説明

閉ループシステムにおけるスキャナの最適なノイズフィルタの設定

【課題】プリンタ/スキャナの組み合わせにおいて、最適なノイズフィルタを設定する。
【解決手段】閉ループシステムを構成するプリンタと検出器を含むシステムにおけるスキャナによって用いられる最適なノイズフィルタの設定を決定する方法が開示されている。複数の縦線、横線、斜線及び点が含まれるテスト画像がプリンタを用いて印刷され、スキャナを用いて再びスキャンされる。スキャンされたテスト画像データは、前記テスト画像を表す入力用テスト画像データと比較され、このような比較に基づいて、当該プリンタ/スキャナの組み合わせにとって最適なノイズフィルタの設定が決定され、以後の使用のために保存される。この方法は、大きなデータ容量を有するバーコードを印刷するのに特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルスキャナにおいて用いられる方法に関する。特に、閉ループシステムで用いられるスキャナにとって最適なノイズフィルタを設定する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バーコードとは、デジタル情報を記録するための機械可読な記号体系の一形式である。一次元や二次元の白黒バーコードが広く用いられてきた。カラーバーコードもまた提案されている。一次元バーコードは、一般に様々な幅の平行線の連続で構成されている。二次元バーコードは、様々な幅の平行線の列が積み重ねられたもの、もしくはタイルを二次元に配置したものを含みうる。データ容量を増やし、バーコードの物理的な大きさを縮小するためには、バーコードの中の線の幅やタイルの大きさを縮小することが望ましい。しかし、バーコードの線の幅やタイルの大きさを縮小することは、ハードウェアやソフトウェアに由来する様々な要因により制限されている。制限要因の一つとして、バーコードを印刷するプリンタとバーコードをスキャンするスキャナの公称空間解像度があげられる。他の種類の制限因子としては、プリンタやスキャナの固有ノイズがあげられ、これにはプリンタの中のトナー飛散、スキャナの画像処理アルゴリズムの設定等が含まれる。トナー飛散とは、白であるべき印刷部分もしくは背景部分の周辺に、意図しないトナーが付着する現象で、細い線、細かい点や鋭角の不鮮明化を招くことがある。デジタルスキャナは、一般にソフトウェアのノイズフィルタを備えており、これはノイズとみなされるスキャンされたデータの中の一定の特徴をデジタル処理で除去する。例えば、それ以外は白い領域となる中にある孤立した黒いピクセルをノイズとして除去することがある。そのようなノイズフィルタは、プリンタにおいて生じたノイズを形にして表すために様々なモデルを利用し、当該ノイズに対応するノイズモデルに基づいてノイズを取り除こうとする。
【0003】
細い線やサイズの小さいタイルを持つバーコードをスキャンする際に生じるノイズやアーチファクトの他の原因として、プリンタにおけるスキューがあげられる。バーコードの要素(線やタイル)の大きさが、印刷されたドット数個分と同じくらいの大きさである場合、検出されたバーコードの形や大きさにスキューが多大な影響を与えることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、閉ループシステムで使われるプリンタ/スキャナの組み合わせにおいて、プリンタのノイズ源を検出し、スキャナの補正パラメータを調整する方法であって、所定のプリンタ/スキャナの組み合わせに応じて最大のデータ容量と可読性を有するバーコード又は記号体系を提供するための方法を対象としている。
【0005】
本発明の目的の一つは、所定のプリンタ/スキャナのハードウェアシステムを用いた印刷および正確なスキャンバックが可能で、最大限のデータ容量を提供することができるバーコード又は記号体系を提供することにある。
【0006】
本発明の付加的なもしくは別個の特徴と効果は以下の記述において説明がなされており、一部は当該記述から明らかとなり、又は本発明の実施により知ることができる。本発明の目的やその他の効果は、明細書や請求項の範囲、さらに添付の図面の中で詳細に示された構造により実現され、達成されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これら及び/又は他の目的を達成するために、具現化され広く説明されるように、本発明は、画像を印刷するプリンタと前記プリンタにより印刷された画像をスキャンするスキャナを含むシステムのスキャナで用いる最適なノイズフィルタの設定を決定する方法であって、(a)テスト画像を表す入力用テスト画像データを取得するステップと、(b)前記テスト画像を印刷するステップと、(c)前記印刷されたテスト画像をスキャンして、スキャンされたテスト画像データを生成するステップと、(d)前記プリンタにより印刷された画像をスキャンする際に用いる前記スキャナにとって最適なノイズフィルタの設定を、前記スキャンされたテスト画像データと前記入力用テスト画像データに基づいて決定するステップと、(e)前記最適なノイズフィルタの設定を保存するステップと、を備える方法を提供する。
【0008】
他の側面において、本発明は、印刷された画像をスキャンする方法であって、(a)画像を印刷した際に用いられたプリンタの部類を識別するステップと、(b)当該プリンタの部類用の最適なノイズフィルタの設定を取得するステップと、(c)前記最適なノイズフィルタの設定を用いて前記印刷された画像をスキャンするステップと、を備える方法を提供する。
【0009】
他の側面において、本発明は、印刷された画像をスキャンするシステムであって、入力用テスト画像データに基づいて記録媒体に印刷されたテスト画像をスキャンし、スキャンされたテスト画像データを生成するスキャナと、最適なノイズフィルタの設定を、前記スキャンされたテスト画像データと前記入力用テスト画像データに基づいて決定する制御装置と、を備えるシステムを提供する。
【0010】
当然のことながら、前述の概要の説明と後述の詳細な説明は典型的で解説的なものであり、請求項に記載された発明のさらなる説明の提供を意図するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
様々なハードウェアの要因により、異なるプリンタのノイズ特性はしばしば違ったものとなる。同様に、異なるスキャナのノイズフィルタや、走査アルゴリズムのその他の特徴についてもしばしば違ったものとなる。しかし、特定のプリンタの部類、例えば同じメーカーの同じモデルのプリンタのノイズ特性は、異なる個々の装置の間でもより一貫性のあるものとなる。それゆえに、本発明の実施形態は、所定のプリンタ/スキャナの組み合わせにおいて最大限のデータ容量と可読性を有するバーコードを提供するために、所定のプリンタと所定のスキャナの組み合わせ、または所定の部類のプリンタと所定の部類のスキャナの組み合わせ(これは時に閉ループシステムと呼ばれる)にとって、最適なノイズフィルタの設定を可能にする方法を提供する。言い換えると、当該方法はハードウェアの選択肢を限定することによりバーコードのデータ容量を最大限にするものである。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態を示すもので、プリンタ/スキャナの組み合わせにとって最適なノイズフィルタの設定を決定するための方法を示している。まず、テスト画像を表すデジタルデータ(入力用テスト画像データ)が取得される(ステップS11)。図3(a)に示されるように、テスト画像31は好ましくは複数のラインパターンとドットパターンを含むものである。特に、テストパターンは、好ましくは横線のセット、縦線のセット、斜線のセットを含むものである。さらに、テスト画像は、好ましくは用いようとしているバーコード特有のテストパターンを含み、例えば、小さな矩形や様々な幅の線を含むものである。入力用テスト画像データはプリンタに送られ、記録媒体にテスト画像が印刷される(ステップS12)。次に、印刷されたテスト画像はスキャナを用いてスキャンされ、スキャンされたテスト画像データが生成される(ステップS13)。当該プリンタと当該スキャナは、これらのハードウェア構成とソフトウェア設定とともに閉ループシステムを構成する。図3(b)に概略的に示されているように、スキャンされたテスト画像32はこの閉ループシステムにより生じたノイズを含むものである。スキャンされたテスト画像データ(閉ループシステムからの出力)は入力用テスト画像データ(閉ループシステムへの入力)と比較される。図3(c)は、スキャンされたテスト画像から入力用テスト画像を取り去った結果を概略的に図示し、これがノイズパターンを表すものである。この比較には、この閉ループシステムにより生じたノイズの特徴が反映されており、分析することによって、当該プリンタ/スキャナのシステムにおいて用いられるスキャナにとって最適なノイズフィルタの設定を決定することが可能となる(ステップS14)。
【0013】
任意で、テスト画像は複数回印刷され、それぞれの印刷されたテスト画像をスキャンするようにしてもよく、ステップS14では複数のスキャンされたテスト画像を用いて最適なノイズフィルタの設定が決定される。これにより、複数の印刷画像において繰り返し生じていないランダムノイズの影響を減らすことができる。
【0014】
最適なノイズフィルタの設定の決定方法(ステップS14)を、図2を参照して説明する。スキャナは、初めに低いノイズフィルタを設定され、フィルタにかけられたデータを入力用テスト画像データと比較する(ステップS21)。次に、ノイズフィルタの設定を高くする(ステップS22)。ノイズフィルタの設定を表すパラメータは、異なるスキャナでは違ったものとなりうることに注意すべきである。ここでは、“より低い”(もしくは“より高い”)ノイズフィルタの設定とは通常、より少なく(もしくはより多く)ノイズを除去する設定のことをいう。スキャンされたデータは、ノイズフィルタにかけられて、フィルタにかけられたデータは再び入力用テスト画像データと比較される(ステップS23)。より高いノイズフィルタの設定によりノイズ低減が改善される場合は(ステップS24:“Y”)、さらに高いノイズフィルタの設定でステップS22〜S24が繰り返される。ノイズ低減が改善されない場合は(ステップS24:“N”)、その前のノイズフィルタの設定が最適なノイズフィルタの設定として選択される(ステップS25)。最適なノイズフィルタの設定は以後の使用のためにスキャナに保存することができる。
【0015】
図2に示される方法は、スキャンされたテスト画像データに基づいて、最適なノイズフィルタの設定を決定する方法の一例である。他の方法としては、ノイズフィルタのモデルを用いて、ノイズパターンから最適なノイズフィルタの設定を算出することができる。
【0016】
上述のプロセスにより決定された最適なノイズフィルタの設定は、特定のプリンタとスキャナを含む当該閉ループシステムに関するものである。同じモデル(もしくは同じシリーズ、同じ製品ライン、同じメーカー、等)の装置(プリンタやスキャナ)は類似する特性をもつ傾向にあるため、同じモデルの装置間のばらつきは、異なるモデルの装置間のばらつきよりもずっと小さい。したがって、上述のプロセスを実行することで、ある部類(例えばモデル、シリーズ、メーカー等)のプリンタやある部類のスキャナにとって最適なノイズフィルタの設定を確立することができる。そうして、当該プリンタ部類からのプリンタと当該スキャナ部類からのスキャナの組み合わせにおいて、このような設定を用いることができる。多くのプリンタ/スキャナの組み合わせやプリンタ部類/スキャナ部類の組み合わせについて、前記プロセスを実行することができ、それぞれの組み合わせに対応するノイズフィルタの設定は今後の利用のために保存することができる。
【0017】
スキャナは、バーコードをスキャンする際に、当該バーコードを印刷するのにどのプリンタ又はどの部類のプリンタが用いられたかを(例えばユーザーに尋ねることによって)決定する。次に、スキャナは、保存されたノイズフィルタの設定のうちこのプリンタ/スキャナの組み合わせに対応する設定を利用して、バーコードをスキャンする。このプロセスは図4に図示されている。
【0018】
上述の方法は、部分的にもしくは全面的に、コンピューター、スキャナ及び/又は他のデータ処理装置上で動作するコンピューターソフトウェアプログラムによって実行することができる。図5は、そうした方法を実行しうるシステムを図示するものであり、ネットワーク、もしくはその他の通信リンクにより互いに接続されたコンピューター52、プリンタ54及びスキャナ56を含んで構成される。本発明の実施の形態の一つは、スキャナの最適なノイズフィルタの設定を、入力用テスト画像データとスキャンされたテスト画像データに基づいて決定するためのプログラムが導入されたコンピューター52である。このプログラムは、好ましくはコンピューターのCPU(中央処理装置)によりアクセスされるROM(読み出し専用メモリ)に保存され、そしてCPUがプログラムを読み込み、最適なノイズフィルタの設定を決定する方法を実行する。本発明の他の実施の形態は、処理装置とROMを備えたスキャナ56であり、ROMにはテスト画像をスキャンし、最適なノイズフィルタの設定を、入力用テスト画像データとスキャンされたテスト画像データに基づいて決定するためのプログラムが導入されている。本発明の他の実施の形態は、複数のプリンタについて最適なノイズフィルタの設定を保存し、バーコードを印刷する際に用いられたプリンタに応じて、適切なノイズフィルタの設定を適用してバーコードをスキャンするスキャナである。さらに本発明の他の実施の形態は、システムがいわゆるスキャナプリンタとなっている場合等であり、スキャナが専用の通信回線によりプリンタに接続されている場合には、スキャナ及びプリンタのいずれかが、CPUと、最適なノイズフィルタの設定を決定するプログラムが導入されたROMを備える。
【0019】
本発明は、白黒プリンタに加えカラープリンタにも適用できる。プリンタは、インクジェットプリンタ、レーザープリンタ、銀塩プリンタ等でありうる。
【0020】
上述の方法は、バーコード(一次元や二次元バーコードを含む)の印刷とスキャンする際にとりわけ有用であるが、一般にプリンタ/スキャナの閉ループシステムにおいて画像をスキャンする際の品質を向上するために利用することができる。
【0021】
本発明の意図や範囲を逸脱することなく、本発明の方法や装置について様々な改良や変形が可能であることは当業者には明らかであろう。したがって、添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれる改良や変形も、本発明に包含されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンタとスキャナの組み合わせにおいて、最適なノイズフィルタの設定を決定する方法を図示したフローチャートである。
【図2】本発明の一実施形態に係る最適なノイズフィルタの設定を決定するアルゴリズムを図示したフローチャートである。
【図3】(a)〜(c)はテスト画像を図示するものであり、印刷されたテスト画像、スキャンされたテスト画像、およびスキャンされたテスト画像のノイズを示す。
【図4】本発明の他の実施形態に係る方法を図示するものである。
【図5】概略的に本発明の一実施形態が実行されうるシステムを図示するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を印刷するプリンタと、前記プリンタにより印刷された画像をスキャンするスキャナと、を含むシステムにおいて、スキャナで用いる最適なノイズフィルタの設定を決定する方法であって、
(a)テスト画像を表す入力用テスト画像データを取得するステップと、
(b)前記テスト画像を印刷するステップと、
(c)前記印刷されたテスト画像をスキャンして、スキャンされたテスト画像データを生成するステップと、
(d)前記プリンタにより印刷された画像をスキャンする際に用いる前記スキャナにとって最適なノイズフィルタの設定を、前記スキャンされたテスト画像データと前記入力用テスト画像データに基づいて決定するステップと、
(e)前記最適なノイズフィルタの設定を保存するステップと、
を備える、最適なノイズフィルタの設定を決定する方法。
【請求項2】
前記テスト画像は、複数の平行線、複数の点、複数の矩形、複数の様々な幅の線からなる群から選択される一つ又はそれ以上の図形パターンを備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)は、複数のテスト画像を印刷するステップを備え、
前記ステップ(c)は、前記複数の印刷されたテスト画像をスキャンするステップを備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(a)画像を印刷した際に用いられたプリンタの部類を識別するステップと、
(b)当該プリンタの部類用の最適なノイズフィルタの設定を取得するステップと、
(c)前記最適なノイズフィルタの設定を用いて、前記印刷された画像をスキャンするステップと、
を備える印刷された画像をスキャンする方法。
【請求項5】
入力用テスト画像データに基づいて記録媒体に印刷されたテスト画像をスキャンし、スキャンされたテスト画像データを生成するスキャナと、
最適なノイズフィルタの設定を、前記スキャンされたテスト画像データと前記入力用テスト画像データに基づいて決定する制御装置と、
を備える印刷された画像をスキャンするシステム。
【請求項6】
前記テストパターンを印刷するためのプリンタをさらに備える請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記テスト画像は、複数の平行線、複数の点、複数の矩形、複数の様々な幅の線からなる群から選択される一つ又はそれ以上の図形パターンを備える請求項5に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−295533(P2007−295533A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−46714(P2007−46714)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(507031918)コニカ ミノルタ システムズ ラボラトリー, インコーポレイテッド (157)
【Fターム(参考)】