましくない。
【0079】
・上記各実施の形態では、携帯機2のキー収容部2bに収容可能なメカニカルキー(キープレート5)として具体化したが、携帯機2に収容されないメカニカルキーに具体化してもよい。また、上記各実施の形態では、キープレート5は、直方体状に形成された携帯機2に収容されようにしたが、カード状に形成された携帯機に収容されるメカニカルキーに具体化してもよい。また、樹脂材料からカード状に形成したメカニカルキーに制御装置4との間で無線通信を行うためのICチップ及びアンテナを搭載し、当該メカニカルキー自身を上記実施の形態における携帯機2として機能させてもよい。この場合、ユーザはカード状のメカニカルキーのみを携帯することで、車両に触れることなくドア錠4aの施錠・解錠を行うことができる。従って、利便性が向上する。
【0080】
・上記第1の実施の形態では、作動体10が前記スリット7bの長手方向に沿った操作方向へスライド操作されるとドア錠4aが施錠・解錠されるようにしたが、作動体10が鍵孔11に対するキープレート5の挿入方向に沿った操作方向へ押圧操作されるとドア錠4aが施錠・解錠されるようにしてもよい。また、逆に、上記第2の実施の形態では、作動体10が鍵孔11に対するキープレート5の挿入方向に沿った操作方向へ押圧操作されると、ドア錠4aが施錠・解錠されるようにしたが、作動体10が前記スリット7bの長手方向に沿った操作方向へスライド操作されるとドア錠4aが施錠・解錠されるようにしてもよい。
【0081】
また、上記実施の形態では、作動体10をケース7に対して直線状にスライド操作することによりドア錠4aが施錠・解錠される錠装置6,6aに具体化したが、作動体をケースに対して、それらの厚さ方向へ延びる中心軸を中心として略円弧状にスライド操作することによりドア錠4aが施錠・解錠される錠装置に具体化してもよい。また、作動体としての内筒(ロータ)をケースとしての外筒(シリンダ)に対して回動操作することによりドア錠4aの施錠・解錠が行われるシリンダ錠に具体化してもよい。
【0082】
・上記各実施の形態では、ケース7の作動体収容部7cに作動体10を収容したが、例えば、ケースの外側面に対して作動体10を相対変位可能に設けてもよい。
・上記第1の実施の形態では、作動体10を、ケース7に対して前記スリット7bの長手方向両側へスライド操作可能としたが、何れか一方側へスライド操作可能としてもよい。
【0083】
・上記各実施の形態では、車両との無線通信を通じてドア錠を施錠・解錠する電子キーシステムに具体化したが、住宅用の電子キーシステムに具体化してもよい。
次に、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0084】
(イ)前記付勢手段は、前記タンブラに対して前記回転軸の軸方向に配置されたことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の錠装置。本思想によれば、従来の錠装置と比較して、錠装置6の薄型化を図ることができる。
【0085】
(ロ)前記タンブラ収容部から前記ケース側へ突出した状態における前記係合部の前記ケース側への突出量は、前記中立位置に配置された状態における前記照合部の前記鍵孔側への突出量よりも大きく設定されたことを特徴とする請求項1〜6及び上記(イ)の何れか1項に記載の錠装置。本思想によれば、ケースと作動体とをより確実に係合させることができる。
【0086】
(ハ)無線通信を通じてロック装置の施錠・解錠が可能とされた携帯機において、請求項1〜6及び上記(イ)及び(ハ)の何れか1項に記載の錠装置と協働して前記ロック装置の施錠・解錠を行うキープレートを収容するキー収容部を備えたことを特徴とする携帯機。本思想によれば、上述した錠装置を採用することにより携帯機のキー収容部に収容されるメカニカルキーの薄型化が図られる。このため、携帯機の小型化が可能となり、携帯機の携帯性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0087】
2…携帯機、2b…キー収容部、5…キープレート、5a…コード孔、6,6a…錠装置、7…ケース、10…作動体、10a…外側面、11…鍵孔、12…タンブラ収容部、14…回転軸、15…係合部材収容部、21…タンブラとしての第1タンブラ、22…タンブラとしての第2タンブラ、21a,22a…照合部、21b,21c,22b…係合部、23…付勢手段としての捻りコイルばね、25…係合部材、28…第2付勢手段としてのコイルばね。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置対象に固定されるケースと、キーコードとして複数のコード孔が形成されたキープレートが挿入される鍵孔を備えるとともに該ケースに対して相対変位可能に設けられた作動体と、前記鍵孔に正規のキープレートが挿入されていない状態において前記ケースと前記作動体とを係合させて前記作動体の前記ケースに対する相対変位を規制する複数のタンブラとを備え、前記鍵孔に正規のキープレートが挿入されることにより、前記タンブラによる前記作動体と前記ケースとの係合が解除されて当該作動体の前記ケースに対する相対変位を許容する錠装置であって、
前記タンブラは、前記鍵孔に挿抜されるキープレートの厚さ方向において前記作動体の前記ケース側の外側面と前記鍵孔とを連通するタンブラ収容部に、前記鍵孔に挿入される前記キープレートの幅方向の回転軸を中心として該キープレートの挿抜方向に回転可能に軸支されるとともに、
前記鍵孔にキープレートが挿入されていない状態において該鍵孔に挿入される前記キープレートに係合する中立位置に配置され、前記鍵孔に挿入されたキープレートと係合しその挿入方向に回転変位して、当該タンブラを、前記回転軸を中心として回転させ前記コード孔の有無に応じて中立状態又は回転変位状態をとる照合部と、
前記タンブラの前記回転軸を中心とした回転角度に応じて、前記タンブラ収容部から前記ケース側への突出量が変化し、前記照合部と前記コード孔との対応関係に基づき前記作動体と前記ケースとを係合状態又は非係合状態とする係合部とを備え、
前記照合部が前記中立位置に配置されるように前記タンブラを回転付勢する付勢手段をさらに備えたことを特徴とする錠装置。
【請求項2】
複数の前記タンブラは、前記鍵孔に挿入される正規のキープレートの前記コード孔に対応する位置に配置される第1タンブラと、当該正規のキープレートの前記コード孔に対応しない位置に配置される第2タンブラとを含み、
前記第1タンブラは、前記キープレートが挿入されていない状態、又は挿入されたキープレートのコード孔に前記照合部が対応した状態においては、前記照合部は、前記中立位置にあり、前記係合部は、前記タンブラ収容部内に収容され前記ケースと前記作動体との係合を解除するとともに、挿入されたキープレートのコード孔に対応しない部位に前記照合部が対応した状態においては、前記照合部は、回転変位状態をとり、前記係合部は、前記タンブラ収容部から前記ケース側に突出し前記ケースと前記作動体とを係合させ、
前記第2タンブラは、前記キープレートが挿入されていない状態、又は挿入されたキープレートのコード孔に前記照合部が対応した状態においては、前記照合部は、前記中立位置にあり、前記係合部は、前記タンブラ収容部から前記ケース側に突出し前記ケースと前記作動体とを係合させるとともに、挿入されたキープレートのコード孔に対応しない部位に前記照合部が対応した状態においては、前記照合部は、回転変位状態をとり、前記係合部は、前記タンブラ収容部内に収容され前記ケースと前記作動体との係合を解除することを特徴とする請求項1に記載の錠装置。
【請求項3】
前記タンブラの外周面は、その周方向において滑らかに連続する曲面状に形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の錠装置。
【請求項4】
前記鍵孔の挿入方向からみて前記照合部の形状が一致するように形成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の錠装置。
【請求項5】
前記作動体は、該作動体の前記ケース側の外側面に設けられ前記タンブラ収容部に連通する係合部材収容部と、該係合部材収容部に前記作動体及び前記ケースに跨って配置される係合位置と前記作動体の内側に配置される非係合位置との間を変位可能に収容された係合部材と、該係合部材を前記係合位置から前記非係合位置へ変位させる方向へ付勢する第2付勢手段とを備え、
前記係合部材は、前記タンブラの回転に伴い前記タンブラ収容部から前記ケース側へ突出した前記係合部に押圧されることにより、前記非係合位置から前記係合位置へ変位することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の錠装置。
【請求項6】
前記キープレートは、全体としてカード状に形成されたカード型キーであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の錠装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−80317(P2011−80317A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235227(P2009−235227)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】