説明

鎮痛用組成物

【課題】イブプロフェン等のプロピオン酸系鎮痛剤が示す鎮痛作用を増強し、かつ安全性に優れた鎮痛用組成物を提供すること。
【解決手段】プロピオン酸系鎮痛剤と2種以上のビタミンB類を含有する。前記ビタミンB類の配合量は前記プロピオン酸系鎮痛剤1重量部に対して総量で0.001〜100重量部であることが好ましい。前記プロピオン酸系鎮痛剤がイブプロフェンであることが好ましく、前記ビタミンB類が、少なくともビタミンB12又は葉酸を含有するものであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イブプロフェン等のプロピオン酸系鎮痛剤を配合してなる鎮痛用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
「痛み」は外部からの侵害刺激があったり、生体が病的状態にあるときに、組織障害の有無に関わらず生じる感覚であるが、大変不快な感覚であり、不快な情動を伴う体験である。生体の警告系として重要ではあるが「痛みの悪循環」を引き起こすので、適切な鎮痛処置が必要とされる。このような鎮痛処置には、種々の抗炎症剤や鎮痛剤等が使用されている。
【0003】
なかでも、プロピオン酸系鎮痛剤に分類されるイブプロフェンは、非ステロイド系の抗炎症・解熱・鎮痛剤として世界的に最も汎用されている薬剤のひとつである。作用機序はと同様で、オキナーゼの働きを止めることでプロスタン合成を阻害し、炎症や痛みを鎮める。その作用はアスピリンよりも強いとされており、抗炎症・鎮痛・解熱効果のバランスがよいことから、かぜに伴う熱や痛み、鼻、のどの炎症症状を静めるのに効果的であり、市販の風邪薬にも多く配合されている。さらに、リウマチ性の疾患や、頭痛、腰痛、関節痛、神経痛、腱鞘炎、月経痛等にも有効であることが知られている。しかしながら、それでもその作用は緩和なものであり、胃粘膜に対する副作用等も知られていることから、快適な治療ができるものとは言い難く、改善が望まれている成分である。
【0004】
従来より、イブプロフェンの薬効を向上させるために、イブプロフェンと他の成分との組み合わせが種々検討されている。例えば、特許文献1及び2では、イブプロフェンに対してトラネキサム酸を組み合わせることにより優れた鎮痛作用が得られることが記載されている。
【特許文献1】特開平9−48728号公報
【特許文献2】特開2005−187328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、他の成分との併用によるイブプロフェンの鎮痛作用の増強は必ずしも十分なものではなかった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、イブプロフェン等のプロピオン酸系鎮痛剤が示す鎮痛作用を増強し、かつ安全性に優れた鎮痛用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、イブプロフェン等のプロピオン酸系鎮痛剤を2種以上のビタミンB類と組み合わせて用いることにより前者が持つ鎮痛作用が増大することを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち本発明は、プロピオン酸系鎮痛剤と2種以上のビタミンB類とを含有することを特徴とする鎮痛用組成物である。
【0009】
本発明において、前記ビタミンB類の配合量は、前記プロピオン酸系鎮痛剤1重量部に対して、総量で0.001〜100重量部であることが好ましい。また、前記プロピオン酸系鎮痛剤がイブプロフェンであることが好ましく、前記ビタミンB類が、少なくともビタミンB12又は葉酸を含有するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の鎮痛用組成物は、イブプロフェン等のプロピオン酸系鎮痛剤が持つ鎮痛作用を増強することができ、かつ安全性の高いものである。鎮痛作用が増強するのでプロピオン酸系鎮痛剤の投与量を抑制することができ、その副作用を低減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の鎮痛用組成物は、少なくとも、プロピオン酸系鎮痛剤と2種以上のビタミンB類を含有するものである。本発明においては2種以上のビタミンB類の併用によって、プロピオン酸系鎮痛剤が持つ鎮痛作用が増強される。
【0013】
プロピオン酸系鎮痛剤とは、非ステロイド系の鎮痛剤のうちプロピオン酸類、具体的にはフェニルプロピオン酸類に属する薬剤である。特に限定されないが、例えば、イブプロフェン、アルミノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ザルトプロフェン、ナプロキセン、プラノプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム、オキサプロジン、チアプロフェン酸、ナブメトン、ナプロキセン、フェノプロフェンカルシウム等が挙げられる。これらは単独でも用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、イブプロフェンが好ましい。
【0014】
本発明の鎮痛用組成物を処方するに際して、プロピオン酸系鎮痛剤の投与量は、薬効を奏するものであれば特に限定されないが、公知の鎮痛用組成物におけるプロピオン酸系鎮痛剤の投与量と同程度のものであってよい。例えば、体重60kgの成人1人あたりへの投与量は、約60〜3210mg/日であり、好ましくは60〜1800mg/日、より好ましくは60〜600mg/日、さらに好ましくは100〜450mg/日である。また、本発明は2種以上のビタミンB類との併用によって薬効を増強するものであるから、プロピオン酸系鎮痛剤の投与量を抑制することも可能になる。これによって、胃粘膜への悪影響、発疹、喘息、肝機能や腎機能の低下、ショック症状など、プロピオン酸系鎮痛剤が示す副作用を低減することができる。
【0015】
ビタミンB類とは、水溶性ビタミンに分類され、確たる副作用や併用禁忌が知られていない栄養素である。よって、本発明の鎮痛用組成物はきわめて安全性が高いものである。ビタミンB類としては特に限定されないが、例えば、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ナイアシン、ビオチン、パントテン酸等が挙げられる。
【0016】
ビタミンB1としては特に限定されないが、例えば、塩酸チアミン、硫酸チアミン、硝酸ビスチアミン、チアミンジスルフィド、チアミンジセチル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0017】
ビタミンB2としては特に限定されないが、例えば、リボフラビン、酪酸リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム等が挙げられる。
【0018】
ビタミンB6としては特に限定されないが、例えば、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール等が挙げられる。
【0019】
ビタミンB12はコリン環の中にコバルトイオンを含む構造を持つ水溶性ビタミンである。ビタミンB12としては、コバルトイオンに対する配位子の種類によってシアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、アデノシルコバラミン、メチルコバラミン、アココバラミン、ニトリトコバラミン、スルフィトコバラミン等が存在することが知られているが、本発明でもいずれの形態をも用いることができる。また、これら化合物の有機塩又は無機塩もビタミンB12として用いることができる。好ましくは、シアノコバラミン、メチルコバラミン(メコバラミン)、酢酸ヒドロキソコバラミン、塩酸ヒドロキソコバラミンである。
【0020】
葉酸とは、水溶性ビタミンB群の1種であり、プテロイルグルタミン酸である。
【0021】
ナイアシンとしては特に限定されないが、例えば、ニコチン酸、ニコチン酸アミド等が挙げられる。
【0022】
パントテン酸としては特に限定されないが、例えば、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0023】
これらの配合量は本発明の効果を奏する限り、限定されるものではないが、例えば、体重60kgの成人1人あたりへの投与量は、ビタミンB1は1〜60mg/日、ビタミンB2は1〜60mg/日、ビタミンB6は0.5〜120mg/日、ビタミンB12は0.025〜1500mg/日、葉酸は1〜2000mg/日、ナイアシンは1〜60mg/日、ビオチンは10μg〜15mg/日およびパントテン酸は1〜60mg/日である。
【0024】
本発明ではこれらのビタミンB類を少なくとも2種類併用する。2種類のみの併用でもよいし、3種類の併用でもよいし、それ以上の併用であってもよい。本発明の鎮痛用組成物におけるビタミンB類の合計配合量は特に限定されない。例えば、体重60kgの成人1人あたりへの投与量は、1〜3500mg/日が挙げられる。
【0025】
本発明の鎮痛用組成物におけるビタミンB類の配合割合としては、プロピオン酸系鎮痛剤の合計配合量を1重量部とした場合に、例えば、総量で0.001〜100重量部の範囲が好ましく、0.002〜40重量部の範囲がより好ましく、0.004〜25量部の範囲がさらに好ましい。これらの範囲内であれば、プロピオン酸系鎮痛剤の薬効を好ましく増強することができる。
【0026】
本発明において、2種類以上のビタミンB類を組み合わせて配合することにより効果を奏する。好ましくは少なくともビタミンB12又は葉酸を配合することであり、より好ましくは少なくともビタミンB12及び葉酸を配合することである。これによって、プロピオン酸系鎮痛剤の薬効をより強力に増強することができる。この際更に他のビタミンB類(ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシン、ビオチン、及びパントテン酸からなる群より選択される少なくとも1種)を併用してもよい。
【0027】
ビタミンB類としてビタミンB12を配合する場合、ビタミンB12とプロピオン酸系鎮痛剤との配合割合は特に限定されないが、プロピオン酸系鎮痛剤1重量部に対して、ビタミンB12を、例えば0.00006〜5重量部の範囲とすることが好ましく、0.00011〜3.5重量部がより好ましく、0.001〜3.5重量部の範囲がさらに好ましく、1〜3.5重量部の範囲が特に好ましい。この範囲内であれば、プロピオン酸系鎮痛剤の薬効を好ましく増強することができる。
【0028】
また、ビタミンB12と葉酸とを組み合わせて配合する場合、その配合割合は特に限定されないが、葉酸1重量部に対して、ビタミンB12を、例えば、0.0000125〜1500重量部の範囲とすることが好ましく、0.0125〜500重量部の範囲がより好ましく、0.0125〜50重量部の範囲がさらに好ましく、0.5〜10重量部の範囲がさらにより好ましく、0.5〜5重量部の範囲が特に好ましい。この範囲内であれば、プロピオン酸系鎮痛剤の薬効を好ましく増強することができる。
【0029】
本発明の鎮痛用組成物には、ビタミンB類以外のビタミン群を配合してもよい。そのようなビタミン群としては、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK等が挙げられる。
【0030】
ビタミンAとしては特に限定されないが、例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、ビタミンA油、肝油、強肝油等が挙げられる。
【0031】
ビタミンCとしては特に限定されないが、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0032】
ビタミンDとしては特に限定されないが、例えば、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等が挙げられる。
【0033】
ビタミンEとしては特に限定されないが、例えば、酢酸d−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸d−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム、d−α−トコフェロール、dl−α−トコフェロール等が挙げられる。
【0034】
これらのビタミン類は単独でも用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの配合量は本発明の効果を奏する限り、限定されるものではないが、例えば、体重60kgの成人1人あたりへの投与量は、ビタミンAは国際単位で250〜5000IU/日、ビタミンCは50〜3000mg/日、ビタミンDは国際単位で、50〜500IU/日、ビタミンEは10〜500mg/日、ビタミンKは30μg〜50mg/日である。
【0035】
本発明の鎮痛用組成物には、以下のような薬剤を配合してもよい。アセトアミノフェン、アスピリン、イソプロピルアンチピリン、エテンザミド等の解熱鎮痛剤;塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、ノスカピン、塩酸ブロムヘキシン、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、臭化水素酸デキストロメトルファン、ヒベンズ酸チペピジン、リン酸ジメモルファン等の鎮咳剤;グアヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネシン、塩化アンモニウム等の去痰剤;フマル酸クレマスチン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、メキタジン等の抗ヒスタミン剤;ヨウ化イソプロパミド等の鼻水分泌抑制剤;塩化リゾチーム等の消炎酵素剤;グリチルレチン酸、グリチルリチン酸等の抗炎症剤;シャクヤクエキス、マオウエキス、ナンテンジツエキス、オウヒエキス、カンゾウエキス、キキョウエキス、ウイキョウエキス、オウバクエキス、ケイヒエキス、ゲンチアナエキス、ゴオウエキス、ショウキョウエキス、チョウジエキス、ビャクジュツエキス、地竜エキス、チクセツニンジンエキス、エキスニンジンエキス等の生薬;イソロイシン、フェニルアラニン、システイン等のアミノ酸;ブロムワレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素等の鎮静剤;カフェイン、無水カフェイン等の鎮痛・眠気除去剤;乾燥水酸化アルミニウムゲル、酸化マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等の胃粘膜保護剤、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のムコ多糖類。
【0036】
本発明の鎮痛用組成物を投与する経路としては特に限定されないが、経口投与、舌下投与、経直腸投与、経皮投与、吸入、局所投与、注射(動脈内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、髄腔内等)等が挙げられるが、経口投与や、経直腸投与(坐薬)が好ましい。
【0037】
経口投与の場合の剤型としては、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の固体製剤、シロップ剤等の液体製剤等が挙げられる。これらの製剤は常法により調製することができる。
【0038】
固体製剤の場合、糖衣、フィルムコート等の剤皮を施すことができる。フィルムコートは、服用しやすさに配慮しながら、安定性等を高めることができる。この場合、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール等の高分子および酸化チタン、タルク等の粉成分を溶媒に混和したものをフィルムコート剤として使用でき、滑沢剤としてカルナウバロウ、パームロウ、パラフィンワックス等を使用できる。本発明では当該溶媒として、水および1種又は2種以上のアルコール類を組み合わせて使用することが好ましく、溶媒中にアルコール類を50重量%以上の割合で含有することがより好ましく、50〜95重量%の割合で含有することがさらに好ましい。アルコール類としてはエタノールが好ましい。コーティングの方法としては特に限られるものではないが、噴霧コーティングが特に好ましい方法である。これにより、本発明の鎮痛用組成物の製剤安定性を高めることができる。
【0039】
固体製剤の調製に使用可能な成分としては、例えば、乳糖、デンプン、マンニトール、結晶セルロース、クロスポビドン等の賦形剤;ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム等の結合剤;カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン又はその架橋体、低置換ヒドロキシプロピルセルロース等の崩壊剤;ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ジメチルポリシロキサン、タルク、ポリエチレングリコール、硬化油等の滑沢剤;タール系色素、銅クロロフィリンナトリウム等の着色剤、キシリトール、サッカリンナトリウム、アスパルテーム等の甘味剤等が挙げられる。また、必要に応じて、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、オイドラギット、ポリエチレングリコール、セラック、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート等のコーティング剤を用いてコーティングを施してもよいし、ショ糖、アラビアゴム、炭酸カルシウム、タルク、ゼラチン等を用いて糖衣を施してもよい。
【0040】
液体製剤の調剤に使用可能な成分としては、例えば、精製水、グリセリン、ショ糖、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、メタ水酸化アルミニウム、寒天、トラガントガム、エタノール等の溶解補助剤、リン酸塩等の緩衝剤、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル等の保存剤、香料、着色剤、D−ソルビトール、白糖等の矯味剤、キサンタンガム等の増粘剤等が挙げられる。
【0041】
また、本発明の鎮痛用組成物は配合剤であってもよいし、2以上の薬剤とからなるキットであってもよい。
【0042】
さらに、本発明の鎮痛用組成物はアルミニウム等の遮光性のある包剤に充填されていてもよいし、窒素置換充填等を行ってもよい。
【0043】
本発明の鎮痛用組成物は、身体的な痛みを軽減又は消散するために使用できるものである。そのような身体的な痛みとしては外因性化学刺激に伴うものであってもよいし、炎症に起因するものであってもよいし、炎症に起因しないものであってもよい。本発明の鎮痛用組成物で治療可能な痛みとしては、例えば、神経痛、関節痛、腰痛、筋肉痛、肩こり痛、骨折痛、打撲痛、ねんざ痛、外傷痛、頭痛、歯痛、抜歯後又は手術後の疼痛、咽頭痛、耳痛、月経痛、痛風、リウマチ性疾患における痛み、炎症に伴う痛み等が挙げられる。好ましくは神経痛、関節痛、腰痛、月経痛、炎症に伴う痛みである。また、鎮痛に加えて、並行して抗炎症(消炎)及び/又は発熱時の解熱を行うことを目的として使用することもできる。
【0044】
以上のほかに本発明の鎮痛用組成物によって好適に治療することができる痛みとしては、外部からの障害に起因して体内で痛み物質が生じることによる痛みであり、腰痛、筋肉痛、肩こり痛、骨折痛、打撲痛、ねんざ痛、外傷痛、抜歯後又は手術後の疼痛、咽頭痛耳痛が好ましく、筋肉痛、骨折痛、打撲痛、ねんざ痛、外傷痛がより好ましい。
【0045】
また、イブプロフェンには以下の疾患ないし症状に効果があることが確認されているから、本発明の鎮痛用組成物においてイブプロフェンを使用する場合には同様に適用することができる:(1)次の疾患の消炎・鎮痛:慢性関節リウマチ、関節痛・関節炎、神経痛・神経炎、背腰痛、頸肩腕症候群、上気道炎(咽頭炎、喉頭炎)、子宮付属器炎、月経困難症、紅斑(結節性紅斑、多形滲出性紅斑、遠心性環状紅斑)。(2)手術又は外傷後の消炎・鎮痛。(3)急性上気道炎の解熱・鎮痛。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を掲げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1〜12及び比較例1〜4
以下のとおり酢酸ライジング法による鎮痛試験を行った。
【0047】
試験動物としては、5週齢で25g前後の雄性マウス(ddy、SPF)を馴化後、30g弱に成長させたものを用いた。試験前日には各マウスを絶食させた。
【0048】
各被験物質を表1に記載のように秤量し、キサンタンガム1%溶液0.5mLに混濁した。なお、表1中の各成分の配合量はmgで表示している。比較例2で使用したトラネキサム酸は、イブプロフェンの鎮痛作用を増強する成分として公知のものである。
【0049】
得られた溶液を全量、1群6匹の各マウスに経口投与した。ただしコントロール群に対しては、被験物質を含まないキサンタンガム1%溶液0.5mLを経口投与した。
【0050】
経口投与から45分後に、1%の酢酸を含む生理食塩水溶液をマウスの体重10gに対して0.1mLの割合で腹腔内注射した。当該腹腔内注射から5分が経過した後15分間に行われた伸び(ライジング)の回数をカウントした。
【0051】
下記式に従って、各群におけるライジングの発生回数の減少率、すなわち鎮痛効果を算出した。結果を表1に示す。
鎮痛効果(%)=(1−被験群の総ライジング数/コントロール群の総ライジング数)×100
【0052】
【表1】

表1から明らかなように、プロピオン酸系鎮痛剤のみでは、その鎮痛効果は3割程度のものであった(比較例1)。更に従来プロピオン酸系鎮痛剤の効果を増強する成分として知られるトラネキサム酸との併用によっても、本試験系においては、同様に3割程度の鎮痛効果であり、格別向上されるということはなく、生物学的にみて同等の効果(有意差なし)であった(比較例2)。また、プロピオン酸系鎮痛剤にビタミンB類を1種のみ配合しても、プロピオン酸系鎮痛剤と同等の鎮痛効果を奏するのみであった(比較例3,4)。しかしながら、プロピオン酸系鎮痛剤にビタミンB類2種以上を組み合わせて投与した系では、生物学的に有意な差をもって、ライジングの発生回数が減少し、4割を超える優れた鎮痛効果を奏した(実施例1〜12)。このように、プロピオン酸系鎮痛剤とビタミンB類2種以上を併用することにより、初めてその鎮痛作用が相乗的に向上されることが示された。トラネキサム酸など、従来の増強成分はその薬効上、他の薬剤との併用禁忌や副作用が知られるところ、それに比して非常に安全であるビタミンB類2種以上の組み合わせが、当該鎮痛剤増強効果を有することは驚くべきことである。
【0053】
処方例1〜23
表2〜4に記載の処方に従ってフィルムコーティング剤を製剤した。具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酸化チタン、カルナウバロウおよびマクロゴール以外を処方に従って量りとり、水を加えて混練、造粒、乾燥、打錠することによって素錠を製した。さらにヒドロキシプロピルメチルセルロース、酸化チタンおよびマクロゴールを溶媒に混和したものを、噴霧コーティングにより前記素錠にコーティングし、カルナウバロウで表面を処理しフィルムコーティング剤を製した。ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酸化チタンおよびマクロゴールの溶媒としては、水/エタノール混液を使用し、水とエタノールの配合比率(重量比)が、水:エタノール=60:40、50:50、25:75および5:95の4種を用いた。
【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

処方例24〜26
表5に記載の処方に従って、定法により液体製剤の鎮痛剤を製造した。この場合、キサンタンガムにより液剤の粘度を高めることで、水に溶けにくい成分を分散させることが可能となった。
【0057】
【表5】

処方例27〜29
表6に記載の処方に従って鎮痛剤を製造した。具体的には、処方に従って量りとり、水を加えて混練し、造粒し、乾燥して顆粒剤を製造した。
【0058】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピオン酸系鎮痛剤と2種以上のビタミンB類を含有することを特徴とする鎮痛用組成物。
【請求項2】
前記ビタミンB類の配合量は、前記プロピオン酸系鎮痛剤1重量部に対して、総量で0.001〜100重量部である、請求項1記載の鎮痛用組成物。
【請求項3】
前記プロピオン酸系鎮痛剤がイブプロフェンである、請求項1又は2に記載の鎮痛用組成物。
【請求項4】
前記ビタミンB類が、少なくともビタミンB12又は葉酸を含有するものである、請求項1〜3のいずれかに記載の鎮痛用組成物。

【公開番号】特開2008−247822(P2008−247822A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91793(P2007−91793)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】