説明

閉止弁

【課題】ウオータハンマの防止を図ると共に、閉弁に要する時間を短縮できる閉止弁を提供する。
【解決手段】本発明の閉止弁は、弁本体3の1次室5と2次室7の連通口9を開閉する常時開で、かつ1次室5の水圧を受けて閉止方向に移動する弁体11と、弁体11を開弁方向に付勢する第1バネ27と、弁体11の閉弁方向への移動速度を制御する閉弁制御手段13とを備え、閉弁制御手段13が、弁体11の動きに連動するピストン軸25と、ピストン軸25に連結されたピストン35と、ピストン35を収容するピストン室29と、ピストン室29に充填された非圧縮性流体と、ピストン35によって区画される2室間を連通するように設けられた第1連通流路と、弁体11が閉止方向に所定の距離だけ移動したときに第1連通流路と連通して、2室間を連通させるように設けられた第2連通流路を形成する第2連通流路形成部材37とを備え、第1連通流路の最小流路断面よりも第2連通流路の最小流路断面を小さく設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば放水設備に設けられて放水時にウオータハンマを防止する閉止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
放水設備に設けられて放水時にウオータハンマを防止する閉止弁として、例えば水幕形成設備の放水管に設けられるウオータハンマ防止用閉止弁がある(特許文献1参照)。
この水幕形成設備は、例えば液化天然ガス(LNG)が貯留される貯留タンクの周囲に設けられ、ガス漏れが発生した場合に水幕ヘッドから放水して床面と直交する方向、即ち、垂直方向の水幕(ウオータカーテン)を形成し、ウオータカーテンにより漏れたガスの水平方向への拡がりを阻止するものである。
【0003】
特許文献1に開示されたウオータハンマ防止用閉止弁は、その基本構成として、「弁本体の連通口を開閉する常時開の弁体と、該弁体の閉弁方向への摺動速度を制御する閉弁制御手段と、前記連通口に設けられ、前記弁本体の1次側が設定水圧以上のときに前記弁体が閉弁方向へ摺動して圧接する弁座とを備えている。」(特許文献1の請求項1参照)
また、特許文献1には、上記基本構成に加えて、開閉制御手段として、「弁体に連動するピストンステムと、該ピストンステムに連結された、ピストン室のピストンと、該ピストン室に収容された非圧縮性流体と、該ピストンに設けられ、前記非圧縮性流体が出入りする連通孔と、該ピストンを開弁方向に付勢するスプリングと、を備えている」旨(特許文献1の請求項2参照)が記載されている。
【0004】
特許文献1のウオータハンマ防止用閉止弁は、開閉制御手段におけるピストンに設けた連通孔を通過する非圧縮性流体の通過速度によってピストンの移動速度を制御することにより、弁体の閉止速度を制御して、ウオータハンマの発生を防止しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−220226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
放水管にウオータハンマ防止用閉止弁を設けた場合において、ウオータハンマが発生する危険性が高くなるのは、放水管への給水直後の弁体が全開状態にあるときではなく、弁体が閉止方向に移動して、連通口の開口面積がある程度小さくなった時点からである。つまり、弁体の開度が諸条件によって定まるある状態になったときに、急激に弁体を押圧する圧力が増加し、そのときにウオータハンマ発生の危険があるのである。
このように、ウオータハンマは弁体がある程度閉止した状態で発生しやすいため、その状態においてウオータハンマが発生しないようにするため、その状態での弁体の移動速度をウオータハンマが発生しないような速度に制御する必要がある。
【0007】
従来例においては、弁体の移動速度はピストンに設けた連通孔を通過する非圧縮性流体の通過速度によって制御しているが、その連通孔は、弁体が閉止を始めてから閉止完了まで、同じ大きさであるため、弁体の移動速度はほぼ一定といえる。
そのため、弁体の移動速度は、ウオータハンマが発生する危険のある状態の速度に制御される。
つまり、本来、給水当初の閉弁開始時には、弁体の閉止速度を速くしてもウオータハンマは発生しないにもかかわらず、従来例においては、弁体の閉止速度をウオータハンマ発生の危険のある状態においてウオータハンマが発生しない速度にせざるを得ないものとなっており、閉弁開始から閉弁完了までに要する時間が長くなっていた。
閉弁開始から閉弁完了までに要する時間が長くなると、放水管内の圧力が高くなるまでの時間が長くなり、水幕ノズルからの放水が遅くなり、水幕形成が遅れるという問題がある。
また、捨て水が多くなるため、それを受けるピットや処理設備が大きくなるという問題もある。
【0008】
この発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、ウオータハンマの防止を図ると共に、閉弁に要する時間を短縮できる閉止弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者の研究により、上述したように、閉弁開始から弁体がある程度移動するまでの間は、圧力が立たないため(圧力が高まらないため)、弁体の移動を早くしてもウオータハンマは発生しないことが判明した。
そこで、放水管に充水開始から弁体が所定の閉止位置に移動するまでの間は弁体の移動速度を速くし、所定の位置に来たとき以降は弁体の移動速度を遅くすれば、水幕の形成用ノズルからの放水を早期に開始できると共に捨て水の量を少なく出来るとの知見を得た。
本発明は、係る知見に基づきなされたものであり、具体的には以下の構成を備えてなるものである。
【0010】
(1)本発明に係る閉止弁は、弁本体の1次室と2次室の連通口を開閉する常時開で、かつ1次室の水圧を受けて閉止方向に移動する弁体と、該弁体を開弁方向に付勢する付勢手段と、前記弁体の閉弁方向への移動速度を制御する閉弁制御手段とを備え、
該閉弁制御手段が、前記弁体の動きに連動するピストン軸と、該ピストン軸に連結されたピストンと、該ピストンを収容するピストン室と、該ピストン室に充填された非圧縮性流体と、前記ピストンによって区画される2室間を連通するように設けられた第1連通流路と、前記弁体が閉止方向に所定の距離だけ移動したときに前記第1連通流路と連通して、前記2室間を連通させるように設けられた第2連通流路を形成する第2連通流路形成部材とを備え、前記第1連通流路の最小流路断面よりも前記第2連通流路の最小流路断面を小さく設定したことを特徴とするものである。
【0011】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記第1連通流路は前記ピストンに設けられた第1連通孔からなり、
前記第2連通流路形成部材は、前記ピストンに離接可能に設置された板状体と、該板状体に形成された前記第2連通流路を形成する第2連通孔を備えてなり、前記板状体は常時は前記ピストンと離れて配置され、前記弁体が閉弁方向に移動する際の前記ピストンの移動によって前記ピストンに当接して前記第2連通孔が前記第1連通孔と連通するように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、弁体の閉止速度を制御する閉弁制御手段が、弁体の動きに連動するピストン軸と、該ピストン軸に連結されたピストンと、該ピストンを収容するピストン室と、該ピストン室に充填された非圧縮性流体と、前記ピストンによって区画される2室間を連通するように設けられた第1連通流路と、前記弁体が閉止方向に所定の距離だけ移動したときに前記第1連通流路と連通して、前記2室間を連通させるように設けられた第2連通流路を形成する第2連通流路形成部材を備え、前記第1連通流路の最小流路断面よりも前記第2連通流路の最小流路断面を小さく設定したことにより、放水管に充水開始から弁体が所定の閉止位置に移動するまでの間は弁体の移動速度を速くし、弁体が所定の位置に来たとき以降は弁体の移動速度を遅くできるので、ウオータハンマの防止を図ると共に、閉弁に要する時間を短縮できる。これによって、無駄水の量が少なくなり、無駄水処理のためのピットや排水処理の設備を小さくできる。また、閉弁が早く行われることにより、放水管内の圧力が早期に立ち上がり、例えば水幕形成という本来の機能を早期に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る閉止弁の構造を説明する説明図であり、閉弁時の状態を断面図で示している。
【図2】図1の一部を拡大して示す拡大図である。
【図3】図1に示した閉止弁の構造の説明図であり、特に閉弁制御手段を側面図で示したものである。
【図4】図1に示した閉止弁を構成する部品であるリング部材の平面図である。
【図5】図4の矢視A−A断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る閉止弁の構造を説明する説明図であり、開弁時の状態を断面図で示している。
【図7】図6に示した閉止弁の構造の説明図であり、特に閉弁制御手段を側面図で示したものである。
【図8】本発明の一実施の形態に係る閉止弁の動作を説明する説明図であり、閉弁途中の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施の形態に係る閉止弁1は、弁本体3と、弁本体3の1次室5と2次室7の連通口9を開閉する常時開で、かつ1次側の水圧を受けて閉止方向に移動する弁体11と、該弁体11の閉弁速度を制御する閉弁制御手段13とを備えている。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0015】
<弁本体>
弁本体3は、1次室5と2次室7が、供給水の流れが直角方向になるように設けられており、1次室5と2次室7の連通口9に弁座15が設けられている。
【0016】
<弁体>
弁体11は、連通口9を開閉可能に設けられており、図1、図6に示すように、図中下方に延びるスカート部17を有している。スカート部17が連通口9の周縁部19にガイドされることで弁体11の開閉が円滑に行なえるようになっている。
弁体11には、弁軸21が設けられ、弁軸21は弁本体3の下部23に上下動可能に支持されると共に、弁軸21の下端は閉弁制御手段13を構成するピストン軸25の上端に連結されている。
弁体11は、弁軸21の上下動によって、連通口9の開閉動作をし、弁体11の動きにピストン軸25が連動する。
【0017】
弁軸21の下部におけるピストン軸25との連結部には、閉弁制御手段13を構成するピストン35が設けられ、該ピストン35の下方に該ピストン35を常時上方(開弁方向)に付勢することで、弁体11を開弁方向に付勢する付勢手段としての第1バネ27が設けられている。第1バネ27の配設状態の詳細は後述する。
【0018】
弁体11の動きは、基本的には1次室5と2次室7(ここでは大気圧)との差圧による閉弁方向の力と第1バネ27による開弁方向の力とのバランスで制御され、閉止弁1の設定水圧はこれらの力がバランスする圧力であり、この圧力以上になると弁体11は閉弁方向に移動する。
【0019】
<閉弁制御手段>
閉弁制御手段13は、弁本体3の2次室7の下方に設けられ、後述するピストン35を収容するピストン室29と、該ピストン室29内にピストン室29内を図中上下方向移動可能に設けられたピストン軸25と、該ピストン軸25に連結されたピストン35と、ピストン35の上方の第1室31と、ピストン35の下方の第2室33に区画するように配設されたピストン35と、ピストン室29内に充填された油等の非圧縮性流体と、ピストン35の下方に設けられた第2連通流路形成部材37を備えている。
【0020】
ピストン室29に配設されたピストン35には、第1室31と第2室33とを連通させるように第1連通孔39が設けられている。第1連通孔39が本発明の第1連通流路を形成するものであり、その流路断面積は従来例において設けられていたものよりも大きく設定されている。
ピストン35の下方には、上端がピストン35下面に当接し、下端がピストン室29の底部に当接するように第1バネ27が配設され、ピストン35を常時上方に押し上げるように付勢している。
【0021】
第2連通流路形成部材37は、ピストン軸25に挿通された板状体としてのリング部材41と、該リング部材41をピストン軸25に上下移動可能に支持する支持部材43と、リング部材41を常時上方に付勢する第2バネ45とを備えている。
以下、第1室31と第2室33の2空間を連通させる第2連通流路形成部材37の構成部材を詳細に説明する。
【0022】
〔リング部材〕
リング部材41は、図4、図5に示すように、リング部材41をピストン軸25に挿通するための円形の挿通穴47と、リング部材41の上面(ピストン35に対向する面)の径方向中央部に環状に形成されたリング溝49と、一端側がリング溝49に連通し、他端側が外周面に連通するように形成された放射状に延びる3本の放射溝51とを備えている。リング溝49及び放射溝51が本発明の第2連通流路を形成し、3本の放射溝51の流路断面積の合計は、従来例においてピストン35に設けられていた流路断面積と同等程度に設定されて、弁体11の閉弁速度をウオータハンマが発生しない速度に制御できるようになっている。
3本の放射溝51の流路断面積の合計は、ピストン35に形成された第1連通孔39の流路断面よりも小さく設定されている。
【0023】
リング溝49のリング部材41における径方向の位置は、弁体11が閉止方向に所定の距離だけ移動してリング部材41がピストン35に当接した際、図2に示すように、第1連通孔39と連通可能な位置になっている。
また、リング溝49の深さは放射溝51の深さよりも深くなっており、3本の放射溝51の断面積の合計よりも、リング溝49の断面積の方が大きくなるように設定されている(図5参照)。
リング溝49の断面積をこのように設定したのは、リング溝49によって非圧縮性流体の通過抵抗が大きくならないようにするためである。
【0024】
ここで、第1連通流路、第2連通流路について詳細に説明する。
図2に示すように、リング部材41が、ピストン35の下面に当接した状態では、ピストン室29の第1室31と第2室33は、ピストン35に形成された第1連通孔39、リング部材41に形成されたリング溝49、放射溝51を介して連通することになる。
したがって、リング部材41が、ピストン35の下面に当接した状態では、非圧縮性流体の第2室33から第1室31への移動する流速は、3本の放射溝51の流路断面積の合計の面積、リング溝49の流路断面積、第1連通孔39の流路断面積のうち最も小さいもの、すなわち3本の放射溝51の流路断面積の合計の面積によって制御されることになる。
【0025】
前述したように、第1連通孔39によって第1連通流路が形成され、リング溝49と3本の放射溝51によって第2連通流路が形成されている。そして、本発明においては、第1連通流路の流路断面積よりも、第2連通流路の流路断面積が小さく設定されているので、このことはつまり、第1連通孔39の流路断面積よりも、3本の放射溝51の流路断面積の合計面積の方が小さくなるように設定されていることを意味している。
【0026】
〔支持部材〕
支持部材43は、図2、図3に示すように、矩形状の板材からなり、内側にガイド穴となる長穴53を有している。
支持部材43の上端部には、リング部材41がネジ55によって固定されている。長穴53にはピストン軸25に固定されたボルト57が挿入されており、このボルト57がガイド軸となって、支持部材43はピストン軸25に対して上下方向に移動可能になっている。
【0027】
〔第2バネ〕
第2バネ45は、上端がリング部材41の下面に当接し、下端がピストン室29の内壁に当接して、常時リング部材41を上方に付勢している。
【0028】
上記のように構成された本実施の形態の閉止弁1の動作を、前述した水幕形成設備の図示しない放水管に閉止弁1を設けた場合を例に挙げて説明する。
閉止弁1の1次室5は常時は空の所謂ドライ配管である放水管に接続されている。この放水管には、水幕を形成するための水幕ヘッドが複数取り付けられている。また、閉止弁1の2次室7側には排水管が接続されて、排水管はピットに排水するようになっている。
【0029】
閉止弁1は、放水管が空の状態の常時は、図6に示すように、第1バネ27がピストン35を上方に付勢しているため、ピストン35はピストン室29の上部に配置されると共に弁体11は弁座15よりも上方に位置して、開弁状態になっている。
開弁状態では、リング部材41は、第2バネ45によって上方に付勢されて、ピストン軸25の上部側に配置され、ピストン35と離れている。
この状態では、図6に示されるように、リング部材41とピストン35の下面との間には隙間が形成されている。
【0030】
放水管に設けられた自動制御弁が開弁されて放水管に給水されると、放水管内を水が勢いよく流れ、弁本体3の1次室5から連通口9を介して2次室7に流れ、排水管を介してピットに流れ出る。
このとき、連通口9が全開されていることから、水が急激に止められることがないので、ウオータハンマは発生しない。
もっとも、勢いよく流れる水が弁体11に衝突するため、その水圧によって、弁体11が、図6に示す状態から、図中下方に押され、弁体11は徐々に閉弁方向に移動する。このとき、弁軸21及びこれに連結されたピストン軸25が下動し、ピストン35が下動する。ピストン35が下動する速度は、ピストン室29の第2室33の非圧縮性流体がピストン35に設けられた第1連通孔39を通過する速度によって制御される。
本実施の形態では、従来例に設けられていた第1連通孔39よりも断面積が大きく設定されているので、ピストン35は比較的速い速度で下動し、閉弁速度は従来例よりも速い。
【0031】
弁体11が下動すると、連通口9の開口面積が小さくなり、水が弁体11を押圧する水圧が高くなり、弁体11の下動速度は速くなる。
弁体11が、所定の閉止位置まで下動すると、図8に示すように、ピストン35の下面がリング部材41の上面に当接する。この状態では、第1連通孔39はリング部材41によって塞がれ、ピストン室29の第1室31と第2室33は、3本の放射溝51、リング溝49、第1連通孔39を介して連通することになる。そのため、ピストン35の下動の速度は、流路の最小断面積となる3本の放射溝51を通過する非圧縮性流体の速度によって制御される。
前述したように、3本の放射溝51によって形成される第2連通流路の最小流路断面積は第1連通孔39によって形成される最小流路断面積よりも小さいので、ピストン35の下動速度は低下する。ピストン35の下動速度が低下することで、弁体11の閉止速度は当該圧力でウオータハンマが発生しない速度まで低下し、ウオータハンマの発生を防止しながら、弁体11は徐々に閉止する。
【0032】
弁体11が徐々に閉まることで、水圧は徐々に高くなって、最終的には弁体11が弁座15に着座して完全に閉弁する。弁体11が完全に閉弁することで、弁本体3からの排水はなくなり、水幕形成をする水幕ヘッドからの放水のみとなる。
【0033】
上記の動作説明は、閉弁の動作であったが、開弁の動作を以下に説明する。
放水管に設けられた自動制御弁が閉止され、放水管への給水がなくなると、放水管内の水は水幕ヘッドから放水され、放水管内の水圧が低下する。
放水管内の水圧が低下すると、閉止弁1の弁体11を閉弁方向に押圧する圧力が低下するので、弁体11は第1バネ27の復元力によって、徐々に開弁方向に移動する。
【0034】
このとき、ピストン35が上動するので、第1室31の非圧縮性流体が第1連通孔39、リング溝49、放射溝51を介して第2室33に流入する。
開弁が進み、ピストン35がさらに上昇すると、ピストン35の下面からリング部材41が離れ、第1室31の非圧縮性流体は第1連通孔39を通過して第2室33に円滑に移動し、開弁の速度は速くなり、完全に開弁する。
【0035】
以上のように、本実施の形態によれば、放水管への給水当初は第1連通孔39を通過する非圧縮性流体の通過速度によって閉弁速度が制御されるので、比較的速い速度で閉弁が行われる。そして、弁体11がある程度閉弁したときに、第1連通孔39よりも流路断面積が小さい3本の放射溝51を通過する非圧縮性流体の通過速度によって速度が制御され、閉弁速度が遅くなってウオータハンマの発生を防止しながら閉弁する。このように、放水管への給水当初は速い速度で閉弁し、ウオータハンマの発生が生じ易い状態から閉弁速度を低下させるようにしているので、閉弁に要する合計時間が短くなる。それ故に、排水管から排水される無駄水の量が少なくなり、処理用のピットや排水処理の設備を小さくできる。また、閉弁が早く行われることにより、水幕形成が早期に行われるので、水幕形成という本来の機能を有効発揮させることができる。
【0036】
また、本実施の形態においては、第2連通流路を複数本(3本)の放射溝51によって形成しているので、第2連通流路が機能する際に円滑な通流ができる。もっとも、放射溝51の本数は3本に限定するものではなく、1本、2本、あるいは4本以上であってもよい。
また、本実施の形態においては、放射溝51と第1連通孔39とを3本の放射溝51の合計の流路断面積よりも大きい流路断面積を有するリング溝49を介して連通させるようにしているので、流路抵抗を少なくして円滑な通流が実現できている。
【符号の説明】
【0037】
1 閉止弁 3 弁本体 5 1次室
7 2次室 9 連通口 11 弁体
13 閉弁制御手段 15 弁座 17 スカート部
19 周縁部 21 弁軸 23 下部
25 ピストン軸 27 第1バネ 29 ピストン室
31 第1室 33 第2室 35 ピストン
37 第2連通流路形成部材 39 第1連通孔 41 リング部材
43 支持部材 45 第2バネ 47 挿通穴
49 リング溝 51 放射溝 53 長穴
55 ネジ 57 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁本体の1次室と2次室の連通口を開閉する常時開で、かつ1次室の水圧を受けて閉止方向に移動する弁体と、該弁体を開弁方向に付勢する付勢手段と、前記弁体の閉弁方向への移動速度を制御する閉弁制御手段とを備え、
該閉弁制御手段が、前記弁体の動きに連動するピストン軸と、該ピストン軸に連結されたピストンと、該ピストンを収容するピストン室と、該ピストン室に充填された非圧縮性流体と、前記ピストンによって区画される2室間を連通するように設けられた第1連通流路と、前記弁体が閉止方向に所定の距離だけ移動したときに前記第1連通流路と連通して、前記2室間を連通させるように設けられた第2連通流路を形成する第2連通流路形成部材とを備え、前記第1連通流路の最小流路断面よりも前記第2連通流路の最小流路断面を小さく設定したことを特徴とする閉止弁。
【請求項2】
前記第1連通流路は前記ピストンに設けられた第1連通孔からなり、
前記第2連通流路形成部材は、前記ピストンに離接可能に設置された板状体と、該板状体に形成された前記第2連通流路を形成する第2連通孔を備えてなり、前記板状体は常時は前記ピストンと離れて配置され、前記弁体が閉弁方向に移動する際の前記ピストンの移動によって前記ピストンに当接して前記第2連通孔が前記第1連通孔と連通するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の閉止弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−87906(P2012−87906A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236757(P2010−236757)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】