説明

長鎖多不飽和脂肪酸の含有量が高い材料の調製方法

【課題】シス-トランス11/トランス10-シス12の比率を自由に選択できる新規のCLA類の調整方法を提供すること。
【解決手段】共役長鎖多不飽和脂肪酸部分の異性体(L)及び(L)をいずれも含む少なくとも2つの生成物(I)及び(II)の混合物を含む有機材料が、少なくとも5重量%の共役多不飽和脂肪酸を含む、遊離脂肪酸、モノ−、ジ−、又はトリグリセリド、リン脂質、アルキルエステル、又はワックス−エステルから選択される有機材料を、出発材料中の元の比率L/L=XがX(ここでX≧1.1X)まで増加するように(L)及び(L)を区別できる酵素を使用する酵素的転化(アシドリシス、アルコーリシス、エステル化、加水分解)にさらすことによって得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新たなCLA類の調製方法であって、シス−トランス11/トランス10−シス12の比率が自由に選択され得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動物及び人用食品において、共役長鎖多不飽和脂肪酸の健康によいという効果は、先行技術において認識されている。
【0003】
例えば、欧州特許第411,101号は、9,11−ジエン脂肪酸及び10,12−ジエン脂肪酸等の遊離共役リノール酸(=CLA)、あるいはそれらの非毒性塩を含有する組成物が、カビの成長を阻害することにより、製品を保護するために使用され得ることを開示する。この欧州特許第411,101号によると、遊離酸は、リノール酸を、85℃までの温度において、リノール酸の、所望の酸の形態への転化に影響を与えることができるたんぱく質と反応させることによって調製される。得られたCLAは、9,11−オクタデカジエン酸と10,12−オクタデカジエン酸の両者と、それらに由来する活性異性体を含む。シス/トランス異性のために、上記CLA類は、8種の異なる異性体、即ち、シス−シス11、シス−トランス11、トランス−シス11、トランス−トランス11、シス10−シス12、シス10−トランス12、トランス10−シス12、及びトランス10−トランス12、を含むことができる。それら異性体の中で、シス−トランス11及びトランス10−シス12は、最も量が多く、その上、それらの濃度はほぼ等しい。それら二種の最も量が多い異性体は、CLA類を含有する組成物の健康によいという効果の原因であることが、一般的に信じられている。
【0004】
欧州特許第440,325号によると、CLA類は、自然食品中において、“金属キレート剤”として使用され得る。CLA類は、9,11−オクタデカジエン酸、10,12−オクタデカジエン酸、及びそれらの塩又は他の誘導体類を含有する。遊離酸は、例えば、Δ12シスΔ11トランスイソメラーゼを用いるリノール酸の酵素処理によって調製され得る。
【0005】
米国特許第5,430,066号には、CLA類が、動物又は人における体重減少、体重増加の減少又は食欲不振を防止するために、食品において使用され得ることが開示されている。これらのCLA類が、免疫系からの、特にインターロイキン−1からの生成物の、有害な異化の影響を軽減できることもまた開示されている。
【0006】
米国特許第5,428,072号より、CLA類が、ある種の動物において、飼料の体重への転換効率の増加のために使用され得ることが知られている。
【0007】
シャンサ(Shantha)らは、ジャーナル・オブ・エイオーエイシー・インターン(J. of AOAC Intern)、76巻、3号、1993年、第644−649頁において、CLA異性体は、潜在的な抗癌物質であることを開示した。
【0008】
ヌートリション・リポーツ・インターン(Nutrition Reports Intern)、38巻、5号、1988年、第937−944頁のフォガーティ(Fogerty)らによれば、シス−トランス11リノール酸は、様々な食品または人用のミルクにおいて使用され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
米国特許第4,164,505号は、塩基を用いる処理によって、非共役不飽和脂肪酸が共役不飽和脂肪酸に異性化される方法を開示する。この方法の結果として、速度的に支配された反応混合物であって、ここにおいて、二重結合は共役しているが、多不飽和脂肪酸の全炭素鎖に亘って分布しているものが得られるであろう。それゆえ、この方法は、本発明者等が本発明の方法の結果として得られることを意図しているような、二種の最も量が多い共役多不飽和脂肪酸部分L及びLが、重量比L/L=2.3−99で存在する有機材料をもたらさない。
【0010】
上記先行技術の方法及び生成物は、多くの欠点を有する。例えば、上記先行技術によるCLA類の調製方法は、例えば生成物の収量が非常に限られているために、商業規模では適用され得ない。更に、得られる生成物は、シス−トランス11異性体/トランス10−シス12異性体間に、常にある特定の比率(一般的には約1.0)を有するであろう。このために、1.0以外の比率を有する組成物を得ることはできない。特定の目的に対する二つの異性体の有効性は異なるので、CLA類を作るために、当該方法の実施の際に適用される条件に応じて、シス−トランス11/トランス10−シス12の比率が自由に選択され得るという見込みがあることは、非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
それゆえ、本発明は、新たなCLA類の調製方法であって、シス−トランス11/トランス10−シス12の比率が自由に選択され得る方法に関する。この新たな方法は、新たなCLA組成物及び公知のCLA組成物の両者の調製に適用され得る。
【0012】
よって、本発明は、共役不飽和脂肪酸部分を含む材料の調製方法であって、少なくとも5重量%の共役多不飽和脂肪酸部分を含み、少なくとも二つの異なる異性体L及びLを、重量比L:L=XAで含む材料が、酵素転化に供され、当該酵素転化は、次の転化(i)〜(iv)、即ち、
(i) 遊離脂肪酸の転化であって:
(a) モノ−又はポリアルコール、又は
(b) モノ−、ジ−又はトリグリセリド、又は
(c) アルキルエステル、又は
(d) リン脂質
を用いる転化、
(ii) モノ−、ジ−又はトリグリセリドの転化であって:
(a) 水、又は
(b) モノ−又はポリアルコール、又は
(c) アルキルエステル、又は
(d) リン脂質
を用いる転化、
(iii) リン脂質の転化であって:
(a) 水、又は
(b) アルキルエステル、又は
(c)他のリン脂質、又は
(d) モノ−又はポリオール
を用いる転化、
(iv) アルキルエステル又はろうエステルの転化であって:
(a) 水、又は
(b) モノ−又はポリオール、又は
(c) 遊離脂肪酸、又は
(d) リン脂質
を用いる転化、
の中から選択され、ここで、LとLとを区別する能力を有する酵素が使用され、前記転化は、少なくとも二種の生成物(I)及び(II)の混合物をもたらし、当該生成物(I)及び(II)の中の少なくとも一つの生成物(I)又は(II)は、LとLとを重量比Xで含み、Xは、少なくとも1.1×X、好ましくは少なくとも1.2×X、最も好ましくは少なくとも1.3×Xであり、ここにおいて、LとLは、少なくとも二つの不飽和と少なくとも18の炭素原子とを有する多不飽和脂肪酸の異なる異性体である、方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
酵素転化に適用され得る酵素は、例えば、ゲオトリカム・カンジダム(Geotrichum candidum)、カンジダ・ルゴサ、及びホスホリパーゼ類である。
【0014】
先に示したように、多くの異なる種類の反応体が、酵素転化に使用され得る。転化が、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、最も好ましくは少なくとも15重量%の共役多不飽和脂肪酸を含む遊離脂肪酸と、リン脂質あるいはモノ−、ジ−又はトリグリセリドとの混合物について行われる場合、非常に良好な結果が得られることが見出された。
【0015】
本発明の方法に使用することができる、好ましい出発材料は、重量比X(即ちL:L)が約1.0である。
【0016】
本発明の他の態様によると、水又はグリセロールと、モノ−、ジ−又はトリグリセリドとの混合物もまた、転化されることができた。この例では、グリセリド材料は、その中に少なくとも5重量%の共役多不飽和脂肪酸を有する反応体である。
【0017】
上記方法は、どのような出発材料(当該材料において、LとLは、存在する長鎖多不飽和脂肪酸が異なるシス/トランス異性の形態にて存在する限りにおいて、少なくとも二つの不飽和と18以上の炭素原子とを有する長鎖多不飽和脂肪酸部分すべてから選択され得る)にも適用され得るが、LとLが、シス−トランス11リノール酸とトランス10−シス12リノール酸(あるいはその逆)であるのが好ましい。
【0018】
本発明の方法は、公知の化合物の調製にも適用され得る。しかしながら、この方法を用いて、新規の組成物も得ることができる。これらの新規な化合物(組成物)は、これらの組成物中において見出される重量比L:Lのために、予期されなかった性質を有する。それゆえ、本発明は、新規な有機材料であって、少なくとも18炭素原子の鎖長を有する共役多不飽和脂肪酸部分を少なくとも1重量%含み、ここにおいて、当該共役多不飽和脂肪酸部分は、少なくとも、二種の異性体LとLとを、重量比L/L=2.3〜99、好ましくは4〜20、最も好ましくは8〜15にて含み、Lは当該材料中において最も量が多い、そしてLは当該材料中において二番目に量が多い共役多不飽和脂肪酸部分であり、その上、LとLとは、少なくとも2つの不飽和と少なくとも18の炭素原子とを有する多不飽和脂肪酸の異なる異性体である、材料にも関する。
【0019】
得ることができる有機材料は、遊離脂肪酸の混合物、ろうエステルの混合物、低級アルキルエステルの混合物、モノグリセリド又はジグリセリド又はトリグリセリド、又はモノ−、ジ−及びトリグリセリドの混合物、又はリン脂質の混合物、あるいは前記混合物の一種以上の成分の混合物であることができる。
【0020】
新規有機材料において、LとLとは、共に、シス−トランス11リノール酸及びトランス10−シス12リノール酸から選択され得る。
【0021】
多くの例において、本発明方法のための出発材料は、魚油等の、動物に由来する材料であろう。しかしながら、出発材料として植物油を用いることも可能である。植物油は、例えば魚油中には存在せず、且つ、その油が得られる植物源を示す特定の成分を少量含有するので、そのような植物油を用いると、転化生成物は、先行技術において知られているいずれの生成物に対しても新規である。よって、植物油から得られ、少なくとも二つの共役多不飽和脂肪酸部分L及びLを有する有機材料(ここにおいて、Lは最も量が多い、そしてLは二番目に量が多い共役多不飽和脂肪酸部分であり、LとLとは、1.5〜25、好ましくは4〜20、最も好ましくは8〜15の重量比で存在し、一方、有機材料中における共役多不飽和脂肪酸部分の合計量は、少なくとも1重量%であり、その上、LとLとは、少なくとも2つの不飽和と少なくとも18の炭素原子とを有する多不飽和脂肪酸の異なる異性体である)は、非植物源から得られる先行技術のいずれの生成物に対しても、新規であると考えられる。
【0022】
先行技術からよく知られているように、多量の多不飽和脂肪酸を含む有機材料は、酸素に対して非常に敏感である。それゆえ、本発明者等は、有効量の、天然又は合成のトコフェロール類、TBHQ、BHT、BHA、ラジカル捕捉剤類、没食子酸プロピル、脂肪酸のアスコルビルエステル類、及び抗酸化性を有する酵素類からなる群から選択される酸化安定剤を加えるのがよいと考える。
【0023】
本発明の有機材料は、そのまま使用され得るが、補足的脂肪とのブレンドとしてそれらを用いるのが、しばしば好ましい。それゆえ、本発明は、有機材料と補足的脂肪とのブレンドであって、当該ブレンドは、0.3〜95重量%、好ましは2〜80重量%、最も好ましくは5〜40重量%の、請求項1〜6の方法によって得られる有機材料又は請求項7〜11の有機材料と、99.7〜5重量%、好ましくは98〜20重量%、最も好ましくは95〜60重量%の、カカオ脂、カカオ脂同等物、パーム油又はその画分、パーム核油又はその画分、前記脂肪又はその画分のエステル交換混合物又はヒマワリ油、高オレインヒマワリ油、大豆油、菜種油、綿実油、魚油、サフラワー油、高オレインサフラワー油、トウモロコシ油及びMCT(中鎖トリグリセリド)油類から選択される液状油から選択される、補足的脂肪を含むというものにも関する。
【0024】
上記の、有機材料と補足的脂肪とのブレンドは、5℃において、好ましくは0〜85、より好ましくは10〜70、最も好ましくは20〜60の固体脂含有量(NMR−パルス、非安定化(n.s.))を示し、35℃において、好ましくは30未満、より好ましくは20未満、最も好ましくはの固体脂含有量を示す。本発明の一部は、脂肪相を含む、食品及び動物用飼料でもある。ここにおいて、当該脂肪相は、有効量の、請求項1〜5の方法によって得られる生成物、請求項6〜10の有機材料又は請求項11〜12のブレンドを含む。食品は、スプレッド類、マーガリン類、クリーム類、ドレッシング類、マヨネーズ類、アイスクリーム類、ベーカリー製品類(bakery products)、乳幼児用食品、チョコレート、菓子類、ソース類、コーティング(被覆物)類、チーズ及びスープ類からなる群から適切に選択される。
【0025】
しかしながら、栄養補助食品(サプリメント)及び医薬品も、本発明の脂肪及びブレンドを用いて得られ得る。それゆえ、本発明の方法によって得られる生成物あるいは本発明の有機材料又はブレンドを含む、栄養補助食品あるいは経腸又は非経口投与に適するカプセル形態又は他の形態の医薬品もまた、本発明の一部である。
【実施例】
【0026】
実施例で使用する略称及び記号のリスト

CCB = カカオ脂
POf37 = 部分硬化パーム油オレイン画分
(融点:37℃)
CN = ヤシ油
CNs = ヤシ油ステアリン画分
nPOm = 湿式分画されたパーム油中間画分
df(PO)f = 乾式分画されたパーム油オレイン画分
HS = ハードストッ = 十分に硬化されたパーム油と十分に硬化されたパーム核オレイン画分との、化学的にエステル交換されたブレンドのステアリン画分
S = ヒマワリ油
PO = パーム油
in = エステル交換された
TBHQ = モノ第三ブチルヒドロキノン
【0027】
分析方法
脂肪酸組成は、JAOCS、71巻、12号、第1321頁に示されている方法を用い、脂肪酸メチルエステル・ガスクロマトグラフィー(FAME GC)にて決定した。
【0028】
部分グリセリド含有量は、内部標準として12−ヒドロキシイソオクタンを用い、気化光散乱検出器を用い、シリカゲル高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)にて決定した。
【0029】
脂肪酸含有量は、標準水酸化ナトリウムに対する滴定によって決定した。それは、%オレイン酸と表される。
【0030】
実施例
実施例1
リノール酸(純度:95%)50gを、NaOH(15g)のエチレングリコール(290g)溶液に添加した。混合物を、不活性雰囲気中にて、180℃にて2時間加熱した。反応混合物を冷却し、HClを用いてpHを4に調節し、抽出を、ヘキサン(50ml×2回)を用いて行った。ヘキサン抽出物を一緒にし、それを5%NaCl(25ml×3回)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、溶媒をロータリー・エバポレーターで取り去った。FAME GCによって決定された脂肪酸分布により、生成物が共役リノール酸(CLA)を91.8%含み、その中の49.7%はシス9,トランス11異性体であり、50.3%はトランス10,シス12異性体であることが示された。CLA生成物を、窒素雰囲気下、−20℃にて保存した。
【0031】
この方法において、オクタノール2.786gを、上記の如く調製された混合CLA異性体6.0gが入っているガラス容器に量り入れた。これに、TBHQの蒸留水溶液(0.2mg/ml)6mlと、ゲオトリカム・カンジダム(Geotrichum candidum)リパーゼの蒸留水溶液(5mg/ml)12mlとを添加した。反応混合物を25℃に調節し、窒素下で、オービタル・シェーカーによって激しく攪拌した。72時間の反応時間の後、試料を移し、転化率が35.1%であることを決定した。薄層クロマトグラフィー(TLC)により、未反応脂肪酸を脂肪酸オクチルエステルから分離した。オクチルエステル画分中のCLAは、シス9,トランス11異性体97.6%とトランス10,シス12異性体2.4%で構成されていることがわかった。遊離脂肪酸画分中のCLAは、シス9,トランス11異性体29.3%とトランス10,シス12異性体70.7%で構成されていることがわかった。
【0032】
実施例2
混合CLA異性体を、実施例1に記載のようにして調製した。脂肪酸メチルエステルのガスクロマトグラフィーによる分析の結果は、次の通りであった。生成物は、CLAを89.9%含み、その中の49.7%はシス9,トランス11異性体であり、50.3%はトランス10,シス12異性体であった。
【0033】
生成物を、次の方法によって作った。ゲオトリカム・カンジダム・リパーゼ(リパーゼは、酸を基準として1%)20mgを、蒸留され且つ脱気された水6.0mlに溶解した。この溶液を、再び脱気した。実施例1に記載のようにして調製した混合CLA異性体2gを、オクタノール0.9288gと混合し(酸:アルコールのモル比は1:1)、リパーゼ溶液に添加した。この混合物に、Tocomix(トコフェロール類混合物)抗酸化剤一滴を加えた。反応混合物の温度を35℃に調節し、窒素下において、電磁攪拌機にて激しく攪拌した。24時間の反応時間及び転化率が21%に到達した後、試料を移し、薄層クロマトグラフィー(TLC)により、未反応脂肪酸を脂肪酸オクチルエステルから分離した。オクチルエステル画分中のCLAは、シス9,トランス11異性体94%とトランス10,シス12異性体6%で構成されていることがわかった。遊離脂肪酸画分中のCLAは、シス9,トランス11異性体38%とトランス10,シス12異性体62%で構成されていることがわかった。
【0034】
実施例3
実施例2に記載されたように製造されたCLA異性体混合物を本実施例で用いた。
【0035】
実施例2に記載された方法により生成物を製造した。96時間の反応時間そして53%の転化の後に、試料を取り出し、薄層クロマトグラフィー(TLC)により脂肪酸オクチルエステルから未反応の脂肪酸を分離した。脂肪酸オクチルエステル画分におけるCLAは、81%の、シス9,トランス11異性体と19%の、トランス10,シス12異性体から成ることが見出だされた。遊離脂肪酸画分におけるCLAは、15%の、シス9,トランス11異性体と85%の、トランス10,シス12異性体から成ることが見出だされた。
【0036】
実施例4
下記の方法により、生成物を製造した。オクタノール(0.4644g)と1.0gの、実施例1に記載されたように製造されたCLA異性体混合物を秤量してガラス容器に入れた。これに、蒸留水中のTBHQ(0.2mg/ml)溶液を1mlとカンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼ蒸留水溶液(5mg/ml)を2ml、添加した。その反応混合物を25℃に調整し、窒素下でオービタルシェーカーにより攪拌した。30分間の反応時間の後に試料を取り出し、43.4%の転化率であることを測定した。薄層クロマトグラフィー(TLC)により脂肪酸オクチルエステルから未反応の脂肪酸を分離した。脂肪酸オクチルエステル画分におけるCLAは、90.7%の、シス9,トランス11異性体と9.3%の、トランス10,シス12異性体から成ることが見出だされた。遊離脂肪酸画分におけるCLAは、21.5%の、シス9,トランス11異性体と78.5%の、トランス10,シス12異性体から成ることが見出だされた。
【0037】
実施例5
実施例4に記載された方法により生成物を製造した。45分間の反応時間の後に、試料を取り出し、転化率が48.3%であることを測定した。薄層クロマトグラフィー(TLC)により脂肪酸オクチルエステルから未反応の脂肪酸を分離した。脂肪酸オクチルエステル画分におけるCLAは、84.8%の、シス9,トランス11異性体と15.2%の、トランス10,シス12異性体から成ることが見出だされた。遊離脂肪酸画分におけるCLAは、10.1%の、シス9,トランス11異性体と89.9%の、トランス10,シス12異性体から成ることが見出だされた。
【0038】
実施例6
6kgのエチレングリコール中600gのNaOHの溶液を2gのヒマワリ油に添加した。その混合物を攪拌し、不活性雰囲気下で、180℃において3時間加熱した。その反応混合物を、攪拌し、それにより固体石鹸の沈殿の発生を防ぎながら、約90乃至95℃に冷却した。その反応混合物に、8kgの脱イオン水中HClの1280mlの溶液をゆっくりと添加した。その後、攪拌を停止し、不活性雰囲気において、その混合物を沈降させた。HClを用いてそのpHを4に調整した。油相から水性相を分離した。油相を90℃において、1lの5%のNaClで2回そして2・の熱脱イオン水で1回洗滌し、次に、真空下で100℃において乾燥させた。乾燥した油相を窒素シールをして50乃至60℃に冷却し、そして濾過した。脂肪酸メチルエステルのガスクロマトグラフィー(FAME GC)により決定された生成物の脂肪酸組成物は、48.9%が、シス9,トランス11異性体であり、51.1%が、トランス10,シス12異性体である61.9%の共役リノール酸[conjugated linoleic acid (CLA)]を含有していた。その生成物(SOCLA)を窒素雰囲気下で−20℃において保存した。
【0039】
この方法において、0.986gのグリセロールを秤量して、先きに記載したように製造したSOCLA1.0gとともにガラス容器に入れた。これに、150μlの蒸留水と100mgのゲオトリカム・カンジダム(Geotrichum candidum)リパーゼを添加した。その反応混合物を35℃に調整し、窒素下でオービタルシェーカー(250rpm)により攪拌した。8時間の反応時間の後に試料を取り出し、16.6%の転化率であることを測定した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した、この反応混合物の部分グリセリド含量は、9.6%のモノグリセリド、3.8%のジグリセリド及び3.2%のトリグリセリドであった。薄層クロマトグラフィー(TLC)により、モノ−、ジ−及びトリ−グリセリドから未反応の脂肪酸(83.4%)を分離した。モノグリセリド画分におけるCLAは、66.8%の、シス9,トランス11異性体と33.2%の、トランス10,シス12異性体から成ることが見出だされた。ジグリセリド画分におけるCLAは、80.0%の、シス9,トランス11異性体と20.0%の、トランス10,シス12異性体から成ることが見出だされた。トリグリセリド画分におけるCLAは、77.9%の、シス9,トランス11異性体と22.1%の、トランス10,シス12異性体から成ることが見出だされた。遊離脂肪酸画分におけるCLAは、45.7%の、シス9,トランス11異性体と54.3%の、トランス10,シス12異性体から成ることが見出だされた。
【0040】
実施例7
実施例6に記載したようにSOCLAを製造した。脂肪酸メチルエステルのガスクロマトグラフィー分析の結果は下記の通りであった。その生成物は、48.9%が、シス9,トランス11異性体であり、そして51.1%が、トランス10,シス12異性体である、63.8%のCLAを含有していた。
【0041】
下記の方法により生成物を製造した。グリセロール(400g)と401.5gのSOCLAを秤量し、ジャケットで水を循環させたガラス反応容器に入れた。これに、44.4gの蒸留水と0.8gのカンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼを添加した。その反応混合物を35℃に調整し、窒素下で頭上攪拌(250rpm)により攪拌した。5時間の反応時間後に試料を取り出し、42%の転化率であることを測定した。その後、反応混合物を80℃まで加熱することにより反応を停止させた。そのエマルジョンをヘキサンで抽出することにより油相から水性相を分離させた。ヘキサンを回転蒸発(rotary evaporation)により除去した。薄層クロマトグラフィー(TLC)により、モノ−、ジ−及びトリ−グリセリドから未反応の脂肪酸を分離し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。それらのFAME分析の結果を第1a表に記載する。分子蒸留により、モノ−、ジ−及びトリ−グリセリドから未反応の脂肪酸(58%)を分離した。分子蒸留後、その2つの画分についてFAME GC及びHPLC分析を行った。それらの分析の結果を第1b表に記載する。
【0042】
実施例8
SOCLAからCLAトリグリセリドを製造した。SOCLA(428g)、グリセロール(47g)及び、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)担持リパーゼ(24g)を含有する再エステル化反応を行った。1・容のジャケット付き容器でその反応を行い、不活性雰囲気下で連続的混合をしながら60℃に加熱した。試料を規則的な間隔で取り出し、遊離脂肪酸(FFA)の含量を測定した。45.5時間の後に、反応混合物中には、6%しかFFAが残存していなかった。次に、その反応混合物を80℃に加熱することにより、その反応を停止させた。ワットマンNo.54フィルターを用い、濾過により、不活性化リパーゼを除去し、油を回収した。油の試料のHPLC分析により、それぞれ5.4%及び1.9%である1,3−ジグリセリド及び1,2−ジグリセリドの低含量の存在が示された。
【0043】
CLAトリグリセリドの選択的加水分解により、10トランス,12シス異性体に富んだCLA部分グリセリドを製造した。CLAトリグリセリド(395g)、蒸留水(395g)及びカンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼ(0.8g)を含有する1・容のジャケット付き容器において加水分解反応を行った。不活性雰囲気中で連続的攪拌しながら、その反応混合物を35℃に加熱し、そしてFFA分析のために試料を規則的間隔で取り出した。60%転化率において(1時間10分後)、80℃に加熱することにより反応を停止させ、油相と水性相を分離した。油相を回収し、そしてヘキサンで抽出し、次に回転蒸発により溶媒を除去した。油の試料を、TLCにより成分FFA及び部分グリセリド[モノグリセリド(MG)、ジグリセリド(DG)及びトリグリセリド(TG)]に分離し(移動相は、容量で、60のジエチルエーテル、40のヘキサン及び1のギ酸から成っていた)、ガスクロマトグラフィー(GC)により相当するバンドを分析した。その富有化油のFAME GC分析を下に記載する。HPLC分析により、1,3−ジグリセリド(6.5%)、1,2−ジグリセリド(5.2%)及びモノグリセリド(1.1%)の存在が示された。
【0044】
カンジダ・ルゴサ(C. rugosa)リパーゼを用いたCLAトリグリセリドの60%加水分解の後のCLA異性体の割合
【表1】

【0045】
油の分子蒸留により、遊離脂肪酸(197g)と部分グリセリド(129g)の分離が可能であった。部分グリセリド画分のFFA分析により、低含量(8.2%)のFFAの存在が示され、そしてHPLC分析により、35.8%のジグリセリド(20.6%の1,3−ジグリセリド及び15.2%の1,2−ジグリセリド)並びに0.9%のモノグリセリドの存在が示された。この画分の総合的FAME GC分析により、10トランス,12シス−CLA異性体の富有化が示された(46.5%の10トランス,12シス異性体及び19.3%の9シス,11トランス異性体)。
【0046】
実施例9
実施例7において製造されたCLAのシス9,トランス11異性体に富んだ部分グリセリドを再エステル化し、トリグリセリドに富んだ脂肪を生成した。
【0047】
実施例7において製造された部分グリセリド11.6gを、ヒマワリ油の完全加水分解により製造された遊離脂肪酸6.03g及びデュオライト(Duolite)上に固定したリゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ0.54gと混合した。その混合物を、表面に窒素を吹き込んで55℃において開放ガラスバイアル中で48時間攪拌した。HPLCにより測定された、得られたブレンドの部分グリセリド含量は、75%のトリグリセリド、13%のFFA及び11.6%のジグリセリドであった。その生成物をアルミナで処理し、残存する遊離脂肪酸を除去した。トリグリセリドは、74.6%が、シス9,トランス11異性体であり、25.4%が、トランス10,シス12異性体であるCLAを36.6%含有していた。
【0048】
実施例10
実施例8において製造されたCLAのトランス10,シス12異性体に富んだ部分グリセリドを再エステル化し、トリグリセリドに富んだ脂肪を生成した。
【0049】
実施例8において製造された部分グリセリド12.6gを、ヒマワリ油の完全加水分解により製造された遊離脂肪酸2.03g及びデュオライト(Duolite)上に固定したリゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ0.52gと混合した。その混合物を、表面に窒素を吹き込んで55℃において開放ガラスバイアル中で48時間攪拌した。HPLCにより測定された、得られたブレンドの部分グリセリド含量は、82%のトリグリセリド、12%のFFA及び5.6%のジグリセリドであった。その生成物をアルミナで処理し、残存する遊離脂肪酸を除去した。トリグリセリドは、30.3%が、シス9,トランス11異性体であり、69.3%が、トランス10,シス12異性体である、CLAを56.8%含有していた。
【0050】
実施例11
実施例1において製造されたリノール酸複合体0.50gをヒマワリ油4.54g、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼ(OF)0.09g及び水0.008gと混合した。電磁攪拌機を取り付けたガラスジャケット付き容器中で30℃において窒素シール下でその混合物を攪拌した。
【0051】
6時間後、試料を取り出し、すぐに80℃に加熱し、酵素を不活性化した。塩基性アルミナでの処理により部分グリセリドと遊離脂肪酸を取り出した。残存するトリグリセリドにおける脂肪酸分布をFAME GCにより測定した。CLAのトリグリセリド分子への組み込みは、71.4%が、シス9,トランス11異性体であり、28.6%が、トランス10,シス12異性体である、2.1%のCLAであった。
【0052】
実施例12
実施例9において記載されたように製造されたシス9,トランス11異性体に富んだトリグリセリドを本実施例で用いた。シス9,トランス11異性体(C9T11)に富んだトリグリセリドと補足的な脂肪/脂肪ブレンドから成るブレンドを下記の用途のために作った。
【表2】

【0053】
対照のN値の範囲及びブレンドの測定したN値を第2表に記載する。
【0054】
実施例13
実施例10に記載したように調製されたトランス10,シス12異性体に富むトリグリセリドを、この実施例に使用した。トランス10,シス12異性体(=T10C12)に富むトリグリセリド及び補足的な脂肪/脂肪ブレンドで、以下の用途のためにブレンドを製造した。
【表3】

【0055】
対照のN値の範囲及び測定したブレンドのN値を、第3表に示す。
【0056】
実施例14
実施例7で製造された、CLAのシス9,トランス11異性体に富むグリセリドを混合したスプレッドを、以下の配合に従って調製した。
【0057】
脂肪相
脂肪ブレンド 40 %
ハイモノ(Hymono) 7804 0.3 %
着色料(2% β−カロテン) 0.02%
合計 40.32%

水相(pH5.1へ調整する)
水 56.44%
スキムミルクパウダー 1.5 %
ゼラチン(270ブルーム(bloom)) 1.5 %
ソルビン酸カリウム 0.15%
クエン酸粉末 0.07%
合計 59.66%
【0058】
上記の配合の中で、二つの異なる脂肪ブレンドを使用した。対照用の脂肪ブレンドは、HS/ヒマワリ油が13/87であり、本発明の脂肪ブレンドは、デュオライト(Duolite)上に固定された74gのリゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)を触媒として使用し、実施例7で製造されたシス9,トランス11CLA酸に富むグリセリド76.7gを、ヒマワリ油1423gでエステル交換することによって調製された。反応は、60℃において7時間実施された。酵素は、濾過によって除去された。シス9,トランス11CLA酸を含むトリグリセリドに富む、得られた生成物をシリカ処理して部分的なグリセリドを除去し、次に以下のようにハードストックとブレンドした。
【0059】
−HS/in(ヒマワリ油/C9T11 CLA) 13/87。
【0060】
in(ヒマワリ油/C9T11 CLA)及びハードストックとのブレンドのFAME GCの結果を第4表に示す。
【0061】
以下の方法に従って、スプレッドを加工した。
【0062】
3kgの物質を調製し、そして加工した。
【0063】
マイミクロボテーター加工ラインを、以下のように設定した。
【0064】
プレミックス条件 − 撹拌速度 60rpm
− 温度 60℃
ポンプ − 定量ポンプ 80%(40g/分)に設定
条件 − シャフト速度 1000rpm
− 温度 8℃に設定
条件 − シャフト速度 1000rpm
− 温度 10℃に設定
条件 − シャフト速度 1000rpm
− 温度 10℃に設定
条件 − シャフト速度 1000rpm
− 温度 13℃に設定
【0065】
水相は、必要量の水を約80℃へ加熱し、次にシルバーソン(Silverson)混合器を使用して、成分に徐々に混合して調製した。必要により20%乳酸溶液を添加して、系のpHを5.1へ調整した。
【0066】
プレミックスは、プレミックスタンクで脂肪相を撹拌し、次に水相に徐々に添加して調製した。添加が完了すると、ラインへポンプで注入する前に、混合物をさらに5分間撹拌した。加工が安定したら(約20分)、生成物を貯蔵及び評価のために回収した。
【0067】
典型的な加工条件は以下の通りであった。
【表4】

【0068】
対照及びCLA生成物の両方にこの系を使用し、非常に良好な油の連続する低脂肪スプレッドが製造された。
【0069】
スプレッドを5日間5℃及び20℃において貯蔵した後、円錐型針入度計を使用して硬度、電気導電性、及び2mmのスチールロッドを使用しカラー(collar)を成形して生成物の可塑性を評価した。
【表5】

【0070】
すべてのサンプルは、水の損失の明らかな兆候を示すことなく、防油紙の上に非常に容易に塗布された。
【0071】
実施例15
実施例8で製造された、CLAのトランス10,シス12異性体に富むグリセリドを混合したスプレッドを、以下の配合に従って調製した。
【0072】
脂肪相
脂肪ブレンド 40%
ハイモノ(Hymono) 7804 0.3%
着色料(2% β−カロテン) 0.02%
合計 40.32%

水相(pH5.1へ調整する)
水 56.44%
スキムミルクパウダー 1.5%
ゼラチン(270ブルーム) 1.5%
ソルビン酸カリウム 0.15%
クエン酸粉末 0.07%
合計 59.66%
【0073】
上記の配合の中で、二つの異なる脂肪ブレンドを使用した。対照用の脂肪ブレンドは、HS/ヒマワリ油 13/87であり、本発明の脂肪ブレンドは、ハードストックと、実施例8に記載したように調製されたトランス10,シス12異性体に富むグリセリド及びヒマワリ油とのブレンドであって、
−HS/ヒマワリ油/T10C12 CLAは13/82/5であった。
【0074】
T10C12 CLAのFAMEの結果を第4表に示す。
【0075】
以下の方法に従って、スプレッドを製造した。
【0076】
3kgの物質を調製し、そして加工した。
【0077】
マイクロボテーター加工ラインを、以下のように設定した。
【0078】
プレミックス条件 − 撹拌速度 60rpm
− 温度 60℃
ポンプ − 定量ポンプ 80%(40g/分)に設定
条件 − シャフト速度 1000rpm
− 温度 8℃に設定
条件 − シャフト速度1000rpm
− 温度 10℃に設定
条件 − シャフト速度 1000rpm
− 温度 10℃に設定
条件 − シャフト速度 1000rpm
− 温度 13℃に設定
【0079】
水相は、必要量の水を約80℃へ加熱し、次にシルバーソン混合器を使用して、成分に徐々に混合して調製した。必要により、20%乳酸溶液を添加して、系のpHを5.1へ調整した。
【0080】
プレミックスは、プレミックスタンクで脂肪相を撹拌し、次に水相に徐々に添加して調製した。添加が完了すると、ラインへポンプで注入する前に、混合物をさらに5分間撹拌した。加工が安定したら(約20分)、生成物を貯蔵及び評価のために回収した。
【0081】
典型的な加工条件は以下の通りであった。
【表6】

【0082】
対照及びCLA生成物の両方にこの系を使用し、非常に良好な油の連続する低脂肪スプレッドが製造された。
【0083】
スプレッドを5日間5℃及び20℃において貯蔵した後、円錐型針入度計を使用して硬度、電気導電性、及び2mmのスチールロッドを使用しカラーを成形して生成物の可塑性を評価した。
【表7】

【0084】
すべてのサンプルは、水の損失の明らかな兆候を示すことなく、防油紙の上に非常に容易に塗布された。
【0085】
実施例16
実施例7で製造された、CLAのシス9,トランス11異性体に富むグリセリドを混合した農場様式(ranch style)ドレッシングを、以下の配合に従って調製した。
【0086】
重量%
液状油 25.0
マルトデキストリン 20.0
乾燥卵黄 0.8
キサンタンガム 0.4
ビネガー 5.0
水 48.8
【0087】
上記の配合において、二種類の異なる液状油を使用した。対照用の液状油はヒマワリ油であり、本発明の液状油は、デュオライト上に固定された74gのリゾムコール・ミエヘイを触媒として使用し、実施例7で製造されたシス9,トランス11CLA酸に富むグリセリド76.7gを、ヒマワリ油1423gでエステル交換することによって調製した。反応は、60℃において7時間実施した。酵素は、濾過によって除去された。シス9,トランス11CLA酸を含むトリグリセリドに富む、得られた生成物をシリカ処理して部分的なグリセリドを除去した。
【0088】
in(ヒマワリ油/C9T11 CLA)のFAMEの結果を第4表に示す。一つの大量のバッチの水相を製造し、全てのドレッシングに使用した。初めに、水及びマルトデキストリンを、シルバーソン混合器を使用してブレンドした。完全な混合が起きるまでシルバーソン混合器で撹拌を続けながら、卵黄、キサンタンガム、及びビネガーを連続して添加した。この段階でpH=3.25であったので、さらなるpHの調整は行わなかった。
【0089】
シルバーソン混合器を使用して撹拌をしながら、油を徐々に水相へ添加した。全ての油が分散したように見えるまで混合を続けた。次に、ドレッシングを200mlのプラスチックの滅菌ボトルへ移した。
【0090】
サンプルの粘度は、10rpmで回転する数値4のスピンドルに合わせたブルックフィールド粘度計(Brookfield Viscometer)を使用して測定した。サンプルは、同一の200mlのプラスチックボトルに充填されたので、粘度を直接相互に比較することが可能である。各サンプルについて、各1分の剪断の間に1分の弛緩を行い、3回の測定の平均をとった。
【0091】
油滴径分布は、45mmフィルターを使用して、マルバーンマスターサイザー(Malvern Mastersizer)を使用して測定した。
【0092】
ドレッシングの評価の結果
【表8】

【0093】
実施例17
実施例8で製造した、CLAのトランス10,シス12異性体に富むグリセリドを混合した農場様式ドレッシングを、以下の配合に従って調製した。
【0094】
重量%
液状油 25.0
マルトデキストリン 20.0
乾燥卵黄 0.8
キサンタンガム 0.4
ビネガー 5.0
水 48.8
【0095】
上記の配合において、二種類の異なる液状油を使用した。対照用の液状油はヒマワリ油であり、本発明の液状油は、実施例8に記載したように製造されたトランス10,シス12異性体に富むグリセリドと、ヒマワリ油とのブレンドであって、−ヒマワリ油/T10C12 CLAは95/5であった。
【0096】
T10C12 CLAのFAMEの結果を第4表に示す。
【0097】
一つの大量のバッチの水相を製造し、全てのドレッシングに使用した。初めに、水及びマルトデキストリンを、シルバーソン混合器を使用してブレンドした。完全な混合が起きるまでシルバーソン混合器で撹拌を続けながら、卵黄、キサンタンガム、及びビネガーを連続して添加した。この段階でpH=3.25であったので、さらなるpHの調整は行わなかった。
【0098】
シルバーソン混合器を使用して撹拌をしながら、油を徐々に水相へ添加した。全ての油が分散したように見えるまで混合を続けた。次に、ドレッシングを200mlのプラスチックの滅菌ボトルへ移した。
【0099】
サンプルの粘度は、10rpmで回転するNo.4のスピンドルに合わせたブルックフィールド粘度計(Brookfield Viscometer)を使用して測定した。サンプルは、同一の200mlのプラスチックボトルに充填されたので、粘度を直接相互に比較することが可能である。各サンプルについて、各1分の剪断の間に1分の弛緩を行い、3回の測定の平均をとった。
【0100】
油滴径分布は、45mmフィルターを使用して、マルバーンマスターサイザー(Malvern Mastersizer)を使用して測定した。
【0101】
ドレッシングの評価の結果
【表9】

【0102】
実施例18
実施例6に記載した方法によって、SOCLAを調製した。脂肪酸メチルエステルのガスクロマトグラフィー分析の結果は以下の通りであった。生成物は、63.8%のCLAを含み、その48.9%はシス9,トランス11異性体であり、51.1%はトランス10,シス12異性体であった。
【0103】
SOCLA脂肪酸を以下のようにしてそのエチルエステルへ転換した。50gのSOCLA脂肪酸を150mlの乾燥エタノールと混合し、10mlの濃塩酸を加えた。混合物を窒素下で23時間還流し、冷却し、そして塩基性アルミナと撹拌して未反応の遊離脂肪酸を除去した。アルミナを濾去し、反応混合物を水で4回洗浄し、乾燥させた。得られた油(40g)は91%エチルエステルであると測定された。
【0104】
上記のように調製されたエチルエステルは、以下のように選択的に加水分解された。0.2mgのカンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼを2mlの蒸留水に溶解し、1gのSOCLAエチルエステルを混合した。反応温度を30℃に維持し、混合物を0.5時間激しく振った。混合物をジクロロメタンと石油エーテルの1:1溶液で抽出し、続いてこの溶液を蒸発により除去した。生成物は19.1%の遊離脂肪酸を含み、薄層クロマトグラフィーによりエチルエステルから分離された。ガスクロマトグラフィー分析は、遊離脂肪酸画分が、45.6%のシス9CLA異性体及び9.7%のトランス10CLA異性体を含むことを示した。
【0105】
実施例19
実施例6に記載されているようにしてSOCLAを調製した。脂肪酸メチルエステルのガスクロマトグラフィー分析の結果は以下の通りであった。生成物は、63.8%のCLAを含み、その内の48.9%がシス9,トランス10異性体であり、51.1%がトランス10,シス12異性体であった。
【0106】
SOCLA脂肪酸を以下のようにしてそれらのメチルエステルに転化した。50gのSOCLA脂肪酸を200mlの無水メタノールと混合し、それに10mlの濃HClを添加した。混合物を窒素雰囲気下に26時間還流させ、冷却し、そして塩基性アルミナと共に撹拌して未反応の遊離脂肪酸を除去した。アルミナを濾別し、反応混合物を水で3回洗浄し、乾燥した。得られた油(40g)は99%メチルエステルであることが判明した。
【0107】
上述のようにして調製されたメチルエステルを以下のようにして選択的に加水分解した:10mgのカンジダ・ルゴサリパーゼを4mlの蒸留水に溶解し、1gのSOCLAメチルエステルと混合した。反応温度を30℃に保持して、混合物を0.7時間激しく振盪した。混合物をジクロロメタンと石油エーテルの1:1の溶液で抽出し、その後蒸発によって溶液を除去した。生成物はメチルエステルから分離された24.4%の遊離脂肪酸を含んでおり、薄層クロマトグラフィーを使用して回収した。ガスクロマトグラフィー分析は、遊離脂肪酸画分が46.6%のシス9CLA異性体と10.8%のトランス10CLA異性体を含んでいることを示した。
【0108】
実施例20
上述の実施例19に記載されているようにしてSOCLAのメチルエステルを調製し、カンジダ・ルゴサリパーゼを使用して選択的に加水分解した。実施例19に記載されているようにして、1時間の反応後、38%の遊離脂肪酸を含む反応混合物を抽出し、メチルエステルを遊離脂肪酸から分離し、薄層クロマトグラフィーによって回収した。ガスクロマトグラフィー分析は、メチルエステルが15.3%のシス9CLA異性体と38.2%のトランス10CLA異性体を含んでいることを示した。
【表10】

【0109】
【表11】

【0110】
【表12】

【0111】
【表13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役リノール脂肪酸部分を少なくとも1重量%含む有機材料であって、共役リノール脂肪酸部分が幾何異性体シス9トランス11及びトランス10シス12リノール酸を2つの最も豊富な幾何異性体として、
トランス10シス12/シス9トランス11又はシス9トランス11/トランス10シス12=2.3〜99の重量比率で、少なくとも含む、有機材料。
【請求項2】
シス9トランス11/トランス10シス12=4〜20である、請求項1に記載の有機材料。
【請求項3】
有機材料が、遊離脂肪酸の混合物、ろうエステルの混合物、低級アルキルエステルの混合物、モノグリセリド又はジグリセリド又はトリグリセリド又はモノ−、ジ−、及びトリグリセリドの混合物、又はリン脂質の混合物、又は前記混合物の1種以上の成分の混合物である、請求項1又は2に記載の有機材料。
【請求項4】
植物性油から誘導された、シス9トランス11及びトランス10シス12を有するリノール酸異性体を2つの最も豊富な異性体として少なくとも含む有機材料であって、これらの異性体は1.5〜25の重量比率で存在し、かつ共役リノール酸部分の幾何異性体の総量は少なくとも約1重量%である、有機材料。
【請求項5】
植物性油から誘導された、シス9トランス11及びトランス10シス12の異性体が4〜20の重量比率で存在する、請求項4に記載の有機材料。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1請求項の有機材料であって、天然又は合成トコフェロール、BHT、TBHQ、BHA、プロピルガレート、ラジカル捕捉剤、酸化防止特性を有する酵素、及び脂肪酸のアスコルビルエステルから成る群から選択される酸化安定剤の有効量を含む、有機材料。
【請求項7】
有機材料と補足的脂肪のブレンドであって、
0.3〜95重量%の、請求項1乃至6のいずれか1請求項の有機材料、及び、
99.7〜5重量%の、魚油、カカオ脂、カカオ脂同等物、パーム油又はその画分、パーム核油又はその画分、前記脂肪又はそれらの画分のエステル交換混合物、又はヒマワリ油、高オレインヒマワリ油、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、高オレインサフラワー油、トウモロコシ油、及びMCT−油から選択される液体油から選択される補足的脂肪、
を含むブレンド。
【請求項8】
5〜40重量%の、請求項1乃至6のいずれか1請求項の有機材料、及び95〜60重量%の補足的脂肪を含む、請求項7に記載の有機材料と補足的脂肪のブレンド。
【請求項9】
ブレンドが、5℃で0〜85、及び35℃で30未満の固体脂含有率(NMR−パルス、未安定化)を示す、請求項7又は8に記載の有機材料と補足的脂肪のブレンド。
【請求項10】
ブレンドが、5℃で20〜60、及び35℃で5未満の固体脂含有率を示す、請求項9に記載の有機材料と補足的脂肪のブレンド。

【公開番号】特開2007−138181(P2007−138181A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341588(P2006−341588)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【分割の表示】特願平9−517651の分割
【原出願日】平成8年11月12日(1996.11.12)
【出願人】(599063882)ロダース・クロックラーン・ビー・ブイ (5)
【Fターム(参考)】