説明

錠装置

【課題】メカニカルキーのより一層の薄型化を図ることが可能な錠装置を提供する。
【解決手段】作動体10の係合部材収容部12には、係合部材13が、作動体10及びケース7に跨って配置される係合位置と、作動体10の内側に配置される非係合位置との間を変位可能に収容されている。タンブラ21,22は、作動体10のタンブラ収容部14に、回転軸16を中心として回転可能に軸支されており、その照合部21b,22bが鍵孔11に挿入されたキープレートと係合することによって回転する。そして、各タンブラ21,22は、回転軸16を中心とした回転角度に応じて係合部材13の前記非係合位置への変位を規制したり許容したりする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、カード状のキープレートにキーコードとして複数のコード孔が形成されてなるメカニカルキーと協働して施錠・解錠を行う錠装置がある。
【0003】
この錠装置は、図12に示すように、車両や玄関等のドアに取り付けられるケース51と、該ケース51内に摺動可能に挿入された作動体52とを備えている。作動体52には、前記キープレート5を挿入するための溝53が設けられている。ケース51及び作動体52において前記溝53にキープレート5を挿入した際に同キープレート5のコード孔5aに対応する部位には、それぞれキープレート5に直交する方向に延びる孔54a,54bが形成されている。これら孔54a,54bは、互いに一致して単一の長孔54を形成している。この長孔54には、キープレート5に近い側から順に、キープレート5のコード孔5aに係合するボール55と、作動体52の移動を阻止・開放するための2種類の施錠ピン56a,56bと、該施錠ピン56a,56bをボール55側へ付勢するばね57とが収容されている。施錠ピン56a,56bは、その長手方向において分断されており、その分断された位置が、正規のキープレート5が挿入された場合にケース51及び作動体52の境界に一致するように設定されている。具体的には、コード孔5aに対応する施錠ピン56aは、キープレート5が挿入されていない状態において、その分断された位置が作動体52及びケース51の境界に一致するように設定されている。また、コード孔5aに対応しない施錠ピン56bは、キープレート5が挿入されていない状態において、その分断された位置がキープレート5の厚さdの分だけ作動体52及びケース51の境界よりもボール55側に配置されるように設定されている。
【0004】
これにより、図13(a)に示すように、正規のキープレート5が溝53に挿入された場合は、施錠ピン56a,56bの境界がケース51及び作動体52の境界に一致するので、作動体52とケース51との相対変位が可能となり、ロック装置の施解錠操作が可能となる。一方、図13(b)に示すように、不正なキープレート5が挿入された場合は、施錠ピン56a,56bの境界が当該キープレート5の厚さdの分だけ作動体52及びケース51の境界からずれた位置に配置され、施錠ピン56a,56bを介して作動体52とケース51とが係合する状態となるので、作動体52とケース51との間の相対変位が不能となり、ロック装置の施解錠操作が不能となる。
【0005】
また、従来、ユーザが所持する携帯機と車両や住宅等に搭載されたロック装置との間で所定の無線通信を通じて識別コードの送受信を行うことにより、同ロック装置の施錠・解錠を可能とする電子キーシステムが知られている。この電子キーシステムは、識別コードに基づくユーザ認証を行うことで、より高い安全性を確保することができるとともに、キーを鍵孔に挿入する必要がなく利便性が高いことから、車両や住宅等の用途において急速に普及が進んでいる。このような電子キーシステムにおいて、上述したロック装置を手動で施錠・解錠するメカニカルキーは、例えば携帯機の電気系・通信系の不具合により電子キーシステムが適切に動作しなくなった場合に使用できるよう、通常、携帯機に設けられた収容部に収容されている。このような携帯機においては、その携帯性の向上のため、より一層の小型化が望まれている。携帯機にメカニカルキーを収容する場合、携帯機のサイズを決める要因の中でもメカニカルキーの収容スペースは重要であり、これにともない、メカニカルキーの薄型化が望まれている。また、携帯機に収容されないメカニカルキーについても、携帯性の観点から、薄型化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−307058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した従来の錠装置では、キープレート5がボール55を当該キープレート5の厚さd方向へ押し上げることにより施錠ピン56a,56bが変位するため、施錠ピン56a,56bの境界は、ケース51及び作動体52の境界から該キープレート5の厚さdの分だけずれた位置に配置される。従って、当該キープレート5を薄くすると、施錠ピン56a,56bの境界からケース51及び作動体52の境界までの距離が短くなり、施錠ピン56a,56bがケース51及び作動体52に引っかかり難くなってしまう。このため、ケース51と作動体52との間の係合が不十分となり、ケース51と作動体52との間の相対変位を確実に規制することができなくなってしまうことが懸念される。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、メカニカルキーのより一層の薄型化を図ることが可能な錠装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、設置対象に固定されるケースと、キーコードとして複数のコード孔が形成されたキープレートが挿入される鍵孔を備えるとともに該ケースに対して相対変位可能に設けられた作動体と、前記作動体に設けられ前記鍵孔に正規のキープレートが挿入されていない状態において前記ケースと前記作動体とを係合させて前記作動体の前記ケースに対する相対変位を規制する複数のタンブラとを備え、前記鍵孔に挿入される正規のキープレートのコード孔と前記タンブラとの係合状態に応じて、前記タンブラによる前記作動体と前記ケースとの係合が解除されて当該作動体の前記ケースに対する相対変位を許容する錠装置であって、前記作動体は、前記鍵孔に挿入される前記キープレートの厚さ方向において前記ケース側に開口する係合部材収容部と、該係合部材収容部に沿って、前記作動体の外部に突出して前記ケースに係合することにより前記作動体の前記ケースに対する相対変位を規制する係合位置と、前記作動体の内側に配置されて前記ケースとの係合が解除されることにより前記作動体の前記ケースに対する相対変位を許容する非係合位置との間を変位可能に設けられる係合部材と、前記鍵孔に挿入されるキープレートの厚さ方向において前記係合部材収容部と前記鍵孔とを連通するタンブラ収容部とを備え、前記タンブラは、前記タンブラ収容部に、前記鍵孔に挿入される前記キープレートの幅方向へ延びる回転軸を中心として回転可能に設けられるとともに、その外周面には、前記係合部材が進入可能とされた凹部、及び、前記コード孔に対応可能とされて前記キープレートの前記鍵孔に対する非挿入状態にあっては挿入されるキープレートに係合可能に対応する一方、挿入されたキープレートとの係合を通じて前記回転軸を中心として当該タンブラと一体的に回転変位する照合部を設け、前記タンブラは、挿入されたキープレートのコード孔と前記照合部との対応の有無に応じて、その外周面が前記係合部材収容部に対応して前記係合部材の前記係合位置から前記非係合位置への変位を規制する状態と、前記凹部が前記係合部材収容部に対応して前記係合部材の前記係合位置から前記非係合位置への変位を許容する状態とをとることをその要旨とする。
【0010】
本発明によれば、タンブラは、鍵孔に挿入されるキープレートの幅方向へ延びる回転軸を中心として該キープレートの挿抜方向に回転可能に軸支されているため、タンブラの照合部は、挿入されたキープレートとの係合を通じて回転軸を中心として当該タンブラと一体的に回転変位する。そして、タンブラは、挿入されたキープレートのコード孔と照合部との対応の有無に応じて、その外周面が係合部材収容部に対応して係合部材の係合位置から非係合位置への変位を規制する。これにより、係合部材が作動体の外部に突出してケースに係合した状態に保持され、ケースと作動体との相対変位が不能となる。また、タンブラは、挿入されたキープレートのコード孔と照合部との対応の有無に応じて、凹部が係合部材収容部に対応して係合部材の係合位置から非係合位置への変位を許容する。これにより、係合部材が作動体の内側に配置されてケースとの係合が解除され、作動体のケースに対する相対変位が可能となる。即ち、キープレートの厚みが、係合部材のケース側への突出量、言い換えれば、ケース及び作動体の間の係合力に何ら影響を及ぼさない。よって、キープレートの厚さをより一層薄くした場合でもケースと作動体とを確実に係合させることが可能となり、メカニカルキーのより一層の薄型化を図ることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、複数の前記タンブラは、前記鍵孔に挿入される正規のキープレートの前記コード孔に対応する位置に配置される第1タンブラと、当該正規のキープレートの前記コード孔に対応しない位置に配置される第2タンブラとを含み、前記第1タンブラは、前記キープレートが挿入されていない状態、又は挿入されたキープレートのコード孔に前記照合部が対応した状態においては、当該第1タンブラの照合部が、挿入されるキープレートに係合可能に対応するとともに、当該第1タンブラの凹部が、前記係合部材収容部に対応する位置に配置される中立状態に保持され、挿入されたキープレートのコード孔に対応しない部位に前記照合部が対応した状態においては、前記照合部が、回転変位状態をとるとともに、前記凹部が、前記係合部材収容部からずれた位置に配置され、前記第2タンブラは、前記キープレートが挿入されていない状態、又は挿入されたキープレートのコード孔に前記照合部が対応した状態においては、当該第2タンブラの照合部が、挿入されるキープレートに係合可能に対応するとともに、当該第2タンブラの凹部が、前記係合部材収容部からずれた位置に配置される中立状態に保持され、挿入されたキープレートのコード孔に対応しない部位に前記照合部が対応した状態においては、前記照合部が、回転変位状態をとるとともに、前記凹部が、前記係合部材収容部に対応する位置に配置されることをその要旨とする。
【0012】
本発明によれば、錠装置は、鍵孔に挿入される正規のキープレートのコード孔に対応する位置に配置される第1タンブラと、当該正規のキープレートのコード孔に対応しない位置に配置される第2タンブラとを備えている。このため、第1タンブラ及び第2タンブラの組み合わせや配置を変更することにより、複数種類のキーコードを当該錠装置に対応するキーコードとして設定することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記照合部の前記タンブラの回転方向にある側面は、前記回転軸の軸方向から見て当該照合部の先端側に向かうにつれてその幅方向内側へ傾斜することをその要旨とする。
【0014】
本発明によれば、照合部のタンブラの回転方向にある側面は、回転軸の軸方向から見て当該照合部の先端側に向かうにつれてその幅方向内側へ傾斜するため、タンブラの照合部とキープレートとを滑らかに係合させることが可能となり、キープレートの挿抜時における操作感を向上させることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記鍵孔に対する前記キープレートの挿入方向からみて前記照合部の形状が一致するように形成されたことをその要旨とする。
本発明によれば、タンブラは、鍵孔に対するキープレートの挿入方向からみて照合部の形状が一致するように形成されたため、鍵孔から覗いても照合部を判別することはできない。このため、照合部の状態からこれらに対応するタンブラによるケースと作動体との係合状態を判別することができない。このため、錠装置のセキュリティ性が向上する。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記キープレートは、全体としてカード状に形成されたカード型キーであることをその要旨とする。
本発明によれば、キープレートは全体としてカード状に形成されるため、キープレートの携帯性が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、メカニカルキーのより一層の薄型化を図ることが可能な錠装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】電子キーシステムの概略構成図。
【図2】(a)携帯機の斜視図、(b)メカニカルキーの平面図。
【図3】錠装置の概略構成を示す斜視図。
【図4】錠装置の概略構成を示す断面図。
【図5】図4のA−A断面図。
【図6】図4のB−B断面図。
【図7】(a)〜(d)第1タンブラの作用を説明するための断面図。
【図8】(a)〜(d)第2タンブラの作用を説明するための断面図。
【図9】錠装置の作用を説明するための断面図。
【図10】(a)及び(b)錠装置の作用を説明するための断面図。
【図11】(a)及び(b)錠装置の作用を説明するための断面図。
【図12】従来の錠装置の概略構成を示す断面図。
【図13】(a)及び(b)従来の錠装置の作用を説明するための一部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を、車両との無線通信を通じてロック装置としてのドア錠を電子的に施錠・解錠する電子キーシステムに具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、電子キーシステム1は、ユーザが所持する携帯機2と、車両3に搭載されるとともに携帯機2との無線通信を通じてドア錠4aの施錠・解錠を行う制御装置4とを備えている。
【0020】
ユーザが携帯機2を所持して車両の所定領域に接近すると、携帯機2は制御装置4から送信されるリクエスト信号を受信する。このリクエスト信号はIDコードの送信を携帯機2に要求する旨の信号である。携帯機2は前記リクエスト信号を受信すると、予め記録された自身のIDコードを含むID信号を送信する。制御装置4は、携帯機2から送信されてきたID信号を受信すると、このID信号に含まれる携帯機2側のIDコードと予め記憶された車両3側のIDコードとを照合し、両IDコードが一致したことを条件としてドア錠4aを解錠する。一方、携帯機2を所持したユーザが車両3から離間して前記所定領域外に移動すると、制御装置4は、携帯機2から送信されるID信号を受信不能となる。制御装置4は携帯機2側のID信号を受信不能になったことを条件として車両のドア錠4aを施錠する。従って、ユーザが車両に触れることなくドア錠4aの施錠・解錠が行われる。
【0021】
図2(a)に示すように、携帯機2は、全体として直方体状に形成されている。携帯機2の内部には、前記制御装置4との間で無線通信を行うための通信回路等を構成するアンテナや各種電子部品が実装された回路基板2aが収容されている。また、携帯機2の一側部に開口して設けられたキー収容部2bには、メカニカルキーとしてのキープレート5が収容されている。回路基板2aとキー収容部2bは、携帯機2の厚さ方向において重ねて配置されている。キープレート5は、車両ドア3aに設けられた錠装置6(図3参照)に対応するものであり、当該携帯機2の電気系・通信系の不具合により電子キーシステム1が適切に動作しなくなった場合には、該キープレート5により前記ドア錠4aを手動で施錠・解錠することができるようになっている。
【0022】
図2(b)に示すように、キープレート5は、樹脂材料からなり、全体として長方形の板状に形成されている。キープレート5には、図2(b)に実線で示されるように、前記錠装置6に対応するキーコードとして当該キープレート5を厚さ方向(図2(b)中、紙面奥行き方向)に貫通する10個のコード孔5aが形成されており、当該キープレート5の一端部(図2(b)において左端部)のコード孔5aが形成されていない部分は、キープレート5を把持するための把持部となっている。各コード孔5aは、キープレート5の板厚方向から見て同キープレート5の長手方向に延びる長方形状に形成されている。
【0023】
図3に示すように、錠装置6のケース7は、全体として直方体状の外形を有しており、その一側面7aが車両ドア3aの外側面と面一となるように車両ドア3aに固定されている。ケース7の一側面7aには、その長手方向(図3において略左右方向)に延びるスリット7bが形成されており、該スリット7bは、ケース7の内部に設けられた作動体収容部7cにつながっている。作動体収容部7cは、同ケース7の外形に対応する直方体状に形成されている。図4において2点鎖線で示すように、作動体収容部7cの内頂面には、スリット7bに沿った方向(図4において左右方向)へ延びる直線状の5つの係合凹部7dが、当該スリット7bに直交する方向(図4において上下方向)に並んで設けられている。
【0024】
同図4に示すように、作動体収容部7cには、直方体状に形成された作動体10が、ケース7の内側面に沿って前記スリット7bに直交する方向(図4において上下方向)へスライド可能に収容されている。作動体10は、作動体収容部7cに設けられた図示しない復帰機構により、同作動体10のスリット7b側(図4において下側)の側面がケース7の内側面に当接した状態で保持されている。作動体10が前記スリット7bから離間する方向となる操作方向(図4において上方向)へスライド操作され、その操作力が解除されると、同作動体10は、前記復帰機構によりそのスリット7b側の側面がケース7の内側面に当接した状態に復帰する。作動体10にはドア錠4aを施錠・解錠する図示しないロック機構が作動連結されており、作動体10が前記操作方向へスライド操作されると、前記ロック機構を通じてドア錠4aが施錠・解錠されるようになっている。具体的には、ドア錠4aが解錠状態の場合に作動体10が図4において上方へ押圧操作されるとロック機構はドア錠4aを施錠し、ドア錠4aが施錠状態の場合に作動体10が図4において上方へ押圧操作されるとロック機構はドア錠4aを解錠する。
【0025】
作動体10において、前記スリット7bに対応する部位には、該スリット7b側(図4において下側)に開口し前記キープレート5が挿入される断面長方形状の鍵孔11が形成されている。キープレート5は、作動体10のスライド方向に沿った方向(図4において下方向)からスリット7bを介して鍵孔11に挿入される。鍵孔11に挿入したキープレート5をさらにその挿入方向へ押し込んで同キープレート5によって鍵孔11の奥の壁面11aを押圧することにより、作動体10は、前記キープレート5の挿入方向(挿抜方向)に沿った操作方向へ操作される。作動体10において、該鍵孔11に挿入されるキープレート5の厚さ方向一側(図4において紙面手前側)の外側面10aには、ケース7側に開口する5個の係合部材収容部12が、前記鍵孔11に対するキープレート5の幅方向(図4において左右方向)に延びる直線状に凹設されている。係合部材収容部12は、前記復帰機構により作動体10が作動体収容部7cのスリット7b側に配置された状態で、前記ケース7の内頂面に設けられた係合凹部7dに対応する位置に設けられている。各係合部材収容部12のキープレート5の挿抜方向(図4において上下方向)における幅は、対応する係合凹部7dの同じくキープレート5の挿抜方向における幅と略等しくなっている。
【0026】
各係合部材収容部12には、係合部材13が収容されている。係合部材13は、該係合部材収容部12の長手方向(図4において左右方向)に沿って延びる円柱状に形成されており、その直径は、係合部材収容部12及び前記ケース7の係合凹部7dの幅と略等しくなっている。係合部材13は、係合部材収容部12に沿って、作動体10の外部に突出してケース7に係合する係合位置(図7(a)及び図8(a)参照)と、作動体10の内側に配置されてケース7との係合が解除される非係合位置(図10(b)及び図11(b)参照)との間を変位可能に設けられている。また、図5及び図6に示すように、係合部材13の半径は、係合凹部7dの深さよりも大きくなるように設定されている。
【0027】
また、図4に示すように、作動体10の外側面10aには、前記鍵孔11に連通する20個のタンブラ収容部14が設けられている。タンブラ収容部14は、前記鍵孔11に対する前記キープレート5の挿入方向に所定間隔毎に配置された5個を一列とする4列が、係合部材収容部12の長手方向において所定間隔毎に配置されている。タンブラ収容部14は、該鍵孔11へのキープレート5の挿入方向に延びる断面長方形状に形成されており、当該タンブラ収容部14の長手方向中央部で係合部材収容部12と直交するように配置されている。前記係合部材収容部12は、該タンブラ収容部14を介して鍵孔11に連通している。また、作動体10の外側面10aにおいて、前記係合部材収容部12の長手方向一端のタンブラ収容部14及びそれに隣接する他のタンブラ収容部14の間と、係合部材収容部12の長手方向他端のタンブラ収容部14及びそれに隣接する他のタンブラ収容部14の間とには、隣り合うタンブラ収容部14を連通するばね収容凹部15が形成されている。
【0028】
図5に示すように、作動体10において、各ばね収容凹部15と該ばね収容凹部15により連通するタンブラ収容部14とからなる中空部分には、回転軸16が作動体10に対して回転可能に配置されている。回転軸16は、鍵孔11に挿入されるキープレート5の幅方向(図5において左右方向)へ延び、対応するばね収容凹部15及びタンブラ収容部14の、キープレート5の挿抜方向における略中央を通るように配置されている(図4参照)。回転軸16において各タンブラ収容部14に対応する部位には、第1タンブラ21若しくは第2タンブラ22が当該回転軸16を中心として回転可能に支持されている。第1タンブラ21及び第2タンブラ22は、鍵孔11に挿入されるキープレート5の幅方向における幅が、同じく鍵孔11に挿入されるキープレート5の幅方向において対向するタンブラ収容部14の2つの内側面の間の距離と略等しく設定されている。第1タンブラ21は、鍵孔11に正規のキープレート5が完全に挿入された状態で、具体的には、キープレート5の先端が前記鍵孔11の奥にある壁面11aに当接する位置まで挿入された状態で、当該キープレート5のコード孔5aに対応する位置に配置される。一方、第2タンブラ22は、鍵孔11に正規のキープレート5が完全に挿入された状態で、当該キープレート5のコード孔5aに対応しない位置(図2(b)において2点鎖線で示す)に配置される。図6に示されるように、鍵孔11において各タンブラ収容部14に対向する部位には、許容部11bが凹設されている。許容部11bは、各タンブラ収容部14の開口側から見て当該タンブラ収容部14に対応する長方形状に形成されている。また、許容部11bの底面は、前記回転軸16の軸方向から見て前記回転軸16を中心とする円弧状に形成されている。
【0029】
また、図5に示されるように、回転軸16において各ばね収容凹部15に対応する部位の外周には、付勢手段としての捻りコイルばね23がそれぞれ設けられている。捻りコイルばね23の中央部は、その一部が外方へ突出して設けられ、この突出した部分はばね収容凹部15の底部に設けられたばね係止部15aに固定されている。また、捻りコイルばね23の両端部23a,23aは、前記回転軸16の軸方向両側に延びるように形成されている。捻りコイルばね23の両端部23a,23aは、対応するばね収容凹部15の両側のタンブラ収容部14にそれぞれ収容された第1タンブラ21若しくは第2タンブラ22に、それぞれ固定されている。即ち、1つの捻りコイルばね23に2つのタンブラ(第1タンブラ21若しくは第2タンブラ22)が固定されている。
【0030】
次に、第1タンブラ21及び第2タンブラ22の構造について詳しく説明する。
図7(a)に示すように、第1タンブラ21は、前記回転軸16の軸方向(キープレート5の幅方向)から見て、略円形状に形成されている。第1タンブラ21は、当該第1タンブラ21の半径r1と係合部材13の直径D1との和が、第1タンブラ21の回転中心Oから前記ケース7側に設けられた係合凹部7dの底面7eまでの距離L1と等しくなるように設けられている。第1タンブラ21の外周面21aには、径方向外側に延びる1つの照合部21bが設けられている。照合部21bは回転軸16の軸方向から見て略三角形状に形成されており、その外側面は当該照合部21bの先端側に向かうにつれてその幅方向内側へ傾斜している。また、照合部21bの第1タンブラ21の外周面21aからの突出量は、その先端部が、鍵孔11において各タンブラ収容部14に対向する部位に設けられた許容部11b内に配置されるように設定されている。即ち、照合部21bのタンブラ収容部14からの突出量はキープレート5の厚さdよりも大きくなっている。照合部21bは、第1タンブラ21の回転軸16を中心とした回転角度に応じてタンブラ収容部14内に配置されたり、同タンブラ収容部14から突出し鍵孔11内に配置されたりする。また、照合部21bは、第1タンブラ21の外周面21aに滑らかに連続している。
【0031】
また、第1タンブラ21の外周面21aには、径方向外側に開口する凹部21cが設けられている。照合部21b及び凹部21cは、周方向に略180°の間隔で設けられている。凹部21cは、前記回転軸16の軸方向から見て、第1タンブラ21の回転中心O側に凸となる円弧状に形成されている。凹部21cは、当該凹部21cが係合部材収容部12に対応する位置に配置された場合に、前記係合部材13の前記非係合位置(同図7(a)において2点鎖線にて示す)への変位を許容するように形成されている。また、第1タンブラ21の外周面21aから第1タンブラ21の回転中心Oまでの距離(半径r1)と凹部21cの底面から第1タンブラ21の回転中心Oまでの距離との差d1は、キープレート5の厚さd(図7(b)参照)と略等しく設定されている。
【0032】
第1タンブラ21は、捻りコイルばね23により、該鍵孔11に挿入されるキープレート5と係合可能な状態に保持されている。具体的には、鍵孔11にキープレート5が挿入されていない状態において、第1タンブラ21は、その照合部21bが前記鍵孔11を介して許容部11bに進入し、且つ、その凹部21cが前記係合部材収容部12に対応する中立状態に保持されている。捻りコイルばね23は、前記回転軸16を中心として巻き取られていない状態で、即ち、初期負荷を有していない状態で第1タンブラ21に固定されている。第1タンブラ21の照合部21bは、鍵孔11に挿入されたキープレート5と係合し、その挿入方向へ回転変位する。これにより、第1タンブラ21は、回転軸16を中心として回転する。
【0033】
第1タンブラ21は、挿入されたキープレート5のコード孔5aと照合部21bとの対応の有無に応じて、その外周面21aが係合部材収容部12に対応して係合部材13の係合位置から非係合位置への変位を規制する状態と、凹部21cが係合部材収容部12に対応して係合部材13の係合位置から非係合位置への変位を許容する状態とをとる。具体的には、同図7(a)に示すように、鍵孔11にキープレート5が挿入されていない状態において、第1タンブラ21は、前述した中立状態に保持されていることから、第1タンブラ21の凹部21cは前記係合部材収容部12に対応する位置に保持されている。この状態において、第1タンブラ21は、係合部材13の係合位置から非係合位置への変位を許容する状態をとる。なお、図7(a)において、係合部材13は、同図7(a)において当該第1タンブラ21の紙面奥行き方向に配置された他のタンブラ21,22(図4及び図6参照)によって係合位置に保持されている。
【0034】
第1タンブラ21が前記中立状態に保持されている状態において鍵孔11にキープレート5が挿入されると、図7(b)に示すように、第1タンブラ21の照合部21bが、挿入されたキープレート5と係合し、当該キープレート5に押圧されてその挿入方向に変位する。これにより、第1タンブラ21は、捻りコイルばね23の弾性力に抗して図7(b)において反時計回り方向へ回転する。このとき、第1タンブラ21が回転軸16を中心として回転することで捻りコイルばね23(図5参照)が巻き取られ、当該捻りコイルばね23に弾性力が蓄積される。
【0035】
図7(c)に示すように、キープレート5の挿入に伴い第1タンブラ21の照合部21bに対応する位置にキープレート5のコード孔5aが設けられていない部位が配置されると、第1タンブラ21の凹部21cが係合部材収容部12からずれた位置に配置される。また、照合部21bはキープレート5の先端から同キープレート5の上面に乗り移り、以後、キープレート5の挿入に伴い、キープレート5の上面を摺動する。即ち、第1タンブラ21は、第1タンブラ21の照合部21bに対応する位置にキープレート5のコード孔5aが設けられていない部位が配置されている間、所定の角度だけ回転した回転変位状態に保たれる。この状態において、第1タンブラ21は、係合部材13の係合位置から非係合位置への変位を規制する状態をとる。このとき、第1タンブラ21に対応する捻りコイルばね23は、一定の弾性力が蓄積された状態に保持される。なお、照合部21bの第1タンブラ21の外周面21aからの突出量は、キープレート5の厚さdよりも大きくなっているため、例えば照合部の突出量がキープレート5の厚さdと等しい、又は小さなタンブラと比較して照合部21bがキープレート5と係合することによる該照合部21bの回転変位量が大きくなる。これは、キープレート5の先端が照合部21bに係合している間は、同照合部21bはキープレート5の挿入方向に押されて第1タンブラ21が回転するからである。従って、第1タンブラ21が、図7(a)に示される中立状態から図7(c)に示される回転変位状態をとるまでの第1タンブラ21の回転角度が大きくなる。当該回転角度が大きくなるほど、第1タンブラ21の単位回転角度に対する係合部材13の凹部21cに沿った変位量を小さくすることができるため、係合部材13を当該第1タンブラ21の凹部21cに沿って緩やかに変位させることができる。このため、キープレート5の挿抜時における操作感が向上する。
【0036】
一方、図7(d)に示すように、キープレート5の挿入に伴い照合部21bに対応する位置に前記キープレート5のコード孔5aが配置されると、キープレート5と照合部21bとの間の係合が解除され、第1タンブラ21が回転軸16を中心として回転可能となる。このため、第1タンブラ21は、捻りコイルばね23に蓄積された弾性力により、その照合部21bがキープレート5に係合可能な位置に配置されるように時計回り方向へ回転して中立状態をとり、その凹部21cが係合部材収容部12に対応する位置に配置される。この状態において、第1タンブラ21は、係合部材13の係合位置から非係合位置への変位を許容する状態をとる。なお、図7(d)において、係合部材13は、同図7(d)において当該第1タンブラ21の紙面奥行き方向に配置された他のタンブラ21,22(図4及び図6参照)によって係合位置に保持されている。
【0037】
また、鍵孔11に挿入されていたキープレート5が抜出されると、キープレート5の挿入時において照合部21bに対応する位置に前記キープレート5のコード孔5aが配置される場合と同様に、第1タンブラ21は、キープレート5との係合を通じて時計回り方向へ回転する。そして、キープレート5が完全に引き抜かれてキープレート5と照合部21bとの間の係合が解除されると、第1タンブラ21は、捻りコイルばね23に蓄積された弾性力により、その照合部21bがキープレート5に係合可能な位置に配置されるように反時計回り方向へ回転して図7(a)に示す中立状態をとり、その凹部21cが係合部材収容部12に対応する位置に配置される。この状態において、第1タンブラ21は、係合部材13の係合位置から非係合位置への変位を許容する状態をとる。
【0038】
即ち、キープレート5が挿入されていない状態、又は挿入されたキープレート5のコード孔5aに照合部21bが対応した状態においては、第1タンブラ21は、係合部材13の非係合位置への変位を許容する。一方、挿入されたキープレート5のコード孔5aに対応しない部位に前記照合部21bが対応した状態においては、第1タンブラ21は、係合部材13の非係合位置への変位を規制する。
【0039】
また、図7(a)に示すように、第1タンブラ21が係合部材13の係合位置から非係合位置への変位を許容する状態をとるとともに係合部材13が同図7(a)に2点差線で示す非係合位置にある状態において第1タンブラ21が回転すると、係合部材13は、図7(b)に2点鎖線で示すように、凹部21cとの係合を通じて徐々に係合位置側へ変位する。そして、係合部材13は、凹部21cと第1タンブラ21の外周面21aとの境界を乗り越えて同第1タンブラ21の外周面21a上を摺動する。即ち、非係合位置に配置された係合部材13は、第1タンブラ21が図7(c)に示すように凹部21cが係合部材収容部12からずれる方向へ回転することによって係合位置に復帰する。
【0040】
図8(a)に示すように、第2タンブラ22は、前記第1タンブラ21と同様、前記回転軸16の軸方向(キープレート5の幅方向)から見て、略円形状に形成されている。第2タンブラ22は、当該第2タンブラ22の半径r1と係合部材13の直径D1との和が、第2タンブラ22の回転中心Oから前記ケース7側に設けられた係合凹部7dの底面7eまでの距離L1と等しくなるように設けられている。第2タンブラ22の外周面22aには、径方向外側に延びる1つの照合部22bが設けられている。照合部22bは回転軸16の軸方向から見て略三角形状に形成されており、その外側面は、当該照合部22bの先端側に向かうにつれてその幅方向内側へ傾斜している。また、照合部22bの第2タンブラ22の外周面22aからの突出量は、その先端部が、鍵孔11において各タンブラ収容部14に対向する部位に設けられた許容部11b内に配置されるように設定されている。即ち、照合部22bのタンブラ収容部14からの突出量はキープレート5の厚さdよりも大きくなっている。照合部22bは、第2タンブラ22の回転軸16を中心とした回転角度に応じてタンブラ収容部14内に配置されたり、同タンブラ収容部14から突出し鍵孔11内に配置されたりする。また、照合部22bは、第2タンブラ22の外周面22aに滑らかに連続している。第2タンブラ22の照合部22bは、鍵孔11に対するキープレート5の挿入方向から見て、前記第1タンブラ21の照合部21bと同一の形状となるように形成されている。このため、鍵孔11に対するキープレート5の挿入方向から見て、第1タンブラ21及び第2タンブラ22の判別が不能となっている。
【0041】
また、第2タンブラ22の外周面22aには、径方向外側に開口する凹部22cが設けられている。照合部22b及び凹部22cは、図8(a)において反時計回り方向側に、略135°の間隔で設けられている。凹部22cは、前記回転軸16の軸方向から見て、第2タンブラ22の回転中心O側に凸となる円弧状に形成されている。凹部22cは、当該凹部22cが係合部材収容部12に対応する位置に配置された場合に、前記係合部材13の前記非係合位置(図8(b)において2点鎖線にて示す)への変位を許容するように形成されている。また、第2タンブラ22の外周面22aから第2タンブラ22の回転中心Oまでの距離と凹部22cの底面から第2タンブラ22の回転中心Oまでの距離との差d1は、キープレート5の厚さd(図8(b)参照)と略等しく設定されている。
【0042】
第2タンブラ22は、捻りコイルばね23により、該鍵孔11に挿入されるキープレート5と係合可能な状態に保持されている。具体的には、鍵孔11にキープレート5が挿入されていない状態において、第2タンブラ22は、その照合部22bが前記鍵孔11を介して許容部11bに進入し、且つ、その凹部22cが前記係合部材収容部12に対応する中立状態に保持されている。捻りコイルばね23は、前記回転軸16を中心として巻き取られていない状態で、即ち、初期負荷を有していない状態で第2タンブラ22に固定されている。第2タンブラ22の照合部22bは、鍵孔11に挿入されたキープレート5と係合し、その挿入方向へ回転変位する。これにより、第2タンブラ22は、回転軸16を中心として回転する。
【0043】
第2タンブラ22は、挿入されたキープレート5のコード孔5aと照合部22bとの対応の有無に応じて、その外周面22aが係合部材収容部12に対応して係合部材13の係合位置から非係合位置への変位を規制する状態と、凹部22cが係合部材収容部12に対応して係合部材13の係合位置から非係合位置への変位を許容する状態とをとる。具体的には、同図8(a)に示すように、鍵孔11にキープレート5が挿入されていない状態において、第2タンブラ22は、前述した中立状態に保持されていることから、第2タンブラ22の凹部22cは前記係合部材収容部12からずれた位置に保持されている。この状態において、第2タンブラ22は、係合部材13の係合位置から非係合位置への変位を規制する状態をとる。
【0044】
第2タンブラ22が前記中立状態に保持されている状態において鍵孔11にキープレート5が挿入されると、図8(b)に示すように、第2タンブラ22の照合部22bが、挿入されたキープレート5と係合し、当該キープレート5に押圧されてその挿入方向に変位する。これにより、第2タンブラ22は、捻りコイルばね23の弾性力に抗して図8(b)において反時計回り方向へ回転する。このとき、第2タンブラ22が回転軸16を中心として回転することで捻りコイルばね23(図5参照)が巻き取られ、当該捻りコイルばね23に弾性力が蓄積される。
【0045】
図8(c)に示すように、キープレート5の挿入に伴い第2タンブラ22の照合部22bに対応する位置にキープレート5のコード孔5aが設けられていない部位が配置されると、第2タンブラ22の凹部22cが係合部材収容部12に対応する位置に配置される。また、照合部22bはキープレート5の先端から同キープレート5の上面に乗り移り、以後、キープレート5の挿入に伴い、キープレート5の上面を摺動する。即ち、第1タンブラ21は、第2タンブラ22の照合部22bに対応する位置にキープレート5のコード孔5aが設けられていない部位が配置されている間、所定の角度だけ回転した回転変位状態に保たれる。この状態において、第2タンブラ22は、係合部材13の係合位置から非係合位置への変位を許容する状態をとる。なお、図8(c)において、係合部材13は、同図8(c)において当該第2タンブラ22の紙面奥行き方向に配置された他のタンブラ21,22(図4及び図6参照)によって係合位置に保持されている。このとき、第2タンブラ22に対応する捻りコイルばね23は、一定の弾性力が蓄積された状態に保持される。なお、照合部22bの第2タンブラ22の外周面22aからの突出量は、キープレート5の厚さdよりも大きくなっているため、例えば照合部の突出量がキープレート5の厚さdと等しい、又は小さなタンブラと比較して照合部22bがキープレート5と係合することによる該照合部22bの回転変位量が大きくなる。これは、キープレート5の先端が照合部22bに係合している間は、同照合部22bはキープレート5の挿入方向に押されて第2タンブラ22が回転するからである。従って、第2タンブラ22が、図8(a)に示される中立状態から図8(c)に示される回転変位状態をとるまでの第2タンブラ22の回転角度が大きくなる。当該回転角度が大きくなるほど、第2タンブラ22の単位回転角度に対する係合部材13の凹部22cに沿った変位量を小さくすることができるため、係合部材13を当該第2タンブラ22の凹部22cに沿って緩やかに変位させることができる。このため、キープレート5の挿抜時における操作感が向上する。
【0046】
一方、図8(d)に示すように、キープレート5挿入に伴い照合部22bに対応する位置に前記キープレート5のコード孔5aが配置されると、キープレート5と照合部22bとの間の係合が解除され、第2タンブラ22が回転軸16を中心として回転可能となる。このため、第2タンブラ22は、捻りコイルばね23に蓄積された弾性力により、その照合部22bがキープレート5に係合可能な位置に配置されるように時計回り方向へ回転して中立状態をとり、その凹部22cが係合部材収容部12からずれた位置に配置される。この状態において、第2タンブラ22は、係合部材13の係合位置から非係合位置への変位を規制する状態をとる。
【0047】
また、鍵孔11に挿入されていたキープレート5が抜出されると、キープレート5の挿入時において照合部22bに対応する位置に前記キープレート5のコード孔5aが配置される場合と同様に、第2タンブラ22は、キープレート5との係合を通じて時計回り方向へ回転する。そして、キープレート5が完全に引き抜かれてキープレート5と照合部22bとの間の係合が解除されると、第2タンブラ22は、捻りコイルばね23に蓄積された弾性力により、その照合部22bがキープレート5に係合可能な位置に配置されるように反時計回り方向へ回転して図8(a)に示す中立状態をとり、その凹部22cが係合部材収容部12からずれた位置に配置される。この状態において、第2タンブラ22は、係合部材13の係合位置から非係合位置への変位を規制する状態をとる。
【0048】
即ち、キープレート5が挿入されていない状態、又は挿入されたキープレート5のコード孔5aに照合部22bが対応した状態においては、第2タンブラ22は、係合部材13の非係合位置への変位を規制する。一方、挿入されたキープレート5のコード孔5aに対応しない部位に前記照合部22bが対応した状態においては、第2タンブラ22は、係合部材13の非係合位置への変位を許容する。
【0049】
また、図8(c)に示すように、第2タンブラ22が係合部材13の係合位置から非係合位置への変位を許容する状態をとるとともに係合部材13が同図8(c)に2点差線で示す非係合位置にある状態において第2タンブラ22が回転すると、係合部材13は、図8(b)に2点鎖線で示すように、凹部22cとの係合を通じて徐々に係合位置側へ変位する。そして、係合部材13は、凹部22cと第2タンブラ22の外周面22aとの境界を乗り越えて同第2タンブラ22の外周面22a上を摺動する。即ち、非係合位置に配置された係合部材13は、第2タンブラ22が図8(a)に示すように凹部21cが係合部材収容部12からずれる方向へ回転することによって係合位置に復帰する。
【0050】
ここで、前述したように、係合部材13は略円柱状に形成されており、係合部材13の半径は、係合凹部7dの深さよりも大きくなるように設定されている(図5及び図6参照)。このため、係合部材13が係合位置にある状態において作動体10がキープレート5を介して前記操作方向へ押圧されると、係合部材13は、その中心よりもケース7側の外周面に同ケース7が係合することによって非係合位置側へ押圧される。即ち、作動体10がキープレート5を介して前記操作方向へ押圧されることにより、係合部材13が非係合位置側へ付勢される。
【0051】
このため、図9に示すように全てのタンブラ21,22によって係合部材13の係合位置から非係合位置への変位が許容されている状態において作動体10が操作されると、図10(a)及び図11(a)にそれぞれ示すように係合位置に配置された係合部材13がケース7に押圧されて図10(b)及び図11(b)にそれぞれ示す非係合位置へ変位する。これにより、作動体10のケース7に対する相対変位が許容される。一方、何れかのタンブラ21,22によって係合部材13の係合位置から非係合位置への変位が許容されていない状態において作動体10がキープレート5を介して前記操作方向へ押圧されると、係合部材13が係合位置から非係合位置へ変位しないため、同係合部材13が作動体10とケース7とに係合する。これにより、作動体10のケース7に対する相対変位が規制される。なお、各タンブラ21,22の外周面21a,22aから回転中心Oまでの距離と凹部21c,22cの底面から回転中心Oまでの距離との差d1が、係合部材13の変位量に相当する。
【0052】
次に、前述のように構成した錠装置とメカニカルキーとを協働させて施錠・解錠を行う場合の作用を説明する。
図6に示すように、錠装置6の鍵孔11にキープレート5が挿入されていない場合、第1タンブラ21は、捻りコイルばね23により、その凹部21cが係合部材収容部12に対応する位置に配置された中立状態に保持されている。また、第2タンブラ22は、捻りコイルばね23により、その凹部22cが係合部材収容部12からずれた位置に配置された状態に保持されている。これにより、係合部材収容部12に収容された係合部材13の非係合位置への変位が規制され、係合位置に保持される。このため、係合部材13を介して作動体10とケース7とが係合し、作動体10及びケース7の相対変位が規制される。よって、錠装置6の施解錠操作が規制される。
【0053】
錠装置6の鍵孔11に当該錠装置6に対応する正規のキープレート5が挿入されると、各タンブラ21,22の照合部21b,22bがキープレート5の先端部に押圧されてその挿入方向へ回転変位する。これにより、各タンブラ21,22は、回転軸16を中心として回転する。そして、図9に示すように、正規のキープレート5が鍵孔11の奥にある壁面11aに当接し完全に挿入された状態となると、当該キープレート5のコード孔5aが第1タンブラ21に対応する位置に配置される。このため、第1タンブラ21の照合部21bはキープレート5と係合しない状態となる。従って、第1タンブラ21は中立状態をとり、その凹部21cが係合部材収容部12に対応する位置に配置される。一方、鍵孔11に正規のキープレート5が完全に挿入されると、当該キープレート5のコード孔5aに対応しない部位が第2タンブラ22に対応する位置に配置される。このため、第2タンブラ22の照合部22bはキープレート5と係合した状態となる。従って、第2タンブラ22は回転変位状態をとり、その凹部22cが係合部材収容部12に対応する位置に配置される。即ち、鍵孔11に正規のキープレート5が挿入されることにより、全てのタンブラ21,22の凹部21c,22cが係合部材収容部12に対応する位置に配置され、係合部材13の非係合位置への変位が許容される。このため、この状態においてキープレート5を介して作動体10を操作すると、図10(a)及び図11(a)にそれぞれ示すように、係合部材13の中心よりもケース7側の外周面がケース7に押圧されて図7(a)及び図8(a)にそれぞれ示す係合位置から、図10(b)及び図11(b)にそれぞれ示す非係合位置へ変位する。即ち、係合部材13によるケース7と作動体10との係合が解除されて、作動体10のケース7に対する相対変位が許容され、錠装置6の施解錠操作が可能となる。
【0054】
錠装置6の鍵孔11からキープレート5が抜出されると、各タンブラ21,22はキープレート5の挿入時に捻りコイルばね23に蓄積された弾性力により、元の中立状態となるように回転する。各タンブラ21,22が図6に示す元の状態に復帰した状態においては、第2タンブラ22の凹部22cが係合部材収容部12からずれた位置に配置される。これにより、第2タンブラ22に対応する係合部材13の非係合位置への変位が規制され、同係合部材13は係合位置に配置された状態に保持される。このため、係合部材13を介して作動体10とケース7とが係合し、作動体10及びケース7の相対変位が規制される。よって、錠装置6の施解錠操作が規制される。
【0055】
なお、錠装置6の鍵孔11に不正なキープレートが挿入された場合、同キープレートのコード孔と該コード孔が設けられていない部位とが第1タンブラ21及び第2タンブラ22に対応していないので、タンブラ21,22の凹部21c,22cが全て係合部材収容部12に対応することはない。例えば、不正なキープレートとして板状の部材が挿入された場合、第1タンブラ21の凹部21cが係合部材収容部12からずれた位置に配置される。これにより、第1タンブラ21に対応する係合部材13の非係合位置への変位が規制され、同係合部材13は係合位置に配置された状態に保持される。このため、係合部材13を介して作動体10とケース7とが係合し、作動体10及びケース7の相対変位が規制される。よって、錠装置6の施解錠操作が規制される。
【0056】
次に、上記実施の形態の作用効果を以下に記載する。
(1)錠装置6のタンブラ21,22は、鍵孔11に挿入されるキープレート5の幅方向へ延びる回転軸16を中心として該キープレート5の挿抜方向に回転可能に軸支されているため、タンブラ21,22の照合部21b,22bは、挿入されたキープレート5との係合を通じて回転軸16を中心として当該タンブラ21,22と一体的に回転変位する。そして、タンブラ21,22は、挿入されたキープレート5のコード孔5aと照合部21b,22bとの対応の有無に応じて、その外周面21a,22aが係合部材収容部12に対応して係合部材13の係合位置から非係合位置への変位を規制する。これにより、係合部材13が作動体10の外部に突出してケース7に係合した状態に保持され、ケース7と作動体10との相対変位が不能となる。また、タンブラ21,22は、挿入されたキープレート5のコード孔5aと照合部21b,22bとの対応の有無に応じて、凹部21c,22cが係合部材収容部12に対応して係合部材13の係合位置から非係合位置への変位を許容する。これにより、係合部材13が作動体10の内側に配置されてケース7との係合が解除され、作動体10のケース7に対する相対変位が可能となる。即ち、キープレート5の厚みが、係合部材13のケース7側への突出量、言い換えれば、ケース7及び作動体10の間の係合力に何ら影響を及ぼさない。よって、キープレート5の厚さdをより一層薄くした場合でもケース7と作動体10とを確実に係合させることが可能となり、メカニカルキー(キープレート5)のより一層の薄型化を図ることができる。
【0057】
(2)また、この錠装置6では、照合部21b,22bがキープレート5に係合可能な位置に配置されるようにタンブラ21,22を回転させる捻りコイルばね23がタンブラ21,22の軸方向に配置される。このため、施錠ピン56a,56bと該施錠ピン56a,56bを付勢するばね57とがキープレート5の厚さ方向に並んで配置される従来の錠装置(図12参照)よりも、錠装置6の薄型化を図ることができる。
【0058】
(3)また、この錠装置6では、作動体10が操作されることにより、係合位置に配置された係合部材13がケース7に押圧されて非係合位置側へ変位するように構成されている。ここで、例えば、係合部材13の自重のみによって同係合部材13が非係合位置へ変位するように構成されている場合、係合部材13がタンブラ21,22よりも常に鉛直方向上側に配置されるよう錠装置6を設置しなければならないため、設置する際の錠装置の姿勢が限定されてしまう。この点、本実施の形態によれば、作動体10が操作されることにより係合位置に配置された係合部材13がケース7に押圧されて非係合位置側へ変位するため、設置する際の錠装置6の姿勢が限定されない。
【0059】
(4)錠装置6は、鍵孔11に挿入される正規のキープレート5のコード孔5aに対応する位置に配置される第1タンブラ21と、当該正規のキープレート5のコード孔5aに対応しない位置に配置される第2タンブラ22とを備えている。このため、第1タンブラ21及び第2タンブラ22の組み合わせや配置を変更することにより、複数種類のキーコードを当該錠装置6に対応するキーコードとして設定することができる。
【0060】
また、第2タンブラ22は、中立状態においてケース7と作動体10とを係合させるため、当該第2タンブラ22によって、鍵孔11にキープレート5が挿入されていない状態における作動体10のケース7に対する相対変位が規制される。従って、鍵孔11に正規のキープレート5が挿入されていない状態で作動体10のケース7に対する相対変位が許容されることはない。また、不正なキープレートが挿入された場合には、同キープレートのコード孔と該コード孔が設けられていない部位とが、第1タンブラ21及び第2タンブラ22に対応していないので、作動体10のケース7に対する相対変位が規制される。以上のことから、錠装置6のセキュリティ性が向上する。
【0061】
(5)照合部21b,22bのタンブラ21,22の回転方向にある側面は、回転軸16の軸方向から見て当該照合部21b,22bの先端側に向かうにつれてその幅方向内側へ傾斜するため、タンブラ21,22の照合部21b,22bとキープレート5とを滑らかに係合させることが可能となり、キープレート5の挿抜時における操作感を向上させることができる。
【0062】
(6)各タンブラ21,22は、鍵孔11に対するキープレート5の挿入方向からみて照合部21b,22bの形状が一致するように形成されたため、鍵孔11から覗いても照合部21b,22bを判別することはできない。また、タンブラ21,22が中立状態にあるときは、いずれの照合部21b,22bも鍵孔11を介して許容部11bに進入した状態に保たれる。このため、当該照合部21b,22bの状態から、これらに対応するタンブラ21,22によるケース7と作動体10との係合状態を判別することができない。このため、錠装置6のセキュリティ性が向上する。
【0063】
(7)キープレート5は全体としてカード状に形成されるため、キープレート5の携帯性が向上する。
(8)鍵孔11において照合部21b,22bに対応する部位に照合部21b,22bの回転変位を許容する許容部11bを設けたため、照合部21b,22bのタンブラ21,22の外周面21a,22aからの突出量をキープレート5の厚さdよりも大きく設定することができる。各タンブラ21,22の照合部21b,22bの突出量が大きくなると、照合部21b,22bがキープレート5と係合することによる該照合部21b,22bの回転変位量が大きくなるため、各タンブラ21,22の照合部21b,22bが中立状態から回転変位状態になるまでの各タンブラ21,22の回転角度を大きくすることができる。当該回転角度が大きくなるほど、各タンブラ21,22の単位回転角度に対する係合部材13の凹部21c,22cに沿った変位量を小さくすることができるため、係合部材を当該各タンブラ21,22の凹部21c,22cに沿って緩やかに変位させることができる。よって、キープレート5の挿抜時における操作感を向上させることができる。
【0064】
(8)1つの係合部材13に、複数のタンブラ21,22が対応しているため、同係合部材13に対応する何れか1つのタンブラ21,22によって係合部材13の非係合位置への変位が規制されていれば、該係合部材13により作動体10とケース7とが係合した状態となる。このため、各タンブラ21,22の状態から作動体10及びケース7の係合状態を判別し難くなるため、例えばピッキングによって当該錠装置6が不正に解錠され難くなり、セキュリティ性が向上する。
【0065】
(9)上述した錠装置6を採用することにより携帯機2のキー収容部に収容されるメカニカルキーの薄型化が図られる。このため、携帯機2の小型化が可能となり、携帯機2の携帯性を向上させることができる。
【0066】
(10)キープレート5を樹脂材料から形成したため、当該キープレート5を携帯機2において送信アンテナなどが実装された回路基板2aと重ねて配置した場合であれ携帯機2の通信特性が確保される。このため、設計の自由度が向上する。なお、この場合、上述したようにキープレート5の薄型化が図られているため、回路基板2aと重ねて配置しても携帯機2が大幅に厚くなってしまうことはない。
【0067】
(11)2つのタンブラ(第1タンブラ21若しくは第2タンブラ22)を1つの捻りコイルばね23によって該鍵孔11に挿入されるキープレート5と係合可能な状態に保持するようにしたため、部品点数を削減することができる。
【0068】
尚、本実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、ケース7の係合凹部7dを、直線状に形成したが、例えば、係合凹部7dを、作動体10に設けられたタンブラ収容部14と対応する位置に点在させてもよい。また、この場合、係合部材13を球状に形成してもよい。
【0069】
・上記実施の形態では、キープレート5に10個のコード孔5aを設け、作動体10に20個のタンブラ収容部14を設けたが、コード孔5aに対応する位置に第1タンブラ21を配置し、コード孔5aに対応しない位置に第2タンブラ22を配置すれば、コード孔5a及びタンブラ収容部14の数は、製品仕様等に応じて適宜変更可能である。また、キープレート5のコード孔5a及びタンブラ収容部14を千鳥格子状に配置してもよい。このように配置すれば、コード孔5aをより密に配置することができるため、キープレート5の小型化、ひいては携帯機2の小型化に貢献することができる。
【0070】
・上記実施の形態では、2つのタンブラ(第1タンブラ21若しくは第2タンブラ22)を1つの捻りコイルばね23によって該鍵孔11に挿入されるキープレート5と係合可能な状態に保持したが、2つのタンブラを2つの捻りコイルばね23によって該鍵孔11に挿入されるキープレート5と係合可能な状態に保持してもよい。
【0071】
・上記実施の形態では、2種類のタンブラ(第1タンブラ21及び第2タンブラ22)を設けたが、例えば、タンブラ収容部から係合部が突出するタンブラの回転角度がそれぞれ異なる3種類以上のタンブラを設けてもよい。また、キープレート5が挿入されていない状態において作動体10とケース7とを係合させる第2タンブラ22のみを設けてもよい。
【0072】
・上記実施の形態では、第1タンブラ21の照合部21bと、第2タンブラ22の照合部22bとが、鍵孔11に対するキープレート5の挿入方向から見て同一の形状となるように形成したが、異なるように形成してもよい。
【0073】
・上記実施の形態では、第1タンブラ21及び第2タンブラ22の照合部21b,22bの側面を傾斜させたが、曲面状に形成してもよい。
・上記実施の形態では、回転軸16を作動体10に対して回転可能に設けたが、回転軸16を作動体10に対して固定してもよい。
【0074】
・上記実施の形態では、1つの回転軸16により複数個のタンブラ21,22を支持したが、1つの回転軸により1つのタンブラ21,22を個別に支持してもよい。
・上記実施の形態では、回転軸16によって各タンブラ21,22を回転可能に支持したが、このような態様に限定されない。例えば、タンブラ収容部14の内側面を各タンブラ21,22の外周面21a,22aに対応する円弧状に形成し、当該タンブラ収容部14により各タンブラ21,22を回転可能に支持してもよい。
【0075】
・上記実施の形態では、各タンブラ21,22を、当該タンブラ21,22の半径r1と係合部材13の直径D1との和が、タンブラ21,22の回転中心Oからケース7側に設けられた係合凹部7dの底面7eまでの距離L1と等しくなるように形成したが、このような態様に限定されない。各タンブラ21,22の形状や係合凹部7dの形状は、係合部材13がケース7に対する作動体10の相対変位に伴いケース7に押圧されて係合位置から非係合位置へ変位するような形状であれば適宜変更可能である。
【0076】
・上記実施の形態では、作動体10が操作されることにより係合部材13がケース7によって非係合位置側へ付勢されるよう、係合部材13をキープレート5の挿入方向に直交する方向に延びる略円柱状に形成するとともに、同係合部材13の半径が、係合凹部7dの深さよりも大きくなるように設定にしたが、このような態様に限定されない。例えば、係合凹部7dの底面をキープレート5の挿入方向に直交する方向から見て円弧状に形成すれば、係合部材13を直方体状に形成してもよい。また、上記実施の形態では、係合部材13がケース7によって非係合位置側へ付勢されることで同係合部材13が非係合位置へ変位するようにしたが、このような態様に限定されない。例えば、係合部材13の自重によって同係合部材13が非係合位置へ変位するようにしてもよい。なお、この場合、係合部材13がタンブラ21,22よりも常に鉛直方向上側に配置されるよう錠装置を設置する。
【0077】
・上記実施の形態では、各タンブラ21,22の凹部21c,22cを回転軸16の軸方向から見て曲面状に形成したが、各タンブラ21,22の回転角度に応じて係合部材13を係合位置と非係合位置との間で変位させることが可能な形状であれば、凹部21c,22cの底面を平面状に形成してもよく、適宜変更可能である。
【0078】
・上記実施の形態では、キーコードとして当該キープレート5を厚さ方向に貫通するコード孔5aを設けたが、コード孔5aは貫通していなくてもよい。
・上記実施の形態では、キープレート5を全体として長方形の板状に形成したが、例えば、キープレート5の一端に把持部材を設けてもよい。この場合、例えば作動体10の鍵孔11の開口部にキープレート5の把持部材を嵌着可能とし当該把持部を介して作動体10を操作することが可能な構成とする。このようにすれば、操作力の伝達は把持部材と作動体10との間で行われ、キープレート5自体はほとんど関与しない。よって、キープレート5のより一層の薄型化を図ることができる。
【0079】
・上記実施の形態では、キープレート5のコード孔5aは、キープレート5の板厚方向から見て同キープレート5の長手方向に延びる長方形状に形成したが、該コード孔5aに対応する部位において各タンブラ21,22の照合部21b,22bがキープレート5に係合しないような形状であれば、楕円状に形成してもよく、また円状に形成してもよい。
【0080】
・上記実施の形態では、キープレート5を樹脂材料から形成したが、金属などから形成してもよい。なお、この場合、携帯機2においてキープレート5と回路基板2aとの相対位置関係については適宜調整することも可能である。
【0081】
・上記実施の形態では、携帯機2のキー収容部2bに収容可能なメカニカルキー(キープレート5)として具体化したが、携帯機2に収容されないメカニカルキーに具体化してもよい。また、上記実施の形態では、キープレート5は、直方体状に形成された携帯機2に収容されようにしたが、カード状に形成された携帯機に収容されるメカニカルキーに具体化してもよい。また、樹脂材料からカード状に形成したメカニカルキーに制御装置4との間で無線通信を行うためのICチップ及びアンテナを搭載し、当該メカニカルキー自身を上記実施の形態における携帯機2として機能させてもよい。この場合、ユーザはカード状のメカニカルキーのみを携帯することで、車両に触れることなくドア錠4aの施錠・解錠を行うことができる。従って、利便性が向上する。
【0082】
・上記実施の形態では、作動体10が鍵孔11に対するキープレート5の挿入方向に沿った操作方向へ押圧操作されるとドア錠4aが施錠・解錠される錠装置6に具体化したが、作動体10が前記スリット7bの長手方向に沿った操作方向へスライド操作されるとドア錠4aが施錠・解錠される錠装置に具体化してもよい。
【0083】
また、上記実施の形態では、作動体10をケース7に対して直線状にスライド操作することによりドア錠4aが施錠・解錠される錠装置6に具体化したが、作動体をケースに対して、それらの厚さ方向へ延びる中心軸を中心として略円弧状にスライド操作することによりドア錠4aが施錠・解錠される錠装置に具体化してもよい。また、作動体としての内筒(ロータ)をケースとしての外筒(シリンダ)に対して回動操作することによりドア錠4aの施錠・解錠が行われるシリンダ錠に具体化してもよい。
【0084】
・上記実施の形態では、ケース7の作動体収容部7cに作動体10を収容したが、例えば、ケースの外側面に対して作動体10を相対変位可能に設けてもよい。
・上記実施の形態では、車両との無線通信を通じてドア錠を施錠・解錠する電子キーシステムに具体化したが、住宅用の電子キーシステムに具体化してもよい。
【0085】
次に、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)前記タンブラの前記回転軸の軸方向側に配置され、前記照合部が回転変位した場合に該照合部が挿入されるキープレートに係合可能な位置に配置されるように前記タンブラを付勢する付勢手段を備えたことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の錠装置。本思想によれば、従来の錠装置と比較して、錠装置6の薄型化を図ることができる。
【0086】
(ロ)前記タンブラの外周面から前記回転軸までの距離と前記凹部の底面から前記回転軸までの距離との差は、照合部の前記鍵孔側への突出量よりも大きく設定されたことを特徴とする請求項1〜5及び上記(イ)の何れか1項に記載の錠装置。本思想によれば、タンブラの外周面から回転軸までの距離と凹部の底面から回転軸までの距離との差が、照合部の鍵孔側への突出量よりも大きく設定されているため、係合部材の変位量を大きくすることができる。このため、係合部材のケース側への突出量を大きくすることが可能となり、ケースと作動体とをより確実に係合させることができる。
【0087】
(ハ)前記鍵孔において前記照合部に対応する部位には、前記鍵孔に前記キープレートが挿入されていない状態において前記照合部の先端部が配置され、当該照合部の回転変位を許容する許容部が設けられたことを特徴とする請求項1〜5及び上記(イ)及び(ロ)の何れか1項に記載の錠装置。本思想によれば、タンブラの照合部の突出量をキープレートの厚さよりも大きく設定することができる。タンブラの照合部の突出量が大きくなると、照合部がキープレートと係合することによる該照合部の回転変位量が大きくなるため、タンブラの照合部が中立状態から回転変位状態になるまでのタンブラの回転角度を大きくすることができる。タンブラの照合部が中立状態から回転変位状態になるまでのタンブラの回転角度が大きくなるほど、タンブラの単位回転角度に対する係合部材の凹部に沿った変位量を小さくすることができるため、係合部材を当該タンブラの凹部に沿って緩やかに変位させることができる。よって、キープレート5の挿抜時における操作感を向上させることができる。
【0088】
(ニ)無線通信を通じてロック装置の施錠・解錠が可能とされた携帯機において、請求項1〜5及び上記(イ)〜(ハ)の何れか1項に記載の錠装置と協働して前記ロック装置の施錠・解錠を行うキープレートを収容するキー収容部を備えたことを特徴とする携帯機。本発明によれば、上述した錠装置を採用することにより携帯機のキー収容部に収容されるメカニカルキーの薄型化が図られる。このため、携帯機の小型化が可能となり、携帯機の携帯性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0089】
5…キープレート、5a…コード孔、6…錠装置、7…ケース、10…作動体、11…鍵孔、12…係合部材収容部、13…係合部材、14…タンブラ収容部、16…回転軸、21…タンブラとしての第1タンブラ、21a…外周面、21b…照合部、21c…凹部、22…タンブラとしての第2タンブラ、22a…外周面、22b…照合部、22c…凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置対象に固定されるケースと、キーコードとして複数のコード孔が形成されたキープレートが挿入される鍵孔を備えるとともに該ケースに対して相対変位可能に設けられた作動体と、前記作動体に設けられ前記鍵孔に正規のキープレートが挿入されていない状態において前記ケースと前記作動体とを係合させて前記作動体の前記ケースに対する相対変位を規制する複数のタンブラとを備え、前記鍵孔に挿入される正規のキープレートのコード孔と前記タンブラとの係合状態に応じて、前記タンブラによる前記作動体と前記ケースとの係合が解除されて当該作動体の前記ケースに対する相対変位を許容する錠装置であって、
前記作動体は、前記鍵孔に挿入される前記キープレートの厚さ方向において前記ケース側に開口する係合部材収容部と、該係合部材収容部に沿って、前記作動体の外部に突出して前記ケースに係合することにより前記作動体の前記ケースに対する相対変位を規制する係合位置と、前記作動体の内側に配置されて前記ケースとの係合が解除されることにより前記作動体の前記ケースに対する相対変位を許容する非係合位置との間を変位可能に設けられる係合部材と、前記鍵孔に挿入されるキープレートの厚さ方向において前記係合部材収容部と前記鍵孔とを連通するタンブラ収容部とを備え、
前記タンブラは、前記タンブラ収容部に、前記鍵孔に挿入される前記キープレートの幅方向へ延びる回転軸を中心として回転可能に設けられるとともに、その外周面には、前記係合部材が進入可能とされた凹部、及び、前記コード孔に対応可能とされて前記キープレートの前記鍵孔に対する非挿入状態にあっては挿入されるキープレートに係合可能に対応する一方、挿入されたキープレートとの係合を通じて前記回転軸を中心として当該タンブラと一体的に回転変位する照合部を設け、
前記タンブラは、挿入されたキープレートのコード孔と前記照合部との対応の有無に応じて、その外周面が前記係合部材収容部に対応して前記係合部材の前記係合位置から前記非係合位置への変位を規制する状態と、前記凹部が前記係合部材収容部に対応して前記係合部材の前記係合位置から前記非係合位置への変位を許容する状態とをとることを特徴とする錠装置。
【請求項2】
複数の前記タンブラは、前記鍵孔に挿入される正規のキープレートの前記コード孔に対応する位置に配置される第1タンブラと、当該正規のキープレートの前記コード孔に対応しない位置に配置される第2タンブラとを含み、
前記第1タンブラは、前記キープレートが挿入されていない状態、又は挿入されたキープレートのコード孔に前記照合部が対応した状態においては、当該第1タンブラの照合部が、挿入されるキープレートに係合可能に対応するとともに、当該第1タンブラの凹部が、前記係合部材収容部に対応する位置に配置される中立状態に保持され、挿入されたキープレートのコード孔に対応しない部位に前記照合部が対応した状態においては、前記照合部が、回転変位状態をとるとともに、前記凹部が、前記係合部材収容部からずれた位置に配置され、
前記第2タンブラは、前記キープレートが挿入されていない状態、又は挿入されたキープレートのコード孔に前記照合部が対応した状態においては、当該第2タンブラの照合部が、挿入されるキープレートに係合可能に対応するとともに、当該第2タンブラの凹部が、前記係合部材収容部からずれた位置に配置される中立状態に保持され、挿入されたキープレートのコード孔に対応しない部位に前記照合部が対応した状態においては、前記照合部が、回転変位状態をとるとともに、前記凹部が、前記係合部材収容部に対応する位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の錠装置。
【請求項3】
前記照合部の前記タンブラの回転方向にある側面は、前記回転軸の軸方向から見て当該照合部の先端側に向かうにつれてその幅方向内側へ傾斜することを特徴とする請求項1又は2に記載の錠装置。
【請求項4】
前記鍵孔に対する前記キープレートの挿入方向からみて前記照合部の形状が一致するように形成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の錠装置。
【請求項5】
前記キープレートは、全体としてカード状に形成されたカード型キーであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−80318(P2011−80318A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235228(P2009−235228)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】