説明

閉ループ火炎温度制御式酸素燃料燃焼システム

【解決手段】ボイラー又は火炉で使用するための、酸素燃料燃焼工程のための制御システムが開示されており、同制御システムは、燃焼工程に関わる各バーナーの火炎温度を動的に制御し、火炎温度を動的に最大にする。本発明に依る燃焼工程と組み合わせて用いられるボイラー又は火炉は、放射熱、即ち視線熱帯域と、対流熱帯域とで構成されている。ボイラー又は火炉内の様々なバーナーの火炎温度を動的に最大にすることによって、放射熱伝達は最適化される。ボイラー又は火炉内の放射熱伝達を最適化することによって、ボイラー又は火炉の効率は、大幅に改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素燃料(oxy−fuel)燃焼システムに関しており、より具体的には、燃焼に酸素を利用する化石燃料燃焼システムであって、燃焼の放射熱伝達を最大にして、設計上のアルミニウム融解又は保持温度、或いは蒸気又は処理温度、及び内部材料温度を維持しながら、燃焼システムの効率を最適化するために、火炎温度の閉ループ制御を含んでいる、燃焼システムに関している。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2008年9月11日出願の米国特許出願第61,096,106号の優先権と恩典を請求しており、同出願を参考文献としてここに援用する。
化石燃料、即ち、炭素ベース燃料のための燃焼システムは、当該技術では比較的良く知られているが、空気の代わりに酸素を利用して燃焼させる。その様なシステムの例は、本発明と同じ譲受人に譲渡されている国際特許出願公告WO02/088400号と、米国特許第6,398,547号に開示されている。その様な燃焼システムは、酸素燃料燃焼システムとして知られてきており、例えば、発電工程及びアルミニウムの融解と組み合わせた蒸気生成を含め、様々な産業的工程で用いられている。これらの酸素燃料燃焼システムは、空気燃料燃焼システムの様々な欠点を克服するために開発されてきた。
【0003】
例えば、空気燃料燃焼システムの重大な欠点は、環境にとって有害であることが知られている温室効果ガスを生成することである。具体的には、空気は、約75%の窒素と21%の酸素で構成されている。その様な空気燃料燃焼工程では、燃焼工程の結果、NOと、二酸化炭素CO及び二酸化硫黄SOの様な他の温室効果ガスが発生する。
【0004】
他にも、その様な空気燃料燃焼工程には、燃料の効率に関する欠点がある。その様な空気燃料燃焼工程では、ボイラー又は火炉内の窒素を加熱するのに、相当量の燃料が使われる。例えば、蒸気を発生させる工程を考えると、燃焼工程によってボイラー内に十分な熱を作り出し、十分な量のエネルギーを水に伝達し、水をフラッシュオーバーさせて蒸気にしなければならない。ボイラー又は火炉内には膨大な量の窒素があるので、相当量の熱と従って燃料とが、ボイラー又は火炉内の窒素を加熱するのに浪費され、廃棄物として処理され放出される。
【0005】
酸素燃料燃焼システムは、これらの問題を解決し、純度が約85%から99%+の比較的純度の高い酸素を利用する。比較的純度の高い酸素を使用することによって、温室効果ガスの量は減り、燃料の効率が大幅に改良される。その様な比較的純度の高い酸素は、製造コストが比較的高いので、前記酸素燃料燃焼システムの効率を更に高めるような試みがなされてきた。例えば、米国特許第5,545,031号と第5,575,637号は、酸素燃料燃焼システムで使用される改良されたバーナーを開示しており、同システムは、放射熱伝達を改良するため、火炎面を比較的大きくするように構成されている。第031号及び第637号特許に開示されているシステムは、良好に、酸素燃料燃焼工程における放射熱伝達を改良し、酸素燃料燃焼工程の効率を改良している。しかしながら、これらの特許に開示されている改良は、燃焼工程の変数、即ち火炎の形状を固定することを伴っており、燃焼工程に使用される燃料の量の様な他の変数を考慮していない。
【0006】
従って、他の開発は、異なる化学量論比用のボイラー又は火炉で、個々のバーナーに供給される燃料の量を制御することに集中してきた。より具体的には、米国特許第6,398,547号は、バーナー制御システムを含む酸素燃料燃焼システムを開示しており、同システムでは、個々のバーナーそれぞれに送られる燃料は、燃料リーンモード制御と燃料リッチモード制御の間で、比較的広い化学量論比の範囲に亘って、周期的に変動する。個々のバーナーに送られる燃料の量を変動させることによって、ボイラー又は火炉内の過剰な燃料及び酸素の量を制御し、燃焼工程の効率を改良することができる。
【0007】
第547号特許に開示されているシステムは、酸素燃料燃焼システムで使用する燃料の効率を改良しているが、制御システムは固定されており、燃焼工程が始まる前にシステムにロードされる固定された波形に基づいている。しかしながら、火炎温度の様な、燃焼工程における動的な変数も、酸素燃料燃焼工程の効率に影響を及ぼすことが知られている。具体的には、火炎温度は、バーナーに供給される酸素の量の関数であることが知られている。例えば、参考文献としてここに援用するCarlos Romero、Xianchang Li、Shahla Keyvan、及びRodney Rossowによる「Spectrometer−Based Combustion Monitoring For Flame Stoichiometry and Temperature Control」(2005年4月、 Engineering、第25冊、5−6号、659−676頁)に記載されている様に、「全火炉(又はボイラー)化学量論的制御は、空気及び燃料の局所的な不均衡分配又はバーナーのハードウェア機能不全による個々のバーナーの非効率な作動を排除しない」。従って、既知の酸素燃料ボイラーと火炉は、化学量論的な観点から、+/−5%以内に制御されることは知られているが、火炎温度は、燃焼サイクル中に先に述べた理由で変動する。
【0008】
従って、燃焼工程の効率を改善するために、火炎温度の様な動的燃焼変数の変化に応答するシステムが必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ボイラー又は火炉で使用する酸素燃料燃焼工程のための制御システムに関しており、本システムは、燃焼工程に関わる各バーナーの火炎温度を動的に制御し、火炎温度を動的に最大にする。本発明に依る燃焼工程と組み合わせて用いられるボイラー又は火炉は、放射熱すなわち輻射熱領域と、対流熱領域とで構成されている。ボイラー又は火炉内の様々なバーナーの火炎温度を動的に最大にすることによって、放射熱伝達は最適化される。ボイラー又は火炉内の放射熱伝達を最適化することによって、ボイラー又は火炉の効率は、大幅に改善される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による燃焼工程で使用するためのボイラーの単純化した物理線図である。
【図2】火炎温度を放射熱伝達の百分率の関数として示すグラフである。
【図3】本発明による閉ループ制御システム用の工程制御線図を示している。
【図4】本発明による閉ループ制御システム用の工程制御線図を示している。
【図5】本発明で使用するための代表的なガスバーナーの図である。
【図6】本発明で使用するための代表的な微粉炭バーナーの図である。
【図7】本発明で使用するための代替ガスバーナーの図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下の詳細な説明と添付図面を参照すれば、本発明の上記及びその他の利点を容易に理解頂けるであろう。
本発明は、酸素燃料燃焼工程用の制御システムに関しており、本システムは、燃焼工程に伴う各バーナーの火炎温度を動的に制御し、設計上の蒸気又は処理温度、及び内部材料温度を維持しながら、火炎温度を動的に最大にする。本発明による燃焼工程を、ボイラーに関して説明するが、本発明の原理は、例えば、設計上のアルミニウム融解又は保持温度、或いは蒸気又は処理温度、及び内部材料温度を維持しながらアルミニウムを処理する火炉(furnace:加熱炉、溶解炉)にも同様に適用することができる。
【0012】
以下に更に詳しく論じる様に、本発明に依る燃焼工程と組み合わせて用いられるボイラーは、放射熱すなわち輻射熱領域(line of sight, heat zone)と、対流熱領域とで構成されている。ボイラー内の様々なバーナーの火炎温度を動的に最大にすることによって、放射熱伝達は最適化される。ボイラー内の放射熱伝達を最適化することによって、ボイラーの効率は、大幅に改善される。
【0013】
図1は、本発明による燃焼工程と組み合わせて使用するための代表的なボイラーを示している。ボイラーは、全体を参照番号10で示しているが、一連の水配管12を含んでおり、水配管は、一体となって、図1の破断図で示している様な水壁13を形成している。ボイラー10の水壁13は、ボイラー10の一次バーナー領域15から上部領域に伸張している多数の水配管13aで形成されている。
【0014】
ボイラー10は、更に、一次バーナー領域15に配置され、燃料源16及び酸素源18に接続されている少なくとも1つの一次バーナー14を含んでいる。ここで用いる「実質的に純粋な酸素」という用語は、所望の燃焼にとって正しい燃料と酸素の割合を提供するのに必要な酸素の純度を意味し、画期的な本発明の範囲から逸脱することない製品、例えば、純度が85%から99%+の、実質的に純粋な酸素のことである。
【0015】
ボイラー10は、更に、当技術では周知の型式の過熱器(super-heater)20及び/又は再加熱器(re-heater)21を含んでいる。その様な過熱器20には、一般に、ボイラー10内の蒸気遷移領域(steam transfer area)22で生成された蒸気が供給される。蒸気は過熱器20内を通過し、対流は、燃焼から生じる熱またはエネルギーと、水配管13aから放出される熱及びエネルギーを、過熱器20とその回りに運んで、そこに運ばれてくる蒸気を加熱する。再加熱器21には、通常、タービンからボイラーへ戻る蒸気であって、追加的用途のためにタービンへ戻す前に更に加熱する必要のある蒸気が供給される。この熱又はエネルギーが蒸気に伝達されると、温度が、蒸気の飽和点以上に上がるので、蒸気がタービン内で使用するのに更に適したものになる。所望の作業にとって温度が高くなり過ぎ及び/又はエネルギーが過剰になった蒸気を、必要に応じて弱めることができるように、冷却機構を含んでいてもよいものと理解されたい。
【0016】
ボイラー10には、例えば、本発明と同じ譲受人に譲渡されている米国特許出願第2005/0072379A1号に記載されているように、ボイラー10の一次バーナー領域15より上で蒸気遷移領域22より下の場所に、二次バーナー24を配置してもよく、同出願を参考文献としてここに援用する。少なくとも1つの二次バーナー24を、過熱領域26内に配置してもよい。二次バーナー24は、ボイラー10の他の多くの場所に配置してもよい。
【0017】
図1は、二次バーナー16無しで構成されるボイラー用のボイラー10の放射及び対流熱領域を示している。図示の様に、一次バーナー領域15は、放射熱領域に対応する。水壁13がバーナー16の視線内にある限りにおいて、放射熱領域は基本的に全て放射熱伝達が生じている。放射領域の右側にある領域は、遷移領域(transition zone)として識別されている。遷移領域は、放射と対流の両方の熱伝達を含んでいることが知られている。遷移領域の右側は、対流熱伝達領域である。対流熱領域では、基本的に全て対流熱伝達が行われている。
【0018】
図2に示すように、全体の熱伝達に対する放射熱伝達の割合は、熱伝達の関数として示される。水平方向軸は、火炎温度を華氏で表している。垂直軸は、放射熱伝達を、全体の熱伝達に対する百分率で表している。図2に示している曲線は、放射熱伝達が、Tに比例していることを示しており、ここでTは火炎温度である。図示の様に、火炎温度が高くなると共に放射熱伝達が多くなり、5000°F(2760°C)を超える最高火炎温度で90%+に漸近している。従って、燃焼サイクルでは、最高火炎温度を動的に維持することによって、放射熱伝達が最適化される。
【0019】
火炎温度を判定するには様々な技法が知られている。例えば、火炎温度は計算してもよい。具体的には、断熱燃焼工程では、この場合は比較的純度の高い酸素と、天然ガス又は微粉炭の様な化石燃料である反応生成物の温度は、断熱火炎温度と呼ばれる。この断熱火炎温度は、反応物にとって可能な最高温度である。熱伝達、不完全燃焼、及び反応生成物の解離は、全て、温度の低下に繋がる。当技術では知られている様に、所与の燃料と酸化剤の組合せに対する断熱火炎温度は、反応物としての燃料と酸素が、化学量論比、即ち、全ての燃料と全ての酸化剤が燃焼中に完全に消費される正確な割合で混ぜ合わされるときに、最高になる。従って、最高火炎温度は、燃料と酸素の化学量論比を維持することによって、維持することができる。
【0020】
酸素と微粉炭の化学量論比を求めるための代表的な式を以下に提供する。式(1)と(2)は、化学量論比で微粉炭と燃焼させるのに必要な酸素の量を求めるための式である。式(3)は、化学量論比で天然ガスと燃焼させるのに必要な酸素の量を求めるための式である。
【0021】
(1)(石炭供給率LB/hr)*(炭素含有率wt%)*(1/12)*32=酸素流量lb/hr
代わりに、式(1)は、以下に示すように式(2)で表すこともできる。
【0022】
(2)(石炭供給率LB/hr)*(炭素含有率wt%)*(1/12)*386.8=SCFH@70°Fでの酸素流量
(SCFH:cubic feet per hour of gas flow at specified standard conditions of temperature and pressure)
式(1)と(2)は、微粉炭を、酸素、又はCO又はNの様な他の気体の何れによっても希釈しない場合の化学量論比を求める場合に用いられる。
【0023】
微粉炭の場合は、体積型と重量型の両方のベルト送給器が知られている。各型式は、例えば、Stultzらによる「Steam:Its Generation and Use」(1992年、Babcock&Wilcox社、第40版、12−3頁)に記載されているように、合計燃料流量制御器(図示せず)を含んでおり、上記文書を参考文献としてここに援用する。石炭供給率は、全体燃料流量制御器で測定することができる。代わりに、体積型微粉炭システムでは、燃料の流れを表す信号を容易に導き出すことができる。より具体的には、その様な体積型微粉炭システムでは、微粉炭は回転スクリューポンプで駆動され、回転スクリューポンプは電気モーターによって駆動される。電気モーターの回転数は、微粉炭の体積を表示している。従って、電気モーターの毎分回転数(RPM)を用いて、微粉炭の流量を示す信号を提供することができる。
【0024】
微粉炭の炭素含有量は、或る特定のタイプの石炭では概ね安定している。特定のタイプの石炭の炭素含有量は、特定の石炭の分析に基づいており、例えば、従来の試験で行われる。微粉炭の流量信号と、炭素含有量を表す信号とを、コンピューター処理ユニット(CPU)又はプログラム可能コントローラーに与えて、例えば、工程条件の変化による微粉炭の流量の変化に応じて、すぐさま酸素と燃料の化学量論比を維持するのに必要な酸素の量を求めてもよい。微粉炭と酸素の化学量論比を維持することにより、システムは、比較的広範囲の工程条件に亘って、最高火炎温度を動的に維持することができる。
【0025】
天然ガス燃料では、化学量論比は、普通は比較的低い炭化水素を無視して、式(3)によって求めることができる。
(3)SCFH=2*(SCFHでの天然ガスの流量)*(1−(天然ガス中の不活性ガス%/100))
「不活性」は、天然ガスに含まれる不活性ガスのことであり、従来の試験によって求められる。化石燃料としての天然ガスを使用する酸素燃料燃焼システムでは、天然ガスの流量は、従来の方式で得られる。天然ガスの流量を表す信号と、100立方フィート当たりの天然ガス内の不活性ガス百分率(「NG100」)を、CPU又はプログラム可能コントローラーに与え、例えば、工程条件の変化による天然ガスの流量の変化に応じて、すぐさま酸素と燃料の化学量論比を維持するのに必要な酸素の量を求めてもよい。天然ガスと酸素の化学量論比を維持することにより、システムは、比較的広範囲の工程条件に亘って、最高火炎温度を動的に維持することができる。
【0026】
どちらの燃料でも、システムは、燃焼排ガス中の未燃酸素レベルを確認して酸素の流量を調整する。燃焼排ガス中の未燃酸素のレベルは、燃焼排ガスの流れの中に配置された従来の酸素センサーで感知してもよい。
【0027】
火炎温度は煤粒子放射(soot particle radiation)を使って測定できることも知られている。具体的には、燃焼工程が煤粒子を放出することになるのは知られている。煤粒子によって放出される放射物(光)は、断熱火炎温度の尺度として使用することができる。より具体的には、ここに参考文献として援用する米国特許第6,318,891号に記載されているように、火炎によって放出される化学発光は、光学センサーファイバーと分光器を使って検出される。断熱火炎温度は、化学発光放射光から求められる。火炎の放射スペクトル強度測定値に基づいて火炎温度を計算するための数値法については、Elsevier社が2006年に発行した燃焼協会会報31(2007年)の2581−2588頁の、Kaushik Biswas、Yuan Zheng、Chul Han Kim、及びJay Goreによる「Stochastic Time Series Analysis of Pulsating Buoyant Pool Fires」に詳しく説明されており、同文書を参考文献としてここに援用する。
【0028】
本発明を実施する代表的な制御線図を、図3と図4に示している。図3は、燃焼システムの制御ループを示している。図4は、ボイラーシステムの制御ループを示している。
図3では、ブロック50で示している様に、例えば、一次目標温度設定値は、ボイラーの過熱温度設定値である。他の一次温度設定値には、水壁13(図1)の温度又は各種の他の一次温度設定値が含まれていてもよい。これらの温度は、例えば、温度目標物に隣接して配置される熱電対によって測定される。過熱温度が一次目標温度である上記例では、熱電対は、加熱器20(図1)の出口部(output)に、周知の方法で配置される。
【0029】
加熱器20(図1)の温度は、設定値と比較される。測定された温度は、過熱器20の温度設定値と比較される。測定された温度が温度設定値と異なる場合は、エラー信号52(図3)が生成される。エラー(差異)信号52は、合計熱伝達要求54を表す信号を生成するのに用いられる。定常状態では、合計熱伝達要求信号54は、所定レベルのボイラー燃焼速度を維持するのに用いられる燃焼量要求信号を生成するのに用いられる。より具体的には、ライン57で入手できる燃焼速度要求信号は、相関燃焼速度制御器58へ送られる。ボックス58で示されている相関燃焼速度は、燃焼システムの燃料要求が増えていることを示す信号であり、本発明によれば、これは、放射熱伝達を最適化して調整され、効率が上がり従って燃料が節約される結果となる。
【0030】
定常状態の間に、ライン57で入手できる燃焼速度指令信号は、ライン60に沿って相関燃焼速度制御器58へ送られる。この燃焼速度要求信号は、燃料供給速度基準信号62、例えば石炭供給速度基準信号、と比較される。燃料供給速度基準信号62から入手できる燃料供給速度が目下の燃焼速度と一致している場合は、エラー信号66がゼロになり、目下の燃料供給速度が維持されることになる。
【0031】
ライン57で入手できる燃焼速度要求信号が追加又は削減の要求を示している場合は、実際の石炭又は他の燃料の流れを所望の量に調整するために、燃焼速度要求信号と燃料供給速度基準信号62の差に基づいて、燃焼速度エラー信号66が生成される。更に、相関燃焼速度信号が、酸素の流量制御器68に送られ、酸素の流量と、燃料、即ち例えば微粉化機(pulverizer)70の流量とが制御される。この例では、当技術では一般的に知られているように、微粉化機70は、所望の石炭の流量を、微粉化機の係数によって決まる実際の流量と相関付けるため、自身のエラー信号64を生成する。
【0032】
固体燃料、即ち、石炭を使用する場合、一次リサイクル流量制御器72は、固体燃料を、例えば粉砕器を通して、バーナー14(図1)へ送り込むのに必要なリサイクル燃焼排ガスの量を制御するのに用いられる。リサイクル燃焼排ガスは、普通は一次燃焼排ガス供給ファンから入手できる。最高火炎温度を維持する目的で、所望の燃料流量と輸送速度を維持し、リサイクル燃焼排ガスの量を最少にするために、一次リサイクル流量制御器72の出力が監視され、エラー信号74が生成される。
【0033】
酸素流量制御器68は、相関燃焼速度制御器58からの入力を受信し、化学量論的に+/−5%に設定する。流れ監視装置(図示せず)は、酸素の実際の流量を測定するのに用いられ、エラー信号は、適量の酸素を維持するために生成される。
【0034】
ボックス78で示している酸素多段化(staging)は、酸素を一次流路と二次流路に分けるためのものである。複数の酸素流路を使用すると、火炎の形状を変え、火炎の安定性を調整し、NOの放出を最少にすることができる。各酸素流路には、エラー信号80、82を生成する流量監視装置(図示せず)が装備されており、この信号は、バーナー14(図1)へ流れる実際の流量を所望の流量に修正するのに用いられる。バーナー14は、一次及び二次酸素経路と、この例では粉砕器70である燃料ソースから物理的な流量入力を受け取る。
【0035】
先に述べた様に、ボックス83で示されている火炎温度は、燃料、酸素、及びリサイクル燃焼排ガスの化学的入力に基づく断熱計算によって計算されるか、又は代わりに、煤粒子放射法によって測定される。エラー信号74は、最高火炎温度を維持する目的で一次リサイクル燃焼排ガスと酸素の入力を調整するために固体燃料を用いる場合に生成される。ボックス84で示す様に、燃焼後、過剰な酸素が監視され、エラー信号86が、例えば、化学量論的に+/−5%の設定値に対して生成される。このエラー信号は、次に、酸素流量68にフィードバックされる。
【0036】
本発明の重要な態様によれば、最高火炎温度は、閉ループ制御によって維持される。これは、複数のバーナーが設けられているボイラーでは、基本的にバーナー毎に行われる。具体的には、何れかのバーナーの火炎温度83が最高期待火炎温度より低くなると、エラー信号88が生成され、酸素流量制御器68にフィードバックされる。火炎温度83が、最高火炎温度、例えば5100°Fより下がると、酸素流量が上げられる。最高火炎温度は、酸素純度レベル毎に予め決められている。所定の最高温度は、先に論じた様に、火炎温度信号83と比較され、エラー信号88を生成するのに用いられる。
【0037】
図4は、ボイラーの制御ループを示している。概括的には、ライン90上に示されているボイラー要求信号は、出力ステーション制御装置から送られる。この例では、それは、ボイラーが所望する蒸気流量入力である。給水コントローラー92は、蒸気の流量を増減又は維持するために、ボイラーマスター90によって駆動される。例えば、給水流量が増えると、ボイラー内の温度が下がることになり、過熱温度に対する需要が高まり、而して、燃料への需要が大きくなる。過熱コントローラーすなわち一次制御器94は、図3に示す閉ループ温度制御に関係している。
【0038】
リサイクル流量要求すなわち二次温度コントローラー96は、本例では、再加熱器21(図1)の蒸気温度を制御するためのものである。再加熱蒸気温度は、再加熱蒸気温度を設定値に維持するための閉ループコントローラーである。リサイクル流量要求は、微粉炭の様な固体燃料と共に使用するためのリサイクル燃焼排ガスに関係している。このリサイクル流量要求は、COリサイクル燃焼排ガスファンからのCOリサイクル流量入力を制御するのに用いられるCOリサイクル流量コントローラー98を駆動する。COリサイクル流れコントローラー98の出力は、微粉炭燃料流量70(図1)とリサイクル燃焼排ガス流量100(二次温度制御、本例では再加熱用のリサイクル燃焼排ガス)を制御するのに用いられる。流量は監視され、必要に応じて、エラー信号102が生成され、リサイクル燃焼排ガスの流量が調整される。更に、エラー信号102が、この場合は再加熱温度である二次温度設定値から導き出され、リサイクル燃焼排ガスの量が、リサイクル燃焼排ガス要求96に調整される。
【0039】
合計ガス流量要求コントローラー104は、合計ガス流量要求を求めるのに用いられる。合計ガス流量要求コントローラー104の出力は、燃焼排ガスリサイクルファン106を制御するのに用いられる。エラー信号108は、リサイクル燃焼排ガスの要求流量と実際の流量の差に基づいて生成される。次に、要求の差が、燃焼排ガス流量を増減するか又は維持するために、ファンに出力される。
【0040】
本発明では、様々な形式のバーナーを使用することができる。例えば、特定の形状寸法の火炎を作るために、バーナー14は、オリフィスの寸法及び速度について特定の要件を設けて設計してもよい。例えば、米国特許第5,545,031号及び第5,575,637号は、本発明と共に使用して代表的な火炎形状を提供するための代表的なバーナーを開示している。
【0041】
他にも、本発明と共に使用するのに適したバーナーはある。例えば、図5は、代表的なガスバーナーを示している。図6と図7は、それぞれ、ガス及び石炭用の代表的なバーナーを示しており、酸素入口ノズルは、火炉燃焼空洞の外側で、燃料に事前着火する可能性を防ぐために、酸素がバーナーの先端で燃料と混ざり合うように構成されている。
【0042】
図5に示すようには、バーナー150は、火炉158の中に伸張しているメイン入口ノズル本体152を含んでいる。燃料ガス入口154は、火炉壁160の外側のメイン入口本体152の中へと伸張している。酸素は、酸素ノズル162によってメイン入口ノズル本体152に入力され、燃料ガスと混ざり合う。点火器(図示せず)は、メイン入口本体152の中央開口部156を通って、バーナー先端164の直ぐ先まで伸張している。点火器は、火炉158内で燃料/酸素混合物に点火するための火花を提供する。
【0043】
図6は、微粉炭用途に使用するための代替バーナー全体を参照番号170で示しており、酸素ノズル172と燃料ノズル174を含んでいる。この用途では、燃料ノズル174は、微粉炭と、搬送ガス、例えばリサイクル燃焼排ガスとの混合に用いられる。より具体的には、微粉炭は、微粉炭の粒子を事実上「流体化」するため、バーナーの下流で搬送ガスと混ぜ合わされる。そして、流体化された微粉炭は燃料ノズル174へ送られる。
【0044】
図6に示す様に、酸素ノズル172と燃料ノズル174は、共に、メインバーナー本体178内にチャンバを画定している開口部176を出口としており、開口部176で、燃料と酸素は混ざり合い、点火器(図示せず)によって点火される。酸素ノズル172と燃料ノズル174の出口は、図示の様に概ね整列しており、チャンバ176のほぼ同じ境界線が出口になっている。従って、チャンバ176が、燃料と酸素が混ぜ合わされて点火される事実上のバーナー先端を画定している。
【0045】
メインバーナー本体178は、COの出口ノズル180と182を受け入れるための1つ又は複数の開口部で囲まれていてもよい。COは、或る条件の下で、ボイラーの対流が通過する際の熱伝達の量を加減又は調整するのに用いられる。ボイラーの対流区画内のボイラーの熱伝達面が、適正工程温度を維持するために、管に亘って一定の又は所定の量の対流ガスを必要とするような用途では、COが必要である。CO出口ノズル180と182は、CO入口ノズル186が供給を行っているCOプレナム184と流体連通している。CO出口ノズル180と182は、参照番号186で識別されている火炉燃焼チャンバの境界線を出口にしている。
【0046】
図7は、全体を参照番号200で示している代替の天然ガスバーナーを示しており、酸素ノズル202と燃料ノズル204を含んでいる。この用途では、燃料ノズル174は、天然ガス用に用いられている。
【0047】
図7に示す様に、酸素ノズル202と燃料ノズル204は、共に、メインバーナー本体208内にチャンバを画定している開口部206を出口としており、開口部で、燃料と酸素が混ざり合い、点火器(図示せず)によって点火される。酸素ノズル202と燃料ノズル204の出口は、図示の様に概ね整列しており、チャンバ206のほぼ同じ境界線が出口になっている。従って、チャンバ206が、燃料と酸素が混ぜ合わされて点火される事実上のバーナー先端を画定している。
【0048】
メインバーナー本体208は、COの出口ノズル210と212を受け入れるための1つ又は複数の開口部を含んでいてもよい。CO出口ノズル210と212は、CO入口ノズル216が供給を行っているCOプレナム214と流体連通している。CO出口ノズル210と212は、参照番号218で識別されている火炉燃焼チャンバの境界線を出口にしている。
【0049】
上記教示に照らし、本発明に多くの修正及び変更を施せることは明白である。従って、特許請求の範囲内において、本発明は、上に具体的に述べたのと異なる方法で実施できるものと理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素と化石燃料を受け取るための少なくとも1つのバーナーを有するボイラー用の酸素燃料燃焼工程の効率を最適化するための方法において、
(a)各バーナーに供給される酸素を、火炎温度が所定の最大値になるように、動的に制御するステップを含む方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)は、
酸素と燃料の化学量論比を制御することによって火炎温度が所定値に維持されるように、各バーナーに供給される酸素を動的に制御する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(a)は、
火炎温度が燃料供給速度の関数として所定値に維持されるように、各バーナーに供給される酸素を動的に制御する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)は、
火炎温度が前記燃料の炭素含有量の関数として所定値に維持されるように、各バーナーに供給される酸素を動的に制御する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(a)は、
火炎温度が前記バーナーに供給される微粉炭の供給速度の関数として所定値に維持されるように、各バーナーに供給される酸素を動的に制御する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(a)は、
火炎温度が前記バーナーに供給される微粉炭の炭素含有量の関数として所定値に維持されるように、各バーナーに供給される酸素を動的に制御する、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ(a)は、
火炎温度が前記バーナーに供給される天然ガスの流量の関数として所定値に維持されるように、各バーナーに供給される酸素を動的に制御する、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(a)は、
火炎温度が前記バーナーに供給される天然ガスの炭素含有量の関数として所定値に維持されるように、各バーナーに供給される酸素を動的に制御する、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
更に、燃焼排ガス内の未燃酸素を調べて、火炉に供給される酸素の流量を前記未燃酸素の関数として調整するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ(a)は、(b)火炎温度を求めるステップを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(b)は、煤粒子放射に基づいて火炎温度を求める、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(a)は、
火炎温度が閉ループ制御によって所定値に維持されるように、各バーナーに供給される酸素を動的に制御する、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−521648(P2010−521648A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511434(P2010−511434)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/084809
【国際公開番号】WO2009/136964
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(509032508)ジュピター・オキシジェン・コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】