説明

開閉ユニットおよび電子機器

【課題】少ない部品点数で蓋を開閉すること
【解決手段】開閉ユニット1は、第1の軸16と第2の軸17を有する開閉部材10と、開閉部材によって開閉される開口21aと、第1の軸と係合する第1のガイド溝24と、第2の軸と係合する第2のガイド溝25が形成される固定部材20とを有し、開閉部材は、第2の軸を中心として回動することで、第1の軸が第1のガイド溝に沿って移動し、第1の軸を中心として回動することで、第2の軸が第2のガイド溝に沿って移動することによって開閉動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉ユニットおよびそれを有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の端子部、入出力部、媒体挿入口を覆う蓋の開閉ユニットは、電子機器の小型化とともに部品点数の削減や小型の構造が求められている。この点、特許文献1は、一対の支柱間に扉体を設けて両者を連結部材と支持アームで連結し、扉体を垂直方向から水平方向に開く昇降扉を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−62962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1はガレージや門の昇降扉に関するため、そもそも大型であると共に、特許文献1の開閉機構は支持アームを必要とするため、電子機器の蓋開閉ユニットとしては部品点数も多い。
【0005】
そこで、本発明は、少ない部品点数で蓋を開閉する開閉ユニットとそれを有する電子機器を提供することを例示的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の開閉ユニットは、第1の軸と第2の軸を有する開閉部材と、前記開閉部材によって開閉される開口と、前記第1の軸と係合する第1のガイド溝と、前記第2の軸と係合する第2のガイド溝が形成される固定部材とを有し、前記開閉部材は、前記第2の軸を中心として回動することで、前記第1の軸が前記第1のガイド溝に沿って移動し、前記第1の軸を中心として回動することで、前記第2の軸が前記第2のガイド溝に沿って移動することによって回転することを特徴する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、少ない部品点数で蓋を開閉する開閉ユニットとそれを有する電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施例の開閉ユニットの分解斜視図である。
【図2】図1に示す開閉ユニットの上面図である。
【図3】図1に示す開閉ユニットの斜視図である。
【図4】図3に示す開閉ユニットの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施例の開閉ユニット1の分解斜視図である。開閉ユニット1は、デジタルカメラ、コンピュータ、ゲーム機、PDAなどの不図示の電子機器の筺体の一部に使用され、電子機器の端子部、入出力部、媒体挿入口などを覆う蓋を開閉させる。開閉ユニット1は、開閉部材10と、固定部材20と、付勢部材30と、を有する。
【0010】
開閉部材10は、不図示の電子機器の端子部、入出力部、媒体挿入口などを開閉する前面部としての蓋部11と、蓋部11の上下端に結合した一対のガイド部15と、を有し、固定部材20に対して回転移動可能に固定部材20に取り付けられている。
【0011】
図1において、蓋部11の左端の中央部にはユーザが開閉部材10を開閉する力を加える指が置かれる指係り部12が形成されている。なお、開閉ユニット1は蓋部11が手動で開閉するものに限定されず、モータなどの開閉手段を利用して自動で開閉する場合にも適用可能である。
【0012】
蓋部11の前面の中央には表示部13が形成されている。表示部13は、蓋部11の移動方向、状態、背部にある電子部品の情報、その他の情報を表示することができるが、表示部13を設けるかどうかは選択的である。
【0013】
図1において、蓋部11の右端面は曲面14に加工され、開閉動作を円滑にしている。なお、開閉部材10の回転方向が逆になれば指係り部12と曲面14の位置関係は逆になる。
【0014】
各ガイド部15は、ほぼ三角形形状の薄板構造を有し、この三角形の一辺において各ガイド部15は蓋部11の上下端に結合して蓋部11の前面に対して垂直に延びている。一対のガイド部15は平行に延びている。各ガイド部15は、蓋部11の回転を案内し、第1の軸16と第2の軸17を前記三角形の他の辺(にある2つの頂点)に有する。
【0015】
第1の軸16と第2の軸17は各ガイド部15に固定されて、各ガイド部15の表面から外側に各ガイド部15の表面に垂直に延びている。各ガイド部15において、第1の軸16と第2の軸17は平行であり、本実施例では同じ長さであるが、両者の長さは異なってもよい。
【0016】
第1の軸16と第2の軸17の2軸に案内されて蓋部11は回転移動される。2軸によって蓋部11が開閉する際に必要とするデッドスペースは1軸によって蓋部が開閉する際に必要とするデッドスペースよりも小さいため、開閉ユニットおよび電子機器の小型化に資する。
【0017】
固定部材20は、不図示の電子機器の筺体の一部もしくは筺体に固定される。固定部材20は、前面部21と、前面部21の上下端に結合した一対のガイド部23を有する。
【0018】
前面部21は、長方形形状の薄板構造を有し、中央に不図示の電子機器の端子部、入出力部、媒体挿入口などを露出する長方形形状の開口21aを有する。開口21aは、開閉部材10の蓋部11によって開閉され、開閉部材10によって内部の電子機器の端子部などは防塵が維持されると共に外部衝撃から保護される。
【0019】
また、図1に示す開口21の左側中央に閉口状態にある蓋部11の指係り部12へのユーザの指係りを助けるための窪み22aが形成されている。同様に、図1に示す開口21の右側中央に開口状態にある蓋部11の指係り部12へのユーザの指係りを助けるための窪み22bが形成されている。
【0020】
各ガイド部23は、ほぼ四角形形状の薄板構造を有し、この四角形の一辺において各ガイド部23は前面部21の上下端に結合して前面部21の前面に対して垂直に延びている。一対のガイド部23は平行に延びている。
【0021】
各ガイド部23は、第1のガイド溝24、第2のガイド溝25、係合部26、変形部27を有する。
【0022】
第1のガイド溝24には、開閉部材10の第1の軸16が係合し、前面部21の前面に対してほぼ垂直に延びている。第2のガイド溝25には、開閉部材10の第2の軸17が係合し、前面部21の前面に対して斜めに(後述する図2に示すように第1のガイド溝24に対して約45°の角度で延びている。第2のガイド溝25は第1のガイド溝24とは異なる位置に形成されて異なる方向に延びる。
【0023】
上述したように、第1の軸16と第2の軸17が並ぶ方向は蓋部11の前面に対して傾いている。第1の軸16と第2の軸17を蓋部11の前面に沿って配置した場合、蓋部11が90度回転すれば第1の軸16と第2の軸17もそれに合わせて90度回転する。このため、固定部材20は回転後の第1の軸16と第2の軸17の間の距離分の長さを前面部21の前面に垂直な方向に確保しなければならずガイド部23ひいては固定部材20が大型になる。本実施例のように第1の軸16と第2の軸17が並ぶ方向を蓋部11の前面に対して傾けると、ガイド部23の前面部21の前面に対して垂直な方向の長さを短くすることができるので固定部材20の小型化につながる。
【0024】
第1のガイド溝24の端部24aは、閉口状態のときの開閉部材10が付勢部材30により付勢される方向に所定量以上移動するのを防ぐための閉口ストッパーとして機能する。同様に、第2のガイド溝25の端部25aは、開口状態のときの開閉部材10が付勢部材30により付勢される方向に所定量以上移動するのを防ぐための開口ストッパーとして機能する。
【0025】
係合部26は、付勢部材30であるねじりコイルバネのコイル部31に挿入され、付勢部材30を回転自在に案内する円筒形状の突起であるが、その形状は限定されない。係合部26は、付勢部材30と係合する限り、ガイド部23の内面に設けられてもよいし外面に設けられてもよい。なお、係合部26は、上側のガイド部23にのみ設けられていてもよいし、各ガイド部23に設けられていてもよい。
【0026】
変形部27は、第2のガイド溝25の開口端部の片側に溝27aを介して形成され、溝27a側に多少弾性変形可能に固定部材20に設けられている。変形部27は、後述するように、開閉部材10を固定部材20に取り付ける際には弾性変形して第2のガイド溝25の開口端部を広げて第2の軸17が第2のガイド溝25に挿入され易くする機能を有する。また、変形部27は、第2の軸17が第2のガイド溝25に挿入された後は、弾性変形して、広げた第2のガイド溝25の開口端部を元に戻して第2の軸17が第2のガイド溝25から離脱しないように留める機能を有する。
【0027】
別の実施例では、変形部は、第1のガイド溝24の開口端部の片側に溝を介して形成され、溝側に多少弾性変形可能に固定部材20に設けられている。この場合には、変形部は、開閉部材10を固定部材20に取り付ける際には弾性変形して第1のガイド溝24の開口端部を広げて第1の軸16が第1のガイド溝24に挿入され易くする機能を有する。また、変形部は、第1の軸16が第1のガイド溝24に挿入された後は、弾性変形して、広げた第1のガイド溝24の開口端部を元に戻して第1の軸16が第1のガイド溝24から離脱しないように留める機能を有する。
【0028】
付勢部材30は、ねじりコイルバネであり、第1の腕部32が第1の軸16に当接し、第2の腕部33が第2の軸17に当接し、コイル部31が係合部26に係合し、係合部26を中心にして回動自在に構成されている。
【0029】
付勢部材30の第1の腕部32と第2の腕部33の間の開き角度θは、ねじりコイルバネの自然状態の開き角度であり、開き角度θが大きいほど、付勢部材30による付勢力も大きくなる。
【0030】
上述したように、付勢部材30はガイド部23の一方に設けられてもよいし両方に設けられてもよい。また、付勢部材30はねじりコイルバネに限定されず、他の付勢手段を利用してもよい。
【0031】
付勢部材30は、開閉部材10が固定部材20に対して所定角度回転するまでは、開閉部材10が回転している方向とは反対方向に開閉部材10に付勢力を加える。また、付勢部材30は、開閉部材10が固定部材20に対して所定角度以上回転すると開閉部材10が回転している方向に付勢力を加える。
【0032】
図2は、開閉部材10の固定部材20への取り付けを説明する上面図である。固定部材20に対する開閉部材10の取り付けは、図2中に示す矢印方向に第1の軸16を第1のガイド溝24に沿って第2の軸17を第2のガイド溝25に沿って移動することによって行う。開閉部材10の取り付け時は、変形部27が溝27aの側に変形し、取り付け後に元の形状に戻って開閉部材10が固定部材20から脱落することを防止する。
【0033】
図3は、開閉部材10が閉口状態から開口していく様子を順次示した斜視図であり、図4は、開閉部材10が閉口状態から開口していく様子を順次示した上面図であり、図3と図4において状態(A)〜(E)はそれぞれ同一の状態を示している。
【0034】
状態(A)は、開閉部材10の閉口状態である。この状態から、ユーザは、指係り部13に指を引っ掛け、これに力を加えて開閉部材10を開口させる。閉口状態における付勢部材30の開き角度θは、開き角度θよりも小さく開き角度が自然状態である開き角度θに近いため、状態(A)の方が状態(B)よりも安定している。また、開閉部材10には、端部24aに押し付けられる方向に付勢部材30の付勢力が働いているため、閉口状態を維持することができる。
【0035】
状態(B)は、ユーザが開閉部材10を開口させ始めている状態である。この状態では、開閉部材10が第2の軸17を中心として回動することで、第1の軸16が第1のガイド溝24に沿って移動する。また、開閉部材10が第2の軸17を中心として回動する際に、第1の軸16が第1のガイド溝24に沿って移動することで、付勢部材30はチャージされる。付勢部材30の開き角度θは、開き角度θよりも大きいため、開閉部材10には閉口状態に近づく付勢力が働く。即ち、状態(B)においてユーザが力を解除すれば状態(A)に戻る。
【0036】
状態(C)では、開閉部材10が第2の軸17を中心として回動し、第1の軸16が第1のガイド溝24に沿って移動する動作を終了する。このとき、付勢部材30の開き角度θが開閉動作中で最大となる。開閉部材10が、状態(C)よりも閉口状態に近い状態であれば、閉口状態に近づく付勢力が働き、開口状態に近ければ、開口状態に近づく付勢力が働く。つまり、状態(C)では、開閉部材10に対する付勢部材30の付勢力の作用が反転する。
【0037】
状態(D)は、開閉部材10が第1の軸16を中心として回動することで、第2の軸17は第2のガイド溝25に沿って移動する。そして、開閉部材10が第1の軸16を中心として回動する際には、第2の軸17が第2のガイド溝25に沿って移動することで、付勢部材30はチャージされる。付勢部材30の開き角度θは開き角度θよりも大きいため、開閉部材10には、開口状態に近づく付勢力が働く。
【0038】
状態(E)は、開閉部材10が第1の軸16を中心として回動し、第2の軸17が第2のガイド溝25に沿って移動する動作を終了する。このとき、開閉部材10の開口状態であり、付勢部材30の開き角度θは開き角度θよりも小さく、開き角度が自然状態である開き角度θに近いため、状態(E)は状態(D)よりも安定している。開閉部材10には、端部25aに押し付けられる方向に付勢部材30の付勢力が働いているため、開口状態を維持することができる。
【0039】
本実施例では、開閉部材10の第1の軸16と第2の軸17を固定部材20の第1のガイド溝24と第2のガイド溝25でそれぞれ案内しており、支持アームは不要であるので部品点数は少なくなっている。また、本実施例では、固定部材20に係合された小型のねじりコイルバネによって開閉部材10を開口状態または閉口状態に付勢しているので開閉ユニット1は小型になっている。
【0040】
更に、第1の軸16と第2の軸17は、各ガイド部15が蓋部11と結合している三角形の辺とは異なる辺に設けられており、第1の軸16と第2の軸17が並ぶ方向は蓋部11の前面に対して傾いている。このため、ガイド部23の前面部21の前面に対して垂直な方向の長さを短くすることができるので固定部材20の小型化をはかることができる。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
開閉ユニットは電子機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 開閉ユニット
10 開閉部材
16 第1の軸
17 第2の軸
20 固定部材
21a 開口
24 第1のガイド溝
25 第2のガイド溝
27 変形部
30 付勢部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軸と第2の軸を有する開閉部材と、
前記開閉部材によって開閉される開口と、前記第1の軸と係合する第1のガイド溝と、前記第2の軸と係合する第2のガイド溝が形成される固定部材とを有し、
前記開閉部材は、前記第2の軸を中心として回動することで、前記第1の軸が前記第1のガイド溝に沿って移動し、前記第1の軸を中心として回動することで、前記第2の軸が前記第2のガイド溝に沿って移動することを特徴する開閉ユニット。
【請求項2】
前記開閉部材が前記第2の軸を中心として回動する際には、前記第1の軸が前記第1のガイド溝に沿って移動することでチャージされ、前記開閉部材が前記第1の軸を中心として回動する際には、前記第2の軸が前記第2のガイド溝に沿って移動することでチャージされる付勢部材を更に有することを特徴する請求項1に記載の開閉ユニット。
【請求項3】
前記付勢部材は、第1の腕部が前記第1の軸に当接し、第2の腕部が前記第2の軸に当接するように、前記固定部材に配置されるねじりコイルばねであることを特徴とする請求項2に記載の開閉ユニット。
【請求項4】
前記固定部材は、前記第1のガイド溝または前記第2のガイド溝の開口端部を広げるとともに広げた開口端部を元に戻すように弾性変形する変形部を更に有することを特徴する請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の開閉ユニット。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の開閉ユニットを有することを特徴とする電子機器。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−77528(P2012−77528A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224356(P2010−224356)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】