説明

長尺体の直線度測定装置、長尺体の直線度測定方法

【課題】長尺体の直線度を容易に測定することを考慮した直線度測定装置を提供すること。
【解決手段】長尺体13の直線度測定装置1は、第1直線ガイド部材2と、第2直線ガイド部材3と、移動体4と、角速度センサー(5)と、情報処理部10と、測定対象の長尺体13と前記第2直線ガイド部材3とが一つの直線軸を形成するように、前記測定対象の長尺体13を取り付け可能な取り付け部11と、を備え、前記移動体4が、前記第1直線ガイド部材2と前記長尺体13とにガイドされて一の方向へ移動し、前記移動体4が移動している間の前記角速度センサー(5)の姿勢の変化の情報と前記長尺体13における移動中の前記角速度センサー(5)の位置との関係を、前記情報処理部10が関連づけして情報処理することにより前記長尺体13の直線度を測定する構成であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサーを用いて長尺体の直線度を測定する直線度測定装置および直線度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1に示す如く、プリンターは、キャリッジと、シャフトとを備えていた。前記キャリッジは、印字ヘッドを有しており、用紙の幅方向に移動可能に設けられていた。また、前記シャフトは、用紙の幅方向に延設されており、前記キャリッジをガイドするように構成されていた。またさらに、前記キャリッジには、前記キャリッジの傾きを検出するジャイロ検出部が設けられていた。そして、前記プリンターの設置方向が変化した場合、前記印字ヘッドの重力方向に対する傾きが変化する。該傾きを前記ジャイロ検出部が検出し、前記印字ヘッドの傾きの値に応じて、前記印字ヘッドからインクを吐出する際のエネルギーの大きさを制御するように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−112898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記ジャイロ検出部は、前記プリンターが設置された際の前記印字ヘッドの重力方向に対する傾きを検出する構成であり、前記シャフトの直線度を考慮した構成ではなかった。
また、大型プリンターでは、前記シャフトの長さが長くなる傾向にあり、前記シャフトの直線度を保証することは困難である。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、長尺体の直線度を容易に測定することを考慮した直線度測定装置および直線度測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の長尺体の直線度測定装置は、基準となる第1直線ガイド部材と、該第1直線ガイド部材と平行であり、前記第1直線ガイド部材より短い第2直線ガイド部材と、前記第1直線ガイド部材が延設された方向に移動可能な移動体と、該移動体に設けられた角速度センサーと、前記移動体が移動した際の前記角速度センサーの姿勢の変化の情報と移動中の前記角速度センサーの位置との関係を、関連づけして情報処理する情報処理部と、測定対象の長尺体と前記第2直線ガイド部材とが一つの直線軸を形成するように、前記測定対象の長尺体を取り付け可能な取り付け部と、を備え、前記移動体が、前記第1直線ガイド部材と前記第2直線ガイド部材とにガイドされて前記取り付け部に接近する側である一の方向へ移動し、前記第1直線ガイド部材と前記長尺体とにガイドされて前記一の方向へさらに移動し、前記移動体が前記第1直線ガイド部材と前記長尺体とにガイドされながら移動している間の前記角速度センサーの姿勢の変化の情報と前記長尺体における移動中の前記角速度センサーの位置との関係を、前記情報処理部が関連づけして情報処理することにより前記長尺体の直線度を測定する構成であることを特徴とする。
【0007】
本態様によれば、前記移動体が移動した際の前記角速度センサーの位置および姿勢の変化の情報に基づいて、前記長尺体の直線度を容易に測定することができる。
例えば、前記長尺体の歪みが所定の許容範囲内か否かを判定することができる。この際、前記角速度センサーを用いることにより、例えば、仮に加速度センサーを用いた場合と比較して、高精度で歪みを測定することができる。加速度センサーと比較して角速度センサーの方が誤差の影響が小さいからである。前記長尺体の歪みの程度が前記所定の許容範囲外であれば、不合格とする、または取得した情報に基づいて歪みを矯正することが可能である。一方、前記長尺体の歪みの程度が前記所定の許容範囲内であれば、前記長尺体の直線度について所定の品質で保証することができる。前記長尺体が大型プリンターのガイド部材である場合に、前記測定方法は特に有効である。前記大型プリンターに前記ガイド部材を取り付ける前の段階で、該ガイド部材の直線度を容易に測定することができるからである。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記角速度センサーは、基体部と、所定の方向において前記基体部から両側に延びるように設けられた駆動系である二つのT字振動子と、前記所定の方向と交差する方向において前記基体部から両側に延びるように設けられた検出系である二つの共振アームと、を有しており、前記二つのT字振動子は、前記二つの共振アームを対称軸線として、線対称となる構成であることを特徴とする。所謂、「ダブルT型振動子」を用いた角速度センサーである。
【0009】
本態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、前記二つのT字振動子が対向した対称軸線上に前記共振アームが配設されているため、前記共振アーム上における駆動振動の影響を殆ど無にすることができる。言い換えると、「漏れ振動」を非常に小さくすることができる。
ここで、「漏れ振動」とは、駆動系の振動が検出系に与える影響(振動)をいう。
【0010】
従って、本態様の前記角速度センサーは、従来のセンサー(例えば、音叉型振動ジャイロセンサー)と比較して高い感度を有することができる。その結果、前記長尺体の直線度を高精度で測定することができる。
また、線対称な関係の二つのT字振動子を有する「ダブルT型振動子」を用いることにより、従来のセンサーと比較して小型化することができる。その結果、前記角速度センサーを、前記移動体に容易に取り付けることができるサイズにすることができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記角速度センサーには、前記基体部と、前記二つのT字振動子と、前記二つの共振アームとを有する構造の素子が三つ設けられており、該三つの前記構造の素子の向きは、互いに非平行であることを特徴とする。
本態様によれば、第2の態様と同様の作用効果に加え、前記角速度センサーは、互いに平行でない3軸回りのそれぞれの角速度情報を検出することができる。その結果、前記移動体が移動する際の進行方向をX軸方向とした場合、一度の移動でX軸回りのロール、Y軸回りのピッチ、Z軸回りのヨーの情報を得ることができる。
【0012】
本発明の第4の態様の長尺体の直線度測定方法は、基準となる第1直線ガイド部材と、該第1直線ガイド部材と平行であり前記第1直線ガイド部材より短い第2直線ガイド部材とにガイドされながら、測定対象の長尺体と前記第2直線ガイド部材とが一つの直線軸を形成するように前記測定対象の長尺体を取り付け可能な取り付け部に接近する側である一の方向へ、角速度センサーを有する移動体を、移動させる第1移動工程と、前記第1直線ガイド部材と前記長尺体とにガイドされながら、前記一の方向へ、前記移動体を移動させながら、前記角速度センサーが、該角速度センサーの姿勢の変化の情報を取得する第2移動工程と、前記角速度センサーの姿勢の変化の情報と前記長尺体における移動中の前記角速度センサーの位置との関係を、情報処理部が関連づけして情報処理する情報処理工程と、を具備することを特徴とする。
本態様によれば、第1の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施例の長尺体の直線度測定装置の概略を示す斜視図。
【図2】(A)(B)は本実施例の長尺体の直度度測定装置の概略を示す側断面図。
【図3】(A)(B)は本実施例の角速度センサー装置の内部を示す図。
【図4】本実施例の長尺体の直線度を測定する測定方法を示す図。
【図5】(A)〜(C)はロールが変化した場合の測定結果と長尺体との関係を示す図。
【図6】(A)〜(C)はピッチが変化した場合の測定結果と長尺体との関係を示す図。
【図7】(A)〜(C)はヨーが変化した場合の測定結果と長尺体との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本実施例の長尺体13の直線度測定装置1の概略を示す斜視図である。
図1に示す如く、長尺体13の直線度測定装置1は、長尺体13の直線度を測定することができるように設けられている。具体的に、直線度測定装置1は、第1直線ガイド部材2と、第2直線ガイド部材3と、移動体4と、角速度センサー装置5と、情報処理部10と、取り付け部11とを有している。
【0015】
このうち、第1直線ガイド部材2は、ベース部15に取り付けられており、直線度が保証されている部材である。長尺体13の直線度の測定において、第1直線ガイド部材2が基準となるように構成されている。
また、第2直線ガイド部材3は、第1直線ガイド部材2と平行な関係となるようにベース部15に取り付けられている。また、第2直線ガイド部材3は、第1直線ガイド部材2より短い。またさらに、第1直線ガイド部材2の一端および第2直線ガイド部材3の一端が、第1直線ガイド部材2および第2直線ガイド部材3が延設されている方向において、略揃うように配設されている。
【0016】
またさらに、移動体4は、第1直線ガイド部材2にガイドされながら、第1直線ガイド部材2が延設された方向へ移動可能に設けられている。
尚、移動体4の移動は、手動でも自動でもよい。この際、略一定の速度で移動させることが望ましい。角速度センサー装置5が取得する角速度の変化した情報(姿勢の変化の情報)と、長尺体13におけるX軸方向の角速度センサー装置5の位置との対応を容易に取ることができるからである。
【0017】
また、角速度センサー装置5は、高精度なセンサーで小型であり、移動体4に設けられている。またさらに、角速度センサー装置5は、ケーブル14によって、情報処理部10と接続されている。そして、角速度センサー装置5は、ケーブル14を介して、角速度センサー装置5が取得した情報を、情報処理部10へ送ることができるように構成されている。
【0018】
また、情報処理部10は、角速度センサー装置5が取得した情報を処理することができるように設けられている。また、情報処理部10は、表示部10aを有している。
尚、情報処理部10は、移動体4側、ベース部15側のどちらに設けてもよい。ベース部15側に設ける場合、無線で前記情報が、角速度センサー装置5から情報処理部10へ送られる構成としてもよい。つまり、直線度測定装置1は、ケーブル14を有しない構成でもよい。技術的思想としては、角速度センサー装置5が取得した情報を、情報処理部10へ送ることができればよいからである。
【0019】
またさらに、取り付け部11は、測定対象の長尺体13と第2直線ガイド部材3とが一つの直線軸を形成するように、測定対象である長尺体13を取り付けることが可能に設けられている。具体的に、取り付け部11は、第1直線ガイド部材2が延設された方向に、複数配設された支持部12、12…を有している。支持部12は、頂部が側視V字状に形成されており、長尺体13を鉛直方向下方から支持することができるように構成されている。
尚、長尺体13は支持部12の頂部に載置されるだけの構成としたが、これに限らない。支持部12の頂部にねじ等によって長尺体13が固定される構成でもよい。例えば、長尺体13がプリンター等の製品にガイド部材として取り付けられる際の条件に合わせて、長尺体13を取り付け部11に取り付けてもよい。
【0020】
長尺体13を測定する前段階では、第1直線ガイド部材2および第2直線ガイド部材3によって、移動体4はガイドされている。そして、長尺体13が取り付け部11にセットされる。
このとき、前述得したように、測定対象の長尺体13と前記第2直線ガイド部材3とが一つの直線軸を形成するように、長尺体13は取り付け部11に取り付けられる。
【0021】
そして、長尺体13を測定する際、移動体4を、長尺体13に接近する側であるX軸の矢印方向へ移動させる。これにより、移動体4が第1直線ガイド部材2および第2直線ガイド部材3にガイドされた状態から、第1直線ガイド部材2および長尺体13にガイドされた状態となる。さらに、移動体4を、長尺体13の一端(X軸の矢印方向上流端)から他端(X軸の矢印方向下流端)まで移動させる。
【0022】
ここで、移動体4が取り付け部11に取り付けられた長尺体13にガイドされながらX軸の矢印方向へ移動した際に角速度センサー装置5が取得した情報を、情報処理部10が処理する。この際、情報を処理した結果を表示部10aに表示するように構成されている。
尚、本実施例において、X軸方向は、移動体4の移動方向である。Y軸方向およびZ軸方向は、X軸方向に対して直交する方向である。このうち、Z軸方向は鉛直方向でもある。
【0023】
図2(A)(B)に示すのは、本実施例の長尺体13の直線度測定装置1の概略を示す側断面図である。このうち、図2(A)は、移動体4が第1直線ガイド部材2および第2直線ガイド部材3にガイドされている状態である。一方、図2(B)は、移動体4が第1直線ガイド部材2および長尺体13にガイドされている状態である。
図2(A)(B)に示す如く、取り付け部11は、測定対象の長尺体13と第2直線ガイド部材3とが一つの直線軸を形成するように、測定対象である長尺体13を取り付けることが可能に設けられている。
【0024】
また、取り付け部11としての支持部12は、長尺体13を下方から支持している。
またさらに、Y軸およびZ軸方向における移動体4の位置は、第2直線ガイド部材3または長尺体13によって決まり、X軸回りの移動体4の姿勢は、第1直線ガイド部材2によって決まる構成である。つまり、移動体4は、第1直線ガイド部材2に対しては、もたれ掛かっているだけの構成である。
【0025】
続いて、角速度センサー装置5の内部について説明する。
図3(A)(B)に示すのは、本実施例の角速度センサー装置5の内部を示す図である。このうち、図3(A)は分解斜視図である。一方、図3(B)は角速度センサーのダブルT型構造の水晶素子9(ダブルT型振動子)を示す平面図である。尚、図に示すのは、Z軸回りの角速度を検出する場合である。
図3(A)に示す如く、角速度センサー装置5は、ケース6と、角速度センサーの素子9と、回路基板8と、蓋7とを有している。このうち、ケース6および蓋7は、角速度センサーの素子9および回路基板8を保護するための部材である。また、角速度センサーの素子9は、回路基板8に取り付けられている。
【0026】
図3(B)に示す如く、角速度センサーの素子9は、所謂、ダブルT型構造を有している。具体的には、角速度センサーの素子9は、基体部9aと、駆動系である二つのT字振動子9bと、検出系である二つの共振アーム9cと、を有している。二つのT字振動子9bは、所定の方向として例えばY軸方向において基体部9aから両側に延びるように設けられている。
【0027】
また、二つの共振アーム9cは、Y軸方向と交差するX軸方向において基体部9aから両側に延びるように設けられている。
そして、前記二つのT字振動子9bは、前記二つの共振アーム9cを対称軸線として、線対称となるように、角速度センサーの素子9は構成されている。この構造をダブルT型構造という。
【0028】
ダブルT型構造にすることにより、二つのT字振動子9bが対向した対称軸線上に共振アーム9cが配設されているため、共振アーム9c上における駆動振動の影響を殆ど無にすることができる。言い換えると、「漏れ振動」を非常に小さくすることができる。
ここで、「漏れ振動」とは、駆動系の振動が検出系に与える影響(振動)をいう。
また、ダブルT型構造にすることにより、従来のセンサーと比較して小型化することができる。その結果、角速度センサー装置5を、移動体4に容易に取り付けることができるサイズにすることができる。
【0029】
尚、図3(B)では、一つのダブルT型構造の素子9を示したが、ダブルT型構造の素子9を三つ有する構成とすることが望ましい。三つの前記構造の素子9の向きは、互いに平行でない関係(互いに非平行)とすることで、X軸回り、Y軸回り、Z軸回りのそれぞれの角速度情報を検出することができるからである。そして、移動体4が移動する際の進行方向をX軸方向とした場合、一度の移動でX軸回りのロール、Y軸回りのピッチ、Z軸回りのヨーの情報を得ることができるからである。
【0030】
続いて、長尺体13の直線度を測定する測定方法について説明する。
図4に示すのは、本実施例の長尺体13の直線度を測定する測定方法を示す図である。
図4に示す如く、ステップS1では、移動体4を、X軸方向における移動可能な範囲の一端である基準位置へ移動させる。具体的には、X軸の矢印方向上流側である第1直線ガイド部材2および第2直線ガイド部材3にガイドされている移動体4の位置が基準位置である(図1参照)。
【0031】
ステップS2では、移動体4を、X軸方向における移動可能な範囲の一端側(X軸の矢印方向上流側)から他端側(X軸の矢印方向下流側)へ移動させる。これにより、移動体4が第1直線ガイド部材2および第2直線ガイド部材3にガイドされた状態から、第1直線ガイド部材2および長尺体13にガイドされた状態となる。さらに、移動体4を、長尺体13の一端(X軸の矢印方向上流端)から他端(X軸の矢印方向下流端)まで移動させる。
前述したように、移動体4の移動は、手動でも自動でもよい。この際、略一定の速度で移動体4を移動させることが望ましい。角速度センサー装置5が取得する角速度の変化した情報(姿勢の変化の情報)と、長尺体13におけるX軸方向の角速度センサー装置5の位置との対応を容易に取ることができるからである。
【0032】
また、移動体4の移動は、技術的思想としては、前記一端から前記他端までの片道だけでよく、往復移動させる必要はない。往路と復路とでは、再現性があり、仮に横軸を時間とした場合に左右対称の波形を得ることができるからである。
尚、より信頼性を高めるために、往復移動させてもよい。また、複数回往復させて、平均値を取るようにしてもよいのは言うまでもない。
【0033】
ステップS3では、角速度センサー装置5が、移動体4の移動中の角速度のデータを取得する。
ここで、角速度のデータは、長尺体13の一端近傍から他端近傍まで移動体4が移動した間のデータを含んでいればよい。つまり、第2直線ガイド部材3にガイドされている間のデータは含んでいなくてもよい。直線度の測定対象が長尺体13だからである。
また、角速度センサー装置5が有しているダブルT型構造の素子9が一つである場合、X軸回りのロール、Y軸回りのピッチ、Z軸回りのヨーのいずれか一の情報を得ることができる。係る場合、角速度センサー装置5の向きを変えて、移動体4を移動させることにより、残りの二つの情報を得ることができる。
【0034】
またさらに、前述したように、角速度センサー装置5が有しているダブルT型構造の素子9が三つである場合、X軸回りのロール、Y軸回りのピッチおよびZ軸回りのヨーの情報を一度に取得することができる。尚、角速度センサー装置5が有しているダブルT型構造の素子9が一つである場合、角速度センサー装置5を三つ設けてもよい。係る場合もX軸回りのロール、Y軸回りのピッチおよびZ軸回りのヨーの情報を一度に取得することができるからである。
【0035】
ステップS4では、角速度センサー装置5の姿勢の変化の情報と長尺体13における移動中の角速度センサー装置5の位置との関係を、情報処理部10が関連づけして情報処理を行う。この際、例えば、角速度のデータを一回積分して必要に応じて補正する。これにより、角速度センサー装置5の角度(姿勢)と、X軸方向における位置との関係を得ることができ、長尺体13の直線度の程度を把握することができる。具体的には、移動体4の移動中の角速度の変化により、X軸方向におけるどの位置で、X軸回りのロール、Y軸回りのピッチ、Z軸回りのヨーの変化があったかを特定することができる。
【0036】
そして、情報処理の結果から、長尺体13の直線度が所定の許容範囲内であるか否かを判断することができる。長尺体13の直線度が前記範囲内であれば、合格とすることができ、長尺体13の直線度について所定の品質を保証することができる。一方、長尺体13の直線度が前記範囲外であれば、不合格とすることができる。これにより、前述したように長尺体13が例えばプリンターにおける記録ヘッドを有するキャリッジのガイド部材であった場合、ガイド部材の直線度について所定の品質を担保することができ、プリンターの記録品質をも担保することができる。
【0037】
続いて、情報処理の結果から推測される長尺体13の状態について説明する。
図5(A)〜(C)に示すのは、ロール(X軸回りの角度)が変化した場合の測定結果と、長尺体13との関係を示す図である。
このうち、図5(A)は情報処理の結果である。縦軸はロール(X軸回り)方向の角度を示す。一方、横軸はX軸方向における角速度センサー装置5の位置を示す。
また、図5(B)は概略側断面図である。
またさらに、図5(C)はY軸の矢印方向の上流側から下流側へ向かって見た概略正面図である。
【0038】
図5(A)に示す如く、例えば、情報処理の結果において、X軸方向における略中央をピークとするようにロール(X軸回りの角度)が変化していたとする。
ここで、本実施例では、図5(A)におけるロールの正側への変化を、移動体4の図5(B)における反時計方向への姿勢の変化とする。
係る場合、X軸回りに移動体4の姿勢がX軸方向における略中央をピークとするように変化したので、図5(B)および図5(C)に示す如く、長尺体13のX軸方向における略中央が、Z軸の矢印方向の下流側へ凸となるように歪んでいると推測することができる。
尚、歪み具合については、理解を容易にするために、強調して示してあるものとする。
【0039】
そして、図5(A)におけるロールの変化が所定の許容値の範囲(−T1〜T1)を超えている場合、ロール方向における長尺体13の直線度に問題があると考えられる。移動体4は第1直線ガイド部材2に対してもたれ掛かっているだけであり、第1直線ガイド部材2の直線度は、保証されていることを前提としているからである。係る場合、長尺体13の直線度については、不合格とする。
一方、ロールの変化が所定の許容値の範囲(−T1〜T1)内である場合、ロール方向における長尺体13の直線度については、合格とすることができる。
【0040】
図6(A)〜(C)に示すのは、ピッチ(Y軸回りの角度)が変化した場合の測定結果と、長尺体13との関係を示す図である。
このうち、図6(A)は情報処理の結果である。縦軸はピッチ(Y軸回り)方向の角度を示す。一方、横軸はX軸方向における角速度センサー装置5の位置を示す。
また、図6(B)は概略側断面図である。
またさらに、図6(C)はY軸の矢印方向の上流側から下流側へ向かって見た概略正面図である。
【0041】
図6(A)に示す如く、例えば、情報処理の結果において、X軸方向における略中央を基準とした左側が負側にピークを有しており、右側が正側にピークを有するようにピッチ(Y軸回りの角度)が変化していたとする。
ここで、本実施例では、図6(A)におけるピッチの正側への変化を、移動体4の図6(C)における時計方向への姿勢の変化とする。
【0042】
係る場合、Y軸回りに移動体4の姿勢が図6(C)における反時計方向へ傾いた後に、時計方向へ姿勢を変化させてY軸回りの方向においては元の姿勢に一度戻る。その後、時計方向へ傾いた後、反時計方向へ姿勢を変化させてY軸回りの方向においては元の姿勢の戻ったことがわかる。
従って、図6(B)および図6(C)に示す如く、長尺体13のX軸方向における略中央が、Z軸の矢印方向の下流側へ凸となるように歪んでいると推測することができる。
尚、歪み具合については、理解を容易にするために、強調して示してあるものとする。
【0043】
そして、図6(A)におけるピッチの変化が、所定の許容値の範囲(−T2〜T2)を超えている場合、ピッチ方向における長尺体13の直線度に問題があると考えられる。移動体4は第1直線ガイド部材2に対してもたれ掛かっているだけであり、第1直線ガイド部材2の直線度は、保証されていることを前提としているからである。係る場合、長尺体13の直線度については、不合格とする。
【0044】
一方、ピッチの変化が所定の許容値の範囲(−T2〜T2)内である場合、ピッチ方向における長尺体13の直線度については、合格とすることができる。
尚、本実施例の長尺体13の直線度測定装置1の構成では、ロール方向に移動体4の姿勢が変化した場合、同様に、ピッチ方向における移動体4の姿勢の変化が現れる。従って、ロールおよびピッチの一方のみを測定し、他方の測定を省略してもよい。
【0045】
図7(A)〜(C)に示すのは、ヨー(Z軸回りの角度)が変化した場合の測定結果と、長尺体13との関係を示す図である。
このうち、図7(A)は情報処理の結果である。縦軸はヨー(Z軸回り)方向の角度を示す。一方、横軸はX軸方向における角速度センサー装置5の位置を示す。
また、図7(B)は概略側断面図である。
またさらに、図7(C)は概略平面図である。
【0046】
図7(A)に示す如く、例えば、情報処理の結果において、X軸方向における略中央を基準とした左側が負側にピークを有しており、右側が正側にピークを有するようにヨー(Z軸回りの角度)が変化していたとする。
ここで、本実施例では、図7(A)におけるヨーの正側への変化を、移動体4の図7(C)における反時計方向への姿勢の変化とする。
【0047】
係る場合、Z軸回りに移動体4の姿勢が図7(C)における時計方向へ傾いた後に、反時計方向へ姿勢を変化させてZ軸回りの方向においては元の姿勢に一度戻る。その後、反時計方向へ傾いた後、時計方向へ姿勢を変化させてZ軸回りの方向においては元の姿勢の戻ったことがわかる。
従って、図7(B)および図7(C)に示す如く、長尺体13のX軸方向における略中央が、Y軸の矢印方向の上流側へ凸となるように歪んでいると推測することができる。
尚、歪み具合については、理解を容易にするために、強調して示してあるものとする。
【0048】
そして、図7(A)におけるヨーの変化が、所定の許容値の範囲(−T3〜T3)を超えている場合、ヨー方向における長尺体13の直線度に問題があると考えられる。移動体4は第1直線ガイド部材2に対してもたれ掛かっているだけであり、第1直線ガイド部材2の直線度は、保証されていることを前提としているからである。係る場合、長尺体13の直線度については、不合格とする。
一方、ヨーの変化が所定の許容値の範囲(−T3〜T3)内である場合、ヨー方向における長尺体13の直線度については、合格とすることができる。
【0049】
本実施例の長尺体13の直線度測定装置1は、基準となる第1直線ガイド部材2と、第1直線ガイド部材2と平行であり、第1直線ガイド部材2より短い第2直線ガイド部材3と、第1直線ガイド部材2が延設された方向に移動可能な移動体4と、移動体4に設けられた角速度センサーである角速度センサー装置5と、移動体4が移動した際の角速度センサー装置5の姿勢の変化の情報と移動中の角速度センサー装置5の位置との関係を、関連づけして情報処理する情報処理部10と、測定対象の長尺体13と第2直線ガイド部材3とが一つの直線軸を形成するように、測定対象の長尺体13を取り付け可能な取り付け部11と、を備え、移動体4が、第1直線ガイド部材2と第2直線ガイド部材3とにガイドされて取り付け部11に接近する側である一の方向へ移動し、第1直線ガイド部材2と長尺体13とにガイドされて前記一の方向へさらに移動し、移動体4が第1直線ガイド部材2と長尺体13とにガイドされながら移動している間の角速度センサー装置5の姿勢の変化の情報と長尺体13における移動中の角速度センサー装置5の位置との関係を、情報処理部10が関連づけして情報処理することにより長尺体13の直線度を測定する構成であることを特徴とする。
【0050】
また、本実施例において、角速度センサー装置5は、基体部9aと、所定の方向において基体部9aから両側に延びるように設けられた駆動系である二つのT字振動子9bと、前記所定の方向と交差する方向において基体部9aから両側に延びるように設けられた検出系である二つの共振アーム9cと、を有しており、前記二つのT字振動子9bは、前記二つの共振アーム9cを対称軸線として、線対称となる構成であることを特徴とする。
またさらに、本実施例において、角速度センサー装置5には、基体部9aと、前記二つのT字振動子9bと、前記二つの共振アーム9cとを有する構造の素子9が三つ設けられており、該三つの前記構造の素子9の向きは、互いに非平行であることを特徴とする。
【0051】
本実施例の長尺体13の直線度測定方法は、基準となる第1直線ガイド部材2と、第1直線ガイド部材2と平行であり第1直線ガイド部材2より短い第2直線ガイド部材3とにガイドされながら、測定対象の長尺体13と第2直線ガイド部材3とが一つの直線軸を形成するように測定対象の長尺体13を取り付け可能な取り付け部11に接近する側である一の方向へ、角速度センサー装置5を有する移動体4を、移動させる第1移動工程(S2)と、第1直線ガイド部材2と長尺体13とにガイドされながら、前記一の方向へ、移動体4を移動させながら、角速度センサー装置5が、角速度センサー装置5の姿勢の変化の情報を取得する第2移動工程(S2、S3)と、角速度センサー装置5の姿勢の変化の情報と長尺体13における移動中の角速度センサー装置5の位置との関係を、情報処理部10が関連づけして情報処理する情報処理工程(S4)と、を具備することを特徴とする。
【0052】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
1 直線度測定装置、2 第1直線ガイド部材、3 第2直線ガイド部材、4 移動体、
5 角速度センサー装置(角速度センサー)、6 ケース、7 蓋、8 回路基板、
9 ダブルT型構造の素子(ダブルT型振動子)、9a 基体部、9b T字振動子、
9c 共振アーム、10 情報処理部、10a 表示部、11 取り付け部、
12 支持部、13 長尺体(測定対象物)、14 ケーブル、15 ベース部、
X 移動方向、Y X軸およびZ軸と直交する方向、Z 上下方向(鉛直方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準となる第1直線ガイド部材と、
該第1直線ガイド部材と平行であり、前記第1直線ガイド部材より短い第2直線ガイド部材と、
前記第1直線ガイド部材が延設された方向に移動可能な移動体と、
該移動体に設けられた角速度センサーと、
前記移動体が移動した際の前記角速度センサーの姿勢の変化の情報と移動中の前記角速度センサーの位置との関係を、関連づけして情報処理する情報処理部と、
測定対象の長尺体と前記第2直線ガイド部材とが一つの直線軸を形成するように、前記測定対象の長尺体を取り付け可能な取り付け部と、を備え、
前記移動体が、前記第1直線ガイド部材と前記第2直線ガイド部材とにガイドされて前記取り付け部に接近する側である一の方向へ移動し、前記第1直線ガイド部材と前記長尺体とにガイドされて前記一の方向へさらに移動し、
前記移動体が前記第1直線ガイド部材と前記長尺体とにガイドされながら移動している間の前記角速度センサーの姿勢の変化の情報と前記長尺体における移動中の前記角速度センサーの位置との関係を、前記情報処理部が関連づけして情報処理することにより前記長尺体の直線度を測定する構成である長尺体の直線度測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の長尺体の直線度測定装置において、前記角速度センサーは、
基体部と、
所定の方向において前記基体部から両側に延びるように設けられた駆動系である二つのT字振動子と、
前記所定の方向と交差する方向において前記基体部から両側に延びるように設けられた検出系である二つの共振アームと、を有しており、
前記二つのT字振動子は、前記二つの共振アームを対称軸線として、線対称となる構成であることを特徴とする長尺体の直線度測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の長尺体の直線度測定装置において、前記角速度センサーには、前記基体部と、前記二つのT字振動子と、前記二つの共振アームとを有する構造の素子が三つ設けられており、
該三つの前記構造の素子の向きは、互いに非平行であることを特徴とする長尺体の直線度測定装置。
【請求項4】
基準となる第1直線ガイド部材と、該第1直線ガイド部材と平行であり前記第1直線ガイド部材より短い第2直線ガイド部材とにガイドされながら、測定対象の長尺体と前記第2直線ガイド部材とが一つの直線軸を形成するように前記測定対象の長尺体を取り付け可能な取り付け部に接近する側である一の方向へ、角速度センサーを有する移動体を、移動させる第1移動工程と、
前記第1直線ガイド部材と前記長尺体とにガイドされながら、前記一の方向へ、前記移動体を移動させながら、前記角速度センサーが、該角速度センサーの姿勢の変化の情報を取得する第2移動工程と、
前記角速度センサーの姿勢の変化の情報と前記長尺体における移動中の前記角速度センサーの位置との関係を、情報処理部が関連づけして情報処理する情報処理工程と、を具備する長尺体の直線度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−225835(P2012−225835A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95136(P2011−95136)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】