説明

長鎖アシルイミノジ酢酸型界面活性剤化合物含有水溶液の低温安定性を改善する方法

【課題】長鎖アシルイミノジ酢酸化合物を含む水溶液の低温安定性を改善し、さらに高温安定性、粘度到達性、使用感を改善する方法の提供。
【解決手段】長鎖アシルイミノジ酢酸化合物含有水溶液とN−アシル−N−アルキル中性アミノ酸化合物及び/又はN−アシル−N−アルキルタウリン化合物とを、配合重量比8/2〜2/8で混合する方法。さらに両性界面活性剤及び/又は双極性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤を含有させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長鎖アシルイミノジ酢酸型界面活性剤化合物含有水溶液の低温安定性を改善する方法に関するものである。本発明方法により得られる低温安定性混合水溶液は、液体洗浄剤として使用される。
【背景技術】
【0002】
台所用洗浄剤、毛髪用洗浄剤、身体用洗浄剤等の洗浄剤組成物は、一般にアニオン界面活性剤を主成分としており、主に高級脂肪酸塩(石鹸)、アルキル硫酸塩、スルホン酸塩等が用いられている。しかしながら、例えば石鹸を皮膚洗浄に用いた場合、すすぎ時に石鹸スカム(高級脂肪酸Ca塩)が発生して肌に付着するため、皮膚表面の潤滑性が著しく低下し、きしみ感やつっぱり感を生ずるという欠点があった。また、アルキル硫酸塩やスルホン酸塩等を毛髪洗浄に用いた場合には、きしみ感及びつっぱり感はないけれども、泡切れが悪く、毛髪の潤滑性に乏しいなどの欠点があった。
【0003】
また、アシルイミノジ酢酸塩を含有する洗浄剤組成物は、使用後の潤滑性に優れ、きしみ感及びつっぱり感の少ない、使用感の優れた界面活性剤一種であって、種々の配合の組成物が検討されている(特開平2−84496号(特許文献1)、特開平5−117139号(特許文献2)、特開平6−80987号(特許文献3))。
【0004】
これら従来の洗浄剤は、洗浄力、起泡力、使用感等において改良されているけれども、アシルイミノジ酢酸塩には、その高いクラフト点及び、分子構造に起因する結晶化しやすいという傾向が有り、このため、それを含む液体洗浄剤組成物には、低温時における保存安定性が、特に弱酸性領域から中性領域にかけての低温安定性が、低いという問題があり、界面活性剤成分としては実用の困難なものであった。
【0005】
また、アシルイミノジ酢酸塩は、溶液状態において、それに例えば脂肪酸アルカノールアミド類等の増粘剤を加えても増粘し難いという性質を有し、またアルキルエーテルサルフェート及び脂肪酸アミドプロピルベタインを配合することによって得られる組成物の高粘度領域に、アシルイミノジ酢酸塩を添加すると、その高粘度構造を破壊し、低粘度化してしまうというハイドロトロープ的な効果を示す。このため、アシルイミノジ酢酸塩の洗浄感触が発現する量で配合された洗浄剤組成物においては、その粘度がコントロールし難くなるという問題点があった。これらの性質によりアシルイミノジ酢酸塩は、古くから知られた界面活性剤ではあるが、現在に至るまでその性質を活用して有効に利用する配合が困難であり、従って上記問題点の改善が望まれていた。
【0006】
アシルイミノジ塩基酸塩の低温安定性の改良については、特開平8−60182号公報(特許文献4)に開示されている様に、二塩基酸基部分を非対称にして問題を解決する試みが為されている。それにより低温安定性の改良効果は認められるが、その洗浄後の潤滑性はアシルイミノジ酢酸塩のそれに劣るという問題点がある。このため、アシルイミノジ酢酸塩含有水溶液の低温安定性改善方法の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−84496号公報
【特許文献2】特開平5−117139号公報
【特許文献3】特開平6−80987号公報
【特許文献4】特開平8−60182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、従来より低温安定性に劣り、増粘が困難であることが知られているアシルイミノジ酢酸化合物を主剤として含み、しかもその低温ないしは高温安定性、粘度到達性及び使用後のサッパリ感を改善する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、アシルイミノジ酢酸塩のクラフト点を降下させる配合について検討を進めたところ、これに、特定の構造を有するN−長鎖アシル−N−アルキル−中性アミノ酸塩を特定の比率で混合した場合、その効果が顕著であることを見出した。更に通常増粘剤による増粘が起こりにくいとされるアシルイミノジ酢酸とN−長鎖アシル−N−アルキル−中性アミノ酸塩とが本発明の配合比の範囲内にあるとき、これに、両性、双性、及び/又は半極性界面活性剤の添加により増粘が可能になり、あるいは、高分子増粘剤による粘度到達性が著しく改善されることを見出した。また本発明方法により調製されたサンプルを洗浄剤として用いたとき、アシルイミノジ酢酸塩固有の特性と思われる洗浄後のサッパリ感を損なうことが無いことを実験的に確認して本発明を完成させた。
【0010】
即ち本発明方法は、
下記一般式(1)で示される長鎖アシルイミノジ酢酸型界面活性剤化合物(成分1):
【化1】

[上記式(1)中、R1 は炭素原子数5から19のアルキル基又はアルケニル基を表し、M1 及びM2 は、それぞれ互いに独立に、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アルカノールアミンのカチオン残基、塩基性アミノ酸のカチオン残基から選ばれる少なくとも1種を表す]
を含む水溶液に、下記一般式(2)で示されるN−長鎖アシル−N−アルキル−中性アミノ酸化合物及び一般式(3)で示されるN−長鎖アシル−N−アルキル−タウリン化合物:
【化2】

[式中、R2 及び、R4 は、炭素原子数5から19のアルキル基又はアルケニル基を示し、R3 及びR3aはそれぞれ他から独立に炭素原子数1〜3のアルキル基を示し、M3 及びM4 は、それぞれ互いに独立に、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アルカノールアミンのカチオン残基及び、塩基性アミノ酸のカチオン残基から選ばれた少なくとも1種を表し、nは1〜3の整数を表す。]
を、
前記成分1と成分2との配合重量比を8:2〜2:8の範囲内に調整して混合する、ことを特徴とする長鎖アシルイミノジ酢酸型界面活性剤化合物含有水溶液の低温安定性改善方法である。
本発明方法において、前記方法により得られる前記成分1及び成分2を含む混合水溶液中の、前記成分1の含有率を4〜16重量%に調整することが好ましい。
本発明方法において、前記方法により得られる、前記成分1及び成分2を含む混合水溶液中の、前記成分1及び成分2の合計含有率を10〜20重量%に調整することが好ましい。
本発明の方法において、成分3として、両性界面活性剤及び/又は双性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤をさらに含有させてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明方法に用いられる第一成分は、一般式(1)で示されるアシルイミノジ酢酸化合物(成分1)である。
一般式(1)において、R1 は炭素原子数5〜19、好ましくは9〜17の直鎖もしくは分岐鎖状アルキル基又はアルケニル基を表す。式(1)の化合物のカルボキシル基と塩を形成するカチオン性M1 及びM2 は、それぞれ互いに独立に水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アルカノールアミンのカチオン残基、及び塩基性アミノ酸のカチオン残基から選ばれた少なくとも1種を表す。式(1)のアシルイミノジ酢酸化合物は一分子中に2個の親水基を有するが、得られる混合水溶液のpHが4.5〜5.0の間にあるとき、その親水基の1個が中和され、pHが9.0〜10.0の間では2個目の親水基も中和される。界面活性が顕著に発現するのは1個目の親水基が中和された状態から2個目の親水基が中和された状態に至るまでの間であるため、本発明の方法において、得られる混合水溶液(以下前記混合水溶液と記す)のpHは4.5〜10.0の間に有ることが好ましく、前記混合水溶液のpHが5.5〜7.5の間に有ることが更に好ましい。
成分1は、それを構成する式(1)の化合物において、そのR1 基、M1 基及びM2 基において、互に異る2種以上が混合されたものであってもよい。
【0012】
アシルイミノジ酢酸化合物の好適例としては、ラウロイルイミノジ酢酸モノナトリウム塩、ラウロイルイミノジ酢酸モノカリウム塩、ラウロイルイミノジ酢酸モノトリエタノールアミン塩、ラウロイルイミノジ酢酸ジナトリウム塩、ヤシ脂肪酸イミノジ酢酸モノナトリウム塩、ヤシ脂肪酸イミノジ酢酸モノカリウム塩、及びヤシ脂肪酸イミノジ酢酸モノトリエタノールアミン塩等が挙げられる。
【0013】
本発明方法に用いられる第2成分は一般式(2)で示されるN−長鎖アシル−N−アルキル−中性アミノ酸化合物及び一般式(3)で示されるN−長鎖アシル−N−アルキル−タウリン化合物から選択される少なくとも1種からなる成分2である。
【0014】
一般式(2)で示されるN−長鎖アシル−N−アルキル−中性アミノ酸化合物の好適例としては、ラウロイル−N−メチル−β−アラニンナトリウム塩、ラウロイル−N−メチル−β−アラニンカリウム塩、ラウロイル−N−メチル−β−アラニントリエタノールアミン塩、ラウロイル−N−メチル−β−アラニンアルギニン塩、ラウロイルサルコシンナトリウム塩、ラウロイルサルコシンカリウム塩、ラウロイルサルコシントリエタノールアミン塩、ラウロイルサルコシンアルギニン塩、ヤシ脂肪酸−N−メチル−β−アラニンナトリウム塩、ヤシ脂肪酸サルコシンナトリウム塩、パーム核脂肪酸−N−メチル−β−アラニンナトリウム塩、パーム核脂肪酸サルコシンナトリウム塩等が挙げられる。
【0015】
一般式(3)で示されるN−長鎖アシル−N−アルキル−タウリン化合物の好適例としては、ラウロイル−N−メチル−タウリンナトリウム塩、ヤシ脂肪酸−N−メチル−タウリンナトリウム塩、パーム核脂肪酸−N−メチル−タウリンナトリウム塩等が挙げられる。
【0016】
一般式(2)及び一般式(3)において、R3 及びR3aが水素原子を表すことはなく、一般式(2)及び(3)により表される化合物において、R3 =Hの場合に該当するラウロイルグリシン化合物及びラウロイル−β−アラニン化合物等には、アシルイミノジ酢酸塩の低温安定性を改善する効果が無い。
【0017】
成分(1)を構成するアシルイミノジ酢酸化合物と成分(2)を構成するN−アシル−N−アルキル−アミノ酸化合物及び/又はN−長鎖アシル−N−アルキル−タウリン化合物の配合比率に関して説明する。
本発明の液体洗浄剤組成物において成分1と成分2の配合質量比率は、8:2〜2:8の範囲である。
成分1が上記範囲を超えて多量に配合された場合、低温安定性の改善効果が不十分になる。また、成分2が上記範囲を超えて多量に配合されると、アシルイミノジ酢酸化合物に起因する潤滑性の発現が不十分になる。
【0018】
更に本発明方法により得られる、成分1及び成分2を含む前記混合水溶液には、前記成分1及び2に加えて、両性、双性又は半極性界面活性剤(成分3)を加えることにより得られる前記混合水溶液を増粘させることができ、或は他の増粘剤の添加による増粘効果発現の感度が向上する。即ち粘度到達性が良好に改善される。
【0019】
成分3について更に説明する。
双性界面活性剤としては下記一般式(4)のスルホベタイン型双性界面活性剤化合物が挙げられる。
【化3】

[上記式(4)中、R5 は炭素原子数9〜17のアルキル基又はアルケニル基を表し、R6 及びR7 は、それぞれ、互に独立に水素原子、メチル基及びエチル基から選ばれる置換基を表し、sは2乃至は3の整数を表し、rは0又は1の整数を表す。]
式(4)の化合物としては、好適には、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられる。
【0020】
両性界面活性剤としては、アミドアミン型両性界面活性剤化合物及び酢酸ベタイン型両性界面活性剤化合物が挙げられる。
酢酸ベタイン型両性界面活性剤化合物類は、下記の一般式(5)で表される。
【化4】

[上記式(5)中、R8 は炭素原子数9〜17のアルキル基又はアルケニル基を表し、R9 及びR10はそれぞれ他から独立に水素原子、メチル基、エチル基から選ばれる置換基を表し、s’は2乃至3の整数を表し、r’は0又は1の整数を表す。]
式(5)の化合物は、好適には、ラウリルジメチル酢酸ベタイン、ヤシ脂肪酸アミドプロピルベタイン、ミリスチン酸アミドプロピルベタイン等を包含する。
【0021】
アミドアミン型両性界面活性剤化合物類は下記一般式(6−1)及び(6−2)で表される化合物を包含する。
【化5】

[上記式(6−1)及び(6−2)中、R11及びR12はそれぞれ他から独立には炭素原子数9〜17のアルキル基又はアルケニル基を表し、s”及びs''' は、それぞれ他から独立に2乃至は3の整数を表し、v,w,v’及びw’はそれぞれ他から独立に1〜3の整数を表し、M5 及びM6 は、それぞれ他から独立にはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又はアルカノールアミンのカチオン残基を示し、yは1又は2の整数を表す。]
【0022】
これら式(6−1)及び(6−2)の化合物は、通常イミダゾリニウムベタイン類と称される界面活性剤化合物群を包含する。イミダゾリニウムベタイン型界面活性剤は、その合成経路の中間段階でイミダゾリン環が加水分解して、上記一般式(6−1)乃至は(6−2)の構造を形成することが明らかにされている(例えば特公昭59−51532、特公昭35−4762,Cosmet Toiletries,Vol195,No11,p45-48,1980)。
【0023】
これらのアミドアミン型両性界面活性剤化合物の好適例としては、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−ラウロイル−N’−カルボキシメチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、N−ヤシ脂肪酸アシル−N’−カルボキシエチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等が挙げられる。
【0024】
半極性型界面活性剤類としてはアミンオキサイド類が挙げられ、これは下記一般式(7)で示される化合物である。
【化6】

[式(7)中R13は炭素原子数9〜17のアルキル基又はアルケニル基を表し、R14及びR15はそれぞれ他から独立に、水素原子、メチル基及びエチル基から選ばれる置換基を表し、tは2乃至は3の整数を表し、pは0又は1の整数を表す。]
式(7)の化合物は、好適には、ラウリルジメチルアミンオキシド、ラウリン酸アミドプロピルアミンオキシド等が挙げられる。
【0025】
上記成分3の両性、双性、半極性界面活性剤化合物においても、それらとアシルイミノジ酢酸化合物との組み合わせにおいて、低温安定性の改善効果は見られるが、その効果は小さく、成分1と成分3の組み合わせのみで低温安定性を改善するためには大過剰の成分3が必要となり、また前記混合水溶液を液体洗浄剤組成物として用いたときの使用感が悪化する。
即ち成分1と成分2の合計量と成分3との重量比率が9:1から7:3までの範囲内にあることが好ましく、この場合、アシルイミノジ酢酸の洗浄感触を損なうこと無く、良好な低温安定性を有し、適度な組成物粘度、或いは粘度到達性を有する液体洗浄剤組成物を提供することが可能となる。成分1と成分2の合計量が上記重量比率を超えて多量に配合された場合、アシルイミノジ酢酸化合物に起因するの使用感は損なわれないが、得られる前記混合水溶液の粘度は低いものであり、且つ第4成分として公知の増粘剤、たとえば脂肪酸アルカノールアミド又はポリオキシエチレン(120EO)メチルグルコシドジオレート、ポリオキシエチレン(160)ソルビタントリイソステアレート等を配合しても、粘度の上昇はわずかであって、前記混合水溶液の粘度制御は困難である。逆に成分3が上記範囲を超えて多量に配合された場合は、得られる前記混合水溶液の粘度制御は容易になるが、アシルイミノジ酢酸化合物の使用感が感じられなくなる。
【0026】
本発明方法において、発明の効果を損なわない範囲に於いて、本発明方法により得られた前記混合水溶液に通常化粧品に用いられる他の水溶性成分、及び可溶化できる範囲で水不溶性成分を適宜に選択添加することができる。
【0027】
添加成分として用いられるアニオン活性剤としては、高級アルキル硫酸エステル塩、たとえばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン。アルキルエーテル硫酸エステル塩、たとえば、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリル硫酸ナトリウム;N−アシルアミノ酸塩、たとえば、ラウロイル−β−アラニンナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸モノナトリウム、N−パルミトイルアスパラギン酸ジエタノールアミン、ヤシ脂肪酸シルクペプチド;リン酸エステル塩、たとえばPOEオレイルエーテルリン酸ナトリウム、POEステアリルエーテルリン酸、POEラウリルアミドエーテルリン酸ナトリウム;スルホコハク酸塩、たとえばジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム;アルキルベンゼンスルホン酸塩、たとえばリニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸;高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩、たとえば硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム;並びにα−オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、二級アルコール硫酸エステル塩、高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム、及びカゼインナトリウム等が挙げられる。
【0028】
添加成分として用いられるカチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、たとえば塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム。ジアルキルジメチルアンモニウム塩、たとえば塩化ジステアリルジメチルアンモニウム塩。アルキルピリジウム塩、たとえば塩化セチルピリジウム。アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム等があげられる。
【0029】
添加成分として用いられる非イオン界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル類、たとえばモノステアリン酸グリセリル、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル;ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、たとえばモノステアリン酸、POEグリセリルモノオレイン酸POEグリセリル;ポリグリセリン脂肪酸エステル類、たとえばモノステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸テトラグリセリル、ペンタステアリン酸デカグリセリル;ソルビタン脂肪酸エステル類、たとえばモノラウリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、たとえばモノヤシ脂肪酸POEソルビタン、トリステアリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン;ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類、たとえばモノラウリン酸POEソルビット、テトラオレイン酸POEソルビット;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、たとえば、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、たとえばPOEラウリルエーテル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、たとえばPOE・POPセチルエーテル、POE・POPデシルテトラデシルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類としてはPOEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル、POE分鎖オクチルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアミン類、たとえばPOEステアリルアミン、POEオレイルアミン;脂肪酸アルカノールアミド類、たとえばヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド;ポリオキシエチレンアルカノールアミド類、たとえばPOEラウリン酸モノエタノールアミド、POEヤシ脂肪酸モノエタノールアミド、POE牛脂脂肪酸モノエタノールアミド;並びにアセチレングリコール、POEアセチレングリコール、POEラノリン、POEラノリンアルコール、POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POEフィトステロール、POEコレスタノール、及びPOEノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物などが挙げられる。
【0030】
添加成分として用いられる保湿剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸及びその塩、などが挙げられる。
【0031】
添加成分として用いられる水溶性高分子としては、グァーガム、クイーンシード、ペクチン、ゼラチン、キサンタンガム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及び塩、アルギン塩、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ソーダ、ベントナイト、キチン・キトサン誘導体、ヒアルロン酸及び塩、コラーゲン及びその誘導体などが挙げられる。
【0032】
添加成分として用いられる被膜剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カチオン化セルロース、カチオン化セルロース、シリコーンなどが挙げられる。
【0033】
添加成分として用いられる紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸及び塩、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチルなどのパラアミノ安息香酸誘導体、パラメトキシ桂皮酸エチル、パラメトキシ桂皮酸イソプロピル、パラメトキシ桂皮酸オクチル、メトキシ桂皮酸誘導体、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニルなどのサリチル酸誘導体、ウロカニン酸及び誘導体、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2−(ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、アントラニル酸メチルなどが挙げられる。
【0034】
添加成分として用いられる消炎剤としては、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、アラントイン、酢酸ヒドロコーチゾン、アズレンなどが挙げられる。
また、添加成分として用いられる金属封鎖剤としては、エチレンジアミン四酢酸及びナトリウム塩、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルコン酸、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0035】
添加成分として用いられる低級アルコールとしては、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどが挙げられる。
添加成分として用いられる糖類としては、ブドウ糖、乳糖、白糖、デンプン、カルボキシメチルデンプン、シクロデキストリンなどが挙げられる。
添加成分として用いられるpH調整剤としては、クエン酸、塩酸、硫酸、リン酸、水酸化ナトリウム、アンモニア、などが挙げられる。
【0036】
添加成分として用いられる皮膚栄養剤としては、ビタミンA,B1,B2,B6,E及びその誘導体、パントテン酸及びその誘導体、ビチオンなどが挙げられる。
添加成分として用いられる酸化防止剤としては、ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル類などが挙げられる。
添加成分として用いられる酸化防止助剤としては、アスコルビン酸、フィチン酸、ケファリン、マレイン酸などが挙げられるが配合成分はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を挙げ、本発明を下記実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
下記実施例において、下記の試験が行われた。
【0038】
成分1と成分2の混合による低温安定性及び官能評価
下記の成分に関して、表1に従って界面活性剤成分20重量%の液体洗浄剤を試作して低温安定性及び、手洗い試験による官能評価をおこなった。
(成分1) N−ラウロイルイミノジ酢酸ナトリウム :成分1
(成分2) ラウロイルザルコシンナトリウム :略称;SLE
ラウロイル−N−メチル−β−アラニンナトリウム:略称;ALE
ラウリン酸メチルタウリンナトリウム :略称;LMT
(比較成分)N−ヤシ脂肪酸アシルグリシンナトリウム :略称;GCS
【0039】
サンプルの調製に関して
表1の各成分を配合して、80℃まで加熱し、均一に溶解したことを確認後、撹拌下冷却して各種サンプルを調製した。調製されたサンプルについて下記の条件下で評価した。
温度安定性試験
後記組成に調製した前記水溶液を、後記記載の相溶性試験と同様の試験方法により5℃及び20℃の恒温器に静置して、3日後にサンプルの状態を測定し、これを下記の規準で評価した。
○:透明溶解
△:クスミ・白濁(均一)
×:結晶析出
【0040】
手洗い試験
被験者10名に対して、下記の標準サンプルを1.5g手に塗布して手洗いを行った後の風合いを規準にして、表1の各サンプルを1.5g手に塗布した手洗い試験を行った。洗浄後の潤滑性(すべすべ感)に関して、下記組成の標準サンプルを基準として、下記のように評価した。
3点:標準サンプルに比較して潤滑性を強く感じた
2点:標準サンプルと同等或いは少し強く潤滑性を感じた
1点:標準サンプル変わらない
10名の評価の平均点を求めて以下の規準で評価した。
○:平均点が2.5点以上
△:平均が2.0〜2.5点
×:平均が1.5〜2.0点
【0041】
前記標準サンプルの組成 純分重量%
ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム 10.0
ヤシ脂肪酸−N−メチル−β−アラニンナトリウム 10.0
ラウリン酸ジエタノールアミド 2.0
クエン酸 pH=6.0とする量
精製水 全量100にする量
但し、表記中の数値は界面活性剤純分の重量%を示す。
【0042】
実施例1〜10及び比較例1〜5
実施例1〜10及び比較例1〜5の各々において、表1に示す組成の混合水溶液を下記方法により調製し、上記試験及び下記試験に供した。
【0043】
組成物の調製方法
実施例1〜10および比較例1〜5の各々において、各成分の所要量を精秤に混合し、これに得られる混合水溶液全体の成分濃度が20%となるように蒸留水を加え、表1に記載のpHとなるように、50%クエン酸水溶液もしくは10%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH調整し、更にバランス量の蒸留水を添加して目的混合水溶液を調製した。
測定濃度:総界面活性剤20純分重量%
測定pH :6.0(クエン酸、水酸化ナトリウムで調製)
測定温度:20℃、5℃(相溶性)、25℃(粘度)
粘度計 :B型粘度計(東機産業(株)製)
測定 :3日間放置した混合水溶液を肉眼で外観を観察した
相溶性の判定基準は以下の通り
○:透明溶解
△:クスミ・白濁(均一)
×:結晶析出
試験結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に示されるとおり、アシルイミノジ酢酸のみを含む水溶液(比較例)は20℃保存においても結晶析出が認められるが、本発明成分2を特定の配合量以上配合することにより低温安定性が改善されていく事が判明した。しかしながら成分2の過剰な配合(比較例5)は低温安定性は改善するが、アシルイミノジ酢酸塩の特徴的な感触である洗浄後のスベスベ感(潤滑性)を妨げる傾向が有ることが判明した。
また、成分2の類似構造を有するN−ヤシ脂肪酸アシルグリシンナトリウムには、低温安定性を改善する効果が無いこと(比較例3,4)が判明した。
【0046】
実施例11〜17
混合水溶液の粘度及び粘度到達性
従来より、成分(1)として用いられるN−アシルアミノ酸化合物は増粘し難い性質を有することが知られており、且つ成分2として用いられるアシルイミノジ酢酸化合物も増粘し難い性質を有するが、これに更に両性、双性、半極性界面活性剤を加える事により、特定の範囲内で、アシルイミノジ酢酸化合物に由来するものと思われる潤滑性を保持したまま、増粘すること或いは第4成分の添加による増粘が容易な混合水溶液とすることが可能である。
実施例11〜17において、その事例を示す。
【0047】
表2に記載のサンプルを調製し、これを低温安定性試験、手洗い試験、及び25℃における粘度測定に供した。低温安定性、及び手洗い試験の方法に関しては、実施例1〜10と同じ試験方法を用い、粘度の測定に関しては下記の条件で行った。
粘度測定条件
使用機器 東機産業 B型回転粘度計
測定温度 25℃
ローター 粘度が100mpa・S以下の場合 HM−1
粘度が100mpa・S以上の場合 HM−2
配合に用いたサンプル
(成分1) N−ラウロイルイミノジ酢酸ナトリウム 略称;成分1
(成分2) ラウロイル−N−メチル−β−アラニンナトリウム
略称;ALE
(成分3) ラウリン酸アミドプロピルアミンオキシド 略称;LAO
ラウリン酸アミドプロピル酢酸ベタイン 略称;LPB
ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン
略称;LSB
(添付成分)ポリオキシエチレン(120EO)メチルグルコシドジオレート
略称;DOE120
その結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
表2から明かなように、本発明方法により得られる前記混合水溶液に両性(LPB)、双性(LSB)、半極性(LAO)界面活性剤を特定の重量配合比範囲内で加える事により、実用上支障のない粘度:500〜3000mPa・s程度に増粘が可能となる。また、実施例14においては、調製サンプルそのものは比較的低粘度であるが、第4成分として増粘剤を加えると粘度が上昇する傾向がある。
本発明方法により得られる前記混合水溶液をその特徴的な使用感である潤滑性を残しながら、低温安定性を増強させ更に増粘する必要が有る場合には、成分1と成分2とを8:2〜2:8の間の重量配合比で混合し、更に成分1と成分2の合計重量に対して成分3を9:1〜7:3の間の重量配合比で配合することが有効であることを示している。実施例16及び実施例17は本発明の実施例ではあるが、成分1と成分2に対する成分3の配合量が少ないため、実施例15と同量の増粘剤を用いても、粘度上昇が認められなかった。
【0050】
実施例18
本発明方法を用いて下記組成のシャンプーを試作した。その低温安定性試験の評価は良好で、洗髪後の風合いは、まとまりが良く優れたものであった。
成分 純分重量%
ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム 5.0
ラウロイルイミノジ酢酸ナトリウム (成分1) 5.0
ラウロイルサルコシンナトリウム (成分2) 5.0
ラウリン酸アミドアミンオキサイド 3.0
クエン酸 pH=6とする量
レオドール TW−IS399C(Q1)*1 1.0
メチルパラベン 0.2
ピロクトンオラミン 0.5
香料 0.1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.2
精製水 全量100にする量
〔註〕*1:商標、ポリオキシエチレン(160)ソルビタントリイソステアレート、
花王株式会社製。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明方法により、アシルイミノジ酢酸化合物を一主成分として含み、しかし、低温及び高温安定性が高く増粘が容易で、粘度到達性に優れ、使用後のサッパリ感に優れた混合水溶液を得ることが可能になった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される長鎖アシルイミノジ酢酸型界面活性剤化合物(成分1):
【化1】

[上記式(1)中、R1 は、炭素原子数5から19のアルキル基又はアルケニル基を表し、M1 及びM2 は、それぞれ互いに独立に、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アルカノールアミンのカチオン残基、塩基性アミノ酸のカチオン残基から選ばれた少なくとも1種を表す]
を含む水溶液に、下記一般式(2)で示されるN−長鎖アシル−N−アルキル−中性アミノ酸化合物、及び一般式(3)で示されるN−長鎖アシル−N−アルキル−タウリン化合物から選ばれた少なくとも1種(成分2):
【化2】

[上記式(2)及び(3)中、R2 ,R4 は、それぞれ互に独立に、炭素原子数5から19のアルキル基又はアルケニル基を表し、R3 及びR3aは、それぞれ他から独立に炭素原子数1〜3のアルキル基を表し、M3 及びM4 は、それぞれ互いに独立に、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アルカノールアミンのカチオン残基、塩基性アミノ酸のカチオン残基から選ばれる少なくとも1種を表し、nは1〜3の整数を表す。]
を、前記成分1と成分2との配合重量比を8:2〜2:8の範囲内に調整して混合する、
ことを特徴とする長鎖アシルイミノジ酢酸型界面活性剤化合物含有水溶液の低温安定性を改善する方法。
【請求項2】
前記方法により得られる、前記成分1及び成分2を含有する混合水溶液中の前記成分1の含有率を4〜16重量%に調整する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法により得られる、前記成分1及び成分2を含有する混合水溶液中の前記成分1及び成分2の合計含有率を10〜20重量%に調整する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
成分3として両性界面活性剤及び/又は双性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤をさらに含有させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。

【公開番号】特開2012−46760(P2012−46760A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223240(P2011−223240)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【分割の表示】特願2001−147008(P2001−147008)の分割
【原出願日】平成13年5月16日(2001.5.16)
【出願人】(390003001)川研ファインケミカル株式会社 (48)
【Fターム(参考)】